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特許7456934予め作製された付着点を有する組織移植片
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】予め作製された付着点を有する組織移植片
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/02 20060101AFI20240319BHJP
   A61L 27/24 20060101ALI20240319BHJP
   A61L 27/22 20060101ALI20240319BHJP
   A61L 27/20 20060101ALI20240319BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20240319BHJP
   A61L 27/36 20060101ALI20240319BHJP
   A61L 27/54 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
A61F2/02
A61L27/24
A61L27/22
A61L27/20
A61L27/18
A61L27/36 430
A61L27/54
A61L27/36 100
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020555913
(86)(22)【出願日】2019-04-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 US2019027046
(87)【国際公開番号】W WO2019200144
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-01-31
(31)【優先権主張番号】62/656,735
(32)【優先日】2018-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517415528
【氏名又は名称】アクソジェン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ダイスター,カート アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ティンネメイヤー,ジョナサン アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】グラヤム,カーク マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ヒリアー,シェイマス
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0049553(US,A1)
【文献】特表2018-507037(JP,A)
【文献】特表2015-531684(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0324904(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0024885(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0367807(US,A1)
【文献】米国特許第06632239(US,B2)
【文献】米国特許第05972371(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0010275(US,A1)
【文献】米国特許第08100963(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/02
A61L 27/36
A61L 27/24
A61L 27/22
A61L 27/20
A61L 27/18
A61L 27/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の予め作製された付着点を具備する膜組織移植片であって、
前記1つ以上の予め作製された付着点が1つ以上のエッチングを含み、
前記1つ以上のエッチングが、
前記1つ以上の予め作製された付着点の視認性を増加させる;
レシピエント組織に前記膜組織移植片を配置することをガイドする;
前記膜組織移植片の方向性を決定する;
前記膜組織移植片内に測定された距離で1つ以上の神経端を配置することを補助する;および/または
前記膜組織移植片内に互いに測定された距離で複数の神経端を配置することを容易にする
ための使用のために構成されている
膜組織移植片。
【請求項2】
請求項1に記載の膜組織移植片であって、
25ミクロンから3ミリメートルの厚さを有する
膜組織移植片。
【請求項3】
請求項1に記載の膜組織移植片であって、
天然材料を含む
膜組織移植片。
【請求項4】
請求項3に記載の膜組織移植片であって、
前記天然材料は、ブタ小腸粘膜下組織、羊膜/絨毛膜、再構成変性コラーゲン、コラーゲン、エラスチン、トロンビン、フィブロネクチン、デンプン、ポリ(アミノ酸)、ゼラチン、アルギン酸塩、ペクチン、フィブリン、酸化セルロース、キチン、キトサン、トロポエラスチン、ヒアルロン酸、フィブリン系材料、コラーゲン系材料、ヒアルロン酸系材料、糖タンパク質系材料、セルロース系材料、絹、およびこれらの組み合わせから選択される
膜組織移植片。
【請求項5】
請求項1に記載の膜組織移植片であって、
合成材料を含む
膜組織移植片。
【請求項6】
請求項5に記載の膜組織移植片であって、
前記合成材料は、シリコーン樹脂、延伸膨張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエチレンテレフタレートテトラフタレート(Dacron)、ポリウレタン脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、ポリ(プロピレンフマレート)、コポリ(エーテルエステル)、ポリアルキレンシュウ酸塩、ポリアミド、チロシン誘導ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、アミン基を含有するポリオキサエステル、ポリ(無水物)、ポリホスファゼン、およびそれらの混合から選択される
膜組織移植片。
【請求項7】
請求項1に記載の膜組織移植片であって、
損傷組織の修復を容易にする1つ以上の生物活性成分を含む
膜組織移植片。
【請求項8】
請求項1に記載の膜組織移植片であって、
前記1つ以上の予め作製された付着点は、1つ以上の予め作製された縫合糸穴または切れ目を含む
膜組織移植片。
【請求項9】
請求項1に記載の膜組織移植片であって、
前記1つ以上の予め作製された付着点は、前記膜組織移植片の外縁部の近くに配置される
膜組織移植片。
【請求項10】
請求項1に記載の膜組織移植片であって、
前記膜組織移植片は管の形状であり、前記1つ以上の予め作製された付着点は、前記管の2つの端部の縁部に沿って配置される
膜組織移植片。
【請求項11】
請求項1に記載の膜組織移植片であって、
前記膜組織移植片は長方形であり、
前記1つ以上の予め作製された付着点は、長方形の前記膜組織移植片の2つの対辺に沿って配置され、他の2つの対辺に沿って存在しない
膜組織移植片。
【請求項12】
請求項1に記載の膜組織移植片であって、
前記1つ以上の予め作製された付着点は、前記膜組織移植片の縁部に沿って、前記縁部から0.5ミリメートル~10ミリメートルの距離で配置される
膜組織移植片。
【請求項13】
請求項に記載の膜組織移植片であって、
前記膜組織移植片は管の形状であり、前記1つ以上のエッチングは、前記管の2つの端部の縁部に沿って配置される
膜組織移植片。
【請求項14】
請求項に記載の膜組織移植片であって、
前記膜組織移植片は長方形であり、
前記1つ以上のエッチングは、長方形の前記膜組織移植片の2つの対辺に沿って配置され、他の2つの対辺に沿って存在しない
膜組織移植片。
【請求項15】
請求項に記載の膜組織移植片であって、
前記1つ以上のエッチングは、0.5ミリメートル~10ミリメートルの前記組織移植片の縁部からの距離で前記縁部に沿って配置される
膜組織移植片。
【請求項16】
損傷および/または切断された神経修復に使用するための、請求項1~15のいずれか一項に記載の膜組織移植片であって、
前記損傷および/または切断された神経に移植される、
膜組織移植片。
【請求項17】
請求項16に記載の膜組織移植片であって、
前記損傷および/または切断された神経は、0ミリメートル~5ミリメートルの範囲の隙間を有する
膜組織移植片
【請求項18】
請求項8に記載の膜組織移植片であって、
前記1つ以上のエッチングは、前記1つ以上の縫合糸穴または切れ目の周りにそれぞれ形成されている
膜組織移植片。
【請求項19】
請求項1に記載の膜組織移植片であって、
前記膜組織移植片は、管またはシートの形状であり、
前記1つ以上の予め作製された付着点は、1つ以上の予め作製された縫合糸穴または切れ目を含み、
前記1つ以上のエッチングまたは前記1つ以上の縫合糸穴もしくは切れ目は、前記管または前記シートにおける外縁部分および中心部分の一方または両方に配置されている
膜組織移植片。
【請求項20】
請求項1に記載の膜組織移植片であって、
前記膜組織移植片は、2つ以上のエッチングを含み、
前記2つ以上のエッチングの少なくとも1つのエッチングは、前記2つ以上のエッチングの他のエッチングと、形状およびサイズの少なくとも一方において異なる
膜組織移植片。
【請求項21】
請求項1に記載の膜組織移植片であって、
前記移植片は、該移植片の外側に1つ以上のエッチングを含む
膜組織移植片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2018年4月12日に出願された米国仮出願第62/656,735号の利益を主張し、その内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は組織移植片に関し、より詳細には、予め作製された付着点(取り付け点)を有する組織移植片に関する。
【背景技術】
【0003】
膜組織移植片はしばしば、組織修復または再生、特に、軟組織修復または再生のためのマトリックス(基質)として使用される。典型的には、このような組織移植片が損傷組織上に接着または縫合される。いったん移植されると、組織移植片は損傷組織を保護し、組織の成長および修復を支援することができる。組織移植片は、修復された組織に組み込まれることさえでき、修復/再生された組織の一部となることができる。
【0004】
特定の膜組織移植片は比較的機械的に堅牢であり、補強軟組織移植片に適した機械的特性を提供する。神経修復における顕微手術用途に適切な縫合材料、特に針は、機械的に強固な組織ベースの膜を固定するために常に適切であるとは限らない。例えば、膜組織移植片における針の曲がりを防止するために、より大きな直径および刃先を有する針が必要とされ得る。しかしながら、顕微手術作業は、使用中により少ない組織外傷を引き起こし得る、より薄いテーパポイント針を使用してより良好に実施されるので、このような針の使用は、不都合であり得る。
【0005】
特定の他の膜組織移植片は、緩衝材料または潤滑材料としての使用を容易にするために、比較的弱い機械的特性を有する。このような場合、移植片の特性は、主に縫合糸の配置によって引き裂きまたは裂け目が生じるようなものであり得る。そのような裂け目または裂け目は材料を通って容易に伝播し、機械的故障を引き起こすことがある。
【0006】
特定の膜組織移植片は、損傷した神経の修復などの顕微手術修復を支援および強化するために、管または導管、または他の形態に形成され得る。顕微手術修復の特殊化された必要性のために、縫合糸および縫合針のパラメータは、外科的処置にとって重要であり得る。したがって、移植片、縫合針、またはその下にある組織に損傷を与えることなく、かつ移植片のバルク機械的特性を保持しながら、任意の縫合糸タイプで縫合することができる膜組織移植片が望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、縫合の困難性を回避、低減、または最小限に抑えるように設計された膜組織移植片を提供する。いくつかの実施形態において、膜組織移植片は、1つ以上の予め作製された付着点を含む。
【0008】
以下の特徴のうちの1つ以上が含まれてもよい。膜組織移植片は、25ミクロン~3ミリメートルの厚さを有し得る。膜組織移植片は、天然材料を含んでもよい。天然材料は、ブタ小腸粘膜下組織、羊膜/絨毛膜、再構成変性コラーゲン、コラーゲン、エラスチン、トロンビン、フィブロネクチン、デンプン、ポリ(アミノ酸)、ゼラチン、アルギン酸塩、ペクチン、フィブリン、酸化セルロース、キチン、キトサン、トロポエラスチン、ヒアルロン酸、フィブリン系材料、コラーゲン系材料、ヒアルロン酸系材料、糖タンパク質系材料、セルロース系材料、絹、およびこれらの組み合わせから選択され得る。膜組織移植片は、合成材料を含んでもよい。合成材料は、シリコーン樹脂、延伸膨張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエチレンテレフタレートテトラフタレート(Dacron)、ポリウレタン脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、ポリ(プロピレンフマレート)、コポリ(エーテルエステル)、ポリアルキレンシュウ酸塩、ポリアミド、チロシン誘導ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、アミン基を含有するポリオキサエステル、ポリ(無水物)、ポリホスファゼン、およびそれらの混合から選択することができる。膜組織移植片は、損傷組織の修復を容易にする1つ以上の生物活性成分を含み得る。1つ以上の予め作製された付着点は、1つ以上の予め作製された縫合糸穴を含み得る。1つ以上の予め作製された付着点は、膜組織移植片の外縁部の近くに配置され得る。膜組織移植片は管の形状であってもよく、1つ以上の予め作製された付着点は管の2つの端部の縁部に沿って配置されてもよい。膜組織移植片は長方形であってもよく、1つ以上の予め作製された付着点は、長方形の膜組織移植片の2つの対辺に沿って配置されてもよく、他の2つの対辺に沿って存在しなくてもよい。1つ以上の予め作製された付着点は、膜組織移植片の縁部に沿って、縁部から約0.5ミリメートル~約10ミリメートルの距離で配置され得る。
【0009】
1つ以上の予め作製された付着点は、膜組織移植片上に配置され、1つ以上の予め作製された付着点の視認性を増加させるように構成された1つ以上のマーキングを含み得る。膜組織移植片は管の形状であり、1つ以上のマーキングは、管の2つの端部の縁部に沿って配置され得る。膜組織移植片は長方形であってもよく、1つ以上のマーキングは長方形の膜組織移植片の2つの対辺に沿って配置されてもよく、他の2つの対辺に沿って存在しなくてもよい。1つ以上のマーキングは、約0.5ミリメートル~約10ミリメートルの組織移植片の縁部からの距離で縁部に沿って配置されてもよい。1つ以上のマーキングは、膜組織移植片の方向性(配向度)を示す。1つ以上のマーキングは、ユーザが膜組織移植片内の測定された距離に組織を配置するのを補助するように配置されてもよい。1つ以上の予め作製された付着点は、1つ以上の予め作製された縫合糸穴および1つ以上のマーキングを含み得る。
【0010】
別の実施形態では、損傷および/または切断された神経を修復する方法が提供される。この方法は、損傷および/または切断された神経への1つ以上の予め作製された付着点を含む膜組織移植片を移植する工程を含み得る。損傷および/または切断された神経は、約0ミリメートル~約5ミリメートルの範囲の隙間を有し得る。
【0011】
1つ以上の例示的な実施形態の詳細は、添付の図面および以下の説明に記載される。他の可能な例示的特徴および/または可能な例示的利点は、説明、図面、および特許請求の範囲から明らかになる。いくつかの実施形態は、それらの可能な例示的特徴および/または可能な例示的利点を有さないことがあり、そのような可能な例示的特徴および/または可能な例示的利点は、いくつかの実施形態に必ずしも必要とされないことがある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の例示的な膜組織移植片における、1つ以上の予め作製された付着点(例えば、1つ以上の予め作製されたエッチングおよび1つ以上の予め作製された縫合糸穴)の例を示す。
図2】縫合糸穴の例示的な形状および形態を示す。各実施形態において、中心に向かう塗りつぶし部は、穴または切れ目を示す。穴の周囲の白い領域は、任意のエッチングを示す。また、白色領域を囲む網かけ領域は、任意の補強領域を示す。
図3】本開示の実施形態に一致する、1つ以上の予め作製された付着点、特に、膜組織移植片上に配置された1つ以上の予め作製された穴または縫合糸穴の種々の構成の1つを示す。
図4】本開示の実施形態に一致する、1つ以上の予め作製された付着点、特に、膜組織移植片上に配置された1つ以上の予め作製された穴または縫合糸穴の種々の構成の1つを示す。
図5】本開示の実施形態に一致する、1つ以上の予め作製された付着点、特に、膜組織移植片上に配置された1つ以上の予め作製された穴または縫合糸穴の種々の構成の1つを示す。
図6】本開示の実施形態に一致する、1つ以上の予め作製された付着点、特に、膜組織移植片上に配置された1つ以上の予め作製された穴または縫合糸穴の種々の構成の1つを示す。
図7】本開示の実施形態に一致する、1つ以上の予め作製された付着点、特に、膜組織移植片上に配置された1つ以上の予め作製されたエッチングまたはマーキングの種々の構成の1つを示す。
図8】本開示の実施形態に一致する、1つ以上の予め作製された付着点、特に、膜組織移植片上に配置された1つ以上の予め作製されたエッチングまたはマーキングの種々の構成の1つを示す。
図9】本開示の実施形態に一致する、1つ以上の予め作製された付着点、特に、膜組織移植片上に配置された1つ以上の予め作製されたエッチングまたはマーキングの種々の構成の1つを示す。
図10】本開示の実施形態に一致する、1つ以上の予め作製された付着点、特に、膜組織移植片上に配置された1つ以上の予め作製されたエッチングまたはマーキングの種々の構成の1つを示す。
図11】神経修復プロテクター組織移植片における本開示の膜組織移植片の実施例を示す。
図12】神経修復コネクタ組織移植片における本開示の膜組織移植片の実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
いくつかの特定の例示的な実施形態では、本開示が1つ以上の予め作製された複数の付着点(例えば、視認性を増大させ、かつ/または縫合点を補強するための、予め作製された縫合穴および周囲の特徴)を備える膜組織移植片を提供することができる。
【0014】
特定の例示的な実施形態では、本開示の組織移植片が損傷した神経などの損傷した組織上に移植するように設計された管の形態であってもよい。他の実施形態では、本開示の組織移植片が損傷した神経などの損傷した組織の表面上に移植するように設計されたシートの形態であってもよい。
【0015】
本開示に一致するいくつかの実施形態の組織移植片の縫合穴は、損傷した神経などの損傷した組織への組織移植片の縫合を容易にし得る。エッチングまたは他の方法を使用して、縫合糸穴の視認性を増大させることができる。
【0016】
いくつかの例示的な実施形態では、本開示の組織移植片が隙間を有さないか、または、切断された神経断端の間に隙間、例えば約5mm未満の隙間を有する切断された神経などの損傷した神経を修復するのに適している。従って、本開示の組織移植片を使用する方法も記載される。これらの方法は例えば、本開示の組織移植片を損傷または切断された神経に移植することによって、損傷または切断された神経を修復する方法を含む。本開示に一致する組織移植片は、他の目的のために利用され得る。
【0017】
組織移植片は、典型的には損傷組織に接着または縫合される。膜組織移植片および/または損傷組織は縫合に関連する問題(例えば、比較的機械的に強靭な組織ベースの膜による針状の屈曲または鈍化)のために損傷され得、これは、下にある神経組織に対してより広範な外傷を引き起こし、縫合後に移植片に及ぼされる圧力のために、縫合または引き裂きの間に引き裂かれる、など)のために損傷され得る。
特定の実施形態では、本開示が組織を修復する際に医療専門家などの個人を支援するために、1つ以上の予め作製された付着点(例えば、縫合糸穴および/または縫合糸穴の視認性を増大させるように設計されたエッチングなどのマーキング)を備える膜組織移植片を提供することができる。
【0018】
図1~12の例を参照し、いくつかの実施形態では、本明細書で使用される「膜組織移植片」は一般に、外科的処置または他の医療処置において被体に移植するのに適した比較的薄い移植片を指す。膜組織移植片(例えば、膜組織移植片102)は、種々の合成および/または天然材料のいずれかから作製され得る。膜組織移植片(例えば、膜組織移植片102)は例えば、約25ミクロン~3mm、100ミクロン~2.75mm、200ミクロン~2.5mm、300ミクロン~2mm、または500ミクロン~1.5mmの厚さを有し得る。一実施形態では、厚さは約100ミクロンである。しかし、膜組織移植片は、本開示の範囲内で任意の厚さを有し得ることが理解される。
【0019】
いくつかの実施形態では膜組織移植片(例えば、膜組織移植片102)はブタ小腸粘膜下組織、羊膜/絨毛膜、または再構成された変性コラーゲンなどの天然材料から構成され得る。また、膜組織移植片(例えば、膜組織移植片102)は、合成材料から作製され得る。好ましい実施形態において、膜組織移植片(例えば、膜組織移植片102)は、レシピエントに対して非免疫性のものであり得る。
【0020】
膜組織移植片に使用するのに適した合成材料としてはシリコーン膜、延伸膨張ポリエチレンテレフタレート(ePTFE)、ポリエチレンテトラフスレート(Dacron)、ポリウレタン脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、ポリ(プロピレンフマレート)、コポリ(エーテルエステル)、ポリアルキレンシュウ酸塩、ポリアミド、チロシン誘導ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、アミン基を含有するポリオキサエステル、ポリ(無水物)、ポリホスファゼン、およびそれらの混合が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
膜組織移植片に使用するのに適した天然ポリマーにはコラーゲン、エラスチン、トロンビン、フィブロネクチン、デンプン、ポリ(アミノ酸)、ゼラチン、アルギン酸塩、ペクチン、フィブリン、酸化セルロース、キチン、キトサン、トロポエラスチン、ヒアルロン酸、フィブリン系材料、コラーゲン系材料、ヒアルロン酸系材料、糖タンパク質系材料、セルロース系材料、絹およびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
1つ以上の天然および/または合成材料の組み合わせも使用することができる。特に、前段落に開示された天然および/または合成材料の任意の組み合わせを使用することができる。
【0023】
本明細書で使用される「神経移植片」は一般に、損傷した神経または神経系の他の組織を修復するためにレシピエントに移植された移植片を指す。神経移植片は、合成材料、天然材料、またはそれらの組み合わせから作製され得る。上記の膜組織移植片を調製するために使用される種々の材料もまた、神経移植片の調製において使用され得る。
【0024】
例示的な実施形態では、膜組織移植片がブタ粘膜下組織細胞外マトリックス(「ECM」)を含んでもよい。いくつかの特定の例示的な実施形態では、組織移植片が損傷した神経などの損傷した組織の周りに巻き付けることができるシートの形態のECMを含むことができる。このような膜組織移植片の例は、以下の実施例1に記載される改良されたAxoGuard Nerve Protector(登録商標)である。
【0025】
さらなる実施形態では膜組織移植片は、短い隙間を有するか、または隙間を有さない、好ましくは切断された断端の間に例えば5mm未満の隙間を有する、切断された神経の接合に適した管の形態のECMを含み得る。このような膜組織移植片の例は、以下の実施例2に記載される改良されたAxoGuard Nerve Connector(登録商標)である。
【0026】
別の実施例では、膜状組織移植片が例えば、別々の組織層を覆う再吸収可能な軟組織として使用され得る、最小限に処理されたヒト臍帯膜を含み得る。このような組織移植片の例は、本発明の実施形態に従って改良されたAvive Soft Tissue(登録商標)である。
【0027】
いくつかの実施形態において、膜組織移植片(例えば、膜組織移植片102)は、腱ラップ(腱を覆うもの)および修復とともに使用され得る。例えば、膜組織の実施形態はラップで修復を強化することができ、抗癒着を支援することができ、および/または脱テンションを支援することができる。また、膜組織移植片は、血管、腸、筋肉(例えば、心臓、骨格、および平滑筋)、神経組織(例えば、神経、脳、および脊髄)、結合組織、上皮組織などを含む他のタイプの組織と共に使用され得る。
【0028】
特定の実施形態において、本開示の膜組織移植片は、損傷した神経の修復を容易にする1つ以上の生物活性成分を含み得る。このような生物活性化合物の非限定的な例としては、異種または自己の成長因子、タンパク質(マトリックスタンパク質を含む)、ペプチド、抗体、酵素、血小板、糖タンパク質、ホルモン、サイトカイン、グリコサミノグリカン、核酸、鎮痛薬、ウイルス、ウイルス粒子、セル、非ステロイド性抗炎症薬、セルおよびセル成分、または免疫抑制療法が挙げられる。特定の実施形態において、本開示の膜組織移植片における使用に適切な生物活性成分は、インターロイキン、メタロプロテイナーゼの組織インヒビター、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、血管内皮成長因子、および形質転換成長因子を含む。好ましい態様において、生物活性成長因子は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、神経栄養因子(NGF)、好中球-3(NT-3)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、または白血病抑制因子(LIF)などの神経栄養成長因子を含む。
【0029】
本明細書で使用される「予め作製」とは一般に、組織修復に関連して膜組織移植片を使用する前に、成分または特徴を形成することを指す。例えば、いくつかの実施形態では1つ以上の予め作製された付着点(例えば、1つ以上の予め作製された付着点104)は、膜組織移植片の製造中に形成または作製されてもよい。このようにして、組織修復に関連して膜組織移植片102を使用する前に、1つ以上の予め作製された付着点104(例えば、予め作製された穴106および/または1つ以上の予め作製されたエッチング108)を形成または画定することができる。いくつかの実施形態では、膜組織移植片102が1つ以上の予め作製された付着点104(例えば、予め作製された穴106および/または予め作製されたエッチング108)なしで製造されてもよいが、膜組織移植片のパッケージおよび/または輸送の前に作製された1つ以上の予め作製された付着点104(例えば、予め作製された穴106および/または1つ以上の予め作製されたエッチング108)を有する可能性がある。このようにして、膜組織移植片102は、消費者に膜組織移植片102が提供される時点で、1つ以上の予め作製された付着点104(例えば、予め作製された穴106および/または1つ以上の予め作製されたエッチング108)を含み得る。
【0030】
本明細書で使用される「縫合糸穴」または「穴」は一般に、膜組織移植片に予め形成された穴または切れ目を指す。例えば、外科医は予め形成された縫合穴(例えば、予め形成された穴106)を使用して、組織移植片を標的部位に縫合することができる。予め形成された縫合糸穴(例えば、予め形成された穴106)は手術中に膜組織移植片を穿孔する必要性を回避することができ、したがって、その後の組織損傷の可能性を伴って縫合糸針を損傷する可能性を低減することができ、任意の縫合糸/針の組み合わせが、等しい容易さで使用されることを可能にする。また、図2の例およびいくつかの実施形態を参照すると、縫合糸穴(例えば、予め作製された穴106)は例えば、「+」記号(例えば、予め作製された穴202)、「-」記号(例えば、予め作製された穴204)、「x」記号(例えば、予め作製された穴206)、三角形(例えば、予め作製された穴208)、円(例えば、予め作製された穴210)、正方形、四角形、半円形、波線、「鋸状、ラチェット状」の設計など、様々な形状または形状の組み合わせのいずれかであり得る。
【0031】
いくつかの実施形態において、縫合糸穴は、膜組織移植片の外縁部の近くに存在し得る。いくつかの実施形態では、縫合糸穴が膜組織移植片の全周にわたって存在することができる。また、図3の例およびいくつかの実施形態を参照すると、縫合糸穴(例えば、予め作製された穴306)は例えば、膜組織移植片(例えば、膜組織移植片302)の対向する領域の外縁部に沿って存在し得る。例えば、組織移植片が長方形である場合、縫合糸穴は、長方形の2つの対辺に沿って存在し得、長方形の他の2つの対辺には存在し得ない。同様に、組織移植片が円形である場合、縫合糸穴は、中心の反対側の円周の一部に沿って存在し得る。
【0032】
再び図3の例を参照すると、いくつかの実施形態では膜組織移植片(例えば、膜組織移植片302)は管の形態であってもよく、縫合糸穴(例えば、予め作製された穴306)は管の2つの端部の縁部に沿って存在してもよい。このような移植片は損傷または切断された神経を接続するための神経修復において使用され得、そして管の2つの縁部は損傷または切断された神経の2つの断端に縫合され得る。神経修復にこの例のグラフトを使用する例が提供されたが、膜組織グラフトは任意のタイプの組織修復のためのものであり得ることが理解される。例えば、いくつかの実施形態では、膜組織移植片を腱修復と共に使用することができる。
【0033】
また、図4の例およびいくつかの実施形態を参照すると、膜組織移植片(例えば、膜組織移植片402)は長方形の形状であり得、縫合糸穴(例えば、予め作製された穴406)は、長方形の2つの対辺に沿って存在し得る。このような膜性グラフトは縫合穴を有する長方形の側面が神経の切断された部分を取り囲み、これらの側面が切断された神経の2つの断端に縫合されるように、切断された神経または損傷した神経を包むことによって、神経修復において使用され得る。神経の周りに長方形の膜組織移植片を包む例が提供されているが、膜組織移植片は任意の組織の周りに包むことができることが理解される。例えば、いくつかの実施形態では、長方形の膜組織移植片を腱の周りに巻き付けることができる。また、図5の例およびいくつかの実施形態を参照すると、縫合糸穴(例えば、予め作製された穴506)は長方形の膜組織移植片(例えば、膜組織移植片502)の全周にわたって存在し得る。また、図6の例およびいくつかの実施形態を参照すると、縫合糸穴(例えば、予め作製された穴606)は長方形の膜組織移植片(例えば、膜組織移植片602)の全体にわたって存在し得る。図6は、縫合糸穴の行および列を示すが、縫合糸穴(例えば、予め作製された穴606)は本開示の範囲内の任意のパターンまたは構成で配置され得ることが理解される。
【0034】
いくつかの実施形態では縫合糸穴が約0.5ミリメートル~約10ミリメートル、例えば、約1ミリメートル~約3ミリメートル、およびいくつかの実施形態では約1ミリメートルの距離で、膜組織移植片の端部に沿って存在してもよい。しかしながら、縫合糸穴は、本開示の技術的範囲内で、膜組織移植片の端部から任意の距離に配置されてもよいことが理解される。
【0035】
再び図1の例を参照し、いくつかの実施形態では、本明細書で使用される「エッチング」は一般に、膜組織移植片を形成する材料の一部が除去されて、周囲の材料とは異なる表面粗さを有し、したがって、膜組織移植片の残りの部分と視覚的に区別される領域を生成する、膜組織移植片内の部位または位置を指す。いくつかの実施形態では、エッチングの部位(例えば、1つ以上の予め作製されたエッチング108)は膜組織移植片を貫通する穴を含まなくてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、外科医がグラフトをレシピエント組織上に適切に配置するために、かつ/またはグラフトを縫合するために使用される穴の位置を強調するために、ガイダンスとして、予め形成されたエッチング(例えば、1つ以上の予め作製されたエッチング108)を使用し得る。さらに、エッチング(例えば、1つ以上の予め作製されたエッチング108)は、神経導管内の神経末端間の距離などの他の外科的に関連する情報を示すためのガイダンスマークとして使用され得る。したがって、「エッチング」および「マーキング」という用語は、本開示の範囲内で交換可能に使用され得る。いくつかの実施形態では、エッチング(例えば、1つ以上の予め作製されたエッチング108)は様々な形状または形状の組み合わせ、例えば、四角形、三角形、半円形などのいずれかとすることができる。
【0036】
特定の実施形態では、エッチングまたはマーキングが組織移植片の外縁部の近くに存在するか、すなわち配置されてもよい。しかしながら、エッチングは、組織移植片の全周にわたって配置されてもよいことが理解される。あるいは、エッチングが組織移植片の対辺の周縁部に沿ってのみ配置され得るか、すなわち存在し得る。例えば、組織移植片が長方形である場合、エッチングは、長方形の2つの対辺に沿って配置され得るか、または存在し得、長方形の他の2つの対辺に沿って存在しない。同様に、組織移植片が円形または楕円形である場合、エッチングは、中心の反対側の円周の一部に沿って存在し得る。
【0037】
また、図7の例およびいくつかの実施形態を参照すると、膜組織移植片(例えば、膜組織移植片702)は管の形態であってもよく、エッチング(例えば、1つ以上の予め作製されたエッチング708)が、管の2つの端部の縁部に沿って存在するか、すなわち配置されてもよい。このような膜性グラフトは、損傷または切断された神経を接続するための神経修復において使用され得、そして管の2つの縁部は、損傷または切断された神経の2つの断端に縫合され得る。
【0038】
また、図8の例およびいくつかの実施形態を参照すると、膜組織移植片(例えば、膜組織移植片802)は長方形であってもよく、エッチング(例えば、1つ以上の予め作製されたエッチング808)が長方形の2つの対辺に沿って存在し、他の2つ対辺に沿って存在しなくてもよい。このような移植片は、切断されたまたは損傷した神経を包むことによって神経修復に使用され得、その結果、エッチングを有する長方形の側面は神経を取り囲み、そしてこれらの側面は切断された神経の2つの断端に縫合され得る。神経の周りに膜組織移植片を包む例が提供されているが、膜組織移植片は任意の組織の周りに包むことができることが理解される。例えば、いくつかの実施形態では、膜組織移植片を腱の周りに巻き付けることができる。また、図9の例およびいくつかの実施形態を参照すると、エッチング(例えば、予め作製されたエッチング908)は長方形の膜組織移植片(例えば、膜組織移植片902)の全周にわたって存在し得る。また、図10の例およびいくつかの実施形態を参照すると、エッチング(例えば、予め作製されたエッチング1008)は長方形の膜組織移植片(例えば、膜組織移植片1002)の全体にわたって存在し得る。図10はエッチングの行および列を示すが、エッチング(例えば、予め作製されたエッチング1008)は、本開示の範囲内の任意のパターンまたは構成で配置されてもよいことが理解される。
【0039】
いくつかの実施形態ではエッチングが約0.2ミリメートル~約1.5ミリメートル、いくつかの実施形態では約0.5ミリメートル~約1.25ミリメートル、いくつかの実施形態では約1ミリメートルの距離で、膜組織移植片の縁部に沿ってリングとして存在してもよい。エッチングは、エッチングされたリングが50ミクロンと1ミリメートルとの間、好ましくは約100ミクロンの幅を有する予め形成された穴に関連して予め形成されてもよい。
【0040】
また、図11の例およびいくつかの実施形態を参照すると、エッチングされたマーク(例えば、予め作製されたエッチング1108)は、膜組織移植片(例えば、膜組織移植片1102)の中心部分に存在し、膜組織移植片の配置を正しい位置に置いてガイドすることができる。エッチングマークの一実施形態は、約200ミクロン×1ミリメートルの「ダッシュ」を含み、これは膜組織移植片内の測定された距離での組織の配置において外科医を補助することができる。例えば、1つ以上のエッチングは、外科医が膜組織移植片内の測定された距離(例えば、膜組織移植片1102内の測定された距離)で、膜組織移植片内に神経端を配置するのを補助する。いくつかの実施形態では、1つ以上のマーキングが互いに測定された距離にある複数の組織端部の配置を容易にし得る。例えば、1つ以上のマーキングまたはエッチングは、外科医が組織または神経末端が膜組織移植片内で、例えば、互いに1ミリメートル内にあるとき(例えば、膜組織移植片1102内で、互いに測定された距離で、各端部における組織の配置)を決定することを補助することができる。しかしながら、1つ以上のマーキングは、複数の組織端部が互いにかつ/または膜組織移植片の端部から任意の測定距離内にあるときを決定するときに外科医を補助するように配置されてもよいことが理解される。
【0041】
いくつかの実施形態では、膜組織移植片が1つ以上の予め作製された付着点(例えば、1つ以上の予め作製された付着点104)を含んでもよく、この付着点は1つ以上の予め作製された穴(例えば、1つ以上の予め作製された穴106)および1つ以上のエッチング(例えば、1つ以上の予め作製されたエッチング108)のうちの少なくとも1つを含んでもよい。例えば、再び図11の例を参照すると、膜組織移植片1102(例えば、神経修復プロテクター組織移植片)は、1つ以上の予め作製された穴1106および1つ以上の予め作製されたエッチング1108を含むことができる。このようにして、外科医は、膜組織移植片1102を使用して組織を修復するために、1つ以上の予め作製された穴1106を使用する場合、1つ以上の予め作製されたエッチング1108の方向性によってガイドされる。この実施例では、2ミリメートルの予め作製された付着点間に予め規定された間隔が示される。しかし、本開示の範囲内で、予め作製された付着点(例えば、予め作製された穴1106および/または予め作製されたエッチング1108)の間に任意の間隔を使用することができることが理解される。
【0042】
また、図12の例およびいくつかの実施形態を参照すると、膜組織移植片1202(例えば、神経修復コネクタ組織移植片)は、1つ以上の予め作製された穴1206を含む。
【0043】
再び図2の例を参照すると、いくつかの実施形態では、エッチング(例えば、エッチング212、214、216、218、220)を縫合糸穴(例えば、予め作製された穴202、204、206、208、210)の周りに配置して、例えば、穴を取り囲むエッチングされた領域のリング(輪)を用いて、穴の視認性を増大させることができる。このような実施形態では、エッチングによって示される穴の視認性を改善することにより、外科医が、穴を通して縫合することによって膜組織移植片を縫合することができる。あるいは、組織移植片、または代替材料を形成する材料の厚化領域(例えば、補強領域222、224、226、228、230)を含む補強領域を使用して、同様の様式で視覚コントラストを提供することができる。補強領域(例えば、補強領域222、224、226、228、230)は、穴を取り囲む支持繊維またはワイヤの接着剤またはリングなどの支持材料を含むこともできる。補強領域は、円形、楕円形、長円、正方形、三角形、長方形など、穴を囲むあらゆる形状にすることができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、エッチングおよび/または縫合糸穴が、エッチングおよび/または縫合糸穴の視認性をさらに高める追加のマーキングを含むことができる。マーキングは膜組織移植片の方向性を示すように配置し、設計することができる。例えば、長方形の膜組織移植片の特定の非対称領域におけるマーキングは、マーキングの非対称的な位置決めのために、膜組織移植片の2つの表面を示すために使用され得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、本開示の膜組織移植片のエッチングおよび/または縫合穴が、損傷した神経などの損傷した組織への膜組織移植片の縫合を容易にすることができる。従って、本開示の膜組織移植片を使用する方法、例えば、損傷した組織(例えば、損傷したまたは切断された神経または損傷した腱)を修復する方法もまた記載される。
【0046】
いくつかの例示的な実施形態において、本開示は損傷した神経、特に、隙間を有さないか、または、切断された神経断端の間に隙間、例えば約5mm未満の隙間を有する、損傷または切断された神経を修復する方法を提供し得る。これらの方法において、管の形態の膜組織移植片は、損傷した神経の切断された断端に縫合され得る。このような組織移植片の移植は、身体の自然な治癒プロセスが治癒プロセスの間に切断された神経を隔離および保護することによって、切断された神経を修復することを可能にし得る。例えば、患者の細胞は、神経上皮に類似した組織を再構築および形成するために、細胞外マトリックスに組み込むことができる。
【0047】
損傷した神経が隙間を有さないか、または、例えば約5mm未満の小さな隙間を有する神経損傷の特定の他の場合において、長方形の形態の膜組織移植片が、損傷した神経の周りに巻き付けられ、このような膜は、損傷した神経に縫合される。
【0048】
本開示の膜状組織移植片の移植は、損傷した神経を保護し、神経再建を補強する可能性がある。縫合糸穴は特に、縫合針が膜組織移植片に機械的に適切でない場合に、任意の縫合糸の使用に役立ち得る。膜組織移植片は、保護および隔離するように設計され、治癒過程の間、損傷した神経を周囲の組織から分離および保護し得る。患者の細胞は最小限に処理された細胞外マトリックスに組み込まれ、神経上膜に類似した組織を再構築し、形成する。
【0049】
(定義)
本明細書で使用されるように、単数形(1つの)は文脈が沿わないことを明確に示さない限り、複数形も含むことが意図される。さらに、用語「含む」、「有する」、「備える」またはそれらの変形が、詳細な説明および/または特許請求の範囲のいずれかで使用される範囲において、これらの用語は用語「含む」と同様の方法で包括的であることが意図される。「備える」、「本質的に備える」、および「から成る」は、互換的に使用することができる。
【0050】
「から本質的に成る」という語句は、特許請求の範囲が特定の材料またはステップを含む実施形態、および特許請求の範囲の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない実施形態を包含することを示す。
【0051】
用語「約」は当業者によって決定される特定の値についての許容可能な誤差範囲内を意味し、これは値がどのように測定または決定されるか、すなわち、測定方式の限界に部分的に依存する。用語「約」が使用される本開示の膜組織移植片の様々なパラメータのサイズの文脈において、これらのパラメータは、記載された値(X±10%)の前後で0~10%の変動(誤差範囲)内にある。
【0052】
本開示では、範囲が長さを設定し、その範囲内の各値およびすべての値を記述しなければならないことを回避するために、簡潔に記載されている。範囲内の任意の適切な値は、適切な場合、範囲の上限値、下限値、すなわち末端値として選択され得る。例えば、0.1~1.0の範囲は、0.1および1.0の末端値、ならびに0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9の中間値、ならびに0.2~0.5、0.2~0.8、0.7~1.0などの0.1~1.0内に包含されるすべての中間範囲を表す。範囲内に少なくとも2つの有効数字を有する値が想定され、例えば、5~10の範囲は、5.0~10.0の間、ならびに終端値を含む5.00~10.00の間のすべての値を示す。
【0053】
範囲が本明細書で使用される場合、範囲の組み合わせおよび部分的組合せ(例えば、開示された範囲内の部分範囲)、その中の具体的な実施形態は、明示的に含まれることが意図される。
【0054】
本明細書に言及または引用した全特許、特許出願、仮出願、および刊行物は、それらが本明細書の明白な開示と矛盾しない限り、その図面および表を含む全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0055】
以下は、本開示の実施形態を実施するための手順を例示する実施例である。これらの実施例は、限定するものであるとみなしてはならない。
【0056】
(実施例1)本発明の実施形態に従って改良されたAxoGuard Nerve Connector(登録商標)(AxoGen、Inc.)
再度、図12の例を参照し、いくつかの実施形態では、AxoGuard Nerve Connector(登録商標)が切断されたかまたは損傷を受けた神経の連結支援接合のために、最小限に処理されたブタ細胞外マトリックスを提供することができる。AxoGuard Nerve Connector(登録商標)のいくつかの態様は、「Nerve Repair Solution」と題するパンフレット、AxoGen Inc(2015)に記載されている。このパンフレットは、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0057】
この実施例では、AxoGuard Nerve Connector(登録商標)が1つ以上の付着点(例えば、エッチングおよび/または縫合穴)を提供することによって、本発明の実施形態に従って改良されてもよい。このような改良されたAxoGuard Nerve Connector(登録商標)は、隙間を有さないか、または、切断された神経断端の間に隙間、例えば約5mm未満の隙間を有する切断された神経のような切断された神経の治療に好適であり得る。改良されたAxoGuard Nerve Connector(登録商標)は、損傷した神経に移植するように設計された管の形状であってもよい。改良されたAxoGuard Nerve Connector(登録商標)は、1.5mm×10mm、2mm×10mm、3mm×10mm、4mm×10mm、5mm×10mm、6mm×10mm、7mm×10mm、1.5mm×15mm、2mm×15mm、3mm×15mm、4mm×15mm、5mm×15mm、6mm×15mm、または7mm×15mmの寸法を有することができる。しかしながら、改良されたAxoGuard Nerve Connector(登録商標)は、本発明の範囲内の任意の寸法を有することができることが理解される。
【0058】
いくつかの実施形態では、改良されたAxoGuard Nerve Connector(登録商標)が、管の2つの端部の縁部に沿って、エッチングおよび/または縫合穴を有することができる。
【0059】
(実施例2)本発明の実施形態に従って改良されたAxoGuard Nerve Protector(登録商標)(AxoGen、Inc.)
AxoGuard Nerve Protector(登録商標)は、切断または損傷した神経を包むかまたは保護するための、最小限に処理されたブタ細胞外マトリックスを提供する。AxoGuard Nerve Protector(登録商標)の特定の態様については、カタログ「Nerve Repair Solution、AxoGen Inc(2015)」に記載されている。このパンフレットは、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0060】
再度図11の例を参照すると、この例では、AxoGuard Nerve Protector(登録商標)が1つ以上の付着点(例えば、エッチングおよび/または縫合穴)を提供することによって、本発明の実施形態に従って改良されてもよい。このような改良されたAxoGuard Nerve Protector(登録商標)は、隙間を有さないか、または、切断された神経断端の間に隙間、約5mm未満の隙間を有する切断された神経のような切断された神経を包み、保護するのに好適であり得る。改良されたAxoGuard Nerve Protector(登録商標)は、2mm×20mm、3.5mm×20mm、5mm×20mm、7mm×20mm、10mm×20mm、3.5mm×40mm、5mm×40mm、7mm×40mm、または10mm×40mmのサイズを有する管を、損傷したまたは切断された神経の周囲に包む場合には、長方形状にすることができる。しかしながら、改良されたAxoGuard Nerve Protector(登録商標)は、本開示の範囲内で任意の寸法を有することができることが理解される。
【0061】
改良されたAxoGuard Nerve Connector(登録商標)は、改良されたAxoGuard Nerve Connector(登録商標)が切断された神経または他の組織の周りに巻き付けられるとき、神経を取り囲み、管の2つの端部を形成する2つの側面に沿って、エッチングまたは縫合穴を有することができる。
【0062】
本明細書に記述の実施例および態様は説明する目的に限られ、それに照らした様々な改変または変更が、当業者に提案されるが、それらも本出願の趣旨および範囲ならびに添付の請求の範囲の範囲に含まれると理解すべきである。さらに、本明細書に開示された任意の発明またはその実施形態の任意の構成要件または制限は、本明細書に開示された任意のおよび/またはすべての他の要素または制限(個別にまたは任意の組み合わせで)または任意の他の発明または実施形態と組み合わせることができ、すべてのそのような組み合わせは、それに限定されることなく、本発明の範囲内で企図される。
(付記)
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
[項目1]
1つ以上の予め作製された付着点を具備する
膜組織移植片。
[項目2]
項目1に記載の膜組織移植片であって、
25ミクロンから3ミリメートルの厚さを有する
膜組織移植片。
[項目3]
項目1に記載の膜組織移植片であって、
天然材料を含む
膜組織移植片。
[項目4]
項目3に記載の膜組織移植片であって、
前記天然材料は、ブタ小腸粘膜下組織、羊膜/絨毛膜、再構成変性コラーゲン、コラーゲン、エラスチン、トロンビン、フィブロネクチン、デンプン、ポリ(アミノ酸)、ゼラチン、アルギン酸塩、ペクチン、フィブリン、酸化セルロース、キチン、キトサン、トロポエラスチン、ヒアルロン酸、フィブリン系材料、コラーゲン系材料、ヒアルロン酸系材料、糖タンパク質系材料、セルロース系材料、絹、およびこれらの組み合わせから選択される
膜組織移植片。
[項目5]
項目1に記載の膜組織移植片であって、
合成材料を含む
膜組織移植片。
[項目6]
項目5に記載の膜組織移植片であって、
前記合成材料は、シリコーン樹脂、延伸膨張ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリエチレンテレフタレートテトラフタレート(Dacron)、ポリウレタン脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、ポリ(プロピレンフマレート)、コポリ(エーテルエステル)、ポリアルキレンシュウ酸塩、ポリアミド、チロシン誘導ポリカーボネート、ポリ(イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、アミン基を含有するポリオキサエステル、ポリ(無水物)、ポリホスファゼン、およびそれらの混合から選択される
膜組織移植片。
[項目7]
項目1に記載の膜組織移植片であって、
損傷組織の修復を容易にする1つ以上の生物活性成分を含む
膜組織移植片。
[項目8]
項目1に記載の膜組織移植片であって、
前記1つ以上の予め作製された付着点は、1つ以上の予め作製された縫合糸穴を含む
膜組織移植片。
[項目9]
項目1に記載の膜組織移植片であって、
前記1つ以上の予め作製された付着点は、前記膜組織移植片の外縁部の近くに配置される
膜組織移植片。
[項目10]
項目1に記載の膜組織移植片であって、
前記膜組織移植片は管の形状であり、前記1つ以上の予め作製された付着点は、前記管の2つの端部の縁部に沿って配置される
膜組織移植片。
[項目11]
項目1に記載の膜組織移植片であって、
前記膜組織移植片は長方形であり、
前記1つ以上の予め作製された付着点は、長方形の前記膜組織移植片の2つの対辺に沿って配置され、他の2つの対辺に沿って存在しない
膜組織移植片。
[項目12]
項目1に記載の膜組織移植片であって、
前記1つ以上の予め作製された付着点は、前記膜組織移植片の縁部に沿って、前記縁部から0.5ミリメートル~10ミリメートルの距離で配置される
膜組織移植片。
[項目13]
項目1に記載の膜組織移植片であって、
前記1つ以上の予め作製された付着点は、前記膜組織移植片上に配置され、1つ以上の予め作製された付着点の視認性を増加させるように構成された1つ以上のマーキングを含む
膜組織移植片。
[項目14]
項目13に記載の膜組織移植片であって、
前記膜組織移植片は管の形状であり、前記1つ以上のマーキングは、前記管の2つの端部の縁部に沿って配置される
膜組織移植片。
[項目15]
項目13に記載の膜組織移植片であって、
前記膜組織移植片は長方形であり、
前記1つ以上のマーキングは、長方形の前記膜組織移植片の2つの対辺に沿って配置され、他の2つの対辺に沿って存在しない
膜組織移植片。
[項目16]
項目13に記載の膜組織移植片であって、
前記1つ以上のマーキングは、0.5ミリメートル~10ミリメートルの前記組織移植片の縁部からの距離で前記縁部に沿って配置される
膜組織移植片。
[項目17]
項目13に記載の膜組織移植片であって、
前記1つ以上のマーキングは、前記膜組織移植片の方向性を示す
膜組織移植片。
[項目18]
項目13に記載の膜組織移植片であって、
前記1つ以上のマーキングは、ユーザが前記膜組織移植片内の測定された距離に組織を配置するのを補助するように配置される
膜組織移植片。
[項目19]
項目18に記載の膜組織移植片であって、
前記1つ以上のマーキングは、互いに測定された距離にある複数の組織端部の配置を容易にする
膜組織移植片。
[項目20]
項目1に記載の膜組織移植片であって、
前記1つ以上の予め作製された付着点は、1つ以上の予め作製された縫合糸穴および1つ以上のマーキングを含む
膜組織移植片。
[項目21]
損傷および/または切断された神経を修復する方法であって、
前記損傷および/または切断された神経への1つ以上の予め作製された付着点を含む膜組織移植片を移植するステップを含む方法。
[項目22]
項目21に記載の方法であって、
前記損傷および/または切断された神経は、0ミリメートル~5ミリメートルの範囲の隙間を有する
方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12