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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】ウエハ洗浄の方法および装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240319BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20240319BHJP
   B05C 11/08 20060101ALI20240319BHJP
   B05B 7/08 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
H01L21/304 643C
H01L21/304 643A
H01L21/304 647Z
H01L21/304 648G
B08B3/02 B
B08B3/02 G
B05C11/08
B05B7/08
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021513833
(86)(22)【出願日】2019-09-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 EP2019074637
(87)【国際公開番号】W WO2020058159
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-08-05
(31)【優先権主張番号】1815163.9
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】510141648
【氏名又は名称】ラム・リサーチ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゼンメルロック・クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ツチンデール・ウーリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ゼルマー・ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】エステール・ウォルター
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0000322(US,A1)
【文献】特開2018-116977(JP,A)
【文献】特表2019-511125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B08B 3/02
B05C 11/08
B05B 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の液体でウエハの表面を処理するための方法であって、
前記ウエハの前記表面を回転させ、前記回転する表面に別々の流出口から一定順序で異なる液体流を吐出する工程を含み、
記順序において連続的な前記液体流の吐出は、移行段階中に重複し、
前記移行段階中に、前記液体流は、前記流出口から出た後に合流して前記回転する表面に衝突する前に合流液体流を形成する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記流出口は、前記合流液体流を形成するように互いに傾けられている、方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の方法であって、
前記合流液体流の間の真の流路交差角は、10°から40°である、方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法であって、
前記合流液体流の真の流路交差高さは、2~100mmである、方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法であって、
前記順序は、活性化工程およびリンス工程を交互に行う工程を含む、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
半導体の表面を処理する工程を含み、前記順序は、
(A)任意のリンス工程、
(B)有機物および/もしくは粒子汚染物質を除去する工程、
(C)任意のリンス工程、
(D)表面酸化物層を除去する任意の工程、
(E)任意のリンス工程、
(F)イオン汚染物質を除去する工程、ならびに、
(G)任意のリンス工程
の1サイクルもしくは複数サイクルを含む、または、工程(A)、工程(F)、工程(G)、工程(B)、工程(C)、工程(D)、工程(E)の順番の上記の変形を含む、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
前記方法は、
(A)必要に応じて、第1の流出口から吐出された水で前記表面をリンスする工程、
(B)第2の流出口から吐出されたアンモニアおよび過酸化水素の混合物を含む溶液で前記表面を処理する工程、
(C)必要に応じて、前記第1の流出口から吐出された水で前記表面をリンスする工程、
(D)必要に応じて、フッ化水素酸で前記表面を処理する工程、
(E)必要に応じて、前記第1の流出口から吐出された水で前記表面をリンスする工程、
(F)第3の流出口から吐出された酸および過酸化水素の混合物を含む溶液で前記表面を処理する工程、ならびに
(G)必要に応じて、前記第1の流出口から吐出された水で前記表面をリンスする工程
の1のサイクルもしくは複数のサイクルを含む、または、工程(A)、工程(F)、工程(G)、工程(B)、工程(C)、工程(D)、工程(E)の順番の上記の変形を含み、
前記順序は、サイクルごとにリンス工程(A)、リンス工程(C)、リンス工程(E)、およびリンス工程(G)の少なくとも1つを含む、方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法を実行するための液体分注装置であって、
2つ以上の液体搬送チューブを保持するハウジングを備え、
前記液体搬送チューブの流出口は、使用時に前記2つ以上の液体搬送チューブの前記流出口から送出された液体流が合流して合流液体流を形成するように、互いに内向きに傾けられている、液体分注装置。
【請求項9】
請求項8に記載の液体分注装置であって、
排出ポートで開口する内空間を規定する前記ハウジングと、
前記ハウジングの前記内空間に設置されたスペーサと、
前記ハウジングの前記内空間内の前記スペーサに沿って通り前記排出ポートに伸びる前記2つ以上の液体搬送チューブと、を備え、
前記2つ以上の液体搬送チューブは、使用時に前記2つ以上の液体搬送チューブの前記流出口から送出された液体流が合流して合流液体流を形成するように、前記液体搬送チューブの流出口が互いに内向きに傾くように前記スペーサの周りで屈曲されている、液体分注装置。
【請求項10】
請求項に記載の液体分注装置であって、
前記ハウジングおよび前記スペーサは、前記2つ以上の液体搬送チューブを所定位置に固定し、前記ハウジングの前記内空間は、前記スペーサの周りで前記液体搬送チューブを屈曲させることで前記液体搬送チューブの流出口を前記内向きに傾いた構成に配向するように、前記排出ポートにおいて、または前記排出ポートに向かって細くなる、液体分注装置。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の液体分注装置であって、
前記スペーサは、前記液体搬送チューブを収容する1または複数の通路を有する、液体分注装置。
【請求項12】
請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の液体分注装置であって、
前記ハウジングは本体部および脱着式キャップを備え、前記脱着式キャップは前記排出ポートを備える、液体分注装置。
【請求項13】
請求項から請求項12のいずれか1項に記載の液体分注装置であって、
前記液体搬送チューブの流出口の直線流路交差角は、10°から40°である、液体分注装置。
【請求項14】
請求項9から請求項13のいずれか1項に記載の液体分注装置を組み立てるための部品キットであって、
前記ハウジングと、
1または複数の前記スペーサと
を備える、部品キット。
【請求項15】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法を実行するための洗浄装置であって、
洗浄チャンバと、
前記洗浄チャンバ内のウエハホルダと、
前記ウエハホルダを回転させるための手段と、
請求項8から請求項13のいずれか1項に記載の液体分注装置と、
を備える、洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後の電子デバイスでの使用のために、ウエハ、特に半導体ウエハを洗浄するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハの性能は、ウエハの表面に存在する汚染物質に非常に影響を受けやすいため、汚染物質の潜在源を制限し、汚染物質が生じれば除去するために相当の労力が費やされている。この取り組みの一環として、残留汚染物質を除去するために処理中および処理後にウエハは洗浄工程が施される。
【0003】
ウエハ洗浄において最も一般的に接する洗浄作業の1つは、シリコンウエハの高温処理工程の前に実施される、いわゆる「RCA洗浄」である。この洗浄は、次の複数工程順序を含む:
(1)通常、脱イオン水、アンモニア、および過酸化水素の混合物を用いる有機物および粒子汚染物質の除去、
(2)必要に応じて、通常、フッ化水素酸を用いる、工程(1)で生成された薄酸化物層の除去、
(3)通常、脱イオン水、塩酸、および過酸化水素の混合物を用いるイオン汚染物質の除去、ならびに
(4)ウエハのリンスおよび乾燥。
【0004】
RCA洗浄および他のウエハ洗浄方法を実施する最も簡単な方法は、洗浄液を含む洗浄槽にウエハを浸漬し、必要に応じて、槽から取り出された基板をブラシを用いて機械的に洗浄することである。しかし、洗浄槽に混ざった汚染物質、またはブラシに付着した汚染物質がウエハ上に再付着する可能性があるため、この方法は最良ではない。この観点から、洗浄方法を実際に実用的にするため、洗浄槽自体がかなりのレベルの汚染の一因とならないことを確実にする必要があり(例えば、上記のRCA洗浄法では、ホウケイ酸ガラス製品は不純物が溶け出し汚染を引き起こすため使用不可能)、電子工業グレード(または、「CMOS」グレード)の洗浄液を用いることが必要である。
【0005】
簡単な基板の浸漬に関する不利点に対処するため、ウエハにスピン洗浄を施すことが知られている。この技術では、洗浄液がウエハの側面から飛散される前に遠心力によってウエハのエッジを越えて流れるように、洗浄液は回転台に保持された回転ウエハにスプレーされる。有利なことに、この洗浄液の流れは、槽洗浄には不可能な方法で、ウエハ表面から除去された汚染物質の再付着、および、洗浄液自体からの汚染物質の付着を最小限にするのに役立つ。
【0006】
連続する流体の送出に適したスピン洗浄装置の例は、US6,383,311に記載されている。発明者は、このシステムにおける、互いに別々に懸架装置に接続された、全てが同軸の周りを旋回可能な複数の分注アームを有するシステムについて説明している。この方法では、各アームは、流体を分注するためにウエハ上方の「動作」位置に旋回され、ウエハ上に流体の残留液滴が落ちるのを回避するためにウエハを「静止」位置に旋回されうる。複数の流体を分注するため、この装置は、第1の分注アームをウエハ上方に旋回させて流体を送出し、第1の分注アームをウエハから離して静止位置に旋回させ、第2の分注アームをウエハ上方に旋回させてさらなる流体を送出する。
【0007】
しかし、本発明者は、スピン洗浄装置を用いるRCA洗浄などの複数工程の洗浄作業の実施は問題がありうることを発見した。特に遠心力は、プロセス工程間でウエハの急速な乾燥を引き起こし、様々な洗浄液からの汚染物質の付着をもたらす可能性がある。加えて、完全なRCA洗浄を実施するためには、複数の異なる危険化学物質を用いなければならず、全ての異なる成分を安全に送出するのに適した装置の設計を複雑にする。
【0008】
従って、依然としてウエハを安全かつ効率的に洗浄するための改善された方法および装置を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0009】
先行技術による上記の不備を踏まえて、本発明者は、複数工程の洗浄作業後の汚染は、洗浄工程間のウエハの乾燥が制限されるまたは回避されるスピン洗浄作業を実施することにより最小限にできることを確認した。この発見から、本発明者はまず、ウエハを継続的にウェット状態に保つために、短期の「切替」期間または「移行」期間に連続する順序で洗浄液の送出が同時に起こる、ウエハの表面への直接的な一連の異なる洗浄液の送出を可能にする装置を開発しようとした。しかし、回転する表面に異なる液体流が同時に送出されたときに、ウエハ上の異なる衝突領域の間で波が発生され、著しい跳ね返りが起こることがわかった。かかる跳ね返りは、いくつかの理由で極めて望ましくない。第1に、ウエハの表面全体の液体の流れを妨げるため、洗浄液の無駄を引き起こす(高価な高純度(「CMOS」グレード)液体が用いられているときは重大留意事項である)。第2に、跳ね返りは、ウエハの表面全体の不均一な処理レベルをもたらしうる。第3に、跳ね返りは、洗浄工程で通常接する化学物質の多くの腐食性のため安全性の問題を引き起こしうる。第4に、洗浄液は装置(例えば、ノズル)に付着して工程間に相互汚染を引き起こし、ノズル装置の断続的な洗浄が必要になる可能性がある。これらの問題を考慮して、本発明者は、より安全でより効率的な連続ウェット洗浄方法の開発に努めることで本発明にたどり着いた。
【0010】
具体的には、第1の態様では、本発明は複数の液体によってウエハの表面を処理するための方法を提供する。この方法は、ウエハの表面を回転させる工程と、回転する表面に異なる流出口から異なる液体流を順番に吐出させる工程と、を含み、連続する順番での液体流の吐出は移行段階中に重複し、移行段階中に液体流は流出口から出た後に合流して、回転する表面に衝突する前に合流液体流を形成する。この手法によって、本発明者は、望ましくない跳ね返りを最小限にしながら、または排除しながら、ウエハが洗浄中に継続してウェット状態を保つことができることを発見した。特に、回転する表面に衝突する前に液体流を1つの合流液体流に合流させることは、液体がウエハ上の同じ点に送出されることで、洗浄中に表面の異なる部分に液体流が送出されるときに起こる問題の波の形成を回避できることを意味する。これに関して当業者は、本明細書で用いられる「洗浄」という用語が、特定の目的に限定する(例えば、「洗浄」が汚染物質を除去するため、またはウエハ自体の何らかの化学修飾を実行するためにウエハを洗浄することになりうる)ことなく、液体がウエハの表面に吐出される工程を一般に意味することを意図していることを理解する。
【0011】
本発明の方法では、この複数工程の方法は、「処理」段階およびその間の「移行」段階(あるいは、処理期間および移行期間を意味しうる)に分けられうる。「処理」段階は、特定の処理工程が実行される期間に相当する。「移行」段階は、2つの処理工程が基本的に同時に実行される、処理順序において隣り合う処理工程間(すなわち、処理段階間)の切替期間に相当する。例えば、液体Xおよび液体Yがそれぞれ送出される工程Aおよび工程Bを含む複数工程洗浄作業について、プロセスは、(i)Xのみが送出される処理段階、(ii)XおよびYの送出が同時に起こる移行段階、ならびに(iii)Yのみが送出される処理段階、の3つの段階を有する。
【0012】
移行段階の期間は、実施される特定のプロトコルに依存するが、例えば、少なくとも0.1秒、少なくとも0.2秒、少なくとも0.3秒、少なくとも0.4秒、少なくとも0.5秒、少なくとも1秒、または少なくとも2秒であってよい。移行段階期間の上限は、例えば、0.5秒、1秒、1.5秒、2秒、3秒、4秒、5秒、10秒、20秒、または30秒でありうる。1つ以上の移行期間を含む方法では、移行期間は同じ持続期間を有してよい、または異なってよい。
【0013】
先行する処理段階に対する移行段階期間の割合は、例えば、少なくとも0.01%、少なくとも0.1%、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも2%、または少なくとも5%であってよい。先行する処理段階に対する移行段階期間の割合の上限は、例えば、40%、30%、20%、10%、または5%であってよく、例えばその割合は、0.01%から40%、0.1%から30%、0.5%から20%、または1%から5%の範囲であってよい。1つ以上の移行期間を含む方法では、移行段階期間の割合は(全体として、または個々に)上記範囲に応じてよい。
【0014】
流出口は、合流液体流を形成するように互いに適切に傾けられている。流出口の角度は、放出された流れの流路がウエハの表面上方の位置「P」で交差する角度である。有利なことに、ウエハ表面の上方で液体流を合流させて合流液体流を形成するように流出口を配置することは、1つの液体の「柱」がウエハに衝突することで、同時に送出された液体流が合流されないとき、またはウエハの表面でのみ合流されるとき(すなわち、Pニアリーイコール0の場合)に生じる波の形成を回避できることを意味する。
【0015】
適した角度は、液体の流量、および、ウエハ表面上方の流出口の高さに依存するだろう。この角度は、送出される化学物質の種類にも依存しうる。例えば、異なる連続する工程の化学物質が互いに望ましくない反応をする場合、反応が起こる時間を制限するために位置Pがウエハの表面により近いことが都合がよいだろう。
【0016】
この角度は2つの異なる方法、「直線流路交差」角または「真の流路交差」角のいずれかで定義されうる。
【0017】
2つの流出口の「直線流路交差」角(θS)は、放出後に液体流の軌道に変化がないと仮定して2つの流出口から描かれた2本の直線によって定義される角度である。よって、直線流角は流量(特定の構成について一定)とは無関係であり、重力の影響を無視する。流路は、直線流の中心点に対応する線であるとみなされる。
【0018】
2つの流出口の「真の交差」角(θT)は、使用時に液体流の流路が実際に交わる角度である。よってこの流路は、流量および重力の影響を考慮した、流れの真の軌道を見込む。2つの液体流間の流路角は、(i)第2の流体流なしで(つまり、第2の流体流を止めて、またはそらせて)第1の流体流の軌道を測定することと、(ii)第の流体流なしで第2の流体流の軌道を測定することと、(iii)軌道が交わる点を決定し、その点付近の線の間の最大角を測定することとにより決定される。流路は、流れの中央点に対応する線とみなされる。必要に応じて、交点の計算を容易にするために軌道は二次方程式によって形成されうる。
【0019】
直線流路交差角および真の流路交差角は、特に低角度および高流量では同じでありうる。しかし、高角度および低流量では2つの測定値に違いが生じるだろう。
【0020】
一般に、直線流路交差角は、40°以下、35°以下、30°以下、または25°以下である。直線流路交差角は、少なくとも5°、少なくとも10°、少なくとも15°、または少なくとも20°であってよい。例えば、直線流路交差角は、10°から40°、15°から35°、または15°から30°であってよい。
【0021】
一般に、合流する液体流の間の真の流路交差角は、40°以下、35°以下、30°以下、または25°以下である。真の流路交差角は、少なくとも5°、少なくとも10°、少なくとも15°、または少なくとも20°であってよい。例えば、合流する液体流の間の真の流路交差角は、10°から40°、15°から35°、または15°から30°であってよい。
【0022】
液体流は、ウエハの回転する表面上に下向き(つまり、重力の一般的方向)に吐出されることが好ましい。
【0023】
一般に、個々の流路とウエハの回転軸との間の角度は、上記の「直線流路」方法または「真の流路」方法のいずれかによって決定されたように、40°以下、35°以下、30°以下、または25°以下であり、一般に少なくとも5°、少なくとも10°、少なくとも15°、または少なくとも20°(例えば、10°から40°、15°から35°、または15°から30°)である。
【0024】
本発明の方法の間に液体流が合流する高さは、特に限定されない。「高さ」という用語は、特定の配向(垂直/水平)に限定する意図なく、一般にウエハと液体流が合流する点との間の距離を示すのに用いられる。しかし、液体流は一般に回転する表面上に下向きに吐出され、この場合、「高さ」はその標準的な意味(つまり、ウエハの上方にある液体流の交点とウエハとの間の垂直距離)を有する。
【0025】
高さは2つの異なる方法、「直線流路交差高さ」(HS)または「真の流路交差高さ」(HT)で定義されうる。これらの高さの計算は、軌道が交わる点で角度を測定するのではなく、ウエハの表面までの距離を測定すること以外は、直線流路交差角および真の流路交差角について上述されたのと同じ手法に従う。上記のように、液体流が合流する高さは特に限定されない。これは、高さが衝突点における洗浄混合物の熱を決定するために重要なパラメータであるEP0618611とは対照的である。それでも一般に、処理段階から移行段階への切り替わり時に衝突面積が大幅に変化しないように、交差高さは比較的低いことが好ましい。
【0026】
一般に、直線流路交差高さは、少なくとも2mm、少なくとも5mm、少なくとも10mm、少なくとも15mm、少なくとも20mm、または少なくとも25mmである。直線流路交差高さは、100mm以下、90mm以下、80mm以下、70mm以下、60mm以下、50mm以下、40mm以下、または30mm以下であってよい。例えば、直線流路交差高さは、2mmから100mm、5mmから50mm、または10mmから40mmであってよい。
【0027】
一般に、合流する液体流の真の流路交差高さは、ウエハの表面から上に少なくとも2mm、少なくとも5mm、少なくとも10mm、少なくとも15mm、少なくとも20mm、または少なくとも25mmである。真の流路交差高さは、100mm以下、90mm以下、80mm以下、70mm以下、60mm以下、50mm以下、40mm以下、または30mm以下であってよい。例えば、合流する液体流の真の流路交差高さは、ウエハの表面から上に2mmから100mm、5mmから50mm、または10mmから30mmであってよい。
【0028】
合流した液体流はウエハに衝突し、続いて、ウエハの回転によって生じた遠心力によりウエハの表面の上を流れる。合流した液体流は、ウエハの任意の点に衝突するようにされうる。しかし通常、合流した液体流は、回転するウエハの回転軸に衝突するように吐出される。一般にこれは、ウエハが回転するウエハの中心に相当する。この方法では、液体はウエハの全面に渡り、最大遠心力を受けるだろう。上記のように、この方法は一般に、重力方向と一致する回転軸の周りを回るウエハ上に液体を下向きに吐出することにより実施される。かかる例では、回転するウエハの回転軸に衝突するような液体の送出を実現するために、液体流の交点はウエハの回転軸上、または回転軸付近(一般に、ウエハの中心上方)に位置する。
【0029】
本発明の方法における液体は、流れ/噴射の形態でウエハに送出される。つまり、液体はその後にウエハ上に定着する分散ミストまたは噴霧の形態で送出されるのではなく、特定の方向に「柱」として流れる。
【0030】
ウエハへの液体の流量は特定の適用に依存するが、例えば、少なくとも0.5L/分、少なくとも1L/分、少なくとも1.5L/分、または少なくとも2L/分であってよい。
【0031】
ウエハの回転速度は、例えば、少なくとも60rpm、少なくとも100rpm、少なくとも200rpm、または少なくとも300rpmであってよい。
【0032】
本発明の方法は、ウエハ(あるいは、「基板」を意味する)の表面を処理するのに用いられ、徹底した信頼できる洗浄プロトコルが非常に重要な半導体ウエハの処理に特によく適している。ここで「ウエハ」とは、スピン洗浄を効率的に実施するのに必要な高速での回転に適した、(一般に薄い)スライス状またはシート状の材料を意味する。例えばこの方法は、シリコンウエハの処理に適用されうる。
連続送出プロトコル
【0033】
本発明の方法は、多数の可能な複数工程の表面処理を実行するのに用いられうる。
【0034】
一般に、複数工程の表面処理は、活性化工程(ウエハおよび/またはウエハ表面上の構成部品と反応させるために1または複数の活性化学物質がウエハ表面に送出される)ならびにリンス工程(ウエハおよび/またはウエハ表面上の構成部品と激しくまたは全く反応させることなくウエハ表面をリンスするために1または複数の化学物質が送出される)を交互に行うことを含むだろう。一般にリンス工程は、水(脱イオン水などの精製水が最も好ましい)を用いる。この方法では、異なる活性化工程に関連する化学物質が作用する可能性が低下される、または排除される。
【0035】
いくつかの実施形態では、複数工程の表面処理は、上記の背景技術欄で述べられたRCA洗浄の実施に相当し、必要に応じてリンス工程が各活性化工程の間に実施される。例えば、この方法は半導体ウエハの表面を処理する工程を含んでよく、工程順序は、
(A)任意のリンス工程、
(B)有機物および/または粒子汚染物質を除去する工程、
(C)任意のリンス工程、
(D)表面酸化物層を除去する任意の工程、
(E)任意のリンス工程、
(F)イオン汚染物質を除去する工程、ならびに
(G)任意のリンス工程
の1サイクルもしくは複数サイクルを含む、または、例えば、工程(A)、工程(F)、工程(G)、工程(B)、工程(C)、工程(D)、工程(E)の順番で並び替えられた工程による上記の変形を含む。
【0036】
例えば、この方法は、
(A)必要に応じて水で表面をリンスする工程、
(B)アンモニアおよび過酸化水素の混合物で表面を処理する工程、
(C)必要に応じて水で表面をリンスする工程、
(D)必要に応じてフッ化水素酸で表面を処理する工程、
(E)必要に応じて水で表面をリンスする工程、
(F)酸(例えば、硫酸または塩酸)および過酸化水素の混合物で表面を処理する工程、ならびに
(G)必要に応じて水で表面をリンスする工程
の1サイクルもしくは複数サイクルを含んでよい、または、例えば、工程(A)、工程(F)、工程(G)、工程(B)、工程(C)、工程(D)、工程(E)の順番で並び替えられた工程による上記の変形を含んでよい。
【0037】
順序は、リンス工程(C)、リンス工程(E)、およびリンス工程(G)のうち少なくとも1つを含むことが好ましく、リンス工程(C)、リンス工程(E)、およびリンス工程(G)の全てを含むことが最も好ましい。リンス工程を含むことは、工程(B)、工程(D)、および工程(F)で用いられる異なる反応剤の間の反応を回避することに役立つ。
【0038】
上記の手順を実施するために、本発明により記載された方法で異なる液体成分が異なる流出口から送出される。異なる化学物質の組み合わせの使用を含む工程(つまり、工程(B)および工程(F))では、化学物質は予混合され、同じ流出口から送出されてよい。
【0039】
一実施形態では、この方法は、
(A)必要に応じて第1の流出口から吐出された水で表面をリンスする工程、
(B)第2の流出口から吐出されたアンモニアおよび過酸化水素の混合物を含む溶液で表面を処理する工程、
(C)必要に応じて、好ましくは第1の流出口から吐出された水で表面をリンスする工程、
(D)必要に応じてフッ化水素酸で表面を処理する工程、
(E)必要に応じて、好ましくは第1の流出口から吐出された水で表面をリンスする工程、
(F)第3の流出口から吐出された酸(例えば、硫酸または塩酸)および過酸化水素の混合物を含む溶液で表面を処理する工程、ならびに
(G)必要に応じて、好ましくは第1の流出口から吐出された水で表面をリンスする工程
の1サイクルもしくは複数サイクルを含む、または、工程(A)、工程(F)、工程(G)、工程(B)、工程(C)、工程(D)、工程(E)の順番による上記の変形を含み、この順序は、サイクルごとにリンス工程(A)、リンス工程(C)、リンス工程(E)、およびリンス工程(G)のうち少なくとも1つを含む。この順序は、
工程(B)、工程(C)、工程(F)、
工程(B)、工程(C)、工程(F)、工程(G)、
工程(B)、工程(C)、工程(D)、工程(E)、工程(F)、
工程(B)、工程(C)、工程(D)、工程(E)、工程(F)、工程(G)
のうちの1つから選択されることが好ましい。
【0040】
本発明の方法を実施するのに必要な流出口の数を制限するため、全てのリンス工程は、同じ流出口から吐出される水を用いて実行されることが好ましい。
洗浄装置
【0041】
本発明は、本発明の方法を実行するための洗浄装置も提供する。具体的には、第2の態様において、本発明は複数の液体で基板を処理するための洗浄装置を提供する。この洗浄装置は、
・洗浄チャンバ、
・洗浄チャンバ内のウエハホルダ、
・ウエハホルダを回転させるための手段、および
・2つ以上の液体搬送チューブを保持するハウジングを備える液体分注装置であって、チューブの流出口は、使用時に2つ以上の液体搬送チューブの流出口から送出される液体流が合流して合流液体流を形成するように、互いに内向きに傾けられている、液体分注装置
を備える。
【0042】
第3の態様では、本発明は第2の態様の洗浄装置での使用に適した液体分注装置を提供する。具体的には、かかる態様は、2つ以上の液体搬送チューブを保持するハウジングであって、チューブの流出口は、使用時に2つ以上の液体搬送チューブの流出口から送出される液体流が合流して合流液体流を形成するように互いに内向きに傾けられている、ハウジングを提供する。
【0043】
ここで、液体分注装置の選択的特徴および好ましい特徴が説明される。以下に記載される選択および好みは、本発明の第1の態様についても同等に当てはまることを理解されたい。
【0044】
液体分注装置のハウジングは、液体搬送チューブを適切に内向き傾斜構成に導き保持するのに役立つ。そのためにハウジングは、チューブを内向き傾斜構成に屈曲させる、液体搬送チューブを受け入れるための通路を組み込んでよい。例えば、特に有利な構成では、液体分注装置は、
・排出ポートで開口する内空間を規定するハウジング、
・ハウジングの内空間に設置されたスペーサ、および
・ハウジングの内空間内のスペーサに沿って排出ポートに伸びる2つ以上の液体搬送チューブ
を備え、2つ以上の液体搬送チューブは、使用時に2つ以上の液体搬送チューブの流出口から送出される液体流が合流して合流液体流を形成するように、チューブの流出口が互いに内向きに傾くようにスペーサの周りで屈曲されている。この構成では、2つ以上の液体搬送チューブは、スペーサとハウジングの内空間の壁との間でスペーサに沿って/スペーサの周りを通ってよい。この方法では、特定のハウジングについて、ハウジングの排出ポートに対するスペーサの幅およびその位置は、チューブの流出口の角度を決定するのに用いられうる。
【0045】
上記から、「スペーサ」は、チューブを所望の傾斜構成に導く構成部品であることが明らかである。スペーサは、別個の構成部品であることが好ましい。全ての実施形態において必須ではないが、スペーサは、ハウジングおよびスペーサの相対移動を制限または防止するために適した器具でハウジングに固定された別個の構成部品であってよい。例えば、スペーサは、ねじ、ピン、または栓によってハウジングに固定されてよい。かかる実施形態では、ハウジングは、ねじ、ピン、または栓を受け入れるためのスペーサの対応する穴と一致する貫通穴を有してよい。スペーサは、追加の(必要に応じて異なる)スペーサと交換されうる交換式/取り外し式スペーサであることが好ましい。これは、同じハウジングを用いて異なる構成を実現するのに異なるスペーサが用いられうるため、液体分注装置が異なるスペーサを組み込むことができる実施形態において特に都合がよい。
【0046】
一般に、ハウジングは液体搬送チューブを収容し、チューブを支持するのに役立つ。ハウジングは、筒状管状ハウジングなどの管状ハウジングであってよい(他の断面も可)。この方法では、液体搬送チューブは管状ハウジングの中に/管状ハウジングを通って挿入されてよい。
【0047】
一実施形態では、ハウジングおよびスペーサは2つ以上の液体搬送チューブを所定位置に固定し、ハウジングの内空間は、スペーサの周りで液体搬送チューブを屈曲させることでチューブの流出口を内向き傾斜構成に配向するように、排出ポートにおいて、または排出ポートに向かって狭まっている。この実施形態では、ハウジングの内空間は、排出ポートにおける、または排出ポートに向かう狭化を形成するように内向きにテーパ状であってよい。かかる場合、スペーサはハウジングのテーパ部内に伸びる、ハウジングのテーパ部を補完する先細りが設けられてよい。かかる配置は、所望の構成のチューブを装置に提供する簡単で効果的な方法を提供する。
【0048】
スペーサは、液体搬送チューブの位置決めを助けるための、液体搬送チューブを収容するのに適した1または複数の通路/溝を有することが好ましい。必要に応じて、ハウジングは液体搬送チューブを収容するための1または複数の通路を有する。スペーサおよびハウジングの両方が通路を組み込んでいる場合、(例えば、各液体搬送チューブについてハウジング内には半割り管の溝を設け、スペーサには補完的な半割り管の溝を設けることにより)ハウジングおよびスペーサがチューブを完全に囲むように液体分注装置内で組み立てられているときは、通路は閉流路を形成するように補完的であってよい。必要に応じて、通路はハウジング内の対応する通路なしにスペーサ内に設けられる。ハウジング内の通路からの干渉なしに異なるプロトコルを実施するために異なる数量および/または異なる配置の通路を有する異なるスペーサ同士で交換が可能なため(そうでなければ、異なるスペーサ同士で交換するときに正しい位置に干渉する)、この後者の実施形態は、スペーサがハウジング内で交換可能である場合に特に都合がよい。スペーサ内の通路は、液体搬送チューブの挿入および取り外しが容易になるように開通路(つまり、液体搬送チューブを完全に包囲しない通路)であることが好ましい。
【0049】
一実施形態では、液体分注装置は、スペーサ内/上に設けられた2つの(好ましくは開)通路内に位置する2つの液体搬送チューブを有する。適切にチューブ同士の間隔を空ける/距離を取るために、通路はスペーサの両側に沿って通ってよい。
【0050】
別の実施形態では、液体分注装置はスペーサ内/上に設けられた3つの(好ましくは開)通路内に位置する3つの液体搬送チューブを有する。
【0051】
特に有利な実施形態では、ハウジングは本体部および脱着式キャップを備え、脱着式キャップは排出ポートを含む。この方法では、脱着式キャップはスペーサおよび液体搬送チューブの調節を可能にするように取り外されうる。かかる実施形態では、脱着式キャップが取り外されたときは、スペーサは取り外し可能であることが好ましい。この方法では、補修管理目的で、または異なるプロトコルに適合する異なるスペーサに交換するためにスペーサを交換することが簡単である。脱着式キャップは、任意の適した係合(例えば、ねじ込み式(ねじ係合)、摩擦嵌合(押し込み係合)、またはスナップ式)で結合されてよい。脱着式キャップは、ハウジングの本体部および/またはスペーサとの係合によって取り付けられてよい。スペーサは、脱着式キャップが液体分注装置に取り付けられると適切に所定位置に保持/固定される別個の構成部品だが、脱着式キャップが取り外されたときは自由に取り外されうる。
【0052】
1つの好ましい配置では、液体分注装置は、
・排出ポートで開口する内空間を規定するハウジングであって、摩擦嵌合またはねじ込み式係合によって結合された本体部および脱着式キャップを有し、脱着式キャップは排出ポートを含む、ハウジングと、
・ハウジングの内空間に設置されたスペーサと、
・スペーサとハウジングの内空間の壁との間でスペーサの周りを通って排出ポートに伸びる2つ以上の液体搬送チューブと、を備え、
スペーサは2つ以上の液体搬送チューブを収容する通路をその外面に有し、脱着式キャップの内面は液体搬送チューブを収容するための通路を組み込んでいない。有利なことに、この実施形態では、脱着式キャップは強固なねじ込みまたは摩擦結合によって所定位置に保持されるが、キャップ内にチューブを支持する通路がないことで、スペーサおよび液体搬送チューブにかなり多くの回転を与えずにキャップを取り外すことが可能なようにキャップが回転されうることを意味する。これは、ハウジングの本体部に対してスペーサ/チューブを固定する器具がなくても、キャップ取り外し時のチューブのねじれが最小限にされうる、または排除されうることを意味する。これは、液体搬送チューブを損傷し、スペーサを上向きにハウジングに押し込んで取り外しをより困難にする可能性もある、チューブの変形またはもつれを回避することが容易であることを意味する。かかる実施形態は、液体搬送チューブの容易な交換も可能にする。特に、脱着式キャップの取り外しにより液体搬送チューブへのクランプ力が取り消され、液体搬送チューブがハウジングから(上向きまたは下向きに)引っ張り出されることが可能になる。
【0053】
上記の特に好ましい配置では、本体部は、管状ハウジング(つまり、中空管)であってよい。この方法では、液体搬送チューブは、中空管に容易に押し込められ/投入され、脱着式キャップによって所定位置に固定されうる。
【0054】
特に好ましい配置では、スペーサは止め面を備え、その止め面はハウジングの(例えば、ハウジング内の)対応する止め面に当接する。ハウジング内でスペーサの位置決めを助け、スペーサがハウジングに深く押し込まれ過ぎることを防ぐのに補完的な止め面が用いられうる。一実施形態では、スペーサの止め面はカラー部によって設けられる。
【0055】
特に好ましい実施形態では、液体分注装置は、
・排出ポートで開口する内空間を規定するハウジングであって、本体部および脱着式キャップを有し、脱着式キャップは排出ポートを含む、ハウジングと、
・ハウジングの内空間に設置され、カラー部および内向きテーパ部を有するスペーサと、
・スペーサとハウジングの内空間の壁との間でスペーサの周りを通って排出ポートに伸びる2つ以上の液体搬送チューブと、を備え、
スペーサは、2つ以上の液体搬送チューブを収容して液体搬送チューブを下方内向きテーパ部の上で屈曲構成に屈曲させる通路をその外面に有し、スペーサのカラー部は本体部の下方部分(本体部の「口」部分)に接し、脱着式キャップはスペーサのカラーの所定位置に(例えば、カラーとの摩擦嵌合により)保持される。スペーサは、必要に応じて適した固定手段によりハウジングに固定される。有利なことに、この配置は組み立てが特に簡単で確実な装置を提供する。特に、この装置は、ハウジングの本体部に液体搬送チューブを挿入し、スペーサに設けられた通路にチューブを設置し、スペーサのカラー部がハウジングの本体部の口に接触するまでスペーサをハウジングの本体部の所定位置に押し込み、最後に、チューブが必要な内向き傾斜構成を取るように脱着キャップをスペーサのカラーの所定位置に押し込む/ねじ込むことにより組み立てられてよい。
【0056】
液体搬送チューブは、(ハウジングの一体部品とは対照的に)ハウジング内に保持される別個の部品であることが好ましい。チューブは、例えばフッ素系チューブ(ペルフルオロアルコキシチューブなど)のプラスチック製チューブであってよい。
【0057】
液体が送出される流出口は、適した流量での液体の吐出流/噴射に適した任意の形態であってよい。流出口は、「ノズル」と呼ばれてもよい。流出口は、単なる液体搬送チューブの開口端であってよい。あるいは流出口は、液体の流れを導く別個のノズルであってよい。流出口は、液体が送出される導管と同じ内径を有してよい、または、いくつかの異なる形状(例えば、流量を増加させるためにより小さい断面)を有してよい。流出口の内径は特定の用途に望まれる特定の流れ特性に依存するだろうが、例えば、少なくとも2mm、少なくとも3mm、少なくとも4mm、少なくとも5mm、または少なくとも10mmであってよい。
【0058】
2つ以上の液体搬送チューブの流出口は、「直線流路交差角」について上述された範囲(例えば、10°から40°、15°から35°、または20°から30°)に該当することが好ましい。
【0059】
本発明の洗浄装置では、流出口は「直線流路交差高さ」について上述された範囲に従って、ウエハより上の高さに位置することが好ましい。例えば、直線流路交差高さは、2mmから100mm、5mmから50mm、または10mmから40mmであってよい。
【0060】
ウエハホルダは、適したウエハ把持手段を備える回転式プラットフォームであってよい。ウエハは、例えば真空チャック(または、真空グリップ)、エッジグリップチャック、またはベルヌーイチャック(または、ベルヌーイグリップ)によって回転式プラットフォームで保持されてよい。本発明の洗浄装置の洗浄チャンバは、ウエハの表面から流れる液体を回収するために、回転するプラットフォームおよびウエハを取り囲む環状液体回収体を備えてよい。
スペーサ
【0061】
さらなる態様では、本発明は、上述の装置および液体分注装置で用いるためのスペーサを提供する。特に好ましい実施形態では、スペーサは、
・スペーサをハウジングに固定するための固定手段を有する上方部分と、
・内向きテーパ部(例えば、円錐台形部)を有する下方部分と、
・上方部分と下方部分との間にあり、上方部分および下方部分より広い幅を有してスペーサをハウジング内に位置決めするのを助けるカラー部と、
を備え、スペーサの外面は液体搬送チューブを受け入れるための2つ以上の通路を備え、下方部分は液体搬送チューブを所望の構成に屈曲させるのに役立つ。
部品キット
【0062】
さらなる態様では、本発明は、本発明に従って液体分注装置を組み立てるための部品キットを提供する。このキットは、ハウジング、ハウジング本体内の位置決めのための1または複数のスペーサ、および、必要に応じて2つ以上の液体搬送チューブを含む(後者は別々に供給されうる)。キットは、液体搬送チューブを収容するための異なる数の通路を有する少なくとも2つのスペーサを含むことが好ましい。例えばキットは、2つの通路を有する第1のスペーサ、および、3つの通路を有する第2のスペーサを含んでよい。キットの構成部品は、上述された好ましい特徴および選択的な特徴のいずれを有してもよい。特にハウジングは、本体部および脱着式キャップを含む複数部品構成であってよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
ここで本発明の実施形態は、添付の図面を参照して例示のみのために説明される。
図1】本発明による液体分注装置の斜視図。
図2A図2Bと直交する図1の液体分注装置の断面図。
図2B図2Aと直交する図1の液体分注装置の断面図。
図3A】本発明の方法による液体送出順序を示す概略図。
図3B】本発明の方法による液体送出順序を示す概略図。
図3C】本発明の方法による液体送出順序を示す概略図。
図4】直線流路交差角と真の流路交差角との間の偏差を表す、本発明による液体分注装置からの送出を示す概略図。
図5】本発明の方法によるRCA洗浄の実施形態を示すフローチャート。
図6A】3管式スペーサの上部および底部を示す斜視図。
図6B】3管式スペーサの上部および底部を示す斜視図。
図7】2管式スペーサの底部の概略図。
図8A】本発明の液体分注装置の脱着式キャップの断面図。
図8B】本発明の液体分注装置の脱着式キャップの上部斜視図。
図8C】本発明の液体分注装置の脱着式キャップの底部斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図1は、本発明による液体分注装置1を示す。この装置は、本体部3および脱着式キャップ4を有する管状ハウジング2を組み込んでいる。ハウジングは、ねじ6によって所定位置に固定されたスペーサ5(次の図を参照)、および、液体貯蔵部(図示せず)に接続された3つのPFAチューブ7(次の図を参照)を備える。
【0065】
図2Aおよび図2Bは、それぞれ、図1のI-IおよびII-IIで示された平面に沿った、ハウジング2の内部の断面図である。ハウジングはスペーサ5およびチューブ7を収容し、後者は、脱着式キャップ4の内面およびスペーサ5の対応するテーパ状外面に設けられた内向きテーパ部のため、脱着式キャップ4の開口端を通って一定角度で突出している。
【0066】
図3Aから図3Cは、図1から図2に示された装置の動作を示す。図3Aでは、回転するウエハ12に第1のチューブ11から液体10の流れを送出することにより第1の洗浄工程が実行される。次に図3Bにおいて、装置は、第1のチューブ11からの第1の液体10の送出を維持しながら液体10’の流れが第2のチューブ11’から送出される移行期間に入る。液体10および液体10’とは、回転するウエハにその中心点で衝突する単一の流れを形成する。最後に図3Cでは、液体10’の流れは継続し、液体10の流れは停止されて、第2の洗浄工程をもたらす。
【0067】
図3Bは、液体がチューブ11およびチューブ11’から直線路に沿って排出されると仮定して、液体10および液体10’の理論上の流路を示す点線を表す。流路が交差する点「P」は、この場合は回転するウエハ12の表面から上に10mmである直線流路交差高さに相当する。θSで表される直線流路交差角は26°である。液体流量および回転するウエハ12の表面への近接は直線流からの著しいずれがないことを意味するため、この場合の真の流路交差角θTは、直線流に基づいて計算されたものとおおよそ同じである。これは図4に示された状態と対照的であり、図4では、低流量およびより鋭角なノズルの組み合わせは、直線流路角θSが真の流路角θTより大きいこと、および、同様に真の交差高さが直線流路高さに基づいて予測されたものより低いことを意味する。
【0068】
図5は、図1から図4に示された3管式液体分注装置を用いるRCA洗浄の実施形態を示す。第1のチューブから脱イオン水が分注され、第2のチューブから脱イオン水中のアンモニアおよび過酸化水素の水性混合物が分注され、第3のチューブから脱イオン水中の硫酸および過酸化水素の水溶性混合物が分注される。影付部分は、液体が関連チューブから同時に送出される移行段階を表す。
【0069】
図6Aおよび図6Bは、図2のスペーサ構成部品をより詳細に示している。スペーサ20は、液体搬送チューブ(図示せず)を受け入れるための3つの通路を備える。スペーサは、ハウジング内でスペーサを水平に安定して位置決めするためにハウジングの内空間と同等の直径を有するカラー22を備える。カラーは、ハウジング内の対応するねじ山と係合するように、その外面にねじ山(図示せず)が設けられている。カラーはまた、ハウジング内でスペーサを垂直に位置決めし、ハウジング内でスペーサが押し込まれすぎることを防ぐように、使用時にハウジングの管状部分3の口領域(図2参照)に接する当接面23と、脱着式キャップの対応する止め面に接する下部当接面とを有する。カラーの下には、ハウジングの対応する内向きテーパ状空間内に適合し、チューブを所定位置に屈曲させるテーパ部24が設けられている。カラーの上のスカラップ部25(つまり、通路間の「空き」領域)は、スペーサのハウジングへの挿入時の摩擦を最小限にし、一般にスペーサを製造するのに用いられる材料の量を低減するのに役立つ。またスペーサ20は、図2Aに示されたように、ねじを用いてハウジングにスペーサを固定するために用いられうるねじ穴27とアンカー部26とを組み合わせる。図7は、液体搬送チューブ(図示せず)を受け入れるための通路31を2つのみ有する別のスペーサ30であり、他の機能はスペーサ20について示されたものと同じである。
【0070】
図8A図8Cは、脱着式キャップ40の特徴をより詳細に示している。図8Aは、キャップ40の断面図である。キャップは、スペーサ20のカラー22に対応する直径の上空間41を備える。上空間の表面は、キャップを所定位置に保持するために、スペーサのカラーに設けられた対応するねじ山に螺合するねじ山(図示せず)を備える。キャップは、開口排出ポート43で終端する円錐台形を有する下空間42も備える。下空間は、22°以下の円錐角を有し、スペーサのテーパ部と共に液体搬送チューブを内向き傾斜構成に導く。上空間41と下空間42との間にはより大きい直径を有する中間空間44があり、プラスチック製の液体搬送チューブが所定位置に向かって屈曲したときの外向きのふくらみを許容し、チューブの擦損を避けることを可能にする。図8Bおよび図8Cは、それぞれ、排出ポートにおいてより狭い断面を表す上空間41および下空間42に入るキャップの図を示す。
【0071】
本開示の結果を適切に得るために本開示の機能、方法、またはプロセスを実施するための特定の形態で、またはその手段に関して述べられた上記の説明、または以下の特許請求の範囲、または添付の図面に開示された特徴は、別々に、またはかかる特徴の任意の組み合わせにより、本発明を様々な形態で実現するために用いられてよい。
【0072】
本発明は上述の例示的な実施形態と共に説明されたが、本開示が提供されたときは、当業者には多くの同等の変形例および変更例が明らかになるだろう。従って、上記の本発明の例示的実施形態は一例とみなされ、限定的ではない。上記実施形態への様々な変更は、本発明の精神および範囲を逸脱することなく行われてよい。
【0073】
疑義を回避するため、本明細書に記載の論理的説明は、読み手の理解を向上させるために提供される。本発明者は、これらの論理的説明のいずれにも制約されることを望まない。
【0074】
本明細書に用いられた見出しは構造的目的に限り、記載の主題を限定すると解釈されるべきではない。
【0075】
以下の特許請求の範囲を含む本明細書を通じて、文脈が必要としない限り、「備える」および「含む」との単語は、規定の整数もしくは工程、または整数群もしくは工程群の包含を意味するが、他の整数もしくは工程、または他の整数群もしくは工程群の除外を意味するものではいことが理解されるだろう。
【0076】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられるように、文脈が明確に要求しない限り、単数形の冠詞「a」、「an」、および「the」は、複数の指示対象を含む。本明細書において、範囲は「おおよそ」1つの特定値から、および/または、「おおよそ」別の特定値までとして表されてよい。かかる範囲が表されたときは、別の実施形態が1つの特定値から、および/または、他の特定値までを含む。同様に、前出の「おおよそ」を用いて値が近似値として表されたときは、特定値が別の実施形態を形成することが理解されるだろう。数値に関して「おおよそ」との用語は選択的であり、例えば+/-10%を意味する。また本開示は、以下の形態として実現できる。
[形態1]
複数の液体でウエハの表面を処理するための方法であって、
前記ウエハの前記表面を回転させ、前記回転する表面に別々の流出口から一定順序で異なる液体流を吐出する工程を含み、
前記一定順序において連続的な前記液体流の吐出は、移行段階中に重複し、
前記移行段階中に、前記液体流は、前記流出口から出た後に合流して前記回転する表面に衝突する前に合流液体流を形成する、方法。
[形態2]
形態1に記載の方法であって、
前記流出口は、前記合流液体流を形成するように互いに傾けられている、方法。
[形態3]
形態1または形態2に記載の方法であって、
前記合流液体流の間の真の流路交差角は、10°から40°である、方法。
[形態4]
形態1から形態3のいずれか1つに記載の方法であって、
前記合流液体流の真の流路交差高さは、2~100mmである、方法。
[形態5]
形態1から形態4のいずれか1つに記載の方法であって、
前記順序は、活性化工程およびリンス工程を交互に行う工程を含む、方法。
[形態6]
形態5に記載の方法であって、
半導体の表面を処理する工程を含み、前記工程順序は、
(A)任意のリンス工程、
(B)有機物および/もしくは粒子汚染物質を除去する工程、
(C)任意のリンス工程、
(D)表面酸化物層を除去する任意の工程、
(E)任意のリンス工程、
(F)イオン汚染物質を除去する工程、ならびに、
(G)任意のリンス工程
の1サイクルもしくは複数サイクルを含む、または、工程(A)、工程(F)、工程(G)、工程(B)、工程(C)、工程(D)、工程(E)の順番の上記の変形を含む、方法。
[形態7]
形態6に記載の方法であって、
前記方法は、
(A)必要に応じて、第1の流出口から吐出された水で前記表面をリンスする工程、
(B)第2の流出口から吐出されたアンモニアおよび過酸化水素の混合物を含む溶液で前記表面を処理する工程、
(C)必要に応じて、好ましくは前記第1の流出口から吐出された水で前記表面をリンスする工程、
(D)必要に応じて、フッ化水素酸で前記表面を処理する工程、
(E)必要に応じて、好ましくは前記第1の流出口から吐出された水で前記表面をリンスする工程、
(F)第3の流出口から吐出された酸(例えば、硫酸もしくは塩酸)および過酸化水素の混合物を含む溶液で前記表面を処理する工程、ならびに
(G)必要に応じて、好ましくは前記第1の流出口から吐出された水で前記表面をリンスする工程
の1のサイクルもしくは複数のサイクルを含む、または、工程(A)、工程(F)、工程(G)、工程(B)、工程(C)、工程(D)、工程(E)の順番の上記の変形を含み、
前記順序は、サイクルごとにリンス工程(A)、リンス工程(C)、リンス工程(E)、およびリンス工程(G)の少なくとも1つを含む、方法。
[形態8]
形態1から形態7のいずれか1つに記載の方法を実行するのに適した液体分注装置であって、
2つ以上の液体搬送チューブを保持するハウジングを備え、
前記チューブの流出口は、使用時に前記2つ以上の液体搬送チューブの前記流出口から送出された液体流が合流して合流液体流を形成するように、互いに内向きに傾けられている、液体分注装置。
[形態9]
形態8に記載の液体分注装置であって、
排出ポートで開口する内空間を規定する前記ハウジングと、
前記ハウジングの前記内空間に設置されたスペーサと、
前記ハウジングの前記内空間内の前記スペーサに沿って通り前記排出ポートに伸びる前記2つ以上の液体搬送チューブと、を備え、
前記2つ以上の液体搬送チューブは、使用時に前記2つ以上の液体搬送チューブの前記流出口から送出された液体流が合流して合流液体流を形成するように、前記チューブの流出口が互いに内向きに傾くように前記スペーサの周りで屈曲されている、液体分注装置。
[形態10]
形態7に記載の液体分注装置であって、
前記ハウジングおよび前記スペーサは、前記2つ以上の液体搬送チューブを所定位置に固定し、前記ハウジングの前記内空間は、前記スペーサの周りで前記液体搬送チューブを屈曲させることで前記チューブの流出口を前記内向きに傾いた構成に配向するように、前記排出ポートにおいて、または前記排出ポートに向かって細くなる、液体分注装置。
[形態11]
形態9または形態10に記載の液体分注装置であって、
前記スペーサは、前記液体搬送チューブを収容する1または複数の通路を有する、液体分注装置。
[形態12]
形態9から形態11のいずれか1つに記載の液体分注装置であって、
前記ハウジングは本体部および脱着式キャップを備え、前記脱着式キャップは前記排出ポートを備える、液体分注装置。
[形態13]
形態8から形態12のいずれか1つに記載の液体分注装置であって、
前記チューブの流出口の直線流路交差角は、10°から40°である、液体分注装置。
[形態14]
形態9から形態13のいずれか1つに記載の液体分注装置を組み立てるための部品キットであって、
前記ハウジングと、
1または複数の前記スペーサであって、液体搬送チューブを収容するための異なる数の通路を有する少なくとも2つのスペーサであることが好ましい、1または複数の前記スペーサと、
を備える、部品キット。
[形態15]
形態1から形態7のいずれか1つに記載の方法を実行するための洗浄装置であって、
洗浄チャンバと、
前記洗浄チャンバ内のウエハホルダと、
前記ウエハホルダを回転させるための手段と、
形態8から形態13のいずれか1つに記載の液体分注装置と、
を備える、洗浄装置。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C