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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】病棟計画支援方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 40/00 20180101AFI20240319BHJP
   E04H 3/08 20060101ALI20240319BHJP
   A61G 12/00 20060101ALI20240319BHJP
   G06Q 10/06 20230101ALI20240319BHJP
【FI】
G16H40/00
E04H3/08 B
A61G12/00 B
G06Q10/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020146679
(22)【出願日】2020-09-01
(65)【公開番号】P2022041465
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【氏名又は名称】片寄 武彦
(72)【発明者】
【氏名】鳥山 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】新井 貴
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼瀬 大樹
【審査官】梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-212199(JP,A)
【文献】特開2014-126992(JP,A)
【文献】特開2016-173609(JP,A)
【文献】児島 純司,患者視点、職員視点、経営管理視点から考える病院建築,月刊新医療 2014年2月号 ,第41巻,(株)エム・イー振興協会,2014年02月01日,p.122-126
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
E04H 3/00- 4/16
G06Q 10/00-99/00
A61G 9/00-15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータを用いたシミュレーションにより病棟内を移動する看護師の動線距離を算出することにより、前記病棟の設計計画を支援する病棟計画支援方法であって、
病棟形状、諸室配置及び病棟運営方法からなる第1の候補案について、前記看護師の移動予定を記述した看護師移動シナリオに基づく前記シミュレーションを実施し、そのシミュレーション結果に応じて前記第1の候補案における前記病棟形状及び前記諸室配置の少なくとも一方を変更して第1の計画案を策定する第1の計画工程と、
前記第1の計画案に対して前記病棟運営方法を変更した第2の候補案について、当該変更後の前記病棟運営方法に対応する前記看護師移動シナリオに基づく前記シミュレーションを実施し、そのシミュレーション結果に応じて前記第2の候補案における前記諸室配置を変更して第2の計画案を策定する第2の計画工程と、
前記第2の計画案に対して前記病棟運営方法を変更した第3の候補案について、当該変更後の前記病棟運営方法に対応する前記看護師移動シナリオに基づく前記シミュレーションを実施し、そのシミュレーション結果に応じて前記第3の候補案における前記諸室配置及び前記病棟運営方法の少なくともの一方を変更して第3の計画案を策定する第3の計画工程とを含み、
前記病棟運営方法は、
患者を配置する際の患者配置基準、前記看護師が担当する前記患者を割り振る際の担当患者割振基準、及び、前記看護師が看護業務を行う際の看護方式を定めるものであり、
前記第2の計画工程は、
前記第1の計画案に対して、前記患者配置基準、前記担当患者割振基準、及び、前記看護方式に関して既存病棟で現地調査を行った現地調査結果に基づいて前記病棟運営方法を変更した前記第2の候補案について、前記シミュレーションを実施し、
前記第3の計画工程は、
前記第2の計画案に対して、前記患者配置基準、前記担当患者割振基準若しくは前記看護方式又はこれらの組み合わせを変更した前記第3の候補案について、前記シミュレーションを実施する、
ことを特徴とする病棟計画支援方法。
【請求項2】
前記第1の計画工程は、
前記設計計画の対象となる前記病棟と機能及び規模が類似する類似病棟における前記病棟形状及び前記諸室配置に、前記第1の候補案と同一の前記病棟運営方法を適用した場合について、前記シミュレーションをさらに実施し、
前記設計計画の対象となる前記病棟に対する前記シミュレーション結果と、前記類似病棟に対する前記シミュレーション結果とを前記コンピュータにより提示するステップを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の病棟計画支援方法。
【請求項3】
前記諸室配置は、
前記病棟内に、病室、看護拠点、看護諸室及び生活諸室からなる諸室分類により分類される複数の諸室と、前記複数の諸室間をつなぐ廊下とを配置したときの配置関係を定めるものであり、
前記第1乃至第3の計画工程の少なくとも1つは、
前記第1乃至第3の候補案における前記諸室配置を変更する際、前記諸室の形状、位置若しくは数、前記廊下の形状、又はこれらの組み合わせを変更する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の病棟計画支援方法。
【請求項4】
前記諸室配置は、
前記病棟内に、病室、看護拠点、看護諸室及び生活諸室からなる諸室分類により分類される複数の諸室と、前記複数の諸室間をつなぐ廊下とを配置したときの配置関係を定めるものであり、
前記第1乃至第3の計画工程の少なくとも1つは、
前記シミュレーション結果として、前記看護師が前記諸室間を移動したときの前記諸室分類間ごとの移動頻度又は移動時間の割合と、前記看護師が前記諸室に滞在したときの前記諸室分類ごとの滞在時間の割合とを前記コンピュータにより提示するステップを含む、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の病棟計画支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病棟計画支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療需要がますます増大しており、それに比例して、看護師は多忙を極める状況となっている。このような状況に対処するために、看護師の移動軌跡や動線を把握するシステムが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、看護、観察実施内容を記録者、記録日時、記録場所とともに看護情報として記録できる情報端末と、前記情報端末から送信される前記看護情報を受信して記憶できる看護支援パソコンとを有し、前記看護支援パソコンにおいて、前記看護情報を集成、併合することにより、記録者、患者名、記録日時、処置場所、看護内容及び移動距離の項目を含む看護動線データを出力できるようにした看護支援システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-99371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のような特許文献1に記載のシステムでは、既存の病棟内で働く看護師の動線を把握することが可能である。しかしながら、病棟の施設計画や運営計画の策定において、看護師の動線距離を評価し、これを病棟の計画案に反映することができない、という問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、病棟の施設計画や運営計画の策定において、看護師の動線距離を指標とする評価結果を計画案に適切に反映することが可能となる病棟計画支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するものであって、本発明の一実施形態に係る病棟計画支援方法は、
コンピュータを用いたシミュレーションにより病棟内を移動する看護師の動線距離を算出することにより、前記病棟の設計計画を支援する病棟計画支援方法であって、
病棟形状、諸室配置及び病棟運営方法からなる第1の候補案について、前記看護師の移動予定を記述した看護師移動シナリオに基づく前記シミュレーションを実施し、そのシミュレーション結果に応じて前記第1の候補案における前記病棟形状及び前記諸室配置の少なくとも一方を変更して第1の計画案を策定する第1の計画工程と、
前記第1の計画案に対して前記病棟運営方法を変更した第2の候補案について、当該変更後の前記病棟運営方法に対応する前記看護師移動シナリオに基づく前記シミュレーションを実施し、そのシミュレーション結果に応じて前記第2の候補案における前記諸室配置を変更して第2の計画案を策定する第2の計画工程と、
前記第2の計画案に対して前記病棟運営方法を変更した第3の候補案について、当該変更後の前記病棟運営方法に対応する前記看護師移動シナリオに基づく前記シミュレーションを実施し、そのシミュレーション結果に応じて前記第3の候補案における前記諸室配置及び前記病棟運営方法の少なくともの一方を変更して第3の計画案を策定する第3の計画工程とを含むものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態に係る病棟計画支援方法によれば、病棟の施設計画や運営計画の策定において、看護師の動線距離を指標とする評価結果を計画案に適切に反映することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る病棟計画支援方法100の一例を示すフロー図である。
図2】本発明の実施形態に係る病棟計画支援方法100における計画工程1の一例を示す概要図である。
図3】病棟形状110及び諸室配置111の一例を示す平面図である。
図4】看護師移動シナリオ14の一例を示す概要図である。
図5】本発明の実施形態に係る病棟計画支援方法100において、シミュレーションにより看護師の動線距離を算出するコンピュータ(看護動線シミュレーション装置2)の構成例を示す図である。
図6】本発明の実施形態に係る看護動線シミュレーション装置2の動作の一例を示すフローチャートである。
図7】看護動線シミュレーション装置2のシミュレーション結果として、各看護師の移動総距離と、複数の看護師における移動総距離の平均値の一例を示す図である。
図8】看護動線シミュレーション装置2のシミュレーション結果として、諸室分類間ごとの移動頻度の割合の一例を示す図である。
図9】看護動線シミュレーション装置2のシミュレーション結果として、諸室分類ごとの滞在時間の割合の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る病棟計画支援方法100の一例を示すフロー図である。病棟計画支援方法100は、コンピュータを用いた看護動線シミュレーション(以下、「シミュレーション」という)により、病棟の候補案11A~11C(又はその改善案12A~12C)に対して病棟内を移動する看護師の動線距離を算出することにより、病棟の計画案13A~13Cを策定する第1乃至第3の計画工程1A~1Cを支援する。
【0012】
病棟計画支援方法100では、病棟の候補案11A~11C(又はその改善案12A~12C)をシミュレーションにより評価し、その評価結果に基づき計画案13A~13Cを策定する第1乃至第3の計画工程1A~1Cを複数段階繰り返すことで、最終的な計画案を策定する。図1に示す病棟計画支援方法100は、3段階の計画工程として、第1の計画工程1A、第2の計画工程1B、及び、第3の計画工程1Cを含む。
【0013】
第1の計画工程1Aは、例えば、病棟の設計計画におけるコンペティションへの応募等を想定したものであり、病棟の基本計画(第1の計画案13A)を提案するものである。第2の計画工程1Bは、例えば、既存病棟で看護業務に関する現地調査を行い、その現地調査結果を基本計画に反映させて、病棟の施設計画(第2の計画案13B)を提案するものである。第3の計画工程1Cは、例えば、既存病棟での病棟運営方法を改善すべく、病棟の施設計画とともに、それに合わせた病棟の運営計画(第3の計画案13C)を提案するものである。
【0014】
病棟計画支援システムは、病棟計画支援方法100を実現するためのシステムであり、その装置構成として、看護動線シミュレーション装置2(詳細は後述する)と、設計者が用いる設計者端末とから構成される。なお、看護動線シミュレーション装置2が設計者端末を兼ねてもよい。
【0015】
(計画工程とシミュレーションの概要について)
第1乃至第3の計画工程1A~1Cの詳細を説明する前に、計画工程(図2乃至図4参照)と、コンピュータ(看護動線シミュレーション装置2)を用いたシミュレーション(図5乃至図9参照)の概要について説明する。
【0016】
図2は、本発明の実施形態に係る病棟計画支援方法100における計画工程1の一例を示す概要図である。図2に示す計画工程1は、第1乃至第3の計画工程1A~1Cにおいて共通する部分を中心に説明するものである。
【0017】
計画工程1(第1乃至第3の計画工程1A~1Cの各々)では、病棟形状110、諸室配置111及び病棟運営方法112からなる候補案11について、看護師の移動予定を記述した看護師移動シナリオ14に基づくシミュレーションを看護動線シミュレーション装置2により実施する。
【0018】
図3は、病棟形状110及び諸室配置111の一例を示す平面図である。図3では、複数階のフロアを有する病棟において、特定の階のフロアの一部分を抜粋した平面図を示している。
【0019】
病棟形状110は、壁や柱により病棟内の室内空間の形状を定めるものである。
【0020】
諸室配置111は、室内空間に対して壁、仕切り、扉等を設置して、複数の諸室と、複数の諸室間をつなぐ廊下とを配置したときの配置関係(レイアウト)を平面図で定めるものである。
【0021】
複数の諸室は、例えば、病室、看護拠点、看護諸室及び生活諸室からなる諸室分類により分類される。看護拠点は、例えば、スタッフステーション、準備室、処置室等である。看護諸室は、患者や面会者の立ち入りが禁止された諸室であり、例えば、汚物処理室、器材室、カンファレンス室等である。生活諸室は、看護師だけでなく患者や面会者も利用可能な諸室であり、例えば、洗濯室、デイルーム、デイコーナー等である。
【0022】
シミュレーションを実施する際、各諸室には諸室ノード、廊下には中継ノードがそれぞれ設定されるとともに、諸室ノード及び中継ノードの間を接続する各リンクには、ノード間の距離に相当する値が設定される。
【0023】
病棟運営方法112は、病室に対して患者を配置する際の患者配置基準、看護師が担当する患者を割り振る際の担当患者割振基準、及び、看護師が看護業務を行う際の看護方式を定めるものである。
【0024】
患者配置基準は、例えば、患者を医療・看護必要度(例えば、3段階のA、B、C)で分類したとき、医療・看護必要度との関係で患者の配置を決める基準(例えば、スタッフステーションの周囲の病室に、医療・看護必要度が高い患者を配置する)、器材室との関係で患者の配置を決める基準(例えば、看護作業に特定の器材が必要となるとき、器材室の周囲の病室に、その看護作業の対象となる患者を配置する)等である。
【0025】
担当患者割振基準は、各看護師が担当する患者の密集度に関する基準(例えば、各看護師が担当する患者の病室が特定のエリアに密集するように割り振る)、特定の器材を用いた看護作業の対象となる患者の密集度に関する基準(例えば、その看護作業の対象となる患者の病室が特定のエリアに密集するように割り振る)等である。
【0026】
看護方式は、機能別看護方式、プライマリーナーシング、チームナーシング、モジュラーナーシング若しくはパートナーシップナーシング又はこれらの組み合わせ等である。なお、看護方式は、交代勤務の勤務体系をさらに組み合わせたものでもよい。
【0027】
図4は、看護師移動シナリオ14の一例を示す概要図である。
【0028】
看護師移動シナリオ14は、看護師の諸室間の移動予定を記述したものである。看護師移動シナリオ14は、例えば、図4に示すように、それぞれの看護師がどの「部屋」からどの「部屋」に順々に移動するかを表す行動予定表である。また、看護師移動シナリオ14は、それぞれの「部屋」で、どのような看護師としての行動を行ったかを表す「行動種別」と、その「部屋」での「滞在時間」とを含む。
【0029】
図2に戻り、看護動線シミュレーション装置2は、シミュレーションを実施したシミュレーション結果を設計者に提示する。そして、看護動線シミュレーション装置2が、シミュレーション結果が所定の評価基準(詳細は後述する)を満たさず、候補案11の修正が必要であると判断した場合には、設計者が、候補案における課題を抽出し、その課題を解決するために、病棟形状110、諸室配置111及び病棟運営方法112の少なくとも一部を修正した改善案12を作成し、その改善案12について、上記と同様にしてシミュレーションを実施する。
【0030】
その結果、看護動線シミュレーション装置2が、所定の評価基準を満たすと判断すると、そのときの候補案11又は改善案12に基づいて、計画案13を策定する。
【0031】
なお、上記の例では、計画工程1において、シミュレーション結果が所定の評価基準を満たさない場合、設計者が、課題の抽出及び改善案の作成を行うものとして説明した。これに対し、コンピュータ(計画案作成装置)が、例えば、課題の抽出及び改善案の作成をルール化したデータベースや、設計者が課題の抽出及び改善案の作成を行う際に過去に行った判断や操作を機械学習により学習させた機械学習モデルを用いることにより、課題の抽出及び改善案の作成を自動で処理するようにしてもよいし、課題の抽出及び改善案の作成に関する情報を設計者に提示するようにしてもよい。その際、看護動線シミュレーション装置2と、計画案作成装置とが、病棟計画支援システムを構成してもよいし、看護動線シミュレーション装置2が計画案作成装置を兼ねることで、看護動線シミュレーション装置2が、病棟計画支援システムを構成してもよい。
【0032】
(看護動線シミュレーション装置2の構成例)
図5は、本発明の実施形態に係る病棟計画支援方法100において、シミュレーションにより看護師の動線距離を算出するコンピュータ(看護動線シミュレーション装置2)の構成例を示す図である。なお、計画案作成装置は、図5に示すコンピュータと同様に構成されるため、説明を省略する。
【0033】
図5において、20はシステムバス、21はCPU(Central Processing Unit)、22はRAM(Random Access Memory)、23はROM(Read Only Memory)、24は外部情報機器との通信を司る通信制御部、25はキーボードコントローラ等の入力制御部、26は出力制御部、27は外部記憶装置制御部、28はキーボード、ポインティングデバイス、マウス等の入力機器からなる入力部、29は印刷装置等の出力部、30はHDD(Hard Disk Drive)等の外部記憶装置、31はグラフィック制御部、32はディスプレイ装置をそれぞれ示している。
【0034】
CPU21は、ROM23内のプログラム用ROM、又は、大容量の外部記憶装置30に記憶されたプログラム等に応じて、外部機器と通信することでデータを検索・取得したり、また、図形、イメージ、文字、表等が混在した出力データの処理を実行したり、更に、外部記憶装置30に格納されているデータベースの管理を実行したり、等といった演算処理を行うものである。
【0035】
また、CPU21は、システムバス20に接続される各デバイスを統括的に制御する。ROM23内のプログラム用ROM又は外部記憶装置30には、CPU21の制御用の基本プログラムであるオペレーティングシステムプログラム(以下OS)等が記憶されている。また、ROM23又は外部記憶装置30には、シミュレーション等を行う際に使用される各種データが記憶されている。メインメモリーであるRAM22は、CPU21の主メモリ、ワークエリア等として機能する。
【0036】
入力制御部25は、キーボードや不図示のポインティングデバイスからの入力部28を制御する。また、出力制御部26は、プリンタ等の出力部29の出力制御を行う。
【0037】
外部記憶装置制御部27は、ブートプログラム、各種のアプリケーション、フォントデータ、ユーザーファイル、編集ファイル、プリンタドライバ等を記憶するHDD(Hard Disk Drive)やソリッドステートドライブ(ステップSSD)等の外部記憶装置30へのアクセスを制御する。また、グラフィック制御部31は、ディスプレイ装置32に表示する情報を描画処理するための構成である。
【0038】
通信制御部24は、ネットワークを介して、外部機器と通信を制御するものであり、これによりシステムが必要とするデータを、インターネットやイントラネット上の外部機器が保有するデータベースから取得したり、外部機器に情報を送信したりすることができるように構成される。
【0039】
外部記憶装置30には、CPU21の制御プログラムであるOS以外に、CPU21にシミュレーションを実行させるためのプログラム(看護動線シミュレーションプログラム)がインストールされるとともに、このプログラムで利用されるデータ(例えば、候補案11、改善案12、計画案13及び看護師移動シナリオ14)等が保存・記憶されている。
【0040】
なお、プログラムは、外部記憶装置30に記憶されているものとして説明したが、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供されてもよい。また、プログラムは、例えば、インターネットやイントラネット等のネットワークに接続された外部機器に格納し、通信制御部24を介して外部機器からダウンロードすることにより提供されてもよい。さらに、プログラムで利用されるデータについても、プログラムと同様に、外部記憶装置30に記憶されているものとして説明した、これらのデータの一部又は全部が、各種の記録媒体又はネットワーク上の外部機器に記憶されて、これらの記録媒体又は外部機器から取得するようにしてもよい。
【0041】
(看護動線シミュレーション装置2の動作例)
図6は、本発明の実施形態に係る看護動線シミュレーション装置2の動作の一例を示すフローチャートである。
【0042】
まず、ステップS400では、シミュレーションを実施する際の入力データとして、候補案11(又はその改善案12)及び看護師移動シナリオ14を受け付ける。なお、候補案11及び看護師移動シナリオ14は、設計者が入力部28を操作することで編集可能であってもよい。
【0043】
ステップS401では、候補案11に含まれる諸室配置111において、図3に示すように、各諸室に諸室ノード、廊下に中継ノードをそれぞれ設定するとともに、諸室ノード及び中継ノードの間を接続する各リンクにノード間の距離に相当する値を設定する。
【0044】
ステップS402では、各諸室間を諸室ノード及び中継ノードを介してそれぞれ接続したときのリンクの移動距離の和を求めることで、諸室間距離テーブルを作成する。諸室間距離テーブルは、互いに異なる全ての居室同士の移動距離をテーブル化したものである。
【0045】
ステップS403では、候補案11に含まれる諸室配置111及び病棟運営方法112に基づいて、諸室配置111にて定められた病室に対して患者を配置することにより、患者配置を設定する。例えば、病棟運営方法112の患者配置基準においてスタッフステーションの周囲の病室に、医療・看護必要度が高い患者を配置すると定められている場合には、諸室配置111にて定められたスタッフステーションの周囲の病室に、例えば、医療・看護必要度Aの患者を配置するようにして患者配置を設定する。なお、患者配置は、設計者が入力部28を操作することで編集可能であってもよいし、看護動線シミュレーション装置2が設定した患者配置をディスプレイ装置32に画面表示し、設計者がその画面を確認しながら入力部28を操作することで修正可能であってもよい。
【0046】
ステップS404では、看護師移動シナリオ14と、諸室間距離テーブルとに基づいて、看護師の移動総距離、諸室分類間ごとの移動頻度又は移動距離、及び、諸室分類ごとの滞在時間を算出する。例えば、図4に示す看護師Aさんについて移動総距離を算出する方法としては、看護師Aさんに対する看護師移動シナリオ14を参照して、スタッフステーション-111号室間距離、111号室-112号室間距離、112号室-スタッフステーション室間距離、スタッフステーション-116号室間距離、116号室-117号室間距離、・・・を諸室間距離テーブルからそれぞれ取得し、これらの総和を取ることで看護師Aさんの移動総距離を算出する。
【0047】
ステップS405では、全ての看護師に対して看護師移動シナリオ14が実行されたか否かを判定する。
【0048】
ステップS405における判定が「NO」であれば、ステップS404に戻り、次の看護師に対する看護師移動シナリオ14を参照し、上記と同様に、その看護師の移動総距離、諸室分類間ごとの移動頻度又は移動距離、及び、諸室分類ごとの滞在時間を算出するという処理を繰り返し実行する。一方、ステップS405における判定が「YES」であれば、ステップS406に進む。
【0049】
ステップS406では、ステップS404における看護師ごとに算出した算出結果に基づいて、候補案11を評価するための評価指標を算出する。具体的には、ステップS404で算出された各看護師の移動総距離から、複数の看護師における移動総距離の平均値を算出する。また、各看護師の諸室分類間ごとの移動頻度又は移動距離から、複数の看護師における諸室分類間ごとの移動頻度又は移動距離の割合を算出するとともに、各看護師の諸室分類ごとの滞在時間から、複数の看護師における諸室分類ごとの滞在時間の割合を算出する。なお、評価指標としては、上記の例に限られず、例えば、看護師の行動種別に着目した評価指標を導入してもよい。
【0050】
ステップS407では、ディスプレイ装置32への画面表示や出力部29によるプリント出力を行うことにより、評価指標を含むシミュレーション結果を提示する。
【0051】
図7は、看護動線シミュレーション装置2のシミュレーション結果として、各看護師の移動総距離と、複数の看護師における移動総距離の平均値の一例を示す図である。図7では、移動総距離を棒グラフで表しているが、グラフの形式は適宜変更してもよい。各看護師の移動総距離及び移動総距離の平均値が提示されることで、看護師の動線距離が適切なのかを容易に把握することができる。
【0052】
図8は、看護動線シミュレーション装置2のシミュレーション結果として、諸室分類間ごとの移動頻度の割合の一例を示す図である。図8では、移動頻度の割合を示す値を、矢印の太さで表すものである。なお、諸室分類間ごとの移動時間の割合についても、図8において、移動頻度の割合を示す値を、移動時間の割合を示す値に置換することで提示可能である。諸室分類間ごとの移動頻度又は移動時間が提示されることで、看護師の移動負担がどの諸室分類間で高いのかを容易に把握することができる。
【0053】
図9は、看護動線シミュレーション装置2のシミュレーション結果として、諸室分類ごとの滞在時間の割合の一例を示す図である。図9では、滞在時間の割合を円グラフで表しているが、グラフの形式は適宜変更してもよい。諸室分類間ごとの滞在時間が提示されることで、看護業務において看護師の時間配分が適切なのかを容易に把握することができる。
【0054】
ステップS408では、ステップS406で算出された評価指標が所定の判定基準を満たすか否かを判定する。そして、ステップS409では、ステップS408で判定された結果を、ディスプレイ装置32への画面表示や出力部29によるプリント出力を行うことにより、評価結果として提示する。
【0055】
次に、図1に戻り、第1乃至第3の計画工程1A~1Cの詳細について説明する。
【0056】
(第1の計画工程1Aの具体例)
第1の計画工程1Aは、病棟形状110A、諸室配置111A及び病棟運営方法112Aからなる第1の候補案11Aについて、看護師移動シナリオ14Aに基づくシミュレーションを実施する。そして、第1の計画工程1Aは、そのシミュレーション結果に応じて第1の候補案11Aにおける病棟形状110A及び諸室配置111Aの少なくとも一方を変更して第1の計画案13Aを策定する。第1の計画工程1Aは、上記のように、例えば、病棟の基本計画(第1の計画案13A)を提案するものである。
【0057】
まず、第1の計画工程1Aでは、第1の候補案11Aを用意し(ステップS100)、第1の候補案11Aについてシミュレーションを実施し、そのシミュレーション結果を設計者に提示する(ステップS101)。
【0058】
その際、第1の候補案11Aとして、病棟形状110A及び諸室配置111Aが異なる複数の候補案を用意し、候補案ごとにシミュレーションを実施し、各シミュレーション結果を比較可能に提示するようにしてもよい。複数の候補案は、病棟形状110A及び諸室配置111Aを変更したものであり、例えば、諸室の形状、位置若しくは数、廊下の形状、又はこれらの組み合わせを変更したものとすればよい。
【0059】
また、シミュレーションの恣意性を少なくするため、病棟運営方法112Aとして、例えば、患者配置基準が異なる複数の病棟運営方法を用意し、特定の病棟形状110A及び諸室配置111Aに対して複数の病棟運営方法をそれぞれ適用した場合について、シミュレーションをそれぞれ実施し、各シミュレーション結果における評価指標の平均値を算出することで、その評価指標の平均値をシミュレーション結果として提示するようにしてもよい。
【0060】
さらに、機能や規模が異なる各種の病棟の設計データ(病棟形状及び諸室配置を含む)がデータベースとして、外部記憶装置30に蓄積されている際には、設計計画の対象となる病棟と機能及び規模が類似する類似病棟を検索し、その類似病棟における病棟形状及び諸室配置に対して第1の候補案11Aと同一の病棟運営方法を適用した場合について、シミュレーションを実施し、設計計画の対象となる病棟に対するシミュレーション結果と、類似病棟に対するシミュレーション結果とを比較可能に提示するようにしてもよい。
【0061】
また、機能や規模が異なる各種の病棟における看護師移動シナリオ14がデータベースとして、外部記憶装置30に蓄積されている際には、設計計画の対象となる病棟と機能及び規模が類似する類似病棟を検索し、その類似病棟における看護師移動シナリオ14を用いて、シミュレーションを実施するようにしてもよい。
【0062】
次に、看護動線シミュレーション装置2は、第1の候補案11Aに対するシミュレーション結果が第1の評価基準を満たすか否かに基づいて、第1の候補案11Aを評価する(ステップS102)。
【0063】
第1の評価基準としては、例えば、移動総距離の平均値が、所定値(例えば、3000m等の予め定められた値)以下であるか否かを判定したり、各看護師の移動総距離が、所定の値(例えば、3000m等の予め定められた値)以下であるか否かを判定したりする等が挙げられる。また、類似病棟と比較した場合には、第1の評価基準としては、例えば、移動総距離の平均値が、類似病棟よりも所定の割合(例えば、10%等の予め定められた値)以上短縮されているか否かを判定する等が挙げられる。
【0064】
評価結果として、第1の候補案11Aが第1の評価基準を満たさない場合には、設計者(又は計画案作成装置)は、第1の候補案11Aにおける課題を抽出し(ステップS103)、第1の候補案11Aに対する第1の改善案12Aを作成する(ステップS104)。
【0065】
なお、課題を抽出する際、シミュレーション結果として、例えば、図7乃至図9に示す評価指標等を参考にすればよい。また、第1の改善案12Aを作成する際、第1の候補案11Aにおける病棟形状110A及び諸室配置111Aの少なくとも一方を変更し、変更後の病棟形状120A及び諸室配置121Aを含む第1の改善案12Aを作成する。病棟形状110Aを変更する場合には、壁や柱の位置、形状又はこれらの組み合わせを変更してもよいし、病棟の寸法を変更してもよい。諸室配置121Aを変更する場合には、諸室の形状、位置若しくは数、廊下の形状、又はこれらの組み合わせを変更してもよく、例えば、汚物処理室や器材室の位置や部屋数を変更するようにしてもよいし、廊下や扉を追加してもよい。
【0066】
一方、評価結果として、第1の候補案11A(又は第1の改善案12A)が第1の評価基準を満たす場合には、そのときの第1の候補案11A(又は第1の改善案12A)を、第1の計画案13Aとして策定する(ステップS105)。すなわち、第1の評価基準を満たすと判断されたときの第1の候補案11Aに含まれる病棟形状110A、諸室配置111A及び病棟運営方法112A(又は第1の改善案12Aに含まれる病棟形状120A、諸室配置121A及び病棟運営方法112A)を、第1の計画案13Aにおける病棟形状130A、諸室配置131A及び病棟運営方法132Aとして、第1の計画案13Aを策定する。
【0067】
(第2の計画工程1Bの具体例)
第2の計画工程1Bは、第1の計画案13A(病棟形状130A、諸室配置131A、病棟運営方法132A)に対して病棟運営方法132Aを変更した第2の候補案11B(病棟形状130A、諸室配置131A、変更後の病棟運営方法112B)について、当該変更後の病棟運営方法112Bを反映した看護師移動シナリオ14Bに基づくシミュレーションを実施する。そして、第2の計画工程1Bは、そのシミュレーション結果に応じて第2の候補案11Bにおける諸室配置131Aを変更して第2の計画案13Bを策定する。第2の計画工程1Bは、上記のように、例えば、既存病棟での現地調査結果を基本計画に反映させて、病棟の施設計画(第2の計画案13B)を提案するものである。
【0068】
まず、第2の計画工程1Bでは、第2の候補案11Bを用意し(ステップS200)、第2の候補案11Bについてシミュレーションを実施し、そのシミュレーション結果を設計者に提示する(ステップS201)。
【0069】
第2の候補案11Bに含まれる変更後の病棟運営方法112Bは、例えば、設計計画の対象となる病棟が、既存病棟の建て替えに該当する場合には、当該既存病棟にて現地調査を行い、その現地調査結果が反映されて変更されたものである。また、変更後の病棟運営方法112Bは、例えば、設計計画の対象となる病棟と機能及び規模が類似する類似病棟を既存病棟として、当該既存病棟にて現地調査を行い、その現地調査結果が反映されて変更されたものである。そのため、変更後の病棟運営方法112Bは、第1の計画案13Aにおける病棟運営方法132Aに対して、患者配置基準、担当患者割振基準、看護方式又はこれらの組み合わせを変更したものである。
【0070】
現地調査の手法としては、例えば、患者配置基準、担当患者割振基準、及び、看護方式等について看護師にヒアリングを実施するとともに、調査員が看護師を第三者として追跡する非参加型観察法を採用し、看護師の行動について、時刻(滞在時間)、場所、行動種別、使用器具等を記録する手法が挙げられる。例えば、患者配置基準については、患者を医療・看護必要度(例えば、3段階のA、B、C)で分類したとき、各患者の医療・看護必要度に応じて患者をどのように配置しているかについて確認する。また、担当患者割振基準については、看護師が担当する患者の病室が、看護師ごとに、病棟内の特定のエリアに集まっているのか、それとも、病棟内で分散しているのかについて確認する。また、シミュレーションを実施する前に、シミュレーションを実施する際の入力データ(例えば、患者配置等)を看護師に確認してもらうことも有効である。
【0071】
看護師移動シナリオ14Bは、変更後の病棟運営方法112Bに対応するものであり、例えば、変更後の病棟運営方法112Bに現地調査結果が反映されている場合には、看護師移動シナリオ14Bにも現地調査結果が反映される。なお、看護師移動シナリオ14Bに基づくシミュレーションを実施した際、例えば、医療・看護必要度と、看護師の移動頻度の相関関係の有無を確認し、シミュレーション結果として提示するようにしてもよい。
【0072】
次に、看護動線シミュレーション装置2は、第2の候補案11Bに対するシミュレーション結果が第2の評価基準を満たすか否かに基づいて、第2の候補案11Bを評価する(ステップS202)。
【0073】
第2の評価基準としては、第1の計画工程1Aでの第1の評価基準と同様に、例えば、移動総距離の平均値が、所定値(例えば、3000m等の予め定められた値)以下であるか否かを判定したり、各看護師の移動総距離が、所定の値(例えば、3000m等の予め定められた値)以下であるか否かを判定したりする等が挙げられる。
【0074】
また、病棟運営方法112B及び看護師移動シナリオ14に現地調査結果が反映されている場合には、第2の評価基準としては、例えば、諸室分類間ごとの移動頻度の割合において、看護拠点と病室の間の移動の割合が、所定値(例えば、35%等の予め定められた値)以下であるか否かを判定したり、諸室分類ごとの滞在時間の割合において、病室の滞在時間が、所定値(例えば、40%等の予め定められた値)以上であるか否かを判定したり、担当患者の病室と担当患者以外の患者の病室への移動頻度の割合や滞在時間の割合において、担当患者以外の患者の病室の移動頻度が、所定値(例えば、30%等の予め定められた値)以下であるか否か、担当患者以外の患者の病室の滞在時間が、所定値(例えば、20%等の予め定められた値)以下であるか否かを判定したりする等が挙げられる。
【0075】
評価結果として、第2の候補案11Bが第2の評価基準を満たさない場合には、設計者(又は計画案作成装置)は、第2の候補案11Bにおける課題を抽出し(ステップS203)、第2の候補案11Bに対する第2の改善案12Bを作成する(ステップS204)。
【0076】
なお、課題を抽出する際、シミュレーション結果として、例えば、図7乃至図9に示す評価指標等を参考にすればよい。また、第2の改善案12Bを作成する際、第2の候補案11Bにおける諸室配置131Aを変更し、変更後の諸室配置121Bを含む第2の改善案12Bを作成する。諸室配置121Bを変更する場合には、諸室の形状、位置若しくは数、廊下の形状、又はこれらの組み合わせを変更してもよく、例えば、汚物処理室や器材室の位置や部屋数を変更するようにしてもよいし、廊下や扉を追加してもよい。
【0077】
一方、評価結果として、第2の候補案11B(又は第2の改善案12B)が第2の評価基準を満たす場合には、そのときの第2の候補案11B(又は第2の改善案12B)を、第2の計画案13Bとして策定する(ステップS205)。すなわち、第2の評価基準を満たすと判断されたときの第2の候補案11Bに含まれる病棟形状130A、諸室配置131A及び病棟運営方法112B(又は第2の改善案12Bに含まれる病棟形状130A、諸室配置121B及び病棟運営方法112B)を、第2の計画案13Bにおける病棟形状130A、諸室配置131B及び病棟運営方法132Bとして、第2の計画案13Bを策定する。
【0078】
(第3の計画工程1Cの具体例)
第3の計画工程1Cは、第2の計画案13B(病棟形状130A、諸室配置131B、病棟運営方法132B)に対して病棟運営方法132Bを変更した第3の候補案11C(病棟形状130A、諸室配置131B、変更後の病棟運営方法112C)について、当該変更後の病棟運営方法112Cを反映した看護師移動シナリオ14Cに基づく前記シミュレーションを実施する。そして、第3の計画工程1Cは、そのシミュレーション結果に応じて第3の候補案11Cにおける諸室配置131B及び病棟運営方法112Cの少なくとも一方を変更して第3の計画案13Cを策定する。第3の計画工程1Cは、上記のように、例えば、既存病棟での病棟運営方法を改善すべく、新たな病棟運営方法112Cと、その新たな病棟運営方法112Cに合わせた諸室配置131Cとをセットにして、病棟の運営計画(第3の計画案13C)を提案するものである。
【0079】
まず、第3の計画工程1Cでは、第3の候補案11Cを用意し(ステップS300)、第3の候補案11Cについてシミュレーションを実施し、そのシミュレーション結果を設計者に提示する(ステップS301)。
【0080】
第3の候補案11Cに含まれる変更後の病棟運営方法112Cは、現地調査により明らかになった既存病棟での病棟運営方法を見直し、看護業務の改善を目的とするものである。そのため、変更後の病棟運営方法112Cは、既存病棟での現地調査結果が反映された第2の計画案13Bにおける病棟運営方法132Bに対して、患者配置基準、担当患者割振基準、看護方式又はこれらの組み合わせを変更したものである。その際、看護師へのヒアリングにより現場の意見を取り入れたり、物品の配置(看護師が使用する作業カートにどのような物品を積載するか)も含めて検討したりすることにより、看護業務のより良い改善を実現することができる。
【0081】
その際、変更後の第3の候補案11Cとして、病棟運営方法112Cが異なる複数の候補案を用意し、候補案ごとにシミュレーションを実施し、各シミュレーション結果を比較可能に提示するようにしてもよい。
【0082】
看護師移動シナリオ14Cは、変更後の病棟運営方法112Cに対応するものであり、例えば、看護師へのヒアリングを実施した場合には、看護師移動シナリオ14Cにヒアリングの内容が反映されるようにしてもよい。
【0083】
次に、看護動線シミュレーション装置2は、第3の候補案11Cに対するシミュレーション結果が第3の評価基準を満たすか否かに基づいて、第3の候補案11Cを評価する(ステップS302)。
【0084】
第3の評価基準としては、第1の計画工程1Aでの第1の評価基準と同様に、例えば、移動総距離の平均値が、所定値(例えば、3000m等の予め定められた値)以下であるか否かを判定したり、各看護師の移動総距離が、所定の値(例えば、3000m等の予め定められた値)以下であるか否かを判定したりする等が挙げられる。
【0085】
また、第3の評価基準としては、第2の計画工程1Bでの第2の評価基準と同様に、例えば、諸室分類間ごとの移動頻度の割合において、看護拠点と病室の間の移動の割合が、所定値(例えば、35%等の予め定められた値)以下であるか否かを判定したり、諸室分類ごとの滞在時間の割合において、病室の滞在時間が、所定値(例えば、40%等の予め定められた値)以上であるか否かを判定したり、担当患者の病室と担当患者以外の患者の病室への移動頻度の割合や滞在時間の割合において、担当患者以外の患者の病室の移動頻度が、所定値(例えば、30%等の予め定められた値)以下であるか否か、担当患者以外の患者の病室の滞在時間が、所定値(例えば、20%等の予め定められた値)以下であるか否かを判定したりする等が挙げられる。
【0086】
評価結果として、第3の候補案11Cが第3の評価基準を満たさない場合には、設計者(又は計画案作成装置)は、第3の候補案11Cにおける課題を抽出し(ステップS303)、第3の候補案11Cに対する第3の改善案12Cを作成する(ステップS304)。
【0087】
なお、課題を抽出する際、シミュレーション結果として、例えば、図7乃至図9に示す評価指標等を参考にすればよい。また、第3の改善案12Cを作成する際、第3の候補案11Cにおける諸室配置131B及び病棟運営方法112Cの少なくとも一方を変更し、変更後の諸室配置121C及び病棟運営方法122Cを含む第3の改善案12Cを作成する。諸室配置121Cを変更する場合には、諸室の形状、位置若しくは数、廊下の形状、又はこれらの組み合わせを変更してもよく、例えば、汚物処理室や器材室の位置や部屋数を変更するようにしてもよいし、廊下や扉を追加してもよい。病棟運営方法122Cを変更する場合には、患者配置基準、担当患者割振基準、看護方式又はこれらの組み合わせを変更してもよい。
【0088】
一方、評価結果として、第3の候補案11C(又は第3の改善案12C)が第3の評価基準を満たす場合には、そのときの第3の候補案11C(又は第3の改善案12C)を、第3の計画案13Cとして策定する(ステップS305)。すなわち、第3の評価基準を満たすと判断されたときの第3の候補案11Cに含まれる病棟形状130A、諸室配置131B及び病棟運営方法112C(又は第3の改善案12Cに含まれる病棟形状130A、諸室配置121C及び病棟運営方法122C)を、第3の計画案13Cにおける病棟形状130A、諸室配置131C及び病棟運営方法132Cとして、第3の計画案13Cを策定する。
【0089】
以上のように、本実施形態に係る病棟計画支援方法100によれば、第1の計画工程1Aでは、看護師移動シナリオ14Aに基づくシミュレーション結果を反映させた病棟の基本計画(第1の計画案13A)を提案し、第2の計画工程1Bでは、看護師移動シナリオ14Bに基づくシミュレーション結果を反映させた病棟の施設計画(第2の計画案13B)をさらに提案し、第3の計画工程1Cでは、看護師移動シナリオ14Cに基づくシミュレーション結果を反映させた病棟の運営計画(第3の計画案13C)をさらに提案する。したがって、病棟の施設計画や運営計画の策定において、看護師の動線距離を指標とする評価結果を計画案に適切に反映することができる。
【0090】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0091】
例えば、第3の計画案13Cに沿って病棟が設計、施工され、病棟の運営を開始した場合には、その病棟にて現地調査を行い、その現地調査結果と、第3の計画案13Cを策定したときのシミュレーション結果とを比較し、新たな課題を抽出し、病棟運営方法についての改善案を作成し、提案するようにしてもよい。また、現地調査結果は、新たな病棟の設計計画を支援するため、外部記憶装置30のデータベースに蓄積してもよい。
【符号の説明】
【0092】
1…計画工程、1A…第1の計画工程、1B…第2の計画工程、1C…第3の計画工程、
2…看護動線シミュレーション装置、
11…候補案、11A…第1の候補案、11B…第2の候補案、11C…第3の候補案、
12改善案、12A…第1の改善案、12B…第2の改善案、12C…第3の改善案、
13…計画案、13A…第1の計画案、13B…第2の計画案、13C…第3の計画案、
14、14A~14C…看護師移動シナリオ、
20…システムバス、21…CPU、22…RAM、23…ROM、
24…通信制御部、25…入力制御部、26…出力制御部、
27…外部記憶装置制御部、28…入力部、29…出力部、30…外部記憶装置、
31…グラフィック制御部、32…ディスプレイ装置、
100…病棟計画支援方法、
110、110A…病棟形状、111、111A…諸室配置、
112、112A~112C…病棟運営方法、
120A…病棟形状、121A~121C…諸室配置、122C…病棟運営方法、
130A…病棟形状、131A~131C…諸室配置、
132A~132C…病棟運営方法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9