(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】冠状動脈血管評定パラメータを測定する装置及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/026 20060101AFI20240319BHJP
A61B 6/50 20240101ALI20240319BHJP
A61B 6/02 20060101ALI20240319BHJP
A61B 5/0275 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
A61B5/026 110
A61B6/50 500B
A61B6/50 511E
A61B6/02 551Z
A61B5/0275 J
(21)【出願番号】P 2022513657
(86)(22)【出願日】2019-11-01
(86)【国際出願番号】 CN2019115027
(87)【国際公開番号】W WO2021042477
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】201910834871.6
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522036093
【氏名又は名称】▲蘇▼州▲潤▼▲邁▼▲徳▼医▲療▼科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100166729
【氏名又は名称】武田 幸子
(72)【発明者】
【氏名】劉 広志
(72)【発明者】
【氏名】王 之元
(72)【発明者】
【氏名】馮 亮
(72)【発明者】
【氏名】李 澤華
(72)【発明者】
【氏名】霍 勇
(72)【発明者】
【氏名】▲きょう▼ 艶君
(72)【発明者】
【氏名】李 建平
(72)【発明者】
【氏名】易 鉄慈
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-527901(JP,A)
【文献】特表2016-507272(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0032097(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0116533(US,A1)
【文献】特表2015-527136(JP,A)
【文献】特開2001-245862(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力ガイドワイヤ測定ユニット、冠動脈造影抽出ユニット、三次元モデリングユニット及びパラメータ測定ユニットを備え、
前記冠動脈造影抽出ユニットは三次元モデリングユニットに接続され、
前記パラメータ測定ユニットは前記圧力ガイドワイヤ測定ユニット、前記三次元モデリングユニットに接続され、
前記圧力ガイドワイヤ測定ユニットは、圧力ガイドワイヤにより冠状動脈狭窄遠位の圧力P
d及び冠状動脈入口圧Paを測定するためのものであり、
前記冠動脈造影抽出ユニットは、
前記測定血管の安静状態における第一体位造影画像を選び取り、測定血管に拡張薬が注射され、同時に造影剤も注射される状態で、前記測定血管
の拡張状態における第二体位造影画像を選び取るためのものであり、
前記三次元モデリングユニットは、前記冠動脈造影抽出ユニットが伝達した第一体位造影画像及び前記第二体位造影画像を受信し、三次元モデリングを行い、冠状動脈三次元血管モデルを取得するためのものであり、
前記パラメータ測定ユニットは、前記三次元モデリングユニットが伝達した冠状動脈三次元血管モデルを受信し、第一体位造影画像内の造影剤が測定血管の入口から出口まで通過した時間T
1を取得し、第二体位造影画像内の造影剤が測定血管の入口から出口まで通過した時間T
2を取得し、そして前記圧力ガイドワイヤ測定ユニットが伝達した圧力P
dを受信し、P
d、T
1、T
2に基づき、冠状動脈血管評定パラメータを測定するためのものである、
ことを特徴とする冠状動脈血管評定パラメータを測定する装置。
【請求項2】
前記パラメータ測定ユニットは、冠動脈血流予備能モジュール、微小血管抵抗係数モジュール、及び/又は冠状動脈血流予備量比モジュールを備え、
前記冠動脈血流予備能モジュール、前記微小血管抵抗係数モジュールはいずれも前記三次元モデリングユニットに接続され、
前記微小血管抵抗係数モジュール、前記冠状動脈血流予備量比モジュールはいずれも前記圧力ガイドワイヤ測定ユニットに接続され、
前記冠動脈血流予備能モジュールは、冠動脈血流予備能CFRを測定するためのものであり、前記CFRはCFR=T
1/T
2であり、
前記微小血管抵抗係数モジュールは、微小血管抵抗係数IMRを測定するためのものであり、前記IMRはIMR=P
d×T
2であり、
前記冠状動脈血流予備量比モジュールは、冠状動脈血流予備量比FFRを測定するためのものであり、前記FFRはFFR=P
d/P
aである、
ことを特徴とする請求項1に記載の冠状動脈血管評定パラメータを測定する装置。
【請求項3】
前記第一体位と前記第二体位の夾角は30°より大きい、
ことを特徴とする請求項1に記載の冠状動脈血管評定パラメータを測定する装置。
【請求項4】
前記三次元モデリングユニットは、
前記第一体位造影画像及び前記第二体位造影画像の干渉血管を取り除き、結果画像を得る画像処理モジュールと、
前記冠状動脈の延在方向に沿って、1枚ごとの前記結果画像の冠動脈中心線を抽出する冠動脈中心線抽出モジュールと、
血管直径を測定する血管直径測定モジュール、
1本ごとの前記冠動脈中心線及び直径を三次元空間に投射して三次元モデリングを行い、冠状動脈三次元血管モデルを取得する三次元モデリングモジュールと、
をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の冠状動脈血管評定パラメータを測定する装置。
【請求項5】
前記時間T
1及びT
2は心周期区域が分けられてなる部分区域画像のフレーム数と毎秒伝送フレーム数の比に基づいて計算される、
ことを特徴とする請求項1に記載の冠状動脈血管評定パラメータを測定する装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の冠状動脈血管評定パラメータを測定する装置を含む、
ことを特徴とする冠状動脈分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年9月5日に中国専利局に出願された、出願番号201910834871.6、出願名称“冠状動脈血管評定パラメータを測定する簡素化方法、装置及びシステム”の中国専利出願優先権を主張するものであり、その全内容は引用により本出願において組み合わせられる。
【0002】
本発明は渉冠状動脈医学技術分野、特に、冠状動脈血管評定パラメータを測定する簡素化方法、装置、冠状動脈分析システム及びコンピュータ記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
心臓はエネルギー消耗が高い器官である。安静状態において、心筋代謝の酸素摂取量は血液酸素含有量の60%~80%に達することがある。したがって、運動等のストレス状態において、心臓は組織の酸素摂取能力を高めることによって心筋酸欠量の増大需要を満たすことは難しく、大抵は心筋血流量を増やすことによって心筋代謝の酸素需要量を確保する。心筋微小循環は冠状動脈循環組成の95%を占め、一部の代謝産物、内皮、神経内分泌、筋原性などの各種要因によって心筋血流量を調整制御する機能を果たす。研究により、冠状動脈微小循環機能異常は虚血性心疾患患者の長期予後不良の重要な予測要因となることが分かっている。
【0004】
2013年のガイドライン改定により、“微小血管性狭心症が疑われる患者に対して、もし冠動脈造影に明らかな異常が見られない場合、造影時にアセチルコリン又はアデノシンを腔内注射してドプラー測定を行い、内皮依存又は非内皮依存のCFRを計算し、微小循環/心外膜血管の痙攣の有無を明確にすることを検討してもよい”ことが示され、推奨クラスIIBに分類された。
【0005】
2019年のガイドラインでは1つの推奨クラスIIA及び2つの推奨クラスIIBが追加され、“症状が続いている患者ではあるが、冠動脈造影では正常又は中等度の狭窄が見られ、且つiWfr/FFR値が保たれている患者に対して、ガイドワイヤ測定によるCFR及び/又は微小循環抵抗測定を用いることを検討しなければならない”ことが示され、推奨クラスIIAに分類された。
【0006】
冠状動脈微小血管機能検査は血管拡張剤に対する微小血管の反応を検出することによって完成される。ガイドラインの上記2点の改定は冠状動脈微小血管機能検査の重要性も示している。冠状動脈微小血管機能検査で採用される測定指標とは、冠状動脈微小血管の最大拡張程度、即ち冠動脈血流予備能(Coronary Flow Reserve)CFRを指し、使用する血管拡張剤としては、主に血管平滑筋に作用する非内皮依存性血管拡張剤および血管内皮細胞に作用する内皮依存性血管拡張剤があり、その中には、アデノシン及びアセチルコリンが含まれる。
【0007】
冠状造影に明らかな狭窄が見られないが、虚血性心疾患(CAD)が疑われる患者に対して、これまでの検査手段はアデノシン及びアセチルコリンを注射することによって、血管拡張剤に対する微小血管の反応を検出することであった。現在の検査方法としては、主に冠状動脈血流予備量比(FFR)及び微循環抵抗指数(IMR)があり、IMRは軟圧ガイドワイヤにより冠動脈圧力及び温度を同時に記録し、ガイドワイヤスティック上の2つの温度受容器が温度変化の時間差を検知すれば食塩水がガイディングカテーテルからガイドワイヤ先端の温度受容器まで通った平均通過時間(transit mean time、Tmn)を知ることができ、冠動脈遠位として定義される圧力PdとTmnの積に基づき、IMR値を得ることができる。しかし全体的に言えば、現在の微小循環を評価する方法は多くない。従来の検査手段はフローが簡素化され、安全性が向上し、結果も最適化が行われるため、ガイドラインの推奨レベルは以前よりも少し高くなった。この他、非侵襲検査として、経胸部ドプラー超音波、放射性核種撮像技術、核磁気共鳴画像法技術などの手段が、微小循環疾患の診断において有用であるが、それぞれ異なる程度の欠点が存在し、微小循環機能評価の推奨方法とすることができない。
【0008】
従来のCFR測定方法として、以下の方法がある:(1)ドプラーガイドワイヤ測定方法。これは、ドプラーガイドワイヤを冠状動脈血管内(病変遠位)に挿入し、安静及び最大充血状態における冠状動脈内血流速度を直接測定して、CFRを算出するというものである。(2)熱希釈曲線測定方法。これはダブル感知ガイドワイヤに温度-圧受容器を搭載することにより、冠状動脈内の温度変化を直接感知し、安静及び最大充血状態における冠状動脈内熱希釈曲線を取得し、冠状動脈流量速度の代わりに血流平均通過時間を用いてCFRを計算するというものである。
【0009】
圧力ガイドワイヤセンサによりIMR及びCFRを測定する場合、以下の問題が存在する:(1)圧力ガイドワイヤセンサが冠動脈口から近すぎると測定するTmnが小さすぎるためにIMR結果が小さくなりがちである。また、遠すぎると測定するTmnが大きすぎるためにIMR結果が大きくなりがちである。(2)安静状態及び最大充血状態時に合計6回の生理食塩水を注射しなければならず、もし圧力ガイドワイヤセンサ位置が移動すれば、毎回の測定結果は比較実行性がなくなり、測定プロセスが面倒である。(3)毎回、食塩水を注射する際に得られるTmnの差が大きくなる可能性があり、もしある回数の値と他の2つの数値の差が30%を超える場合、再び食塩水を注射して測定しなければならず、食塩水の注射回数が増える。(4)圧力ガイドワイヤ受容器の測定において、注射食塩水温度の低下速度が十分に速くなければ数値を記録することができず、注射速度を高くし、注射量を増やし、より低い温度の食塩水を用いなければならなくなる。影響要因が多すぎる。(5)注射後に温度が元の値まで回復するのが十分に速くない場合、エラーが出てしまい、注射開始から、温度が正常に回復するまでの時間が長すぎてしまう (>0.6 秒)。また、注射速度が遅すぎる、注射速度が均一ではない、注射量が大きすぎる等の問題も生じる可能性がある。したがって、圧力ガイドワイヤ受容器の距離、食塩水を注射する速度、注射量、食塩水の温度はいずれも測定結果に直接影響し、これにより、結果が不正確になり、測定プロセスが面倒になる上、拡張薬を長時間連続注射することで、患者に大きな影響を与え、重度の不快感をもたらす。
【発明の概要】
【0010】
本発明により提供される冠状動脈血管評定パラメータを測定する簡素化方法、装置、冠状動脈分析システム及びコンピュータ記憶媒体によれば、従来技術において圧力ガイドワイヤによりCFR及びIMRを測定する時に存在していた、拡張薬を長時間連続注射することで患者に大きな影響を与え、重度の不快感をもたらす問題、および、圧力ガイドワイヤ測定プロセスが面倒で、測定結果が不正確である問題を解消することができる。
【0011】
上記目的を実現するために、第一の態様において、本出願は以下の方法を提供する:
【0012】
測定血管に対して冠動脈造影を行うステップと、
圧力ガイドワイヤにより冠状動脈狭窄遠位の圧力Pdを測定するステップと、
前記測定血管の安静状態における第一体位造影画像及び拡張状態における第二体位造影画像を選び取るステップと、
冠動脈狭窄病変近位から遠位までの1区間の血管を選び取り、前記第一体位造影画像及び前記第二体位造影画像に基づき三次元モデリングを行い、冠状動脈三次元血管モデルを取得するステップと、
造影剤を注射し、前記冠状動脈三次元血管モデル内の前記造影剤の流動に基づき、第一体位造影画像内の造影剤が血管段入口から出口まで通過した時間T1を取得し、第二体位造影画像内の造影剤が血管段入口から出口まで通過した時間T2を取得するステップと、
Pd、T1、T2に基づき、冠状動脈血管評定パラメータを測定するステップと、
を含む、
冠状動脈血管評定パラメータを測定する簡素化方法。
【0013】
任意選択的に、前記冠状動脈血管評定パラメータには、冠動脈血流予備能CFR、微小血管抵抗係数IMRが含まれる、
上記の冠状動脈血管評定パラメータを測定する簡素化方法。
【0014】
任意選択的に、前記第一体位画像は安静状態における造影画像であり、前記第二体位画像は拡張状態における造影画像であり、即ち、
前記CFRはCFR=T1/T2である、
及び/又は、
前記IMRはIMR=Pd×T2である、
上記の冠状動脈血管評定パラメータを測定する簡素化方法。
【0015】
任意選択的に、前記冠状動脈血管評定パラメータには、冠状動脈血流予備量比FFRが含まれ、前記圧力ガイドワイヤにより冠状動脈入口圧Paを測定し、前記FFRはFFR=Pd/Paである、
上記の冠状動脈血管評定パラメータを測定する簡素化方法。
【0016】
任意選択的に、前記第一体位と前記第二体位の夾角は30°より大きい、
上記の冠状動脈血管評定パラメータを測定する簡素化方法。
【0017】
任意選択的に、前記圧力ガイドワイヤにより冠状動脈狭窄遠位の圧力Pdを測定するステップの前に、血管内に拡張薬を注射するステップを含む、
上記の冠状動脈血管評定パラメータを測定する簡素化方法。
【0018】
任意選択的に、前記圧力ガイドワイヤにより冠状動脈狭窄遠位の圧力Pdを測定するステップの後、前記測定血管に対して冠動脈造影を行うステップの前に、拡張薬を注射すると同時に前記血管内に造影剤を注射するステップを含む、
上記の冠状動脈血管評定パラメータを測定する簡素化方法。
【0019】
任意選択的に、前記の前記第一体位造影画像及び前記第二体位造影画像に基づき三次元モデリングを行い、冠状動脈三次元血管モデルを取得するステップは、
第一体位造影画像及び前記第二体位造影画像の干渉血管を取り除き、結果画像を得るステップと、
前記冠状動脈の延在方向に沿って、1枚ごとの前記結果画像の冠動脈中心線及び直径を抽出するステップと、
1本ごとの前記冠動脈中心線及び直径を三次元空間に投射して三次元モデリングを行い、冠状動脈三次元血管モデルを取得するステップと、
を含む、
上記の冠状動脈血管評定パラメータを測定する簡素化方法。
【0020】
任意選択的に、上記の冠状動脈血管評定パラメータを測定する簡素化方法、前記時間T1及びT2は心周期区域が分けられてなる部分区域画像のフレーム数と毎秒伝送フレーム数の比に基づいて計算される。
【0021】
第二の態様において、本出願は以下の装置を提供する:
【0022】
圧力ガイドワイヤ測定ユニット、冠動脈造影抽出ユニット、三次元モデリングユニット及びパラメータ測定ユニットを備え、
前記冠動脈造影抽出ユニットは三次元モデリングユニットに接続され、
前記パラメータ測定ユニットは前記圧力ガイドワイヤ測定ユニット、前記三次元モデリングユニットに接続され、
前記圧力ガイドワイヤ測定ユニットは、圧力ガイドワイヤにより冠状動脈狭窄遠位の圧力Pd及び冠状動脈入口圧Paを測定するためのものであり、
前記冠動脈造影抽出ユニットは、前記測定血管の第一体位造影画像及び第二体位造影画像を選び取るためのものであり、
前記三次元モデリングユニットは、前記冠動脈造影抽出ユニットが伝達した第一体位造影画像及び前記第二体位造影画像を受信し、三次元モデリングを行い、冠状動脈三次元血管モデルを取得するためのものであり、
前記パラメータ測定ユニットは、前記三次元モデリングユニットが伝達した冠状動脈三次元血管モデルを受信し、第一体位造影画像内の造影剤が血管段入口から出口まで通過した時間T1を取得し、第二体位造影画像内の造影剤が血管段入口から出口まで通過した時間T2を取得し、そして前記圧力ガイドワイヤ測定ユニットが伝達した圧力Pdを受信し、Pd、T1、T2に基づき、冠状動脈血管評定パラメータを測定するためのものである、
上記の冠状動脈血管評定パラメータを測定する簡素化方法に用いられる冠状動脈血管評定パラメータを測定する装置。
【0023】
任意選択的に、前記パラメータ測定ユニットは、冠動脈血流予備能モジュール、微小血管抵抗係数モジュール、及び/又は冠状動脈血流予備量比モジュールを備え、
前記冠動脈血流予備能モジュール、前記微小血管抵抗係数モジュールはいずれも前記三次元モデリングユニットに接続され、
前記微小血管抵抗係数モジュール、前記冠状動脈血流予備量比モジュールはいずれも前記圧力ガイドワイヤ測定ユニットに接続され、
前記冠動脈血流予備能モジュールは、冠動脈血流予備能CFRを測定するためのものであり、前記CFRはCFR=T1/T2であり、
前記微小血管抵抗係数モジュールは、微小血管抵抗係数IMRを測定するためのものであり、前記IMRはIMR=Pd×T2であり、
前記冠状動脈血流予備量比モジュールは、冠状動脈血流予備量比FFRを測定するためのものであり、前記FFRはFFR=Pd/Paである。
【0024】
上記の冠状動脈血管評定パラメータを測定する装置。
【0025】
第三の態様において、本出願は以下のシステムを提供する:
【0026】
上記の冠状動脈血管評定パラメータを測定する装置を含む、
冠状動脈分析システム。
【0027】
第四の態様において、本出願は以下のコンピュータ記憶媒体を提供する:
【0028】
コンピュータプログラムがプロセッサに実行される時に上記の冠状動脈血管評定パラメータを測定する簡素化方法を実現する、
コンピュータ記憶媒体。
【0029】
本出願の実施例により提供される方案は少なくとも以下の有益な效果を奏する:
【0030】
本出願により提供される冠状動脈血管評定パラメータを測定する簡素化方法によれば、冠状動脈狭窄遠位の圧力Pdを測定するときのみ、拡張薬を注射すればよく、造影プロセスは数秒で拡張薬の注射を止めることができ、拡張薬の注射時間を減少させることができ、その後、冠動脈造影画像により三次元モデリングを行い、第一体位造影画像内の造影剤が血管段入口から出口まで通過した時間T1を取得し、第二体位造影画像内の造影剤が血管段入口から出口まで通過した時間T2を取得し、Pd、T1、T2に基づきIMR、CFR等の冠状動脈血管評定パラメータを測定するため、測定プロセスが簡単であり、測定結果が正確であり、全て圧力ガイドワイヤを用いてIMR、CFR等の冠状動脈血管評定パラメータを測定する場合の問題を解消することができる。
【0031】
ここで説明する図面は本発明をさらに理解するためのものであり、本発明の一部分を構成し、本発明の概略的な実施例及びその記載は本発明を説明するためのものであり、本発明に対する不適切な限定を構成するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本出願の冠状動脈血管評定パラメータを測定する簡素化方法の一つの実施例のフローチャートである。
【
図2】本出願の冠状動脈血管評定パラメータを測定する簡素化方法の別の実施例のフローチャートである。
【
図3】本出願のステップS400のフローチャートである。
【
図4】本出願の冠状動脈血管評定パラメータを測定する装置の構造ブロック図である。
【
図5】本出願のパラメータ測定ユニットの構造ブロック図である。
【
図6】本出願の三次元モデリングユニットの一つの実施例の構造ブロック図である。
【
図7】本出願の三次元モデリングユニットの別の実施例の構造ブロック図である。
【
図8】本出願の画像処理モジュールの構造ブロック図である。
【
図15】冠状動脈が存在する位置の区域画像である。
【
図18】
図17の体位角度と冠動脈中心線を結合して生成した冠状動脈三次元血管モデル図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の目的、技術方案及び長所がより明確になるように、以下に本発明の具体的な実施例及び対応する図面を組み合わせて本発明の技術方案を明瞭、完全に記載する。勿論、記載する実施例は本発明の一部の実施例であり、全ての実施例ではない。本発明における実施例に基づき、当業者が創造的な労働を行わずに得られる他の実施例もすべて本発明の保護範囲に入る。
【0034】
以下に図面により本発明の複数の実施形態を開示する。明確に説明できるよう、多くの実践的な細部を以下の記載において一緒に説明する。しかし、これら実践的な細部は本発明を限定するために用いられるのではないと理解されるべきである。つまり、本発明の一部の実施形態において、これら実践的な細部は必須事項ではない。この他、図を簡素化するために、一部の慣用的な構造や構成部材については図中で簡単に概略的に示すだけにする。
【0035】
図1に示されるように、本出願は以下のステップを含む冠状動脈血管評定パラメータを測定する簡素化方法を提供する:
【0036】
S100 測定血管に対して冠動脈造影を行うステップと、
S200 圧力ガイドワイヤにより冠状動脈狭窄遠位の圧力Pdを測定するステップと、
S300 前記測定血管の安静状態における第一体位造影画像及び拡張状態における第二体位造影画像を選び取るステップと、
S400 冠動脈狭窄病変近位から遠位までの1区間の血管を選び取り、第一体位造影画像及び第二体位造影画像に基づき三次元モデリングを行い、冠状動脈三次元血管モデルを取得するステップと、
S500 造影剤を注射し、前記冠状動脈三次元血管モデル内の前記造影剤の流動に基づき、第一体位造影画像内の造影剤が血管段入口から出口まで通過した時間T1を取得し、第二体位造影画像内の造影剤が血管段入口から出口まで通過した時間T2を取得するステップと、
S600 Pd、T1、T2に基づき、冠状動脈血管評定パラメータを測定するステップと、
を含む。
【0037】
本出願の一つの実施例において、S600における冠状動脈血管評定パラメータには、冠動脈血流予備能CFR、微小血管抵抗係数IMRが含まれる。
【0038】
本出願により提供される冠状動脈血管評定パラメータを測定する簡素化方法によれば、テスト冠状動脈狭窄遠位の圧力Pdを測定するときのみ、拡張薬を注射すればよく、造影プロセスは数秒で拡張薬の注射を停止することができ、拡張薬の注射時間を減少させることができ、その後、冠動脈造影画像により三次元モデリングを行い、第一体位造影画像内の造影剤が血管段入口から出口まで通過した時間T1を取得し、第二体位造影画像内の造影剤が血管段入口から出口まで通過した時間T2を取得し、根据Pd、T1、T2に基づきIMR、CFR等の冠状動脈血管評定パラメータを測定するため、測定プロセスが簡単であり、測定結果が正確であり、全て圧力ガイドワイヤを用いてIMR、CFR等の冠状動脈血管評定パラメータを測定する場合の問題を解消することができる。
【0039】
なお、拡張薬を注射することは、静脈または冠動脈内に拡張薬を注射することを含み、注入方式としては、拡張薬を造影剤と混ぜて静脈または冠動脈に注射してもよく、また、数回に分けて間隔をあけて注射してもよく、いずれも本出願の保護範囲に入る。アデノシン、ATPなど、拡張作用を持つ薬剤であれば、すべて本出願の保護範囲に入る。
【0040】
本出願の一つの実施例において、S300においてCFRは CFR=T1/T2であり、及び/又は、IMRはIMR=Pd×T2である。
【0041】
本出願の一つの実施例において、上記の時間T1及びT2は心周期区域が分けられてなる部分区域画像のフレーム数と毎秒伝送フレーム数の比に基づいて計算され、
即ち、T=N/fpsであり、
但し、Nは心周期区域が分けられてなる部分区域画像のフレーム数を表し、fpsは画像の毎秒再生フレーム数を表し、つまり、一般的に言う動画又はビデオの画面数であり、Tはある一体位造影画像における造影剤が血管段入口から出口まで通過した時間Tを表し、
よって、T1及びT2は上記式に基づき算出できる。
【0042】
本出願の一つの実施例において、fps=10~30であり、好ましくは、fps=15である。
【0043】
T1及びT2はいずれも造影画像が取得した冠状動脈三次元血管モデルに基づき測定されるため、CFRも冠状動脈三次元血管モデルにより測定され、圧力ガイドワイヤセンサに依存する必要がない。よって、圧力ガイドワイヤセンサが食塩水の衝撃で移動しやすく、測定が不正確となる問題を解消し、また、食塩水を注射する必要がない造影画像に基づき測定されるため、食塩水を注射する速度、注射量、食塩水の温度がCFR測定結果に与える影響を防ぐことができ、測定の正確率を向上させることができる。
【0044】
IMRの測定は圧力ガイドワイヤ及び造影画像に基づくものであり、圧力ガイドワイヤが測定する冠状動脈狭窄遠位の圧力Pdはより正確であり、その後、再び造影画像に基づき時間T2を測定するため、拡張薬の注射時間を減少させ、食塩水の注射回数を減少させ、測定結果に対する食塩水の影響を低減させ、IMR測定結果の正確率を向上させ、測定プロセスが簡単である。
【0045】
本出願の一つの実施例において、S600における冠状動脈血管評定パラメータには、冠状動脈血流予備量比FFRが含まれ、S200における圧力ガイドワイヤにより冠状動脈入口圧Paを測定し、FFRは FFR=Pd/Paである。
【0046】
本出願の一つの実施例において、S300における第一体位画像において選び取った第一体位と第二体位画像において選び取った第二体位の夾角は30°より大きい。
【0047】
図2に示されるように、本出願の一つの実施例において、S100の後、S200の前に、S000血管内に拡張薬を注射するステップを含む。
【0048】
図2に示されるように、本出願の一つの実施例において、S100の前に、S110拡張薬を注射すると同時に血管内に造影剤を注射するステップを含む。
【0049】
なお、造影終了後すぐに拡張薬を注射することを停止できるため、拡張薬の注射量及び注射回数を減少させ、より安全で、信頼性が高い。
【0050】
図3に示されるように、本出願の一つの実施例において、S400は以下のステップを含む:
【0051】
S410 第一体位造影画像及び第二体位造影画像の干渉血管を取り除き、結果画像を得るステップ。
【0052】
当該ステップは具体的に、
第一体位造影画像及び第二体位造影画像の干渉血管を取り除き、
冠動脈造影画像に対して静態ノイズ及び動態ノイズを含むノイズを取り除き、
カテーテルが現れる第一フレーム分割画像を参照画像として定義し、完全な冠状動脈が現れた第kフレームの前記分割画像をターゲット画像として定義し、kは1より大きい正整数であり、
前記参照画像から前記ターゲット画像を差し引き、前記カテーテルの特徴点Oを抽出し、
具体的には、前記参照画像から前記ターゲット画像を差し引き、静態ノイズ及び動態ノイズを含むノイズを取り除き、前記ノイズを取り除いた後の画像に対して画像増幅を行い、増幅した後のカテーテル画像に対して二値化処理を行い、一組のカテーテル特徴点Oを有する二値化画像を得て、
前記ターゲット画像から前記参照画像を差し引き、前記冠状動脈が存在する位置の区域画像を抽出し、
具体的には、前記ターゲット画像から前記参照画像を差し引き、静態ノイズ及び動態ノイズを含むノイズを取り除き、ノイズを取り除いた後の前記画像に対して画像増幅を行い、増幅した後の前記ターゲット画像における各区域と前記カテーテル特徴点の位置関係に基づき、冠状動脈の区域、即ち前記冠状動脈が存在する位置の区域画像を特定して抽出し、
前記区域画像は前記カテーテルの特徴点をシードポイントとして動的成長を行い、前記結果画像を取得し、
具体的には、前記冠状動脈が存在する位置の区域画像に対して二値化処理を行い、二値化冠状動脈画像を取得し、前記二値化冠状動脈画像に対して形態学演算を行って前記カテーテルの特徴点をシードポイントとし、前記二値化冠状動脈画像は前記シードポイントが存在する位置に基づき、動的領域成長を行い、前記結果画像を取得する。
【0053】
S420 冠状動脈の延在方向に沿って、1枚ごとの結果画像の冠動脈中心線及び直径を抽出するステップ。
【0054】
S430 1本ごとの冠動脈中心線及び直径を三次元空間に投射して三次元モデリングを行い、冠状動脈三次元血管モデルを取得するステップ。
【0055】
当該ステップは具体的に、
1枚ごとの冠動脈造影画像の体位撮影角度を取得し、
1本ごとの前記冠動脈中心線を体位撮影角度と結合して三次元空間に投射し、投影を行い、冠状動脈三次元血管モデルを生成する。
【0056】
図4に示されるように、本出願は上記の冠状動脈血管評定パラメータを測定する簡素化方法に用いられる、以下の冠状動脈血管評定パラメータを測定する装置を提供する:
【0057】
圧力ガイドワイヤ測定ユニット110、冠動脈造影抽出ユニット120、三次元モデリングユニット130及びパラメータ測定ユニット140を備え、
冠動脈造影抽出ユニット120は三次元モデリングユニット130に接続され、
パラメータ測定ユニット140は圧力ガイドワイヤ測定ユニット110、三次元モデリングユニット130に接続され、
圧力ガイドワイヤ測定ユニット110は、圧力ガイドワイヤにより冠状動脈狭窄遠位の圧力Pd及び冠状動脈入口圧Paを測定するものであり、
冠動脈造影抽出ユニット120は、測定血管の第一体位造影画像及び第二体位造影画像を選び取るためのものであり、
三次元モデリングユニット130は、冠動脈造影抽出ユニットが伝達した第一体位造影画像及び第二体位造影画像を受信し、三次元モデリングを行い、冠状動脈三次元血管モデルを取得するためのものであり、
パラメータ測定ユニット140は、三次元モデリングユニットが伝達した冠状動脈三次元血管モデルを受信し、第一体位造影画像内の造影剤が血管段入口から出口まで通過した時間T1を取得し、第二体位造影画像内の造影剤が血管段入口から出口まで通過した時間T2を取得し、そして圧力ガイドワイヤ測定ユニットが伝達した圧力Pdを受信し、Pd、T1、T2に基づき、冠状動脈血管評定パラメータを測定するためのものである。
【0058】
図5に示されるように、本出願の一つの実施例において、
パラメータ測定ユニット140は、冠動脈血流予備能モジュール141、微小血管抵抗係数モジュール142、及び/又は冠状動脈血流予備量比モジュール143を備え、
冠動脈血流予備能モジュール141、微小血管抵抗係数モジュール142はいずれも三次元モデリングユニット130に接続され、
微小血管抵抗係数モジュール142、冠状動脈血流予備量比モジュール143はいずれも圧力ガイドワイヤ測定ユニット110に接続され、
冠動脈血流予備能モジュール141は、冠動脈血流予備能CFRを測定するためのものであり、CFRはCFR=T
1/T
2であり、
微小血管抵抗係数モジュール142は、微小血管抵抗係数IMRを測定するためのものであり、IMRはIMR=P
d×T
2であり、
冠状動脈血流予備量比モジュール143は、冠状動脈血流予備量比FFRを測定するためのものであり、FFRはFFR=Pd/Paである。
【0059】
パラメータ測定ユニット140はさらに、T1測定モジュール、T2測定モジュール及びCFR測定モジュールを備え、いずれも三次元モデリングユニット130に接続され、且つT1測定モジュール、T2測定モジュールはいずれもCFR測定モジュールに接続される。
【0060】
図6に示されるように、本出願の一つの実施例において、
三次元モデリングユニット130は、画像読み取りモジュール131、分割モジュール132、血管長さ測定モジュール133及び三次元モデリングモジュール134を備え、
分割モジュール132は画像読み取りモジュール131、血管長さ測定モジュール133、三次元モデリングモジュール134に接続され、
画像読み取りモジュール131は、造影画像を読み取るためのものであり、
分割モジュール132は、冠状動脈造影画像の一つの心周期区域を選び取るためのものであり、
血管長さ測定モジュール133は、心周期区域内の血管の長さLを測定し、血管の長さLを分割モジュール132に伝達するためのものであり、
三次元モデリングモジュール134は、分割モジュール132が選び取った冠動脈造影画像に基づき、三次元モデリングを行い、冠状動脈三次元血管モデルを取得するためのものである。
【0061】
図7に示されるように、本出願の一つの実施例において、
三次元モデリングユニット130はさらに、画像処理モジュール135、冠動脈中心線抽出モジュール136及び血管直径測定モジュール137を備え、
画像処理モジュール135は冠動脈中心線抽出モジュール136に接続され、
三次元モデリングモジュール134は冠動脈中心線抽出モジュール136、血管直径測定モジュール137に接続され、
画像処理モジュール135は、分割モジュール132が伝達した少なくとも2つの体位の冠動脈造影画像を受信し、冠動脈造影画像の干渉血管を取り除き、
図17に示される結果画像を得るためのものであり、
冠動脈中心線抽出モジュール136は、冠状動脈の延在方向に沿って、
図17に示される1枚ごとの結果画像の冠動脈中心線を抽出するためのものであり、
血管直径測定モジュール137は、血管直径Dを測定するためのものであり、
三次元モデリングモジュール134は、1本ごとの冠動脈中心線及び直径を三次元空間に投射して三次元モデリングを行い、冠状動脈三次元血管モデルを取得するためのものである。
【0062】
本出願は冠動脈造影画像に基づき冠状動脈三次元血管モデルを合成し、業界内の空白を補い、医学技術分野に積極的な作用を果たす。
【0063】
本出願の一つの実施例において、
画像処理モジュール135内部に、画像ノイズ除去モジュール1350を設け、これは冠動脈造影画像に対して静態ノイズ及び動態ノイズを含むノイズを取り除くためのものである。
【0064】
ノイズ除去モジュール1350により冠動脈造影画像における干渉要因を取り除き、画像処理の品質を向上させる。
【0065】
図8に示されるように、本出願の一つの実施例において、
画像処理モジュール135内部に、いずれも冠動脈中心線抽出モジュール136に接続されるカテーテル特徴点抽出モジュール1351及び冠状動脈抽出モジュール1352を設け、
カテーテル特徴点抽出モジュール1351は冠状動脈抽出モジュール1352、画像ノイズ除去モジュール1350に接続され、
カテーテル特徴点抽出モジュール1351は、カテーテルが現れる第一フレーム分割画像を
図9に示される参照画像として定義し、完全な冠状動脈が現れた第kフレーム分割画像を
図10及び
図11に示されるターゲット画像として定義し、kは1より大きい正整数であり、
図10及び
図11に示されるターゲット画像に対して増幅を行い、
図12及び14に示される増幅した後の画像を得て、
図9に示される参照画像から
図10及び
図11に示されるターゲット画像を差し引き、
図13に示されるカテーテルの特徴点Oを抽出するためのものであり、
冠状動脈抽出モジュール1352は、
図10及び
図11に示されるターゲット画像から
図9に示される参照画像を差し引き、
図14に示される増幅した後のターゲット画像における各区域とカテーテル特徴点の位置関係に基づき、冠状動脈の区域、即ち
図15に示される冠状動脈が存在する位置の区域画像を特定して抽出するためのものであり、
図15に示される区域画像は
図13に示されるカテーテルの特徴点をシードポイントとして動的成長を行い、
図16に示される結果画像を取得する。
【0066】
画像処理モジュール135内部にさらに、二値化処理モジュールを設け、これは画像に対して二値化処理を行い、冠状動脈三次元血管モデルを取得するためのものである。
【0067】
以下に具体的な実施例とあわせて本出願について具体的に説明する。
【0068】
実施例1
図17に示されるように、これはある患者の撮影された2つの体位の冠動脈造影画像であり、左図は体位角度が右前斜位RAO:25°及び頭部方向CRA:23°である造影画像であり、右図は体位角度が右前斜位RAO:3°及び頭部方向CRA:30°の造影画像である。
【0069】
圧力ガイドワイヤセンサを患者の冠動脈遠位(ガイディングカテーテル開口からの距離>5cm)に配置し、FFR測定時に拡張薬を注射し、圧力ガイドワイヤにより測定し、Pa=95.2Hg、Pd=85.8mmHgである。
【0070】
冠状動脈三次元血管モデルの血管長さはL値=120mmであり、生成された冠状動脈三次元血管モデルは
図18に示され、血管直径はD値=2~4 mmであり、T
1=N
1/fps
1=26/15=1.7s 、T
2=N
2/fps
2=9/15=0.6s 、
CFR=T
1/T
2=1.7/0.6=2.83、
したがって、IMR=85.8×0.6=51.48、
FFR=85.8/95.2=0.90、
である。
【0071】
比較例1
実施例1の患者と同じく、比較例1及び実施例1はいずれも同じ患者の撮影された同じ冠動脈造影画像である。
【0072】
圧力ガイドワイヤセンサを患者の冠動脈遠位(ガイディングカテーテル開口からの距離>5cm)に配置し、カテーテルにより血管に3mlの生理食塩水を注入し、血液温度が正常値まで回復したことが検出されたら、再びカテーテルにより血管に3mlの生理食塩水を注入し、上記プロセスを3回繰り返し、その後、T1、T1を1.6sと記録し、血管に拡張薬を入れ、血管を拡張状態に到達させて保持し(拡張薬を入れる前後の圧力ガイドワイヤセンサが同じ位置にあることを保証する)、カテーテルにより血管に3mlの生理食塩水を注入し、血液温度が正常値に回復したことが検出されたら、再びカテーテルにより血管に3mlの生理食塩水を注入し、上記プロセスを3回繰り返し、その後、T2、 T2を0.58sと記録し、測定された冠動脈遠位の圧力はPd=88mmHgであり、冠動脈入口圧はPa=94.8mmHgであり、
CFR=1.6/0.58=2.76、
IMR=Pd×T2=88×0.58=51.04、
FFR=88/94.8=0.928、
である。
【0073】
実施例1及び比較例1の比較により、差は0.5以内であり、IMR測定結果は基本的に同じであることがわかったので、実施例1の測定結果は正確である。また、本出願の実施例は生理食塩水を用いずに圧力ガイドワイヤにより遠位の圧力を測定し、T1、T2は三次元血管モデルにより測定される。また、造影画像によりIMRの測定を実現し、業界内の空白を補い、操作はより簡単であり、さらにFFRの測定も実現し、且つ生理食塩水を用いる必要がなく、圧力ガイドワイヤセンサが生理食塩水の衝撃により、圧力ガイドワイヤの位置が制御し難い問題や遠位圧力測定が不正確である問題を解決することができる。
【0074】
本出願は上記の冠状動脈血管評定パラメータを測定する装置を含む冠状動脈分析システムを提供する。
【0075】
本出願はコンピュータプログラムがプロセッサに実行される時に上記の冠状動脈血管評定パラメータを測定する簡素化方法を実現するコンピュータ記憶媒体を提供する。
【0076】
当業者の認識として、本発明の各々の態様はシステム、方法又はコンピュータプログラム製品として実現することができる。したがって、本発明の各々の態様は具体的に以下の形式として実現できる。即ち、完全なハードウエア実施形態、完全なソフトウエア実施形態(ファームウエア、常駐ソフトウエア、マイクロコード等を含む)、又はハードウエア及びソフトウエアの態様を組み合わせた実施形態、ここでは総じて“回路”、“モジュール”又は“システム”と称することができる。この他、一部の実施例において、本発明の各々の態様はさらに一つの又は複数のコンピュータ読み取り可能な媒体におけるコンピュータプログラム製品の形式として実現することができ、当該コンピュータ読み取り可能な媒体にはコンピュータ読み取り可能なプログラムコードが含まれる。本発明の実施例の方法及び/又はシステムの実施形態は手動的、自動的又はその組み合わせ方式により選択されたタスクを実行又は完成させることに関することができる。
【0077】
例えば、本発明の実施例に基づき選択されるタスクを実行するためのハードウエアをチップ又は回路として実現することができる。ソフトウエアとして、発明の実施例に基づき選択されるタスクを、コンピュータが如何なる適切な操作システムを使用することにより実行する複数のソフトウエアコマンドとして実現できる。本発明の例示的な実施例において、本明細書の方法及び/又はシステムの例示的な実施例に基づく一つの又は複数のタスクをデータプロセッサにより実行できる。例えば、複数のコマンドを実行するための計算プラットフォーム。任意選択的に、当該データプロセッサはコマンド及び/又はデータを記憶するための揮発性メモリ及び/又はコマンド及び/又はデータを記憶するための不揮発性メモリを含む。例えば、磁気ハードディスク及び/又はリムーバブル媒体。任意選択的に、ネットワーク接続も提供する。任意選択的に、ディスプレイ及び/又は例えばキーボードやマウスなどのユーザ入力機器も提供する。
【0078】
一つの又は複数のコンピュータ読み取り可能な如何なる組み合わせも利用できる。コンピュータ読み取り可能な媒体はコンピュータ読み取り可能な信号媒体又はコンピュータ読み取り可能な記憶媒体とすることができる。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、例えば電気、磁気、光、電磁、赤外線、又は半導体のシステム、装置又はデバイス、若しくは任意の以上の組み合わせとすることができるが、これらに限られない。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体の更なる具体的な例(全てを挙げるものではない)は以下を含む:
【0079】
一つの又は複数の導線を有する電気接続、ポータブルコンピュータディスク、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、書き換え可能なリードオンリーメモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、光ファイバー、コンパクトディスクリードオンリーメモリ(CD-ROM)、光記憶装置、磁気記憶装置、若しくは上記の任意の適切な組み合わせ。本明細書において、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体はプログラムを含む又は記憶する如何なる有形媒体とすることができ、当該プログラムはコマンド実行システム、装置又はデバイスにより使用される若しくはこれらと組み合わせて使用することができる。
【0080】
コンピュータ読み取り可能な信号媒体は、ベースバンドに含まれる若しくは搬送波の一部として伝播できるデータ信号とすることができ、コンピュータ読み取り可能なプログラムコードを搭載できる。このように伝播されるデータ信号は複数の形式を採用でき、電磁信号、光信号又は上記の任意の適切な組み合わせを含むが、これらに限られない。コンピュータ読み取り可能な信号媒体はさらに、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体以外の如何なるコンピュータ読み取り可能な媒体とすることができ、当該コンピュータ読み取り可能な媒体は、コマンド実行システム、装置又はデバイスにより使用される若しくはこれらと組み合わせて使用するプログラムを送信、伝播又は伝送できる。
【0081】
コンピュータ読み取り可能な媒体に含まれるプログラムコードは如何なる適切な媒体を用いて伝送することができ、無線、有線、光ケーブル、RF等、若しくは上記の任意の適切な組み合わせが含まれる(但しこれらに含まれない)。
【0082】
例えば、一つの又は複数のプログラミング言語の如何なる組み合わせでも本発明の各態様に用いられる操作を実行するためのコンピュータプログラムコードをプログラミングすることができ、例えばJava、Smalltalk、C++等のターゲット型プログラミング言語と通常プロセスのプログラミング言語、例えば“C”プログラミング言語又は類似したプログラミング言語を含む。プログラムコードは完全にユーザコンピュータ上で実行することも、一部をユーザコンピュータ上で実行することもでき、一つの独立したソフトウェアパッケージとして実行することも、一部をユーザコンピュータ上で、一部をリモートコンピュータ上で実行することもでき、若しくは完全にリモートコンピュータ又はサーバ上で実行することもできる。リモートコンピュータにかかる場合、リモートコンピュータは、ローカルエリアネットワーク(LAN)又はワイドエリアネットワーク(WAN)を含む任意の種類のネットワークによりユーザコンピュータに接続でき、若しくは、外部コンピュータに接続できる(例えばインターネットサービスプロバイダーによりインターネットを通じで接続する)。
【0083】
フローチャート及び/又はブロック図の各ブロック及びフローチャート及び/又はブロック図中の各ブロックの組み合わせは、いずれもコンピュータプログラムコマンドにより実現できると理解されるべきである。これらコンピュータプログラムコマンドは汎用コンピュータ、専用コンピュータ又は他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサに提供され、一つの機器として生産することができ、これにより、これらコンピュータプログラムコマンドはコンピュータ又は他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサの実行時に、フローチャート及び/又はブロック図中の一つの又は複数のブロック中で規定される機能/動作を実現できる装置とすることができる。
【0084】
これらコンピュータプログラムコマンドは、コンピュータ読み取り可能な媒体に記憶することもでき、これらコマンドは、コンピュータ、他のプログラム可能なデータ処理装置、又は他の設備を特定な方式で作動させ、そして、コンピュータ読み取り可能な媒体に記憶されたコマンドはフローチャート及び/又はブロック図中の一つの又は複数のブロック中で規定される機能/動作を実現できるコマンドを含む製品(article of manufacture)とすることができる。
【0085】
さらに、コンピュータ、他のプログラム可能なデータ処理設備又は他の設備で一連の操作ステップを実行させるように、コンピュータ(例えば、冠状動脈分析システム)又は他のプログラム可能なデータ処理設備にコンピュータプログラムコマンドをロードすることができ、これにより、コンピュータ、他のプログラム可能な装置又は他の設備で実行されるコマンドが、フローチャート及び/又は一つの又は複数のブロック図のブロック中で指定される機能/動作を実現するためのプロセスを提供するように、コンピュータが実行するプロセスを生成することができる。
【0086】
本発明の以上の具体的な実例により、本発明の目的、技術方案及び有益な效果について、より詳細に説明した。以上は本発明の具体的な実施例に過ぎず、本発明を限定するために用いられるものではなく、本発明の精神及び原則を逸脱しない限り、行われる如何なる修正、均等差し替え、改良なども、全て本発明の保護範囲に包含されると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0087】
圧力ガイドワイヤ測定ユニット110、冠動脈造影抽出ユニット120、三次元モデリングユニット130、画像読み取りモジュール131、分割モジュール132、血管長さ測定モジュール133、三次元モデリングモジュール134、画像処理モジュール135、画像ノイズ除去モジュール1350、カテーテル特徴点抽出モジュール1351、冠状動脈抽出モジュール1352、冠動脈中心線抽出モジュール136、血管直径測定モジュール137、パラメータ測定ユニット140、冠動脈血流予備能モジュール141、微小血管抵抗係数モジュール142、冠状動脈血流予備量比モジュール143。