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特許7457081低誘電基板材料及びそれを用いた金属基板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】低誘電基板材料及びそれを用いた金属基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/03 20060101AFI20240319BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20240319BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240319BHJP
   C08K 5/5419 20060101ALI20240319BHJP
   C08K 7/28 20060101ALI20240319BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20240319BHJP
   C08L 71/12 20060101ALI20240319BHJP
   H01B 3/28 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
H05K1/03
B32B7/025
C08K3/013
C08K5/5419
C08K7/28
C08L21/00
C08L71/12
H01B3/28
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022170751
(22)【出願日】2022-10-25
(65)【公開番号】P2023184391
(43)【公開日】2023-12-28
【審査請求日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】111122318
(32)【優先日】2022-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】廖 徳超
(72)【発明者】
【氏名】張 宏毅
(72)【発明者】
【氏名】黄 威儒
(72)【発明者】
【氏名】劉 家霖
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-508173(JP,A)
【文献】中国特許第111867239(CN,B)
【文献】特開2020-125440(JP,A)
【文献】特開2008-115280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
B32B 1/00- 43/00
H01B 3/28
H05K 1/03
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム樹脂組成物と、無機フィラーと、ホウ珪酸型中空粒子とを含む、低誘電基板材料であって、
前記ゴム樹脂組成物は、
分子量が2500g/mol~6000g/molの液体ゴム30重量%~60重量%と、
ポリフェニレンエーテル樹脂10重量%~40重量%と、
架橋剤10重量%~40重量%とのみを含み、
前記無機フィラーは、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素及びケイ酸アルミニウムからなる群から選択され、
前記液体ゴムを構成するモノマーは、ブタジエンモノマー、スチレンモノマー、ジビニルベンゼンモノマー及び無水マレイン酸モノマーからなる群から選択され、
架橋剤は、アリル基(allyl group)を含み、
前記ホウ珪酸型中空粒子の含有量は、前記ゴム樹脂組成物100重量部に対して、10重量部以下であることを特徴とする、低誘電基板材料。
【請求項2】
前記ホウ珪酸型中空粒子は、シェル及び空気が充填された中空コアを含む、請求項1に記載の低誘電基板材料。
【請求項3】
前記ホウ珪酸型中空粒子の中位径(D50)は、10μm~30μmであり、前記ホウ珪酸型中空粒子の真密度は、0.4g/cm~0.6g/cmである、請求項2に記載の低誘電基板材料。
【請求項4】
前記ホウ珪酸型中空粒子の前記シェルの表面は、アクリル基又はビニール基を含む、請求項2に記載の低誘電基板材料。
【請求項5】
前記ゴム樹脂組成物100重量部に対して、前記無機フィラーの添加量は、30重量部~60重量部である、請求項1に記載の低誘電基板材料。
【請求項6】
前記無機フィラーは、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素を含み、前記酸化アルミニウム及び前記酸化ケイ素の添加量の合計は、前記ゴム樹脂組成物100重量部に対して、20重量部~45重量部である、請求項5に記載の低誘電基板材料。
【請求項7】
前記ゴム樹脂組成物100重量部に対して、前記無機フィラーの添加量は、30重量部~60重量部であり、
前記ホウ珪酸型中空粒子の前記シェルの表面は、アクリル基又はビニール基を含む、請求項に記載の低誘電基板材料。
【請求項8】
前記ゴム樹脂組成物100重量部に対して、前記ホウ珪酸型中空粒子の含有量は、1重量部~7重量部であり、前記無機フィラーの添加量は、35重量部~55重量部である、請求項5に記載の低誘電基板材料。
【請求項9】
前記液体ゴムの全ての末端基に占めるビニール基の割合は、30モル%~90モル%であり、前記液体ゴムの全ての末端基に占めるスチレン基の割合は、10モル%~50モル%である、請求項に記載の低誘電基板材料。
【請求項10】
アクリル基又はビニール基を有するシロキサンカップリング剤を更に含み、前記ゴム樹脂組成物100重量部に対して、前記シロキサンカップリング剤の含有量は、0.1重量部~5重量部である、請求項1に記載の低誘電基板材料。
【請求項11】
基板層と、前記基板層に設置した金属層とを備える、金属基板であって、前記基板層の材料は、請求項1に記載の低誘電基板材料を含むことを特徴とする、金属基板。
【請求項12】
前記基板層の10GHzでの比誘電率は2.8~3であり、前記基板層の10GHzでの誘電正接は、0.003未満である、請求項11に記載の金属基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板材料に関し、特に、低誘電基板材料及びそれを用いた金属基板(例えば、銅箔基板(Copper Clad Laminate,CCL))に関する。
【背景技術】
【0002】
第5世代移動通信システム(5th generation wireless system,5G)の開発に伴い、5G無線通信規格を満たすために、高周波伝送が現在の開発の主流となっている。したがって、業界は、高周波伝送に適した高周波基板材料(例えば、6~77GHzの周波数範囲)の開発に取り組んでおり、高周波基板を基地局のアンテナ、衛星レーダー、自動車レーダー、無線通信アンテナ、又はパワーアンプに応用できるようにしている。
【0003】
比誘電率(dielectric constant,Dk)及び誘電正接(dielectric dissipation factor,Df)は、送信信号の速度と品質に直接に影響するため、5Gに応用する場合、信号遅延を改善し、且つ信号伝送損失を低減するため、低い比誘電率且つ極めて低い誘電正接を有する材料を用いる必要がある。その上、5Gに応用する場合、熱伝導性、耐熱性も要求される。以下、高周波基板の比誘電率と誘電正接とを合わせて、高周波基板の誘電特性と称す。
【0004】
現在市販の低誘電基板材料は、特定の比率の液体ゴムを添加し、液体ゴムは、高い溶解性及び反応性官能基を有する、という特徴を有する。このように、低誘電基板材料は、高周波基板材料として好適である。しかしながら、液体ゴムの添加量は、高すぎてはいけない。液体ゴムの含有量が高すぎる(25重量%を超える)と、低誘電基板材料のガラス転移温度(glass transition temperature,Tg)が比較的に低くなると共に、基板の剥離強度が不良となってしまう。
【0005】
また、低誘電基板材料において、低誘電基板材料の熱伝導性を向上させるために、所定の比率で熱伝導性フィラーを含有する。樹脂100重量部に対して、熱伝導性フィラーの添加量は、45重量部超え60重量部以下であるが、過量の熱伝導性フィラーは、低誘電基板材料と熱伝導性フィラーとの界面相容性に悪影響を与え、基板の耐熱性に影響することで、高周波基板材料での応用にとって不利となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、低誘電基板材料及びそれを用いた金属基板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、ゴム樹脂組成物と、無機フィラーと、ホウ珪酸型中空粒子とを含む、低誘電基板材料を提供する。前記ゴム樹脂組成物は、分子量が2500g/mol~6000g/molの液体ゴム30重量%~60重量%と、ポリフェニレンエーテル樹脂10重量%~40重量%と、架橋剤10重量%~40重量%とを含む。前記無機フィラーは、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素及びケイ酸アルミニウムからなる群から選択される。前記ホウ珪酸型中空粒子の含有量は、前記ゴム樹脂組成物100重量部に対して、10重量部以下である。
【0008】
本発明の一つの実施形態において、前記ホウ珪酸型中空粒子は、シェル及び空気が充填された中空コアを含む。
【0009】
本発明の一つの実施形態において、前記ホウ珪酸型中空粒子の中位径(D50)は、10μm~30μmであり、前記ホウ珪酸型中空粒子の真密度(True Density)は、0.4g/cm~0.6g/cmである。
【0010】
本発明の一つの実施形態において、前記ホウ珪酸型中空粒子の前記シェルの表面は、アクリル基又はビニール基を含む。
【0011】
本発明の一つの実施形態において、前記ゴム樹脂組成物100重量部に対して、前記無機フィラーの添加量は、30重量部~60重量部である。
【0012】
本発明の一つの実施形態において、前記無機フィラーは、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素からなり、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素の添加量の合計は、前記ゴム樹脂組成物100重量部に対して、20重量部~45重量部である。
【0013】
本発明の一つの実施形態において、前記ホウ珪酸型中空粒子の前記シェルの表面は、アクリル基又はビニール基を含む。
【0014】
本発明の一つの実施形態において、前記ゴム樹脂組成物100重量部に対して、前記ホウ珪酸型中空粒子の含有量は、1重量部~7重量部であり、前記無機フィラーの添加量は、35重量部~55重量部である。
【0015】
本発明の一つの実施形態において、前記液体ゴムを構成するモノマーは、ブタジエンモノマー、スチレンモノマー、ジビニルベンゼンモノマー及び無水マレイン酸モノマーからなる群から選択される。
【0016】
本発明の一つの実施形態において、前記液体ゴムの全ての末端基に占めるビニール基の割合は、30モル%~90モル%であり、前記液体ゴムの全ての末端基に占めるスチレン基の割合は、10モル%~50モル%である。
【0017】
本発明の一つの実施形態において、前記低誘電基板材料は、アクリル基又はビニール基を有するシロキサンカップリング剤を更に含み、前記ゴム樹脂組成物100重量部に対して、前記シロキサンカップリング剤の含有量は、0.1重量部~5重量部である。
【0018】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用するもう一つの技術的手段は、金属基板を提供する。前記金属基板は、基板層と、前記基板層に設置した金属層とを備える。前記基板層の材料は、前記組成を含む低誘電基板材料を含む。
【0019】
本発明の一つの実施形態において、前記基板層の10GHzでの比誘電率は2.8~3であり、前記基板層の10GHzでの誘電正接は、0.003未満である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の有利な効果として、本発明に係る低誘電基板材料及びそれを用いた金属基板は、「前記ゴム樹脂組成物は、分子量が2500g/mol~6000g/molの液体ゴム30重量%~60重量%と、ポリフェニレンエーテル樹脂10重量%~40重量%と、架橋剤10重量%~40重量%とを含む」及び「前記ホウ珪酸型中空粒子の含有量は、前記ゴム樹脂組成物100重量部に対して、10重量部以下である」といった技術特徴によって、実際に応用する際に所望の特性を達成する。例えば、より低い誘電特性、より高い剥離強度及び耐熱性など。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る低誘電基板材料を用いた金属基板の一つの構造を示す模式図である。
図2】本発明に係る低誘電基板材料を用いた金属基板のもう一つの構造を示す模式図である。
図3】本発明に係る低誘電基板材料におけるホウ珪酸型中空粒子の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0023】
以下、所定の具体的な実施態様によって「低誘電ゴム樹脂材料及びそれを用いた金属基板」を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つまたは複数の組み合わせを含むことがある。
【0024】
[低誘電基板材料]
本発明は、低誘電基板材料を提供する。低誘電基板材料は、ゴム樹脂系に無機フィラー及びホウ珪酸型中空粒子を導入するものである。それによって、ゴム樹脂系の物性は高周波・高速の要求を満たし、従来の材料に比べて、高周波高速基板材料としてより好適である。
【0025】
具体的に説明すると、本発明に係る低誘電基板材料は、ゴム樹脂組成物、ゴム樹脂組成物に均一に分散する無機フィラー及び複数個のホウ珪酸型中空粒子を含む。後文に、ゴム樹脂組成物、無機フィラー及びホウ珪酸型中空粒子を詳しく説明する。
【0026】
[ゴム樹脂組成物]
本発明において、ゴム樹脂組成物は、分子量が2500g/mol~6000g/molの液体ゴム30重量%(wt%)~60重量%と、ポリフェニレンエーテル樹脂10重量%~40重量%と、架橋剤10重量%~40重量%とを含む。
【0027】
特筆すべきことは、液体ゴムの分子量が2500g/mol~6000g/molである場合、ゴム樹脂組成物の流動性が向上し、低誘電基板材料の充填性を向上する効果を果たせる。液体ゴムの分子量は、3000g/mol~5500g/molであることが好ましく、3000g/mol~5000g/molであることがより好ましい。液体ゴムは、溶解性が高い特性を有するため、各成分の間の相溶性を向上させると共に、液体ゴムは、反応性官能基を有するため、ゴム樹脂材料を硬化した後の架橋度を向上させることができる。
【0028】
また、液体ゴムは、特定の分子量を有し、特定の構造及び構成単位を有するため、より大量にゴム樹脂組成物に添加し、即ち、液体ゴムのゴム樹脂組成物での含有割合を大幅に向上させることができる。具体的に説明すると、液体ゴムを構成するモノマーは、ブタジエンモノマー、スチレンモノマー、ジビニルベンゼンモノマー及び無水マレイン酸モノマーからなる群から選択されると共に、前記液体ゴムの全ての末端基に占めるビニール基の割合は、30モル%~90モル%であり、前記液体ゴムの全ての末端基に占めるスチレン基の割合は、10モル%~50モル%である。また、ゴム樹脂組成物の総重量を100重量%として、液体ゴムの含有量は40重量%を超えることが可能であり、従来の技術のゴム樹脂組成物での液体ゴムの含有量(25重量%)を明らかに超える。
【0029】
特筆すべきことは、前記液体ゴムの全ての末端基に占めるビニール基の割合は、30モル%~90モル%である場合、液体ゴムにより優れた耐熱性を与え、ポリフェニレンエーテル樹脂とのシステム相溶性を向上させることができる。前記液体ゴムの全ての末端基に占めるスチレン基の割合は、10モル%~50モル%である場合、液体ゴムとポリフェニレンエーテル樹脂との架橋反応を促進させて、システム相溶性を向上させることができる。
【0030】
一つの実施形態において、ゴム樹脂組成物の総重量を100重量%として、液体ゴムの含有量は、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、50重量%、55重量%または60重量%であってもよい。
【0031】
一つの実施形態において、前記無機フィラーは、球状シリカであってもよい。球状シリカとして、例えば、浙江三時紀新材科技有限公司(Zhejiang Third Age Material Technology)製のEQ-2410が挙げられる。
【0032】
一つの実施形態において、液体ゴムは、ビニール基を含有する側鎖を高い比率で有する液体ジエン系ゴムを含む。また、前記ビニール基を含有する側鎖は、好ましくは1,2-ビニール基側鎖を含む。特筆すべきことは、1つ以上のビニール基を含有する側鎖の存在で、基板材料の硬化物の架橋密度及び耐熱性の向上は優れている。具体的に説明すると、液体ジエン系ゴムは、ポリブタジエン樹脂を含む。ポリブタジエン樹脂は、ブタジエンモノマーのみで重合して得たものであってもよく、ブタジエンモノマーと他のモノマーで重合して得たものであってもよい。換言すると、液体ゴムは、ブタジエンホモポリマー又はブタジエン共重合体であってもよく、好ましくは、ブタジエンホモポリマーである。
【0033】
一つの好ましい実施形態において、ブタジエンモノマーの総量を100mol%として、30mol%~98mol%の前記ブタジエンモノマー(重合後)は、ビニール基を含む側鎖を有する。好ましくは、ブタジエンモノマーの総重量に基づいて、50mol%~98mol%のブタジエンモノマー(重合後)は、ビニール基を含む側鎖を有する。より好ましくは、65mol%~98mol%の前記ブタジエンモノマー(重合後)は、ビニール基側鎖を有する。
【0034】
一つの実施形態において、液体ゴムを構成するモノマーは、ブタジエンモノマー及びスチレンモノマーを含むと共に、ブタジエンモノマー及びスチレンモノマーの総量を100mol%として、スチレンモノマーの含有量は、10mol%~50mol%である。それによって、液体ゴムは、液晶分子配列の分子幾何構造に類似する構造を有することで、耐熱性及びシステム相溶性が向上させることができる。
【0035】
本発明の一つの実施形態において、液体ゴムを構成するモノマーは、ブタジエンモノマー、スチレンモノマー、ジビニルベンゼンモノマー及び無水マレイン酸モノマーを含み、即ち、液体ジエン系ゴムは、ブタジエンモノマー、スチレンモノマー、ジビニルベンゼンモノマー及び無水マレイン酸モノマーで形成された共重合体である。ブタジエンモノマー、スチレンモノマー、ジビニルベンゼンモノマー及び無水マレイン酸モノマーの総量を100モル%として、ブタジエンモノマーの含有量は、30モル%~90モル%であり、スチレンモノマーの含有量は、10モル%~50モル%であり、ジビニルベンゼンモノマーの含有量は、10モル%~40モル%であり、且つ無水マレイン酸モノマーの含有量は、2モル%~20モル%であってもよい。
【0036】
本発明の高分子系において、ポリフェニレンエーテル樹脂の分子量は、1000g/mol~20000g/molであり、好ましくは、2000g/mol~10000g/molであり、より好ましくは、2000g/mol~2200g/molである。特筆すべきことは、ポリフェニレンエーテル樹脂の分子量が20000g/mol未満である場合に、より優れた溶媒溶解性を有するため、ゴム樹脂組成物の製造に有利である。
【0037】
一つの実施形態において、ゴム樹脂組成物の総重量を100重量%として、ポリフェニレンエーテル樹脂の含有量は、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%又は40重量%であってもよい。
【0038】
一つの実施形態において、ポリフェニレンエーテル樹脂の分子構造の末端に改質基を導入してもよい。改質基は、水酸基、アミノ基、ビニール基、スチレン基、メタクリレート基及びエポキシ基からなる群から選択されてもよい。ポリフェニレンエーテル樹脂の末端での改質基は、不飽和結合を提供して、架橋反応の進行が有利となり、それによって、高ガラス転移温度且つ耐熱性が良好な基板材料を形成することができる。実際に応用する時に、ポリフェニレンエーテルの分子構造における2つの末端にはそれぞれ、改質基を有すると共に、前記2つの改質基が同一である。なお、本発明の高分子系において、1種又は2種以上のポリフェニレンエーテルを含んでもよい。
【0039】
一つの好ましい実施形態において、本発明の高分子系は、第1のポリフェニレンエーテル及び第2のポリフェニレンエーテルを含んでもよい。第1のポリフェニレンエーテルは、第2のポリフェニレンエーテルと異なっている。また、第1のポリフェニレンエーテル及び第2のポリフェニレンエーテルは独立に、2つの末端にある改質基が水酸基であるポリフェニレンエーテル、2つの末端にある改質基がメタクリレート基であるポリフェニレンエーテル、2つの末端にある改質基がスチレン基であるポリフェニレンエーテル、又は2つの末端にある改質基がエポキシ基であるポリフェニレンエーテルであってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。また、第1のポリフェニレンエーテルと第2のポリフェニレンエーテルとの重量比は、0.5~1.5であってもよく、好ましくは0.75~1.25であり、より好ましくは1である。
【0040】
本発明の高分子系において、架橋剤は、液体ゴムとポリフェニレンエーテル樹脂との架橋度を向上させることができる。架橋剤は、アリル基(allyl group)を含んでもよい。例えば、架橋剤は、トリアリルシアヌレート(triallyl cyanurate,TAC)、トリアリルイソシアヌレート(triallyl isocyanurate,TAIC)、フタル酸ジアリル(diallyl phthalate)、ジビニルベンゼン(divinylbenzene)、トリアリルトリメリテート(triallyl trimellitate)又はそれらの組み合わせであってもよい。好ましくは、架橋剤は、トリアリルイソシアヌレートであるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0041】
一つの実施形態において、ゴム樹脂組成物の総重量を100重量%として、架橋剤の含有量は、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、35重量%又は40重量%であってもよい。
【0042】
[ホウ珪酸型中空粒子]
図3は、本発明に係る低誘電基板材料におけるホウ珪酸型中空粒子の構造を示す模式図である。ホウ珪酸型中空粒子によって、基板材料の硬化物に低誘電特性を与えられ、特に、誘電正接を0.0030以下に低減させる事ができ、高周波での応用にとって特に有利である。図3に示すように、ホウ珪酸型中空粒子11は、シェル111及び空気が充填された中空コア112を含む。ホウ珪酸型中空粒子11は、アルカリホウケイ酸ガラス(例えば、3M社製のim16K)で製造されてもよい。一つの実施形態において、ホウ珪酸型中空粒子11の中空コア112は、窒素ガス又は不活性ガスで充填されてもよい。
【0043】
基板材料の硬化物の全体特性及び応用を考量して、例えば、低誘電特性及び機械的特性を両立する(低誘電特性を達成した上で機械的特性が損しない)ため、ホウ珪酸型中空粒子の中位径(D50)は、10μm~30μmであり、前記ホウ珪酸型中空粒子の真密度(True Density)は、0.4g/cm~0.6g/cmである。また、ゴム樹脂組成物100重量部に対して、ホウ珪酸型中空粒子11の含有量は、10重量部未満であり、1重量部~7重量部であることが好ましい。ホウ珪酸型中空粒子11の含有量が10重量部を超えると、基板と銅箔との接着強度に悪影響を与える。
【0044】
誘電正接を更に低減すると共に、実際に応用する際に所望の特性(例えば、剥離強度及び耐熱性)を損しないため、ホウ珪酸型中空粒子11のシェル111表面に十分な量のアクリル基及び/又はビニール基(即ち改質官能基)を有する。実際に応用する時に、アクリル基及び/又はビニール基を有するシラン化合物を含む処理剤を用いて、ホウ珪酸型中空粒子11に表面処理を行い、それによって、シェル111の表面にアクリル基及び/又はビニールを与える。例えば、ホウ珪酸型中空粒子11の表面処理方法は、ホウ珪酸型中空粒子11をシラン化合物を含む処理剤に含浸させることであってもよい。ただし、上述した内容はあくまでも使用可能な実施方法であって、本発明はこれに制限されるものではない。
【0045】
[無機フィラー]
本発明の高分子系において、無機フィラーの存在によって、低誘電基板材料の機械的特性及び熱伝導性を向上させると共に、低誘電基板材料の硬化物の比誘電率及び誘電正接を低いレベルに維持させることができる。説明すべきことは、上述した説明は、本発明を制限するわけでもなく、実際に応用する際に、他の有利な効果又は他の作用を発揮することがあり、例えば、基板材料の耐熱性及び硬化した接着強度(bonding strength)を向上することと、低誘電基板材料の粘度を低減することが挙げられる。
【0046】
無機フィラーは、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ケイ素(SiO)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)、炭化ケイ素(SiC)及びケイ酸アルミニウム(Al・SiO)からなる群から選択されると共に、無機フィラーの平均粒子ケイは、1μm~20μmである。ゴム樹脂組成物100重量部に対して、無機フィラーの含有量は、30重量部~60重量部であり、35重量部~55重量部であることが好ましい。基板材料の硬化物の全体特性及び応用を考量して、例えば、低誘電特性及び機械的特性を両立するため、好ましくは、無機フィラーは、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素からなり、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素の添加量の合計は、前記ゴム樹脂組成物100重量部に対して、20重量部~45重量部である。
【0047】
一つの実施形態において、ゴム樹脂組成物100重量部に対して、無機フィラーの含有量は、30重量部、35重量部、40重量部、45重量部、50重量部、55重量部又は60重量部であってもよい。
【0048】
一つの実施形態において、無機フィラーに対して表面改質を行うことによって、無機フィラーの表面に十分な量のアクリル基及び/又はビニール基(即ち改質官能基)を有することで、高分子系に良好な相溶性を与える。このように、無機フィラーは、より大量に基板材料に、基板材料の硬化物の特性(例えば、耐熱性)に悪影響を与えない。
【0049】
実際に応用する際に、無機フィラーは、一種類以上の無機物フィラーを含んでもよい。また、無機フィラーの全てが表面処理されてもよく、もしくは、無機フィラーの一部のみが表面処理されてもよい。無機フィラーが酸化アルミニウム及び酸化ケイ素からなる一つの実施形態において、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素はいずれも、表面処理されることで、表面にアクリル基及び/又はビニール基を有する。無機フィラーが酸化アルミニウム及び酸化ケイ素からなるもう1つの実施形態において、酸化アルミニウムのみが表面処理されることで表面にアクリル基及び/又はビニール基を有し、酸化ケイ素が表面処理されていない。以上の内容はあくまでも使用可能な実施形態であり、本発明はこれに制限されるものではない。
【0050】
実際に応用する時に、アクリル基及び/又はビニール基を有するシラン化合物を含む処理剤を用いて、無機フィラーに表面処理を行い、それによって、無機フィラーの表面にアクリル基及び/又はビニールを与える。例えば、無機フィラーの表面処理方法は、無機フィラーをシラン化合物を含む処理剤に含浸させることであってもよい。ただし、上述した内容はあくまでも使用可能な実施方法であって、本発明はこれに制限されるものではない。
【0051】
[シロキサンカップリング剤]
本発明の低誘電基板材料は、シロキサンカップリング剤を更に含んでもよい。シロキサンカップリング剤の一端は、無機物と結合する可能なシラン端であり、シロキサンカップリング剤の他端は、ゴム/樹脂と結合する可能な官能基を有する。このように、シロキサンカップリング剤の存在によって、補強材料である繊維布、ゴム/樹脂と無機フィラーとの相容性を向上させ、基板材料の硬化物の機械的特性及び耐熱性を向上させることができる。
【0052】
具体的に説明すると、シロキサンカップリング剤は、アクリル基及びビニール基の中の少なくとも1つを含む。シロキサンカップリング剤の分子量は、100g/mol~500g/mol、好ましくは110g/mol~250g/mol、さらに好ましくは120g/mol~200g/molである。ゴム樹脂組成物100重量部に対して、シロキサンカップリング剤の含有量は、0.1重量部~5重量部であり、0.5重量部~3重量部であることが好ましい。上述した内容はあくまでも、使用可能な実施形態であり、本発明はこれに制限されるものではない。
【0053】
一つの実施形態において、ゴム樹脂組成物100重量部に対して、シロキサンカップリング剤の含有量は、0.1重量部、0.5重量部、1重量部、1.5重量部、2重量部、2.5重量部、3重量部、3.5重量部、4重量部、4.5重量部又は5重量部であってもよい。
【0054】
[難燃剤]
本発明の低誘電基板材料は、難燃剤を更に含んでもよい。難燃剤の添加により、低誘電基板材料の硬化物の難燃性を向上させることができる。例えば、難燃剤は、リン系難燃剤又は臭素系難燃剤であってもよい。好ましくは、難燃剤は臭素を含まないものである。ゴム樹脂組成物100重量部に対して、難燃剤の含有量は、0.1重量部~5重量部であり、0.5重量部~3重量部であることが好ましい。上述した内容はあくまでも、使用可能な実施形態であり、本発明はこれに制限されるものではない。
【0055】
臭素系難燃剤の具体例として、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)(ethylene bistetrabromophthalimide)、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン(tetradecabromodiphenoxy benzene)、デカブロモジフェノキシオキシド(decabromo diphenoxy oxide)が挙げられる。
【0056】
リン系難燃剤として、リン酸エステル系(sulphosuccinic acid ester)、ホスファゼン系(phosphazene)、ポリリン酸アンモニウム系、ポリリン酸メラミン系(melamine polyphosphate)又はシアヌル酸メラミン(melamine cyanurate)であってもよい。リン酸エステル系難燃剤としては、リン酸トリフェニル(triphenyl phosphate,TPP)、テトラフェニルレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(tetraphenyl resorcinol bis(diphenylphosphate),RDP)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(bisphenol A bis(diphenyl phosphate),BPAPP)、ビスフェノールAビス(ジメチル)ホスファート(BBC)、レゾルシノール二リン酸(例えば、大八化学工業社製、CR-733S)、レゾルシノールビス(2,6-ジメチルフェニルホスフェート)(例えば、大八化学工業社製、PX-200)、パラキシリレンビスジフェニルホスフィンオキサイド(例えば、晋一化工有限公司製のPQ-60)が挙げられるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0057】
一つの実施形態において、ゴム樹脂組成物100重量部に対して、難燃剤の含有量は、0.1重量部、0.5重量部、1重量部、1.5重量部、2重量部、2.5重量部、3重量部、3.5重量部、4重量部、4.5重量部又は5重量部であってもよい。
【0058】
[金属基板]
図1及び図2に示すように、本発明は、基板層1及び基板層1に設置した少なくとも1つの金属層2とを、備えた金属基板Zを提供する。その中、基板層1の材料は、上述した組成成分(ゴム樹脂組成物、無機フィラー、ホウ珪酸型中空粒子)を含む低誘電基板材料である。具体的に説明すると、金属基板Zは、銅箔基板であってもよい。なかでも、金属層2(銅箔層)は、基板層1の片面(例えば、上面)に形成されてもよい(金属層2の数は1つである)。もしくは、金属層2は、基板層1の両表面(例えば、上面、下面)にそれぞれ形成されてもよい(金属層2の数は2つである)。
【0059】
特筆すべきことは、本発明において、上述した低誘電基板材料で基板層1を形成するため、金属基板Zは、低誘電特性を有した上で、良好な剥離強度(peeling strength)及び耐熱性を依然として有する。測定の結果によって、金属基板Zの10GHz下での比誘電率(Dielectric Constant,Dk)は、2.8~3.0であり、金属基板Zの10GHz下での誘電正接(Dissipation Factor, Df)は、0.0030未満である。また、金属基板Zの剥離強度は、3lb/in~5lb/inである。
【0060】
金属基板Zの特性を評価する方法として、以下に示す通りである。
(1)比誘電率(10GHz):誘電分析装置(Dielectric Analyzer)(品番:HP Agilent E5071C)を用いて、10GHzの周波数での比誘電率を測定する。
(2)誘電正接(10GHz):誘電分析装置(Dielectric Analyzer)(品番:HP Agilent E5071C)を用いて、10GHzの周波数での誘電正接を測定する。
(3)剥離強度:試験方法IPC-TM-650-2.4.8に基づいて、銅箔基板の剥離強度を測定する。
【0061】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係る低誘電基板材料及びそれを用いた金属基板は、「前記ゴム樹脂組成物は、分子量が2500g/mol~6000g/molの液体ゴム30重量%~60重量%と、ポリフェニレンエーテル樹脂10重量%~40重量%と、架橋剤10重量%~40重量%とを含む」及び「前記ホウ珪酸型中空粒子の含有量は、前記ゴム樹脂組成物100重量部に対して、10重量部以下である」といった技術特徴によって、実際に応用する際に所望の特性を達成する。例えば、より低い誘電特性、より高い剥離強度及び耐熱性など。本発明の有利な効果は、表1に示す実験データによって証明される。
【0062】
【表1】
【0063】
更に説明すると、液体ゴムの添加により、ゴム樹脂組成物の流動性を向上し、低誘電基板材料の充填性を更に向上させることができる。また、液体ゴムは、高い溶解性という特徴を有するため、各成分の間の相容性を向上させると共に、液体ゴムは、反応性官能基を有するため、ゴム樹脂材料を硬化した後の架橋度を向上させることができる。また、液体ゴムは、特定の分子量を有し、特定の構造及び構成単位を有するため、より大量にゴム樹脂組成物に添加し、即ち、液体ゴムのゴム樹脂組成物での含有割合を大幅に向上させることができる。
【0064】
更に説明すると、ホウ珪酸型中空粒子は、基板材料の硬化物(基板層)に低誘電特性を与え、特に、誘電正接を0.0030以下に低減させる事ができ、高周波での応用にとって特に有利である。また、実際に応用する際に、所望の特性が損しない。
【0065】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全てのなどの価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
Z…金属基板
1…基板層
11…ホウ珪酸型中空粒子
111…シェル
112…中空コア
図1
図2
図3