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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】M1ウイルス変異体及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/40 20060101AFI20240319BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20240319BHJP
   A61K 35/768 20150101ALI20240319BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240319BHJP
   A61K 48/00 20060101ALN20240319BHJP
【FI】
C12N15/40 ZNA
C12N7/01
A61K35/768
A61P35/00
A61P35/02
A61K48/00
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021571298
(86)(22)【出願日】2020-05-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-04
(86)【国際出願番号】 CN2020093642
(87)【国際公開番号】W WO2020239118
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】201910472439.7
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【微生物の受託番号】CCTCC  CCTCC V201423
(73)【特許権者】
【識別番号】516234063
【氏名又は名称】広州威溶特医薬科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUANGZHOU VIROTECH PHARMACEUTICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 416-428, Guangzhou International Business Incubator G District No.3, Lanyue Road, Science Park, High-tech Industrial Development Zone Guangzhou,Guangdong 510663 (CN)
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】顔光美
(72)【発明者】
【氏名】林園
(72)【発明者】
【氏名】郭莉
(72)【発明者】
【氏名】林子青
(72)【発明者】
【氏名】呉広恩
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-526612(JP,A)
【文献】nonstructural polyprotein [Cloning vector pCHIK-37997ic], ABX40010,[online], National Center for Biotechnology Information, 2007年11月24日掲載, 2022年12月7日検索, インターネット,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/ABX40010.1?
【文献】recombinant envelope protein 2 [synthetic construct], QBB02187,[online], National Center for Biotechnology Information, 2019年2月13日掲載, 2022年12月7日検索, インターネット,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/QBB02187.1?
【文献】structural polyprotein [Cloning vector pCHIK-37997ic], ABX40011, [online], National Center for Biotechnology Information, 2007年11月24日掲載, 2022年12月7日検索, インターネット,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/ABX40011.1?
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
C12N 7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍溶解性を有するM1変異ウイルスであって、
配列番号8又は配列番号18に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、若しくは少なくとも99.8%の配列同一性を有し、且つ配列番号8又は配列番号18における第358位でのアミノ酸残基Mが、G、A、L、I、V、P、S、Q、T、C、N、F、Y、D、K、R又はHに置換されたアミノ酸配列を含む、NS3タンパク質、および/または、
配列番号12又は配列番号31に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、若しくは少なくとも99.8%の配列同一性を有し、且つ配列番号12における第4位でのアミノ酸残基K、又は配列番号31における第4位でのアミノ酸残基Eが、M、L、I、V、S、C、N又はDに置換されたアミノ酸配列を含む、エンベロープタンパク質E2、
を含む、M1変異ウイルス。
【請求項2】
腫瘍溶解性を有するM1変異ウイルスであって、
配列番号8又は配列番号18において、第358位でのアミノ酸残基Mが、G、A、L、I、V、P、S、Q、T、C、N、F、Y、D、K、R又はHに置換されたアミノ酸配列を含む、NS3タンパク質、および/または、
配列番号12において第4位でのアミノ酸残基K、又は配列番号31において第4位でのアミノ酸残基Eが、M、L、I、V、S、C、N又はDに置換されたアミノ酸配列を含む、エンベロープタンパク質E2、
を含む、M1変異ウイルス。
【請求項3】
前記M1変異ウイルスは、配列番号5に示される配列を有するM1ウイルスに対して、前記NS3タンパク質の前記第358位でのアミノ酸残基MがG、A、L、I、V、P、S、Q、T、C、N、F、Y、D、K、R又はHに変異し、および/または、前記E2タンパク質の前記第4位でのアミノ酸残基KがM、L、I、V、S、C、N又はDに変異したものである、請求項1又は2に記載のM1変異ウイルス。
【請求項4】
前記M1変異ウイルスは、配列番号15に示される配列を有するM1ウイルスに対して、前記NS3タンパク質の前記第358位でのアミノ酸残基MがLに変異し、および/または、前記E2タンパク質の前記第4位でのアミノ酸残基EがDに変異したものである、請求項1~のいずれか一項に記載のM1変異ウイルス。
【請求項5】
抗腫瘍薬の製造における、請求項1~4のいずれか一項に記載のM1変異ウイルスの使用。
【請求項6】
前記抗腫瘍薬の治療対象腫瘍が固形腫瘍及び血液腫瘍から選択される、請求項に記載の使用。
【請求項7】
前記固形腫瘍は、肝臓がん、結腸直腸がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、前立腺がん、神経膠腫、黒色腫、膵臓がん、鼻咽頭がん、肺がん、胃がん、副腎皮質がん、アクセサリーレナル皮質がん、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫、非定型奇形腫、ラブドイド腫瘍、基底細胞がん、胆管がん、膀胱がん、骨がん、脳腫瘍、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、心臓腫瘍、胆管上皮がん、脊索腫、大腸がん、頭蓋咽頭腫、非浸潤性乳管がん、胚細胞腫瘍、子宮内膜がん、上衣腫、食道がん、嗅神経芽細胞腫、頭蓋内胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、眼がん、卵管がん、胆嚢がん、頭頸部がん、下咽頭がん、カポジ肉腫、腎臓がん、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭がん、唇がん、口腔がん、メルケル細胞がん、悪性中皮腫、多発性内分泌腺腫症、菌状息肉症、鼻腔・副鼻腔がん、神経芽細胞腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、膵臓神経内分泌腫瘍、膵島細胞腫瘍、乳頭腫症、傍神経節腫、副鼻腔・鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽喉頭がん、下垂体腫瘍、胸膜肺芽腫、原発性腹膜がん、網膜芽細胞腫、唾液腺腫瘍、肉腫、セザール症候群、皮膚ガン、小細胞肺がん、小腸がん、軟部組織肉腫、扁平上皮がん、精巣がん、胸腺腫及び胸腺がん、甲状腺がん、尿道がん、子宮がん、子宮内膜及び子宮肉腫、膣がん、血管腫瘍、外陰がん及び単発性骨髄腫から選択される1種又は複数種である、請求項に記載の使用。
【請求項8】
前記血液腫瘍は、B細胞急性リンパ性白血病(BALL)、T細胞急性リンパ性白血病(TALL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞前骨髄球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、小細胞又は大細胞性-濾胞性リンパ腫、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、形質芽細胞リンパ腫、形質細胞様樹状細胞腫瘍、Waldenstromマクログロブリン血症及び前白血病から選択される1種又は複数種である、請求項に記載の使用。
【請求項9】
請求項1からのいずれか一項に記載のM1変異ウイルスを含む抗腫瘍剤。
【請求項10】
有効量の請求項1からのいずれか一項に記載のM1変異ウイルスと、薬学的に許容される担体とを含む、組成物。
【請求項11】
前記組成物は、免疫チェックポイント阻害剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物は、化学療法剤をさらに含む、請求項1または1に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物は抗腫瘍に用いられる、請求項1~1のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
剤形は、注射剤、錠剤、カプセル、キット及び貼付剤から選択される、請求項に記載の抗腫瘍剤又は請求項1~1のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記腫瘍は、固形腫瘍及び血液腫瘍から選択される、請求項に記載の抗腫瘍剤、又は請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記固形腫瘍は、肝臓がん、結腸直腸がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、前立腺がん、神経膠腫、黒色腫、膵臓がん、鼻咽頭がん、肺がん、胃がん、副腎皮質がん、アクセサリーレナル皮質がん、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫、非定型奇形腫、ラブドイド腫瘍、基底細胞がん、胆管がん、膀胱がん、骨がん、脳腫瘍、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、心臓腫瘍、胆管上皮がん、脊索腫、大腸がん、頭蓋咽頭腫、非浸潤性乳管がん、胚細胞腫瘍、子宮内膜がん、上衣腫、食道がん、嗅神経芽細胞腫、頭蓋内胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、眼がん、卵管がん、胆嚢がん、頭頸部がん、下咽頭がん、カポジ肉腫、腎臓がん、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭がん、唇がん、口腔がん、メルケル細胞がん、悪性中皮腫、多発性内分泌腺腫症、菌状息肉症、鼻腔・副鼻腔がん、神経芽細胞腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、膵臓神経内分泌腫瘍、膵島細胞腫瘍、乳頭腫症、傍神経節腫、副鼻腔・鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽喉頭がん、下垂体腫瘍、胸膜肺芽腫、原発性腹膜がん、網膜芽細胞腫、唾液腺腫瘍、肉腫、セザール症候群、皮膚ガン、小細胞肺がん、小腸がん、軟部組織肉腫、扁平上皮がん、精巣がん、胸腺腫及び胸腺がん、甲状腺がん、尿道がん、子宮がん、子宮内膜及び子宮肉腫、膣がん、血管腫瘍、外陰がん及び単発性骨髄腫から選択される1種又は複数種である、請求項1に記載の抗腫瘍剤、又は請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
前記血液腫瘍は、B細胞急性リンパ性白血病(BALL)、T細胞急性リンパ性白血病(TALL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞前骨髄球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、小細胞又は大細胞性-濾胞性リンパ腫、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、形質芽細胞リンパ腫、形質細胞様樹状細胞腫瘍、Waldenstromマクログロブリン血症及び前白血病から選択される1種又は複数種である、請求項1に記載の抗腫瘍剤、又は請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ医薬分野に属し、具体的には、M1ウイルス変異体及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
正常細胞における遺伝子とエピジェネティクスの蓄積された変化は、正常細胞の悪性腫瘍細胞への変化を促進する。この複雑な病理学的プロセスは、さまざまな腫瘍の発生、維持、及び転移に係るメカニズムの多様性を決定する(1-3)。腫瘍の伝統的な治療法には外科的切除、化学療法、放射線療法がある。しかし、腫瘍の外科的切除では再発しやすい問題があり、放射線療法と化学療法では深刻な副作用という問題がある(4)。近年、IL-2制御、養子細胞療法、PD-1などの免疫チェックポイントの調節を含む標的療法および腫瘍免疫療法は、臨床治療において一定の効果を達成している。しかしながら、標的療法では薬剤耐性を起こしやすく、免疫療法では反応率が低く、且つ深刻な免疫関連の有害事象を引き起こす可能性がある(5,6)。そのため、低毒性で効果的で薬剤耐性が低い新しい抗がん治療法の研究開発が必要とされている。
【0003】
腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍細胞を殺すだけでなく、宿主の免疫系にがんの存在を注意する。ウイルス療法は、健康な組織よりもがん組織を攻撃する傾向が高いという腫瘍溶解性ウイルスの特性に基づく方法である。2005年に、中国食品薬品監督管理局は、初の腫瘍溶解性ウイルス療法に適用される治療薬(商品名:Oncorine)の販売を承認した。これは、腫瘍細胞を優先的に攻撃する遺伝子組み換えウイルスであり、既に頭頸部がんの治療に用いられている。2015年にアメリカ食品医薬品局(FDA)は黒色腫治療用のT-VECを承認した。これは、遺伝子組み換えヘルペスウイルスを使用するものであり、翌年にオーストラリアと欧州連合で承認された。さらに、いくつかの腫瘍溶解性ウイルスが研究されている。ここ数十年で、ウイルス療法は大きな進歩を遂げたが、依然として多くの困難に直面している。
【0004】
まず、治療効果には問題がある。腫瘍溶解性ウイルスの抗腫瘍効果又は抗腫瘍スペクトルは限られている。多くの腫瘍溶解性ウイルスは腫瘍細胞を十分に阻害又は殺すことができず、他の化学療法剤又は免疫チェックポイント阻害剤と併用する必要があり、放射線療法の補助療法として使用する場合もある。例えば、中国特許出願第201410425510.3号に記載のM1ウイルスは、抗腫瘍薬として使用する際に、結腸直腸がん、肝臓がん、膀胱がん及び乳がんに対する効果が最も高く、膵臓がん、鼻咽頭がん、前立腺がん及び黒色腫に対する効果が低くなり、神経膠腫、子宮頸がん、肺がんに対する効果がさらに低くなり、胃がんに対する効果が最も低い。
【0005】
また、安全性には問題がある。人体に危険なウイルスもあり、危険なウイルスではウイルス治療に使用する前に修飾して弱毒化する必要がある。しかし、修飾して弱毒化した後においても、腫瘍溶解性ウイルスは、「エスケープウイルス」、つまり放出後に再び変化し、又は既に患者の体内に存在する病原体と結合して健康な組織に急速に感染するウイルスになる可能性がある。
【0006】
さらに、ウイルスの送達、即ち、如何にウイルスを病巣に送達するかという問題がある。既存の腫瘍溶解性ウイルス(例えば、アメリカ食品医薬品局(FDA)によって承認された黒色腫治療用のT-VEC)は、ほとんど腫瘍組織に注射される。しかしながら、多くの固形腫瘍や微小転移巣は直接注射できないか、血液腫瘍などの非固形腫瘍は全身に分布し、固定した注射部位がない。これらのタイプの腫瘍の治療では、既存のウイルス療法を使用することは困難である。
【0007】
したがって、腫瘍溶解性ウイルスの開発は依然として大きな挑戦である。
【0008】
アルファウイルスは、トガウイルス科に属し、エンベロープ構造を有する一本鎖プラス鎖RNAウイルスの一種である。アルファウイルス属のチクングニアウイルスは、人体に病原性のあるウイルスであり、毒性が高く、感染後に発熱、発疹、関節炎、さらには致命的な脳炎を引き起こすことが報告されている(7,8)。アルファウイルス属の別のウイルスであるベネズエラ馬脳炎ウイルスは、樹状細胞を形質導入して腫瘍を治療するための担体として使用されることが報告されている(9)。しかし、この脳炎ウイルスは、ヒトに発熱、痙攣、流産、さらには死亡を引き起こしたことがある(10)。
【0009】
M1ウイルス(Alphavirus M1)はアルファウイルス属(Alphavirus)に属し、1964年に中国海南島のアカイエカから分離され、ウイルスの分離方法が文献に発表されている(11)。M1ウイルスは、ゲタウイルスとの相同性が97.8%と高く、ゲタ類似ウイルスに属する(12)。2008年に、M1株の全ゲノムに対する配列決定が完成した(13)。M1ウイルスは特許CN201410425510.3において腫瘍溶解効果を有することが報告されているが、既存の野生型M1ウイルスの抗腫瘍スペクトルと抗腫瘍強度には改善の余地がある。
【発明の概要】
【0010】
いくつかの実施形態において、M1ウイルスが提供される。前記M1ウイルスのNS3タンパク質の第358位に相当する位置のアミノ酸残基はMではなく、および/またはエンベロープタンパク質E2の第4位に相当する位置のアミノ酸残基はE又はKではない。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記M1ウイルスのNS3タンパク質(nonstructralprotein3)の第358位に相当する位置のアミノ酸残基はG、A、L、I、V、P、S、Q、T、C、N、F、Y、W、D、E、K、R又はHであり、および/または前記M1ウイルスのエンベロープタンパク質E2(envelopeprotein2)の第4位に相当する位置のアミノ酸残基はM、G、A、L、I、V、P、S、Q、T、C、N、F、Y、W、D、R又はHである。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記M1ウイルスに含まれるNS3タンパク質は、配列番号8又は配列番号18に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%若しくは100%の配列同一性(Identity)を有し、および/または前記M1ウイルスに含まれるE2タンパク質は、配列番号12又は配列番号31に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%或100%の配列同一性(Identity)を有する。いくつかの実施形態において、M1ウイルスが提供される。その核酸配列によってコードされるNS3タンパク質の第358位の位置に相当するアミノ酸残基はMではなく、および/またはE2タンパク質の第4位の位置に相当するアミノ酸残基はE又はKではない。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記M1ウイルスの核酸配列は、配列番号5、配列番号15、ジーンバンクアクセッション番号EU015061.1、ジーンバンクアクセッション番号EF011023.1、又はCCTCC V201423に示されるM1配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%若しくは100%の配列同一性(Identity)を有する。
【0014】
いくつかの実施形態において、好ましくは、前記NS3タンパク質の第358位に相当する位置のアミノ酸残基はG、A、L、I、V、P、S、Q、T、C、N、F、Y、W、D、E、K、R又はHであり、および/または前記E2タンパク質の第4位に相当する位置のアミノ酸残基はM、G、A、L、I、V、P、S、Q、T、C、N、F、Y、W、D、R又はHである。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記M1ウイルスは、野生型M1ウイルス又は偽野生型M1ウイルスに対して変異を有する。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記M1ウイルスは、配列が配列番号5に示されるM1ウイルス又は配列番号15に示されるM1ウイルスに対して変異を有する。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記変異は、NS3タンパク質におけるM358G、M358A、M358L、M358I、M358V、M358P、M358S、M358Q、M358T、M358C、M358N、M358F、M358Y、M358W、M358D、M358E、M358K、M358R又はM358Hであり、および/またはE2タンパク質におけるK4M、K4G、K4A、K4L、K4I、K4V、K4P、K4S、K4Q、K4T、K4C、K4N、K4F、K4Y、K4W、K4D、K4R、K4H、E4M、E4G、E4A、E4L、E4I、E4V、E4P、E4S、E4Q、E4T、E4C、E4N、E4F、E4Y、E4W、E4D、E4R又はE4Hである。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記M1ウイルスは、配列番号5に示される配列を有するM1ウイルスのNS3タンパク質の第358位に相当する位置のアミノ酸残基MがG、A、L、I、V、P、S、Q、T、C、N、F、Y、W、D、E、K、R又はHに変異し、および/またはE2タンパク質の第4位のアミノ酸残基KがM、G、A、L、I、V、P、S、Q、T、C、N、F、Y、W、D、R又はHに変異したものである。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記M1ウイルスは、配列番号15に示されるM1ウイルスのNS3タンパク質の第358位に相当する位置のアミノ酸残基MがLに変異し、および/またはE2タンパク質の第4位に相当する位置のアミノ酸残基EがDに変異したものである。
【0020】
いくつかの実施形態において、上述したいずれかのM1ウイルスを含む核酸配列が提供される。
【0021】
いくつかの実施形態において、M1ウイルスのNS3タンパク質に対応するアミノ酸配列が提供される。その第358位に相当する位置のアミノ酸残基はMではない。
【0022】
いくつかの実施形態において、前記第358位に相当する位置のアミノ酸残基はG、A、L、I、V、P、S、Q、T、C、N、F、Y、W、D、E、K、R又はHである。
【0023】
いくつかの実施形態において、前記M1ウイルスのNS3タンパク質に対応するアミノ酸配列は、配列番号8又は配列番号18に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%、少なくとも99.9%若しくは100%の配列同一性(Identity)を有する。
【0024】
いくつかの実施形態において、M1ウイルスのE2タンパク質に対応するアミノ酸配列がさらに提供される。その第4位に相当する位置のアミノ酸残基はE又はKではない。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記第4位に相当する位置のアミノ酸残基はM、G、A、L、I、V、P、S、Q、T、C、N、F、Y、W、D、R又はHである。
【0026】
いくつかの実施形態において、前記M1ウイルスのE2タンパク質に対応するアミノ酸配列は、配列番号12又は配列番号31に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%若しくは100%の配列同一性(Identity)を有する。
【0027】
いくつかの実施形態において、前記M1ウイルスのNS3タンパク質に対応するアミノ酸配列をコードする核酸配列が提供される。
【0028】
いくつかの実施形態において、前記M1ウイルスのE2タンパク質に対応するアミノ酸配列をコードする核酸配列が提供される。
【0029】
いくつかの実施形態において、担体が提供される。前記担体は、M1ウイルスのE2タンパク質および/またはNS3タンパク質をコードする核酸を含む。前記NS3タンパク質の第358位の位置に相当するアミノ酸残基はMではなく、前記E2タンパク質の第4位の位置に相当するアミノ酸残基はE又はKではない。
【0030】
いくつかの実施形態において、前記NS3タンパク質の第358位に相当する位置のアミノ酸残基はG、A、L、I、V、P、S、Q、T、C、N、F、Y、W、D、E、K、R又はHである。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記E2タンパク質の第4位に相当する位置のアミノ酸残基はM、G、A、L、I、V、P、S、Q、T、C、N、F、Y、W、D、R又はHである。
【0032】
いくつかの実施形態において、前記NS3タンパク質は、配列番号8又は配列番号18に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%或100%の配列同一性(Identity)を有する。
【0033】
いくつかの実施形態において、前記E2タンパク質は、配列番号12又は配列番号31に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%若しくは100%の配列同一性(Identity)を有する。
【0034】
いくつかの実施形態において、前記担体は、M1ウイルスのNS1タンパク質、NS2タンパク質、NS4タンパク質、Cタンパク質、E3タンパク質、6Kタンパク質、および/またはE1タンパク質のコード配列をさらに含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、前記NS1タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号6又は配列番号16に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%若しくは100%の配列同一性(Identity)を有する。
【0036】
いくつかの実施形態において、前記NS2タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号7又は配列番号17に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%若しくは100%の配列同一性(Identity)を有する。
【0037】
いくつかの実施形態において、前記NS4タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号9又は配列番号19に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%若しくは100%の配列同一性(Identity)を有する。
【0038】
いくつかの実施形態において、前記Cタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号10又は配列番号20に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%若しくは100%の配列同一性(Identity)を有する。
【0039】
いくつかの実施形態において、前記E3タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号11又は配列番号30に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%若しくは100%の配列同一性(Identity)を有する。
【0040】
いくつかの実施形態において、前記6Kタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号13又は配列番号32に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%若しくは100%の配列同一性(Identity)を有する。
【0041】
いくつかの実施形態において、前記E1タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号14又は配列番号33に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%、少なくとも99.9%若しくは100%の配列同一性(Identity)を有する。
【0042】
いくつかの実施形態において、前記担体は、M1ウイルスに対する外来遺伝子をさらに含む。
【0043】
いくつかの実施形態において、前記外来遺伝子は、抗腫瘍関連分子を発現する。
【0044】
いくつかの実施形態において、前記担体は、ウイルスから選択される。
【0045】
いくつかの実施形態において、前記担体は、レトロウイルス、ニューカッスル病ウイルス、狂犬病ウイルス、水疱性口内炎ウイルス、マラバウイルス、アルファウイルス、ニューカッスル病ウイルス、レオウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、単純ヘルペスウイルス、牛痘ウイルス又は麻疹ウイルスから選択される。
【0046】
いくつかの実施形態において、前記担体は、プラスミドから選択される。
【0047】
いくつかの実施形態において、前記核酸配列を含む担体が提供される。
【0048】
いくつかの実施形態において、前記担体は、プラスミドから選択される。
【0049】
いくつかの実施形態において、ウイルス担体が提供される。前記ウイルスは上述したいずれかの前記M1ウイルスである。
【0050】
いくつかの実施形態において、前記担体に外来遺伝子が挿入される。
【0051】
いくつかの実施形態において、前記外来遺伝子は、抗腫瘍関連分子を発現する。
【0052】
いくつかの実施形態において、抗腫瘍薬の製造における前記M1ウイルス、前記核酸配列、前記M1ウイルスのNS3タンパク質のアミノ酸配列、前記M1ウイルスのE2タンパク質のアミノ酸配列、前記NS3タンパク質若しくはE2タンパク質の核酸配列、前記担体又は前記ウイルス担体の使用がさらに提供される。
【0053】
いくつかの実施形態において、前記M1ウイルス、前記核酸配列、前記M1ウイルスのNS3タンパク質のアミノ酸配列、前記M1ウイルスのE2タンパク質のアミノ酸配列、前記核酸配列、前記担体又は前記ウイルス担体を含む抗腫瘍剤がさらに提供される。
【0054】
いくつかの実施形態において、有効量の前記M1ウイルス、前記核酸配列、前記M1ウイルスのNS3タンパク質のアミノ酸配列、前記M1ウイルスのE2タンパク質のアミノ酸配列、前記担体又は前記ウイルス担体と、薬学的に許容される担体とを含む組成物がさらに提供される。
【0055】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、免疫チェックポイント阻害剤をさらに含む。
【0056】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、化学療法剤をさらに含む。
【0057】
もちろん、いくつかの実施形態において、前記M1ウイルスには、免疫チェックポイント阻害剤および/または化学療法剤が含まらなくてもよい。本発明の一実施形態において、他のいかなる抗がん剤(化学療法剤、免疫チェックポイント阻害剤又は抗腫瘍効果を有する他の従来物質又はツール)と併用しない場合においても、単独のM1ウイルスは非常に高い腫瘍抑制効果を有する。
【0058】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、少なくとも10個のウイルス粒子又はPFUを含む。
【0059】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、10~1030個のウイルス粒子又はPFUを含む。
【0060】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、10、10、10、10、10、10、10、10、10、1010、1011、1012、1013、1014、1015、1016、1017、1018、1019、1020、1021、1022個のウイルス粒子又はPFU。
【0061】
いくつかの実施形態において、前記組成物は、2×10個のウイルス粒子又はPFUを含む。
【0062】
いくつかの実施形態において、前記組成物は抗腫瘍に用いられる。
【0063】
いくつかの実施形態において、前記抗腫瘍剤又は前記組成物の剤形は、注射剤、錠剤、カプセル、キット又は貼付剤から選択される。
【0064】
いくつかの実施形態において、前記剤形は注射剤から選択される。
【0065】
いくつかの実施形態において、前記使用、前記抗腫瘍剤又は前記組成物における前記腫瘍は、固形腫瘍又は血液腫瘍から選択される。
【0066】
いくつかの実施形態において、前記固形腫瘍は、肝臓がん、結腸直腸がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、前立腺がん、神経膠腫、黒色腫、膵臓がん、鼻咽頭がん、肺がん、胃がん、副腎皮質がん、アクセサリーレナル皮質がん、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫、非定型奇形腫、ラブドイド腫瘍、基底細胞がん、胆管がん、膀胱がん、骨がん、脳腫瘍、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、心臓腫瘍、胆管上皮がん、脊索腫、大腸がん、頭蓋咽頭腫、非浸潤性乳管がん、胚細胞腫瘍、子宮内膜がん、上衣腫、食道がん、嗅神経芽細胞腫、頭蓋内胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、眼がん、卵管がん、胆嚢がん、頭頸部がん、下咽頭がん、カポジ肉腫、腎臓がん、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭がん、唇がん、口腔がん、メルケル細胞がん、悪性中皮腫、多発性内分泌腺腫症、菌状息肉症 、鼻腔・副鼻腔がん、神経芽細胞腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、膵臓神経内分泌腫瘍、膵島細胞腫瘍、乳頭腫症、傍神経節腫、副鼻腔・鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽喉頭がん、下垂体腫瘍、胸膜肺芽腫、原発性腹膜がん、網膜芽細胞腫、唾液腺腫瘍、肉腫、セザール症候群、皮膚ガン、小細胞肺がん、小腸がん、軟部組織肉腫、扁平上皮がん、精巣がん、胸腺腫及胸腺がん、甲状腺がん、尿道がん、子宮がん、子宮内膜及び子宮肉腫、膣がん、血管腫瘍、外陰がん及び単発性骨髄腫から選択される1種又は複数種である。
【0067】
いくつかの実施形態において、前記血液腫瘍は、B細胞急性リンパ性白血病(BALL)、T細胞急性リンパ性白血病(TALL)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、B細胞前骨髄球性白血病、芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍、バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、有毛細胞白血病、小細胞又は大細胞性-濾胞性リンパ腫、MALTリンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、形質芽細胞リンパ腫、形質細胞様樹状細胞腫瘍、Waldenstromマクログロブリン血症及び前白血病から選択される1種又は複数種である。
【0068】
いくつかの実施形態において、前記腫瘍は、肝臓がん、結腸直腸がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、前立腺がん、神経膠腫、黒色腫、膵臓がん、鼻咽頭がん、肺がん和胃がんから選択される1種又は複数種である。
【0069】
いくつかの実施形態において、得られたM1ウイルスは、多種類の腫瘍を効果的に治療可能である。前記腫瘍には、肝臓がん、結腸直腸がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、前立腺がん、神経膠腫、黒色腫、膵臓がん、鼻咽頭がん、肺がん、胃がんが含まれる。インビトロ実験により、本発明のM1ウイルスは腫瘍の細胞死を引き起こすことができることが証明されている。インビボ実験により、本発明のM1ウイルスが体内で肝臓がん、結腸直腸がんの成長を顕著に抑制できることが証明されている。インビトロ又はインビボを問わず、本発明のM1ウイルスの有効性は、ほとんど野生型ウイルスより高い。
【0070】
いくつかの実施形態において、得られたM1ウイルスは、選択性及び安全性が良好である。細胞実験の結果から明らかなように、本発明M1のウイルスは、正常細胞に対して細胞毒性を示さず、腫瘍細胞を選択的に殺すことができる。これは、本発明のM1ウイルスが腫瘍選択性を有することを示している。動物実験の結果から明らかなように、本発明のM1ウイルスを尾静脈注射してもヌードマウスの体重及び精神状態に影響を与えることがないとともに、正常臓器にはウイルス分布が観察されなかったことで、本発明のM1ウイルスの安全性が証明されている。
【0071】
いくつかの実施形態において、得られたM1ウイルスを腫瘍内又は静脈注射で投与することにより腫瘍増殖を顕著に抑制することができる。市販の腫瘍溶解性ウイルスの腫瘍内注射では、医師や看護師を専門に訓練する必要があり、患者の受容性も高くなく、深部臓器腫瘍や微小転移巣には適していない。これに対し、本発明のM1ウイルスは静脈内投与により治療することができる。これによって、本発明のM1ウイルスは、臨床応用においてより便利で実行可能であり、応用範囲がより広い。
【0072】
本明細書において、文脈に別段の要求がない限り、「包含」、「含有」のような用語は、前記ステップ、要素、又はステップと要素との組み合わせを含むことを意味するが、他のステップ、要素、又はステップと要素との組み合わせを除外するものではなく、即ち、開放的な限定である。
【0073】
例えば、いくつかの実施形態において、前記M1ウイルスに「含まれる」変異における「含まれる」とは、前記変異(例えば、非構造タンパク質NS3の第358位のアミノ酸残基および/または構造タンパク質E2の第4位のアミノ酸残基における変異)に加えて、他の変異(特に、沈黙変異)、例えば、ウイルスの機能に影響を与えない変異、又は基本的な機能に影響を与えず、変異体M1の基本的な機能を干渉することなく、ウイルスのある能力を増強させるか、毒性を減少させるか、若しくは安定性を向上させる変異を含む可能性があることを意味する。
【0074】
いくつかの実施形態において、前記M1ウイルスは二重部位変異である。即ち、NS3タンパク質におけるM358L、並びにE2タンパク質におけるK4N、K4D、E4N及びE4Dのうちの1つである。ここでいうのは、前記変異体にはこれらの変異のみがあり、他の変異がないことである。
【0075】
いくつかの実施形態において、前記M1ウイルスに対応する野生型的M1ウイルスは、寄託番号CCTCC V201423(詳細は中国特許104814984Aを参照)に示されるウイルスである。
【0076】
いくつかの実施形態において、前記M1ウイルスに対応する野生型的M1ウイルスは、寄託番号CCTCC V201423(詳細は中国特許104814984Aを参照)に示されるウイルスのゲノム配列と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%の同一性(Identity)を有する。
【0077】
いくつかの実施形態において、前記M1ウイルスに対応する野生型的M1ウイルスは、ジーンバンクアクセッション番号EU015061.1又はEF011023.1(出願日/優先日の情報に従う)に示される通りである。
【0078】
いくつかの実施形態において、前記M1ウイルスに対応する野生型M1ウイルスは、ジーンバンクアクセッション番号EU015061.1、EF011023.1(出願日/優先日の情報に従う)、又はZhai YGによって発表(13)されたウイルスのゲノム配列と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、少なくとも99.8%の同一性(Identity)を有し、CCTCC V201423と同じ株に由来する可能性が高いウイルスと考えられている。
【0079】
いくつかの実施形態において、前記タンパク質は分離されたポリペプチドである。
【0080】
いくつかの実施形態において、前記核酸は分離されたポリ核酸である。
【0081】
いくつかの実施形態において、前記M1ウイルスは分離されたウイルスである。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1】4種類の変異ウイルス(rM1-NS3M、rM1-E2M、rM1-N3E2M、rM1-c6v1)の変異部位での核酸配列決定を示す。図1Aは、NS3タンパク質の第358位のアミノ酸残基近傍での核酸配列決定を示す。前記部位での野生型核酸配列はCCAであり、対応するアミノ酸はMであり、変異後の核酸配列はCCCであり、対応するアミノ酸はLである。図1Bは、E2タンパク質の第4位のアミノ酸残基近傍での核酸配列決定を示す。前記部位での野生型核酸配列はAAA又はGAAであり、対応するアミノ酸はK又はEであり、変異型核酸配列はAAC又はGACであり、対応するアミノ酸はN又はDである。
図2】部位特異的変異ウイルス(rM1-NS3M、rM1-E2M、rM1-N3E2M)のHCT 116細胞株での腫瘍溶解効果の増強を示す。図2Aは、1MOIでHCT 116細胞を感染させた48h後の細胞形態を観察した結果を示す。図2Bは、MTT法によりrM1-WT、rM1-NS3M、rM1-E2M及びrM1-N3E2Mウイルスを用いて0.001-10MOIで感染させた72h後の細胞生存率を比較した結果を示す。
図3】動物モデルでのrM1-N3E2Mウイルスの安全性及び有効性試験を示す。ヌードマウスにHCT116を皮下担癌させ、腫瘍接種の14日後にウイルスを静脈注射し、腫瘍体積及びヌードマウス体重を繰り返し測定し、ANOVAにより統計した結果、*p<0.05であり、統計的に有意である。図3Aは、ヌードマウス皮下担癌モデルにおける腫瘍増殖の変化状況を示す。図3Bは、ヌードマウス皮下担癌モデルにおけるヌードマウスの体重の変化状況を示す。
図4】rM1-N3E2Mウイルスに感染させると、腫瘍組織中の細胞アポトーシス指標Cl-casp3の発現はアップレギュレートし、細胞増殖指標Ki67の発現はダウンレギュレートしたことを示す。ヌードマウス皮下担癌モデルでは、rM1-WT、rM1-N3E2Mを用いて3日間治療した後に、腫瘍組織を剥離し、免疫組織化学染色によりCl-casp3及びKi67の発現を測定した。
図5】正常臓器組織においてrM1-N3E2Mウイルスによる毒性病変が観察されなかったことを示す。
図6】動物モデルにおけるM1-c6v1ウイルスの安全性及び有効性の実験結果を示す。C57 BL/6マウスにB16-F10を皮下担癌させ、腫瘍接種の11日後にウイルスを静脈注射し、腫瘍体積及びヌードマウスの体重を繰り返し測定し、ANOVAにより統計した結果、*p<0.05、統計的に有意である。図6Aは、マウス皮下担癌モデルにおける腫瘍増殖の変化情况を示す。図6Bは、マウス皮下担癌モデルにおけるヌードマウスの体重の変化情况を示す。
図7-1】図7A-7ZはM1ウイルスの各部位特異的変異株の変異部位の配列決定図である。図7AはrM1-WT(E2-4K)(AAA)である。図7Bは変異株(E2-4L,AAA→CTG)である。図7Cは変異株(E2-4I,AAA→ATT)である。図7Dは変異株(E2-4V,AAA→GTG)である。図7Eは変異株(E2-4S,AAA→AGC)である。図7Fは変異株(E2-4C,AAA→TGC)である。図7Gは変異株(E2-4L,AAA→CTG)である。図7Hは変異株(E2-4D,AAA→GAT)である。
図7-2】図7IはrM1-WT(NS3-358M,ATG)である。図7Jは変異株(NS3-358G,ATG→GGC)である。図7Kは変異株(NS3-358A,ATG→GCG)である。図7Lは変異株(NS3-358L,ATG→CTG)である。図7Mは変異株(NS3-358I,ATG→ATT)である。図7Nは変異株(NS3-358V,ATG→GTG)である。図7Oは変異株(NS3-358P,ATG→CCG)である。図7Pは変異株(NS3-358S,ATG→AGC)である。
図7-3】図7Qは変異株(NS3-358Q,ATG→CAG)である。図7Rは変異株(NS3-358T,ATG→ACC)である。図7Sは変異株(NS3-358C,ATG→TGC)である。図7Tは変異株(NS3-358N,ATG→AAC)である。図7Uは変異株(NS3-358F,ATG→TTT)である。図7Vは変異株(NS3-358Y,ATG→TAT)である。図7Wは変異株(NS3-358D,ATG→GAT)である。図7Xは変異株(NS3-358K,ATG→AAA)である。
図7-4】図7Yは変異株(NS3-358R,ATG→CGT)である。図7Zは変異株(NS3-358H,ATG→CAT)である。
図8-1】図8A-8ZはM1ウイルスの各部位特異的変異(単一部位変異)株のHCT116に対する殺傷曲線である。図8AはrM-WT(E2-4K)の殺傷曲線である。図8Bは変異株E2-4Lの殺傷曲線である。図8Cは変異株E2-4Iの殺傷曲線である。図8Dは変異株E2-4Vの殺傷曲線である。
図8-2】図8Eは変異株E2-4Sの殺傷曲線である。図8Fは変異株E2-4Cの殺傷曲線である。図8Gは変異株E2-4Mの殺傷曲線である。図8Hは変異株E2-4Dの殺傷曲線である。
図8-3】図8IはrM-WT的(NS3-358M)の殺傷曲線である。図8Jは変異株NS3-358Gの殺傷曲線である。図8Kは変異株NS3-358Aの殺傷曲線である。図8Lは変異株NS3-358Lの殺傷曲線である。
図8-4】図8Mは変異株NS3-358Iの殺傷曲線である。図8Nは変異株NS3-358Vの殺傷曲線である。図8Oは変異株NS3-358Pの殺傷曲線である。図8Pは変異株NS3-358Sの殺傷曲線である。
図8-5】図8Qは変異株NS3-358Qの殺傷曲線である。図8Rは変異株NS3-358Tの殺傷曲線である。図8Sは変異株NS3-358Cの殺傷曲線である。図8Tは変異株NS3-358Nの殺傷曲線である。
図8-6】図8Uは変異株NS3-358Fの殺傷曲線である。図8Vは変異株NS3-358Yの殺傷曲線である。図8Wは変異株NS3-358Dの殺傷曲線である。図8Xは変異株NS3-358Kの殺傷曲線である。
図8-7】図8Yは変異株NS3-358Rの殺傷曲線である。図8Zは変異株NS3-358Hの殺傷曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
以下、具体的な実施例により本発明の技術的手段をさらに説明する。以下の具体的な実施例は、本発明の保護範囲を制限するものではない。当業者が本発明の思想に基づいて行った非本質的な修正及び調整も本発明の保護範囲に含まれる。
【0084】
定義
別段の定義がない限り、本発明で使用される全ての技術的用語及び科学的用語は当業者の一般的な理解と同じ意味を有する。
【0085】
特に明記しない限り、本発明の変異には、自然変異、強制的な変異又は選択的変異が含まれ、遺伝子修飾、配列増加若しくは削除、又は部分的置換が含まれるが、これらに限定されない。
【0086】
前記「変異」は、野生型ウイルス株の特定部位に対して人為的変異(変異誘発又は遺伝子工学)を行うことが含まれるが、限定されない。当該技術分野において、野生型及び変異は相対的な概念であり、野生型ウイルスその自体には核酸又はアミノ酸残基配列の違いが存在することが知られている。
【0087】
本明細書で使用される用語「および/または」は、1つ又は複数の関連項目の任意及び全ての可能な組み合わせを含むことを指す。2つ以上の項目のリストに使用される場合、用語「および/または」は、示される項目のうちのいずれか1つを単独で使用してもよく、又は示される項目のうちの2つ以上を組み合わせて使用してもよいことを指す。例えば、組成物、組み合わせ、構造などの用語は、成分A、B、Cおよび/またはDを含む(又は含有する)として使用される場合、前記組成物は、A単独、B単独、C単独、D単独、AとBの組み合わせ、AとCの組み合わせ、AとDの組み合わせ、BとCの組み合わせ、BとDの組み合わせ、CとDの組み合わせ、AとBとCの組み合わせ、AとBとDの組み合わせ、AとCとDの組み合わせ、BとCとDの組み合わせ、又はAとBとCとDの組み合わせを含む。
【0088】
本明細書において、例えば、NS3タンパク質のM358Gは、M1ウイルスのNS3タンパク質の第358位のアミノ酸残基にM358G変異が発生し、MからGに変異したことを指す。例えば、「M358A」は、M1ウイルスのNS3タンパク質の第358位のアミノ酸残基にM358A変異が発生し、MからAに変異したことを指す。他は同様である。
【0089】
本明細書において、例えば、E2タンパク質のK4Mは、M1ウイルスのE2タンパク質の第4位のアミノ酸残基にK4M変異が発生し、KからMに変異したことを指す。例えば、E2タンパク質のK4Aは、M1ウイルスのE2タンパク質の第4位のアミノ酸残基にK4A変異が発生し、KからAに変異したことを指す。他は同様である。
【0090】
【表1】

【0091】
NS3タンパク質:非構造タンパク質3,nonstructural protein3。
【0092】
E2タンパク質:エンベロープタンパク質2,envelope protein2。
【0093】
本明細書において、各配列の番号を下記表Aに示す。
【表2】

【0094】
野生型M1ウイルスは、自然界から得られたウイルス株を指し、その対応するゲノムが野生型ゲノムである。野生型ゲノムは、特定の部位に多様性がある可能性がある。例えば、知られている野生型M1ウイルスのE2タンパク質の第4位のアミノ酸残基はE又はKである。
【0095】
偽野生型M1ウイルスは、既知の野生型M1ウイルスの配列と完全に一致しないが、生物学的特性が既知の野生型M1ウイルスと顕著に違いがないM1ウイルスを指す。
【0096】
いくつかの実施例において、野生型M1ウイルス、例えば、寄託番号CCTCC V201423のM1ウイルス及びそのモノクローナルウイルスM1-c6ウイルス、又は、例えば、EU015061.1、EF011023.1である。
【0097】
例えば、いくつかの実施形態において、野生型をもとに、非構造タンパク質NS2における第2および/または第786位のアミノ酸残基、非構造タンパク質NS3における第30および/または第393位のアミノ酸残基、非構造タンパク質NS3における第381位のアミノ酸残基、構造タンパク質Cにおける第154位のアミノ酸残基、及び構造タンパク質E2における第246位のアミノ酸残基のうちの1つ又は複数の部位に変異が発生したものであってもよい。
【0098】
rM1-WTは、ゲノム配列が配列番号5に示されるM1ウイルスであり、含まれるNS1タンパク質の配列が配列番号6に示され、含まれるNS2タンパク質の配列が配列番号7に示され、含まれるNS3タンパク質の配列が配列番号8に示され、含まれるNS4タンパク質の配列が配列番号9に示され、含まれるCタンパク質の配列が配列番号10に示され、含まれるE3タンパク質の配列が配列番号11に示され、含まれるE2タンパク質の配列が配列番号12に示され、含まれる6Kタンパク質の配列が配列番号13に示され、含まれるE1タンパク質の配列が配列番号14に示される。含まれるNS3タンパク質の第358位のアミノ酸残基がMであり、E2タンパク質の第4位のアミノ酸残基がKである。
【0099】
rM1-NS3Mは、組換えM1ウイルスを指す。前記ウイルスは、rM1-WTをもとにNS3タンパク質の第358位のアミノ酸残基にM358L変異(即ち、MからLへの変異)が発生したものである。
【0100】
rM1-E2Mは、組換えM1ウイルスを指す。前記ウイルスは、rM1-WTをもとにE2タンパク質の第4位のアミノ酸残基にK4N変異(即ち、KからNへの変異)が発生したものである。
【0101】
rM1-N3E2Mは、組換えM1ウイルスを指す。前記ウイルスは、rM1-WTをもとにNS3タンパク質の第358位のアミノ酸残基にM358L変異(即ち、MからLへの変異)が発生し、E2タンパク質の第4位のアミノ酸残基にK4N変異(即ち、KからNへの変異)が発生したものである。
【0102】
M1-c6は、ゲノム配列が配列番号15に示されるM1ウイルスであり、含まれるNS1タンパク質の配列が配列番号16に示され、含まれるNS2タンパク質の配列が配列番号17に示され、含まれるNS3タンパク質の配列が配列番号18に示され、含まれるNS4タンパク質の配列が配列番号19に示され、含まれるCタンパク質の配列が配列番号20に示され、含まれるE3タンパク質の配列が配列番号30に示され、含まれるE2タンパク質の配列が配列番号31に示され、含まれる6Kタンパク質の配列が配列番号32に示され、含まれるE1タンパク質の配列が配列番号33に示される。そのNS3タンパク質の第358位のアミノ酸残基がMであり、E2タンパク質の第4位のアミノ酸残基がEである。
【0103】
M1-c6v1は、組換えM1-c6ウイルスである。前記ウイルスは、M1-c6をもとにNS3タンパク質の第358位のアミノ酸残基にM358L変異(即ち、MからLへの変異)が発生し、E2タンパク質の第4位のアミノ酸残基にE4D変異(即ち、EからDへの変異)が発生したものである。
【0104】
NS3タンパク質の第358位のアミノ酸残基は、既知の野生型M1ウイルスにおいて前記部位がNS3タンパク質の第358位にあり、その上流であるN端にある3つのアミノ酸残基の配列がYETであり、その下流であるC端にある3つのアミノ酸残基の配列はEVVである。「358」という数字は、絶対的な制限ではなく、位置する機能ドメイン又はモチーフに応じてある特定のアミノ酸残基(例えば、変異したアミノ酸残基)が前記部位に位置するかを判断すべきである。例えば、他の偽野生型M1ウイルスの配列において前記部位がNS3タンパク質の一次構造における配列順序が必ず第358位ではなく、この場合、「358」は絶対的な制限と見なされてはならず、位置する機能ドメイン又はモチーフに応じて前記特定のアミノ酸残基が本明細書に記載のNS3タンパク質の第358位のアミノ酸残基に属するか否かを判断すべきである。
【0105】
E2タンパク質の第4位のアミノ酸残基については、既知の野生型M1ウイルスにおいて、前記部位はE2タンパク質の第4位にあり、その上流であるN端にある3つのアミノ酸残基の配列がSVTであり、その下流であるC端にある3つのアミノ酸残基の配列がHFNである。「4」という数字は、絶対的な制限ではなく、位置する機能ドメイン又はモチーフに応じてある特定のアミノ酸残基(例えば、変異したアミノ酸残基)が前記部位に位置するかを判断すべきである。例えば、他の偽野生型M1ウイルスの配列において前記部位がE2タンパク質の一次構造における配列順序が必ず第4位ではなく、この場合、「4」は絶対的な制限と見なされてはならず、位置する機能ドメイン又はモチーフに応じて前記特定のアミノ酸残基が本明細書に記載のNS3タンパク質の第4位のアミノ酸残基に属するか否かを判断すべきである。
【0106】
薬学的に許容される担体は、ヒトに投与するときにアレルギー又は類似の副作用が発生しない分子実体又は組成物であり、溶媒、分散媒体、媒介物、コート、希釈剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、緩衝剤、担体溶液、懸濁液、コロイドなどのいずれかを含む。これらの薬物活性物質の媒体及び試薬の使用は当該技術分野において知られているものである。いずれかの一般的な媒体又は試薬と活性成分が相溶しない場合を除き、治療用組成物への使用が期待されている。
【0107】
免疫チェックポイント阻害剤は、1種又は複数種のチェックポイントタンパク質を全体又は部分的に減少、阻害、干渉又は調節する分子を指す。チェックポイントタンパク質は、T細胞の活性化又は機能を調節する。複数種類のチェックポイントタンパク質、例えば、CTLA-4、そのリガンドCD80及びCD86、並びにPD1、そのリガンドPDL1及びPDL2が知られている(Pardoll, Nature Reviews Cancer 12:252-264,2012)。これらのタンパク質は、T細胞応答の共刺激又は相互作用の阻害を担当する。免疫チェックポイントタンパク質は、自己耐性及び生理的免疫反応の持続時間と幅を調節して維持する。免疫チェックポイント阻害剤は抗体を含むか、又は抗体に由来する。
【0108】
化学療法剤は、がんの治療に適用できる化合物である。
【0109】
治療とは、症状を緩和すること、症因を一時的若しくは恒久的に解消すること、または特定の疾患または病状を予防または遅延させることを指す。
【0110】
有効量とは、本発明で使用されるアルファウイルス又はプロテアソーム阻害剤を含めて所望の治療効果を提供するのに十分な量を指す。必要な精確量は、対象によって異なり、治療を受ける種、対象の年齢、一般的な病状、治療される病状の重症度、投与される特定の薬剤及び投与態様などに依存する。しかし、所定の状況に対しては、当業者は症状の重症度、再発の頻度及び治療計画に対する生理学的応答に応じて本発明の医薬組成物の用量を調整することができる。
【0111】
実施例1:M1部位特異的変異ウイルス株の構築及び同定
材料
1.クローン:コンピテントTOP10、プラスミド抽出キット、DNA生成物回収キット;Gibson AssemblyMaster Mix;Phanta Max Super-Fidelity DNA Polymerase。
2.制限酵素SpeI、SwaI、XhoI、ApaI、XbaI
3.部位特異的変異プライマーを表2に示す。
【表3】

4.野生型M1ウイルス全長ゲノムプラスミド:pBR-M1-WTは、配列が配列番号5に示されるM1全ゲノムを含むプラスミド担体である。配列番号5に示される配列に基づいて全遺伝子合成を行い、組換えDNA技術によりM1配列をpBR322担体(ポリクローナル部位を添加する)のClaIとEcoRI酵素切断部位の間にクローニングし、pBR-M1-WT担体を形成する。同様の方法によりpBR-M1-c6担体を構築する。M1-c6は、配列が配列番号15に示されるM1ウイルスであり、そのNS3タンパク質の第358位のアミノ酸残基がM、E2タンパク質の第4位のアミノ酸残基がEである。
5.変異ウイルス全長ゲノムプラスミド:部位特異的変異技術によりpBR-M1-WT担体に変異を導入してpBR-M1-NS3M(即ち、NS3タンパク質の第358位のアミノ酸残基に発生したM358L変異を含む)、pBR-M1-E2M(即ち、E2タンパク質の第4位のアミノ酸残基に発生したK4N変異を含む)、pBR-M1-N3E2M(即ち、NS3タンパク質の第358位のアミノ酸残基に発生したM358L変異及びE2タンパク質の第4位のアミノ酸残基に発生したK4N変異を含む)を形成し、pBR-M1-c6に変異を導入してpBR-M1-c6v1(即ち、NS3タンパク質の第358位のアミノ酸残基に発生したM358L変異及びE2タンパク質の第4位のアミノ酸残基に発生したE4D変異を含む)を形成する。
6.DH5αコンピテント細胞、高純度プラスミド抽出キット;JM110コンピテント細胞;Lipofectamine RNAiMAX Transfection Reagent。
7.RNA抽出:TRIzol;クロロホルム、イソプロパノール、無水エタノール。
8.逆転写:Random hexamer、dNTP、MMLV、RNaseOUT。
9.PCR:Q5ハイフィデリティ―酵素、PCRプライマー(表3)。プライマーはInvitrogen社によって合成される。
10.アガロースゲルDNA回収キット。
11.DNA電気泳動:Agarose、SYBR green、DNA marker。
【0112】
【表4】
【0113】
方法
1.ウイルス遺伝子全長のプラスミド担体の構築
pBR-M1-WT、pBR-M1-c6菌種を5mL LB培地に加え、37℃で一晩シェイクした。プラスミド抽出キットによりプラスミドを抽出し、NanodropによりプラスミドDNAの濃度を測定した。PCR増幅系を表4に示す。
【表5】
【0114】
反応条件:98℃で3min初期熱変性(pre-denaturation)を行い、98℃15s、58℃15s、72℃45sを1サイクルとし、35回繰り返し、72℃で5min拡張させ、終了後に温度を4℃に冷却した。アガロースゲル電気泳動により生成物があるか否か及びサイズが正確であるか否かを検出した。
【0115】
担体プラスミドの酵素による切断:NS3及びE2変異の酵素切断系を構築した(表5)。
【表6】
【0116】
37℃で1h反応させ、切断されたプラスミドをキットで回収し、濃度を測定した。
【0117】
Gibson AssemblyMaster Mixキットにより担体及びPCR断片を組み立てた。反応系は、PCR断片1+PCR断片2+プラスミド+2×Mix+HO=1+1+1+10+7(μL)、反応条件は、50℃、1hであった。
【0118】
形質転換クローン:10μLの接続生成物を取り、100μLのDH5aコンピテント細胞を形質転換し、アンピシリン耐性プレートを用いてスクリーニングした。クローンを選択して配列決定を行った。二重部位変異したウイルスは、E2変異した担体プラスミドにおいてさらにNS3部位に変異したものであった。
【0119】
2.部位特異的変異ウイルスの製造
pBR-M1-NS3M、pBR-M1-E2M、pBR-M1-N3E2M及びpBR-M1-c6v1菌種を5mLのLB培地に接種し、37℃で一晩シェイクする。キットによりプラスミドを抽出して濃度を測定した。JM110を形質転換し(JM110コンピテントの形質転換効率が低いため、100μLコンピテントを形質転換するためにより多くのプラスミドが必要である。300μLのLB液を追加して1h回復させた後、全部プレートに塗布する)、アンピシリン耐性プレートを用いてスクリーニングした。モノクローンを選択して500μlのLB/アンピシリン培地に加え、37℃で12hシェイクし、さらに拡大培養し、37℃で14~16hシェイクした。菌液の濃度が適宜になると、グリセリンの最終濃度15~30%で菌種を保存した。エンドトキシンを除去できるプラスミド抽出キットによりプラスミドを抽出し、濃度を測定した。XbaIエンドヌクレアーゼでプラスミドを線形化させた(表6)。
【表7】
【0120】
2つの試験管に分けて37℃で2h反応させた。
Proteinase K消化:Proteinase K(20mg/ml)で10倍希釈し、各管に2.5μL加え、さらに5μLの10%SDSを加え、50℃で30minインキュベートした。キットにより酵素切断後の線形プラスミドDNAを回収し、濃度を測定した。
インビトロ転写:37℃で2h反応させ、その後、生成物を凍結保存してはならず、そのまま次の操作に用いた。転写系を表7に示す。
【表8】
【0121】
DNAテンプレートの除去:1U/μg DNAテンプレートでRQ1 RNase-Free DNase(1U/μL)を加え、37℃で15min反応させた。
RNAトランスフェクション:1日前にVero細胞を3×10個の細胞/ウェルで6ウェルプレートに接種し、1.5ml完全培地で培養し、125μLのOpti-MEMと3.75μLのLipomRNA、及び125μLのOpti-MEMと2.5μgのRNAをそれぞれ均一に混合し、そして両者を1つの試験管に入れて均一に混合し、室温で5min静置し、RNAとトランスフェクション試薬の複合物を細胞培養皿に入れ、次の2~4日間に細胞病変形態があるか否かを観察し、上清を回収し、さらにVero細胞でウイルスを増幅させた。
【0122】
3.TRIzol法によるRNA抽出
TRIzolを加え、ピペッティングして細胞を十分に溶解した。沈殿が発生したら、4℃、12000gで10min遠心分離し、上清を収集した。200μLクロロホルムを加え、激しく振盪して均一に混合し、室温で3min静置した。4℃、12000gで15min遠心分離、約500μLの上層水相を吸い取り、新しいEP管に移した。500μLイソプロパノールを加え、軽くひっくり返して均一に混合し、室温で10min静置した。4℃、12000gで10min遠心分離し、上清を捨てた。事前に冷却された75%のエタノール500μLで沈殿を洗浄し、4℃、12000gで5min遠心分離し、上清を捨てた。乾燥後に、適量のDEPC水でRNA沈殿を溶解した。NanodropによりRNAの濃度を測定した。
【0123】
4.逆転写
MMLV逆転写酵素を用いて逆転写を行った。
【表9】
【0124】
表8に従って各反応成分を加え、65℃で5min初期熱変性をした後、直ちに氷に置き、2-3min静置した。
4μLの5×buffer反応液、2μLのRNaseOUT試薬、1μLのDTT及び1μLの逆転写酵素MMLVを加え、25℃10min、37℃50min、70℃15minの条件で反応させた。
【0125】
5.PCR
逆転写後のcDNAを2~5倍希釈し、Q5ハイフィデリティ―酵素でDNAをPCR増幅した(10個の断片に分けてM1ゲノムを増幅した)。
【表10】
【0126】
反応条件:98℃で30s初期熱変性を行い、98℃10s、58℃30s、72℃1minを1サイクルとし、35回繰り返し、72℃で2min拡張させ、終了後に温度を4℃に冷却した。
【0127】
1%アガロースゲル電気泳動によるPCR生成物の検出
0.5gアガロースを秤量し、50mL水に入れ、加熱してアガロースを十分に溶解し、約50℃に冷却したときに1万分の1でSYBR green染料を加え、ゲルプレートに入れ、櫛を挿入し、完全に凝固した後に電気泳動槽に入れ、各ウェルに5μLのサンプルを加え、電圧100Vで約40min電気泳動し、Tianneng ImagerによりDNA生成物を観察して撮影した。
【0128】
【表11】
【0129】
6.PCR生成物をThermo Scientific社に郵送して配列決定してもらった。
【0130】
結果
図1に示すように、遺伝子配列の比較から分かるように、部位特異的変異ウイルスはいずれも成功に構築された。それぞれは以下の4種類の変異ウイルスである。
(1)rM1-NS3M:ゲノム配列が配列番号5に示されるM1ウイルスのNS3タンパク質の第358位のアミノ酸残基が変異し、メチオニン(M)からロイシン(L)に変わったものである。
(2)rM1-E2M:ゲノム配列が配列番号5に示されるM1ウイルスのE2タンパク質の第4位のアミノ酸残基が変異し、リジン(K)からアスパラギン(N)に変わったものである。
(3)rM1-N3E2M:ゲノム配列が配列番号5に示されるM1ウイルスのNS3タンパク質の第358位のアミノ酸残基が変異し、メチオニン(M)からロイシン(L)に変わり、E2タンパク質の第4位のアミノ酸残基が変異し、リジン(K)からアスパラギン(N)に変わったものである。
(4)rM1-c6v1:ゲノム配列が配列番号15に示されるM1ウイルス(即ち、M1-c6)のNS3タンパク質の第358位のアミノ酸残基が変異し、メチオニン(M)からロイシン(L)に変わり、E2タンパク質の第4位のアミノ酸残基が変異し、グルタミン酸(E)からアスパラギン酸(D)に変わったものである。
【0131】
結論
部位特異的変異により4種類の変異ウイルスrM1-NS3M、rM1-E2M、rM1-N3E2M及びrM1-c6v1を成功に構築した。そのうち、変異ウイルスrM1-NS3M、rM1-E2M及びrM1-N3E2Mは、配列が配列番号5に示されるM1ウイルスをもとに部位特異的変異により得られたものであり、rM1-c6v1は、配列が配列番号15に示されるM1ウイルスM1-c6をもとに部位特異的変異により得られたものである。
【0132】
実施例2:多種類の腫瘍細胞に対する4種類の変異M1ウイルスの抗腫瘍効果
1.実験材料及び機器
1.1.主な薬品、試薬及び調製
主な薬品及び試薬
・M1ウイルス:rM1-WT、rM1-NS3M、rM1-E2M、rM1-N3E2M、M1-c6、M1-c6v1
・Cell Counting Kit-8(CCK-8):東仁化学科技(上海)有限公司(型番:CK-04)
・塩化カリウム:メルク化工技術(上海)有限公司(バッチ番号:K46837809603)
・リン酸二水素カリウム:メルク化工技術(上海)有限公司(バッチ番号:AM1217539805)
・重炭酸ナトリウム:メルク化工技術(上海)有限公司(バッチ番号:K49804023804)
・リン酸水素二ナトリウム十二水和物:成都華邑薬用補料製造有限責任公司(バッチ番号:20170402)
・無水塩化カルシウム:河北華辰製薬有限公司(バッチ番号:171009)
・塩化マグネシウム六水和物:成都華邑薬用補料製造有限責任公司(バッチ番号:20170807)
・マンニトール:フランスのロケット社(バッチ番号:E939X)
・トレハロース:米国pfanstiehl(バッチ番号:36358A)
・ヒトアルブミン:深セン市衛光生物製品股分有限公司(バッチ番号:20171144B)
【0133】
1.2.主な機器
【表12】
【0134】
2.実験細胞の由来源
細胞は、ATCC又は中国科学院典型培養物保蔵委員会細胞庫から購入された。
【0135】
3.実験方法
・細胞培養
各細胞の説明書に従って適宜な培養条件を使用し、説明書に記載の継代比率にて細胞増殖継代を行った。
【0136】
・実験群分け及び処理
各細胞の増殖に対するM1-c6v1の抑制効果を検出した。具体的な群分け及び処理を表12に示す。
【0137】
【表13】
【0138】
細胞を対数増殖期に継代培養した後、細胞を消化し、対応する密度の細胞を48ウェルプレートに接種し、上記群別に従って実験を計画し、各群について実験を3回繰り返し、ブランク対照群では細胞を接種しなかった。細胞が容器壁に付着して24h後にサンプルを加え、引き続き72h培養した後に、細胞の生存率を測定した。
【0139】
・CCK-8法による細胞生存率の測定
48ウェルプレート中の元の培養液を取り除き、200μL/ウェルで壁に沿って発色液(100%完全培地+10%CCK-8溶液)をゆっくりと加え、37℃で引き続き0.5-3h培養した後、吸光マイクロプレートリーダーにより450nmの波長下で各ウェルの吸光度の値を測定した。
【0140】
・各細胞に対するM1ウイルスの半数阻害濃度(IC50)の計算
測定された各ウェルの吸光度の値から算式「細胞増殖阻害率(IR)=(平均OD陰性-OD実験)/(平均OD陰性-平均ODブランク)×100%」により各ウェルの細胞の増殖阻害率を算出し、GraphPad Prism 7.0ソフトウェアにより細胞増殖阻害率曲線を作成し、log(Inhibitor)vs. response--Variable slope(four parameters)解析方程式により腫瘍細胞に対するM1-c6v1又はrM1-c6の半数阻害濃度(IC50)の値を算出した。
【0141】
・MTTによる細胞活性の検出
細胞を2万個/ウェルで24ウェルプレート(500μl培地/ウェル)に接種し、壁に付着した状態を24h維持する。野生型及び変異ウイルスを10倍段階希釈し、10MOIのウイルス量を24ウェルプレートに加えた。ウイルスに感染した72h後に、各ウェルにMTT50μLを加え、均一に混合し、インキュベータ内で引き続き2-4h静置した。上清を慎重に吸い出し、各ウェルに500μLのDMSOを加えて青紫色のホルマザン結晶を溶解し、マイクロウェルプレート発振器上で振盪してホルマザンを完全に溶解して均一に混合し、マイクロプレートリーダーにて570nmの波長下で吸光度を測定した。実験を少なくとも3回繰り返した。ブランク対照群で各群の吸光度の値を標準化し、各処理群の相対細胞生存率を算出し、細胞生存曲線を作成した。
【0142】
・統計的処理
全ての実験結果に対して、それぞれ独立して実験を2回以上繰り返した。実験結果を平均値±標準偏差で示す。
【0143】
4.実験結果
図2Aに示すように、顕微鏡下でrM1-NS3M及びrM1-E2Mウイルスに感染した後の細胞に病変が発生したことが観察されたため、単一部位変異が腫瘍細胞におけるM1ウイルスの複製及び腫瘍溶解効果を独立して増強できることを示している。野生型及び単一部位変異ウイルスと比べて、rM1-N3E2M二重部位変異ウイルスに感染した後、感染率が90%以上に達し、ほとんどの細胞に病変が生じた。さらに、MTT法によりrM1-WT、rM1-NS3M、rM1-E2M、rM1-N3E2MのHCT 116細胞に対する殺傷効果を比較した。顕微鏡下での観察と一致し、rM1-NS3M及びrM1-E2Mウイルスの用量効果曲線が左にシフトし、EC50shift効果向上を計算した結果、それぞれ80倍及び60倍であり、rM1-N3E2Mウイルスの用量効果曲線が左へシフトする幅がより大きく、EC50shift効果向上は7600倍に達し(図2B)、二重変異部位がウイルスの腫瘍溶解効果を相乗的に増強できることを示している。
【0144】
より多くの腫瘍細胞及び正常細胞を用いてrM1-WTとrM1-NS3M、rM1-E2M、rM1-N3E2Mの3種類のM1ウイルス変異体との腫瘍溶解効果及び安全性を比較した。結果を表13~表15に示す。結果は、rM1-WTウイルスに比べ、3種類のM1ウイルス変異体はいずれも腫瘍溶解効果を異なる程度で増強させるとともに、正常細胞に対して顕著な毒性を有しないことを示している。
【0145】
【表14】
【0146】
【表15】
【0147】
【表16】
【0148】
同様に、複数株の腫瘍細胞及び正常細胞を用いてM1-c6とM1-c6v1ウイルス変異体の腫瘍溶解効果及び安全性を比較した。結果を表16に示す。M1-c6v1はほとんどの悪性腫瘍細胞に対して顕著な殺傷作用を有する。M1-c6v1はほとんどのマウス由来悪性腫瘍細胞に対して同様に顕著な殺傷効果を有する。M1-c6の殺傷効果(IC50)に比べ、M1-c6v1のIC50はM1-c6のIC50よりも1.3-20.5倍低く、M1-c6v1の腫瘍溶解効果がM1-c6よりも高いことを示している。
【0149】
【表17】
【0150】
5.実験の結論
変異株rM1-NS3M、rM1-E2M、rM1-N3E2M、M1-c6v1は、ヒト由来及びマウス由来悪性腫瘍のほとんどの悪性腫瘍細胞に対して顕著な殺傷作用を有する。
【0151】
実施例3:体内でのrM1-N3E2Mウイルスの有効性及び安全性研究
材料
1.rM1-N3E2M、rM1-WTウイルス
2.結腸直腸がん細胞株HCT 116
3.30匹の6-8週齢の雌BALB/c-nu/nuヌードマウス
【0152】
方法
1.4-6週齢の雌ヌードマウスを購入し、事前に十分量のHCT 116細胞を培養し、消化した後に無菌PBSで再懸濁させ、数を計測して必要に応じて細胞懸濁液を調製し、HCT 116細胞を5×10/100μLの量でヌードマウス背中の皮下に接種した。腫瘍のサイズが約50mmになったときに、ランダムに群に分け、6日間連続投与した。3日ごとに腫瘍の長さと幅を測定し、腫瘍体積(体積=(長さ×幅)/2)を計算し、増殖曲線を作成した。投与後の3日目に腫瘍組織と肝臓、心臓、脳、肺臓などの正常臓器とを分離し、4%パラホルムアルデヒドで固定し、免疫組織化学実験に用いた。
【0153】
2.免疫組織化学実験
ヌードマウスの腫瘍組織及び正常臓器を取り、4%パラホルムアルデヒドで固定し、サンプルを谷歌生物公司に郵送してCleaved-caspase 3 、Ki67の量を測定してもらった。
【0154】
結果
1.BALB/cヌードマウスを用いて皮下担癌モデルを構築し、連続して6回投与(静脈)し、ヌードマウスの生存状況を観察した結果、対照群に比べ、投与群のヌードマウスの体重が顕著に変化せず(図3B)、精神状態が良好であり、rM1-N3E2M変異ウイルスの安全性が良好であることをある程度示している。対照群に比べ、rM1-N3E2M投与群のヌードマウスの腫瘍体積が顕著に小さく(図3A)、rM1-N3E2Mウイルスは腫瘍細胞に到達し、腫瘍細胞を殺して腫瘍増殖を抑制できることを示している。
【0155】
2.体内での腫瘍増殖に対するrM1-N3E2Mの抑制作用をさらに調査するために、投与の3日後に腫瘍組織を剥離し、せん断体caspase-3(Cl-casp3)及びKi67を用いて免疫組織化学染色を行う。Cl-casp3はアポトーシスのマーカーであり、その発現量が腫瘍細胞のアポトーシス程度を示す。Ki67は増殖のマーカーであり、その発現量が腫瘍細胞の増殖能力を示す。図4では、茶色は陽性信号を示す。rM1-N3E2MウイルスはCl-casp3の発現を顕著にアップレギュレートし、Ki67の発現を顕著にダウンレギュレートすることができ、腫瘍細胞のアポトーシスを引き起こすとともに、腫瘍細胞の迅速増殖という悪性表現型を抑制できることを示している。
【0156】
3.腫瘍溶解性ウイルス療法の安全性は非常に重要である。M1-N3E2Mウイルスが正常細胞株において安全であることが実証されているが、体内での安全性についてはさらなる研究が必要である。ヌードマウス皮下腫瘍形成モデルにおいて、投与後の3日目に各群の実験動物の主な臓器(心臓、脳、肝臓、肺臓、結腸及び関節などの組織を含む)を分離し、免疫組織化学法によりrM1-N3E2Mウイルスタンパク質の発現を観察した。rM1-N3E2Mウイルスが結腸直腸がん細胞株上で連続的に継代して得られるため、心臓、脳などの重要な臓器に加えて、マウスの結腸上皮細胞内でのウイルス複製にも注目した。また、多くのアルファウイルスが関節炎を引き起こすことが報告されているため、実験に用いる2種類のウイルスが関節で複製したかを観察した。図5から明らかなように、ウイルスの複製がなく、各群の組織細胞の形態に違いがなく、rM1-N3E2Mウイルスが免疫不全のヌードマウスの体内において安全性が良好であることを示している。
【0157】
結論
動物実験により、rM1-N3E2Mウイルスが体内で抗腫瘍効果を効果的に発揮し、腫瘍の増殖を抑制でき、rM1-N3E2Mが腫瘍組織のアポトーシスを誘導し、腫瘍細胞の悪性表現型を抑制できることが検証されている。実験中で、ヌードマウスの体重に明らかな変化がなく、正常組織臓器にウイルスの複製が観察されず、安全性が良好であった。
【0158】
実施例4:体内での腫瘍増殖に対するM1-c6v1ウイルスの効果的な抑制
材料
1.M1-c6v1、M1-c6ウイルス
2.マウス黒色腫B16-F10細胞
3.40匹の5-6週齢のC57 BL/6マウス、雌
【0159】
方法
5-6週齢のC57 BL/6雌マウスを購入し、事前に十分量のB16-F10細胞を培養し、消化した後に無菌PBSで再懸濁させ、数を計測して必要に応じて細胞懸濁液を調製し、B16-F10細胞を5×10/100μLの量でマウス背中の皮下に接種した。腫瘍のサイズが約60mmになったときに、ランダムに群に分け、7日間連続投与した。3日ごとに腫瘍の長さと幅を測定し、腫瘍体積(体積=(長さ×幅)/2)を計算し、増殖曲線を作成した。
【0160】
結果
C57 BL/6マウスを用いて皮下担癌モデルを構築し、連続して7日間腫瘍内注射した後、マウスの生存状況を観察した結果、対照群に比べ、投与群のマウスの体重が顕著に変化せず(図6B)、精神状態が良好であり、M1-c6v1変異ウイルスの安全性が良好であることをある程度示している。対照群及びM1-c6投与群に比べ、M1-c6v1投与群マウスの腫瘍体積が顕著に小さく(図6A)、M1-c6v1ウイルスが腫瘍細胞を殺傷して腫瘍増殖を抑制できることを示している。
【0161】
結論
動物実験により、M1-c6v1ウイルスが体内で抗腫瘍効果を効果的に発揮し、腫瘍の増殖を抑制できることが実証されている。実験中で、マウスの体重に明らかな変化がなかったため、安全性が良好であることを示している。
【0162】
実施例5:M1部位特異的変異ウイルス株の構築、同定、及び効果検証
点変異の過程
ゲノム配列が配列番号5に示されるrM1-WTウイルスをもとに一連の部位特異的変異を行い(金斯瑞生物科技股分有限公司によって完成する)、それぞれpBR-M1-E2-4K、pBR-M1-E2-4L、pBR-M1-E2-4I、pBR-M1-E2-4V、pBR-M1-E2-4S、pBR-M1-E2-4C、pBR-M1-E2-4L、pBR-M1-E2-4Dプラスミド;及びpBR-M1-NS3-358M、pBR-M1-NS3-358G、pBR-M1-NS3-358A、pBR-M1-NS3-358L、pBR-M1-NS3-358I、pBR-M1-NS3-358V、pBR-M1-NS3-358P、pBR-M1-NS3-358S、pBR-M1-NS3-358Q、pBR-M1-NS3-358T、pBR-M1-NS3-358C、pBR-M1-NS3-358N、pBR-M1-NS3-358F、pBR-M1-NS3-358Y、pBR-M1-NS3-358D、pBR-M1-NS3-358K、pBR-M1-NS3-358R、pBR-M1-NS3-358Hを得た。
【0163】
5.1試薬、材料
主な薬品及び試薬
・DMEM/F12(Gibco,11320-033)
・MEM(Gibco,C11095500BT)
・DMEM(Corning,10-013-CVRC)
・新生仔ウシ血清(杭州天杭生物,22011-8615)
・ウシ胎児血清(Corning,35-081-CV)
・プロテアーゼK(天根,RT403)
・トリプシン(Thermo,25200-072)
・Lipofectamine Messenger MAX Transfection Reagent(Thermo,LMRNA003)
・Opti-MEM I Reduced Serum Medium(1X)(Thermo,31985-070)
・制限酵素XbaI(NEB,R0145S)
・Ribo m7G Cap Analog(Promega,P1711)
・DNA精製回収キット(天根,DP209)
・PBS(Gibco,20012027)
・RiboMAXTM Large Scale RNA Production System(Promega,P1280)
・GoscriptTM Reverse Transcription System(Promega,A5001)
・総RNA抽出キット(Promega,LS1040)
・Virus Production Serum Free Medium(VP-SFM)(Gibco,11681-020)
・GlutaMax I(100×)(Gibco,35050061)
・MEM NEAA(100×)(Gibco,11140050)
・E2配列決定用プライマー(金唯智,注文番号80-423889537)
・N3配列決定用プライマー(金唯智,注文番号80-429401706、80-426066909)
主な溶液の調製
・VP-SFM溶液の調製
10mLの100×MEM NEAA及び20mLの100×GlutaMax Iを1L VP-SFMに加え、均一に混合し、4℃で保存し、予備した。
【0164】
5.2機器設備
【表18】
【0165】
5.3実験細胞
【表19】
【0166】
5.4試験ステップ
5.4.1プライマリシードロットウイルス的構築
プラスミド線形化
【表20】
【0167】
A.PCR管において表19に従ってプラスミド線形化系を調製した後、PCR機に置いて37℃で1hインキュベータした。
B.各管に5μLのProtease Kを加え、引き続きPCR機に置いて50℃で30minインキュベートした。
【0168】
(2)DNAの精製回収
A.吸着カラムに500μLのBLを加え、12000rpmで1min遠心分離した。
B.線形化されたプラスミドを1.5mLのEP管に移し、500μLのPBを加え、十分に混合した。
C.混合液を吸着カラムに移し、室温で2min静置し、12000rpmで1min遠心分離し、濾液を除去した。
D.600μLのPWを加え、2min静置し、12000rpmで1min遠心分離し、濾液を除去した。
E.ステップDを繰り返した。
F.濾液を除去し、12000rpmで2min遠心分離し、蓋を開け、室温で5min静置した。
G.30μL無菌DEPC水を加え、1min静置し、2回溶出し、濾液を収集した。
H.DNA定量
【0169】
(3)インビトロ転写
【表21】
A.PCR管において表20に従ってインビトロ転写系を調製した後、PCR機に置いて37℃で2hインキュベートした。
B.RQ1 RNase-Free DNase(1μL/1μgDNA)を加え、引き続きPCR機に置いて37℃で15minインキュベートした。
【0170】
(4)RNAトランスフェクション
A.細胞接種
各細胞の説明書に従って適宜な培養条件下で説明書に記載の継代比率で細胞を継代増幅培養した。細胞が対数増殖期になった後、細胞を消化し、4E05/フラスコの密度でVero細胞をT25培養フラスコに接種し、細胞インキュベータに置いて引き続き培養し、壁に付着したままで24h培養した。
【0171】
B.トランスフェクション
1.5ml遠心分離管に250μLのOpti-MEM培地及び7.5μLのMessengerMAXを加え、別の遠心分離管に125μLのOpti-MEM培地及び全てのRNAを加え、両者を均一に混合し、Vero細胞に滴下し、ウイルスインキュベータに置いて引き続き培養した。
【0172】
(5)ウイルス収集
細胞状態及び蛍光の有無を毎日観察した。蛍光が顕著に多くなることを観察したら、撮影して記録し、90%の細胞が浮き上がった後、Vero細胞上清を収集し、4000rpmで5min遠心分離した。上清を凍結保存管に保存し、プライマリシードロットとして液体窒素で保存した。
【0173】
5.4.2シードロットウイルスの配列決定
(1)RNA抽出
A.液体窒素下で保存されたシードロットウイルスサンプルを取り出して解凍した。
B.100μLサンプルを吸い取り、1.5mL遠心分離管に置いた。
C.300μL溶解液を加え、渦を巻き、短時間遠心分離した後、室温で5min静置した。
D.300μL希釈液を加え、渦を巻き、短時間遠心分離した後、室温で5min静置した。
E.350μL無水エタノールを加え、渦を巻き、短時間遠心分離し、室温で5min静置した。
F.混合液を遠心分離カラム(キットに含まれる)に移し、サンプルをカラムに2回でロードした。12000rpmで1min遠心分離した後、濾液を捨てた。
G.600μLのRNA洗浄液を加え、12000rpmで1min遠心分離した後、濾液を捨てた。
H. 吸着膜の中央に50μLのDNASE Iインキュベーション溶液(表21)を加え、室温で15min静置した。
【表22】
I.600μLのRNA洗浄液を加え、12000rpmで1min遠心分離した後、濾液を捨て、2回繰り返し、濾液を捨てた。遠心分離カラムを新たに収集管に置き、12000rpmで2min遠心分離した。
J.遠心分離カラムを溶出管に移し、遠心分離カラム膜の中央に50μLヌクレアーゼフリー水を加え、室温で2min静置し、12000rpmで1min遠心分離し、RNAを-80℃で保存した。
【0174】
(2)逆転写(表22)
【表23】
【0175】
(3)PCR増幅
A.得られたcDNAをテンプレートとして断片のPCRを行った。反応系を表23に示す。
【表24】
反応条件を表24に示す。
【表25】
【0176】
(4)配列決定
配列決定の結果を図7に示す。各変異株ウイルスはいずれも予想通りに部位特異的変異を実現した。
【0177】
5.4.3ウイルス動作ライブラリの構築
(1)細胞接種、ウイルス収集、及びサンプル回収
細胞の説明書に従って適宜な培養条件下で説明書に記載の継代比率で細胞を継代増幅培養した。細胞が対数増殖期になった後、細胞を消化し、6×10個の細胞をT25細胞培養フラスコに接種し、壁に付着したままで引き続き24h培養した。
壁に付着して24h後に元の培地を吸って除去し、20μLシードロットウイルスが入ったVP-SFMウイルス培地を加え、ウイルスインキュベータに置いて細胞がウイルスを産生するまで待った。24hごとに細胞形態及び蛍光の有無を観察し、90%以上の細胞が浮き上がったら、撮影して記録し、Vero細胞上清を収集し、4000rpmで5min遠心分離した。100μL上清を取ってウイルス力価測定のサンプルとして1.5mL遠心分離管に入れ、残りの上清に凍結保存中(約1.5mL/管)に入れ、液体窒素下で保存した。
【0178】
(2)ウイルス力価の測定
1.BHK-21細胞を1500個の細胞/ウェルで96ウェルプレートに接種し、37℃、5%CO条件下で培養した。細胞接種後の12-36時間内で用いた。
2.適量のMEM基礎培地を仕込槽に入れ、培地を180μL/ウェルで96ウェルプレートに入れ、希釈液として用意した。測定されるサンプルの数に応じてMEM希釈液を準備し、各サンプルについて2回繰り返し、参考品について4回繰り返した。
3.測定されるサンプルを渦発振器上で15-30秒十分に振盪した。20μLの測定されるサンプルを取り、上記「2」における第1列のウェルに加えた。均一に混合した後、20μL吸い取って次の列のウェルに加えた。第8列のウェルまで順次希釈した。なお、列ごとにピペットを交換しなければならない。希釈した測定されるサンプルをマイクロウェルプレートミキサに固定し、約3000rpmで3分間振盪した。
4.希釈したウイルス溶液を細胞に加え、20μL/ウェルで10-3-10-8のウイルス液を96ウェルプレートの細胞に加え、プレートごとに2つのサンプルを測定した。
5.サンプルを加えた後、細胞を37℃、5%CO条件下で5日間(ウイルスを加えた当日を1日目とする)した。
6.5日後に、顕微鏡で細胞に細胞変性効果(CPE)が発生したかを観察して記録した。
7.Spearman-Karber法によりCCID50値を計算した。lg(CCID50×20/1000)=L-D(S-0.5),L:最大希釈度の対数,-1;D:希釈度の対数間の差,1;S-陽性ウェル比率の総和(CPE数の総和/8)。
【0179】
動作ロットウイルス力価の測定結果を表25に示す。
【表26】
【0180】
5.4.4 HCT116細胞に対するウイルスの殺傷効果
(1)細胞接種及び投与
各細胞の説明書に記載の培養条件、継代比率で細胞を継代増幅培養した。細胞が対数増殖期になった後、細胞を消化し、10000個の細胞/ウェルの密度で48ウェルプレートに接種し、各ウェルの総体積は200μLであった。ブランク対照群、陰性対照群、ウイルスの複数の勾配:
の実験群(いずれも3回繰り返す(表26)。表におけるA-Hは異なるウイルスを示す)を設置し、ブランク対照群に細胞を接種せず、陰性対照群ではウイルスの代わりにウイルス接種量と同量のVP-SFMを投与した。
【0181】
【表27】
【0182】
投与した後、引き続き72h培養し、終点時に顕微鏡で細胞状態を観察し、撮影して記録し、細胞活性を検出し、各ウイルスの前記検出細胞上のIC50を計算した。
【0183】
(2)CCK-8法による細胞生存率の測定
48ウェルプレートにおける元の培養液を除去し、壁に沿って発色液(90%完全培地+10%CCK-8溶液)を200μL/ウェルでゆっくりと加え、37℃で引き続き0.5-3h培養した後、吸光マイクロプレートリーダーにより450nmの波長で各ウェルの吸光度の値を測定した。
【0184】
(3)各細胞に対するウイルスの半数阻害濃度(IC50)の計算
得られた各ウェルの吸光度の値から、算式:細胞増殖阻害率(IR)=(平均OD溶媒-OD実験)/(平均OD溶媒-平均ODブランク)×100%により各ウェルの細胞の増殖阻害率を計算し、GraphPad Prism 8.0ソフトウェアにより細胞増殖阻害率曲線を作成し、log(Inhibitor)vs. response--Variable slope(four parameters)解析方程式により腫瘍細胞に対する各ウイルスの半数阻害濃度(IC50)の値を算出した。
【0185】
HCT116に対するM1ウイルスの各部位特異的変異株の殺傷曲線を図8A-8Zに示す(注:図における各曲線は1回の独立実験を示し、横軸はウイルス感染MOI、縦軸は阻害率を示す)。
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