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特許7456980事前に組み立てられたモジュールによる電気化学セルの積み重ねを有する電解または共電解リアクター(SOEC)または燃料電池(SOFC)、および関連する製造プロセス
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  • 特許-事前に組み立てられたモジュールによる電気化学セルの積み重ねを有する電解または共電解リアクター(SOEC)または燃料電池(SOFC)、および関連する製造プロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】事前に組み立てられたモジュールによる電気化学セルの積み重ねを有する電解または共電解リアクター(SOEC)または燃料電池(SOFC)、および関連する製造プロセス
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/65 20210101AFI20240319BHJP
   C25B 9/60 20210101ALI20240319BHJP
   C25B 9/70 20210101ALI20240319BHJP
   C25B 13/04 20210101ALI20240319BHJP
   C25B 13/07 20210101ALI20240319BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20240319BHJP
   H01M 8/2425 20160101ALI20240319BHJP
   H01M 8/2465 20160101ALI20240319BHJP
【FI】
C25B9/65
C25B9/60
C25B9/70
C25B13/04 302
C25B13/07
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
H01M8/2425
H01M8/2465
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021130664
(22)【出願日】2021-08-10
(65)【公開番号】P2022033016
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】2008424
(32)【優先日】2020-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ステファーヌ・ディ・イオリオ
(72)【発明者】
【氏名】ティボー・モネ
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノ・オレシク
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・シナル
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-340249(JP,A)
【文献】特開2002-280008(JP,A)
【文献】特開2003-142127(JP,A)
【文献】特表2005-522015(JP,A)
【文献】特開2010-161053(JP,A)
【文献】特表2015-537329(JP,A)
【文献】特表2016-520976(JP,A)
【文献】特開2017-069192(JP,A)
【文献】特表2017-504929(JP,A)
【文献】特表2019-500498(JP,A)
【文献】国際公開第2015/108012(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0115518(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0037031(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0038622(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0194693(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0251763(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102694191(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00 - 15/08
H01M 8/12 - 8/1286
8/2425 - 8/2435
8/247
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温で機能することを意図されている、SOEC電解もしくは共電解リアクターまたはSOFC燃料電池を形成する、電気化学デバイスを製造するためのプロセスであって、
a)少なくとも2つのモジュールを生産するステップであって、各モジュールは
-SOEC/SOFCタイプの固体酸化物に基づく電気化学セルのスタックと、
-複数の電気的および流体的なインターコネクタであって、各々が、前記セルに電流を運ぶか、もしくは収集し、各電気化学セルの各電極上でガスを運び、収集し、循環させるようにガス漏れのない導電性材料から作られたコンポーネントを備え、前記電気化学セルの各々のいずれかの側に配置構成されている、インターコネクタと、
-前記スタックが間に配置構成される2枚の補強プレートとを備える、ステップと、
b)各モジュールが輸送されることを可能にする、各モジュールの事前アセンブリを得るために、2枚の補強プレートの間にボルトシステムによって各モジュールを締め付ける力を印加するステップと、
c)少なくとも1つの電気接点部材の、および一方のモジュールから他方のモジュールへの各ガス入口/出口の周りの封止を確実にするための少なくとも1つのシールの、前記補強プレートの間に接触がある2つの隣接するモジュールの間におけるインターカレーションを伴って、ステップb)に従い事前に組み立てられた前記モジュールを互いの上に積み重ねるステップと、
d)アセンブリを得るために、前記2枚の補強プレートの間に、前記モジュールの前記ボルトシステムとは独立した、締め付けシステムを用いてモジュールの前記スタックを締め付ける力を印加するステップと、
e)前記独立した締め付けを維持しながら前記ボルトシステムを前記アセンブリから取り外すステップと、
f)熱機械的処理を前記アセンブリに施すステップであって、少なくとも前記電気接点部材および前記シールの補強プレートの間への留置を確保して、最終的アセンブリを得る、ステップとを含み、
前記プロセスはすべての前記電気化学セルを還元するステップを含む、プロセス。
【請求項2】
ステップa)は生産される各モジュールに熱機械的処理を施して、少なくとも各モジュール内の電気接点部材およびシールの前記留置を確保するステップa1)を含む、請求項に記載のプロセス。
【請求項3】
前記電気化学セルの還元のステップは、各モジュールに対するステップa1)の間に、またはモジュールの前記アセンブリに対するステップf)の間に実行される、請求項またはに記載のプロセス。
【請求項4】
前記電気化学セルを還元する前記ステップが各モジュールに対してステップa1)の間に実行される場合に、各モジュールの総電圧を測定するステップa2)が前記ステップの終了時に実行される、請求項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記補強プレートの間に接触がある2つの隣接するモジュールの間に配置構成されている前記電気接点部材は、導電性セラミック材料の少なくとも1つの層を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記導電性セラミック材料は
-La 0.6 Sr 0.4 Co 0.8 Fe 0.2 (LSCF)、
-La 0.8 Sr 0.2 Cu 0.9 Fe 0.1 2.5 (LSCuF)、
-La 0.7 Sr 0.3 CoO (LSC)、
-Sm 0.5 Sr 0.5 CoO (SSC)、
-SmBa 0.5 Sr 0.5 Co (SBSC)、
-GdSrCo (GSC)、
-La 0.65 Sr 0.3 MnO (LSM)、
-LaBaCo (LBC)、
-YBaCo (YBC)、
-Nd 1.8 Ce 0.2 CuO (NCC)、
-La 0.8 Sr 0.2 Co 0.3 Mn 0.1 Fe 0.6 (LSCMF)、
-La 0.98 Ni 0.6 Fe 0.4 (LNF)、
-La 1.2 Sr 0.8 NiO (LSN)、
-La 0.7 Sr 0.3 FeO (LSF)、
-La Ni 0.6 Cu 0.4 (LNC)
からなる群から選択される、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記導電性セラミック材料は、LSM、LSC、LNF、およびLSCFからなる群から選択される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記導電性セラミック材料の前記層は、その厚さの少なくとも一部において空洞化されている、請求項5から7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記補強プレートの間に接触がある2つの隣接するモジュールの間に配置構成されている前記電気接点部材は、ペーストの堆積によって得られる少なくとも1つの金グリッドまたは少なくとも1つの金ビーズを備える、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
2つの隣接するモジュール間に配置構成されている前記少なくとも1つのシールは、一方のモジュールから他方のモジュールへの各ガス入口/出口に面する穿孔されたマイカシートからなる、請求項1から9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
2つの隣接するモジュールの間に配置構成されている前記少なくとも1つのシールは、各ガス入口/出口の周りでガラスまたはガラスセラミックのビーズからなる、請求項1から9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記補強プレートの各々の厚さは1から10mmの間である、請求項1から11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
モジュールの前記スタックが間に配置構成される前記補強プレートとは異なる、ターミナルプレートとして知られる、2つの追加のエンドプレート(13)を備える、請求項1から12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記ターミナルプレートの各々の厚さは5mmより大きい、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
モジュールの前記スタックの端部に配置構成されている、前記2枚の補強プレートの各々に取り付けられている少なくとも1つの電気接続ロッド(7、8)を備える、請求項1から14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
前記電気接続ロッドの各々は、前記2枚の補強プレートのうちの1枚、または適切な場合、前記2枚のターミナルプレートのうちの1枚の縁にあるタッピングにねじ込まれる、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
モジュールの前記スタックの前記端部に配置構成されている、前記2枚の補強プレートの各々のコーナーに個別に取り付けられる4本の接続ロッドを備える、請求項15または16に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)の分野、高温水電解(HTE、高温電解、またはHTSE、高温水蒸気電解)の分野、また固体酸化物電解槽セル(SOEC)の分野、および水と、二酸化炭素COおよび二酸化窒素NOから選ばれた別のガスとの高温共電解の分野に関するものである。
【0002】
本発明は、より具体的には、SOECタイプの水の高温電解または共電解(HTE)のためのリアクターを構成する電気化学デバイス、または基本電気化学セル(elementary electrochemical cell)を積み重ねたSOFCタイプの燃料電池の生産に関するものである。
【0003】
本発明は、まず最初に、そのようなデバイスの組み立て、またその機能を改善することを目的としている。
【0004】
本発明は、主に高温水電解の応用に関して説明されているが、水と、二酸化炭素COから選ばれた別のガスとの共電解、およびSOFC燃料電池に等しく応用される。
【0005】
本発明は、水素または炭化水素のいずれか、たとえばメタンCHを可燃物として使用するSOFC燃料電池にも応用される。
【背景技術】
【0006】
SOFC燃料電池またはHTE電解槽は、互いに重ね合わされた3つの陽極/電解質/陰極層と、バイポーラプレートとも呼ばれる金属合金から作られた相互接続プレート、すなわちインターコネクタとからなる、固体酸化物形電気化学セルを各々含む基本ユニットのスタックからなる電気化学デバイスである。インターコネクタの機能は、電流の通過および各セルの付近のガス(HTE電解槽内発生した注入蒸気、水素および酸素、またSOFCセル内で発生した注入空気および水素および水)の循環の両方を確実にし、それぞれ、セルの陽極側と陰極側でガスの循環のための区画である陽極区画と陰極区画とを分離することである。
【0007】
典型的には600から950℃の間の水蒸気の高温電解、HTEを実行するために、HO水蒸気が陰極区画内に注入される。セルに印加される電流の効果の下で、水蒸気形態の水分子の解離は、水素電極(陰極)と電解質との間の界面のところで行われる、すなわち、この解離は、二水素ガスHと酸素イオンとを発生する。二水素は、水素区画の出口で収集され、取り除かれる。酸素イオンO2-は電解質中を移動し、電解質と酸素電極(陽極)との間の界面のところで二酸素として再結合する。
【0008】
SOFC燃料電池の機能を確実に行わせるために、空気(酸素)が陰極区画内に注入され、水素が陽極区画内に注入される。水素Hは、Hイオンに変換され、陽極に捕捉された電子を放出する。Hイオンは陰極に到達し、大気中の酸素から作られたO2-イオンと結合して水を形成する。Hイオンおよび電子が陰極に移動すると、水素から直流電流が発生する。
【0009】
HTE電解の場合に水素および酸素の流量を増やすか、またはSOFC燃料電池の場合に供給される電力を増やすために、複数の基本電気化学セルを互いの上に積み重ね、それらをインターコネクタで分離することは知られている慣例である。アセンブリは、電解槽(電解リアクター)またはSOFC燃料電池の電源およびガス供給/収集を支える2つの端部接続プレートの間に位置決めされる。
【0010】
さらに、インターコネクタと電極との間に確立される電気的接触の質を、したがって上述の電気化学デバイスの性能を改善するために、電気接点部材は、個別にインターカレートされて電極上に配置構成される。電気化学デバイスにおいて、水素電極(HTEリアクター内の陰極、SOFCセル内の陽極)との接触に、低コストで満足のいく結果をもたらすことから、従来からニッケルグリッドが使用されている。
【0011】
一般に、現在のところ、スタックは、限られた数の電気化学セルを有する。典型的には、本出願人は、25個の電気化学セルを有するスタックを使用する。
【0012】
上述の電気化学デバイスを機能させる前に、電気化学セルを初期状態の酸化された形態ではなく、還元された形態にするために、そのスタックを少なくとも1つの「還元」熱処理ステップにかけることが必要である。
【0013】
この還元ステップは、水素電極に対しては還元性ガスおよび酸素電極に対しては空気または中性ガスの、ガス下での熱機械的サイクルであってよい。
【0014】
特定の熱処理ステップは、欧州特許第EP 2870650 B1号において説明された。
【0015】
現在までに採用されているスタックは、一般的に、段階の各々において、2つの異なる隣接するガス循環区画、すなわち陽極区画および陰極区画との間の漏れ止めを確実にしなければならないシールを使用している。有利なシールは、欧州特許第EP 3078071 B1号において説明された。これらのシールは、熱調節を必要とするという特定の特徴を有し、シールは熱調節時に押しつぶされる。
【0016】
欧州特許出願第EP 2900846 A1号において説明されている層、またはニッケルグリッドなどの、接触部材も、熱調節の際に、および電気化学デバイスが機能しているときに、押しつぶされ、それらの正しい取り付けを確実にする。水素チャンバー内で接触部材として働く部材も押しつぶされる。
【0017】
言い換えると、熱調節ステップの間に、上述の電気化学デバイスのスタックは、典型的には、数センチメートルだけ押しつぶされることになる。現在のところ、積み重ねられたセルの数が比較的少なければ、押しつぶしは正しく行われる。
【0018】
次に、本出願人は、より多くの電気化学セル、典型的には25個を超えるセルを有するスタックの生産を企図している。
【0019】
しかしながら、本発明者らは、スタックの締め付け中に予想される動きが、ガイドロッド上のブレースタイプの機械的ブロッキング問題を引き起こすと分析している。このブロッキングは、正しい熱調節を妨げ、その結果、電気化学デバイスの正常な機能を妨げることになる。
【0020】
したがって、SOECタイプの電解リアクターまたはSOFCタイプの燃料電池を形成する積層型電気化学デバイスを、特にデバイスの電気化学的機能を阻害することなくスタック内の電気化学セルの数を増やすことによって、さらに改善する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】欧州特許第EP 2870650 B1号
【文献】欧州特許第EP 3078071 B1号
【文献】欧州特許出願第EP 2900846 A1号
【文献】仏国特許第FR 3045215 B1号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
この目的のために、本発明の主題は、まず第一に、少なくとも2つの事前に組み立てられたモジュールのスタックを備える、高温で機能することを意図されている、SOEC電解もしくは共電解リアクター、またはSOFC燃料電池を構成する、電気化学デバイスであり、各事前に組み立てられたモジュールは、
-SOEC/SOFCタイプの固体酸化物に基づく電気化学セルのスタックと、
-複数の電気的および流体的なインターコネクタであって、各々が、セルに電流を運ぶか、もしくは電流を収集し、各電気化学セルの各電極上でガスを運び、収集し、循環させるようにガス漏れのない導電性材料から作られたコンポーネントからなり、電気化学セルの各々のいずれかの側に個別に配置構成されている、インターコネクタと、
-スタックが間に配置構成される2枚の補強プレートとを備え、
モジュールのスタック内に配置構成されている、補強プレートは、モジュールの間に電気的および流体的なインターコネクタを形成し、モジュールのスタックの端部に配置構成されている、2枚の補強プレートは、電気化学デバイスから外部に電流を運ぶか、もしくは電流を収集し、電気化学デバイスから外部にガスを運び、収集し、循環させるための電気的および流体的なコネクタを形成し、
少なくとも1つの電気接点部材は、補強プレートの間に接触がある2つの隣接するモジュールの間に配置構成され、
少なくとも1つのシールは、2つの隣接するモジュール間に配置構成され、一方のモジュールから他方のモジュールへの各ガス入口/出口の周りの漏れ止めを確実にする。
【0023】
本発明の主題は、少なくとも2つの事前に組み立てられたモジュールのスタックを備える、高温で機能することを意図されている電気化学デバイスでもあり、各事前に組み立てられたモジュールは、
-SOEC/SOFCタイプの固体酸化物に基づく電気化学セルのスタックと、
-複数の電気的および流体的なインターコネクタであって、各々が、セルに電流を運ぶか、もしくは電流を収集し、各電気化学セルの各電極上でガスを運び、収集し、循環させるようにガス漏れのない導電性材料から作られたコンポーネントを備え、電気化学セルの各々のいずれかの側に個別に配置構成されている、インターコネクタと、
-スタックが間に配置構成される2枚の補強プレートとを備え、
モジュールのスタック内に配置構成されている、補強プレートは、モジュールの間に電気的および流体的なインターコネクタを形成するが、モジュールのスタックの端部に配置構成されている、2枚の補強プレートは、電気化学デバイスと外部との間で電流を運ぶか、もしくは収集し、電気化学デバイスと外部との間でガスを運び、収集し、循環させるための電気的および流体的なコネクタを形成し、
少なくとも1つの電気接点部材は、補強プレートの間に接触がある2つの隣接するモジュールの間に配置構成され、
少なくとも1つのシールは、2つの隣接するモジュール間に配置構成され、一方のモジュールから他方のモジュールへの各ガス入口/出口の周りの漏れ止めを確実にする。
【0024】
第1の有利な実施形態の変更形態により、補強プレートの間に接触がある2つの隣接するモジュールの間に配置構成されている電気接点部材は、導電性セラミック材料の少なくとも1つの層を備える。
【0025】
この第1の変更形態により、導電性セラミック材料は、有利には、
-La0.6Sr0.4Co0.8Fe0.2(LSCF)、
-La0.8Sr0.2Cu0.9Fe0.12.5(LSCuF)、
-La0.7Sr0.3CoO(LSC)、
-Sm0.5Sr0.5CoO(SSC)、
-SmBa0.5Sr0.5Co(SBSC)、
-GdSrCo(GSC)、
-La0.65Sr0.3MnO(LSM)、
-LaBaCo(LBC)、
-YBaCo(YBC)、
-Nd1.8Ce0.2CuO(NCC)、
-La0.8Sr0.2Co0.3Mn0.1Fe0.6(LSCMF)、
-La0.98Ni0.6Fe0.4(LNF)、
-La1.2Sr0.8NiO(LSN)、
-La0.7Sr0.3FeO(LSF)、
-LaNi0.6Cu0.4(LNC)
からなる群から選択される。
【0026】
より有利には、導電性セラミック材料は、LSM、LSC、LNF、およびLSCFからなる群から選択される。
【0027】
好ましくは、導電性セラミック材料の層は、その厚さの少なくとも一部において空洞化されている。この空洞化は、溝、穴、または任意の他の形態からなるものとしてよい。空洞化すること、特に接触層に溝を設けることで、同じ押しつぶし力が応力を高め、したがって、層をさらに押しつぶし、それによって表面欠陥をより適切に是正することが可能になる。言い換えると、接触層に溝を設けることによって、その押しつぶし性が改善される。
【0028】
第2の変更形態により、補強プレートの間に接触がある2つの隣接するモジュールの間に配置構成されている電気接点部材は、ペーストの堆積によって得られる少なくとも1つの金グリッドまたは少なくとも1つの金ビーズを備える。金グリッドは、100cmまたは200cmの表面積を有し、グリッドセルの個数は100から3600グリッドセル/cmであるものとしてよい。金ペーストを堆積することによって形成されるビーズは、数百ミクロンのオーダーの厚さを有し得る。ニッケルグリッドも企図され得る。この場合、グリッドの酸化を防ぐために、グリッドの周りにシーリングを施すよう配慮する必要がある。有利な実施形態の変更形態により、2つの隣接するモジュール間に配置構成されている少なくとも1つのシールは、一方のモジュールから他方のモジュールへの各ガス入口/出口に面する穿孔されたマイカシートからなり、適切な場合に各ガス入口/出口の周りでガラスまたはガラスセラミックビーズでコーティングされる。また、ガラスまたはガラスセラミックなしの単純なマイカも使用されてよく、これは、シール性能は低下させるが、必要な場合にモジュールの交換をより容易にする。
【0029】
代替的に、2つの隣接するモジュールの間に配置構成されている少なくとも1つのシールは、各ガス入口/出口の周りでガラスまたはガラスセラミックのビーズからなる。ガラスセラミックは、結晶構造であるという利点を有し、これは封止性能を高める。
【0030】
有利には、補強プレートの各々の厚さは1から10mmの間である。
【0031】
有利な実施形態により、デバイスは、モジュールのスタックが間に配置構成される補強プレートとは異なる、ターミナルプレートとして知られる2つの追加のエンドプレートを備える。モジュールのスタックの端部のところの補強プレートに加えてターミナルプレートを配置構成することは、周囲流体管理システムのより単純な流体的接合を、特に、モジュールのスタックの流体分布と流体管理システムの流体分布との間の寸法の変化があるので、可能にし得る。
【0032】
好ましくは、ターミナルプレートの各々の厚さは5mmより大きい。
【0033】
別の有利な実施形態により、デバイスは、モジュールのスタックの端部に配置構成されている、2枚の補強プレートの各々に、または適切な場合、2枚のターミナルプレートの各々に取り付けられている少なくとも1つの電気接続ロッドを備える。
【0034】
好ましくは、電気接続ロッドの各々は、2枚の補強プレートのうちの1枚、または適切な場合、2枚のターミナルプレートのうちの1枚の縁にあるタッピングにねじ込まれる。
【0035】
より具体的には、4本の接続ロッドが用意され、モジュールのスタックの端部に配置構成されている、2枚の補強プレートの各々の、または適切な場合、2枚のターミナルプレートの各々の、コーナーに個別に取り付けられ得る。これは、電流の表面分布の均質性を改善し、プレートをより薄くすることを可能にする。
【0036】
本発明の主題は、また、高温で機能することを意図されている、SOEC電解もしくは共電解リアクターまたはSOFC燃料電池を形成する、電気化学デバイスを製造するためのプロセスであり、
a)少なくとも2つのモジュールを生産するステップであって、各モジュールは
-SOEC/SOFCタイプの固体酸化物に基づく電気化学セルのスタックと、
-複数の電気的および流体的なインターコネクタであって、各々が、セルに電流を運ぶか、もしくは電流を収集し、各電気化学セルの各電極上でガスを運び、収集し、循環させるようにガス漏れのない導電性材料から作られたコンポーネントを備え、電気化学セルの各々のいずれかの側に配置構成されている、インターコネクタと、
-スタックが間に配置構成される2枚の補強プレートとを備える、ステップと、
b)各モジュールが輸送されることを可能にする、各モジュールの事前アセンブリを得るために、2つの補強プレートの間にボルトシステムによって各モジュールを締め付ける力を印加するステップと、
c)少なくとも1つの電気接点部材の、および一方のモジュールから他方のモジュールへの各ガス入口/出口の周りの封止を確実にするための少なくとも1つのシールの、補強プレートの間に接触がある2つの隣接するモジュールの間におけるインターカレーションを伴って、ステップb)に従い事前に組み立てられたモジュールを互いの上に積み重ねるステップと、
d)アセンブリを得るために、2つの端部補強プレートの間に、モジュールのボルトシステムとは独立した、締め付けシステムを用いてモジュールのスタックを締め付ける力を印加するステップと、
e)独立した締め付けを維持しながらボルトシステムをアセンブリから取り外すステップと、
f)熱機械的処理をアセンブリに施すステップであって、少なくとも電気接点部材およびシールの補強プレートの間への留置を仕上げ、最終的アセンブリを得るステップとを含み、
このプロセスはすべての電気化学セルを還元するステップを含む。
【0037】
有利な実施形態の変更形態により、ステップa)は、生産される各モジュールに熱機械的処理を施して、少なくとも各モジュール内の電気接点部材およびシールの留置を仕上げるステップa1)を含む。
【0038】
モジュールは還元されなければならない。電気化学セルの還元のステップは、各モジュールに対するステップa1)の間に、またはモジュールのアセンブリに対するステップf)の間に実行され得る。還元は、したがって、モジュールの各々の温度における最初の留置時に実行され得るか、またはその後、モジュールのスタックが生産された後に実行され得る。
【0039】
電気化学セルの還元は、供給される水素の流量に応じて1時間から数日間にわたって650℃以上、または有利には800℃で行われ得る。
【0040】
電気化学セルを完全に還元するためには、一定量の水素が必要であり、好ましくは一度に少量の水素を送り、過度に急激な還元を避け、セルを変形させる危険または破損させる危険すらないようにする必要がある。還元された後、セルおよびしたがって電気化学デバイスは正常に機能する、すなわちHTE電解反応を起こすか、または電気を発生することができる。
【0041】
別の有利な変更形態により、電気化学セルを還元するステップが各モジュールに対してステップa1)の間に実行される場合に、各モジュールの総電圧を測定するステップa2)が、有利には、前記ステップの終了時に有利に実行される。
【0042】
別の有利な変更形態により、プロセスは、各モジュールの漏れ止めをテストするステップa3)を含む。
【0043】
このように、本発明は、本質的には、事前に組み立てられたモジュールを積み重ねることによる組み立てによって形成される電気化学デバイスからなり、これらのモジュールの各々は電気化学セルの通常のスタックとして生産される。
【0044】
事前に組み立てられたモジュールの製造は、従来技術によるセルスタック、すなわち、単一ブロックにおいて、遭遇するブレーシング問題が存在せず、また過剰な押しつぶしコースもなく、多数の電気化学セルを有する電気化学デバイスを生産することを可能にする。
【0045】
典型的には、ブレーシング問題が現れる前に積み重ねられ得る電気化学セルの最大数が25である場合、本発明は、25個のセルを含む事前組立済みモジュールを生産することを可能にし、したがって、ブレーシング問題が生じる危険性なく25の倍数のセルを含むモジュールの全体的なスタックを生産することを可能にする。
【0046】
最後に、モジュールの組み立てで、電気化学デバイスが正常に機能し得る。
【0047】
2つの隣接するモジュールの補強プレート間の接触部材およびシールは、ガスの良好な循環をもたらし、また良好な封止を確実にし、さらに良好な電気接触を確実にすることを可能にする。
【0048】
それに加えて、モジュール形態の製造は、モジュールのうちの一方に欠陥がある場合に容易に交換することを可能にする。
【0049】
さらに、本発明によるモジュールの事前に組み立てられたスタックは、電圧レベル、全電力、またはサイズが容易に調節され得る電気化学デバイスを提案することを可能にする。したがって、単一の電気化学デバイスを用いて10から1000Vの電圧を供給することが可能であり、またモジュール当たりのセル総数および積み重ねられたモジュールの数を調節することによってそうすることが可能である。
【0050】
他の利点および特性は、次の図を参照しつつ非限定的に例示することを目的として与えられる、詳細な説明を読むことで、より明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本発明による事前に組み立てられたモジュールを備える電気化学デバイスの一例の概略側面図である。
図2】本発明による電気化学セルのスタックを収容するモジュールの一例の概略側面図である。
図3】本発明による、ガスを循環させるための穿孔、ならびに事前に組み立てられたモジュールの輸送および取り扱いのためにネジ山付きボルトで締め付けシステムを取り付けるための手段を備える、補強プレートの一例の概略上面図である。
図4】事前に組み立てられるべき、また互いの上に積み重ねられるべき2つの異なるモジュールを装備することを意図されている、ネジ山付きボルトで締め付けシステムを取り付けるための手段を備える2枚の補強プレートの概略上面図である。
図5】ボルトを備える締付システムを装備された、本発明による電気化学セルのスタックを収容するモジュールの一例の長手方向断面における概略図である。
図6】第1の実施形態の変更形態による電気化学デバイスの下側部分の部分的概略側面図である。
図7】第1の実施形態の変更形態による電気化学デバイスの下側部分の部分的概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本特許出願全体を通して、「下側」、「上側」、「より上」、「より下」、「内側」、「外側」、「内部」、および「外部」という言い回しは、機能する構成の本発明による電気化学デバイス、すなわちモジュールが垂直に積み重ねられている状態を参照することで理解されるであろう。
【0053】
説明されている電解槽または燃料電池は、高温で機能する固体酸化物形(SOEC、固体酸化物形電解質セル、またはSOFC、固体酸化物形燃料電池)であることも指摘される。したがって、電解セルまたは燃料電池のすべての構成要素(陽極/電解質/陰極)はセラミックである。電解槽(電解リアクター)または燃料電池の高温動作温度は、典型的に600℃から1000℃の間である。典型的には、陰極支持タイプ(cathode support type)(CSC)の、本発明で使用するのに適しているSOEC電解セルの特性は、以下のTable 1(表1)に次のように示されるものであってよい。
【0054】
【表1】
【0055】
図1は、高温電解槽またはSOFC燃料電池として可逆的に機能できる、本発明による電気化学デバイス1を示している。
【0056】
このデバイス1は、3つの事前に組み立てられたモジュールM1、M2、M3のスタックを備える。
【0057】
各モジュールM1、M2、M3は、それぞれ、SOEC/SOFCタイプの固体酸化物に基づく電気化学セルのスタック2.1、2.2、2.3を備える。
【0058】
各スタック2.1、2.2、2.3内では、図示されていない、複数の電気的および流体的なインターコネクタが、電気化学セルの各々のいずれかの側に個別に配置構成される。各インターコネクタは、ガス漏れのない導電性材料から作られたコンポーネントからなり、セルに電流を運ぶか、または電流を収集し、各電気化学セルの各電極上でガスを運び、収集し、循環させる。
【0059】
同様に、各スタック2.1、2.2、2.3内では、複数の接触部材と各ガス入口/出口の周りの複数のシールが電気化学セルの各電極上に個別に配置構成される。
【0060】
言い換えると、各モジュールM1、M2、M3は、完全な電気化学デバイスに対する従来技術に従って行われるような、インターコネクタ、接触部材、およびシールの個別のインターカレーションを伴うセルのスタックを備える。
【0061】
各モジュールM1、M2、M3は、また、それぞれ、2枚の補強プレート3.1と4.1、3.2と4.2、3.3と4.3を備え、それらの間にセル2.1、2.2、2.3のスタックが配置構成される。
【0062】
モジュールのスタックにおいて、モジュールのスタック内の補強プレート4.1、3.2、4.2、3.3は、モジュール間の電気的および流体的なインターコネクタを形成する。
【0063】
モジュールのスタックの端部に配置構成されている、2枚の補強プレート3.1、4.3は、電気化学デバイスから外部に電流を運ぶか、または電流を収集し、電気化学デバイスから外部にガスを運び、収集し、循環させるための電気的および流体的なコネクタを形成する。
【0064】
電気接点部材5.1は、補強プレート4.1、3.2の間に接触がある2つの隣接するモジュールM1、M2の間に配置構成される。
【0065】
シール6.1が、2つの隣接するモジュールM1、M2の間に配置構成され、これにより、一方のモジュールM1から他方のモジュールM2への各ガス入口/出口の周りの漏れ止めを確実にする。
【0066】
電気接点部材5.2は、補強プレート4.2、3.3の間に接触がある2つの隣接するモジュールM2、M3の間に配置構成される。
【0067】
シール6.2が、2つの隣接するモジュールM2、M3の間に配置構成され、これにより、一方のモジュールM2から他方のモジュールM3への各ガス入口/出口の周りの漏れ止めを確実にする。
【0068】
電流パイプと通常呼ばれる、2つの電気接続ロッド7、8は、各々、モジュールのスタックの端部にある2枚の補強プレート3.1、4.3のうちの一方の縁にあるタッピングにねじ込まれる。したがって、電流は、パイプ7のうちの一方を介して運ばれ、他方のパイプ8を介してモジュールのスタックから現れるものとしてよい。電流パイプ7、8は、各々、有利には、第1の金属材料から作られたロッド、およびロッドを全体的に覆い、ロッドに溶接され、第1の金属材料の電気抵抗率よりも低い電気抵抗率を有する、耐腐食性を有する、第2の金属材料から作られたシースからなるものとしてよい。ロッドおよびシースは、好ましくは、熱間等方圧加圧法によってともに溶接される。
【0069】
たとえば、ロッドは銅から作られ、ステンレス鋼から作られたシースで覆われている。
【0070】
したがって、本発明による電気化学デバイス1は、電気化学反応ガスおよび電流を循環させる事前に組み立てられたモジュールM1からM3の重ね合わせであり、モジュールM1からM3の各々は、従来技術のようにインターコネクタ、接触部材、およびシールと交互に配置された電気化学セルのスタックを含む。
【0071】
次に、本発明による電気化学デバイス1を生産するためのプロセスが、図2から図6を参照しつつ説明される。
【0072】
ステップa):モジュールM1からM3の各々は、2枚の補強プレート3.1、3.2、3.3と4.1、4.2、4.3との間にセル2.1、2.2、2.3のスタックを伴って生産される。生産されるモジュールM1の一例は、図2に示されている。
【0073】
補強プレート3.1、3.2、3.3の各々は、好ましくは、厚い金属プレート、およびガスが循環することになる面の一方に、2枚の薄い金属シートからなる。言い換えると、これは補強をもたらす金属プレートの厚さであり、薄いシートはガスの循環および電気的導通を可能にする。
【0074】
厚い金属プレートは、好ましくは、特にCrofer(登録商標)、AISI 441および/またはAISI 430などのタイプの、フェライト鋼から作られる。厚い金属プレートの厚さは、好ましくは、1mmを超える。各薄いシートの厚さは、好ましくは0.1から0.5mmの間、好ましくは0.2mmに等しい。補強プレート3.1、3.2、3.3の全厚さは、好ましくは1から10mmの間である。
【0075】
熱機械的処理が生産された各モジュールに施され、これにより少なくとも各モジュール内の電気接点部材およびシールの留置を仕上げる。この熱機械的処理は、また、電気化学セルの還元を含み得る。
【0076】
温度は、典型的にはガラスまたはガラスセラミックから作られたシールの留置に必要な温度によって決定される、すなわち1時間に920℃である。温度上昇は、最大10℃/分で所与のモジュールに対して生じ得る。
【0077】
電気化学セルの還元は、供給される水素の流量に応じて1時間から数日間にわたって650℃以上、または有利には800℃で行われ得る。
【0078】
次いで、各モジュールの全電圧が測定され、これは各モジュールの電気的機能が正しいかどうかを確認することを可能にする。
【0079】
熱機械的処理の加熱が停止され、温度は自然に20℃に戻る。冷たい空気を送り込んで冷却速度を上げることで、より急速に冷却することが可能である。
【0080】
次いで、各モジュールの漏れ止めテストが実行される。
【0081】
ステップb):補強プレート3.1または4.1と関連して図3に例示されているように、モジュールM1からM3の補強プレートの各々は、その縁上で、また四隅のところで穿孔され、取り付けブラケット10がねじ込まれるタッピング9を付けられる。また、各補強プレートは穿孔され、ガスを通すための貫通孔30または40を開けられる。
【0082】
室温で、締め付けボルトのシステムが取り付けられ、各々、モジュールM1とともに図4に例示されているように、各モジュールの四隅においてネジ山付きロッド11およびナット12からなる。ロッド11の各々は、取り付けブラケット10の穴内に挿入される。
【0083】
タッピング9およびねじ込まれる取り付けブラケット10の位置決めは、一方のモジュールM1から、モジュールM1上に積み重ねられている別のモジュールM2までオフセットされていることに留意されたい。特に、以下で説明されているように、各モジュールM1からM3のボルト締めシステムはその後取り外される必要があるので、ネジ山付きロッド11の取り外しの際に物理的干渉があってはならない。
【0084】
オフセット位置決めの有利な例は、その後一方が他方の上に積み重ねられる2つの異なるモジュールM1、M2に属する2枚の補強プレート3.1または4.1および3.2または4.2を参照しつつ図4に示されている。タッピング9および取り付けブラケット10は、一方の側縁から他方の側縁までオフセットされる、すなわち、一方の補強プレート3.1または4.1から積み重ねられる他方の補強プレート3.2または4.2まで90°だけオフセットされていることが分かる。
【0085】
次いで、各モジュールM1からM3について、ボルトシステム10、11、12により、その2つの補強プレートの間に締め付け力が印加され、輸送できるように各モジュールの事前組み立てが行われる(図5)。
【0086】
ステップc):次いで、ステップb)に従って事前に組み立てられたモジュールM1からM3が輸送され、その後、それぞれ電気接点部材5.1または5.2の、およびそれぞれシール6.1または6.2の、補強プレート3.2および4.1または4.2および3.3の間の、接触がある2つの隣接するモジュール間のインターカレーションを伴って、互いの上に積み重ねられる。
【0087】
より正確には、モジュールの位置決め、接触部材5.1または5.2の留置、およびシール6.1または6.2の作製に関して、次のことが実行される。
-マイカシートが切断され、ガスの入口/出口を形成し、接触部材の中央の位置決めを行い、漏れ止めされるこれらの入口のゾーンにマークが付けられる。
-ガラススリップビーズが漏れ止めがなされるようにマークを付けられたゾーンより上に留置される。
-スリップビーズでコーティングされたマイカシートが下側モジュール上に位置決めされる。
-接触部材が所定の中央位置に位置決めされる。
-上側モジュールが位置決めされる。
【0088】
ステップd):次いで、アセンブリを得るために、2枚の端部補強プレート3.1および4.3の間に、モジュールのボルトシステムとは独立した、締め付けシステムを用いて、モジュールM1からM3のスタックを締め付ける力が印加される。
【0089】
ステップe):ステップd)に従ってスタック全体に負荷をかけて組み立てが行われた後、ボルトシステムは取り外される。一方のモジュールM1またはM2から、スタックM2またはM3内の別の隣接するモジュールへのタッピング9および取り付けブラケット10の位置決めオフセットは、ボルトシステムのネジ山付きロッド11を容易に解放することを可能にする。
【0090】
ステップf):次いで、アセンブリは熱機械的処理を受け、それにより少なくとも電気接点部材5.1および5.2の留置、ならびに補強プレート間のシール6.1および6.2を仕上げる。シールの形成は、酸化を防止する機能を有する中性ガスの下で実行され得る。このガスは、窒素、アルゴン、ヘリウム、またはネオンであってよい。
【0091】
こうして、最終的なアセンブリが得られる。
【0092】
先ほど説明した事前組み立て済みのモジュールM1からM3の積み重ねによる電気化学デバイス1の利点の1つは、デバイス全体を交換する必要なく、欠陥のあるモジュールを容易に交換することが可能である点である。
【0093】
そうするためには、
-電気化学的な機能を停止させ、電気的接続解除を行い、締め付け負荷のかかったデバイス1を室温に戻すこと、
-各モジュールM1からM3に対する、ボルト10、11、12による締め付けシステムの再挿入、
-ボルトシステムとは独立して、デバイス全体の締め付けシステムを取り外すこと、
-欠陥のあるモジュールを取り外し、新しいモジュールと交換すること、
-デバイスの締め付けシステム全体による負荷の下での復帰、
-ボルト10、11、12による締め付けのためすべてのシステムを取り外すこと、
-接触部材5.1、5.2およびシール6.1、6.2を再配置するために熱機械的処理を施すこと
が実行され得る。
【0094】
図6および図7に例示されているように、モジュールの端部補強プレート3.1、4.3に加えてモジュールM1からM3のスタックの端部のところでターミナルプレート13を交換することが有利であり得る。これは、周囲流体管理システムとのより単純な流体的接合を可能にし得る。
【0095】
電流パイプ8は、好ましくは、補強プレート13よりも厚くてよいターミナルプレート13にねじ込まれる(図7)。この構成では、ターミナルプレート13と補強プレート4.3との間の追加の接触部材5.3が企図される。
【0096】
ターミナルプレートを備えた構成(図6または図7)とは無関係に、ターミナルプレート13と補強プレート4.3との間に追加のシール14も企図されている。
【0097】
本発明は、これまでに説明した例に限定されず、示されている例の特性は、特に、例示されていない変更形態の範囲内で一緒に組み合わされ得る。
【0098】
しかしながら、本発明の範囲から逸脱することなく、他の変更形態および改善も企図され得る。
【0099】
示されている例では、電気化学デバイスは、セルのスタックを収容する3つのモジュールM1からM3のスタックであるが、2つのモジュールまたは3つよりも多いモジュールのスタックも企図されてよく、各モジュール内に積み重ねられている電気化学セルの数だけが、それらの締め付けにおけるブレーシングによるブロッキングを発生させないように制限される。
【0100】
図3および図4を参照しつつ説明されているように、補強プレートの縁にタッピングを付けた締め付けおよび輸送のシステムの代わりに、フランス特許第FR 3045215 B1号において説明されているようなシステムを応用する代替的手段もあり、各補強プレートは、周辺部分にボルトロッドを通すための穴が貫通している大きな表面を有しているべきである。
【0101】
より一般的には、示されている例で使用されているボルトおよび取り付けブラケット以外の機械的システムは、力の取り込みのために企図され得る。
【0102】
生産プロセスの例では、電気化学セルの還元のステップは、高温での製造中に各モジュールに対して行われるが、モジュールの組み立てに関してステップf)の間に行うことも企図され得る。
【0103】
ボルト10、11、12による締め付けのシステムの取り付けのためのタッピング9は、有利には電流パイプ7、8を取り付ける働きをし得る。したがって、同じタッピング位置を使用することによって、コンパクトさにおける節約がなされる。電流パイプ7、8の取り付けは、有利には、同じ取り付けブラケット10を用いて行われる。次いで、好ましくは、タッピング9は金ペーストで覆われ、それにより良好な電気接触を確実にする。
【0104】
シール6.1、6.1を生産するために、示されている例のように、マイカのみで、すなわち、ガラスまたはガラスセラミックのいかなる層もなしで、作られるものとしてよい。この変更形態は、ガラスまたはガラスセラミックがその支持体と反応するので、必要な場合に欠陥のあるモジュールの交換を容易にし得る。
【符号の説明】
【0105】
1 電気化学デバイス
2.1、2.2、2.3 スタック
3.1と4.1、3.2と4.2、3.3と4.3 補強プレート
5.1 電気接点部材
5.2 電気接点部材
5.3 接触部材
6.1 シール
6.2 シール
7、8 電気接続ロッド、電流パイプ
9 タッピング
10 取り付けブラケット、ボルト
11 ネジ山付きロッド、ボルト
12 ナット、ボルト
13 補強プレート、ターミナルプレート
14 追加のシール
30、40 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7