(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】魚釣用電動リール
(51)【国際特許分類】
A01K 89/017 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
A01K89/017
(21)【出願番号】P 2020126757
(22)【出願日】2020-07-27
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】森 成秀
(72)【発明者】
【氏名】原口 仁志
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-176113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/017
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能なスプールを有するリール本体と、
前記リール本体に設けられたモータ収容筒内に配置され、前記スプールを回転駆動するモータと、
前記モータ収容筒を
、前記モータにおけるモータ軸線方向に沿う一方側から塞ぐように前記リール本体に組み合わされ、前記リール本体に対して前記モータを固定するモータホルダと、を備え、
前記リール本体は、
前記モータ収容筒が設けられると共に、前記モータ収容筒の開口部が形成された側壁フレームを有する本体フレームと、
前記側壁フレームを覆うように前記本体フレームに組み合わされるサイドカバーと、を備え、
前記側壁フレームには、前記モータ軸線方向に沿う前記一方側に開口すると共に、前記モータホルダ側に開口した係合凹部が形成され、
前記モータホルダは、
前記モータ収容筒の開口部を塞ぐ蓋体と、
前記蓋体から前記モータ収容筒の径方向の外側に向かって突出するように形成され、
前記係合凹部に対して、
前記モータ軸線方向に沿う一方側から嵌め込まれることで、前記モータ収容筒の周方向に係合
される係合
突片と、を備え、
前記モータホルダは、前記側壁フレームと前記サイドカバーとの間で挟まれることで、
前記モータ軸線方向への移動が規制されていることを特徴とする魚釣用電動リール。
【請求項2】
請求項1に記載の魚釣用電動リールにおいて、
前記
係合凹部は、前記周方向に間隔をあけて複数形成され、
前記係合
突片は、少なくとも一つの前記
係合凹部に対して前記周方向に係合している、魚釣用電動リール。
【請求項3】
請求項2に記載の魚釣用電動リールにおいて、
前記係合
突片は、複数の前記
係合凹部に対応して、前記周方向に間隔をあけて複数形成され、複数の前記
係合凹部のそれぞれに対して前記周方向に係合している、魚釣用電動リール。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の魚釣用電動リールにおいて
、
前記サイドカバーには、前記側壁フレームとの間で前記係合
突片の少なくとも一つの前記モータ軸線方向への移動を規制する規制部材が設けられている、魚釣用電動リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣用電動リールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚釣用リールの1つとして、モータの回転駆動力によりスプールを回転させて釣糸の巻き取りを行うことができる魚釣用電動リール(以下、単に電動リールと称する場合がある)が知られている。一般的に、この種の電動リールは、スプールの内部空間内にモータを配置したタイプと、スプールよりも前方側(釣糸の繰出方向側)にモータを配置したタイプとに大別される場合が多い。
【0003】
いずれのタイプであっても、モータはリール本体に形成されたモータ収容部内に収容されると共に、モータ収容部の開口部を閉塞する蓋状のモータホルダによってモータ収容部内に収まった状態で保持される。この際、モータホルダは、モータからのスラスト荷重や、回転トルクに起因するラジアル荷重を受け易いので、リール本体に対して強固に固定することが必要とされている。従来では、ネジやボルト等の締結部材を利用して、リール本体に対してモータホルダをネジ結合している場合が多い(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、モータホルダをリール本体に対してネジ結合する場合には、例えばモータホルダ側にネジ挿通孔が形成されたフランジ片を設ける必要があると共に、リール本体側にフランジ片が組み合わされ、且つネジ孔が形成されたネジ受け部を設ける必要がある。特に、フランジ片及びネジ受け部を、モータ収容部の開口部よりも径方向の外側に位置するように設ける必要があるので、モータホルダ自体のサイズが大型化し易いうえ、それに対応してリール本体のサイズも大型化し易い。特に、モータをスプールよりも前方側に配置する場合には、モータホルダ等のサイズが大型化し易い傾向にある。
【0006】
このようなことから、電動リールのさらなる小型化を図り難く、改善の余地があった。さらに、リール本体にモータホルダを固定するために、ネジやボルト等の締結部材が必要となるので、部品点数が増えてしまい、低コスト化及びメンテナンス性の向上化を図り難かった。
【0007】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、小型化及び部品点数の低減化を図ることができる魚釣用電動リールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る魚釣用電動リールは、回転可能なスプールを有するリール本体と、前記リール本体に設けられたモータ収容筒内に配置され、前記スプールを回転駆動するモータと、前記モータ収容筒を塞ぐように前記リール本体に組み合わされ、前記リール本体に対して前記モータを固定するモータホルダと、を備え、前記リール本体は、前記モータ収容筒が設けられると共に、前記モータ収容筒の開口部が形成された側壁フレームを有する本体フレームと、前記側壁フレームを覆うように前記本体フレームに組み合わされるサイドカバーと、を備え、前記モータホルダは、前記モータ収容筒の開口部を塞ぐ蓋体と、前記蓋体から前記モータ収容筒の径方向の外側に向かって突出するように形成され、前記側壁フレーム又は前記サイドカバーに形成された被係合部に対して、前記モータ収容筒の周方向に係合可能な係合部と、を備え、前記モータホルダは、前記側壁フレームと前記サイドカバーとの間で挟まれることで、前記モータにおけるモータ軸線方向への移動が規制されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る魚釣用電動リールによれば、組み立て時、蓋体によってモータ収容筒の開口部を塞ぐようにモータホルダを側壁フレームに組み合わせた後、側壁フレームを覆うようにサイドカバーを本体フレームに組み合わせる。これにより、側壁フレームとサイドカバーとの間でモータホルダを挟み込むことができ、モータ軸線方向への移動を規制することができる。つまり、側壁フレームとサイドカバーとの間でモータホルダを挟み込むことで、モータ軸線方向へのモータホルダの移動を規制しつつ、モータ収容筒の開口部をモータホルダで塞ぐことができる。
これにより、モータ収容筒内に配置されたモータの駆動時、該駆動に起因するスラスト荷重がモータからモータホルダに伝わったとして、モータ軸線方向へのモータホルダの移動が規制されているので、スラスト荷重を受け止めることができる。
【0010】
さらにモータホルダは、側壁フレームとサイドカバーとの間に単に挟まれているだけでなく、モータ収容筒の径方向の外側において、側壁フレーム又はサイドカバーに形成された被係合部に対して、係合部がモータ収容筒の周方向に係合している。そのため、モータホルダは、周方向への移動、すなわちモータ軸線回りを回転するような移動が抑制されている。これにより、モータの駆動時、回転トルクに起因するモータ軸線回りのラジアル荷重がモータからモータホルダに伝わったとしても、ラジアル荷重を受け止めることができる。
【0011】
以上のことから、モータホルダを利用して、モータからのスラスト荷重及びラジアル荷重をそれぞれ適切に受け止めながらモータ収容筒の開口部を塞ぐことができるので、モータ収容筒内に配置されたモータを安定的に固定することが可能となる。
特に、リール本体に対してモータホルダを組み合わせるにあたって、ネジやボルト等の締結部材を用いる必要がないので、これら締結に必要な多数の部品を省略することができる。従って、部品点数を低減することができ、魚釣用電動リール全体の低コスト化及びメンテナンス性の向上化に繋げることができる。さらに、締結部材を設けるためのスペースや、締結を行うためのフランジ片等の部材を設ける必要がないので、モータホルダをコンパクトに設計し易く、魚釣用電動リール全体の小型化に繋げることができる。
【0012】
(2)前記被係合部は、前記周方向に間隔をあけて複数形成され、前記係合部は、少なくとも一つの前記被係合部に対して前記周方向に係合しても良い。
【0013】
この場合には、被係合部が複数形成されているので、モータホルダを側壁フレームに対して組み合わせる際に、例えば組立状況等に応じて選択した被係合部に対して係合部が係合するような組み立てを行える。従って、組み立て易くなり、組み立て効率の向上化を図ることができる。
【0014】
(3)前記係合部は、複数の前記被係合部に対応して、前記周方向に間隔をあけて複数形成され、複数の前記被係合部のそれぞれに対して前記周方向に係合しても良い。
【0015】
この場合には、被係合部と係合部とを複数個所で係合させながらモータホルダを組み合わせることができるので、モータからモータホルダに伝わったラジアル荷重を複数個所で受け止めることができる。そのため、モータホルダの姿勢をより安定させることができ、モータをより安定的に固定することができる。さらに、複数個所でラジアル荷重を受け止めるので、被係合部と係合部との1箇所あたりの係合部分にかかる荷重負担を低減することができる。そのため、モータホルダを長期に亘って安定に組み合わせることが可能となり、製品信頼性の向上化に繋げることができる。
【0016】
(4)前記被係合部は、前記側壁フレームに形成され、前記サイドカバーには、前記側壁フレームとの間で前記係合部の少なくとも一つの前記モータ軸線方向への移動を規制する規制部材が設けられても良い。
【0017】
この場合には、モータホルダを側壁フレームに組み合わせたときに、側壁フレームに形成された被係合部に対して係合部を周方向に係合させることができる。これにより、モータ軸線回りに回転するような移動を抑制した状態でモータホルダを組み合わせることができる。特に、本体フレームを構成する側壁フレームに被係合部が形成されているので、モータからモータホルダに伝わってきたラジアル荷重を、高い剛性を有する本体フレームに受け流すことが可能となり、モータホルダの姿勢をより安定化させ易い。
さらに、側壁フレームを覆うようにサイドカバーを本体フレームに組み合わせることで、側壁フレームとサイドカバーとの間でモータホルダを挟みつつ、規制部材を利用して係合部自体のモータ軸線方向への移動を規制することができる。従って、係合部を介して、モータホルダに伝わったスラスト荷重及びラジアル荷重を同時に効率良く受け止めることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、小型化及び部品点数の低減化を図ることができる魚釣用電動リールとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態を示す図であって、電動リール(魚釣用電動リール)の斜視図である。
【
図2】
図1に示す電動リールを別の視点から見た斜視図である。
【
図3】
図1に示す電動リールをさらに別の視点から見た斜視図である。
【
図4】
図1に示す電動リールを左側から見た側面図である。
【
図5】
図4に示す電動リールから第1サイドカバーを取り外した状態を示す側面図である。
【
図6】
図5に示すモータホルダ周辺を、前カバーを取り外した状態において前方側から見た斜視図である。
【
図7】
図6に示す矢印A-A線に沿ったモータ収容筒、モータ及びモータホルダの断面図である。
【
図8】
図6に示す状態から、モータ及びモータホルダを取り外した後のモータ収容筒の斜視図である。
【
図9】
図6に示す状態から、モータホルダを取り外した後のモータ及びモータ収容筒の斜視図である。
【
図10】
図4に示す第1サイドカバーの斜視図である。
【
図12】
図11に示すモータホルダを別の視点から見た斜視図である。
【
図13】
図4に示す状態において、第1サイドカバーとモータホルダとの関係を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る魚釣用電動リールの実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態では、魚釣用電動リールとして、両軸受リールを例に挙げて説明する。
【0021】
図1~
図4に示すように、本実施形態の電動リール(本発明に係る魚釣用電動リール)1は、図示しない釣竿に装着可能なリール本体2と、リール本体2に対してハンドル軸線O1回りに回転可能に取り付けられたハンドル3と、リール本体2に対してハンドル軸線O1と平行なスプール軸線O2回りに回転可能とされ、且つ図示しない釣糸が巻かれるスプール4と、クラッチ操作レバー5を有するクラッチ機構6と、を主に備えている。
【0022】
さらに本実施形態の電動リール1は、
図5~
図7に示すように、リール本体2に設けられたモータ収容筒7内に配置され、スプール4を回転駆動するモータ8と、モータ収容筒7を塞ぐようにリール本体2に組み合わされ、リール本体2に対してモータ8を固定するモータホルダ9と、を備えている。
【0023】
本実施形態では、ハンドル軸線O1及びスプール軸線O2は互いに平行に配置され、これらの軸線に沿った方向を左右方向L1として定義する。さらに左右方向L1に直交し、且つスプール4に巻かれた釣糸が繰り出される方向に沿った方向を前後方向L2として定義する。
さらに、前後方向L2においてスプール4から釣糸が繰り出される方向を前方、その反対方向を後方として定義すると共に、電動リール1を後方側(釣り人側)から見た視点で左右を定義する。従って、例えば
図1は電動リール1を斜め上、左後方から見た斜視図である。
【0024】
(リール本体)
図1~
図4に示すように、リール本体2は、本体フレーム10と、本体フレーム10の左右両側を覆うサイドカバー20と、本体フレーム10の前部側を覆う前カバー30とを備えている。
【0025】
本体フレーム10は、例えば合成樹脂或いは金属製(例えばアルミニウムダイキャスト製)の成形部品とされている。本体フレーム10は、スプール4を挟んで左右方向L1に向かい合うように配置された第1側壁11及び第2側壁12と、第1側壁11及び第2側壁12同士を左右方向L1に連結する連結部材13と、を備えている。
【0026】
第1側壁(本発明に係る側壁フレーム)11は、スプール4に対して左側(LH)に配置された左側壁とされている。これに対して第2側壁12は、スプール4に対して右側(RH)に配置された右側壁とされている。なお、ハンドル3は、第2側壁12よりもさらに右側(RH)に配置され、第2側壁12を利用して本体フレーム10に取り付けられている。
従って、本実施形態の電動リール1は、右側ハンドルタイプのリールとされている。なお、第2側壁12は、後述するコネクタ部23等が設けられる関係上、第1側壁11よりも下方に向けて突出するように形成されている。
【0027】
連結部材13は、第1側壁11及び第2側壁12同士を左右方向L1に連結する板状に形成され、第1側壁11の下部付近に配置されている。これにより、第1側壁11及び第2側壁12は、連結部材13を介して強固に連結されている。
なお、連結部材13における左右方向L1の中央部分には、電動リール1を釣竿に装着するための装着脚片14が前後方向L2に沿って延びるように形成されている。
【0028】
上述のように構成された本体フレーム10において、第1側壁11と第2側壁12との間には、モータ8を内部に収容するモータ収容筒7、スプール4及びクラッチ操作レバー5等が少なくとも配置されている。
【0029】
スプール4は、ハンドル軸線O1よりも後方側に位置するように第1側壁11と第2側壁12との間に配置されている。モータ収容筒7は、ハンドル軸線O1よりも前方側に位置するように第1側壁11と第2側壁12との間に配置されている。そのため、本実施形態の電動リール1は、モータ8がスプール4よりも前方側に配置された、いわゆるスプールアウトモータタイプとされている。
なお、モータ収容筒7は、第1側壁11に開口部62が形成されるように第1側壁11と第2側壁12との間に配置されている。
【0030】
サイドカバー20は、モータ収容筒7の開口部が形成された第1側壁11を左側(LH)から覆うように本体フレーム10に組み合わされた第1サイドカバー(本発明に係るサイドカバー)21と、第2側壁12を右側(RH)から覆うように本体フレーム10に組み合わされた第2サイドカバー22と、を備えている。
【0031】
第1サイドカバー21は、左側(LH)に向けて膨らむように形成され、第1側壁11に対して例えばネジ止めされている。これにより、第1サイドカバー21と第1側壁11との間には、所定の収容空間が形成されている。なお、第1サイドカバー21については、後に詳細に説明する。
【0032】
第2サイドカバー22は、右側(RH)に向けて膨らむように形成され、第2側壁12に対して例えばネジ止めされている。これにより、第2サイドカバー22と第2側壁12との間には、所定の収容空間が形成されている。
第2サイドカバー22のうち、前方下部に位置する部分には、外部電源からの電力を供給するための電源リールコード、或いは携帯用バッテリーを接続するためのコネクタ部23が図示しない接続端を下向きにした状態で装着されている。なお各図面では、保護キャップ24によって接続端が保護されている状態を図示している。
【0033】
前カバー30は、本体フレーム10の前部を前方から覆うように本体フレーム10に組み合わされている。具体的には、前カバー30は、モータ収容筒7を前方から覆うように第1側壁11及び第2側壁12の前部に組み合わされると共に、第1側壁11及び第2側壁12に対して例えばネジ止めされている。なお、前カバー30は、後述するレベルワインド55の移動領域を塞がないように取り付けられている。
【0034】
(カウンターケース)
上述のように構成された本体フレーム10の上部には、カウンターケース40が設けられている。カウンターケース40は、第1側壁11と第2側壁12との間に配置された状態で、第1側壁11の上部及び第2側壁12の上部に例えばネジ止め等によって固定されている。
【0035】
カウンターケース40は、左右方向L1よりも前後方向L2に長い薄型のケース本体41と、ケース本体41に設けられた表示部42と、ケース本体41内に設けられた図示しないモータ制御部と、を主に備えている。
表示部42は、例えば液晶ディスプレイ等で構成され、ケース本体41の上面にガラスカバー等によって保護された状態で露出している。モータ制御部は、例えばCPU等が搭載されたマイクロコンピュータで構成され、モータ8の制御を行うと共に、表示部42に各種の情報を表示させる表示制御等を行っている。
【0036】
モータ制御部には、例えばケース本体41の上面に設けられた複数(図示の例では3つ)の操作ボタン43からの制御信号、ケース本体41の上面に設けられた操作スイッチ44からの制御信号、さらには図示しないスプールセンサ(例えばスプール4の回転速度や回転方向等を検出するセンサ)からの制御信号等が入力される。
【0037】
これにより、モータ制御部は、各種の制御信号に基づいて、例えば仕掛けの投入時間、仕掛けの水深、モータ8の巻上速度或いは巻上トルク等の各種情報を表示部42に表示させることや、操作スイッチ44の操作に応じてモータ8の回転を制御して、巻上速度或いは巻上加速度等を任意に調整することが可能とされている。
そのため釣り人は、ハンドル操作による手巻き操作、及び操作スイッチ44を利用した自動巻操作を行うことが可能とされている。
【0038】
(ハンドル)
ハンドル3は、本体フレーム10及び第1サイドカバー21よりも右側(RH)に配置されている。ハンドル3は、ハンドル軸線O1回りに回転可能に配置されたハンドル軸部50と、ハンドル軸部50に回転不能に装着されたハンドルアーム51と、ハンドルアーム51の端部にハンドル軸線O1と平行な軸線回りに回転可能に装着されたハンドルノブ52と、を備えている。
ハンドルアーム51と第1サイドカバー21との間には、ハンドル軸線O1と同軸に配置されたドラグ53(スタードラグ)が設けられている。このドラグ53は、釣糸の巻取り時、スプール4に対して任意のドラグ力を付与することでスプール4の回転制動を行い、釣糸の切断抑制に寄与する働きをしている。
【0039】
このように構成されたハンドル3からの回転トルクは、クラッチ機構6がクラッチオンされた状態において、図示しない回転伝達機構を介してスプール4に直接伝達される。
なお、本実施形態では、ハンドルアーム51の一端部にハンドルノブ52が装着された、いわゆるシングルハンドルタイプを例に挙げて説明しているが、この場合に限定されるものではない。例えば、ハンドルアーム51の両端部にハンドルノブ52を装着し、且つハンドルアーム51の中央部をハンドル軸部50に回転不能に装着した、いわゆるダブルハンドルタイプの電動リール1としても構わない。
【0040】
(スプール)
スプール4は、フレーム本体における第1側壁11と第2側壁12との間に配置されていると共に、第1側壁11及び第2側壁12のそれぞれに図示しない軸受を介してスプール軸線O2回りに回転可能に支持されている。
スプール4は、スプール軸線O2回りに回転する図示しないスプール回転軸部と、スプール回転軸部と同軸に配置されると共に、スプール回転軸部と連動して回転する糸巻胴部4aとを備えている。
【0041】
(クラッチ機構)
クラッチ機構6は、クラッチ操作レバー5の操作によって、ハンドル3からの回転トルクを図示しない回転伝達機構を介してスプール4に伝達可能なクラッチオン状態と、伝達不能なクラッチオフ状態とに切換可能とされている。従って、クラッチオン状態において、ハンドル3を回転操作することで、ハンドル3の回転操作に伴う回転トルクをスプール4に伝達することができ、スプール4をスプール軸線O2回りに回転させることが可能とされている。これにより、手巻き操作が可能となる。
なお、クラッチ機構6がクラッチオフ状態である場合には、ハンドル3の回転操作に伴う回転トルクがスプール4に伝達されず、該スプール4は自由回転可能な状態(スプールフリーな状態)となる。
【0042】
クラッチ操作レバー5は、クラッチ機構6をクラッチオン状態とクラッチオフ状態とに切り換え操作するための切換レバーである。クラッチ操作レバー5は、スプール4よりも後方において、第1側壁11と第2側壁12との間に配置されていると共に、スプール軸線O2回りに揺動するように上下に移動可能とされている。
【0043】
なお、回転伝達機構は、ハンドル3の回転を増速した状態で回転トルクをスプール4に伝達するように構成されている。さらに回転伝達機構は、クラッチ機構6がクラッチオン状態にある場合、ハンドル3の回転操作に伴う回転トルクをスプール4に伝達するだけでなく、レベルワインド55を有するレベルワインド機構(不図示)にも伝達するように構成されている。
なお、レベルワインド55は、モータ収容筒7とカウンターケース40との間に配置され、第1側壁11と第2側壁12との間でスプール4の回転に伴って左右方向L1に往復移動可能とされている(
図3参照)。これにより、釣糸をスプール4に偏りなく均等に巻き取ることが可能とされている。
【0044】
さらに回転伝達機構は、クラッチ機構6がクラッチオン状態にある場合においてモータ8が駆動した時に、該モータ8の駆動に伴う回転トルクをスプール4に伝達することが可能とされている。これにより、自動巻操作が可能となる。なお、回転伝達機構は、モータ8の回転を減速した状態で回転トルクをスプール4に伝達する。
【0045】
(モータ収容筒)
図3に示すように、モータ収容筒7は、ハンドル軸線O1よりも前方側において第1側壁11と第2側壁12との間に配置され、左右方向L1に延びるモータ軸線O3と同軸に配置された有頂筒状に形成されている。
具体的にモータ収容筒7は、
図5~
図8に示すように、モータ軸線O3を中心とした円筒状に形成された収容筒本体60と、収容筒本体60の右側開口部62を閉塞する底壁61とを有する有底筒状に形成されている。これにより、モータ収容筒7は、第1側壁11に開口部62を有し、左側(LH)に開口している。
【0046】
なお、図示の例では、収容筒本体60と底壁61とを一体的に形成しているが、この場合に限定されるものではない。例えば収容筒本体60と底壁61とを別体に形成し、ネジ結合、螺合或いは嵌合等によって収容筒本体60と底壁61とを一体に組み合わせても構わない。
なお、本実施形態では、モータ軸線O3方向から見て、モータ軸線O3に交差する方向を径方向といい、モータ軸線O3回りを周回する方向を周方向という。
【0047】
図3に示すように、収容筒本体60は、レベルワインド55の下方に配置されるように、第1側壁11の前部と第2側壁12の前部との間に位置するように設けられている。そのため、モータ収容筒7は、前方に向けて露出するように配置されている。ただし、モータ収容筒7は、部分的に前カバー30によって前方側から保護されている。
図5~
図8に示すように、収容筒本体60のうち開口部62側に位置する部分には、他の部分よりも直径が大きい拡径筒63が形成されている。そのためモータ収容筒7は、拡径筒63を介して第1側壁11に一体に形成されている。また、底壁61の中央部分には、右側(RH)に向けて突出した円筒状のボス部64が形成されている。
【0048】
ここで、本体フレーム10を構成する第1側壁11について、詳細に説明する。
図5に示すように、第1側壁11は、本体フレーム10の左側壁として機能し、通常時、第1サイドカバー21に覆われている。第1側壁11は、上下方向よりも前後方向L2に長く形成され、先に述べたように、前部側にはモータ収容筒7が一体に形成されており、本体フレーム10における前部側下方の輪郭はモータ収容筒7と同心円状に形成されている。第1側壁11の後部側は、後方に向けて膨らむ側面視半円形状に形成されている。
【0049】
第1側壁11の上方には、先に述べたようにカウンターケース40が配置されている。カウンターケース40は、第1側壁11に対しては、固定ネジ70によって第1側壁11の上部側にネジ止めされている。図示の例では、カウンターケース40は、前後方向L2に間隔をあけて配置された2本の固定ネジ70によって固定されている。
第1側壁11のうち、モータ収容筒7よりも後方に位置する部分には、電動リール1を構成する各種の構成部品(例えば軸受、歯車、受け部材等)が配置されている。さらに第1連結壁の外周縁部には、左側(LH)に向けて突出する縁部71が外周縁部に沿って延びるように連続的に形成されている。
【0050】
さらに第1側壁11には、第1サイドカバー21を取り付けるための連結ネジ72、ネジ孔73及び受け筒部74が形成されている。
図5及び
図6に示すように、連結ネジ72は、第1側壁11の上部側において、カウンターケース40を取り付けている2本の固定ネジ70を間に挟んで前後方向L2に離れるように2つ形成されている。これらの連結ネジ72は、収容筒本体60側から取り付けられていることで、左側(LH)に向けて突出している。なお、連結ネジ72の数は2本に限定されるものではなく、適宜変更して構わない。
ネジ孔73は、第1側壁11の下部側において前後方向L2の中央部分に位置するように形成されている。受け筒部74は、内部が空洞で且つ左側(LH)に向けて開口した筒部材であって、第1側壁11のうちネジ孔73よりも前方に位置する部分に形成されている。
【0051】
(モータ)
図7及び
図9に示すように、モータ8は、モータ軸線O3回りに回転するモータ出力軸80、及びモータ出力軸80を回転駆動するモータ本体81を備え、モータ収容筒7内に収容されている。
【0052】
モータ出力軸80は、モータ本体81をモータ軸線O3方向に貫通するように、モータ軸線O3と同軸に配置されている。この際、モータ出力軸80は、第1側壁11よりも左側(LH)に突出し、且つボス部64よりも右側(RH)に突出するように形成されている。なお、各図面ではモータ出力軸80の図示を簡略化して図示している。
【0053】
モータ出力軸80は、例えばボス部64の内側に装着された軸受83を含む複数の軸受等によって安定的に軸支されている。なお、ボス部64の内側には、軸受83よりも右側(RH)に隣接する部分に環状のモータ用防水シール84が装着されている。モータ用防水シール84は、内周縁部がモータ出力軸80の外周面の全周に亘って摺接している。これにより、モータ収容筒7内に水或いは埃等が入り込むことを規制している。
【0054】
モータ出力軸80の左端部には、第1側壁11よりも外側(左側(LH))において、例えばセレーション(鋸歯状の溝部)85が形成されている。セレーション85には、後述するモータホルダ9に装着されたワンウェイクラッチ86が結合されている。これにより、モータ出力軸80は、釣糸が繰り出される方向への回転(逆転)が規制されている。そのため、モータ8は、釣糸の巻取りを行う一方向への回転のみが許容されている。なお、ワンウェイクラッチ86の装着位置は、モータホルダ9に限定されるものではなく、適宜変更して構わない。
【0055】
モータ本体81は、左側(LH)に開口した有底筒状のケース本体81a、及びケース本体81aの左側開口部を塞ぐエンドキャップ81bを備えている。エンドキャップ81bには、モータ本体81とカウンターケース40内に配置されたモータ制御部とを接続する接続ケーブル87が例えば周方向に間隔をあけて挿通されている。図示の例では、2本の接続ケーブル87が周方向に等間隔をあけて配置(具体的にはモータ軸線O3を挟んで径方向に向かい合うように配置)されている。
【0056】
さらにモータ本体81は、例えばコイルを有し、モータ出力軸80に固定された回転子と、永久磁石を有し、回転子を径方向の外側から囲むようにケース本体81a内に配置された固定子と、整流子とブラシとを主に備えている。
【0057】
上述のように構成されたモータ8は、接続ケーブル87を通じてモータ制御部に電気的に接続され(
図5参照)、モータ制御部によって駆動が制御されている。
なお、モータ収容筒7における底壁61よりも右側(RH)に位置する空間には、例えばモータ出力軸80の回転トルクを減速させてスプール4に伝える図示しない減速機構等が設けられている。なお、モータ8の構成は適宜変更して良く、例えばブラシレスモータ等を採用することも可能である。
【0058】
(第1サイドカバー)
第1サイドカバー21について、詳細に説明する。
図1~
図4及び
図10に示すように、第1サイドカバー21は、第1側壁11の形状に対応して上下方向よりも前後方向L2に長く形成され、第1側壁11を左側(LH)から覆うカバー部材である。より具体的には、第1サイドカバー21は、第1側壁11だけでなく、モータ収容筒7を塞ぐように取り付けられたモータホルダ9、前カバー30、及びカウンターケース40の一部を左側(LH)から覆うように本体フレーム10に組み合わされる。
【0059】
第1サイドカバー21は、左側(LH)に向けて膨らむように形成されたカバー本体90と、カバー本体90の外周縁部から、外周縁部の全周に亘って右側(第1側壁11側)に向けて折り曲げられた周縁部91と、備えている。
第1サイドカバー21の周縁部91は、第1側壁11における縁部71、前カバー30における側縁部、及びカウンターケース40の側面に対して隙間なく接触することが可能とされている。これにより、第1サイドカバー21の内部に水や埃等が入り込み難い構造とされている。また、第1サイドカバー21の前部側下方の周縁部91は、本体フレーム10に合わせてモータ収容筒7と同心円状に形成されている。
【0060】
さらにカバー本体90には、第1側壁11側に向けてネジ受け筒部92、及び連結ピン93が突出するように形成されていると共に、連結ネジ94を挿通する挿通孔95が形成されている。
ネジ受け筒部92は、第1側壁11に形成された2本の連結ネジ72に対応して2つ設けられ、連結ネジ72に対して左右方向L1に向かい合うように前後方向L2に間隔をあけて配置されている。これらのネジ受け筒部92は、内周に雌ネジ部が形成され、且つ右側(第1側壁11側)に向けて開口した筒部材であって、連結ネジ72を螺着させることが可能とされている。
【0061】
連結ピン93は、第1側壁11に形成された受け筒部74に対して左右方向L1に向かい合うように配置され、右側(RH)に向けて突出するように形成されている。連結ピン93は、例えば円柱状に形成され、第1側壁11に形成された受け筒部74の内部に入り込み可能とされている。挿通孔95は、第1側壁11に形成されたネジ孔73に対して左右方向L1に向かい合うように配置され、カバー本体90を左右方向L1に貫通するように形成されている。
【0062】
上述のように構成された第1サイドカバー21を本体フレーム10に組み合わせる場合には、第1側壁11に形成された受け筒部74内に連結ピン93を挿入させながら、第1側壁11に対して左側(LH)から被せ合わせる。この際、受け筒部74内への連結ピン93の挿入によって、本体フレーム10に対して第1サイドカバー21が適切に組み合わされるように第1サイドカバー21をガイドできるので、容易且つ適切にサイドカバー20を被せ合わせることができる。そして、本体フレーム10に対して第1サイドカバー21を被せ合わせた後、第1サイドカバー21の左側(LH)から挿通孔95を通じてネジ孔73に連結ネジ94を螺着させ、且つ右側(RH)から本体フレーム10を貫通させながら第1サイドカバーのネジ受け筒部92内の雌ネジ部に連結ネジ72を螺着させる。
【0063】
これにより、第1サイドカバー21の周縁部91を、第1側壁11における縁部71、前カバー30における側縁部、及びカウンターケース40の側面に対して隙間なく接触させた状態で、第1サイドカバー21を本体フレーム10にネジ止めすることが可能とされている。
また、第1サイドカバー21の前部側下方の輪郭がモータ収容筒7、つまりモータ8と略同心円状に形成されているので、モータ8等の形状に対応した外形形状となり、余分な成形部分をなくした形状とすることができる。そのため、外観性、デザイン性の向上化を図ることができる。
【0064】
(モータホルダ)
図5~
図7、
図11及び
図12に示すように、モータホルダ9は、モータ収容筒7を塞ぐようにリール本体2における第1側壁11に組み合わされ、リール本体2に対してモータ8を固定する役割を果たしている。
モータホルダ9は、モータ収容筒7の開口部62を塞ぐ有頂筒状の蓋体100と、蓋体100から径方向の外側に向かって突出するように形成され、第1側壁11に形成された係合凹部(本発明に係る被係合部)120に対して周方向に係合可能な係合突片(本発明に係る係合部)101とを備えている。
【0065】
蓋体100は、モータ収容筒7における拡径筒63の内側に嵌合される嵌合筒102と、嵌合筒102の左側開口部を閉塞する閉塞壁103とを備え、モータ軸線O3と同軸に配置されている。さらに閉塞壁103の中央部分には、左側(LH)に向けて突出した有頂筒状の収納筒部104がモータ軸線O3と同軸に配置されるように形成されている。これにより、蓋体100は、閉塞壁103の中央部分が左側(LH)に向けて部分的に膨らんだ有頂筒状に形成されている。
【0066】
嵌合筒102の外周面には、全周に亘って径方向の内側に向けて凹む環状溝105が形成されている。この環状溝105内には、拡径筒63の内周面に対して密に接触するOリング106が取り付けられている(
図7参照)。これにより、Oリング106を利用して、嵌合筒102と拡径筒63との間を適切にシールすることができ、モータ収容筒7内に第1側壁11側から水或いは埃等が入り込むことを抑制している。
【0067】
なお、上記環状溝105は、嵌合筒102の外周面に形成されている必要はなく、例えば拡径筒63の内周面に形成されていても構わない。この場合であっても、Oリング106を利用して、嵌合筒102と拡径筒63との間を適切にシールすることが可能である。
【0068】
なお、嵌合筒102は全体が拡径筒63の内側に配置されるのではなく、その一部は拡径筒63の外側(左側(LH))に配置され、且つ僅かに拡径した大径筒107とされている。閉塞壁103の外周縁部は、この大径筒107に対して連設されている。そして、大径筒107が第1側壁11に対して左側(LH)から接触している。これにより、拡径筒63内に嵌合筒102を適切に嵌め入れることが可能とされている。
【0069】
閉塞壁103には、モータ8とモータ制御部とを接続する接続ケーブル87を挿通させるための貫通孔108が、該閉塞壁103を貫通するように形成されている。図示の例では、貫通孔108は、周方向に等間隔をあけて4つ形成され、そのうち2つの貫通孔108には、エンドキャップ81bを挿通する2本の接続ケーブル87がそれぞれ挿通されている。これにより、モータ8とモータ制御部との間で接続ケーブル87を配線することが可能とされている。
【0070】
なお、残り2つの貫通孔108には、エンドキャップ81bに形成されたネジ孔109a(
図9参照)に螺着するモータ固定ネジ109が取り付けられている。これにより、モータホルダ9にモータ本体81が固定される。
従って、例えばモータホルダ9とモータ本体81とを互いに固定した後に、モータ収容筒7内にモータ本体81を収容することが可能とされている。なお、
図9は、
図6に示す状態から、あえてモータホルダ9を取り外した状態を図示している。
【0071】
収納筒部104の内側には、先に述べたワンウェイクラッチ86が装着されていると共に、モータ出力軸80の左端部が収納されている。
【0072】
係合突片101は、大径筒107の外周面から径方向の外側に向けて突出するように形成されている。本実施形態では、係合突片101は、周方向に等間隔をあけて2つ形成されている。すなわち、係合突片101は、第1係合突片111及び第2係合突片112で構成される。これにより、第1係合突片111及び第2係合突片112は、モータ軸線O3を挟んで径方向に向かい合うように配置されている。
第1係合突片111及び第2係合突片112は、第1側壁11に形成された係合凹部120に対してそれぞれ周方向に係合可能とされている。
【0073】
係合凹部120について説明する。
図6、
図7及び
図9に示すように、第1側壁11における縁部71のうち、モータホルダ9よりも前方に位置する部分には、右側(RH)に向けて凹んだ第1係合凹部121が形成されている。第1係合突片111は、この第1係合凹部121内に左側(LH)から嵌め込まれることで周方向に係合される。
【0074】
また第1側壁11のうち、モータ軸線O3を挟んで第1係合凹部121とは径方向の反対側に位置する部分には、係合プラグ125が固定されている。係合プラグ125は、第1側壁11と一体に形成されていても構わないし、別体に形成され、第1側壁11に対して組み合わされても構わない。
係合プラグ125は、位置決めピン126によって第1側壁11に位置決めされた基端部127と、二股状に形成された係合爪部128とを備えている。そして、係合爪部128の内側が、モータホルダ9側に開口した第2係合凹部122とされている。第2係合突片112は、この第2係合凹部122内に左側(LH)から嵌め込まれることで、周方向に係合される。なお、基端部127には、ネジ孔129が形成されている。
【0075】
上述のように、係合凹部120(すなわち第1係合凹部121、第2係合凹部122)は、周方向に間隔をあけて2つ形成されており、2つの係合突片101(すなわち第1係合突片111、第2係合突片112)が係合凹部120に対してそれぞれ周方向に係合するように構成されている。
【0076】
上述のように構成されたモータホルダ9は、
図13に示すように第1側壁11と第1サイドカバー21との間で挟まれることで、モータ軸線O3方向への移動が規制されるように構成されている。具体的には、第1サイドカバー21には、第1側壁11との間で第1係合突片111を左側(LH)から押さえ付けることで、モータホルダ9のモータ軸線O3への移動を規制する規制突片(本発明に係る規制部材)130が設けられている。
【0077】
図10に示すように、規制突片130は、第1サイドカバー21における周縁部91の内側から第1係合突片111に向けて突出するように形成され、第1サイドカバー21が本体フレーム10に組み合わされたときに(
図13参照)、第1係合突片111を左側(LH)から押さえ付けている。これにより、規制突片130を利用して第1係合凹部121内から第1係合突片111が抜け出ることを防止することができ、モータホルダ9の全体を第1側壁11と第1サイドカバー21との間で挟みこんで、モータ軸線O3方向への移動を規制することが可能となる。
【0078】
さらに本実施形態では、
図5~
図7に示すように、係合プラグ125の基端部127に形成されたネジ孔129に螺着される規制ネジ135を備え、規制ネジ135を利用して第2係合突片112を左側(LH)から押さえ付けている。つまり、係合突片101のうち、規制突片130によってモータ軸線O3方向への移動が規制された係合突片101(第1係合突片111)とは別の係合突片101(第2係合突片112)のモータ軸線O3方向への移動を、規制ネジ135を利用して規制することが可能とされている。
具体的には、規制ネジ135の頭部を利用して、第2係合突片112のモータ軸線O3方向への移動を規制している。
【0079】
(電動リールの作用)
次に、上述のように構成された電動リール1を利用する場合について説明する。
この電動リール1では、外部電源に電気的接続された電源リールコード、或いは携帯用バッテリーをコネクタ部23に電気的に接続する。これにより、モータ8への電力供給を行うことができ、モータ8が駆動可能となる。
【0080】
そして、クラッチ操作レバー5を操作して、クラッチ機構6をクラッチオフ状態にすることで、スプール4を自由回転させることができ、釣糸を繰り出して仕掛けを水中に投入することができる。その後、クラッチ操作レバー5を操作して、クラッチ機構6をクラッチオン状態に切り換え、例えばハンドル3を回転操作することでスプール4を回転させて釣糸の手巻き操作を行うことができる。或いは、操作スイッチ44の操作によってモータ8を駆動させ、スプール4を回転させることで釣糸の自動巻き操作を行うことができる。
これにより、電動リール1を使用して、魚釣りを行える。
【0081】
ところで、本実施形態の電動リール1によれば、組み立て時、蓋体100によってモータ収容筒7の開口部62を塞ぐようにモータホルダ9を第1側壁11に組み合わせた後、
図1~
図4に示すように第1側壁11を覆うように第1サイドカバー21を本体フレーム10に組み合わせる。
これにより、第1側壁11と第1サイドカバー21との間でモータホルダ9を挟み込みつつ、
図13に示すように、規制突片130を利用して第1係合突片111を左側(LH)から押え込むことができ、モータホルダ9のモータ軸線O3方向への移動を規制することができる。これにより、モータ軸線O3方向へのモータホルダ9の移動を規制しつつ、モータ収容筒7の開口部62をモータホルダ9で塞ぐことができる。
【0082】
従って、モータ収容筒7内に配置されたモータ8の駆動時、該駆動に起因するスラスト荷重がモータ8からモータホルダ9に伝わったとして、モータ軸線O3方向へのモータホルダ9の移動が規制されているので、スラスト荷重を受け止めることができる。
【0083】
しかもモータホルダ9は、
図6及び
図7に示すように、第1側壁11に形成された係合凹部120(すなわち第1係合凹部121、第2係合凹部122)に対して、係合突片101(すなわち第1係合突片111、第2係合突片112)が周方向にそれぞれ係合している。そのため、モータホルダ9は、周方向への移動、すなわちモータ軸線O3回りを回転するような移動が抑制されている。これにより、モータ8の駆動時、回転トルクに起因するモータ軸線O3回りのラジアル荷重がモータ8からモータホルダ9に伝わったとしても、ラジアル荷重を受け止めることができる。
【0084】
以上のことから、モータホルダ9を利用して、モータ8からのスラスト荷重及びラジアル荷重をそれぞれ適切に受け止めながらモータ収容筒7の開口部62を塞ぐことができるので、モータ収容筒7内に配置されたモータ8を安定的に固定することが可能となる。
【0085】
特に、リール本体2に対してモータホルダ9を組み合わせるにあたって、ネジやボルト等の締結部材を用いる必要がないので、これら締結に必要な多数の部品を省略することができる。従って、部品点数を低減することができ、電動リール1全体の低コスト化及びメンテナンス性の向上化に繋げることができる。さらに、締結部材を設けるためのスペースや、締結を行うためのフランジ片等の部材を設ける必要がないので、モータホルダ9をコンパクトに設計し易く、電動リール1全体の小型化に繋げることができる。
特にモータ9がリール本体10の前部側下方に配置されている場合は、先に述べたように、第1サイドカバー21の前部側下方の周縁部91がモータ収容筒7と同心円状に形成されているので、余分な成形部分をなくすことができ、外観性、デザイン性を向上するこことができる。
【0086】
従って、本実施形態の電動リール1によれば、小型化及び部品点数の低減化を図ることができ、使い易い電動リール1として使用することができる。
【0087】
さらに、第1係合凹部121と第1係合突片111との係合、及び第2係合凹部122と第2係合突片112との係合によって、モータホルダ9を組み合わせることができるので、モータ8からモータホルダ9に伝わったラジアル荷重を複数個所(2箇所)で受け止めることができる。そのため、モータホルダ9の姿勢をより安定させることができ、モータ8をより安定的に固定することができる。さらに、複数個所(2箇所)でラジアル荷重を受け止めるので、1箇所あたりの係合部分にかかる荷重負担を低減することができる。そのため、モータホルダ9を長期に亘って安定に組み合わせることが可能となり、製品信頼性の向上化に繋げることができる。
【0088】
さらに、モータホルダ9を第1側壁11に組み合わせたときに、第1側壁11に形成された第1係合凹部121及び第2係合凹部122に対して第1係合突片111及び第2係合突片112を周方向に係合させることができる。これにより、モータ軸線O3回りに回転するような移動を抑制した状態でモータホルダ9を組み合わせることができる。
特に、本体フレーム10を構成する第1側壁11に第1係合凹部121及び第2係合凹部122が形成されているので、モータ8からモータホルダ9に伝わってきたラジアル荷重を高い剛性を有する本体フレーム10に受け流すことが可能となり、モータホルダ9の姿勢をより安定化させ易い。
【0089】
さらに、規制突片130を利用して第1係合突片111自体のモータ軸線O3方向への移動を規制することができるので、第1係合突片111を介して、モータホルダ9に伝わったスラスト荷重及びラジアル荷重を同時に効率良く受け止めることが可能となる。
それに加え、規制ネジ135を利用して第2係合突片112自体のモータ軸線O3方向への移動を規制することもできるので、第2係合突片112を介して、モータホルダ9に伝わったスラスト荷重及びラジアル荷重を同時に効率良く受け止めることも可能となる。
【0090】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形例には、例えば当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、均等の範囲のものなどが含まれる。
【0091】
例えば、上記実施形態では、モータ収容筒7がスプール4の前方に配置されたスプールアウトモータタイプを例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではなく、例えばスプール4の内側にモータ収容筒7が設けられたスプールインモータタイプとしても構わない。
【0092】
また、上記実施形態では、右側ハンドルタイプとし、モータ収容筒7が第1側壁11側に開口した場合を例に挙げて説明したが、これとは逆に、左側ハンドルタイプとし、モータ収容筒7が第2側壁12側に開口するように構成しても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏功することができる。
【0093】
また、上記実施形態では、係合凹部120及び係合突片101をそれぞれ2つずつ形成した場合を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではなく、例えば係合凹部120及び係合突片101を1つずつ形成しても構わないし、それぞれ3つ以上形成しても構わない。
さらには、係合凹部120の数と係合突片101の数が同じである必要はなく、例えば係合突片101を1つ形成するのに対して、係合凹部120を2つ以上形成しても構わない。この場合には、モータホルダ9を第1側壁11に対して組み合わせる際に、例えば組立状況等に応じて選択した係合凹部120に対して係合突片101が係合するような組み立てを行える。従って、組み立て易くなり、組み立て効率の向上化に繋げることが可能である。
【0094】
また、上記実施形態では、係合凹部120を第1側壁11に形成した場合を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではなく、第1サイドカバー21側に形成しても構わない。この場合であっても、第1サイドカバー21を本体フレーム10に対して組み合わせたときに、係合凹部120と係合突片101とを周方向に係合させることができるので、同様の作用効果を奏功することができる。
ただし、上記実施形態のように、第1側壁11に係合凹部120を形成することで、第1サイドカバー21を組み合わせる前の段階で、係合凹部120と係合突片101とが適切に周方向に係合していることを把握することができるので、より好ましい。
【0095】
また、上記実施形態では、規制突片130を利用して、モータホルダ9のモータ軸線O3方向への移動を規制したが、この場合に限定されるものではなく、例えば第1サイドカバー21自体でモータホルダ9を第1側壁11との間で挟み込んで、モータホルダ9のモータ軸線O3方向への移動を規制しても構わない。
【符号の説明】
【0096】
O3…モータ軸線
1…電動リール(魚釣用電動リール)
2…リール本体
4…スプール
7…モータ収容筒
8…モータ
9…モータホルダ
10…本体フレーム
11…第1側壁(側壁フレーム)
20…サイドカバー
100…蓋体
101…係合突片(係合部)
120…係合凹部(被係合部)
130…規制突片(規制部材)