(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】潤滑油組成物および潤滑油の消泡方法、ならびに消泡剤組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 155/02 20060101AFI20240319BHJP
B01D 19/04 20060101ALI20240319BHJP
C10N 20/02 20060101ALN20240319BHJP
C10N 20/04 20060101ALN20240319BHJP
C10N 30/18 20060101ALN20240319BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20240319BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20240319BHJP
【FI】
C10M155/02
B01D19/04 A
C10N20:02
C10N20:04
C10N30:18
C10N40:04
C10N40:25
(21)【出願番号】P 2021513720
(86)(22)【出願日】2020-04-10
(86)【国際出願番号】 JP2020016159
(87)【国際公開番号】W WO2020209370
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2019076600
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】高木 彰
(72)【発明者】
【氏名】辰巳 剛
(72)【発明者】
【氏名】菖蒲 紀子
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特許第4220599(JP,B2)
【文献】国際公開第2018/155579(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/030201(WO,A1)
【文献】特開昭59-130894(JP,A)
【文献】特開平9-118892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 1/00-101/14
B01D 19/00- 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油基油と、
(A)第1の消泡剤と、
(B)シリコーン系消泡剤である、第2の消泡剤と
を含有し、
前記(A)第1の消泡剤は、(A1)第1の重合体、若しくは(A2)第2の重合体、又はそれらの組み合わせであり、
前記(A1)第1の重合体は、
下記一般式(1)で表される重合度5~2000のポリシロキサン構造を含む、1つ以上の第1の重合鎖と、
下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含み、前記第1の重合鎖に結合した、1つ以上の第2の重合鎖と
を有する重合体であり、
前記(A2)第2の重合体は、下記一般式(7)又は(8)で表される化合物から選ばれる1種以上のポリシロキサンマクロモノマーである第1のモノマー成分と、下記一般式(9)で表される1種以上のモノマーである第2のモノマー成分との共重合体である
ことを特徴とする、潤滑油組成物。
【化1】
(一般式(1)中、ポリシロキサン繰り返し単位の順序は任意であり;
R
1及びR
2はそれぞれ独立に、フッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり;
R
3及びR
4はそれぞれ独立に、フッ素原子を3個以上含む有機基またはフッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり、R
3及びR
4の少なくとも一方はフッ素原子を3個以上含む有機基であり;
nは0以上の整数であり;
mは1以上の整数であり;
n+mは5~2000である。)
【化2】
(一般式(2)中、X
1はエチレン性不飽和基の重合により得られる繰り返し単位であり;Y
1は炭素数1~40の置換または無置換ヒドロカルビル基からなる側鎖であり;Z
1は繰り返し単位X
1と側鎖Y
1とを連結する連結基である。)
【化3】
(一般式(7)及び(8)中、ポリシロキサン繰り返し単位の順序は任意であり;
R
5及びR
6はそれぞれ独立に、フッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり;
R
7及びR
8はそれぞれ独立に、フッ素原子を3個以上含む有機基またはフッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり、R
7及びR
8の少なくとも一方はフッ素原子を3個以上含む有機基であり;
Q
5、Q
6、及びQ
7はそれぞれ独立に、エチレン性不飽和基を含む重合性官能基であり;
Z
5は重合性官能基Q
5とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
Z
6は重合性官能基Q
6とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
Z
7は重合性官能基Q
7とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
T
5は非重合性の有機基であり;
gは0以上の整数であり;
hは1以上の整数であり;
g+hは5~2000である。)
【化4】
(一般式(9)中、Q
8はエチレン性不飽和基を有する重合性官能基であり;
Y
8は炭素数1~40の置換または無置換ヒドロカルビル基であり;
Z
8はQ
8とY
8とを連結する連結基である。)
【請求項2】
前記(A)第1の消泡剤が、前記(A1)第1の重合体を含み、
前記X
1が、(メタ)アクリロイル基の重合により得られる繰り返し単位である、
請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記(A)第1の消泡剤が、前記(A1)第1の重合体を含み、
前記(A1)第1の重合体において、前記1つ以上の第2の重合鎖が、前記第1の重合鎖の一方の末端または両方の末端に結合している、
請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記(A)第1の消泡剤が、前記(A1)第1の重合体を含み、
前記第1の重合鎖が、下記一般式(3)~(6)のいずれかで表される、
請求項1~3のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【化5】
(一般式(3)~(6)中、ポリシロキサン繰り返し単位の順序は任意であり;
R
1、R
2、R
3、R
4、n及びmは上記定義の通りであり;
X
2、X
3、及びX
4はそれぞれ独立に、エチレン性不飽和基の重合により得られる繰り返し単位であり;
T
2は非重合性の有機基であり;
Q
4は重合により繰り返し単位X
4を与える重合性官能基であり;
T
4は重合性官能基Q
4から重合鎖伸長以外の反応により誘導された有機基であり;
Z
2は繰り返し単位X
2とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
Z
3は繰り返し単位X
3とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
Z
4は繰り返し単位X
4、重合性官能基Q
4、又は有機基T
4とポリシロキサン部位とを連結する連結基である。)
【請求項5】
前記X
2、X
3、及びX
4が、(メタ)アクリロイル基の重合により得られる繰り返し単位である、
請求項4に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
前記(A)第1の消泡剤が、前記(A1)第1の重合体を含み、
前記(A1)第1の重合体において、前記1つ以上の第2の重合鎖が、前記第1の重合鎖の一方の末端のみに結合している、
請求項1~5のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
前記(A)第1の消泡剤が、前記(A1)第1の重合体を含み、
前記(A1)第1の重合体において、前記1つ以上の第2の重合鎖が、前記第1の重合鎖の少なくとも1つの両方の末端に結合している、
請求項1~5のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
前記(A)第1の消泡剤が、前記(A1)第1の重合体を含み、
前記(A1)第1の重合体において、全ポリシロキサン繰り返し単位の総数に対する、フッ素原子を含むポリシロキサン繰り返し単位の総数の比が0.01~1である、
請求項1~7のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
前記(A)第1の消泡剤が、前記(A1)第1の重合体を含み、
前記(A1)第1の重合体中の前記第1の重合鎖の含有量が、前記(A1)第1の重合体の全量を基準として0.5~80質量%である、
請求項1~8のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
前記(A)第1の消泡剤が、前記(A1)第1の重合体を含み、
前記(A1)第1の重合体の重量平均分子量が10,000~1,000,000である、
請求項1~9のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
前記(A)第1の消泡剤が、前記(A1)第1の重合体を含み、
前記第1の重合鎖の重量平均分子量が500~500,000である、
請求項1~10のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
前記(A)第1の消泡剤が、前記(A2)第2の重合体を含み、
前記第1のモノマー成分において、全ポリシロキサン繰り返し単位の総数に対する、フッ素原子を含むポリシロキサン繰り返し単位の総数の比が0.01~1である、
請求項1~11のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
前記(A)第1の消泡剤が、前記(A2)第2の重合体を含み、
前記(A2)第2の重合体中の、前記第1のモノマー成分に由来する繰り返し単位の含有量が、前記(A2)第2の重合体の全量を基準として0.5~80質量%である、
請求項1~12のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項14】
前記(A)第1の消泡剤が、前記(A2)第2の重合体を含み、
前記Q
5、Q
6、及びQ
7が、(メタ)アクリロイル基を含む、
請求項1~13のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項15】
前記(A)第1の消泡剤が、前記(A2)第2の重合体を含み、
前記(A2)第2の重合体の重量平均分子量が10,000~1,000,000である、
請求項1~14のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項16】
前記(A)第1の消泡剤が、前記(A2)第2の重合体を含み、
前記第1のモノマー成分の重量平均分子量が500~500,000である、
請求項1~15のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項17】
前記(B)第2の消泡剤が、フルオロシリコーン系消泡剤である、
請求項1~16のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項18】
前記(A)第1の消泡剤のケイ素換算含有量の、前記(B)第2の消泡剤のケイ素換算含有量に対する比(A/B)が、0.01~100である、
請求項1~17のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項19】
前記(A)第1の消泡剤および前記(B)第2の消泡剤の合計の含有量が、組成物全量基準でケイ素量として0.2~300質量ppmである、
請求項1~18のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項20】
100℃における動粘度が4.5mm
2/s以下である、
請求項1~19のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項21】
(i)(A)第1の消泡剤および(B)第2の消泡剤を、合計の濃度がケイ素量換算で100~50,000質量ppmとなるように希釈溶媒中に溶解または微分散させることにより、希釈液を得る工程と、
(ii)前記工程(i)において得られた希釈液を潤滑油に添加する工程と
を含み、
前記(A)第1の消泡剤は、(A1)第1の重合体、若しくは(A2)第2の重合体、又はそれらの組み合わせであり、
前記(A1)第1の重合体は、
下記一般式(1)で表される重合度5~2000のポリシロキサン構造を含む、1つ以上の第1の重合鎖と、
下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含み、前記第1の重合鎖に結合した、1つ以上の第2の重合鎖と
を有する重合体であり、
前記(A2)第2の重合体は、下記一般式(7)又は(8)で表される化合物から選ばれる1種以上のポリシロキサンマクロモノマーである第1のモノマー成分と、下記一般式(9)で表される1種以上のモノマーである第2のモノマー成分との共重合体であり、
前記(B)第2の消泡剤はシリコーン系消泡剤である、
潤滑油の消泡方法。
【化6】
(一般式(1)中、ポリシロキサン繰り返し単位の順序は任意であり;
R
1及びR
2はそれぞれ独立に、フッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり;
R
3及びR
4はそれぞれ独立に、フッ素原子を3個以上含む有機基またはフッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり、R
3及びR
4の少なくとも一方はフッ素原子を3個以上含む有機基であり;
nは0以上の整数であり;
mは1以上の整数であり;
n+mは5~2000である。)
【化7】
(一般式(2)中、X
1はエチレン性不飽和基の重合により得られる繰り返し単位であり;Y
1は炭素数1~40の置換または無置換ヒドロカルビル基からなる側鎖であり;Z
1は繰り返し単位X
1と側鎖Y
1とを連結する連結基である。)
【化8】
(一般式(7)及び(8)中、ポリシロキサン繰り返し単位の順序は任意であり;
R
5及びR
6はそれぞれ独立に、フッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり;
R
7及びR
8はそれぞれ独立に、フッ素原子を3個以上含む有機基またはフッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり、R
7及びR
8の少なくとも一方はフッ素原子を3個以上含む有機基であり;
Q
5、Q
6、及びQ
7はそれぞれ独立に、エチレン性不飽和基を含む重合性官能基であり;
Z
5は重合性官能基Q
5とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
Z
6は重合性官能基Q
6とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
Z
7は重合性官能基Q
7とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
T
5は非重合性の有機基であり;
gは0以上の整数であり;
hは1以上の整数であり;
g+hは5~2000である。)
【化9】
(一般式(9)中、Q
8はエチレン性不飽和基を有する重合性官能基であり;
Y
8は炭素数1~40の置換または無置換ヒドロカルビル基であり;
Z
8はQ
8とY
8とを連結する連結基である。)
【請求項22】
前記希釈溶媒が、炭素数6以上の炭化水素溶媒、鉱油、合成油、エステル油、炭素数4以上の脂肪族エーテル、炭素数2以上の脂肪族モノカルボン酸と炭素数1~5の一価アルコールとのエステル、炭素数3以上の脂肪族ケトン、炭素数4以上の脂肪族アルコール、及びハロゲン化炭化水素から選ばれる1種以上を含む、請求項21に記載の潤滑油の消泡方法。
【請求項23】
(A)第1の消泡剤と、
(B)シリコーン系消泡剤である、第2の消泡剤と
を含有し、
前記(A)第1の消泡剤は、(A1)第1の重合体、若しくは(A2)第2の重合体、又はそれらの組み合わせであり、
前記(A1)第1の重合体は、
下記一般式(1)で表される重合度5~2000のポリシロキサン構造を含む、1つ以上の第1の重合鎖と、
下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含み、前記第1の重合鎖に結合した、1つ以上の第2の重合鎖と
を有する重合体であり、
前記(A2)第2の重合体は、下記一般式(7)又は(8)で表される化合物から選ばれる1種以上のポリシロキサンマクロモノマーである第1のモノマー成分と、下記一般式(9)で表される1種以上のモノマーである第2のモノマー成分との共重合体である
ことを特徴とする、消泡剤組成物。
【化10】
(一般式(1)中、ポリシロキサン繰り返し単位の順序は任意であり;
R
1及びR
2はそれぞれ独立に、フッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり;
R
3及びR
4はそれぞれ独立に、フッ素原子を3個以上含む有機基またはフッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり、R
3及びR
4の少なくとも一方はフッ素原子を3個以上含む有機基であり;
nは0以上の整数であり;
mは1以上の整数であり;
n+mは5~2000である。)
【化11】
(一般式(2)中、X
1はエチレン性不飽和基の重合により得られる繰り返し単位であり;Y
1は炭素数1~40の置換または無置換ヒドロカルビル基からなる側鎖であり;Z
1は繰り返し単位X
1と側鎖Y
1とを連結する連結基である。)
【化12】
(一般式(7)及び(8)中、ポリシロキサン繰り返し単位の順序は任意であり;
R
5及びR
6はそれぞれ独立に、フッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり;
R
7及びR
8はそれぞれ独立に、フッ素原子を3個以上含む有機基またはフッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり、R
7及びR
8の少なくとも一方はフッ素原子を3個以上含む有機基であり;
Q
5、Q
6、及びQ
7はそれぞれ独立に、エチレン性不飽和基を含む重合性官能基であり;
Z
5は重合性官能基Q
5とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
Z
6は重合性官能基Q
6とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
Z
7は重合性官能基Q
7とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
T
5は非重合性の有機基であり;
gは0以上の整数であり;
hは1以上の整数であり;
g+hは5~2000である。)
【化13】
(一般式(9)中、Q
8はエチレン性不飽和基を有する重合性官能基であり;
Y
8は炭素数1~40の置換または無置換ヒドロカルビル基であり;
Z
8はQ
8とY
8とを連結する連結基である。)
【請求項24】
炭素数6以上の炭化水素溶媒、鉱油、合成油、エステル油、炭素数4以上の脂肪族エーテル、炭素数2以上の脂肪族モノカルボン酸と炭素数1~5の一価アルコールとのエステル、炭素数3以上の脂肪族ケトン、炭素数4以上の脂肪族アルコール、及びハロゲン化炭化水素から選ばれる1種以上を含む希釈溶媒をさらに含有する、請求項23に記載の消泡剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物および潤滑油の消泡方法、ならびに消泡剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な機械装置において、部材間の潤滑性を向上させるために潤滑油が用いられている。ここで、潤滑油の泡立ちが悪化すると、潤滑不良、油圧制御不良、冷却効率の低下などを招くおそれがあるため、潤滑油には泡立ちを抑制することが求められる。
【0003】
例えば、自動車エンジン、変速機およびアクスルユニットにおいては、近年、その高性能化および省燃費化に伴い、潤滑油が曝される条件はより過酷になっている。高負荷運転や高速走行が連続して行われると、エンジン油、変速機油、あるいはアクスルユニット油中における発泡が増大し、その結果、油圧流路への泡の抱き込みにより、油圧制御不良が発生する;発泡により潤滑性能や冷却効率が低下する;摩擦箇所における油膜の破断により、摩耗および焼付きが発生する;および、油温の上昇により潤滑油の劣化が促進される、等の問題が発生する。このため運転初期から長期にわたって発泡を抑制できるよう、高い消泡性が維持されるエンジン油、変速機油、およびアクスルユニット油が求められている。
【0004】
一般に、潤滑油は、基油と、所望の特性に応じて添加される種々の添加剤とを含有している。添加剤としては例えば、潤滑油における泡立ちを防止するための消泡剤が挙げられる。消泡剤としては、ポリシロキサン系消泡剤(シリコーン系消泡剤)が従来から知られている。例えば特許文献1には、(a)25℃における動粘度が300,000~1,500,000mm2/sのポリジメチルシロキサン、及び(b)25℃における動粘度が500~9,000mm2/sのフッ素化ポリシロキサンを配合してなる潤滑油組成物が記載されている。また特許文献2には、高速撹拌により発生する泡に対する消泡効果を得るために、特定の分子量分布を有するポリジメチルシロキサンを潤滑油中に配合することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-87065号公報
【文献】特開2008-120889号公報
【文献】国際公開2017/030201号
【文献】国際公開2017/030202号
【文献】国際公開2017/030203号
【文献】国際公開2017/030204号
【文献】国際公開2018/155579号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、消泡剤は、潤滑油組成物中に微分散した状態で用いられることにより消泡性を発揮する。しかし、シリコーン系消泡剤化合物を含有する従来の潤滑油においては、容器内での長期貯蔵や、機械装置内での長期使用において、シリコーン系消泡剤の沈降および偏在が起こりやすく、時間経過に伴い消泡性が徐々に消失し、潤滑油の泡立ちが悪化してしまうという問題があった。例えば自動変速機に搭載されているトルクコンバータや、金属ベルト式無段変速機に搭載されているプーリー等では、非常に大きな遠心作用が働く部位が存在する。潤滑油がそのような部位に供給されると、消泡剤として使用されているシリコーン系消泡剤化合物が遠心作用で分離し、装置内の特定の箇所で偏在するので、装置内部を循環する潤滑油中の消泡剤濃度が低下し、潤滑油の泡立ちが悪化してしまう。
【0007】
また、シリコーン系消泡剤化合物を含有する従来の潤滑油においては、高負荷運転や高速運転の条件下での潤滑が連続すると、使用時間の経過に伴い潤滑油の消泡性能が低下するという問題もあった。例えば、エンジン、自動変速機、及びアクスルユニット内部等における潤滑部位(例えばピストンとシリンダーとの摺動部、動弁装置、高速回転軸受、ベルト・プーリ装置、歯車装置等。)においては、潤滑油は高いせん断応力を受ける。このような潤滑部位に供給される潤滑油中では、潤滑油に消泡剤として配合されているシリコーン系消泡剤化合物の分子が、高いせん断応力により切断され、分子量の低下を来す。その結果、耐久過程において潤滑油の消泡性能が低下し、満足のいく消泡性能を長期間にわたって維持できないことがあった。
【0008】
本発明の第1の課題は、長期間の貯蔵においても消泡性能の低下を抑制すること、及び、潤滑油に対して高い遠心作用および高いせん断応力が働く潤滑環境下においても、潤滑油の消泡性を長期間にわたって維持することが可能な、潤滑油組成物を提供することである。
本発明の第2の課題は、消泡剤の分離および沈降ならびにせん断による消泡性の低下をより効果的に抑制することが可能な、潤滑油の消泡方法を提供することである。
また、上記潤滑油組成物の調製および上記潤滑油の消泡方法に好ましく用いることが可能な消泡剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記[1]~[24]の態様を包含する。
[1] 潤滑油基油と、
(A)第1の消泡剤と、
(B)シリコーン系消泡剤である、第2の消泡剤と
を含有し、
前記(A)第1の消泡剤は、(A1)第1の重合体、若しくは(A2)第2の重合体、又はそれらの組み合わせであり、
前記(A1)第1の重合体は、
下記一般式(1)で表される重合度5~2000のポリシロキサン構造を含む、1つ以上の第1の重合鎖と、
下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含み、前記第1の重合鎖に結合した、1つ以上の第2の重合鎖と
を有する重合体であり、
前記(A2)第2の重合体は、下記一般式(7)又は(8)で表される化合物から選ばれる1種以上のポリシロキサンマクロモノマーである第1のモノマー成分と、下記一般式(9)で表される1種以上のモノマーである第2のモノマー成分との共重合体である
ことを特徴とする、潤滑油組成物。
【0010】
【化1】
(一般式(1)中、ポリシロキサン繰り返し単位の順序は任意であり;
R
1及びR
2はそれぞれ独立に、フッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり;
R
3及びR
4はそれぞれ独立に、フッ素原子を3個以上含む有機基またはフッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり、R
3及びR
4の少なくとも一方はフッ素原子を3個以上含む有機基であり;
nは0以上の整数であり;
mは1以上の整数であり;
n+mは5~2000である。)
【0011】
【化2】
(一般式(2)中、X
1はエチレン性不飽和基の重合により得られる繰り返し単位であり;Y
1は炭素数1~40の置換または無置換ヒドロカルビル基からなる側鎖であり;Z
1は繰り返し単位X
1と側鎖Y
1とを連結する連結基である。)
【0012】
【化3】
(一般式(7)及び(8)中、ポリシロキサン繰り返し単位の順序は任意であり;
R
5及びR
6はそれぞれ独立に、フッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり;
R
7及びR
8はそれぞれ独立に、フッ素原子を3個以上含む有機基またはフッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり、R
7及びR
8の少なくとも一方はフッ素原子を3個以上含む有機基であり;
Q
5、Q
6、及びQ
7はそれぞれ独立に、エチレン性不飽和基を含む重合性官能基であり;
Z
5は重合性官能基Q
5とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
Z
6は重合性官能基Q
6とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
Z
7は重合性官能基Q
7とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
T
5は非重合性の有機基であり;
gは0以上の整数であり;
hは1以上の整数であり;
g+hは5~2000である。)
【0013】
【化4】
(一般式(9)中、Q
8はエチレン性不飽和基を有する重合性官能基であり;
Y
8は炭素数1~40の置換または無置換ヒドロカルビル基であり;
Z
8はQ
8とY
8とを連結する連結基である。)
[2] 前記(A)第1の消泡剤が、前記(A1)第1の重合体を含み、
前記X
1が、(メタ)アクリロイル基の重合により得られる繰り返し単位である、[1]に記載の潤滑油組成物。
[3] 前記(A)第1の消泡剤が、前記(A1)第1の重合体を含み、
前記(A1)第1の重合体において、前記1つ以上の第2の重合鎖が、前記第1の重合鎖の一方の末端または両方の末端に結合している、[1]又は[2]に記載の潤滑油組成物。
[4] 前記(A)第1の消泡剤が、前記(A1)第1の重合体を含み、
前記第1の重合鎖が、下記一般式(3)~(6)のいずれかで表される、[1]~[3]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【0014】
【化5】
(一般式(3)~(6)中、ポリシロキサン繰り返し単位の順序は任意であり;
R
1、R
2、R
3、R
4、n及びmは上記定義の通りであり;
X
2、X
3、及びX
4はそれぞれ独立に、エチレン性不飽和基の重合により得られる繰り返し単位であり;
T
2は非重合性の有機基であり;
Q
4は重合により繰り返し単位X
4を与える重合性官能基であり;
T
4は重合性官能基Q
4から重合鎖伸長以外の反応により誘導された有機基であり;
Z
2は繰り返し単位X
2とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
Z
3は繰り返し単位X
3とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
Z
4は繰り返し単位X
4、重合性官能基Q
4、又は有機基T
4とポリシロキサン部位とを連結する連結基である。)
[5] 前記X
2、X
3、及びX
4が、(メタ)アクリロイル基の重合により得られる繰り返し単位である、[4]に記載の潤滑油組成物。
[6] 前記(A)第1の消泡剤が、前記(A1)第1の重合体を含み、
前記(A1)第1の重合体において、前記1つ以上の第2の重合鎖が、前記第1の重合鎖の一方の末端のみに結合している、[1]~[5]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[7] 前記(A)第1の消泡剤が、前記(A1)第1の重合体を含み、
前記(A1)第1の重合体において、前記1つ以上の第2の重合鎖が、前記第1の重合鎖の少なくとも1つの両方の末端に結合している、[1]~[5]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[8] 前記(A)第1の消泡剤が、前記(A1)第1の重合体を含み、
前記(A1)第1の重合体において、全ポリシロキサン繰り返し単位の総数に対する、フッ素原子を含むポリシロキサン繰り返し単位の総数の比が0.01~1である、[1]~[7]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[9] 前記(A)第1の消泡剤が、前記(A1)第1の重合体を含み、
前記(A1)第1の重合体中の前記第1の重合鎖の含有量が、前記(A1)第1の重合体の全量を基準として0.5~80質量%である、[1]~[8]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[10] 前記(A)第1の消泡剤が、前記(A1)第1の重合体を含み、
前記(A1)第1の重合体の重量平均分子量が10,000~1,000,000である、[1]~[9]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[11] 前記(A)第1の消泡剤が、前記(A1)第1の重合体を含み、
前記第1の重合鎖の重量平均分子量が500~500,000である、[1]~[10]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[12] 前記(A)第1の消泡剤が、前記(A2)第2の重合体を含み、
前記第1のモノマー成分において、全ポリシロキサン繰り返し単位の総数に対する、フッ素原子を含むポリシロキサン繰り返し単位の総数の比が0.01~1である、[1]~[11]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[13] 前記(A)第1の消泡剤が、前記(A2)第2の重合体を含み、
前記(A2)第2の重合体中の、前記第1のモノマー成分に由来する繰り返し単位の含有量が、前記(A2)第2の重合体の全量を基準として0.5~80質量%である、[1]~[12]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[14] 前記(A)第1の消泡剤が、前記(A2)第2の重合体を含み、
前記Q
5、Q
6、及びQ
7が、(メタ)アクリロイル基を含む、[1]~[13]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[15] 前記(A)第1の消泡剤が、前記(A2)第2の重合体を含み、
前記(A2)第2の重合体の重量平均分子量が10,000~1,000,000である、[1]~[14]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[16] 前記(A)第1の消泡剤が、前記(A2)第2の重合体を含み、
前記第1のモノマー成分の重量平均分子量が500~500,000である、[1]~[15]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[17] 前記(B)第2の消泡剤が、フルオロシリコーン系消泡剤である、[1]~[16]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[18] 前記(A)第1の消泡剤のケイ素換算含有量の、前記(B)第2の消泡剤のケイ素換算含有量に対する比(A/B)が、0.01~100である、[1]~[17]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[19] 前記(A)第1の消泡剤および前記(B)第2の消泡剤の合計の含有量が、組成物全量基準でケイ素量として0.2~300質量ppmである、[1]~[18]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[20] 100℃における動粘度が4.5mm
2/s以下である、[1]~[19]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
[21] (i)(A)第1の消泡剤および(B)第2の消泡剤を、合計の濃度がケイ素量換算で100~50,000質量ppmとなるように希釈溶媒中に溶解または微分散させることにより、希釈液を得る工程と、
(ii)前記工程(i)において得られた希釈液を潤滑油に添加する工程と
を含み、
前記(A)第1の消泡剤は、(A1)第1の重合体、若しくは(A2)第2の重合体、又はそれらの組み合わせであり、
前記(A1)第1の重合体は、
下記一般式(1)で表される重合度5~2000のポリシロキサン構造を含む、1つ以上の第1の重合鎖と、
下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含み、前記第1の重合鎖に結合した、1つ以上の第2の重合鎖と
を有する重合体であり、
前記(A2)第2の重合体は、下記一般式(7)又は(8)で表される化合物から選ばれる1種以上のポリシロキサンマクロモノマーである第1のモノマー成分と、下記一般式(9)で表される1種以上のモノマーである第2のモノマー成分との共重合体であり、
前記(B)第2の消泡剤はシリコーン系消泡剤である、潤滑油の消泡方法。
【0015】
【化6】
(一般式(1)中、ポリシロキサン繰り返し単位の順序は任意であり;
R
1及びR
2はそれぞれ独立に、フッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり;
R
3及びR
4はそれぞれ独立に、フッ素原子を3個以上含む有機基またはフッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり、R
3及びR
4の少なくとも一方はフッ素原子を3個以上含む有機基であり;
nは0以上の整数であり;
mは1以上の整数であり;
n+mは5~2000である。)
【0016】
【化7】
(一般式(2)中、X
1はエチレン性不飽和基の重合により得られる繰り返し単位であり;Y
1は炭素数1~40の置換または無置換ヒドロカルビル基からなる側鎖であり;Z
1は繰り返し単位X
1と側鎖Y
1とを連結する連結基である。)
【0017】
【化8】
(一般式(7)及び(8)中、ポリシロキサン繰り返し単位の順序は任意であり;
R
5及びR
6はそれぞれ独立に、フッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり;
R
7及びR
8はそれぞれ独立に、フッ素原子を3個以上含む有機基またはフッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり、R
7及びR
8の少なくとも一方はフッ素原子を3個以上含む有機基であり;
Q
5、Q
6、及びQ
7はそれぞれ独立に、エチレン性不飽和基を含む重合性官能基であり;
Z
5は重合性官能基Q
5とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
Z
6は重合性官能基Q
6とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
Z
7は重合性官能基Q
7とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
T
5は非重合性の有機基であり;
gは0以上の整数であり;
hは1以上の整数であり;
g+hは5~2000である。)
【0018】
【化9】
(一般式(9)中、Q
8はエチレン性不飽和基を有する重合性官能基であり;
Y
8は炭素数1~40の置換または無置換ヒドロカルビル基であり;
Z
8はQ
8とY
8とを連結する連結基である。)
[22] 前記希釈溶媒が、炭素数6以上の炭化水素溶媒、鉱油、合成油、エステル油、炭素数4以上の脂肪族エーテル、炭素数2以上の脂肪族モノカルボン酸と炭素数1~5の一価アルコールとのエステル、炭素数3以上の脂肪族ケトン、炭素数4以上の脂肪族アルコール、及びハロゲン化炭化水素から選ばれる1種以上を含む、[21]に記載の潤滑油の消泡方法。
[23] (A)第1の消泡剤と、
(B)シリコーン系消泡剤である、第2の消泡剤と
を含有し、
前記(A)第1の消泡剤は、(A1)第1の重合体、若しくは(A2)第2の重合体、又はそれらの組み合わせであり、
前記(A1)第1の重合体は、
下記一般式(1)で表される重合度5~2000のポリシロキサン構造を含む、1つ以上の第1の重合鎖と、
下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含み、前記第1の重合鎖に結合した、1つ以上の第2の重合鎖と
を有する重合体であり、
前記(A2)第2の重合体は、下記一般式(7)又は(8)で表される化合物から選ばれる1種以上のポリシロキサンマクロモノマーである第1のモノマー成分と、下記一般式(9)で表される1種以上のモノマーである第2のモノマー成分との共重合体であることを特徴とする、消泡剤組成物。
【0019】
【化10】
(一般式(1)中、ポリシロキサン繰り返し単位の順序は任意であり;
R
1及びR
2はそれぞれ独立に、フッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり;
R
3及びR
4はそれぞれ独立に、フッ素原子を3個以上含む有機基またはフッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり、R
3及びR
4の少なくとも一方はフッ素原子を3個以上含む有機基であり;
nは0以上の整数であり;
mは1以上の整数であり;
n+mは5~2000である。)
【0020】
【化11】
(一般式(2)中、X
1はエチレン性不飽和基の重合により得られる繰り返し単位であり;Y
1は炭素数1~40の置換または無置換ヒドロカルビル基からなる側鎖であり;Z
1は繰り返し単位X
1と側鎖Y
1とを連結する連結基である。)
【0021】
【化12】
(一般式(7)及び(8)中、ポリシロキサン繰り返し単位の順序は任意であり;
R
5及びR
6はそれぞれ独立に、フッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり;
R
7及びR
8はそれぞれ独立に、フッ素原子を3個以上含む有機基またはフッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり、R
7及びR
8の少なくとも一方はフッ素原子を3個以上含む有機基であり;
Q
5、Q
6、及びQ
7はそれぞれ独立に、エチレン性不飽和基を含む重合性官能基であり;
Z
5は重合性官能基Q
5とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
Z
6は重合性官能基Q
6とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
Z
7は重合性官能基Q
7とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
T
5は非重合性の有機基であり;
gは0以上の整数であり;
hは1以上の整数であり;
g+hは5~2000である。)
【0022】
【化13】
(一般式(9)中、Q
8はエチレン性不飽和基を有する重合性官能基であり;
Y
8は炭素数1~40の置換または無置換ヒドロカルビル基であり;
Z
8はQ
8とY
8とを連結する連結基である。)
[24] 炭素数6以上の炭化水素溶媒、鉱油、合成油、エステル油、炭素数4以上の脂肪族エーテル、炭素数2以上の脂肪族モノカルボン酸と炭素数1~5の一価アルコールとのエステル、炭素数3以上の脂肪族ケトン、炭素数4以上の脂肪族アルコール、及びハロゲン化炭化水素から選ばれる1種以上を含む希釈溶媒をさらに含有する、[23]に記載の消泡剤組成物。
【発明の効果】
【0023】
本発明の潤滑油組成物は、長期間の貯蔵においても消泡性能の低下を抑制すること、及び、潤滑油に対して高い遠心作用および高いせん断応力が働く潤滑環境下においても、潤滑油の消泡性を長期間にわたって維持することが可能である。
本発明の潤滑油の消泡方法によれば、消泡剤の分離および沈降ならびにせん断による消泡性の低下をより効果的に抑制することが可能である。
本発明の消泡剤組成物は、本発明の潤滑油組成物の調製、および、本発明の潤滑油の消泡方法において、好ましく用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】消泡性の評価に用いたホモジナイザー試験機の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について詳述する。本明細書においては、特に断らない限り、数値A及びBについて「A~B」という表記は「A以上B以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Bのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Aにも適用されるものとする。また「又は」及び「若しくは」の語は、特に断りのない限り論理和を意味するものとする。本明細書において、要素E1及びE2について「E1及び/又はE2」という表記は「E1若しくはE2、又はそれらの組み合わせ」を意味するものとし、要素E1、…、EN(Nは3以上の整数)について「E1、…、EN-1、及び/又はEN」という表記は「E1、…、EN-1、若しくはEN、又はそれらの組み合わせ」を意味するものとする。
【0026】
<1.潤滑油組成物>
本発明の潤滑油組成物は、潤滑油基油と、(A)第1の消泡剤と、(B)第2の消泡剤とを含むことを特徴とする。
【0027】
(1.1 潤滑油基油)
本発明の潤滑油組成物における潤滑油基油は、特に限定されるものではなく、通常の潤滑油に使用される鉱油系基油や合成系基油を用いることができる。一の実施形態において、潤滑油基油としては、1種以上の鉱油系基油、もしくは1種以上の合成系基油、またはそれらの混合基油を用いることができる。一の実施形態において、API基油分類のグループII基油(以下において「APIグループII基油」又は単に「グループII基油」ということがある。)、グループIII基油(以下において「APIグループIII基油」又は単に「グループIII基油」ということがある。)、グループIV基油(以下において「APIグループIV基油」又は単に「グループIV基油」ということがある。)、若しくはグループV基油(以下において「APIグループV基油」又は単に「グループV基油」ということがある。)、又はそれらの混合基油を好ましく用いることができる。APIグループII基油は、硫黄分が0.03質量%以下、飽和分が90質量%以上、且つ粘度指数が80以上120未満の鉱油系基油である。APIグループIII基油は、硫黄分が0.03質量%以下、飽和分が90質量%以上、且つ粘度指数が120以上の鉱油系基油である。APIグループIV基油はポリα-オレフィン基油である。APIグループV基油はAPI基油分類グループI~IVのいずれにも該当しない基油であって、好ましくはエステル系基油である。
【0028】
鉱油系基油の例としては、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製等の処理を1つ以上行って精製したもの、あるいはワックス異性化鉱油、フィッシャートロプシュプロセス等により製造されるGTL WAX(ガス・トゥ・リキッド・ワックス)を異性化する手法で製造される潤滑油基油等を挙げることができる。
【0029】
APIグループIV基油としては、例えばエチレン-プロピレン共重合体、ポリブテン、1-オクテンオリゴマー、1-デセンオリゴマー、およびこれらの水素化物等を挙げることができる。
【0030】
APIグループV基油としては、例えばモノエステル(例えばブチルステアレート、オクチルラウレート、2-エチルヘキシルオレート等);ジエステル(例えばジトリデシルグルタレート、ビス(2-エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ビス(2-エチルヘキシル)セバケート等);ポリエステル(例えばトリメリット酸エステル等);ポリオールエステル(例えばトリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール-2-エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等)等を挙げることができる。
【0031】
潤滑油基油(全基油)の100℃における動粘度は、省燃費性の観点から好ましくは50mm2/s以下、より好ましくは15mm2/s以下、さらに好ましくは10mm2/s以下であり、また各種装置の摺動部における耐摩耗性の観点から好ましくは1.0mm2/s以上、より好ましくは2.0mm2/s以上であり、一の実施形態において1.0~50mm2/s、又は2.0~15mm2/s、又は2.0~10mm2/sであり得る。なお本明細書において、「100℃における動粘度」とは、ASTM D-445に規定される100℃での動粘度を意味する。
【0032】
潤滑油基油(全基油)の流動点は特に制限されるものではないが、-10℃以下であることが好ましく、-15℃以下であることがより好ましい。
【0033】
潤滑油基油(全基油)の粘度指数は、高温時の粘度低下を防止する観点から、105以上であることが好ましい。なお、本明細書において粘度指数とは、JIS K 2283-1993に準拠して測定された粘度指数を意味する。
【0034】
潤滑油組成物中の潤滑油基油(全基油)の含有量は、組成物全量基準で好ましくは70質量%以上、より好ましくは75質量%以上であり、一の実施形態において80質量%以上であり得る。組成物中の全基油の含有量の上限値は特に制限されるものではない。一の実施形態において、潤滑油組成物は、潤滑油基油(全基油)と、消泡作用を奏する程度の少量の消泡剤とからなる組成物であってもよく、該組成物中の全基油の含有量は例えば99質量%超であってもよい。他の一の実施形態において、組成物中の全基油の含有量は例えば95質量%以下であり得る。
【0035】
(1.2 (A)第1の消泡剤)
(A)第1の消泡剤としては、(A1)第1の重合体、若しくは(A2)第2の重合体、又はそれらの組み合わせを用いることができる。
【0036】
(1.2.1 (A1)第1の重合体)
(A1)第1の重合体(以下において「重合体(A1)」ということがある。)は、下記一般式(1)で表される重合度5~2000のポリシロキサン構造を含む、1つ以上の第1の重合鎖と、下記一般式(2)で表される繰り返し単位を含み、第1の重合鎖に結合した、1つ以上の第2の重合鎖と、を有する重合体である。
【0037】
【化14】
(一般式(1)中、ポリシロキサン繰り返し単位の順序は任意であり;
R
1及びR
2はそれぞれ独立に、フッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり;
R
3及びR
4はそれぞれ独立に、フッ素原子を3個以上含む有機基またはフッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり、R
3及びR
4の少なくとも一方はフッ素原子を3個以上含む有機基であり;
nは0以上の整数であり;
mは1以上の整数であり;
n+mは5~2000である。)
【0038】
【化15】
(一般式(2)中、X
1はエチレン性不飽和基の重合により得られる繰り返し単位であり;Y
1は炭素数1~40の置換または無置換ヒドロカルビル基からなる側鎖であり;Z
1は繰り返し単位X
1と側鎖Y
1とを連結する連結基である。)
【0039】
(1.2.1.1 第2の重合鎖)
説明の便宜のため、第1の重合鎖について説明する前に、第2の重合鎖について説明する。第2の重合鎖において、X1は2種以上の繰り返し単位の組み合わせであってもよく、Y1は2種以上の側鎖の組み合わせであってもよく、Z1は2種以上の連結基の組み合わせであってもよい。
【0040】
連結基Z1は、繰り返し単位(主鎖骨格)X1と側鎖Y1とを連結できる限りにおいて特に限定されるものではない。Z1としては例えば、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合、チオノエステル結合、チオアミド結合、又はイミド結合を有する連結基を好ましく採用できる。連結基Z1は、上記化学結合に加えて、直鎖または分岐鎖のアルキル基またはアルキレン基、脂環式基、及び芳香族基等から選ばれる1以上の基を含んでもよい。連結基Z1の炭素数は特に制限されるものではないが、0以上であって、好ましくは12以下、より好ましくは6以下である。
【0041】
Y1は炭素数1~40の置換または無置換ヒドロカルビル基からなる側鎖である。炭素数1~40の無置換ヒドロカルビル基の例としては、アルキル基(環構造を有していてもよい。)、アルケニル基(二重結合の位置は任意であり、環構造を有していてもよい。)、アリール基(アルキル基又はアルケニル基を有していてもよい。)、アリールアルキル基、アリールアルケニル基等を挙げることができる。
【0042】
アルキル基としては、直鎖又は分枝の各種アルキル基が挙げられる。アルキル基が有し得る環構造の例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5以上7以下のシクロアルキル基を挙げることができる。なお環構造に鎖式炭化水素基が置換する場合、環構造上の置換位置は任意である。
【0043】
アルケニル基としては、直鎖又は分枝の各種アルケニル基が挙げられる。アルケニル基が有し得る環構造の例としては、上記シクロアルキル基のほか、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基等の炭素数5以上7以下のシクロアルケニル基を挙げることができる。なお環構造に鎖式炭化水素基が置換する場合、環構造上の置換位置は任意である。
【0044】
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。またアルキルアリール基、アルケニルアリール基、アリールアルキル基、及びアリールアルケニル基において、芳香環上の置換位置は任意である。
【0045】
無置換ヒドロカルビル基である形態のY1は脂肪族ヒドロカルビル基であることが好ましく、鎖式脂肪族ヒドロカルビル基であることがより好ましく、アルキル基であることがさらに好ましい。
【0046】
Y1は無置換ヒドロカルビル基であってもよく、置換ヒドロカルビル基であってもよく、無置換ヒドロカルビル基と置換ヒドロカルビル基との組み合わせであってもよい。置換ヒドロカルビル基であるY1の一の好ましい形態としては、無置換ヒドロカルビル基(好ましくは脂肪族ヒドロカルビル基、より好ましくは鎖式脂肪族ヒドロカルビル基、特に好ましくはアルキル基。以下本段落において同じ。)の1つ以上の水素原子を、ヘテロ原子(好ましくは酸素、窒素、硫黄、若しくはそれらの組み合わせ)を有する基で置換すること;無置換ヒドロカルビル基の1つ以上のメチレン基(-CH2-基)をエーテル結合(-O-基)、第2級アミノ基(-NH-基)、若しくはチオエーテル結合(-S-基)で置換すること;無置換ヒドロカルビル基の1つ以上のメチン基(>CH-基)を第3級アミノ基(>N-基)で置換すること;又はそれらの置換の組み合わせ、によって得られる基を挙げることができる。かかる形態のY1に含まれるヘテロ原子の数は、好ましくは1~3個である。置換ヒドロカルビル基であるY1の他の好ましい形態としては、ポリエーテル基、フルオロアルキル基、フルオロアルキル(ポリ)エーテル基等を挙げることができる。
【0047】
ヒドロカルビル基の水素原子を置換する、ヘテロ原子を有する基の好ましい例としては、ヒドロキシ基;メルカプト基;第1級アミノ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、アニリノ基、トルイジノ基、キシリジノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等の、窒素原子を1~2個及び酸素原子を0~2個有するアミン残基;モルホリノ基、ピロリル基、ピロリノ基、ピリジル基、メチルピリジル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペリジノ基、キノリル基、ピロリドニル基、ピロリドノ基、イミダゾリノ基、及びピラジニル基等の、窒素原子を1~2個及び酸素原子を0~2個有する複素環残基;エポキシ基、オキセタニル基、テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基等の、炭素数2~5の環状エーテル残基、等を挙げることができる。
【0048】
ポリエーテル基の好ましい例としては、下記一般式(12)で表される基を挙げることができる。
【0049】
【化16】
(一般式(12)中、R
13は炭素数2~4、好ましくは2~3のアルキレン基を表し、複数のR
13は同一でも異なっていてもよく;aは2以上の整数であって一般式(12)中の炭素数が40以下となる整数を表し;R
14は水素または炭素数1~5のアルキル基を表す。)
【0050】
フルオロアルキル基の好ましい例としては、炭素数1~4のパーフルオロアルキル基;下記一般式(13)で表される基;下記一般式(14)で表される基;1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピル基;2,2-ビス(トリフルオロメチル)プロピル基;パーフルオロシクロヘキシルメチル基;ペンタフルオロベンジル基;2,3,5,6-テトラフルオロフェニル基;2,2,2-トリフルオロ-1-フェニル-1-(トリフルオロメチル)エチル基;3-(トリフルオロメチル)ベンジル基、等を挙げることができる。
【0051】
【化17】
(式(13)中、Eはフッ素原子または水素原子であり;pは1~6の整数であり;qは1~15の整数であり;qが1のとき、Eはフッ素原子である。)
【0052】
一般式(13)中、qは消泡性を高める観点から好ましくは2以上であり、重合体の固化による消泡性の低下を避けることを容易にする観点から好ましくは8以下であり、一の実施形態において2~8であり得る。
【0053】
【化18】
(式(14)中、rは2~9の整数である。)
【0054】
一般式(14)中、rは消泡性を高める観点から好ましくは4以上であり、重合体の固化による消泡性の低下を避けることを容易にする観点から好ましくは8以下であり、一の実施形態において4~8であり得る。
【0055】
炭素数1~4のパーフルオロアルキル基の例としては、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロイソプロピル基、パーフルオロ-tert-ブチル基、等を挙げることができる。
【0056】
上記一般式(13)で表される基の例としては、2,2,2-トリフルオロエチル基;3,3,3-トリフルオロプロピル基;1H,1H,3H-ヘキサフルオロブチル基;2-(パーフルオロブチル)エチル基;3-(パーフルオロブチル)プロピル基;6-(パーフルオロブチル)ヘキシル基;2-(パーフルオロ-5-メチルヘキシル)エチル基;2-(パーフルオロ-7-メチルオクチル)エチル基;4,4,5,5,5-ペンタフルオロペンチル基;2-(パーフルオロヘキシル)エチル基;2-(パーフルオロオクチル)エチル基;3-(パーフルオロヘキシル)プロピル基;3-(パーフルオロオクチル)プロピル基;1H,1H,3H-テトラフルオロプロピル基;1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル基;1H,1H,7H-ドデカフルオロヘプチル基;1H,1H,9H-ヘキサデカフルオロノニル基;6-(パーフルオロ-1-メチルエチル)ヘキシル基;1H,1H-(3,5,5-トリス(トリフルオロメチル))オクタフルオロヘキシル基;1H,1H,11H-エイコサフルオロウンデシル基;2-(パーフルオロ-3-メチルブチル)エチル基;1H,1H-パーフルオロプロピル基;1H,1H-パーフルオロブチル基;1H,1H-パーフルオロペンチル基;1H,1H-パーフルオロヘキシル基;1H,1H-パーフルオロヘプチル基;1H,1H-パーフルオロオクチル基;1H,1H-パーフルオロノニル基;1H,1H-パーフルオロデシル基;1H,1H-パーフルオロウンデシル基;1H,1H-パーフルオロドデシル基;1H,1H-パーフルオロテトラデシル基;1H,1H-パーフルオロヘキサデシル基;1H,1H-パーフルオロ-3,7-ジメチルオクチル基;2-(パーフルオロデシル)エチル基;2-(パーフルオロドデシル)エチル基;2-(パーフルオロ-9-メチルデシル)エチル基、等を挙げることができる。
【0057】
上記一般式(14)で表される基の例としては、3-(パーフルオロブチル)-2-ヒドロキシプロピル基;3-(パーフルオロ-3-メチルブチル)-2-ヒドロキシプロピル基;3-(パーフルオロオクチル)-2-ヒドロキシプロピル基;3-(パーフルオロ-5-メチルヘキシル)-2-ヒドロキシプロピル基;3-(パーフルオロ-7-メチルオクチル)-2-ヒドロキシプロピル基、等を挙げることができる。
【0058】
またフルオロアルキル(ポリ)エーテル基の好ましい例としては、下記一般式(15)で表される基;2-[(パーフルオロプロパノイル)オキシ]エチル基;ならびに、パーフルオロポリエチレンオキサイド基、パーフルオロポリプロピレンオキサイド基、又はパーフルオロポリオキセタン基を有するフルオロポリエーテル基、及びこれらの共重合フルオロポリエーテル基、等を挙げることができる。
【0059】
【化19】
(式(15)中、Gはフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり;sは0~2の整数であり;tは1~4の整数である。)
【0060】
上記一般式(15)で表される基の例としては、1H,1H-パーフルオロ-3,6-ジオキサデシル基;1H,1H-パーフルオロ-3,6,9-トリオキサデシル基;1H,1H-パーフルオロ-3,6,9-トリオキサトリデシル基;2-パーフルオロプロポキシ-2,3,3,3-テトラフルオロプロピル基;1H,1H-パーフルオロ-2,5-ジメチル-3,6-ジオキサノニル基、等を挙げることができる。
【0061】
フッ素原子を有する置換ヒドロカルビル基としては、上記した中でも、一般式(13)で表される基を特に好ましく採用できる。
【0062】
重合体中のY1の総数に対する、置換ヒドロカルビル基である形態のY1の総数の比(以下において「平均官能基化率」ということがある。)は、消泡剤の沈降をさらに抑制して消泡剤寿命をさらに向上させる観点から、通常0~0.5であり、好ましくは0~0.3、より好ましくは0~0.1であり、また一の実施形態において0であり得る。
【0063】
Y1の炭素数は1~40であり、好ましくは8~36、より好ましくは12~24、さらに好ましくは12~18である。
【0064】
(1.2.1.2 第1の重合鎖)
第1の重合鎖において、ポリシロキサン繰り返し単位の配列順序は任意である。上記一般式(1)において、n及びmがいずれも1以上である場合、ポリシロキサン構造はランダム共重合体であってもよく、交互共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0065】
第1の重合鎖において、ポリシロキサン構造の重合度(n+m)は5~2000であり、好ましくは50~1500、より好ましくは100~1000である。ポリシロキサン構造の重合度が上記下限値以上であることにより、消泡剤の消泡性を高めることが可能になる。またポリシロキサン構造の重合度が上記上限値以下であることにより、消泡剤の沈降をさらに抑制し、消泡剤寿命をさらに向上させることが可能になる。
【0066】
(A1)第1の重合体において、全ポリシロキサン繰り返し単位(-O-SiR1R2-繰り返し単位および-O-SiR3R4-繰り返し単位:上記一般式(1)参照。)の総数に対する、フッ素原子を含むポリシロキサン繰り返し単位(-O-SiR3R4-)の総数の比(以下において単に「ポリシロキサン構造の平均フッ素化率」ということがある。)は、せん断後の消泡性を高める観点から通常0.01~1であり、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上であり、1であってもよいが、消泡剤の沈降をさらに抑制して消泡剤寿命をさらに向上させる観点からは好ましくは0.99以下、より好ましくは0.90以下、さらに好ましくは0.75以下であり、一の実施形態において0.01~0.99、又は0.05~0.90、又は0.10~0.75であり得る。
【0067】
一般式(1)において、フッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基としては、置換または無置換アルキル基、置換または無置換フェニル基、及びポリエーテル基等を挙げることができ、置換アルキル基および置換フェニル基における置換基としてはヒドロキシ基、アミノ基、エーテル結合、エステル結合等を挙げることができる。該有機基の炭素数は1~18であり、一の実施形態において1~12であり、他の一の実施形態において1~6である。該有機基の好ましい例としてはメチル基、フェニル基等を挙げることができ、これらの中でもメチル基を特に好ましく採用できる。
【0068】
一般式(1)において、フッ素原子を3個以上含む有機基(以下において「フッ素化有機基」ということがある。)としては、フルオロアルキル基またはフルオロアルキル(ポリ)エーテル基を好ましく採用できる。
【0069】
フッ素化有機基のフッ素原子数は3以上であり、好ましくは5以上であり、また重合体の固化による消泡性の低下を避けることを容易にする観点から好ましくは17以下である。フッ素原子数が上記下限値以上であることにより、消泡性が向上する。
【0070】
フルオロアルキル基としては、上記一般式(2)におけるY1について上記説明したフルオロアルキル基と同様の基を採用でき、その好ましい態様についても上記同様である。またフルオロアルキル(ポリ)エーテル基としては、上記一般式(2)におけるY1について上記説明したフルオロアルキル(ポリ)エーテル基と同様の基を採用でき、その好ましい態様についても上記同様である。
【0071】
フッ素化有機基としては、上記した中でも、一般式(13)で表される基を特に好ましく採用できる。
【0072】
一の実施形態において、第2の重合鎖は、第1の重合鎖の一方の末端または両方の末端に結合し得る。一の実施形態において、第1の重合鎖は、下記一般式(3)~(6)のいずれかで表される。
【0073】
【化20】
(一般式(3)~(6)中、ポリシロキサン繰り返し単位の順序は任意であり;
R
1、R
2、R
3、R
4、n及びmは上記定義の通りであり;
X
2、X
3、及びX
4はそれぞれ独立に、エチレン性不飽和基の重合により得られる繰り返し単位であり;
T
2は非重合性の有機基であり;
Q
4は重合により繰り返し単位X
4を与える重合性官能基であり;
T
4は重合性官能基Q
4から重合鎖伸長以外の反応により誘導された有機基であり;
Z
2は繰り返し単位X
2とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
Z
3は繰り返し単位X
3とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
Z
4は繰り返し単位X
4、重合性官能基Q
4、又は有機基T
4とポリシロキサン部位とを連結する連結基である。)
【0074】
一般式(3)~(6)において、X2、X3、及びX4は、それぞれ独立に、2種以上の繰り返し単位の組み合わせであってもよい。Q4はX4に対応して、2種以上の重合性官能基の組み合わせであってもよい。T4は2種以上の有機基の組み合わせであってもよい。Z2、Z3、及びZ4は、それぞれ独立に、2種以上の連結基の組み合わせであってもよい。
【0075】
上記一般式(3)~(6)において、繰り返し単位X2、X3、及びX4は、それぞれ独立に、第2の重合鎖(上記一般式(2))の繰り返し単位X1と結合していてもよいし、他の第1の重合鎖の繰り返し単位(X2、X3、又はX4)と結合していてもよい。すなわち、上記一般式(3)~(6)において、第1の重合鎖はX2、X3、又はX4において、第2の重合鎖と結合し得る。
【0076】
上記一般式(3)~(6)から理解されるように、1つ以上の第2の重合鎖が、第1の重合鎖の一方の末端または両方の末端に結合し得る。一の実施形態において、1つ以上の第2の重合鎖が、第1の重合鎖の一方の末端のみに結合し得る(一般式(3)(5)(6))。他の一の実施形態において、1つ以上の第2の重合鎖が、第1の重合鎖の少なくとも1つの両方の末端に結合し得る(一般式(4))。
【0077】
第1の重合鎖の、第2の重合鎖と結合していない鎖末端においては、例えば(a)上記一般式(3)に示すように、ポリシロキサン鎖の末端が非重合性の有機基T2と結合していてもよく、また例えば(b)上記一般式(5)に示すように、ポリシロキサン鎖の末端が、連結基Z4を介して重合性官能基Q4と結合していてもよく、また例えば(c)上記一般式(6)に示すように、ポリシロキサン鎖の末端が、重合性官能基Q4から重合鎖伸長以外の反応により誘導された有機基T4と、連結基Z4を介して結合していてもよい。
【0078】
上記一般式(3)において、T2は、例えばR1~R4のいずれかと同一の基であってもよく、また例えば炭素数1~40のヒドロカルビル基であってもよく、1以上の官能基(例えばヒドロキシ基、アミノ基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合等。)を有する炭素数1~40の1価の有機基であってもよく、水素原子であってもよい。
【0079】
上記一般式(3)~(6)において、X2~X4はそれぞれ独立に、エチレン性不飽和基の重合により得られる繰り返し単位である。後述するように、一の実施形態において、X2~X4は、それぞれ独立に、(メタ)アクリロイル基の重合により得られる繰り返し単位であり得る。
【0080】
上記一般式(5)において、Q4は、重合により繰り返し単位X4を与える重合性官能基、すなわち、重合可能なエチレン性不飽和基を有する官能基である。
【0081】
上記一般式(3)~(6)において、連結基Z2は、ポリシロキサン構造と繰り返し単位X2とを連結できる限りにおいて特に限定されるものではない。連結基Z3は、ポリシロキサン構造と繰り返し単位X3とを連結できる限りにおいて特に限定されるものではない。また連結基Z4は、ポリシロキサン構造と、繰り返し単位X4(又は重合性官能基Q4又は有機基T4)とを連結できる限りにおいて特に限定されるものではない。また連結基Z2、Z3、及びZ4は同一であってもよく、相互に異なっていてもよい。連結基Z2~Z4としては例えば、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合、チオノエステル結合、チオアミド結合、又はイミド結合を有する連結基を好ましく採用できる。連結基Z2~Z4は、上記化学結合に加えて、直鎖または分岐鎖のアルキル基またはアルキレン基、飽和または芳香族ジヒドロカルビルシリレン基、脂環式基、及び芳香族基等から選ばれる1以上の基を含んでもよい。一の実施形態において、連結基Z2~Z4は、ポリシロキサン構造に結合した鎖式飽和もしくは脂環式飽和または芳香族ジヒドロカルビルシリレン基と、該シリレン基に結合した直鎖又は分岐鎖アルキレン基と、該アルキレン基と繰り返し単位X2~X4又は重合性官能基Q4又は有機基T4とを連結する結合(例えばエステル結合、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合、チオノエステル結合、チオアミド結合、又はイミド結合、好ましくはエステル結合、アミド結合、又はチオエステル結合)とを有し得る。他の一の実施形態において、連結基Z2~Z4は、ポリシロキサン構造に結合した直鎖又は分岐鎖アルキレン基と、該アルキレン基と繰り返し単位X2~X4又は重合性官能基Q4又は有機基T4とを連結する結合(例えばエステル結合、アミド結合、エーテル結合、チオエーテル結合、チオエステル結合、チオノエステル結合、チオアミド結合、又はイミド結合、好ましくはエステル結合、アミド結合、又はチオエステル結合)とを有し得る。連結基Z2~Z4の炭素数は特に制限されるものではないが、0以上であって、好ましくは1~30、より好ましくは1~24である。
【0082】
上記一般式(6)において、T4は、重合性官能基Q4から重合鎖伸長以外の反応により誘導された有機基である。重合鎖伸長以外の反応としては、エチレン性不飽和基の重合反応中に生じ得る重合鎖伸長以外の反応が想定される。そのような反応の例としては、他の成長ラジカル以外のラジカル種(例えば、重合反応に用いられる重合開始剤(例えばアゾ系重合開始剤や過酸化物系重合開始剤等。)から生じた一次ラジカル等。)がQ4の重合性エチレン性不飽和基に付加する反応により生じた成長ラジカルが、重合鎖の伸長を経ることなく(例えば不均化停止や他の一次ラジカルとの再結合等により)失活する反応;他のラジカル種とQ4の重合性エチレン性不飽和基との間での連鎖移動反応により(当該他の成長ラジカルの失活と同時に)生じた成長ラジカルが、重合鎖の伸長を経ることなく失活する反応;重合溶媒への連鎖移動反応等を挙げることができる。
【0083】
重合体(A1)は、1つ以上の第1の重合鎖と、第1の重合鎖に結合した1つ以上の第2の重合鎖とを有する。重合体(A1)中の第1の重合鎖の含有量は、重合体(A1)の全量を基準(100質量%)として、消泡性をさらに高める観点から好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、特に好ましくは4質量%以上であり、また消泡剤の沈降をさらに抑制して消泡剤寿命をさらに向上させる観点から好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下であり、一の実施形態において0.5~80質量%、又は1~75質量%、又は2~75質量%、又は4~70質量%であり得る。
【0084】
重合体(A1)中に占める上記一般式(2)で表される繰り返し単位の割合は、重合体(A1)の全量を基準(100質量%)として、消泡剤の沈降をさらに抑制して消泡剤寿命をさらに向上させる観点から好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、また消泡性をさらに高める観点から好ましくは99.5質量%以下、より好ましくは99質量%以下、さらに好ましくは98質量%以下、特に好ましくは96質量%以下であり、一の実施形態において20~99.5質量%、又は25~99質量%、又は25~98質量%、又は30~96質量%であり得る。
【0085】
重合体(A1)の重量平均分子量は、消泡性をさらに高める観点から好ましくは10,000以上、より好ましくは12,000以上、さらに好ましくは14,000以上、特に好ましくは15,000以上、一の実施形態において80,000以上であり、また消泡剤の沈降をさらに抑制して消泡剤寿命をさらに向上させる観点から好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、さらに好ましくは400,000以下、特に好ましくは300,000以下であり、一の実施形態において10,000~1,000,000、又は12,000~500,000、又は14,000~400,000、又は15,000~300,000、又は80,000~300,000であり得る。本明細書において重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレンを標準物質として測定される、ポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。GPCの測定条件は次の通りである。
[GPC測定条件]
カラム:東ソー社製TSKgel Super MultiPore HZ-M(内径4.6mm×15cm)を3本直列に接続
装置:東ソー社製HLC-8220
移動相:テトラヒドロフラン
検出器:示差屈折率計(RI)
測定温度:40℃
流速:0.35mL/分
試料濃度:1質量%
試料注入量:5μL
標準物質:ポリスチレン
【0086】
第1の重合鎖の重量平均分子量は、消泡性を高める観点から好ましくは500以上、より好ましくは5,000以上、さらに好ましくは10,000以上であり、また消泡剤の沈降をさらに抑制して消泡剤寿命をさらに向上させる観点から好ましくは500,000以下、より好ましくは250,000以下、さらに好ましくは150,000以下、特に好ましくは100,000以下であり、一の実施形態において500~500,000、又は5,000~250,000、又は10,000~150,000、又は10,000~100,000であり得る。
【0087】
(1.2.2 重合体(A1)の製造(1):(A2)第2の重合体)
一の実施形態において、重合体(A1)は、下記一般式(7)又は(8)で表される化合物から選ばれる1種以上のポリシロキサンマクロモノマーである第1のモノマー成分と、下記一般式(9)で表される1種以上のモノマーである第2のモノマー成分との共重合体として得ることができる。本明細書において、当該共重合体を特に「(A2)第2の重合体」又は「重合体(A2)」という。
【0088】
【化21】
(一般式(7)及び(8)中、ポリシロキサン繰り返し単位の順序は任意であり;
R
5及びR
6はそれぞれ独立に、フッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり;
R
7及びR
8はそれぞれ独立に、フッ素原子を3個以上含む有機基またはフッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり、R
7及びR
8の少なくとも一方はフッ素原子を3個以上含む有機基であり;
Q
5、Q
6、及びQ
7はそれぞれ独立に、エチレン性不飽和基を含む重合性官能基であり;
Z
5は重合性官能基Q
5とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
Z
6は重合性官能基Q
6とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
Z
7は重合性官能基Q
7とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
T
5は非重合性の有機基であり;
gは0以上の整数であり;
hは1以上の整数であり;
g+hは5~2000である。)
【0089】
【化22】
(一般式(9)中、Q
8はエチレン性不飽和基を有する重合性官能基であり;
Y
8は炭素数1~40の置換または無置換ヒドロカルビル基であり;
Z
8はQ
8とY
8とを連結する連結基である。)
【0090】
共重合の結果、第1のモノマー成分は1分子につき1つの第1の重合鎖を与え、第2のモノマー成分は複数のモノマー分子(上記一般式(9))が重合して第2の重合鎖を与える。上記一般式(7)で表される化合物は、上記一般式(3)で表される形態の第1の重合鎖を与え、上記一般式(8)で表される化合物は、上記一般式(4)~(6)のいずれかで表される形態の第1の重合鎖を与える。第1のモノマー成分について、上記一般式(7)で表される化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。また上記一般式(8)で表される化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。また第1のモノマー成分としては、上記一般式(7)で表される化合物のみを用いてもよく、上記一般式(8)で表される化合物のみを用いてもよく、上記一般式(7)で表される化合物と上記一般式(8)で表される化合物とを組み合わせて用いてもよい。第2のモノマー成分について、上記一般式(9)で表されるモノマーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0091】
上記一般式(7)~(9)において、Q5~Q8は、それぞれ独立に、2種以上の重合性官能基の組み合わせであってもよい。上記一般式(7)~(9)において、Z5~Z8は、それぞれ独立に、2種以上の連結基の組み合わせであってもよい。T5は2種以上の有機基の組み合わせであってもよい。Y8は2種以上の置換または無置換ヒドロカルビル基の組み合わせであってもよい。
【0092】
上記一般式(7)において、T5としては、一般式(3)におけるT2について上記説明した基と同様の基を採用でき、その好ましい態様についても上記同様である。
実施例(9)において、連結基Z8としては、一般式(2)における連結基Z1として上記説明した基と同様の基を採用でき、その好ましい態様についても上記同様である。
上記一般式(9)において、置換または無置換ヒドロカルビル基Y8としては、上記一般式(2)における側鎖Y1として上記説明した置換または無置換ヒドロカルビル基と同様の基を採用でき、その好ましい態様についても上記同様である。
【0093】
上記一般式(7)及び(8)において、ポリシロキサン繰り返し単位の配列順序は任意である。上記一般式(7)及び(8)において、g及びhがいずれも1以上である場合、ポリシロキサン構造はランダム共重合体であってもよく、交互共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0094】
上記一般式(7)及び(8)において、ポリシロキサン構造の重合度(g+h)の好ましい態様は、第1の重合鎖について上記説明したポリシロキサン構造の重合度(n+m:上記一般式(1)参照。)と同様である。
【0095】
上記第1のモノマー成分において、ポリシロキサン構造の平均フッ素化率、すなわち、全ポリシロキサン繰り返し単位(-O-SiR5R6-繰り返し単位および-O-SiR7R8-繰り返し単位)の総数に対する、フッ素原子を含むポリシロキサン繰り返し単位(-O-SiR7R8-)の総数の比は、上記したように、せん断後の消泡性を高める観点から通常0.01~1であり、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上であり、1であってもよいが、消泡剤の沈降をさらに抑制して消泡剤寿命をさらに向上させる観点から好ましくは0.99以下、より好ましくは0.90以下、さらに好ましくは0.75以下であり、一の実施形態において0.01~0.99、又は0.05~0.90、又は0.10~0.75であり得る。
【0096】
上記一般式(7)及び(8)において、フッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基としては、一般式(1)におけるフッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基として上記説明した基と同様の基を採用でき、その好ましい態様についても上記同様である。
【0097】
上記一般式(7)及び(8)において、フッ素原子を3個以上含む有機基(フッ素化有機基)としては、一般式(1)におけるフッ素原子を3個以上含む有機基(フッ素化有機基)として上記説明した基と同様の基を採用でき、その好ましい態様についても上記同様である。
【0098】
上記第2のモノマー成分において、ヒドロカルビル基Y8の平均官能基化率、すなわち、第2の成分中のY8の総数に対する、置換ヒドロカルビル基である形態のY8の総数の比は、上記したように、消泡剤の沈降をさらに抑制して消泡剤寿命をさらに向上させる観点から通常0~0.5であり、好ましくは0~0.3、より好ましくは0~0.1であり、また一の実施形態において0であり得る。
【0099】
第1のモノマー成分の重量平均分子量は、消泡性をさらに高める観点から好ましくは500以上、より好ましくは5,000以上、さらに好ましくは10,000以上であり、また消泡剤の沈降をさらに抑制して消泡剤寿命をさらに向上させる観点から好ましくは500,000以下、より好ましくは250,000以下、さらに好ましくは150,000以下、特に好ましくは100,000以下であり、一の実施形態において500~500,000、又は5,000~250,000、又は10,000~150,000、又は10,000~100,000であり得る。
【0100】
第1のモノマー成分と第2のモノマー成分とを共重合させるにあたっては、第1のモノマー成分と第2のモノマー成分との合計量100質量部に対して、第1のモノマー成分は消泡性をさらに高める観点から好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上、特に好ましくは4質量部以上であり、また消泡剤の沈降をさらに抑制して消泡剤寿命をさらに向上させる観点から好ましくは80質量部以下、より好ましくは75質量部以下、さらに好ましくは70質量部以下であり、一の実施形態において0.5~80質量部、又は1~75質量部、又は2~75質量部、又は4~70質量部であり得る。これに対応して、重合体(A2)中の第1のモノマー成分に由来する繰り返し単位の含有量は、重合体(A2)の全量を基準として、好ましくは0.5~80質量%、より好ましくは1~75質量%、さらに好ましくは2~75質量%、特に好ましくは4~70質量%であり得る。
【0101】
第1のモノマー成分と第2のモノマー成分とを共重合させるにあたっては、第1のモノマー成分と第2のモノマー成分との合計量100質量部に対して、第2のモノマー成分は消泡剤の沈降をさらに抑制して消泡剤寿命をさらに向上させる観点から好ましくは20質量部以上、より好ましくは25質量部以上、さらに好ましくは30質量部以上であり、また消泡性をさらに高める観点から好ましくは99.5質量部以下、より好ましくは99質量部以下、さらに好ましくは98質量部以下、特に好ましくは96質量部以下であり、一の実施形態において20~99.5質量部、又は25~99質量部、又は25~98質量部、又は30~96質量部であり得る。これに対応して、重合体(A2)中の第2のモノマー成分に由来する繰り返し単位の含有量は、重合体(A2)の全量を基準として、好ましくは20~99.5質量%、より好ましくは25~99質量%、さらに好ましくは25~98質量%、特に好ましくは30~96質量%であり得る。
【0102】
第1のモノマー成分と第2のモノマー成分とを共重合させることにより得られる重合体(A2)の重量平均分子量は、消泡性をさらに高める観点から好ましくは10,000以上、より好ましくは12,000以上、さらに好ましくは14,000以上、特に好ましくは15,000以上、一の実施形態において80,000以上であり、また消泡剤の粘度増大による消泡性の低下を避けることを容易にする観点から好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下、さらに好ましくは400,000以下、特に好ましくは300,000以下であり、一の実施形態において10,000~1,000,000、又は12,000~500,000、又は14,000~400,000、又は15,000~300,000、又は80,000~300,000であり得る。
【0103】
一の実施形態において、(A)第1の消泡剤は、(メタ)アクリル酸誘導体の共重合により得ることができる。かかる実施形態においては、X1~X4は(メタ)アクリロイル基の重合により得られる繰り返し単位である。本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイル及び/又はメタクリロイルを意味する。(メタ)アクリロイル基の重合により得られる繰り返し単位X1~X4は、下記一般式(16)で表される。また、かかる実施形態において、繰り返し単位X1~X4を与える重合性官能基Q4~Q8は、下記一般式(17)で表される。
【0104】
【0105】
【化24】
(一般式(16)及び(17)中、R
15は水素原子またはメチル基を表し;R
15が結合した炭素原子の残る原子価のうち1つにはカルボニル基が結合している。複数のR
15は全て同一でもよく、相互に異なっていてもよい。)
【0106】
かかる実施形態において、上記一般式(2)で表される繰り返し単位は、好ましくは下記一般式(18)で表される。かかる実施形態において、上記一般式(2)における連結基Z1は-CO-A1-基であって、カルボニル基の1つの遊離原子価が繰り返し単位X1に結合している。
【0107】
【化25】
(一般式(18)中、R
15は水素原子またはメチル基であり;Y
1は上記した通りであり;A
1は-O-基、-NH-基、又は-S-基である。)
【0108】
上記一般式(18)で表される繰り返し単位を与える、上記一般式(9)で表されるモノマーは、好ましくは下記一般式(19)で表される。かかる実施形態において、上記一般式(9)における連結基Z8は-CO-A1-基であり、カルボニル基の1つの遊離原子価が重合性官能基Q8に結合している。
【0109】
【化26】
(一般式(19)中、R
15、A
1、及びY
8は上記した通りである。)
【0110】
また、(A)第1の消泡剤が(メタ)アクリル酸誘導体の共重合により得られる重合体である実施形態において、上記一般式(3)~(8)における連結基Z2~Z7としては、例えば下記一般式(20)~(22)中の破線で囲まれた基を好ましく採用できる。なお、連結基の向きを明確にするために、下記一般式(20)~(22)においては上記一般式(17)の重合性官能基および上記一般式(1)のポリシロキサン構造を併せて表示しているが、下記一般式(20)~(22)中の連結基は上記一般式(3)~(8)における連結基Z2~Z7のいずれにも適用可能である。下記一般式(20)~(22)において、連結基は、カルボニル基の1つの遊離原子価において上記一般式(17)の重合性官能基(Q4~Q7)と結合しており、他の1つの遊離原子価においてポリシロキサン構造(上記一般式(1))の末端の酸素原子と結合している。
【0111】
【0112】
【化28】
(一般式(21)中、A
2は-O-基、-NH-基、又は-S-基であり;R
16は直鎖もしくは分岐鎖アルキレン基、シクロアルキレン基、又はアリーレン基であり;R
16の炭素数は通常2~30、好ましくは3以上であり、また好ましくは24以下、より好ましくは18以下である。)
【0113】
【化29】
(一般式(22)中、A
3は-O-基、-NH-基、又は-S-基であり;R
17は直鎖もしくは分岐鎖アルキレン基、シクロアルキレン基、又はアリーレン基であり;R
17の炭素数は通常2~30、好ましくは3~24、より好ましくは3~18であり;R
18及びR
19はそれぞれ独立にフッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基である。)
【0114】
一般式(22)において、R18及びR19について「フッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基」としては、R1及びR2に関して上記説明した基と同様の基を採用でき、その好ましい態様についても上記同様である。
【0115】
上記一般式(3)~(8)における連結基Z2~Z7としては、上記一般式(20)~(22)中の連結基の中でも、上記一般式(21)又は(22)中の連結基をより好ましく採用でき、上記一般式(22)中の連結基を特に好ましく採用できる。
【0116】
(製造)
(A)第1の消泡剤を製造する手法は特に限定されるものではないが、例えば上記説明した第1のモノマー成分と上記説明した第2のモノマー成分とを共重合させることにより好ましく製造できる(上記重合体(A2))。また例えば、あらかじめ主鎖骨格を重合反応により形成した後に、反応生成物を所望の重合度のポリシロキサン構造(上記一般式(1))を有する化合物と反応させることにより結合基を介してポリシロキサン構造を導入して、上記重合体(A1)を得てもよい。重合反応にあたっては公知の手法、例えば塊状重合、溶液重合等を特に制限なく採用でき、これらの中でも溶液重合を好ましく採用できる。重合開始剤としては、アゾ系開始剤や過酸化物系開始剤等の公知の重合開始剤を特に制限なく用いることができる。溶液重合において用いる重合溶媒としては、脂肪族炭化水素(ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等)、エステル(酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、イソプロピルラウレート、イソプロピルパルミテート、イソプロピルミリステート等)、エーテル(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジメチルセロソルブ、ジオキサン等)、ハロゲン化炭化水素(四塩化炭素、クロロホルム、フロロセン(1,1,1-トリフルオロエタン)、パークロロエチレン、エチレンジクロライド、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロフッ化メタン類(塩素原子の置換数およびフッ素原子の置換数はそれぞれ1以上であって合計が4以下である限り任意である。)、クロロフッ化エタン類(塩素原子の置換数およびフッ素原子の置換数はそれぞれ1以上であって合計が6以下である限り任意であり、塩素原子およびフッ素原子の置換位置も任意である。)等)、脂肪族アルコール(ブタノール、2-エチルヘキサノール、ラウリルアルコール等)等の公知の重合溶媒を特に制限なく用いることができる。これらの中でも炭素数6~10の脂肪族もしくは芳香族炭化水素溶媒、または脂肪族ケトン溶媒を特に好ましく用いることができ、一の実施形態においてメチルイソブチルケトンを特に好ましく用いることができる。溶液重合におけるモノマー濃度、開始剤濃度、反応温度および反応時間を調整することにより、所望の重量平均分子量を有する重合体を得ることが可能である。
【0117】
(1.2.3 重合体(A1)の製造(2))
他の一の実施形態において、重合体(A1)は、(a)重合溶媒(以下において単に「(a)成分」ということがある。)中、(b)下記一般式(10)又は(11)で表される化合物から選ばれる1種以上のポリシロキサンマクロモノマーを含む一種以上の消泡剤モノマー(以下において「(b)消泡剤モノマー」又は単に「(b)成分」ということがある。)を、(c)重合溶媒に可溶なポリマー(以下において「(c)共存ポリマー」又は単に「(c)成分」ということがある。)の共存下で重合することにより得ることができる。
【0118】
【化30】
(一般式(10)及び(11)中、ポリシロキサン繰り返し単位の順序は任意であり;
R
9及びR
10はそれぞれ独立に、フッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり;
R
11及びR
12はそれぞれ独立に、フッ素原子を3個以上含む有機基またはフッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり、R
11及びR
12の少なくとも一方はフッ素原子を3個以上含む有機基であり;
Q
9、Q
10、及びQ
11はそれぞれ独立に、エチレン性不飽和基を含む重合性官能基であり;
Z
9は重合性官能基Q
9とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
Z
10は重合性官能基Q
10とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
Z
11は重合性官能基Q
11とポリシロキサン部位とを連結する連結基であり;
T
9は非重合性の有機基であり;
jは0以上の整数であり;
kは1以上の整数であり;
j+kは5~2000である。)
【0119】
(重合形態)
重合の形態としては、溶媒中で重合を行う公知の重合形態を採用することができ、ラジカル重合を好ましく採用することができる。採用可能な重合形態の例としては、分散重合、懸濁重合、ミニエマルション重合、マイクロエマルション重合、乳化重合、溶液重合等を挙げることができる。これらの中でも分散重合および溶液重合を特に好ましく採用できる。ラジカル重合の形態の例としては通常のラジカル重合、リビングラジカル重合を挙げることができ、通常のラジカル重合を好ましく用いることができる。
【0120】
((a)重合溶媒)
重合溶媒としては、後述する(c)共存ポリマーを溶解可能な溶媒、好ましくは(b)消泡剤モノマー及び(c)共存ポリマーを溶解可能な溶媒の中から、採用する重合形態に適した溶媒を適宜選択することが可能である。
【0121】
((b)消泡剤モノマー)
消泡剤モノマーとしては、ラジカル重合性を有する消泡剤モノマーを好ましく用いることができ、ラジカル重合性を有するエチレン性不飽和基を少なくとも一つ有するラジカル重合性モノマーを特に好ましく用いることができる。(b)消泡剤モノマーは、上記一般式(10)又は(11)で表される化合物から選ばれる1種以上のポリシロキサンマクロモノマーを含む。このようなラジカル重合性マクロモノマーを用いることにより、得られる消泡剤ポリマーが良好な消泡性を発揮する。上記一般式(10)で表される化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。また上記一般式(11)で表される化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。またポリシロキサンマクロモノマーとしては、上記一般式(10)で表される化合物のみを用いてもよく、上記一般式(11)で表される化合物のみを用いてもよく、上記一般式(10)で表される化合物と上記一般式(11)で表される化合物とを組み合わせて用いてもよい。
【0122】
上記一般式(10)及び(11)において、Q9~Q11は、それぞれ独立に、2種以上の重合性官能基の組み合わせであってもよい。Z9~Z11は、それぞれ独立に、2種以上の結合基の組み合わせであってもよい。T9は2種以上の有機基の組み合わせであってもよい。
【0123】
上記一般式(10)及び(11)において、Q9~Q11としては、上記一般式(7)及び(8)におけるQ5~Q7について上記説明した基と同様の基を採用でき、その好ましい態様についても上記同様である。
上記一般式(10)及び(11)において、Z9~Z11としては、上記一般式(7)及び(8)におけるZ5~Z7について上記説明した基と同様の基を採用でき、その好ましい態様についても上記同様である。
上記一般式(10)において、T9としては、上記一般式(7)におけるT5について上記説明した基、すなわち上記一般式(3)におけるT2について上記説明した基と同様の基を採用でき、その好ましい態様についても上記同様である。
【0124】
上記一般式(10)及び(11)において、ポリシロキサン繰り返し単位の配列順序は任意である。上記一般式(10)及び(11)において、j及びkがいずれも1以上である場合、ポリシロキサン構造はランダム共重合体であってもよく、交互共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0125】
上記一般式(10)及び(11)において、ポリシロキサン構造の重合度(j+k)の好ましい態様は、第1の重合鎖について上記説明したポリシロキサン構造の重合度(n+m:上記一般式(1)参照。)と同様である。
【0126】
(b)消泡剤モノマーにおいて、ポリシロキサン構造の平均フッ素化率、すなわち、全ポリシロキサン繰り返し単位(-O-SiR9R10-繰り返し単位および-O-SiR11R12-繰り返し単位)の総数に対する、フッ素原子を含むポリシロキサン繰り返し単位(-O-SiR11R12-)の総数の比は、せん断後の消泡性を高める観点から通常0.01~1であり、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上であり、1であってもよいが、消泡剤の沈降をさらに抑制して消泡剤寿命をさらに向上させる観点から好ましくは0.99以下、より好ましくは0.90以下、さらに好ましくは0.75以下であり、一の実施形態において0.01~0.99、又は0.05~0.90、又は0.10~0.75であり得る。
【0127】
上記一般式(10)及び(11)において、フッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基としては、一般式(1)におけるフッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基として上記説明した基と同様の基を採用でき、その好ましい態様についても上記同様である。
【0128】
上記一般式(10)及び(11)において、フッ素原子を3個以上含む有機基(フッ素化有機基)としては、一般式(1)におけるフッ素原子を3個以上含む有機基(フッ素化有機基)として上記説明した基と同様の基を採用でき、その好ましい態様についても上記同様である。
【0129】
ポリシロキサンマクロモノマーの重量平均分子量は、消泡性をさらに高める観点から好ましくは500以上、より好ましくは5,000以上、さらに好ましくは10,000以上であり、また消泡剤の沈降をさらに抑制して消泡剤寿命をさらに向上させる観点から好ましくは500,000以下、より好ましくは250,000以下、さらに好ましくは150,000以下、特に好ましくは100,000以下であり、一の実施形態において500~500,000、又は5,000~250,000、又は10,000~150,000、又は10,000~100,000であり得る。
【0130】
消泡剤モノマーとしては、上記ポリシロキサンマクロモノマーのみを用いてもよく、消泡性を損なわない範囲において他のラジカル重合性モノマーを併用してもよい。上記ポリシロキサンマクロモノマーと共重合させる他のラジカル重合性モノマーの一例としては、下記一般式(23)で表されるモノマー(以下において「フッ素系モノマー」ということがある。)を挙げることができる。
【0131】
【化31】
(一般式(23)中、Q
12はエチレン性不飽和基を有する重合性官能基であり;Y
12はフッ素原子を3個以上含む有機基であり;Z
12はQ
12とY
12とを連結する連結基である。)
【0132】
上記一般式(23)において、Q12は2種以上の重合性官能基の組み合わせであってもよい。Z12は2種以上の連結基の組み合わせであってもよい。Y12は2種以上の有機基の組み合わせであってもよい。
上記一般式(23)において、Q12としては、上記一般式(9)におけるQ8について上記説明した基と同様の基を採用でき、その好ましい態様についても上記同様である。
上記一般式(23)において、Z12としては、上記一般式(9)におけるZ8について上記説明した基と同様の基を採用でき、その好ましい態様についても上記同様である。
上記一般式(23)におけるY12について、フッ素原子を3個以上含む有機基としては、一般式(1)におけるフッ素原子を3個以上含む有機基として上記説明した基と同様の基を採用でき、その好ましい態様についても上記同様である。
【0133】
上記ポリシロキサンマクロモノマーと共重合させる他のラジカル重合性モノマーの他の一例としては、下記一般式(24)で表されるモノマーを挙げることができる。
【0134】
【化32】
(一般式(24)中、Q
13はエチレン性不飽和基を有する重合性官能基であり;Y
13は炭素数1~40の置換または無置換ヒドロカルビル基であり;Z
13はQ
13とY
13とを連結する連結基である。)
【0135】
上記一般式(24)において、Q13は2種以上の重合性官能基の組み合わせであってもよい。Z13は2種以上の連結基の組み合わせであってもよい。Y13は2種以上のヒドロカルビル基の組み合わせであってもよい。
上記一般式(24)において、Q13としては、上記一般式(9)におけるQ8について上記説明した基と同様の基を採用でき、その好ましい態様についても上記同様である。
上記一般式(24)において、Z13としては、上記一般式(9)におけるZ8について上記説明した基と同様の基を採用でき、その好ましい態様についても上記同様である。
上記一般式(24)におけるY13について、炭素数1~40の置換または無置換ヒドロカルビル基としては、上記一般式(9)におけるY8について上記説明した基と同様の基を採用でき、その好ましい態様についても上記同様である。
【0136】
上記ポリシロキサンマクロモノマーと共重合させる他のラジカル重合性モノマーの他の例としては、スチレン、(メタ)アクリロニトリル、ビニルピリジン、酢酸ビニル、ハロゲン化ビニル等を挙げることができる。
【0137】
上記ポリシロキサンマクロモノマーと共重合させる他のラジカル重合性モノマーとしては、ラジカル重合性を有する官能基を1分子中に2個以上有する多官能性モノマーを用いることもできる。該多官能性モノマーは、上記単官能性ラジカル重合性モノマーと併用してもよい。多官能性モノマーを重合系に添加することにより、得られる消泡剤ポリマーの粒子径を制御することが可能になる。本発明で用いることのできる多官能性モノマーは重合溶媒に可溶である限りにおいて特に制限されるものではなく、具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の、(メタ)アクリル酸と炭素数2~12のアルキルアルコール、炭素数2~12の脂環式アルキルアルコール、又は炭素数2~12の芳香族多官能アルコールとのエステル;ポリ(又はオリゴ)アルキレングリコールのジ(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン等を挙げることができる。
【0138】
消泡剤モノマー中に占める上記ポリシロキサンマクロモノマー(上記一般式(10)及び/又は(11))の割合は、消泡剤モノマーの全質量を基準(100質量%)として、好ましくは10質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0139】
消泡性を高める観点から、消泡剤モノマー中に占める上記フッ素系モノマーの割合は、消泡剤モノマーの全質量を基準(100質量%)として、好ましくは50質量%以下、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。下限は特に制限されるものではなく、一の実施形態において0質量%であってもよいが、他の一の実施形態において2~50質量%とすることができ、他の一の実施形態において5~35質量%とすることができ、他の一の実施形態において5~30質量%とすることができる。
【0140】
((c)共存ポリマー)
共存ポリマーの例としては、非分散型ポリアルキル(メタ)アクリレート;水酸基、アミノ基、アミド基等の極性基を側鎖に有する、分散型ポリアルキル(メタ)アクリレート(極性基の導入位置はランダムでもブロック的でもよい);ポリイソブチレンを側鎖に有する、又は、ポリブタジエン若しくはポリイソプレンの水素化物を側鎖に有する、櫛形ポリアルキル(メタ)アクリレート;コア部(核部)と、該核部に連結した3本以上のアーム部(枝部)とを有する、星形ポリアルキル(メタ)アクリレート;オレフィンコポリマー;スチレン-ジエンコポリマーの水素化物;ポリイソプレンの水素化物;ポリイソブチレン;マレイン化ポリイソブチレン;マレイン化ポリイソブチレンのイミド化物;水素化ポリブタジエン;油溶性ポリエステル;長鎖アルキル変性シリコーン;EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等を挙げることができる。共存ポリマーは、具体的な重合溶媒および重合形態に合わせて当業者が適切に選択することが可能である。一の好ましい実施形態において、共存ポリマーは、上記一般式(2)で表される繰り返し単位を含む。
【0141】
(重合条件)
重合反応の反応条件は、採用する重合形態、重合溶媒、消泡剤モノマー及び共存ポリマーに合わせて、当業者が適切に決定することが可能である。
【0142】
重合にあたっては、(b)消泡剤モノマーと(c)共存ポリマーとの合計の仕込み量100質量部に対して、ポリシロキサンマクロモノマーの仕込み量は、消泡性をさらに高める観点から好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上、特に好ましくは4質量部以上であり、また消泡剤の沈降をさらに抑制して消泡剤寿命をさらに向上させる観点から好ましくは80質量部以下、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下、特に好ましくは20質量部以下であり、一の実施形態において0.5~80質量部、又は1~50質量部、又は2~30質量部、又は4~20質量部であり得る。
【0143】
(消泡剤粒子)
溶媒中で重合を行う上記の各種重合形態のうち、溶液重合以外の重合形態においては、重合反応の終了時には消泡剤粒子の分散液が得られる。重合後の消泡剤粒子の平均粒子径(動的光散乱法によりキュムラント解析を用いて求められる平均粒子径)は、消泡剤の分離および沈降をさらに抑制する観点および消泡性をさらに高める観点から好ましくは10μm以下であり、より好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは2μm以下である。下限は特に制限されるものではないが、例えば0.05μm以上であり得る。
【0144】
(1.2.3.1 分散重合)
一の好ましい実施形態において、重合体(A1)は分散重合によって得られる。分散重合において、上記(c)重合溶媒に可溶なポリマー(共存ポリマー)は(c1)高分子分散剤として作用する。
【0145】
分散重合法とはラジカル重合の一形態であり、溶媒(重合溶媒)に溶解したポリマー(高分子分散剤)の存在下に、モノマーの状態では溶媒に可溶であるが重合によりポリマーを形成すると溶媒に不溶となるようなモノマーと溶媒との組み合わせにおいて重合を行う方法である。分散重合法においては、重合初期には均一な溶液中で重合が始まるが、重合反応の進行とともに析出してくるポリマーにより粒子核が形成され、系は次第に懸濁液となる。このとき、予め系中に存在している溶媒に可溶なポリマー(高分子分散剤)は、重合反応の進行に伴って析出するポリマーを微粒子状に分散安定化する。最終的に得られるポリマーは溶媒中に安定に分散した微粒子となる。
【0146】
((a)重合溶媒)
分散重合における重合溶媒としては、上記(b)消泡剤モノマーがモノマーの状態では当該溶媒に可溶であるが、重合によりポリマーを形成すると当該溶媒に不溶となるような溶媒が用いられる。
分散重合における重合溶媒は、炭素数6以上の炭化水素溶媒、鉱油、合成油、エステル油から選ばれる1種以上を含む溶媒であることが好ましい。特に本発明の消泡剤を潤滑油に添加して使用する際には、分散重合溶媒として鉱油、合成油等の潤滑油基油を用いることが好ましい。
【0147】
((c1)高分子分散剤)
分散重合に用いる高分子分散剤は、重合溶媒に可溶かつ重合後の消泡剤ポリマーを重合溶媒中に微分散可能なポリマーである限りにおいて、特に制限されない。分散重合において(c1)高分子分散剤として使用可能なポリマーの例としては、非分散型ポリアルキル(メタ)アクリレート;水酸基、アミノ基、アミド基等の極性基を側鎖に有する、分散型ポリアルキル(メタ)アクリレート(極性基の導入位置はランダムでもブロック的でもよい);ポリイソブチレンを側鎖に有する、又は、ポリブタジエン若しくはポリイソプレンの水素化物を側鎖に有する、櫛形ポリアルキル(メタ)アクリレート;コア部(核部)と、該核部に連結した3本以上のアーム部(枝部)とを有する、星形ポリアルキル(メタ)アクリレート;オレフィンコポリマー;スチレン-ジエンコポリマーの水素化物;ポリイソプレンの水素化物;ポリイソブチレン;マレイン化ポリイソブチレン;マレイン化ポリイソブチレンのイミド化物;水素化ポリブタジエン;油溶性ポリエステル;長鎖アルキル変性シリコーン;EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等を挙げることができる。本明細書において、「分散型」ポリアルキル(メタ)アクリレートとは、水酸基、アミノ基、アミド基等の極性基を側鎖に有するポリアルキル(メタ)アクリレートを意味し、「非分散型」ポリアルキル(メタ)アクリレートとは、そのような極性基を側鎖に有しないポリアルキル(メタ)アクリレートを意味する。前者のポリアルキル(メタ)アクリレートは潤滑油中に配合した際に清浄分散作用を示す一方で、後者のポリアルキル(メタ)アクリレートは潤滑油中に配合した際に清浄分散作用を期待されないため、潤滑油の技術分野においては前者のポリアルキル(メタ)アクリレートは「分散型」ポリアルキル(メタ)アクリレートと称され、後者のポリアルキル(メタ)アクリレートは「非分散型」ポリアルキル(メタ)アクリレートと称される。本明細書においてもポリアルキル(メタ)アクリレートに関して潤滑油の技術分野における上記用語法を踏襲するが、「非分散型」ポリアルキル(メタ)アクリレートであっても分散重合における高分子分散剤としては機能し得ることを注記する。
【0148】
分散重合における(c1)高分子分散剤としては、これらの中でも、重量平均分子量10,000~1,000,000のポリアルキル(メタ)アクリレートを好ましく用いることができる。そのようなポリアルキル(メタ)アクリレートの特に好ましい例としては、炭素数1~30の直鎖または分岐鎖アルキル基を有するポリアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。ポリアルキル(メタ)アクリレートは分散型であってもよく、非分散型であってもよい。また線状ポリマーであってもよく、櫛形ポリマーであってもよく、星形ポリマーであってもよい。ポリアルキル(メタ)アクリレートを高分子分散剤として用いる場合、ポリアルキル(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、分散剤としての性能を高めて得られる消泡剤の微粒子化を容易にする観点から好ましくは10,000以上、より好ましくは30,000以上であり、また分散重合時の反応混合物の粘度を低減して撹拌を容易にする観点から好ましくは1,000,000以下であり、一の実施形態において10,000~1,000,000、又は30,000~1,000,000であり得る。
【0149】
(重合条件)
分散重合の開始時の反応混合物中における(b)消泡剤モノマーの濃度(2種以上のモノマーを用いる場合には全てのモノマーの合計の濃度)は、重合速度を高めてモノマーの重合率を高める観点から、反応混合物の全質量を基準(100質量%)として好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上であり、また得られる消泡剤微粒子の平均粒子径を低減する観点から好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下であり、一の実施形態において5~50質量%、又は7~30質量%、又は7~20質量%であり得る。
【0150】
分散重合における(c1)高分子分散剤の濃度は、消泡剤微粒子の平均粒子径を低減する観点から、反応混合物の全質量を基準(100質量%)として好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上であり、またモノマーの溶解性を高める観点および反応混合物の粘度を低減して撹拌を容易にする観点から好ましくは20質量%以下であり、一の実施形態において0.1~20質量%、又は0.15~20質量%であり得る。
【0151】
分散重合における反応温度は、用いる重合溶媒、消泡剤モノマー、ラジカル開始剤及び高分子分散剤の組み合わせ、並びに消泡剤モノマー及び高分子分散剤の濃度に応じて、当業者が適切に選択することが可能である。
【0152】
分散重合に用いるラジカル重合開始剤としては、重合温度において分散重合系に可溶なラジカル重合開始剤を特に制限なく用いることができる。例えば、有機過酸化物系、アゾ系化合物等の開始剤を用いることができる。ラジカル開始剤の添加量は、モノマーの重合転化率を高める観点から、用いるモノマー種100質量部に対して好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、またラジカル開始剤残渣による消泡性の低下を抑制する観点から好ましくは10質量部以下であり、一の実施形態において0.1~10質量部、又は1~10質量部であり得る。
【0153】
(消泡剤粒子)
分散重合により得られた消泡剤においては、分散重合の結果、消泡剤ポリマーが微粒子化されているので、消泡剤粒子の分離および沈降による消泡剤性能の低下を抑制することができる。分散重合後に得られる消泡剤粒子の平均粒子径(動的光散乱法によりキュムラント解析を用いて求められる平均粒子径)は、消泡剤の分離および沈降をさらに抑制する観点および消泡性を高める観点から好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは2μm以下であり、一の実施形態において0.05~10μm、又は0.1~5μm、又は0.3~2μmであり得る。分散重合によれば、消泡剤粒子の平均粒子径を10μm以下とすることは容易である。
【0154】
(1.2.3.2 溶液重合)
他の一の好ましい実施形態において、重合体(A1)は、溶液重合により得られる。溶液重合においては、重合反応終了時のポリマーは溶媒中に溶解している。溶液重合としては、溶液ラジカル重合が好ましい。
【0155】
((a)重合溶媒)
溶液重合において、重合溶媒としては、(b)消泡剤モノマーが当該溶媒に可溶であり、且つ、該消泡剤モノマーの重合によって生じたポリマーも当該溶媒に可溶であるような溶媒を、特に制限なく用いることができる。
溶液重合における重合溶媒の好ましい例としては、脂肪族炭化水素(ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、エステル(酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、イソプロピルラウレート、イソプロピルパルミテート、イソプロピルミリステート等)、エーテル(ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジメチルセロソルブ、ジオキサン等)、ハロゲン化炭化水素(四塩化炭素、クロロホルム、フロロセン(1,1,1-トリフルオロエタン)、パークロロエチレン、エチレンジクロライド、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロフッ化メタン類(塩素原子の置換数およびフッ素原子の置換数はそれぞれ1以上であって合計が4以下である限り任意である。)、クロロフッ化エタン類(塩素原子の置換数およびフッ素原子の置換数はそれぞれ1以上であって合計が6以下である限り任意であり、塩素原子およびフッ素原子の置換位置も任意である。)等)、脂肪族アルコール(ブタノール、2-エチルヘキサノール、ラウリルアルコール等)、鉱油等を挙げることができる。これらの中でも炭素数6~10の脂肪族もしくは芳香族炭化水素溶媒、または脂肪族ケトン溶媒を特に好ましく用いることができる。重合溶媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0156】
((c)共存ポリマー)
溶液重合において共存ポリマーとして使用可能なポリマーの例としては、非分散型ポリアルキル(メタ)アクリレート;水酸基、アミノ基、アミド基等の極性基を側鎖に有する、分散型ポリアルキル(メタ)アクリレート(極性基の導入位置はランダムでもブロック的でもよい);ポリイソブチレンを側鎖に有する、又は、ポリブタジエン若しくはポリイソプレンの水素化物を側鎖に有する、櫛形ポリアルキル(メタ)アクリレート;コア部(核部)と、該核部に連結した3本以上のアーム部(枝部)とを有する、星形ポリアルキル(メタ)アクリレート;オレフィンコポリマー;スチレン-ジエンコポリマーの水素化物;ポリイソプレンの水素化物;ポリイソブチレン;マレイン化ポリイソブチレン;マレイン化ポリイソブチレンのイミド化物;水素化ポリブタジエン;油溶性ポリエステル;長鎖アルキル変性シリコーン;EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)等を挙げることができる。
【0157】
溶液重合における(c)共存ポリマーとしては、これらの中でも、ポリアルキル(メタ)アクリレートを好ましく用いることができる。ポリアルキル(メタ)アクリレートの特に好ましい例としては、炭素数1~30の直鎖または分岐鎖アルキル基を有するポリアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。ポリアルキル(メタ)アクリレートは分散型であってもよく、非分散型であってもよい。また線状ポリマーであってもよく、櫛形ポリマーであってもよく、星形ポリマーであってもよい。
【0158】
溶液重合における(c)共存ポリマーの重量平均分子量は、得られる消泡剤ポリマーの遠心耐久性をさらに高める観点から好ましくは10,000以上、より好ましくは30,000以上であり、また反応混合物の粘度を低減して撹拌を容易にする観点から好ましくは1,000,000以下であり、一の実施形態において10,000~1,000,000、又は30,000~1,000,000であり得る。
【0159】
(重合条件)
溶液重合の開始時の反応混合物中における(b)消泡剤モノマーの濃度(2種以上のモノマーを用いる場合には全てのモノマーの合計の濃度)は、重合速度を高めて重合率を高める観点から、反応混合物の全質量を基準(100質量%)として好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上であり、また得られる消泡剤ポリマーの易微分散性をさらに高める観点から好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下であり、一の実施形態において5~50質量%、又は7~30質量%、又は7~20質量%であり得る。
【0160】
溶液重合における(c)共存ポリマーの濃度は、得られる消泡剤ポリマーの易微分散性をさらに高める観点から、反応混合物の全質量を基準(100質量%)として好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上であり、またモノマーの溶解性を高める観点および反応混合物の粘度を低減して撹拌を容易にする観点から好ましくは20質量%以下であり、一の実施形態において0.1~20質量%、又は0.15~20質量%であり得る。
【0161】
溶液重合における反応温度は、用いる重合溶媒、(b)消泡剤モノマー、(c)共存ポリマー、及びラジカル開始剤の組み合わせ、並びに(b)消泡剤モノマー及び(c)共存ポリマーの濃度に応じて、当業者が適切に選択することが可能である。
【0162】
溶液重合に用いるラジカル重合開始剤としては、重合温度において反応溶液に可溶なラジカル重合開始剤を特に制限なく用いることができる。例えば、有機過酸化物系、アゾ系化合物等の開始剤を用いることができる。ラジカル開始剤の添加量は、モノマーの重合転化率を高める観点から、用いるモノマー種100質量部に対して好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、またラジカル開始剤残渣による消泡性の低下を抑制する観点から好ましくは10質量部以下であり、一の実施形態において0.1~10質量部、又は1~10質量部であり得る。
【0163】
溶液重合により得られた消泡剤においては、(c)共存ポリマーの共存下で溶液重合を行った結果、消泡剤ポリマーの易微分散性が高められている。そのため当該消泡剤を、従来の消泡剤と同様のやり方で潤滑油組成物中に配合しても、消泡剤ポリマーが潤滑油組成物中に微分散した状態が容易に達成される。さらに、長時間が経過した後、あるいは強い遠心作用が加わった後であっても、消泡剤ポリマーが潤滑油組成物中に微分散した状態が維持される。したがって、当該消泡剤を潤滑油組成物に配合した場合、消泡剤の分離および沈降による消泡性の低下を抑制することができる。
【0164】
溶液重合により得られた消泡剤の易微分散性は、消泡剤を含む分散液中の消泡剤粒子の平均粒子径によって評価することができる。溶液重合後の消泡剤を含む溶液1mLを鉱油10mLに加え、十分に撹拌することによって消泡剤を微分散させた分散液(25℃)中の、消泡剤粒子の平均粒子径(動的光散乱法によりキュムラント解析を用いて求められる平均粒子径)は、消泡剤の分離および沈降をさらに抑制する観点および消泡性を高める観点から好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは2μm以下であり、一の実施形態において0.05~10μm、又は0.1~5μm、又は0.3~2μmであり得る。平均粒子径の測定にあたり、上記鉱油としては、例えばSKルブリカンツ社製YUBASE(登録商標)4(動粘度(100℃):4.2mm2/s、動粘度(40℃):19.4mm2/s、粘度指数:125)を好ましく用いることができる。また上記撹拌の条件としては、例えば100mLビーカー中、直径8mm×長さ30mmの円柱状PTFE製磁気撹拌子を用いて、常温下、回転速度200rpmで30分撹拌する条件を好ましく採用できる。動的光散乱法による平均粒子径の測定にあたっては、例えば動的光散乱法測定装置Photal ELSZ-2000S(大塚電子(株)製)を好ましく用いることができる。溶液重合により得られる形態の消泡剤によれば、消泡剤粒子の平均粒子径が10μm以下である分散液を得ることは容易であり、そのような分散液を得るにあたり撹拌以外に特別な操作は不要である。
【0165】
(1.3 (B)第2の消泡剤)
第2の消泡剤は、上記第1の消泡剤に該当しない、ポリシロキサン構造を有するシリコーン系消泡剤である。第2の消泡剤としては、下記一般式(25)で表される繰り返し単位を含む直鎖状または分枝状ポリシロキサン構造を有するシリコーン系消泡剤を、単独で、又は2種以上の組み合わせで用いることができる。
【0166】
【化33】
(式(25)中、R
20及びR
21はそれぞれ独立に、炭素数1~18の有機基から選ばれる1種または2種以上の組み合わせである。)
【0167】
第2の消泡剤におけるポリシロキサン構造は、直鎖状であってもよく、分枝状であってもよい。第2の消泡剤について、直鎖状ポリシロキサン構造とは、下記一般式(26)で表される構造を意味する。
【0168】
【化34】
(式(26)中、R
20及びR
21は上記定義された通りであり、uは重合度を表す。)
【0169】
第2の消泡剤について、分枝状ポリシロキサン構造は、一般式(26)で表される構造の1以上の繰り返し単位において、Si原子上のR20及び/又はR21を上記一般式(25)で表される繰り返し単位を有するポリシロキサン側鎖で置き換えた構造である。分枝状ポリシロキサン構造において、ポリシロキサン側鎖は、さらに1以上の分岐を有していてもよい。ポリシロキサン構造の重合度は、Si原子の総数に等しい。
【0170】
一般式(25)及び(26)において、炭素数1~18の有機基としては、置換または無置換アルキル基、置換または無置換フェニル基、フルオロアルキル基、及びポリエーテル基等を挙げることができ、置換アルキル基および置換フェニル基における置換基としてはヒドロキシ基、アミノ基、エーテル結合、エステル結合等を挙げることができる。R20及びR21の炭素数は1~18であり、一の実施形態において1~12、他の一の実施形態において1~6であり得る。該有機基の好ましい例としてはメチル基、フェニル基、フルオロアルキル基等を挙げることができ、これらの中でもメチル基またはフルオロアルキル基を特に好ましく挙げることができる。
【0171】
第2の消泡剤において、ポリシロキサン構造の鎖末端は、例えば上記一般式(25)及び(26)におけるR20又はR21と同一の基と結合していてもよく、また例えば炭素数1~12のヒドロカルビル基と結合していてもよく、1以上の官能基(例えばヒドロキシ基、アミノ基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合等。)を有する炭素数1~12の1価の有機基と結合していてもよく、ヒドロキシ基と結合していてもよい。
【0172】
フッ素化有機基を有しないシリコーン消泡剤におけるポリシロキサン構造の重合度は、消泡性をさらに高める観点から好ましくは300以上、より好ましくは500以上、さらに好ましくは1,000以上であり、粘度を低減して分散性を高めることにより消泡剤寿命をさらに向上させる観点から好ましくは3,000以下であり、一の実施形態において300~3,000、又は500~3,000、又は1,000~3,000であり得る。
【0173】
フッ素化有機基を有しないシリコーン消泡剤の重量平均分子量は、消泡性をさらに高める観点から好ましくは30,000以上、より好ましくは50,000以上、さらに好ましくは90,000以上であり、また粘度を低減して分散性を高めることにより消泡剤寿命をさらに向上させる観点から好ましくは500,000以下、より好ましくは300,000以下であり、一の実施形態において30,000~500,000、又は50,000~300,000、又は90,000~300,000である。
【0174】
第2の消泡剤としては、フルオロシリコーン系消泡剤を特に好ましく用いることができる。フルオロシリコーン系消泡剤としては、上記説明したシリコーン系消泡剤であって、下記一般式(27)で表されるポリシロキサン構造を有するものを好ましく用いることができる。
【0175】
【化35】
(一般式(27)中、ポリシロキサン繰り返し単位の順序は任意であり;
R
22及びR
23はそれぞれ独立に、フッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり;
R
24及びR
25はそれぞれ独立に、フッ素原子を3個以上含む有機基またはフッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基であり、R
24及びR
25の少なくとも一方はフッ素原子を3個以上含む有機基であり;
vは0以上の整数であり;
wは1以上の整数であり;
v+wは50~1000である。)
【0176】
フルオロシリコーン消泡剤において、ポリシロキサン構造の重合度(v+w)は、消泡性をさらに高める観点から好ましくは100以上、一の実施形態において150以上であり、粘度を低減して分散性を高めることにより消泡剤寿命をさらに向上させる観点から好ましくは1000以下、一の実施形態において550以下であり、一の実施形態において100~1000、又は150~550であり得る。
【0177】
フルオロシリコーン系消泡剤の重量平均分子量は、消泡性をさらに高める観点から好ましくは15,000以上、より好ましくは20,000以上、さらに好ましくは25,000以上であり、また粘度を低減して分散性を高めることにより消泡剤寿命をさらに向上させる観点から好ましくは150,000以下、より好ましくは100,000以下、さらに好ましくは85,000以下であり、一の実施形態において15,000~150,000、又は20,000~100,000、又は25,000~85,000であり得る。
【0178】
フルオロシリコーン系消泡剤において、全ポリシロキサン繰り返し単位(-O-SiR22R23-繰り返し単位および-O-SiR24R25-繰り返し単位:上記一般式(27)参照。)の総数(v+w)に対する、フッ素原子を含むポリシロキサン繰り返し単位(-O-SiR24R25-)の総数(w)の比(w/(v+w))(ポリシロキサン構造の平均フッ素化率)は、せん断後の消泡性をさらに高める観点から通常0.01~1であり、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上であり、一の実施形態において0.01~1、又は0.05~1、又は0.10~1であり得る。
【0179】
一般式(27)において、フッ素原子を含まない炭素数1~18の有機基としては、置換または無置換アルキル基、置換または無置換フェニル基、及びポリエーテル基等を挙げることができ、置換アルキル基および置換フェニル基における置換基としてはヒドロキシ基、アミノ基、エーテル結合、エステル結合等を挙げることができる。該有機基の炭素数は1~18であり、一の実施形態において1~12であり、他の一の実施形態において1~6である。該有機基の好ましい例としてはメチル基、フェニル基等を挙げることができ、これらの中でもメチル基を特に好ましく採用できる。
【0180】
一般式(27)において、フッ素原子を3個以上含む有機基(フッ素化有機基)としては、フルオロアルキル基またはフルオロアルキル(ポリ)エーテル基を好ましく採用できる。
【0181】
フッ素化有機基のフッ素原子数は、消泡性を高める観点から好ましくは3以上であり、また重合体の固化による消泡性の低下を避けることを容易にする観点から好ましくは17以下である。
【0182】
フルオロアルキル基としては、上記一般式(2)におけるY1について上記説明したフルオロアルキル基と同様の基を採用でき、その好ましい態様についても上記同様である。またフルオロアルキル(ポリ)エーテル基としては、上記一般式(2)におけるY1について上記説明したフルオロアルキル(ポリ)エーテル基と同様の基を採用でき、その好ましい態様についても上記同様である。
【0183】
フッ素化有機基としては、上記した中でも、一般式(13)で表される基を特に好ましく採用できる。
【0184】
(1.4 含有量)
本発明の潤滑油組成物における第1の消泡剤の含有量は、消泡性をさらに高める観点から、組成物全量基準でケイ素量として好ましくは0.1質量ppm以上であり、また消泡剤の沈降をさらに抑制して消泡剤寿命をさらに向上させる観点から好ましくは150質量ppm以下、より好ましくは100質量ppm以下、一の実施形態において50質量ppm以下であり、一の実施形態において0.1~150質量ppm、又は0.1~100質量ppm、又は0.1~50質量ppmであり得る。なお本明細書において、油中のケイ素の含有量は、JIS K0116に準拠して誘導結合プラズマ発光分光分析法(強度比法(内標準法))により測定されるものとする。
【0185】
本発明の潤滑油組成物における第2の消泡剤の含有量は、消泡性をさらに高める観点から、組成物全量基準でケイ素量として好ましくは0.1質量ppm以上であり、また消泡剤の沈降をさらに抑制して消泡剤寿命をさらに向上させる観点から好ましくは150質量ppm以下、より好ましくは100質量ppm以下、一の実施形態において50質量ppm以下であり、一の実施形態において0.1~150質量ppm、又は0.1~100質量ppm、又は0.1~50質量ppmであり得る。
【0186】
本発明の潤滑油組成物における第1の消泡剤および第2の消泡剤の合計の含有量は、消泡性をさらに高める観点から、組成物全量基準でケイ素量として好ましくは0.2質量ppm以上であり、また消泡剤の沈降をさらに抑制して消泡剤寿命をさらに向上させる観点から好ましくは300質量ppm以下、より好ましくは200質量ppm以下、一の実施形態において100質量ppm以下であり、一の実施形態において0.2~300質量ppm、又は0.2~200質量ppm、又は0.2~100質量ppmであり得る。
【0187】
(A)第1の消泡剤のケイ素換算含有量の、(B)第2の消泡剤のケイ素換算含有量に対する比(A/B)は、消泡剤の沈降をさらに抑制して消泡剤寿命をさらに向上させる観点から好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上であり、消泡性をさらに高める観点から好ましくは100以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは2以下であり、一の実施形態において0.01~100、又は0.1~10、又は0.1~2であり得る。
【0188】
(1.5 その他の添加剤)
本発明の潤滑油組成物は、上記潤滑油基油、(A)第1の消泡剤、および(B)第2の消泡剤に加えて、(C)無灰分散剤、(D)酸化防止剤、(E)摩擦調整剤、(F)摩耗防止剤または極圧剤、(G)金属系清浄剤、(H)粘度指数向上剤または流動点降下剤、(I)腐食防止剤、(J)防錆剤、(K)金属不活性化剤、(L)抗乳化剤、(M)上記第1の消泡剤および第2の消泡剤以外の消泡剤、及び(N)着色剤から選ばれる1種以上の添加剤をさらに含み得る。
【0189】
(C)無灰分散剤としては、例えばコハク酸イミド系無灰分散剤等の公知の無灰分散剤を使用可能である。例としては、数平均分子量が900~3,500以下のポリブテニル基を有するポリブテニルコハク酸イミド、ポリブテニルベンジルアミン、ポリブテニルアミン、及びこれらの誘導体(例えばホウ酸変性物等。)等を挙げることができる。
本発明の潤滑油組成物に無灰分散剤を含有させる場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.01質量%以上であり、好ましくは0.1質量%以上である。また、通常20質量%以下であり、好ましくは10質量%以下である。
【0190】
(D)酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤やアミン系酸化防止剤等の公知の酸化防止剤を使用可能である。例としては、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、アルキル化-α-ナフチルアミンなどのアミン系酸化防止剤、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)などのフェノール系酸化防止剤などを挙げることができる。
本発明の潤滑油組成物に酸化防止剤を含有させる場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常5.0質量%以下であり、好ましくは3.0質量%以下であり、また好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上である。
【0191】
(E)摩擦調整剤としては、公知の摩擦調整剤を使用可能である。例としては、脂肪酸エステル;脂肪酸アミド;リン酸エステル、亜リン酸エステル、チオリン酸エステルなどのリン化合物;MoDTP、MoDTCなどの有機モリブデン化合物;ZnDTPなどの有機亜鉛化合物;アルキルメルカプチルボレートなどの有機ホウ素化合物;グラファイト;二硫化モリブデン;硫化アンチモン;ホウ素化合物;ポリテトラフルオロエチレン等を挙げることができる。
本発明の潤滑油組成物に摩擦調整剤を含有させる場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.05~5質量%である。
【0192】
(F)摩耗防止剤または極圧剤としては、公知の摩耗防止剤または極圧剤を使用可能である。例としては、ジチオリン酸金属塩(Zn塩、Pb塩、Sb塩、Mo塩等)、ジチオカルバミン酸金属塩(Zn塩、Pb塩、Sb塩、Mo塩等)、ナフテン酸金属塩(Pb塩等)、脂肪酸金属塩(Pb塩等)、ホウ素化合物、リン酸エステル、亜リン酸エステル、アルキルハイドロゲンホスファイト、リン酸エステルアミン塩、リン酸エステル金属塩(Zn塩など)、ジスルフィド、硫化油脂、硫化オレフィン、ジアルキルポリスルフィド、ジアリールアルキルポリスルフィド、ジアリールポリスルフィドなどを挙げることができる。
本発明の潤滑油組成物に摩耗防止剤または極圧剤を含有させる場合には、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.05~5質量%である。
【0193】
(G)金属系清浄剤としては、公知の金属系清浄剤を使用可能である。例としては、アルカリ金属スルホネート、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ金属フェネート、アルカリ土類金属フェネート、アルカリ金属サリシレート、アルカリ土類金属サリシレート、及びこれらの組み合わせ等を挙げることができる。これら金属系清浄剤は過塩基化されていてもよい。なお本明細書において「アルカリ土類金属」にはMgも包含されるものとする。
本発明の潤滑油組成物に金属系清浄剤を含有させる場合、その含有量は特に制限されない。ただし、自動車変速機用の場合、潤滑油組成物全量基準の金属元素換算量で通常、0.005~1.0質量%である。また内燃機関用の場合、潤滑油組成物全量基準の金属元素換算量で通常、0.01~5.0質量%である。また自動車トランスアクスルユニット用の場合、潤滑油組成物全量基準の金属元素換算量で通常、0.001~0.1質量%である。なお本明細書において、油中の金属元素の含有量は、JIS K0116に準拠して誘導結合プラズマ発光分光分析法(強度比法(内標準法))により測定されるものとする。
【0194】
(H)粘度指数向上剤または流動点降下剤としては、公知の粘度指数向上剤または流動点降下剤を使用可能である。粘度指数向上剤の例としては、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの重合体、共重合体、及びそれらの水素添加物等の、いわゆる非分散型粘度指数向上剤;窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させた、いわゆる分散型粘度指数向上剤;非分散型又は分散型エチレン-α-オレフィン共重合体及びその水素添加物;ポリイソブチレン及びその水素添加物;スチレン-ジエン共重合体の水素添加物;スチレン-無水マレイン酸エステル共重合体;並びに、ポリアルキルスチレン等を挙げることができる。本発明の潤滑油組成物に粘度指数向上剤または流動点硬化剤を含有させる場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.1~20質量%である。
流動点降下剤の例としては、ポリメタクリレート系ポリマー等を挙げることができる。本発明の潤滑油組成物に流動点降下剤を含有させる場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.01~2質量%である。
なお、上記(A)第1の消泡剤が、重合溶媒中、消泡剤モノマー((b)成分)を、重合溶媒に可溶なポリマー((c)成分)の共存下に重合することにより得られたものである場合、重合に用いられた(c)成分を重合後の第1の消泡剤から分離することはできないことを、本発明者らは確認している。
【0195】
(I)腐食防止剤としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、トリルトリアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、及びイミダゾール系化合物等の公知の腐食防止剤を使用可能である。本発明の潤滑油組成物に腐食防止剤を含有させる場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.005~5質量%である。
【0196】
(J)防錆剤としては、例えば石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルキルスルホン酸塩、脂肪酸、アルケニルコハク酸ハーフエステル、脂肪酸セッケン、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アミン、酸化パラフィン、アルキルポリオキシエチレンエーテル等の公知の防錆剤を使用可能である。本発明の潤滑油組成物に防錆剤を含有させる場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.005~5質量%である。
【0197】
(K)金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、1,3,4-チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4-チアジアゾリル-2,5-ビスジアルキルジチオカーバメート、2-(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、並びにβ-(o-カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等の公知の金属不活性化剤を使用可能である。本発明の潤滑油組成物にこれらの金属不活性化剤を含有させる場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.005~1質量%である。
【0198】
(L)抗乳化剤としては、例えばポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等の公知の抗乳化剤を使用可能である。本発明の潤滑油組成物に抗乳化剤を含有させる場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.005~5質量%である。
【0199】
(M)上記第1の消泡剤および第2の消泡剤以外の消泡剤としては、例えば、フルオロアルキルエーテル等の公知の消泡剤を使用可能である。本発明の潤滑油組成物にこれらの消泡剤を含有させる場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.0001~0.1質量%である。
【0200】
(N)着色剤としては、例えばアゾ化合物等の公知の着色剤を使用可能である。
【0201】
(1.6 製造)
本発明の潤滑油組成物は、潤滑油基油、または、潤滑油基油と1種以上の添加剤とを含む組成物(以下において「基油等」ということがある。)に、上記(A)第1の消泡剤および(B)第2の消泡剤を加えることにより、製造することができる。上記(A)第1の消泡剤および(B)第2の消泡剤を加えた後に、他の添加剤をさらに加えてもよい。
【0202】
(A)第1の消泡剤および(B)第2の消泡剤を加える順序は特に制限されるものではない。(A)第1の消泡剤を加えた後で(B)第2の消泡剤を加えてもよく、(B)第2の消泡剤を加えた後で(A)第1の消泡剤を加えてもよく、(A)第1の消泡剤および(B)第2の消泡剤を同時に加えてもよい。ただし(A)第1の消泡剤を加えた後に(B)第2の消泡剤を加えることが好ましい。
【0203】
(A)第1の消泡剤および(B)第2の消泡剤を基油等に加える方法は特に制限されるものではない。例えば、(α)基油等に単に消泡剤を加えて分散させてもよく、(β)消泡剤を一旦希釈溶媒(例えば灯油等。)中に溶解または微分散させて希釈液を調製してから、該希釈液を基油等に加えてもよい。
【0204】
(α)基油等に単に消泡剤を加えて分散させる場合には、(α1)基油等に単に消泡剤を加えて撹拌してもよく、(α2)基油等の一部を取り出し、該取り出した基油等に適当な量の消泡剤を加えて(例えばミキサー等で)撹拌することにより消泡剤を微分散させ、得られた微分散液を元の基油等に加えて撹拌してもよい。
上記(α2)の方法において、取り出した基油等の一部に加える消泡剤の量は、該取り出した基油等の一部と加える消泡剤との合計量を基準(100質量%)として、消泡剤が5質量%以下となる量であることが好ましく、1質量%以下となる量であることがより好ましい。
【0205】
(β)消泡剤を一旦希釈溶媒中に溶解または微分散させて希釈液を調製してから、該希釈液を基油等に加える場合には、(β1)第1の消泡剤の希釈液と第2の消泡剤の希釈液とを別個に調製して、それらを基油等に加えてもよく、(β2)第1の消泡剤と第2の消泡剤との混合希釈液(消泡剤組成物)を調製して、該混合希釈液を基油等に加えてもよい。ただし本発明の潤滑油の消泡方法として後述するように、(β2)の方法によることが好ましい。
【0206】
(1.7 潤滑油組成物)
本発明の潤滑油組成物においては、消泡剤の貯蔵安定性が向上しているので、長期間にわたる貯蔵においても消泡剤の分離および沈降を抑制し、これにより消泡性の低下を抑制することが可能である。また、本発明の潤滑油組成物は、潤滑油に対して高い遠心作用および高いせん断応力が働く潤滑環境下においても、良好な消泡性を長期間にわたって維持することが可能である。その結果、潤滑油の発泡を長期間にわたって抑制できるので、発泡に起因する潤滑油の劣化の促進、油圧制御不良、摩耗および焼付き等を長期間にわたって抑制することも可能である。
【0207】
本発明の潤滑油組成物の動粘度は特に限定されるものではない。一の実施形態において、潤滑油組成物の100℃における動粘度は2~20mm2/sであり得る。本発明の潤滑油組成物は、(A)第1の消泡剤および(B)第2の消泡剤の両方を含有するので、消泡剤が沈降しやすい低粘度、例えば100℃における動粘度が10mm2/s以下、又は4.5mm2/s以下の組成物であっても、長期間にわたる貯蔵においても消泡剤の分離および沈降を抑制して消泡性の低下を抑制するとともに、潤滑油に対して高い遠心作用および高いせん断応力が働く潤滑環境下においても良好な消泡性を長期間にわたって維持することが可能である。
【0208】
(1.8 用途)
本発明の潤滑油組成物は、特に上記作用効果の観点から、消泡性が要求される潤滑用途に広く用いることができる。例えば内燃機関油、油圧作動油、工業用ギヤ油、タービン油、圧縮機油、変速機油、自動車アクスルユニット油等として好ましく用いることができ、中でも自動車エンジン油、自動車用変速機油、または自動車アクスルユニット油として特に好ましく用いることができる。
【0209】
<2.消泡剤組成物、及び潤滑油の消泡方法>
本発明の潤滑油の消泡方法は、(i)上記(A)第1の消泡剤および上記(B)第2の消泡剤を希釈溶媒中に溶解または微分散させて希釈液(消泡剤組成物)を得る工程と、(ii)工程(i)において得られた希釈液を潤滑油に添加する工程とを含む。
【0210】
(工程(i))
工程(i)は、上記(A)第1の消泡剤および上記(B)第2の消泡剤を希釈溶媒中に溶解又は微分散させることにより、希釈液(消泡剤組成物)を得る工程である。(A)第1の消泡剤および(B)第2の消泡剤の詳細は既に説明した。希釈溶媒としては、第1の消泡剤および第2の消泡剤を溶解または微分散可能な溶媒を用いることができる。希釈溶媒は、工程(ii)において希釈液が添加される潤滑油に可溶な溶媒であることが好ましい。希釈溶媒としては例えば、炭素数6以上の炭化水素溶媒、鉱油、合成油、エステル油、炭素数4以上の脂肪族エーテル、炭素数2以上の脂肪族モノカルボン酸と炭素数1~5の一価アルコールとのエステル、炭素数3以上の脂肪族ケトン、炭素数4以上の脂肪族アルコール、及びハロゲン化炭化水素から選ばれる1種以上を含む溶媒を好ましく用いることができる。希釈溶媒としては1種の溶媒を単独で用いてもよく、2種以上の溶媒を組み合わせて用いてもよい。
【0211】
炭素数6以上の炭化水素溶媒の好ましい例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-デカン、オクタン、メチルシクロヘキサン等を挙げることができる。炭素数は好ましくは6~16、より好ましくは6~13、さらに好ましくは6~10である。これらの中でも、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n-ヘキサン、n-ヘプタンを特に好ましく用いることができる。
【0212】
鉱油、合成油、及びエステル油としては、潤滑油基油に関連して上記説明した鉱油系基油、合成系潤滑油、及びエステル系基油のほか、灯油、ソルベントナフサ、工業用ガソリン、ミネラルスピリット、ケロシン等を好ましく用いることができる。
【0213】
炭素数4以上の脂肪族エーテルの好ましい例としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジメチルセロソルブ、ジオキサン等を挙げることができる。炭素数は好ましくは4~12である。これらの中でも、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジヘキシルエーテルを特に好ましく用いることができる。
【0214】
炭素数2以上の脂肪族モノカルボン酸と炭素数1~5の一価アルコールとのエステルの好ましい例としては、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、イソプロピルラウレート、イソプロピルパルミテート、イソプロピルミリステート等を挙げることができる。脂肪族モノカルボン酸残基の炭素数は好ましくは2~16であり、アルコール残基の炭素数は好ましくは2~5である。これらの中でも、酢酸エチル、酢酸ブチル、イソプロピルラウレート、イソプロピルパルミテート、イソプロピルミリステートを特に好ましく用いることができる。
【0215】
炭素数3以上の脂肪族ケトンの好ましい例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン等を挙げることができる。炭素数は好ましくは3~10である。これらの中でも、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンを特に好ましく用いることができる。
【0216】
炭素数4以上の脂肪族アルコールの好ましい例としては、ラウリルアルコール、ブタノール、2-エチルヘキサノール等を挙げることができる。炭素数は好ましくは4~18である。これらの中でも、ラウリルアルコールを特に好ましく用いることができる。
【0217】
ハロゲン化炭化水素の好ましい例としては、四塩化炭素、クロロホルム、フロロセン(1,1,1-トリフルオロエタン)、パークロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、ジクロロメタン、エチレンジクロライド、クロロベンゼン、クロロフッ化メタン類(塩素原子の置換数およびフッ素原子の置換数はそれぞれ1以上であって合計が4以下である限り任意である。)、クロロフッ化エタン類(塩素原子の置換数およびフッ素原子の置換数はそれぞれ1以上であって合計が6以下である限り任意であり、塩素原子およびフッ素原子の置換位置も任意である。)等を挙げることができる。炭素数は1以上であり、好ましくは1~6である。
【0218】
希釈液(消泡剤組成物)において、第1の消泡剤および第2の消泡剤が希釈溶媒中に溶解または微分散しているとき、該希釈液を25℃で静置しても1週間以上、好ましくは1ヶ月以上にわたって相分離や沈殿が起きない。希釈液において、第1の消泡剤および第2の消泡剤の少なくとも一方が希釈溶媒中に溶解も微分散もしていない場合には、より短期間(例えば3日間。)で相分離または沈殿が生じる。したがって、希釈液を25℃で静置したときに、1週間以上相分離や沈殿が起きないか否かによって、第1の消泡剤および第2の消泡剤が希釈溶媒中に溶解または微分散しているか否かを判断することができる。すなわち、該希釈液を25℃で静置したときに1週間以上相分離や沈殿が起きなければ、該希釈液中に第1の消泡剤および第2の消泡剤が溶解または微分散していると判断できる。
【0219】
希釈液(消泡剤組成物)中の第1の消泡剤および第2の消泡剤の合計の濃度は、希釈液全量基準でケイ素量として、100~50,000質量ppmであり、好ましくは100~40,000質量ppm、より好ましくは100~30,000質量ppmである。希釈液中の第1及び第2の消泡剤の合計の濃度が上記下限値以上であることにより、希釈液による潤滑油の引火点の低下を抑制できる。また希釈液中の第1及び第2の消泡剤の合計の濃度が上記上限値以下であることにより、消泡剤の沈降をさらに抑制し、消泡剤寿命をさらに向上させることが可能になる。
【0220】
(工程(ii))
工程(ii)は、工程(i)において得られた希釈液(消泡剤組成物)を潤滑油に添加する工程である。希釈液を潤滑油に添加する量は、上記説明した本発明の潤滑油組成物における消泡剤の好ましい濃度が実現される量とすることができる。
【0221】
工程(ii)において希釈液(消泡剤組成物)が添加される潤滑油には、基油の他に、第1及び第2の消泡剤以外の他の添加剤が既に含まれていてもよい。また、第1及び第2の消泡剤以外の添加剤を含まない、基油からなる潤滑油に、工程(ii)において希釈液を添加した後、他の添加剤を加えてもよい。
【0222】
希釈液(消泡剤組成物)を潤滑油に添加するにあたっては、希釈液を潤滑油に少量ずつ逐次的に添加(例えば滴下)しながら混合しても良いし、所望量の希釈液を潤滑油に一度に添加しても良い。潤滑油組成物中に消泡剤をより微細に分散させる観点からは、希釈液を潤滑油に逐次的に添加しながら混合することが好ましい。
【0223】
本発明の潤滑油の消泡方法によれば、第1の消泡剤および第2の消泡剤を別個に潤滑油に添加する場合に比べて、消泡剤の分離および沈降ならびにせん断による消泡性の低下をより効果的に抑制することが可能である。
【実施例】
【0224】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明についてさらに具体的に説明する。なお以下の実施例は本発明の例示を意図するものであって、本発明を限定することを意図するものではない。
【0225】
<製造例>
(分子量および分子量分布測定)
以下の製造例および実施例において、分子量および分子量分布は、カラム(東ソー社製TSKgel Super MultiPore HZ-M;内径4.6mm×15cm)を3本直列に接続したGPC装置(東ソー社製HLC-8220)を用いて、テトラヒドロフランを移動相とし、示差屈折率計(RI)を検出器として、測定温度40℃、流速0.35mL/分、試料濃度1質量%、試料注入量5μLの条件下、標準物質としてポリスチレンを用いて測定した。
【0226】
(製造例1)
以下の手順により、第1の消泡剤A-1を製造した。
ポリテトラフルオロエチレン製攪拌翼(真空シール付)、ジムロート冷却器、窒素導入用3方コック、及びサンプル導入口を装着した500mL 4つ口フラスコに、メチルイソブチルケトン(重合溶媒)200質量部、下記一般式(28)で表されるポリシロキサンマクロモノマー(信越化学工業(株)製;重量平均分子量43,000;多分散指数(Mw/Mn)1.50)5質量部、及びラウリルメタクリレート 95質量部を導入し、攪拌下に均一混合物とした後、ダイヤフラムポンプを用いて反応系の真空脱気および窒素パージを5回実施した。窒素フロー下に、ラジカル重合開始剤としてMAIB(dimethyl 2,2'-azobisisobutyrate:アゾ系ラジカル重合開始剤;和光純薬工業(株)製)0.5質量部をサンプル導入口から導入した後、窒素雰囲気下、重合温度 70℃にて8時間撹拌して重合反応を行い、消泡剤A-1の溶液を得た。得られた消泡剤A-1の重量平均分子量(Mw)の測定値は120,000であり、多分散指数(Mw/Mn)は3.08であった。
【0227】
【化36】
(式(28)中、R
26はプロピレン基であり;ポリシロキサン構造の平均フッ素化率は0.5である。)
【0228】
(製造例2)
以下の手順により、第1の消泡剤A-2を製造した。
ポリテトラフルオロエチレン製攪拌翼(真空シール付)、ジムロート冷却器、窒素導入用3方コック、及びサンプル導入口を装着した500mL 4つ口フラスコに、メチルイソブチルケトン(重合溶媒)200質量部、下記一般式(28)で表されるポリシロキサンマクロモノマー(信越化学工業(株)製;重量平均分子量43,000;多分散指数(Mw/Mn)1.50)30質量部、及びラウリルメタクリレート 70質量部を導入し、攪拌下に均一混合物とした後、ダイヤフラムポンプを用いて反応系の真空脱気および窒素パージを5回実施した。窒素フロー下に、ラジカル重合開始剤としてMAIB(dimethyl 2,2'-azobisisobutyrate:アゾ系ラジカル重合開始剤;和光純薬工業(株)製)1.5質量部をサンプル導入口から導入した後、窒素雰囲気下、重合温度 70℃にて8時間撹拌して重合反応を行い、消泡剤A-2の溶液を得た。得られた消泡剤A-2の重量平均分子量(Mw)の測定値は213,000であり、多分散指数(Mw/Mn)は5.05であった。
【0229】
【化37】
(式(28)中、R
26はプロピレン基であり;ポリシロキサン構造の平均フッ素化率は0.5である。)
【0230】
(製造例3)
以下の手順により、第1の消泡剤A-3を製造した。
ポリテトラフルオロエチレン製攪拌翼(真空シール付)、ジムロート冷却器、窒素導入用3方コック、及びサンプル導入口を装着した500mL 4つ口フラスコに、メチルイソブチルケトン(重合溶媒)200質量部、下記一般式(28)で表されるポリシロキサンマクロモノマー(信越化学工業(株)製;重量平均分子量78,000;多分散指数(Mw/Mn)1.62)50質量部、及びラウリルメタクリレート 50質量部、連鎖移動剤としてドデシルメルカプタン0.05質量部を導入し、攪拌下に均一混合物とした後、ダイヤフラムポンプを用いて反応系の真空脱気および窒素パージを5回実施した。窒素フロー下に、ラジカル重合開始剤としてMAIB(dimethyl 2,2'-azobisisobutyrate:アゾ系ラジカル重合開始剤;和光純薬工業(株)製)0.5質量部をサンプル導入口から導入した後、窒素雰囲気下、重合温度 70℃にて8時間撹拌して重合反応を行い、消泡剤A-3の溶液を得た。得られた消泡剤A-3の重量平均分子量(Mw)の測定値は177,000であり、多分散指数(Mw/Mn)は5.41であった。
【0231】
【化38】
(式(28)中、R
26はプロピレン基であり;ポリシロキサン構造の平均フッ素化率は0.5である。)
【0232】
(製造例4)
以下の手順により、第1の消泡剤A-4を製造した。
ポリテトラフルオロエチレン製攪拌翼(真空シール付)、ジムロート冷却器、窒素導入用3方コック、及びサンプル導入口を装着した500mL 4つ口フラスコに、メチルイソブチルケトン(重合溶媒)200質量部、下記一般式(28)で表されるポリシロキサンマクロモノマー(信越化学工業(株)製;重量平均分子量78,000;多分散指数(Mw/Mn)1.62)5質量部、及びラウリルメタクリレート 95質量部を導入し、攪拌下に均一混合物とした後、ダイヤフラムポンプを用いて反応系の真空脱気および窒素パージを5回実施した。窒素フロー下に、ラジカル重合開始剤としてMAIB(dimethyl 2,2'-azobisisobutyrate:アゾ系ラジカル重合開始剤;和光純薬工業(株)製)0.5質量部をサンプル導入口から導入した後、窒素雰囲気下、重合温度 70℃にて8時間撹拌して重合反応を行い、消泡剤A-4の溶液を得た。得られた消泡剤A-4の重量平均分子量(Mw)の測定値は140,000であり、多分散指数(Mw/Mn)は2.80であった。
【0233】
【化39】
(式(28)中、R
26はプロピレン基であり;ポリシロキサン構造の平均フッ素化率は0.5である。)
【0234】
(製造例5)
以下の手順により、第1の消泡剤および第2の消泡剤の範囲外である消泡剤A-5を製造した。
ポリテトラフルオロエチレン製攪拌翼(真空シール付)、ジムロート冷却器、窒素導入用3方コック、及びサンプル導入口を装着した100mL 4つ口フラスコに、重合溶媒として鉱油(40℃における動粘度:8.9mm2/s)30質量部、消泡剤モノマーとしてKF2012(メタクリレート変性ポリジメチルシロキサン;信越化学工業(株)製;官能基当量4,600g/mol)3質量部およびエチレングリコールジメタクリレート0.15質量部、並びに高分子分散剤としてポリアルキルメタクリレート(重量平均分子量Mw=320,000)1.5質量部を導入し、攪拌下に均一溶液とした後、ダイヤフラムポンプを用いて反応系の真空脱気および窒素パージを5回実施した。窒素フロー下に、ラジカル重合開始剤としてパーオクタO(1,1,3,3-tetramethylbutyl peroxy-2-ethylhexanoate;過酸化物系ラジカル重合開始剤;日本油脂(株)製)0.15質量部をサンプル導入口から投入した後、窒素雰囲気下、重合温度70℃にて8時間撹拌して重合反応を行い、消泡剤ポリマーの微分散液を得た。得られた消泡剤ポリマーの平均粒子径は0.5μmであった。
【0235】
<実施例1~9、及び比較例1~13>
表1~5に示されるように、本発明の潤滑油組成物(実施例1~9)、及び比較用の潤滑油組成物(比較例1~13)をそれぞれ調製した。表1~5中、「Si ppm」とは、組成物全量基準でのケイ素量換算での質量ppmを意味する。また「基油組成」の欄において「mass%」とは、基油全量基準での質量%を意味し、「全基油」及び「他の添加剤」の欄において「mass%」とは、組成物全量基準での質量%を意味する。消泡剤A-1乃至A-5以外の成分の詳細は次の通りである。
【0236】
(基油)
O-1:水素化精製鉱油(APIグループII基油、動粘度(100℃):2.2mm2/s、粘度指数:106)
O-2:水素化精製鉱油(APIグループIII基油、動粘度(100℃):4.2mm2/s、粘度指数:123)
O-3:エステル系基油(APIグループV基油、動粘度(100℃):2.7mm2/s、粘度指数:178)
【0237】
(消泡剤)
B-1:フルオロシリコーン消泡剤(信越化学株式会社製FA-600、一般式(27)において、R24:-CH2CH2CF3、R22=R23=R25:-CH3、ポリシロキサン構造の平均フッ素化率:0.5、重量平均分子量:31,000、平均重合度:153.6)
B-2:フルオロシリコーン消泡剤(信越化学株式会社製FA-630、一般式(27)において、R24:-CH2CH2CF3、R25:-CH3、ポリシロキサン構造の平均フッ素化率:1.0、重量平均分子量:42,000、平均重合度:158.7)
B-3:ジメチルシリコーン消泡剤(信越化学株式会社製KF-96、粘度1,000,000mm2/s、重量平均分子量:258,000、平均重合度:2051.2)
【0238】
(他の添加剤)
V-1:ポリメタクリレート系粘度指数向上剤、重量平均分子量:20,000
P-1:添加剤パッケージ(ホウ酸変性コハク酸イミド無灰分散剤、リン含有摩耗防止剤、Caスルホネート清浄剤、無灰摩擦調整剤、酸化防止剤、及び金属不活性化剤を含む)
【0239】
【0240】
【0241】
【0242】
【0243】
【0244】
(消泡剤の添加方法)
実施例1~9、及び比較例1~13の潤滑油組成物を調製する際に、複数の消泡剤を潤滑油に添加する操作は次の手順により行なった。
(i)各消泡剤を溶媒(灯油またはMEK(メチルエチルケトン))に溶解させて希釈液を調製した。希釈液中の消泡剤の合計濃度は、ケイ素量として1000質量ppmとした。
(ii)工程(i)で得られた希釈液を潤滑油に滴下しながら撹拌混合した。希釈液の添加量は、表1~5に記載の消泡剤濃度が実現される量とした。
【0245】
(新油の消泡性の評価:ホモジナイザー試験)
上記調製した潤滑油組成物のそれぞれについて、
図1に示すホモジナイザー試験機により消泡性を評価した。
図1に示すホモジナイザー試験機は、ホモジナイザー1、加熱用円筒ヒーター2、温度調節器3、油温測定用熱電対4、ヒーター加熱用電源5、油槽に相当するガラスシリンダー6(目盛付き円筒型ガラス容器、内径40mm、深さ300mm、目盛:2mL間隔で0~250mL)、及び空気吹込み管(空気流入量30mL/分)7を備えている。
ガラスシリンダー6に試料油を150mL入れ、加熱用円筒ヒーター2により試料油の温度を120℃とした。この時点の油面を基準油面8とした。ホモジナイザー1により撹拌を開始し、10分後の油面と基準油面の差を泡立ち量とした。結果を表1~5中に示している。
【0246】
(貯蔵安定性および遠心耐久性ならびにせん断耐久性の評価(1):ホモジナイザー試験)
(a)上記調製した潤滑油組成物のそれぞれについて、下記(i)及び(ii)の操作を行うことにより、超音波せん断および遠心分離を経た試料油を得た。
(i)超音波せん断
JASO M347(自動変速機油-せん断安定性試験方法)に準拠した方法で、超音波印加による4時間のせん断を経た試料油240mLを得た。
(ii)遠心分離
上記(i)の超音波せん断を経た試料油をガラス遠心管の60mL目盛線まで入れた試料油入り遠心管を4本用意した。これら4本の試料油入り遠心管を遠心分離機にセットし、25℃、回転数10,000rpmで180分間回転させた。この回転における相対遠心力は平均8,000Gであった。遠心分離後、上澄みを計200mL回収した。
(b)ホモジナイザー試験
上記(i)及び(ii)の操作を経て回収された試料油に対して、上記同様のホモジナイザー試験により消泡性を評価した。結果を表1~5中に示している。超音波せん断および遠心分離後の泡立ち量の増加が少ないほど、貯蔵時における消泡剤の分離および沈降が起きにくく、また遠心作用およびせん断作用による消泡性の低下が少ないといえる。
【0247】
(貯蔵安定性および遠心耐久性ならびにせん断耐久性の評価(2):油中ケイ素量の測定)
(a)新油中のケイ素量の測定
上記調製した潤滑油組成物のそれぞれについて、JIS K0116に準拠して誘導結合プラズマ(ICP)発光分光法(強度比法(内標準法))により新油中のケイ素量を測定した。
(b)超音波せん断および遠心分離後の油中ケイ素量の測定
上記(i)及び(ii)の操作を経て回収された試料油について、上記同様にICP発光分光法により油中のケイ素量を測定した。超音波せん断および遠心分離後の油中ケイ素量が新油中のケイ素量に近いほど、貯蔵時における消泡剤の分離および沈降が起きにくく、また遠心作用およびせん断作用による消泡剤の損失が少ないといえる。
【0248】
本発明の潤滑油組成物(実施例1~9)はいずれも、新油の消泡性だけでなく、せん断および遠心分離後の試料油の消泡性も良好であった。また、これら本発明の潤滑油組成物においては、せん断および遠心分離後においても、十分な油中ケイ素量が維持されていた。これに対し、比較例1~13の潤滑油組成物は、せん断および遠心分離後の試料油の消泡性が、新油の消泡性に比べて顕著に悪化した。また、比較例2、7~10、12~13の潤滑油組成物は、せん断および遠心分離後には油中ケイ素量が著しく減少していた。
【0249】
上記の試験結果から、本発明の潤滑油組成物によれば、長期間の貯蔵においても消泡性能の低下を抑制できること、及び、潤滑油に対して高い遠心作用およびせん断作用が働く潤滑環境下においても、潤滑油の消泡性を長期間にわたって維持できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0250】
本発明の潤滑油組成物は、長期間の貯蔵においても消泡性の低下を抑制でき、また潤滑油に対して遠心作用およびせん断作用が働く潤滑条件下においても潤滑油の消泡性を長期間にわたって維持することが可能である。したがって本発明の消泡剤および潤滑油組成物は、消泡性を必要とする潤滑油組成物のいずれにも好ましく採用できる。中でも、潤滑油に対して遠心作用およびせん断作用が働く潤滑条件下で用いられる潤滑油、例えば、自動車エンジン油、自動車変速機油、または自動車トランスアクスル油等において特に好ましく採用できる。
本発明の潤滑油の消泡方法は、各種潤滑油組成物に消泡性を付与するに際して好ましく用いることができ、潤滑油に対して遠心作用およびせん断作用が働く潤滑条件下で用いられる潤滑油に消泡性を付与するに際して特に好ましく用いることができる。
【符号の説明】
【0251】
1 ホモジナイザー
2 加熱用円筒ヒーター
3 温度調節器
4 油温測定用熱電対
5 ヒーター加熱用電源
6 油槽に相当するガラスシリンダー(目盛付き円筒型ガラス容器、内径40mm、深さ300mm、目盛:2mL間隔で0~250mL)
7 空気吹込み管(空気流入量30mL/分)
8 基準油面