(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】電極製造方法、蓄電デバイスの製造方法、及び電極製造装置
(51)【国際特許分類】
H01G 11/86 20130101AFI20240319BHJP
H01G 11/06 20130101ALI20240319BHJP
H01G 11/50 20130101ALI20240319BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20240319BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20240319BHJP
【FI】
H01G11/86
H01G11/06
H01G11/50
H01G13/00 381
H01M4/139
(21)【出願番号】P 2020558119
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 JP2019036786
(87)【国際公開番号】W WO2020110433
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2018222469
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】307037543
【氏名又は名称】武蔵エナジーソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大谷 慎也
(72)【発明者】
【氏名】南坂 健二
(72)【発明者】
【氏名】青野 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】福永 浩一
(72)【発明者】
【氏名】相田 一成
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-113447(JP,A)
【文献】特開2007-226974(JP,A)
【文献】特開2001-271262(JP,A)
【文献】特開2017-011068(JP,A)
【文献】特開2007-015870(JP,A)
【文献】特開2012-049543(JP,A)
【文献】国際公開第2017/146223(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 11/06
H01G 11/86
H01G 11/50
H01G 13/00
H01M 4/139
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属がドープされた活物質を含む活物質層を備えた電極を製造する電極製造方法であって、
酸素濃度が5体積%以上15体積%以下
であり、窒素濃度が85体積%以上95体積%以下である雰囲気において、アルカリ金属イオンを含むドープ溶液であって該ドープ溶液が溶媒としてエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及び1-フルオロエチレンカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種を含むドープ溶液を用い、前記活物質にアルカリ金属をドープする電極製造方法。
【請求項2】
請求項1
に記載の電極製造方法であって、
前記活物質にアルカリ金属をドープするとき、前記ドープ溶液の温度は25℃以上50℃以下である電極製造方法。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の電極製造方法であって、
前記雰囲気の圧力は0.1×10
5N/m
2以上5×10
5N/m
2以下である電極製造方法。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の電極製造方法であって、
前記ドープ溶液は、前記溶媒として、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジメチルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種を含む、電極製造方法。
【請求項5】
電極セルを備える蓄電デバイスの製造方法であって、
請求項1~
4のいずれか1項に記載の電極製造方法により、アルカリ金属がドープされた活物質を含む活物質層を備えた負極を製造し、
前記負極と、セパレータと、前記負極とは異なる電極とを順次積層して前記電極セルを形成する蓄電デバイスの製造方法。
【請求項6】
アルカリ金属がドープされた活物質を含む活物質層を備えた電極を製造する電極製造装置であって、
前記電極製造装置の内部の雰囲気を、酸素濃度が5体積%以上15体積%以下
であり、窒素濃度が85体積%以上95体積%以下である雰囲気とするように構成された雰囲気設定ユニットを備える電極製造装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本国際出願は、2018年11月28日に日本国特許庁に出願された日本国特許出願第2018-222469号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2018-222469号の全内容を本国際出願に参照により援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は電極製造方法、蓄電デバイスの製造方法、及び電極製造装置に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、電子機器の小型化・軽量化は目覚ましく、それに伴い、当該電子機器の駆動用電源として用いられる電池に対しても小型化・軽量化の要求が一層高まっている。
【0004】
このような小型化・軽量化の要求を満足するために、リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池が開発されている。また、高エネルギー密度特性及び高出力特性を必要とする用途に対応する蓄電デバイスとして、リチウムイオンキャパシタが知られている。更に、リチウムより低コストで資源的に豊富なナトリウムを用いたナトリウムイオン型の電池やキャパシタも知られている。
【0005】
このような電池やキャパシタにおいては、様々な目的のために、予めアルカリ金属を電極にドープするプロセス(一般にプレドープと呼ばれている)が採用されている。アルカリ金属を電極にプレドープする方法として、例えば、枚葉式の方法、連続式の方法がある。枚葉式の方法及び連続式の方法では、蓄電デバイスの外でプレドープを行う。枚葉式の方法では、切り取られた電極板とアルカリ金属板とを、セパレータを介してドープ溶液中に配置した状態でプレドープを行う。連続式の方法では、帯状の電極板をドープ溶液中で移送させながらプレドープを行う。枚葉式の方法は、特許文献1、2に開示されている。連続式の方法は、特許文献3~6に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-293499号公報
【文献】特開2012-69894号公報
【文献】特開平10-308212号公報
【文献】特開2008-77963号公報
【文献】特開2012-49543号公報
【文献】特開2012-49544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
枚葉式の方法及び連続式の方法で使用するドープ溶液は可燃性である。また、枚葉式の方法及び連続式の方法では、電極に電流を流しながらプレドープを行う。電極が破断したり、電極の搬送ユニットでスパークが生じたりすると、ドープ溶液に引火するおそれがある。
【0008】
本開示の1つの局面では、ドープ溶液への引火を抑制できる電極製造方法、蓄電デバイスの製造方法、及び電極製造装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の1つの局面は、アルカリ金属がドープされた活物質を含む活物質層を備えた電極を製造する電極製造方法であって、酸素濃度が1体積%以上18体積%以下の雰囲気において、アルカリ金属イオンを含むドープ溶液を用い、前記活物質にアルカリ金属をドープする電極製造方法である。本開示の1つの局面である電極製造方法によれば、ドープ溶液への引火を抑制できる。
【0010】
本開示の別の局面は、電極セルを備える蓄電デバイスの製造方法であって、酸素濃度が1体積%以上18体積%以下の雰囲気において、アルカリ金属イオンを含むドープ溶液を用い、負極が備える負極活物質層に含まれる負極活物質にアルカリ金属をドープし、前記アルカリ金属のドープの後、前記負極と、セパレータと、前記負極とは異なる電極とを順次積層して前記電極セルを形成する蓄電デバイスの製造方法である。本開示の別の局面である蓄電デバイスの製造方法によれば、ドープ溶液への引火を抑制できる。
【0011】
本開示の別の局面は、アルカリ金属がドープされた活物質を含む活物質層を備えた電極を製造する電極製造装置であって、前記電極製造装置の内部の雰囲気を、酸素濃度が1体積%以上18体積%以下の雰囲気とするように構成された雰囲気設定ユニットを備える電極製造装置である。本開示の別の局面である電極製造装置によれば、ドープ溶液への引火を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】電解液槽を下方に移動させた状態を表す説明図である。
【
図3】電極製造装置の電気的構成を表す説明図である。
【
図4】対極ユニット及び多孔質絶縁部材の構成を表す側断面図である。
【
図6】
図5におけるVI-VI断面での断面図である。
【符号の説明】
【0013】
1…電極製造装置、10…チャンバー、7、203、205、207…電解液槽、9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、305、307、109、311、313、315、317、119、321、323、33、35、37、39、41、43、45…搬送ローラ、47…供給ロール、49…巻取ロール、51、52、54…対極ユニット、53…多孔質絶縁部材、55…支持台、57…循環濾過ユニット、61、62、64…直流電源、63…ブロア、66…電源制御ユニット、67、68、70…支持棒、69…仕切り板、71…空間、73…電極前駆体、75…電極、77…導電性基材、79…アルカリ金属含有板、81…フィルタ、83…ポンプ、85…配管、87、89、91、93、97、99…ケーブル、93…集電体、95…活物質層、101…CPU、103…洗浄槽、105…メモリ
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
1.電極製造装置1の構成
電極製造装置1の構成を、
図1~
図4に基づき説明する。
図1に示すように、電極製造装置1は、チャンバー10と、電解液槽203、205、7、207と、洗浄槽103と、搬送ローラ9、11、13、15、17、19、21、23、25、27、29、31、305、307、109、311、313、315、317、119、321、323、33、35、37、39、41、43、45(以下ではこれらをまとめて搬送ローラ群と呼ぶこともある)と、供給ロール47と、巻取ロール49と、対極ユニット51、52、54と、多孔質絶縁部材53と、支持台55と、循環濾過ユニット57と、3つの直流電源61、62、64と、ブロア63と、電源制御ユニット66と、を備える。
【0015】
チャンバー10は、電解液槽203、205、7、207と、洗浄槽103と、搬送ローラ群と、供給ロール47と、巻取ロール49と、対極ユニット51、52、54と、多孔質絶縁部材53と、支持台55と、循環濾過ユニット57と、ブロア63とを内部に収容する。
【0016】
電解液槽205は、
図1及び
図2に示すように、上方が開口した角型の槽である。電解液槽205の底面は、略U字型の断面形状を有する。電解液槽205内には、仕切り板69と、4個の対極ユニット51と、4個の多孔質絶縁部材53と、搬送ローラ27とが存在する。
図2に示すように、4個の多孔質絶縁部材53には、53a、53b、53c、53dが含まれる。
【0017】
仕切り板69は、その上端を貫く支持棒67により支持されている。支持棒67は図示しない壁等に固定されている。仕切り板69のうち、上端を除く部分は、電解液槽205内にある。仕切り板69は上下方向に延び、電解液槽205の内部を2つの空間に分割している。仕切り板69の下端に、搬送ローラ27が取り付けられている。仕切り板69と搬送ローラ27とは、それらを貫く支持棒68により支持されている。なお、仕切り板69の下端付近は、搬送ローラ27と接触しないように切り欠かれている。搬送ローラ27と、電解液槽205の底面との間には空間が存在する。
【0018】
4個の対極ユニット51は、それぞれ、それらの上端を貫く支持棒70により支持され、上下方向に延びている。支持棒70は図示しない壁等に固定されている。対極ユニット51のうち、上端を除く部分は、電解液槽205内にある。4個の対極ユニット51のうち、2個は、仕切り板69を両側から挟むように配置されている。残りの2個の対極ユニット51は、電解液槽205の内側面に沿って配置されている。
【0019】
図1に示すように、仕切り板69側に配置された対極ユニット51と、電解液槽205の内側面に沿って配置された対極ユニット51との間には空間71が存在する。対極ユニット51は、直流電源61のプラス極に接続される。対極ユニット51の詳しい構成は後述する。
【0020】
それぞれの対極ユニット51における空間71側の表面に、多孔質絶縁部材53が取り付けられている。多孔質絶縁部材53の詳しい構成は後述する。
【0021】
電解液槽203は、基本的には電解液槽205と同様の構成を有する。ただし、電解液槽203は、対極ユニット51及び多孔質絶縁部材53を備えない。また、電解液槽203は、搬送ローラ27に代えて、搬送ローラ17を備える。搬送ローラ17は、搬送ローラ27と同様のものである。
【0022】
電解液槽7は、基本的には電解液槽205と同様の構成を有する。ただし、電解液槽7は、4個の対極ユニット51及び搬送ローラ27に代えて、4個の対極ユニット54及び搬送ローラ109を備える。4個の対極ユニット54は、4個の対極ユニット51と同様のものである。搬送ローラ109は、搬送ローラ27と同様のものである。対極ユニット54は、直流電源62のプラス極に接続される。
【0023】
電解液槽207は、電解液槽205と同様の構成を有する。ただし、電解液槽207は、4個の対極ユニット51及び搬送ローラ27に代えて、4個の対極ユニット52及び搬送ローラ119を備える。4個の対極ユニット52は、4個の対極ユニット51と同様のものである。搬送ローラ119は、搬送ローラ27と同様のものである。対極ユニット52は、直流電源64のプラス極に接続される。
【0024】
洗浄槽103は、基本的には電解液槽205と同様の構成を有する。ただし、洗浄槽103は、対極ユニット51及び多孔質絶縁部材53を備えない。また、洗浄槽103は、搬送ローラ27に代えて、搬送ローラ37を備える。搬送ローラ37は、搬送ローラ27と同様のものである。
【0025】
搬送ローラ25、29、307、311、317、321は、導電性の材料から成る。搬送ローラ群のうち、その他の搬送ローラは、軸受部分を除き、エラストマーから成る。搬送ローラ群は、後述する電極前駆体73を一定の経路に沿って搬送する。搬送ローラ群が電極前駆体73を搬送する経路は、供給ロール47から、電解液槽203の中、電解液槽205の中、電解液槽7の中、電解液槽207の中、及び洗浄槽103の中を順次通り、巻取ロール49に至る経路である。
【0026】
その経路のうち、電解液槽203の中を通る部分は、まず、電解液槽203の内側面と、仕切り板69との間を下方に移動し、次に、搬送ローラ17により移動方向を上向きに変えられ、最後に、電解液槽203の内側面と、それに対向する仕切り板69との間を上方に移動するという経路である。
【0027】
また、上記の経路のうち、電解液槽205の中を通る部分は、まず、電解液槽205の内側面に沿って取り付けられた多孔質絶縁部材53と、それに対向する仕切り板69側の多孔質絶縁部材53との間の空間71を下方に移動し、次に、搬送ローラ27により移動方向を上向きに変えられ、最後に、電解液槽205の内側面に沿って取り付けられた多孔質絶縁部材53と、それに対向する仕切り板69側の多孔質絶縁部材53との間の空間71を上方に移動するという経路である。
【0028】
また、上記の経路のうち、電解液槽7の中を通る部分は、まず、電解液槽7の内側面に沿って取り付けられた多孔質絶縁部材53と、それに対向する仕切り板69側の多孔質絶縁部材53との間の空間71を下方に移動し、次に、搬送ローラ109により移動方向を上向きに変えられ、最後に、電解液槽7の内側面に沿って取り付けられた多孔質絶縁部材53と、それに対向する仕切り板69側の多孔質絶縁部材53との間の空間71を上方に移動するという経路である。
【0029】
また、上記の経路のうち、電解液槽207の中を通る部分は、まず、電解液槽207の内側面に沿って取り付けられた多孔質絶縁部材53と、それに対向する仕切り板69側の多孔質絶縁部材53との間の空間71を下方に移動し、次に、搬送ローラ119により移動方向を上向きに変えられ、最後に、電解液槽207の内側面に沿って取り付けられた多孔質絶縁部材53と、それに対向する仕切り板69側の多孔質絶縁部材53との間の空間71を上方に移動するという経路である。
【0030】
また、上記の経路のうち、洗浄槽103の中を通る部分は、まず、洗浄槽103の内側面と、仕切り板69との間を下方に移動し、次に、搬送ローラ37により移動方向を上向きに変えられ、最後に、洗浄槽103の内側面と、仕切り板69との間を上方に移動するという経路である。
【0031】
供給ロール47は、その外周に電極前駆体73を巻き回している。すなわち、供給ロール47は、巻き取られた状態の電極前駆体73を保持している。搬送ローラ群は、供給ロール47に保持された電極前駆体73を引き出し、搬送する。
【0032】
巻取ロール49は、搬送ローラ群により搬送されてきた電極75を巻き取り、保管する。なお、電極75は、電極前駆体73に対し、電解液槽205、7、207においてアルカリ金属のプレドープを行うことで製造されたものである。
【0033】
対極ユニット51、52、54は、板状の形状を有する。
図4に示すように、対極ユニット51、52、54は、導電性基材77と、アルカリ金属含有板79とを積層した構成を有する。導電性基材77の材質としては、例えば、銅、ステンレス、ニッケル等が挙げられる。アルカリ金属含有板79の形態は特に限定されず、例えば、アルカリ金属板、アルカリ金属の合金板等が挙げられる。アルカリ金属含有板79の厚さは、例えば、0.03~3mmとすることができる。
【0034】
多孔質絶縁部材53は、板状の形状を有する。多孔質絶縁部材53は、
図4に示すように、アルカリ金属含有板79の上に積層され、対極ユニット51、52、54の表面に取り付けられている。多孔質絶縁部材53が有する板状の形状とは、多孔質絶縁部材53が対極ユニット51、52、54の表面に取り付けられている際の形状である。多孔質絶縁部材53は、それ自体で一定の形状を保つ部材であってもよいし、例えばネット等のように、容易に変形可能な部材であってもよい。
【0035】
図4に示すように、多孔質絶縁部材53と、搬送ローラ群により搬送される電極前駆体73とは非接触である。多孔質絶縁部材53の表面から、電極前駆体73までの最短距離dは、0.5~100mmの範囲内であることが好ましく、1~10mmの範囲内であることが特に好ましい。最短距離dとは、多孔質絶縁部材53の表面のうち、電極前駆体73に最も近い点と、電極前駆体73との距離である。
【0036】
多孔質絶縁部材53は多孔質である。そのため、後述するドープ溶液は、多孔質絶縁部材53を通過することができる。そのことにより、対極ユニット51、52、54は、ドープ溶液に接触することができる。
【0037】
多孔質絶縁部材53としては、例えば、樹脂製のメッシュ等が挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。メッシュの目開きは適宜設定でき、例えば、0.1μm~10mmとすることができるが、0.1~5mmの範囲内にあることが好ましい。メッシュの厚みは適宜設定でき、例えば、1μm~10mmとすることができるが、30μm~1mmの範囲内にあることが好ましい。メッシュの目開き率は適宜設定でき、例えば、5~98%とすることができるが、5~95%であることが好ましく、50~95%の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0038】
多孔質絶縁部材53は、その全体が絶縁性の材料から成っていてもよいし、その一部に絶縁性の層を備えていてもよい。
【0039】
支持台55は、電解液槽203、205、7、207及び洗浄槽103を下方から支持する。支持台55は、その高さを変えることができる。仕切り板69、対極ユニット51、及び多孔質絶縁部材53の上下方向における位置を維持したまま、電解液槽205を支持する支持台55を低くすると、
図2に示すように、仕切り板69、対極ユニット51、及び多孔質絶縁部材53に対し、電解液槽205を相対的に下方に移動させることができる。また、支持台55高くすると、仕切り板69、対極ユニット51、及び多孔質絶縁部材53に対し、電解液槽205を相対的に上方に移動させることができる。電解液槽203、7、207及び洗浄槽103を支持する支持台55も同様の機能を有する。
【0040】
循環濾過ユニット57は、電解液槽203、205、7、207にそれぞれ設けられている。循環濾過ユニット57は、フィルタ81と、ポンプ83と、配管85と、を備える。
【0041】
電解液槽203に設けられた循環濾過ユニット57において、配管85は、電解液槽203から出て、ポンプ83、及びフィルタ81を順次通り、電解液槽203に戻る循環配管である。電解液槽203内のドープ溶液は、ポンプ83の駆動力により、配管85、及びフィルタ81内を循環し、再び電解液槽203に戻る。このとき、ドープ溶液中の異物等は、フィルタ81により濾過される。異物としては、ドープ溶液から析出した異物や、電極前駆体73から発生する異物等が挙げられる。フィルタ81の材質は、例えば、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン等の樹脂とすることができる。フィルタ81の孔径は適宜設定でき、例えば、30~50μmとすることができる。
【0042】
電解液槽205、7、207に設けられた循環濾過ユニット57も、同様の構成を有し、同様の作用効果を奏する。なお、
図1、
図2において、ドープ溶液の記載は便宜上省略している。
【0043】
図3に示すように、直流電源61におけるマイナス端子は、ケーブル87を介して、搬送ローラ25、29とそれぞれ接続する。また、直流電源61のプラス端子は、ケーブル89を介して、合計4個の対極ユニット51にそれぞれ接続する。電極前駆体73は、導電性の搬送ローラ25、29と接触する。電極前駆体73と対極ユニット51とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、電極前駆体73と対極ユニット51とは電気的に接続する。
【0044】
直流電源61は、ケーブル87、89、及び搬送ローラ25、29を介して対極ユニット51に電流を流す。
【0045】
図3に示すように、直流電源62におけるマイナス端子は、ケーブル91を介して、搬送ローラ307、311とそれぞれ接続する。また、直流電源62のプラス端子は、ケーブル93を介して、合計4個の対極ユニット54にそれぞれ接続する。電極前駆体73は、導電性の搬送ローラ307、311と接触する。電極前駆体73と対極ユニット54とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、電極前駆体73と対極ユニット54とは電気的に接続する。
【0046】
直流電源62は、ケーブル91、93、及び搬送ローラ307、311を介して対極ユニット54に電流を流す。
【0047】
図3に示すように、直流電源64におけるマイナス端子は、ケーブル97を介して、搬送ローラ317、321とそれぞれ接続する。また、直流電源64のプラス端子は、ケーブル99を介して、合計4個の対極ユニット52にそれぞれ接続する。電極前駆体73は、導電性の搬送ローラ317、321と接触する。電極前駆体73と対極ユニット52とは、電解液であるドープ溶液中にある。そのため、電極前駆体73と対極ユニット52とは電気的に接続する。
【0048】
直流電源64は、ケーブル97、99、及び搬送ローラ317、321を介して対極ユニット52に電流を流す。
【0049】
ブロア63は、洗浄槽103から出てきた電極75にガスを吹きつけて洗浄液を気化させ、電極75を乾燥させる。使用するガスは、アルカリ金属がプレドープされた活物質に対して不活性なガスであることが好ましい。そのようなガスとして、例えば、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、水分が除去された除湿空気等が挙げられる。
【0050】
図3に示すように、電源制御ユニット66は、直流電源61、62、64と電気的に接続している。電源制御ユニット66は、CPU101と、例えば、RAM又はROM等の半導体メモリ(以下、メモリ105とする)と、を有するマイクロコンピュータである。
【0051】
2.電極前駆体73の構成
電極前駆体73の構成を
図5及び
図6に基づき説明する。電極前駆体73は、
図5に示すように、帯状の形状を有する。電極前駆体73は、
図6に示すように、帯状の集電体93と、その両側に形成された活物質層95とを備える。
【0052】
集電体93としては、例えば、銅、ニッケル、ステンレス等の金属箔が好ましい。また、集電体93は、上記金属箔上に炭素材料を主成分とする導電層が形成されたものであってもよい。集電体93の厚みは、例えば、5~50μmとすることができる。
【0053】
活物質層95は、例えば、アルカリ金属をドープする前の活物質及びバインダー等を含有するスラリーを調製し、このスラリーを集電体93上に塗布し、乾燥させることにより作製できる。
【0054】
上記バインダーとしては、例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、NBR等のゴム系バインダー;ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン、特開2009-246137号公報に開示されているようなフッ素変性(メタ)アクリル系バインダー等が挙げられる。
【0055】
上記スラリーは、活物質及びバインダーに加えて、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛、気相成長炭素繊維、金属粉末等の導電剤;カルボキシルメチルセルロース、そのNa塩又はアンモニウム塩、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等の増粘剤が挙げられる。
【0056】
活物質層95の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば、5~500μm、好ましくは10~200μm、特に好ましくは10~100μmである。
【0057】
活物質層95に含まれる活物質は、アルカリ金属イオンの挿入/脱離を利用する電池又はキャパシタに適用可能な電極活物質であれば特に限定されるものではなく、負極活物質であってもよいし、正極活物質であってもよい。
【0058】
負極活物質は、特に限定されるものではないが、例えば、黒鉛、易黒鉛化炭素、難黒鉛化炭素、黒鉛粒子をピッチや樹脂の炭化物で被覆した複合炭素材料等の炭素材料;リチウムと合金化が可能なSi、Sn等の金属若しくは半金属又はこれらの酸化物を含む材料等が挙げられる。炭素材料の具体例としては、特開2013-258392号公報に記載の炭素材料が挙げられる。リチウムと合金化が可能な金属若しくは半金属又はこれらの酸化物を含む材料の具体例としては、特開2005-123175号公報、特開2006-107795号公報に記載の材料が挙げられる。
【0059】
正極活物質としては、例えば、活性炭、コバルト酸化物、ニッケル酸化物、マンガン酸化物、バナジウム酸化物等の遷移金属酸化物;硫黄単体、金属硫化物等の硫黄系活物質が挙げられる。
【0060】
正極活物質、及び負極活物質のいずれにおいても、単一の物質から成るものであってもよいし、2種以上の物質を混合して成るものであってもよい。本開示の電極製造装置1は、負極活物質にアルカリ金属をプレドープする場合に適しており、特に、負極活物質が炭素材料又はSi若しくはその酸化物を含む材料であることが好ましい。
【0061】
活物質にプレドープするアルカリ金属としては、リチウム又はナトリウムが好ましく、特にリチウムが好ましい。電極前駆体73を、リチウムイオン二次電池の電極の製造に用いる場合、活物質層95の密度は、好ましくは1.50~2.00g/ccであり、特に好ましくは1.60~1.90g/ccである。
【0062】
3.ドープ溶液の組成及び温度
電極製造装置1を使用するとき、電解液槽203、205、7、207に、アルカリ金属イオンを含む溶液(以下ではドープ溶液とする)を収容する。
【0063】
ドープ溶液は、アルカリ金属イオンと、溶媒とを含む。溶媒として、例えば、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、非プロトン性の有機溶媒が好ましい。非プロトン性の有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、1-フルオロエチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン、スルホラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグライム)等が挙げられる。
【0064】
また、上記有機溶媒として、第4級イミダゾリウム塩、第4級ピリジニウム塩、第4級ピロリジニウム塩、第4級ピペリジニウム塩等のイオン液体を使用することもできる。上記有機溶媒は、単一の成分から成るものであってもよいし、2種以上の成分の混合溶媒であってもよい。
【0065】
上記ドープ溶液に含まれるアルカリ金属イオンは、アルカリ金属塩を構成するイオンである。アルカリ金属塩は、好ましくはリチウム塩又はナトリウム塩である。アルカリ金属塩を構成するアニオン部としては、例えば、PF6
-、PF3(C2F5)3
-、PF3(CF3)3
-等のフルオロ基を有するリンアニオン;BF4
-、BF2(CF)2
-、BF3(CF3)-、B(CN)4
-等のフルオロ基又はシアノ基を有するホウ素アニオン;N(FSO2)2
-、N(CF3SO2)2
-、N(C2F5SO2)2
-等のフルオロ基を有するスルホニルイミドアニオン;CF3SO3
-等のフルオロ基を有する有機スルホン酸アニオンが挙げられる。
【0066】
上記ドープ溶液におけるアルカリ金属塩の濃度は、好ましくは0.1モル/L以上であり、より好ましくは0.5~1.5モル/Lの範囲内である。この範囲内である場合、アルカリ金属のプレドープが効率よく進行する。
【0067】
上記ドープ溶液は、更に、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、1-フルオロエチレンカーボネート、1-(トリフルオロメチル)エチレンカーボネート、無水コハク酸、無水マレイン酸、プロパンスルトン、ジエチルスルホン等の添加剤を含有することができる。
【0068】
上記ドープ溶液は、ホスファゼン化合物等の難燃剤をさらに含有することができる。本開示の電極製造方法のように、特定の酸素濃度雰囲気において活物質にアルカリ金属をドープする場合には、難燃剤の添加量を従来よりも少なくすることが可能となる。難燃剤を添加する場合には、難燃剤の添加量の下限は特に限定されないが、アルカリ金属をドープする際の熱暴走反応を効果的に制御する観点から、難燃剤の添加量は、ドープ溶液100質量部に対して0.01質量部以上であることが好ましく、0.03質量部以上であることがより好ましく、0.05質量部以上であることがさらに好ましい。また、難燃剤の添加量は、高品質のドープ電極を得る観点から、ドープ溶液100質量部に対して1質量部以下とすることができ、0.8質量部以下であることがより好ましく、0.5質量部以下であることがさらに好ましい。プレドープを行うとき、ドープ溶液の温度は25℃以上50℃以下であることが好ましい。
【0069】
4.電極製造装置1を用いた電極75の製造方法
まず、電極75を製造するための準備として、以下のことを行う。電極前駆体73を供給ロール47に巻き回す。次に、搬送ローラ群により、電極前駆体73を供給ロール47から引き出し、上述した経路に沿って巻取ロール49まで通紙する。そして、電解液槽203、205、7、207、及び洗浄槽103を上昇させ、
図1に示す定位置へセットする。電解液槽203、205、7、207にドープ溶液を収容する。ドープ溶液は、上記「3.ドープ溶液の組成」で述べたものである。洗浄槽103に洗浄液を収容する。洗浄液は有機溶剤である。その結果、電解液槽203、205、7、207の空間71は電解液で満たされる。洗浄槽103の空間71は洗浄液で満たされる。
【0070】
次に、搬送ローラ群により、供給ロール47から巻取ロール49まで通紙された電極前駆体73を供給ロール47から巻取ロール49に向かって、引き出し、上述した経路に沿って搬送する。電極前駆体73が電解液槽205、7、207内を通過するとき、活物質層95に含まれる活物質にアルカリ金属がプレドープされる。
【0071】
プレドープのとき、チャンバー10内の雰囲気における酸素濃度は、1体積%以上18体積%以下である。すなわち、チャンバー10は、チャンバー10内の雰囲気を、酸素濃度が1体積%以上18体積%以下の雰囲気とする。チャンバー10内の雰囲気は、電解液槽205、7、207の雰囲気である。チャンバー10内は、電極製造装置1の内部に対応する。チャンバー10は、雰囲気設定ユニットに対応する。
【0072】
チャンバー10内の雰囲気における酸素濃度は、3体積%以上であることが好ましく、5体積%以上であることがさらに好ましい。チャンバー10内の雰囲気における酸素濃度は、15体積%以下であることが好ましく、12体積%未満であることがさらに好ましく、11.5体積%以下であることが特に好ましい。チャンバー10内の雰囲気における酸素濃度を上記範囲内とすることで、ドープ溶液への引火性を低下させるとともに、アルカリ金属がドープされた電極の性能を向上させることができる。
【0073】
また、チャンバー10内の雰囲気における窒素濃度は30体積%以上であることが好ましく、40体積%以上であることがより好ましく、50体積%以上であることがさらに好ましい。チャンバー10内の雰囲気における窒素濃度は97体積%以下であることが好ましく、95体積%以下であることがより好ましく、88体積%以下であることがさらに好ましい。チャンバー10内の雰囲気における窒素濃度を上記範囲内とすることで、アルカリ金属がドープされた電極の性能を向上させることができる。
【0074】
また、チャンバー10内の雰囲気は、ヘリウムガス、アルゴンガス等の希ガスをさらに含むことができる。チャンバー10内の雰囲気が希ガスを含む場合、希ガス濃度は10体積%以上であることが好ましく、20体積%以上であることがより好ましく、30体積%以上であることがさらに好ましい。チャンバー10内の雰囲気における希ガス濃度は80体積%以下であることが好ましく、75体積%以下であることがより好ましく、70体積%以下であることがさらに好ましい。チャンバー10内の雰囲気における希ガス濃度を上記範囲内とすることで、アルカリ金属がドープされた電極の性能を向上させることができる。
【0075】
また、チャンバー10内の雰囲気の圧力は0.1×105N/m2以上5×105N/m2以下であることが好ましい。チャンバー10内の雰囲気の圧力を上記範囲内とすることで、ドープ溶液への引火性を低下させるとともに、アルカリ金属がドープされた電極の性能を向上させることができる。
【0076】
プレドープのとき、電解液槽205、7、207に収容されたドープ溶液の温度は、25℃以上50℃以下であることが好ましい。
【0077】
活物質にアルカリ金属がプレドープされることにより、電極前駆体73が電極75となる。電極75は搬送ローラ群により搬送されながら、洗浄槽103で洗浄される。最後に、電極75は、巻取ロール49に巻き取られる。
【0078】
電極製造装置1を用いて製造する電極75は、正極であってもよいし、負極であってもよい。正極を製造する場合、電極製造装置1は、正極活物質にアルカリ金属をドープし、負極を製造する場合、電極製造装置1は、負極活物質にアルカリ金属をドープする。
【0079】
アルカリ金属のドープ量は、リチウムイオンキャパシタの負極活物質にリチウムを吸蔵させる場合、負極活物質の理論容量に対して好ましくは70~95%であり、リチウムイオン二次電池の負極活物質にリチウムを吸蔵させる場合、負極活物質の理論容量に対して好ましくは10~30%である。
【0080】
5.蓄電デバイスの製造方法
蓄電デバイスは電極セルを備える。蓄電デバイスとして、例えば、キャパシタ、電池等が挙げられる。キャパシタとしては、アルカリ金属イオンの挿入/脱離を利用するキャパシタであれば特に限定されるものではないが、例えば、リチウムイオンキャパシタ、ナトリウムイオンキャパシタ等が挙げられる。その中でもリチウムイオンキャパシタが好ましい。
【0081】
キャパシタを構成する正極の基本的な構成は、一般的な構成とすることができる。正極活物質としては活性炭を使用することが好ましい。
【0082】
キャパシタを構成する電解質の形態は、通常、液状の電解液である。電解液の基本的な構成は、上述したドープ溶液の構成と同様である。また、電解質におけるアルカリ金属イオン(アルカリ金属塩)の濃度は、好ましくは0.1モル/L以上であり、より好ましくは0.5~1.5モル/Lの範囲内である。電解質は、漏液を防止する目的で、ゲル状又は固体状の形態を有していてもよい。
【0083】
キャパシタは、正極と負極との間に、それらの物理的な接触を抑制するためのセパレータを備えることができる。セパレータとしては、例えば、セルロースレーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド等を原料とする不織布又は多孔質フィルムを挙げることができる。
【0084】
キャパシタの構造としては、例えば、正極及び負極と、それらを介するセパレータとから成る板状の構成単位が、3単位以上積層されて積層体を形成し、その積層体が外装フィルム内に封入された積層型セルが挙げられる。
【0085】
また、キャパシタの構造としては、例えば、正極及び負極と、それらを介するセパレータとから成る帯状の構成単位が捲回されて積層体を形成し、その積層体が角型又は円筒型の容器に収納された捲回型セル等が挙げられる。
【0086】
キャパシタは、例えば、少なくとも負極及び正極を含む基本構造を形成し、その基本構造に電解質を注入することにより製造できる。
【0087】
リチウムイオンキャパシタの場合、その活物質層の密度は、好ましくは0.50~1.50g/ccであり、特に好ましくは0.70~1.20g/ccである。
【0088】
電池としては、アルカリ金属イオンの挿入/脱離を利用する電池であれば特に限定されるものではなく、一次電池であっても二次電池であってもよい。電池としては、例えば、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、空気電池等が挙げられる。その中でもリチウムイオン二次電池が好ましい。
【0089】
電池を構成する正極の基本的な構成は、一般的な構成とすることができる。正極活物質としては、既に例示したものの他、ニトロキシラジカル化合物等の有機活物質や酸素を使用することもできる。
【0090】
電池を構成する電解質の構成、電池自体の構成については、キャパシタの場合と同様である。電池は、例えば、少なくとも負極及び正極を含む基本構造を形成し、その基本構造に電解質を注入することにより製造できる。
【0091】
本開示の蓄電デバイスの製造方法では、まず、前記「4.電極製造装置1を用いた電極75の製造方法」に記載の方法で負極を製造する。次に、負極と、セパレータと、負極とは異なる電極とを順次積層して電極セルを形成する。
【0092】
6.電極製造方法が奏する効果
(1A)本開示の電極製造方法では、酸素濃度が1体積%以上18体積%以下の雰囲気において、アルカリ金属イオンを含むドープ溶液を用い、活物質にアルカリ金属をドープする。そのため、ドープ溶液に引火し難い。また、活物質にドープされたアルカリ金属が変性することを抑制できる。変性として、例えば、ドープされたリチウムが窒化リチウムに変性することが挙げられる。
【0093】
(1B)本開示の電極製造方法では、酸素濃度が3体積%以上15体積%以下の雰囲気において、アルカリ金属イオンを含むドープ溶液を用い、活物質にアルカリ金属をドープすることができる。この場合、ドープ溶液に一層引火し難い。また、活物質にドープされたアルカリ金属が変性することを一層抑制できる。
【0094】
(1C)本開示の電極製造方法では、窒素濃度が30体積%以上97体積%以下の雰囲気において、アルカリ金属イオンを含むドープ溶液を用い、活物質にアルカリ金属をドープすることができる。この場合、ドープ溶液に一層引火し難い。また、活物質にドープされたアルカリ金属が変性することを一層抑制できる。
【0095】
(1D)本開示の電極製造方法では、活物質にアルカリ金属をドープするとき、ドープ溶液の温度を、25℃以上50℃以下とすることができる。この場合、ドープ溶液に一層引火し難い。また、活物質にドープされたアルカリ金属が変性することを一層抑制できる。
【0096】
(1E)本開示の電極製造方法では、活物質にアルカリ金属をドープするとき、雰囲気の圧力を0.1×105N/m2以上5×105N/m2以下とすることができる。この場合、ドープ溶液に一層引火し難い。また、活物質にドープされたアルカリ金属が変性することを一層抑制できる。
【0097】
(1F)本開示の蓄電デバイスの製造方法では、負極を製造するとき、酸素濃度が1体積%以上18体積%以下の雰囲気において、アルカリ金属イオンを含むドープ溶液を用い、負極活物質にアルカリ金属をドープする。そのため、ドープ溶液に引火し難い。また、負極活物質にドープされたアルカリ金属が変性することを抑制できる。
【0098】
7.実施例
本開示を以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。
【0099】
(実施例1-1)
(1-1A)電極75の製造
長尺の帯状の負極集電体を用意した。負極集電体のサイズは、幅150mm、長さ100m、厚さ8μmである。負極集電体の表面粗さRaは0.1μmである。負極集電体は銅箔から成る。
図6に示すように、負極集電体93の両面に、それぞれ負極活物質層95を形成し、電極前駆体73を得た。負極活物質層95の厚みは80μmである。負極活物質層95は、負極集電体93の長手方向に沿って形成されている。負極活物質層95は、負極集電体93の幅方向における中央部に、幅120mmにわたって形成されている。負極集電体93の幅方向の両端における負極活物質層未形成部はそれぞれ15mmである。負極活物質層未形成部とは、負極活物質層95が形成されていない部分である。
【0100】
負極活物質層95は、黒鉛、カルボキシメチルセルロース、アセチレンブラック、バインダ及び分散剤を、質量比で88:3:5:3:1の比率で含む。黒鉛は負極活物質に対応し、炭素系材料に対応する。アセチレンブラックは導電剤に対応する。
【0101】
次に、以下のようにして対極ユニット51を製造した。まず、厚さ2mmの長尺の銅板を用意した。この銅板上に、リチウム金属板を貼り付けた。リチウム金属板のサイズは、幅120mm×長さ800mm、厚さ1mmである。リチウム金属板は、銅板の長手方向に沿って貼り付けられている。このようにリチウム金属板を貼り付けた銅板を、対極ユニット51とする。同じ対極ユニット51を8枚製造した。対極ユニット51はリチウム極に対応する。
【0102】
図1に示す電極製造装置1を用意した。電極前駆体73及び対極ユニット51をチャンバー10内に収容した。次に、電極製造装置1の電解液槽203、205、7、207に電解液を供給した。電解液は、1.2MのLiPF
6を含む溶液である。電解液の溶媒は、エチレンカーボネートと、エチルメチルカーボネートと、ジメチルカーボネートとを、3:4:3の体積比で含む混合溶媒である。
【0103】
次に、電極製造装置1が備える電極前駆体73及び対極ユニット51を電流・電圧モニター付き直流電源に接続し、電極前駆体73を0.16m/minの速度で搬送しながら、40Aの電流を通電した。通電する際のチャンバー10内の雰囲気は、酸素濃度10体積%、窒素濃度90体積%、温度25℃に調整し、電解液の温度は40℃とした。通電時間は、不可逆容量を考慮した上、負極活物質層95におけるリチウムドープ割合が負極の放電容量C2の70%になる時間を設定した。なお、不可逆容量は、リチウムをドープした後の負極の放電容量を測定することにより予め見積もっておいた。この工程により、負極活物質層95中の負極活物質にリチウムがドープされ、電極前駆体73は電極75となった。なお、本実施例及び後述する各実施例及び各比較例において電極75はリチウムイオンキャパシタ用負極である。
【0104】
電極75を、25℃のEMC(エチルメチルカーボネート)を収容した洗浄槽103を通過させた。その後、電極75を巻取ロール49に巻き取り、7時間保管した。以上のようにして、電極75を製造した。
【0105】
(1-1B)電極75の外観評価の評価方法と評価結果
上記(1-1A)で得られた電極75の外観を観察した。電極75において黒色への変色が観察されない場合は「A」、黒色への変色が電極75の一部の領域で観察された場合は「B」、黒色への変色が電極75の全面で観察された場合は「C」と評価した。評価結果を表1に示す。
【0106】
【表1】
(1-1C)負極放電容量の評価方法と評価結果
上記(1-1A)で得られた電極75から打ち抜きの方法により、4.0cm×2.6cmの大きさ(ただし端子溶接部を除く)の負極を用意した。次に、前記のように作成した負極を作用極とし、リチウム金属を対極及び参照極とする3極セルを組み立てた。この3極セルに、電解液を注液した。電解液は、1.2MのLiPF
6を含む溶液である。電解液の溶媒は、エチレンカーボネートと、エチルメチルカーボネートと、ジメチルカーボネートとを、3:4:3の体積比で含む混合溶媒である。以上の工程により、評価用セルが完成した。
【0107】
作製した評価用セルを、電流密度0.1mA/cm2の定電流で負極電位が3.0Vvs. Li/Li+になるまで放電し、放電容量を測定した。評価結果を表1に示す。
【0108】
(実施例1-2~1-6、比較例1-1、1-2)
通電の際のチャンバー10内の雰囲気の酸素濃度、窒素濃度、及び温度、並びに電解液の温度を表1に示す数値とした点以外は実施例1-1と同様にして、電極の製造及び評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0109】
(実施例2-1)
以下のようにして引火性の評価を行った。容器内に電解液を供給した。電解液は、1.2MのLiPF6を含む溶液である。電解液の溶媒は、エチレンカーボネートと、エチルメチルカーボネートと、ジメチルカーボネートとを、3:4:3の体積比で含む混合溶媒である。電解液を投入した後、電解液の温度を40℃に調整した。容器内の雰囲気は、酸素濃度10体積%、窒素濃度90体積%とした。容器内の温度は25℃であった。そして、容器を開けた後に直ちに着火し、燃焼が観察されない場合は「A」、一時的な燃焼が観察された場合は「B」、燃焼が観察された場合は「C」と評価した。評価結果を表2に示す。
【0110】
【表2】
(実施例2-2~2-6、比較例2-1)
容器内の雰囲気の酸素濃度、窒素濃度、及び温度、並びに電解液の温度を表2に示す数値とした点以外は実施例2-1と同様に引火性の評価を行った。評価結果を表2に示す。<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0111】
(1)第1実施形態において、枚葉式の方法でプレドープを行ってもよい。枚葉式とは、切り取られた電極板とアルカリ金属板とを、セパレータを介して電解液中に配置した状態でプレドープを行う方法である。
【0112】
(2)上記各実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素に分担させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に発揮させたりしてもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【0113】
(3)上述した電極製造方法の他、電極製造装置、当該電極製造装置を構成要素とするシステム、プレドープ方法等、種々の形態で本開示を実現することもできる。