(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】ワーク交換治具及び切断加工システム
(51)【国際特許分類】
B23H 7/02 20060101AFI20240319BHJP
B23Q 7/04 20060101ALI20240319BHJP
B23D 47/04 20060101ALI20240319BHJP
B23D 55/04 20060101ALI20240319BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
B23H7/02 J
B23Q7/04 M
B23D47/04 E
B23D55/04 E
B23Q11/00 Q
(21)【出願番号】P 2022517009
(86)(22)【出願日】2021-04-15
(86)【国際出願番号】 JP2021015599
(87)【国際公開番号】W WO2021215346
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】P 2020074959
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002103
【氏名又は名称】弁理士法人にじいろ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞武 主命
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-070932(JP,U)
【文献】特開2017-080839(JP,A)
【文献】特開2002-263958(JP,A)
【文献】特開平06-134623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23H 1/00 - 11/00
B26D 1/25 - 1/62
B26D 7/00 - 11/00
B23D 47/04、55/04
B23Q 7/00 - 7/18
B23Q 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断加工機に着脱可能であって、前記切断加工機により切断されるワークを保持するワーク交換治具において、
前記ワークを保持する治具本体と、
前記切断加工機に対して前記ワーク交換治具を着脱するための取付具と、
前記切断加工機により前記ワークから切落された切落し部を受容する切落し籠と、
前記治具本体に対して前記切落し籠を支持するアーム部とを有する、ワーク交換治具。
【請求項2】
前記アーム部は、前記治具本体に対して間隙を隔てて前記切落し籠を位置させるために屈曲または湾曲している、請求項1記載のワーク交換治具。
【請求項3】
前記治具本体に対する前記切落し籠の相対位置は調整可能である、請求項1又は2に記載のワーク交換治具。
【請求項4】
前記アーム部は前記切落し籠が前記治具本体に対して接近/離反する方向に伸縮する構造を有する、請求項3記載のワーク交換治具。
【請求項5】
前記アーム部は前記切落し籠が前記治具本体に対して接近/離反する方向に直交する方向に伸縮する構造を有する、請求項3又は4に記載のワーク交換治具。
【請求項6】
前記治具本体は、前記アーム部を取り付けるための複数の取付構造を有し、前記治具本体に対する前記切落し籠の相対位置を調整するために、前記複数の取付構造から選択された取付構造に前記アーム部が取り付けられる、請求項3乃至5のいずれか一項に記載のワーク交換治具。
【請求項7】
前記治具本体と前記アーム部との間には、スペーサ部材が介在される、請求項3乃至6のいずれか一項に記載のワーク交換治具。
【請求項8】
前記切落し籠は、前記ワークから切り落とされた前記切落し部を前記治具本体から離れる方向に移動させるための傾斜板を有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のワーク交換治具。
【請求項9】
前記切落し籠は、前記切落し部を受容する空間を区画するために底板と側板とから構成され、前記側板のうち前記治具本体に近い側板部分は他の側板部分よりも低い、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のワーク交換治具。
【請求項10】
前記切落し籠は、前記切落し部を受容する空間を区画するために底板と側板とから構成され、前記底板には開口が開けられている、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のワーク交換治具。
【請求項11】
前記切落し籠は、前記ワークの横断面形状に整合する内面形状を有する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のワーク交換治具。
【請求項12】
前記切落し籠は、前記切落し部を受容する空間を区画するために底板と側板とから構成され、前記側板は前記切落し部の厚さよりも低い、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のワーク交換治具。
【請求項13】
ワークを切断する切断加工機と、
前記切断加工機に着脱可能であって、前記ワークを保持するワーク交換治具と、を具備し、
前記ワーク交換治具は、
前記ワークを保持する治具本体と、
前記切断加工機に対して前記ワーク交換治具を着脱するための取付具と、
前記切断加工機により前記ワークから切落された切落し部を受容する切落し籠と、
前記切断加工機に対して前記切落し籠を支持するアーム部とを具備する、切断加工システム。
【請求項14】
ワークを切断する切断加工機と、
前記切断加工機に着脱可能であって、前記ワークを保持するワーク交換治具と、
前記切断加工機による切断加工後の前記ワークを前記ワーク交換治具に保持した状態で保管する保管棚と、
前記切断加工機と前記保管棚との間で前記ワーク交換治具を搬送する搬送機構と、を具備し、
前記ワーク交換治具は、
前記ワークを保持する治具本体と、
前記切断加工機により前記ワークから切落された切落し部を受容する切落し籠と、
前
記切断加工機に対して前記切落し籠を支持するアーム部とを有し、
前記切断加工機から前記保管棚への搬送経路上には、前記切落し籠に受容された前記切落し部を回収するための廃棄バケットが配置される、
、切断加工システム。
【請求項15】
前記搬送機構は、多関節ロボットアーム機構である、請求項14記載の切断加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク交換治具及び切断加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを切断する切断加工機の1つとして、ワイヤ放電加工機が知られている。ワイヤ放電加工機では、加工液が充填された加工槽内にワーク(被加工物)を設置し、導電性を有するワイヤ電極とワークとの間に発生する放電現象を利用して、ワークを切断することができる。
【0003】
ワイヤ放電加工機によりワークから切断された切落し部を加工槽内に落下させてしまうと、ワイヤを動かすためのアームの動作時に、加工槽内に落下した切落し部にアームが干渉してしまい、アームを含む機構が破損する可能性がある。そのため、切落し部を加工槽内に落下させないように種々の手法が提案されている。例えば、引用文献1には、ロボットがワークと切落し部とを保持する方法が開示されている。この方法では、ワイヤの動きにロボットの動作を追従させる必要があるため、制御が複雑となり、ワイヤ放電加工機が有する加工精度よりも加工精度を劣化させる要因となり得る。また、加工時にワイヤ放電加工機の構造物にロボットが接触して破損させてしまう可能性がある。ロボットの動作範囲を限定することで、ロボットがワイヤ放電加工機に接触してしまう可能性を低減することができるが、ワイヤの動作範囲も限定してしまうため、加工範囲を狭めてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、ワークから切り落とされた切落し部を簡単に回収することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るワーク交換治具は切断加工機に着脱可能であって、切断加工機により切断されるワークを保持するものである。ワーク交換治具は、ワークを保持する治具本体と、切断加工機に対してワーク交換治具を着脱するための取付具と、切断加工機によりワークから切落された切落し部を受容する切落し籠と、治具本体に対して切落し籠を支持するアーム部とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本態様によれば、切断加工毎に切落し部を簡単に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る切断加工システムの構成を示す側面図である。
【
図3】
図3は、
図1のワイヤ放電加工機のテーブルを示す図である。
【
図4】
図4は、
図2のワーク交換治具の一例を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5の切落し籠の一例を示すA-A´切断部端面図である。
【
図7】
図7は、
図5の切落し籠の他の例を示すA-A´切断部端面図である。
【
図8】
図8は、
図5の切落し籠の他の例を示すA-A´切断部端面図である。
【
図9】
図9は、
図5の切落し籠の一例を示すB-B´切断部端面図である。
【
図12】
図12は、
図3の治具本体に対して切落し籠の相対位置を調整する構造の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、
図3の治具本体に対して切落し籠の相対位置を調整する構造の他の例を示す図である。
【
図14】
図14は、
図3の治具本体に対して切落し籠の相対位置を調整する構造の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る切断加工システムを説明する。以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0010】
(切断加工システム10の構成)
図1、
図2に示すように、本実施形態に係る切断加工システム10は、ワークWに対する切断加工を行うワイヤ放電加工機30と、ワークWを保持した状態の複数のワーク交換治具20を保管する保管棚50と、保管棚50とワイヤ放電加工機30との間でワーク交換治具20を搬送するロボットアーム機構40と、ワークWから切り落とされた切落し部W2が廃棄される廃棄バケット60と、を備える。典型的には、ロボットアーム機構40は、保管棚50とワイヤ放電加工機30との間に配置され、廃棄バケット60は、ロボットアーム機構40と保管棚50との間のワーク交換治具20の搬送経路上に配置される。
【0011】
ワイヤ放電加工機30は、ワークWに対する切断加工を行う機能を有する鋸刃切断機等他の切断加工機に代替することができる。また、ロボットアーム機構40は、ワーク交換治具20を搬送可能な機能を有する他の種類の搬送ローダ機構に代替することができる。
【0012】
(切断加工システム10を利用した切断加工手順)
本実施形態に係る切断加工システム10を使用したワークWの切断加工手順は以下のとおりである。保管棚50には、切断加工前のワークWを保持した状態の複数のワーク交換治具20が保管されている。
【0013】
最初に、ロボットアーム機構40によって、保管棚50に収容されたワーク交換治具20が把持され、ワイヤ放電加工機30の加工槽31の内部に搬送され、加工槽31の内部のテーブル33のチャック部材35に取り付けられる(
図3参照)。ワーク交換治具20がチャック部材35に取り付けられたのを契機に、ワイヤ放電加工機30により、ワークWの切断加工が開始される。ワイヤ放電加工機30による切断加工が終了されると、切断加工後のワークW1と切断加工前のワークWから切り落とされた切落し部W2とを保持した状態のワーク交換治具20は、ロボットアーム機構40により、加工槽31の内部のテーブル33のチャック部材35から取り外され、保管棚50に搬送され、収容される。
【0014】
ワーク交換治具20に保持された切落し部W2は、ワイヤ放電加工機30から保管棚50にワーク交換治具20を搬送する途中、廃棄バケット60の上方で実行されるロボットアーム機構40による廃棄動作により、廃棄バケット60にリリースされる。廃棄バケット60は、ワイヤ放電加工機30と切断加工後のワーク交換治具20を保管する保管棚50との間のワーク交換治具20の搬送経路上に配置されているため、ワーク交換治具20に保持された切落し部W2を廃棄する時間を短くすることができ、作業効率の低下を抑えられる。また、作業者が保管棚50に保管されたワーク交換治具20から切落し部W2を回収する必要がないため、作業者の作業負担をかけず、切断加工システム10の無人運転が可能になる。
【0015】
また、ワーク交換治具20が切断加工後のワークW1と、切断加工前のワークWから切り落とされた切落し部W2とを保持する機能を有するため、切断加工を実施する度に、切落し部W2を、それを保持するワーク交換治具20ごと、回収することができる。切落し部W2が加工槽31に残留しないため、切落し部W2がワイヤ放電加工機30の動作を阻害するリスクを低減することができる。ロボットアーム機構40または作業者によるワーク交換治具20の回収動作(またはワーク交換治具20の回収動作に相当する切断加工後のワークW1の回収動作)は、従来の切断加工システムの切断加工の手順に含まれるものであり、切落し部W2を回収するための新たな手順の追加が不要であるため、従来の切断加工の作業効率を大きく低下させるものではない。
【0016】
(ワーク交換治具20の説明)
以下、ワーク交換治具20について詳細を説明する。
図4、
図5に示すようにワーク交換治具20は、切断加工前のワークWを保持する治具本体21と、ワークWから切り落とされた切落し部W2を受容する切落し籠25と、治具本体21に対して切落し籠25を支持するアーム部23とを有する。
【0017】
治具本体21は、ワークWを2つの部材の間に挟み固定するバイス(万力)に、ワイヤ放電加工機30のベース部33のチャック部材35にワーク交換治具20を取り付けるための取付具を着脱自在に設けたものである。
【0018】
具体的には、治具本体21は、矩形板状の本体ベース部210を有する。以下、本体ベース部210の長手方向に平行な軸をX軸、本体ベース部210の短手方向に平行な軸をY軸、本体ベース部210の厚み(高さ)方向に平行な軸をZ軸として、適宜説明に使用する。
【0019】
本体ベース部210の一端側の表面にはブロック形状の固定部211が設けられ、他端側の表面にはブロック形状の支持部212が設けられる。固定部211及び支持部212はX軸に沿って離間されている。実際には、本体ベース部210、固定部211及び支持部212は一体成型されている。
【0020】
支持部212には、X軸と平行な向きに貫通するネジ孔が設けられる。このネジ孔にはロッド213が挿入され、螺合されている。ロッド213の後端にはハンドル214が設けられ、ロッド213の先端にはブロック形状の可動部215が接続されている。可動部215は、本体ベース部210に対してX軸に沿って移動自在に支持されている。作業者は、固定部211と可動部215との間にワークWを配置し、固定部211に対して可動部215が接近するようにハンドル214を回すことで、ワークWを固定部211と可動部215との間に挟み込み、固定することができる。上記の本体ベース部210、固定部211、支持部212、ロッド213、ハンドル214及び可動部215は、バイス(万力)を構成する。
【0021】
本体ベース部210の一端側の端面にはフランジ216が設けられ、このフランジ216を介して取付部が着脱自在に接続される。取付部は、ブロック形状の取付ベース部217を有する。取付ベース部217の一側面には、取付具219が支持される。取付具219が設けられた側面と対峙する取付ベース部217の他の側面にはフランジ218が設けられる。取付部は、そのフランジ218を本体ベース部210のフランジ216に接合した状態でボルト等で締結することで、本体ベース部210に接続される。このように、本体ベース部210等などから構成されるバイスに対して、取付具219を備える取付部を着脱可能に構成することで、ワーク交換治具20の接続先のチャック部材35が変わっても、取付部だけを交換すればよく、ワーク交換治具20の汎用性を向上させることができる。
【0022】
アーム部23は、L字形状の外観を有する。アーム部23の先端には切落し籠25が接続され、アーム部23の後端は治具本体21に取り付けられている。アーム部23は、それを構成する第1アーム部分231がY軸と平行になり、それを構成する第2アーム部分236がX軸と平行になり、且つアーム部23の先端の切落し籠25が、ワークWから切り落とされた切落し部W2を受容可能な位置に配置されるように治具本体21に取り付けられている。例えば、本実施形態のように、丸棒をワークWとした場合には、切落し籠25は、アーム部23により、治具本体21の固定部211と可動部215との間に配置される。
【0023】
治具本体21と切落し籠25との間にワイヤ放電加工機30のワイヤ37を通すための間隙を設けることができ、且つ、ワークWから切り落とされた切落し部W2を受容できる位置に切落し籠25を配置できるのであれば、アーム部23の形状、寸法、及び治具本体21に対するアーム部23の取付位置は任意に決めることができる。したがって、アーム部23の外観形状はL字形状に限定されることはなく、屈曲、湾曲またはこれらを組み合わせた任意の形状とすることができる。
【0024】
切落し籠25は、上面が開放された箱体に構成される。切落し部W2を受容する空間は、箱体を構成する底板と側板とで区画される。切落し籠25は、切落し部W2に整合した内面形状を有する。例えば、ワークWとしての丸棒がY軸と平行になるように治具本体21に固定されている場合(
図3参照)、
図5に示すように、切落し籠25は、切落し部W2を受容する空間が平面視で矩形状になるように4枚の側板252,253,254,255により構成される。
図6に示すように、底板251はX軸に沿って凸状に湾曲するように構成される。
【0025】
切落し部W2に整合しているのであれば、切落し籠25の形状は上記に限定されない。例えば、横断面矩形状の角棒をワークWとした場合では、
図7に示すように、底板251は平らに構成される。また、横断面三角形状の棒体をワークWとした場合では、
図8に示すように、底板251は、V字状に突出するように構成される。それにより、ワークWから切り落とされた切落し部W2を切落し籠25の内部で安定させることができ、搬送中にワーク交換治具20から落下してしまう可能性を低減できる。
【0026】
切落し籠25の底板251にはワイヤ放電加工機30の加工槽31に充填された加工液の液抜きのための開口259があけられている。開口259は典型的には一つであるが、複数設けられていてもよいし、網状であってもよい。また、開口259の形状としては典型的には矩形であるが、円形等他の形状であってもよい。もちろん、加工液が充填された加工槽31の内部にワークWを沈めずに切断加工がなされる切断加工機を使用した場合には、上記の開口259は必ずしも必要ではない。
【0027】
また、切落し籠25は、側板のうち治具本体21に近い側の側板部分が他の側板部分よりも低く構成される。例えば、
図5に示すような平面視で矩形状の切落し籠25の場合、
図9示すように、4枚の側板252,253,254,255のうち治具本体21に近い側の1枚の側板252は、他の側板253,254,255よりも低く構成される。それにより、底板251に対してワークWを接近させることができるため、切落し部W2が切落し籠25の外部に落下する可能性を低減することができる。特に、加工液が充填された加工槽31の内部にワークWを沈めた状態で切断加工を実行するような場合には、ワークWから切り落とされた切落し部W2がそのまま真下に落下しない場合もあるため、部分的に側板を低くして、底板251に対してワークWをできるだけ接近させることは、切落し部W2を切落し籠25に確実に収容するためには非常に効果的である。また、他の側板部分を高くすることで、ワークWから切り落とされた切落し部W2が切断加工による反動により四方に飛んでしまっても、切落し籠25から外側に切落し部W2が落下することを回避することができる。
【0028】
図10に示すように、切落し籠25は、切落し部W2を底板251に誘導する傾斜板257を有してもよい。傾斜板257は、4枚の側板252,253,254,255のうち治具本体21に近い側の1枚の側板252の縁から底板251に向かって傾斜するように配置される。ワークWから切り落とされた切落し部W2を、傾斜板257に沿って緩やかな速度で底板251に向かって滑り落とすことができるため、傾斜板257を有さない構成に比べて、切落し部W2が切落し籠25の外側に直接的に落下してしまう可能性、切落し部W2が底板251でバウンドして切落し籠25の外側に出てしまう可能性を低減することができる。また、切落し部W2は、傾斜板257に沿った傾斜姿勢で底板251に到達するため、切落し部W2の角部などの一部を底板251にあけられた開口259に係合させることができ、切落し部W2をさらに安定して切落し籠25に収容することができる。
【0029】
また、ロボットアーム機構40によるワーク交換治具20に保持された切落し部W2の廃棄動作時に、切落し籠25から切落し部W2を落下させやすくするという観点では、
図11に示すように、側板の全体の高さを切落し部W2の厚みよりも低くしてもよい。また、本実施形態のように、切落し部W2の横断面形状が円形であれば、切落し部W2が側板に沿って転がりやすくするために、切落し籠25は、その横断面形状がV字形状、半円形状等の、底部から上面開放部に向かって広がるように側板を構成することができる。
【0030】
さらに、切落し籠25がアーム部23に対して着脱自在であってもよい。形状、寸法が異なる複数種類の切落し籠25を用意しておき、ワークWに応じた切落し籠25を選択し、アーム部23に装着することで、ワーク交換治具20の汎用性を向上させることができる。
【0031】
本実施形態に係るワーク交換治具20は、治具本体21に対して切落し籠25の相対位置を調整可能である。これを実現する構造としては、治具本体21に対するアーム部23の取付位置を変更可能な構造を採用することができる。
【0032】
図12に示すように、治具本体21に対するアーム部23の取付位置を変更できるように、治具本体21は、アーム部23を取り付けるための複数のネジ孔220を有する。複数のネジ孔220は、治具本体21の裏面に、X軸及びY軸に沿って分散して設けられる。また、アーム部23の後端側の第1アーム部分231には、複数の貫通孔240が設けられる。作業者は、治具本体21に設けられた複数のネジ孔220から選択したネジ孔220に、アーム部23に設けられた複数の貫通孔240から選択した貫通孔240を位置整合させた状態で、ネジ締めすることによって、治具本体21に対してアーム部23を取り付けることができる。治具本体21のネジ孔220とアーム部23の貫通孔240とのうち少なくとも一方を変更することで、治具本体21に対する切落し籠25の位置をX軸方向及びY軸方向に調整することができる。ここでの、X軸方向は治具本体21に対して切落し籠25が接近/離反する方向に対応し、Y軸方向は治具本体21に対して切落し籠25が接近/離反する方向に直交する方向に対応する。
【0033】
治具本体21に対する切落し籠25の位置をX軸方向及びY軸方向に調整するためには、治具本体21とアーム部23とのうち少なくとも一方に、複数の取付構造(ネジ孔または貫通孔)が設けられればよい。
【0034】
図13に示すように、治具本体21に対する切落し籠25の位置をZ軸方向に調整したい場合には、治具本体21とアーム部23との間に調整幅に応じた厚みを有するスペーサ部材70を介在させればよい。
図12で説明したように、治具本体21に対するアーム部23の取付位置を変更することで、治具本体21に対する切落し籠25の位置をZ軸方向に調整する構造を有してもよい。この場合、例えば、治具本体21の側面に複数のネジ孔が設けられ、アーム部23は直交3軸それぞれに平行な3つのアーム部分からなり、Z軸に沿ったアーム部分に複数の貫通孔が設けられる。
【0035】
治具本体21に対してアーム部23を取り付けることができるのであれば、取付構造はネジに限定されることはなく、ボルトナット構造や嵌合構造などの任意の構造を採用することができる。
【0036】
上記では、治具本体21に対するアーム部23の取付位置を変え、また、治具本体21とアーム部23との間にスペーサ部材70を介在させることで、治具本体21に対する切落し籠25の相対位置を調整していたが、アーム部23が、治具本体21に対する切落し籠25の位置を調整する構造を有してもよい。
【0037】
図14に示すように、アーム部23を構成する第1、第2アーム部分231,236それぞれは伸縮機構を有する。伸縮機構としては、スライドバーを利用した機構、ボールネジ機構、スライドレール機構等の任意の機構を使用することができる。ここでは、伸縮機構としてスライドレール機構を例に説明する。第1アーム部分231は、その後端部分において治具本体21に取り付けられる第1固定レール232と第1固定レール232に対して摺動自在に支持される第1移動レール233とを有する。第2アーム部分236は、第1移動レール233に接続される第2固定レール237と、第2固定レール237に対して摺動自在に支持され、その先端において切落し籠25が設けられる第2移動レール238とを有する。上記の構成によれば、Y軸に沿って配置された第1アーム部分231の伸縮長を変化させることで、治具本体21に対して切落し籠25の位置をY軸方向に調整することができる。同様に、X軸に沿って配置された第2アーム部分236の伸縮長を変化させることで、治具本体21に対して切落し籠25の位置をX軸方向に調整することができる。アーム部23自体が治具本体21に対する切落し籠25の位置を調整可能な構造を備える場合に、その調整のしやすさという観点では、アーム部23をL字形状に構成し、アーム部23を構成する第1アーム部分231がY軸と平行になり、第2アーム部分236がX軸に平行になるように治具本体21に取り付けた方が優位である。
【0038】
治具本体21に対して切落し籠25の位置をZ軸方向に調整したいのであれば、アーム部23を、直交3軸に沿って配置された3つのアーム部分により構成し、Z軸に沿って配置されたアーム部分を伸縮させればよい。
図12、
図13で説明した治具本体21に対するアーム部23の取付構造と、
図14で説明したアーム部23を構成する各アーム部分231,236の伸縮構造とを組みあわせてもよい。それにより、
図14で例示したアーム部23と治具本体21との間にスペーサ部材70を介在させることで、治具本体21に対する切落し籠25の位置をZ軸方向に調整することができる。
【0039】
アーム部23は、連結構造を有する複数種類の小さな部品により構成されてもよい。アーム部23を構成する部品の組み合わせ、部品の数を変更することによって、アーム部23の形状、寸法を任意に変更することができ、それにより治具本体21に対する切落し籠25の相対位置を調整することができる。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0041】
20…ワーク交換治具、21…治具本体、210…本体ベース部、211…固定部、212…支持部、213…ロッド、214…ハンドル、215…可動部、216,218…フランジ、217…取付ベース部、219…取付具、23…アーム部、231…第1アーム部分、236…第2アーム部分、25…切落し籠、251…底板、252,253,254,255…側板、259…開口。