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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】スクリュースピンドルポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 15/00 20060101AFI20240319BHJP
   F04C 2/16 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
F04C15/00 K
F04C15/00 G
F04C2/16 A
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022197444
(22)【出願日】2022-12-09
(65)【公開番号】P2023088303
(43)【公開日】2023-06-26
【審査請求日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】10 2021 133 099.8
(32)【優先日】2021-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515051102
【氏名又は名称】ライストリッツ プムペン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン・メッツ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティン・リッセク
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン・ポップ
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102020108038(DE,A1)
【文献】国際公開第2021/190975(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第4308755(DE,A1)
【文献】国際公開第2014/138519(WO,A1)
【文献】特開2016-142269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 2/08- 2/28
F04C 11/00-15/06
F04C 18/16
F04C 23/00-29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンドルハウジング(5)を備えるスクリュースピンドルポンプであって、前記スピンドルハウジング(5)において、駆動スピンドル(6)と前記駆動スピンドル(6)に噛み合った少なくとも1つの走行スピンドル(7)とがスピンドルホールに収容されており、
前記駆動スピンドル(6)は、円筒形のスピンドルコア(11)と、前記スピンドルコア(11)を中心に回転する少なくとも2つのスピンドルプロファイル(12)とを含み、前記駆動スピンドル(6)の正面における、平坦な底面(15)によって軸方向に境界を規定する凹部(14)であって、2つの前記スピンドルプロファイル(12)の間の2つのプロファイル谷部(13)が180度ずれた状態で合流する凹部(14)において、板状の結合要素(10)が配置されており、前記結合要素(10)は、駆動モータ(8)の駆動シャフト(9)用の挿入収容部(24)を備え、前記結合要素(10)は、前記凹部(14)の横方向の境界を規定すると共に前記結合要素(10)の横方向の収容部(20)に係合する軸方向に突出した突起(16)と形状結合して係合することによって、前記駆動スピンドル(6)の少なくとも1つの回転方向において回転不能に前記駆動スピンドル(6)と結合されており、
前記底面(15)は、前記2つのプロファイル谷部(13)が合流する領域において、前記スピンドルコア(11)によって境界が規定されており、前記結合要素(10)は、前記合流する領域に隣接した要素側領域(18)において、前記スピンドルコア(11)の形状に対応して丸みを帯びて形成されており、
前記結合要素(10)の直径(DB)は、前記丸みを帯びて形成された要素側領域(18)の範囲において、最大で前記スピンドルコア(11)の直径(DK)に相当するか、又は、前記スピンドルコア(11)の直径(DK)よりも小さい、スクリュースピンドルポンプ。
【請求項2】
前記結合要素(10)は、円筒形のベース部(17)を備え、前記ベース部(17)から4つの要素側突起(19)が突出し、隣接する2つの前記要素側突起(19)が、1つの横方向の収容部(20)の境界を規定することを特徴とする、請求項1に記載のスクリュースピンドルポンプ。
【請求項3】
前記収容部(20)は、前記ベース部(17)の中に延びていることを特徴とする、請求項2に記載のスクリュースピンドルポンプ。
【請求項4】
前記要素側突起(19)は、三角形の形状を有し、その自由端に向かってテーパ状であることを特徴とする、請求項2又は3に記載のスクリュースピンドルポンプ。
【請求項5】
各前記要素側突起(19)の厚みは、その自由端に向かって減少していることを特徴とする、請求項2または3に記載のスクリュースピンドルポンプ。
【請求項6】
前記挿入収容部(24)は、四角形の形状を有していることを特徴とする、請求項2または3に記載のスクリュースピンドルポンプ。
【請求項7】
前記挿入収容部(24)は、長方形の形状を有し、前記挿入収容部(24)の長い軸線が2つの前記丸みを帯びて形成された要素側領域(18)の間を延び、前記挿入収容部(24)の短い軸線が2つの前記収容部(20)の間を延びていることを特徴とする、請求項6に記載のスクリュースピンドルポンプ。
【請求項8】
前記結合要素(10)は、プラスチック又は金属から成ることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のスクリュースピンドルポンプ。
【請求項9】
駆動モータ(8)であって、前記駆動モータ(8)の円筒形の前記駆動シャフト(9)の直径(DA)は、最大で、円筒形の前記スピンドルコア(11)の直径(DK)に相当する、駆動モータ(8)を特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のスクリュースピンドルポンプ。
【請求項10】
中央に配置された1つの駆動スピンドル(6)と前記駆動スピンドル(6)の両側に配置された2つの走行スピンドル(7)とが設けられていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のスクリュースピンドルポンプ。
【請求項11】
求項1~3のいずれか1項に記載のスクリュースピンドルポンプ(1)の、自動車において作動液を搬送するための使用。
【請求項12】
前記スクリュースピンドルポンプ(1)は、具体的にはエネルギー貯蔵装置を冷却するように機能する冷媒を搬送するための冷媒ポンプとして使用されることを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動スピンドルとこれに噛み合った少なくとも1つの走行スピンドルとがスピンドルホール内に収容されているスピンドルハウジングを備えるスクリュースピンドルポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなスクリュースピンドルポンプは、例えば燃料又は供給液若しくは冷却液又は同様のものといった流体を搬送するためのものである。搬送は、互いに噛み合った少なくとも2つのスピンドル、すなわち、駆動モータに結合された駆動スピンドルと走行スピンドルとによって行われる。これらのスピンドルは、1つのスピンドルハウジングに収容されている。スピンドルハウジングは、これに加えて、スピンドルの数に対応する個数の、互いに交差したスピンドルホールを備える。通常、スピンドルハウジングは、ポンプハウジング又は外側ハウジングに収容されており、このポンプハウジング又は外側ハウジングを介して、搬送対象の流体の供給及び放出が行われる。
【0003】
機能原理は、駆動スピンドル及び走行スピンドルが互いに噛み合い、スピンドルの回転により、搬送容積を軸方向に移動させることに基づいている。駆動スピンドルは、このために、円筒形のスピンドルコアと、スピンドルコアを中心に回転する通常は2つのスピンドルプロファイルを有している。これらのスピンドルプロファイルによって、円周方向に2つのプロファイル谷部が形成され、これに、走行スピンドルの対応するスピンドルプロファイルが係合する。このような2つのスピンドルによる構成の他に、3つのスピンドルを備えるスクリュースピンドルポンプを構成することも想定可能である。すなわち、2つの走行スピンドルが設けられており、これらの走行スピンドルは、真ん中に配置された駆動スピンドルの横に180度ずらして配置され、駆動スピンドルと噛み合うようになっている。
【0004】
記載したように、駆動スピンドルはアクティブに回転されるので、駆動スピンドルは、駆動モータと連結するためのものであるが、1つ又は複数の走行スピンドルは作動されるだけである。駆動スピンドルを駆動モータ又はその駆動シャフトと連結させるために、駆動スピンドルの正面に、対応する形状結合の形で回転不能に駆動スピンドルに接続された結合要素が配置されている。この形状結合によって、一回転方向への回転が不能な少なくとも1つの接続部が提供される。設計によっては、別の回転方向への回転が不能な接続部が提供されてもよく、駆動方向、したがってスピンドル回転方向の切り替えも可能になる。
【0005】
このようなスクリュースピンドルポンプは、例えばドイツ国特許出願公開第43 08 755号A1から公知である。この文献には、モータの駆動シャフトを駆動スピンドルに結合するドッグクラッチが記載されている。駆動スピンドルの軸方向の一端には、十字形を形成する2つの溝が掘られており、この溝によって、2つの互いに対向し合う、断面が三角形の爪が形成される。この板状の結合要素は、円形断面を有し、駆動スピンドルの三角形の爪が係合する、同じく三角形の窪みを2つ有している。結合要素の中央には、スリットが形成されており、このスリットに、モータ側の駆動シャフトの端部が係合する。
【0006】
ドイツ国特許出願公開第10 2015 101 443号A1からは、結合要素が配置されたスピンドル端部が平坦な平面状に形成されているスクリュースピンドルポンプが公知である。スピンドルプロファイルもこの正面で終端する。対向する2つの位置において、径方向に見て、互いに対して直角に位置する接触面が、材料除去により形成されている。結合要素は、対応する三次元の収容及び係合形状を有している。この形状は軸方向の係合部分が設けられるように形成されている。この係合部分は、いわば両方が合流したプロファイル谷部に係合し、その領域に形成された接触面に当接することによって、円周方向に見て回転不能な平面状の接続に作用する、結合要素の駆動スピンドルへの当接が提供される。同時に結合要素は、平坦な正面に軸方向に設置される。
【0007】
ドッグクラッチとも呼ばれることが多いこのような結合部は、基本的に有効性が実証されているが、結合部に関して改善されたスクリュースピンドルポンプに対する需要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、改善された結合装置を備えるスクリュースピンドルポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために、本発明によれば、スピンドルハウジングを備えるスクリュースピンドルポンプが提供される。スピンドルハウジングにおいて、駆動スピンドルと駆動スピンドルに噛み合った少なくとも1つの走行スピンドルとがスピンドルホールに収容されており、駆動スピンドルは、円筒形のスピンドルコアと、スピンドルコアを中心に回転する少なくとも2つのスピンドルプロファイルとを含み、駆動スピンドルの正面における、平坦な底面によって軸方向に境界を規定する凹部であって、2つのスピンドルプロファイルの間の2つのプロファイル谷部が180度ずれた状態で合流する凹部において、板状の結合要素が配置されており、結合要素は、駆動モータの駆動シャフト用の挿入収容部を備え、結合要素は、凹部の横方向の境界を規定すると共に結合要素の横方向の収容部に係合する軸方向に突出した突起と形状結合して係合することによって、駆動スピンドルの少なくとも1つの回転方向において回転不能に前記駆動スピンドルと結合されており、底面は、2つのプロファイル谷部が合流する領域において、スピンドルコアによって境界が規定されており、結合要素は、合流する領域に隣接した要素側領域において、スピンドルコアの形状に対応して丸みを帯びて形成されており、結合要素の直径は、丸みを帯びて形成された要素側領域の範囲において、最大でスピンドルコアの直径に相当するか、又は、スピンドルコアの直径よりも小さい。
【0010】
本発明に係るスクリュースピンドルポンプは、流れに最適化された結合部、より正確に言えば駆動スピンドルと結合要素との間の接続部を有している。具体的には、結合要素の形状は、結合要素がスピンドルの正面への合流部における各プロファイル谷部の搬送断面を、あったとしてもわずかしか低減させず、そのため、開放された搬送断面が結合要素によってほとんど影響を受けず、したがって流れが、軸方向に見て、これによって有意に影響されないように選択される。これによって、搬送能力の改善が実現される。
【0011】
このことを実現するために、特別に構成された結合要素が設けられる。結合要素は、板状に形成されており、横方向に開口した2つの収容部を有している。各収容部には、駆動スピンドルの正面から軸方向に突出した1つの突起が係合する。この形状結合した係合により、一回転方向、好ましくは当然ながら両方の回転方向において回転不能な接続が可能となる。この軸方向に突出した突起によって、平坦な底面を備えるスピンドル正面側の凹部が規定され、結合要素はちょうどこの凹部に挿入される。ここで、凹部の底面は、特に駆動スピンドルのスピンドルコアから形成されている。これは、記載したように、この正面に2つのプロファイル谷部が合流しているからである。このため、スピンドルコアから形成された丸みを帯びた縁部が互いに対向して設けられている。結合要素は、プロファイル谷部の合流部に隣接する要素側領域においても同様に、丸みを帯びるように、すなわちスピンドルコアの形状に対応して形成される。ここで、結合要素の直径は、この同様に丸みを帯びた対向し合う要素側領域の範囲において、最大で、スピンドルコアの直径に相当するか、又は、スピンドルコアの直径よりも小さい。すなわち、結合要素は、その直径がスピンドルコア直径に基づいて設計されているため、この要素側領域の範囲において、合流した各プロファイル谷部の開放された流れ断面に突出しないので、必然的に流れ断面は低減されず、このため流れも妨害されない。従来技術から公知のスクリュースピンドルポンプは、結合要素が、その寸法設計、より正確に言えば形状により、開放された流れ断面の中に径方向に長く突出してこれを大きく低減させているが、これとは異なり、本発明に係るスクリュースピンドルポンプの結合要素は、有意な流れ妨害を全く生じさせない。したがって、搬送される流体は、ほぼ妨害されずに軸方向に結合要素の傍を通過し、ポンプ運転に極めて有利に作用する。
【0012】
本発明の発展形態では、結合要素は円筒形のベース部を備え、ベース部から4つの要素側突起が横方向に突出し、隣接する2つの要素側突起が、1つの横方向の収容部の境界を規定していてもよい。これらの要素側突起は、形状結合の形状、つまり軸方向のスピンドル側の突起が係合する収容部を規定する、又は、その境界を規定するようにのみ機能する。したがって要素側突起は作動装置機能だけを有している。なぜなら、要素側突起によって、円周方向における回転不能な結合が実現されるからである。したがって、これらの要素側突起を流れ最適化させて細長く設計して、流れ断面を有意に小さくしないようにすることが可能である。ここで、駆動スピンドルの正面は2つのクロス研削により加工されていてもよく、凹部の横方向の境界を規定する突出した突起であって、記載したように両方のスピンドルプロファイルの軸方向の延長部である突起は、同じ形状に設計された対応する収容部への規定の係合形状を対応して有していてもよい。これによって、凹部の平坦な底面は、スピンドルコアによって形成された平面部分に加えて、横方向に多少拡大される。この領域では、軸方向に見て、要素側突起がこの拡大された領域を覆っている。
【0013】
結合要素において収容部がベース部まで延びている場合が、都合がよい。ベース部には、モータ側の駆動スピンドル用の挿入収容部が設けられている。挿入収容部は、例えば、断面が細長い矩形の挿入収容部として実施されている。最終的に結合要素には、モータ側の駆動シャフトが挿入収容部に係合することにより駆動シャフトに回転不能に接続すること、及び、結合要素と駆動スピンドルとの回転不能な接続を実現することという課題が与えられているだけなので、各収容部は、円筒形のベース部の比較的奥まで延びていることが可能である。このため、ベース部から突出する、作動装置のような要素側突起を、対応して短い寸法で形成することが可能である。
【0014】
要素側突起自体は、三角形の形状を有し、その自由端に向かってテーパ状であることが、都合がよく、つまり、全体として極めて細長く比較的短く形成されている。
【0015】
この場合、要素側突起の厚みは、その自由端に向かって減少していてもよい。したがって結合要素は、材料に関して可能な限り低減される。
【0016】
挿入収容部自体は、四角形の形状を有していることが好ましい。この場合、挿入収容部は、長方形、つまり幾分細長い形状を有していてもよく、挿入収容部の長い軸線が2つの丸みを帯びて形成された要素側領域の間を延び、挿入収容部の短い軸線が2つの収容部の間を延びている。この構成により、極めてコンパクトな小型サイズの結合要素の構成が可能になる。このように長方形の挿入収容部を調整することにより、結合要素のいわばV字形状の2つの収容部を、円筒形のベース部の比較的奥まで引き延ばすことが可能になるからである。収容部は、挿入収容部の直前で終端する。したがって記載したように、最終的には、結合要素側の要素側突起を短く構成することが可能になる。
【0017】
結合要素自体は、プラスチックから構成されていてもよく、つまり、所望の機械的及び物理的特性、例えば硬度や温度耐性等を有するプラスチックから対応して射出工程において製造されたプラスチック部材から構成されていてもよい。代替的に、結合要素は、金属、例えばアルミニウム又は鋼から構成されていてもよい。
【0018】
記載したように、通常、スクリュースピンドルポンプは駆動モータをさらに備える、又は、スクリュースピンドルポンプにこのような駆動モータが固定されており、駆動モータは軸方向に外側ハウジングに設置され、その駆動シャフトが必然的に軸方向に駆動スピンドルの長手軸線に揃えられる。なぜなら、記載したように、駆動シャフトは、駆動スピンドルの長手軸線に芯揃えされた結合要素の挿入収容部に係合するからである。スクリュースピンドルポンプの機能原理は、流体が軸方向に搬送されること、つまりスピンドルパッケージから軸方向に出て結合要素を通過することに関する。結合要素は、実施されるように、その本発明に係る形状により、流れ断面を全く又はほとんど低減しない。モータ側の駆動シャフトは、通常、同じく円筒形の断面を有している。このシャフトの端部には、対応する挿入形状、つまり例えば同じく四角形、より正確に言えば長方形の係合ピンが形成されている。搬送された流体が軸方向にスピンドルパッケージから出るので、流体は、記載したように結合要素の傍を流れ、その後必然的に、駆動シャフトにおいても少なくとも結合要素への結合部領域を通過する。ここで、結合要素から駆動シャフトへの移行部においても流れ妨害が生じないようにするために、本発明の有利な一発展形態では、駆動モータであって、駆動モータの円筒形の駆動シャフトの直径が、最大で、円筒形のスピンドルコアの直径に相当する駆動モータが設けられている。すなわちここでも直径が調節されているので、駆動スピンドル断面が、径方向に見て、駆動スピンドルの流れ断面に係合しないように、かつ、この流れ断面をいわばその後のスピンドル側の出口において低減しないようにすることが確保される。すなわち、結合要素の駆動スピンドルへの移行領域においても、スピンドルコア直径に関して、段差部、より正確に言えば流れ妨害物が存在しないので、ほぼ妨害の無い軸方向の流れが実現される。この軸方向の排出は、通常、スクリュースピンドルポンプが乾式メータであるか、又は、湿式メータとして実施されているかに関わらず行われる。乾式メータの場合、スピンドルパッケージから搬送された容積は、スピンドルパッケージから出た後、駆動モータを冷却するために駆動モータを循環することなく、いわば直接ポンプ出口に流れ、湿式メータの場合、搬送された流体の一部がモータハウジングに流入して、そこの部材を冷却し再びポンプハウジング又は外側ハウジングに循環する。駆動シャフトの直径は、駆動スピンドルのスピンドルコア直径よりも小さくてもよく、結合要素の円筒形のベース部の直径に相当する大きさであってもよい。
【0019】
記載したように、スクリュースピンドルポンプは、1つの駆動スピンドルとこの側方に配置された1つだけの走行スピンドルとを備える2スピンドルポンプであり得る。代替的に、スクリュースピンドルポンプは、1つの中央に配置された駆動スピンドルとその左右に配置され、駆動スピンドルに噛み合う2つの走行スピンドルとを含む3スピンドルポンプであり得る。
【0020】
スクリュースピンドルポンプ自体に加えて、本発明はさらに、このようなスクリュースピンドルポンプの、自動車において作動液を搬送するための使用に関する。作動液とは、燃料、又は、例えば牽引用蓄電池又は駆動用蓄電池を冷却するための冷却液といった他の流体、又は、例えばガラス洗浄液等といった他の実用液体であり得る。他の陸上車、又は、例えば飛行機若しくはドローンといった航空機においても、このようなスクリュースピンドルポンプを使用可能であり、その適用可能例は限定されない。
【0021】
しかしながら、具体的には、スクリュースピンドルポンプは、エネルギー貯蔵装置の冷却に用する冷媒を搬送するための冷媒ポンプとして使用される。冷媒とは任意の冷媒であってよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明のさらなる利点及び詳細を、以下に記載の実施形態に基づき、かつ、添付の図面を参照することにより説明する。
図1】本発明に係る、駆動スピンドル及び2つの走行スピンドルを備えるスクリュースピンドルポンプの原理を説明するための断面図である。
図2】駆動スピンドルと、凹部に挿入されていない結合要素と、を示す分解図である。
図3図2の構成における、スピンドルコア及びベース部の関連する直径を示す図である。
図4】結合要素を収容する凹部を示す、駆動スピンドルの正面の上面図である。
図5】結合要素が設置された図4の構成を示す上面図である。
図6図5の構成を示す斜視図である。
図7】駆動モータの駆動シャフトの原理を説明するための、スクリュースピンドルポンプの一部を示す切断した分解図である。
図8】取り付けられた状態の図7の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明に係るスクリュースピンドルポンプ1を示す図である。スクリュースピンドルポンプ1は、軸方向に配置された入口パイプ3と、径方向に配置された出口パイプ4とを備える外側ハウジング2を含む。ポンプハウジングとも呼ぶことが可能な外側ハウジング2の中には、スピンドルハウジング5が配置されており、スピンドルハウジング5の中には、図示される実施形態では3つのスピンドル、つまり中央に配置された駆動スピンドル6と駆動スピンドル6の両側に配置された2つの走行スピンドル7と、が互いに交差した対応するスピンドルホール内に収容されている。スピンドル6及び7はそれぞれ、互いに係合し合う、つまり互いに噛み合うスピンドルプロファイルを有している。
【0024】
さらに、ここでは原理的にのみ示される駆動モータ8が設けられている。駆動モータ8は、乾式又は湿式に動作する駆動モータであり得る。駆動モータ8は、ここでは典型例としてのみ示される駆動シャフト9を有している。駆動シャフト9は、結合要素10によって、回転不能に駆動スピンドル6に接続されている。すなわち、駆動スピンドル6は、動的に、駆動モータ8によって駆動される。駆動スピンドル6の回転は、スピンドルプロファイルの係合によって必然的に、両方の走行スピンドル7の回転にもつながる。互いに係合し合うスピンドルプロファイル及びスピンドルの回転によって、対応する搬送容積が軸方向に移動され、より正確に言えば押し流され、これによって公知の方法で流体搬送が行われる。流体は、入口パイプ3を介して軸方向に吸引され、スピンドルパッケージに沿って搬送され、スピンドルパッケージのモータ側端部において流出する。ここから流体は、対応する流れ形状によって出口パイプ4に流れる。
【0025】
図2は、分解図の形で、駆動スピンドル6及び結合要素10を示す拡大斜視図である。金属又はプラスチックから成る駆動スピンドル6は、断面が円筒形のスピンドルコア11を有している。このスピンドルコア11の周りを2つのスピンドルプロファイル12が延び、対応するプロファイル谷部13を形成している。軸方向の一端部において、駆動スピンドル6は凹部14を有している。凹部14は、平坦な底面15によって軸方向に境界が定められ、2つの突起16によって横方向に境界が定められている。これらの両突起16は、いわば底面15に達するスピンドルプロファイル12の延長部に形成される。突起16は、後で図4に関連してより詳細に説明するように材料除去により加工され、これによって、全体として1つの底面15が形成される。底面15は、一方では部分的にスピンドルコア11によって形成され、他方では突起16の機械処理に基づいて、これに隣接した底部によって形成されるが、これについては後でより詳細に説明する。
【0026】
同じく金属又はプラスチックから成る結合要素10は、板状に形成されており、つまり規定の最大厚みを有している。結合要素10は、互いに対向し合い丸みを帯びて形成された2つの要素側領域18を備える円筒形のベース部17を含む。さらに、図示される例4では、横方向に突出した要素側突起19がベース部17に設けられている。要素側突起19は、その間にそれぞれV字形状の収容部20を規定する。結合要素10が凹部14に挿入されると、取付位置において、収容部20に突起16が係合する。
【0027】
図2及び図3に示されるように、底面15は、少なくとも部分的に円筒形のスピンドルコア11によって形成及び縁どられている。この丸みを帯びた、スピンドルコア11の円筒形状から成る縁部は、各プロファイル谷部13の合流部に形成される。なぜなら、プロファイル谷部はスピンドルコア11によって規定されるからである。スピンドルコア11は、図3に示されるコア直径Dを有している。
【0028】
記載したように、結合要素10も板状かつ円筒形のベース部17を有している。ベース部17は、同じく図3に示されるベース部直径Dを有している。結合要素10の寸法、より正確に言えば形状の設計は、ベース部17の直径がスピンドルコアの直径以下になるように、したがってD≦Dとなるように選択される。すなわち、取付位置において、ベース部直径Dを有する丸みを帯びた要素側領域18は、必然的に、各プロファイル谷部13の流れ断面又は合流断面の中に突出しない。したがって、少なくとも丸みを帯びた要素側領域18の範囲においては、結合要素10によって流れ妨害は生じない。
【0029】
図4は、凹部14を示す、駆動スピンドル6の正面の上面図である。そこに合流した2つのプロファイル谷部13と、スピンドルコアとが示されている。スピンドルコアは、互いに対向し合う縁部21における底面15の丸みを帯びた縁部を規定する。
【0030】
この正面は、対応するクロス研削によって機械により加工されており、このため一方では、スピンドルコア面による底面15が拡大される。他方では、V字形状の2つの接触面22を備える突起16の特定の形状結合又は係合形状が形成され、突起16は、これらの接触面22で、結合要素10の対応する接触面に平面状に当接する、より正確に言えば細長い隙間によって狭い間隔で離間された状態で配置される。結合要素10は、点線で示されている。
【0031】
クロス研削の形成により、底面15の4つの側方拡大部分が形成され、図4に明示するような、いわばX形状が形成される。
【0032】
次に、この凹部14に結合要素10を挿入する。図5及び図6は、対応する上面図(図5)及び斜視図(図6)を示すものである。ベース部直径Dが最大でコア直径Dに相当するので、結合要素10の丸みを帯びた領域18は、図5及び図6に示されるように、スピンドルコア11によって規定される流れ断面の中には突出しない。各要素側突起19は、横方向に開口した2つのV字形状の収容部20の境界を規定する。収容部20は、2つの接触面23によって規定される。収容部20は、ベース部17の中に延びており、挿入収容部24の直前で終端している。挿入収容部24は断面が四角形又は長方形であり、対応する形状に形成された駆動シャフト9の係合ピンを収容するように機能する。図5及び図6の取付位置では、収容部20は、両方の突起16を、いわば形状結合して、より正確に言えば形状適合させて収容する。面22及び面23の当接及び各V字形状の係合により、回転時に時計回りだけでなく反時計回りにおいても回転不能な接続が提供される。
【0033】
要素側突起19は、記載したようにベース部17から延びており、ここでも、いわばX形状が形成される。これは、凹部、より正確に言えば底面15のXに似た形状に対応する。要素側突起19も結局、正面において各プロファイル谷部13の合流断面には突出しないので、結合要素10は、流体の流れを全く又はほとんど妨害しない。図5の右上及び左下に示される要素側突起19だけがわずかに流れ断面に突出するが、その妨害作用は、極わずかである。
【0034】
図5及び図6に示されるように、要素側突起19は、その自由端に向かってテーパ状になっており、その厚みもその自由端に向かって低減している。対応する傾斜面又は面取り部が、すなわち両面に形成されているので、逆の向きに取り付けることも容易に可能である。
【0035】
図5が示すように、軸方向に見て、結合要素10は、ほぼ完全に底面15に載っており、より正確に言えばこれを軸方向に覆っている。図5の右上に示される要素側突起19及び図5の左下に示される要素側突起19だけが、わずかに径方向に底面15を超えて流れ断面の中に突出している。しかしながら、この係合又はこの断面の重複はわずかであるので、流れを妨害する作用は、ほとんど無視できる程度である。
【0036】
図7は、2つのスピンドルだけ、すなわち1つの駆動スピンドル6と1つの走行スピンドル7だけを備えるスクリュースピンドルポンプの内側ハウジング5を示す分解図であり、先の図に示した3つのスピンドルの実施形態と比較するためのものである。これは、本発明に係る結合部が、3スピンドルだけでなく2スピンドルのスクリュースピンドルポンプ1にも装着可能であることを示すためのものである。
【0037】
図7の分解図では、駆動スピンドル6の軸方向端部において、上述の凹部と同一に実施された凹部14が形成されており、同一の結合要素10がこの凹部14に挿入される。さらに、駆動モータの駆動シャフト9が原理的に示されている。駆動シャフト9は、挿入収容部24の中に形状結合して係合する挿入ピン25を端部に備えている。図8に示されるような取付位置では、挿入ピン25が挿入収容部24に係合すると同時に、結合要素10は凹部14に設置される。したがって駆動シャフト9の回転により、必然的に、結合要素10によって結合された状態で、駆動シャフト6が回転し、これによって走行スピンドル7も回転するので、ポンプは流体を搬送することができる。突起16及び収容部20の形状、及び、対応する接触面による各V字形状の構成により、駆動シャフト9、したがって駆動スピンドル6は、時計回りつまり搬送方向だけでなく、必要に応じて反時計回りにも回転が可能となる。なぜなら、両方の回転方向において回転不能な結合が提供されているからである。
【0038】
図8にさらに示すように、駆動シャフト9の直径(図8ではDとして示されている)は、スピンドルコア11のコア直径Dよりも小さい。直径Dは、実質的に、結合要素10のベース部直径Dに相当する。これは図8に明示されている。したがって、これに基づき、結合要素10の駆動シャフト9への移行部においても流れ妨害を示す段差部が形成されない。段差部の形成は、直径Dがベース部直径Dよりも大きい場合に起こり得る。すなわち、最終的に、スピンドルパッケージから軸方向に流出した流体は、上述のわずかに流れ断面に突出した2つの短い要素側突起19を除いて、実質的に全く流れ妨害に曝されない。また、導入部分に記載した従来から公知の結合装置とは異なり、流体は完全に妨害されずに流れることが可能である。
【0039】
このようなスクリュースピンドルポンプ1は、2つのスピンドルを備えるポンプであるか又は3つのスピンドルを備えるポンプであるかに関わらず、様々な流体を搬送するために使用可能である。好ましくは、スクリュースピンドルポンプ1は、自動車の範囲において使用され、そこで、燃料ポンプとして使用される、又は、他の作用液、具体的には冷媒用の搬送ポンプとして、自動車のエネルギー貯蔵装置を冷却するために使用される。エネルギー貯蔵装置とは、電気自動車の大容量の牽引力貯蔵装置である。これはつまり冷媒ポンプである。当然ながら他の利用目的も想定可能であり、例えば、自動車のガラス洗浄に使用される洗浄液用の搬送ポンプや、類似のものとしての使用も想定可能である。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8