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特許7457109水素化反応のための水および酸安定性クロムフリー触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】水素化反応のための水および酸安定性クロムフリー触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/72 20060101AFI20240319BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20240319BHJP
   B01J 37/03 20060101ALI20240319BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240319BHJP
   B01J 37/18 20060101ALI20240319BHJP
   C07C 29/14 20060101ALI20240319BHJP
   C07C 29/145 20060101ALI20240319BHJP
   C07C 29/149 20060101ALI20240319BHJP
   C07C 31/125 20060101ALI20240319BHJP
   C07C 31/20 20060101ALI20240319BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240319BHJP
【FI】
B01J23/72 Z
B01J37/00 C
B01J37/03 B
B01J37/08
B01J37/18
C07C29/14
C07C29/145
C07C29/149
C07C31/125
C07C31/20 Z
C07B61/00 300
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022523324
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-23
(86)【国際出願番号】 EP2020082131
(87)【国際公開番号】W WO2021099225
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】102019131569.7
(32)【優先日】2019-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】596081005
【氏名又は名称】クラリアント・インターナシヨナル・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100145333
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 弓子
(72)【発明者】
【氏名】ドーフェル,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】プァンツェルト,マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ブルグフェルス,ゴッツ
(72)【発明者】
【氏名】グロスマン,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ピルツ,マウリツェ,フレーデリク
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-517765(JP,A)
【文献】国際公開第2018/108451(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/205265(WO,A1)
【文献】特表2017-528313(JP,A)
【文献】特開2010-194420(JP,A)
【文献】LI, Jifan et al. ,Construction of mesoporous Cu/ZrO2-Al2O3 as a ternary catalyst for efficient synthesis of γ-valerolactone from levulinic acid at low temperature,Journal of Catalysis,2019年11月19日,Vol.381 ,p. 163-174 ,DOI: 10.1016/j.jcat.2019.10.031
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07B 61/00
C07C 29/14 - 29/149
C07C 31/125
C07C 31/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒が、ジルコニウムを、強熱減量後の触媒の総重量に基づいて、0.5重量%~20.0重量%の割合で含有し、酸化型または金属形態のマンガンを含有しない、ことを特徴とする、酸および/または水含有媒体中で起こる有機化合物中のカルボニル基の水素化のためのCu-Al触媒。
【請求項2】
前記ジルコニウムは、強熱減量後の触媒の総重量に基づいて、5.0重量%~20.0重量%の範囲内で存在する、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記触媒が、強熱減量後の触媒の総重量に基づいて、20~50重量%の範囲内の量のCu、および、8~29重量%の範囲内の量のAlを含む、請求項1または2に記載の触媒。
【請求項4】
前記触媒は成形体の形態である、請求項1~3のいずれかに記載の触媒。
【請求項5】
前記成形体の触媒体は錠剤の形態である、請求項4に記載の触媒。
【請求項6】
強熱減量後の総重量に基づいて、バインダーを2~30重量%の範囲内で有する、請求項4または5のいずれかに記載の触媒。
【請求項7】
前記バインダーがアルミン酸カルシウムである、請求項6に記載の触媒。
【請求項8】
前記成形体中のカルシウムの割合が、強熱減量後の成形体の総重量に基づいて、0.14重量%~17.02重量%の範囲内である、請求項7に記載の触媒。
【請求項9】
立方晶系二酸化ジルコニウム相、および、任意選択でさらに斜方晶系および単斜晶系二酸化ジルコニウムから選択されるさらなるZrO2相を有する、請求項1~のいずれかに記載の触媒。
【請求項10】
強熱減量後の触媒の総重量に基づいて、0.5重量%~20.0重量%の割合でジルコニウムを含有する請求項1~のいずれかに記載の触媒の製造方法、ここで当該方法は以下の工程を含む:
a)(i)銅化合物、ジルコニウム化合物、および、任意選択でさらなる遷移金属化合物を含む、少なくとも1つの水溶液Aと、(ii)少なくとも1つのアルカリ性水溶液Bとを合わせて沈殿物を形成する、ここで、溶液Aおよび/または溶液Bは、溶解したアルミニウム化合物をさらに含む、
b)当該沈殿物を分離し、任意選択で当該沈殿物を洗浄する、
c)当該沈殿物を乾燥して、乾燥沈殿物を得る、
d)工程c)からの当該乾燥沈殿物を200~800℃の温度で30分~4時間焼成する。
【請求項11】
以下の工程を含む、請求項10に記載の方法:
e)工程d)からの焼成沈殿物を成形して、成形体を得る。
【請求項12】
以下の工程を含む、請求項11に記載の方法:
f)前記成形体を200~800℃の温度で30分~4時間熱処理する。
【請求項13】
工程f)における前記熱処理が、400~700℃で1時間~3時間の間行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程f)の後に当該触媒を還元する、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~のいずれかに記載の触媒、または、請求項10~14のいずれかに記載の方法によって製造された触媒で、有機化合物中のカルボニル基を水素化する方法。
【請求項16】
反応流の水含有量が0.1~5.0重量%である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記反応流の酸価が0.1~3.4mgKOH/gsolutionの範囲内である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
アルデヒドをアルコールに水素化するための、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
脂肪酸メチルエステルを水素化するための、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
ケトンをアルコールに水素化するための、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物中のカルボニル基の水素化のための、改良されたクロムを含まないCu─Al触媒に関するもので、当触媒はジルコニウムを0.5~30.0重量%の割合で含有することを特徴とする。本発明はさらに、当触媒の製造、および有機化合物中のカルボニル基の水素化における当触媒の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
プロパンをアクリル酸に酸化するための、またはエタンをエテンに酸化脱水素するためのMoVNbTe混合酸化物は従来技術である。MoVNbTe混合酸化物をベースとする触媒には、200を超える特許および多数の科学刊行物が関係している。これらの混合酸化物と周期律表の他の金属との促進は公知である。ここで、先に記載した最も高いアクリル酸収率は60%であり、エテンの収率は約80%である。
【0003】
エステル、ジエステル、アルデヒドまたはケトンのような有機化合物中のカルボニル基を水素化するための触媒プロセスは、工業的に非常に重要である。それらは、とりわけ、カルボン酸またはそれらのエステル、特に脂肪酸のエステルを、対応するアルコールに変換するのに役立つ。
【0004】
ここで好適な触媒は、遷移金属元素を追加した銅をベースとする系である。当触媒は、典型的には粉末または成形体、特に錠剤、押出物またはペレットの形態である。
【0005】
国際公開第2004/085356号(特許文献1)は、銅およびアルミニウムと並んで、ランタン、タングステン、モリブデン、チタンまたはジルコニウムの少なくとも1つの酸化物を含み、そこに銅粉末またはフレーク、セメント粉末またはグラファイトが追加的に添加されている、カルボニル化合物の水素化のための触媒の調製を記載している。
【0006】
ドイツ特許第4021230A1号(特許文献2)には、銅、ジルコニウム、および酸素からなる銅ジルコニウム触媒の存在下で有機カルボン酸エステル化合物を水素化して、高級アルコールまたは二価アルコールのような対応アルコールを得るアルコール製造方法が記載されている。
【0007】
欧州特許第0434062A1号(特許文献3)は、Mg、Zn、Ti、Zr、Sn、Ni、Cおよびそれらの混合物から選択される金属の共沈によって作られる触媒を用いる、混合物を対応アルコールへと水素化するための方法を開示する。
【0008】
欧州特許第0552463A1号(特許文献4)に開示されている有機化合物中のカルボニル基の水素化のための触媒は、その酸化物形態において、組成CuaAlbZrcMndOdを有し、ここで、a>0;b>0;c>0;d>0;a>b/2;b>a/4;a>c;a>dであって;さらに、xは電気的中性を維持するために単位当たり必要とされる酸素イオンの数である。
【0009】
一般に水素化プロセスの出発混合物は、微量の酸性化合物を含有する。例えば、エステル化反応における副生成物のカルボン酸である。水素化反応の条件下ではこれらの化合物は触媒に作用し、結果として、機械的安定性を低下させ、時には触媒活性金属を部分的に浸出させてしまい、生成物流と共に反応器から排出すると分離しなければならない。さらに、触媒活性金属の浸出が進むと触媒の触媒活性が低下する。
【0010】
このような反応には、銅およびクロムを含有する触媒が使用される。これらは、典型的には酸の作用に対して高い安定性を有する。より厳しい環境規制のために、クロム含有触媒の使用はより高い要求を伴って、既存のCuCr系を、同等の触媒特性および物理特性を有した環境適合性代替物と置き換えることが必要に迫られている。
【0011】
たとえば国際公開第2011115695A1号(特許文献5)は、対応するアルコールへのアルデヒドの水素化のためにCuCr含有触媒を使用する。
【0012】
本発明の目的は、酸性化合物または水の作用を受けにくい、成形された触媒体であれば加えて機械的安定性が改善された、有機化合物中のカルボニル基の水素化のための触媒を提供することである。さらに、この触媒は、特に酸性および/または水性媒体中で起こる水素化において使用することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】国際公開第2004/085356号
【文献】ドイツ特許第4021230A1号
【文献】欧州特許第0434062A1号
【文献】欧州特許第0552463A1号
【文献】国際公開第2011115695A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、酸性化合物または水の作用を受けにくい、成形された触媒体であれば加えて機械的安定性が改善された、有機化合物中のカルボニル基の水素化のための触媒を提供することである。さらに、この触媒は、特に酸性および/または水性媒体中で起こる水素化において使用することが可能である。
【0015】
当目的は、本発明の触媒によって達成される。本発明は、0.5~30重量%の範囲内のジルコニウム含有量を有することを特徴とする、クロムを含まないCu―Al触媒に関する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
当触媒は、種々の形態、例えば粉末の形態、または、押出物、球体、ペレットまたは錠剤などの成形体の形態である。好ましい実施態様では、前記成形触媒体は、錠剤の形態である。
【0017】
成形触媒体が錠剤の形態である場合、当錠剤の直径は、通常2~6mm、好ましくは3~5mmである。当直径は、特に好ましくは4.4~4.6mmである。当錠剤の高さは、2~6mm、好ましくは2~4mmであってよい。当高さは、特に好ましくは2.5~3.5mmである。
【0018】
本発明の成形触媒体は、80~500N、好ましくは150~250N、より好ましくは170~230Nのサイドクラッシュ強度を有する。好ましくは、本発明の成形触媒体が3~5mmの範囲内の直径、2~4mmの範囲内の高さ、および170~230Nの範囲内のサイドクラッシュ強度を有する。
【0019】
本発明の成形触媒本体の細孔容積は、水銀ポロシメトリー法による測定で、100~500mm/g、好ましくは150~400mm/g、より好ましくは200~400mm/gである。
【0020】
以下に述べる本発明の触媒中の銅、アルミニウム、およびジルコニウムの量は、酸化型、非還元型に関るもので、典型的には元素は触媒中に酸化型でCu(II)、Al(III)、およびZr(IV)として存在している。
【0021】
好ましい実施態様では、酸化型の触媒は、強熱減量後の触媒の総重量に基づいて、Cuを20重量%~50重量%の範囲内、好ましくは25重量%~40重量%の範囲内、Alを8重量%~29重量%の範囲内、好ましくは15重量%~25重量%の範囲内、およびZrを0.5重量%~30重量%、好ましくは5重量%~20重量%、より好ましくは10重量%~20重量%の範囲内の量で含む。
【0022】
一実施態様では、当触媒は酸化型または金属形態のマンガンを含有しない。
【0023】
好ましくは、本発明の触媒は、立方晶系二酸化ジルコニウム相を有することを特徴とする。一実施態様では、立方晶系二酸化ジルコニウム相に加えて、斜方晶系および単斜晶系二酸化ジルコニウムから選択される少なくとも1つの変性ZrOをさらに有する。
【0024】
本発明の触媒は、本発明の以下の工程によって調製される:
a)(i)銅化合物、ジルコニウム化合物、および、任意選択でさらなる遷移金属化合物を含む、少なくとも1つの水溶液Aと、(ii)少なくとも1つのアルカリ性水溶液Bとを合わせて沈殿物を形成する、ここで、溶液Aおよび/または溶液Bは、溶解したアルミニウム化合物をさらに含む
b)当該沈殿物を分離し、任意選択で当該沈殿物を洗浄する、
c)当該沈殿物を乾燥して、乾燥沈殿物を得る、
d)工程c)からの当該乾燥沈殿物を200~800℃の温度で30分~4時間焼成する。
【0025】
工程a)で使用される銅、アルミニウム、ジルコニウム、および任意の遷移金属化合物のための適切な出発化合物は、原則として、水または塩基性もしくは酸性水溶液に可溶な全ての化合物である。炭酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物、酸化物、硫酸塩、酢酸塩またはギ酸塩を使用することが好ましい。
【0026】
アルミニウム化合物は、ここでは銅およびジルコニウム含有溶液A中に既に存在するか、またはアルカリ水溶液Bとして沈殿物と一緒に添加することができる。
【0027】
工程A)における溶液A中のジルコニウム化合物の割合は、製造される触媒中のジルコニウムの割合が、強熱減量後の触媒の総重量に基づいて、0.5~30重量%の範囲内になるように選択される。
【0028】
銅化合物、ジルコニウム化合物、および、任意選択でさらなる遷移金属化合物の少なくとも1つの水溶液Aは、銅化合物、ジルコニウム化合物、および、任意選択でさらなる遷移金属化合物を含む複数の別個の水溶液として提供されてもよく、これらのいずれかの溶液にアルミニウム化合物を含めることが可能である。例えば、銅化合物の1以上の水溶液、ジルコニウム化合物の1以上の水溶液、アルミニウム化合物の1以上の水溶液、および任意選択でさらなる遷移金属化合物の1以上の水溶液が提供されうる。あるいは、1以上の水溶液の組合せを提供してもよい。これらは、銅化合物及び/又はアルミニウム化合物、及び/又はジルコニウム化合物、及び/又は任意選択でさらなる遷移金属化合物を一つの共通の容器内で溶解することによって調製することができる。また、上記の別々の溶液を組み合わせて、組み合わせた溶液にすることも可能である。
【0029】
一実施態様では、銅化合物、ジルコニウム化合物、および、任意選択でさらなる遷移金属化合物の少なくとも1の水溶液Aを、アルカリ性水溶液Bと混合する前に、好ましくは撹拌しながら、20℃を超える温度、例えば50℃~90℃の範囲内、特には約80℃、に加熱する。
【0030】
さらなる実施態様において、アルカリ水溶液Bを、混合する前に、好ましくは撹拌しながら、20℃を超える温度、例えば、50℃~90℃の範囲内、特には約80℃、に加熱する。
【0031】
さらなる実施態様において、銅化合物、ジルコニウム化合物、および、任意選択のさらなる遷移金属化合物の少なくとも1の水溶液Aおよびアルカリ水溶液Bを、両方とも、好ましくは撹拌しながら、50℃~90℃の範囲内の温度、特に約85℃に加熱する。
【0032】
一実施態様では、工程a)における沈殿物は、沈殿剤を含むアルカリ水溶液Bを、銅、アルミニウム、ジルコニウム、および、任意選択の遷移金属の溶解化合物を含む溶液Aに、好ましくは当該金属含有溶液を絶えず撹拌しながら、通すことによって形成される。
【0033】
さらなる実施態様では、工程a)における沈殿物は、沈殿剤およびアルミニウム化合物を含むアルカリ水溶液Bを、銅、ジルコニウム、および、任意選択の遷移金属の溶解化合物を含む溶液Aに、好ましくは当該金属含有溶液を絶えず撹拌しながら、通すことによって形成される。
【0034】
さらなる実施態様において、沈殿剤を含むアルカリ水溶液Bを、金属含有溶液Aと一緒に共通の沈殿容器に供給する、ここで、溶液Aおよび/または溶液Bは溶解アルミニウム化合物をさらに含む。
【0035】
工程a)における混合溶液の温度は、通常、10~90℃の範囲内、好ましくは30~90℃、より好ましくは50~85℃の範囲内である。
【0036】
工程a)において金属含有化合物の沈殿中のpHは、6.0~8.0の範囲内、好ましくは6.5~7.5の範囲内、より好ましくは6.5~7.0の範囲内である。
【0037】
当該沈殿後、得られた沈殿物を分離する。これは、典型的にはろ過によって行われる。あるいは、沈殿物はデカンテーションまたは遠心分離によって分離することもできる。
【0038】
次いで、分離された当該沈殿物は、任意で、余分な水酸化物イオンまたはアルカリ金属イオンなどの付着不純物を除去するために1以上の洗浄工程を経てもよい。当沈殿物を、フィルターケークの形でフィルターチャンバー中に直接的に残し、洗浄媒体、好ましくは純水に通すか、または代わりに洗浄媒体中でスラリー化し、フィルタープレス、デカンテーションまたは遠心分離の手段によって再分離することができる。この工程は、通常、洗浄媒体の導電率がある値を下回るまで繰り返すことができる。これは、典型的には0.5mS/cm、特に0.2mS/cmである。当導電率は、DIN38404、パート8に従って測定できる。
【0039】
当該沈殿物は、分離し、任意で洗浄した後、50~150℃の範囲内、好ましくは70~130℃の範囲内、より好ましくは80~120℃の範囲内の温度で乾燥される。当乾燥は、噴霧乾燥機中で行うことができる。あるいは固定オーブンで乾燥させても良く、その場合、乾燥時間は通常、30分~6時間の範囲内である。
【0040】
次に、当乾燥粉末を焼成する。これは、200~800℃、好ましくは400~800℃、より好ましくは600~800℃、さらに好ましくは700~800℃の間の温度で行われる。当焼成時間は、30分~4時間、好ましくは1~3時間、より好ましくは2時間である。
【0041】
一実施態様では、次に、前記乾燥および焼成した沈殿物を成形工程にかける。このために、工程d)から得られた沈殿物を以下の工程にかける:
e)工程d)からの焼成殿物を成形して、成形体を得る。
【0042】
通例の成形工程は、錠剤化、押出、およびペレット化である。好ましい実施態様において、当該焼成沈殿物は錠剤化される。
【0043】
錠剤化は、通常、Kilian Pressima型プレスのような錠剤プレス機を用いる。当該錠剤化は、例えば、グラファイト、油またはステアレート、好ましくはグラファイトのような潤滑剤を添加して行う。このためには、工程d)で得られた焼成沈殿物を、少なくとも1の潤滑剤と混合し、任意選択で圧縮および/または顆粒化し、次いで錠剤化する。当該混合物中の潤滑剤の割合は、通常、錠剤化組成物の総重量に基づいて、0.5重量%~5.0重量%、好ましくは1.0重量%~4.0重量%である。
【0044】
一実施態様では、成形される沈殿物にバインダーが添加される。原則として、成形体の機械的安定性を増大させる化合物は全てバインダーとして好適である。好適な結合剤は、擬ベーマイト、ベーマイトまたはコランダムのような酸化アルミニウム、シリカ、アルミン酸カルシウム、ケイ酸カルシウムまたはベントナイトのようなクレイである。
【0045】
一実施態様では、アルミン酸カルシウムがバインダーとして使用される。これは、酸化物および/または水酸化物の形態でCaおよびAlを含有する化合物である。例えば、一般式xCaO・yAlの焼成アルミン酸カルシウムまたは一般式CaAl(OH)の化学沈殿アルミン酸カルシウムが含まれる。また、アルミン酸カルシウムの処理に応じて、代わりにこれらの2つの実験式の間の中間段階が存在してもよく、バインダー材料として同様に好適である。これらの元素と同様に、さらなる元素がアルミン酸カルシウム中に存在してもよい。好ましい実施態様では、アルミン酸カルシウムは、アルミン酸カルシウムの重量に基づいて、5.0重量%未満、好ましくは1.0重量%未満、より好ましくは0.1重量%未満の割合で、さらなる元素を含有する。
【0046】
本発明で使用されるアルミン酸カルシウムのCa/Al原子比は、変化しうるもので、好ましくは0.1~3.5、さらにより好ましくは0.3~2.0である。
【0047】
好適なアルミン酸カルシウムは、合成的に製造されたものである。あるいは、天然に存在するアルミン酸カルシウム、例えば加藤石を使用することが可能である。アルミン酸カルシウムは、バインダー材料として使用する前に熱処理(焼成)することができる。これは、300~800℃、好ましくは450~750℃、より好ましくは450~650℃の温度で行われる。
【0048】
当バインダーは、通常、成形体中のバインダーの含有量が、強熱減量後の成形体の総重量に基づいて、2~30重量%、好ましくは2~10重量%、特に好ましくは2~5重量%の範囲内であるような量で、混合物に添加される。
【0049】
結合剤としてアルミン酸カルシウムを使用する場合、アルミン酸カルシウムの結合効果を高めるために、当混合物はさらに水と合わせることが好ましい。好ましくは、熱処理されたアルミン酸カルシウムが混合物に添加される。
【0050】
アルミン酸カルシウムで結合させた上記成形体のカルシウム含量は、強熱減量後の当成形体の総重量に基づいて、好ましくは0.14~17.02重量%の範囲内、好ましくは0.14~5.67重量%の範囲内、より好ましくは0.14~2.84重量%の範囲内である。
【0051】
アルミン酸カルシウムをバインダーとして使用する場合、上記成形体中のアルミン酸カルシウムの重量割合は、X線回折法によって測定することができる。このためには、試料を、Bruker D4 Endeavorで5~90°2θの範囲にわたって測定する(ステプシーケンス0.020°2θ、測定時間ステップあたり1.5秒)。使用される放射線は、CuKα1放射線(波長1.54060Å、40kV、35mA)である。測定中、試料台は、30回転/分の速度でその軸を中心に回転する。得られた反射強度のスペクトルをリートベルト精製によって定量的に分析し、試料中のアルミン酸カルシウムの割合を求める。それぞれの結晶相の割合は、BrukerからのTOPASソフトウェアを用いて定める。
【0052】
次に、工程e)で得られた上記成形体に熱処理することができる。このためには、工程e)から得られた当成形体は、以下の工程に供される:
f)当成形体を200~800℃の温度で30分~4時間熱処理する。
【0053】
一実施態様では、当熱処理は400~700℃の温度で実施される。さらなる実施態様では、この熱処理時間は1~3時間、より好ましくは1.5~2.5時間である。
【0054】
本発明の方法によって得ることができる触媒は、触媒反応において使用される前に、還元工程をさらに経てもよい。
【0055】
ここで、還元は、好ましくは還元雰囲気中で触媒を加熱することによって行われる。還元雰囲気は特に水素である。当還元は、例えば150℃~450℃の範囲内、好ましくは160℃~250℃の範囲内、より好ましくは170℃~200℃の範囲内の温度で行われる。当還元は、例えば1時間~20日の期間にわたって、好ましくは2時間~120時間の期間にわたって、より好ましくは24~48時間の期間にわたって行われる。好ましい実施態様では、還元は190℃~210℃の範囲内の温度で24~48時間にわたって行われる。
【0056】
好ましい実施態様では、触媒は、還元後に湿式または乾式で安定化される。湿式安定化の場合、触媒は、酸素との接触を最小限にするために液体で覆われる。好適な液体としては有機液体および水であり、好ましくは有機液体である。好ましい有機液体は、20℃で0.5hPa以下の蒸気圧を有するものである。そのような好適な有機液体の例は、イソデカノール、Nafol、脂肪アルコール、ヘキサデカン、2─エチルヘキサノール、プロピレングリコール、およびそれらの混合物であって、特にイソデカノールである。
【0057】
乾式安定化の場合、酸素または酸素含有ガス、好ましくは空気、および、アルゴンまたは窒素などの不活性ガスの混合物を還元スペースに計量供給する。当混合物中の酸素濃度は、好ましくは約0.04体積%から約21体積%に増加する。例えば、空気と不活性ガスとの混合物を計量供給することができ、空気対不活性ガスの比率は、最初は空気約0.2体積%対不活性ガス99.8体積%である。次いで、不活性ガスに対する空気の比率は徐々に(例えば、連続的にまたは段階的に)増加し、最終的に、例えば、空気が100体積%で計量供給する(約21体積%の酸素濃度に相当)。
【0058】
いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、空気または酸素の計量添加は、触媒の表面において、例えば、0.5~50nm、好ましくは1~20nm、より好ましくは1~10nmの厚さを有する薄い酸化物層を生じさせ、これは成形された触媒体をさらなる酸化から保護すると仮定される。乾式安定化の場合、反応器温度は、好ましくは100℃以下、より好ましくは20℃~70℃、最も好ましくは30℃~50℃である。上記還元は、触媒で満たされた反応系において、ex situまたはin situで行うことができる。
【0059】
錠剤形の成形触媒体のサイドクラッシュ強度は、還元後で、50~250N、好ましくは
【0060】
本発明の触媒は、不純物として酸および/または水を含有する有機溶液または有機ガス混合物のような酸性媒体または水含有媒体に対する安定性が改善される。このことは、成形触媒体のサイドクラッシュ強度の改善に加えて、触媒活性に重要な銅イオンが材料から失われるのを抑える。さらに、本発明の成形触媒体はまた、全体的に金属イオンの損失が少なく、これは、個々の金属イオンの浸出に関して固体構造の安定性が増した兆候である。
【0061】
本発明の成形触媒体の酸の作用に対する安定性を定めるために、成形体は、酸および水含有媒体中で処理し、その後、当該処理した成形体のサイドクラッシュ強度、および酸および水含有媒体中の金属イオンの割合を測定する。
【0062】
本発明はさらに、本発明の触媒が有機化合物中のカルボニル基の接触水素化のために使用される方法を提供し、前記水素化は、酸および/または水含有媒体中で行われる。可能な反応には、アルデヒドのアルコールへの水素化、特にオキソアルデヒドのオキソアルコールへの水素化、脂肪酸の水素化、例えばエステル化による、特に脂肪酸メチルエステルへの水素化、およびその後の水素化分解、または、ケトンの対応するアルコールへの水素化が含まれる。
【0063】
ここで使用される反応媒体の典型的な酸価は、0.1~3.4mgKOH/gsolutionの範囲内であり、好ましくは0.2~1.0mgKOH/gsolutionの範囲内である。酸価は溶液中の、カルボン酸など酸性OH基の存在の指標であり、例えば、対応する溶液を中和点までKOH溶液で滴定することによって求めることができる。そこで消費されたKOHの量が酸価に相当し、該溶液の重量に基づいてmgKOH/gsolutionで表される。
【0064】
このような反応媒体中の水含有量は、通常、0.1~5.0重量%、好ましくは0.2~5.0重量%、より好ましくは0.5~5.0重量%、特に好ましくは0.5~3.0重量%の範囲内である。
【0065】
本発明の説明において、水素化される脂肪酸は飽和または不飽和脂肪酸であり、これは、鎖長に従って、短鎖(6~8個までの炭素原子)、中鎖(6~8個~12個の炭素原子)、および長鎖(13~21個の炭素原子)の脂肪酸に分類される。炭素原子22個を超える脂肪酸も使用することができる。
【実施例
【0066】
本発明の文脈において、強熱減量は、DIN51081に従って、分析する材料の試料を約1~2g重量測定し、次いで大気雰囲気下で900℃に加熱し、この温度で3時間おいたものの重量を測定することで求める。次いで、当該試料を不活性雰囲気下で冷却し、残留分の重量を測定した。熱処理前後の重量差は、強熱減量に相当する。
【0067】
サイドクラッシュ強度(SCS)は、錠剤を予備乾燥せずにASTM04179 01に従って測定した。これは、統計的に十分な数の錠剤(少なくとも20錠)を測定し、個々の測定値の算術平均を計算することによって行った。この平均値は、ある特定の試料のサイドクラッシュ強度に相当する。
【0068】
化学元素は、DIN EN ISO11885に従ってICP(誘導結合プラズマ)測定によって測定した。
【0069】
酸価の測定は、約4gの試料溶液を25mLのプロパノールと混合し、指示薬としてフェノールフタレインを添加して行った。当溶液を、室温にて、色が変化するまで、水酸化テトラブチルアンモニウム溶液(2─プロパノール/メタノール中0.1mol/L)を滴定した。酸価(AV、mgKOH/gsolution)は、次式で計算される。
ただし、AV=酸価、Volume consumed=水酸化テトラブチルアンモニウム溶液の消費量(mL)、c=水酸化テトラブチルアンモニウム溶液の濃度、および、M=KOHのモル質量、sample weight=試料溶液の使用量(g)、である。
【0070】
成形された触媒体の細孔容積は、DIN66133に従って、水銀ポロシメトリー法により、1~2000バールの圧力範囲で測定した。
溶液の含水量は、ASTM E203(2016)に従って、カールフィッシャー法により測定した。
【0071】
実施例1:本発明の触媒1の製造
3530gのCu(NO3)2・3H2Oおよび1843gの(ZrO)2(OH)2CO3を5000mlの純水に加えて、水溶液1を調整した。次いで、1550mLの硝酸を添加することによって、塩を完全に溶解させた。当酸性溶液を、純水を用いて、総容量20,000mLにした。溶液のpHは─0.70であった。次に、当溶液を80℃に加熱した。
【0072】
加えて、1,500gのNa2CO3および2,140gのNaAlO2を22,000mlの純水に溶解した;溶液2のpHは12.23であった。
【0073】
沈殿のために、8000mLの純水で満たされた沈殿容器を用意した。これに、銅含有溶液1およびカーボネート含有溶液2を同時に導入した。導入速度は、沈殿溶液が約6.5のpHとなるように調節した。
【0074】
添加の終わりに、沈殿が完了した後、当該沈殿物を濾過し、純水で洗浄して、洗浄水の伝導率が0.25mS未満となるまで付着した不純物を除去した。次いで、フィルターケーキを乾燥した。次に、乾燥粉末を750℃で2時間焼成した。相対的重量割合は、強熱減量後の総質量に基づいて、Cu=29.9重量%、Zr=17.5重量%、およびAl=20.6重量%であった。
【0075】
実施例2:本発明の触媒2の製造
実施例1で得られた焼成粉末1706gを、セカール71結合剤51g(CaO31重量%、Al2O369重量%)、純水5g、およびグラファイト34gと混合し、10分間混合して、均一な混合物を得た。この混合物を最初に圧縮顆粒化し、次いでKilian Pressima錠剤プレス機で、幅4.5mmおよび高さ3mmの錠剤形にプレスした。次いで、当錠剤を最後に600℃で2時間焼成した。得られた錠剤の嵩密度は1175g/Lであった。
【0076】
使用実施例3および4についても、錠剤の高さを3.0mmおよび幅を同じく3.0mmとしたこと以外は、同じ手順に従って錠剤を製造した。当錠剤中の相対的重量割合は、強熱減量後の総重量に基づいて、Cu=29.0重量%、Zr=17.0重量%、Al=21.1重量%、および0.6重量%Caであった。
【0077】
実施例3:本発明の触媒3の製造
実施例1で得られた焼成粉末1706gを、純水5gおよびグラファイト34gと混ぜて、10分間混合して、均一な混合物を得た。この混合物を最初に圧縮顆粒化し、次いでKilian Pressima錠剤プレス機で、幅4.5mmおよび高さ3mmを有する錠剤形にプレスした。次いで、当錠剤を最後に600℃で2時間焼成した。当錠剤中の相対的重量割合は、強熱減量後の総重量に基づいて、Cu=29.9重量%、Zr=17.5重量%、およびAl=20.6重量%であった。
【0078】
比較例1(比較触媒A)
触媒Aは銅およびクロム含有沈殿物を沈殿させ、熱処理によって酸化物に変換し、幅4.5mmおよび高さ3mmを有する錠剤にプレスすることによって準備した。相対的重量割合は、強熱減量後の総質量に基づいて、Cu=37.5重量%およびCr=23.0重量%であった。使用実施例3および4についても、錠剤の高さを3.0mmおよび幅を同じく3.0mmとしたこと以外は、同じ手順に従って錠剤を製造した。
【0079】
比較例2(比較触媒B)
触媒Bを準備するために、Cu(NO3)2・3H2Oを1250g、Mn(NO3)2・4H2Oを220g、Al(NO3)3・9H2Oを1800gとり、蒸留H2O9000gに溶解して水溶液1を作製した。Na2CO31720gを蒸留H2O7500gに溶解して溶液2を作製した。当二つの溶液をそれぞれ撹はんしながら80°Cに加熱した。次に、当二つの溶液を連続的に撹拌しながら沈殿容器に計量供給した。得られた沈殿物をろ過し、蒸留HOで洗浄して、洗浄水が0.25mS未満の導電率を有するまで付着する不純物を除去した。次いで、ろ過ケークを乾燥した。次いで、乾燥粉末を750℃で3時間熱処理した;相対的重量割合は、強熱減量後の総重量に基づいて、Cu=44.8重量%、Mn=7.0重量%、およびAl=17.92重量%であった。
【0080】
1706gのこの粉末を、51gのセカール71結合剤、5gの純水、および34gのグラファイトと合わせ、10分間混合して、均一な混合物を得た。この混合物を最初に圧縮顆粒化し、次いでKilianPressima錠剤プレス機で、幅4.5mmおよび高さ3mmを有する錠剤にプレスした。次いで、当錠剤を最後に600℃で2時間焼成した。当錠剤中の相対的重量割合は、強熱減量後の総重量に基づいて、Cu=43.5重量%、Mn=6.8重量%、Al=18.5重量%、およびCa=0.6重量%であった。
【0081】
比較例3(比較触媒C)
触媒Cの粉末を、触媒Bの粉末と同様の方法で準備した。ただし、Mn(NO3)2・4H2Oの割合が、強熱減量後の重量に基づいて、マンガンの相対的重量割合が0.1%となるように選定した。当相対的重量割合は、強熱減量後の総重量に基づいて、Cu=49.7重量%、Mn=0.1重量%、およびAl=20.0重量%であった。このようにして得られた粉末1706gを、5gの純水および34gのグラファイトと混ぜて、10分間混合して、均一な混合物を得た。この混合物を最初に圧縮し、顆粒化し、次いでKilian Pressima錠剤プレス機で、幅4.5mmおよび高さ3mmを有する錠剤にプレスした。当錠剤中の相対的重量割合は、強熱減量後の総重量に基づいて、Cu=49.7重量%、Mn=0.1重量%、およびAl=20.0重量%であった。得られた錠剤の嵩密度は1152g/Lであった。
【0082】
比較触媒A、BおよびCならびに本発明の触媒2および3において、錠剤成型後に得られたものの一部を還元した。これは、試料を存在するCuOをCuに還元するために、2体積%のHと98体積%のNの混合気体中で、200℃の温度にて熱処理した。その後、当試料を窒素下にて室温までに冷却し、液体イソデカノール下で保存した。次に、当試料のサイドクラッシュ強度を測定し、使用例1~3にて用いた。
【0083】
使用実施例1(安定性試験)
本発明の触媒2および3の各々について、および比較触媒A、BおよびCの各々について、酸安定性を、計25gの量の還元および安定化された錠剤形試料を、1重量%の水を含み酸価が0.2mgKOH/gsolutionであるオキソアルデヒド溶液を75g含む液状混合物と混ぜて測定した。この混合物を窒素雰囲気下で120℃で4日間加熱した。当錠剤形試料を、試験の終わりに液状混合物から取り出した。そして直ちにそのサイドクラッシュ強度を測定した。
【0084】
上記試験の実施後、当該オキソアルデヒド溶液中のCu、Al、Cr、MnおよびZrの存在について分析した。
【0085】
表1:触媒のサイドクラッシュ強度
【表1】
【0086】
表1は、本発明の触媒2および3のサイドクラッシュ強度が還元後すでに、先行技術で公知の触媒よりも高いことを明示している。さらに、当該試験の終わりにおけるサイドクラッシュ強度値によって、酸および水の影響に対する安定性が増したことが明確に実証される。本発明の触媒2は、最も高い値のサイドクラッシュ強度を有するが、対照的に、クロムフリーのCuAlMn触媒、比較触媒Cの錠剤は、試験中に損傷してしまい、サイドクラッシュ強度の有意な測定ができなかった。
【0087】
表2:安定性試験後の試験溶液中の金属濃度
【表2】
【0088】
表2からのデータは、本発明の触媒が、当該厳しい試験条件下で銅種の損失に対して大きく安定的であって、比較触媒よりも著しく高いことを示す。
【0089】
これらの結果はジルコニウムを銅含有触媒に添加することによって達成される有益な効果、すなわち酸および水に対する安定性の増大を示し、このことは、より高い機械的安定性および触媒自体からの金属損失低下の両方を示す。
【0090】
使用実施例2:オキソアルデヒドのオキソアルコールへの水素化
体積で100mLの還元され湿潤安定化された形態の本発明の触媒2の触媒床を反応器に導入し、窒素流下で120~180℃の範囲内の温度に加熱し、各選択された温度にて反応時間は2日間とした。次いで、45重量%のアルデヒド、25重量%の対応するアルコール、および30重量%の副生成物(パラフィン、オレフィン、その他)を含み、0.7重量%の水含量および0.2の酸価を有する液相を反応器に通した。
【0091】
当反応器の下流における生成物流の成分をガスクロマトグラフィーにより分析した。各温度での全運転時間にわたって計算された当生成物流中の転化率およびアルコール含量を表3に示す。比較のために、比較触媒Aの試料および比較触媒Bの試料をそれぞれ同じ条件に供し、得られた結果を同様に表3に示す。
【0092】
表3:異なる温度でのアルデヒド水素化における転化率およびアルコール分率
【表3】
【0093】
本発明の触媒は市販のクロム含有触媒Aとほぼ同等の試験条件下でアルデヒド転化を達成することが、表3から明らかである。アルコールの形成についても同様の挙動がみられる。したがって、本発明の触媒は、従来のクロム含有触媒の低環境負荷型の代替物である。
【0094】
さらに、上記データは、比較触媒Bが同等の転化率を達成し、アルコール形成も大きく改善するが、その低い物理的安定性ゆえ、激しい反応条件下での比較的長期にわたる使用には不適切であることを示す。
【0095】
比較触媒Cも同様にして同試験を行った。しかしながら触媒の粒が試験中に壊れたため、アルデヒド転化率および選択率に関して有意な考察を行うことができなかった。
【0096】
使用実施例3:脂肪酸の水素化、例えばエステル化およびその後の水素化分解(FAME)
反応器に5mLの体積の本発明の触媒2の触媒床を、還元し湿潤安定化された形で導入し、その後、0.062質量%の含水量および0.351mgKOH/gsolutionの酸価を有する200mLのラウリン酸メチルを計量供給した。次に、当反応器を耐圧密封し、窒素流下で280℃の温度に加熱した。次いで、175バールの圧力の水流を、窒素が完全に置換されるまで、バルブを通して反応器に供給した。次いで、撹拌機により当反応器中の水素をラウリン酸メチル液と流動化させることにより、当該触媒を用いた水素化を行った。
【0097】
当溶液の試料を、出口バルブを介して規則的な間隔で採取し、その成分をガスクロマトグラフィーで分析した。表4は、ラウリン酸メチルについて1─ドデカノールに係る転化率、選択率、および収率の値を示す。比較のために、体積が5mLの比較触媒Aからなる触媒床を同じ条件に供し、得られた結果を同様に表4に示す。
【0098】
表4:ラウリン酸メチルの水素化に関する反応データ
【表4】