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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】二重作用CD1d免疫グロブリン
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20240319BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240319BHJP
   A61K 47/65 20170101ALI20240319BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240319BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20240319BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240319BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20240319BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
A61P35/00
A61P35/02
A61K47/65
A61K39/395 T
C12P21/08
C12N15/13
C12N15/62 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021515488
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 NL2019050624
(87)【国際公開番号】W WO2020060405
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-08-12
(31)【優先権主張番号】2021664
(32)【優先日】2018-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】517262346
【氏名又は名称】ラヴァ・セラピューティクス・エヌ・ヴイ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・イェレ・ファン・デル・フリート
(72)【発明者】
【氏名】ルーラント・ラメリス
(72)【発明者】
【氏名】タニヤ・デニス・デ・グライル
(72)【発明者】
【氏名】パウル・ウィレム・ヘンリ・イダ・パレン
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-513521(JP,A)
【文献】特表2018-508229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)配列番号85のアミノ酸配列を含む第1の結合部分;及び
(ii)配列番号86のアミノ酸配列を含む第2の結合部分
を含む結合分子であって、iNKT細胞及びVγ9Vδ2-T細胞を活性化して増殖することができる結合分子。
【請求項2】
Vδ1 T細胞活性化を低下させることができる、請求項1に記載の結合分子。
【請求項3】
N-からC-終端に亘り、第1の結合部分、リンカー、及び第2の結合部分を含む、請求項1又は2に記載の結合分子。
【請求項4】
リンカーが、配列番号83のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の結合分子。
【請求項5】
配列番号87に示される配列を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項6】
腫瘍ターゲティング部分を更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項7】
医薬として使用するための、請求項1から6のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項8】
腫瘍の処置において使用するための、請求項1から7のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項9】
腫瘍が、T細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、マントル細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、くすぶり型骨髄腫、ホジキンリンパ腫、骨髄単球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、ヘアリーセル白血病、及び脾臓周辺帯リンパ腫等の血液系腫瘍、又は腎細胞癌、メラノーマ、結腸直腸癌、頭頚部がん、乳がん、前立腺がん、肺がん、膵臓がん、胃食道がん、小腸癌、中枢神経系腫瘍、髄芽腫、肝細胞癌、卵巣がん、神経膠腫、神経芽細胞腫、尿路上皮癌、膀胱がん、肉腫、陰茎がん、基底細胞癌、メルケル細胞癌、神経内分泌癌、神経内分泌腫瘍、原発不明癌(CUP)、胸腺腫、外陰がん、子宮頸癌、精巣がん、胆管細胞癌、虫垂癌、中皮腫、乳頭部癌、肛門がん、及び絨毛癌等の固形腫瘍から選択される、請求項8に記載の結合分子。
【請求項10】
請求項1に記載の結合分子及び薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫学の分野、更に詳細には、ナチュラルキラーT(NKT)細胞及びガンマ(γ)-デルタ(δ)T細胞を含むCD1d拘束性T細胞の活性化及びブロッキング、並びにCD1dを発現する細胞の機能の調節等のCD1d媒介生物学的機能を改変する抗体及びその断片を含む、ヒトCD1dに結合する結合分子及び/又は免疫グロブリンの分野に関する。本発明は、CD1d及びγδT細胞受容体(TCR)及び/又は腫瘍標的に結合する二重、三重又は多特異性結合分子及び/又は免疫グロブリンにも関する。本発明は、疾患又は障害の処置におけるそのような一重、二重、及び三重、若しくは多特異性結合分子並びに/又は免疫グロブリンの医薬品及び使用に更に関する。
【背景技術】
【0002】
CD1dは、糖タンパク質のCD1(表面抗原分類1)ファミリー(CD1a、CD1b、CD1c、CD1d及びCD1eを含む)のメンバーであり、抗原提示細胞(APC)を含む、種々のヒト細胞の表面で発現される。CD1は、非古典的MHCタンパク質であり、クラスI MHCタンパク質に関係しており、T細胞のサブグループに脂質抗原を提示することに関与している。ヒトでは、CD1dはR3G1としても知られるCD1Dによりコードされている。CD1dを表示するAPCは、B細胞、樹状細胞(例えば、リンパ節に)、及び単球を含む。CD1dは、例えば、肝臓、膵臓、皮膚、腎臓、子宮、結膜、精巣上体、胸腺及び扁桃腺において種々の他の細胞型によっても発現される(Canchisら、(1992) Immunology 80:561頁)。
【0003】
CD1dを介して活性化される/刺激される細胞は、CD1d拘束性ナチュラルキラー細胞T細胞(NKT細胞)を含む。NKT細胞は、T細胞とナチュラルキラー細胞の両方の特性を共有するT細胞の不均一なグループである。NKT細胞は、アルファ(α)/ベータ(β)T細胞受容体(TCR)、そのうえNK細胞に典型的に関連している種々の分子マーカーを発現するT細胞のサブセットである。
【0004】
1型又はインバリアントNKT(iNKT)細胞は、NKT細胞のうち最も良く研究されているグループであり、そのT細胞受容体が多様性をはるかに制限されている(「インバリアント」)点で通常のαβ-T細胞とは異なっている。これらのインバリアントNKT細胞は、しかし他のCD1d拘束性NKT細胞も(II型NKT)、APC上に存在するCD1d分子により提示される、(自己又は外来)脂質、糖脂質、スルファチド、リン脂質、リポペプチド、疎水性ペプチド及び/又は両親媒性αヘリックスペプチド等のいくつかの抗原を認識する(Enrico Girardiら、(2016) J Biol Chem. 291(20): 10677頁)。(抗原提示)CD1dとTCRの間の相互作用は、インターフェロンγ、腫瘍壊死因子α、並びにIL-4、IL-5及びIL-13のようなインターロイキン等のTh1-及び/又はTh2-様サイトカインを含むサイトカインの放出の引き金を引く。
【0005】
α-ガラクトシルセラミド、KRN7000、は、インビトロ及びインビボでのNKT細胞活性化における脂質結合CD1dの最も良く研究されているリガンドである。他のリガンドは、イソグロボトリヘキソシルセラミド(マウスiNKT細胞では)、(微生物由来)グリクロノシルセラミド、α-C-ガラクトシルセラミド、トレイトールセラミド、並びにリゾホスファチジルコリン及びリゾスフィンゴミエリン等の種々の(ヒト及び非ヒト)糖脂質を含む(Foxら、(2009) PLOS Biology 7:10:e1000228)。
【0006】
iNKT細胞の重要な役割は、自己免疫、アレルギー、抗菌、及び抗腫瘍免疫応答の調節において実証されてきた(van der Vlietら、(2004) Clin Immunol 112(1): 8頁)。生理的には、NKT細胞は、状況に応じて、多発性骨髄腫細胞での細胞死の誘導を含む種々の機構を通して、抗腫瘍、自己免疫、及び抗病原体応答を含む免疫応答を増強する又は阻害することができる(Yueら、(2010) J Immunol 184: 268頁)。(インバリアント)NKT細胞が関与している場合がある状態は、重症筋無力症、乾癬、潰瘍性大腸炎、原発性胆汁性肝硬変、大腸炎、自己免疫性肝炎、アテローム動脈硬化症、及び喘息を含む、自己免疫又は炎症性疾患を含む。サイトカイン放出に加えて、パーフォリン放出及びグランザイム放出並びに細胞死等の、細胞溶解をもたらすNKT細胞エフェクター機能は、がん等のNKT細胞が関係づけられる状態にも関連している場合がある。
【0007】
そのT細胞受容体(TCR)利用及び抗原特異性に基づいて、CD1d拘束性NKT細胞は、主に2つの主要サブセット:正準インバリアントTCRα鎖を使用しαガラクトシルセラミド(α-GalCer)を認識するI型NKT細胞及び更に多様なαβ-TCRレパートリーを使用しα-GalCerを認識しないII型NKT細胞に分割されてきた。更に、非正準αβ-TCRを使用するα-GalCer反応性NKT細胞及びγδ-又はδ/αβ-TCRを使用するCD1d拘束性T細胞が最近同定されており、CD1d拘束性T細胞間のさらなる多様性を明らかにしている(Macho-Fernandez and Brigl (2015) Front Immunol 6:362頁)。
【0008】
I型NKT細胞
1997年のKawano及び同僚たちによる最初のCD1d提示抗原であるαガラクトシルセラミド(α-GalCer)の発見により、NKT細胞生物学についての、特に、I型又はインバリアントNKT(iNKT)細胞についての我々の理解に向けてのいくつかの重要なステップが可能になった(Kawanoら、(1997) Science 278:1626頁)。I型NKT細胞は、マウスではインバリアントVα14Jα18 TCRα鎖、ヒトではVα24Jα18を発現し、これは限られたレパートリーのTCRβ鎖(マウスではVβ8, Vβ7, Vβ2及びヒトではもっぱらVβ11)と対になっている。I型NKT細胞は、定常状態でも高度に自己反応性であり、高い表面レベルの活性化マーカーCD69、CD44、及びCD122(IL-2Rβ鎖)並びにリンパ節へと帰るナイーブT細胞により発現されるマーカーである低発現のCD62Lを有する活性化/記憶表現型を示す(Bendelacら、(1992) J Exp Med 175:731頁; Matsudaら、(2000) J Exp Med 192:741頁)。I型NKT細胞は、WTマウスと比べてI型NKT細胞欠損Jα18-/-マウスにおける自然に生じた腫瘍の迅速な成長により示されるように、天然の抗腫瘍応答に決定的に寄与している(Smythら、(2000) J Exp Med 191:661頁; Swannら、(2009) Blood 113:6382頁; Belloneら、(2010) PLoS One 5:e8646)。更に、α-GalCerによるI型NKT細胞の活性化は、そのIFN-γ-産生並びにそれに続く樹状細胞(DC)及びNK細胞の活性化を通じて血液悪性腫瘍及び固形腫瘍に対して強力な効果を提供する(Smythら、(2002) Blood 99:1259頁; Berzofsky and Terabe (2008) J Immunol 180:3627頁)。これとは対照的に、スルファチド活性化II型NKT細胞は、サイトカイン分泌及び拡大の点で、α-GalCerに応答したI型NKT活性化を抑止することにより(Ambrosinoら、(2007) J Immunol 179:5126頁)、抗腫瘍免疫を阻止する(Terabeら、(2000) Nat Immunol 1:515頁; Terabeら、(2005) J Exp Med 202:1627頁; Renukaradhyaら、(2008) Blood 111:5637頁)。更に、そのIL-13産生は、TNF-αと組み合わさると、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)によるTGF-β分泌を上方調節し、細胞障害性T細胞活性を減少させた(Terabeら、(2003) J Exp Med 198:1741頁)。
【0009】
II型NKT細胞
Vα14-Jα18再編成を発現せずα-GalCerを認識しないCD1d拘束性T細胞は、MHC II欠損マウスにおいて残存していたCD4+T細胞のうちにあることがはじめて記載された(Cardell Sら、(1995) J Exp Med 182:993頁)。それ以来、多様なNKT(dNKT)、II型NKT、又は変異NKT(vNKT)細胞と呼ばれ、このNKT細胞集団は、マウスでもヒトでも見出されるが、更に不均一なTCRレパートリーを示す。いくつかの証拠は、II型NKT細胞が、時折I型NKT細胞と反対の役割で、一定範囲の免疫応答に寄与しこれを調節できることを示唆している。
【0010】
γδT細胞
αβTCRを有するCD1d拘束性T細胞に加えて、γδTCRを発現するCD1d拘束性T細胞が最近マウスでもヒトでも記載された。そのVδ鎖発現に従って、ヒトγδT細胞は2つの主要な集団:Vδ2+及び「非Vδ2」サブセットに分けることができ、後者は、特にVδ1+γδT細胞及びそれほど広く行き渡ってはいないVδ3+γδT細胞を含む(McVayら、(1999) Crit Rev Immunol 19:431頁; Vantourout and Hayday (2013) Nat Rev Immunol 13:88頁)。Vδ1+γδT細胞は主に組織常在性であり、皮膚に及び粘膜表面に見出され、Vδ2+γδT細胞はヒト血液中で優勢である。αβT細胞と比べると、γδT細胞により認識される抗原の種類並びにγδTCR認識における抗原提示の役割及び機能ははるかによく分かっていない。興味深いことに、一部のγδT細胞は、CD1d提示脂質抗原を直接認識することが最近見出されている(Hayday and Vantourout (2013) Immunity 39:994頁)。2013年、Uldrichら、(2013) Nature Immunol 14: 1137頁は、α-GalCerを含む、選択された糖脂質抗原との組合せでCD1dを認識したγδT細胞集団を同定していた。これらのT細胞は、CD1d拘束性Vδ1+T細胞と呼ばれる。理論に縛られずに、Vδ1+T細胞は、効果的な抗腫瘍応答について逆効果を招くことがある炎症応答を及ぼしうると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2016122320号
【文献】国際公開第2007059782号
【文献】国際公開第2010134666号
【文献】国際公開第2014081202号
【文献】国際公開第2013157953号
【文献】国際公開第2009080254号
【文献】国際公開第2009058383号
【文献】国際公開第2012023053号
【文献】国際公開第2010111625号
【文献】国際公開第2010059315号
【文献】国際公開第2015156673号
【非特許文献】
【0012】
【文献】Canchisら、(1992) Immunology 80:561頁
【文献】Enrico Girardiら、(2016) J Biol Chem. 291(20): 10677頁
【文献】Foxら、(2009) PLOS Biology 7:10:e1000228
【文献】van der Vlietら、(2004) Clin Immunol 112(1): 8頁
【文献】Yueら、(2010) J Immunol 184: 268頁
【文献】Macho-Fernandez and Brigl (2015) Front Immunol 6:362頁
【文献】Kawanoら、(1997) Science 278:1626頁
【文献】Bendelacら、(1992) J Exp Med 175:731頁
【文献】Matsudaら、(2000) J Exp Med 192:741頁
【文献】Smythら、(2000) J Exp Med 191:661頁
【文献】Swannら、(2009) Blood 113:6382頁
【文献】Belloneら、(2010) PLoS One 5:e8646
【文献】Smythら、(2002) Blood 99:1259頁
【文献】Berzofsky and Terabe (2008) J Immunol 180:3627頁
【文献】Terabeら、(2000) Nat Immunol 1:515頁
【文献】Terabeら、(2005) J Exp Med 202:1627頁
【文献】Renukaradhyaら、(2008) Blood 111:5637頁
【文献】Ambrosinoら、(2007) J Immunol 179:5126頁
【文献】Terabeら、(2003) J Exp Med 198:1741頁
【文献】Cardell Sら、(1995) J Exp Med 182:993頁
【文献】McVayら、(1999) Crit Rev Immunol 19:431頁
【文献】Vantourout and Hayday (2013) Nat Rev Immunol 13:88頁
【文献】Hayday and Vantourout (2013) Immunity 39:994頁
【文献】Uldrichら、(2013) Nature Immunol 14: 1137頁
【文献】Bachyら、(2016) J Exp Med 213 No. 5: 841頁
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【文献】Birdら、Science 242, 423-426頁(1988)
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【文献】Roweら、Handbook of Pharmaceutical Excipients、2012年6月、ISBN 9780857110275
【文献】De Bruinら、(2016) Clin Immunol 169:128頁
【文献】Lameris Rら、(2016) Immunology 149(1):111頁
【文献】Nambiarら、(2015) MAbs 7:638頁
【文献】Migalovich Sheikhetら、(2018) Front Immunol 9:753頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上で示される理由で、CD1d媒介効果の調節は潜在的な治療効果がある。インビトロでもインビボでもCD1dに特異的に結合する及び/又はこれと相互作用することができる結合分子の継続的な必要性が存在する。特に、NKT細胞活性化等のしかしこれに限定されないCD1dに結合する及び/又はCD1dに関連する生物学的機能を調節(活性化する又は阻害する)するような結合分子の必要性が存在する。そのような結合分子は、例えば、CD1d媒介機能が役割を果たしている種々の疾患において利益を示す可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、CD1dリガンドの必要なしでiNKT(I型NKT)細胞を特異的に活性化する1D12又はVHH12と命名された単一ドメイン抗体を以前同定していた(国際公開第2016122320号)。本発明は、1D12がiNKT細胞を活性化することができるだけでなく、同時にCD1d拘束性Vδ1+T細胞活性化を遮断することもできることをはじめて明らかにしている。この知見は今や、1D12は、CD1d拘束性Vδ1+T細胞活性化により引き起こされる、維持される及び/又は伝播される障害の処置のために使用することができるという考えを導く。当業者であれば、この特定の使用は1D12に限られず、1D12に機能的に及び/又は構造的に類似しているいかなる抗体にも広がることを認識する。
【0015】
第1の態様では、本発明は、CD1d拘束性Vδ1+T細胞活性化により引き起こされる、維持される及び/又は伝播される障害の処置において使用するための、CD1d分子への結合の際に単一ドメイン抗体1D12(配列番号4)と競合することができる第1の結合部分を含む結合分子を提供する。
【0016】
第2の態様では、本発明は、CD1d分子への結合の際に1D12(配列番号4)と競合することができる第1の結合部分を含み、Vγ9Vδ2-TCRに特異的に結合することができる第2の結合部分を含む結合分子であって、Vγ9Vδ2 T細胞を活性化することができる結合分子を提供する。本発明者らは、二重特異性CD1d/Vγ9Vδ2-TCR抗体がiNKT細胞及びVγ9Vδ2-T細胞の脱顆粒を誘導し、CD1d発現腫瘍細胞の成長を制御することができることを明らかにした。更に、マウス多発性骨髄腫モデルでは、二重特異性CD1d/Vγ9Vδ2-TCR抗体と併せたiNKT細胞とγδT細胞両方の注入により、抗体なしのiNKT細胞とγδT細胞の混合物単独と比べて生存が有意に伸びた。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、本発明の第2の態様に従った組成物及び薬学的に許容される賦形剤を提供する。
【0018】
さらなる態様では、本発明は、疾患又は障害を処置する方法であって、それを必要とする対象に本発明に従った結合分子を投与する工程を含む方法を提供する。
【0019】
本発明のさらなる態様及び実施形態は下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1-1】インバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞の抗CD1d VHH媒介活性化及び阻害。iNKT CD25発現及びインターフェロン-γ(IFN-γ)産生は、抗CD1d VHH 1D12(100nM)若しくは1D12(1000nM)と組み合わせて又は組合せなしで、iNKT細胞と溶媒対象(溶媒)又はαGalCerでパルスしたCD1dトランスフェクトHeLa細胞の24時間共培養後に判定した。代表的ドットプロットは、iNKT細胞IFN-γ産生における著しい増加(1D12による)又は減少(1D22による)(C及びD)に加えて、CD25発現により示されているiNKT細胞の1D12(A)による著しい活性化又は1D22(B)による阻害を図示している。データは、異なるドナーから得られたiNKTを用いた3~4の個々の実験の平均+SDを表し、**P<0.01、***P<0.001、テューキーの事後検定を用いた一元配置分散分析で計算した。
図1-2】インバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞の抗CD1d VHH媒介活性化及び阻害。iNKT CD25発現及びインターフェロン-γ(IFN-γ)産生は、抗CD1d VHH 1D12(100nM)若しくは1D12(1000nM)と組み合わせて又は組合せなしで、iNKT細胞と溶媒対象(溶媒)又はαGalCerでパルスしたCD1dトランスフェクトHeLa細胞の24時間共培養後に判定した。代表的ドットプロットは、iNKT細胞IFN-γ産生における著しい増加(1D12による)又は減少(1D22による)(C及びD)に加えて、CD25発現により示されているiNKT細胞の1D12(A)による著しい活性化又は1D22(B)による阻害を図示している。データは、異なるドナーから得られたiNKTを用いた3~4の個々の実験の平均+SDを表し、**P<0.01、***P<0.001、テューキーの事後検定を用いた一元配置分散分析で計算した。
図2図2A:Vδ1-sulf-CD1d相互作用は抗CD1d VHH 1D12により妨げられ、1D22により低減される。内在性又はスルファチド負荷CD1d-PEテトラマーを、PBS(対照)、1D12又は1D22(4対1 VHH:CD1d比)と一緒にインキュベートし、その後テトラマーは、CD3-APCと組み合わせてジャーカット-Vδ1細胞を染色するのに使用した(最終濃度テトラマー2μg/ml)。テトラマー結合は1D12により妨げられ、1D22により低減される。N=3;図2B:Vδ1-sulf-CD1d相互作用は抗CD1d VHH 1D12により妨げられ、1D22により低減される。C1R-CD1d細胞はDMSO対照又はスルファチド(25μg/ml)と一緒にインキュベートし、その後培地又は抗CD1d VHHを1000又は100nMで添加し、30分間インキュベートした。次に、ジャーカット-Vδ1細胞を添加し、共培養物は更に24時間インキュベートし、その後CD69発現をフローサイトメトリーにより判定した。N=3
図3図3A:二重特異性Cd1d及びVγ9Vδ2-TCRターゲティングVHHによるiNKT細胞及びVγ9Vδ2-T細胞の二重活性化により、エフェクター細胞脱顆粒及び迅速な腫瘍細胞溶解がもたらされる。CD1d発現CCRF-CEM細胞は、培地のみ、一価1D12又は二重特異性1D12-5C8の存在下、エフェクターの標的に対する比1対2でiNKT細胞若しくはVγ9Vδ2-T細胞又は両方と一緒にインキュベートした。1D12の存在下でのiNKT細胞のロバストな脱顆粒(CD107a発現により示されている)が観察されたが、二重特異性VHHの存在下ではiNKT細胞とVγ9Vδ2-T細胞の同時脱顆粒のみが見られた。データは、異なるドナーから得られたiNKT/Vγ9Vδ2-Tを用いた3つの個々の実験の平均+SDを表している。;図3B:二重特異性Cd1d及びVγ9Vδ2-TCRターゲティングVHHによるiNKT細胞及びVγ9Vδ2-T細胞の二重活性化により、エフェクター細胞脱顆粒及び迅速な腫瘍細胞溶解がもたらされる。CD1d発現CCRF-CEM細胞は、培地のみ、一価1D12又は二重特異性1D12-5C8の存在下、エフェクターの標的に対する比1対2でiNKT細胞若しくはVγ9Vδ2-T細胞又は両方と一緒にインキュベートした。したがって、生存CCRF-CEM細胞の顕著な低減が観察された。データは、異なるドナーから得られたiNKT/Vγ9Vδ2-Tを用いた3つの個々の実験の平均+SDを表している。
図4図4A:二重特異性1D12-5CBは、iNKT及びVγ9Vδ2-T細胞増殖を支援し、腫瘍成長制御を誘導する。iNKT、Vγ9Vδ2-T又は混合物(2対3比)を、培地のみ又は二重特異性1D12-5C8の存在下、エフェクターの標的に対する比1対10でMM.1s-CD1d細胞と一緒にインキュベートした。iNKT細胞増殖のはっきりした誘導が観察されたが、Vγ9Vδ2-T増殖は、1D12-5C8及びiNKT細胞の存在下でしか観察されなかった。データは、異なるドナーから得られた対になったiNKT/Vγ9Vδ2-Tを用いた3つの個々の実験の平均+SDを表している。;図4B:二重特異性1D12-5CBは、iNKT及びVγ9Vδ2-T細胞増殖を支援し、腫瘍成長制御を誘導する。iNKT、Vγ9Vδ2-T又は混合物(2対3比)を、培地のみ又は二重特異性1D12-5C8の存在下、エフェクターの標的に対する比1対10でMM.1s-CD1d細胞と一緒にインキュベートした。注目に値するが、腫瘍成長が1D12-5C8の存在下に含まれていた。データは、異なるドナーから得られた対になったiNKT/Vγ9Vδ2-Tを用いた3つの個々の実験の平均+SDを表している。
図5】抗CD1d VHH 1D12及び抗CD1d 51.1mAbは、1D12-5C8 二重特異性VHHの結合を妨害するが、抗CD1d VHH 1D22は妨害しない。CD1dトランスフェクト多発性骨髄腫細胞(MM.1s)を、PBS(負の対照、NC)、抗CD1d VHH(1000nM)又は抗CD1d mAb(100nM)と一緒に45分間インキュベートし、その後PBS(NC)又はビオチン化1D12-5C8二重特異性VHH(100nM)を添加して、更に30分間インキュベートした。広範な洗浄後、試料をストレプトアビジン-APCで染色し、フローサイトメトリーにより分析した。データは3つの個々の実験の平均+SDを表し、****P<0.0001、テューキーの事後検定を用いた二元配置分散分析で計算した。
図6図6A:二重特異性抗体1D12-5C8は、iNKT及び/又はγδT細胞の存在下、マウス多発性骨髄腫モデルにおいて生存を促進する。パネルは、生存に対する抗体1D12-5C8及び/又はiNKT細胞の投与の効果を示している。;図6B:二重特異性抗体1D12-5C8は、iNKT及び/又はγδT細胞の存在下、マウス多発性骨髄腫モデルにおいて生存を促進する。パネルは、抗体1D12-5C8及び/又はγδT細胞の投与の効果を示している。;図6C:二重特異性抗体1D12-5C8は、iNKT及び/又はγδT細胞の存在下、マウス多発性骨髄腫モデルにおいて生存を促進する。パネルは、抗体1D12-5C8及び/又はiNKTとγδT細胞の混合物(「混合」)の投与の効果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上記のように、第1の主要な態様では、本発明は、CD1d拘束性Vδ1+T細胞活性化により引き起こされる、維持される及び/又は伝播される障害の処置において使用するための、CD1d分子への結合の際に単一ドメイン抗体1D12(配列番号4)と競合することができる第1の結合部分を含む結合分子を提供する。
【0022】
「CD1d拘束性Vδ1+T細胞活性化により引き起こされる、維持される及び/又は伝播される障害」とは、CD1d拘束性Vδ1+T細胞活性化が疾患若しくは障害を開始する、維持する若しくは悪化させる、又は疾患若しくは障害の予後若しくは進行に悪影響を及ぼす疾患又は障害である。悪影響とは、CD1d拘束性Vδ1+T細胞の作用のせいで、疾患が持続される、増悪される、又はVδ1+T細胞の作用がないと考えられる状況と比べて弱まっていないことを意味する。好ましくは、悪影響は、活性化されたVδ1+ T細胞の(抗)炎症効果に起因する。そのような障害又は疾患は特に、1型ヘルパーT(Th1)細胞応答を必要とし2型ヘルパーT(Th2)細胞のT細胞応答によりマイナスの影響を受ける疾患を含む。命名「Th1」及び「Th2」細胞は当技術分野では周知であり、Th1細胞は主に、細胞内細菌及びウイルス等の細胞内微生物叢に対して活性があり、Th2細胞は主に、原虫等の細胞外微生物叢と闘うために体液性免疫系(B細胞、好酸球、等)を活性化すると一般に考えられている。更に、Th1細胞は腫瘍細胞の殺傷を促進し、Th2細胞はそのような作用に対抗する。
【0023】
CD1d拘束性Vδ1+T細胞活性化により引き起こされる、維持される及び/又は伝播される障害の一例は、CD1d拘束性末梢性T細胞リンパ腫(PTCL (Bachyら、(2016) J Exp Med 213 No. 5: 841頁))である。好ましい実施形態では、本発明に従って使用するための結合分子は、CD1d拘束性末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、CD1d +T細胞急性リンパ性白血病(ALL)、CD1d +リンパ腫、CD1d +慢性リンパ性白血病(CLL)、CD1d +急性骨髄性白血病(AML)、及びCD1d+マントル細胞リンパ腫等の血液系腫瘍の処置において使用するために、好ましくは、CD1d拘束性Vδ1+PTCLの処置において使用するために提供される。
【0024】
本発明に従った「結合分子」は、それが本発明により定義される第1の結合部分を含む又はからなる限り、いかなる種類の結合分子、例えば、複合体でもよい。好ましくは、結合分子はポリペプチド、更に好ましくは、抗体である。ある特定の実施形態では、結合分子は、ヒトCD1dに結合する際に1D12(配列番号4)と競合することができる第1の結合部分だけからなるものでもよい。他の実施形態では、結合分子は、ヒトCD1dに結合する際に1D12と競合することができる第1の結合部分及び標識からなるものでもよい。さらなる実施形態では、結合分子は、ヒトCD1dに結合する際に1D12と競合することができ、医薬活性薬剤に連結されている第1の結合部分及び/又は他の結合部分(複数可)を含んでもよい。このように、結合分子は、単一の結合部分又は2つ、3つ若しくは4つ等の複数の結合部分を含んでもよい。好ましい実施形態では、結合分子は、好ましくは、2つの異なるエピトープに結合することができる2つの結合部分を含む。好ましくは、エピトープは、異なる標的(タンパク質)上にある。
【0025】
本明細書で使用される用語「抗体」とは、少なくとも約30分、少なくとも約45分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、約24時間若しくはそれよりも長く、約48時間若しくはそれよりも長く、約3、4、5、6、7若しくはそれよりも多い日間、等などのかなりの期間の半減期で、又は任意の他の適切な機能に関して定義された期間(例えば、抗体が抗原に結合することに関連する生理的応答を誘導する、促進する、増強する、及び/若しくは調節するのに十分な時間並びに/又は抗体がエフェクター活性を動員するのに十分な時間)で、典型的な生理条件下、抗原に特異的に結合する能力を有する、免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の断片、又はそのどちらかの誘導体を指すことが意図されている。抗原と相互作用する結合領域(又は結合ドメイン)は、免疫グロブリン分子の重と軽鎖の両方の可変領域を含む。抗体(Ab)の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞及びT細胞)及び補体活性化の古典的経路での第1の成分である、C1q等の補体系の成分を含む、宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介する場合がある。しかし、一部の実施形態では、抗体のFc領域は不活性になるように改変されており、「不活性な」とは、少なくともいかなるFcγ受容体にも結合できず、FcRのFc媒介架橋結合を誘導できず、抗体等の個々のタンパク質の2つのFc領域を介した標的抗原のFcR媒介架橋結合も誘導できないFc領域を意味する。さらなる実施形態では、不活性Fc領域は、更にC1qに結合できない。一実施形態では、抗体は、234位及び235位に突然変異(Canfield and Morrison (1991) J Exp Med 173:1483頁)、例えば、234位ではLeuからPheへの突然変異、235位ではLeuからGluへの突然変異を含有する。別の実施形態では、抗体は、234位ではLeuからAlaへの突然変異、236位ではLeuからAlaへの突然変異、及び329位ではProからGlyへの突然変異を含有する。
【0026】
上で示されるように、本明細書で使用される用語抗体は、別段述べられなければ又は明らかに文脈と矛盾しなければ、抗原への結合等の特異的な相互作用をする能力を保持する抗体の断片を含む。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片により実施される場合があることは明らかにされている。用語「抗体」内に包含される結合断片の例は、(i)Fab'若しくはFab断片、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片、又は国際公開第2007059782号に記載されている一価抗体;(ii)F(ab')2断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含む二価断片;(iii)本質的にVH及びCH1ドメインからなるFd断片;並びに(iv)本質的に抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片を含む。更に、Fv断片の2つのドメイン、VL及びVHは、別々の遺伝子によりコードされているが、VLとVH領域が対合して一価分子を形成する単一タンパク質鎖として作製することを可能にする合成リンカーにより、組換え法を使用して、2つのドメインを結合させてもよい(一本鎖抗体又は一本鎖Fv(scFv)として知られる、例えば、Birdら、Science 242, 423-426頁(1988)及びHustonら、PNAS USA 85, 5879-5883頁(1988)参照)。そのような一本鎖抗体は、別段言及されなければ又は明らかに文脈により示されなければ、用語抗体内に包含される。そのような断片は一般に、抗体の意味内に含まれるが、集合的には及びそれぞれ独立して本発明の他にない特長であり、異なる生物学的特性及び有用性を示す。本発明の文脈ではこれらの及び他の有用な抗体断片は、本明細書で更に考察される。用語抗体は、別段明記されなければ、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、キメラ抗体及びヒト化抗体、並びに酵素的開裂、ペプチド合成、及び組換え技法等の任意の公知の技法により提供される抗原に特異的に結合する能力を保持した抗体断片(抗原結合断片)も含むことも理解されるべきである。産生される抗体はいかなるアイソトープでも有することができる。
【0027】
本明細書で使用される用語「免疫グロブリン重鎖」、「免疫グロブリンの重鎖」又は「重鎖」とは、免疫グロブリンの鎖の1つを指すことが意図されている。重鎖は典型的には、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略記される)及び免疫グロブリンのアイソタイプを定義する重鎖定常領域(本明細書ではCHと略記される)を含む。重鎖定常領域は典型的には、3つのドメイン、CH1、CH2、及びCH3を含む。重鎖定常領域はヒンジ領域を更に含んでもよい。本明細書で使用される用語「免疫グロブリン」とは、2対のポリペプチド鎖、1対の軽(L)鎖及び1対の重(H)鎖からなり、4つすべてがジスルフィド結合により潜在的に相互接続されている構造的に関係する糖タンパク質のクラスを指すことが意図されている。免疫グロブリン(例えば、IgG)の構造内では、2つの重鎖はいわゆる「ヒンジ領域」においてジスルフィド結合を介して相互接続されている。重鎖に等しく、それぞれの軽鎖は典型的にはいくつかの領域;軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略記される)及び軽鎖定常領域(本明細書ではCLと略記される)を含む。軽鎖定常領域は典型的には、1つのドメイン、CLを含む。更に、VH及びVL領域は高頻度可変性の領域(又は配列が高頻度可変性である及び/又は構造的に限定されたループを形成する場合がある高頻度可変領域)に更に細分される場合があり、相補性決定領域(CDR)とも名付けられ、フレームワーク領域(FR)と名付けられた更に保存されている領域が点在している。それぞれのVH及びVLは典型的には、3つのCDR及び4つのFRで構成されており、アミノ終端からカルボキシ終端まで以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置されている。CDR配列は、種々の方法、例えば、Choitia and Lesk (1987) J. Mol. Biol. 196:901頁又はKabatら、(1991) Sequence of protein of immunological interest、第5版. NIH publicationにより提供される方法を使用することにより決定してもよい。CDR決定及びアミノ酸番号付けのための種々の方法は、www.abysis.org (UCL)で比較することができる。
【0028】
本明細書で使用される用語「アイソタイプ」とは、重鎖定常領域遺伝子によりコードされる、免疫グロブリン(サブ)クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、又はIgM)又はIgG1m(za)及びIgG1m(f)[配列番号407]等のその任意のアロタイプのことである。したがって、一実施形態では、抗体はIgG1クラスの免疫グロブリンの重鎖又はその任意のアロタイプを含む。更に、それぞれの重鎖アイソタイプは、カッパ(κ)又はラムダ(λ)軽鎖と組み合わせることができる。
【0029】
本明細書で使用される用語「キメラ抗体」とは、可変領域が非ヒト種由来であり(例えば、齧歯類由来)、定常領域がヒト等の異なる種由来である抗体のことである。キメラ抗体は抗体工学により産生してもよい。「抗体工学」は、抗体の異なる種類の改変を表すのに使用される総称であり、当業者には周知の方法である。したがって、キメラ抗体は遺伝子操作された組換え抗体でもよい。一部のキメラ抗体は遺伝的に又は酵素的に操作されてもよい。キメラ抗体を産生するのは当業者の知識の範囲内であり、したがって、本発明に従ったキメラ抗体の産生は、本明細書に記載される以外の方法によって実施しうる。治療応用のためのキメラモノクローナル抗体は、抗体免疫原性を低下させるように開発される。キメラ抗体は典型的には、目的の抗原に特異的である非ヒト(例えば、マウス)可変領域、並びにヒト定常抗体重及び軽鎖ドメインを含有しうる。キメラ抗体の文脈で使用される用語「可変領域」又は「可変ドメイン」とは、免疫グロブリンの重と軽鎖両方のCDR及びフレームワーク領域を含む領域のことである。
【0030】
本明細書で使用される用語「ヒト化抗体」とは、遺伝子操作された非ヒト抗体のことであり、これはヒト抗体定常ドメイン及びヒト可変ドメインに対して高レベルの配列相同性を含有するように改変された非ヒト可変ドメインを含有する。これは、合わさると抗原結合部位を形成する6つの非ヒト抗体相補性決定領域(CDR)を相同なヒトアクセプターフレームワーク領域(FR)に結び付けることにより達成できる。親抗体の結合親和性及び特異性を完全に再構成するためには、親抗体(すなわち、非ヒト抗体)由来のフレームワーク残基をヒトフレームワーク領域中に代入する(逆突然変異)ことが必要になる場合がある。構造的ホモロジーモデリングは、抗体の結合特性にとり重要であるフレームワーク領域でのアミノ酸残基を同定するのに役立つ場合がある。したがって、ヒト化抗体は、非ヒトCDR配列、任意選択で非ヒトアミノ酸配列への1つ又は複数のアミノ酸逆突然変異を含む主にヒトフレームワーク領域、及び完全なヒト定常領域を含んでいてもよい。任意選択で、追加のアミノ酸改変は、必ずしも逆突然変異ではないが、親和性及び生化学的特性等の好ましい特長を有するヒト化抗体を得るために適用してもよい。非ヒト起源の抗体のアミノ酸配列は、ヒト起源の抗体とははっきり異なっており、したがって非ヒト抗体は、ヒト患者に投与された場合、潜在的に免疫原性である。しかし、抗体の非ヒト起源にもかかわらず、そのCDRセグメントは抗体がその標的抗原に結合する能力の原因であり、ヒト化は抗体の特異性及び結合親和性を維持することを目標とする。したがって、非ヒト治療抗体のヒト化は、人間におけるその免疫原性を最小限に抑え、そのようなヒト化抗体が同時に非ヒト起源の抗体の特異性及び結合親和性を維持するように実施される。
【0031】
一態様では、本発明は、本明細書に記載されるいずれかの態様又は実施形態に従った結合分子の少なくとも第1の結合部分、及び第1の結合領域とは異なる1つ又は複数の標的に結合する1つ又は複数の結合部分を含む、多特異性抗体に関する。そのような多特異性抗体は、二重特異性、三重特異性、又は四重特異性抗体でもよい。
【0032】
用語「多特異性抗体」とは、少なくとも2つの異なる、例えば、少なくとも3つの、典型的に非オーバーラップエピトープに対して特異性を有する抗体のことである。そのようなエピトープは同じ又は異なる標的上に存在してもよい。エピトープが異なる標的上に存在する場合、そのような標的は同じ細胞又は異なる細胞又は細胞型上に存在していてもよい。
【0033】
用語「二重特異性抗体」とは、少なくとも2つの異なる、典型的に非オーバーラップエピトープに対して特異性を有する抗体のことである。そのようなエピトープは同じ又は異なる標的上に存在してもよい。エピトープが異なる標的上に存在する場合、そのような標的は同じ細胞又は異なる細胞又は細胞型上に存在していてもよい。一実施形態では、二重特異性抗体は、第1及び第2の重鎖を含む。
【0034】
本発明で使用しうる二重特異性抗体分子の例は、(i)異なる抗原結合領域を含む2つのアームを有する単一抗体、(ii)例えば、余分なペプチドリンカーにより縦一列に連結された2つのscFvを介して、2つの異なるエピトープに対する特異性を有する一本鎖抗体、(iii)それぞれの軽鎖及び重鎖が短いペプチド連鎖を通じて縦一列に2つの可変ドメインを含有する二重可変ドメイン抗体(DVD-IgTM);(iv)化学的に連結された二重特異性(Fab')2断片;(v)標的抗原のそれぞれに対して2つの結合部位を有する四価二重特異性抗体を生じる2つの一本鎖ダイアボディの融合物であるTandAb(登録商標);(vi)多価分子を生じるscFvとダイアボディの組合せであるフレキシボディ(flexibody);(vii)Fabに適用されると、異なるFab断片に連結された2つの同一なFab断片からなる三価二重特異性結合タンパク質を生じることができる、プロテインキナーゼAでの「二量体化及びドッキングドメイン」に基づくいわゆる「ドックアンドロック」分子(Dock-and-Lock(登録商標));(viii)例えば、ヒトFabアームの両終端に融合している2つのscFvを含む、いわゆるスコルピオン(Scorpion)分子;並びに(ix)ダイアボディを含む。
【0035】
二重特異性抗体の異なるクラスの例は、(i)ヘテロ二量体化を強制する相補的CH3ドメインを有するIgG様分子;(ii)分子の2つの側面がそれぞれ少なくとも2つの異なる抗体のFab断片又はFab断片の一部を含有する、組換えIgG様二重ターゲティング分子;(iii)完全長IgG抗体が余分なFab断片又はFab断片の一部に融合されている、IgG融合分子;(iv)一本鎖Fv分子又は安定化ダイアボディが、重鎖定常ドメイン、Fc領域又はその部分に融合している、Fc融合分子;(v)異なるFab断片が互いに融合して、重鎖定常ドメイン、Fc領域又はその部分に融合している、Fab融合分子;及び(vi)異なる一本鎖Fv分子若しくは異なるダイアボディ若しくは異なる重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、ナノボディ(登録商標))が互いに融合している又は重鎖定常ドメイン、Fc領域若しくはその部分に融合している別のタンパク質若しくは担体分子に融合している、scFv-及びダイアボディベースの抗体並びに重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、ナノボディ(登録商標))を含むがこれらに限定されない。
【0036】
相補的CH3ドメイン分子を有するIgG様分子の例は、Triomab(登録商標)(Trion Pharma/Fresenius Biotech社)、ノブインツーホール(Knobs-into-Holes)(Genentech社)、CrossMAbs(Roche社)及び静電気的適合(electrostatically-matched)(Amgen、Chugai、Oncomed社)、LUZ-Y(Genentech社、Wranikら、J. Biol. Chem. 2012年, 287(52): 43331~9頁, doi: 10.1074/jbc.M112.397869. Epub 2012年Nov 1)、DIG-body and PIG-body(Pharmabcine社、国際公開第2010134666号、国際公開第2014081202号)、鎖交換操作ドメインボディ(Strand Exchange Engineered Domain body)(SEEDbody)(EMD Serono社)、Biclonics(Merus社、国際公開第2013157953号)、FcΔAdp (Regeneron社)、二重特異性IgG1及びIgG2(Pfizer/Rinat社)、Azymetric scaffold (Zymeworks/Merck社)、mAb-Fv(Xencor社)、二価二重特異性抗体(Roche社、国際公開第2009080254号)並びにDuoBody(登録商標)分子(Genmab社)を含むがこれらに限定されない。
【0037】
組換えIgG様二重ターゲティング分子の例は、二重ターゲティング(DT)-Ig(GSK/Domantis社、国際公開第2009058383号)、ツーインワン抗体(Two-in-one Antibody)(Genentech社、Bostromら、2009年. Science 323, 1610~1614頁)、架橋Mabs (Karmanos Cancer Center社)、mAb2(F-Star)、ZybodiesTM(Zyngenia社、LaFleurら、MAbs. 2013年 Mar-Apr;5(2):208~18頁)、共通軽鎖を用いるアプローチ(approaches with common light chain)、κλBodies(NovImmune社、国際公開第2012023053号)及びCovX-body(登録商標)(CovX/Pfizer社、Doppalapudi, V.R.ら、2007年. Bioorg. Med. Chem. Lett. 17,501~506頁)を含むがこれらに限定されない。
【0038】
IgG融合分子の例は、二重可変ドメイン(DVD)-IgTM(Abbott社)、二重ドメインダブルヘッド抗体(Unilever社; Sanofi Aventis)、IgG様Bispecific(ImClone/Eli Lilly社、Lewisら、Nat Biotechnol. 2014年 Feb;32(2):191~8頁)、Ts2Ab (MedImmune/AZ社、Dimasiら、J Mol Biol. 2009年 Oct 30;393(3):672~92頁)及びBsAb(Zymogenetics社、国際公開第2010111625号)、HERCULES(Biogen Idec社)、scFv融合(Novartis社)、scFv融合(Changzhou Adam Biotech Inc社)並びにTvAb (Roche社)を含むがこれらに限定されない。
【0039】
Fc融合分子の例は、ScFv/Fc融合物(Academic Institution、Pearceら、Biochem Mol Biol Int. 1997年 Sep;42(6):1179頁)、SCORPION(Emergent BioSolutions/Trubion社、Blankenship JW,ら、AACR 100th Annual meeting 2009年(Abstract #5465); Zymogenetics/BMS社、国際公開第2010111625号)、二重親和性リターゲティング技術(Fc-DARTTM)(MacroGenics社)及び二重(ScFv)2-Fab(National Research Center for Antibody Medicine - China)を含むがこれらに限定されない。
【0040】
Fab融合二重特異性抗体の例は、F(ab)2(Medarex/AMGEN社)、二重作用又はBis-Fab (Genentech社)、ドックアンドロック(登録商標)(DNL)(ImmunoMedics社)、二価二重特異性(Biotecnol社)及びFab-Fv(UCB-Celltech社)を含むがこれらに限定されない。
【0041】
scFv-、ダイアボディベースの及びドメイン抗体の例は、二重特異性T細胞エンゲイジャー(BiTE(登録商標))(Micromet社、タンデムダイアボディ(Tandem Diabody)(Tandab)(Affimed社)、二重親和性リターゲティング技術(DARTTM)(MacroGenics社)、一本鎖ダイアボディ(Academic、Lawrence FEBS Lett. 1998年 Apr 3;425(3):479~84頁)、TCR様抗体(AIT、ReceptorLogics社)、ヒト血清アルブミンScFv融合(Merrimack社、国際公開第2010059315号)及びCOMBODY分子(Epigen Biotech社、Zhuら、Immunol Cell Biol. 2010年 Aug;88(6):667~75頁)、二重ターゲティングナノボディ(登録商標)(Ablynx社、Hmilaら、FASEB J. 2010年)、二重ターゲティング重鎖のみドメイン抗体を含むがこれらに限定されない。
【0042】
本発明の文脈での「結合部分」は、標的に特異的に結合することができる部分、好ましくは、ポリペプチド、更に好ましくは、抗体である。結合部分は、例えば、モノクローナル抗体等の無傷の免疫グロブリン分子を含んでもよい。代わりに、結合部分は、Fab、F(ab')、F(ab')2、Fv、dAb、Fd、相補性決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体(scFv)、二価一本鎖抗体、一本鎖ファージ抗体、二重特異性二本鎖抗体、トリアボディ、テトラボディ、単一ドメイン抗体(ナノボディ(登録商標))、少なくともその標的に特異的に結合するのに十分であるアミノ酸配列を含有する(ポリ)ペプチド、及びプラスチック抗体等の人工免疫グロブリン断片(Hoshinoら、(2008) J Am Chem Soc 130(46):15242頁)を含むがこれらの限定されない抗原結合機能的断片を含むことができる。好ましい実施形態では、本発明の結合部分は単一ドメイン抗体である。好ましくは、本発明の結合部分は3つの重鎖CDRを含む。
【0043】
本明細書で使用される用語「特異的に結合する」とは、リガンドとして抗原を、分析物として結合部分又は結合分子を使用するBIAcore 3000器機において、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)技術により決定した場合、結合が典型的に、約10-6M若しくはそれよりも低い、例えば、10-7M若しくはそれよりも低い、例えば、約10-8M若しくはそれよりも低い、例えば、約10-9M若しくはそれよりも低い、約10-10M若しくはそれよりも低い、又は約10-11M若しくはそれよりもずっと低いKDに相当する親和性である所定の抗原又は標的(例えば、ヒトCD1d)への結合部分又は結合分子の結合、及び所定の抗原又は密接な関係がある抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合についてのその親和性の少なくとも10分の1、例えば、少なくとも100分の1、例えば、少なくとも1000分の1、例えば、少なくとも10,000分の1、例えば、少なくとも100,000分の1であるKDに相当する親和性で所与の抗原に結合することである。親和性が低くなる程度は、結合部分又は結合分子のKDに依存しているので、結合部分又は結合分子のKDが非常に低くい(すなわち、結合部分又は結合分子が高度に特異性である)場合、抗原に対する親和性が非特異的抗原に対する親和性よりも低い程度は少なくとも10,000倍でもよい。用語「KD」(M)とは、本明細書で使用される場合、抗原と結合部分又は結合分子の間の特定の相互作用の解離平衡定数のことである。
【0044】
言及したように、上記の結合部分は、ヒトCD1dへの結合を巡って単一ドメイン抗体1D12と競合することができる。本発明の文脈では、「競合」又は「競合できる」又は「競合する」とは、特定の結合分子(例えば、CD1d抗体)が、結合パートナーに結合する別の分子(例えば、異なるCD1d抗体)の存在下で特定の結合パートナー(例えば、CD1d)に結合する傾向の任意の検出可能な有意の減少のことである。典型的には、競合は、十分な量の2つ又はそれよりも多い競合する結合分子又は部分を使用する、例えば、ELISA分析又はフローサイトメトリーにより決定した場合、別のCD1d結合分子又は部分の存在により引き起こされるCD1d結合分子又は部分の間の結合の少なくとも約25パーセント減少、例えば、少なくとも約50パーセント、例えば、少なくとも約75パーセント、例えば、少なくとも90パーセントの減少を意味する。競合的阻害により結合特異性を判定するための追加の方法は、例えば、Harlowら、Antibodies: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1988年)、Colliganら、編、Current Protocols in Immunology、Greene Publishing Assoc, and Wiley InterScience N. Y.、(1992年、1993年)、及びMuller, Meth. Enzymol. 92, 589~601頁(1983))に見出しうる。好ましくは、本発明の結合分子は、抗体1D12と同じCD1d上のエピトープの少なくとも一部又は近くに、更に好ましくは、1D12と同じエピトープに又は1D12のエピトープとオーバーラップするエピトープに結合する。抗体等の結合分子のエピトープを決定するための方法は当技術分野では公知である。「の近くに」とは、結合分子が、CD1dへの1D12の結合を少なくとも立体的に妨げるように結合分子がCD1dに結合することを意味する。本発明の結合分子は、1D12と同一の又は異なるCDR配列を含んでもよい。更に好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、1D12と同一のCDR1(配列番号1)、CDR2(配列番号2)及びCDR3(配列番号3)配列を含む。非常に好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、1D12(配列番号4)の配列と同一の配列を含む又は本発明の結合分子は、配列番号85に示される配列を含む。
【0045】
上記のように、さらなる主要な態様では、本発明は、CD1d分子に結合する際に1D12(配列番号4に示される抗体)と競合することができる第1の結合部分を含み、Vγ9Vδ2-TCRに特異的に結合することができる第2の結合部分を含む結合分子を提供する。「Vγ9Vδ2-TCRに特異的に結合する」とは、結合分子がVγ9Vδ2-TCRに結合することを意味するが、結合分子がもう一方のサブユニットの非存在下で別々のサブユニットのうちの1つに、すなわち、Vγ9鎖単独に又はVδ2鎖単独に結合することを排除しない。例えば、本明細書のTable 2(表2)に見ることができるように、抗体5C8は、Vγ9Vδ2-TCRに結合するがVδ2鎖が単独で発現される場合にはVδ2鎖にも結合する抗体である。
【0046】
好ましい実施形態では、結合分子は、Vγ9Vδ2-TCRのVδ2鎖に結合する。更に、好ましくは、結合分子は、Vγ9Vδ2 T細胞をその天然のリガンドとは無関係に活性化することができる。本発明は、二重特異性免疫グロブリン複合体を含むそのような結合分子がVδ1+T細胞を阻害することができ、(Vγ9)Vδ2+T細胞の活性化を可能にするという洞察を提供する。Vγ9Vδ2 T細胞の活性化は過剰な疾患の処置に有用である。Vδ2 TCR鎖特異的免疫グロブリンはVγ9 TCR鎖特異的免疫グロブリンよりも好まれる。なぜならば、Vγ9は、例えば、Vδ1 TCR鎖と対合し、潜在的に逆効果を招くγδ-T細胞を引き付けて活性化する可能性があるからである。
【0047】
用語「第1の」及び「第2の」結合部分とは、結合分子におけるその配向/位置のことではなく、すなわち、この用語はN-又はC-終端に関して無意味である。用語「第1の」及び「第2の」は、特許請求の範囲及び明細書において2つの異なる結合部分を正確に、一貫して指す働きをするだけである。一好ましい実施形態では、第1の結合部分と第2の結合部分は、1つ又は複数のアミド結合を通じて、好ましくは、リンカー、更に好ましくはアミノ酸GGGGS(配列番号83)を含むリンカーを通じて互いに連結される。ペプチドリンカー(GGGGS)を通じて連結される第1と第2の結合部分を含む本発明に従った結合分子の2つの非限定的例は、Table 1(表1)に示されている(配列番号84及び配列番号87)。別の好ましい実施形態では、結合分子は、完全長二重特異性抗体等の二重特異性抗体である。用語「完全長抗体」とは、本明細書で使用される場合、そのアイソタイプの野生型抗体において通常見出されるドメインに相当するすべての重及び軽鎖定常及び可変ドメインを含有する抗体のことである。
【0048】
本発明の文脈における「Vγ9Vδ2 T細胞を活性化することができる」とは、Vγ9Vδ2 T細胞が、本発明に従った結合分子の存在下で、特にCD1dを発現している標的細胞の存在下で活性化されることを意味する。好ましくは、Vγ9Vδ2 T細胞の活性化は、遺伝子発現及び/又は(表面)マーカー発現(例えば、CD25、CD69、又はCD107a等の活性化マーカー)及び/又は分泌タンパク質(例えば、サイトカイン又はケモカイン)プロファイルを通じて測定可能である。好ましい実施形態では、結合分子は活性化(例えば、CD69及び/又はCD25発現の上方調節)を誘導して、脱顆粒(CD107a発現の増加により特徴付けられる;実施例3)及びVγ9Vδ2 T細胞によるサイトカイン産生(例えば、TNFα、IFNγ)をもたらすことができる。好ましくは、Vγ9Vδ2 T細胞の活性化は、特に本発明に従った結合分子を投与されており、Vγ9Vδ2 T細胞及び好ましくは、CD1d+標的細胞を含むヒト身体において、インビボで起こる。好ましくは、本発明の結合分子は、実施例3に記載されるアッセイで使用される場合、Vγ9Vδ2 T細胞上でのCD107a発現を、少なくとも10%、更に好ましくは、少なくとも20%、更に好ましくは、少なくとも40%、もっとも好ましくは、少なくとも90%まで増やすことができ、例えば、10%は、細胞の総数の10%がCD107aについて陽性であることを意味する。別の実施形態では、CD107aについて陽性の細胞の数は、本発明の結合分子の存在下で、1.5倍、例えば、2倍、例えば、5倍増える。
【0049】
同様に、iNKT細胞では、本発明の文脈における「活性化することができる」とは、iNKT細胞が、結合分子又は本発明に従って使用するための結合分子の存在下で、特にCD1d分子の存在下で、好ましくは細胞表面でのCD1d分子の存在下で、違った反応を示すことを意味する。CD25(実施例1)、CD69、CD107a(実施例3)等のマーカー、又はIFNγ(実施例1)、TNFα、IL-2等のサイトカイン/ケモカインは、iNKT細胞が活性化されているかどうかを判定するのに使用される。好ましくは、iNKT細胞の活性化は、特に本発明に従った結合分子を投与されており、iNKT細胞及び好ましくは、CD1d+標的細胞を含むヒト身体において、インビボで起こる。CD1d+標的細胞とは、疾患病原性に寄与するCD1d+細胞を意味し、正常なCD1d発現細胞を意味しない。好ましくは、本発明の結合分子は、実施例3に記載されるアッセイで使用される場合、iNKT細胞上でのCD107a発現を、少なくとも20%まで、更に好ましくは少なくとも30%まで、もっとも好ましくは少なくとも40%まで増やすことができ、例えば、10%は、細胞の総数の10%がCD107aについて陽性であることを意味する。別の実施形態では、CD107aについて陽性の細胞の数は、本発明の結合分子の存在下で、1.5倍、例えば、2倍、例えば、5倍増える。更に、好ましくは、本発明の結合分子は、実施例1に記載されるアッセイで使用される場合、FACSにおいてアロフィコシアニン(APC)コンジュゲートCD25を使用してフローサイトメトリーにより平均蛍光強度を測定した場合、「溶媒」対照と比べてiNKT細胞上でのCD25発現を少なくとも10倍まで、更に好ましくは、少なくとも20倍まで、もっとも好ましくは、少なくとも30倍まで増やすことができる。好ましくは、本発明の結合分子は、実施例1に記載されるアッセイで使用される場合、iNKT細胞によるIFNγ発現を少なくとも1.5倍、例えば、少なくとも2倍又は少なくとも3倍増やすことができる。
【0050】
二重特異性(又は多特異性)結合分子は好ましくは、Th1型応答を誘導する。好ましい実施形態では、本発明に従った第1及び第2の結合部分を含む結合分子は、医薬として使用するために、好ましくは腫瘍の処置において使用するために提供される。本発明の文脈内での腫瘍とは、1つの位置(例えば、固形腫瘍)での又はヒト身体全体に分散した(例えば、腫瘍転移)組織の異常な塊を意味する。更に、組織の異常な塊は、播種性腫瘍(例えば、液体血液腫瘍)を指すことも意図されている。腫瘍は、炎症の古典的徴候でもある。しかし、そのような炎症(非がん性)腫瘍及び他の非悪性腫瘍はここでの定義内に含まれない。好ましい実施形態では、腫瘍はがん、特に死因となる可能性を抱えたがんである。腫瘍の処置は、腫瘍の位置及び種類に特有である。良性腫瘍は時に単に無視するだけでも可能である、又は手術によりサイズを減らす(減量する)又は完全に取り除いてもよい。悪性又は一部の良性腫瘍では、選択肢として、化学療法、放射線、及び手術が含まれる。造血及びリンパ組織の腫瘍(いわゆる血腫)も含まれ、特に、ALL、AML、CLL、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、及び急性単球性白血病(AMoL)等の白血病、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫等のリンパ腫、並びに骨髄腫を含む。
【0051】
好ましい実施形態では、本発明に従って使用するための、本発明に従った第1の結合部分を含む結合分子、又は第1と第2の結合部分を含む結合分子であって、Vδ1 T細胞活性化を低下させることができる結合分子が提供される。この文脈でVδ1 T細胞活性化を低下させることは、Vδ1 T細胞が、本発明に定義される結合分子に結合しているCD1d分子上のそのリガンドをもはや認識することができないことを意味する。そのような低下したVδ1 T細胞活性化は、例えば、Vδ1+T細胞上での活性化マーカーCD69の発現を測定することにより判定することができる。活性化が少なくなったVδ1+ T細胞、例えば、実施例2において使用されるジャーカット細胞で観察されるCD69発現レベルは低くなる。特にVδ1+腫瘍細胞の文脈で使用される場合、ブロッキングは、本発明に従った結合分子の存在が腫瘍細胞成長及び/又は生存能に悪影響を与えることを意味する。好ましくは、ジャーカット細胞上でのCD69発現は、実施例2に記載されるアッセイで試験されるとき、「溶媒」対照と比べた場合、本発明に従った結合分子により増加するのは5倍未満、例えば、2倍未満になる。
【0052】
好ましくは、本発明に従って使用するための結合分子は、iNKT細胞を活性化することができる。前述のように、発明者らは、1D12が、αガラクトシルセラミド等のiNKT細胞に対する外来性のリガンドの存在とは無関係に、iNKT細胞を活性化できることを明らかにしている。本発明は、Vδ1+T細胞によるCD1d認識はそのような結合分子によりブロックすることができ、本発明に従った結合分子中の第2の結合部分の存在がVδ2+T細胞の活性化を可能にするという洞察を更に提供する。そのような三重作用結合分子は、すなわち、CD1d拘束性Vδ1+T細胞の活性化を低下させ、iNKT細胞を活性化し、同時にVδ2+T細胞の活性化を可能にするが、Th1-型抗腫瘍応答に向けてそらされる微小環境を生み出す。Vδ1+T細胞の低下した活性化、iNKT細胞の活性化、及びVδ2+T細胞の活性化は協同して、効果的な腫瘍細胞殺傷を促進する腫瘍浸潤性微小環境に向かう。
【0053】
したがって、本発明に従った結合分子は、Vδ1+T細胞の活性化を低下させ、iNKT細胞を活性化するだけではなく、γδ-T細胞上でのVγ9Vδ2-TCRのクラスター化を通じてVδ2+T細胞に結合して活性化もするように、改変することができる。このためには、第2の結合部分は本発明に従った結合分子内に包含される。この第2の結合部分はVγ9Vδ2-TCRに、好ましくはVδ2鎖に結合することができる。いくつかのそのような抗体は、TCRのVδ2鎖又はVγ9鎖に結合するが、国際公開第2015156673号に記載されており、Table 1(表1)及びTable 2(表2)に示されている。さらなる態様では、本発明は、それを必要とする対象を処置する方法であって、第1の部分はCD1dに結合し、第2の部分はVγ9Vδ2-TCRに結合する、第1及び第2の結合部分を含む本発明に従った第1の結合分子を、CD1dに結合する結合部分を含むがVγ9Vδ2-TCRに結合する結合部分は含まない以前定義された第2の結合分子と組み合わせて、対象に投与する工程を含む方法を提供する。そのような組合せ処置は、第1及び第2の結合分子が非常に異なる濃度でその効果を有する場合には特に有用である可能性がある。例えば、高濃度でブロックする過剰なCD1d抗体は、低濃度でγδ-T細胞を活性化するCD1d/Vγ9Vδ2抗体と組み合わせることができると考えられる。
【0054】
【表1A】
【0055】
【表1B】
【0056】
【表1C】
【0057】
【表1D】
【0058】
【表1E】
【0059】
【表1F】
【0060】
【表1G】
【0061】
【表2】
【0062】
したがって、第2の結合部分が、Vγ9Vδ2-TCRへの結合を巡って、単一ドメイン抗体5E3(配列番号59)、6H1(配列番号60)、5G3(配列番号61)、5C1(配列番号62)、5D3(配列番号63)、6E3(配列番号64)、6H4(配列番号65)、6C1(配列番号66)、6H3(配列番号67)、6G3(配列番号68)、5C8(配列番号69)、5F5(配列番号70)、6A1(配列番号71)、6E4(配列番号72)、5C7(配列番号73)、5D7(配列番号74)、5B11(配列番号75)、又は6C4(配列番号76)と、好ましくは単一ドメイン抗体5E3(配列番号59)、6H1(配列番号60)、5G3(配列番号61)、5C1(配列番号62)、5D3(配列番号63)、6E3(配列番号64)、6H4(配列番号65)、6C1(配列番号66)、6H3(配列番号67)、6G3(配列番号68)、5C8(配列番号69)、5F5(配列番号70)、6A1(配列番号71)、又は6E4(配列番号72)と競合することができる、本発明に従った結合分子、又は本発明に従って使用するための結合分子が更に提供される。好ましくは、第2の結合部分は、結合部分5E3、6H1、5G3、5C1、5D3、6E3、6H4、6C1、6H3、6G3、5C8、5F5、6A1、6E4、5C7、5D7、5B11又は6C4により認識される、好ましくは結合部分5E3、6H1、5G3、5C1、5D3、6E3、6H4、6C1、6H3、6G3、5C8、5F5、6A1、又は6E4により認識されるのと同じ又は部分的にオーバーラップするエピトープ配列、更に好ましくは同じエピトープ配列に結合する。
【0063】
本発明に従った結合分子又は本発明に従って使用するための結合分子の一部の実施形態では、第1の結合部分又は第2の結合部分、又は両方は単一ドメイン抗体である。単一ドメイン抗体(sdAb、ナノボディ(登録商標)、又はVHHとも呼ばれる)は当業者には周知である。単一ドメイン抗体は、単一CDR1、単一CDR2及び単一CDR3を含む。単一ドメイン抗体の例は、重鎖のみ抗体、天然には軽鎖を含まない抗体、従来の抗体に由来する単一ドメイン抗体、及び操作された抗体の可変断片である。単一ドメイン抗体は、マウス、ヒト、ラクダ、ラマ、サメ、ヤギ、ウサギ、及びウシを含む任意の種由来でもよい。例えば、天然に存在するVHH分子は、ラクダ科種において、例えば、ラクダ、ヒトコブラクダ、アルパカ及びグアナコにおいて産生される抗体に由来することが可能である。
【0064】
全抗体と同様に、単一ドメイン抗体は特定の抗原に選択的に結合することができる。単一ドメイン抗体は、免疫グロブリン鎖の可変ドメイン、すなわち、CDR1、CDR2及びCDR3並びにフレームワーク領域のみを含有していてもよい。単一ドメイン抗体は、約12~15kDaの分子量を有し、2つの重鎖と2つの軽鎖で構成されている一般的抗体(150~160kDa)又は1つの軽鎖と重鎖の一部で構成されているFab断片(53kDa)と比べてさえはるかに小さい。単一ドメイン抗体のフォーマットは、その標的に結合している場合、立体的障害が少なくなるという利点がある。
【0065】
好ましい実施形態では、第1の結合部分が、CDR1配列GSMFSDNVMG(配列番号1)、CDR2配列TIRTGGSTNYADSVKG(配列番号2)、及び/若しくはCDR3配列TIPVPSTPYDY(配列番号3)又は、独立して、アミノ酸のいずれか、好ましくは最大で4アミノ酸、更に好ましくは最大で3、更に好ましくは最大で2、もっとも好ましくは最大で1がTable 3(表3)に従って置換されている、好ましくは保存的に置換されている配列のいずれかを含む、本発明に従った結合分子又は本発明に従って使用するための結合分子が提供される。
【0066】
さらなる好ましい実施形態では、第1の結合部分が配列番号4に示される配列、又は配列番号85に示される配列を含む、本発明に従った結合分子又は本発明に従って使用するための結合分子が提供される。
【0067】
【表3】
【0068】
好ましい実施形態では、第2の結合部分がCDR1、CDR2及びCDR3配列をそれぞれのVHHについてTable 1(表1)に示される組合せで含む、本発明に従った結合分子又は本発明に従って使用するための結合分子が提供される。更に具体的には、第2の結合部分は、配列番号5に従ったCDR1配列、配列番号6に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号7に従ったCDR3配列;又は配列番号8に従ったCDR1配列、配列番号9に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号10に従ったCDR3配列;又は配列番号11に従ったCDR1配列、配列番号12に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号13に従ったCDR3配列;又は配列番号14に従ったCDR1配列、配列番号15に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号16に従ったCDR3配列;又は配列番号17に従ったCDR1配列、配列番号18に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号19に従ったCDR3配列;又は配列番号20に従ったCDR1配列、配列番号21に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号22に従ったCDR3配列;又は配列番号23に従ったCDR1配列、配列番号24に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号25に従ったCDR3配列;又は配列番号26に従ったCDR1配列、配列番号27に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号28に従ったCDR3配列;又は配列番号29に従ったCDR1配列、配列番号30に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号31に従ったCDR3配列;又は配列番号32に従ったCDR1配列、配列番号33に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号34に従ったCDR3配列;又は配列番号35に従ったCDR1配列、配列番号36に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号37に従ったCDR3配列;又は配列番号38に従ったCDR1配列、配列番号39に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号40に従ったCDR3配列;又は配列番号41に従ったCDR1配列、配列番号42に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号43に従ったCDR3配列;又は配列番号44に従ったCDR1配列、配列番号45に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号46に従ったCDR3配列;又は配列番号47に従ったCDR1配列、配列番号48に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号49に従ったCDR3配列;又は配列番号50に従ったCDR1配列、配列番51号に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号52に従ったCDR3配列;又は配列番号53に従ったCDR1配列、配列番号54に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号55に従ったCDR3配列;又は配列番号56に従ったCDR1配列、配列番号57に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号58に従ったCDR3配列;或いは独立して、アミノ酸のいずれか、好ましくは最大で4アミノ酸、更に好ましくは最大で3、更に好ましくは最大で2、もっとも好ましくは最大で1がTable 3(表3)に従って保存的に置換されている配列のいずれかを含む。
【0069】
更に好ましくは、第2の結合部分は、配列番号5に従ったCDR1配列、配列番号6に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号7に従ったCDR3配列;又は配列番号8に従ったCDR1配列、配列番号9に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号10に従ったCDR3配列;又は配列番号11に従ったCDR1配列、配列番号12に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号13に従ったCDR3配列;又は配列番号14に従ったCDR1配列、配列番号15に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号16に従ったCDR3配列;又は配列番号17に従ったCDR1配列、配列番号18に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号19に従ったCDR3配列;又は配列番号20に従ったCDR1配列、配列番号21に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号22に従ったCDR3配列又は配列番号23に従ったCDR1配列、配列番号24に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号25に従ったCDR3配列;又は配列番号26に従ったCDR1配列、配列番号27に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号28に従ったCDR3配列;又は配列番号29に従ったCDR1配列、配列番号30に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号31に従ったCDR3配列;又は配列番号32に従ったCDR1配列、配列番号33に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号34に従ったCDR3配列;又は配列番号35に従ったCDR1配列、配列番号36に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号37に従ったCDR3配列;又は配列番号38に従ったCDR1配列、配列番号39に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号40に従ったCDR3配列;又は配列番号41に従ったCDR1配列、配列番号42に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号43に従ったCDR3配列;又は配列番号44に従ったCDR1配列、配列番号45に従ったCDR2配列及び/若しくは配列番号46に従ったCDR3配列;或いは独立して、アミノ酸のいずれか、好ましくは最大で4アミノ酸、更に好ましくは最大で3、更に好ましくは最大で2、もっとも好ましくは最大で1がTable 3(表3)に従って保存的に置換されている配列のいずれかを含む。
【0070】
好ましい実施形態では、CD1dに特異的に結合することができる結合部分を含み、第1の結合部分が、配列番号1に従ったCDR1配列、配列番号2に従ったCDR2配列及び配列番号3に従ったCDR3配列を含む、本発明に従って使用するための結合分子が提供される。
【0071】
好ましい実施形態では、CD1dに特異的に結合することができる第1の結合部分を含み、本発明に従ったVγ9Vδ2-TCRに特異的に結合することができる第2の結合部分を含み、
・第1の結合部分が、配列番号1に従ったCDR1配列、配列番号2に従ったCDR2配列及び配列番号3に従ったCDR3配列を含み、並びに
・第2の結合部分が、配列番号5に従ったCDR1配列、配列番号6に従ったCDR2配列及び配列番号7に従ったCDR3配列;又は配列番号8に従ったCDR1配列、配列番号9に従ったCDR2配列及び配列番号10に従ったCDR3配列;又は配列番号11に従ったCDR1配列、配列番号12に従ったCDR2配列及び配列番号13に従ったCDR3配列;又は配列番号14に従ったCDR1配列、配列番号15に従ったCDR2配列及び配列番号16に従ったCDR3配列;又は配列番号17に従ったCDR1配列、配列番号18に従ったCDR2配列及び配列番号19に従ったCDR3配列;又は配列番号20に従ったCDR1配列、配列番号21に従ったCDR2配列及び配列番号22に従ったCDR3配列;又は配列番号23に従ったCDR1配列、配列番号24に従ったCDR2配列及び配列番号25に従ったCDR3配列;又は配列番号26に従ったCDR1配列、配列番号27に従ったCDR2配列及び配列番号28に従ったCDR3配列;又は配列番号29に従ったCDR1配列、配列番号30に従ったCDR2配列及び配列番号31に従ったCDR3配列;又は配列番号32に従ったCDR1配列、配列番号33に従ったCDR2配列及び配列番号34に従ったCDR3配列;又は配列番号35に従ったCDR1配列、配列番号36に従ったCDR2配列及び配列番号37に従ったCDR3配列;又は配列番号38に従ったCDR1配列、配列番号39に従ったCDR2配列及び配列番号40に従ったCDR3配列;又は配列番号41に従ったCDR1配列、配列番号42に従ったCDR2配列及び配列番号43に従ったCDR3配列;又は配列番号44に従ったCDR1配列、配列番号45に従ったCDR2配列及び配列番号46に従ったCDR3配列;又は配列番号47に従ったCDR1配列、配列番号48に従ったCDR2配列及び配列番号49に従ったCDR3配列;又は配列番号50に従ったCDR1配列、配列番51号に従ったCDR2配列及び配列番号52に従ったCDR3配列;又は配列番号53に従ったCDR1配列、配列番号54に従ったCDR2配列及び配列番号55に従ったCDR3配列;又は配列番号56に従ったCDR1配列、配列番号57に従ったCDR2配列及び配列番号58に従ったCDR3配列を含む、
結合分子が提供される。
【0072】
一実施形態では、CD1d拘束性Vδ1+T細胞活性化により引き起こされる、維持される及び/又は伝播される障害の処置において使用するための、好ましくは、CD1d拘束性Vδ1+末梢T細胞リンパ腫の処置において使用するためのCD1dに特異的に結合することができる結合部分を含み、第1の結合部分が、配列番号1に従ったCDR1配列、配列番号2に従ったCDR2配列及び配列番号3に従ったCDR3配列を含む結合分子が提供される。
【0073】
一実施形態では、本発明は、CD1d拘束性Vδ1+T細胞活性化により引き起こされる、維持される及び/又は伝播される障害の処置において使用するための、好ましくは、CD1d拘束性Vδ1+末梢T細胞リンパ腫の処置において使用するための、CD1dに特異的に結合することができる第1の結合部分を含み、Vγ9Vδ2-TCRに特異的に結合することができる第2の結合部分を含み、
・第1の結合部分が、配列番号1に従ったCDR1配列、配列番号2に従ったCDR2配列及び配列番号3に従ったCDR3配列を含み、
・第2の結合部分が、配列番号5に従ったCDR1配列、配列番号6に従ったCDR2配列及び配列番号7に従ったCDR3配列;又は配列番号8に従ったCDR1配列、配列番号9に従ったCDR2配列及び配列番号10に従ったCDR3配列;又は配列番号11に従ったCDR1配列、配列番号12に従ったCDR2配列及び配列番号13に従ったCDR3配列;又は配列番号14に従ったCDR1配列、配列番号15に従ったCDR2配列及び配列番号16に従ったCDR3配列;又は配列番号17に従ったCDR1配列、配列番号18に従ったCDR2配列及び配列番号19に従ったCDR3配列;又は配列番号20に従ったCDR1配列、配列番号21に従ったCDR2配列及び配列番号22に従ったCDR3配列;又は配列番号23に従ったCDR1配列、配列番号24に従ったCDR2配列及び配列番号25に従ったCDR3配列;又は配列番号26に従ったCDR1配列、配列番号27に従ったCDR2配列及び配列番号28に従ったCDR3配列;又は配列番号29に従ったCDR1配列、配列番号30に従ったCDR2配列及び配列番号31に従ったCDR3配列;又は配列番号32に従ったCDR1配列、配列番号33に従ったCDR2配列及び配列番号34に従ったCDR3配列;又は配列番号35に従ったCDR1配列、配列番号36に従ったCDR2配列及び配列番号37に従ったCDR3配列;又は配列番号38に従ったCDR1配列、配列番号39に従ったCDR2配列及び配列番号40に従ったCDR3配列;又は配列番号41に従ったCDR1配列、配列番号42に従ったCDR2配列及び配列番号43に従ったCDR3配列;又は配列番号44に従ったCDR1配列、配列番号45に従ったCDR2配列及び配列番号46に従ったCDR3配列;又は配列番号47に従ったCDR1配列、配列番号48に従ったCDR2配列及び配列番号49に従ったCDR3配列;又は配列番号50に従ったCDR1配列、配列番51号に従ったCDR2配列及び配列番号52に従ったCDR3配列;又は配列番号53に従ったCDR1配列、配列番号54に従ったCDR2配列及び配列番号55に従ったCDR3配列;又は配列番号56に従ったCDR1配列、配列番号57に従ったCDR2配列及び配列番号58に従ったCDR3配列を含む、
結合分子に関する。
【0074】
更に好ましい実施形態では、第2の結合部分は、配列番号59~76、86若しくは88のいずれか、又は独立して、アミノ酸のいずれか、好ましくは最大で20アミノ酸、更に好ましくは最大で15、更に好ましくは最大で10、更に好ましくは最大で5、更に好ましくは最大で4、更に好ましくは最大で3、更に好ましくは最大で2、もっとも好ましくは最大で1がTable 3(表3)に従って置換されている、好ましくは保存的に置換されている配列のいずれかから選択される配列を含む。
【0075】
非常に好ましい実施形態では、第2の結合部分は、配列番号59~72、86若しくは88のいずれか、又は独立して、アミノ酸のいずれか、好ましくは最大で20アミノ酸、更に好ましくは最大で15、更に好ましくは最大で10、更に好ましくは最大で5、更に好ましくは最大で4、更に好ましくは最大で3、更に好ましくは最大で2、もっとも好ましくは最大で1がTable 3(表3)に従って置換されている、好ましくは保存的に置換されている配列のいずれかから選択される配列を含む。
【0076】
更に好ましい実施形態では、第1の結合部分は配列番号85に示される配列を含み、第2の結合部分は配列番号86に示される配列を含む。
【0077】
更に好ましい実施形態では、第1の結合部分は配列番号85に示される配列を含み、第2の結合部分は配列番号88に示される配列を含む。
【0078】
更に好ましい実施形態では、結合分子は、配列番号87に示される配列を含む又はからなる。
【0079】
CDR1、CDR2及びCDR3配列又はフレームワーク領域は種間で交換しうる。例えば、ラマ免疫グロブリン分子から、CDR配列を選択してヒト免疫グロブリン分子中のCDR配列と交換して、ラマCDR配列に由来する特異性を有するヒト免疫グロブリン分子を得てもよい。ヒト配列は、元のラマフレームワーク配列を含有する抗体と比べた場合、ヒトに対する免疫原性が少なくなることがあるので、これは有利である可能性がある。配列のそのような交換は、ヒト化として知られている。したがって、本発明が提供する免疫グロブリン分子は、ヒト由来免疫グロブリン配列又は、ラクダ類、ラマ、サメ等のしかしこれらに限定されない他の動物由来の免疫グロブリン配列を有し、ヒトCD1d結合に備えるため、本発明に従ったCDR配列で置き換えられたCDR1、CDR2及びCDR3配列を有してもよい。言い換えると、本発明に従った結合分子は、本明細書で開示されるCDRを有するヒト化単一ドメイン抗体を含んでいてもよい。例えば、単一ドメイン抗体は、本明細書で開示されるヒトフレームワーク配列及びCDR領域を有していてもよい。
【0080】
したがって、本発明は、iNKT細胞の活性化を可能にし、同時にVδ1+T細胞の活性化を低下させる結合分子を提供する。好ましい実施形態では、本発明に従った結合分子又は本発明に従って使用するための結合分子であって、腫瘍ターゲティング部分を更に含む結合分子が提供される。腫瘍ターゲティング部分は、腫瘍抗原に特異的に結合することができる結合部分を含む。好ましくは、結合分子は、Vγ9Vδ2-TCRに結合することができ、Table 1(表1)に示されているVHHのうちのいずれとでもVγ9Vδ2-TCRへの結合を巡って競合することができる結合部分も含む。
【0081】
腫瘍抗原は、免疫応答、特にT細胞媒介免疫応答を誘発する腫瘍細胞により産生されるタンパク質である。本発明の抗原結合部分の選択は、処置されることになるがんの特定の種類に依拠する。腫瘍抗原は当技術分野では周知であり、例えば、グリオーマ関連抗原、がん胎児抗原(CEA)、EGFRvIII、インターロイキン11受容体アルファ(IL-11Rα)、インターロイキン13受容体サブユニットアルファ-2(IL-13Rα又はCD213A2)、上皮増殖因子受容体(EGFR)、B7H3(CD276)、Kit(CD117)、炭酸脱水酵素(CA-IX)、CS-1(CD2サブセット1とも呼ばれる)、ムチン1、細胞表面関連(MUC1)、BCMA、ブレイクポイントクラスター領域(BCR)からなる癌遺伝子融合タンパク質及びエーベルソンマウス白血病ウイルス癌遺伝子ホモログ1(Abl)bcr-abl、受容体チロシンタンパク質キナーゼERBB2(HER2/neu)、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、アルファフェトプロテイン(AFP)、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)、CD19、CD123、サイクリンBl、レクチン反応性AFP、Fos関連抗原1、アドレナリン受容体ベータ3(ADRB3)、サイログロブリン、チロシナーゼ;エフリンA型受容体2(EphA2)、終末糖化産物の受容体(RAGE-1)、腎臓ユビキタス1(RU1)、腎臓ユビキタス2(RU2)、滑膜肉腫、Xブレイクポイント2(SSX2)、Aキナーゼアンカータンパク質4(AKAP-4)、リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(LCK)、プロアクロシン結合タンパク質sp32(OY-TES1)、ペアードボックスタンパク質Pax-5(PAX5)、T細胞により認識される扁平上皮癌3(SART3)、C型レクチン様分子1(CLL-1又はCLECL1)、フコシルGM1、globoHグリコセラミドの六糖部分(GloboH)、MN-CA IX、上皮細胞接着分子(EPCAM)、EVT6-AML、トランスグルタミナーゼ5(TGS5)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、ポリシアル酸、胎盤特異的1(PLAC1)、腸カルボキシルエステラーゼ、LewisY抗原、シアリルルイス接着分子(sLe)、リンパ球抗原6複合体、ローカスK9(LY6K)、熱ショックタンパク質70-2変異(mut hsp70-2)、M-CSF、v-mycトリ、骨髄細胞腫症ウイルス癌遺伝子神経芽細胞腫由来ホモログ(MYCN)、RasホモログファミリーメンバーC(RhoC)、チロシナーゼ関係タンパク質2(TRP-2)、チトクロムP450 1B1 (CYP1B1)、CCCTC結合因子(亜鉛フィンガータンパク質)様(BORIS又はブラザーオブレギュレーターオブイムプリンテッドサイト)、プロスターゼ、前立腺特異的抗原(PSA)、ペアードボックスタンパク質Pax-3(PAX3)、前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)、がん/精巣抗原1(NY-ESO-1)、がん/精巣抗原2(LAGE-la)、LMP2、神経細胞接着分子(NCAM)、腫瘍タンパク質p53(p53)、p53変異体、ラット肉腫(Ras)変異体、糖タンパク質100(gp100)、プロステイン、OR51E2、パネキシン3(PANX3)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、高分子量メラノーマ関連抗原(HMWMAA)、A型肝炎ウイルス細胞受容体1(HAVCRl)、血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)、血小板由来増殖因子受容体ベータ(PDGFR-ベータ)、レグマイン、ヒトパピローマウイルスE6(HPV E6)、ヒトパピローマウイルスE7(HPV E7)、サバイビン、テロメラーゼ、精子タンパク質17(SPA17)、ステージ特異的胎児抗原-4(SSEA-4)、チロシナーゼ、TCRガンマ代替リーディングフレームタンパク質(TARP)、ウィルムス腫瘍タンパク質(WT1)、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、アポトーシスのメラノーマ阻害因子(ML-IAP)、MAGE、メラノーマ関連抗原1(MAGE-Al)、メラノーマがん精巣抗原-1 (MAD-CT-1)、メラノーマがん精巣抗原-2 (MAD-CT-2)、T細胞により認識されるメラノーマ抗原1(MelanA/MART1)、X抗原ファミリー、メンバー1A(XAGE1)、伸長因子2変異(ELF2M)、ERG (TMPRSS2 ETS融合遺伝子)、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(NA17)、好中球エラスターゼ、肉腫移動ブレイクポイント(sarcoma translocation breakpoint)、乳腺分化抗原(NY-BR-1)、エフリンB2、CD20、CD22、CD24、CD30、CD33、CD38、CD44v6、CD97、CD171、CD179a、アンドロゲン受容体、インスリン成長因子(IGF)-I、IGF-II、IGF-I受容体、ガングリオシドGD2(GD2)、o-アセチル-GD2ガングリオシド(OAcGD2)、ガングリオシドGD3(aNeu5Ac(2-8)aNeu5Ac(2-3)bDGalp(1-4)bDGlcp(1-1)Cer)、ガングリオシドGM3(aNeu5Ac(2-3)bDGa3p(1-4)bDGlcp(1-1)Cer)、Gタンパク質共役型受容体クラスCグループ5メンバーD(GPRC5D)、Gタンパク質共役型受容体20(GPR20)、染色体Xオープンリーディングフレーム61(CXORF61)、葉酸受容体(FRα)、葉酸受容体ベータ、受容体チロシンキナーゼ様オーファン受容体1(ROR1)、Fms様チロシンキナーゼ3(Flt3)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG72)、Tn抗原(TN Ag又は(GalNAca-Ser/Thr))、アンジオポエチン結合細胞表面受容体2(Tie2)、腫瘍内皮マーカー1(TEM1又はCD248)、腫瘍内皮マーカー7関係(TEM7R)、クローディン6(CLDN6)、甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)、ウロプラキン2(UPK2)、メソテリン、プロテアーゼセリン21(テスティシン(Testisin)又はPRSS21)、上皮成長因子受容体(EGFR)、線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAP)、臭覚受容体51E2(OR51E2)、ETSトランスロケーションバリアント遺伝子6、染色体12pに位置している(ETV6-AML)、CD79a;CD79b;CD72;白血病関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1);IgA受容体のFc断片(FCAR又はCD89):白血病免疫グロブリン様受容体サブファミリーAメンバー2(LILRA2);CD300分子様ファミリーメンバーf(CD300LF);C型レクチンドメインファミリー12メンバーA(CLEC12A);骨髄間質細胞抗原2(BST2);EGF様モジュール含有ムチン様ホルモン受容体様2(EMR2);リンパ球抗原75(LY75);グリピカン-3(GPC3);Fc受容体様5(FCRL5);免疫グロブリンラムダ様ポリペプチド1(IGLL1);葉酸受容体(FRα);メソテリン;EGFRバリアントIII(EGFRvIII);B細胞成熟抗原(BCMA);GD2;CLL-1; CA-IX; MUC1; HER2;及びその任意の組合せを含む。一好ましい実施形態では、腫瘍抗原は、葉酸受容体(FRα)、メソテリン、EGFRvIII、IL-13Ra、CD123、CD19、CD33、BCMA、GD2、CLL-1、CA-IX、MUC1、HER2、及びその任意の組合せからなる群から選択される。一実施形態では、腫瘍ターゲティング部分は、PD-L1、EGFR、CD40、Her2、PSMA、MUC-1、CEA、c-met、CD19、CD20、BCMA、Her3、AFP、CAIX、又はCD38に特異的に結合する免疫グロブリンである。
【0082】
既に言及しているように、本発明に従った結合分子は、例えば、iNKT細胞及びVγ9Vδ2 T細胞による腫瘍細胞殺傷に有利な微小環境を生み出すことを可能にする。したがって、腫瘍の処置において使用するための、本発明に従った第1の結合部分及び第2の結合部分を含む結合分子が提供される。そのような結合分子は、CD1d+腫瘍に対してだけでなく、腫瘍環境においてそれ自体はCD1dを発現しないが、CD1d+抑制細胞(例えば、MDSC又は腫瘍関連マクロファージ(TAM))に(部分的に)頼っている腫瘍に対しても効果的である。好ましくは、腫瘍は、T細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、マントル細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、くすぶり型骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、骨髄単球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、ヘアリーセル白血病、及び脾臓周辺帯リンパ腫等の血液系腫瘍、又は腎細胞癌、メラノーマ、結腸直腸癌、頭頚部がん、乳がん、前立腺がん、肺がん、膵臓がん、胃食道がん、小腸癌、中枢神経系腫瘍、髄芽腫、肝細胞癌、卵巣がん、神経膠腫、神経芽細胞腫、尿路上皮癌、膀胱がん、肉腫、陰茎がん、基底細胞癌、メルケル細胞癌、神経内分泌癌、神経内分泌腫瘍、原発不明癌(CUP)、胸腺腫、外陰がん、子宮頸癌、精巣がん、胆管細胞癌、虫垂癌(appendicular carcinoma)、中皮腫、乳頭部癌、肛門がん、及び絨毛癌等の固形腫瘍から選択される。
【0083】
医薬組成物、投与量、投与様式及び処置方法
さらなる主要な態様では、本発明は、
・CD1d分子に結合する際に抗体1D12と競合することができる第1の結合部分を含み、Vγ9Vδ2-TCRに特異的に結合することができる第2の結合部分を含む、抗体等の結合分子であって、Vγ9Vδ2 T細胞を活性化することができる結合分子、及び
・薬学的に許容される賦形剤
を含む医薬組成物に関する。
【0084】
抗体等のポリペプチドは、(Roweら、Handbook of Pharmaceutical Excipients、2012年6月、ISBN 9780857110275)に開示される技法等の従来の技法に従って、薬学的に許容される担体又は希釈剤並びに任意の他の公知のアジュバンド及び賦形剤と一緒に処方してもよい。薬学的に許容される担体又は希釈剤並びに任意の他の公知のアジュバンド及び賦形剤は、ポリペプチド又は抗体及び選択された投与様式に適しているべきである。医薬組成物の担体及び他の成分の適合性は、本発明の選択された化合物又は医薬組成物の所望の生物学的特性に対する顕著な悪影響がない(例えば、抗原結合に対する実質的な影響(10%又はそれより少ない相対的阻害、5%又はそれより少ない相対的阻害、等)より少ない)ことに基づいて判定される。
【0085】
医薬組成物は、希釈剤、充填剤、塩類、緩衝剤、界面活性剤(例えば、Tween-20又はTween-80等の非イオン性界面活性剤)、安定化剤(例えば、糖類又は無タンパク質アミノ酸)、保存剤、組織定着剤、可溶化剤、及び/又は医薬組成物中への包含に適した他の材料を含んでもよい。さらなる薬学的に許容される賦形剤及び担体は、ありとあらゆる適切な溶媒、分散媒、コーティング、抗菌及び抗真菌剤、等張性剤(isotonicity agents)、抗酸化剤及び吸収遅延剤、並びに本発明の結合分子と生理的に適合する同類のものを含む。
【0086】
本発明は、疾患又は傷害を処置する方法であって、本明細書で定義される結合分子をそれを必要とする対象に投与する工程を含む方法を提供する。一実施形態では、対象はヒトである。本発明の方法は、有効量の結合分子を投与する工程を含む。「処置」又は「処置する」とは、症状又は疾患状態を緩和する、軽快させる、停止させる又は根絶する(治癒させる)目的で有効量の本発明に従った治療的に活性なポリペプチドを投与することである。「有効量」又は「治療有効量」とは、所望の治療結果を達成するのに必要な投与量での及び必要な期間での、これに効果的な量のことである。抗体等のポリペプチドの治療有効量は、個人の疾患段階、年齢、性別、及び体重等の要因、並びに個人において所望の応答を誘発する抗体の能力に応じて変動してもよい。治療有効量は、抗体又は抗体の一部のいかなる毒性又は有害効果よりも治療的に有益な効果がまさる量でもある。
【0087】
投与はいかなる適切な経路でも実行してよいが、典型的には、静脈内、筋肉内又は皮下等の非経口になる。結合分子、例えば、抗体についての効果的投与量及び投与計画は、処置することになる疾患又は状態に依拠し、当業者が決定してもよい。
【0088】
本発明の抗体等の結合分子は、併用療法で、すなわち、処置することになる疾患又は状態にとり適切な他の治療薬と組み合わせて投与してもよい。したがって、一実施形態では、抗体含有薬物は、細胞傷害性、化学療法又は抗血管新生薬等の1つ又は複数のさらなる治療薬との併用を目的とする。そのような併用投与は同時、別々又は逐次でもよい。したがって、さらなる実施形態では、本発明は、がん等の疾患を処置する又は予防するための方法であって、治療有効量の本発明の結合分子又は医薬組成物を、放射線療法及び/又は手術と組み合わせて、それを必要とする対象に投与する工程を含む方法を提供する。
【0089】
本発明のさらなる態様及び実施形態
さらなる態様では、本発明は、CD1d拘束性Vδ1+T細胞活性化により引き起こされる、維持される及び/又は伝播される障害の処置において使用するための、好ましくは、CD1d拘束性Vδ1+末梢T細胞リンパ腫の処置において使用するための、CD1d分子に特異的に結合することができる第1の結合部分を含む結合分子であって、Vδ1 T細胞活性化を低下させることができiNKT細胞を活性化することができる結合分子を提供する。
【0090】
さらなる態様では、本発明は、CD1d分子に特異的に結合することができる第1の結合部分を含み、Vγ9Vδ2-TCRに特異的に結合することができる第2の結合部分を含む結合分子であって、Vδ1 T細胞活性化を低下させることができ、iNKT細胞を活性化することができ、Vγ9Vδ2-T細胞を活性化することができる結合分子を提供する。
【0091】
さらなる態様では、本発明は、CD1d拘束性Vδ1+T細胞活性化により引き起こされる、維持される及び/又は伝播される障害の処置において使用するための、好ましくは、CD1d拘束性Vδ1+末梢T細胞リンパ腫の処置において使用するための、CD1d分子に結合する際に単一ドメイン抗体1D12と競合することができる第1の結合部分を含む抗体に関する。好ましくは、抗体はVδ1 T細胞活性化を低下させることができる及び/又はiNKT細胞を活性化することができる。
【0092】
さらなる態様では、本発明は、CD1d分子に結合する際に1D12と競合することができる第1の結合部分を含み、Vγ9Vδ2-TCRに特異的に結合することができる第2の結合部分を含む、二重特異性抗体等の抗体であって、結合分子がVγ9Vδ2 T細胞を活性化することができる抗体に関する。好ましくは、抗体はVδ1 T細胞活性化を低下させることができ及び/又はiNKT細胞を活性化することができる。好ましくは、第1の及び/又は第2の結合部分は単一ドメイン抗体である。
【0093】
本発明の結合分子を調製する方法
ポリペプチド、特に、抗体等の本発明の結合分子は典型的には組換え的に、すなわち、
ポリペプチドをコードする核酸構築物を適切な宿主細胞で発現させ、続いて産生された組換えポリペプチドを細胞培養物から精製することにより産生される。核酸構築物は、当技術分野で周知である標準分子生物学技法により作製することができる。構築物は典型的には、ベクターを使用して宿主細胞内に導入される。適切な核酸構築物であるベクターは当技術分野では公知である。抗体等のポリペプチドの組換え発現に適した宿主細胞は当技術分野では周知であり、CHO、HEK-293、Expi293F、PER-C6、NS/0及びSp2/0細胞を含む。
【実施例
【0094】
材料
細胞系統
CD1dを安定的に形質導入された、ヒトエプスタインバーウイルス形質転換Bリンパ芽球細胞系統C1R、及びヒト細胞系統JYは、10%(v/v)のウシ胎仔血清(カタログ番号SV30160.03; HyClone GE Healthcare社、Chalfont、St Giles、UK)、0.05mmのβメルカプトエタノール、100IU/mlのペニシリンナトリウム、100μg/mlのストレプトマイシンサルフェート及び2.0mmのl-グルタミン(カタログ番号10378-016; Life Technologies社、Carlsbad、CA)を補充したイスコフ改変ダルベッコ培地(カタログ番号12-722F; Lonza社、Basel、Switzerland)において生育した。CD1dを安定的に形質導入された、ヒト子宮頚部腺癌細胞系統HeLaは、10%(v/v)のウシ胎仔血清、0.05mmのβメルカプトエタノール、100IU/mlのペニシリンナトリウム、100μg/mlのストレプトマイシンサルフェート及び2.0mmのl-グルタミンを補充したダルベッコ改変イーグル培地(カタログ番号BE12-709F; Lonza社)で培養した。mcherry/luc有の又はなしの及びCD1dを安定的に形質導入されたヒト骨髄腫細胞系統MM.1s、ヒト急性Tリンパ芽球性白血病細胞系統CCRF-CEM、Vδ1スルファチド-CD1d拘束性TCRを形質導入されたヒト急性T細胞白血病細胞系統ジャーカット、並びにヒト急性骨髄腫白血病細胞系統MOLM-13及びNOMO-1は、10%(v/v)のウシ胎仔血清、0.05mmのβメルカプトエタノール、100IU/mlのペニシリンナトリウム、100μg/mlのストレプトマイシンサルフェート及び2.0mmのl-グルタミンを補充したRPMI-1640 (カタログ番号BE12-115F; Lonza社)培地で培養した。CCRF-CEM及びMM1.s遺伝子特徴は、PCR単一遺伝子座技術により判定し、公表されているDNAプロファイルと同一であることが分かった。細胞はマイコプラズママイナスを試験し、頻繁にフローサイトメトリーにより純度(トランスフェクタント)について試験した。
【0095】
フローサイトメトリー及びモノクローナル抗体
以下の抗体を本研究で使用し:フルオレセインイソチオシアネート(FITC)コンジュゲートVδ2、FITC CD69、フィコエリトリン(PE)及びアロフィコシアニン(APC)コンジュゲートCD25(カタログ番号555432及び#340907)、並びにAPC CD3はBD Biosciences社(Franklin Lakes、NJ)から購入した。フィコエリトリン-シアニン7コンジュゲートVα24(カタログ番号PN A66907)及びVβ11 PE(カタログ番号IM2290)はBeckman Coulter社(Brea、CA)から購入した。7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD)はSigma社(St Louis、MO)から、PE Vγ9はBiolegend社(San Diego、USA)から、PE CD107aはMiltenyi社(Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、Germany)から、FITCアネキシンVはVPS Diagnostics社(Hoever、the Netherlands)(カタログ番号A700)から購入した。テトラマーは社内で作製した。フォローサイトメトリー染色は、別段明記されなければ、4℃で30分間FACSバッファー(0.1%のBSA及び0.02%のアジ化ナトリウムを補充したPBS)において実施した。試料はFACS Fortessa(BD Biosciences社)上で分析した。
【0096】
DC、iNKT及びVγ9Vδ2-T細胞系統の作製
moDC及び一次ヒトiNKT及びγδT細胞は以前記載された通りに作製した(De Bruinら、(2016) Clin Immunol 169:128頁)。手短に言えば、単球は、CD14 MicroBeads(Miltenyi Biotec社、Bergisch Gladbach、Germany)を使用して末梢血単核球から単離し、1000 U/mlの顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(Sanofi Leukine社、Bridgewater、NJ)及び20ng/mlのIL-4(カタログ番号204-IL/CF; R&D Systems社、Minneapolis、MN)の存在下、5~7日間、完全RPMI-1640培地において培養し、続いて、100ng/mlのα-GalCer(カタログ番号KRN7000; Funakoshi社、Tokyo、Japan)の存在又は非存在下、48~72時間、100ng/mlのリポ多糖(LPS)(カタログ番号L6529; Sigma社)で成熟させた。iNKT細胞は、磁気ビーズソーティングを使用して健康なボランティアの末梢血単核球細胞から精製し、1%のヒトAB血清、10U/mlのIL-7(カタログ番号207-IL/CF; R&D Systems社)及び10ng/mlのIL-15(カタログ番号34-8159; eBioscience社)を補充したYssel培地において成熟α-GalCer負荷moDCを用いて毎週刺激した。γδT細胞は、磁気ビーズソーティングを使用して健康なボランティアの末梢血単核球細胞から精製し、1%のヒトAB血清、100U/mlのIL-2(BioVision社、Mountain View、California、USA)、10U/mlのIL-7及び10ng/ml IL-15を補充したYssel培地においてパミドロネート負荷moDC (10μM)(PCH、Pharmachemie BV社、Haarlem、The Netherlands)を用いて毎週刺激した。代わりに、γδT細胞は、上記の通りに補充されたRPMI-1640培地において照射フィーダー細胞(2人のドナーの1×106の混合PBMC及び0.1×106のJY細胞)、10IU/mLのrhIL-7、10μg/mLのrhIL-15及び50ng/mLのPHAを用いて毎週刺激した。培養密度に応じて、培養細胞は分け、新鮮な培養培地を添加した。実験には、純粋な(> 95% Vα24+ Vβ11+又はVγ9+ Vδ2+)iNKT及びγδT細胞を使用した。
【0097】
抗CD1d及び抗γδTCR特異的VHHの作製
抗CD1d及び抗γδTCR特異的VHHは以前記載された通りに同定し作製した(Lameris Rら、(2016) Immunology 149(1):111頁; De Bruinら、(2016) Clin Immunol 169:128頁)。タグなし1D12、1D22及び1D12-5C8はUPE(Utrecht、the Netherlands)により産生した。
【0098】
インビボ異種移植マウス多発性骨髄腫(MM)モデル
播種性MMモデルは、NOD scidガンマ(NSG)マウスへのCD1d+ MM細胞の静脈内移入により確立した。生後18~26週NSGメスマウス(Charles River社)は、尾部静脈を介した2.5×106のMM.1s.mcherry/luc.CD1d細胞の静脈内(i.v.)注射(0日目)に先立って24時間2Gyで照射した。7、14及び21日目、1×107のヒトiNKT細胞、ヒトγδT細胞又はその混合物(1対1比)を静脈内注射した。マウスは、PBS又は二重特異性抗体1D12-5C8(100μg/マウス)を隔週で腹腔内(i.p.)注射した。マウスは、事前設定したヒトエンドポイントに到達すると安楽死させた。動物実験は、動物への科学的手順に関するオランダ中央機関(Dutch Central Authority for Scientific Procedures on Animals)(CCD)により承認を受けた。
【0099】
(実施例1)
iNKT細胞活性化の調節
iNKT細胞活性化を刺激する又は阻害する1D12及び1D22の能力を評価するため、96ウェル組織培養プレートにウェルあたり5×104のHela-CD1d細胞を播種し、溶媒対照(DMSO 0.01%)又は100ng/mlのα-GalCerと一緒に一晩パルスした。次に、細胞をPBSで洗浄し、指示された濃度で1時間培養液、又は抗CD1d特異的VHHと一緒にインキュベートした。続いて、5×104の純粋な休止iNKTをそれぞれのウェルに添加した。24時間後、培養上澄みをCBA(BD Biosciences社)によりサイトカイン産生(の誘導又は阻害)について分析し、iNKT細胞は回収してフローサイトメトリーによりCD25発現について分析した。図1に見られるように、iNKT細胞活性化及びサイトカイン産生(P<0.0001)を、したがって、CD1d-α-GalCer複合体の認識を完全に遮断する抗CD1d VHH(クローン1D22)を同定した。これとははっきり対照的に、抗CD1d VHHクローン1D12は、外因的に添加した糖脂質Agが存在しなくてもCD1d拘束性iNKT細胞活性化を増強することが見出された(図1a及びc)(P<0.0001)。
【0100】
(実施例2)
ジャーカット-Vδ1細胞活性化の調節
iNKT細胞はCD1dのいちばん端にある(extreme)F'ポケット上に結合することが知られており、もっとA'ポケット側で結合するスルファチドCD1d拘束性Vδ1-T細胞と対照をなす。したがって、スルファチドCD1d拘束性Vδ1-T細胞に対する1D12及び1D22の効果を評価した。ジャーカット-Vδ1細胞活性化に対する1D12及び1D22の効果を評価するため、96ウェル組織培養プレートにウェルあたり1×105のC1R-CD1d細胞を播種し、溶媒対照(DMSO 0.05%)又は25μg/mlのスルファチドと一緒に2時間パルスした。次に、細胞を100nM(示されていない)又は1000nMで1時間培養液、又は抗CD1d特異的VHHと一緒にインキュベートした。続いて、5×104のジャーカット-Vδ1をそれぞれのウェルに添加した。24時間後、ジャーカット-Vδ1細胞を回収してフローサイトメトリーによりCD65発現について分析した。図2Bに見られるように、共培養中の1D12の添加によりVδ1-ジャーカットの活性化は完全に抑制され、1D22は活性化マーカーCD69の発現に対しては限定された影響のみであった。100nM又は1000nMでのインキュベーションは類似する結果となった(データは示さず)。
【0101】
ジャーカット-Vδ1細胞上で結合するCD1dテトラマーに対する1D12及び1D22の効果を評価するため、内在性又はスルファチド負荷CD1d-PEテトラマーを、室温で30分間、PBS(対照)、1D12又は1D22(VHH対CD1d比約4対1)と一緒にインキュベートし、その後テトラマーをCD3-APCと組み合わせてジャーカット-Vδ1細胞(最終濃度テトラマー2μg/ml)に添加し、4℃で45分間インキュベートした。データはフローサイトメトリーにより分析した。スルファチド負荷CD1dテトラマーを1D12と一緒にインキュベートするとジャーカット-Vδ1細胞への結合を完全に妨げ、1D22は限定された影響しか及ぼさなかった(図2A)。これらのデータは、特定のCD1d拘束性T細胞の反応性を調節する抗CD1d VHHの能力を支持しており、これは広範囲のCD1d拘束性T細胞のCD1d-TCR相互作用を遮断する51.1mAb等の既知のmAbとはっきり対照をなしている(Nambiarら、(2015) MAbs 7:638頁; Migalovich Sheikhetら、(2018) Front Immunol 9:753頁)。
【0102】
(実施例3)
二重特異性抗CD1d抗Vγ9Vδ2 TCR VHHによるiNKT及びVγ9Vδ2 T細胞の二重活性化
以前、抗腫瘍治療目的で、特徴がはっきりしている抗Vγ9Vδ2-TCR VHHが、腫瘍関連抗原に特異的であるVHHに融合させた。CD1dは種々の(血液)悪性腫瘍上で、並びに腫瘍関連マクロファージ及び骨髄系由来サプレッサー細胞上で発現され、したがって、抗がん治療標的として使用することができると考えられる。iNKT及びVγ9Vδ2-T細胞の二重活性化を誘導して腫瘍標的溶解をもたらす1D12-5C8の能力を評価するため、1×105のCCRF-CEM細胞を、培養液単独、一価1D12又は二重特異性1D12-5C8の存在下で、5×104のiNKT cells、5×104のVγ9Vδ2-T細胞又は5×104の混合iNKT/Vγ9Vδ2-T (1対1比)と一緒にインキュベートした。4時間後、エフェクター細胞の脱顆粒をCD107a発現により測定し、フローサイトメトリーにより分析した。標的細胞に対する細胞傷害性を評価するため、生存CCRF-CEM細胞(アネキシンV及び7-AADネガティブ)を、フローサイトメトリー細胞計数ビーズを使用して共培養16時間後に定量化した。
【0103】
iNKT及びVγ9Vδ2-T増殖を支持し腫瘍成長を制御する1D12-5C8の能力を判定するため、同じドナーから新たに単離したiNKT及びVγ9Vδ2-Tを1週間増殖させた。続いて、5×104のMM.1s-CD1d細胞を培養液又は1D12-5C8(50nM)と一緒に30分間インキュベートし、その後iNKT、Vγ9Vδ2-T細胞又はその混合物(2対3比)を10対1標的対エフェクター比で添加した。生存MM.1s-CD1d(又はMOLM-13若しくはNOMO-1)、iNKT及びVγ9Vδ2-T細胞(7-AADネガティブ)を、フローサイトメトリー細胞計数ビーズを使用して7日後に定量化した。
【0104】
図3aに見られるように、iNKTとVγ9Vδ2-T細胞のロバストな同時脱顆粒は、1D12-5C8の存在下でのみ観察された。更に、エフェクター細胞活性化により生存腫瘍細胞は著しく減少した(図3b)。
【0105】
インビボでのエフェクターの標的に対する比は好ましくないので、通常、腫瘍成長を制御するため腫瘍標的エフェクター細胞の増殖が必要とされる。二重特異性1D12-5C8 VHHがそのような状況でエフェクター細胞増殖と腫瘍制御の両方を誘導することができるかどうかを調べるため、MM.1s-CD1d細胞を1D12-5C8と一緒にインキュベートし、その後iNKT、Vγ9Vδ2-T細胞又はその混合物を、1対10のエフェクターの標的に対する比で添加した。増殖を誘導し腫瘍成長を制御する1D12-5C8の能力は、これらの細胞のフローサイトメトリー定量化により共培養の7日後に評価した。図4aに見られるように、iNKTの増殖は二重特異性構築物の存在下で観察された。しかし、Vγ9Vδ2-T細胞はiNKT細胞と二重特異性構築物の両方の存在下でのみ増殖を示した。更に、ロバストな腫瘍成長制御は二重特異性構築物をエフェクター細胞と組み合わせることにより誘導された(図4b)。同様に、腫瘍成長制御及びエフェクター細胞増殖は、急性骨髄性白血病腫瘍細胞系統MOLM-13及びNOMO-1を用いて観察され、この二重特異性抗CD1d抗Vγ9Vδ2-TCR VHHの強力な抗腫瘍効力及び広い適用性を強調している。
【0106】
(実施例4)
1D12と1D12-5C8の結合競合
1D12結合が1D12-5C8結合を妨害するかどうかを評価するため、1×105のMM1s-CD1d細胞を、PBS(負の対照、NC)、1D12(1000nM)、1D22(1000nM)又は抗CD1d mAb 51.1 (100nM)と一緒に45分間インキュベートし、その後PBS(NC)又はNHS-ビオチン(ThermoFischer Scientific Inc.社、Waltham、MA)連結1D12-5C8(100nM)を添加し4℃で更に30分間おいた。広範な洗浄後、試料はストレプトアビジン-APC(eBioscience社、San Diego、CA)で染色し、フローサイトメトリーにより分析した。
【0107】
1D12と1D12-5C8の間の競合を評価するため、CD1d発現MM細胞をPBS、1D12、1D22(1D12-5C8結合を妨害しないはずである)又は抗CD1d mAb 51.1と、続いてビオチン化1D12-5C8と一緒に逐次的にインキュベートした。次に、CD1dと複合体形成する1D12-5C8の能力は、フローサイトメトリーによりストレプトアビジン-APCの結合を分析することにより判定した。図5に見られるように、1D12又は抗CD1d mAb 51.1のプレインキュベーションにより1D12-5C8結合は大いに低減したが、1D22では低減しなかった。
【0108】
(実施例5)
インビボ異種移植マウス多発性骨髄腫(MM)モデル
二重特異性CD1d/Vδ2結合抗体1D12-5C8の抗腫瘍効力はインビボモデルにおいて研究し、マウスには、MM.1s.mCherry/luc.CD1d細胞をi.v.接種して播種性MMモデルを確立し、続いて、1D12-5C8と組み合わせて又は組み合わせずに、ヒトiNKT細胞、ヒトγδ T細胞又はその混合物の3種のi.v.注入を腫瘍接種の7日後に開始した。1D12-5C8単独の隔週i.p.投与は何の効果もなかった(生存期間中央値47日対49.5日、P>0.05)が、1D12-5C8とiNKT細胞の組合せ処置ではiNKT細胞単独(生存期間中央値58.5日)と比べて生存を有意に延長し(p<0.0001)、すべてのマウスが研究の終了時(90日目)に生存していた。ヒトγδT細胞のみでの処置と比べて、ヒトγδT細胞と1D12-5C8の処置は、生存期間中央値を48日から60日まで増やす傾向を示した(p=0.16)。1D12-5C8を隔週でi.p.投与するのと併せたiNKT細胞とγδT細胞の両方の注入は、抗体のない細胞のみの混合物(生存期間中央値55日)と比べて、生存を有意に延長し、7/8マウスが研究の終了時(90日目)に生存していた(p>0.0001)。
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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