(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23Q 1/01 20060101AFI20240319BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
B23Q1/01 H
B23Q11/10 E
B23Q1/01 G
(21)【出願番号】P 2022503754
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2021007416
(87)【国際公開番号】W WO2021172528
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2020031885
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】遠山 雄太
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-007756(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104801986(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104802038(CN,A)
【文献】特開平11-090748(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0193669(US,A1)
【文献】特開2014-028414(JP,A)
【文献】特開2007-185720(JP,A)
【文献】特開2005-034916(JP,A)
【文献】米国特許第10610989(US,B1)
【文献】国際公開第2004/067221(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 1/00-25/06
B23Q 1/00-1/76
B23Q 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドに対して第1方向に相対移動するサドルと、前記サドルに対して前記第1方向と交差する第2方向に相対移動するテーブルと、前記テーブルに対して前記第1方向および前記第2方向と交差する第3方向に相対移動する主軸頭と、前記主軸頭を支持するコラムと、を有する工作機械であって、
前記ベッドの設置面上に設けられ、前記サドルを前記第1方向に案内する案内レールが設置される第1設置部と、前記案内レールの一端側に配置され、前記コラムが設置される第2設置部とを有する台座と、
前記ベッドの設置面に設けられ、前記第1設置部から垂れる液体を、前記第1設置部における前記第2方向の側壁の外側を経由して前記第2設置部側に流す流路と、
を備え、
前記第2設置部は、前記第1設置部における前記第2方向の側壁よりも突出する突出部を有し、
前記突出部は、上下方向の寸法が減じることなく前記第2方向に延びて前記ベッドに接続され、
前記突出部には、前記流路が通る貫通孔が形成され
、
前記コラムの側部は、前記突出部の突出端上に位置する、工作機械。
【請求項2】
請求項1に記載の工作機械であって、
前記突出部は、前記ベッドにおける前記第2方向の側壁の壁面と同じ面上の壁面を有する、工作機械。
【請求項3】
請求項1または2に記載の工作機械であって、
前記ベッドの設置面から前記第2設置部の設置面までの高さは、前記ベッドの設置面から前記第1設置部の設置面までの高さよりも高い、工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具を用いて加工対象物を加工する工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第5638112号公報には、ベッドに対して相対移動するサドルと、サドルに対して相対移動するテーブルと、テーブルに対して相対移動する主軸頭(主軸)と、主軸頭を支持するコラムとを有する工作機械が開示されている。この工作機械では、ベッドの設置面から突出する台座上にコラムが設置され、当該台座とコラムとがボルトにより接合されている(
図2および
図4等参照)。
【発明の概要】
【0003】
しかし、特許第5638112号公報の工作機械では、台座とコラムとの接合部分が台座よりもベッド側にはみ出ているため、コラムが設置されている台座の剛性が低下することが懸念される。
【0004】
そこで、本発明は、剛性を高め得る工作機械を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の態様は、
ベッドに対して第1方向に相対移動するサドルと、前記サドルに対して前記第1方向と交差する第2方向に相対移動するテーブルと、前記テーブルに対して前記第1方向および前記第2方向と交差する第3方向に相対移動する主軸頭と、前記主軸頭を支持するコラムと、を有する工作機械であって、
前記ベッドの設置面上に設けられ、前記サドルを前記第1方向に案内する案内レールが設置される第1設置部と、前記案内レールの一端側に配置され、前記コラムが設置される第2設置部とを有する台座と、
前記ベッドの設置面に設けられ、前記第1設置部から垂れる液体を、前記第1設置部における前記第2方向の側壁の外側を経由して前記第2設置部側に流す流路と、
を備え、
前記第2設置部は、前記第1設置部における前記第2方向の側壁よりも突出する突出部を有し、
前記突出部には、前記流路が通る貫通孔が形成される。
【0006】
本発明の態様によれば、第2設置部の突出部が流路の両側からコラムを支持することができ、当該コラムが設置されている台座の剛性を高めることができる。したがって、工作機械の剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の工作機械の構成を示す概略図である。
【
図3】上方から見たベッドおよび台座を示す図である。
【
図4】側方から見たベッドおよび台座を示す図である。
【
図5】背面側から見たベッドおよび台座を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明について、好適な実施形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0009】
図1は、実施形態の工作機械10の構成を示す概略図である。工作機械10は、工具12を用いて、加工対象物を加工するものである。工作機械10は、ベッド14、サドル16、テーブル18、主軸頭20およびコラム22を有する。
【0010】
工作機械10は、主軸頭20の主軸26を回転させた状態で、当該主軸26の先端部に取り付けられる工具12を変位させることで、テーブル18に固定された加工対象物を加工する。工作機械10は、工具12を変位させる場合、加工プログラムにしたがって、ベッド14に対して第1方向にサドル16を相対移動し、サドル16に対して第2方向にテーブル18を相対移動し、テーブル18に対して第3方向に主軸頭20を相対移動する。
【0011】
第1方向は、工作機械10で定義される機械座標系のX軸に対応するX方向とする。X方向の順方向(+X方向)は前方向(前側)とし、当該順方向とは逆の逆方向(-X方向)は後方向(後側)とする。
【0012】
第2方向は、第1方向に対して面内で交差する方向であり、工作機械10で定義される機械座標系のY軸に対応するY方向とする。Y方向の順方向(+Y方向)は右方向(右側)とし、当該順方向とは逆の逆方向(-Y方向)は左方向(左側)とする。
【0013】
第3方向は、第1方向および第2方向の各々に交差する方向であり、工作機械10で定義される機械座標系のZ軸に対応するZ方向とする。Z方向の順方向(+Z方向)は上方向(上側)とし、当該順方向とは逆の逆方向(-Z方向)は下方向(下側)とする。なお、下方向は、重力が働く方向である。
【0014】
ベッド14は、工作機械10の土台となる部材である。ベッド14は、地面や床等の基礎上に設けられる。ベッド14の基礎側とは逆側の面は、物を設置するための設置面14Fである。
【0015】
サドル16は、前後方向(X方向)にサドル16を案内する案内レール28に対して移動可能に連結される。案内レール28は、ベッド14の設置面14F上に設けられた台座30の上面に設置され、前後方向に沿って延びている。案内レール28の数は1つであってもよく、複数であってもよい。案内レール28の数が複数である場合、複数の案内レール28は互いに間隔をあけて配置される。本実施形態では、
図1に示すように、一対の案内レール28が台座30の上面に設置されているものとする。
【0016】
サドル16は、工作機械10の数値制御装置に制御されるサドル駆動用のモータ(図示せず)の回転に応じて案内レール28を移動することで、ベッド14に対して前後方向に相対移動する。なお、サドル駆動用のモータが正回転(または負回転)した場合、サドル16は前方向に相対移動する。一方、サドル駆動用のモータが負回転(または正回転)した場合、サドル16は後方向に相対移動する。
【0017】
テーブル18は、左右方向(Y方向)にテーブル18を案内する案内レール32に対して移動可能に連結される。案内レール32は、サドル16の上面に設置され、左右方向に沿って延びている。案内レール32の数は1つであってもよく、複数であってもよい。案内レール32の数が複数である場合、複数の案内レール32は互いに間隔をあけて配置される。本実施形態では、
図1に示すように、一対の案内レール32がサドル16の上面に設置されているものとする。
【0018】
テーブル18は、工作機械10の数値制御装置に制御されるテーブル駆動用のモータ(図示せず)の回転に応じて案内レール32を移動することで、サドル16に対して左右方向に相対移動する。なお、テーブル駆動用のモータが正回転(または負回転)した場合、テーブル18は右方向に相対移動する。一方、テーブル駆動用のモータが負回転(または正回転)した場合、テーブル18は左方向に相対移動する。
【0019】
主軸頭20は、上下方向(Z方向)に主軸頭20を案内する案内レール34に対して移動可能に連結される。案内レール34は、コラム22の前面(主軸頭20側の面)に設置され、上下方向に沿って延びている。案内レール34の数は1つであってもよく、複数であってもよい。案内レール34の数が複数である場合、複数の案内レール34は互いに間隔をあけて配置される。本実施形態では、
図1に示すように、一対の案内レール34がコラム22の前面に設置されているものとする。
【0020】
主軸頭20は、主軸26と、主軸26が挿通されるハウジング36と、ハウジング36に対して主軸26を回転可能に支持する軸受(図示せず)とを有する。主軸26は、主軸頭20の下側のテーブル18に向かって延びており、工作機械10の数値制御装置に制御される主軸駆動用のモータ(図示せず)の回転に応じて回転する。主軸26の回転に連動して、当該主軸26の先端部に取り付けられた工具12が回転する。
【0021】
ハウジング36は、上下方向(Z方向)に延びる一対の案内レール34および一対の駆動軸38に対して移動可能に連結される。一対の駆動軸38は、主軸頭20が上下方向に相対移動するためのボールネジであり、主軸頭駆動用のモータ40に連動して回転する。モータ40は、コラム22に固定された支持部材42に取り付けられる。
【0022】
ハウジング36は、モータ40に連動する駆動軸38の回転に応じて、当該駆動軸38に螺合するナット(図示せず)を通じて駆動軸38を移動するとともに、案内レール34を移動する。これにより、ハウジング36に対して回転可能に支持される主軸26が上下方向に移動する。つまり、主軸頭20は、モータ40の回転に応じて案内レール34を移動することで、テーブル18に対して上下方向に相対移動する。なお、モータ40が正回転(または負回転)した場合、主軸頭20は上方向に相対移動する。一方、モータ40が負回転(または正回転)した場合、主軸頭20は下方向に相対移動する。
【0023】
コラム22は、主軸頭20を支持するものである。コラム22は、台座30に設置されている。コラム22が台座30に設置されていることで、コラム22がベッド14の設置面14F上に設置されている場合に比べて、コラム22の高さ(上下方向の長さ)が短くなる。したがって、コラム22と台座30との接合部分に加わる負荷を軽減することができる。
【0024】
次に、ベッド14および台座30に関して、
図2~
図5を用いて更に詳しく説明する。台座30は、第1設置部50と第2設置部52とを有する。第1設置部50は、台座30のうち、案内レール28が設置される部分であり、ベッド14の左右方向の概ね中央に配置される。第2設置部52は、台座30のうち、コラム22が設置される部分であり、第1設置部50に設置される案内レール28の一端側(後端側)に配置される。
【0025】
第2設置部52は、第1設置部50の左右方向における各々の側壁よりも突出する突出部52Xを有する。第1設置部50の右側の側壁よりも突出する突出部52Xは、ベッド14における右側の側壁の壁面と同じ面上の壁面を有する(
図2および
図5参照)。一方、第1設置部50の左側の側壁よりも突出する突出部52Xは、ベッド14における左側の側壁の壁面と同じ面上の壁面を有する(
図2および
図5参照)。これにより、左右方向の各突出部52Xの側壁がベッド14における左右方向の側壁の壁面よりも外側または内側に位置する場合に比べて、台座30の剛性を高めることができる。
【0026】
ベッド14の設置面14Fから第2設置部52の設置面F2までの高さH2は、ベッド14の設置面14Fから第1設置部50の設置面F1までの高さH1よりも高い(
図4参照)。これにより、第2設置部52の高さH2が第1設置部50の高さH1と同じである場合に比べて、コラム22の高さ(上下方向の長さ)が短くなる。したがって、コラム22と第2設置部52との接合部分に加わる負荷を軽減することができる。
【0027】
台座30が設けられるベッド14の設置面14Fには、第1設置部50から垂れる流体を流す流路54が設けられる。流体は、案内レール28とサドル16(
図1)の間に油軸受が形成される場合、第1設置部50から垂れる流体には油が含まれる。加工時に加工対象物に対して切削液が噴き付けられる場合、第1設置部50から垂れる流体には切削液が含まれる。
【0028】
流路54は、第1設置部50の左右方向における各々の側壁の外側を経由して第2設置部52側(後側)に流体を流す。流路54は、ベッド14の設置面14Fを前側から後側に向かって傾斜させたものであってもよく、ベッド14の設置面14Fに形成された溝であってもよく、当該溝に嵌合する部材であってもよい。なお、
図2~
図5の各々には、ベッド14の設置面14Fを前側から後側に向かって傾斜させた流路54が例示されている。
【0029】
ベッド14の設置面14Fを前側から後側に向かって傾斜させた流路54を採用する場合、ベッド14の設置面14Fの前側、左側および右側を囲う囲繞部56が形成される。囲繞部56は、ベッド14の設置面14Fの前側の縁に沿って設けられた前壁56Aと、当該設置面14Fの右側の縁に沿って設けられた右壁56Bと、当該設置面14Fの左側の縁に沿って設けられた左壁56Cとを有する。右壁56Bおよび左壁56Cの前端は前壁56Aと繋がり、当該右壁56Bおよび左壁56Cの後端は突出部52Xと繋がっている。
【0030】
左右方向の各突出部52Xには、流路54が通る貫通孔HLが形成されている(
図2、
図4および
図5参照)。これにより、第2設置部52の突出部52Xが流路54の両側からコラム22を支持することができ、当該コラム22が設置されている台座30の剛性を高めることができる。なお、貫通孔HLが前後方向に沿って突出部52Xを貫通している場合、例えば蛇行する場合等のように貫通孔HLが前後方向に沿って貫通していない場合に比べて、単位体積あたりの突出部52Xの占有量を大きくすることができる。したがって、貫通孔HLが前後方向に沿って突出部52Xを貫通している場合には、台座30の剛性をより高めることができる。
【0031】
〔発明〕
上記の実施形態から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0032】
本発明は、ベッド(14)に対して第1方向に相対移動するサドル(16)と、サドル(16)に対して第1方向と交差する第2方向に相対移動するテーブル(18)と、テーブル(18)に対して第1方向および第2方向と交差する第3方向に相対移動する主軸頭(20)と、主軸頭(20)を支持するコラム(22)と、を有する工作機械(10)である。工作機械(10)は、ベッド(14)の設置面(14F)上に設けられ、サドル(16)を第1方向に案内する案内レール(28)が設置される第1設置部(50)と、案内レール(28)の一端側に配置され、コラム(22)が設置される第2設置部(52)とを有する台座(30)と、ベッド(14)の設置面(14F)に設けられ、第1設置部(50)から垂れる液体を、第1設置部(50)における第2方向の側壁の外側を経由して第2設置部(52)側に流す流路(54)と、を備える。第2設置部(52)は、第1設置部(50)における第2方向の側壁よりも突出する突出部(52X)を有し、突出部(52X)には、流路(54)が通る貫通孔(HL)が形成される。
【0033】
これにより、第2設置部(52)の突出部(52X)が流路(54)の両側からコラム(22)を支持することができ、当該コラム(22)が設置されている台座(30)の剛性を高めることができる。したがって、工作機械(10)の剛性を高めることができる。
【0034】
突出部(52X)は、ベッド(14)における第2方向の側壁の壁面と同じ面上の壁面を有してもよい。これにより、突出部(52X)の第2方向の側壁がベッド(14)における左右方向の側壁の壁面よりも外側または内側に位置する場合に比べて、台座(30)の剛性を高めることができる。
【0035】
ベッド(14)の設置面(14F)から第2設置部(52)の設置面(F2)までの高さ(H2)は、ベッド(14)の設置面(14F)から第1設置部(50)の設置面(F1)までの高さ(H1)よりも高くてもよい。これにより、第2設置部(52)の高さ(H2)が第1設置部(50)の高さ(H1)と同じである場合に比べて、コラム(22)の高さを短くすることができる。したがって、コラム(22)と第2設置部(52)との接合部分に加わる負荷を軽減することができる。