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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】構造躯体データ変換装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/23 20200101AFI20240319BHJP
   G06F 30/13 20200101ALI20240319BHJP
【FI】
G06F30/23
G06F30/13
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020186832
(22)【出願日】2020-11-09
(65)【公開番号】P2022076413
(43)【公開日】2022-05-19
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 実
(72)【発明者】
【氏名】伊東 晃子
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-052957(JP,A)
【文献】特開2009-093303(JP,A)
【文献】特開2009-266111(JP,A)
【文献】特開2006-350503(JP,A)
【文献】特開2016-146064(JP,A)
【文献】特開2006-277643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/23
G06F 30/13
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造躯体を構成する複数の3次元面材データを記憶可能な記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記3次元面材データを2次元面材データに変換するとともに、前記3次元面材データの厚み寸法を読み取る2次元変換部と、
備え、
前記2次元変換部は、
前記2次元面材データを、前記3次元面材データの厚み方向の所定位置に設定するとともに、
同一方向に沿って設けられる複数の前記2次元面材データの位置を、通り芯に合わせ、
前記通り芯は、前記記憶部に記憶されている、又は、操作部の操作によって設定される
ことを特徴とする構造躯体データ変換装置。
【請求項2】
前記2次元変換部は、
互いに当接していた2つの前記3次元面材データを変換した2つの前記2次元面材データの一方を延長することによって、当該2つの前記2次元面材データを当接させるとともに、
他方の前記2次元面材データのうち、当接部位よりも外側となる領域を省略する
ことを特徴とする請求項1に記載の構造躯体データ変換装置。
【請求項3】
前記2次元変換部は、前記3次元面材データにおける6つの面のうち、1番目に大きい面と2番目に大きい面との配列方向を厚み方向とする
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の構造躯体データ変換装置。
【請求項4】
前記3次元面材データには、開口が設定されており、
前記2次元面材データにおいて、前記開口を等価な矩形開口に変換する開口処理部を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の構造躯体データ変換装置。
【請求項5】
前記開口処理部は、所定距離以下に設けられた2つの前記開口を、これらを包絡する1つの前記矩形開口に変換する
ことを特徴とする請求項4に記載の構造躯体データ変換装置。
【請求項6】
前記開口処理部は、前記2次元面材データを複数の領域に分割し、前記矩形開口を等価な1以上の前記領域に移動させる
ことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の構造躯体データ変換装置。
【請求項7】
前記3次元面材データには、剛性が設定されており、
前記開口処理部は、前記3次元面材データに設定された前記剛性を当該3次元面材データに対応する前記2次元面材データに設定し、前記矩形開口が等価な前記領域が無い場合に、当該矩形開口を省略するとともに、省略された当該矩形開口に基づいて、当該矩形開口に対応する前記2次元面材データの前記剛性を調整する
ことを特徴とする請求項6に記載の構造躯体データ変換装置。
【請求項8】
前記記憶部には、前記構造躯体内に設けられる機器の位置及び重量に関する機器データが記憶されており、
前記機器データに基づいて、前記2次元面材データに前記機器の重量を設定する重量設定部を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の構造躯体データ変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造躯体を解析するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
構造躯体としての原子力発電施設は、多数の構造面材(耐力壁、床版等)によって構成されている。かかる原子力発電施設の地震応答解析を実行する場合には、質点系ばねマスモデルが用いられてきた。しかし、近年の電子計算機の発達に伴い、施設をより忠実にモデル化することが可能な3次元有限要素モデルが用いられるようになってきた。構造躯体の3次元有限要素モデルを作成する場合には、作業者が印刷図面を見ながら、構造躯体の形状、壁体の位置等をメッシュゼネレータに手作業で入力し、メッシュゼネレータの機能で要素分割した後、機器等の荷重を手作業で入力していた。このため、モデル作成に多大な時間を要するとともに、入力の間違いに対するチェック及び修正にも時間を要していた。これに対し、特許文献1には、3D-CADデータから3次元有限要素モデルを作成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6173884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術のように、3D-CADデータから3次元有限要素モデルをそのまま作成すると、ソリッド(3次元面材要素)となり要素数が膨大になるため、演算に時間を要する等の問題が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、前記した事情に鑑みて創案されたものであり、3次元有限要素モデルによる解析が可能な構造躯体のデータを効率的に生成することが可能な構造躯体データ変換装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の構造躯体データ変換装置は、構造躯体を構成する複数の3次元面材データを記憶可能な記憶部と、前記記憶部に記憶された前記3次元面材データを2次元面材データに変換するとともに、前記3次元面材データの厚み寸法を読み取る2次元変換部と、を備え、前記2次元変換部は、前記2次元面材データを、前記3次元面材データの厚み方向の所定位置に設定するとともに、同一方向に沿って設けられる複数の前記2次元面材データの位置を、通り芯に合わせ、前記通り芯は、前記記憶部に記憶されている、又は、操作部の操作によって設定されることを特徴とする。
かかる構成によると、設計時に作成された構造躯体に関するデータ(3D-CADデータ等)を用いて、解析に好適な3次元有限要素モデルを生成することができる。
また、かかる構成によると、厚みが異なる3次元面材データが存在する場合等においても、解析に好適な3次元有限要素モデルを生成することができる。
【0007】
前記2次元変換部は、互いに当接していた2つの前記3次元面材データを変換した2つの前記2次元面材データの一方を延長することによって、当該2つの前記2次元面材データを当接させるとともに、他方の前記2次元面材データのうち、当接部位よりも外側となる領域を省略する構成であってもよい。
かかる構成によると、厚みが省略された2次元面材データを好適に組み直し、解析に好適な3次元有限要素モデルを生成することができる。
また、前記2次元変換部は、前記3次元面材データにおける6つの面のうち、1番目に大きい面と2番目に大きい面との配列方向を厚み方向とする構成であってもよい。
かかる構成によると、3次元面材データの厚み方向を好適に認識し、当該認識結果に基づいて、3次元面材データを2次元面材データに好適に変換することができる。
【0008】
前記3次元面材データには、開口(例えば、円形状、多角形状等の多種の開口)が設定されており、構造躯体データ変換装置は、前記2次元面材データにおいて、前記開口を等価な矩形開口に変換する開口処理部を備える構成であってもよい。
かかる構成によると、開口形状を簡素化することによって、解析時間を短縮するとともに不整形なメッシュが生じることによる解析精度の低下を防止することができる。
前記開口処理部は、所定距離以下に設けられた2つの前記開口を、これらを包絡する1つの前記矩形開口に変換する構成であってもよい。
かかる構成によると、開口数を低減することによって、3次元有限要素モデル作成時間及び解析時間を短縮することができる。
また、前記開口処理部は、前記2次元面材データを複数の領域に分割し、前記矩形開口を等価な1以上の前記領域に移動させる構成であってもよい。
かかる構成によると、2次元面材データの要素分割の複雑化を防止することによって、解析時間を短縮するとともに解析精度を向上することができる。
【0009】
前記3次元面材データには、剛性が設定されており、前記開口処理部は、前記3次元面材データに設定された前記剛性を当該3次元面材データに対応する前記2次元面材データに設定し、前記矩形開口が等価な前記領域が無い場合に、当該矩形開口を省略するとともに、省略された当該矩形開口に基づいて、当該矩形開口に対応する前記2次元面材データの前記剛性を調整する構成であってもよい。
かかる構成によると、2次元面材データにおける分割された領域を小さくし過ぎることなく、小さい矩形開口による剛性低下を考慮した解析を可能とする。
【0010】
前記記憶部には、前記構造躯体内に設けられる機器の位置及び重量に関する機器データが記憶されており、構造躯体データ変換装置は、前記機器データに基づいて、前記2次元面材データに前記機器の重量を設定する重量設定部を備える構成であってもよい。
かかる構成によると、機器荷重の設定を正確かつ短時間で実行することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、3次元面材データを2次元面材データに変換することによって、ソリッド要素(3次元面材要素)ではなく、シェル要素(2次元面材要素)によって構成される構造躯体の3次元有限要素モデルを効率的に生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る構造躯体データ変換装置を模式的に示すブロック図である。
図2】構造躯体を模式的に示す斜視図である。
図3】3次元面材データを2次元面材データに変換する例を模式的に示す図である。
図4】3次元面材データを2次元面材データに変換する例を模式的に示す図である。
図5】2次元面材データの延長及び省略の処理を模式的に示す図である。
図6】2次元面材データの延長及び省略の処理を模式的に示す図である。
図7】2次元面材データの位置を通り芯に合わせる例を模式的に示す図である。
図8】(a)(b)は、開口を等価な矩形開口に変換する例を模式的に示す図である。
図9】(a)~(c)は、複数の開口を包絡した等価な矩形開口に変換する例を模式的に示す図である。
図10】矩形開口の位置を2次元面材データに設定されたメッシュ状の矩形要素に移動させる例を模式的に示す図である。
図11】機器の重量を2次元面材データに設定する例を模式的に示す図である。
図12】本発明の実施形態に係る構造躯体データ変換装置の動作例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、構造躯体としての原子力発電施設を解析するための3次元有限要素モデルを作成する場合を例にとり、適宜図面を参照して説明する。図1に示すように、本発明の実施形態に係る構造躯体データ変換装置1は、操作部2と、表示部3と、制御部10と、を備える。
【0014】
<操作部及び表示部>
操作部2は、キーボード、マウス等によって構成されており、ユーザによる操作結果を制御部10へ出力する。表示部3は、ディスプレイ等によって構成されており、制御部10からの出力に基づいて画像を表示する。
【0015】
<制御部>
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力回路等によって構成されており、操作部2の操作結果に基づく演算処理を実行したり、表示部3に画像を表示させたりする。制御部10は、機能部として、記憶部11と、2次元変換部12と、開口処理部13と、重量設定部14と、を備える。
【0016】
≪記憶部≫
記憶部11は、例えば構造躯体の設計時に作成された構造躯体データを記憶可能である。構造躯体データには、構造躯体を構成する3次元面材に関するデータ(3次元面材データ20)と、当該3次元面材の剛性に関するデータと、が含まれる。3次元面材データ20は、平板状の直方体形状を呈する3次元面材の8つの角の位置データ(3次元座標)が含まれる。また、3次元面材データ20には、水平方向に延在する床版に関するデータ(3次元床面データ21)と、下階の床版と上階の床版(天井面)との間に架設されて鉛直方向に延在する壁体に関するデータ(3次元壁面データ22)と、が含まれる(図2参照)。なお、図2等には、3次元面材データ20の3次元床面データ21及び3次元壁面データ22として、当該データに基づいて表示部3に表示される3次元面材モデルの3次元床面モデル及び3次元壁面モデルが図示されている。
構造躯体データには、通り芯23(図7参照)に関するデータが含まれる。通り芯23に関しては、後で詳細に説明する。また、構造躯体データには、構造躯体内に設けられる機器のID、位置、形状及び重量に関するデータ(機器データ)が含まれる。
なお、機器データにおける荷重は、構造躯体データには含まれず、構造躯体データとは別のリスト(機器のID及び荷重が関連付けられた機器荷重リスト)として設けられてもよい。また、構造躯体データ及び機器荷重リストは、それぞれ別の記憶部11に記憶されていてもよい。
【0017】
≪2次元変換部≫
2次元変換部12は、記憶部11に記憶された3次元面材データ20を読み出し、読み出されたソリッドである3次元面材データ20を、当該3次元面材データ30の厚み方向を特定することによって、当該3次元面材データ20の厚み方向と交差する(直交する)シェルである2次元面材データ30に変換し、変換結果を記憶部11に記憶させたり開口処理部13へ出力したりする。また、2次元変換部12は、前記したように2次元面材データ30の元の3次元面材データ30の厚み方向を特定することによって、元の3次元面材データ20の厚み寸法を読み取る。2次元面材データ30には、矩形状を呈する2次元面材の4つの角の位置データ(3次元座標)と、元の3次元面材データ20の厚み寸法と、が含まれる。元の3次元面材データ20の厚み寸法は、3次元有限要素モデルを解析する際に用いられる。
2次元変換部12は、3次元面材データ20に含まれる8つの角の位置データに基づいて、直方体形状である3次元面材の6つの面の面積を算出する。また、2次元変換部12は、算出された6つの面の面積に基づいて、1番目に大きい面と2番目に大きい面(1番目と同じ大きさである場合を含む)との配列方向(対向方向)を厚み方向とし、当該厚み方向の中央部に2次元面材モデルが位置するように、2次元面材データ30を設定する。1番目に大きい面と2番目に大きい面とが同じ大きさ(かつ同じ形状)である場合には、2次元面材データ30による2次元面材モデルは、これらと同じ大きさ(かつ同じ形状)の面が1番目に大きい面と2番目に大きい面と間の中央に位置する。また、2次元変換部12は、3次元面材データ20に含まれる8つの角の位置データに基づいて、3次元面材データ20の厚み寸法を読み取る(算出する)ことができる。
【0018】
1番目に大きい面と2番目に大きい面との形状が異なる場合には、2次元変換部12は、3次元面材データ20における厚み方向の中央部であって、厚み方向と直交する断面形状(当該断面の4つの角の位置データ)を、2次元面材データ30として採用する。
また、2次元変換部12は、3次元面材データにおける8つの角の位置データに基づいて、3次元面材データ(直方体)20の体積V1を算出する。2次元変換部12は、2次元面材データ(長方形)30における4つの角の位置データに基づいて、2次元面材データ30の面積を算出するとともに、当該面積及び3次元面材データ20の厚みを掛け合わせることによって、3次元面材データ(直方体)20の体積V2を算出する。
2次元変換部12は、体積V1,V2に基づいて、2次元面材データがOKであるかNGであるかを判定する。一例として、2次元変換部12は、体積V1と体積V2との差(V1-V2)の絶対値が閾値以下である場合に、2次元面材データ30はOK(好適)であると判定する。また、2次元変換部12は、体積V1と体積V2との差(V1-V2)の絶対値が閾値よりも大きい場合に、2次元面材データ30はNG(不適)であると判定する。2次元変換部12は、NGであると判定された2次元面材データ30に対応する3次元面材データ30を表示部3に表示させる。この場合、2次元変換部12は、ユーザによる操作部2の操作結果に基づいて、3次元面材データ20に対応する2次元面材データ30を取得する。また、前記閾値は、ユーザによる操作部2の操作結果に基づいて適宜設定可能である。
【0019】
例えば、図3に示すように、互いに当接する3次元床面データ21及び3次元壁面データ22a,22bは、それぞれ、2次元床面データ31及び2次元壁面データ32a,32bに変換される。すなわち、3次元面材モデルである床版(3次元床面モデル)及び壁体(3次元壁面モデル)は、2次元面材モデルである床面(2次元床面モデル)及び壁面(2次元壁面モデル)に変換される。なお、図3等には、2次元面材データ30の2次元床面データ31及び2次元壁面データ32として、当該データに基づいて表示部3に表示される2次元面材モデルの2次元床面モデル及び2次元壁面モデルが図示されている。また、図3以降の図面では、図示の都合上、2次元面材モデルに若干の厚みを持たせているが、2次元面材モデルは、厚みを有しない平面として表示部3に表示される。すなわち、2次元面材データ30に含まれる元の3次元面材データ20の厚み寸法は、2次元面材データ30の表示部3への表示には用いられず、解析に用いられる。3次元床面データ21及び3次元壁面データ22a,22bが2次元床面データ31及び2次元壁面データ32a,32bに変換されると、2次元壁面データ32a,32bは、3次元床面データ21の厚みの半分だけ、2次元床面データ31から離間した状態となる。また、2次元床面データ31の両端部は、3次元壁面データ22a,22bの厚みの半分だけ、2次元壁面データ32a,32bから外方にはみ出した状態となる。
【0020】
また、図4に示すように、互いに当接する3次元壁面データ22c,22d,22eは、それぞれ、2次元壁面データ32c,32d,32eに変換される。3次元壁面データ22c,22d,22eが2次元壁面データ32c,32d,32eに変換されると、2次元壁面データ32d,32eは、3次元壁面データ22cの厚みの半分だけ、2次元壁面データ32cから離間した状態となる。また、2次元壁面データ32cの両端部は、3次元壁面データ22d,22eの厚みの半分だけ、2次元壁面データ32d,32eから外方にはみ出した状態となる。
【0021】
2次元変換部12は、互いに当接していた2つの3次元面材データ20を変換した2つの2次元面材データ30の一方を延長することによって、2つの2次元面材データ30を当接させる。また、2次元変換部12は、他方の2次元面材データ30のうち、当接部位よりも外側となる領域を省略する。
【0022】
例えば、図3の例では、2次元変換部12は、図5に示すように、2次元壁面データ32a,32bの上端部(2次元床面データ31側の端部)を延長し、2次元床面データ31に当接させる。また、2次元変換部12は、2次元床面データ31のうち、当接した2次元壁面データ32a,32bよりも外方となる領域を省略する。
また、図4の例では、2次元変換部12は、図6に示すように、2次元壁面データ32d,32eの前端部(2次元壁面データ32c側の端部)を延長し、2次元壁面データ32cに当接させる。また、2次元変換部12は、2次元壁面データ32cのうち、当接した2次元壁面データ32d,32eよりも外方となる領域を省略する。
【0023】
本実施形態において、2次元変換部12は、2次元面材データ30のうち、他の2次元面材データ30と離間している端部を、当該端部の先にある直近の通り芯23(後記する)まで延長することによって他の2次元面材データ30と当接させる。なお、2次元変換部12は、2次元壁面データ32の延長が必要であるか否かを判定する構成であってもよい。この場合には、2次元変換部12は、2次元壁面データ32の端部から所定長さ(後記する矩形要素の一辺の長さ)、又は、後記する隣の通り芯23(図7参照)までの範囲に他の2次元面材データ30が存在するか否かを判定する。そして、2次元変換部12は、他の2次元面材データ30が存在する場合に、2次元壁面データ32を延長し、他の2次元面材データ30と当接させる。また、2次元変換部12は、他の2次元面材データ30が存在しない場合には、2次元壁面データ32を延長しない。
【0024】
2次元変換部12は、同一方向に沿って設けられる複数の2次元面材データ30(2次元壁面データ32)の位置を、通り芯23(23a~23e)に合わせる。ここで、通り芯23は、各階に対して、平面視で互いに直交する方向に設けられる複数の基準位置(軸線)である。かかる処理は、前記した2次元面材30の延長及び部分的省略の前に実行されてもよく、後に実行されてもよい。
図7に示す例において、同一方向に沿って設けられる3次元壁面データ22f,22gは、厚みが異なっている。そのため、2次元変換部12が厚みの中央に2次元壁面データ32f,32gを設定した場合には、これらの位置がずれてしまう。この場合には、2次元変換部12は、3次元壁面データ22f,22gに対して設定された通り芯23aの位置に、2次元壁面データ32f,32gを設定する。また、同一方向に沿って設けられる3次元壁面データ22h,22iは、同じ厚みを有するものの、厚み方向に若干ずれている。この場合にも、2次元変換部12は、3次元壁面データ22h,22iに対して設定された通り芯23bの位置に、2次元壁面データ32h,32iを設定する。
【0025】
≪開口処理部≫
図1に示すように、開口処理部13は、記憶部11に記憶されたデータ及び/又は2次元変換部12から出力されたデータに基づいて、3次元面材データ20(3次元壁面データ22)に設定された開口24を、構造計算的に等価な矩形開口34に変換し、変換結果を含む2次元面材データ30を記憶部11に記憶させたり重量設定部14へ出力したりする。詳細には、開口処理部13は、2次元面材データ30(2次元壁面データ32)に対して、開口24に外接する矩形開口34を設定する。
【0026】
(矩形開口への変換処理)
例えば、図8(a)に示すように、直径Rの円形状を呈する開口24aは、当該開口24aに外接する1辺の長さがRの正方形状の矩形開口34aに変換される。また、図8(b)に示すように、横方向寸法B、高さ方向寸法hのL字形状の開口24bは、当該開口24bに外接する1辺の長さがそれぞれB,hの長方形状の矩形開口34bに変換される。
なお、開口24を構造計算的に等価な矩形開口に変換する手法として、開口処理部13は、円形状、L字形状等を呈する開口24を、当該開口24と同一面積の矩形開口に変換する構成であってもよい。この場合には、開口処理部13は、変換後の矩形(正方形)開口の重心位置を、変換前の開口24の重心位置と一致させる構成であってもよい。
【0027】
(2つの開口(矩形開口)の包絡処理)
また、開口処理部13は、2つの矩形開口34の距離(上下方向又は左右方向の距離)が所定距離以下である場合に、2つの矩形開口34を包絡した1つの矩形開口34に変換する。詳細には、開口処理部13は、2次元面材データ30(2次元壁面データ32)に対して、2つの矩形開口34,34に外接する1つの矩形開口34を設定する。図9に示す例において、矩形開口34c,34dの間の距離αは、所定距離以下である。開口処理部13は、所定距離以下に設けられている矩形開口34c,34dを、当該矩形開口34c,24dに外接する1つの矩形開口34fに変換する(図9(a)→(b))。ここで、矩形開口34e,24fの間の距離αは、所定距離以下である。続いて、開口処理部13は、所定距離以下に設けられている矩形開口34e,34fを、矩形開口34e,34fに外接する1つの矩形開口34gに変換する(図9(b)→(c))。開口処理部13は、2つの開口24を包絡しつつ矩形開口34へ変換することによって、包絡処理及び矩形開口34への変換処理を同時に実行することもできる。
【0028】
(矩形開口の移動)
また、開口処理部13は、矩形開口34を、開口面積が等価となる位置に移動させる。図10(a)に示すように、開口処理部13は、2次元面材データ30(2次元壁面データ32)を、メッシュ状(格子状)に分割する。ここで、開口処理部13は、2次元面材データ30に設けられた矩形開口34を考慮せず(無視して)、メッシュ状の矩形要素を設定する。続いて、図10(b)に示すように、開口処理部13は、矩形開口34を予め設定された(又は、操作部2の操作結果に応じた)分割数、又は、矩形要素の大きさ(形状)に応じて設定された矩形開口34用のメッシュ(開口用矩形要素)の大きさ(形状)に基づいて、メッシュ状に分割する。続いて、図10(c)に示すように、開口処理部13は、メッシュ状に分割された矩形開口34の矩形要素(開口用矩形要素)それぞれの重心位置gを算出する。続いて、図10(d)に示すように、開口処理部13は、算出された重心位置gが含まれる2次元面材データ30の要素を特定する。続いて、図10(e)に示すように、開口処理部13は、重心位置gが含まれる2次元面材データ30の要素の集合を、移動先の矩形開口34として設定する。
矩形要素の大きさ、及び、開口用矩形要素の大きさは、ユーザによる操作部2の操作結果に基づいて適宜設定可能である。例えば、2次元面材データ30に設定される矩形要素の大きさは、例えば2m×2m前後に設定可能である。かかる矩形要素の大きさは、通り芯の23の間隔によって変わる。また、矩形開口34を分割する際の1メッシュ(開口用矩形要素)の大きさは、例えば1m×1m以下、すなわち、矩形要素の1/4以下に設定可能である。
【0029】
(矩形開口の省略)
また、開口処理部13は、包絡処理が実行された後の矩形開口34が等価な2次元面材データ30の要素(領域)が無い場合には、矩形開口34を省略する。ここで、開口処理部13は、矩形開口34の面積が2次元面材データ30のメッシュ状に分割された矩形要素の面積の所定割合以下である場合に、等価な領域が無いと判定する。この場合、開口処理部13は、省略された矩形開口34の面積に基づいて、当該矩形開口34が設けられていた2次元面材データ30の剛性を調整する(低下させる)。なお、矩形開口34の省略は、矩形開口34の大きさが例えば1m×1m以下、すなわち、2次元面材データ30に設定される矩形要素の1/4以下である場合に実行可能である。
【0030】
≪重量設定部≫
重量設定部14は、記憶部11に記憶されたデータ及び/又は2次元変換部12から出力されたデータに基づいて、2次元面材データ30(2次元床面データ31)に機器の重量を設定する。本実施形態において、重量設定部14は、記憶部11に記憶された機器データ(及び、当該機器データとは別に設けられた機器荷重リスト)に基づいて、機器データ及び機器荷重リストを同じ機器IDで参照することによって同じ機器IDの位置、重量等を読み出し、2次元面材データ30(2次元床面データ31)に機器の重量を設定する。図11に示すように、重量設定部14は、2次元面材データ30(2次元床面データ31)にメッシュ(格子状に分割された矩形要素)を設定する。続いて、重量設定部14は、機器データ40(機器モデルの位置及び形状)に基づいて、当該機器データ40が載置された部位の下に位置するメッシュの節点を特定し、特定された節点に、機器データ(機器荷重リスト)40の重量を均等に配分して設定する。例えば、機器データ40aの重量は、当該機器データ(機器モデル)40aと重なる4つの節点P~Pに対して、4等分して設定される。また、節点と重ならない機器データ(機器モデル)40bの重量は、機器データ40bの位置の重心から最も近い節点Pに設定される。
【0031】
<動作例>
続いて、本発明の実施形態に係る構造躯体データ変換装置1の動作例について、図12のフローチャートを参照して説明する。まず、制御部10は、操作部2の操作結果等に基づいて、構造躯体データを記憶部11に記憶させる(ステップS1)。続いて、2次元変換部12は、記憶部11に記憶された3次元面材データ20を抽出し(読み出し)(ステップS2)、抽出された3次元面材データ20を2次元面材データ30に変換する(ステップS3)。続いて、2次元変換部12は、記憶部11に記憶された通り芯23に関するデータを抽出し(読み出し)、抽出された通り芯23を2次元面材データ30によって構成される構造躯体データに設定する(ステップS4)。ステップS4において、2次元変換部12は、操作部2の操作結果に基づいて、通り芯23を設定することも可能である。続いて、2次元変換部12は、通り芯23に合わせて2次元面材データ30を移動させる(ステップS5)。続いて、2次元変換部12は、2次元面材データ30(2次元壁面データ32)を延長し、これと交差する方向に延設される2次元面材データ30(2次元床面データ31又は2次元壁面データ32)と当接させる(ステップS6)。また、2次元変換部12は、2次元面材データ30のうち、かかる当接によって不要となる部位を省略する(ステップS7)。
【0032】
続いて、開口処理部13は、3次元面材データ20に含まれる開口24を矩形開口34に変換し、2次元面材データ30に設定する(ステップS8)。ここで、開口処理部13は、近接する2つの矩形開口34を包絡して1つの矩形開口34に変換する(ステップS9)。続いて、開口処理部13は、記憶部11に記憶された3次元面材データ20に対応する剛性を抽出し、対応する2次元面材データ30に設定する。また、開口処理部13は、小さい矩形開口34を省略するとともに、省略された矩形開口34に応じて、2次元面材データ30の剛性を調整する(ステップS9)。
【0033】
続いて、開口処理部13及び重量設定部14は、2次元面材データ30をメッシュ状に分割する(ステップS10)。続いて、開口処理部13は、矩形開口34を2次元面材データ30(2次元壁面データ32)におけるメッシュ状の矩形要素に合わせて移動させ、移動先に矩形開口34を設定する(移動先の矩形要素を削除する)(ステップS11)。また、重量設定部14は、機器データ40が設けられた2次元面材データ30(2次元床面データ31)におけるメッシュ状の矩形要素の節点を抽出する(ステップS12)。続いて、重量設定部14は、抽出された節点に機器データ40の重量を配分して設定する(ステップS13)。ここで、ステップS11と、ステップS12,S13とは、順番を入れ替えてもよく、同時に実行されてもよい。
なお、開口24の近辺に機器が設置されているケースにおいて、ステップS13をステップS12よりも先に実行する場合には、矩形開口34の移動によって機器が設定された節点が削除される可能性がある。そのため、本フローは、ステップS12をステップS13よりも先に実行することが望ましい。
【0034】
本発明の実施形態に係る構造躯体データ変換装置1は、構造躯体を構成する複数の3次元面材データ20を記憶可能な記憶部11と、前記記憶部11に記憶された前記3次元面材データ20を2次元面材データ30に変換するとともに、前記3次元面材データの厚み寸法を読み取る2次元変換部12と、を備える。
したがって、構造躯体データ変換装置1は、設計時に作成された構造躯体に関するデータ(3D-CADデータ等)を用いて、ソリッド要素(3次元面材要素)ではなくシェル要素(2次元面材要素)によって構成されており、解析に好適な3次元有限要素モデルを生成することができる。
【0035】
前記2次元変換部12は、互いに当接していた2つの前記3次元面材データ20を変換した2つの前記2次元面材データ30の一方を延長することによって、当該2つの前記2次元面材データ30を当接させるとともに、他方の前記2次元面材データ30のうち、当接部位よりも外側となる領域を省略する。
したがって、構造躯体データ変換装置1は、厚みが省略された2次元面材データ30を好適に組み直し、解析に好適な3次元有限要素モデルを生成することができる。
また、前記2次元変換部12は、前記2次元面材データ30を、前記3次元面材データ20の厚み方向の所定位置に設定するとともに、同一方向に沿って設けられる複数の前記2次元面材データ30の位置を、通り芯23に合わせる。
したがって、構造躯体データ変換装置1は、厚みが異なる3次元面材データ20が存在する場合等においても、解析に好適な3次元有限要素モデルを生成することができる。
また、前記2次元変換部12は、前記3次元面材データ20における6つの面のうち、1番目に大きい面と2番目に大きい面との配列方向を厚み方向とする。
したがって、構造躯体データ変換装置1は、3次元面材データ20の厚み方向を好適に認識し、当該認識結果に基づいて、3次元面材データ20を2次元面材データ30に好適に変換することができる。
【0036】
前記3次元面材データ20には、開口(例えば、円形状、多角形状等の多種の開口)24が設定されており、構造躯体データ変換装置1は、前記2次元面材データ30において、前記開口24を等価な矩形開口34に変換する開口処理部13を備える。
したがって、構造躯体データ変換装置1は、開口形状を簡素化することによって、解析時間を短縮するとともに不整形なメッシュが生じることによる解析精度の低下を防止することができる。
また、前記開口処理部13は、所定距離以下に設けられた2つの前記開口24を、これらを包絡する1つの前記矩形開口34に変換する。
したがって、構造躯体データ変換装置1は、開口数を低減することによって、3次元有限要素モデル作成時間及び解析時間を短縮することができる。
また、前記開口処理部13は、前記2次元面材データ30を複数の領域に分割し、前記矩形開口34を等価な1以上の前記領域に移動させる。
したがって、構造躯体データ変換装置1は、2次元面材データ30の要素分割の複雑化を防止することによって、解析時間を短縮するとともに解析精度を向上することができる。
【0037】
前記3次元面材データ20には、剛性が設定されており、前記開口処理部13は、前記矩形開口34と等価な前記領域が無い場合(例えば、矩形開口34が前記領域の所定割合よりも小さい場合)に、当該矩形開口34を省略するとともに、当該矩形開口34に基づいて前記剛性を調整する。
したがって、構造躯体データ変換装置1は、2次元面材データ30における分割された領域を小さくし過ぎることなく、小さい矩形開口34による剛性低下を考慮した解析を可能とする。
【0038】
前記記憶部11には、前記構造躯体内に設けられる機器の位置及び重量に関する機器データ40が記憶されており、構造躯体データ変換装置1は、前記機器データ40に基づいて、前記2次元面材データ30に前記機器の重量を設定する重量設定部14を備える。
したがって、構造躯体データ変換装置1は、機器荷重の設定を正確かつ短時間で実行することができる。
なお、機器データにおける重量(荷重)は、構造躯体を構成する複数の3次元面材データ20とは別のリスト(機器のID及び荷重が関連付けられた機器荷重リスト)として設けられてもよい。また、構造躯体を構成する複数の3次元面材データ20及び機器の位置に関するデータと、機器荷重リストとは、それぞれ別の記憶部11に記憶されていてもよい。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、本発明は、3次元面材によって構成される原子力発電施設以外の構造躯体の解析に対して適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 構造躯体データ変換装置
11 記憶部
12 2次元変換部
13 開口処理部
14 重量設定部
20 3次元面材データ
21 3次元床面データ
22 3次元壁面データ
23 通り芯
24 開口(開口データ、開口モデル)
30 2次元面材データ(2次元面材モデル)
31 2次元床面データ(2次元床面モデル)
32 2次元壁面データ(2次元壁面モデル)
34 矩形開口(矩形開口、矩形開口モデル)
40 機器データ(機器モデル)
図1
図2
図3
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図5
図6
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図11
図12