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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】空調システム、空調方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/74 20180101AFI20240319BHJP
   F24F 11/80 20180101ALI20240319BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20240319BHJP
【FI】
F24F11/74
F24F11/80
F24F11/64
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020163377
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022055768
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-06-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年7月20日 一般社団法人 日本建築学会発行 「2020年度大会(関東)学術講演梗概集・建築デザイン発表梗概集(DVD版)」にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 規敏
(72)【発明者】
【氏名】米田 拓朗
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-17767(JP,A)
【文献】特開2006-52928(JP,A)
【文献】特開2005-134052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーソナル空調装置から出力される空気の吹出風量及び吹出温度と、前記パーソナル空調装置が設置された空間温度と、から算出される等価温度が、複数の前記パーソナル空調装置毎に記録される装置データベースと、
前記等価温度に基づいて、前記空気の吹出風量及び吹出温度の少なくとも一方を制御する制御装置と、
を備えた空調システム。
【請求項2】
前記パーソナル空調装置の使用履歴に基づいて、利用者毎に嗜好する前記等価温度が記録される利用者データベースをさらに備え、
前記制御装置は、前記利用者データベースに記録された前記等価温度に基づいて前記パーソナル空調装置の吹出風量及び吹出温度の少なくとも一方を制御する、
請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記パーソナル空調装置は、利用者の選択により、空気の吹出位置、吹出風量及び吹出温度の少なくとも1つが変更されることで等価温度が切り替わる複数の運転モードを備えている、
請求項1又は2に記載の空調システム。
【請求項4】
装置データベースへ、パーソナル空調装置から出力される空気の吹出風量及び吹出温度と、前記パーソナル空調装置が設置された空間温度と、から算出される等価温度を、複数の前記パーソナル空調装置毎に記録する工程と、
利用者データベースへ、前記パーソナル空調装置の使用履歴に基づいて、利用者毎に嗜好する前記等価温度を記録する工程と、
制御装置へ、利用者IDを入力する工程と、
前記制御装置が、入力された前記利用者ID及び前記利用者データベースに記録された前記等価温度に基づいて前記パーソナル空調装置の吹出風量及び吹出温度の少なくとも一方を制御する工程と、
を備えた空調方法。
【請求項5】
コンピュータを、
複数のパーソナル空調装置からそれぞれ出力される空気の吹出風量及び吹出温度と、前記パーソナル空調装置が設置された空間温度と、から算出される等価温度を、前記パーソナル空調装置毎に記録する第一記憶部と、
前記パーソナル空調装置の使用履歴に基づいて、利用者毎に嗜好する前記等価温度を記録する第二記憶部と、
入力された利用者ID及び利用者データベースに記録された前記等価温度に基づいて、前記パーソナル空調装置の吹出風量及び吹出温度の少なくとも一方を制御する制御部と、
して機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システム、空調方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、室内の区画エリア毎に空調吹出口が設けられ、そのエリア毎に空気調和を行う空気調和システムにおいて、検知手段が作業者の外出帰りを認識した場合に、制御手段が、作業者の個人情報に対応した空調吹き出し条件を設定する空気調和システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-323600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の空気調和システムでは、室内の各区画エリアに、それぞれ、同様の構成のパーソナル空調ユニットが設けられている。これらのパーソナル各空調ユニットを、同じ温湿度、風向、風量で制御すれば、作業者は、どのパーソナル空調ユニットを使用する場合でも、好ましい空調環境を得ることができる。
【0005】
しかし、一方で、作業者(利用者)が異なる種類のパーソナル空調ユニット(パーソナル空調機器)を使用する場合は、これらを同じ温湿度、風向、風量で制御することは難しい。このため、利用者にとって好ましい空調環境を得ることは難しい。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、利用者が異なる種類のパーソナル空調機器を使用する場合でも、利用者が吹出風量又は吹出温度を調整せずに好ましい空調環境を得ることができる空調システム、空調方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の空調システムは、パーソナル空調装置から出力される空気の吹出風量及び吹出温度と、前記パーソナル空調装置が設置された空間温度と、から算出される等価温度が、複数の前記パーソナル空調装置毎に記録される装置データベースと、前記等価温度に基づいて、前記空気の吹出風量及び吹出温度の少なくとも一方を制御する制御装置と、を備えている。
【0008】
請求項1の空調システムにおいては、装置データベースに、パーソナル空調装置が設置された空間温度と、パーソナル空調装置から出力される空気の吹出風量及び吹出温度と、から算出される等価温度が、パーソナル空調装置毎に記録されている。
【0009】
このため、制御装置は、等価温度及びパーソナル空調装置が置かれている空間温度に応じて、吹出風量及び吹出温度の少なくとも一方を制御することができる。
【0010】
これにより、利用者が異なる種類のパーソナル空調装置を使用する場合でも、それぞれのパーソナル空調装置は、利用者毎の好みの等価温度に基づいて、吹出風量及び吹出温度が調整される。したがって、利用者は、パーソナル空調装置を使用するごとに吹出風量及び吹出温度を調整する必要がない。
【0011】
請求項2の空調システムは、請求項1に記載の空調システムにおいて、前記パーソナル空調装置の使用履歴に基づいて、前記利用者毎に嗜好する前記等価温度が記録される利用者データベースをさらに備え、前記制御装置は、前記利用者データベースに記録された前記等価温度に基づいて前記パーソナル空調装置の吹出風量及び吹出温度の少なくとも一方を制御する。
【0012】
請求項2の空調システムにおいては、利用者データベースに、パーソナル空調装置の使用履歴に基づいて、利用者毎に嗜好する等価温度が記録されている。そして、制御装置は、利用者データベースに記録された等価温度に基づいて、パーソナル空調装置を制御する。これにより、利用者が吹出風量及び吹出温度を入力することなく、また、等価温度を入力することなく、利用者が嗜好する空調環境を得ることができる。
【0013】
請求項3の空調システムは、請求項1又は2に記載の空調システムにおいて、前記パーソナル空調装置は、利用者の選択により、空気の吹出位置、吹出風量及び吹出温度の少なくとも1つが変更されることで等価温度が切り替わる複数の運転モードを備えている。
【0014】
請求項3の空調システムにおいては、利用者が運転モードを選択することで、等価温度が切り替わる。これにより、効率よく好みの空調環境にすることができる。
【0015】
これに対して、例えば冷房時に、利用者が空気の吹出風量を多くする一方、吹出温度を上げる操作を行ったような場合は、出力される熱量が変化せず等価温度が切り替わらない場合がある。この場合、利用者の好みの空調環境にすることが難しい。
【0016】
請求項4の空調方法は、装置データベースへ、パーソナル空調装置から出力される空気の吹出風量及び吹出温度と、前記パーソナル空調装置が設置された空間温度と、から算出される等価温度を、複数の前記パーソナル空調装置毎に記録する工程と、利用者データベースへ、前記パーソナル空調装置の使用履歴に基づいて、利用者毎に嗜好する前記等価温度を記録する工程と、制御装置へ、利用者IDを入力する工程と、前記制御装置が、入力された前記利用者ID及び前記利用者データベースに記録された前記等価温度に基づいて前記パーソナル空調装置の吹出風量及び吹出温度の少なくとも一方を制御する工程と、を備えている。
【0017】
請求項4の空調方法においては、装置データベースに、パーソナル空調装置が設置された空間温度と、パーソナル空調装置から出力される空気の吹出風量及び吹出温度と、から算出される等価温度が、パーソナル空調装置毎に記録される。
【0018】
また、利用者データベースにはパーソナル空調装置の使用履歴に基づいて、利用者毎に嗜好する等価温度を記録される。
【0019】
そして、利用者IDがパーソナル空調装置に入力されることで、制御部が、パーソナル空調装置の吹出風量及び吹出温度の少なくとも一方を制御する。これにより、利用者が嗜好する空調環境にすることができる。したがって、利用者は、好みの空調環境となるように、パーソナル空調装置を使用するごとに吹出風量及び吹出温度を調整する必要がない。
【0020】
請求項5のプログラムは、コンピュータを、複数のパーソナル空調装置からそれぞれ出力される空気の吹出風量及び吹出温度と、前記パーソナル空調装置が設置された空間温度と、から算出される等価温度を、前記パーソナル空調装置毎に記録する第一記憶部と、前記パーソナル空調装置の使用履歴に基づいて、前記利用者毎に嗜好する前記等価温度を記録する第二記憶部と、利用者ID及び利用者データベースに記録された前記等価温度に基づいて、前記パーソナル空調装置の吹出風量及び吹出温度の少なくとも一方を制御する制御部と、して機能させる。
【0021】
請求項5のプログラムによると、コンピュータが、第一記録部に、パーソナル空調装置が設置された空間温度と、パーソナル空調装置から出力される空気の吹出風量及び吹出温度と、から算出される等価温度を、パーソナル空調装置毎に記録する。
【0022】
また、コンピュータは、第二記憶部に、パーソナル空調装置の使用履歴に基づいて、利用者毎に嗜好する等価温度を記録する。
【0023】
そして、利用者IDがパーソナル空調装置に入力されることで、制御部が、パーソナル空調装置の吹出風量及び吹出温度の少なくとも一方を制御する。これにより、利用者の好みの空調環境にすることができる。したがって、利用者は、好みの空調環境となるように、パーソナル空調装置を使用するごとに吹出風量及び吹出温度を調整する必要がない。
【発明の効果】
【0024】
本発明によると、利用者が異なる種類のパーソナル空調機器を使用する場合でも、利用者が吹出風量又は吹出温度を調整せずに好ましい空調環境を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る空調システム全体の構成の一例を示す構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る空調システムの電気的な構成の一例を示すブロック図である。
図3】本発明の実施形態に係る空調システムの機能的な構成の一例を示す機能ブロック図である。
図4】本発明の実施形態に係る空調システムの空調装置において、椅子と天蓋の双方から空調空気を吹き出す場合の風量と等価温度との関係を示すグラフである。
図5】本発明の実施形態に係る空調システムの空調装置において、椅子のみから空調空気を吹き出す場合の風量と等価温度との関係を示すグラフである。
図6】本発明の実施形態に係る空調システムの空調装置において、天蓋のみから空調空気を吹き出す場合の風量と等価温度との関係を示すグラフである。
図7】本発明の実施形態に係るパーソナル空調装置によるパーソナル空調処理の一例を示すフローチャートである。
図8】本発明の実施形態に係る中央制御装置によるパーソナル空調処理の一例を示すフローチャートである。
図9】本発明の実施形態に係る空調システムの空調装置における装置データベースの構成の一例を示す表である。
図10】本発明の実施形態に係る空調システムの空調装置における利用者データベースの構成の一例を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態に係る空調システム、空調方法及びプログラムについて、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において構成を省略する、又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0027】
<空調システム>
(全体構成)
図1には、本発明の実施形態に係る空調システム80の全体構成が示されている。空調システム80は、建物30又は建物32における室内空間Rに滞在する利用者毎に、それぞれの利用者の嗜好に応じた個別の空調空間を提供するためのシステムの一例である。
【0028】
空調システム80は、パーソナル空調装置(以下、「空調装置」と称す)10、20、22、24、26、28を含んで構成されている。空調装置10、20、22、24、26は建物30に配置され、空調装置28は建物32に配置されている。
【0029】
なお、これらの空調装置10、20、22、24、26、28は同じ建物に配置してもよいし、3つ以上の建物に分散して配置してもよい。空調システム80は、複数の空調装置を管理するシステムであり、これらの空調装置10、20、22、24、26、28は、1つの建物に配置してもよいし、複数の建物に配置してもよい。また、これらの空調装置10、20、22、24、26、28は同じ建物における同一の室内空間Rに配置してもよいし、それぞれ異なる室内空間Rに配置してもよい。
【0030】
さらに、空調システム80は、空調装置10、20、22、24、26、28の全てを備えている必要はなく、任意の空調装置10、20、22、24、26、28を、任意の数だけ備えるものとすることができる。例えば、空調システム80は、空調装置10のみを複数備えるもの、空調装置20のみを複数備えるもの、等とすることができる。
【0031】
また、空調システム80は、これらの空調装置10、20、22、24、26、28を一元管理するための中央制御装置50Aを備えている。詳しくは後述するが、空調装置10、20、22、24、26、28は、この中央制御装置50Aから提供される情報(「利用者情報」)に基づいて、各空調装置10、20、22、24、26、28を制御して、利用者毎に、嗜好に応じた個別の空調空間を提供することができる。
【0032】
さらに、空調システム80は、温度検出装置40を備えている。温度検出装置40は、空調装置10、20、22、24、26、28が設置される室内空間Rの温度を検出可能とされている。さらに、温度検出装置40は、室内空間Rを空調するための空調空気が流れる空調経路Vの温度を検出可能とされている。
【0033】
(パーソナル空調装置)
本発明におけるパーソナル空調装置の一例としての空調装置10は、室内空間Rに配置される打合せ用ブースの内部に組み込まれた個別空調(タスク空調)装置である。打合せ用ブースは、天蓋と、天蓋に囲われた空間に対面する一対の椅子と、を用いて形成された家具であり、任意のタイミングで室内空間Rに設置したり室内空間Rから撤去したりすることができる。
【0034】
空調装置10は、打合せ用ブースにおいて対面する一対の椅子毎に、着座する利用者に適した空調環境を提供することを目的として設けられる。空調装置10は、送風装置10Bと、入力装置10Cと、を備えている。また、空調装置10は、図1において図示しない制御装置10A(図2参照)を備えている。
【0035】
送風装置10Bは、ファン17C、17Dを備えている。ファン17Cは、椅子の座部及び背部の少なくとも一方から空調空気を吹き出す装置である。ファン17Dは、天蓋から空調空気を吹き出す装置である。図1に破線の矢印で示すように、ファン17C、17Dは、どちらか一方を駆動させてもよいし、双方を駆動させてもよい。
【0036】
空調装置10においてファン17C、17Dから吹き出される空調空気は、室内空間Rの下方に設けられた空調経路Vから空調装置10の内部に取り込まれる。
【0037】
入力装置10Cは、打合せブースにおいて利用者が視認及び接触可能な位置に配置され、図2に示すように、ID入力部17A及びモード入力部17Bを備えている。
【0038】
ID入力部17Aは、利用者IDが入力される入力端末である。利用者IDは、利用者を他の利用者と区別するための識別情報であり、利用者が携帯する社員証や通信機器等の任意の媒体に記録されている。利用者IDは、利用者が手動で入力してもよいし、ID入力部17Aが自動的に取得してもよい。
【0039】
モード入力部17Bは、利用者が送風装置10Bの運転開始、停止及び運転モードを選択して入力できる入力端末である。詳しくは後述するが、運転モードとしては、ファン17C、17Dの駆動及び停止と、ファン17C、17Dから吹き出される空調空気の風量と、を組み合わせた複数のモードが設けられている。空調装置10の利用者は、任意の運転モードを選択できる。また、利用者は、運転モードを選択しないこともできる。
【0040】
パーソナル空調装置の別の一例としての空調装置20は、室内空間Rに配置されるソファの内部に組み込まれた個別空調装置である。空調装置20は、空調装置10と同様に、送風装置20B、入力装置(図示略)及び制御装置(図示略)を備えている。
【0041】
送風装置20Bは、ファンを備えている。このファンは、室内空間Rの下方に設けられた空調経路Vから空調装置20の内部に取り込まれた空調空気を、ソファの座部及び背部の少なくとも一方から室内空間Rへ(利用者へ向けて)吹き出す装置である。
【0042】
パーソナル空調装置のまた別の一例としての空調装置22は、室内空間Rに配置される執務用机の下部空間へ空調経路Vから空調空気を吹き出す個別空調装置である。空調装置22は、空調装置10と同様に、送風装置22B、入力装置(図示略)及び制御装置(図示略)を備えている。
【0043】
送風装置22Bは、ファンを備えている。このファンは、室内空間Rの下方に設けられた空調経路Vから執務用机の下部空間へ空調空気を吹き出す装置である。
【0044】
パーソナル空調装置のさらに別の一例としての空調装置24は、室内空間Rに配置される椅子に組み込まれた個別空調装置である。空調装置24は、空調装置10と同様に、送風装置24B、入力装置(図示略)及び制御装置(図示略)を備えている。
【0045】
送風装置24Bは、ファンを備えている。このファンは、室内空間Rから空調装置24の内部に取り込まれた空調空気(室内空間Rの空気)を、椅子の座部及び背部の少なくとも一方から吹き出す装置である。
【0046】
パーソナル空調装置のさらに別の一例としての空調装置26は、室内空間Rに配置される執務用机の上部空間へ空調経路Vから空調空気を吹き出す個別空調装置である。空調装置26は、空調装置10と同様に、送風装置26B、入力装置(図示略)及び制御装置(図示略)を備えている。
【0047】
送風装置26Bは、1つのファンを備えている。このファンは、室内空間Rの上方に設けられた空調経路Vから執務用机の上部空間へ空調空気を吹き出す装置である。
【0048】
パーソナル空調装置のさらに別の一例としての空調装置28は、室内空間Rに配置される個別空調装置である。空調装置24は、空調装置10と同様に、送風装置28B、入力装置(図示略)及び制御装置(図示略)を備えている。
【0049】
空調装置28が配置される室内空間Rは、例えば駅や空港などに設置されるレンタルブースである。このレンタルブースは、利用者が一人で滞在することを想定して設けられた個別空間である。空調装置28は、このように個別空間である室内空間R全体を空調する。
【0050】
送風装置28Bは、熱交換器及びファンを備えている。この熱交換器は、室内空間Rから空調装置28の内部に取り込まれた空気(室内空間Rの空気)を加熱又は冷却する。また、ファンは、加熱又は冷却された空気を、室内空間Rへ向かって吹き出す装置である。
【0051】
このように、本発明におけるパーソナル空調装置とは、アンビエント空調がなされている、又は、なされていない広い空間において、個人または少人数が利用する一部分をタスク空調する装置のほか、個人または小人数が利用する狭い空間全体を空調する装置を含む。また、これらのパーソナル空調装置は、吹出空気の温度及び風量の少なくとも一方を制御できるものであればよい。
【0052】
<空調システムの電気的な構成>
空調システム80においては、図2に示すように、空調装置10、20、22、温度検出装置40、中央制御装置50Aが、各々ネットワーク60にアクセス可能とされている。なお、図2において図示を省略するが、上述した空調装置24、26、28も、ネットワーク60にアクセス可能とされている。
【0053】
(パーソナル空調装置)
まず、空調装置10の電気的な構成について説明する。空調装置10は、上述したように、制御装置10A、送風装置10B及び入力装置10Cを含んで構成されている。
【0054】
制御装置10Aは、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)11、一時記憶領域としてのメモリ12、不揮発性の記憶部13、タッチパネルや赤外線通信装置等の入力部14、液晶ディスプレイ等の表示部15、媒体読み書き装置(R/W)16、通信インタフェース(I/F)部18及び外部I/F部19を備えている。CPU11、メモリ12、記憶部13、入力部14、表示部15、媒体読み書き装置16、通信I/F部18及び外部I/F部19はバスB1を介して互いに接続されている。媒体読み書き装置16は、図示しない記録媒体(CD-ROM等)に書き込まれている情報の読み出し及び記録媒体への情報の書き込みを行う。入力部14及び表示部15は、適宜省略してもよい。
【0055】
記憶部13は、本発明における第一記憶部の一例であり、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部13には、空調制御プログラム13Aが記憶されている。空調制御プログラム13Aは、空調制御プログラム13Aが書き込まれた記録媒体が媒体読み書き装置16にセットされ、媒体読み書き装置16が記録媒体からの空調制御プログラム13Aの読み出しを行うことで、記憶部13へ記憶される。CPU11は、空調制御プログラム13Aを記憶部13から読み出してメモリ12に展開し、空調制御プログラム13Aが有するプロセスを順次実行する。
【0056】
また、記憶部13には、装置データベース13Bが記憶されている。装置データベース13Bについては、詳細を後述する。
【0057】
なお、本実施形態においては、外部I/F部19に入力装置10C(ID入力部17A及びモード入力部17B)及び送風装置10Bのファン17C、17Dが接続されている。送風装置10Bのファン17C、17Dは、制御装置10Aによって制御可能とされている。
【0058】
空調装置20、22、24、26、28の電気的な構成は、空調装置10と同様であり詳細な説明は省略する。
【0059】
(中央制御装置)
次に、中央制御装置50Aの電気的な構成について説明する。中央制御装置50Aは、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)51、一時記憶領域としてのメモリ52、不揮発性の記憶部53、タッチパネルや赤外線通信装置等の入力部54、液晶ディスプレイ等の表示部55、媒体読み書き装置(R/W)56、通信インタフェース(I/F)部58及び外部I/F部59を備えている。CPU51、メモリ52、記憶部53、入力部54、表示部55、媒体読み書き装置56、通信I/F部58及び外部I/F部59はバスB1を介して互いに接続されている。媒体読み書き装置56は、図示しない記録媒体(CD-ROM等)に書き込まれている情報の読み出し及び記録媒体への情報の書き込みを行う。入力部54及び表示部55は適宜省略してもよい。
【0060】
記憶部53は、本発明における第二記憶部の一例であり、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部53には、空調制御プログラム53Aが記憶されている。空調制御プログラム53Aは、空調制御プログラム53Aが書き込まれた記録媒体が媒体読み書き装置56にセットされ、媒体読み書き装置56が記録媒体からの空調制御プログラム53Aの読み出しを行うことで、記憶部53へ記憶される。空調制御プログラム53Aは、空調制御プログラム13Aと連動して実行される。CPU51は、空調制御プログラム53Aを記憶部53から読み出してメモリ52に展開し、空調制御プログラム13Aが有するプロセスを順次実行する。
【0061】
また、記憶部53には、利用者データベース53Bが記憶されている。利用者データベース53Bについては、詳細を後述する。
【0062】
<データベース>
(装置データベース)
図2及び図9に示す装置データベース13Bは、空調装置10から出力される空気(空調空気)の吹出風量及び吹出温度と、パーソナル空調装置が設置された空間温度と、から算出される等価温度が「等価温度対応情報」として記録されたデータベースである。
【0063】
図9に示されるように、装置データベース13Bには、後述する「通常モード」、「省エネモード」、「コンフォートモード」の各モードにおける「強モード」、「中モード」、「弱モード」に対応した風量[m3/h]と、温度差[℃]と、の組み合わせに対応した等価温度(T1、T2、…)[℃]が記録されている。この等価温度の導出方法は次の通りである。
【0064】
図4には、空調装置10における送風装置10Bのファン17C、17Dを駆動した場合の吹出空気の風量[m3/h]と、等価温度[℃]と、の関係が、室内空間Rと空調経路Vとの温度差[℃]毎に示されている。
【0065】
風量[m3/h]は、空調装置10の内部から、ファン17C、17Dを介して室内空間Rへ(空調装置10の利用者へ向けて)吹き出される吹出空気の風量である。
【0066】
等価温度[℃]は、利用者が感じる体感温度である。本明細書において、等価温度は、利用者がファン17C、17Dから吹き出される空調空気によって体感する体感温度と、室内空間Rの温度との差で示される。例えば図4における横軸の目盛り「-2」は、利用者がファン17C、17Dから吹き出される空調空気によって作り出される空調環境の温度を、室内空間Rより2[℃]低い温度として体感することを示している。
【0067】
室内空間Rと空調経路Vとの温度差[℃]は、温度検出装置40によって検出される室内空間Rの温度及び空調経路Vの温度から算出される。
【0068】
例を挙げて説明すると、図4においては、室内空間Rと空調経路Vとの温度差が2[℃]である(空調経路Vの温度が室内空間Rの温度より2度低い冷房時)場合における、風量[m3/h]と等価温度[℃]との関係が、「黒丸」で示されている。
【0069】
例えば、室内空間Rと空調経路Vとの温度差が2[℃]である(空調経路Vの温度が2度低い)場合において、風量が約480[m3/h]の場合、等価温度は約-2.7[℃]である(黒丸P1)。つまり利用者は、ファン17C、17Dから吹き出される空調空気によって、室内空間Rより、-2.7[℃]低いと体感できる空調環境を得ることができる。
【0070】
室内空間Rと空調経路Vとの温度差が2[℃]である場合における、風量[m3/h]と等価温度[℃]との関係は、予め公知のサーマルマネキンを用いて算出されている。
【0071】
サーマルマネキンには、室内空間Rより2[℃]低い空調空気を、様々な風量で、ファン17C、17Dを介して吹き付ける。これにより、風量毎の等価温度が、図4に複数の黒丸で示すように、グラフ上にプロットされる。
【0072】
さらに、これらの黒丸から近似直線L1を導出することで、室内空間Rと空調経路Vとの温度差が2[℃]である場合において、風量を変化させた場合の、等価温度の変化を一次的に導出できる。
【0073】
なお、図4には、室内空間Rと空調経路Vとの温度差が4[℃]である場合における、風量[m3/h]と等価温度[℃]との関係が、「白丸」で示されている(例えば白丸P2)。複数の白丸からは、近似直線L2が導出される。
【0074】
同様に、図4には、室内空間Rと空調経路Vとの温度差が6[℃]である場合における、風量[m3/h]と等価温度[℃]との関係が、「三角」で示されている(例えば三角P3)。複数の三角からは、近似直線L3が導出される。
【0075】
同様に、図4には、室内空間Rと空調経路Vとの温度差が8[℃]である場合における、風量[m3/h]と等価温度[℃]との関係が、「白四角」で示されている(例えば白四角P4)。複数の白四角からは、近似直線L4が導出される。
【0076】
同様に、図4には、室内空間Rと空調経路Vとの温度差が10[℃]である場合における、風量[m3/h]と等価温度[℃]との関係が、「黒四角」で示されている(例えば黒四角P5)。複数の黒四角からは、近似直線L5が導出される。
【0077】
以上説明したように、サーマルマネキンを用いることで、図4に示される、空調装置10における送風装置10Bのファン17C、17Dを駆動した場合の風量[m3/h]と、等価温度[℃]と、の関係が、室内空間Rと空調経路Vとの温度差[℃]毎に予め算出されている。そして、算出された関係が、図9に示すように、装置データベース13Bに記録されている。
【0078】
ここで、図5には、空調装置10における送風装置10Bのファン17Cを駆動し、ファン17Dを停止した場合の風量[m3/h]と、等価温度[℃]と、の関係が、室内空間Rと空調経路Vとの温度差[℃]毎に示されている。そして、算出された関係が、図9に示すように、装置データベース13Bに記録されている。
【0079】
同様に、図6には、空調装置10における送風装置10Bのファン17Dを駆動し、ファン17Cを停止した場合の風量[m3/h]と、等価温度[℃]と、の関係が、室内空間Rと空調経路Vとの温度差[℃]毎に示されている。そして、算出された関係が、図9に示すように、装置データベース13Bに記録されている。
【0080】
なお、利用者は、図4に示されるファン17C、17Dの双方を駆動するモードを、図9に示す「通常モード」として選択することができる。また、利用者は、通常モードにおける風量を、風量の強さに応じた「強モード」、「中モード」、「弱モード」として選択することができる。例えば「強モード」は風量が300[m3/h]であり、「中モード」は風量が200[m3/h]であり、「弱モード」は風量が100[m3/h]であるが、この風量は任意に設定できる。
【0081】
また、利用者は、図5に示されるファン17Cのみを駆動するモードを、図9に示す「省エネモード」として選択することができる。また、利用者は、省エネモードにおける風量を、風量の強さに応じた「強モード」、「中モード」、「弱モード」として選択することができる。例えば「強モード」は風量が250[m3/h]であり、「中モード」は風量が150[m3/h]であり、「弱モード」は風量が80[m3/h]であるが、この風量は任意に設定できる。
【0082】
さらに、利用者は、図6に示されるファン17Dのみを駆動するモードを、図9に示す「コンフォートモード」として選択することができる。また、利用者は、コンフォートモードにおける風量を、風量の強さに応じた「強モード」、「中モード」、「弱モード」として選択することができる。例えば「強モード」は風量が300[m3/h]であり、「中モード」は風量が200[m3/h]であり、「弱モード」は風量が100[m3/h]であるが、この風量は任意に設定できる。
【0083】
なお、利用者は、これらの「通常モード」、「省エネモード」、「コンフォートモード」、「強モード」、「中モード」、「弱モード」を選択しなくてもよい。本明細書においては、これらの選択可能な「通常モード」、「省エネモード」、「コンフォートモード」、「強モード」、「中モード」、「弱モード」を、総称して「運転モード」と記載している。運転モードは、上述したように、入力装置10Cにおけるモード入力部17Bを介して、空調装置10に入力される。
【0084】
また、図4図6を用いて示した風量[m3/h]と等価温度[℃]との関係は、各空調装置20、22、24、26、28毎に、予めサーマルマネキン又はコンピュータシミュレーションを用いて導出されている。また、導出された関係は、各空調装置20、22、24、26、28におけるそれぞれの装置データベースに、「等価温度対応情報」として記録されている。
【0085】
(利用者データベース)
図2及び図10に示す利用者データベース53Bは、空調装置10等の使用履歴に基づいて、利用者毎に嗜好する等価温度が記録されたデータベースである。
【0086】
図10に示すように、利用者データベース53Bには、複数の利用者毎に、「利用者ID」と、当該利用者が嗜好する等価温度である「利用者情報」とが、紐づけて記録されている。
【0087】
利用者データベース53Bに、「利用者ID」と「利用者情報」とを紐づけて記録する方法の一例を示す。
【0088】
まず、図1に示す建物30においては、建物30の管理者又は室内空間Rを利用するテナント等により、空調経路Vの温度(すなわち、空調空気の吹き出し温度)が設定されている。これにより、例えば室内空間Rと空調経路Vの温度差が4[℃]となっている。この温度差は、温度検出装置40によって検出される。
【0089】
ここで、建物30に滞在する利用者が空調装置10を利用する際に、上述した「通常モード」(ファン17C、17Dの双方を駆動)かつ「強モード」(風量300[m3/h])を選択する。この運転モードは、入力装置10Cにおけるモード入力部17Bを介して、空調装置10に入力される。また、空調装置10には、入力装置10CにおけるID入力部17Aを介して、「利用者ID」が入力される。
【0090】
空調装置10の装置データベース13Bには、図9に示すように、「通常モード」かつ「強モード」における風量と等価温度との関係が記録されている。ここで、室内空間Rと空調経路Vとの温度差が4[℃]である場合において「通常モード」かつ「強モード」(風量300[m3/h])を選択した際の等価温度は、約-3.3[℃]である(図4の近似直線L2参照)。
【0091】
このように、空調装置10における制御装置10Aは、装置データベース13Bに記録された情報を用いて、温度検出装置40によって検出された温度差、入力装置10Cに入力された入力値から、利用者が嗜好する等価温度を導出する。また、制御装置10Aは、利用者IDと、利用者が嗜好する等価温度とを紐づけた情報を、「利用者情報」として、中央制御装置50Aへ提示する。中央制御装置50Aは、利用者データベース53Bに、この「利用者情報」を記録する。
【0092】
<空調システムの機能的な構成>
次に、図3を参照して、本実施形態に係る空調システム80の機能的な構成について説明する。
【0093】
(パーソナル空調装置)
図3に示すように、空調装置10は、本発明における制御部の一例としての制御部11A、モード決定部11B、新規情報取得部11C、等価温度算出部11D、情報提示部11E及び情報取得部11Fを含んで構成されている。空調装置10のCPU11が空調制御プログラム13A(図2参照)を実行することで、CPU11は、制御部11A、モード決定部11B、新規情報取得部11C、等価温度算出部11D、情報提示部11E及び情報取得部11Fとして機能する。
【0094】
新規情報取得部11Cは、温度検出装置40が検出した、室内空間R及び空調経路Vの温度を示す「温度情報」を取得する。また、新規情報取得部11Cは、入力装置10Cに入力された「利用者ID」及び「運転開始/停止指示情報」を取得する。さらに、新規情報取得部11Cは、利用者が運転モードを選択した場合は、選択された運転モードを示す「運転モード情報」を取得する。
【0095】
等価温度算出部11Dは、新規情報取得部11Cから「温度情報」、「運転モード情報」を取得し、装置データベース13Bから「等価温度対応情報」を取得する。また、等価温度算出部11Dは、「温度情報」及び「運転モード情報」を「等価温度対応情報」と紐づけて、「等価温度」を算出する。すなわち、等価温度算出部11Dは、利用者が入力した運転モード情報から、利用者が嗜好する等価温度を算出する。
【0096】
情報提示部11Eは、新規情報取得部11Cから「利用者ID」を取得する。また、情報提示部11Eは、等価温度算出部11Dが算出した「等価温度」を取得する。
【0097】
また、情報提示部11Eは、空調装置10の利用者が運転モードを選択しなかった場合に、取得した「利用者ID」を中央制御装置50Aへ提示する。一方、情報提示部11Eは、空調装置10の利用者が運転モードを選択した場合には、取得した「利用者ID」及び「等価温度」を紐づけて、利用者が嗜好する等価温度の情報である「利用者情報」を、中央制御装置50Aへ提示する。
【0098】
モード決定部11Bは、利用者が運転モードを選択した場合は、新規情報取得部11Cから、「運転モード情報」を取得する。モード決定部11Bは、この「運転モード情報」を、送風装置17を制御する運転モードとして決定する。
【0099】
また、モード決定部11Bは、利用者が運転モードを選択しなかった場合は、新規情報取得部11Cから「温度情報」を取得し、装置データベース13Bから「等価温度対応情報」を取得し、情報取得部11Fから、利用者が嗜好する等価温度である「利用者情報」を取得する。
【0100】
さらに、モード決定部11Bは、「温度情報」及び「利用者情報」を「等価温度対応情報」と紐づけて、送風装置17を制御する運転モードを示す「運転モード情報」を決定する。
【0101】
情報取得部11Fは、中央制御装置50Aから、利用者が嗜好する等価温度である「利用者情報」を取得する。
【0102】
制御部11Aは、モード決定部11Bが決定した「運転モード情報」を取得し、この情報に基づいて、送風装置17を制御する。
【0103】
(中央制御装置)
図3に示すように、中央制御装置50Aは、ID取得部51A、利用者情報取得部51B及び情報提示部51Cを含んで構成されている。中央制御装置50AのCPU51が空調制御プログラム53A(図2参照)を実行することで、CPU51は、ID取得部51A、利用者情報取得部51B及び情報提示部51Cとして機能する。
【0104】
ID取得部51Aは、空調装置10の利用者が運転モードを選択しなかった場合に、空調装置10から「利用者ID」を取得する。ID取得部51Aは、空調装置20、22、24、26、28からも、これらの空調装置を利用する利用者の「利用者ID」を取得する。
【0105】
利用者情報取得部51Bは、空調装置10の利用者が運転モードを選択した場合に、空調装置10から利用者が嗜好する等価温度である「利用者情報」を取得し、利用者データベース53Bへ記録する。
【0106】
なお、利用者情報取得部51Bは、同じ利用者が異なる空調装置、一例として空調装置20を利用し、その際に運転モードを選択した場合は、その運転モードに基づく「等価温度」を取得し、この等価温度を最新の「利用者情報」として、利用者データベース53Bを上書きする。
【0107】
情報提示部51Cは、ID取得部から「利用者ID」を取得し、利用者データベース53Bから「利用者情報」の一覧を取得する。また、情報提示部51Cは、「利用者ID」と「利用者情報」の一覧とを紐づけて、空調装置10の利用者が嗜好する等価温度である「利用者情報」を抽出し、空調装置10へ提示する。
【0108】
<作用>
次に、図7図8を参照して、本実施形態に係る空調システム80の作用を説明する。
(パーソナル空調制御処理)
まず、空調装置10によるパーソナル空調処理について説明する。入力装置10C(図1参照)を介した運転開始指示及び利用者IDの入力に応じて、空調装置10のCPU11が空調制御プログラム13Aを実行することにより、図7に示すパーソナル空調制御処理が実行される。
【0109】
なお、錯綜を避けるため、中央制御装置50Aの利用者データベース53Bには、利用者が嗜好する等価温度が予め記録されている場合について説明する。また、以下の説明においては、図3に示した制御部11A、モード決定部11B、新規情報取得部11C、等価温度算出部11D、情報提示部11E及び情報取得部11Fは、単にCPU11として説明する。
【0110】
空調制御プログラム13Aの実行が開始されると、ステップS100で、CPU11が、入力装置10C及び温度検出装置40から情報を取得する。
【0111】
具体的には、CPU11は、入力装置10Cから利用者の「利用者ID」を取得する。また、CPU11は、温度検出装置40から「温度情報」を取得する。さらに、利用者が運転モードを選択した場合は、CPU11は、入力装置10Cから「運転モード情報」を取得する。
【0112】
ステップS102で、CPU11は、「運転モード情報」を取得したか否かを判定する。ステップS102で肯定判定となった場合は、ステップS104へ移行する。ステップS102で否定判定となった場合は、ステップS106へ移行する。
【0113】
ステップS104で、CPU11は、「等価温度」を算出する。この「等価温度」は、「温度情報」及び「運転モード情報」を、装置データベース13Bに記録された「等価温度対応情報」と紐づけて算出される。
【0114】
次に、ステップS108で、CPU11は、「利用者情報」を中央制御装置50Aへ提示する。具体的には、CPU11は、ステップS100で取得した「利用者ID」と、ステップS104で算出された「等価温度」とを紐づけて、利用者が嗜好する等価温度の情報である「利用者情報」を、中央制御装置50Aへ提示する。
【0115】
次に、ステップS110で、CPU11は、ステップS102で取得した「運転モード情報」に基づいて、送風装置17を制御する運転モードを示す「運転モード情報」を決定する。
【0116】
ここで、ステップS106で、CPU11は、ステップS100で取得した「利用者ID」を中央制御装置50Aへ提示する。これに応じて、中央制御装置50Aは、後述する利用者情報記録/提示処理を実行し、「利用者情報」をアクセス元の空調装置10に提示する。
【0117】
そこで、ステップS112で、CPU11は、中央制御装置50Aから「利用者情報」が取得されるまで待機する。「利用者情報」が取得されたら、ステップS114に移行する。
【0118】
ステップS114で、CPU11は、ステップS100で取得した「温度情報」と、ステップS112で取得した「利用者情報」に含まれる「等価温度」とを、装置データベース13Bに記録された「等価温度対応情報」と紐づけて、送風装置17を制御する運転モードを示す「運転モード情報」を決定する。
【0119】
ステップS116において、CPU11は、ステップS110又はステップS114で決定された「運転モード情報」に基づいて、送風装置を制御して、送風を開始する。
【0120】
次に、ステップS118で、CPU11は、この空調制御処理の終了タイミングが到来したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップS100に戻る一方、肯定判定となった時点でステップS120へ移行する。
【0121】
ステップS120で、CPU11は、送風装置17による送風を停止する。なお、本実施形態においては、空調制御処理の終了タイミングは、例えば入力装置10Cを介した運転停止指示操作によって終了される。
【0122】
(利用者情報記録/提示処理)
次に、中央制御装置50Aによる利用者情報記録/提示処理について説明する。上述したように、空調装置10の入力装置10C(図1参照)を介した運転開始指示及び利用者IDの入力に応じて、空調装置10は、中央制御装置50Aに「利用者ID」を提示する。この「利用者ID」を取得した場合に、中央制御装置50AのCPU51が空調制御プログラム53Aを実行することにより、図8に示す利用者情報記録/提示処理が実行される。
【0123】
図8のステップS202で、CPU51は、空調装置10から「利用者ID」と共に「利用者情報」を取得したか否かを判定する。ステップS202で肯定判定となった場合は、ステップS204へ移行する。ステップS202で否定判定となった場合は、ステップS206へ移行する。
【0124】
ステップS204では、CPU51は、利用者データベース53Bに、「利用者ID」と「利用者情報」とを紐づけて記録する。より具体的には、CPU51は、予め利用者データベース53Bに記録されていた「利用者情報」を、入力された新しい「利用者情報」で上書きし、その後に本利用者情報記録/提示処理を終了する。
【0125】
ステップS206で、CPU51は、利用者データベース53Bから、「利用者ID」と紐づけて記録された「利用者情報」を読み込む。ステップS206の次は、ステップS208に移行する。
【0126】
次に、ステップS208で、CPU51は、ステップS206で読み込まれた「利用者情報」を空調装置10へ提示し、その後に本利用者情報記録/提示処理を終了する。
【0127】
なお、中央制御装置50Aによる利用者情報記録/提示処理は、空調装置10だけでなく、空調装置20、22、24、26、28から「利用者ID」を取得した場合も、同様に実行される。
【0128】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る空調システム80においては、図9に示す装置データベース13Bに一例を示すように、各空調装置10、20、22、24、26、28が設置された空間(室内空間R)の温度と、各空調装置から出力される空気の吹出風量及び吹出温度(空調空間Vの温度)と、から算出される等価温度が、空調装置毎に記録されている。
【0129】
このため、各空調装置の制御装置は、等価温度及び空調装置が置かれている空間温度に応じて、吹出風量及び吹出温度の少なくとも一方を制御することができる。
【0130】
これにより、利用者が異なる種類の空調装置を使用する場合でも、それぞれの空調装置は、利用者毎の好みの等価温度に基づいて、吹出風量及び吹出温度が調整される。したがって、利用者は、空調装置を使用するごとに吹出風量及び吹出温度を調整する必要がない。
【0131】
なお、上記実施形態においては、建物30の管理者又は室内空間Rを利用するテナント等により、空調経路Vの温度(すなわち、空調空気の吹き出し温度)が設定されている。このため、各空調装置の制御装置(例えば空調装置10の制御装置10A)は空調空気の吹出温度を制御する必要はない(又は制御することができない)が、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0132】
例えば、熱交換機構を備えた空調装置を用いて、個別の空調装置毎に空調空気の吹出温度を調整してもよい。熱交換機構を備えた空調装置の一例としては、上述した空調装置28等が挙げられる。熱交換機構を備えた空調装置を用いれば、吹出風量を制御しないで吹出温度のみを制御する実施形態も採用できるし、吹出風量及び吹出温度の双方を制御する実施形態を採用できる。また、吹出温度を制御するためには、各空調装置が必ずしも熱交換装置を備えている必要はなく、例えば各空調装置の制御装置が、空調経路Vの温度を制御してもよい。
【0133】
また、本発明の実施形態に係る空調システム80においては、図10に示すように、利用者データベース53Bに、各空調装置10、20、22、24、26、28の使用履歴に基づいて、利用者毎に嗜好する等価温度(利用者情報)が記録されている。そして、制御装置(例えば制御装置10A)は、利用者データベース53Bに記録された等価温度に基づいて、空調装置(例えば空調装置10)を制御する。これにより、利用者が吹出風量及び吹出温度を入力することなく、また、等価温度を入力することなく、利用者が嗜好する空調環境を得ることができる。
【0134】
また、本発明の実施形態に係る空調システム80においては、図9に示すように、利用者が運転モードを選択することで、等価温度が切り替わる。これにより、効率よく好みの空調環境にすることができる。
【0135】
なお、本実施形態においては、空調装置10の運転モードを、「通常モード」、「省エネモード」、「コンフォートモード」の各モードと、「強モード」、「中モード」、「弱モード」の各モードと、の組み合わせ(合計9種類の組み合わせ)を選択できるものとしたが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0136】
例えば運転モードとして、「通常モード」、「省エネモード」、「コンフォートモード」のみを選択可能として、「強モード」、「中モード」、「弱モード」の各モードは選択できない(つまり、3種類のモードのみを選択可能)ものとしてもよい。あるいは、「強モード」、「中モード」、「弱モード」のみを選択可能として、「通常モード」、「省エネモード」、「コンフォートモード」の各モードは選択できないものとしてもよい。
【0137】
「強モード」、「中モード」、「弱モード」のみを選択可能とする空調装置としては、送風装置26Bとして1つのファンを備える空調装置26等が挙げられる。
【0138】
また、本発明の実施形態に係る空調方法は、図4図9を用いて一例を説明したように、各空調装置の装置データベース(例えば装置データベース13B)へ、各空調装置からそれぞれ出力される空気の吹出風量及び吹出温度と、各空調装置が設置された空間温度と、から算出される等価温度を、空調装置毎に記録する工程を備えている。
【0139】
また、本発明の実施形態に係る空調方法は、利用者データベース53Bへ、空調装置10、20、22、24、26、28の使用履歴に基づいて、利用者毎に嗜好する等価温度を記録する工程を備えている。
【0140】
さらに、本発明の実施形態に係る空調方法は、各空調装置の制御装置(例えば制御装置10A)へ、利用者IDを入力する工程と、制御装置が、入力された利用者ID及び利用者データベース53Bに記録された等価温度に基づいて空調装置の吹出風量及び吹出温度の少なくとも一方を制御する工程と、を備えている。
【0141】
このように、本発明の実施形態に係る空調方法では、利用者IDが空調装置に入力されることで、制御装置が、空調装置の吹出風量及び吹出温度の少なくとも一方を制御する。これにより、利用者が嗜好する空調環境にすることができる。したがって、利用者は、好みの空調環境となるように、空調装置を使用するごとに吹出風量及び吹出温度を調整する必要がない。
【0142】
なお、本実施形態においては、図2に示すように、各空調装置の制御装置(例えば制御装置10A)と、中央制御装置50Aとを、別々に設けられた構成として説明したが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0143】
例えば一部又は全ての空調装置の制御装置を、中央制御装置50Aと一体化させてもよい。この場合、各空調装置の装置データベースは、中央制御装置50Aの記憶部53に記憶される。また、制御装置をそれぞれの空調装置に設けて、各空調装置の装置データベースのみを、中央制御装置50Aの記憶部53に記憶してもよい。このように、各制御装置の電気的な構成は任意の構成を採用することができる。
【0144】
また、上記実施形態において、例えば、制御部11A、モード決定部11B、新規情報取得部11C、等価温度算出部11D、情報提示部11E及び情報取得部11Fの各処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。ID取得部51A、利用者情報取得部51B及び情報提示部51Cについても同様である。
【0145】
上記各種のプロセッサには、前述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0146】
処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0147】
処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0148】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。このように、本発明は様々な態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0149】
10 空調装置(パーソナル空調装置)
10A 制御装置
10B 送風装置
10C 入力装置
11A 制御部
11B モード決定部
11C 新規情報取得部
11D 等価温度算出部
11E 情報提示部
11F 情報取得部
13 記憶部(第一記憶部)
13A 空調制御プログラム
13B 装置データベース
20 空調装置(パーソナル空調装置)
22 空調装置(パーソナル空調装置)
24 空調装置(パーソナル空調装置)
26 空調装置(パーソナル空調装置)
28 空調装置(パーソナル空調装置)
40 温度検出装置
50A 中央制御装置
51A ID取得部
51B 利用者情報取得部
51C 情報提示部
53 記憶部(第二記憶部)
53A 空調制御プログラム
53B 利用者データベース
80 空調システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10