(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】オブジェクトを追跡するための方法
(51)【国際特許分類】
G01S 13/72 20060101AFI20240319BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20240319BHJP
G01S 13/931 20200101ALI20240319BHJP
【FI】
G01S13/72
B60T7/12 C
G01S13/931
(21)【出願番号】P 2022512440
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(86)【国際出願番号】 DE2020200058
(87)【国際公開番号】W WO2021052542
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】102019214383.0
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503355292
【氏名又は名称】コンティ テミック マイクロエレクトロニック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Conti Temic microelectronic GmbH
【住所又は居所原語表記】Ringlerstrasse 17, 85057 Ingolstadt, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】アイゼンバルト・アンドレアス
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-223460(JP,A)
【文献】特開2017-067756(JP,A)
【文献】特開2019-144094(JP,A)
【文献】特開2013-117475(JP,A)
【文献】特開2016-190613(JP,A)
【文献】特開2018-025492(JP,A)
【文献】特開2000-171551(JP,A)
【文献】米国特許第04079376(US,A)
【文献】米国特許第05313212(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/64
13/00 - 17/95
B60T 7/12 - 8/1769
8/32 - 8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転支援システムを備える自車両(1)がオブジェクトを追跡する方法であって、
前記オブジェクトは前記自車両(1)の前を走行している車両(4)であり、
前記自車両(1)のレーダセンサ(
2)がレーダ信号を複数の連続した測定サイクルにおいて照射し、前記レーダ信号がオブジェクトによって反射され、前記レーダセンサによってレーダターゲット(5)として捕捉される
、方法
において、
前記レーダターゲット(5)に基づいて、オブジェクトの運動情報がオブジェクト追跡のために割り出され、かつ、
前記運動情報に基づいて、オブジェクトのレーダターゲット(5)のための速度
のサーチウインドが設定され、前記速度
のサーチウインドは、
連続した測定サイクルにおいて、
- 設定自在な閾値を超える運動情報の変化が割り出された場合、及び/又は
- 追跡していたオブジェクトについてレーダターゲット(5)が割り出されなかった場合に
、
前記レーダターゲット(5)が前記設定された速度のサーチウインドから逸脱していたとしても、当該レーダターゲット(5)を探すことができる程度に、
拡張される
ことを特徴とす
る方法。
【請求項2】
運動情報として、速度及び/又は加速度が採用されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
速度
のサーチウインドを拡張した後、目下の測定サイクルを反復し、又は、次の測定サイクルを開始することを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
オブジェクト追跡のための運動情報サンプルが保存され、前記運動情報サンプルを用いてオブジェクト及び/又は交通状況を、オブジェクトの運動情報と運動情報サンプルとが照らし合わされることによって、分類することができることを特徴とする請求項1~3のうち何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
拡張された速度
のサーチウインド内で捕捉されたレーダターゲット(5)が、運動情報サンプルに対応する場合、前記レーダターゲット(5)がオブジェクトに帰属されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
予め定めることができる回数の測定サイクル内で、拡張された速度
のサーチウインドのレーダターゲット(5)を、オブジェクトに帰属することができなかった場合は、速度
のサーチウインドの拡張がリセットされることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
速度
のサーチウインドの拡張は、予め定めることができる回数の測定サイクルに限定されることを特徴とする請求項1~6のうち何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
オブジェクトの加速度が、速度から得られる差分商を用いて割り出され、オブジェクトに帰属されることを特徴とする請求項1~7のうち何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
オブジェクトの運動情報、オブジェクトの分類、及び/又は、交通状況の分類を伝達することができる手段が設けられていることを特徴とする請求項4を引用する請求項5~8のうち何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記分類が、運動情報の予め定めることのできる領域に限定されることを特徴とする請求項4を引用する請求項5~9のうち何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
割り出された運動情報、及び/又はオブジェクトの分類、及び/又は交通状況の分類、の妥当性検証が、複数の測定サイクルに基づいて実施されることを特徴とする請求項4を引用する請求項5~10何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1~11のうち何れか一項に記載の方法によるオブジェクト追跡を含む、運転支援システムであって、
この運転支援システムは、オブジェクト追跡のためのレーダセンサ(2)と、サーチウインドとを備え、
前記レーダセンサ(2)は、レーダ信号を複数の連続した測定サイクルにおいて照射し、前記レーダ信号がオブジェクトによって反射され、前記レーダセンサ(2)によって、レーダターゲット(5)として捕捉され、前記レーダターゲット(5)に基づいて、オブジェクトの運動情報がオブジェクト追跡のために割り出され、かつ
前記運動情報に基づいて、オブジェクトのレーダターゲット(5)のための速度
のサーチウインドが設定され
、
前記速度
のサーチウインドは、
連続した測定サイクルにおいて、
- 設定自在な閾値を超える運動情報の変化が割り出された場合、及び/又は
- 追跡していたオブジェクトについてレーダターゲット(5)が割り出されなかった場合に
、
前記レーダターゲット(5)が前記設定された速度のサーチウインドから逸脱していたとしても、当該レーダターゲット(5)を探すことができる程度に、
拡張される、運転支援システム。
【請求項13】
コンピュータプログラムが、コンピュータ内において実行されたとき、請求項1~11のうち何れか一項に記載の方法を実施するためのプログラムコードを含むことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項14】
コンピュータ上で実行され、請求項1~11のうち何れか一項に記載の方法を実施させるための命令を含むことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支援システム又は運転支援システムのレーダセンサを用いたオブジェクト追跡及び事故認識するための方法、特に、コンピュータに実装された方法、並びに、特に、本発明の方法によるオブジェクト追跡及び事故認識が実施される運転支援システム、本方法を実施するためのコンピュータプログラム、及び、本方法を実施するためのコンピュータプログラムが保存されている、運搬可能なコンピュータ可読記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の交通手段、例えば、動力車両や自動二輪には、適切なセンサ類又はセンサシステムを用いて周辺部を捕捉し、交通状況を認識し、ドライバーを、例えば、制動介入及び/若しくは操舵介入によって、又は、光学的、触覚的若しくは聴覚的警告によって、サポートできる運転支援システムが益々装備されるようになってきている。周辺部を捕捉するためのセンサシステムとしては、通常、レーダセンサ、ライダセンサ、カメラセンサ、超音波センサなどが用いられる。センサ類によって割り出されたセンサデータからは、周辺部に対する帰納的推理を図ることができる。レーダセンサによる周辺部の捕捉は、例えば、束ねられた電磁波の照射と、例えば、他の交通参加者、道路上の障害物、或いは、車線縁の構造物などと言ったオブジェクトからのそれの反射とに基づいている。ある一つのオブジェクトに関連する個別の反射又は検出は、レーダセンサによって所謂データターゲットとして捕捉され、例えば、適切なアルゴリズムによって対応するオブジェクトに帰属される。この場合、この様なオブジェクトは、追跡するために観察、要するに、トラッキングされるが、オブジェクト追跡(オブジェクトトラッキング)は、間を開けることなく実施されることが好ましい、即ち、追跡されるオブジェクトは、例えば、所謂「トラッキングギャップ」などにより見失われてはならない、なぜならば、このことによって、交通シーンの誤った帰納的推理や誤った解釈がされかねないからである。これらは更に、自車両の運転支援システムが、その状況において、事故を回避するために、例えば、ブレーキをかけなかったり、ブレーキをかけるのが遅すぎたりする要因となり得る。
【0003】
運転支援システムに対して起こり得る最も複雑なシチュエーションの1つとして、先行車が事故を起こした状況が挙げられる。この場合、例えば、先行車が障害物と衝突し、その際、自車両が、この状況において関与には未だ至っていない様な状況である。しかし、この様な状況おいては、事故を起こした先行車の運動状態は、急激に変化する可能性があり、自車両は、それに反応しなければならないため、これは、自車両にとって非常に危険な状況と言える。運転支援システムに実装されているトラッキングアルゴリズムは、そのダイナミックレンジ内において調整することができるが、この様な状況において発生し得るダイナミクスは、捕捉されるオブジェクトの望まれる連続性が中断するトラッキングギャップを起こしかねない極端なケースである。
【0004】
例えば、先行車の事故状況では、トラッキングアルゴリズムに以下の様な問題が発生し得る。この様な状況は多くの場合突発的に発生する、即ち、予告も無いため、トラッキングアルゴリズムは、適切な反応をするために、状況に対して準備しておくこともできない。更に、事故中に発生する物理量が、通常の交通の流れにおける物理量の数倍を上回ることもあり得る。
【0005】
特許文献1には、運転支援システムを備えた動力車両のドライバーを支援するための方法が記載されていて、レーダ測定手段を用いてオブジェクト追跡に役立つオブジェクトの運動情報が捕捉される方法が既知である。この場合、相対的加速度などの一部の運動パラメータは、レーダ測定手段からは測定することができない、又は、不正確なオブジェクトモデルが存在するため、オブジェクトを見失う可能性がある。再度検出した場合、新規のオブジェクトが初期化されるが、この測定値は既に追跡されていたオブジェクトから得られたものである。この様な測定状況は、特に、測定値が、オブジェクトモデルから予測されている位置から大きく離れている場合に起こる。急激な加速度変化によってオブジェクトを見失うと言う事象は、同類の支援システムにおいて看過できない問題である。特に、事故回避を目的としたアプリケーションでは、この様な大きなダイナミクスの状況は、問題となる。オブジェクトを見失い、改めて初期化されると言うことは、貴重な時間を失うことを意味する。この問題を解決するため、動力車両周辺部のオブジェクト情報を、カメラを用いて捕捉し、捕捉されたオブジェクト情報を、オブジェクト追跡を補正するために用いることによってオブジェクト追跡を改善することが、提案されている。しかしながらこの方法では、付加的なハードウェア(カメラとその制御手段)、及び、計算負荷(データフュージョンや補正計算)が必要となるが、レーダ測定手段の「ウイークポイント」自体は、解決されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】独国特許出願公開第102011001248号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
よって本発明の課題は、先行技術の欠点が克服され、かつ簡単で費用がかからない方法でオブジェクト追跡が改善された、オブジェクト追跡と事故認識のための改善された方法、並びに、本方法に対応する支援システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題は、請求項1及びその他の請求項の教示全体によって解決される。本発明の目的にかなった実施形態は、従属請求項において請求される。
【0009】
本発明によるオブジェクトを追跡するための方法では、レーダセンサがレーダ信号を複数の連続した測定サイクルにおいて照射し、前記レーダ信号がオブジェクトによって反射され、レーダセンサによって、レーダターゲットとして捕捉される。続いて、レーダターゲットに基づいて、オブジェクトの運動情報がオブジェクト追跡のために割り出され、その際、運動情報に基づいて、オブジェクトのレーダターゲットのためのサーチウインドが設定される。このサーチウインドは、連続した測定サイクルにおいて、設定自在な閾値を超える運動情報の変化が割り出された場合、及び/又は、追跡していたオブジェクトについてレーダターゲットが割り出されなかった場合、拡張される。これにより、追跡されたオブジェクトが、継続的に捕捉され続ける、即ち、追跡しているオブジェクトを見失う原因となり、それによって、例えば、自車両において望まれない制御介入が実施され得るトラッキングギャップが起こらないと言う長所が得られる。
【0010】
好ましくは、運動情報として、オブジェクトの速度及び/又は加速度が採用される。この情報は、通常、同類のレーダセンサ内、又は、レーダセンサを含む運転支援システム内においてすでに割り出されるため、追加の、ハードウェア負荷及び/又は演算負荷は、必要とされない又はわずかである。よって、例えば、サーチウインドは、速度に関して、例えば、速度サーチウインドを、1~2m/s(初期状態)から、少なくとも5m/sに、好ましくは7m/sに、特に10m/sに拡張されることによって、拡張することができる。これに基づいて、運動情報の閾値は、1m/s以上、好ましくは3m/s以上、特に5m/s以上の二回の測定サイクル間に割り出された速度差として設定することもできる。
【0011】
サーチウインドを拡張した後、目下の測定サイクルを反復し、又は、次の測定サイクルを開始することは、目的に適っている。
【0012】
本発明の更なる有利な形態によれば、オブジェクト追跡のための運動情報サンプルが、例えば、車両、又は、運転支援システムの制御手段のメモリ内に保存される。このようにして、オブジェクト及び/又は交通状況を分類することができ、例えば、オブジェクトの捕捉された運動情報と保存されている運動情報サンプルとを照らし合わせる、又は、比較することによって分類することができる。運動情報サンプルは、ある1つのオブジェクトクラス(例えば、事故車両)又は特定の交通状況を推し量れる特定のデータ、パラメータ及び/又は値などである。例えば、先行車両の速度が突然かつ急激に変化し、例えば、数秒以内に50km/hから0km/hに変化し、それに応じて軌道が突然終了し、かつ、それが非常に短い場合、それは、事故シナリオであると推量することができる。よって、この様な交通状況を捕捉することにより、事故仮説を立証し、該当する車両を事故車両として分類することができる。
【0013】
更には、拡張されたサーチウインド内で捕捉されたレーダターゲットが、運動情報サンプルに対応する場合、レーダターゲットをオブジェクトに帰属することができる。
【0014】
予め定めることができる回数の測定サイクル内で、拡張されたサーチウインドのレーダターゲットを、オブジェクトに帰属することができなかった場合は、サーチウインドの拡張をリセットすることが望ましい。
【0015】
好ましくは、サーチウインドの拡張は、予め定めることができる回数の測定サイクル、例えば、次の三回、特に次の五回、特に次の十回、又は同様の測定サイクルのために限定される。
【0016】
本発明の更なる有利な形態によれば、オブジェクトの加速度は、速度から得られる差分商を用いて割り出され、オブジェクトに帰属される。例えば、非常に高い加速度がフィルタリングされることなく、差分商を介して特徴として直接的に事故車両に伝わるため、事故オブジェクト又は事故車両の高いダイナミクスを、自車両に報告することができる。
【0017】
更には、オブジェクトの運動情報、オブジェクトの分類、及び/又は交通状況の分類を伝達することができる、又は送信することができる手段を設けることができる。これにより、事故オブジェクトとして分類された車両又は事故状況は、1つのインターフェース、例えば、無線通信などを介して他の道路利用者に伝達され(特に、C2CコミュニケーションやC2Xコミュニケーション)、その結果、この他の道路利用者にも、状況に応じて反応(例えば、ブレーキ、加速、回避マヌーバ、軌道再計画、緊急通話のダイヤリング、光学的、聴覚的及び触覚的警告などの発信)できるという利点がある。
【0018】
便宜上、分類は、運動情報の予め定めることのできる領域に限定することができる。
【0019】
好ましくは、割り出された運動情報、及び/又はオブジェクトの分類、及び/又は交通状況の分類、の妥当性検証は、複数の測定サイクル、例えば、三回、五回、十回、又は同様の測定サイクルに基づいて企図されている。
【0020】
更に、本発明は、特に、本発明による方法に基づいてオブジェクト追跡を実施する運転支援システムを備える。そのため、運転支援システムは、追跡されるべきオブジェクトによって反射され、レーダセンサによってレーダターゲットとして捕捉されるレーダ信号を、連続する測定サイクルにおいて照射する、オブジェクトを追跡するためのレーダセンサを有している。そして、レーダターゲットに基づいて、例えば、速度及び/又は加速度などの、オブジェクト追跡のためのオブジェクトの運動情報を割り出すことができる。この場合、運動情報によって、オブジェクトのレーダターゲットのためのサーチウインドが設定できる。例えば、サーチウインドは、オブジェクトの速度に基づいて、設定することができ、予測された移動又は軌道の場合には、次の測定サイクルでオブジェクトも、このサーチウインド内に存在する必要があるように、設定することができる。サーチウインドは、連続する測定サイクルにおいて、設定自在な閾値を超える(例えば、設定自在な速度若しくは速度変化を下回る又は上回る)運動情報の変化が割り出された場合、及び/又は、急に、追跡していたオブジェクトについてレーダターゲット、又は、その検出を捕捉できなくなった場合に、拡張される。
【0021】
好ましくは、レーダセンサは、照射された電磁波がオブジェクトで反射され、再び受信されることによってオブジェクトを検出するセンサである。この場合、電磁波は、異なる波長範囲と周波数範囲を有することができる。例えば、電磁波は、例えば、1mmから10kmの波長範囲又は300GHzから30kHzの周波数範囲、好ましくは、1cmから1000mの波長範囲又は30GHzから300kHzの周波数範囲、より好ましくは、10cmから100mの波長範囲3GHzから3MHzの周波数範囲、特に好ましくは、1mから10mの波長範囲300MHzから30MHzの周波数範囲にあり得る。更に、電磁波は、10nmから3mmの波長範囲又は30PHzから0.1THzの周波数範囲、好ましくは、380nmから1mmの波長範囲又は789THzから300GHzの周波数範囲、好ましくは、780nmから1mmの波長範囲又は385THzから300GHzの周波数範囲、特に好ましくは、780nmから3μmの波長範囲又は385THzから100THzの周波数範囲にあり得る。
【0022】
さらに、本発明は、コンピュータプログラムが、一台のコンピュータ又は先行技術から既知な他のプログラム可能な計算手段において実施される時、本発明による方法を実施するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムを備える。要するに、本方法は、純粋なコンピュータ実装方法として設計することもでき、その際、本発明の意味での「コンピュータ実装方法」と言う用語は、計算手段によって実現又は実施される、オペレーションプランニング又は手順を説明する。この場合、例えば、一台のコンピュータ、コンピュータネットワーク、又は先行技術から既知なプログラム可能な装置(例えば、プロセッサ、マイクロコントローラなどを備える計算装置)などの計算手段は、プログラム可能な計算手順を用いてデータを処理できる。この場合、本方法に関して基本的な特性は、例えば、新しいプログラム、複数の新しいプログラム、アルゴリズムなどでもたらすことができる。
【0023】
更に本発明は、それらがコンピュータ上で実行され、請求項のうち少なくとも一項に記載の方法を実施させるための命令を含む、コンピュータ可読記憶媒体を備える。
【0024】
尚、明示的に言及されていない特徴や請求の範囲の組み合わせ、所謂「サブコンビネーション」も、本発明は、明確に包含している。
【0025】
以下では、本発明を適切な実施形態によって、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、自車両が、先行車
両を追従し、
かつこの先行車両を適切なセンサを用いてトラッキングしている交通状況の簡略化
された
概略図である。
【
図2】
図2は、図
1に続く
、先行車
両が事故
を起こした交通状況の簡略化
された
概略図である。
【
図3】
図3は、先行車
両の予測されたオブジェクトポジションを含む
図2の交通状況
を簡略化した
概略図である。
【
図4】
図4は、遠距離領域用レーダセンサのスキャンモード「近距離スキャン」と「遠距離スキャン」の簡略化した
概略図である。
【
図5】
図5は、中断なく捕捉され、突発的に負の加速
度を示す先行事故車両
をレーダスキャン
する簡略化した
概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1の符号1は、例えば、ACC(Adaptive Cruise Control、車間調整クルーズコントロール)、及び/
又はEBA(Emergency Breaking Assist、緊急ブレー
キアシスタント)、及び/
又はLKA(Lane Keep Assist、レーン維持/車線変更アシスタント)などの
機能を、実行又は制御でき、
かつ適切なセンサ
を用いて
環境又は車両周辺部を捕捉
することができ、好ましくは、分類手段によっ
て分類する
ことができる運転支援システムを装備した自車両を示している。機能を実施するため
に、運転支援システムは、図示されていない、中央制御ユニット(ECU - Electronic Control Unit, ADCU Assisted & Automated Driving Control Unit)を
備える。
この場合、分類手段は、独立したモジュール
として、又は運転支援システムの中央制御ユニット上
のソフトウェ
アアプリケーション
又はアルゴリズム
として格納することができる。自車両1のセンサとし
て、前方に向けられた検出領域3を有するレーダセンサ2、特
に、遠距離領域用レーダセンサ
が設けられている。更に、自車両1の前方には、レーダセンサ2によるオブジェクト追跡(オブジェク
トトラッキング)において
運転支援システムによって捕捉さ
れる自車両1の前を走行している車両4が存在している。レーダセンサ2のセンサデータに基づいて、車両4は、車両4の反射された検出
又はレーダターゲット5から運動情報(例えば、車両4の速度
又は加速
度)が割
り出されることにより追跡(トラッキング)
することができる。レーダターゲット5とそれに帰属する運動情報に
よって、自車両1は、車両4の
後続の運動又は軌道を予測
でき、車両4に帰属する検出が期待される
サーチ領域
又は図2に示されている予測されたオブジェクト6に対応するサーチウインドを、
整列できる、又は適合
できる。
更に、その後、車両4は、分類手段によって(例えば、自家用車、貨物自動車、事故が発生した場合は、事故車などに)分類される。加えて、該分類手段
を、運動情報に
含めることができる。これにより交通状況を
決定することができ、
その結果、変化
又は危険に対して、制動介入及び/
又は操舵介入、
又は、速度調整、警告の発信などによってタイムリーに対応できる。
【0028】
交通状況の流れにおいて
、先行車両2は、
図3が示す如く、障害物7
により事故に遭っている。例えば、速度約50km/hにおける事故
時の平均的な加速度は、約200m/s
2で
ある。一方、発進時の最大絶対加速度は、約3~7m/s
2に過ぎず、フルブレーキ時の最大絶対加速度でも、-10m/s
2程度である。加えて、衝突から停止状態までの時間は、約72msであり
、計算サイクル
(想定サイクル=70ms)あたりの速度変化は、約7m/sとなる。
このような値は、事故状況
では、速度のみならず
位置も
非常に早く、かつ非常に強く変化するため、検出されたオブジェクト、
又は、伝達されたレーダターゲット
のためのサーチウインドが、
もはや「通常走行」において期待されている
範囲内にはないため、
すでにオブジェクトを見失うこと、
又は、トラッキングギャップ
に至ることがある。比較のため
図4には、
図2において期待されていたオブジェクトポジション
又は予測されたオブジェクト6、並びに、実際に捕捉された
図3の事故に遭った車両4のレーダターゲットが、示されている
。これらのレーダターゲット5は、(予測されたオブジェクト6の領域にある)サーチ領域外にある。その結果、元来のオブジェクト、
又は、先行車4は、見失われる。車両4が再認識された場合、非常に低い速度の新しいオブジェクト、
又は、静止しているオブジェクトが作成される。
この場合、「動いている」から「静止している」と言う車両4の動きの推移に関する情報は、失われ
る。
【0029】
本発明による方法によれば、車両4は、その運動情報が、特定の閾値又は限界値(Threshold)以下である場合、事故オブジェクトとしてマークされる。例えば、その絶対加速度が、-12m/s2以下、即ち、フルブレーキとしても説明できない様な場合である。これは、第一ステップにおいて、これまで安定的にトラッキングされていたオブジェクト又は車両において、2つの連続する測定サイクル間に、帰属されているレーダターゲット5の速度に、極端に大きな速度変化があることが認識されることによって実施される。しかしながら、この場合、レーダターゲット5は、依然として速度用の通常のサーチウインド内になければならない。代案的にこれは、これまで安定的にトラッキングされていたオブジェクトが、明白な理由もなしに測定できなくなった、即ち、目下の計算サイクルにおいて該オブジェクトに、レーダターゲット5を帰属させられない場合に認識される。これは、例えば、レーダターゲット5の速度が、既にサーチウインド内には無い程も大きく変化してしまったことが要因であり得る。この様な状況が認識された場合、該オブジェクトのための速度サーチウインドは、レーダターゲット5が、これまでの速度サーチウインドから極端に逸脱していたとしても探すことができる程度に拡張される。この場合、レーダターゲット5のポジションは、オブジェクトの前方に無ければならない。この様な対策により、誤検出の確率も、より低減させることが可能である。
【0030】
サーチウインドを調整した後、目下の測定サイクルで再度サーチされるか、又は、次の測定サイクルで開始して、オブジェクトの事故仮説、又はメモリに保存されている運動情報サンプルに対応するレーダ検出がサーチされる。対応する検出が発見された場合、それは、事故候補に帰属される。この場合、加速度aは、差分商によって速度vと時間tから割り出すことができ、式:
a=(v(n-1)-v(n))/Δt
が成り立つ。続いて、この加速度は、次の計算サイクルにおいて正しいキネマティクス的予測を実施できる様にするため、オブジェクトに与えられる、又は、帰属される、即ち、新たな速度は、これに応じて減速し、同様にその位置もずれている。典型的な事故シナリオは、通常、70ms程しか続かないため、事故シナリオ全体は、僅か数回の測定サイクル後に、場合によっては(測定サイクルが70msの場合)、1測定サイクル後には、終了しており、事故オブジェクトは、停止状態に至っている。よって、サーチウインドの拡張は、可能であれば、僅かな測定サイクルにのみ制限されるべきである。この時間内に事故が確認されなかった場合、サーチウインドは、通常に戻すことができる。
【0031】
更に、本発明に
よる方法は、全ての、特に、レーダに基づいた
運転支援システム、例えば、緊急ブレー
キアシ
スト(EBA, Emergency Brake Assist)、操舵サポート付きのアクティ
ブレーン維持アシ
スト(LKA, Lane Keeping Assist)、追従走行用の車間調整クルーズコントロール(ACC, Adaptive Cruise Control)などにおいて採用可能であるが、特には、前方に向けられたセンサシステム(フロントレーダやロン
グレン
ジレーダ)が主な対象である。この類に属するレーダセンサは、例えば、
図5に示されている如く、各々の用途に応じて、近距離領域(Near-Scan SR)及び/
又は遠距離領域(Far-Scan FR)をスキャンできる様に異なる開口角度の検出領域を包含する様々なスキャンモードを有していることができる。
【0032】
そのため、ある実施形態は、双方のレーダスキャン(Near-Scan SRとFar-Scan FR)において、上述の交通状況が検出される様に構成されていて、その際、双方のスキャン用の二回の連続する測定間における速度差は、互いに独立して、定義可能な値よりも、好ましくは、1m/sよりも、大きくなければならない。これが、速度サーチウインド拡張を作動させ、例えば、続く五回の測定サイクルの間、7m/sとする(標準は、約1~2m/s)。このサイクルタイムが経過するまでには、万が一の事故は、完全に終了している筈である。次の測定サイクルにおいて、レーダ検出が、事故候補に帰属された場合、加速度も差分商によっても形成できる。絶対加速度が、例えば、-12m/s2を超えた場合、オブジェクトは、事故オブジェクトに分類され、該加速は、トラッキングされていたオブジェクトに帰属される。更に、妥当性検証のために第二スキャンを用いることは、必ずしも必要では無いが、これによって、誤って開始されたイベントの数を減らしたり、回避したりすることは可能である。
【0033】
現実的な方法として、これらの情報は、インターフェース(C2CコミュニケーションやC2Xコミュニケーション)を介して、例えば、他の車両、又は、利用者に対して、例えば、データ情報、レーダスキャンなどとして、提供できる。測定結果としての(加速度a・m/sと時間t秒に依存してプロットされる)レーダスキャンは、
図6に示されているが、図中、オブジェクト又は前を走っていた事故車両は、中断無く捕捉され、-50m/s
2もの加速度が短期間に発生する。実用的には、示されているパラメータは、事故を特定の速度範囲に限定するように所定のパラメータを変更させることも可能であり、それによって割り出しの信頼性をさらに改善することができる。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の観点として以下を含む。
1.
レーダセンサ(1)がレーダ信号を複数の連続した測定サイクルにおいて照射し、前記レーダ信号がオブジェクトによって反射され、前記レーダセンサによってレーダターゲット(5)として捕捉される、オブジェクトを追跡するための方法であって、
前記レーダターゲット(5)に基づいて、オブジェクトの運動情報がオブジェクト追跡のために割り出され、かつ、
前記運動情報に基づいて、オブジェクトのレーダターゲット(5)のためのサーチウインドが設定され、前記サーチウインドは、
連続した測定サイクルにおいて、
- 設定自在な閾値を超える運動情報の変化が割り出された場合、及び/又は
- 追跡していたオブジェクトについてレーダターゲット(5)が割り出されなかった場合に
拡張される
ことを特徴とするオブジェクトを追跡するための方法。
2.
運動情報として、速度及び/又は加速度が採用されることを特徴とする上記1に記載の方法。
3.
サーチウインドを拡張した後、目下の測定サイクルを反復し、又は、次の測定サイクルを開始することを特徴とする上記1又は2に記載の方法。
4.
オブジェクト追跡のための運動情報サンプルが保存され、前記運動情報サンプルを用いてオブジェクト及び/又は交通状況を分類することができ、特に、オブジェクトの運動情報と運動情報サンプルとが照らし合わされることによって、分類することができることを特徴とする上記1~3のうち少なくとも何れか一つに記載の方法。
5.
拡張されたサーチウインド内で捕捉されたレーダターゲット(5)が、運動情報サンプルに対応する場合、前記レーダターゲット(5)がオブジェクトに帰属されることを特徴とする上記4に記載の方法。
6.
予め定めることができる回数の測定サイクル内で、拡張されたサーチウインドのレーダターゲット(5)を、オブジェクトに帰属することができなかった場合は、サーチウインドの拡張がリセットされることを特徴とする上記5に記載の方法。
7.
サーチウインドの拡張は、予め定めることができる回数の測定サイクルに限定されることを特徴とする上記1~6のうち少なくとも何れか一つに記載の方法。
8.
オブジェクトの加速度が、速度から得られる差分商を用いて割り出され、オブジェクトに帰属されることを特徴とする上記1~7のうち少なくとも何れか一つに記載の方法。
9.
オブジェクトの運動情報、オブジェクトの分類、及び/又は、交通状況の分類を伝達することができる手段が設けられていることを特徴とする上記1~8のうち少なくとも何れか一つに記載の方法。
10.
前記分類が、運動情報の予め定めることのできる領域に限定されることを特徴とする上記4~9のうち何れか一つに記載の方法。
11.
割り出された運動情報、及び/又はオブジェクトの分類、及び/又は交通状況の分類、の妥当性検証が、複数の測定サイクルに基づいて実施されることを特徴とする上記1~10のうち少なくとも何れか一つに記載の方法。
12.
特に、上記1~11のうち何れか一つに記載の方法によるオブジェクト追跡を含む、運転支援システムであって、
この運転支援システムは、オブジェクト追跡のためのレーダセンサ(2)と、サーチウインドとを備え、
前記レーダセンサ(2)は、レーダ信号を複数の連続した測定サイクルにおいて照射し、前記レーダ信号がオブジェクトによって反射され、前記レーダセンサ(2)によって、レーダターゲット(5)として捕捉され、前記レーダターゲット(5)に基づいて、オブジェクトの運動情報がオブジェクト追跡のために割り出され、かつ
前記運動情報に基づいて、オブジェクトのレーダターゲット(5)のためのサーチウインドが設定され、前記サーチウインドは、
連続した測定サイクルにおいて、
- 設定自在な閾値を超える運動情報の変化が割り出された場合、及び/又は
- 追跡していたオブジェクトについてレーダターゲット(5)が割り出されなかった場合に
拡張される、運転支援システム。
13.
コンピュータプログラムが、コンピュータ内において実行されたとき、上記1~12のうち少なくとも一つに記載の方法を実施するためのプログラムコードを含むことを特徴とするコンピュータプログラム。
14.
コンピュータ上で実行され、上記1~13のうち少なくとも一つに記載の方法を実施させるための命令を含むことを特徴とするコンピュータ可読記憶媒体。
【符号の説明】
【0034】
1 自車両
2 レーダセンサ
3 検出領域
4 車両
5 レーダターゲット
6 予測されたオブジェクト
7 障害物
SR 近距離スキャン又はショートレンジ
FR 遠距離スキャン又はファーレンジ
a 加速度
v 速度
t 時間