(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】皮膚障害及び状態を予防又は治療するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20240319BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240319BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240319BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240319BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240319BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240319BHJP
C07D 403/04 20060101ALN20240319BHJP
C07D 403/14 20060101ALN20240319BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P17/00
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P37/08
A61Q17/04
C07D403/04
C07D403/14
(21)【出願番号】P 2021212519
(22)【出願日】2021-12-27
【審査請求日】2021-12-27
(32)【優先日】2021-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504187858
【氏名又は名称】佛教慈濟醫療財團法人
(74)【代理人】
【識別番号】100176072
【氏名又は名称】小林 功
(74)【代理人】
【識別番号】100230156
【氏名又は名称】松尾 心
(74)【代理人】
【識別番号】100230156
【氏名又は名称】松尾 心
(72)【発明者】
【氏名】張 中興
【審査官】横田 倫子
(56)【参考文献】
【文献】Proc Natl Acad Sci U S A ., 2017, Vol.114 No.38, p.E8035-E8044.,doi: 10.1073/pnas.1702763114.
【文献】Cell, 2018, Vol.175 No.1, p.171-185
【文献】EMBO Rep., 2004, Vol.5 No.1, p.60-65
【文献】J Biol Chem., 2000, Vol.275 No.26, p.20052-60
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/506
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のカゼインキナーゼ1阻害剤を含む、それを必要とする対象の皮膚の障害、疾患、又は状態を予防、改善又は治療するために使用される組成物であって、
前記カゼインキナーゼ1阻害剤が、CKI7、D4476、IC261、式Iで表される化合物:
【化1】
(ここで:
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、H、直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、直鎖又は分岐したC1-C5アルコキシ、直鎖又は分岐したC1-C5アシル、C5-C15アリール、及びC3-C7ヘテロアリールからなる群から選択され、それぞれは、ハロゲン化物、ヒドロキシ、エステル、エーテル、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、及びアミドの少なくとも1つで任意に置換され;あるいは、R
1及びR
2は、それらが結合している窒素原子とともに、N、O、NH、C=N、C=O及びSO
2の少なくとも1つを任意に含み、直鎖又は分岐したC1-C5アルキル、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、ヒドロキシ、ハロゲン化物及びシアノの少なくとも1つで任意に置換されてもよい4~7員の飽和、不飽和または芳香環を形成し;
R
3及びR
4は、それぞれ独立して、H;それらは、必要に応じてハロゲン化物、ヒドロキシ、アルコキシ、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、エステル及びアミドの少なくとも1つで任意に置換された直鎖又は分岐したC1-C8アルキルからなる群から選択され;又は
R
1又はR
2は、R
3とそれらがそれぞれ結合している炭素原子及び窒素原子とともに、N、NH、O、C=N、C=O、及びSO
2の少なくとも1つで任意に含み、直鎖又は分岐したC1-C5アルキル、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、ヒドロキシ、カルボニル、及びハロゲン化物の少なくとも1つで任意に置換されてもよい、4~7員の飽和、不飽和又は芳香環を形成し;
R
5及びR
8は、それぞれ独立して、H、ハロゲン化物;少なくとも1個のハロゲン化物で任意に置換される、直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、直鎖又は分岐したC2-C8アルケニル、及び直鎖又は分岐したC2-C8アルキニルからなる群から選択され;
R
6は、直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、C3-C7シクロアルキル、4~6員複素環、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、ハロゲン化物、ヒドロキシ、及びC1-C5アルキルハロゲン化物の少なくとも1つで任意に置換される、直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、直鎖又は分岐したC2-C8アルケニル、直鎖又は分岐したC2-C8アルキニル、C5-C10シクロアルキル、及び飽和又は不飽和4~6員複素環からなる群から選択され;
R
7は、C3-C7シクロアルキル、4~6員の複素環、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、ハロゲン化物、ヒドロキシ、及びC1-C5アルキルハロゲン化物の少なくとも1つで任意に置換される直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、直鎖又は分岐したC2-C8アルケニル、及び直鎖又は分岐したC2-C8アルキニルからなる群から選択される)、
式IIで表される化合物、式IIIで表される化合物、式IVで表される化合物、式Vで表される化合物及び式VIで表される化合物:
【化2】
(II)、
(III)、
(IV)、
(V)、
(VI)
からなる群から選択され、
前
記カゼインキナーゼ1阻害剤は、前記対象に局所投与され
、
前記皮膚の障害、疾患、又は状態は、UVの過剰曝露により引き起こされる、組成物。
【請求項2】
前記皮膚の障害、疾患、又は状態は、日光性紅斑、日光性アレルギー、日光性蕁麻疹、日光弾性線維症、光老化、日焼け、急性日焼け、皮膚癌、日光性角化症、非定型ほくろ(atypical mole)、又はそれらの任意の組み合わせである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記皮膚癌は、基底細胞癌、メラノーマ、メルケル細胞癌、扁平上皮癌、皮膚悪性メラノーマ、又はそれらの任意の組み合わせである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
有効量のカゼインキナーゼ1阻害剤を含む、それを必要とする対象の皮膚の障害、疾患、又は状態を予防、改善又は治療するために使用される組成物であって、前記カゼインキナーゼ1阻害剤が、CKI7、D4476、IC261、式Iで表される化合物:
【化3】
(ここで:
R
1
及びR
2
は、それぞれ独立して、H、直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、直鎖又は分岐したC1-C5アルコキシ、直鎖又は分岐したC1-C5アシル、C5-C15アリール、及びC3-C7ヘテロアリールからなる群から選択され、それぞれは、ハロゲン化物、ヒドロキシ、エステル、エーテル、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、及びアミドの少なくとも1つで任意に置換され;あるいは、R
1
及びR
2
は、それらが結合している窒素原子とともに、N、O、NH、C=N、C=O及びSO
2
の少なくとも1つを任意に含み、直鎖又は分岐したC1-C5アルキル、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、ヒドロキシ、ハロゲン化物及びシアノの少なくとも1つで任意に置換されてもよい4~7員の飽和、不飽和または芳香環を形成し;
R
3
及びR
4
は、それぞれ独立して、H;それらは、必要に応じてハロゲン化物、ヒドロキシ、アルコキシ、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、エステル及びアミドの少なくとも1つで任意に置換された直鎖又は分岐したC1-C8アルキルからなる群から選択され;又は
R
1
又はR
2
は、R
3
とそれらがそれぞれ結合している炭素原子及び窒素原子とともに、N、NH、O、C=N、C=O、及びSO
2
の少なくとも1つで任意に含み、直鎖又は分岐したC1-C5アルキル、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、ヒドロキシ、カルボニル、及びハロゲン化物の少なくとも1つで任意に置換されてもよい、4~7員の飽和、不飽和又は芳香環を形成し;
R
5
及びR
8
は、それぞれ独立して、H、ハロゲン化物;少なくとも1個のハロゲン化物で任意に置換される、直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、直鎖又は分岐したC2-C8アルケニル、及び直鎖又は分岐したC2-C8アルキニルからなる群から選択され;
R
6
は、直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、C3-C7シクロアルキル、4~6員複素環、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、ハロゲン化物、ヒドロキシ、及びC1-C5アルキルハロゲン化物の少なくとも1つで任意に置換される、直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、直鎖又は分岐したC2-C8アルケニル、直鎖又は分岐したC2-C8アルキニル、C5-C10シクロアルキル、及び飽和又は不飽和4~6員複素環からなる群から選択され;
R
7
は、C3-C7シクロアルキル、4~6員の複素環、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、ハロゲン化物、ヒドロキシ、及びC1-C5アルキルハロゲン化物の少なくとも1つで任意に置換される直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、直鎖又は分岐したC2-C8アルケニル、及び直鎖又は分岐したC2-C8アルキニルからなる群から選択される)、
式IIで表される化合物、式IIIで表される化合物、式IVで表される化合物、式Vで表される化合物及び式VIで表される化合物:
【化4】
(II)、
(III)、
(IV)、
(V)、
(VI)
からなる群から選択され、
前記カゼインキナーゼ1阻害剤は、前記対象に局所投与され、
前記皮膚の障害、疾患、又は状態は、
低メラニン症(hypomelanosis)、特発性滴状低メラニン症、ぶち症、白色粃糠疹、癜風、進行性黄斑低メラニン症、白斑(vitiligo)、ワールデンブルグ症候群、炎症後の色素脱失、創傷後の色素沈着過剰、又はそれらの任意の組み合わせである
、組成物。
【請求項5】
有効量のカゼインキナーゼ1阻害剤を含む、それを必要とする対象の皮膚の障害、疾患、又は状態を予防、改善又は治療するために使用される組成物であって、前記カゼインキナーゼ1阻害剤が、CKI7、D4476、IC261、式Iで表される化合物:
【化5】
(ここで:
R
1
及びR
2
は、それぞれ独立して、H、直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、直鎖又は分岐したC1-C5アルコキシ、直鎖又は分岐したC1-C5アシル、C5-C15アリール、及びC3-C7ヘテロアリールからなる群から選択され、それぞれは、ハロゲン化物、ヒドロキシ、エステル、エーテル、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、及びアミドの少なくとも1つで任意に置換され;あるいは、R
1
及びR
2
は、それらが結合している窒素原子とともに、N、O、NH、C=N、C=O及びSO
2
の少なくとも1つを任意に含み、直鎖又は分岐したC1-C5アルキル、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、ヒドロキシ、ハロゲン化物及びシアノの少なくとも1つで任意に置換されてもよい4~7員の飽和、不飽和または芳香環を形成し;
R
3
及びR
4
は、それぞれ独立して、H;それらは、必要に応じてハロゲン化物、ヒドロキシ、アルコキシ、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、エステル及びアミドの少なくとも1つで任意に置換された直鎖又は分岐したC1-C8アルキルからなる群から選択され;又は
R
1
又はR
2
は、R
3
とそれらがそれぞれ結合している炭素原子及び窒素原子とともに、N、NH、O、C=N、C=O、及びSO
2
の少なくとも1つで任意に含み、直鎖又は分岐したC1-C5アルキル、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、ヒドロキシ、カルボニル、及びハロゲン化物の少なくとも1つで任意に置換されてもよい、4~7員の飽和、不飽和又は芳香環を形成し;
R
5
及びR
8
は、それぞれ独立して、H、ハロゲン化物;少なくとも1個のハロゲン化物で任意に置換される、直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、直鎖又は分岐したC2-C8アルケニル、及び直鎖又は分岐したC2-C8アルキニルからなる群から選択され;
R
6
は、直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、C3-C7シクロアルキル、4~6員複素環、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、ハロゲン化物、ヒドロキシ、及びC1-C5アルキルハロゲン化物の少なくとも1つで任意に置換される、直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、直鎖又は分岐したC2-C8アルケニル、直鎖又は分岐したC2-C8アルキニル、C5-C10シクロアルキル、及び飽和又は不飽和4~6員複素環からなる群から選択され;
R
7
は、C3-C7シクロアルキル、4~6員の複素環、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、ハロゲン化物、ヒドロキシ、及びC1-C5アルキルハロゲン化物の少なくとも1つで任意に置換される直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、直鎖又は分岐したC2-C8アルケニル、及び直鎖又は分岐したC2-C8アルキニルからなる群から選択される)、
式IIで表される化合物、式IIIで表される化合物、式IVで表される化合物、式Vで表される化合物及び式VIで表される化合物:
【化6】
(II)、
(III)、
(IV)、
(V)、
(VI)
からなる群から選択され、
前記カゼインキナーゼ1阻害剤は、前記対象に局所投与され、
前記皮膚の障害、疾患、又は状態は、プロオピオメラノコルチン(POMC)、α-メラノサイト刺激ホルモン(α-MSH)、メラノコルチン1受容体(MC1R)、及び小眼球症関連転写因子(MITF)の少なくとも1つが関与するシグナル経路の欠陥により引き起こされる
、組成物。
【請求項6】
有効量のカゼインキナーゼ1阻害剤を含む、それを必要とする対象のユーメラニンレベルを増加させるために使用される組成物であって、
前記カゼインキナーゼ1阻害剤が、CKI7、D4476、IC261、式Iで表される化合物:
【化7】
(ここで:
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、H、直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、直鎖又は分岐したC1-C5アルコキシ、直鎖又は分岐したC1-C5アシル、C5-C15アリール、及びC3-C7ヘテロアリールからなる群から選択され、それぞれは、ハロゲン化物、ヒドロキシ、エステル、エーテル、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、及びアミドの少なくとも1つで任意に置換され;あるいは、R
1及びR
2は、それらが結合している窒素原子とともに、N、O、NH、C=N、C=O及びSO
2の少なくとも1つを任意に含み、直鎖又は分岐したC1-C5アルキル、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、ヒドロキシ、ハロゲン化物及びシアノの少なくとも1つで任意に置換されてもよい4~7員の飽和、不飽和または芳香環を形成し;
R
3及びR
4は、それぞれ独立して、H;それらは、必要に応じてハロゲン化物、ヒドロキシ、アルコキシ、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、エステル及びアミドの少なくとも1つで任意に置換された直鎖又は分岐したC1-C8アルキルからなる群から選択され;又は
R
1又はR
2は、R
3とそれらがそれぞれ結合している炭素原子及び窒素原子とともに、N、NH、O、C=N、C=O、及びSO
2の少なくとも1つで任意に含み、直鎖又は分岐したC1-C5アルキル、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、ヒドロキシ、カルボニル、及びハロゲン化物の少なくとも1つで任意に置換されてもよい、4~7員の飽和、不飽和又は芳香環を形成し;
R
5及びR
8は、それぞれ独立して、H、ハロゲン化物;少なくとも1個のハロゲン化物で任意に置換される、直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、直鎖又は分岐したC2-C8アルケニル、及び直鎖又は分岐したC2-C8アルキニルからなる群から選択され;
R
6は、直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、C3-C7シクロアルキル、4~6員複素環、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、ハロゲン化物、ヒドロキシ、及びC1-C5アルキルハロゲン化物の少なくとも1つで任意に置換される、直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、直鎖又は分岐したC2-C8アルケニル、直鎖又は分岐したC2-C8アルキニル、C5-C10シクロアルキル、及び飽和又は不飽和4~6員複素環からなる群から選択され;
R
7は、C3-C7シクロアルキル、4~6員の複素環、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、ハロゲン化物、ヒドロキシ、及びC1-C5アルキルハロゲン化物の少なくとも1つで任意に置換される直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、直鎖又は分岐したC2-C8アルケニル、及び直鎖又は分岐したC2-C8アルキニルからなる群から選択される)、
式IIで表される化合物、式IIIで表される化合物、式IVで表される化合物、式Vで表される化合物及び式VIで表される化合物:
【化8】
(II)
(III)
(IV)
(V)
(VI)
からなる群から選択され、
前
記カゼインキナーゼ1阻害剤が、
前記対象の皮膚においてフェオメラニンレベルよりもユーメラニンレベルを選択的に増加させるために前記対象に局所投与される、組成物。
【請求項7】
前記ユーメラニンレベルの増加は、前記対象の皮膚の色素沈着を増加させる、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記皮膚の色素沈着は、UVから前記対象を保護する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ユーメラニンレベルは、前記対象の表皮で増加する、請求項6に記載の組成物。
【請求項10】
前記ユーメラニンレベルの増加は、前記対象の表皮におけるKitLレベルの増加を伴う、請求項6に記載の組成物。
【請求項11】
前記表皮におけるKitLレベルの増加は、前記対象の真皮から前記表皮へのメラノサイトの移動を誘導する、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記対象はヒトである、請求項6に記載の組成物。
【請求項13】
有効量のカゼインキナーゼ1阻害剤を含む、それを必要とする対象の皮膚細胞におけるカゼインキナーゼ1の活性を阻害するために使用される組成物であって、
前記カゼインキナーゼ1阻害剤が、CKI7、D4476、IC261、式Iで表される化合物:
【化9】
(ここで:
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、H、直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、直鎖又は分岐したC1-C5アルコキシ、直鎖又は分岐したC1-C5アシル、C5-C15アリール、及びC3-C7ヘテロアリールからなる群から選択され、それぞれは、ハロゲン化物、ヒドロキシ、エステル、エーテル、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、及びアミドの少なくとも1つで任意に置換され;あるいは、R
1及びR
2は、それらが結合している窒素原子とともに、N、O、NH、C=N、C=O及びSO
2の少なくとも1つを任意に含み、直鎖又は分岐したC1-C5アルキル、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、ヒドロキシ、ハロゲン化物及びシアノの少なくとも1つで任意に置換されてもよい4~7員の飽和、不飽和または芳香環を形成し;
R
3及びR
4は、それぞれ独立して、H;それらは、必要に応じてハロゲン化物、ヒドロキシ、アルコキシ、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、エステル及びアミドの少なくとも1つで任意に置換された直鎖又は分岐したC1-C8アルキルからなる群から選択され;又は
R
1又はR
2は、R
3とそれらがそれぞれ結合している炭素原子及び窒素原子とともに、N、NH、O、C=N、C=O、及びSO
2の少なくとも1つで任意に含み、直鎖又は分岐したC1-C5アルキル、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、ヒドロキシ、カルボニル、及びハロゲン化物の少なくとも1つで任意に置換されてもよい、4~7員の飽和、不飽和又は芳香環を形成し;
R
5及びR
8は、それぞれ独立して、H、ハロゲン化物;少なくとも1個のハロゲン化物で任意に置換される、直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、直鎖又は分岐したC2-C8アルケニル、及び直鎖又は分岐したC2-C8アルキニルからなる群から選択され;
R
6は、直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、C3-C7シクロアルキル、4~6員複素環、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、ハロゲン化物、ヒドロキシ、及びC1-C5アルキルハロゲン化物の少なくとも1つで任意に置換される、直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、直鎖又は分岐したC2-C8アルケニル、直鎖又は分岐したC2-C8アルキニル、C5-C10シクロアルキル、及び飽和又は不飽和4~6員複素環からなる群から選択され;
R
7は、C3-C7シクロアルキル、4~6員の複素環、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、ハロゲン化物、ヒドロキシ、及びC1-C5アルキルハロゲン化物の少なくとも1つで任意に置換される直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、直鎖又は分岐したC2-C8アルケニル、及び直鎖又は分岐したC2-C8アルキニルからなる群から選択される)、
式IIで表される化合物、式IIIで表される化合物、式IVで表される化合物、式Vで表される化合物及び式VIで表される化合物:
【化10】
(II)
(III)
(IV)
(V)
(VI)
からなる群から選択され、
前
記カゼインキナーゼ1阻害剤は、前記対象
の皮膚に局所投与される、組成物。
【請求項14】
前記皮膚細胞と前記有効量の前記カゼインキナーゼ1阻害剤との接触は、前記皮膚細胞のユーメラニンレベルを増加させる、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記皮膚細胞は、表皮細胞である、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記カゼインキナーゼ1阻害剤は、カゼインキナーゼ1α阻害剤である、請求項13に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カゼインキナーゼ1阻害剤を用いて、皮膚の障害、疾患、又は状態を予防、改善、又は治療するための方法に関する。また、本明細書では、カゼインキナーゼ1を阻害することによって皮膚の色素沈着を増加させる方法も提供される。
【背景技術】
【0002】
紫外線(UV)は、活性酸素種(ROS)の発生による間接的な細胞損傷と、DNAのヌクレオチド構造への直接的な損傷の両方によって皮膚を傷害し、それにより、急性日焼け反応を引き起こすことができる。したがって、紫外線は、他の皮膚障害や状態の中でも、皮膚がんの発症と非常に関連している。
【0003】
表皮は主にケラチノサイトとメラノサイトで構成され、UVなどの継続的な外傷から生体を保護する高度なバリア組織として機能する。ケラチノサイトはUVに敏感で、皮膚の主要な応答者である。それらは、UVに応答してさまざまなパラクリン因子を生成し、微小環境に影響を与えるとともに、隣接するメラノサイトを活性化させ、ケラチノサイト-メラノサイトの機能ユニットを形成する。皮膚の色素沈着過剰は、メラノサイトでのメラニン合成の増加とそれに続く隣接するケラチノサイトへのメラニンの分布に起因するものでありUVに対する生体の生物学的反応の1つである。
【0004】
そのため、メラニンは、天然の日焼け止めとして、UVと可視光線が増殖中の細胞が存在する皮膚深層部にまでの浸透を直接防ぎ、強力な抗酸化物質とフリーラジカル消去物質として機能する。肌の色が濃い人は、UVによる皮膚がんの発生率が低いが、肌の色が薄い人は、UVによる損傷や腫瘍の形成を起こしやすく、日焼けへの反応も弱い。実際には、メラノサイトは、黒褐色のユーメラニンと黄赤色のフェオメラニンという2種類のメラニン色素を生成する。両方のメラニン色素は肌の色が異なる種族に見られるが、黒褐色のユーメラニンは黒髪及び/又は褐色の髪の人によく見られる一方、黄赤色のフェオメラニンは主に赤髪及びそばかすのある個人に生成される。しかしながら、メラニンの有益な効果は主に、UVをほとんど吸収し、UVによって生成されたフリーラジカルを消去するユーメラニンの存在に起因し、フェオメラニンは発がん性があることが知られている。したがって、メラニン色素の操作は、フェオメラニンのレベルではなく、ユーメラニンのレベルを選択的に増加させるように慎重に実行しなければならない。
【0005】
したがって、UVによるDNA損傷及び皮膚癌の予防のために、ユーメラニンの有益なレベルを選択的に増加させる効果的な方法が高度的に求められている。
【発明の概要】
【0006】
本明細書は、有効量のカゼインキナーゼ1阻害剤(CKI)を対象に投与することを含む、それを必要とする対象の皮膚の障害、疾患、又は状態を予防、改善、又は治療するための方法が提供される。少なくとも1つの実施形態において、前記皮膚の障害、疾患、又は状態は日焼けである。少なくとも1つの実施形態において、前記皮膚の障害、疾患、又は状態は、急性の日焼けである。少なくとも1つの実施形態において、前記皮膚の障害、疾患、又は状態は色素脱失(hypopigmentation)である。いくつかの実施形態において、前記皮膚の障害、疾患、又は状態は、プロオピオメラノコルチン(POMC)、α-メラノサイト刺激ホルモン(α-MSH)、メラノコルチン1受容体(MC1R)及び小眼球症関連転写因子(MITF)の少なくとも1つが関与するシグナル経路の欠陥によって引き起こされる。
【0007】
また、本明細書では、有効量のカゼインキナーゼ1阻害剤を対象に投与することを含む、対象を紫外線から保護するための方法が提供される。
【0008】
さらに、本明細書では、有効量のカゼインキナーゼ1阻害剤を対象に投与することを含む、それを必要とする対象の皮膚色素沈着を増加させるための方法が提供される。
【0009】
本明細書は、対象に有効量のカゼインキナーゼ1阻害剤を投与することを含む、それを必要とする対象にユーメラニンレベルを増加させるための方法が提供される。いくつかの実施形態において、前記ユーメラニンレベルの増加は、KitLレベルの増加を伴う。いくつかの実施形態において、前記表皮のKitLレベルの増加は、対象における真皮から表皮へのメラノサイトの移動が誘導される。少なくとも1つの実施形態において、前記ユーメラニンレベルは、フェオメラニンレベルよりも選択的に増加される。いくつかの実施形態において、前記ユーメラニンレベルは、対象の表皮で増加する。
【0010】
少なくとも1つの実施形態において、本明細書で提供される方法は、メラノサイトの細胞数の増加又は真皮から表皮へのメラノサイトの移動(migration)を伴う。
【0011】
少なくとも1つの実施形態において、本明細書で提供される方法は、カゼインキナーゼ1阻害剤の局所投与を伴う。
【0012】
本明細書は、皮膚細胞を有効量のカゼインキナーゼ1阻害剤と接触させることを含む、皮膚細胞におけるカゼインキナーゼ1の活性を阻害する方法が提供される。
【0013】
本明細書は、皮膚細胞を有効量のカゼインキナーゼ1阻害剤と接触させることを含む、皮膚細胞中のユーメラニンレベルを増加させる方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本開示は、添付の図面と併せて以下の説明を参照することにより、より容易に理解される。
【
図1A】
図1A~1Hは、野生型(WT)マウスに対するCKIであるA51の局所治療のUV保護効果を示す。
図1Aは、C57BL/6マウスの耳にCKIを0.1mg/cm
2の量で4週間隔日に投与し、合計1.2mgのCKIを投与した場合の局所投与の治療流れを示した。6週目での矢印は、組織分析用の耳サンプルの採取時点を示す(N=10)。
【
図1B】
図1Bは、耳の組織の免疫組織化学(IHC)分析による耳の表現型、フォンタナ-マッソン染色、c-Kit染色、及びTrp1染色の写真を示す。また、表皮の厚度、メラニン強度、及び染色から定量化され、ヒストグラムで表されたc-Kit+細胞及びTrp1+細胞の数も示す。皮膚の色素沈着の詳細は、デジタル顕微鏡(UPG650、Upmost Technology社)で撮影された。6週目の表皮では、メラノサイト数の増加が観察された。フォンタナ-マッソン染色では、表皮のユーメラニン量の増加と表皮厚度の増加が確認された。c-Kit染色では、ケラチノサイト及びメラノサイトでKitの発現が増加していることを示した。Trp1染色では、表皮のメラノサイト数が増加していることを示した。
【
図1C】
図1Cは、局所CKI投与後に皮膚全体におけるユーメラニン(EM)とフェオメラニン(PM)の比率が有意に増加し、ユーメラニン比率の増加は、真皮ではなく主に表皮に局在化したことを示した。NS:有意ではない。
【
図1D】
図1D及び1Eは、野生型マウス(対照群)に、1mg/cm
2を1回、その後0.5mg/cm
2を6回及び0.2mg/cm
2を5回、1日おきにマウスの耳に局所投与する流れに従って、4週間にわたって、合計5mgのCKI治療を行ったUV保護効果の結果を示す。
【
図1E】
図1D及び1Eは、野生型マウス(対照群)に、1mg/cm
2を1回、その後0.5mg/cm
2を6回及び0.2mg/cm
2を5回、1日おきにマウスの耳に局所投与する流れに従って、4週間にわたって、合計5mgのCKI治療を行ったUV保護効果の結果を示す。
【
図1F】
図1Fでは、Tyr-CreER
T2;FusionRedマウスが生成され、メラノサイト特異的なチロシナーゼプロモーターによって駆動されるCre組換えからのFusionRed蛍光によってメラノサイトを追跡するために使用される。タモキシフェン誘導後、メラノサイトは、組織内の緑色蛍光(GFP)細胞の中で、膜上に赤色蛍光(FusionRed)を特異的に発現する。タモキシフェン誘導後に耳の皮膚を採取し、15μmの切片に切り取った。切片をDAPI含有封入剤に封入し、蛍光顕微鏡で観察した。対照群マウスでは、耳の表皮にFusionRed標識メラノサイトがまれに見られた(N=3)。マウスの耳に1.2mgのCKIを局所投与した後、矢印で示される表皮のFusionRed標識メラノサイトが増加する(N=3)。表皮内のメラノサイトの数を計算し、ヒストグラムに示した。
【
図1G】
図1Gは、背側耳皮膚組織におけるKitL/c-Kit経路およびメラニンに関連するターゲットのタンパク質発現レベルをウエスタンブロッティング分析で示したものである。薄い灰色のバーは対照群を表し、濃い灰色のバーは1.2mgのCKI投与を受けた群を表する。n.s.:有意ではない。
【
図1H】
図1Hは、UVB照射で誘導された短期ケラチノサイトのDNA損傷に対する局所CKI治療の保護効果の治療流れと結果を示す。0.1mgのCKIを1日おきに局所投与し、合計6回の投与で、合計0.6mgCKI治療後、21日目にマウスを750mJ/cm
2UVB(N=6)に24時間照射した。採取されたサンプルを4%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定し、パラフィンに包埋するか、最適切断温度(OCT)で凍結した。UVB照射によるDNA損傷は、UVB照射の衝突による特定のマーカーであるシクロブタンピリミジンダイマー(CPD)の量で調査した。CKI治療後のCPD染色の減少は、より高用量のCKI(1.2mg又は5mg)で処理された肌の色が目に見えて濃くなる前に、低用量のCKI(0.6mg)で局所CKIのUV保護効果が有効であることを示す。信号はすべてImageJソフトウェアによって定量化され、統計結果は対応のないt検定分析によって決定され、平均値±SDとして示された。星印***は、P<0.001の有意差を示す。
【
図2A】
図2A~2Lは、MC1R変異マウスのケラチノサイトにおけるCK1α消去の効果と、MC1R変異マウスに対する局所CKI治療のUV保護効果を示す。
図2Aは、C57BL/6及びC57BL/6J-Mc1r
em1マウスの表現型と、C57BL/6J-Mc1r
em1マウスのケラチノサイトにおけるCK1α消去の生成を示す。
【
図2B】
図2Bは、誘導性MC1R変異マウスを得るために交配するマウスの流れを示す。
【
図2C】
図2Cは、タモキシフェン誘導と14、28、42日目の皮膚サンプル採取の流れを示す。
【
図2D】
図2Dは、ケラチノサイトでCK1αを消去したMC1R変異マウスの皮膚の表現型を示す。
【
図2E】
図2Eは、ケラチノサイトでのCK1α消去によるMC1R変異マウスの皮膚のフォンタナ-マッソン染色を示す。
【
図2F】
図2Fは、皮膚全体(全体)、表皮、及び真皮におけるフォンタナ-マッソン染色細胞の定量化された数を示し、表皮、真皮、及び皮膚全体におけるユーメラニンの増加を示す。
【
図2G】
図2Gは、局所CKI投与の治療流れを示し、CKIを0.1mg/回及び0.3mg/週で4週間局所投与され、合計1.2mgのCKIが投与され、組織分析のために6週目に皮膚が採取される(N=6)。
【
図2H】
図2Hは、表皮厚度とユーメラニン量をそれぞれ観察するためにフォンタナ-マッソン染色を施した局所CKI治療の6週間後に採取された耳のサンプルを示す。
【
図2I】
図2Iは、ウエスタンブロッティング分析による耳サンプルにおけるKitL/c-Kit経路とメラノサイト関連ターゲットのタンパク質の発現レベルを示し、局所的にビヒクルで治療されたマウスと比較し、C57BL/6J-Mc1r
em1マウスにおける1.2mgのCKIの局所治療後に、KitL、c-Kit、MITF、チロシナーゼ、及びp53の発現がすべて有意に増加したことを示す。
【
図2J】
図2Jは、合計2.6mgのCKIを局所投与したC57BL/6J-Mc1r
em1マウスのEM/PM比の増加を示す。
【
図2K】
図2Kは、CKI処理の有無にかかわらず、750mJ/cm
2でのC57BL/6J-Mc1r
em1マウスに対するUVB照射の効果を示す。皮膚サンプルは、流れに示されているように処理され、21日目に750mJ/cm
2のUVB照射を24時間行った後に採取され、DNA損傷を調べるために抗CPD抗体で染色された。合計0.6mgのCKIで処理された変異マウスは、表皮及び真皮(皮脂上皮、毛包上皮、線維芽細胞)でシクロブテンピリミジンダイマー(CPD)染色の減少を示し、局所CKI処理のUV保護効果を示す。ヒストグラムは、対照群の表皮と真皮、及びCKI治療群のCPD陽性細胞の数をそれぞれ示している。
【
図2L】
図2Lは、野生型(WT)マウスとMC1R変異マウスから得られたCPD染色を、局所CKI治療のあり或いはなしを比較し、局所CKI治療がWT及びMC1R変異マウスの両方で皮膚のUV損傷を予防することを示す。
【
図3A】
図3A~3Eは、局所CKI投与がヒトの皮膚外植片におけるUVBによるDNA損傷を予防するUV保護効果を発揮することを示す。
図3Aは、ヒトの包皮試料を使用したCKI治療の流れを示す。試料は12ウェルプレートで培養した(N=5)。外植片培養24時間後、試料を0.01mgCKIで処理し、タイムラインに示すように、その2日後にもう一つの0.01mgのCKI処理を行った。5日目に、試料を1J/cm
2UVB光で照射された。その6時間後にサンプルを採取した。皮膚試料の写真は、局所CKI治療後の皮膚はより暗いことを示した。
【
図3B】
図3Bは、合計0.02mgの局所CKI治療後のEM/PM比の増加を示す。
【
図3C】
図3Cは、直接観察用の組織を4%PFAで固定して、パラフィンで包埋し、フォンタナ-マッソン染色によるメラニン分布を調べた写真を示す。さらに、Melan-A及びTrp-1ラベリングのIHC分析のために、OCTへの凍結包埋も行われた。Melan-A+細胞とTrip-1+細胞の数、及び対照群又はCKI治療群の相対的なメラニン強度がヒストグラムで定量化されている。
【
図3D】
図3Dは、p53及び色素沈着関連タンパク質の発現レベルを調べるために、表皮から抽出された総タンパク質のウエスタンブロッティングの結果と対応する定量化されたヒストグラムを示す。
【
図3E】
図3Eは、ImageJソフトウェアにより、CKI処理のあり或いはない場合のUVB照射サンプルにおけるCPD発現とCPD+細胞数の定量化を示す。統計結果は、対応のないt検定分析によって決定され、平均値±SDとして示された。星印***は、P<0.001の有意差を示す。
【
図4A】
図4A~4Gは、ヒト初代ケラチノサイト及びメラノサイトに対するCKI処理の効果を示す。
図4Aは、CKI処理の実験計画を示す。
【
図4B】
図4Bでは、ヒト初代ケラチノサイトは、細胞のコンフルエンスが90%であるときに、表示濃度のCKIで処理された。細胞溶解物をウエスタンブロッティングで分析したところ、p53の活性化と、KitL及びc-Kitの発現の増加を用量依存的に示した。
【
図4C】
図4Cでは、72時間の処理後に培地を回収し、ELISAアッセイに供したところ、KitLの濃度がCKI処理によって増加したことが示された。合計3回の独立した実験から得られた統計結果は、対応のないt検定分析で決定され、平均値±SDとして示された。「NS」は有意差がないことを示し、星印***はP<0.001で有意差があることを示す。
【
図4D】
図4D及び4Eでは、初代メラノサイトは、ケラチノサイトを3日間培養し、CKIのあり或いはない処理された条件培地で培養された。
図4Dは、抗HMB45抗体で染色されたメラノソームの結果を示す。細胞数をトリパンブルー染色でカウントし、樹状突起の長さをHMB45染色細胞で測定した。
【
図4E】
図4Eでは、さまざまなCKI濃度で処理されたケラチノサイトに由来する条件培地で培養されたメラノサイトは、メラノサイト特異的調節因子、チロシナーゼ、及びMITFの発現レベルの増加を示す。
【
図4F】
図4Fでは、細胞のコンフルエンシーが90%であるとき、初代ヒトメラノサイトをさまざまな濃度のCKIで処理した。72時間の処理後に総タンパク質を抽出し、c-Kit受容体、MITF、チロシナーゼ、リン酸化MKK6などのメラノサイト成熟マーカーの発現を調べた。ウエスタンブロッティングの結果は、MITF、チロシナーゼ、及びp-MKK6の発現が用量依存的に増加することを示した。
【
図4G】
図4Gでは、初代メラノサイトを移動アッセイに供した。メラノサイト付着後、培地を溶媒対照群又は50nMCKIのものに交換した。インサートは24時間後に取り外され、写真は0、24、及び48時間に撮影された。データは、CKIがメラノサイトの移動を促進することを示した。
【
図5A】
図5A及び5Bは、MC1R変異マウスに対するD4476及びIC261治療の効果を示す。
図5Aは実験計画を示す。
【
図5B】
図5BはKitL/c-Kit経路及びメラノサイト関連ターゲットにおけるタンパク質の発現レベルのウエスタンブロッティング分析を示す。
【
図6A】
図6A~6Eは、別のCKIであるD4476をヒトの皮膚外植片に局所治療した場合のUV保護効果を示す。
図6Aは、D4476局所投与流れの実験計画を示し、3つの外植片でそれぞれ0.04mgを2回、合計0.08mgで、又は0.05mgを2回、合計0.1mgであることが含まれる。
【
図6B】
図6Bは、D4476で処理された皮膚のフォンタナ-マッソン染色結果による組織学的分析を示す。
【
図6C】
図6C及び6Dは、c-Kit経路におけるタンパク質及びメラニン生成関連タンパク質の発現レベルのウエスタンブロッティング分析結果及び定量化された量をそれぞれ示している。
【
図6D】
図6C及び6Dは、c-Kit経路におけるタンパク質及びメラニン生成関連タンパク質の発現レベルのウエスタンブロッティング分析結果及び定量化された量をそれぞれ示している。
【
図6E】
図6Eは、合計0.08mgの局所D4476を投与された皮膚試料のCPD染色結果を示し、ヒストグラムは、CPDで染色された細胞の定量化された数(CPD
+細胞の数)を示す。
【
図7A】
図7A~7Cは、Kit経路及びヒトのケラチノサイトのメラニン生成関連タンパク質発現レベルに対する、A51、CKI7、D4476及びIC261を含む付加のカゼインキナーゼ1阻害剤の効果を示す。
【
図7B】
図7A~7Cは、Kit経路及びヒトのケラチノサイトのメラニン生成関連タンパク質発現レベルに対する、A51、CKI7、D4476及びIC261を含む付加のカゼインキナーゼ1阻害剤の効果を示す。
【
図7C】
図7A~7Cは、Kit経路及びヒトのケラチノサイトのメラニン生成関連タンパク質発現レベルに対する、A51、CKI7、D4476及びIC261を含む付加のカゼインキナーゼ1阻害剤の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の例は、本開示を説明するために使用される。当業者は、本明細書の開示に基づいて、本開示の他の利点および効果を容易に想像できる。また、本開示は異なる実施例に記載されるように実施または適用できる。異なる態様および用途について、その範囲に違反することなしに、本開示を実施するために上記の例を修正または変更することが可能である。
【0016】
一般的に、本明細書で使用される命名法及び本明細書に記載される有機化学、医薬品化学、生化学、生物学、及び薬理学における実験手順は当該技術分野に周知されかつ一般的に使用される。他に定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、一般的に、本開示に属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。しかしながら、これらの用語は、当業者の意図、判例、又は新技術の出現に応じて異なる意味を有する場合がある。また、一部の用語は、出願人が任意に選択することができ、この場合、選択された用語の意味は、本開示の説明に詳細に記載される。したがって、本明細書で使用される用語は、本明細書全体の説明とともに用語の意味に基づいて定義されなければならない。
【0017】
さらに、本開示で使用される場合に、単数形の「一(a)」、「一(an)」、及び「当該/前記(the)」は、明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。「又は」という用語は、文脈が明らかに他のことを示さない限り、「及び/又は」という用語と交換可能に使用される。
【0018】
また、ある部品が構成要素又は工程を「含有する(includes)」又は「含む(comprises)」場合、それとは反対の特定の説明がない限り、その部品は、他の構成要素又は他の工程をさらに含むことができ、他の構成要素または他の工程を除外しない。
【0019】
「対象」、「患者」及び「個体」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、霊長目(例えば、ヒト)、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、又はマウスを含むが、これらに限定されない温血動物を指す。「対象」及び「患者」という用語は、例えば、ヒト対象などの哺乳動物対象を参照して、本明細書では交換可能に使用される。いくつかの実施形態において、対象はヒトである。
【0020】
「治療する(treat)」、「治療中(treating)」、及び「治療(treatment)」という用語は、障害、疾患、状態、或いは障害、疾患、状態に関連する1つ以上の症状を軽減又は無効にすることを含むことを意味する。又は、障害、疾患、又は状態自体の原因を軽減又は根絶する。
【0021】
「予防する(prevent)」、「予防し(preventing)」、及び「予防(prevention)」という用語は、障害、疾患、又は状態、及び/又はそれに付随する症状の発症を遅延及び/又は排除する方法、対象が障害、疾患、又は状態を得ることから防止する方法、又は対象が障害、疾患、又は状態を得るリスクを軽減する方法を含むことを意味する。
【0022】
「軽減(alleviate)」及び「軽減する(alleviating)」という用語は、障害、疾患、又は状態の1つ以上の症状(例えば、痛み)を緩和又は軽減することを指す。これらの用語は、有効成分に関連する副作用を軽減することに指してもよい。いくつかの実施形態において、対象が予防剤又は治療剤に由来する有益な効果は、障害、疾患、又は状態の治癒をもたらさない。
【0023】
「接触する(contacting)」又は「接触(contact)」という用語は、そのような接触の結果として生理学的及び/又は化学的効果が生じるように、化粧品又は治療剤と細胞又は組織とを一緒にすることを意味する。接触は、試験管内(in vitro)、生体外(ex vivo)、又は生体内(in vivo)で行ってもよい。いくつかの実施形態において、化粧品又は治療剤は、細胞に対する化粧品又は治療剤の効果を決定するために、細胞培養(試験管内)で細胞と接触している。いくつかの実施形態において、化粧品又は治療剤と細胞又は組織との接触は、接触される細胞又は組織を有する対象への化粧品又は治療剤の投与を含む。
【0024】
「治療有効量」又は「有効量」という用語は、投与されたときに、治療中の障害、疾患、又は状態の1つ以上の発症を予防するか、又はある程度緩和するのに十分な化合物の量を含むことを意味する。「治療有効量」又は「有効量」という用語は、研究者、獣医、医師、又は臨床医によって求められている生体分子(例えば、タンパク質、酵素、RNA、又はDNA)、細胞、組織、システム、動物、又はヒトの生物学的又は医学的応答を誘導するのに十分な化合物の量を指す。
【0025】
「薬学的に許容される担体」、「薬学的に許容される賦形剤」、「生理学的に許容される担体」又は「生理学的に許容される賦形剤」という用語は、液体又は固体の充填剤、希釈剤、溶媒、カプセル化材料などの化粧品的又は薬学的に許容される材料、組成物、又はビヒクルを意味する。いくつかの実施形態において、それぞれの成分は、「薬学的に許容される」とは、化粧品又は医薬製剤の他の成分と適合し、また、過剰な毒性、刺激性、アレルギー反応、免疫原性、又はその他の問題や合併症を伴わずに、合理的な利益/リスク比に見合った形で、対象(例えば、ヒト又は動物)の組織又は器官と接触して使用するのに適していることを意味である。例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy、22nd ed.;Allen Ed.:Philadelphia, PA, 2012;Handbook of Pharmaceutical Excipients、7th ed.;Rowe et al., Eds.;The Pharmaceutical Press and the American Pharmaceutical Association:2012; Handbook of Pharmaceutical Additives, 3rd ed.;Ash and Ash Eds.; Gower Publishing Company: 2007; Pharmaceutical Preformulation and Formulation、2nd ed.; Gibson Ed.; CRC Press LLC: Boca Raton, FL, 2009を参照。
【0026】
「約(about)」又は「およそ(approximately)」という用語は、当業者によって決定される所定の値に対する許容可能な誤差を意味し、これは、値がどのように測定又は決定されるかに部分的に依存する。いくつかの実施形態では、「約」又は「およそ」という用語は、1、2、3、又は4標準偏差内を意味する。「約」又は「およそ」という用語は、所定の値又は範囲の50%、20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、又は0.05%以内を意味する。
【0027】
「有効成分」及び「活性物質」という用語は、障害、疾患、または状態の1つ以上の症状を予防、改善又は治療するために、単独で、又は1つ以上の化粧品又は薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて対象に投与される化合物を指す。本明細書で使用される場合、「有効成分」及び「活性物質」は、本明細書に記載の化合物の光学活性異性体であってもよい。
【0028】
「薬物」、「化粧剤」及び「治療剤」という用語は、障害、疾患、又は状態の1つ以上の症状を予防、改善又は治療するために、対象に投与される化合物又は化粧品あるいはそれらの医薬組成物を指す。
【0029】
Csnklal遺伝子によってコードされるカゼインキナーゼ1α(CK1α)は、β-カテニン分解複合体の成分であり、Wntシグナル経路の調節因子である。その除去は、Wntとp53の両方の活性化を誘導する。CK1αは、β-カテニンをSer45でリン酸化し、これにより、GSK-313によるリン酸化の準備が整う。GSK-313は、Ser33、Ser37、及びThr4lでβ-カテニンをリン酸化することにより、β-カテニンを不安定化させ、SCFβ-TrCPE3によるユビキチン化及びプロテアソーム分解のためにβ-カテニンをマークする。このCK1α依存性リン酸化は、Wnt経路の分子スイッチとして機能する。CK1αのホモ接合性欠損は胚の致死性を引き起こし、胚形成におけるCK1αの基本的な役割を示唆している。マウス腸上皮の研究では、CK1α欠損がWnt活性化、細胞老化、及びDNA損傷応答を誘導し、組織幹細胞を含む多くの種類の組織で強力なp53活性化と細胞老化を引き起こすことがわかった。これらの事実は、CK1αがさまざまな組織の細胞プロセスに関与しており、少なくとも部分的にp53と協調していることを示唆している。
【0030】
公知の腫瘍抑制タンパク質であるp53は、遺伝子毒性ストレス及びDNA損傷に対する細胞応答に関与する転写因子である。皮膚では、p53はUVダメージに対しても作用する。UV照射はp53の活性化を引き起こし、p53はプロオピオメラノコルチン(POMC)遺伝子の転写アップレギュレーションを促し、POMCは翻訳後に副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、α-メラノサイト刺激ホルモン(α-MSH)、及びβ-エンドルフィンに変換される。分泌されたα-MSHはメラノサイトのメラノコルチン1受容体(MC1R)に結合し、メラニンの生成を引き起こす。メラニンはメラノソーム内に内蔵され、ケラチノサイトに戻され、そこでUVに対する保護的な日焼け反応の一部として核上に局在する。ケラチノサイトから分泌されたα-メラノサイト刺激ホルモン(α-MSH)は、メラノサイト上のメラノコルチン1受容体(MC1R)に結合し、小眼球症関連転写因子(MITF)の発現を刺激するcAMPのアップレギュレーションを引き起こす。次にMITFは、チロシナーゼ及びチロシナーゼ関連タンパク質1(Tyrp1)を含む酵素機構の発現を転写的に活性化する。したがって、皮膚では、p53はp53/POMC/α-MSH/MC1R/MITF皮膚日焼け経路及びDNA修復/細胞周期停止/アポトーシス経路を介して、UVダメージの防止にも効く。
【0031】
UVは、皮膚がんの主要な外因性因子として認識されている。皮膚のメラニンは、光老化と光発癌からの保護に関与している可能性がある。ユーメラニンは、日光にさらされている間に誘導される天然の日焼け止めである。ヒトのメラノサイトは、暗褐色のメラニンであるユーメラニンと、赤黄色のフェオメラニンを合成する。メラノサイトによるユーメラニンとフェオメラニンの合成の相対速度は、肌の色と太陽UVの劇的な影響に対する肌の感受性を決定する。ユーメラニンは、フェオメラニンよりも安定しており、光分解を受けにくいである。ユーメラニンは、フェオメラニンではなく、ROSのスカベンジャーとして非常に効率的である。フェオメラニン色素経路は、酸化的損傷のメカニズムによって、UVに依存しないメラノーマの発がん性に寄与する。ユーメラニン含有量と、DNA光生成物の主要な形態であるシクロブタンピリミジンダイマー(CPD)の生成との間には反比例の関係がある。
【0032】
MC1R、その作動薬、及び関与するシグナル経路は、ユーメラニンの合成を調節する役割を果たす。シグナル伝達喪失MC1R多型は、色白で、日光に敏感で、皮膚がんになりやすい集団(例:北欧人)によく見られ、フェオメラニンは合成できるが、ユーメラニンはほとんど合成できない。最も一般的なMC1R変異(D84E、R151C、R160W、及びD294H)は、赤毛の色、そばかす、及びUV曝露後にやけどしやすい傾向にかかるので、一般に「RHC」(赤毛の色)対立遺伝子と呼ばれる。RHC変異体のようなシグナル伝達喪失MC1Rの対立遺伝子は、メラノーマやその他の皮膚がんの生涯リスクが最大4倍に増加することに関連している。
【0033】
本明細書に開示されるように、β-カテニン分解複合体の成分であるCK1αの除去は、p53の安定化を引き起こし、ケラチノサイトにおけるp53依存性KitLの発現を誘導した。KitLは、メラノサイトの受容体c-kitに作用してメラニン形成プロセスを開始し、ユーメラニン生成と皮膚の色素沈着過剰を増加させる傍分泌因子である。CK1α阻害によって誘導されるユーメラニンは、ケラチノサイトのアポトーシスを減少させ、マウスモデルの炎症性サイトカイン生成を減少させて、急性日焼けから皮膚を効率的に保護する。ケラチノサイトにおけるCK1αの阻害は、p53/KitL/Kitという別の経路を活性化し、発癌性フェオメラニンなしで保護ユーメラニンの生成を誘導する。したがって、CK1αの阻害は、MC1R障害又はMC1Rが関与するシグナル経路の機能が低下した集団において、太陽光から皮膚を保護し、ユーメラニン形成を救済するためのUVを回避する戦略となることが期待されている。CK1αの阻害は、ユーメラニンを増加させる可能性を示すだけでなく、メラノサイト細胞数の増加を示し、白斑などの脱色性疾患を治療するためのアプローチを提供する。
【0034】
少なくとも1つの実施形態において、本明細書は、治療有効量のカゼインキナーゼ1阻害剤(CKI)を対象に投与することを含む、対象におけるユーメラニンレベルを増加させるための方法が提供される。いくつかの実施形態において、CKIは、対象に局所的に投与される。いくつかの実施形態において、CKIは、対象の皮膚に局所的に投与される。いくつかの実施形態において、ユーメラニンレベルを増加させるために本明細書で提供される方法は、ユーメラニンレベルをフェオメラニンレベルよりも選択的に増加させることである。いくつかの実施形態において、ユーメラニンレベルを増加させるために本明細書で提供される方法は、ユーメラニンレベルをフェオメラニンレベルよりも少なくとも10倍以上増加させることである。いくつかの実施形態において、CKIは、対象の皮膚の選択された領域に局所的に投与されて、対象の標的化された身体部分におけるユーメラニンレベルを増加させる。
【0035】
少なくとも1つの実施形態において、本明細書は、化粧品的又は治療的に有効な量のカゼインキナーゼ1阻害剤(CKI)を対象に投与することを含む、対象の皮膚障害、疾患、又は状態を予防、改善又は治療するための方法が提供される。いくつかの実施形態において、化粧品的又は治療的に有効な量のCKIの投与は、対象に局所的に投与される。
【0036】
少なくとも1つの実施形態において、皮膚の障害、疾患、又は状態は、UVの過剰曝露により引き起こされる。いくつかの実施形態において、皮膚の障害、疾患、又は状態は、日光性紅斑、日光性アレルギー、日光性蕁麻疹、日光弾性線維症、光老化、又は日焼けである。いくつかの実施形態において、皮膚の障害、疾患、又は状態は、日焼けである。いくつかの実施形態において、皮膚の障害、疾患、又は状態は、急性日焼けである。いくつかの実施形態において、皮膚の障害、疾患、又は状態は、色素脱失、炎症後の色素脱失又は創傷後色素沈着過剰である。いくつかの実施形態において、皮膚の障害、疾患、又は状態は、低メラニン症(hypomelanosis)、特発性滴状低メラニン症、ぶち症、白色粃糠疹、癜風、進行性黄斑低メラニン症、白斑(vitiligo)、又はワールデンブルグ症候群である。いくつかの実施形態において、皮膚の障害、疾患、又は状態は、白斑である。いくつかの実施形態において、皮膚の障害、疾患、又は状態は、皮膚癌である。いくつかの実施形態において、皮膚の障害、疾患、又は状態は、日光性角化症、非定型ほくろ(atypical mole)、基底細胞癌(BCC)、メラノーマ、メルケル細胞癌(MCC)、扁平上皮癌(SCC)、又は皮膚悪性メラノーマである。
【0037】
本開示のいくつかの実施形態において、本明細書で提供される方法は、患者の年齢に関係なく対象を治療することを含むが、いくつかの疾患又は障害は特定の年齢層でより一般的である。
【0038】
本開示のいくつかの実施形態において、本明細書は、有効量のカゼインキナーゼ1阻害剤を対象に投与することを含む、対象をUVから保護するための方法が提供される。いくつかの実施形態において、本明細書は、対象において化粧品的又は治療的に有効な量のカゼインキナーゼ1阻害剤を投与することを含む、対象における皮膚色素沈着を増加させるための方法が提供される。いくつかの実施形態において、UVから対象を保護し、皮膚の色素沈着を増加させるための方法は、対象に局所的に投与される化粧品的又は治療的に有効な量のCKIの投与を含む。いくつかの実施形態において、CKIは、対象の皮膚の選択された領域に局所的に投与されて、対象の標的化された身体部分に影響を与える。
【0039】
本開示において予防又は治療する方法は、CK1を阻害することができる薬剤に接触/投与することによって達成される。CK1は、酵母ないしヒトまで、試験されたすべての生物に見られる、よく保存されたSer/Thrキナーゼのファミリーである。哺乳類では、CK1ファミリーは7つの遺伝子(α、β、γ1、γ2、γ3、δ、及びε)から構成されており、11の選択的スプライシングアイソフォームをコードしている。CK1ファミリーのメンバーは、保存された触媒ドメインとATP結合部位を共有しており、他のキナーゼファミリーとは一線を画している。CK1は、すべての細胞に遍在する酵素であり、細胞内のさまざまな場所に局在し、Wntシグナル伝達以外にもさまざまな細胞プロセスに関与している。
【0040】
いくつかの実施形態において、CK1阻害剤(CKI)は、p53の発現及び/又は活性を(少なくとも2倍)増加させ、及び/又はDNA損傷応答(DDR)を活性化する。
【0041】
本開示のCK1阻害剤(CKI)は、細胞周期を調節するサイクリン依存性キナーゼ(CDK)などの他のキナーゼ(例えば:Cdk2、Cdk4、及びCdk6)と比較して、CK1に対して少なくとも2倍、少なくとも5倍、又は少なくとも10倍の阻害活性を有してもよい。さらに、CK1阻害剤は、プロテインキナーゼC(PKC)、PKA、HER2、raf-1、MEK1、MAPキナーゼ、EGF受容体、PDGF受容体、IGF受容体、PI3キナーゼ、Wee1キナーゼ、Src、及び/又はAblと比較して、CK1に対して少なくとも2倍、少なくとも5倍、又は少なくとも10倍の阻害活性を示す。
【0042】
CKIはCK1-α(CSNK1A;ゲノム、mRNA、又はタンパク質レベルで、GenBankアクセッション番号NP_001020276、NM_001025105及びNM_001020276)に対して選択的である。したがって、例えば、そのようなCK1阻害剤は、CK1-δ及びCK1-εと比較して、CK1-αに対して少なくとも2倍、少なくとも5倍、又は少なくとも10倍の阻害剤活性を有する。
【0043】
少なくとも1つの実施形態において、カゼインキナーゼ1阻害剤は、以下の一般式Iで表され、任意の立体異性体又はその塩を含む。
【0044】
【0045】
ここで、
R1及びR2は、それぞれ独立して、H、直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、直鎖又は分岐したC1-C5アルコキシ、直鎖又は分岐したC1-C5アシル、C5-C15アリール、及びC3-C7ヘテロアリールからなる群から選択され、それらのそれぞれは、ハロゲン化物、ヒドロキシ、エステル、エーテル、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、及びアミドの少なくとも1つで任意に置換されている。又はR1及びR2は、それらが結合している窒素原子とともに、N、O、NH、C=N、C=O及びSO2の少なくとも1つを任意に含んでもよく、かつ、直鎖又は分岐したC1-C5アルキル、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、ヒドロキシ、ハロゲン化物及びシアノのうちの少なくとも1つで任意に置換されてもよい4~7員の飽和、不飽和又は芳香環を形成する。
【0046】
R3及びR4は、それぞれ独立して、H;ハロゲン化物、ヒドロキシ、アルコキシ、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、エステル及びアミドの少なくとも1つで任意に置換された直鎖又は分岐したC1-C8アルキルからなる群から選択される。又は
【0047】
R1又はR2は、R3とそれらがそれぞれ結合している炭素原子及び窒素原子とともに、N、NH、O、C=N、C=O、及びSO2の少なくとも1つを任意に含んでもよく、かつ直鎖又は分岐したC1-C5アルキル、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、ヒドロキシ、カルボニル、及びハロゲン化物の少なくとも1つで任意に置換されてもよい4~7員の飽和、不飽和または芳香環を形成する。
【0048】
R5及びR8は、それぞれ独立して、H、ハロゲン化物;少なくとも1個のハロゲン化物で任意に置換される直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、直鎖又は分岐したC2-C8アルケニル、及び直鎖又は分岐したC2-C8アルキニルからなる群から選択される。
【0049】
R6は、直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、C3-C7シクロアルキル、4~6員複素環、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、ハロゲン化物、ヒドロキシ、及びC1-C5アルキルハロゲン化物の少なくとも1つで任意に置換される、直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、直鎖又は分岐したC2-C8アルケニル、直鎖又は分岐したC2-C8アルキニル、C5-C10シクロアルキル、及び飽和又は不飽和4~6員複素環から選択される。
【0050】
R7は、C3-C7シクロアルキル、4~6員複素環、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、ハロゲン化物、ヒドロキシ、及びC1-C5アルキルハロゲン化物の少なくとも1つで任意に置換される、直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、直鎖又は分岐したC2-C8アルケニル、及び直鎖又は分岐したC2-C8アルキニルからなる群から選択される。
【0051】
付加のカゼインキナーゼI阻害薬は、国際公開番号第WO2017/021969に記載されているものを含み、その開示内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
いくつかの実施形態において、カゼインキナーゼ1阻害剤は、CKI7、D4476、IC261、及び式IからVIIによって表される化合物からなる群から選択される。
【0053】
【0054】
ここで、
R1及びR2は、それぞれ独立して、H、直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、直鎖又は分岐したC1-C5アルコキシ、直鎖又は分岐したC1-C5アシル、C5-C15アリール、及びC3-C7ヘテロアリールからなる群から選択され、それらのそれぞれは、ハロゲン化物、ヒドロキシ、エステル、エーテル、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、及びアミドの少なくとも1つで任意に置換される。又はR1及びR2は、それらが結合している窒素原子とともに、N、O、NH、C=N、C=O及びSO2及びの少なくとも1つを任意に含んでもよく、かつ、直鎖又は分枝C1-C5アルキル、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、ヒドロキシ、ハロゲン化物及びシアノのうちの少なくとも1つで任意に置換されてもよい4~7員の飽和、不飽和または芳香環を形成する。
【0055】
R3及びR4は、それぞれ独立して、H;ハロゲン化物、ヒドロキシ、アルコキシ、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、エステル及びアミドの少なくとも1つで任意に置換された直鎖又は分岐したC1-C8アルキルからなる群から選択される。又は
【0056】
R1又はR2は、R3とそれらがそれぞれ結合している炭素原子及び窒素原子とともに、N、NH、O、C=N、C=O、及びSO2、の少なくとも1つで任意に含んでもよく、かつ、直鎖又は分岐したC1-C5アルキル、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、ヒドロキシ、カルボニル、及びハロゲン化物の少なくとも1つで任意に置換されてもよい4~7員飽和、不飽和又は芳香環を形成する。
【0057】
R5及びR8は、それぞれ独立して、H、ハロゲン化物;少なくとも1個のハロゲン化物で任意に置換される直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、直鎖又は分岐したC2-C8アルケニル、及び直鎖又は分岐したC2-C8アルキニルからなる群から選択される。
【0058】
R6は、直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、C3-C7シクロアルキル、4~6員複素環、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、ハロゲン化物、ヒドロキシ、及びC1-C5アルキルハロゲン化物の少なくとも1つで任意に置換される、直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、直鎖又は分岐したC2-C8アルケニル、直鎖又は分岐したC2-C8アルキニル、C5-C10シクロアルキル、及び飽和又は不飽和4~6員の複素環からなる群から選択される。
【0059】
R7は、C3-C7シクロアルキル、4~6員複素環、C5-C15アリール、C3-C7ヘテロアリール、ハロゲン化物、ヒドロキシ、及びC1-C5アルキルハロゲン化物の少なくとも1つで任意に置換される直鎖又は分岐したC1-C8アルキル、直鎖又は分岐したC2-C8アルケニル、及び直鎖又は分岐したC2-C8アルキニルからなる群から選択される。
【0060】
【0061】
本明細書で使用される局所投与には、(内)皮膚、結膜、角膜内、眼内、眼科、耳介、経皮、鼻内、膣内、尿道、呼吸、及び直腸の投与が含まれる。
【0062】
本明細書で提供される化粧品又は医薬組成物は、局所的または全身的な効果を得るための局所投与に適した任意の剤形で製剤化することができ、乳剤、溶液、懸濁液、クリーム、ゲル、ヒドロゲル、軟膏、散布剤、包帯剤、エリキシル剤、ローション、懸濁液、着色剤、ペースト、フォーム、フィルム、エアロゾル、洗浄剤、スプレー、坐剤、包帯、及び皮膚パッチなどが含まれ。また、本明細書で提供される化粧品又は医薬組成物の局所製剤は、リポソーム、ミセル、ミクロスフェア、ナノシステム、及びそれらの任意の混合物を含んでもよい。
【0063】
本明細書で提供される局所製剤に使用するのに適した化粧品的又は薬学的に許容される担体及び賦形剤には、水性ビヒクル、水混和性ビヒクル、非水性ビヒクル、微生物の増殖に対する抗菌剤又は防腐剤、安定剤、溶解性向上剤、等張剤、緩衝剤、酸化防止剤、局所麻酔剤、懸濁剤・分散剤、湿潤剤・乳化剤、錯化剤、封鎖剤・キレート剤、浸透促進剤、凍結防止剤、凍結保護剤、増粘剤、及び不活性ガスが含まれるが、これらに限定されない。
【0064】
また、化粧品又は医薬組成物は、電気穿孔法、イオントフォレーシス、フォノフォレシス、ソノフォレーシス、マイクロニードル又は無針注射によって局所的に投与でき、例えば、PowderTect(カイロン社、エメリービルCA)及びBioject(Bioject医療技術会社、テュアラティン、OR)などがある。
【0065】
本明細書で提供される化粧品又は医薬組成物は、軟膏、クリーム、及びゲルの形態で提供できる。適当な軟膏ビヒクルとしては、ラード、ベンゾイン化ラード、オリーブ油、綿実油、及び他の油、白色ワセリンを含む油性又は炭化水素ビヒクル;親水性ワセリン、ヒドロキシステアリン硫酸塩、及び無水ラノリンなどの乳化性又は吸収性ビヒクル;親水性軟膏などの水除去性ビヒクル、様々な分子量のポリエチレングリコールを含む水溶性軟膏ビヒクル;セチルアルコール、モノステアリン酸グリセリル、ラノリン、及びステアリン酸を含む、油中水型(W/O)エマルジョン又は水中油型(O/W)エマルジョンのいずれかのエマルジョンビヒクル(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacyを参照)が含まれる。これらのビヒクルにはエモリエント効果はあるが、一般的に酸化防止剤と防腐剤を添加する必要がある。
【0066】
適当なクリームベースは、水中油型又は油中水型であってもよい。適当なクリームビヒクルは、水洗可能で、油相、乳化剤、及び水相を含むことができ。油相は「内相」とも呼ばれ、一般的にワセリンとセチルアルコールやステアリルアルコールなどの脂肪アルコールで構成される。水相は必ずしもそうではないが、通常、油相よりも体積が大きく、一般的に保湿剤を含んでいる。クリーム製剤中の乳化剤は、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、又は両性の界面活性剤であってもよい
【0067】
ゲルは、半固体、懸濁液タイプのシステムであってもよい。単相ゲルには、液体担体全体に実質的に均一に分布した有機高分子が含まれている。適当なゲル化剤は、カルボマー、カルボキシポリアルキレン、及びカルボポール(Carbopol)などの架橋アクリル酸ポリマー;ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー、及びポリビニルアルコールなどの親水性ポリマー;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、及びメチルセルロースなどのセルロース系ポリマー;トラガカントガムやキサンタンガムなどのガム;アルギン酸ナトリウム;及びゼラチンを含むが、これらに限らない。均一なゲルを調製するために、アルコール又はグリセリンなどの分散剤を添加するか、又はゲル化剤を粉砕、機械的な混合、及び/又は攪拌によって分散させることができる。
【実施例】
【0068】
本開示の例示的な実施形態は、以下の実施例でさらに説明されているが、これは、本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0069】
一般に、本明細書で使用される命名法及び本開示で記載される実験手順には、分子的、生化学的及び組換えDNA技術が含まれる。このような技術は文献で詳しく説明されている。例えば、Sambrookなどの「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」(1989);Ausubel、R.M.編集の「分子生物学における最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」第I-III巻(1994);John Wiley&Sonsの「分子クローニングの実用ガイド(A Practical Guide to Molecular Cloning)」ニューヨーク(1988);Watsonなどの「組換えDNA(Recombinant DNA)」、サイエンティフィック・アメリカンブック;Birrenなど(編)の「細胞生物学:実験室ハンドブック(Cell Biology: A Laboratory Handbook)」、第I-III巻、Cellis、J.E.編(1994);「動物細胞の培養-基本的なテクニックのマニュアル(Culture of Animal Cells - A Manual of Basic Technique)」、Freshney、Wiley-Liss、N.Y。(1994)、第三版;「転写及び翻訳(Transcription and Translation)」、Hames、B.D.、及びHiggins S.J.、編(1984);「動物細胞培養(Animal Cell Culture)」、Freshney、R。I.、編(1986);「固定化細胞及び酵素(Immobilized Cells and Enzymes)」、IRL Press、(1986);「分子クローニングの実用ガイド(A Practical Guide to Molecular Cloning)」、Perbal、B.、(1984)及び「酵素学における方法(Methods in Enzymology)」、第1-317巻、アカデミック・プレス;「PCRプロトコール:方法及び応用ガイドトン(PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications)」、アカデミック・プレス、サンディエゴ、カリフォルニア州(1990);Marshakなど、「タンパク質の精製と特性評価のための戦略-実験コースマニュアル(Strategies for Protein Purification and Characterization-A Laboratory Course Manual)」、CSHLプレス(1996);を参照。これらのすべては、本明細書に完全に記載されているのように参照により組み込まれる。他の一般的な参考文献は、この開示全体を通して提供される。その中の手順は当技術分野でよく知られていると考えられており、読者の便宜のために提供されている。そこに含まれるすべての情報は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
材料及び方法
【0071】
マウス
【0072】
Tyr-CreER/FusionRedマウスは、メラノサイト特異的チロシナーゼプロモーターによって駆動されるCre-組換え(Cre-recombination)からのFusionRed蛍光によってメラノサイト幹細胞を追跡するように設計されている。位置549で1つの単一ヌクレオチドが欠失して12アミノ酸のフレーム外変異を引き起こす変異Mc1r遺伝子を持つC57BL/6J-Mc1rem1マウスは、CRISPR-Cas9システムを使用して生成された。次に、黄色の毛色のMC1R変異マウスをK14-CreER;CK1αf/fマウスと交配して、K14-CreER;CK1αf/f;MC1RKI/KIマウスを作成した。変異マウスと野生型C57BL/6Jマウスは、台湾の台南にある国立実験動物センターで作成された。実験と動物の世話は、台湾の花蓮にある慈済大学の実験動物センターで行われた。
【0073】
CKIとその局所使用の準備
【0074】
本開示で使用されるCK1α(CKI)を標的とする小分子阻害剤は、Yinon Ben-Nerian博士によって開発され、贈与された。CKIの詳細が公開された(Minzel W.、Venkatachalam A.、Fink A.、など「Small Molecules Co-targeting CK1α and the Transcriptional Kinases CDK7/9 Control AML in Preclinical Models.」細胞。2018。175(1):171-185)。
【0075】
本開示において、マウス皮膚への局所投与のために、1mgのCKIを6μLのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、60%のホワイトワックス及び40%のパラフィン油を含む54μLのビヒクルと混合した。
【0076】
ヒトの皮膚外植片に局所使用するために、6μLのDMSOに1mgを含むCKI溶液を594μLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈して使用した。最終作業濃度は0.01mg/6μLである。
【0077】
さらに、本開示では、D4476及びIC261を含む、既知のカゼインキナーゼ1阻害活性を有する他の化合物も試験された。D4476は、最初Rena G.などにより、ジャーナル記事「CK1の細胞透過性阻害剤であるD4476は、FOXO1aの部位特異的リン酸化と核排除を抑制する(D4476、cell-permeant inhibitor of CK1、suppresses the site-specific phosphorylation and nuclear exclusion of FOXO1a)。」EMBO Rep. 2004 Jan. 5(1):60-5で報告され、IC261は、Mashhoon N.,などにより、ジャーナル記事「コンフォメーション選択的カゼインキナーゼ1阻害剤の結晶構造(Crystal structure of a conformation-selective Casein kinase-1 inhibitor)」。J. Biol. Chem. 2000 Jun 30. 275(26):20052-60で報告された。また、両方の分子は商業的に入手することができる。
【0078】
ヒトの皮膚の外植片
【0079】
ヒト包皮は、試験管内での外植片培養実験に使用された。IRBは、花蓮慈済病院の研究倫理委員会(IRB107-51-A)によって承認された。脂肪を取り除いた後、あらかじめに0.1%ゼラチンでコーティングしたプレートに試料を移した。包皮外植片は、5%のCO2を添加した加湿インキュベーター内で、37℃で20%ウシ胎児血清(FBS)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)で培養した。24時間後、0.01mgのCKIを1日間隔で2回培養皮膚に滴下し、合計0.02mgのCKIを投与した。CKI投与の5日後、組織を4%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定し、パラフィンで包埋して組織学的検査を行った。さらに、表皮と真皮はテルモリシンによって分離された。表皮の総タンパク質は、T-PER組織タンパク質抽出試薬(78510、ThermoFisher)によって抽出して、ウエスタンブロッティング分析を行った。
【0080】
フォンタナ-マッソン及びヘマトキシリン及びエオシン染色
【0081】
皮膚生検は4%ホルマリン又はパラホルムアルデヒドで固定され、パラフィンに包埋された。切片はミクロトームで5μmの厚さに切り取られた。
【0082】
フォンタナ-マッソン及びヘマトキシリン及びエオシン染色は、ScyTek Laboratories社のキットを用いて、メーカーの指示に従って実行した。
【0083】
フォンタナ-マッソン染色では、簡単に説明すると、アンモニア性銀溶液を58~60℃の水浴で予熱した。切片を脱パラフィンし、蒸留水で水和して、温めたアンモニア性銀溶液中で、黄色が現れるまで30分間インキュベートした。次に、スライドを塩化金溶液(0.2%)で30秒間インキュベートすると、この工程でメラニン染色が黒色としてはっきりと観察された。最後に、スライドを核ファストレッド溶液で5分間処理した後、無水アルコールで脱水した。
【0084】
免疫組織化学
【0085】
免疫組織化学は、95℃で30分間の抗原賦活化溶液(クエン酸塩pH6.0、Dako S236984)で示され、内因性ペルオキシダーゼ活性をブロックするためにddH2O中の3%過酸化水素を使用した。一次抗体を4℃で一晩投与した後、二次抗体と室温で30分間インキュベートした。シグナルは、AEC + Substrate-Chromogen(K346111、Dako)又はDako REAL EnVDetectSys Perox/DAB +、Rb/M(K500711、Dako)によって検出され、ヘマトキシリンで対比染色され、水性又は有機ベースの培地で配置された。
【0086】
蛍光染色のために、二次抗体のインキュベート後、数滴の水性封入剤を4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)(ChemCruz Biochemicals)で拭き、カバースライドで覆って、4℃で保存して分析を行った。イメージングは、蛍光顕微鏡(Nikon Eclipse Ti2)を使用して取得した。
【0087】
ウエスタンブロット
【0088】
組織を用いた実験では、組織を均質化した後、プロテアーゼ阻害剤(Millipore)を含む1x組織タンパク質抽出試薬(Thermo Fisher)で溶解し、氷に保持した。細胞を用いた実験では、細胞ペレットを収集し、プロテアーゼ阻害剤(Millipore)を含む1x放射性免疫沈降評価(RIPA)溶解バッファーで溶解し、氷に保持した。総タンパク質濃度は、マイクロプレートリーダーでメーカーの指示に従って、Protein Assay Dye Reagent Concentrate(Bio-Rad)を使用して決定した。サンプルをSDS-PAGEサンプルバッファー(Bio-Rad)で希釈し、95℃で5分間加熱した。次に、タンパク質サンプルをSDS-PAGEゲル(TGX FastCastアクリルアミド溶液、Bio-Rad)で分離し、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)メンブレン(Millipore)に転写した。5%BSAを使用した後、メンブレンを一次抗体とともに4℃で一晩インキュベートした。次に、メンブレンをTween 20を含むトリス緩衝生理食塩水(TBST)で洗浄し、二次抗体と室温で1時間インキュベートした。信号は、Thermo FisherScientificのiBrightFL1000 ImagingSystemを使用して検出された。
【0089】
抗体
【0090】
本開示における免疫組織化学(IHC)及びウエスタンブロッティング(WB)で使用される抗体は、以下の表1に示され、メーカー、カタログ番号、及び使用される希釈比が提供された。
【0091】
【0092】
UVB照射
【0093】
UVB照射の前に、マウスの毛皮を剃り、切り取った。750mJ/cm2~1,000mJ/cm2のUVB照射は、マイクロプロセッサ制御のUV照射システム-321nm(WitecAGのBLX-312)で実行された。照射の24時間後、マウスの皮膚を採取して分析した。
【0094】
ユーメラニン及びフェオメラニン分析
【0095】
表皮シートの分離のために、CKI治療を完了したマウスの尾の皮膚を入手した。皮膚サンプルを測定し、Ca2+-、Mg2+のないPBS(pH7.4)でリンスして血液汚染物質を除去した後、PBS(pH7.2)中の0.25%トリプシン(Difco. Becton Dickinson Microbiology Systems)で28℃で16~18時間処理した。表皮と真皮を分離し、使用するまで-80℃で保存した。
【0096】
メラニン含有量の評価のために、組織をはさみで細かく切り刻み、28℃で10倍量のPBSで均質化した。
【0097】
表皮及び真皮のサンプルは、ユーメラニンの化学分析には特定の分解生成物であるピロール-2,3,5-トリカルボン酸(PTCA)を検出することで、、フェオメラニンの化学分析には特定の分解生成物である4-アミノ-3-ヒドロキシフェニルアラニン(4-AHP)を検出することで処理された。1ナノグラムのPTCA又は4-AHPは、50ngのユーメラニン又は9ngのフェオメラニンに相当する。ユーメラニンとフェオメラニンの含有量の違いの統計的有意性は、同じサイズのグループの比較によるスチューデントのt検定によって決定された。
【0098】
細胞培養
【0099】
ヒトのケラチノサイトとメラノサイトは、ヒトの包皮から培養された。ケラチノサイトは、完全無血清培地であるケラチノサイト無血清培地(SFM)、又はK-SFMで培養し、、使用時にはヒト組換え上皮成長因子(rEGF)及びウシ下垂体抽出物(BPE)(Gibco、17005042)を添加した。メラノサイトは、ヒトメラノサイト増殖サプリメント(HMGS)(Gibco、M254500)を含む培地254で培養された。培養物は37℃及び5%CO2で維持された。ケラチノサイトKitのリガンド分泌は、ヒトのSCF ELISAキット(Abcam、ab176109)によって検出された。すべての手順はメーカーの指示に従った。
【0100】
メラノサイト移動評価
【0101】
創傷治癒評価は、細胞移動を検出するために採用された。具体的には、メラノサイトを培養インサートにウェルあたり103細胞の密度で播種した。細胞を一晩付着させた後、培養インサートを除去し、細胞をPBSで洗浄して非付着細胞を除去した。CKIの含まない或いは含む新鮮な培地を添加して、24時間培養した。創傷空間に移動した細胞の数は、光学顕微鏡(オリンパス、CKX53)でウェルあたり3つのフィールドで手動で計算した。次に、ImageJ分析を使用して面積を定量化した。
【0102】
統計分析
【0103】
本開示における統計分析は、分析結果を平均±標準偏差として示す。グループ間の比較には、スチューデントのt検定を適用した。0.05未満のP値は統計的に有意であると見なされた。
【0104】
実施例1.野生型マウスに対する局所CKI投与のUV保護効果
【0105】
C57BL/6マウスは、局所CKIの安全用量をテストするための実験モデルとして使用された。CKIは、C57BL/6マウスの耳に、1回の塗布量が0.1mgとなるように、1日おきの頻度(Q.O.D.)で4週間局所的に投与された。したがって、CKIは週に3回局所的に投与され、合計0.3mgのCKIが週に投与され、合計1.2mgのCKIが4週間にわたって投与された。
【0106】
マウスの表現型を毎週記録した。
図1Aに示すように、耳のサンプルは、組織分析のために、12回の局所CKI投与で合計1.2mgのCKIを投与した後、6週目の終わりに採取された。
【0107】
図1B及び
図1Dに示すように、表現型の写真は、対照群と比較して、局所CKI治療後にマウスの耳の皮膚の色が目に見えて暗くなることを示した。処理されたCKIの総用量は1.2mg(
図1B)又は5mg(
図1D)であった。
図1B及び
図1Dにも示されているように、フォンタナ-マッソン染色は、表皮のメラニンの量が1.2mgCKIの治療後にすでに有意に増加し、5mgCKIの治療後にさらに強くなることを示した。さらに、c-Kit染色は、ケラチノサイト及び表皮のメラノサイトの受容体KITも有意に増加したことを示した。これらの結果は、局所CKIがUV日焼けと同じ方法で皮膚の色素沈着と表皮厚度を増加させることを明らかにした。
【0108】
マウスの皮膚において、メラノサイトは主に真皮に存在した。
図1Cに示すように、ユーメラニンとフェオメラニンの分析は、1.2mgCKIの局所治療後、ユーメラニンの含有量が皮膚で有意に増加し、増加したユーメラニンは主に真皮ではなく表皮に局在し、ユーメラニンとフェオメラニンの比率が有意に増加することを示した。したがって、局所的なCKIの投与は、真皮から表皮へのメラノサイトの移動につながる傍分泌因子を誘導する可能性がある。
図1Eに示すように、合計5mgのCKIで処理したマウスは、ユーメラニンとフェオメラニンの比率が大幅に増加したことも観察された。
【0109】
メラノサイト幹細胞の挙動を調査するために、レポーターマウスTyr::CreER
T2;G/mRが作製された。このレポーターマウスにタモキシフェンを誘導することにより、緑色蛍光(GFP)を発現する組織内の他の細胞の中で、メラノサイトが膜上で赤い蛍光(Fusion Red)を特異的に発現することができる。したがって、レポーターマウスはメラノサイトの移動を追跡するために使用される。
図1Fに示すように、局所CKI治療の前には、メラノサイトは主に真皮に制限されており、表皮にはほとんど存在しなかった(左写真を参照)。しかし、合計1.2mgのCKIの局所治療後、表皮のメラノサイト数が大幅に増加し(右のグラフに示すように)、局所CKIが真皮から表皮へのメラノサイトの移動を誘導したことを示した。さらに、皮膚組織のウエスタンブロッティング分析は、
図1Gに示すように、メラノサイトの移動と生存に関わる因子として知られるKitリガンド(KitL)が局所CKI治療後に増加したことを示した。また、
図1Gから、主要なメラノサイト調節転写因子であるMITFと、メラニン形成の律速酵素であるチロシナーゼは、いずれも有意にアップレギュレーションされていた。これらの結果は、局所CKIがKitリガンド生成を誘導し、それがメラノサイトの表皮への移動を促進し、メラニン形成を刺激することを確認した。
【0110】
さらに、局所CKI治療の光防護効果は、UVB照射後の皮膚におけるシクロブテンピリミジンダイマー(CPD)の量を測定することによって調べられた。
図1Hに示すように、750mJ/cm
2のUVB照射の24時間後にマウスの皮膚を採取し、合計0.6mgのCKIを投与したCKI治療群の皮膚を免疫組織化学的に分析したところ、CKI投与なしの対照群に比べて、UV照射による損傷を表すCPD
+細胞が少ないことが示された。これは、局所CKIが皮膚にUV保護機能を発揮することを示す。
【0111】
実施例2.MC1R変異マウスへのCK1α阻害及び局所CKI投与は、メラニン生成を誘導し、MC1R変異マウスをUVBによるDNA損傷から保護する。
【0112】
メラノコルチン受容体(MCR)は、Gタンパク質共役型受容体ファミリーに属し、機能と組織での発現に応じて、MC1R、MC2R、MC3R、MC4R、MC5Rを含む5つのメンバーに分類される。UV保護の役割で、MC1Rはプロオピオメラノコルチン(POMC)に由来するメラノコルチンと呼ばれるペプチドホルモンによって活性化される。α-MSHは、ケラチノサイトから分泌されるメラノコルチンの一種で、ヒトの皮膚の色素沈着の責任を負う。したがって、ユーメラニンの生成には、POMC/α-MSH/MC1R経路が関与している。上に示したように、CKIの局所投与によるCK1α阻害はKitL/Kit経路を活性化し、MC1R変異を有するマウスにおけるCK1α阻害の効果を示すためにさらに調査される。
【0113】
変異を有するMC1R変異マウスが報告されており、当該変異MC1R遺伝子は、MC1R遺伝子の549位の単一ヌクレオチドを欠失させて、12アミノ酸のアウトオブフレーム変異を起こす(Mountjoy、Robbinsなど、1992)。KitL/Kitシグナル経路がメラニン生成におけるCKIの代替標的であることを証明するために、CRISPR/Cas9システムによるMC1R遺伝子の549位の単一ヌクレオチドの欠失を伴うC57BL/6J-Mc1r
em1マウスを作製した。この欠失はフレームシフト変異を引き起こし、MC1Rタンパク質の機能が失われることで、メラノサイトがフェオメラニンを独占的に合成し、ユーメラニンを合成できないので、
図2Aの写真に示すように、マウスの毛色が黄色になる。
【0114】
図2Bに示すように、C57BL/6J-Mc1r
em1マウスとK14-CreER;CK1α
f/fマウスと交配させ、K14-CreER;CK1α
f/f;MC1R
KI/KIマウスを作成し、誘導性MC1R変異マウスを取得した。
図2Cは、誘導性K14-CreER;CK1α
f/f;MC1R
KI/KIマウスのケラチノサイトにおいてCK1αを除去するために用いた流れを示す。具体的には、7週齢のマウスのケラチノサイトにおけるCK1α除去は、矢印で示された日に合計6回、100mg/kgのタモキシフェンの腹腔内注射によって誘導された。14、28、42日目に皮膚サンプルを採取して分析した。
図2Dは、ケラチノサイトでCK1αが除去されたMC1R変異マウスの皮膚の表現型を示し、ケラチノサイトでCK1αが除去されていないMC1R変異マウスと比較して、28日目に尾の色素沈着が増加したことがわかった。さらに、フォンタナ-マッソン染色では、
図2Eに示すように、ケラチノサイトでのCK1α除去後の14日目、28日目、42日目の時間経過分析で、表皮厚度が増加するとともに、表皮、真皮、又は皮膚全体のユーメラニン色素沈着が増加していることが示され、また、皮膚全体、表皮及び真皮におけるフォンタナ-マッソン染色細胞の数を定量化して、
図2Fのヒストグラムに示した。
【0115】
メラニン生成及びUVBによるDNA損傷からの保護に対する局所CKI投与の効果を調査するために、C57BL/6J-Mc1r
em1マウスは、実施例1における野生型に使用されたのと同じ流れである
図2Gに示す流れに従って局所CKI治療を受けた。
図2Hに示すように、フォンタナ-マッソン染色は、C57BL/6J-Mc1r
em1マウスで合計1.2mgのCKI処理を行った後、表皮厚度の増加と表皮のメラニンの増加を示した。さらに、皮膚組織のウエスタンブロッティング分析では、
図2Iに示すように、CKI治療群でのKitリガンド(KitL)、c-Kit、MITF、チロシナーゼ、及びp53のタンパク質レベルの上昇を示した。
図2Jに示すように、EM/PMの比率の増加は、合計CKI 2.6mgの局所投与で治療されたC57BL/6J-Mc1r
em1マウスでも見られた。また、
図2Kに示すように、合計0.6mgの局所CKIで治療されたMC1R変異マウスに750mJ/cm
2のUVB照射を適用した後、局所CKIはMC1R変異マウスのCPD形成も減少させた。より多くのCPD染色結果が
図2Lに示され、局所CKIがMC1R変異体及び野生型マウスの表皮、皮脂腺、及び毛包上皮細胞のUVBによるCPDを低下させることがわかった。結果は、局所CKIが通常の野生型マウスと同じようにMC1R変異マウスのp53/Kit-Ligand/c-kit経路を活性化し、局所CKI治療がメラニンの生成を促進し、皮膚をUV照射の損傷から保護することを示した。
【0116】
実施例3.局所CKI投与は、ヒトの皮膚外植片におけるメラニン生成を増加させ、UVB曝露によるDNA損傷を予防する
【0117】
マウスの耳の皮膚とは異なり、ヒトの皮膚は表皮が厚く、メラノサイトは主に表皮に存在する。局所CKIがヒトの皮膚に及ぼす影響を調べるために、包皮を使用し、試験管内のヒトの皮膚外植片培養モデルを構築した。
図3Aに示す治療流れに従って、実施例1および2でマウスに使用したものと比較してはるかに低い用量である合計0.02mgのCKIをヒトの皮膚に局所投与したところ、CKIで治療したヒトの皮膚外植片は、溶媒のみで処理された対照群と比較して、色が目に見えて濃くなった。
図3Bは、合計0.02mgの局所CKI治療後のEM/PM比の増加を示す。また、
図3Cに示す免疫組織化学的分析では、メラノサイトのマーカーであるMelan-AとTrp-1の両方が染色で増加していることがわかった。これらの結果は、局所CKI治療後の表皮におけるメラノサイト数の増加を示した。さらに、フォンタナ-マッソン染色では、表皮でのメラニン量が大幅に増加していることも示された。
図3Dは、ヒト外植片組織のウエスタンブロッティング分析結果を示し、局所CKI治療後にp53やβ-カテニンなどのCK1αの下流タンパク質、及びKitリガンド、c-kit受容体、MITF、及びチロシナーゼなどの色素沈着関連タンパク質の発現レベルは、いずれも上昇したことが明らかになった。さらに、局所CKI治療後のヒト皮膚外植片に1J/cm
2UVBを照射し、6時間後にCPD分析のために収集した。CPD分析の結果は、
図3Eに示すように、溶媒のみを投与した対照群と比較して、CKI治療群のCPDレベルの低下を示し、局所CKI治療がUV誘導DNA損傷からヒトの皮膚を保護することを示した。
【0118】
実施例4.ヒトのケラチノサイト及びメラノサイトに対するCKI治療は、KitL生成及びメラノサイトの増殖、成熟、及び移動を増加させる
【0119】
皮膚では、ケラチノサイトは傍分泌成長因子と細胞間接着接合部のシステムを介してメラノサイトと相互作用し、安定した皮膚の恒常性バランスを保っている。この実施形態において、ケラチノサイト及びメラノサイトの初代培養物は、ヒト包皮から調製された。初代ヒトのケラチノサイトを表示した濃度のCKIで3日間処理し、条件培地を収集してメラノサイトを3日間処理するために使用した。
【0120】
ケラチノサイトでそれぞれ10、20、及び50nMのCKI処理を3日間行った後、ウエスタンブロッティング分析により、
図4Bに示すように、p53、β-カテニン、KitL、及びc-Kitの発現がすべて用量依存的に増加したことが示された。また、ケラチノサイト培養物の培地を収集して、KitLのELISA分析を行った。その結果、
図4Cに示すように、KitL濃度は、50及び75nMのCKI処理後のケラチノサイト培養培地の両方では増加することがわかった。
【0121】
さらに、培養したケラチノサイトに由来する条件培地を使用してヒトメラノサイトを処理し、メラノサイトの細胞挙動を調べた。HMB45はメラニントランスポーターのメラノソームのマーカーであり、HMB45抗体による染色は、
図4Dに示すように、メラノソームの強度、メラノサイトの細胞数、及びメラノサイトの樹状突起の長さがすべてCKI処理条件培地によって増強されることを示した。ウエスタンブロッティング分析は、
図4Eに示すように、メラノサイトで用量依存的にチロシナーゼとMITFの発現が増加していることを示し、ケラチノサイト由来のKitLの傍分泌効果を示す。
【0122】
メラノサイトに対するCKIの影響も調べた。様々な濃度のCKIを初代メラノサイト培養物に加えた。
図4Fに示すように、CKIの存在下では、MITF、チロシナーゼ、リン酸化MKK6などのメラノサイト成熟に関与する因子はすべて用量依存的に増加した。さらに、メラノサイトの移動能力も移動評価で調査され、
図4Gに示すように、CKI処理はメラノサイトの移動を有意に増加させた。これらの結果は、CKI処理がケラチノサイト由来のKitLを介したメラノサイトの挙動だけでなく、メラノサイトの機能にも直接影響を与えることを示す。
【0123】
実施例5.付加のカゼインキナーゼ1阻害剤のUV保護効果。
【0124】
前の実施形態で使用されたCKIに加えて、D4476及びIC261などの他の既知のカゼインキナーゼ1阻害剤についても、マウス皮膚、ヒト皮膚外植片及びヒトのケラチノサイトに対するそれらのUV保護効果を調べた。
【0125】
図5Aに示すように、D4476及びIC261をC57BL/6J-Mc1r
em1マウスに0.04mg/回及び0.12mg/週で2週間局所投与し、合計0.24mgを投与し、3週目に耳の皮膚を採取して組織分析を行った。
【0126】
図5Bは、実施例2に示した結果と同様に、D4476及びIC261の0.24mg処理後に、Kit-L、c-Kit、及びチロシナーゼの発現が増加したことを示す。
【0127】
ヒトの皮膚外植片へのD4476の局所投与も、実施例3のCKIと同様のUV保護効果を示した。
図6Aの治療流れに示されるように、ヒトの包皮を12ウェルプレートで24時間培養した後、それぞれ0.04または0.05mgのCKIで2回処理し、合計0.08又は0.1mgのCKIを投与された。5日目に、上記のCKI処理を受けた試料に1,000mJ/cm
2のUVB照射を行った。その後の分析のために、UV照射の6時間後にサンプルを採取した。
【0128】
試料のフォンタナ-マッソン染色による組織学では、
図6Bに示すように、合計0.1mgのD4476で処理された表皮のメラニン強度の増加が示された。
図6Cに示されているウエスタンブロッティング分析、及び
図6Dに示されている定量化された相対的発現レベルは、
図3の前のCKIに示されたものと同様に、p53及びβ-カテニンが安定化し、0.1mgのD4476で処理した検体では、対照群と比較して、KitL、c-Kit、チロシナーゼが増加したことを示した。さらに、
図6EのCPD染色結果では、0.08mgのD4476で処理された試料でCPDの低下を示し、0.08mgの量のD4476をヒトの皮膚に局所投与することで、UVによるDNA損傷を予防及び保護できることを示す。
【0129】
付加のカゼインキナーゼ1阻害剤を使用して、ヒトのケラチノサイト培養物でのKitL生成に対する効果を調べた。
図7Aに示すように、A51に加えて、異なる濃度のCKI7、D4476、IC261を含む3つの付加のカゼインキナーゼ1阻害剤を使用し、ヒトのケラチノサイトを処理し、KitL発現レベルを試験した。A51はYinonBen-Neriah博士から贈与されたCKIであり、D4474(Sigma-Aldrich D1944)及びIC261(Sigma-Aldrich 400090)は市販されており、DMSOに溶解した。CKI7は市販の別のCKI(Sigma-Aldrich C0742)であり、ddH
2Oに溶解した。試験されたすべてのカゼインキナーゼ1阻害剤は、β-カテニンの発現がCKI処理によって安定化されたことを示した。KitLの発現は、CKI、CKI7、D4476、及びIC261で72時間処理した後、DMSO又はモック(Mock)と比較して増加した。モックは、ケラチノサイトがDMSO又はCKIで処理されていない実験の比較群であった。
図7Bにおいて、ヒトのケラチノサイトに対する500nMから5000nMの濃度でのD4476処理は、72時間後に処理されたケラチノサイトにおいて、p53及びKitLの発現が用量非依存的に増加することがさらに示された。また、
図7Cにおいて、500nMから5000nMの濃度でのヒトのケラチノサイトに対するIC261処理は、72時間後に処理されたケラチノサイトにおいて、p53及びKitLの発現が用量非依存的に増加することも示された。これらのデータは、実施例1~4で使用したCKIに加えて、他のカゼインキナーゼ1阻害剤も、Kit経路及びその後のメラニン形成を誘導するのと同様の能力を有することを示した。
【0130】
本開示は、その実施形態とともに記載されており、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な修正が本開示の実施形態によるものであることが理解される。したがって、記載された実施形態は、本開示を限定するのではなく、本開示の範囲内の改変を含むことを意図している。したがって、特許請求の範囲は、そのようなすべての修正を包含するように、最も広い解釈を与えられるべきである。