(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】設計支援装置
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20240319BHJP
E04B 1/18 20060101ALI20240319BHJP
G06F 30/13 20200101ALI20240319BHJP
【FI】
G06F30/10
E04B1/18 A ESW
G06F30/13
(21)【出願番号】P 2020087557
(22)【出願日】2020-05-19
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和多田 遼
(72)【発明者】
【氏名】石田 高義
(72)【発明者】
【氏名】亀森 淳也
(72)【発明者】
【氏名】金子 侑樹
(72)【発明者】
【氏名】川上 沢馬
(72)【発明者】
【氏名】中村 亮太
(72)【発明者】
【氏名】前田 周作
(72)【発明者】
【氏名】内山 元希
(72)【発明者】
【氏名】木下 拓也
(72)【発明者】
【氏名】松岡 康友
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 琢也
(72)【発明者】
【氏名】九嶋 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】池田 周英
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 孝
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-073448(JP,A)
【文献】特開2001-195444(JP,A)
【文献】国際公開第2017/077610(WO,A1)
【文献】特開平11-232320(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109684714(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/10
E04B 1/18
G06F 30/13
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された設計対象の建物のボリューム又は平面形状における区画の境界線上に、所定の節点ルールに沿って、節点を付与する節点付与部と、
予め定められた複数の分割ルール毎に、前記分割ルールに沿って、前記節点間でボリューム又は平面形状を分割し、分割結果に基づいて、前記建物に配置する構造部材の組み合わせ候補を生成する構造部材候補生成部と、
前記複数の分割ルール毎に、前記構造部材候補生成部により生成された前記構造部材の組み合わせ候補について、予め定められた目的関数を用いて、スコアを算出するスコア算出部と、
を含む設計支援装置。
【請求項2】
前記節点ルールは、節点を、前記境界線の両端に与えると共に、節点で区切られた前記境界線が、指定された最大要素長以下となるように節点を与えることである請求項1記載の設計支援装置。
【請求項3】
前記複数の分割ルールは、
前記ボリュームが六面体となるように分割すること、前記ボリュームが五面体となるように分割すること、前記平面形状が四角形となるように分割すること、又は前記平面形状が三角形となるように分割することを含む請求項1又は2記載の設計支援装置。
【請求項4】
前記目的関数は、前記分割されたボリューム又は平面形状のバランス、構造部材の密集度合い、分散度合い、又は構造部材のスパンを含む目的関数である請求項1~請求項3の何れか1項記載の設計支援装置。
【請求項5】
前記スコアに応じて選択される前記構造部材の組み合わせ候補を、前記ボリューム又は平面形状に重畳させて表示する表示部を更に含む請求項1~請求項4の何れか1項記載の設計支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設計支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄骨構造物の基本事項データを入力する工程と、前記基本事項データと予め設定された所定の部材配置ルールとに基づいて鉄骨構造物の構造部材データを生成する工程とを備えたことを特徴とする鉄骨構造物の設計支援システムが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、意匠設計用CAD情報を入力し、意匠設計用CAD情報に含まれる複数の柱又は複数の壁の形状、寸法、及び位置を示す情報に基づいて建物の通り芯を示す情報を生成する構造解析用情報生成装置が知られている(例えば、特許文献2)。
【0004】
また、建物に含まれる全ての平面モジュールで使用される各製品部材の本数、当該各製品部材を切断することによって当該各製品部材より取得される構造部材の本数および当該各構造部材の大きさと配置される位置を示す情報を求める建物用CADシステムが知られている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-245040号公報
【文献】特開2008-158793号公報
【文献】特開2017-10413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の技術では、入力画面における基本事項データの入力完了後に、鉄骨構造物の構造部材データを生成して生成結果を表示する。しかしながら、上記特許文献1には、構造部材の組み合わせ候補を複数生成して、最適な組み合わせを求めることについては記載されていない。
【0007】
上記特許文献2に記載の技術では、建物のボリュームを含む意匠設計のCADデータから構造解析用のデータを一連の流れで作成する。しかしながら、上記特許文献2には、構造部材の組み合わせ候補を複数生成して、最適な組み合わせを求めることについては記載されていない。
【0008】
また、上記特許文献3には、構造部材の組み合わせ候補を複数生成して、最適な組み合わせを求めることについては記載されていない。
【0009】
本発明は上記事実を考慮して、最適な構造部材の組み合わせを用いた建物の構造設計を支援することができることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る設計支援装置は、入力された設計対象の建物のボリューム又は平面形状における区画の境界線上に、所定の節点ルールに沿って、節点を付与する節点付与部と、予め定められた複数の分割ルール毎に、前記分割ルールに沿って、前記節点間でボリューム又は平面形状を分割し、分割結果に基づいて、前記建物に配置する構造部材の組み合わせ候補を生成する構造部材候補生成部と、前記複数の分割ルール毎に、前記構造部材候補生成部により生成された前記構造部材の組み合わせ候補について、予め定められた目的関数を用いて、スコアを算出するスコア算出部と、を含んで構成されている。
【0011】
本発明に係る設計支援装置によれば、節点付与部によって、入力された設計対象の建物のボリューム又は平面形状における区画の境界線上に、所定の節点ルールに沿って、節点を付与する。構造部材候補生成部によって、予め定められた複数の分割ルール毎に、前記分割ルールに沿って、前記節点間でボリューム又は平面形状を分割し、分割結果に基づいて、前記建物に配置する構造部材の組み合わせ候補を生成する。そして、スコア算出部によって、前記複数の分割ルール毎に、前記構造部材候補生成部により生成された前記構造部材の組み合わせ候補について、予め定められた目的関数を用いて、スコアを算出する。
【0012】
このように、複数の分割ルール毎に、節点間でボリューム又は平面形状を分割し、分割結果に基づいて、前記建物に配置する構造部材の組み合わせ候補を生成し、予め定められた目的関数を用いて、スコアを算出することにより、最適な構造部材の組み合わせを用いた建物の構造設計を支援することができる。
【0013】
本発明に係る設計支援装置において、前記節点ルールは、節点を、前記境界線の両端に与えると共に、節点で区切られた前記境界線が、指定された最大要素長以下となるように節点を与えることである。これにより、適切に境界線上に節点を付与することができる。
【0014】
本発明に係る設計支援装置において、前記複数の分割ルールは、前記ボリュームが六面体となるように分割すること、前記ボリュームが五面体となるように分割すること、前記平面形状が四角形となるように分割すること、又は前記平面形状が三角形となるように分割することを含むことができる。これにより、様々なボリューム又は平面形状の分割結果を得ることができる。
【0015】
本発明に係る設計支援装置において、前記目的関数は、前記分割されたボリューム又は平面形状のバランス、構造部材の密集度合い、構造部材の分散度合い、又は構造部材のスパンを含む目的関数である。これにより、前記分割されたボリューム又は平面形状のバランス、構造部材の密集度合い、構造部材の分散度合い、又は構造部材のスパンを考慮して、最適な構造部材の組み合わせを用いた建物の構造設計を支援することができる。
【0016】
本発明に係る設計支援装置は、前記スコアに応じて選択される前記構造部材の組み合わせ候補を、前記ボリュームに重畳させて表示する表示部を更に含むことができる。これにより、より効果的に、建物の構造設計を支援することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の設計支援装置によれば、複数の分割ルール毎に、節点間でボリューム又は平面形状を分割し、分割結果に基づいて、前記建物に配置する構造部材の組み合わせ候補を生成し、予め定められた目的関数を用いて、スコアを算出することにより、最適な構造部材の組み合わせを用いた建物の構造設計を支援することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態に係る設計支援装置を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る設計支援装置を示す機能ブロック図である。
【
図3】建物のボリュームを表す画像の例を示す図である。
【
図4】建物の平面形状の境界線に対して節点を付与した例を示す図である。
【
図5】建物の平面形状を節点間で分割した例を示す図である。
【
図6】建物のボリュームに柱の組み合わせを重畳して表示する画面の例を示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る設計支援装置の設計支援処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
【
図8】建物の平面形状を節点間で分割した例を示す図である。
【
図9】部屋の用途に応じて色分けした、建物の平面形状の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0020】
<本発明の形態の設計支援装置の構成>
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る設計支援装置100は、CPU12、グラフィックカード13、GPU14、RAM16、HDD18、通信インタフェース21、及びこれらを相互に接続するためのバス23を備えている。
【0021】
CPU12、GPU14は、各種プログラムを実行する。RAM16は、CPU12による各種プログラムの実行時におけるワークエリア等として用いられる。記録媒体としてのHDD18には、後述する設計支援処理ルーチンを実行するためのプログラムを含む各種プログラムや各種データが記憶されている。
【0022】
本実施の形態における設計支援装置100を、設計支援処理ルーチンを実行するためのプログラムに沿って、機能ブロックで表すと、
図2に示すようになる。設計支援装置100は、入力部10、演算部20、及び出力部50を備えている。
【0023】
入力部10は、設計対象の建物のボリューム又は平面形状を入力として受け付ける。例えば、
図3に示すような設計対象の建物のボリュームの3次元空間を、2次元平面に投影した平面形状を入力として受け付ける。
【0024】
演算部20は、節点付与部22、構造部材候補生成部24、スコア算出部26、及び表示部28を備えている。
【0025】
節点付与部22は、入力された建物のボリューム又は平面形状における区画の境界線上に、所定の節点付与ルールに従って、複数の節点を与える(
図4)。具体的には、節点付与ルールとして、節点を、境界線の両端に与えると共に、節点で区切られた境界線が、指定された最大要素長以下となるように、節点を均等に与える。なお、節点の与え方として、節点の密度が均等ではなくてもよく、例えば、両端に向かって節点の密度が増加又は減少するように節点を与えてもよい。
【0026】
構造部材候補生成部24は、分割ルールに沿って、節点間でボリューム又は平面形状を分割する(
図5)。例えば、ボリュームの分割ルールとして、六面体となるように分割することのみを行う、五面体となるように分割することのみを行う、及び五面体となるように分割することと六面体となるように分割することとの双方を行う、の何れか1つ選択されたルールに沿って分割する。
【0027】
また、平面形状の分割ルールとして、四角形となるように分割することのみを行う、三角形となるように分割することのみを行う、及び三角形となるように分割することと四角形となるように分割することとの双方を行う、の何れか1つ選択されたルールに沿って分割する。
【0028】
なお、分割ルールとして、2次元において三角形となるように分割することを採用すれば、平面形状が任意形状であっても対応可能である(
図6)。この場合、ある程度整形な構造部材を生成することができる。また、各部屋の境界線毎に、節点の間隔を調整するようにしてもよい。
【0029】
上記の分割を、予め定めた反復終了条件を満たすまで繰り返す。反復終了条件としては、反復回数が上限値に到達すること、全ての分割されたボリューム又は平面形状が所定条件を満たすこと、などを用いればよい。
【0030】
構造部材候補生成部24は、建物のボリューム又は平面形状の分割結果に基づいて、構造部材の種類(柱、梁、壁)毎に、建物に配置する構造部材の組み合わせ候補を生成する。
【0031】
例えば、構造部材の種類(柱、梁、壁等)毎に定められた、分割されたボリューム又は平面形状に対する構造部材の生成ルールに基づいて、分割されたボリューム又は平面形状の境界線上に構造部材を生成し、構造部材の組み合わせ候補を生成する。
【0032】
上記の構造部材候補生成部24の処理を、分割ルールを変えながら繰り返す。これにより、構造部材の種類(柱、梁、壁等)毎に生成された構造部材の組み合わせ候補を複数セット得る。
【0033】
スコア算出部26は、分割ルール毎に、当該分割ルールに対応して構造部材候補生成部24により構造部材の種類毎に生成された構造部材の組み合わせ候補について、予め定められた目的関数を用いて、スコアを算出する。
【0034】
例えば、構造部材の種類毎に生成された構造部材の組み合わせ候補について、分割されたボリューム又は平面形状のバランス、構造部材の密集度合い/分散度合い、及び構造部材のスパンを用いて表される目的関数を用いて、スコアを算出する。具体的には、分割されたボリューム又は平面形状のバランスが良いほど、スコアが高く、構造部材の密集度合い/分散度合いが、標準値に近いほど、スコアが高く、構造部材のスパンが、標準値に近いほどスコアが高くなるように定められた目的関数を用いて、スコアを算出する。
【0035】
スコア算出部26は、算出したスコアに応じて、構造部材の組み合わせ候補を決定する。例えば、スコアが最大となる、構造部材の種類毎の構造部材の組み合わせ候補のセットを決定する。
【0036】
表示部28は、スコア算出部26によって決定された、構造部材の種類毎の構造部材の組み合わせ候補を、ボリューム又は平面形状に重畳させて、出力部50により表示する(
図7)。
図7では、設計対象の建物のボリュームに、生成された柱の組み合わせを重畳させて表示する例を示している。
【0037】
<設計支援装置の動作>
次に、本発明の実施の形態に係る設計支援装置100の動作について説明する。
【0038】
まず、入力部10によって、設計対象の建物のボリューム又は平面形状を入力として受け付けると、設計支援装置100によって、
図8に示す設計支援処理ルーチンが実行される。
【0039】
ステップS100において、節点付与部22は、入力された建物のボリューム又は平面形状を取得する。
【0040】
ステップS102では、節点付与部22は、入力された建物のボリューム又は平面形状における区画の境界線上に、所定の節点付与ルールに従って、複数の節点を与える。
【0041】
ステップS104では、構造部材候補生成部24は、分割ルールに沿って、節点間でボリューム又は平面形状を分割することを繰り返す。
【0042】
ステップS106では、構造部材候補生成部24は、建物のボリューム又は平面形状の分割結果に基づいて、構造部材の種類(柱、梁、壁)毎に、建物に配置する構造部材の組み合わせ候補を生成する。
【0043】
ステップS108では、全ての分割ルールに対して上記ステップS104~S106の処理を繰り返したか否かを判定する。上記ステップS104~S106の処理を行っていない分割ルールが存在する場合には、上記ステップS104へ戻り、当該分割ルールに従って分割を行う。一方、全ての分割ルールに対して上記ステップS104~S106の処理を繰り返した場合には、ステップS110へ進む。
【0044】
ステップS110では、スコア算出部26は、複数の分割ルール毎に、当該分割ルールに対応して構造部材候補生成部24により構造部材の種類毎に生成された構造部材の組み合わせ候補について、予め定められた目的関数を用いて、スコアを算出する。
【0045】
ステップS112では、スコア算出部26は、算出したスコアに応じて、構造部材の組み合わせ候補を決定する。
【0046】
ステップS114では、表示部30は、上記ステップS112で決定された、構造部材の種類毎の構造部材の組み合わせ候補を、ボリューム又は平面形状に重畳させて、出力部50により表示し、設計支援処理ルーチンを終了する。
【0047】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る設計支援装置によれば、建物のボリューム又は平面形状における区画の境界線上に、所定の節点ルールに沿って、節点を与え、所定の分割ルールに沿って、節点間でボリューム又は平面形状を分割し、分割結果に基づいて、構造部材の組み合わせ候補を生成することを、分割ルールを変えながら繰り返し、組み合わせ候補毎に、目的関数を用いてスコアを算出する。これにより、最適な構造部材の組み合わせを用いた建物の構造設計を支援することができる。
【0048】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0049】
例えば、上述した実施形態において、入力された建物のボリューム又は平面形状を分割した空間毎の用途を受け付け、分割した空間毎に、構造部材の種類毎に生成された構造部材の組み合わせ候補について、当該用途に対して定めた目的関数を用いて、スコアを算出してもよい。例えば、
図9に示す上面図のように、建物を表し、かつ、部屋の用途毎に色分けした平面形状を入力とし、部屋毎に、構造部材の種類毎に生成された構造部材の組み合わせ候補について、当該部屋の用途に対して定めた目的関数を用いて、スコアを算出してもよい。
【0050】
また、本発明のプログラムは、記憶媒体に格納して提供するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 入力部
20 演算部
22 節点付与部
24 構造部材候補生成部
26 スコア算出部
28 表示部
30 表示部
50 出力部
100 設計支援装置