(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】呼吸数を処理するシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/08 20060101AFI20240319BHJP
A61B 5/0535 20210101ALI20240319BHJP
G01R 23/15 20060101ALI20240319BHJP
G01R 23/16 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
A61B5/08
A61B5/0535
G01R23/15 Z
G01R23/16 Z
(21)【出願番号】P 2022507458
(86)(22)【出願日】2020-08-06
(86)【国際出願番号】 US2020045139
(87)【国際公開番号】W WO2021026315
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-05-31
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519422371
【氏名又は名称】ムラタ バイオス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】リッチ、カルロス エイ.
(72)【発明者】
【氏名】コフトゥン、ウラジミール ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】マザー、スコット トーマス
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0200035(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0289297(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0312075(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0083725(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0272474(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05-5/0538
A61B 5/06-5/22
A61B 5/24-5/398
G01R 23/15-23/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ又は複数のデータ処理装置によって実行されたときに、前記1つ又は複数のデータ処理装置に動作を実行させる命令を含むコンピュータプログラムで符号化された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体であって、前記動作は、
患者の胸腔端間のインピーダンスに対応した信号を受信することと、
雑音を減少させるとともにゼロベースラインを中心として前記信号を置く1つ又は複数のフィルタを使用して、前記信号をフィルタリングすることと、
閾値に基づいて前記フィルタリングされた信号の振幅を調整することと、
前記振幅調整された信号を成分信号であって、各々が周波数制限帯域を表す成分信号に分離することと、
前記成分信号のうちの1つの成分信号の部分位相転移を検出することと、
前記検出された部分位相転移に対応する時間における前記成分信号の振幅に基づいて、主な成分信号を前記成分信号から選択することと、
前記検出された部分位相転移に対応する前記時間における前記主な成分信号の周波数を決定することと、
前記決定された周波数に基づいて、前記患者の呼吸数を決定することと、を含む、非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項2】
前記振幅調整された信号を前記成分信号に分離することは、帯域通過フィルタのバンクを使用して前記信号をフィルタリングすることを含む、請求項1に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項3】
成分信号の前記部分位相転移を検出することは、前記成分信号の正方向ゼロ交差、負方向ゼロ交差、正ピーク、及び負ピークを検出することを含む、請求項1に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項4】
前記閾値に基づいて前記フィルタリングされた信号の前記振幅を調整することは、
前記フィルタリングされた信号の平均振幅に基づいて前記閾値を決定することと、
前記閾値に基づいて、前記フィルタリングされた信号をクリップすることと、を含む、請求項1に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項5】
前記主な成分信号を選択することは、
前記成分信号の前記検出された部分位相転移時に、前記検出された部分位相転移時の前記成分信号に対応する前記時間、前記振幅、及び位相を表す値を含むデータオブジェクトを生成することと、
前記検出された部分位相転移の前記時間に対応する前記成分信号用に生成されたデータオブジェクトに含まれる振幅値に基づいて、最高振幅を有する成分信号を前記主な成分信号として選択することと、を含む、請求項1に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項6】
前記主な成分信号の前記周波数を決定することは、部分位相転移間の時間差及び位相差を決定することに基づく、請求項1に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項7】
前記患者の呼吸数を決定することは、ある期間にわたる平均呼吸数を決定することを含む、請求項1に記載の非一時的コンピュータ可読記憶媒体。
【請求項8】
患者の胸腔端間のインピーダンスに対応した信号を受信することと、
雑音を減少させるとともにゼロベースラインを中心として前記信号を置く1つ又は複数のフィルタを使用して、前記信号をフィルタリングすることと、
閾値に基づいて前記フィルタリングされた信号の振幅を調整することと、
前記振幅調整された信号を成分信号であって、各々が周波数制限帯域を表す成分信号に分離することと、
前記成分信号のうちの1つの成分信号の部分位相転移を検出することと、
前記検出された部分位相転移に対応する時間における前記成分信号の振幅に基づいて、主な成分信号を前記成分信号から選択することと、
前記検出された部分位相転移に対応する前記時間における前記主な成分信号の周波数を決定することと、
前記決定された周波数に基づいて、前記患者の呼吸数を決定することと、を含む、コンピュータ実装方法。
【請求項9】
前記振幅調整された信号を前記成分信号に分離することは、帯域通過フィルタのバンクを使用して前記信号をフィルタリングすることを含む、請求項8に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項10】
成分信号の前記部分位相転移を検出することは、前記成分信号の正方向ゼロ交差、負方向ゼロ交差、正ピーク、及び負ピークを検出することを含む、請求項8に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項11】
前記閾値に基づいて前記フィルタリングされた信号の前記振幅を調整することは、
前記フィルタリングされた信号の平均振幅に基づいて前記閾値を決定することと、
前記閾値に基づいて、前記フィルタリングされた信号をクリップすることと、を含む、請求項8に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項12】
前記主な成分信号を選択することは、
前記成分信号の前記検出された部分位相転移時に、前記検出された部分位相転移時の前記成分信号に対応する前記時間、前記振幅、及び位相を表す値を含むデータオブジェクトを生成することと、
前記検出された部分位相転移の前記時間に対応する前記成分信号用に生成されたデータオブジェクトに含まれる振幅値に基づいて、最高振幅を有する成分信号を前記主な成分信号として選択することと、を含む、請求項8に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項13】
前記主な成分信号の前記周波数を決定することは、部分位相転移間の時間差及び位相差を決定することに基づく、請求項8に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項14】
前記患者の呼吸数を決定することは、ある期間にわたる平均呼吸数を決定することを含む、請求項8に記載のコンピュータ実装方法。
【請求項15】
患者の胸腔端間のインピーダンスを検出するように構成されたセンサと、
表示装置と、
前記センサ及び前記表示装置に連結された1つ又は複数のデータ処理装置と、
前記1つ又は複数のデータ処理装置によって実行されたときに、前記1つ又は複数のデータ処理装置に動作を実行させる命令を含むコンピュータプログラムで符号化された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体と、を含み、前記動作は、
患者の胸腔端間のインピーダンスに対応した信号を受信することと、
雑音を減少させるとともにゼロベースラインを中心として前記信号を置く1つ又は複数のフィルタを使用して、前記信号をフィルタリングすることと、
閾値に基づいて前記フィルタリングされた信号の振幅を調整することと、
前記振幅調整された信号を成分信号であって、各々が周波数制限帯域を表す成分信号に分離することと、
前記成分信号のうちの1つの成分信号の部分位相転移を検出することと、
前記検出された部分位相転移に対応する時間における前記成分信号の振幅に基づいて、主な成分信号を前記成分信号から選択することと、
前記検出された部分位相転移に対応する前記時間における前記主な成分信号の周波数を決定することと、
前記決定された周波数に基づいて、前記患者の呼吸数を決定することと、を含む、システム。
【請求項16】
前記振幅調整された信号を前記成分信号に分離することは、帯域通過フィルタのバンクを使用して前記信号をフィルタリングすることを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
成分信号の前記部分位相転移を検出することは、前記成分信号の正方向ゼロ交差、負方向ゼロ交差、正ピーク、及び負ピークを検出することを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記閾値に基づいて前記フィルタリングされた信号の前記振幅を調整することは、
前記フィルタリングされた信号の平均振幅に基づいて前記閾値を決定することと、
前記閾値に基づいて、前記フィルタリングされた信号をクリップすることと、を含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
前記主な成分信号を選択することは、
前記成分信号の前記検出された部分位相転移時に、前記検出された部分位相転移時の前記成分信号に対応する前記時間、前記振幅、及び位相を表す値を含むデータオブジェクトを生成することと、
前記検出された部分位相転移の前記時間に対応する前記成分信号用に生成されたデータオブジェクトに含まれる振幅値に基づいて、最高振幅を有する成分信号を前記主な成分信号として選択することと、を含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項20】
前記主な成分信号の前記周波数を決定することは、部分位相転移間の時間差及び位相差を決定することに基づく、請求項15に記載のシステム。
【請求項21】
前記患者の呼吸数を決定することは、ある期間にわたる平均呼吸数を決定することを含む、請求項15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、呼吸数処理に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸数(respiratory rate)は、呼吸が生じる率(rate)である。一般的に、呼吸数は、患者の安静時に測定され、1分当たりの呼吸で測定される。呼吸数は、発熱、病気、又は他の医学的状態とともに増加する場合があり、病気の患者の生理機能を監視するために広く使用されている。呼吸数は、他のバイタルサインとともに、生理機能の変化の識別を容易にするために測定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は、呼吸数処理に関係するシステム及び技術を記述する。記述されるシステム及び技術を使用することによって、センサから受信した生の連続インピーダンス信号において検出された周期変動から平均呼吸数を推定することができる。呼吸数処理は、インピーダンス信号の事前調整を行うことを含み、その後に、ウェーブレットバンク及び1/4位相(QP)領域周期性追跡を使用した率の推定が続く。信号事前調整は、帯域外アーチファクトの影響を低下させるとともに一般に信号対雑音比(SNR)を改善するためのプレフィルタリングを含み、その後に、信号スパイク及び信号振幅の過渡的な上昇を抑制するために、局所振幅統計の動的追跡による、フィルタリングされた信号の適応クリッピングが続く。信号振幅の局所的消失は、リード線が外れたことなどによる完全な信号消失により、又は息を止めること、若しくは無呼吸などによるインピーダンス変動の欠如から生じ得る。これらの状況下では、呼吸率(breath rate)を明確に定義することができない場合がある。したがって、追跡振幅統計(それ自体、フィルタリングされた信号の局所的振幅の推定)が、十分なレベルの呼吸率信号振幅を認定するためのベースとして使用される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、呼吸数処理に適用可能な信号分解及び解析技術の開示を含む、2006年2月23日に出願された「Apparatus for Signal Decomposition,Analysis and Reconstruction」と題する米国特許第7,702,502号明細書、2006年2月23日に出願された「System and Method for Signal Decomposition,Analysis and Reconstruction」と題する米国特許第7,706,992号明細書、2008年11月26日に出願された「Physiological Signal Processing to Determine a Cardiac Condition」と題する米国特許第8,086,304号明細書、並びに2014年3月17日に出願された「Method and Apparatus for Signal Decomposition,Analysis,Reconstruction and Tracking」と題する米国特許第9,530,425号明細書の全内容を参照により援用する。
【0005】
一般に、革新的な一態様では、システムは、患者の胸腔端間のインピーダンスを検出するように構成されたセンサと、表示装置と、センサ及び表示装置に連結された1つ又は複数のデータ処理装置と、コンピュータプログラムで符号化された非一時的コンピュータ可読記憶媒体とを含む。プログラムは、1つ又は複数のデータ処理装置によって実行されたときに、1つ又は複数のデータ処理装置に動作を行わせる命令を含む。動作は、患者の胸腔端間のインピーダンスに対応した信号を受信することと、雑音を減少させるとともにゼロベースラインを中心として信号を置く1つ又は複数のフィルタを使用して、信号をフィルタリングすることと、閾値に基づいて、フィルタリングされた信号の振幅を調整することと、振幅調整された信号を成分信号であって、各々が周波数制限帯域を表す成分信号に分離することと、成分信号のうちの1つの成分信号の部分位相転移を検出することと、検出された部分位相転移に対応する時間における成分信号の振幅に基づいて、主な成分信号を成分信号から選択することと、検出された部分位相転移に対応する時間における主な成分信号の周波数を決定することと、決定された周波数に基づいて、患者の呼吸数を決定することとを含む。振幅調整された信号を成分信号に分離することは、帯域通過(バンドパス)フィルタのバンクを使用して信号をフィルタリングすることを含んでもよい。成分信号の部分位相転移を検出することは、成分信号の正方向ゼロ交差、負方向ゼロ交差、正ピーク、及び負ピークを検出することを含んでもよい。閾値に基づいてフィルタリングされた信号の振幅を調整することは、フィルタリングされた信号の平均振幅に基づいて閾値を決定することと、閾値に基づいて、フィルタリングされた信号をクリップすることとを含んでもよい。主な成分信号を選択することは、成分信号の検出された部分位相転移時に、検出された部分位相転移時の成分信号に対応する時間、振幅、及び位相を表す値を含むデータオブジェクトを生成することと、検出された部分位相転移の時間に対応する成分信号用に生成されたデータオブジェクトに含まれる振幅値に基づいて、最高振幅を有する成分信号を主な成分信号として選択することとを含んでもよい。主な成分信号の周波数を決定することは、部分位相転移間の時間差及び位相差を決定することに基づいてもよい。患者の呼吸数を決定することは、ある期間にわたる平均呼吸数を決定することを含んでもよい。
【0006】
別の態様では、装置は、コンピュータプログラムで符号化された非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含む。プログラムは、1つ又は複数のデータ処理装置によって実行されたときに、1つ又は複数のデータ処理装置に動作を行わせる命令を含む。動作は、患者の胸腔端間のインピーダンスに対応した信号を受信することと、雑音を減少させるとともにゼロベースラインを中心として信号を置く1つ又は複数のフィルタを使用して、信号をフィルタリングすることと、閾値に基づいて、フィルタリングされた信号の振幅を調整することと、振幅調整された信号を成分信号であって、各々が周波数制限帯域を表す成分信号に分離することと、成分信号のうちの1つの成分信号の部分位相転移を検出することと、検出された部分位相転移に対応する時間における成分信号の振幅に基づいて、主な成分信号を成分信号から選択することと、検出された部分位相転移に対応する時間における主な成分信号の周波数を決定することと、決定された周波数に基づいて、患者の呼吸数を決定することとを含む。振幅調整された信号を成分信号に分離することは、帯域通過フィルタのバンクを使用して信号をフィルタリングすることを含んでもよい。成分信号の部分位相転移を検出することは、成分信号の正方向ゼロ交差、負方向ゼロ交差、正ピーク、及び負ピークを検出することを含んでもよい。閾値に基づいてフィルタリングされた信号の振幅を調整することは、フィルタリングされた信号の平均振幅に基づいて閾値を決定することと、閾値に基づいて、フィルタリングされた信号をクリップすることとを含んでもよい。主な成分信号を選択することは、成分信号の検出された部分位相転移時に、検出された部分位相転移時の成分信号に対応する時間、振幅、及び位相を表す値を含むデータオブジェクトを生成することと、検出された部分位相転移の時間に対応する成分信号用に生成されたデータオブジェクトに含まれる振幅値に基づいて、最高振幅を有する成分信号を主な成分信号として選択することとを含んでもよい。主な成分信号の周波数を決定することは、部分位相転移間の時間差及び位相差を決定することに基づいてもよい。患者の呼吸数を決定することは、ある期間にわたる平均呼吸数を決定することを含んでもよい。
【0007】
別の態様では、方法は、患者の胸腔端間のインピーダンスに対応した信号を受信することと、雑音を減少させるとともにゼロベースラインを中心として信号を置く1つ又は複数のフィルタを使用して、信号をフィルタリングすることと、閾値に基づいて、フィルタリングされた信号の振幅を調整することと、振幅調整された信号を成分信号であって、各々が周波数制限帯域を表す成分信号に分離することと、成分信号のうちの1つの成分信号の部分位相転移を検出することと、検出された部分位相転移に対応する時間における成分信号の振幅に基づいて、主な成分信号を成分信号から選択することと、検出された部分位相転移に対応する時間における主な成分信号の周波数を決定することと、決定された周波数に基づいて、患者の呼吸数を決定することとを含む。振幅調整された信号を成分信号に分離することは、帯域通過フィルタのバンクを使用して信号をフィルタリングすることを含んでもよい。成分信号の部分位相転移を検出することは、成分信号の正方向ゼロ交差、負方向ゼロ交差、正ピーク、及び負ピークを検出することを含んでもよい。閾値に基づいてフィルタリングされた信号の振幅を調整することは、フィルタリングされた信号の平均振幅に基づいて閾値を決定することと、閾値に基づいて、フィルタリングされた信号をクリップすることとを含んでもよい。主な成分信号を選択することは、成分信号の検出された部分位相転移時に、検出された部分位相転移時の成分信号に対応する時間、振幅、及び位相を表す値を含むデータオブジェクトを生成することと、検出された部分位相転移の時間に対応する成分信号用に生成されたデータオブジェクトに含まれる振幅値に基づいて、最高振幅を有する成分信号を主な成分信号として選択することとを含んでもよい。主な成分信号の周波数を決定することは、部分位相転移間の時間差及び位相差を決定することに基づいてもよい。患者の呼吸数を決定することは、ある期間にわたる平均呼吸数を決定することを含んでもよい。
【0008】
このようなシステム及び方法の様々な他の機能及び利点は、上述の詳細な説明及び請求項から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】呼吸数処理システムの一例を示すブロック図である。
【
図2A】呼吸数処理システムの解析ウェーブレットバンクの帯域に関するインパルス応答を示すプロットである。
【
図2B】呼吸数処理システムの解析ウェーブレットバンクの帯域に関するインパルス応答を示すプロットである。
【
図2C】呼吸数処理システムの解析ウェーブレットバンクの帯域に関するインパルス応答を示すプロットである。
【
図2D】解析ウェーブレットバンクの実数部に対する周波数応答を示すプロットである。
【
図3】4つの1/4位相に分割された1つの成分信号からの1サイクルを示す波形図である。
【
図4】呼吸数処理システムによって行われる動作の例を示すフローチャートである。
【
図5】表示デバイスと通信する患者着用センサを含む呼吸数処理システムの一例を示す。
【
図6】呼吸数処理システムを実装するために使用され得るコンピューティングシステムの一例を示すブロック図である。
【
図7】呼吸数処理システムを実装するために使用され得るホストシステムを描写するコンピューティングシステムの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
様々な図面における同様の参照番号及び名称は、同様の要素を示す。
図1は、呼吸数処理システム100の一例を示すブロック図である。システム100は、電子コンポーネント、例えば、呼吸数処理を容易にするハードウェア及び/又はソフトウェアを含む。いくつかの実施態様では、システム100の一部分が、ECG波形、心拍数、呼吸数、酸素飽和度、血圧、体温、及び脈拍数などの生理学的バイタルサインデータを継続的に収集することができる患者監視デバイスに含まれる。患者監視デバイスの例には、2015年10月22日に出願された「Patient Care and Health Information Management Systems and Methods」と題する米国特許出願公開第2015/0302539号明細書、及び2016年2月9日に出願された「Patient Worn Sensor Assembly」と題する米国特許出願公開第2016/0228060号明細書に記載されるような胸部センサ、並びに2018年1月25日に出願された「Sensor Connection Assembly for Integration with Garment」と題する米国特許出願公開第2018/0213859号明細書に記載されるセンサアセンブリなどの周辺デバイスと接続する他のセンサアセンブリが含まれ、これらの開示は、全体が参照により本明細書に援用される。いくつかの実施態様では、システム100の部分は、胸部センサ、指先プローブ、耳たぶプローブ、又は非観血式血圧(NIBF)バンドなどの1つ又は複数の周辺デバイスから受信した信号を使用して生理学的バイタルサインデータの解析及び表示を行う監視ステーションに含まれる。監視ステーションの例は、ベッドサイドモニタ及び中央サーバステーションを含み、これらも米国特許出願公開第2015/0302539号明細書に記載されている。
【0011】
システム100は、胸腔端間に高周波低振幅電流を注入し、電流注入から生じた電圧を測定し、注入された電流及び測定された電圧からインピーダンス(抵抗及び位相オフセットの大きさ)を導出するセンサ102を含む。電流は、肺が膨らむにつれて胸を流れにくくなるため、肺の体積が大きくなるにつれて抵抗が大きくなる。センサ102は、例えば、患者の胸に貼り付けることができる。
【0012】
センサ102からの生のインピーダンス信号は、高周波雑音及び低周波アーチファクトを含む場合があり、これらは比較的大きいが、大抵(例えば、生理学的限界及び慣習によれば、公称で5~60の1分当たりの呼吸数(BrPM)、又は0.0833Hz~1Hzの)呼吸率に関連する予想周波数帯域の外に存在する。したがって、ローパスフィルタ104及びハイパスフィルタ106をインピーダンス信号に適用することによって、アーチファクトを阻止することができる。
【0013】
生のインピーダンス信号は、50Hz及び60Hzの送電線EMI生成物とともに、通常1.5Hzを超える疑似雑音成分を含む高周波アーチファクトを含み得る。例えば、33.33…Hzのインピーダンス信号サンプルレートFs_impを有する実施形態の場合、それらのEMI生成物は、エイリアシングに関係した周波数折り重ね効果により、16.66…Hz及び6.66…Hzで生じる。これらのアーチファクトは、様々な段が信号通過帯域にマッチし、特にEMI生成物を阻止するように設計された、ローパスフィルタ104のカスケードを適用することによって、軽減することができる。ローパスフィルタ104は、計算効率の良いスケーリングされた整数カーネルを使用して実装することができる。米国特許第7,706,992号明細書に記載されるスケーリングされた整数カーネルは、スケールパラメータwp及び次数パラメータNiを有する伝達関数:
【0014】
【数1】
を用いて移動平均ローパスを行うことによって、効率的にローパス動作を実現することができる。フィルタカーネルのスケール及び次数の設定により、具体的な設計基準が満たされる。
【0015】
関心最高周波数、例えばこの場合、1.0Hzに設定された-6dBコーナ周波数を有するローパスを配置することによって、信号帯域幅をマッチさせることができる。スケールパラメータは、式w=round(Fs_imp*k6dBNul/F6dB)に従って設定されてもよく、式中、k6dBNulは、カーネルの第1のヌル周波数に対するコーナ周波数の比率を確立するために数値的に決定され、カーネルの次数Niに依存する。例えば、Ni=2の次数は、特にEMI阻止段と組み合わせて、許容できる遷移シャープネス及び帯域外阻止を提供するように決定されてもよく、そのため、k6dBNul=0.44295である。
【0016】
EMIアーチファクトは、式w=round(Fs_imp/Fnull)に従ってスケールパラメータを設定することによって実現される、カスケード接続された2つのフィルタカーネル(各フィルタカーネルが、2つのEMI周波数の一方にそれぞれ配置された第1の応答ヌルFnullを有する)を適用することによって軽減することができる。一次カーネルは、応答ヌルが、それらのヌル周波数で完全減衰を提供するので、EMI阻止に使用されてもよい。
【0017】
上記の導出に基づき、インピーダンス信号サンプリング周期Ts=30ミリ秒の場合、各ローパスフィルタ段のパラメータの例は、以下の通りである。
【0018】
【表1】
ハイパスフィルタ106は、ローパスフィルタリングされたインピーダンス信号に適用される。ハイパスフィルタ106は、生のインピーダンス値によって導入されるDC付近の大きなオフセットを除去し、それにより、信号は、ゼロベースラインを中心とし、より低い公称呼吸数バンドエッジ(12秒の呼吸間隔に対応した5BrPM又は0.0833Hz)より下で現実的な量と同等の低周波アーチファクトも阻止する。時間スケールのサイズを所与として、ハイパスフィルタ106がフィルタの固有の群遅延によるシステムのタイムラグを最小限に抑えるように最小位相応答が選ばれてもよい。再帰形式のIIRフィルタトポロジーの使用は、メモリ効率の良いフィルタアーキテクチャをもたらし得る。二次応答は、良好な安定性及びストップバンドにおける十分な阻止を提供するため、選ばれてもよい。ハイパスフィルタ106は、以下のアナログ領域伝達関数に従って指定される:
【0019】
【数2】
式中、ω
cは、コーナ周波数(ラジアン/秒単位)を制御し、Qは、コーナにおけるフィルタの共振を制御する。インパルス応答のリンギングを実質的に最小限に抑えつつ、通過帯域における応答平坦性及びコーナにおける応答シャープネスを最大にするために、Q=0.720の値が選ばれてもよい。Qのこの値の場合、式ω
c=2πk
Qf
cは、係数k
Q=1.325を用いて周波数f
cにおけるフィルタの-6dB点を設定する。
【0020】
このモデルは、形式:
a0yHP(n)=b0x(n)+b1x(n-1)+b2x(n-2)-a1yHP(n-1)-a2yHP(n-2)
の二次差分方程式を使用してデジタルに実装されてもよく、式中、x(n)及びyHP(n)はそれぞれ、サンプル時間nにおけるハイパスフィルタ106の信号の入力及び出力である。フィルタ応答は、係数ai及びbjによって決定される。双一次変換が、特に通過帯域及び遷移帯域において、アナログフィルタ応答の非常に近いマッチングを提供し得ることから、アナログモデルを近似するデジタルフィルタを作成するために、双一次変換が用いられてもよい。結果として生じるデジタルフィルタ係数の例は、以下の通りである。
【0021】
【表2】
ハイパスフィルタ106の出力は、呼吸数を推定するために使用される、フィルタリングされたインピーダンス信号s(n)である。フィルタリングされたインピーダンス信号s(n)は、呼吸に応答してインピーダンス波動(波)を示す明瞭なゼロを中心とした波形を提供するために、それ自体がディスプレイ118上に表示されてもよい。
【0022】
フィルタリングされたインピーダンス信号s(n)は、フィルタリングプロセスによって改善されるが、依然として、生のインピーダンス示度において観察されるステップ変化による時折のアーチファクトを含み得る。これらのステップ変化は、平均生インピーダンス値の百分率としてほどほどに小さいかもしれないが、それでもなお、呼吸による比較的小さなインピーダンス変動よりも1桁大きくなり得るため、観察される信号に対する比較的大きなスパイクとして上記のフィルタリング後に生じ得る。さらに、インピーダンス変動の振幅は、数個の呼吸サイクルの間、2又は3(以上)倍に、平均よりもはるかに大きくなり、振幅過渡現象がもたらされることが時折観察される。これは、例えば、会話中の休止の間に、又は呼吸の短い休止後に、深呼吸に関連して生じ得る。どちらの場合も、大きな過渡状態が、状況によっては、呼吸率推定プロセスにおいて解析ウェーブレットバンク110を過度に励磁する可能性があり、これは、かなりの時間(例えば、過渡現象のサイズに応じて数十秒以上)、呼吸率処理の不正確さ又は完全な消失をもたらし得る。
【0023】
これらのタイプの過渡現象は、実際には、何らかの形態の振幅制御によって軽減することができる。いくつかの実施態様では、これは、1)適応閾値を生成するために局所平均信号振幅の推定及び追跡を行い、次に、2)絶対偏位をゼロから何れの方向にも上記閾値に制限することによって信号をクリップする振幅処理ユニット108を用いた制御された信号クリッピングによって達成される。スパイク過渡現象は時間的に比較的短いため、このようなクリッピングは、それらのエネルギーを減少させ、結果として、解析ウェーブレットバンク110におけるそれらの励磁を軽減するように働く。また、クリッピングは、周期性情報を依然として保持しつつ、増加した振幅波の過剰な励磁電力を制限するため、振幅過渡現象全体を通して中断することなく呼吸率処理を継続することが可能になる。
【0024】
信号振幅推定は、一般に信号の定常振幅に従うが、過渡状態に関連する振幅の急な大きな上方変化に対して比較的反応が遅いクリッピング閾値を生成する。この閾値に基づくクリッパは、定常状態レベルに比較的速く回復しつつ、過渡現象の大部分をクリップする。
【0025】
いくつかの実施態様では、信号振幅追跡は、一般にロバスト性を有し、即時に効率的に動作する非線形平均化(NLA:nonlinear averaging)プロセスを用いて実現することができる。まず、生の振幅信号が、サンプルごとに、フィルタリングされたインピーダンス信号s(n)の絶対値を取得することによって生成され、それに対して、局所時間平均振幅推定を生成するために非線形再帰フィルタが適用される。NLAプロセスの基本ブロック演算は、入出力の観点から、以下の非線形差分方程式によって特徴付けられる:
y(n)=(1-an)x(n)+any(n-1)
式中、
サンプルインデックスnごとに、x(n)=瞬時/生信号振幅推定;
y(n)=信号のフィルタリングされた振幅推定;及び
【0026】
【0027】
NLAブロックは、インピーダンス信号のサンプルnごとに一度、出力yを更新する。現サンプル出力値y(n)は、前のサンプル出力値に減衰係数an(0<an<1)を掛けたものと、現サンプル入力値x(n)に相補係数(complementary coefficient)(1-an)を掛けたものとの和である。所与のフィードバック係数anに関して、NLAブロックは、DCで単位利得を有する一次フィードバックローパスフィルタの形をとる。そのため、出力y(n)は、一般に、振幅信号x(n)の局所平均と見なすことができ、この平均は、直近の過去の値にとって代わる。フィードバック係数anの値は、平均化の時間長さ、ひいては、anが単位元に近づくにつれて整定に時間がかかる、ステップ関数入力に応答した出力の整定時間を決定する。
【0028】
NLAブロックの過渡阻止作用は、anの値を入力値と出力値の関係に依存させることによって生じる。入力振幅値x(n)が平均振幅y(n)以上であるとき、フィードバック係数anは、上昇値arを取り、入力振幅が平均振幅を下回るとき、フィードバック係数anは、下降値afを取る。上昇係数を下降係数よりも単位元に近くすることによって、フィルタは、局所平均を上回る入力振幅に対して、よりゆっくりと応答するように作られるため、瞬時入力信号振幅の大幅な又は速い上昇に対する追跡感度が低下する。同様に、下降係数は、信号消失の検出を容易にするのに十分なほど短い整定時間のために設定される。定常状態下の信号振幅追跡の挙動は、一般に、上記2つの係数に対応した整定時間の平均に従う。
【0029】
z面へのs面極のインパルス不変マッピングにより、デジタルフィードバック係数anは、
【0030】
【数4】
に従って、一次アナログローパスフィルタの(秒単位で表現される)アナログ時定数τ
nに関係し、式中、T
sは、インピーダンス信号のサンプリング周期(同様に秒単位)である。したがって、フィルタ出力は、信号振幅のステップ変化後に、公称で約5・τ
n秒で整定することが予期できる。したがって、上昇及び下降フィードバック係数a
r,a
fは、秒の物理単位の対応する上昇及び下降時定数τ
r,τ
fにそれぞれ割り当てられる。
【0031】
上昇及び下降時定数の適切な設計は、大きな上方過渡現象の阻止、小さな上方振幅変動の過剰な阻止を行わない定常振幅状態中の円滑な追跡、及び信号消失に応答した迅速な下方追跡を最適化する。良好な振幅追跡性能は、前のブロックの出力yが次のブロックの入力xに結び付けられるように共に連結されたNLAブロックの3つの段のカスケードを使用して取得することができる。この場合、このチェーンの第1のブロックの入力xは、フィルタリングされたインピーダンス信号s(n)の生の絶対値であり、このチェーンにおける最後のブロックの出力yを使用することによって、aEst(n)=kAclp・y(n)に従って、追跡振幅推定が生成され、式中、kAclpは、最適クリッピングレベルに対応するためのスケールファクタである。設計パラメータの最適値の例は、以下の通りである。
【0032】
【表3】
この例に関して、時定数τ
r,τ
fの値は、NLAブロックの全3つの段に対して同じであることに留意されたい。初期化では、振幅追跡値は、ゼロにリセットされ、定常状態レベルにまで上昇しなければならず、これは、上昇時定数τ
rの比較的大きな値による過度の時間がかかり得る。定常状態への初期整定を加速するために、リセット後に、時定数は、例えば10秒の初期化期間中、τ
fに保持される。
【0033】
フィルタリングされたインピーダンス信号s(n)は、以下のルールに従って、追跡振幅推定と比べてクリップされる(サンプルnごとに操作される):
【0034】
【0035】
これにより、呼吸数を推定するために使用される振幅正規化インピーダンス変動信号sc(n)が生成される。
追跡振幅推定を使用して、呼吸率(ひいては、その推定)が明確に定義されない状況、例えば、リード線の外れ、息を止めること、及び無呼吸と一致した信号振幅の消失を検出することができる。信号消失は、一般に、測定値aEst(n)の急降下として示され、最低値は、電気的雑音又は疑似インピーダンス変動による背景アーチファクトによって制限される。この状態を決定するための閾値は、静止状態中に生じる典型的レベルと、活発な呼吸状態中に生じる典型的レベルの中間に設定することにより、これらの状態を区別するマージンを最大にしてもよい。次に、一般にこの閾値を上回る振幅レベルに対してアサートされ、この閾値を下回る振幅レベルに対してデアサートされるフラグfsigが、呼吸率処理の信号レベルを認定するために使用されてもよい。
【0036】
測定値が認定閾値領域をゆっくりと、及び/又は小さなリップルが重ねられた状態で移動する場合、認定フラグのチャタリングが生じ得る。これは、閾値にヒステリシスを加えることによって(例えば、閾値を認定状態に逆相関させることによって)軽減することができ、その結果、上方に向かう閾値及び下方に向かう閾値にそれぞれ対応する2つの閾値thrU,thrDがもたらされる。また、様々な処理段階に存在するタイムラグにより、信号品質の表示が時間的にシステムの出力と一致するように、時間遅延がフラグのアサーション及びデアサーションに加えられてもよい。状態機械を用いて信号認定プロセスを実施することによって、両目標を達成することができる。
【0037】
状態定義及び状態遷移ルールの例は、以下の通りである。
【0038】
【表4】
振幅認定のパラメータ値の例は、以下の通りである。
【0039】
【表5】
閾値及び遅延時間は、実験データに基づいて経験的に決定されてもよい。関連するフラグがアサートされたときのみ好ましい信号状態を保証するべく、信号状態の悪化前にフラグのデアサーションを生じさせ、信号状態の復元後にフラグの再アサーションを生じさせるように、フラグ状態ごとの遅延が選ばれてもよい。
【0040】
信号認定フラグfsigは、好ましくない信号状態中の疑似の又は誤った呼吸率出力の表示を抑制する手段として、出力インタフェース116に提示されてもよい。信号認定フラグfsigは、無呼吸の検出に利用することができる。リード線の外れによる信号消失は、(例えば、範囲外値状態を示す生のインピーダンスを用いた)接触消失の検出により、無呼吸による信号消失と区別することができる。したがって、無呼吸は、リード線接触が損なわれていない状態で信号認定フラグfsigが偽であるときに検出することができる。
【0041】
呼吸率推定プロセスは、米国特許第9,530,425号明細書に記載されるように、埋め込み周期性に基づく率の追跡及び推定を行うための方法に基づいてもよい。この方法は、低計算コストで、正確でロバストな率推定を提供する。この方法は、米国特許第7,706,992号明細書に記載される技術を利用し、それらの技術を拡張して、(例えば、1オクターブを超える)広い率範囲にわたり、入力信号の基礎成分の基本率の追跡を可能にする。この例の呼吸率推定プロセスは、5~60BrPMの公称生理学的率範囲(3.5オクターブにわたる範囲)をカバーする。呼吸率推定のために、1/4位相(QP)空間において、成分の処理及び追跡が行われてもよい。この空間では、測定又はタイミング精度の損失なしに、入力信号が有用情報の点(「有用点」とも呼ばれる)において変化したときに更新が行われる。一般的にQPベースの情報更新が行われる頻度は、サンプリング周期ごとに1回生じる信号の更新と比べてはるかに低いため、この「インテリジェントサンプリング」は、大きな計算上の節約につながり得る。
【0042】
振幅正規化インピーダンス変動信号sc(n)は、まず、予想呼吸率範囲をカバーする、米国特許第9,530,425号明細書に記載されるような率帯域のセットにわたり信号を解析するために、多帯域解析ウェーブレットバンク110を用いて処理されてもよい。帯域出力は、解析成分信号であり、これに対して、成分信号の極値及びゼロ交差を検出するために、QPオブジェクト変換及び処理ユニット112によって(米国特許第7,706,992号明細書に記載されるような)QP変換が適用される。これらの点では、信号における周期性に関連する主要な時間周波数情報更新を含むQPオブジェクトが生成される。このプロセスは、QPオブジェクトのストリームのアレイ(成分信号(又は帯域)につき1つのストリーム)をもたらす。次に、QPオブジェクトは、振幅正規化インピーダンス変動信号sc(n)において識別された(米国特許第9,530,425号明細書に記載されるような)主な周期成分の識別及び追跡を行うために、QP空間において、QP周期性追跡ユニット114によって処理されてもよい。この成分から、局所平均呼吸率を決定するために、高い時間精度で、その局所周期特性が抽出されてもよい。
【0043】
解析ウェーブレットバンク110は、一般に、隣接して間隔を空けた帯域中心を有する帯域通過(バンドパス)フィルタのバンクとして設計される。バンクの各帯域通過フィルタは、帯域通過の中心周波数に最も近い周波数に対して最も大きい出力振幅を有する周波数応答に従ってバンク入力信号に存在する周期性に対する量を異ならせることによって応答する。(準)周期成分を含むフィルタバンク入力に適用される信号に関して、ある時点で、その近傍と比べて最も大きい出力振幅を有するフィルタは、それらの信号成分の周波数に最も近い中心を有する周波数帯域である。上記時点における帯域周波数の関数としての帯域振幅のトレーシングにより、それらの関連の周波数において「ピーク」が現れる。これらのピークによってインデックスが付けられる帯域の基礎情報とともに、時間の関数としてこれらの振幅ピークを見つけ出し、追跡することにより、帯域通過フィルタバンクの基礎原理が形成される。帯域通過フィルタを使用する別の利点は、バンクの各フィルタが比較的狭い帯域幅を有するため、関連する周波数成分と比べて一般に高いSNRを有する点である。
【0044】
フィルタバンクの設計検討事項は、帯域通過フィルタの「Q」(相対帯域幅)によって制御されるシステムのいわゆる「時間周波数フレーム」である。時間周波数フレームに密接に関係しているのは、帯域の周波数間隔である。過剰な帯域オーバーラップは、周波数領域のより細かいサンプリングを表すが、冗長なスペクトル情報を構成し得るもののために、計算の増加という代償を伴う。しかしながら、不十分な帯域オーバーラップは、帯域中心間のクロスオーバ領域における過度の振幅消失をもたらす場合があり、信号のスペクトル表現に「穴」を開け、極端なケースでは、スペクトルピークパターンに曖昧さを残す。より高いQは、より狭いフィルタ帯域幅を生じさせ、所与の帯域オーバーラップ量に対して、フィルタが周波数的により近く間隔を空けることが可能となるため、周波数分解能の増加がもたらされる。しかしながら、狭いフィルタ帯域幅の実装は、必然的に、時間的により広いインパルス応答を有することを必要とすることにより、時間分解能の低下及び処理待ち時間の増加をもたらし、これは、システムの過剰な応答遅れを引き起こし得る。よって、Qの選択は、周波数分解能と時間分解能及び/又は応答時間のトレードオフを表す。
【0045】
米国特許第9,530,425号明細書に記載されるように、QP空間における処理は、時間周波数情報が、単に率推定として所与の帯域の中心周波数を使用することによって伝えられるよりも時間及び周波数の両方においてはるかに高い精度で捕捉されることを可能にする。この特性は、厳密に周波数を分解するための帯域中心の中の周波数分解能の要件を緩和することができる。理論上は、入力周期成分の第二高調波から基本波を分離するために、オクターブ当たり最低2つの帯域のみが必要とされるが、実際には、低帯域間応答クロスオーバ損失のために、より多くの帯域が必要とされる。
【0046】
帯域中心は、長期傾向が監視され得る、及び/又はシステム応答の円滑さが望まれる通常範囲の場合など、呼吸率処理が最大精度を示すべき周波数範囲にわたり、それらの間隔が過剰に疎にならないように分散されてもよい。呼吸率の監視に関して、おおよそ1~2BrPMの帯域間隔が、30BrPMまでの生理学的率範囲にわたり所望の応答円滑さを生じさせることができる。過度呼吸に関連する、これを上回る率は、応答円滑さよりも大きな度合いで、より速い応答時間を必要とするため、Qは、これらの範囲内でより低く設定されてもよく、その結果、分解能要件が上方の率範囲において緩和されることが可能になる。率範囲全体にわたり完全に対数の帯域間隔を使用することにより、周波数範囲の下端で帯域間隔の過剰圧縮、及び/又は上端で過剰に疎な帯域間隔がもたらされる場合があるが、完全に線形の帯域間隔を使用することにより、逆の好ましくない状態がもたらされる場合がある。ターゲット帯域間隔の曲線は、式:
fn=(g1+n(g2-g1)/(Nb-1))p
による、べき乗則に従ってもよく、
式中、
【0047】
【0048】
であり、f0=5BrPM、fNb=60BrPMのターゲット率、帯域のターゲット数Nb=24、及びべき乗則p=1.5である。この分布は、オクターブ当たり平均約7.2帯域、及びオクターブ当たり最低3.4帯域の帯域間隔をもたらす。
【0049】
解析ウェーブレットバンク110は、米国特許第7,706,992号明細書に記載されるような解析成分帯域を用いた平行形式コフトゥン・リッチウェーブレット変換(Parallel-Form Kovtun-Ricci Wavelet Transform)を使用して実装されてもよい。スケーリングされた整数カーネル及びスケーリングされた差分カーネルに加えて、解析ウェーブレットバンク110は、スケールパラメータkp,cp、及び帯域pに関する次数パラメータNcpを有するz領域伝達関数:
【0050】
【数7】
を有する、本明細書ではスケーリングされたコムカーネル(comb kernel)と呼ばれる追加のカーネルタイプをカーネルカスケードに含み得る。このカーネルの固有の遅延は、D
cp=N
cp・k
p・(c
p-1)である。N
cp=1のスケーリングされたコムカーネルの周波数応答は、DC付近の第1の主ローブにおいてシンク関数によく近似し、その後、スケールパラメータk
pによって制御される間隔で(具体的には、F
s/(2k
p)の周波数間隔で(式中、F
sは、サンプリングレートである))周波数にわたりこれらの主ローブを反復するディリクレ関数である。値k
pは、スケーリングされた差分カーネルに関する式に出現するのと同じスケーリング値k
pに設定されてもよい。これは、スケーリングされた差分の第1の主ローブに優先して、スケーリングされたコムの第1の反復主ローブを中心に置き、主ローブのピークを中心とした、新しい、より選択的な帯域通過関数を定義する。スケーリングされたコムは、c
p=2の場合、ヌルが主ローブ中心間の中間にあり、より大きいc
pの場合、ヌルが相対的に主ローブ中心に近づくようなスケールパラメータc
pに従って各中心から間隔を空けた各反復主ローブの両側に対する応答ヌルを特徴とする。これらのヌルは、主ローブ帯域幅を狭くする効果があり、効果的に、フィルタのQを増加させる。また、Qは、次数N
cpの増加とともに増加するため、このカーネルは、それによってQがさらに制御され得る2つのパラメータを特徴とする。性能は、c
p=2の場合でさえ、追加されたサイドヌルにより得られるQの増加が、フィルタの次数だけを増加させることによって類似のQを得る場合よりも少ないインパルス応答拡張がもたらされる点でさらに改善され得る。一方、次数の増加は、主ローブ画像間の副ローブの高さを減少させるため、次数N
cpは、第1の通過帯域ヌルを越えてすぐの領域において、ストップバンド阻止を制御するための主な手段となる。
【0051】
広帯域の観点で観察すると、スケーリングされたコムカーネルは、DC付近のローブ、及びスケールkpによる反復ローブを有して、コムフィルタとして働く。純粋な帯域通過応答を得るために、周波数Fs/(2kp)を中心とする、DCを超える主ローブ応答の第1の反復を分離することが望ましい場合がある。スケーリングされた差分カーネルがDCにおいて一次応答ヌルを有することから、DCのローブを阻止するために、スケーリングされた差分カーネルが利用されてもよい。次に、スケーリングされた整数カーネルが、第1のものを超える主ローブ画像を阻止するため、及びインパルス応答の全体的な円滑さを提供するために利用されてもよい。ストップバンド阻止の役割におけるこれら2つのカーネルの使用は、実際には高次数を必要としない傾向がある(例えば、次数4が十分な帯域外阻止を提供し得る)。
【0052】
したがって、帯域通過ウェーブレット応答をプログラムするためのパラメータは、kp、cp、Ncp、Ndp、wp、Nipである。p番目の帯域通過に関して、kpが中心周波数を制御し、Qが、(一次的に)cp、(二次的に)Ncp、及びスケーリングされた導関数次数Ndpの組み合わせによって制御される。パラメータNcp,Ndpは、DC付近のストップバンド阻止を制御し、スケーリングされた整数スケールwp,次数Nipは、通過帯域を超えるストップバンド阻止を制御する。
【0053】
この系統の帯域通過ウェーブレットは、計算効率を良くすることができ、帯域ごとに線形位相応答を特徴とする。米国特許第7,706,992号明細書に記載されるように、ウェーブレットのバンクは、時間周波数変換を行う。この変換は、複数の帯域にわたり時間整合を維持するために、帯域ごとに追加の時間遅延を有して実装されてもよい。変換において帯域間でタイミング情報を維持することは、基礎信号における複数の成分内の特性を抽出するのに役立つが、これを達成することは、より高い率の帯域に増加する待ち時間を加える一方で、バンクにおける最長待ち時間、例えば最低率帯域の待ち時間に対応することを必要とする。最低サポート呼吸率は、5BrPMでもよく、この場合、一呼吸当たり12秒の基本周期を有する。一般的に、帯域ウェーブレットが、それらのインパルス応答において数サイクルオーダでサポートするため、これは、より高い帯域に対して大きな遅れを与える。目標は、過度呼吸の突然の発症中などの急激に増加する呼吸率に対する高速応答を提供するためにできるだけ少ない待ち時間で、呼吸率の(単一)基本成分のみの周波数を推定することである。したがって、解析ウェーブレットバンク110は、各帯域がそれ自体のウェーブレット構造の固有の遅延のみを示すように、帯域間の時間整合なしに、つまり追加される遅延要素なしに実装されてもよい。これによって生じるバンク110の特性は、固有の遅延が、帯域中心周波数及び/又は率の増加とともに一般に減少することである。
【0054】
次に、フィルタバンクのQが、所望の帯域間オーバーラップ点、すなわち、所与の帯域の振幅応答が次の隣接帯域の振幅応答と交差する点への、振幅応答ピークと比べた振幅の急降下に従って設定されてもよい。単一の一次周波数成分を分解するために、-6dB点におけるオーバーラップは、バンクの範囲全体にわたる振幅のカバレッジを保証するのに理論上十分であり、帯域間のカバレッジの「穴」によって生じる振幅曖昧さを防ぐ。いくつかの実施態様では、オーバーラップの余分なマージンが、解析バンクに関して、帯域間の遷移におけるある程度の平滑化を提供するために実装される。オーバーラップ点は、依然として大きな選択度を維持しつつ、円滑なカバレッジを保証するために、公称で-1dB(最小値-1.3dB)に配置されてもよい。
【0055】
上記の記述及び導出ごとに、並びにインピーダンス信号について前に指定したようなサンプリング周期に関して、解析ウェーブレットバンク110の帯域通過ウェーブレットが以下の設計パラメータを使用して実装されてもよい。
【0056】
【表6】
値F
Cpは、p番目の帯域がそのピーク振幅応答を示す周波数として定義される帯域の中心周波数である。所望の率範囲のフルカバレッジは、24個の帯域で達成され得る。完全に対数的に間隔を空けた帯域の場合、帯域のQパラメータが一定に保たれる(いわゆる「一定Q」バンクが生じる)場合、帯域クロスオーバ点が正規化される。このバンクにおける帯域間隔は対数ではなく、むしろ超線形であるため、帯域クロスオーバ点の規則性を維持することは、(最良帯域クロスオーバ特性のために経験的に決定された)周波数軸に沿って適切な位置に配置された点における特定のQパラメータを増加させることを必要とし得る。したがって、様々なスケールに関するいくつかの代表的応答が、バンクの特定のQごとに1つ存在する。
【0057】
図2A~2Cは、それぞれ帯域1、9、及び17(具体的には、バンクにおいて特定のQを有する帯域の範囲ごとの各最低周波数解析ウェーブレット帯域)に関するインパルス応答を示す例示的プロット200,202,204である。これらのウェーブレットに関して生じる時間領域インパルス応答は、3~5サイクルの有効時間長さを特徴とするため、局所周期挙動に対して非常に良好な時間分解能を表す。これらのプロットごとに、最大時間振幅点が単位元に正規化され、x軸は、サンプルを単位とした時間である。ウェーブレットは解析に関するので、インパルス応答は複素数値である。「real」及び「imag」トレースは、それぞれインパルス応答の実数部及び虚数部である。「mag」トレースは、各時点における瞬時複素数の大きさである。
図2Dは、下記の補償後の解析ウェーブレットバンクの実数部の周波数応答を示す例示的プロット250である。
【0058】
フィルタバンクにわたり相対応答の校正を確実にするために、帯域出力信号が、帯域中心において単位利得に正規化されてもよい。校正係数ANR,ANIは、中心周波数FCpで(それぞれ)実数部及び虚数部振幅応答を評価し、逆数を得ることによって決定される。いくつかの実施態様では、実数及び虚数フィルタ出力が、それぞれの校正係数によって乗算され、校正されたフィルタバンクが得られる。したがって、各対応帯域の校正係数は以下の通りである。
【0059】
【表7】
図1を参照して、QPオブジェクト変換及び処理ユニット112は、解析ウェーブレットバンク110から受け取った各成分信号に関するQP転移を検出する。
図3は、1つの成分信号の1サイクルが、A、B、C、及びDとラベル付けされた4つの1/4位相に分割される一例を示す波形300である。この成分信号は、正方向及び負方向ゼロ交差、並びに成分信号の正及び負ピークなどの特定の固有の特徴に従って分割され、いくつかの実施態様では定義される。これらの固有の特徴は、以下の表形式に示される。
【0060】
【表8】
図1を再び参照して、QPオブジェクト変換及び処理ユニット112は、米国特許第7,706,992号明細書に記載されるように、各QP転移において、(例えばデータフィールドにおいて)QP属性を収集するQPオブジェクト(例えば、データ構造)を生成する。呼吸率推定のために、QPオブジェクトは、基礎成分に関する帯域のインデックスとともに、QP検出の時点における、(位相ラベルL
QPによって示される)位相値、時間値t
QP、及び成分振幅a
QPを含む。複数の帯域にわたり現時点の現QPをアレイにまとめることにより、帯域によってインデックスが付けられ、あらゆる帯域のあらゆるQPオブジェクトの更新時にも更新されることで、(米国特許第7,706,992号明細書による)QP状態更新(QP State Update)を含む、QP状態ベクトルが生成される。この状態ベクトルに含まれる、集結された時間周波数情報は、主な周波数成分の識別及び追跡、並びにそれらの瞬時周波数及び振幅の高精度推定を可能にするための基礎を成す。
【0061】
呼吸率推定は、具体的にはQP状態更新時に更新を行う全てのQPオブジェクト(帯域)に関して、各QP状態更新において、率成分のアトミック周期を計算することに基づく。米国特許第7,706,992号明細書に記載されるように、この推定は、あるQPオブジェクト更新と次のQPオブジェクト更新(すなわち、QPオブジェクト転移)との間の時間差及び位相差を計算することに基づくため、これは、基礎周波数成分の周期に関する情報を高精度で生じさせる。所与のQPオブジェクト更新に関するアトミック周期推定は、以下のように表現することができる。
【0062】
TRQP=dTQP/(60・dPQP)
値TRQPは、1サイクル当たりの分(一呼吸当たりの分)単位のアトミック呼吸周期に相当する。値dTQPは、前のQPオブジェクト更新から現在のQPオブジェクト更新への秒単位の時間間隔に相当する。値dPQPは、前のQPオブジェクト更新から現在のQPオブジェクト更新へとトラバースされた1/4位相ラベルの数に関連する位相値の進みに相当し、以下の表に従って評価される。
【0063】
【表9】
トラバースされたQP位相ラベルの数は、米国特許第7,706,992号明細書によれば、現在のQPオブジェクト転移のサイクルシーケンス…A→B→C→D→A…に沿って生じる増分に相当する。基本的な位相進み(例えば、1のラベル増分)は、群を抜いて最も一般的な位相変化である。ゼロの位相変化は、可能性は低いが、雑音又は過渡現象中、特にスタートアップ時に起こり得る。-1又は2の位相ラベル変化は、典型的には信号の過渡現象に関連した、或いはより一般的には、信号の有意な周期成分から離れて位置する帯域で生じるため、低相対帯域振幅及び/又はSNRを示すQPオブジェクト更新に関連した、突然の位相反転の場合に同様に起こり得る。次に、アトミック呼吸周期推定TR
QPは、QP位相ラベルが変化し、dP
QPがゼロより大きい帯域の各QPオブジェクト更新において更新されてもよい。
【0064】
安定したQP統計値を生成するために、QP振幅及びアトミック周期は、それぞれ、QP空間で動作するスケーリングされた整数カーネルによって平滑化されている。整数スケールは、基礎ウェーブレットスケールの1サイクルに自然にマッチするように4つのQPに設定されてもよい。一次のスケーリングされた整数カーネルは、この段階で十分な平滑化を提供し得る。平滑化動作は、関連のQPオブジェクト更新で各帯域に関して評価された瞬時成分振幅ainst及び瞬時呼吸周期TRinstの推定をもたらす。次に、これらの推定は、帯域ごとにQP状態ベクトルに付け加えられ、共に各QP状態更新において同様に更新される瞬時振幅ベクトル及び瞬時呼吸周期ベクトルが生成される。
【0065】
各QP状態更新において、複数の帯域にわたり取得された関連の平滑化された瞬時振幅の現在の状態が、QP振幅スペクトルを形成する。呼吸率入力信号の波動から生じた局所周期成分は、基礎成分の周期の近傍に中心周波数(中心周期)を有するそれらの帯域を励磁する傾向がある。したがって、所与のQP時点のQP振幅スペクトルは、一般に、それらの対応する帯域インデックスでピークを示す(主な成分が主(又は最高振幅)ピークを示す)。呼吸信号波形のフーリエ級数特性(具体的には、級数における高調波の振幅)の観察は、実際には、級数における基本成分が、常に最高振幅を有する傾向があるため、主な周期成分として現れることを示す。この特性は、呼吸信号波形が上述のクリッピングプロセスを受けている場合でも当てはまる傾向がある。基本成分の周期も信号波形のサイクル周期に相当するため、QP振幅スペクトルの最高振幅を有する帯域は、結果として、基礎周期信号波形の基本率成分に関連する。
【0066】
したがって、QP周期性追跡ユニット114は、各QP状態更新において以下のステップを行う。
●QP振幅スペクトルにわたり最大振幅を見つけ出すことによる主帯域の選択、
●最大振幅帯域もQPオブジェクト更新を経験した場合、
〇追跡更新にフラグをつけること、
〇追跡帯域インデックスを主帯域のインデックスで更新すること、
〇瞬時追跡振幅atrInstを主帯域の瞬時振幅ainstで更新すること、及び
〇瞬時追跡呼吸周期TRtrInstを瞬時呼吸周期TRinstで更新すること。
したがって、瞬時追跡呼吸周期推定値TRtrInstは、1/4位相処理に従って局所サイクルごとに4回更新される、1サイクル当たりの分で、呼吸信号波動の瞬時周期を表す。
【0067】
統計ベースの平滑化フィルタ115を瞬時追跡呼吸周期推定値TRtrInstに適用することによって、呼吸間隔の平滑化移動推定TRestを生成することができる。平滑化フィルタ115は、あらゆる残りの大きな範囲外の過渡偏位を最終出力から除去し、一般に出力示度を安定させるように設計される。平滑化時間Tsm=10秒は、タイムラグを可能な限り小さく維持しつつ、許容可能なレベルの平滑化を生じさせることができる。いくつかの実施態様では、平滑化フィルタ115までの処理待ち時間は、合計約4サイクル(解析ウェーブレットバンク110における約3サイクル+QPのMAプロセスにおける1サイクル)、又は12BrPMの公称呼吸率(5秒の呼吸周期)の場合、約20秒になる。これにより、臨床診療と一致する30秒の公称システム待ち時間がもたらされる。
【0068】
平滑化フィルタ115内の平均化は、TRtrInstの値を使用して、各追跡更新において更新することができ、これは、現在の追跡更新に先行する(及び現在の追跡更新を含む)間隔Tsm秒内で生じ、1サイクル当たりの分で表現される最終呼吸周期推定TRestが得られる。最後に、呼吸率推定が、BRest=1/TRestとして評価され、BrPMで表現されてもよい。
【0069】
平滑化フィルタ115は、単純移動平均を行うのではなく、純粋な中央値(median)付近の範囲にわたり、百分位数の意味合いにおいて中心値(central value)の平均を取得することによって平滑化された中央値を計算してもよい。中央範囲平均(central-range average)は、十分に平滑化された出力を経時的に生成することも行いながら、外れ値に対するロバスト性を保持するように選ばれた、中央値の上及び下の四分位範囲におけるそれらの値を含むように設定されてもよい。
【0070】
呼吸数処理システム100は、集中治療、手術、回復、緊急病棟、及び病棟環境を含む、患者の呼吸率が監視されるべき、又は統計的に解析されるべきあらゆる環境において有用となり得る。システム100は、救急医療において極めて重要であり、また、呼吸器疾患又は心臓疾患のある患者にとって非常に有用な、継続的かつ即時の呼吸率の値を提供することができる。
【0071】
図4は、呼吸数処理システムによって行われる動作400の例を示すフローチャートである。動作400は、
図1のシステムなどの1つ又は複数のコンピュータのシステムによって行われてもよい。動作400は、上述した詳細を含んでもよい。
【0072】
402では、患者の胸腔端間のインピーダンスに対応した信号が受信される。404では、雑音を減少させ、ゼロベースラインを中心として信号を置く1つ又は複数のフィルタを使用して、受信信号がフィルタリングされる。
【0073】
406では、フィルタリングされた信号の振幅が、閾値に基づいて調整される。閾値に基づいてフィルタリングされた信号の振幅を調整することは、フィルタリングされた信号の平均振幅に基づいて閾値を決定することと、閾値に基づいて、フィルタリングされた信号をクリップすることとを含んでもよい。
【0074】
408では、振幅調整された信号が、成分信号に分離され、各成分信号は、周波数制限帯域を表す。振幅調整された信号を成分信号に分離することは、帯域通過フィルタのバンクを使用して信号をフィルタリングすることを含んでもよい。
【0075】
410では、上記成分信号のうちの1つの成分信号の部分位相転移が検出される。成分信号の部分位相転移を検出することは、成分信号の正方向ゼロ交差、負方向ゼロ交差、正ピーク、及び負ピークを検出することを含んでもよい。
【0076】
412では、検出された部分位相転移に対応する時間における成分信号の振幅に基づいて、主な成分信号が上記成分信号から選択される。主な成分信号を選択することは、(i)成分信号の検出された部分位相転移時に、検出された部分位相転移時の成分信号に対応する時間、振幅、及び位相を表す値を含むデータオブジェクトを生成することと、(ii)検出された部分位相転移の時間に対応する成分信号用に生成されたデータオブジェクトに含まれる振幅値に基づいて、最高振幅を有する成分信号を主な成分信号として選択することとを含んでもよい。
【0077】
414では、検出された部分位相転移に対応する時間における主な成分信号の周波数が決定される。主な成分信号の周波数を決定することは、部分位相転移間の時間差及び位相差を決定することに基づいてもよい。
【0078】
416では、患者の呼吸数が、決定された周波数に基づいて決定される。患者の呼吸数を決定することは、ある期間にわたる平均呼吸数を決定することを含んでもよい。
図5は、米国特許出願公開第2015/0302539号明細書に記載されるような、ベッドサイドモニタ、中央サーバステーション、又はモバイルデバイスのディスプレイなどの表示デバイス504と通信する患者着用センサ502を含むシステム500を示す。表示デバイス504は、患者の情報を表示する。表示デバイス504は、患者着用センサ502から受信した情報、及び/又は患者着用センサ502に関連付けられた患者に関連する情報を含むユーザインタフェース506を表示することができる。患者着用センサ502は、例えば、米国特許出願公開第2015/0302539号明細書に記載されるような胸部センサでもよい。患者着用センサ502は、患者の肌に付着し、血圧、体温、呼吸数、身体インピーダンス、血液酸素化、(ECGによる)心拍リズム、及び心拍数などの様々な患者のバイタルサインを記録するための接触子を含んでもよい。
【0079】
患者着用センサ502は、例えば、ブルートゥース(登録商標)、WiFi、又はセルラープロトコルなどの無線通信プロトコルを使用した無線接続508によって、表示デバイス504と無線通信することができる。患者着用センサ502は、無線接続508によって、患者のバイタルサイン情報を表示デバイス504に送信することができる。実施態様によっては、患者着用センサ502は、表示デバイス504への情報の送信に先立って、上記の呼吸数処理などの処理を収集されたバイタルサイン情報に対して行ってもよいが、実施態様によっては、患者着用センサ502は、処理された情報の代わりに、又は処理された情報に加えて、生のバイタルサイン情報を表示デバイス504に送信してもよい。
【0080】
表示デバイス504は、タッチスクリーン入力を受け取ることが可能なタブレットなどのタッチスクリーンデバイスでもよい。いくつかの実施態様では、表示デバイス504は、キーボード、マウス、入力ボタン、又は音声コマンドを認識可能な1つ若しくは複数のデバイスから入力を受け取ることができる。いくつかの実施態様では、表示デバイス504は、携帯電話などの、表示デバイス504と無線通信するデバイスを使用して制御されてもよい。いくつかの実施態様では、表示デバイス504は、直接的なユーザ入力及び/又は出力機能性を含まず、単に、患者着用センサ502から受信した生のバイタルサイン情報を処理し、警報状態を検出し、表示デバイス504と通信している他のデバイスにアラートを送信し、患者情報を1つ又は複数の中央サーバに送信するための処理デバイスとして機能する「ヘッドレス」デバイスである。このような場合、表示デバイス504は、ディスプレイを含まない。
【0081】
ユーザインタフェース506は、患者着用センサ502に関連付けられた患者の情報を表示する。例えば、患者着用センサ502の電極は、患者の肌と接触し、無線接続508によって表示デバイス504に伝送され、表示デバイス504によって処理され、ユーザインタフェース506の一部として表示されるバイタルサイン情報を収集することができる。ユーザインタフェース506は、様々なバイタルサイン波及び数値レベルを示す。
【0082】
例えば、ユーザインタフェース506は、患者の呼吸波形510、及び患者の数値の呼吸数(RR)値512を示す。呼吸波形510及び呼吸数値は、例えば
図1~4に関して上記で説明したプロセスに従って決定されてもよい。図示した例では、患者の呼吸数値512は、1分当たり15呼吸である。ユーザインタフェース506は、患者の許容可能な呼吸数範囲514が、1分当たり8~30呼吸の範囲内であることを示している。1分当たり15呼吸の患者の現在の呼吸率512が、示された許容範囲514内に入っているため、現在、患者の呼吸数に関して警報状態は存在しない。これは、「X」記号が重ね合わせられたベルのアイコン516によって示される。アイコン516は、患者の現在の呼吸数が許容範囲内であることを示す。患者の呼吸数が許容可能レベル内にない状況では、アイコン516は、警報状態を示すように変化することができる。例えば、「X」が、アイコン516から消えてもよく、警報状態を示すために、アイコン516が点灯又は点滅してもよい。さらに、表示デバイス504は、患者の警報状態を近くの介護人に警告するために、警報音を出してもよい。いくつかの実施態様では、ユーザインタフェース506の他の部分が、点滅或いは他の方法で警報状態を示してもよい。例えば、患者の呼吸数が許容範囲514の外にあるときに、表示された呼吸数値512が点滅してもよい。いくつかの実施態様では、アイコン516(又はユーザインタフェース506の他の部分)が、ある特定の警報状態の深刻さを示すために様々な速度で点滅してもよい。例えば、アイコン516は、患者の呼吸数が許容範囲から遠く離れるほど速く点滅してもよい。
【0083】
図6は、上記の動作、データ構造、及び/又はコンピュータ可読媒体602に含まれ、中央処理装置(CPU)604によって実行されるプログラムを実装するコンピュータプログラムを実行するコンピューティングシステム600の一例を示すブロック図である。CPU604は、x86シリーズCPU又は当該分野で公知の他のCPUでもよい。いくつかの実施態様では、プログラムを実行するための入力は、キーボード606によって生じてもよい。いくつかの実施態様では、プログラムを実行するための入力は、マウス、ライトペン、タッチスクリーン、タッチパッド、又は当該分野で公知のその他の入力デバイスなどの周辺デバイスによって生じてもよい。いくつかの実施態様では、記載した動作は、オキシメトリデータの実行及び処理を行うための別のプログラムによって呼び出されてもよい。一旦処理されると、上記の動作、データ構造、及び/又はプログラムを使用して処理されたデータは、ディスプレイ608に出力されてもよく、又はインターネット610若しくは他の無線通信チャネルを介して別のユーザ端末612に送られてもよい。いくつかの実施態様では、出力は、データベース614又はオフサイトにある別のデータベースに入れられてもよい。
【0084】
図7は、いくつかの実施態様では、患者着用センサと通信するための通信モジュール(COMM)702及び関連の通信リンク704、アプリケーション命令のセットを含むコンピュータ可読媒体(CRM)708を含むマイクロプロセッサユニット(MPU)706、患者データを保存するための関連のストレージモジュール710、それによって操作者(例えば、医師、技師、又は患者)がMPU706と対話し、視覚ディスプレイ、聴覚ディスプレイ、キーボード、マウス、タッチスクリーン、触覚デバイス、又は他のインタラクション手段を含み得る人間・コンピュータインタフェース(HCI)712などのユニット又はモジュールのセットを含み得るホスト700を示すコンピューティングシステムの一例を示すブロック図である。ホスト700は、例えば、プリンタ、スキャナ、及び/又はデータ取得若しくは撮像機器などのコンピュータ周辺機器と一般に接続及び/又は通信するための入出力(I/O)モジュール714、並びにイーサネット(登録商標)及び/又は無線ネットワーク、すなわちWiFiなどのコンピュータネットワーク上の他のホストと通信するためのネットワーク通信モジュール(NET)716も含む。
【0085】
本開示に記載した特徴は、デジタル電子回路網において、又はコンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、若しくはこれらの組み合わせにおいて実装されてもよい。装置は、プログラマブルプロセッサによる実行のために、情報キャリアにおいて、例えば機械可読記憶装置において有形的に具現化されたコンピュータプログラム製品に実装されてもよく、方法ステップは、入力データに対して働くこと、及び出力を生成することによって記載した実施態様の機能を行うための命令のプログラムを実行するプログラマブルプロセッサによって行われてもよい。記載した特徴は、データ記憶システムからデータ及び命令を受信し、データ記憶システムにデータ及び命令を送信するように連結された少なくとも1つのプログラマブルプロセッサと、少なくとも1つの入力デバイスと、少なくとも1つの出力デバイスとを含むプログラマブルシステムに対して実行可能な1つ又は複数のコンピュータプログラムにおいて、有利に実装されてもよい。コンピュータプログラムは、特定のアクティビティを行うため、又は特定の結果を生じさせるために、コンピュータにおいて直接的又は間接的に使用することができる命令のセットである。コンピュータプログラムは、コンパイラ型言語又はインタープリタ型言語を含む任意の形式のプログラミング言語で書かれてもよく、それは、スタンドアロンプログラムとして、又はモジュール、コンポーネント、サブルーチン、若しくは計算コンテキストでの使用に適した他のユニットとしてなど、任意の形式で展開されてもよい。
【0086】
命令のプログラムの実行に適したプロセッサには、例として、汎用及び専用マイクロプロセッサの両方、並びにあらゆる種類のコンピュータの唯一のプロセッサ、又は複数のプロセッサの1つが含まれる。一般に、プロセッサは、読出し専用メモリ、又はランダムアクセスメモリ、又はその両方から命令及びデータを受け取る。コンピュータの必須要素は、命令を実行するためのプロセッサ、並びに命令及びデータを記憶するための1つ又は複数のメモリである。一般に、コンピュータは、データファイルを保存するための1つ又は複数の大容量記憶装置も含み、又はそれらと通信するために動作可能に連結され、このようなデバイスには、内蔵ハードディスク及びリムーバブルディスクなどの磁気ディスク、光磁気ディスク、並びに光ディスクが含まれる。コンピュータプログラム命令及びデータを有形的に具現化するのに適した記憶装置には、例として、EPROM、EEPROM、及びフラッシュメモリデバイスなどの半導体メモリデバイス、内蔵ハードディスク及びリムーバブルディスクなどの磁気ディスク、光磁気ディスク、並びにCD-ROM及びDVD-ROMディスクを含む、あらゆる形式の不揮発性メモリが含まれる。プロセッサ及びメモリは、ASIC(特定用途向け集積回路)によって補完されてもよく、又はASICに組み込まれてもよい。ユーザとの対話を提供するために、上記特徴は、ユーザに情報を表示するためのCRT(陰極線管)又はLCD(液晶ディスプレイ)モニタなどの表示デバイス、キーボード、及びそれを用いてユーザが入力をコンピュータに提供することができるマウス又はトラックボールなどのポインティングデバイスを有するコンピュータ上に実装されてもよい。
【0087】
上記特徴は、データサーバなどのバックエンドコンポーネントを含む、又はアプリケーションサーバ若しくはインターネットサーバなどのミドルウェアコンポーネントを含む、又はグラフィカルユーザインタフェース若しくはインターネットブラウザを有するクライアントコンピュータなどのフロントエンドコンポーネントを含むコンピュータシステムにおいて、又はそれらの任意の組み合わせにおいて実装されてもよい。システムのコンポーネントは、通信ネットワークなどの任意のデジタルデータ通信の形式又は媒体によって接続されてもよい。通信ネットワークの例には、例えば、LAN、WAN、並びにインターネットを形成するコンピュータ及びネットワークが含まれる。コンピュータシステムは、クライアント及びサーバを含み得る。クライアント及びサーバは、一般に、互いに遠く離れており、一般的に、説明したようなネットワークを通して対話する。クライアントとサーバの関係は、それぞれのコンピュータ上で作動し、互いにクライアント-サーバ関係を有するコンピュータプログラムによって生じる。
【0088】
本明細書は、多くの具体的な実施態様の詳細を含むが、これらは、あらゆる発明の範囲又は請求され得る範囲に対する限定と見なされるものではなく、特定の発明の特定の実施形態に特有の特徴の説明と見なされるものである。別々の実施形態の文脈で本明細書に記載された特定の特徴は、単一の実施形態で組み合わせて実装されることも可能である。逆に、単一の実施形態の文脈で記載された様々な特徴が、複数の実施形態で別々に、又は任意の適宜のサブコンビネーションで実装されることも可能である。また、特徴は、特定の組み合わせで機能するとして上記に記載され、最初にそのようなものとして請求されている場合さえあるが、場合によっては、請求された組み合わせの1つ又は複数の特徴が、その組み合わせから削除されてもよく、請求された組み合わせは、サブコンビネーション又はサブコンビネーションのバリエーションに向けられてもよい。
【0089】
同様に、動作は、図面において特定の順序で示されているが、これは、望ましい結果を得るために、このような動作が、示された特定の順序で若しくは順番に行われること、又は全ての図示された動作が行われることを必要とすると理解されるものではない。特定の状況では、マルチタスキング及び並列処理が有利である。また、上記実施形態における様々なシステムコンポーネントの分離は、全ての実施形態においてそのような分離が必要であると理解されるものではなく、記載されたプログラムコンポーネント及びシステムが一般に単一のソフトウェア若しくはハードウェア製品において統合されてもよく、又は複数のソフトウェア若しくはハードウェア製品へとパッケージ化されてもよいことが理解されるものとする。
【0090】
このように、発明特定事項の特定の実施形態を説明した。他の実施形態は、以下の請求項の範囲内である。場合によっては、請求項に記載されるアクションは、異なる順序で行われてもよく、それでも望ましい結果を達成することができる。加えて、添付の図面に示されるプロセスは、望ましい結果を達成するために、必ずしも図示された特定の順序又は順番を必要としない。特定の実施態様では、マルチタスキング及び並列処理が有利な場合がある。