(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】車両用ワイヤレス給電システム、車両へのワイヤレス給電方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/05 20160101AFI20240319BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20240319BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240319BHJP
B60M 7/00 20060101ALI20240319BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20240319BHJP
B60L 53/122 20190101ALI20240319BHJP
H02J 50/40 20160101ALI20240319BHJP
【FI】
H02J50/05
H02J50/80
H02J7/00 301D
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L53/122
H02J50/40
(21)【出願番号】P 2020094185
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 崇
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大樹
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 要
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-065407(JP,A)
【文献】特開平07-067206(JP,A)
【文献】実開平02-133102(JP,U)
【文献】再公表特許第2017/119067(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/00-50/90
H02J 7/00
B60M 7/00
B60L 5/00
B60L 53/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行路の延伸方向に間隔をあけて配置され、
前記走行路の延伸方向に沿って複数のセクタに区分され、前記車両に非接触で給電する複数の送電電極と、
前記走行路の延伸方向に間隔をあけて配置され、それぞれ、前記走行路を走行する前記車両を検知する複数のセンサと、
複数の前記送電電極のうち、前記車両を検知した前記センサに関連付けられた一部の前記送電電極のみから前記車両に給電する給電制御装置と、を備え
、
前記給電制御装置は、
前記車両の走行方向の後方に隣接する前記セクタから送信される事前給電指令信号を受信して、前記車両が位置する前記セクタを含む一以上の前記セクタのみにおいて、前記送電電極から前記車両への給電を行う
ことを特徴とする車両用ワイヤレス給電システム。
【請求項2】
前記給電制御装置は、前記車両を検知した前記センサに関連付けられた前記セクタと、前記センサが関連付けられた当該前記セクタに対して前記車両の走行方向前方で隣接する一以上の他の前記セクタとで、前記車両への給電を行う、
ことを特徴とする請求項
1に記載の車両用ワイヤレス給電システム。
【請求項3】
前記センサ、及び前記給電制御装置は、それぞれの前記セクタに配置されている、
ことを特徴とする請求項
1または
2に記載の車両用ワイヤレス給電システム。
【請求項4】
前記センサは、前記車両を検知した場合、当該センサを識別する識別情報を含むセンサ信号を前記車両に送信し、
前記給電制御装置は、前記センサ信号を受信した前記車両から、前記送電電極からの給電を要求する給電要求信号を受信した場合に、前記送電電極から前記車両に電力を供給する、
ことを特徴とする請求項1から
3のいずれか一項に記載の車両用ワイヤレス給電システム。
【請求項5】
前記センサは、前記車両を検知する検知範囲が当該センサから1m以内となる近距離用非接触式センサである、
ことを特徴とする請求項1から
4のいずれか一項に記載の車両用ワイヤレス給電システム。
【請求項6】
センサが、走行路を走行する車両を検知した場合に、前記車両を検知したことを示す車両検知信号を送信することと、
前記センサからの前記車両検知信号を受信することと、
受信した前記車両検知信号に基づき、前記走行路の延伸方向に間隔をあけて配置され
、前記走行路の延伸方向に沿って複数のセクタに区分された複数の送電電極のうち、前記車両検知信号を送信した前記センサに関連付けられた一部の送電電極のみから、前記車両に非接触で給電させること
であって、前記車両の走行方向の後方に隣接する前記セクタから送信される事前給電指令信号を受信して、前記車両が位置する前記セクタを含む一以上の前記セクタのみにおいて、前記送電電極から前記車両に非接触で給電させることと、を含む、
ことを特徴とする車両へのワイヤレス給電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ワイヤレス給電システム、車両へのワイヤレス給電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車が普及しつつある。電気自動車は、車載されたバッテリに蓄えられた電力によりモータを駆動することによって、車輪を回転させて走行する。電気自動車は、バッテリの蓄電量が減少した場合、充電設備に接続してバッテリの充電を行う。このため、利用者は、例えば電気自動車で長距離の移動を行う場合、出先で充電設備に立ち寄ってバッテリの充電を行う必要があり、これが、利用者にとって負担となる場合がある。
【0003】
これに対し、電気自動車、電動カート、AGV(Automated Guided Vehicle)等、電気エネルギーを動力に用いる車両に対し、ワイヤレスで電力を供給するワイヤレス給電システムが提案されている。このようなワイヤレス給電システムを用いれば、走行中に車両に給電してバッテリへの充電を行ったり、モータを駆動させて走行を行うことができる。
【0004】
ところで、走行中の車両への給電を行うワイヤレス給電システムでは、給電するための送電電極を車両の走行路が延びる方向に連続的に設け、送電電極から車両へと高周波電界によって電力を供給する。しかし、走行路が、例えば高速道路等である場合、送電電極が長大なものとなり、送電電極への供給電力も膨大となる。また、送電電極に通電されることによって、送電電極から放射される高周波電界の影響を抑えることも望まれる。
【0005】
これに対し、例えば、特許文献1に開示された構成は、表層材に埋設され、外部から給電ケーブルを介して給電される送電電極を有している。送電電極は、走行路の幅方向に間隔をあけて配置された第一送電電極と第二送電電極とを有している。送電電極は、走行路が延びる方向に間隔をあけて複数組が配置されている。これら複数組の送電電極は、走行路が延びる方向に複数のセクタに区分されている。各セクタには、走行路が延びる方向において、一又は隣り合う複数組の送電電極が配置されている。このような構成において、給電用ケーブルからセクタ毎に給電がなされるようになっている。このため、給電効率の低下が抑制され、伝搬損失が低減されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された構成においても、走行路が延びる方向に多数並んだ全てのセクタの送電電極に給電しなければならず、その送電電極への供給電力を抑えることは困難である。また、送電電極から放射される高周波電界の影響範囲が広くなり、対策することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、移動中の車両へのワイヤレス給電を効率良く行い、送電電極への供給電力を抑えるとともに、送電電極から放射される高周波電界の範囲を抑えることができる車両用ワイヤレス給電システム、車両へのワイヤレス給電方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の車両用ワイヤレス給電システムは、車両の走行路の延伸方向に間隔をあけて配置され、前記車両に非接触で給電する複数の送電電極と、前記走行路の延伸方向に間隔をあけて配置され、それぞれ、前記走行路を走行する前記車両を検知する複数のセンサと、複数の前記送電電極のうち、前記車両を検知した前記センサに関連付けられた一部の前記送電電極のみから前記車両に給電する給電制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、センサは、走行路を走行する車両を検知すると、車両を検知したことを示す信号を送信する。給電制御装置は、センサからの信号を受信する。給電制御装置は、走行路の延伸方向に間隔をあけて配置された複数の送電電極のうち、信号を送信したセンサに関連づけられた一部の送電電極のみから、電力を非接触で車両に給電させる。このように、センサで検知される車両の位置に基づいて、複数の送電電極のうちの一部の送電電極のみから給電を行うことで、他の送電電極からは給電を行う必要がない。これにより、走行路全体で供給する電力と、通電していない送電電極からの電磁界の放射を抑えることができる。したがって、移動中の車両へのワイヤレス給電を効率良く行い、送電電極への供給電力を抑えるとともに、送電電極から放射される高周波電界の範囲を抑えることが可能となる。
【0011】
本発明の一態様においては、本発明の車両用ワイヤレス給電システムは、複数の前記送電電極が、前記走行路の延伸方向に沿って複数のセクタに区分され、前記給電制御装置は、前記車両が位置する前記セクタを含む一以上の前記セクタのみにおいて、前記送電電極から前記車両への給電を行う。
【0012】
このような構成によれば、車両の延伸方向に沿って間隔をあけて配置された複数の送電電極を、複数のセクタに区分することによって、セクタ毎に、送電電極から車両への給電制御を行うことができる。
【0013】
本発明の一態様においては、本発明の車両用ワイヤレス給電システムは、前記給電制御装置が、前記車両を検知した前記センサに関連付けられた前記セクタと、前記センサが関連付けられた当該前記セクタに対して前記車両の走行方向前方で隣接する一以上の他の前記セクタとで、前記車両への給電を行う。
【0014】
このような構成によれば、車両が位置するセクタと、車両の走行方向前方に隣接する一以上のセクタのみで給電を行う。つまり、車両の走行方向前方において、給電を行う一以上のセクタよりも、さらに走行方向前方に位置する他のセクタでは給電を行わない。また。車両の走行方向後方のセクタでは、給電を行わない。このようにして、走行路全体での送電電極への供給電力を抑えることができる。
【0015】
本発明の一態様においては、本発明の車両用ワイヤレス給電システムは、前記センサ、及び前記給電制御装置は、それぞれの前記セクタに配置されている。
【0016】
このような構成によれば、センサ及び給電制御装置が、それぞれにセクタに配置されることで、センサから車両や給電制御装置への信号伝播経路を短く抑えることができる。これにより、信号伝播の遅延による、各セクタでの給電制御の遅れを抑えることができる。したがって、走行路を車両が高速で走行する場合であっても、車両の移動に合わせて給電を行うセクタを走行方向前方へと高速で順次移行させることができる。
【0017】
本発明の一態様においては、本発明の車両用ワイヤレス給電システムは、前記センサが、前記車両を検知した場合、当該センサを識別する識別情報を含むセンサ信号を前記車両に送信し、前記給電制御装置は、前記センサ信号を受信した前記車両から、前記送電電極からの給電を要求する給電要求信号を受信した場合に、前記送電電極から前記車両に給電を行う。
【0018】
このような構成によれば、車両側では、センサから送信されたセンサ信号を受信することによって、センサ信号に含まれる識別情報に基づいて、車両を検知したセンサを認識(特定)することができる。これにより、車両に対する給電が行われた送電電極を特定することができる。
また、給電制御装置は、センサ信号を受信した車両から給電要求信号を受信した場合に、車両への給電を行うことで、車両からの給電要求に応じた給電を行うことができる。つまり、センサから車両に対して送信されたセンサ信号に対し、車両側から給電要求信号による応答がない場合には、車両に対する給電を行わないようにすることができる。
【0019】
本発明の一態様においては、本発明の車両用ワイヤレス給電システムは、前記センサが、前記車両を検知する検知範囲が当該センサから1m以内となる近距離用非接触式センサである。
【0020】
このような構成によれば、センサから1m以内を通過した車両のみを、センサで検知する。これにより、例えば、走行路において、センサが設けられた車線に隣接する他の車線を走行する車両を、センサで誤検知するのを抑えることができる。
【0021】
本発明の一態様においては、本発明の車両へのワイヤレス給電方法は、センサが、走行路を走行する車両を検知した場合に、前記車両を検知したことを示す車両検知信号を送信することと、前記センサからの前記車両検知信号を受信することと、受信した前記車両検知信号に基づき、前記走行路の延伸方向に間隔をあけて配置された複数の送電電極のうち、前記車両検知信号を送信した前記センサに関連付けられた一部の前記送電電極のみから、前記車両に非接触で給電させることと、を含む、ことを特徴とする。
【0022】
このような構成によれば、センサで検知される車両の位置に基づいて、複数の送電電極のうちの一部の送電電極のみから給電を行うことで、他の送電電極からは給電を行う必要がない。したがって、移動中の車両へのワイヤレス給電を効率良く行い、送電電極への供給電力を抑えるとともに、送電電極から放射される高周波電界の範囲を抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、移動中の車両へのワイヤレス給電を効率良く行い、送電電極への供給電力を抑えるとともに、送電電極から放射される高周波電界の範囲を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用ワイヤレス給電システムが設置された走行路の概略構成を示す平面図である。
【
図2】
図1の車両用ワイヤレス給電システムが設置された走行路の断面図である。
【
図3】
図1の車両用ワイヤレス給電システムによってワイヤレス給電が成される車両を示す断面図である。
【
図4】
図1の車両用ワイヤレス給電システム、及び給電対象となる車両の機能構成を示すブロック図である。
【
図5】車両が位置するセクタの送電電極と、車両が位置するセクタに対して車両の走行方向の前方で隣り合う他のセクタの送電電極とで、給電を行っている状態を示す平面図である。
【
図6】
図5に示す状態から車両が走行方向の前方に進み、車両が位置するセクタの送電電極と、車両が位置するセクタに対して車両の走行方向の前方で隣り合う他のセクタの送電電極とで、給電を行っている状態を示す平面図である。
【
図7】本実施形態における車両へのワイヤレス給電方法において、車両、及びセンサでそれぞれ実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】本実施形態における車両へのワイヤレス給電方法において、給電制御装置で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】本実施形態の変形例における車両用ワイヤレス給電システムによってワイヤレス給電が成される車両を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明による車両用ワイヤレス給電システム、車両へのワイヤレス給電方法を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
本発明の実施形態に係る車両用ワイヤレス給電システムが設置された走行路の概略構成を示す平面図を
図1に示す。
図2は、上記車両用ワイヤレス給電システムが設置された走行路の断面図である。
図3は、上記車両用ワイヤレス給電システムによってワイヤレス給電が成される車両を示す断面図である。
【0026】
図1~
図3に示す車両用ワイヤレス給電システム1は、走行路2を走行する車両100に対し、ワイヤレス給電を行う。給電対象となる車両100は、例えば、電気自動車である。走行路2は、例えば、高速道路、一般道路等の道路である。車両100は、走行路2上を、走行路2の延伸方向Daに沿って走行する。車両100は、走行路2を、延伸方向Daの一方側を向く走行方向Drに走行する。
【0027】
車両100は、走行路2の表層部上を走行する。走行路2の表層部を形成する表面部材21は、例えば、アスファルト材料又はセメント系材料にセラミックスを混入させた素材からなる。なお、表面部材21は、比誘電率及び誘電正接の少なくとも一方が、一般的な骨材よりも小さい物質を、アスファルト材料又はセメント系材料に混入させた素材から構成することもできる。
【0028】
車両用ワイヤレス給電システム1は、複数の送電電極3と、複数のセンサ4と、電源5と、給電制御装置6と、を主に備えている。
【0029】
複数の送電電極3は、車両100の走行路2の延伸方向Daに間隔をあけて配置されている。各送電電極3は、一対の第一送電電極3Aと第二送電電極3Bと、を備えている。第一送電電極3Aと第二送電電極3Bは、走行路2の延伸方向Daに交差する幅方向Dwに間隔をあけて配置されている。第一送電電極3A、第二送電電極3Bは、外部の電源5から供給される電力を、車両100に供給する。第一送電電極3A及び第二送電電極3Bは、車両100に非接触で給電する。第一送電電極3A、第二送電電極3Bは、走行路2に埋設されている。第一送電電極3A、第二送電電極3Bは、走行路2の表層を形成する表面部材21によって、上方から覆われている。
【0030】
各送電電極3(第一送電電極3A、第二送電電極3B)は、延伸方向Daに、所定の長さを有している。各送電電極3の延伸方向Daの長さは、走行路2における車両100の想定(設定)走行速度等に応じて適宜設定される。各送電電極3の延伸方向Daの長さは、例えば5~30m程度に設定される。本実施形態では、送電電極3の延伸方向Daの長さを、例えば25mに設定している。
【0031】
走行路2に設置された複数(多数)の送電電極3は、複数のセクタ3Sに区分されている。複数のセクタ3Sは、走行路2の延伸方向Daに沿って並ぶように設定されている。各セクタ3Sは、一以上の送電電極3(第一送電電極3A、第二送電電極3B)を備えている。本実施形態では、各セクタ3Sは、例えば、延伸方向Daに並ぶ二つの送電電極3(二組の第一送電電極3A、第二送電電極3B)を備えている。セクタ3S内に配置された二組の第一送電電極3A、第二送電電極3Bは、セクタ3Sの中央部に配置された接続回路32を介して、電源5に接続されている。接続回路32は、整合回路、接続コネクタ(いずれも図示無し)などを備えている。接続回路32は、延伸方向Daに並ぶ二つの第一送電電極3A同士、第二送電電極3B同士を、それぞれ同電位となるように接続する。
【0032】
各セクタ3Sの二つの送電電極3に電力を供給する電源5は、高周波電源である。電源5は、各送電電極3に、接続回路32を介して高周波電流を供給する。電源5は、各セクタ3Sに個別に設けられている。
【0033】
複数のセンサ4は、走行路2の延伸方向Daに間隔をあけて配置されている。センサ4は、各セクタ3Sに、例えば一つずつ配置されている。センサ4は、一つのセクタ3Sに、延伸方向Daに間隔をあけて複数設置されていてもよい。また、センサ4は、一つのセクタ3Sに、幅方向Dwに間隔をあけて複数設置されていてもよい。センサ4は、各セクタ3Sに進入する車両100を検知する。このため、センサ4は、各セクタ3Sにおいて、例えば、走行方向Drの後方側(車両100の運転者から見て手前側)の端部に配置されている。これにより、センサ4は、各セクタ3Sに進入する車両100を速やかに検知できる。
図2、
図3に示すように、各センサ4は、例えば、走行路2の表層部を形成する表面部材21に埋設されている。センサ4は、表面部材21の表面に露出するように埋設されている。センサ4は、走行路2の側壁等に設けてもよい。
【0034】
図4は、上記車両用ワイヤレス給電システム、及び給電対象となる車両の機能構成を示すブロック図である。
図4に示すように、センサ4は、センサ本体41と、センサ信号送信部42と、を備えている。センサ本体41は、走行路2を走行する車両100を検知する。このようなセンサ本体41としては、車両100を検知する検知範囲が、センサ本体41から例えば1m以内となる近距離用非接触式センサが用いられている。センサ本体41を構成する近距離用非接触式センサとしては、例えば、レーザ光を用いた光学センサが採用可能である。センサ本体41として、レーザ光を用いた光学センサを用いる場合、センサ本体41から照射するレーザ光が車両100に当たった場合に、センサ4で車両100を検知する。センサ本体41に近距離用非接触式センサを用いることで、走行路2に複数の車線が並設されている場合、車両100が走行する車線に隣接する他の車線の車両を誤検知することを抑える。
【0035】
センサ本体41には、個別の識別情報(ID情報)が付与されている。センサ本体41の識別情報は、センサ4に記憶されている。また、センサ本体41の識別情報は、そのセンサ4が配置されたセクタ3S、及びそのセクタ3Sに配置された送電電極3に関連付けられて、給電制御装置6またはその上位の制御装置(図示無し)等に登録されている。
【0036】
センサ信号送信部42は、センサ本体41が車両100を検知した場合に、車両100を検知したことを示す車両検知信号M1を、後述する給電制御装置6に送信する。また、センサ信号送信部42は、車両100を検知した場合、その車両100に対し、センサ4の識別情報を含むセンサ信号M2を車両100に送信する。センサ信号送信部42から給電制御装置6への信号伝達は、無線による通信で行ってもよいし、センサ信号送信部42と給電制御装置6とを図示しない通信線を介して接続し、有線による通信で行ってもよい。また、センサ信号送信部42から車両100への信号伝達(伝播)は、4G(第4世代移動通信システム)、5G(第5世代移動通信システム)、Wi-Fi、ブルートゥース(登録商標)などの無線通信により行われる。
【0037】
給電制御装置6は、コンピュータ装置からなる。給電制御装置6は、コンピュータ装置からなるコントロールユニットである。給電制御装置6は、コンピュータ装置を構成するCPU、メモリ、ハードディスクドライブ等の記憶装置を含むハードウェアと、コンピュータ装置に予め設定されたコンピュータプログラムとが協働して所定の処理を実行する。
給電制御装置6は、送電電極3からの車両100への給電を制御する。給電制御装置6は、各セクタ3Sに個別に設けられている。給電制御装置6は、セクタ3Sに設けられた電源5のON/OFF状態を切り替えることで、そのセクタ3Sに設けられた送電電極3への電力供給(通電)を制御する。
【0038】
給電制御装置6は、走行路2に配置された複数(全て)の送電電極3のうち、車両100を検知したセンサ4に関連付けられた一部の送電電極3のみから、車両100への給電を行うよう、制御を行う。給電制御装置6は、車両100が位置するセクタ3Sを含む一以上のセクタ3Sのみにおいて、送電電極3から車両100への給電を行うよう、制御を行う。給電制御装置6は、車両100を検知したセンサ4に関連付けられたセクタ3Sと、そのセクタ3Sに対して車両100の走行方向前方で隣接する一以上の他のセクタ3Sとで、送電電極3に通電し、車両100への給電を行う。本実施形態では、給電制御装置6は、車両100を検知したセンサ4が属するセクタ3Sと、このセクタ3Sに対して走行方向Drの前方で隣接する一つのセクタ3Sとで、送電電極3に通電し、車両100への給電を行う。
【0039】
図5は、車両が位置するセクタの送電電極と、車両が位置するセクタに対して車両の走行方向の前方で隣り合う他のセクタの送電電極とで、給電を行っている状態を示す平面図である。
図6は、
図5に示す状態から車両が走行方向の前方に進み、車両が位置するセクタの送電電極と、車両が位置するセクタに対して車両の走行方向の前方で隣り合う他のセクタの送電電極とで、給電を行っている状態を示す平面図である。
例えば、
図5において、紙面左側に位置するセクタ3SAに設けられたセンサ4で車両100を検知した場合、そのセンサ4が設けられたセクタ3SAに設けられた給電制御装置6は、そのセクタ3SAの電源5をON状態に切り替える。また、この給電制御装置6は、セクタ3SAに対して車両100の走行方向Drの前方で隣接する他のセクタ3SBでも、電源5をON状態に切り替える。給電制御装置6で、走行方向Drの前方の他のセクタ3SBの電源5のON/OFF状態を切り替えるには、例えば、給電制御装置6からセクタ3SBの給電制御装置6に、事前給電指令信号M5を送信(出力)する。各給電制御装置6は、走行方向Drの後方側に位置する他のセクタ3Sの給電制御装置6から事前給電指令信号M5を受信した場合、そのセクタ3Sの電源5をON状態に切り替える。
【0040】
また、
図6に示すように、
図5に示す状態よりも車両100が走行方向Drの前方に進行し、次のセクタ3SBに到達すると、紙面左右方向中央部に位置するセクタ3SBに設けられたセンサ4で車両100を検知する。すると、そのセンサ4が設けられたセクタ3SBに設けられた給電制御装置6は、セクタ3SBの電源5をON状態とする。この場合、セクタ3SBの電源は、
図5の状態で既にON状態であるので、セクタ3SBのセンサ4で車両100を検知した場合、給電制御装置6は、電源5のON状態を継続する。また、給電制御装置6は、セクタ3SBに対して車両100の走行方向Drの前方で隣接する他のセクタ3SCでも、電源5をON状態に切り替える。
【0041】
図4に示すように、給電制御装置6は、上記したような給電制御装置6の機能を発現するため、信号受信部61と、信号処理部62と、電源制御部63と、信号送信部64と、を機能的な構成として備えている。
信号受信部61は、センサ4のセンサ信号送信部42から送信される車両検知信号M1と、後述する車両100から送信される給電要求信号M3とを受信する。また、信号受信部61は、車両100の走行方向Drの後方で隣接する他のセクタ3Sの信号送信部64から送信される事前給電指令信号M5を受信する。
【0042】
信号処理部62は、信号受信部61で受信した信号に基づいて、電源5のON状態とすべきか、OFF状態とすべきかを決定(判定)する。信号処理部62は、信号受信部61で、センサ4からの車両検知信号M1と、車両100から給電要求信号M3との双方を受信した場合にのみ、電源5をON状態に切り替える。信号処理部62は、車両検知信号M1、及び給電要求信号M3の一方のみしか受信していない場合、電源5をON状態とはせず、OFF状態とする。信号処理部62は、センサ4からの車両検知信号M1に基づいて、車両100がセクタ3Sを通過したと判定できる場合には、電源5をON状態からOFF状態とする。信号処理部62は、例えば、センサ4で車両100を検知して車両検知信号M1を送信してからの経過時間が、予め定めた時間以上となった場合に、車両100がセクタ3Sを通過したと判定してもよい。また、各セクタ3Sの走行方向Drの前方側の端部に、車両100がセクタ3Sを通過したことを検知するための通過センサ(図示無し)を備え、その検知信号に基づいて、車両100がセクタ3Sを通過したと判定してもよい。
【0043】
また、信号処理部62は、信号受信部61で、車両100の走行方向Drの後方で隣接する他のセクタ3Sの給電制御装置6から事前給電指令信号M5を受信した場合に、電源5をON状態とする判定処理を行う。
【0044】
電源制御部63は、信号処理部62における判定結果に基づいて、電源5のON/OFFを切り替えるための電源制御信号M4を生成する。電源制御部63で生成する電源制御信号M4には、電源5をON状態とする給電ON指令信号M4aと、電源5をOFF状態とする給電OFF指令信号M4bとの2通り(2種類)がある。電源制御部63は、信号処理部62で電源5をON状態とする判定がなされた場合、電源5をON状態とする給電ON指令信号M4aを生成する。また、電源制御部63は、信号処理部62で電源5をON状態とする判定がなされた場合、走行方向Drの前方で隣接する他のセクタ3Sにおいて、車両100が到達するに先立って電源5をON状態とするための事前給電指令信号M5を生成する。電源制御部63は、信号処理部62で電源5をOFF状態とする判定がなされた場合、電源5をOFF状態とする給電OFF指令信号M4bを生成する。
【0045】
信号送信部64は、電源制御部63で生成された電源制御信号M4(給電ON指令信号M4a、給電OFF指令信号M4b)を電源5に送信する。信号送信部64は、電源制御部63で生成された事前給電指令信号M5を、車両100の走行方向Drの後方で隣接する他のセクタ3Sの給電制御装置6に送信する。
【0046】
車両100は、受信部101と、給電要求信号送信部102と、記録部103と、受電電極104と、負荷105と、電力メータ106と、を備えている。
【0047】
受信部101は、無線通信を介して、各セクタ3Sのセンサ4のセンサ信号送信部42から送信される、センサ4の識別情報を含むセンサ信号M2を受信する。
給電要求信号送信部102は、センサ信号M2を受信した場合に、車両用ワイヤレス給電システム1側に、ワイヤレス給電を要求する給電要求信号M3を、無線通信により送信する。
【0048】
記録部103は、車両100に搭載された制御装置(図示無し)に機能的に備えられている。記録部103は、受信部101で受信したセンサ信号M2の受信時刻、センサ信号M2に含まれるセンサ4の識別情報等を記録する。また、記録部103は、後述する電力メータ106で計量される電力量の情報を記録する。これらの記録を用いることで、例えば、車両100のユーザや、ユーザが契約する給電サービス事業者が、車両100が走行路2の走行中に給電を受けた受電量等を把握することができる。さらには、例えば、ユーザが契約する給電サービス事業者は、車両100が走行路2の走行中に給電を受けた受電量のデータに基づいて、ユーザに対して提供する給電サービスに対する課金情報を取得することも可能となる。
【0049】
受電電極104は、各セクタ3Sに設けられた送電電極3からの非接触でのワイヤレス給電を受ける。
図3に示すように、受電電極104は、例えば、車両100の幅方向Dw両側に設けられた車輪107の上方にそれぞれ配置されている。受電電極104は、各車輪107と上下方向に間隔をあけて配置されている。各車輪107に設けられたタイヤの内部には、タイヤ内導体としてのスチールベルトが設けられている。車両100は、幅方向Dw両側の車輪107を、走行路2の送電電極3(第一送電電極3A、第二送電電極3B)上に位置させて走行する。すると、第一送電電極3A及び第二送電電極3Bと、各車輪107側に設けられたスチールベルトとの間、および、各車輪107のスチールベルトと車体側に配設された受電電極104との間に、それぞれ静電容量が形成される。これにより、結果的に車体側に配設された受電電極104と路面側に敷設された送電電極3との間に静電容量が形成される。この静電容量を介して、走行路2に敷設された送電電極3から、車両100側に配設された受電電極104に高周波電力が伝送される。
【0050】
負荷105は、車両100に搭載されて、受電電極104によって給電される電力を消費、又は蓄積する。負荷105は、例えば、車両100に搭載されたバッテリ及びモータの少なくとも一方である。負荷105がバッテリである場合、受電電極104によって給電される電力は、車両100の制御装置(図示無し)の制御によって負荷105(バッテリ)に蓄積される。負荷105がモータである場合、受電電極104によって給電される電力は、車両100の制御装置(図示無し)の制御によって、モータの駆動に使用される。受電電極104と負荷105との間には、必要に応じて、車載回路(整合回路、整流回路など)が設けられている。
【0051】
電力メータ106は、受電電極104で給電を受けた電力量を計量する。電力メータ106で計量した電力量は、記録部103に記録される。また、電力メータ106で計量した電力量は、例えば、車両100の車内に設けられたモニタ画面等に表示してもよい。
【0052】
次に、上記したような車両用ワイヤレス給電システム1における車両100へのワイヤレス給電方法について説明する。
図7は、本実施形態における車両へのワイヤレス給電方法において、車両、及びセンサでそれぞれ実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図8は、本実施形態における車両へのワイヤレス給電方法において、給電制御装置で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
図7に示すように、車両用ワイヤレス給電システム1では、各セクタ3Sに設けられたセンサ4が、例えば1秒程度のサンプリング間隔で、車両100の検知の有無を検出している(ステップS11)。
【0053】
車両100が、あるセクタ3Sに設けられたセンサ4のセンサ本体41による検知範囲内に到達すると、センサ4のセンサ本体41が車両100を検知する。すると、センサ4のセンサ信号送信部42は、車両100に対し、そのセンサ4のセンサ本体41に付与された識別情報を含むセンサ信号M2を車両100に送信する(ステップS12)。また、センサ信号送信部42は、車両100を検知したことを示す車両検知信号M1を、給電制御装置6に送信する(ステップS13)。
【0054】
車両100側の受信部101では、センサ4から送信されたセンサ信号M2の受信の有無を検出する(ステップS21)。ここで、例えば、時速100kmで走行する車両は1秒間で約28mの距離を進む。このため、例えば延伸方向Daの長さが25mの送電電極3に対して、受信部101では、0.9秒以下のサンプリング間隔で、センサ信号M2の受信の有無を検出する検出している。車両が送電電極3を通過する間に、複数回、センサ信号M2の受信の有無を検出するため、受信部101におけるサンプリング間隔は、0.4秒以下とするのが好ましい。
【0055】
受信部101でセンサ4から送信されたセンサ信号M2を受け取ると、給電要求信号送信部102は、車両用ワイヤレス給電システム1側に、ワイヤレス給電を要求する給電要求信号M3を、無線通信により送信する(ステップS22)。
【0056】
続いて、記録部103が、センサ信号M2の受信時刻、センサ信号M2に含まれるセンサ4の識別情報等を記録する(ステップS23)。
【0057】
図8に示すように、給電制御装置6では、信号処理部62が、例えば0.5秒程度のサンプリング間隔で、センサ4のセンサ信号送信部42から送信される車両検知信号M1の、信号受信部61での受信の有無を検出している(ステップS31)。
【0058】
信号受信部61で車両検知信号M1を受信したことを信号処理部62が確認すると、信号処理部62は、さらに、車両100からの給電要求信号M3を信号受信部61で受信したか否かを判定する(ステップS32)。ここで、センサ4によって検知された車両100が、ワイヤレス給電を必要とする(希望する)場合、車両100からは自動的に給電要求信号M3が送信される。一方、車両100が、ワイヤレス給電の非対象車である場合、車両100からは給電要求信号M3が送信されることはなく、ステップS32で給電要求信号M3を受信、といった判定結果にはならない。ワイヤレス給電の非対象車としては、車両100が、例えばガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等のエンジンのみの駆動力で走行する通常の車両である場合である。また、車両100が、エンジンとモータの双方を備えたハイブリッド車両や、モータのみを駆動力とする電動自動車であっても、ワイヤレス給電に対応可能な装備を備えていない場合、ワイヤレス給電の非対象車となる。また、車両100のユーザが、ワイヤレス給電サービスを受けるための契約を結んでいない場合も、ワイヤレス給電の非対象車となる。
【0059】
ステップS32において、信号処理部62が、給電要求信号M3を受信したことを確認できない場合、ステップS31に戻り、処理を繰り返す。ステップS32において、信号処理部62が、給電要求信号M3を受信したことを確認できた場合、セクタ3Sの電源5をON状態に切り替えることを決定する。電源制御部63は、信号処理部62における決定(判定)に基づいて、電源5をON状態に切り替えるための給電ON指令信号M4aを生成する。また、電源制御部63は、走行方向Drの前方で隣接する他のセクタ3Sにおいて、車両100が到達するに先立って電源5をON状態とするための事前給電指令信号M5を生成する。生成された給電ON指令信号M4aは、信号送信部64から電源5に送信される。また、生成された事前給電指令信号M5は、信号送信部64から、走行方向Drの前方で隣接する他のセクタ3Sの給電制御装置6に送信される(ステップS33)。給電ON指令信号M4aを受信した電源5は、高周波電流を、セクタ3S内の複数の送電電極3に印加する。これにより、セクタ3S内の送電電極3によって、車両100に対してワイヤレス給電が実行される。
【0060】
また、前記ステップS31において、信号受信部61で車両検知信号M1を受信していないと判定された場合、信号処理部62は、信号受信部61で、車両100の走行方向Drの後方のセクタ3Sから、事前給電指令信号M5を受信しているか否かを確認する(ステップS36)。その結果、事前給電指令信号M5を受信していなければ、ステップS31に戻って処理を繰り返す。一方、ステップS36で、事前給電指令信号M5を受信していた場合、信号処理部62は、セクタ3Sの電源5をON状態に切り替えることを決定する。これに基づいて、電源制御部63は、電源5をON状態に切り替えるための給電ON指令信号M4aを生成する。生成された給電ON指令信号M4aは、信号送信部64から電源5に送信される(ステップS37)。給電ON指令信号M4aを受信した電源5は、高周波電流を、セクタ3S内の複数の送電電極3に印加する。これにより、セクタ3S内の送電電極3によって、車両100に対してワイヤレス給電が実行される。
【0061】
給電制御装置6では、信号処理部62が、車両100に対する給電の開始後、車両100がセクタ3Sを通過したか否かを確認している(ステップS34)。ステップS34で車両100の通過が確認された場合、信号処理部62は、電源5をOFF状態とする決定を行う。この決定を受けて、電源制御部63は、電源5をOFF状態とする給電OFF指令信号M4bを生成する。生成された給電OFF指令信号M4bは、信号送信部64から電源5に送信される(ステップS35)。給電OFF指令信号M4bを受信した電源5は、高周波電流の印加を停止する。これにより、セクタ3S内の送電電極3における、車両100に対するワイヤレス給電が実行される。
【0062】
上述したような車両用ワイヤレス給電システム1によれば、車両100の走行路2の延伸方向Daに間隔をあけて配置され、車両100に非接触で給電する複数の送電電極3と、走行路2の延伸方向Daに間隔をあけて配置され、それぞれ、走行路2を走行する車両100を検知する複数のセンサ4と、複数の送電電極3のうち、車両100を検知したセンサ4に関連付けられた一部の送電電極3のみから車両100に給電する給電制御装置6と、を備える。
このような構成によれば、センサ4で検知される車両100の位置に基づいて、複数の送電電極3のうちの一部の送電電極3のみから給電を行うことで、他の送電電極3からは給電を行う必要がない。これにより、走行路2全体での送電電極3への供給電力と、通電していない送電電極3からの電磁界の放射を抑えることができる。したがって、移動中の車両100へのワイヤレス給電を効率良く行い、送電電極3への供給電力を抑えることが可能となる。
【0063】
また、複数の送電電極3は、走行路2の延伸方向Daに沿って複数のセクタ3Sに区分され、給電制御装置6は、車両100が位置するセクタ3Sを含む一以上のセクタ3Sのみにおいて、送電電極3から車両100への給電を行う。
このような構成によれば、車両100の延伸方向Daに沿って間隔をあけて配置された複数の送電電極3を、複数のセクタ3Sに区分することによって、セクタ3S毎に、送電電極3から車両100への給電制御を行うことができる。また、各セクタ3Sに、走行路2の延伸方向Daで互いに隣り合う複数の送電電極3を含むことによって、走行路2に沿って配置された多数の送電電極3を、より少ない給電制御装置6で制御することができる。
【0064】
また、給電制御装置6は、車両100を検知したセンサ4に関連付けられたセクタ3Sと、このセクタ3Sに対して車両100の走行方向前方で隣接する一以上の他のセクタ3Sとで、車両100への給電を行う。
このような構成によれば車両100が位置するセクタ3Sと、車両100の走行方向前方に隣接する一以上のセクタ3Sのみで給電を行う。つまり、車両100の走行方向前方において、給電を行う一以上のセクタ3Sよりも、さらに走行方向前方に位置する他のセクタ3Sでは給電を行わない。また。車両100の走行方向後方のセクタ3Sでは、給電を行わない。このようにして、走行路2全体での送電電極3への供給電力を抑えることができる。
【0065】
また、センサ4、及び給電制御装置6は、それぞれのセクタ3Sに配置されている。
このような構成によれば、センサ4から車両100や給電制御装置6への信号伝播経路を短く抑えることができる。これにより、信号伝播の遅延による、各セクタ3Sでの給電制御の遅れを抑えることができる。したがって、走行路2を車両100が高速で走行する場合であっても、車両100の移動に合わせて給電を行うセクタ3Sを走行方向前方へと順次、高速で移行させることができる。
【0066】
また、センサ4が、車両100を検知した場合、そのセンサ4を識別する識別情報を含むセンサ信号M2を車両100に送信する。給電制御装置6は、センサ信号M2を受信した車両100から、送電電極3からの給電を要求する給電要求信号M3を受信した場合に、送電電極3に通電し、送電電極3から車両100に給電を行う。
このような構成によれば、車両100側では、センサ4から送信されたセンサ信号M2を受信することによって、センサ信号M2に含まれる識別情報に基づいて、車両100を検知したセンサ4を認識(特定)することができる。これにより、車両100に対する給電が行われた送電電極3を特定することができる。したがって、例えば、車両100への送電電極3への供給電力に応じた課金を行う場合等に、給電が行われた送電電極3(の数)に基づいた課金を行うことができる。
また、給電制御装置6は、センサ信号M2を受信した車両100から給電要求信号M3を受信した場合に、車両100への給電を行うことで、車両100からの受電要求に応じた給電を行うことができる。つまり、センサ4から車輪に対して送信されたセンサ信号M2に対し、車両100側から給電要求信号M3による応答がない場合には、車両100に対する給電を行わないようにすることができる。これにより、例えば、ワイヤレス給電によって供給される電力によって走行しない車両100に対しては、給電を行わないようにすることができる。
【0067】
また、センサ4は、車両100を検知する検知範囲が、センサ4から1m以内となる近距離用非接触式センサである。
このような構成によれば、センサ4から1m以内を通過した車両100のみを、センサ4で検知する。これにより、例えば、走行路2において、センサ4が設けられた車線に隣接する他の車線を走行する車両100を、センサ4で誤検知するのを抑えることができる。
【0068】
また、本実施形態の車両100へのワイヤレス給電方法は、センサ4が、走行路2を走行する車両100を検知した場合に、車両100を検知したことを示す車両検知信号M1を送信することと、センサ4からの車両検知信号M1を受信することと、受信した車両検知信号M1に基づき、走行路2の延伸方向Daに間隔をあけて配置された複数の送電電極3のうち、車両検知信号M1を送信したセンサ4に関連付けられた一部の送電電極3のみから、車両100に非接触で給電させることと、を含む。
このような構成によれば、センサ4で検知される車両100の位置に基づいて、複数の送電電極3のうちの一部の送電電極3のみから給電を行うことで、他の送電電極3からは給電を行う必要がない。したがって、移動中の車両100へのワイヤレス給電を効率良く行い、送電電極3への供給電力を抑えることが可能となる。
【0069】
(実施形態の変形例)
なお、本発明の車両用ワイヤレス給電システム、車両へのワイヤレス給電方法は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
【0070】
例えば、上記実施形態では、車両100の受電電極104を、車両100の幅方向Dw両側に設けられた車輪107の上方にそれぞれ配置するようにしたが、これに限らない。
例えば、
図9に示すように、受電電極104A、104Bを、車両100の車体の底部等に配置してもよい。受電電極104A、104Bは、車両100が走行路2を走行したときに、送電電極3(第一送電電極3A、第二送電電極3B)の上方に、上下方向に間隔を空けて対向するように配置される。これにより、車体側に配設された受電電極104A、104Bと、路面側に敷設された送電電極3との間に静電容量が形成される。この静電容量を介して、走行路2に敷設された送電電極3から、車両100側に配設された受電電極104に高周波電力が伝送される。
【0071】
また、上記実施形態では、センサ本体41として、レーザ光を用いた光学センサを示したが、センサ本体41としては、例えば、微弱なGPS、ビーコン等、他の近距離用非接触式センサを用いることができる。
例えば、センサ本体41として、微弱なGPSを用いる場合、センサ本体41では、GPS信号(擬似GPS信号)を発信する。車両100側のカーナビゲーションシステムでは、センサ本体41から発信されたGPS信号を、GPS信号受信機で受信する。車両100側では、受信したGPS信号に基づいて、車両100の位置を特定することができる。
また、センサ本体41として、近距離用非接触式センサであるビーコンを用いる場合、ビーコンからは、所定周波数の電波と、上記識別情報としてのビーコンIDとを発信する。車両100側にはビーコン受信機を備え、ビーコン受信機では、ビーコンIDとビーコンの電波とを受信する。ビーコン受信機では、受信したビーコンの電波強度を検知する。車両100側では、検知されたビーコンの電波強度に閾値を設定しておくことで、車両100側でビーコン(センサ本体41)検知する範囲が限定される。車両100側で検知されるビーコンの電波強度が閾値以上であった場合に、ビーコンの信号を受信したとして処理する。ビーコンIDは、埋設したビーコン送信機の位置(緯度経度)の情報と紐づけられており、ビーコンIDの情報を受信機が受信することで車両100の位置が特定される。
【0072】
また、上記実施形態では、車両100をセンサ4で検知したときに、センサ4からセンサ信号M2を車両100に送信するようにしたが、これに限らない。車両100に対するセンサ信号M2の送信は、例えば、給電制御装置6から行うようにしてもよい。
また、上記実施形態では、センサ4からセンサ本体41の識別情報を車両100側に送信するようにしたが、これに限らない。車両100側から個別の識別情報(ID情報)を含んだ電波を発信し、センサ4、あるいは他に設けた走行路2側の受信機で、車両100の識別情報を受信するようにしてもよい。
また、上記実施形態で示した、センサ4、車両100、給電制御装置6における処理の詳細条件、処理順序等は、適宜変更可能である。
【0073】
また、上記実施形態において、給電対象となる車両100は、電気自動車に限らず、例えば、AGV、新都市交通システム用の車両、物品搬送用のロボット等であってもよい。また、走行路2も、道路に限らず、AGV用の走路、新都市交通システム用の軌道、ロボットの軌道等であってもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 車両用ワイヤレス給電システム
2 走行路
3 送電電極
3S、3SA、3SB、3SC セクタ
4 センサ
6 給電制御装置
100 車両
Da 延伸方向
Dr 走行方向
M1 車両検知信号
M2 センサ信号
M3 給電要求信号