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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】フィルタ及びマルチプレクサ
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/145 20060101AFI20240319BHJP
   H03H 9/72 20060101ALI20240319BHJP
   H03H 9/64 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
H03H9/145 Z
H03H9/72
H03H9/64 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020130511
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022026850
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】岩嵜 翔
(72)【発明者】
【氏名】下村 輝
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/064238(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/140831(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/065671(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/003273(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/208236(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102018130144(DE,A1)
【文献】国際公開第2020/109085(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/145ー9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と出力端子との間の経路に直列に接続される1又は複数の直列共振器と、
一端が前記経路に接続され、他端がグランドに接続され、第1配列方向に配置される複数の第1電極指と前記複数の第1電極指が接続する第1バスバーとをそれぞれ有し少なくとも一部において前記複数の第1電極指が互い違いとなって向かい合う一対の第1櫛型電極を各々含み、前記複数の第1電極指の平均間隔が最も小さい第1並列共振器は、前記一対の第1櫛型電極のうち一方の第1櫛型電極の前記複数の第1電極指の先端を結ぶ仮想的な第1直線が前記第1配列方向に対して傾斜して延伸し、前記第1並列共振器以外の少なくとも1つの並列共振器は、前記第1直線が前記第1配列方向に略一致して延伸する複数の並列共振器と、を備えるフィルタ。
【請求項2】
前記複数の並列共振器のうち少なくとも前記複数の第1電極指の平均間隔が最も大きい第2並列共振器は、前記第1直線が前記第1配列方向に略一致して延伸する、請求項1に記載のフィルタ。
【請求項3】
前記複数の並列共振器のうち前記第2並列共振器以外の並列共振器は、全て前記第1直線が前記第1配列方向に対して傾斜して延伸する、請求項2に記載のフィルタ。
【請求項4】
前記複数の並列共振器のうち前記第1並列共振器以外の並列共振器は、全て前記第1直線が前記第1配列方向に略一致して延伸する、請求項1または2に記載のフィルタ。
【請求項5】
前記複数の並列共振器の隣り合う共振周波数の間隔の中で最も間隔が大きい箇所を基準として、前記基準よりも共振周波数が高い並列共振器は、前記第1直線が前記第1配列方向に対して傾斜して延伸し、前記基準よりも共振周波数が低い並列共振器は、前記第1直線が前記第1配列方向に略一致して延伸する、請求項1から4のいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項6】
前記第1並列共振器は、前記入力端子と前記出力端子との間において前記入力端子に最も近い初段及び前記出力端子に最も近い終段以外に接続される、請求項1から5のいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項7】
前記一対の第1櫛型電極は、前記第1バスバーに接続されるダミー電極指を有さない、請求項1から6のいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項8】
前記一対の第1櫛型電極は、前記第1バスバーに接続されるダミー電極指を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項9】
前記1又は複数の直列共振器は、第2配列方向に配置された複数の第2電極指と前記複数の第2電極指が接続する第2バスバーとをそれぞれ有し少なくとも一部において前記複数の第2電極指が互い違いとなって向かい合う一対の第2櫛型電極を各々含み、前記一対の第2櫛型電極のうち一方の第2櫛型電極の前記複数の第2電極指の先端を結ぶ仮想的な第2直線が前記第2配列方向に対して傾斜して延伸する、請求項1から8のいずれか一項に記載のフィルタ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のフィルタを含むマルチプレクサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ及びマルチプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン等の無線通信機器では、フィルタ及びマルチプレクサに弾性波共振器が用いられている。弾性波共振器は圧電基板上に一対の櫛型電極と一対の反射器とを有する。櫛型電極は複数の電極指と複数の電極指が接続するバスバーとを有する。反射器は一対の櫛型電極が励振する弾性波を反射し一対の櫛型電極内に閉じ込める。櫛型電極の電極指が交差する交差領域を電極指が励振する弾性波の伝搬方向から傾斜させることが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/064238号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の弾性波共振器によれば、櫛型電極の電極指が交差する交差領域を弾性波の伝搬方向から傾斜させることで横モードスプリアスが抑制される。しかしながら、このような弾性波共振器を直列共振器及び並列共振器に用いてフィルタを形成した場合に、スプリアスは抑制されるが、挿入損失が大きくなってしまうことがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、挿入損失を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、入力端子と出力端子との間の経路に直列に接続される1又は複数の直列共振器と、一端が前記経路に接続され、他端がグランドに接続され、第1配列方向に配置される複数の第1電極指と前記複数の第1電極指が接続する第1バスバーとをそれぞれ有し少なくとも一部において前記複数の第1電極指が互い違いとなって向かい合う一対の第1櫛型電極を各々含み、前記複数の第1電極指の平均間隔が最も小さい第1並列共振器は、前記一対の第1櫛型電極のうち一方の第1櫛型電極の前記複数の第1電極指の先端を結ぶ仮想的な第1直線が前記第1配列方向に対して傾斜して延伸し、前記第1並列共振器以外の少なくとも1つの並列共振器は、前記第1直線が前記第1配列方向に略一致して延伸する複数の並列共振器と、を備えるフィルタである。
【0007】
上記構成において、前記複数の並列共振器のうち少なくとも前記複数の第1電極指の平均間隔が最も大きい第2並列共振器は、前記第1直線が前記第1配列方向に略一致して延伸する構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記複数の並列共振器のうち前記第2並列共振器以外の並列共振器は、全て前記第1直線が前記第1配列方向に対して傾斜して延伸する構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記複数の並列共振器のうち前記第1並列共振器以外の並列共振器は、全て前記第1直線が前記第1配列方向に略一致して延伸する構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記複数の並列共振器の隣り合う共振周波数の間隔の中で最も間隔が大きい箇所を基準として、前記基準よりも共振周波数が高い並列共振器は、前記第1直線が前記第1配列方向に対して傾斜して延伸し、前記基準よりも共振周波数が低い並列共振器は、前記第1直線が前記第1配列方向に略一致して延伸する構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記第1並列共振器は、前記入力端子と前記出力端子との間において前記入力端子に最も近い初段及び前記出力端子に最も近い終段以外に接続される構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記一対の第1櫛型電極は、前記第1バスバーに接続されるダミー電極指を有さない構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記一対の第1櫛型電極は、前記第1バスバーに接続されるダミー電極指を有する構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記1又は複数の直列共振器は、第2配列方向に配置された複数の第2電極指と前記複数の第2電極指が接続する第2バスバーとをそれぞれ有し少なくとも一部において前記複数の第2電極指が互い違いとなって向かい合う一対の第2櫛型電極を各々含み、前記一対の第2櫛型電極のうち一方の第2櫛型電極の前記複数の第2電極指の先端を結ぶ仮想的な第2直線が前記第2配列方向に対して傾斜して延伸する構成とすることができる。
【0015】
本発明は、上記に記載のフィルタを含むマルチプレクサである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、挿入損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、フィルタの回路図である。
図2図2は、フィルタに用いられる第1弾性波共振器の平面図である。
図3図3は、第1弾性波共振器の断面図である。
図4図4は、フィルタに用いられる第2弾性波共振器の平面図である。
図5図5(a)は、実施例1、比較例1、及び比較例2のフィルタの通過特性を示す図、図5(b)は、図5(a)の領域Aの拡大図である。
図6図6は、第1弾性波共振器と第2弾性波共振器のReal(Y)の周波数特性を示す図である。
図7図7(a)は、実施例1のフィルタにおける並列共振器P1からP4の通過特性を示す図、図7(b)は、直列共振器S1からS3の通過特性を示す図である。
図8図8(a)は、フィルタに用いられる第3弾性波共振器の平面図、図8(b)は、第4弾性波共振器の平面図である。
図9図9(a)は、フィルタに用いられる第5弾性波共振器の平面図、図9(b)は、第6弾性波共振器の平面図である。
図10図10(a)から図10(e)は、基板の他の例を示す断面図である。
図11図11(a)は、実施例2及び比較例3のフィルタの通過特性を示す図、図11(b)は、図11(a)の領域Aの拡大図である。
図12図12(a)は、実施例2のフィルタにおける並列共振器P1からP4の通過特性を示す図、図12(b)は、直列共振器S1からS3の通過特性を示す図である。
図13図13は、実施例3及び比較例4のフィルタの通過特性並びに実施例3のフィルタにおける並列共振器P1からP4及び直列共振器S1からS3の通過特性を示す図である。
図14図14は、実施例4に係るデュプレクサの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、フィルタの回路図である。図1のように、フィルタ100は、入力端子Tinと出力端子Toutとの間の経路に1又は複数の直列共振器S1からS3が直列に接続されている。入力端子Tinと出力端子Toutとの間に複数の並列共振器P1からP4が並列に接続されている。並列共振器P1からP4は入力端子Tinと出力端子Toutとの間の経路に一端が接続し、グランド端子に他端が接続されている。
【0020】
図2は、フィルタに用いられる第1弾性波共振器の平面図である。電極指の配列方向をX方向、電極指の延伸方向をY方向、圧電基板の法線方向をZ方向とする。X方向、Y方向、及びZ方向は圧電基板の結晶方位とは限らないが、圧電基板が回転YカットX伝搬基板の場合にはX方向が結晶方位のX軸方位となる。
【0021】
図2のように、第1弾性波共振器11は1ポート弾性表面波共振器であり、基板20上にIDT(InterDigital Transducer)30及び反射器40が設けられている。反射器40はIDT30のX方向の両側に設けられている。
【0022】
IDT30は、対向する一対の櫛型電極34a及び34bを備える。櫛型電極34aは、複数の電極指31a及びバスバー32aを備える。複数の電極指31aはバスバー32aに接続されている。櫛型電極34bも同様に、複数の電極指31b及びバスバー32bを備える。複数の電極指31bはバスバー32bに接続されている。電極指31aと電極指31bとはX方向の少なくとも一部において互い違いとなるように設けられている。電極指31aとバスバー32bとはY方向において対向する。電極指31aの先端とバスバー32bとの間はギャップ35bである。電極指31bとバスバー32aも同様であり、電極指31bとバスバー32aとはY方向において対向し、電極指31bの先端とバスバー32aとの間はギャップ35aである。Y方向において電極指31aと電極指31bとが重なる領域は交差領域36である。
【0023】
櫛型電極34aの電極指31a及び櫛型電極34bの電極指31bが励振する弾性波は、主にX方向に伝搬する。一対の櫛型電極34a及び34bのうち一方の櫛型電極の電極指31a又は31bの間隔Dがほぼ弾性波の波長λとなる。電極指31a又は31bの間隔Dは、電極指31a及び31bのピッチPの概ね2倍である。反射器40は、複数の電極指41と複数の電極指41が接続するバスバー42とを備える。反射器40は弾性波を反射する。これにより、弾性波のエネルギーが交差領域36内に閉じ込められる。
【0024】
IDT30は2つの領域37a及び37bを含む。領域37aにおける複数の電極指31bの先端を結ぶ仮想的な直線50aa及び複数の電極指31aの先端を結ぶ仮想的な直線50baを規定する。同様に、領域37bにおける複数の電極指31bの先端を結ぶ仮想的な直線50ab及び複数の電極指31aの先端を結ぶ仮想的な直線50bbを規定する。複数の電極指31bの先端を結ぶ直線50aa及び50ab並びに複数の電極指31aの先端を結ぶ仮想的な直線50ba及び50bbはX方向に対して傾斜して延伸する。言い換えると、複数のギャップ35aを結ぶ仮想的な直線及び複数のギャップ35bを結ぶ仮想的な直線はX方向に対して傾斜して延伸する。領域37aにおける直線50aaと直線50baとは略平行であり、直線50aaと直線50baとの間はほぼ交差領域36である。領域37bにおける直線50abと直線50bbとは略平行であり、直線50abと直線50bbとの間はほぼ交差領域36である。
【0025】
X方向に平行な仮想的な直線60a及び60bを規定する。直線60aと直線50aa及び直線50abとのなす角度をθaa及びθabとする。直線60bと直線50ba及び直線50bbとのなす角度をθba及びθbbとする。ここで、θaa、θab、θba、及びθbbは、直線60a及び60bを基準として反時計回りを正とする。図2では、θaa及びθbaは正であり、θab及びθbbは負である。また、θaaとθbaは略等しく、θabとθbbは略等しい。
【0026】
図3は、第1弾性波共振器の断面図である。図3のように、基板20は、支持基板20aと、支持基板20a上に設けられた減衰層20b及び温度補償層20cと、支持基板20a上に接合層20dによって接合された圧電基板20eと、を備える。IDT30及び反射器40は、基板20上に形成された金属膜21により形成される。
【0027】
支持基板20aは、単結晶サファイア基板、シリコン基板、スピネル基板、水晶基板、石英基板、アルミナ基板、又は炭化シリコン基板等である。例えば支持基板20aに厚さが50μm~500μmの単結晶サファイア基板を用いてもよい。減衰層20bは、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜、シリコン膜、窒化シリコン膜、又は炭化シリコン膜等である。例えば減衰層20bに厚さが0.1μm~10μmの酸化アルミニウム膜を用いてもよい。温度補償層20cは、圧電基板20eとは弾性定数の温度係数の符号が反対の材料で形成された膜であり、例えば酸化シリコン膜である。例えば温度補償層20cに厚さが0.1μm~10μmの酸化シリコン膜を用いてもよい。接合層20dは例えば酸化アルミニウム膜である。例えば接合層20dに厚さが1nm~20nmの酸化アルミニウム膜を用いてもよい。なお、支持基板20a、減衰層20b、温度補償層20c、及び接合層20dは設けられていなくてもよい。
【0028】
圧電基板20eは、例えばタンタル酸リチウム基板又はニオブ酸リチウム基板であり、例えば回転YカットX伝搬のタンタル酸リチウム基板又はニオブ酸リチウム基板である。例えば圧電基板20eに厚さが0.5μm~20μmの36°~48°YカットX伝搬のタンタル酸リチウム基板を用いてもよい。金属膜21は、例えばアルミニウム膜、銅膜、又はモリブデン膜である。アルミニウム膜、銅膜、又はモリブデン膜と圧電基板20eとの間にチタン膜又はクロム膜等の金属膜が設けられていてもよい。例えば金属膜21に厚さが10nm~50nmのチタン膜と厚さが70nm~150nmのアルミニウム銅合金(銅:1重量%)膜との積層膜を用いてもよい。金属膜21を覆って厚さが5nm~30nmの酸化シリコン膜からなる保護膜が設けられていてもよい。
【0029】
IDT30の電極指31a及び31bの対数を20対~300対としてもよい。IDT30の電極指31a及び31bのピッチPを1μm~6μmとしてもよい。開口長(交差領域36のY方向長)を10λ~50λとしてもよい。IDT30の電極指31a及び31bのデューティー比を30%~80%としてもよい。反射器40の電極指41の対数を5対~20対としてもよい。反射器40の電極指41のピッチを1μm~6μmとしてもよい。反射器40の電極指41のデューティー比を30%~80%としてもよい。第1弾性波共振器11においてθaa及びθba:0°より大きく7°以下とし、θab及びθbbを0°より小さく-7°以上としてもよい。
【0030】
図4は、フィルタに用いられる第2弾性波共振器の平面図である。図4のように、第2弾性波共振器12は、複数の電極指31bの先端を結ぶ仮想的な直線50a及び複数の電極指31aの先端を結ぶ仮想的な直線50bがX方向と略平行である。言い換えると、複数のギャップ35aを結ぶ仮想的な直線及び複数のギャップ35bを結ぶ仮想的な直線がX方向と略平行である。その他の構成は第1弾性波共振器11と同じであるため説明を省略する。
【0031】
[実験]
実施例1、比較例1、及び比較例2のフィルタの通過特性の実験を行った。実施例1のフィルタは、図1における直列共振器S1からS3及び並列共振器P4に図2の第1弾性波共振器11を用い、並列共振器P1からP3に図4の第2弾性波共振器12を用いた。比較例1のフィルタは、直列共振器S1からS3及び並列共振器P1からP4に図2の第1弾性波共振器11を用いた。比較例2のフィルタは、直列共振器S1からS3に図2の第1弾性波共振器11を用い、並列共振器P1からP4に図4の第2弾性波共振器12を用いた。表1にまとめる。
【表1】
【0032】
表2に、実施例1、比較例1、及び比較例2のフィルタにおける直列共振器S1からS3及び並列共振器P1からP4の共振周波数を示す。表2のように、直列共振器S1の共振周波数を2703.6MHz、直列共振器S2の共振周波数を2708.6MHz、直列共振器S3の共振周波数を2683.6MHzとした。並列共振器P1の共振周波数を2513.5MHz、並列共振器P2の共振周波数を2518.5MHz、並列共振器P3の共振周波数を2523.5MHz、並列共振器P4の共振周波数を2548.5MHzとした。共振周波数は電極指の平均間隔Dに相関があることから、直列共振器S1からS3は電極指の平均間隔Dがそれぞれ異なり、直列共振器S3、直列共振器S1、直列共振器S2の順に平均間隔Dが小さくなっている。並列共振器P1からP4も電極指の平均間隔Dがそれぞれ異なり、並列共振器P1、並列共振器P2、並列共振器P3、並列共振器P4の順に平均間隔Dが小さくなっている。
【表2】
【0033】
第1弾性波共振器11及び第2弾性波共振器12の構成を以下として実験を行った。
基板20
支持基板20a:厚さが500μmのサファイア基板
減衰層20b:厚さが450nmの酸化アルミニウム膜
温度補償層20c:厚さが450nmの酸化シリコン膜
接合層20d:厚さが10nmの酸化アルミニウム膜
圧電基板20e:厚さが750nmの42°YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板
IDT30及び反射器40
金属膜21:圧電基板20e側から厚さが50nmのチタン膜、厚さが104nmのアルミニウム銅合金(銅:1重量%)膜
金属膜21上の保護膜:厚さが15nmの酸化シリコン膜
第1弾性波共振器11のθaa及びθba:7°、θab及びθbb:-7°
【0034】
図5(a)は、実施例1、比較例1、及び比較例2のフィルタの通過特性を示す図、図5(b)は、図5(a)の領域Aの拡大図である。図5(a)及び図5(b)の横軸は周波数[MHz]であり、縦軸は減衰量[dB]である。減衰量はS21の大きさである。図5(a)及び図5(b)のように、比較例2では、通過帯域の低周波側において矢印の箇所にスプリアスが生成されている。このスプリアスは、Y方向に伝搬する弾性波に起因する横モードスプリアスに相当すると考えられる。比較例2でスプリアスが生成されたのは、比較例2では並列共振器P1からP4に、直線50a及び50bがX方向に略平行である第2弾性波共振器12を用いたためであると考えられる。これに対し、実施例1及び比較例1では、通過帯域の低周波側におけるスプリアスの生成が抑制されている。これは、実施例1では並列共振器P4に、比較例1では並列共振器P1からP4に、直線50aa、50ab、50ba、及び50bbがX方向から傾斜する第1弾性波共振器11を用いたためであると考えられる。
【0035】
実施例1及び比較例1は共にスプリアスの生成が抑制されているが、比較例1は通過帯域内の高周波側の挿入損失が大きいのに対し、実施例1は挿入損失が低減されている。
【0036】
図6は、第1弾性波共振器と第2弾性波共振器のReal(Y)の周波数特性を示す図である。図6の横軸は周波数[MHz]であり、縦軸はReal(Y)[S]である。Real(Y)はS11のアドミタンスの実部である。第1弾性波共振器11及び第2弾性波共振器12の構成を以下として実験を行った。
基板20
支持基板20a:厚さが500μmのサファイア基板
減衰層20b:厚さが450nmの酸化アルミニウム膜
温度補償層20c:厚さが450nmの酸化シリコン膜
接合層20d:厚さが10nmの酸化アルミニウム膜
圧電基板20e:厚さが750nmの42°YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板
IDT30及び反射器40
金属膜21:圧電基板20e側から厚さが50nmのチタン膜、厚さが104nmのアルミニウム銅合金(銅:1重量%)膜
金属膜21上の保護膜:厚さが15nmの酸化シリコン膜
IDT30の対数:120対
IDT30のピッチP:1.48μm
開口長(交差領域36のY方向長):41.82λ
IDT30のデューティー比:55%
反射器40の対数:11対
反射器40のピッチ:1.48μm
反射器40のデューティー比:55%
第1弾性波共振器11のθaa及びθba:7°、θab及びθbb:-7°
【0037】
図6のように、第2弾性波共振器12は共振周波数から反共振周波数までの周波数においてスプリアスが生成されている。このため、図5(a)及び図5(b)において、並列共振器P1からP4に第2弾性波共振器12を用いた比較例2のフィルタでは、通過帯域の低周波側においてスプリアスが生成されたと考えられる。一方、第1弾性波共振器11では共振周波数から反共振周波数までの周波数においてスプリアスの生成が抑制されている。このため、図5(a)及び図5(b)において、並列共振器P4に第1弾性波共振器11を用いた実施例1のフィルタ及び並列共振器P1からP4に第1弾性波共振器11を用いた比較例1のフィルタでは、通過帯域の低周波側におけるスプリアスの生成が抑制されたと考えられる。
【0038】
図6のように、第1弾性波共振器11は、第2弾性波共振器12と比べて、反共振周波数よりも高い周波数において損失が大きくなっている。これは、圧電基板20eが異方性物質であるため、直線50aa、50ab、50ba、及び50bbをX方向から傾斜、すなわち交差領域36を弾性波の伝搬方向から傾斜させたことによって生じたものと考えられる。このため、図5(a)及び図5(b)において、並列共振器P1からP4に第1弾性波共振器11を用いた比較例1のフィルタでは、スプリアスの生成は抑制されたが、通過帯域内の高周波側での挿入損失が大きくなったと考えられる。
【0039】
図7(a)は、実施例1のフィルタにおける並列共振器P1からP4の通過特性を示す図、図7(b)は、直列共振器S1からS3の通過特性を示す図である。図7(a)及び図7(b)の横軸は周波数[MHz]であり、縦軸は減衰量[dB]である。図7(a)及び図7(b)において、実施例1のフィルタの通過特性を点線で図示している。
【0040】
図7(a)及び表2のように、並列共振器P1からP4は共振周波数がフィルタの通過帯域よりも低周波側にあり、反共振周波数近傍より高周波側での損失がフィルタの通過帯域内の高周波側の挿入損失に影響を及ぼす。ここで、並列共振器P1からP4の共振周波数はP1、P2、P3、P4の順に高くなっていて、共振周波数の最も高い並列共振器P4は他の並列共振器P1からP3に比べて反共振周波数より高周波側の損失がフィルタの通過帯域内の高周波側の挿入損失に及ぼす影響が小さい。また、共振周波数が最も高い並列共振器P4の通過特性はフィルタの通過帯域の低周波側の肩の近くに位置するため、並列共振器P4にスプリアスが発生した場合にフィルタの通過帯域の低周波側にスプリアスが生成され易い。これらのため、図5(a)及び図5(b)において、実施例1のフィルタでは、通過帯域内の高周波側の挿入損失への影響が大きい並列共振器P1からP3に第2弾性波共振器12を用いていて、これにより、通過帯域内の高周波側の挿入損失が抑制されたと考えられる。また、通過帯域の低周波側のスピリアスへの影響が大きい並列共振器P4に第1弾性波共振器11を用いていて、これにより、通過帯域の低周波側におけるスプリアスの生成が抑制されたと考えられる。
【0041】
図7(b)及び表2のように、直列共振器S1からS3は、共振周波数がフィルタの通過帯域内にあり、反共振周波数がフィルタの通過帯域よりも高周波側にある。したがって、直列共振器S1からS3では反共振周波数よりも高い周波数において損失が大きくなったとしてもフィルタの通過帯域内の挿入損失への影響はほとんどない。このため、直列共振器S1からS3には第1弾性波共振器11を用いてスプリアスの生成を抑制することが好ましい。
【0042】
[フィルタに用いられる弾性波共振器の他の例]
図8(a)は、フィルタに用いられる第3弾性波共振器の平面図、図8(b)は、第4弾性波共振器の平面図である。図9(a)は、フィルタに用いられる第5弾性波共振器の平面図、図9(b)は、第6弾性波共振器の平面図である。
【0043】
図8(a)のように、第3弾性波共振器13では、反射器40のバスバー42がX方向に略一致して延在している。その他の構成は第1弾性波共振器11と同じであるため説明を省略する。第1弾性波共振器11では反射器40はバスバー42がX方向に対し傾斜して延在するように設けられていたが、第3弾性波共振器13のように反射器40をバスバー42がX方向に略一致して延在するように設けることで、第3弾性波共振器13のY方向の大きさを第1弾性波共振器11と比べて小さくできる。
【0044】
図8(b)のように、第4弾性波共振器14では、複数の電極指31bの先端を結ぶ直線50aは直線60aに対し傾斜し、複数の電極指31aの先端を結ぶ直線50bは直線60bに対し傾斜している。直線50aと直線60aとのなす角度θaと、直線50bと直線60bとのなす角度θbとは、IDT30内で一定である。その他の構成は第1弾性波共振器11と同じであるため説明を省略する。第4弾性波共振器14においても第3弾性波共振器13と同様に、反射器40をバスバー42がX方向に略一致して延在するように設けてもよい。
【0045】
図9(a)のように、第5弾性波共振器15では、櫛型電極34aは、複数の電極指31a、複数のダミー電極指33a、及びバスバー32aを備える。複数の電極指31a及び複数のダミー電極指33aはバスバー32aに接続されている。櫛型電極34bも同様に、複数の電極指31b、複数のダミー電極指33b、及びバスバー32bを備える。複数の電極指31b及び複数のダミー電極指33bはバスバー32bに接続されている。電極指31aとダミー電極指33bとはY方向において対向する。電極指31aの先端とダミー電極指33bの先端との間がギャップ35bである。電極指31bとダミー電極指33aも同様であり、電極指31bとダミー電極指33aとはY方向において対向し、電極指31bの先端とダミー電極指33aの先端との間がギャップ35aである。その他の構成は第1弾性波共振器11と同じであるため説明を省略する。
【0046】
図9(b)のように、第6弾性波共振器16では、複数の電極指31bの先端を結ぶ直線50aは直線60aに対し傾斜し、複数の電極指31aの先端を結ぶ直線50bは直線60bに対し傾斜している。直線50aと直線60aとのなす角度θaと、直線50bと直線60bとのなす角度θbとは、IDT30内で一定である。その他の構成は第5弾性波共振器15と同じであるため説明を省略する。
【0047】
第5弾性波共振器15及び第6弾性波共振器16においても第3弾性波共振器13と同様に、反射器40をバスバー42がX方向に略一致して延在するように設けてもよい。
【0048】
横モードスプリアスを抑制するための共振器として、第1弾性波共振器11の代わりに第3弾性波共振器13から第6弾性波共振器16のいずれかを用いてもよい。
【0049】
[基板の他の例]
図10(a)から図10(e)は、基板の他の例を示す断面図である。図10(a)のように、支持基板20aと減衰層20bの界面70に凹凸が形成されていてもよい。凹凸は規則的に形成されていてもよいし、不規則であってもよい。界面70の算術平均粗さRaは10nm以上1000nm以下であってもよいし、50nm以上500nm以下であってもよいし、100nm以上300nm以下であってもよい。図10(b)のように、支持基板20aと減衰層20bの界面70に加えて、減衰層20bと温度補償層20cの界面71にも凹凸が形成されていてもよい。図10(c)のように、支持基板20aと温度補償層20cとの間に減衰層が設けられていない場合でもよい。図10(d)のように、支持基板20aと温度補償層20cの界面72に凹凸が形成されていてもよい。図10(e)のように、支持基板20aと圧電基板20eの間に減衰層、温度補償層、及び接合層が設けられていない場合でもよい。
【0050】
実施例1のフィルタによれば、複数の並列共振器P1からP4のうち最も共振周波数が高い並列共振器P4に第1弾性波共振器11、第3弾性波共振器13、第4弾性波共振器14、第5弾性波共振器15、又は第6弾性波共振器16を用い、並列共振器P4以外の少なくとも1つの並列共振器に第2弾性波共振器12を用いている。言い換えると、複数の並列共振器P1からP4のうち複数の電極指31a又は31bの平均間隔Dが最も小さい並列共振器P4に第1弾性波共振器11、第3弾性波共振器13、第4弾性波共振器14、第5弾性波共振器15、又は第6弾性波共振器16を用い、並列共振器P4以外の少なくとも1つの並列共振器に第2弾性波共振器12を用いている。第1弾性波共振器11、第3弾性波共振器13、第4弾性波共振器14、第5弾性波共振器15、又は第6弾性波共振器16は直線50aa、50ab、50ba、50bb、50a、及び50bがX方向に対して傾斜して延伸する共振器であり、第2弾性波共振器12は直線50a及び50bがX方向に略一致して延伸する共振器である。これにより、図5(a)及び図5(b)のように、スプリアスの生成を抑制しつつ、通過帯域内の高周波側の挿入損失を低減することができる。複数の電極指31a又は31bの平均間隔Dは、櫛型電極34a又は34bのX方向の長さを電極指31a又は31bの本数で除することで算出してもよい。また、IDT30のX方向の長さを電極指31a及び31bの対数(電極指31a及び31bの合計本数の1/2)で除することで電極指31a又は31bの平均間隔Dとしてもよい。
【0051】
複数の並列共振器P1からP4のうち最も共振周波数が高い(最も電極指の平均間隔Dが小さい)並列共振器P4以外の並列共振器P1からP3は全て第2弾性波共振器12としてもよい。これにより、通過帯域内の高周波側の挿入損失を効果的に低減できる。
【0052】
表1及び表2のように、複数の並列共振器P1からP4の隣り合う共振周波数の間隔の中で最も間隔が大きい箇所を基準として、この基準よりも共振周波数が高い並列共振器P4は第1弾性波共振器11とし、基準よりも共振周波数が低い並列共振器P1からP3は第2弾性波共振器12としてもよい。これにより、スプリアスの抑制と挿入損失の低減の両立を効果的に行うことができる。
【0053】
直列共振器S1からS3においては反共振周波数よりも高い周波数において損失が大きくなってもフィルタの通過帯域内の挿入損失への影響は小さい。このため、スプリアスの生成を抑制するために、直列共振器S1からS3は全て、第1弾性波共振器11、第3弾性波共振器13、第4弾性波共振器14、第5弾性波共振器15、又は第6弾性波共振器16である場合が好ましい。
【実施例2】
【0054】
実施例1では、複数の並列共振器P1からP4のうち共振周波数が最も高い並列共振器P4に第1弾性波共振器11を用い、並列共振器P4以外の残りの並列共振器P1からP3に第2弾性波共振器12を用いる場合の例を示した。実施例2では、複数の並列共振器のうち共振周波数が最も低い並列共振器に第2弾性波共振器12を用い、共振周波数が最も高い並列共振器を含む残りの並列共振器全てに第1弾性波共振器11を用いる場合の例について説明する。
【0055】
[実験]
実施例2及び比較例3のフィルタの通過特性の実験を行った。実施例2及び比較例3のフィルタでは、図1における直列共振器S1からS3及び並列共振器P1からP4の共振周波数を表3のようにした。すなわち、直列共振器S1の共振周波数を2703.6MHz、直列共振器S2の共振周波数を2683.6MHz、直列共振器S3の共振周波数を2708.6MHzとした。並列共振器P1の共振周波数を2538.5MHz、並列共振器P2の共振周波数を2548.5MHz、並列共振器P3の共振周波数を2543.5MHz、並列共振器P4の共振周波数を2513.5MHzとした。したがって、並列共振器P1からP4のうち共振周波数が最も高い(電極指の平均間隔Dが最も小さい)共振器は並列共振器P2であり、共振周波数が最も低い(電極指の平均間隔Dが最も大きい)共振器は並列共振器P4である。
【表3】
【0056】
実施例2のフィルタにおいて、並列共振器P1からP4のうち共振周波数が最も高い共振器は並列共振器P2で、最も低い共振器は並列共振器P4であることから、直列共振器S1からS3及び並列共振器P1からP3に図2の第1弾性波共振器11を用い、並列共振器P4に図4の第2弾性波共振器12を用いた。比較例3のフィルタでは、直列共振器S1からS3及び並列共振器P1からP4に図2の第1弾性波共振器11を用いた。表4にまとめる。
【表4】
【0057】
第1弾性波共振器11及び第2弾性波共振器12の構成は、実施例1に示した実験のときと同じ条件とした。
【0058】
図11(a)は、実施例2及び比較例3のフィルタの通過特性を示す図、図11(b)は、図11(a)の領域Aの拡大図である。図12(a)は、実施例2のフィルタにおける並列共振器P1からP4の通過特性を示す図、図12(b)は、直列共振器S1からS3の通過特性を示す図である。図11(a)から図12(b)の横軸は周波数[MHz]であり、縦軸は減衰量[dB]である。図12(a)及び図12(b)において、実施例2のフィルタの通過特性を点線で図示している。
【0059】
図11(a)及び図11(b)のように、実施例2は比較例3に比べて通過帯域内の高周波側の挿入損失が低減されている。図12(a)のように、共振周波数が最も低い並列共振器P4は、反共振周波数よりも高周波側の広い帯域がフィルタの通過帯域内にある。このため、共振周波数が最も低い並列共振器P4は他の並列共振器P1からP3に比べてフィルタの通過帯域内の挿入損失に及ぼす影響が大きい。
【0060】
したがって、複数の並列共振器P1からP4のうち少なくとも共振周波数が最も低い(電極指の平均間隔Dが最も大きい)並列共振器P4に第2弾性波共振器12を用いることが好ましい。これにより、図11(a)及び図11(b)の実施例2のように、フィルタの通過帯域内の高周波側の挿入損失を効果的に低減できる。
【0061】
図12(a)のように、並列共振器P1からP3の通過特性はフィルタの通過帯域の低周波側の肩の近くに位置するため、並列共振器P1からP3にスプリアスが発生した場合にフィルタの通過帯域の低周波側においてスプリアスが生成され易い。したがって、複数の並列共振器P1からP4のうち共振周波数が最も低い並列共振器P4に第2弾性波共振器12を用い、共振周波数が最も高い並列共振器P2を含む並列共振器P4以外の並列共振器P1からP3の全てに第1弾性波共振器11を用いてもよい。これにより、フィルタの通過帯域内の高周波側の挿入損失を低減しつつ、スプリアスの生成を効果的に抑制できる。
【実施例3】
【0062】
[実験]
実施例3及び比較例4のフィルタに対して行った通過特性の実験について説明する。実施例3及び比較例4のフィルタでは、図1における直列共振器S1からS3及び並列共振器P1からP4の共振周波数を表5のようにした。すなわち、直列共振器S1の共振周波数を2703.6MHz、直列共振器S2の共振周波数を2683.6MHz、直列共振器S3の共振周波数を2708.6MHzとした。並列共振器P1の共振周波数を2513.5MHz、並列共振器P2の共振周波数を2518.5MHz、並列共振器P3の共振周波数を2548.5MHz、並列共振器P4の共振周波数を2522.4MHzとした。したがって、直列共振器S1からS3のうち共振周波数が最も低い(電極指の平均間隔Dが最も大きい)共振器は直列共振器S2であり、並列共振器P1からP4のうち共振周波数が最も高い(電極指の平均間隔Dが最も小さい)共振器は並列共振器P3である。
【表5】
【0063】
実施例3のフィルタにおいて、並列共振器P1からP4のうち共振周波数が最も高い共振器は並列共振器P3であることから、直列共振器S1からS3及び並列共振器P3に図2の第1弾性波共振器11を用い、並列共振器P1、P2、及びP4に図4の第2弾性波共振器12を用いた。比較例4のフィルタでは、直列共振器S1からS3及び並列共振器P1からP4に図2の第1弾性波共振器11を用いた。表6にまとめる。
【表6】
【0064】
第1弾性波共振器11及び第2弾性波共振器12の構成は、実施例1に示した実験のときと同じ条件とした。
【0065】
図13は、実施例3及び比較例4のフィルタの通過特性並びに実施例3のフィルタにおける並列共振器P1からP4及び直列共振器S1からS3の通過特性を示す図である。図13の横軸は周波数[MHz]であり、縦軸は減衰量[dB]である。並列共振器P1からP4の通過特性を点線で図示し、直列共振器S1からS3の通過特性を一点鎖線で図示している。
【0066】
図13のように、実施例3は比較例4に比べて通過帯域内の高周波側での挿入損失が低減されている。これは、実施例3では並列共振器P1、P2、及びP4に第2弾性波共振器12を用いたためと考えられる。また、実施例3では並列共振器P3に第1弾性波共振器11を用い、比較例4では並列共振器P1からP4に第1弾性波共振器11を用いているため、通過帯域の低周波側でのスプリアスの生成が抑制されている。
【0067】
実施例1では、複数の並列共振器P1からP4のうち共振周波数が最も高い共振器は出力端子Toutに最も近くに接続する終段の並列共振器P4であり、並列共振器P4に第1弾性波共振器11を用い、その他の並列共振器P1からP3に第2弾性波共振器12を用いた場合を例に示した。しかしながら、この場合に限られない。実施例3のように、複数の並列共振器P1からP4のうち共振周波数が最も高い共振器は並列共振器P3で、並列共振器P3に第1弾性波共振器11を用い、その他の並列共振器P1、P2、P4に第2弾性波共振器12を用いる場合でもよい。この場合でも、通過帯域の低周波側でのスプリアスの生成を抑制しつつ、通過帯域内の高周波側の挿入損失を低減することができる。
【0068】
複数の並列共振器P1からP4のうち共振周波数が最も高い(電極指の平均間隔Dが最も小さい)共振器は、入力端子Tinに最も近くで接続する初段の並列共振器及び出力端子Toutに最も近くで接続する終段の並列共振器以外の並列共振器であることが好ましい。初段の並列共振器は最も大きな電力が入力され易く、終段の並列共振器はアンテナとのミスマッチによって大きな反射電極が入力されることがあるため、共振周波数が最も高い(電極指の平均間隔Dが最小さいい)並列共振器を初段又は終段以外に配置すると静電破壊が起こる場合があるためである。また、複数の直列共振器S1からS3のうち共振周波数が最も低い(電極指の平均間隔Dが最も大きい)共振器は、入力端子Tinに最も近くで接続する初段の直列共振器及び出力端子Toutに最も近くで接続する終段の直列共振器以外の直列共振器であることが好ましい。
【実施例4】
【0069】
図14は、実施例4に係るデュプレクサの回路図である。図14のように、デュプレクサ200は、共通端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ80が接続されている。共通端子Antと受信端子Rxとの間に受信フィルタ81が接続されている。送信フィルタ80は、送信端子Txから入力された信号のうち送信帯域の信号を送信信号として共通端子Antに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。受信フィルタ81は、共通端子Antから入力された信号のうち受信帯域の信号を受信信号として受信端子Rxに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。送信フィルタ80及び受信フィルタ81の少なくとも一方を、実施例1から実施例3のフィルタとすることができる。マルチプレクサとしてデュプレクサを例に説明したが、トリプレクサ又はクワッドプレクサでもよい。
【0070】
以上、本願発明の実施形態について詳述したが、本願発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本願発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0071】
11 第1弾性波共振器
12 第2弾性波共振器
13 第3弾性波共振器
14 第4弾性波共振器
15 第5弾性波共振器
16 第6弾性波共振器
20 基板
20a 支持基板
20b 減衰層
20c 温度補償層
20d 接合層
20e 圧電基板
21 金属膜
30 IDT
31a、31b 電極指
32a、32b バスバー
33a、33b ダミー電極指
34a、34b 櫛型電極
35a、35b ギャップ
36 交差領域
37a、37b 領域
40 反射器
41 電極指
42 バスバー
50a、50b、50aa、50ab、50ba、50bb 直線
60a、60b 直線
70~72 界面
80 送信フィルタ
81 受信フィルタ
100 フィルタ
200 デュプレクサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14