IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-フレキシブルプリント配線板 図1
  • 特許-フレキシブルプリント配線板 図2A
  • 特許-フレキシブルプリント配線板 図2B
  • 特許-フレキシブルプリント配線板 図3
  • 特許-フレキシブルプリント配線板 図4
  • 特許-フレキシブルプリント配線板 図5
  • 特許-フレキシブルプリント配線板 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】フレキシブルプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
H05K3/34 501D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021108723
(22)【出願日】2021-06-30
(65)【公開番号】P2023006225
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】清水 秀彦
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 智宏
【審査官】石坂 博明
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-180397(JP,A)
【文献】特開2017-162913(JP,A)
【文献】特開2018-207070(JP,A)
【文献】特開2011-165695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00-3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と第2電極とを有する電子部品と、
ベースフィルムと、
前記ベースフィルムの一部に積層され、前記第1電極と前記第2電極と個別にはんだ付けされる2つの接合領域を有する導電性のパターン層と、
前記ベースフィルム又は前記パターン層に接着剤を介して積層され、前記パターン層の2つの前記接合領域を含む一部と前記電子部品の全体とを外部に露出させる開口部を有するカバーレイと、を備え、
前記パターン層は、当該パターン層の表面上で前記接合領域と前記開口部の縁とで挟まれた範囲に開口する溝部を有する、フレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
前記溝部の一部は、前記カバーレイの下層にある、請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
前記溝部は、前記接合領域の全域と対向する、請求項1又は2に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
前記溝部は、前記接合領域のうちの中央域を含む一部に対向する、請求項1又は2に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項5】
前記溝部の開口形状は、前記接合領域と前記開口部の前記縁とが対向する方向での幅が一定となる矩形である、請求項1から4のいずれか一項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項6】
前記溝部の開口形状は、前記接合領域に対向する側の一辺を底辺とし、前記開口部の前記縁に対向する側を頂点とする二等辺三角形である、請求項1から3のいずれか一項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項7】
前記パターン層は、前記接合領域が設定されるパッドを含み、
前記溝部は、前記パッドに形成されている、請求項1から6のいずれか一項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項8】
前記パッドの外周領域で、かつ、前記接合領域に対して前記溝部を挟んで対向する一部は、前記カバーレイの下層にある、請求項7に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項9】
隣り合うバッテリーセルの各々の電極端子を連結するバスバーを複数有するバスバーモジュールに含まれ、複数の前記バスバーを電気的に接続する、請求項1から8のいずれか一項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品としてのチップ部品を実装したフレキシブルプリント配線板(Flexible Printed Circuit:FPC)がある。一般に、フレキシブルプリント配線板では、ベースフィルムに、導体回路としてのパターン層が積層される。パターン層は、チップ部品の電極をはんだ付けさせる領域として、接合領域を有する。更に、ベースフィルム又はパターン層には、パターン層等を保護するためのカバーレイが積層される。カバーレイは、例えば接合領域を外部に露出させる開口部を有する。
【0003】
カバーレイは、接着剤を介して、熱加圧によりベースフィルム上に貼り合わされる。この貼り合わせ時に、カバーレイに設けられている開口部の縁から接着剤がはみ出すと、はみ出した接着剤が接合領域に到達するおそれがある。この場合、所望の接合領域を確保することができずに、結果として、はんだ付けの信頼性を低下させることもあり得る。そこで、特許文献1は、このような接着剤のはみ出しを防ぐために、ベースフィルムにカバーレイを貼り合わせるときに開口部の周囲の接着剤層を半硬化させる、フレキシブルプリント配線板の製造方法に関する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-235459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている製造方法では、カバーレイの開口部の周囲の接着剤層を半硬化させるために、開口部の周辺部分のみを加熱する工程が含まれるので、全体としての工程が複雑化する。また、例えば、フレキシブルプリント配線板上に小型のチップ部品が多数実装される場合には、工程が更に複雑化し、すべての開口部に対して半硬化処理を行うことが難しい場合もあり得る。
【0006】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、電子部品の実装に際して、はんだ付けの信頼性の低下を簡易的に抑えるフレキシブルプリント配線板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様に係るフレキシブルプリント配線板は、電極を有する電子部品と、ベースフィルムと、ベースフィルムの一部に積層され、電極がはんだ付けされる接合領域を有する導電性のパターン層と、ベースフィルム又はパターン層に接着剤を介して積層され、パターン層の接合領域を含む一部と電子部品とを外部に露出させる開口部を有するカバーレイと、を備え、パターン層は、当該パターン層の表面上で接合領域と開口部の縁とで挟まれた範囲に開口する溝部を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の斜視図である。
図2A】第1実施形態における電子部品実装部分の平面図である。
図2B】第1実施形態における電子部品実装部分の断面図である。
図3】比較例としての電子部品実装部分の平面図である。
図4】第2実施形態における電子部品実装部分の平面図である。
図5】第3実施形態における電子部品実装部分の平面図である。
図6】第4実施形態における電子部品実装部分の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて各実施形態に係るフレキシブルプリント配線板について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るフレキシブルプリント配線板(以下、「FPC」と略記する)1の斜視図である。図1では、電子部品としてのチップ部品2が実装される部位を明示するために、FPC1の一部が拡大図として概略的に描かれている。
【0011】
FPC1は、電子機器同士を電気的に接続する配線部品であり、優れた可撓性を有することから、各種分野における装置に採用され得る。例えば、FPC1は、車載用部品として、バッテリーモジュールに含まれる複数のバッテリーセルのうち隣り合うバッテリーセルの各々の電極端子を連結するバスバー(Bus Bar)を複数有するバスバーモジュールに採用され得る。この場合、FPC1は、バスバーモジュールにおいて複数のバスバーを電気的に接続する。なお、FPC1の別部位には、以下で例示するチップ部品2以外の複数の電子部品やコネクタ類が設けられているが、ここでは省略する。
【0012】
図2A及び図2Bは、FPC1におけるチップ部品2の実装部分を拡大した概略図である。図2Aは、実装部分の平面図である。図2Bは、図2Aに示すIIB-IIB断面に対応した、実装部分の断面図である。図2Bに示す断面図は、チップ部品2のおおよそ重心位置を通り、チップ部品2の実装方向と、チップ部品2が備える第1電極2a及び第2電極2b同士が対向する方向とに沿った仮想面で切断された図である。ここで、チップ部品2の実装方向は、ベースフィルム10の主平面に対して垂直な方向に相当する。
【0013】
FPC1は、一例として、第1電極2aと第2電極2bとの2つの電極を有する電子部品としてのチップ部品2を備える。本実施形態では、チップ部品2は、第1電極2aを一端とし第2電極2bを他端として一方向に延伸するブロック体である。なお、チップ部品2は、コンデンサ、抵抗、コイル又は半導体などのあらゆる電子部品であってもよい。
【0014】
また、FPC1は、ベースフィルム10と、パターン層を構成する第1パターン層11及び第2パターン層12と、カバーレイ13とを備える。
【0015】
ベースフィルム10は、可撓性に優れ、FPC1の全体形状を規定する平面形状を有する基部である。ベースフィルム10は、例えば、耐熱性に優れたポリイミド樹脂で形成される。
【0016】
パターン層は、ベースフィルム10の少なくとも一方の主表面上の一部に積層される導体回路である。パターン層は、導電性を有する材料、例えば銅箔で形成される。図1図2A及び図2Bでは、チップ部品2の実装部分に係るパターン層として、第1パターン層11と、第2パターン層12とが例示されている。
【0017】
第1パターン層11は、チップ部品2の一方の電極である第1電極2aに接続されるパターン層である。第1パターン層11は、パッド11aと、パターン11bとを含む。
【0018】
パッド11aは、第1電極2aがはんだ付けされる接合領域11dが設定される部位である。パッド11aの平面形状は、おおよそ矩形である。以下、パッド11aの一方向に沿った長さをパッド長さL1と規定し、パッド11aの一方向に対して垂直な他方向に沿った幅をパッド幅W1と規定する。本実施形態では、パッド長さL1が規定される一方向は、チップ部品2において第1電極2aと第2電極2bとが対向する方向に沿っている。
【0019】
パターン11bは、パッド11aの一部と連続し、導線回路全体における配線部分を構成する部位である。以下、パッド11aの近傍におけるパターン11bの幅をパターン幅WPと規定する。本実施形態では、パターン幅WPは、パッド幅W1と平行で、かつ、パッド幅W1よりも短い。また、パターン幅WPとパッド幅W1との各々の中心は、これらの幅が規定される幅方向において一致する。
【0020】
第2パターン層12は、チップ部品2の他方の電極である第2電極2bに接続されるパターン層である。第2パターン層12は、パッド12aと、パターン12bとを含む。パッド12a及びパターン12bの形状は、第1パターン層11に含まれるパッド11a及びパターン11bの形状と対称である。パッド12aには、パッド11aと同様に、第2電極2bがはんだ付けされる接合領域12dが設けられている。
【0021】
カバーレイ13は、ベースフィルム10の表面全体、すなわち、ベースフィルム10又はパターン層に接着剤14を介して積層され、パターン層等を保護する保護層である。接着剤14は、柔軟性に優れたエポキシ樹脂を主成分とするエポキシ系接着剤であってもよい。カバーレイ13は、パターン層の一部としてのパッド11a及びパッド12aと、チップ部品2とを外部に露出させる開口部13aを有する。開口部13aの縁13bの形状は、ベースフィルム10やパターン層の外部への露出を極力減らすために、チップ部品2とは非接触を維持しつつ、チップ部品2の外周形状におおよそ沿っている。
【0022】
ここで、チップ部品2の実装に際しては、第1電極2aがパッド11aにはんだ付けされ、同様に、第2電極2bがパッド12aにはんだ付けされる。はんだ付けの方式としては、例えば、はんだペーストを予め接合領域11d等に塗布し、塗布されたはんだペースト上に第1電極2a等を載置させた後、加熱炉ではんだペーストを溶融させることで最終的に対象部同士を接合させる、リフロー方式であってもよい。図1図2A及び図2Bでは、はんだ付け後の部位として、パッド11a上の接合領域11dに対して第1電極2aを接合しているフィレット3aと、パッド12a上の接合領域12dに対して第2電極2bを接合しているフィレット3bとが描画されている。
【0023】
また、本実施形態では、第1パターン層11の一部であるパッド11aは、パッド11aの表面上で、接合領域11dと、カバーレイ13の開口部13aの縁13bとで挟まれた範囲に開口する溝部11cを有する。同様に、第2パターン層12の一部であるパッド12aは、パッド12aの表面上で、接合領域12dと、開口部13aの縁13bとで挟まれた範囲に開口する溝部12cを有する。本実施形態では、溝部11cと開口形状と、溝部12cの開口形状とは、同一である。例えば、図2A中の溝部12cを参照すると、溝部12cの開口形状は、接合領域12dと、開口部13aの縁13bとが対向する方向での幅である溝幅LG1が一定となる矩形である。一方、溝幅LG1に対して垂直な方向での長さである溝長さLG2は、接合領域12dの同様の方向での長さとおおよそ同じである。つまり、溝部12cは、接合領域12dの全域と対向している。
【0024】
更に、本実施形態では、パッド11a及びパッド12aの各々の一部は、カバーレイ13の下層にある。具体的には、パッド11aの外周領域で、かつ、接合領域11dに対して溝部11cを挟んで対向する一部は、カバーレイ13の下層にある。同様に、パッド12aの外周領域で、かつ、接合領域12dに対して溝部12cを挟んで対向する一部は、カバーレイ13の下層にある。ここで、カバーレイ13の下層とは、カバーレイ13の直下の層に限定されるものではなく、カバーレイ13の下方に存在する層、すなわち、本実施形態では接着剤14で構成される接着層を挟んで下方に存在する層をいう。
【0025】
次に、FPC1の作用について説明する。
【0026】
まず、本実施形態に係るFPC1の作用と、後述の効果とをより明らかにするために、比較例としてのFPCを提示する。
【0027】
図3は、比較例としてのFPC100におけるチップ部品2の実装部分を拡大した平面図である。図3に示す実装部分は、図2Aに示したFPC1におけるチップ部品2の実装部分に準じて描かれており、以下、同一部分には同一の符号を付し、詳細説明を省略する。FPC100では、FPC1と比較して、互いにパッドの形状が異なり、かつ、本実施形態における溝部11c及び溝部12cに対応する溝部が存在しない。
【0028】
FPC100は、FPC1におけるパッド11a及びパターン11bに代えて、パッド111a及びパターン111bを備える。特に、パッド111aの平面形状について、パッド長さL0は、パッド111aの全体が開口部13aから外部に露出するように、パッド11aのパッド長さL1よりも短く設定されている。なお、パッド111aのパッド幅は、パッド11aのパッド幅W1と同一であってもよい。この場合、パッド111aに連続するパターン111bの一部がカバーレイ13の開口部13aから外部に露出することになる。同様に、FPC100は、FPC1におけるパッド12a及びパターン12bに代えて、パッド112a及びパターン112bを備える。
【0029】
このようなFPC100について、チップ部品2が未だ実装されていないときの状態を考える。カバーレイ13は、接着剤14を介して、熱加圧によりベースフィルム10又はパターン層に貼り合わされる。この熱加圧処理により、開口部13aの縁13bから開口部13aの内側に向かって、接着剤14がはみ出す場合がある。
【0030】
ここで、開口部13aにおいてパターン層が露出していない領域は、パッド111a及びパッド112aの高さ位置よりも低い。そのため、接着剤14が縁13bからはみ出したとしても、パッド111a上に設定されている接合領域111d、及び、パッド112a上に設定されている接合領域112dには到達しづらい。
【0031】
ところが、開口部13aにおいてパターン層が露出している領域では、開口部13aの縁13bが、パターン111b及びパッド111a、並びに、パターン112b及びパッド112aと連続している。そのため、接着剤14が縁13bからはみ出し、パターン111b又はパターン112bの表面上に流れ出たとすると、接着剤14が接合領域111d又は接合領域112dに到達するおそれがある。例えば、図3に示すように、パターン111bが接合領域111dの中央域111eに向かうようにパッド111aと連続する場合には、パターン111bの表面上に流れ出た接着剤14の一部14aは、中央域111eに流入する可能性が高い。この点については、パッド112a上に設定されている接合領域112dの中央域112eにおいても同様である。このような接合領域111d等への接着剤14の流入は、接合領域111d等の範囲を狭めることにつながるため、結果として、後の工程として実施されるはんだ付けの信頼性を低下させるおそれがある。
【0032】
これに対して、本実施形態に係るFPC1では、パッド11aには溝部11cが予め形成されており、同様に、パッド12aには溝部12cが予め形成されている。そのため、接着剤14が縁13bからはみ出し、パッド11a又はパッド12aの表面上に流れ出たとしても、図2A及び図2Bに示すように、接着剤14は、溝部11c又は溝部12cに流れ落ちるので、接合領域11d又は接合領域12dに到達しづらい。
【0033】
次に、FPC1の効果について説明する。
【0034】
本実施形態に係るFPC1は、電極を有する電子部品を備える。FPC1は、ベースフィルム10と、ベースフィルム10の一部に積層され、電極がはんだ付けされる接合領域を有する導電性のパターン層とを備える。また、FPC1は、ベースフィルム10又はパターン層に接着剤14を介して積層され、パターン層の接合領域を含む一部と電子部品とを外部に露出させる開口部13aを有するカバーレイ13を備える。パターン層は、当該パターン層の表面上で接合領域と開口部13aの縁13bとで挟まれた範囲に開口する溝部を有する。
【0035】
ここで、電子部品は、上記例示のチップ部品2に相当する。電極は、上記例示の第1電極2a及び第2電極2bに相当する。パターン層は、上記例示の第1パターン層11及び第2パターン層12に相当する。接合領域は、上記例示の接合領域11d及び接合領域12dに相当する。また、溝部は、上記例示の溝部11c及び溝部12cに相当する。
【0036】
以下の効果の説明に関して、簡単化のために、代表として第1パターン層11に関する部分に特化して考察するが、第2パターン層12に関する部分についても同様である。
【0037】
チップ部品2が実装される前に、カバーレイ13の貼り付けの際に接着剤14が縁13bからはみ出し、パッド11aの表面上に流れ出たとしても、接着剤14は、溝部11cに流れ落ちることになる。これにより、パッド11a上に設定されている接合領域11dに接着剤14が到達しづらくなるので、接着剤14の接合領域11dへの流入により接合領域11dの範囲を狭めるという事象が生じづらくなる。したがって、FPC1によれば、後の工程としてチップ部品2を実装させる際に、はんだペーストを接合領域11dの所望の範囲に塗布することができず、以後、はんだ付け欠陥を生じさせるというような不具合を、予め回避させることができる。
【0038】
また、FPC1では、接合領域11d等の接合領域への接着剤14の流入を抑えるための構造としては、開口部13aから露出するパターン層の一部に溝部11c等の溝部を形成するのみである。したがって、FPC1によれば、例えば、チップ部品2が小型で、又は、チップ部品2の実装数が多い場合でも、FPC1の製造工程の複雑化を抑えることができる。
【0039】
以上のように、本実施形態によれば、電子部品の実装に際して、はんだ付けの信頼性の低下を簡易的に抑えるFPC1を提供することができる。
【0040】
更に、例えば、カバーレイ13の貼り合わせに伴う接着剤14のはみ出しを想定し、はみ出した接着剤14が接合領域11dに到達しづらくなるように、開口部13aの大きさを予め大きく設定しておくことも考えられる。しかし、開口部13aの大きさを大きく設定するということは、開口部13aから露出するパターン層の範囲が広くなることを意味し、パターン層保護の観点から望ましくない。
【0041】
これに対して、FPC1では、開口部13aから露出するパターン層の一部に溝部11cを形成するだけでよいので、開口部13aの大口径化を回避させることができる。例えば、チップ部品2が小型である場合、接着剤14のはみ出し量が0.2[mm]程度あるとする。この場合、溝部11cが存在しないとすると、接合領域11dが設定されているパターン層の一部と開口部13aの縁13bとの間の開口ギャップは、0.2[mm]以上必要となる。これに対して、溝部11cが存在するFPC1であれば、上記の開口ギャップを0.2[mm]以下に設定することもできる。
【0042】
また、本実施形態に係るFPC1では、溝部は、接合領域の全域と対向してもよい。
【0043】
このFPC1によれば、例えば、開口部13aの縁13bからパターン層の表面上を伝って接合領域11dに向かおうとする接着剤14を、より確実に溝部11cに導き、接合領域11dに到達しづらくすることができる。
【0044】
また、本実施形態に係るFPC1では、溝部の開口形状は、接合領域と開口部13aの縁13bとが対向する方向での幅が一定となる矩形であってもよい。
【0045】
このFPC1によれば、開口部13aの縁13bから接着剤14がはみ出す位置に寄らずに、接着剤14を溝部11cに導きやすくすることができる。また、溝部の開口形状が単純化されるので、FPC1の製造工程の複雑化を回避するのに有利となる。
【0046】
また、本実施形態に係るFPC1では、パターン層は、接合領域が設定されるパッドを含んでもよい。この場合、溝部は、パッドに形成されていてもよい。
【0047】
このFPC1によれば、例えば、接合領域11dが設定されるパッド11aに溝部11cが形成されるので、溝部11cの開口形状を接合領域11dの範囲に合わせて広く設定することができる。
【0048】
また、本実施形態に係るFPC1では、パッドの外周領域で、かつ、接合領域に対して溝部を挟んで対向する一部は、カバーレイ13の下層にあってもよい。
【0049】
このFPC1によれば、例えば、溝部11cを、開口部13aの縁13bに合致した位置にまで形成することができるので、接合領域と開口部13aの縁13bとで挟まれた範囲において、溝部11cの開口形状を可能な限り広く設定することができる。
【0050】
なお、上記の各図を用いた説明では、溝部11c等の溝部が、パッド11a等のパッドに形成される場合を例示した。しかし、例えば、パッド11aと連続するパターン11bのパターン幅WPが予めパッド11aのパッド幅W1と同等に設定されている場合など、パターン層においてパッド11aとパターン11bとの差異が小さい場合もあり得る。このような場合には、溝部11cは、パターン11bに形成されていてもよい。
【0051】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態に係るFPC20におけるチップ部品2の実装部分を拡大した平面図である。図4に示す実装部分は、図2Aに示したFPC1におけるチップ部品2の実装部分に準じて描かれており、以下、同一部分には同一の符号を付し、詳細説明を省略する。
【0052】
FPC20は、第1実施形態に係るFPC1における第1パターン層11に代えて、接合領域21dが設定され、溝部21cが形成されたパッド21aと、パターン21bとを有する第1パターン層21を備える。同様に、FPC20は、第1実施形態に係るFPC1における第2パターン層12に代えて、接合領域22dが設定され、溝部22cが形成されたパッド22aと、パターン22bとを有する第2パターン層22を備える。
【0053】
本実施形態では、溝部21cと溝部22cとの各々の開口形状は同一である。例えば、図4中の溝部22cを参照すると、溝部22cの開口形状は、接合領域22dと、開口部13aの縁13bとが対向する方向での幅である溝幅LG3が一定となる矩形である。一方、溝幅LG3に対して垂直な方向での長さである溝長さLG2は、一例として、第1実施形態における溝部12cでの溝長さLG2と同一である。
【0054】
そして、本実施形態における溝部21c又は溝部22cの一部は、第1実施形態における溝部11c又は12cとは異なり、カバーレイ13の下層にあってもよい。
【0055】
このFPC20によれば、代表として溝部21cについて見ると、第1実施形態における溝部11cの溝幅LG1と比較するとわかるとおり、溝幅LG3を大きく設定することができるので、溝部21cの開口形状をより大きく設定することができる。したがって、開口部13aの縁13bからはみ出した接着剤14の量が比較的多い場合でも、接着剤14を接合領域21dへ到達させづらくすることができる。
【0056】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態に係るFPC30におけるチップ部品2の実装部分を拡大した平面図である。図5に示す実装部分は、図2Aに示したFPC1におけるチップ部品2の実装部分に準じて描かれており、以下、同一部分には同一の符号を付し、詳細説明を省略する。
【0057】
FPC30は、第1実施形態に係るFPC1における第1パターン層11に代えて、接合領域31dが設定され、溝部31cが形成されたパッド31aと、パターン31bとを有する第1パターン層31を備える。同様に、FPC30は、第1実施形態に係るFPC1における第2パターン層12に代えて、接合領域32dが設定され、溝部32cが形成されたパッド32aと、パターン32bとを有する第2パターン層32を備える。なお、図5において、接合領域31dには、フィレット3aの中央部分が接合される中央域31eが示され、接合領域32dには、フィレット3bの中央部分が接合される中央域32eが示されている。
【0058】
本実施形態では、溝部31cと溝部32cとの各々の開口形状は同一である。例えば、図5中の溝部32cを参照すると、溝部32cの開口形状は、接合領域32dに対向する側の一辺を底辺とし、開口部13aの縁13bに対向する側を頂点とする二等辺三角形であってもよい。この場合、頂点と底辺との最短距離を結ぶ長さが溝幅LG4である。一方、底辺の長さに相当する、溝幅LG4に対して垂直な方向での長さである溝長さLG2は、一例として、第1実施形態における溝部12cでの溝長さLG2と同一である。
【0059】
このFPC30によれば、代表として溝部31cについて見ると、溝部31cの開口形状は、接合領域31dのうちの中央域31eに対向する部分が広く、中央域31eから幅方向の両端に向かうにつれて狭くなる。このような溝部31cによれば、はんだ付け後に形成されるフィレット3aの中央部分に接着剤14が到達することを抑えやすくなる。はんだ付けによる接合の適否は、フィレット3aの中央部分が適切にはんだ付けされているかどうかに影響を受けやすい。そこで、溝部31cの開口形状を上記のような二等辺三角形に設定することで、少なくとも、中央域31eへの接着剤14の到達を回避させることができる。
【0060】
なお、溝部31c及び溝部32cの開口形状である二等辺三角形は、各辺の長さや角度により厳密に規定される必要はなく、上記の効果を奏する範囲において、若干の変形もあり得る。また、溝部31c及び溝部32cの一部は、第2実施形態と同様に、カバーレイ13の下層にあってもよい。
【0061】
(第4実施形態)
図6は、第4実施形態に係るFPC40におけるチップ部品2の実装部分を拡大した平面図である。図6に示す実装部分は、図2Aに示したFPC1におけるチップ部品2の実装部分に準じて描かれており、以下、同一部分には同一の符号を付し、詳細説明を省略する。
【0062】
FPC40は、第1実施形態に係るFPC1における第1パターン層11に代えて、接合領域41dが設定され、溝部41cが形成されたパッド41aと、パターン41bとを有する第1パターン層41を備える。同様に、FPC40は、第1実施形態に係るFPC1における第2パターン層12に代えて、接合領域42dが設定され、溝部42cが形成されたパッド42aと、パターン42bとを有する第2パターン層42を備える。なお、図6において、接合領域41dには、フィレット3aの中央部分が接合される中央域41eが示され、接合領域42dには、フィレット3bの中央部分が接合される中央域42eが示されている。
【0063】
本実施形態では、パッド41a及びパッド42aの形状が、第1実施形態におけるパッド11a及びパッド12aの形状とは異なる。代表としてパッド41aについて見ると、パッド41aは、接合領域41dのうちの中央域41eを含む一部と対向するような溝部41cが形成される部分のみ、第1実施形態におけるパッド11aと同等の形状を有する。そして、パッド41aの残りの部分については、溝部を形成する必要がないため、接合領域41dを確保するのに必要な形状のみ有する。
【0064】
例えば、溝部41cが形成されるパッド41aの範囲では、パッド長さL1が、第1実施形態におけるパッド長さL1と同一であるが、パッド幅W2は、第1実施形態におけるパッド幅W1よりも短い。また、パターン41bは、溝部41cが形成されるパッド41aの範囲に接続され、接合領域41dの中央域41eと対向する。
【0065】
一方、パッド41aのその他の範囲では、パッド幅W1は、第1実施形態におけるパッド幅W1と同一であるが、パッド長さL1は、第1実施形態におけるパッド長さL1よりも短い。また、このパッド41aの範囲は、開口部13aの縁13bとは非接触である。
【0066】
本実施形態では、溝部41cと溝部42cとの各々の開口形状は同一である。例えば、図6中の溝部42cを参照すると、溝部42cは、接合領域42dのうちの中央域42eを含む一部に対向してもよい。具体的には、溝部42cの開口形状は、接合領域42dのうちの中央域42eを含む一部と、開口部13aの縁13bとが対向する方向での幅である溝幅LG6が一定となる矩形である。一方、溝幅LG6に対して垂直な方向での長さである溝長さLG5は、接合領域42dのうちの中央域42eを含む一部と対向する長さを有する。つまり、本実施形態における溝部42cの規定によれば、図6に示すように、溝部42cの開口形状を、一部が中央域42eと対向しつつ、かつ、パッド42aの幅方向では一方の端側に寄るような形状に設定することができる。
【0067】
このFPC40によれば、代表として溝部41cについて見ると、溝部41cは、接合領域41dのうちの中央域41eを含む一部に対向するので、第3実施形態と同様に、少なくとも、中央域41eへの接着剤14の到達を回避させることができる。
【0068】
なお、溝部41c及び溝部42cの一部は、第2実施形態と同様に、カバーレイ13の下層にあってもよい。
【0069】
以上、各実施形態を説明したが、各実施形態はこれらに限定されるものではなく、各実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0070】
1,20,30,40 FPC
2 チップ部品
2a 第1電極
2b 第2電極
10 ベースフィルム
11,21,31,41 第1パターン層
11a,21a,31a,41a パッド
11c,21c,31c,41c 溝部
11d,21d,31d,41d 接合領域
12,22,32,42 第2パターン層
12a,22a,32a,42a パッド
12c,22c,32c,42c 溝部
12d,22d,32d,42d 接合領域
13 カバーレイ
13a 開口部
13b 縁
14 接着剤
41e 中央域
42e 中央域
LG1 溝幅
LG3 溝幅
LG6 溝幅
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6