(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】ファンモータ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/08 20060101AFI20240319BHJP
F04D 29/056 20060101ALI20240319BHJP
F04D 29/70 20060101ALI20240319BHJP
F04D 29/02 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
F04D29/08 F
F04D29/056 A
F04D29/70 N
F04D29/02
(21)【出願番号】P 2020152011
(22)【出願日】2020-09-10
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】甲木 慎一
(72)【発明者】
【氏名】玉井 功一
(72)【発明者】
【氏名】山田 尚浩
(72)【発明者】
【氏名】浅井 佑介
(72)【発明者】
【氏名】山本 大貴
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-325851(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/08
F04D 29/056
F04D 29/70
F04D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂にてモールドされた回路基板およびステータと、
インペラに結合された回転軸を回転可能に支持する一対の軸受が内側に装着され、前記インペラと該インペラ側の前記軸受との間に径内方に延在する環状のフランジを有した筒状の軸受ホルダと、
前記軸受ホルダの内側で、前記フランジと前記インペラとの間の前記回転軸上に嵌着されたカップ状のグリース保持プレートと、
前記フランジと前記グリース保持プレートとの間に充填されたシール用グリースと、
前記軸受ホルダの前記インペラと反対側の端部を封止するシール材と、
を備えるファンモータ。
【請求項2】
前記グリース保持プレートは、ニトリルゴムから形成される、
請求項1に記載のファンモータ。
【請求項3】
前記シール用グリースは、せん断速度20/s、温度25°Cの条件で測定した時の粘度が1.0Pa・s以上150Pa・s以下である、
請求項1または2に記載のファンモータ。
【請求項4】
前記シール用グリースは、撥水性が高く、耐熱性が高く、油分の蒸発し難い性質を有する、
請求項1~3のいずれか一つに記載のファンモータ。
【請求項5】
前記シール用グリースは、基油として、パーフルオロポリエーテル、シリコーン油、フルオロシリコーン油のいずれかまたは複数が用いられ、増ちょう剤にポリテトラフルオロエチレンが用いられる、
請求項1~4のいずれか一つに記載のファンモータ。
【請求項6】
前記シール材は、銘板またはキャップである、
請求項1~5のいずれか一つに記載のファンモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンモータに関する。
【背景技術】
【0002】
ファンモータは、ファン(羽根)を回転させることによって生じる風力によりパソコンやOA機器等の内部で発生する熱を外部へ排出し、内部を冷却する装置である。
【0003】
水や油がかかる場所や粉塵の多い場所でも使用できるよう、内部のステータや回路基板が合成樹脂によって封止(モールド)されたファンモータが提案されている(例えば、特許文献1等を参照)。
【0004】
また、上記のステータや回路基板の他にも、ロータの回転軸を軸支する軸受に水や異物が侵入するのを防止する必要がある。そのため、軸受ホルダや軸受支持用筒部と呼ばれる筒状の部材の一方の開口端部にロータとともに回転する環状部材が設けられ、他方の開口端部にはキャップが設けられていた。一方の開口端部では、開口端部と環状部材との間の僅かな間隙によるラビリンス構造により、水や異物の侵入が防止される。
【0005】
ただし、僅かな間隙によるラビリンス構造では、水や異物の侵入を完全に防止することができず、そのために、オイルシールと軸受との間にグリースが充填されたグリースシールが用いられることが考えられる(例えば、特許文献2等を参照)。なお、一般に、軸受に封止されたグリースと、オイルシールと軸受との間に充填されたグリースとには、それぞれの目的にあった性能を有するグリースが選定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-128408号公報
【文献】特開2005-045968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、オイルシールと軸受との間に充填されたグリースは、軸受と接触しているため、回転軸の高速回転によって生ずる熱によって、軸受に封止されたグリースと、オイルシールと軸受との間に充填されたグリースとが混合する虞がある。軸受に封止されたグリースと、オイルシールと軸受との間に充填されたグリースとが混合した場合、軸受に封止されたグリースが所定の性能を保持できない虞があり、ファンモータとしての性能を劣化させてしまう虞がある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、外部からの水や異物の浸入を防止するためのグリースシールを備えたファンモータにおいて、グリースシールのグリースと、軸受に封止されたグリースとが混合することを抑制したファンモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様に係るファンモータは、回路基板およびステータと、軸受ホルダと、グリース保持プレートと、シール用グリースと、シール材とを備える。前記回路基板および前記ステータは、合成樹脂にてモールドされる。前記軸受ホルダは、筒状であり、インペラに結合された回転軸を回転可能に支持する一対の軸受が内側に装着され、前記インペラと該インペラ側の前記軸受との間に径内方に延在する環状のフランジを有する。前記グリース保持プレートは、カップ状であり、前記軸受ホルダの内側で、前記フランジと前記インペラとの間の前記回転軸上に嵌着される。前記シール用グリースは、前記フランジと前記グリース保持プレートとの間に充填される。前記シール材は、前記軸受ホルダの前記インペラと反対側の端部を封止する。
【0010】
本発明の一態様に係るファンモータは、外部からの水や異物の浸入を防止するためのグリースシールを備えたファンモータにおいて、グリースシールのグリースと、軸受に封止されたグリースとが混合することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実施形態にかかるファンモータの構成例を示す外観斜視図である。
【
図4】
図4は、ハウジングに一体成形されたベース部にインサート成形された軸受ホルダに、ステータが装着された状態を示す平面図である。
【
図5】
図5は、比較例#1の構成例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、比較例#2の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態に係るファンモータについて図面を参照して説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面における各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、1つの実施形態や変形例に記載された内容は、原則として他の実施形態や変形例にも同様に適用される。
【0013】
図1は、一実施形態にかかるファンモータ1の構成例を示す外観斜視図である。便宜上、ファンモータ1の軸方向(回転軸方向)をZ軸方向とし、ハウジング11の長手方向の直交する2つの辺をそれぞれX軸方向およびY軸方向としている。
図2は、
図1のファンモータ1の平面図である。
図3は、
図2のファンモータ1のA-A断面図である。
図4は、ハウジング11に一体成形されたベース部12にインサート成形された軸受ホルダ17に、ステータ21が装着された状態を示す平面図である。
【0014】
ファンモータ1は所謂、軸流ファンであり、Z軸方向(回転軸方向)に空気が流れる。ファンモータ1は、ハウジング11と、ハウジング11の内部に配置されたインペラ(ハブ43、羽根44)と、インペラを回転させるためのモータと、から構成されている。モータのロータは、回転軸32、ロータヨーク41およびマグネット42から構成されている。
【0015】
<ハウジングの構成について>
ハウジング11は、外枠を構成する枠部11aと、中空円筒状の風洞部11bと、風洞部11bの軸方向両端面における略四角形のフランジ11cと、が設けられている。フランジ11cの四隅にはそれぞれ取付用のネジ等が挿通される挿通孔11dが設けられている。風洞部11bの軸方向の一方端側には、ベース部12と複数のスポーク13(幅広部14を含む)が設けられ、ハウジング11の外周部の一部にはコネクタハウジング15が一体成形にて形成される。コネクタハウジング15の内部には、複数のコネクタピン16がインサートされてコネクタハウジング15と一体成形して配置されている。
【0016】
ベース部12は円環状の円環部12aを有し、円環部12aの外周縁には円筒状の外周壁12bが形成され、外周壁12bの軸方向の一方端は開口している。円環部12aの中央には、真鍮等による非磁性の金属材からなる中空円筒状の軸受ホルダ17が配設され、円筒状の外周壁12bの内側には電子部品などが実装された回路基板26が配設されている。複数のスポーク13は、外周壁12bの外周面に周方向に沿って配置され、外周壁12bの外周面とハウジング11の枠部11aの内周面との間を結合している。
【0017】
軸受ホルダ17がインサートされた状態で、熱可塑性樹脂の射出成形によって、ハウジング11と、ベース部12と、スポーク13と、コネクタハウジング15とが一体成形にて形成されている。
【0018】
<ステータの構成について>
ステータ21は、ステータコア22と、ステータコア22に装着されたインシュレータ23と、インシュレータ23を介してステータコア22に巻回されたコイル25と、から構成されている。
【0019】
ステータコア22は、薄板状のコア片が軸方向に複数枚積層されて構成され、ステータコア22は、環状のコアバックと、コアバックから放射状に径外方に延在する複数のティースとを備えている。コア片は軟磁性である電磁鋼板等からプレス加工等の手段によって作製される。
【0020】
ステータコア22の軸方向両側からそれぞれ絶縁性の合成樹脂材からなるインシュレータ23が装着され、インシュレータ23を介して各ティースにコイル25が巻回される。コイル25の端末は、インシュレータ23の軸方向の一方側に配設された端子ピンに絡げ接続され、半田接続(接合)されて、ステータ21が作製される。
【0021】
ステータコア22のコアバックの開口が、軸受ホルダ17の外周面に嵌着される。この時、端子ピンの各々は、ベース部12の円環部12aに形成された貫通孔と回路基板26の配線パターンに形成されたスルーホールに挿通され、回路基板26のスルーホールから突出した各端子ピンの先端は配線パターンに半田接続される。この接続によって、端子ピンとコネクタピン16は配線パターンを介して電気的に接続される。
【0022】
ステータコア22が軸受ホルダ17の外周面に嵌着され、端子ピンとコネクタピン16とが回路基板26の配線パターンのスルーホールに挿通され、半田接続された構成体が、金型内にセットされ、金型内に例えばエポキシ樹脂による合成樹脂51が充填されて回路基板26とステータ21とがモールドされる。
【0023】
<ロータおよびインペラの構成について>
ロータは、軟磁性材からなるカップ状のロータヨーク41と、ロータヨーク41の内周面に固着されたマグネット42と、ロータヨーク41に結合した金属材からなる回転軸32と、から構成されている。カップ状のロータヨーク41の中央にバーリング加工にて突起部41aが形成され、突起部41aに回転軸32が圧入されて結合されている。
【0024】
回転軸32が結合されたロータヨーク41がインサートされ、熱可塑性樹脂の射出成形によって、インペラが一体成形して形成される。インペラは、ロータヨーク41の外周に形成されたカップ状のハブ43と、ハブ43の外周面に一体成形にて形成された複数の羽根44と、から構成される。インペラが一体成形にて形成された後、ロータヨーク41の内周面に環状のマグネット42が接着剤にて固着される。
【0025】
なお、本実施形態では、インペラはロータヨーク41がインサートされ、樹脂の射出成形にてロータヨーク41と一体に形成されているが、インペラのみが樹脂の射出成形で形成され、インペラとロータヨーク41とが接着剤で接着された構成であってもよい。
【0026】
<軸受ホルダについて>
真鍮等による非磁性の金属材からなる中空円筒状の軸受ホルダ17の外周面には段差部17fが形成されており、ステータコア22が軸受ホルダ17の外周面に嵌着された際、この段差部17fに当接することで、ステータコア22の軸方向が位置決めされる。
【0027】
軸受ホルダ17の内周面には、径内方に延在する環状のフランジ17eが一体に形成されており、フランジ17eの中央には回転軸32が挿通する貫通孔が形成されている。この貫通孔に挿通された回転軸32は、貫通孔の内周面との間に僅かな隙間が形成される。
【0028】
軸受ホルダ17の内側には、一対の軸受31が嵌着され、一方の軸受31がフランジ17eに当接し、他方の軸受31との間には、軸受31に所定の予圧を付与するための予圧ばね35が介装されている。そして、一対の軸受31にて回転軸32は回転可能に支持されている。
【0029】
軸受ホルダ17の一方側の端部の内周面には、シール用グリース34が充填されたグリース保持プレート33が嵌着されており、軸受ホルダ17の他方側の端部の内周面には、他方の軸受31の移動を規制するための止め輪36が装着されている。
【0030】
<グリース保持プレートおよびシール用グリースについて>
軸受ホルダ17の一方側の端部の内周面に嵌着されるグリース保持プレート33は、カップ状の形状を有し、円板状の底板の中央には回転軸32が挿通するための貫通孔が形成されている。円板状の底板の周縁には円筒状の側壁を備え、側壁は軸受ホルダ17の内周面に嵌着している。グリース保持プレート33はシール材として用いられる。例えば、グリース保持プレート33は、ニトリル(NBR)ゴムから形成されている。底板の貫通孔に挿通された回転軸32は、貫通孔の内周面との間に僅かに隙間が形成される。
【0031】
軸受ホルダ17に形成されたフランジ17eとグリース保持プレート33との間に充填されたシール用グリース34は、外部からの異物の侵入や、水分の浸入を防止するため、軸受31に封止されるグリースとは特性が異なっており、耐水性を高めたグリースが用いられ、軸受31に封止されるグリースに比べて高粘度になっている。このため、回転軸32とグリース保持プレート33との間に僅かな隙間が形成されても、高粘度のグリースによって、軸受ホルダ17の内部への異物や水分の浸入を防止できる。
【0032】
シール用グリース34の粘度は回転粘度測定装置(AntonPaar社製レオメータMCR302)にて25mmの円形の両平板にすきま0.2mmの間にグリースを挟み、せん断速度20/s、温度25°Cで30秒測定した後の粘度が1.0Pa・s以上150Pa・s以下が望ましい。1.0Pa・sより小さい場合、シール性能が長期にわたって維持し難いことが懸念され、150Pa・sよりも粘度が高いグリースは、回転に伴い、回転軸への負荷になることと、回転に伴うせん断の影響で、グリース保持プレート33の隙間から排除(散逸)され、防水性能が低下することが懸念される。
【0033】
シール用グリース34は撥水性が高く、耐熱性が高く、油分の蒸発し難いグリースが望ましく、さらにシール用グリース34の基油には、パーフルオロポリエーテル(PFPE)、シリコーン油、フルオロシリコーン油のいずれかまたは複数が用いられ、増ちょう剤にポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が用いられることが望ましい。
【0034】
ベース部12の開口側の段差部には、銘板52が貼着されている。この銘板52の貼着によって、軸受ホルダ17の内部への、外部からの異物の侵入や水分の浸入が防止される。銘板52はシール材として機能する。
【0035】
なお、本実施形態では、ベース部12の下面に貼着された銘板52がシール材として機能しているが、軸受ホルダ17の他方端に特許文献1の
図2に示されるような「キャップ26」が嵌着される構成であってもよい。
【0036】
<比較例>
図5は、比較例#1の構成例を示す断面図であり、特開2001-128408号公報に示された防水型ブラシレスファンモータの回転軸を通る断面図(半分省略)である。
図5において、回転子6’の複数枚のブレード12’の外周を囲むハウジング部18’を備えて、回転子6’の回転軸13’は軸受支持用筒部17’に収納された軸受15’、16’にて回転自在に支持されている。そして、固定子1’、電子部品を含む回路基板4’およびリード線21’を、固定子側ケース14’に収納した状態で、エポキシ樹脂を用いてモールドしてモールド部24’を形成し、固定子磁極の磁極面2b’もモールド部24’によって覆った構成を有している。
【0037】
また、軸受支持用筒部17’の一方の開口端部17a’に環状部材25’が設けられ、軸受支持用筒部17’の開口端部17a’と環状部材25’との間に僅かな間隙を形成するラビリンス構造を構成している。また、軸受支持用筒部17’の他方の開口端部17b’にはシール材としてキャップ26’が嵌合されている。このラビリンス構造とキャップ26’とによって、軸受支持用筒部17’内の軸受15’、16’に油ミストを含む水が浸入することを防止している。
【0038】
しかしながら、軸受支持用筒部17’の開口端部17a’と環状部材25’との間に僅かな間隙が形成されているため、この僅かな間隙を通って、水が軸受支持用筒部17’の内部に浸入する虞があり、水の浸入を完全には防止できないという問題がある。
【0039】
鉄心2’、突極部2a’、巻線3’、スルーホール4a’、端子ピン5’、回転子側ケース7’、カップ部材8’、筒状部8a’、底壁部8b’、貫通孔8c’、ブレード取付用ハブ9’、筒状部9a’、底壁部9b’、回転子磁極10’、ブッシュ11’、基板収納部19’、ウエブ20’、リード線収納溝22’、連通路23’については、説明を省略する。
【0040】
図6は、比較例#2の構成例を示す断面図であり、特開2005-045968号公報に示されたギヤードモータの断面図である。
図6において、出力軸26”はケース21”の一端部に嵌着されたベアリング(軸受)25”を介して枢支され、ケース21”のケース内壁と出力軸26”との間にオイルシール31”が封止されており、さらに、オイルシール31”とベアリング25”との間にグリース42”が充填されている。このようなグリースシールにより、外部からの異物や水の浸入が防止されている。
【0041】
しかしながら、オイルシール31”とベアリング25”との間に充填されたグリース42”は、ベアリング25”と接触している。このようなグリースシール構造が比較例#1のファンモータに適用された場合、回転軸13’(出力軸26”)の高速回転によって生ずる熱によって、ベアリング25”に封止されたグリースと、オイルシール31”とベアリング25”との間に充填されたグリース42”とが混合する虞がある。ベアリング25”に封止されたグリースと、オイルシール31”とベアリング25”との間に充填したグリース42”とが混合した場合、ベアリング25”に封止されたグリースが所定の性能を保持できない虞がある。
【0042】
<実施形態のファンモータにおける異物や水の侵入の防止の効果>
一方、
図1~
図4に示された実施形態においては、回路基板26およびステータ21は合成樹脂51にてモールドされているため、これらへの異物や水の侵入の防止が図られる。
【0043】
また、マグネット42と、ステータコア22との間に形成された隙間(エアギャップ)を通って、外部より水分がステータ21の内部に浸入しても、グリース保持プレート33とシール用グリース34によって、防水が図られる。
【0044】
すなわち、軸受31とシール用グリース34とは、軸受ホルダ17の内周面に形成されたフランジ17eによって隔てられているため、シール用グリース34が軸受31に直接には接触していない。このため、回転軸32の高速回転によって生じる熱によって軸受31に封止されたグリースと、シール用グリース34とが混合することを抑制できる。これにより、軸受31に封止されたグリースが変質することがなく、ファンモータ1としての性能に影響を及ぼすことがなくなる。また、軸受ホルダ17の内周面に嵌着したグリース保持プレート33によって、シール用グリース34の飛散が防止され、シール用グリース34が不足するのを防止することができるとともに、周囲の汚染を防止することができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0046】
以上のように、実施形態に係るファンモータは、合成樹脂にてモールドされた回路基板およびステータと、インペラに結合された回転軸を回転可能に支持する一対の軸受が内側に装着され、インペラとインペラ側の軸受との間に径内方に延在する環状のフランジを有した筒状の軸受ホルダと、軸受ホルダの内側で、フランジとインペラとの間の回転軸上に嵌着されたカップ状のグリース保持プレートと、フランジとグリース保持プレートとの間に充填されたシール用グリースと、軸受ホルダのインペラと反対側の端部を封止するシール材とを備える。これにより、外部からの水や異物の浸入を防止するためのグリースシールを備えたファンモータにおいて、グリースシールのグリースと、軸受に封止されたグリースとが混合することを抑制することができる。これにより、軸受に封止されたグリースが変質することがなく、ファンモータとしての性能に影響を及ぼすことがなくなる。
【0047】
また、グリース保持プレートは、ニトリルゴムから形成される。これにより、シール効果を高めることができる。
【0048】
また、シール用グリースは、軸受に封止されるグリースよりも高粘度で、粘度が低すぎず高すぎない所定範囲内に設定される。これにより、シール性能が長期にわたって維持でき、回転軸への負荷とならず、散逸による防水性能の低下を防ぐことができる。
【0049】
また、シール用グリースは、撥水性が高く、耐熱性が高く、油分の蒸発し難い性質を有する。これにより、シール性能が長期にわたって維持できる。
【0050】
また、シール用グリースは、基油として、パーフルオロポリエーテル、シリコーン油、フルオロシリコーン油のいずれかまたは複数が用いられ、増ちょう剤にポリテトラフルオロエチレンが用いられる。これにより、所望の性質のシール用グリースを容易に得ることができる。
【0051】
また、シール材は、銘板またはキャップである。これにより、軸受ホルダのインペラと反対側の端部の封止を容易に行うことができる。
【0052】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 ファンモータ,11 ハウジング,12 ベース部,13 スポーク,14 幅広部,15 コネクタハウジング,16 コネクタピン,17 軸受ホルダ,21 ステータ,22 ステータコア,23 インシュレータ,24 端子ピン,25 コイル,26 回路基板,31 軸受,32 回転軸,33 グリース保持プレート,34 シール用グリース,35 予圧ばね,36 止め輪,41 ロータヨーク,42 マグネット,43 ハブ,44 羽根