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特許7457152フォトニック結晶受信器を使用して標的物体を検出するレーダシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】フォトニック結晶受信器を使用して標的物体を検出するレーダシステム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/285 20060101AFI20240319BHJP
   G01S 7/35 20060101ALI20240319BHJP
   G02F 1/035 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
G01S7/285
G01S7/35
G02F1/035
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2022555762
(86)(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-27
(86)【国際出願番号】 CA2021050341
(87)【国際公開番号】W WO2021184110
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】62/990,244
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521266918
【氏名又は名称】クオンタム ヴァリー アイデアズ ラボラトリーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100176418
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 嘉晃
(72)【発明者】
【氏名】アマルロー ハーディ
(72)【発明者】
【氏名】ラミレス-セラーノ ジェイミー
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー ジェームズ ピー
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108919201(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0176165(US,A1)
【文献】特開2018-049007(JP,A)
【文献】特開平09-197040(JP,A)
【文献】米国特許第05689275(US,A)
【文献】特開2014-197837(JP,A)
【文献】GORDON, Joshua A. 外3名,“Quantum-Based SI Traceable Electric-Field Probe”,2010 IEEE INTERNATIONAL SYMPOSIUM ON ELECTROMAGNETIC COMPATIBILITY,2010年,Pages 321-324,<DOI: 10.1109/ISEMC.2010.5711293 >
【文献】PAN, Minghai 外4名,“Impacts of space-time-frequency synchronization errors on wideband target echo characteristics of bistatic/multistatic radar”,JOURNAL OF SYSTEMS ENGINEERING AND ELECTRONICS,2016年06月22日,Volume 27, Number 3,Pages 562-573,<DOI: 10.1109/JSEE.2016.00060 >
【文献】CHUNG, Chi-Jui 外8名,“Towards a fully packaged high-performance RF sensor featuring slotted photonic crystal waveguides”,PROCEEDINGS OF SPIE,2016年05月02日,Volume 9747,Aritcle 97471V, 12 Pages,<URL: https://doi.org/10.1117/12.2213557 >
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - G01S 7/42
G01S 13/00 -G01S 13/95
G01R 29/00 - G01R 29/26
G02F 1/00 - G02F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RF電磁放射のプローブ信号を領域内へ放出するように構成された伝送ステーションと、
前記領域からのRF電磁放射のリターン信号を処理するように構成された受信ステーションとを備え、前記リターン信号が、前記領域内の1つまたは複数の物体から散乱したプローブ信号に基づいており、前記受信ステーションが、
誘電性材料から形成されたフォトニック結晶受信器であり、
標的RF電磁放射に結合するように構成され、前記RF電磁放射のリターン信号が前記標的RF電磁放射を含む、アンテナ構造、
細長いスロットが配置され、前記標的RF電磁放射を前記細長いスロットに集中させるように構成されたフォトニック結晶構造、および
前記細長いスロット内に配置された蒸気を含むフォトニック結晶受信器と、
前記フォトニック結晶受信器からの光信号に基づいて分光データを生成するように構成され、前記分光データが前記標的RF電磁放射の1つまたは複数の特性を表す、光学システムと、
前記分光データに基づいて時系列の特性データを生成するように構成され、前記時系列の特性データが前記標的RF電磁放射の1つまたは複数の特性を経時的に表す、データ処理サブシステムと
を備えるレーダシステム。
【請求項2】
前記時系列の特性データが、
前記標的RF電磁放射の振幅を経時的に表す振幅データ、
前記標的RF電磁放射の位相を経時的に表す位相データ、または
前記標的RF電磁放射の周波数を経時的に表す周波数データのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項3】
前記アンテナ構造が、前記標的RF電磁放射の偏光をフィルタリングするように構成された偏光器を備え、
前記時系列の特性データが、前記標的RF電磁放射の偏光を経時的に表す偏光データを含む、
請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項4】
前記データ処理サブシステムが、前記時系列の特性データに基づいて、前記領域内の標的物体の特性を判定するようにさらに構成されている、請求項1または請求項2~3のいずれか1項に記載のレーダシステム。
【請求項5】
前記特性が、
前記領域内の前記標的物体の場所、
前記標的物体の速度、
前記標的物体の形状、または
前記標的物体の組成のうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載のレーダシステム。
【請求項6】
前記フォトニック結晶受信器が第1のフォトニック結晶受信器であり、前記受信ステーションが第2のフォトニック結晶受信器を備え、
前記第1のフォトニック結晶受信器の第1のアンテナ構造が、前記標的RF電磁放射の第1の周波数に結合するように構成され、
前記第2のフォトニック結晶受信器の第2のアンテナ構造が、前記標的RF電磁放射の第2の異なる周波数に結合するように構成されている、
請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項7】
前記フォトニック結晶受信器が第1のフォトニック結晶受信器であり、前記受信ステーションが第2のフォトニック結晶受信器を備え、
前記第1のフォトニック結晶受信器の第1のアンテナ構造が、前記標的RF電磁放射の第1の偏光をフィルタリングするように構成された第1の偏光器を備え、
前記第2のフォトニック結晶受信器の第2のアンテナ構造が、前記標的RF電磁放射の第2の異なる偏光をフィルタリングするように構成された第2の偏光器を備える、
請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項8】
前記受信ステーションが、前記受信ステーションの位置を判定するように構成された慣性航法サブシステムを備える、請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項9】
前記受信ステーションが、前記受信ステーションに対する局所的基準時間および局所的基準位相のうちの一方または両方を設定するように構成されたローカルクロックサブシステムを備える、請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項10】
それぞれのローカルクロックサブシステムを備える複数の受信ステーションと、
前記伝送ステーションおよび各受信ステーションの前記ローカルクロックサブシステムと同期信号を交換するように構成されたグローバルクロックステーションとを備え、前記同期信号が、前記レーダシステムに対する大域的基準時間および大域的基準位相を表す、
請求項9に記載のレーダシステム。
【請求項11】
複数の受信ステーションと、
前記伝送ステーションおよび前記複数の受信ステーションと通信するように構成されたデータ制御センターとを備え、前記データ制御センターが、
それぞれの受信ステーションからの複数の時系列の特性データに基づいて、前記領域内の的物体の特性を表す処理データを生成すること、および
前記伝送ステーション、前記複数の受信ステーションのうちの1つもしくは複数、または両方へ前記処理データを通信することを含む動作を実行するように構成されている、
請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項12】
前記光学システムが、前記蒸気の1つまたは複数の電子遷移と相互作用する入力光信号を前記細長いスロットに提供するように構成されたレーザサブシステムを備える、請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項13】
前記光学システムが、前記細長いスロットからの出力光信号に基づいて前記分光データを生成するように構成された光検出サブシステムを備える、請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項14】
前記伝送ステーションが、制御信号に応答して、RF電磁放射のプローブ信号を前記領域内へ放出するように構成された協調型の伝送ステーションである、請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項15】
前記伝送ステーションが、RF電磁放射のプローブ信号を前記領域内へ受動的に放出するように構成された非協調型の伝送ステーションである、請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項16】
領域内の標的物体を検出するレーダ方法であって、
伝送ステーションの動作によって、RF電磁放射のプローブ信号を前記領域内へ伝送することと、
受信ステーションの動作によって、前記領域からのRF電磁放射のリターン信号を処理することとを含み、前記リターン信号が、前記領域内の1つまたは複数の物体から散乱したプローブ信号に基づいており、前記リターン信号を処理することが、
前記受信ステーションのフォトニック結晶受信器で、前記領域からの前記RF電磁放射のリターン信号を受信することであり、前記フォトニック結晶受信器が、誘電性材料から形成され、
標的RF電磁放射に結合するように構成され、前記RF電磁放射のリターン信号が前記標的RF電磁放射を含む、アンテナ構造、
細長いスロットが配置され、前記標的RF電磁放射を前記細長いスロットに集中させるように構成されたフォトニック結晶構造、および
前記細長いスロット内に配置された蒸気を含む、受信することと、
前記受信ステーションの光学システムの動作によって、前記フォトニック結晶受信器からの光信号に基づいて分光データを生成することであり、前記分光データが前記標的RF電磁放射の1つまたは複数の特性を表す、生成することと、
前記受信ステーションのデータ処理サブシステムの動作によって、前記分光データに基づいて時系列の特性データを生成することであり、前記時系列の特性データが前記標的RF電磁放射の1つまたは複数の特性を経時的に表す、生成することとを含む、レーダ方法。
【請求項17】
前記アンテナ構造が、前記標的RF電磁放射の偏光をフィルタリングするように構成された偏光器を備え、
前記リターン信号を受信することが、前記アンテナ構造の前記偏光器を使用して、前記RF電磁放射のリターン信号の偏光をフィルタリングすることを含む、
請求項16に記載のレーダ方法。
【請求項18】
前記リターン信号を処理することが、
前記データ処理サブシステムの動作によって、前記時系列の特性データに基づいて前記領域内の前記標的物体の特性を判定することを含む、請求項16に記載のレーダ方法。
【請求項19】
前記特性が、
前記領域内の前記標的物体の場所、
前記標的物体の速度、
前記標的物体の形状、または
前記標的物体の組成のうちの少なくとも1つを含む、請求項18に記載のレーダ方法。
【請求項20】
前記リターン信号を処理することが、
前記蒸気の1つまたは複数の電子遷移と相互作用する入力光信号を前記細長いスロットに通すことと、
前記光学ステムで、前記入力光信号に基づく前記細長いスロットからの出力光信号を受信することとを含み、前記分光データが、前記出力光信号に基づいて生成される、請求項16に記載のレーダ方法。
【請求項21】
前記フォトニック結晶受信器が第1のフォトニック結晶受信器であり、前記受信ステーションが第2のフォトニック結晶受信器を備え、
前記第1のフォトニック結晶受信器の第1のアンテナ構造が、前記標的RF電磁放射の第1の偏光をフィルタリングするように構成された第1の偏光器を備え、
前記第2のフォトニック結晶受信器の第2のアンテナ構造が、前記標的RF電磁放射の第2の異なる偏光をフィルタリングするように構成された第2の偏光器を備え、
前記リターン信号を受信することが、それぞれ前記第1および第2のアンテナ構造の前記第1および第2の偏光器を使用して、前記RF電磁放射のリターン信号の偏光をフィルタリングすることを含む、
請求項16に記載のレーダ方法。
【請求項22】
前記リターン信号を処理することが、前記受信ステーションの慣性航法サブシステムの動作によって、前記受信ステーションの位置を判定することを含む、請求項16に記載のレーダ方法。
【請求項23】
前記リターン信号を処理することが、前記受信ステーションのローカルクロックサブシステムの動作によって、前記受信ステーションに対する局所的基準時間および局所的基準位相を設定することを含む、請求項16に記載のレーダ方法。
【請求項24】
複数の受信ステーションが各々、前記領域内の前記1つまたは複数の物体から散乱したプローブ信号に基づくそれぞれのリターン信号を処理し、
前記レーダ方法が、
グローバルクロックステーションの動作によって、前記伝送ステーションおよび各受信ステーションの前記ローカルクロックサブシステムと同期信号を交換することを含み、前記同期信号が、大域的基準時間および大域的基準位相を表す、
請求項23に記載のレーダ方法。
【請求項25】
複数の受信ステーションが各々、前記領域内の前記1つまたは複数の物体から散乱したプローブ信号に基づくそれぞれのリターン信号を処理し、
前記レーダ方法が、
データ制御センターで、それぞれの受信ステーションからの複数の時系列の特性データを受信することと、
前記データ制御センターの動作によって、前記複数の時系列の特性データに基づいて処理データを生成することであり、前記処理データが前記領域内の前記標的物体の特性を表す、生成することと、
前記伝送ステーション、前記複数の受信ステーションのうちの1つもしくは複数、または両方へ前記処理データを通信することとを含む、
請求項16に記載のレーダ方法。
【請求項26】
前記伝送ステーションが協調型の伝送ステーションであり、
前記プローブ信号を伝送することが、
前記伝送ステーションで制御信号を受信することと、
前記受信した制御信号に応答して、前記RF電磁放射のプローブ信号を前記領域内へ伝送することとを含む、
請求項16に記載のレーダ方法。
【請求項27】
前記伝送ステーションが非協調型の伝送ステーションであり、
前記プローブ信号を伝送することが、前記RF電磁放射を前記領域内へ受動的に放出することを含む、
請求項16に記載のレーダ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年3月16日に出願された「Photonic Crystal Receivers」という名称の米国仮特許出願第62/990,244号に対する優先権を主張する。この優先出願の開示が、全体として参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
以下の説明は、フォトニック結晶受信器を使用して標的物体を検出するレーダシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
受信器は、典型的に、電磁放射を使用可能な形態に変換するために使用される。たとえば受信器は、レーダシステムにおいて、1つまたは複数の物体から散乱した電磁放射を検出するために使用することができる。いくつかのシステムでは、レーダシステムの伝送器は強い無線周波(RF)信号を放出し、次いでこのRF信号は標的の方へ伝播する。次いで標的はこの強いRF信号を散乱させて、散乱RF信号を生成し、次に散乱RF信号は受信器によって検出される。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】1つの伝送ステーションおよび複数の受信ステーションを含む例示的なマルチスタティックレーダシステムの概略図である。
図2】伝送ステーションおよび受信ステーションを含む例示的なレーダシステムの概略図である。
図3】レーダ信号を変換および処理する例示的なレーダ方法の概略図である。
図4A】例示的な心棒のない蒸気セルおよび例示的なフォトニック結晶受信器の概略図である。
図4B】無線周波(RF)電磁放射を感知するための例示的な受信器の概略斜視図である。
図5】ディッシュおよびフォトニック結晶受信器を含む例示的なアンテナの概略図である。
図6】電磁放射を受信する突起および孔の周期的な配置を含む例示的なフォトニック結晶フレームの概略図である。
図7】偏光器として働く例示的な突起の狭窄区分に沿って配置された周期的なアレイ状のセグメントを含むフォトニック結晶フレームの例示的な突起(またはその一部分)の概略図である。
図8A】各構成がフォトニック結晶フレームに結合された光ファイバアセンブリの異なる配置を有している、フォトニック結晶フレームの代替構成の概略断面図である。
図8B】各構成がフォトニック結晶フレームに結合された光ファイバアセンブリの異なる配置を有している、フォトニック結晶フレームの代替構成の概略断面図である。
図8C】各構成がフォトニック結晶フレームに結合された光ファイバアセンブリの異なる配置を有している、フォトニック結晶フレームの代替構成の概略断面図である。
図8D】各構成がフォトニック結晶フレームに結合された光ファイバアセンブリの異なる配置を有している、フォトニック結晶フレームの代替構成の概略断面図である。
図8E】各構成がフォトニック結晶フレームに結合された光ファイバアセンブリの異なる配置を有している、フォトニック結晶フレームの代替構成の概略断面図である。
図9図6の例示的なフォトニック結晶受信器に対する群屈折率(ng)をRF電磁放射の周波数(f)の関数として示すグラフである。
図10A】例示的なスロット付きのフォトニック結晶導波路の単位セルの図である。
図10B】等高線グラフによって示される図10Aの単位セルの電界のシミュレーションの図である。
図11A】孔の周期的な配置によって画定されるフォトニック結晶構造を含む例示的なフォトニック結晶フレームの概略図である。
図11B図11Aの孔の周期的な配置におけるテーパの程度に関して50MHzの帯域幅にわたって15.697GHzの周波数でシミュレートされた伝送損失を示すグラフである。
図12A】パラボラディッシュを使用した例示的なテーパ状導波路に対する45.697GHzの電磁波のシミュレートされた結合の等高線グラフである。
図12B】パラボラディッシュが存在せず、平面波として受信した、例示的なテーパ状導波路に対する図12Aの15.697GHzの電磁波のシミュレートされた結合の等高線グラフである。
図13A】入ってくるRF電磁波がガウシアンビームとしてモデル化されている、例示的な非テーパ状導波路に対する入ってくるRF電磁波のシミュレートされた結合効率の図である。
図13B】入ってくるRF電磁波がガウシアンビームとしてモデル化されている、例示的なテーパ状導波路に対する入ってくるRF電磁波のシミュレートされた結合効率の図である。
図14A】フォトニック結晶フレーム内に3つのテーパを有する例示的なフォトニック結晶受信器の概略斜視図である。
図14B図14Aの例示的なフォトニック結晶受信器の空洞部分の詳細図である。
図14C図14Aの例示的なフォトニック結晶受信器のフォトニック結晶フレームにおける孔の周期的な配置の一部分の詳細図である。
図15A図14Aの第2のテーパの詳細上面斜視図である。
図15B図14Aの第2のテーパを離れてスロット導波路に入る電磁放射のシミュレートされた電界強度を示す等高線マップである。
図15C図14Aの第2のテーパをチャネルからスロット導波路へ横切るときのシミュレートされた伝送損失を示すグラフである。
図16】例示的なフォトニック結晶フレームの一区分の概略図、および様々な大きさの孔のずれに対する例示的なフォトニック結晶フレームの群屈折率(ng)とRF電磁放射の周波数(f)との間の関係を示すグラフである。
図17図14Aの例示的なフォトニック結晶受信器に対するシミュレートされた総結合効率のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
今日、多くの典型的なレーダシステムは、標的物体から散乱した信号を検出するために、金属受信器を使用する。しかし、金属受信器の使用は、現代のレーダシステムに対して制限をもたらす。たとえば、金属受信器は、標的の形状を判定するのに有用なレベルで偏光を感知することが困難である。金属受信器はまた、金属性の性質が交差干渉を誘起するために、互いに隣接して配置することが困難である。さらに、金属受信器は絶対的には較正されないため、散乱信号の振幅は一般に、検出には使用されない。金属受信器の製造および環境の変動により、そのような較正は非常に困難になる。
【0006】
そのような制限は、たとえば複数の周波数および偏光を感知することが可能な多機能レーダシステムの配備を抑制または阻止する可能性がある。同時に行われる複数の周波数および偏光測定では、単一の周波数および/または偏光システムでは判定することができない重要な情報をレーダ信号から抽出することができ、たとえば降水量の形状を測定することによって、暴風雨の強さを抽出することができる。たとえば、金属受信器の金属性の性質、ならびにサイズ、重量、および電力(SWaP)により、レーダ、特に多機能性のバイスタティックおよびマルチスタティックレーダシステムを、標的物体の形状および組成の判定、標的物体の検出可能性、ならびにクラッタおよび干渉の軽減に関連する問題に適用することが妨げられる。しかし、これらの問題に対処することができた場合、レーダの民生用および軍事用の応用例に非常に大きな利益をもたらすことができる。
【0007】
本明細書に開示するいくつかの態様では、レーダシステムは、無線周波(RF)電磁放射の信号を受信するための1つまたは複数のフォトニック結晶受信器を有する受信ステーションを含む。レーダシステムは、マルチスタティックレーダシステムまたは他のタイプのレーダシステムとすることができる。フォトニック結晶受信器は、誘電性材料から形成することができ、したがってグループ化またはクラスタ化することができる。グループ化またはクラスタ化されたとき、フォトニック結晶受信器は、互いに最小限に干渉し、レーダシステムが多機能能力によって動作することを可能にすることができる。たとえば、異なるそれぞれの偏光(たとえば、直交偏光)をフィルタリングするように、2つ以上のフォトニック結晶受信器を構成することができる。そのような構成により、複数の偏光を空間内のほぼ同じ点で同時に判定することが可能になる。別の例では、異なるそれぞれの周波数で動作するように、2つ以上のフォトニック結晶受信器を構成することができる。この構成により、ほぼ同じ空間的な位置で、複数の周波数を測定することが可能になる。レーダシステムの多機能能力は、レーダシステムが標的物体の形状および組成の一方または両方を判定することを可能にすることができる。
【0008】
加えて、フォトニック結晶受信器に対するSWaPは、より小さくすることができ、受信ステーションが位置およびタイミングのためにGPSおよび他の慣性航法サブシステムに結合されたとき、動的マルチスタティックレーダシステムを実現することが可能になる。マルチスタティックシステムは、クラッタおよび干渉の除去を可能にするため、標的の検出をより容易にすることができる。さらに、フォトニック結晶受信器は、自己較正された振幅によって動作することができ、それにより振幅データを使用して標的物体に関するさらなる情報を得ることが可能になる。典型的な従来のレーダシステムでは、標的情報を得るために絶対振幅を使用することは、不可能でなくても困難な可能性がある。この難題は、金属受信器のアンテナの変動(たとえば、製造、環境応答などの変動)に起因する。振幅情報は、実際の標的物体からのクラッタおよび干渉を区別するのに特に有用となりうる。フォトニック結晶受信器はまた、レーダシステムをより低いコストで作製することを可能にすることができる。たとえば、レーダシステムに対して単一の伝送器を使用することができるが、標的の検出および特徴付けを最適化するために、複数の受信器を動的に配置することもできる。
【0009】
様々な実装例では、フォトニック結晶受信器は、[1]フォトニック結晶受信器が、独自のフィルタとして作用することができること、[2]フォトニック結晶受信器が、増幅器がなくても標準的な性能を実現することができること、[3]フォトニック結晶受信器の複数の事例を最小の干渉でともにグループ化することができること、[4]フォトニック結晶受信器が偏光を感知することができること、および[5]フォトニック結晶受信器を自己較正することができること、という利点のうちの1つまたは複数を提供することができる。さらに、フォトニック結晶受信器は、小さく小型サイズのダイオードレーザとともに使用することができる。さらに、フォトニック結晶受信器は、電力増幅器を必要とすることなく、低電力電子機器によって電力供給することができる。電力増幅器の除去により、携帯型で小型のマルチスタティックレーダシステムを可能にすることができる。
【0010】
図1を次に参照すると、1つの伝送ステーション102および複数の受信ステーション104を含む例示的なマルチスタティックレーダシステム100の概略図が提示されている。伝送ステーション102は、無線周波(RF)電磁放射などの電磁放射106のプローブ信号を放出し、プローブ信号は、飛行機などの標的108と相互作用する。標的108は、電磁放射106を散乱させ、電磁放射106は、標的108の周囲環境内へ外方に広がる。一般に、散乱した電磁放射110は、放出された電磁放射106より強度が弱くなる。受信ステーション104は、伝送ステーション102の環境内に配置されており、散乱した電磁放射110(またはその一部分)に基づく電磁放射のリターン信号を処理するように構成される。散乱した電磁放射110の受信を改善するために、受信ステーション104のうちの1つまたは複数は、電磁放射のリターン信号を捕捉して集束させる能力を増大させるためのディッシュを含むことができる。
【0011】
受信ステーション104は、1つまたは複数のフォトニック結晶受信器を含むことができる。図1で、受信ステーション104の各々が、フォトニック結晶受信器のクラスタを有するものとして提示されている。しかし、他の受信器構成も可能である。いくつかの事例では、受信ステーション104のうちの1つまたは複数が、単一のフォトニック結晶受信器を含む。いくつかの事例では、受信ステーション104のうちの1つまたは複数が、フォトニック結晶受信器のグルーブまたはクラスタを含むことができる。いくつかの場合、標的108は、協働標的とすることができる。これらの場合、標的108は電磁放射を放出する伝送器を有し、この電磁放射は受信ステーション104によって検出される。受信ステーション104は、標的108の位置の判定(たとえば、散乱パルスのタイミングによる)、標的108の速度の判定(たとえば、散乱パルスのドップラー偏移による)、標的108の組成の判定(たとえば、散乱パルスの偏光特性による)、またはこれらの何らかの組合せを行うことができる。他の特性(たとえば、標的の形状)も可能である。
【0012】
レーダは、標的108などの物体から散乱した電磁放射、典型的にはRF電磁放射を検出することによって機能する。検出するべき標的である物体を、関連しない物体(たとえば、クラッタ)から区別することができると最適である。いくつかの例では、伝送器、たとえば伝送ステーション102が強いプローブ信号を放出し、このプローブ信号は、標的108などの1つまたは複数の物体を含む関心領域内へ伝播する。1つまたは複数の物体は、プローブ信号を散乱させ、次にこのプローブ信号が、受信器、たとえば受信ステーション104のうちの1つまたは複数によって、より弱いリターン信号として検出される。検出するべき標的が協働標的である場合、リターン信号は放出信号を含むことができる。リターン信号は、1つまたは複数の物体、特に標的物体に関する情報を取得するために使用される。プローブ信号は関心領域内へ伝播する際に広がるため、リターン信号はプローブ信号に比べてより弱い。加えて、標的物体は、プローブ信号を多くの方向に散乱させ、次にプローブ信号は空間内にさらに広がる。標的物体の検出に競合するのは、他のアンテナを含む非標的物体からくるクラッタおよび/または望ましくない信号である。受信器は、伝送器によって放出されるプローブ信号より弱いリターン信号を検出することが可能でなければならない。
【0013】
レーダシステムは、300MHz~300GHzの範囲内の周波数を有する電磁放射を使用して動作することができる。特定の応用例に選択される動作周波数は、意図される標的のサイズおよび伝播距離(たとえば、雰囲気中)によって決定することができる。たとえば、Gバンド周波数(たとえば、中距離レーダの場合は4~6GHz)、E/FまたはDバンド周波数(たとえば、より長距離のレーダの場合は1~4GHz)、I/Jバンド周波数(たとえば、気象レーダの場合は8~20GHz)を使用することができる。連続波、準連続波、およびパルスレーダも可能である。いくつかの変形例では、レーダシステムの伝送器は、最大メガワット規模の電力を有するプローブ信号を放出し、約1MHzの帯域幅でミリワットまたはマイクロワット規模のリターン信号を検出することができる。いくつかの変形例では、レーダシステムは、集束デバイス、いわゆるディッシュを使用して、特により高い周波数で受信器の感度を強化することができる。パルスレーダの場合、繰返し率は、100Hz~100kHzの範囲とすることができる。パルス幅は、数ミリ秒~数十ナノ秒とすることができる。いくつかの場合、レーダシステムは、mm波周波数を使用することができる。
【0014】
レーダシステムは、可能な限り多くの情報をリターン信号から抽出するように設計することができる。有用な情報は、[1]測距に使用することができるリターン信号のタイミング、[2]標的速度の測定に使用することができるリターン信号のドップラー偏移、ならびに[3]サイズ、形状、および組成の推定に使用することができる偏光から得ることができる。そのような情報を生成するために、レーダ信号を信号処理電子機器によって処理することができる。そのような信号処理は、リターン信号の特性(たとえば、タイミング、ドップラー偏移、偏光など)を抽出するための変調および復調方法を使用することができる。
【0015】
図1のマルチスタティックレーダシステム100などのマルチスタティックレーダシステムは、単一または制限された数の伝送ステーションが複数の受信ステーションとともに使用されるレーダシステムを指すことができる。1つまたは複数のフォトニック結晶受信器を含む受信ステーションを用いるとき、これらのシステムは、[1]標的物体のレーダ断面も効果的に増大させることができる有効範囲の増大、[2]検出可能性の低減、[3]冗長性による残存性の増大、ならびに[4]クラッタおよび干渉の低減または除去を含む1つまたは複数の利点を有することができる。他の利点も可能である。いくつかの実装例では、マルチスタティックレーダシステムは、協調型または非協調型の伝送ステーションを含む。協調型の伝送ステーションは、マルチスタティックレーダシステムの1つまたは複数の受信ステーションと協働して動作するように、操作者またはコンピュータシステムが制御することができる。非協調型の伝送ステーションは、マルチスタティックレーダシステムの環境への受動放出周囲RF電磁放射とすることができる(たとえば、携帯電話塔)。いくつかの実装例では、マルチスタティックレーダシステムは、移動式の1つまたは複数の伝送ステーションを含む。たとえば、マルチスタティックレーダシステムは、ドローン、有人飛行機、ボート、またはトラックなどの移動車両に取り付けられた伝送ステーションを含むことができる。
【0016】
多くの実装例では、マルチスタティックレーダシステムは、受信ステーションから大きい距離をあけて位置する1つまたは複数の伝送ステーションを含む。これらの実装例では、マルチスタティックレーダシステムは、ネットまたはネット状システムを形成することができる。ネットまたはネット状システムは、伝送ステーションを比較的安全な場所に離しておくことができ、受信ステーションをより危険な位置に配置することができるため、軍事用の応用例に有利である。システムが受信器の一部を(たとえば、敵の砲撃から)失った場合でも、システムが完全に不能になるわけではない。受信ステーションが分散されているとき、各受信ステーションが独立して妨害されるはずであるため、この利点は、レーダ妨害にも拡張される。さらに、妨害信号を誘導するために伝送ステーションからのプローブ信号が使用されるため、受信ステーションを伝送ステーションから独立したものとすることができることから、敵は妨害するべき受信ステーションを見つけるのに苦労するはずである。民生用の応用例の場合、複数の受信ステーションも有利である。複数の受信器ノードを有することによって、マルチスタティックレーダシステムは、単一の受信器ノードの損失によって機能性を失うことはなく、したがって空港監視レーダなどの応用例に使用されるシステムの保守およびグレースフルエイジングに役立つ。
【0017】
複数の移動受信ステーションを有することで、クラッタと実際の信号との間の違いを見分けるために、受信ステーションをネット内に最適に配置することを可能にすることもできる。ネットは、標的を三角化すること(またはより容易に三角化すること)を可能にする。さらに受信ステーションは、GPSならびに慣性案内およびタイミングシステムを使用して、コヒーレントに動作することができる。しかし、システムが金属受信器に依拠する場合、そのようなシステムに多機能能力を加えることは困難なことがある。特に、金属受信器のアンテナは、互いに相互作用することがある。しかし、受信ステーションが誘電性材料から形成されたフォトニック結晶受信器を使用する場合、そのような相互作用を軽減することができる。この場合、受信ステーションを空間内に広げることによって、場合により標的と受信器の距離を低減させることができるため、ネット状システムに対してより低電力の伝送器を使用することも可能である。
【0018】
複数の受信ステーションを有するさらなる利点には、データの融合が含まれる。たとえば、受信ステーションは、2つの受信器(たとえば、フォトニック結晶受信器)を、異なるそれぞれの周波数で使用することができる。第1の受信器は、標的物体からの信号を受信するために使用することができ、この信号は、第1の周波数(または第1の周波数範囲)を含むことができる。第2の受信器は、伝送ステーションからの同期信号を受信するために使用することができ、この信号は、第2の周波数(または第2の周波数範囲)を含むことができる。そのような場合、より高電磁透過性の誘電性受信器によって提供される最小の干渉および交差結合が有利となりうる。データの融合は、複数の受信ステーションからデータを受信すること、受信データを合成または処理すること、ならびに合成データを再び伝送ステーションおよび/または受信ステーションへ分配することを含むことができる。合成データは、他のステーションまたは関係先(たとえば、中央基地局)に分配することもできる。
【0019】
フォトニック結晶受信器は、レーダシステムに対して、たとえば金属受信器を上回る利点を提供することができる。フォトニック結晶受信器は、蒸気またはリュードベリ原子に基づく電磁放射の検出を使用する。そのような受信器は、現況技術の金属受信器と同等の感度で動作することができる一方で、すべて誘電性材料から形成されており、自己較正が可能であり、電力増幅を必要としない。フォトニック結晶受信器は、現況技術のリュードベリ原子に基づく受信器に比べて、3桁を超えて増大した電界感度を有することができる。フォトニック結晶受信器はまた、[1]1つまたは複数のテーパを介したフォトニック結晶フレームへの電磁波の効率的な結合、[2]偏光感度を強化するためのフォトニック結晶偏光器、[3]フォトニック結晶構造を使用した電磁波の減速、[4]スロット導波路を使用した電磁波の集中、および[5]空洞を形成するためにフォトニックミラーを使用した電磁波の集中などの特徴を含むことができる。多くの変形例では、フォトニック結晶受信器は、これらすべての特徴を統合する。フォトニック結晶受信器はまた、外部の蒸気セル内に密閉する必要がなく、金属性部分を有しておらず、吹きガラス特徴(寸法的に制御することが困難であり、誤りを引き起こす可能性がある)を有していないことから、モノリシックとすることができる。フォトニック結晶受信器が自己較正する能力は、ネット状レーダシステム内でデータを合成または融合するのに非常に有用である。
【0020】
図2を次に参照すると、伝送ステーション202および受信ステーション204を含む例示的なレーダシステム200の概略図が提示されている。例示的なレーダシステム200は、図2に示すように、複数の受信ステーション204を含むことができる。伝送ステーション202は、RF電磁放射のプローブ信号を領域内へ放出するように構成される。プローブ信号は、RF電磁放射の連続放出、RF電磁放射のパルス放出、またはこれらの組合せによって画定することができる。いくつかの変形例では、伝送ステーション202は、操作者またはコンピュータシステムによって生成されるものなどの制御信号に応答して、RF電磁放射のプローブ信号を領域内へ放出するように構成された協調型の伝送ステーションである。いくつかの変形例では、伝送ステーションは、RF電磁放射のプローブ信号を領域内へ受動的に放出するように構成された非協調型の伝送ステーションである。非協調型の伝送ステーションの例には、別のレーダシステムを目的とする携帯電話塔および伝送ステーションが含まれる。伝送ステーション202は、静止式または移動式とすることができる。たとえば、伝送ステーション202は、ドローン、有人飛行機、ボート、またはトラックなどの移動車両に取り付けることができる。いくつかの実装例では、例示的なレーダシステム200は、複数の伝送ステーション202を含む。
【0021】
受信ステーション204は、領域からのRF電磁放射のリターン信号を処理するように構成される。リターン信号は、標的物体などの1つまたは複数の物体から領域内へ散乱したプローブ信号に基づいている。受信ステーション204は、誘電性材料から形成することができるフォトニック結晶受信器206を含む。フォトニック結晶受信器206は、標的RF電磁放射に結合するように構成されたアンテナ構造を含み、標的RF電磁放射は、1MHz~1THzの範囲内の周波数(または複数の周波数)を有することができる。標的RF電磁放射は、単一の周波数、周波数範囲、または両方に対応することができる。多くの変形例では、標的RF電磁放射は、RF電磁放射のリターン信号の一部である。たとえば、標的RF電磁放射は、RF電磁放射のリターン信号と共通の周波数を共有することができる。標的RF電磁放射はまた、RF電磁放射のリターン信号に関連する1つまたは複数の周波数と重複する周波数範囲を有することができる。フォトニック結晶受信器206はまた、細長いスロットが配置されたフォトニック結晶構造を含み、フォトニック結晶構造は、標的RF電磁放射を細長いスロットに集中させるように構成される。細長いスロットに蒸気が配置される。いくつかの変形例では、フォトニック結晶受信器206は、ディッシュと対になって、RF電磁放射のリターン信号に対するフォトニック結晶受信器206の感度を増大させる。フォトニック結晶受信器206のさらなる例は、図4A図17に関連して説明する。
【0022】
いくつかの実装例では、受信ステーション204は、複数のフォトニック結晶受信器206を含む。いくつかの変形例では、複数のフォトニック結晶受信器206のうちの1つまたは複数は、標的RF電磁放射の別個の特性(たとえば、異なるそれぞれの周波数、異なるそれぞれの偏光など)に専用である。たとえば、複数のフォトニック結晶受信器206は、第1のフォトニック結晶受信器および第2のフォトニック結晶受信器を含むことができる。第1のフォトニック結晶受信器206の第1のアンテナ構造は、標的RF電磁放射の第1の偏光をフィルタリングするように構成された第1の偏光器を含むことができ、第2のフォトニック結晶受信器の第2のアンテナ構造は、標的RF電磁放射の第2の異なる偏光をフィルタリングするように構成された第2の偏光器を含む。第1および第2の偏光は、互いに直交することができる。しかし、他の相対的な向きも可能である。別の例では、第1のフォトニック結晶受信器の第1のアンテナ構造は、標的RF電磁放射の第1の周波数(または第1の周波数範囲)に結合するように構成され、第2のフォトニック結晶受信器の第2のアンテナ構造は、標的RF電磁放射の第2の異なる周波数(または第2の異なる周波数範囲)に結合するように構成される。いくつかの変形例では、複数のフォトニック結晶受信器206の1つまたは複数のサブグルーブが、標的RF電磁放射の別個の特性に専用である。
【0023】
受信ステーション204はまた、フォトニック結晶受信器206からの光信号に基づいて分光データを生成するように構成された光学システム208を含む。分光データは、標的RF電磁放射の1つまたは複数の特性を表す。いくつかの変形例では、図2に示すように、光学システム208は、光ファイバケーブル210によってフォトニック結晶受信器206に結合される。光学システム208は、蒸気の1つまたは複数の電子遷移と相互作用する入力光信号を細長いスロットに提供するように構成されたレーザサブシステムを含むことができる。光学システム208はまた、細長いスロットからの出力光信号に基づいて分光データを生成するように構成された光検出サブシステムを含むことができる。光学システム208は、レーザサブシステムおよび光検出サブシステムのうちの一方または両方を制御する制御電子機器をさらに含むことができる。光ファイバケーブル210は、レーザサブシステムからの入力光信号をフォトニック結晶受信器206へ伝送すること、細長いスロットからの出力光信号を光検出サブシステムへ伝送すること、または両方を行うように動作可能とすることができる。いくつかの変形例では、入力および出力光信号は、それぞれの光ファイバケーブルによって伝送される。
【0024】
受信ステーション204は、分光データに基づいて時系列の特性データを生成するように構成されたデータ処理サブシステム212をさらに含む。時系列の特性データは、標的RF電磁放射の1つまたは複数の特性を経時的に表す。1つまたは複数の特性の例には、振幅、位相、周波数、および偏光が含まれる。他の特性も可能である。データ処理サブシステム212は、時系列の特性データの生成を支援するために、1つまたは複数のプロセッサおよび1つまたは複数のメモリを含むことができる。1つまたは複数のプロセッサおよび1つまたは複数のメモリは、データ処理サブシステム212のアプリケーション層214を画定することができる。いくつかの変形例では、データ処理サブシステム212は、システムオンチップ(SoC)を含むことができる。これらの変形例では、SoCは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)と組み合わされた中央演算処理装置(CPU)とすることができる。しかし、他の構成のSoCも可能である。
【0025】
いくつかの実装例では、時系列の特性データは、標的RF電磁放射の振幅を経時的に表す振幅データを含む。いくつかの実装例では、時系列の特性データは、標的RF電磁放射の位相を経時的に表す位相データを含む。いくつかの実装例では、時系列の特性データは、標的RF電磁放射の周波数を経時的に表す周波数データを含む。いくつかの実装例では、アンテナ構造は、標的RF電磁放射の偏光をフィルタリングするように構成された偏光器を含み、時系列の特性データは、標的RF電磁放射の偏光を経時的に表す偏光データを含む。振幅データ、位相データ、周波数データ、および偏光データの組合せも可能である。
【0026】
いくつかの実装例では、データ処理サブシステム212は、時系列の特性データに基づいて、領域内の標的物体の特性を判定するようにさらに構成される。特性の例には、領域内の標的物体の場所、標的物体の速度、標的物体の形状、および標的物体(またはその一部分)の組成が含まれる。これらの特性は、単独でまたは任意の組合せで判定することができる。
【0027】
データ処理サブシステム212はまた、例示的なレーダシステム200の他のステーションとデータを交換するための通信インターフェースを含むことができる。通信インターフェースは、データ処理サブシステム212の通信層216を画定することができ、光ファイバ、電気ケーブル(たとえば、イーサネットケーブル)、または両方に結合するように構成することができる。通信インターフェースはまた、無線信号(たとえば、IEEE802.11規格によって定義されたWiFi信号、衛星信号など)を送信および受信するためのアンテナを含むことができる。いくつかの変形例では、通信インターフェースは、データ処理サブシステム212がコンピュータ(たとえば、ラップトップ)とデータを交換してユーザインターフェースを操作者に提示することを可能にすることができる。ユーザインターフェースは、操作者が受信ステーション204に対する保守を制御または実行することを可能にすることができる。多くの変形例では、通信インターフェースは、システムオンチップ(SoC)を含む。これらの変形例では、SoCは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)と組み合わされた中央演算処理装置(CPU)とすることができる。しかし、他の構成のSoCも可能である。
【0028】
いくつかの実装例では、受信ステーション204は、受信ステーション204に対する局所的基準時間および局所的基準位相のうちの一方または両方を設定するように構成されたローカルクロックサブシステム218を含む。ローカルクロックサブシステム218は、データ処理サブシステム212が時系列の特性データを局所的基準時間および局所的基準位相に相関させることを可能にすることができる。いくつかの変形例では、ローカルクロックサブシステム218は、受信ステーション201を位置付けるためのナビゲーションクロックを含む。たとえば、ローカルクロックサブシステム218は、局所的基準時間および位相がGPS信号(衛星通信が利用可能である場合)に基づくことを可能にするためのGPS受信器を含むことができる。いくつかの変形例では、ローカルクロックサブシステム218は、Cs/Rbクロック、メーザー、水晶発振器、またはチップスケール原子クロックなどの予備クロックを含む。予備クロックとGPS受信器(存在する場合)を組み合わせて、局所的基準時間および位相を再同期させ、それによってローカルクロックサブシステム218をGPS信号によって操作することを可能にすることもできる。
【0029】
いくつかの実装例では、受信ステーション204は、受信ステーション204の位置を判定するように構成された慣性航法サブシステム220を含む。受信ステーション204が移動する変形例では、慣性航法サブシステム220はまた、受信ステーション204の動きを追跡するように構成することができる。慣性航法サブシステム220は、ローカルクロックサブシステム218と共有することができるナビゲーションクロックを含むことができる。慣性航法サブシステム220はまた、加速度計、GPS受信器、ジャイロスコープ、またはこれらの何らかの組合せを含むことができる。慣性航法サブシステム220はまた、GPSポジショニングを利用して、受信ステーション204の位置を判定することができる。しかし、衛星通信が拒否された場合、慣性航法サブシステム220は、運動センサ(たとえば、加速度計、ジャイロスコープなど)を使用して、受信ステーション204の位置を追跡することができる。
【0030】
いくつかの実装例では、図2に示すように、複数の受信ステーション204の各々は、ローカルクロックサブシステム218を含む。これらの実装例では、例示的なレーダシステム200は、伝送ステーション202および各受信ステーションのローカルクロックサブシステム218と同期信号を交換するように構成されたグローバルクロックステーションを含むことができる。同期信号は、例示的なレーダシステム200に対する大域的基準時間および大域的基準位相を表す。
【0031】
さらなる実装例では、例示的なレーダシステム200は、伝送ステーション202および複数の受信ステーション204と通信するように構成されたデータ制御センター222を含む。特定の場合、データ制御センター222は、グローバルクロックステーションを含むことができる。データ制御センター222はまた、それぞれの受信ステーション204からの複数の時系列の特性データに基づいて処理データを生成することを含む動作を実行するように構成される。処理データは、領域内の標的物体の特性を表す。動作はまた、伝送ステーション202、複数の受信ステーション204のうちの1つもしくは複数、または両方に処理データを通信することを含む。データ制御センター222は、例示的なレーダシステム200の他のステーションとデータを交換するための通信インターフェースを含むことができる。いくつかの変形例では、通信インターフェースは、データ制御センター222が、遠隔位置にある基地局など、他の場所にある1つまたは複数のステーションとデータを交換することを可能にする。1つまたは複数のステーションは、陸上、空中(たとえば、飛行機)、水域(たとえば、ボート)、または宇宙(たとえば、衛星)に位置することができる。通信インターフェースは、データ制御センター222の通信層を画定することができ、光ファイバ、電気ケーブル(たとえば、イーサネットケーブル)、または両方に結合するように構成することができる。通信インターフェースはまた、無線信号(たとえば、IEEE802.11規格によって定義されたWiFi信号、衛星信号など)を送信および受信するためのアンテナを含むことができる。多くの変形例では、通信インターフェースは、システムオンチップ(SoC)を含む。これらの変形例では、SoCは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)と組み合わされた中央演算処理装置(CPU)とすることができる。しかし、他の構成のSoCも可能である。
【0032】
動作中、データ制御センター222は、複数の時系列の特性データをともに融合することによって、処理データを生成することができる。たとえば、データ制御センター222は、2つ以上の受信ステーション204からの時系列の振幅データを融合して、処理データを生成することができる。別の例では、データ制御センター222は、2つ以上の受信ステーション204からの時系列の周波数データおよび時系列の偏光データを融合して、処理データを生成することができる。他の組合せの特性データも可能である。データ制御センター222は、例示的なレーダシステム200のステーション202、204または例示的なレーダシステム200と通信しているユーザに分配することができるように、複数の時系列の特性データを迅速に処理するために、大きい計算資源を有することができる。そのような分配は、光ファイバケーブル、電気ケーブル、または無線信号を介して行うことができる。そのデータ制御センター222はまた、データの分配を容易にするために、1つまたは複数の衛星と通信することができる。しかし、例示的なレーダシステム200が配備されている場所および例示的なレーダシステム200の環境に応じて、複数の通信方法およびチャネルを使用することができる。高速固定通信のためには、光ファイバケーブルが望ましい。いくつかの事例では、受信ステーションがGPSポジショニング信号ではなくデータ制御センター222と通信することができる場合、例示的なレーダシステム200を使用して、標的から生成されたリターン信号およびクラッタを使用することによって、受信ステーションの位置を取得することができる。たとえば、受信ステーションのうちの1つまたは複数が、例示的なレーダシステム200内の残りのステーション202、204に対して動くことができる。
【0033】
グローバルクロックステーションは、例示的なレーダシステム200全体にわたって正確なタイミングおよび位相情報を分配することができることを確実にするように動作可能である。グローバルクロックステーションは、メーザー、原子クロック、またはGPSクロック(原子クロックに基づくことができる)に対応するグローバルクロックを含むことができる。いくつかの変形例では、グローバルクロックは、GPSによって操作される水晶発振器またはチップスケール原子クロックを含むことができる。同期信号は、各ステーション202、204およびデータ制御センター222の通信層によって画定された通信システムを介して分配することができる。いくつかの変形例では、同期信号は、伝送ステーション202によって放送される訓練シーケンスによって分配することができる。グローバルクロックステーションは、データ制御センター222と同じ場所に配置することができ、または別の安全な場所に配置することができる。
【0034】
いくつかの実装例では、伝送ステーション200は、従来のレーダ伝送器またはアレイに基づく。しかし、増幅リュードベリ原子メーザーなどのデバイスを伝送器に対するソースとして使用することも可能である。これらのタイプの伝送器は指向性を有し、ネット状受信ステーション204を使用して標的物体に照準を定めるために使用することができる。言い換えれば、例示的なレーダシステム200は、狭ビーム伝送器による追跡のために使用することができる。図2は1つの伝送ステーション202のみを有する例示的なレーダシステム200を示すが、複数の伝送ステーション202も可能である。たとえば、各タイプの伝送器の利点とネット状の複数の受信ステーション204を組み合わせることで、従来の走査広域伝送器を使用して標的を見つけることができ、狭帯域幅伝送器を使用して標的に照準を定めることができる。また、複数の伝送ステーションが利用される場合、マルチラテレーションを改善することができる。
【0035】
いくつかの実装例では、受信ステーション204のうちの1つまたは複数は、追跡システムに結合されたフォトニック結晶受信器206を含む。追跡システムは、ギンブルドマウントを含む3軸モータ駆動式の機械駆動装置とすることができる。これらの実装例では、フォトニック結晶受信器206は、追跡システムによって判定される方向と位置合わせされる。いくつかの実装例では、レーザサブシステムは、入力光信号(たとえば、準備および読出し信号)を生成するためのレーザ、レーザ安定化デバイス(たとえば、レーザロックおよび同調基準)、レーザ周波数を切り換えるためのシステム、およびレーザサブシステムを制御するための低レベル電子機器を含む。複数のフォトニック結晶受信器206を含む受信ステーション204の場合、レーザサブシステムは、低減された数のレーザで複数のフォトニック結晶受信器206を駆動することを可能にするために、複数のレーザまたはスイッチを含むことができる。低レベル電子機器はまた、レーザ強度安定化ユニットおよび必要なアクチュエータを含むことができる。いくつかの実装例では、光検出サブシステムは、出力光信号を感知するための光検出器、および光検出サブシステムを制御するための低レベル電子機器を含む。
【0036】
いくつかの実装例では、受信ステーション204のうちの1つまたは複数は基準サブシステムを含み、基準サブシステムは、基準アンテナまたはリュードベリ原子メーザーを含むことができる。基準アンテナまたはリュードベリ原子メーザーは、細長いスロット内の蒸気の位置で基準信号およびリターン信号の両方を重ね合わせることによって、リターン信号の相対的な位相および周波数を判定するために使用することができる(たとえば、ヘテロダイン測定による)。同様に、ループで構成される多光子方法を使用して、リターン信号の位相および周波数偏移を判定することもできる。リュードベリ原子メーザーはまた、受信ステーションによって受信された基準信号またはリターン信号のための増幅器として使用することもできる。たとえば、基準信号は、フォトニック結晶受信器206と相互作用する基準アンテナから放出されたクロックRF信号とすることができる。基準信号はまた、フォトニック結晶受信器と相互作用するリュードベリ原子メーザーからのRF信号とすることができる。リュードベリ原子メーザーは、フォトニック結晶受信器206のための増幅器として作用するように構成することができる。リュードベリ原子メーザーはまた、誘電性材料から形成することができ、フォトニック結晶受信器206に使用されるものと同じレーザタイプによって準備または励起することができる。
【0037】
いくつかの実装例では、例示的なレーダシステム200は、各ステーション202、204およびデータ制御センター222の通信インターフェースによって部分的に画定された通信層を含む。通信層は、1つまたは複数の受信ステーション204(またはそれぞれのデータ処理サブステーション212)に関連付けられたアプリケーション層214からデータを受信する。そのようなデータは、必要に応じて、ローカルインターフェースおよび記憶ユニット、データ制御センター222、ならびに/または他の受信ステーション204へ伝達することができる。各通信インターフェースに対するSoCの構成は、ステーション202、204とデータ制御センター222との間の通信チャネルの数に依存する。構成はまた、通信チャネルの性質(たとえば、タイプ、伝達速度、電力要件など)に依存する。通信層は、通信チャネルを介して情報を送信および受信するために、通信インターフェースのトランシーバに依拠することができる。通信チャネルのためのプロトコルは、チャネルの性質、必要とされるデータ速度、および必要とされるタイミングに特有のものである。例示的なレーダシステム200が小さい区域にわたって分配される実装例では、データ制御センター222へのポイントツーポイント通信のために、リュードベリ原子メーザーまたはレーザを使用することができる。通信層はまた、受信ステーションの位置(またはその動き)を表す交換同期信号およびデータを取り扱うことができる。
【0038】
いくつかの実装例では、受信ステーション204のうちの1つまたは複数は、ユーザインターフェースを提示するためにディスプレイを有するコンピュータまたは専用のSoCを含む。ディスプレイはまた、時系列の特性データまたは標的物体の1つもしくは複数の特性などのレーダデータを提示することができる。ユーザインターフェースは、例示的なレーダシステム200に対する保守を調整または実行するために使用することができる。たとえば、ユーザインターフェースを使用して、レーザサブシステムのレーザを手動で再ロックすること、またはロック(または再ロック)されたレーザを監視することができる。データ記憶もまた、ユーザインターフェースに関連付けることができる。ディスプレイは、通信層の一部である通信インターフェースを介して、1つまたは複数の受信ステーション204に接続することができる。
【0039】
図3を次に参照すると、レーダ信号を変換および処理する例示的なレーダ方法300の概略図が提示されている。例示的なレーダ方法300は、受信ステーション、またはより具体的にはその中のフォトニック結晶受信器でレーダ信号を受信することから開始することができ、受信ステーションの操作者によって終了することができる。例示的なレーダ方法300は、領域内の標的物体を検出するために使用することができ、操作者は、ローカルユーザインターフェース(たとえば、受信ステーションと通信しているラップトップまたはコンピュータ)を介して受信ステーションと対話することができる。この概略図は、レーダ信号測定の流れ、および受信ステーションの異なる構成要素がレーダ信号測定を実現するためにどのようにともに機能するかを示す。レーダ信号は、領域内の1つまたは複数の物体から散乱するRF電磁放射のプローブ信号に応答して生成されたRF電磁放射のリターン信号によって画定することができる。リターン信号に対するフォトニック結晶受信器内の蒸気の応答が、時系列の特性データに変換される。蒸気の応答がフォトニック結晶受信器から読み出されて、分光信号を生成する(たとえば、Autler-Townes分割またはプローブレーザ振幅)。これらの動作は、フォトニック結晶受信器、レーザサブシステム、および光検出サブシステムの協調作用によって行われる。結果として得られる分光データは時間シーケンスに変換され、この時間シーケンスをローカルクロックサブシステムと同期させて、アプリケーション層の下位レベルで正確なタイミングおよび位相情報を提供する。
【0040】
データ処理サブシステムによって制御されるアプリケーション層はまた、時系列の特性データを、範囲(または場所)、速度、微分偏光、形状、および組成などの標的物体の特性に変換する。変換された後、通信層は、生データ(たとえば、複数の時系列の特性データおよび複数の時系列の特性データ)を、ローカルユーザインターフェースおよび記憶システム、データ制御センター、ならびにポインティングおよび追跡システムに渡す。グローバルクロックステーションを使用して、受信ステーションのローカルクロックサブシステムを同期させ、ローカルクロックサブシステムは、局所的基準時間および位相を提供して時間シーケンスデータを生成する。ローカルクロックサブシステムはまた、受信ステーションの位置を生成するために慣性航法サブシステムによって使用されるナビゲーションクロックを含むことができる。受信ステーションの位置は、データ制御センターに通信することができる。ローカルクロックサブシステムは、GPS信号が利用可能でない場合、慣性航法サブシステムに対応することができる。データ制御センターによって融合(または処理)されたデータはまた、ポインティングおよび追跡システムによって利用することができる。
【0041】
いくつかの実装例では、例示的なレーダ方法300は、伝送ステーションの動作によって、RF電磁放射のプローブ信号を領域内へ伝送することを含む。例示的なレーダ方法300はまた、受信ステーションの動作によって、領域からのRF電磁放射のリターン信号を処理することを含む。リターン信号は、領域内の1つまたは複数の物体から散乱したプローブ信号に基づく。リターン信号を処理することは、受信ステーションのフォトニック結晶受信器で、領域からのRF電磁放射のリターン信号を受信することを含む。フォトニック結晶受信器は、図2に関連して説明したフォトニック結晶受信器に類似している。例示的なレーダ方法300は、受信ステーションの光学システムの動作によって、フォトニック結晶受信器からの光信号に基づいて分光データを生成することをさらに含む。分光データは、標的RF電磁放射の1つまたは複数の特性を表す。例示的なレーダ方法300はまた、受信ステーションのデータ処理サブシステムの動作によって、分光データに基づいて時系列の特性データを生成することを含む。時系列の特性データは、標的RF電磁放射の1つまたは複数の特性を経時的に表す。
【0042】
いくつかの実装例では、伝送ステーションからのプローブ信号が、ネット状レーダシステムの有効区域内の標的を精査するために送出される。放出することができるプローブ信号は極めて一般的であり、異なる位相、振幅、および偏光を有するパルスシーケンスを含むことができる。バーカー符号は、レーダパルスのタイプの一例である。フォトニック結晶受信器は、標的物体からの小さい反射信号(たとえば、リターン信号)を検出する。この放射は、フォトニック結晶受信器内の蒸気に入射する。入力光信号は、リュードベリ原子受信器に使用されるレーザ光で運ばれる。出力光信号は、光ファイバケーブルを介して光学システムへ進み、光学システムが分光データを生成する。振幅、位相、周波数、偏光、またはこれらの任意の組合せなどの特性を、分光データから抽出することができる。時間の関数であるこれらの特性は、ローカルクロックサブシステムからのクロックタイミングデータを使用してアプリケーション層内で構築される。次いで、この時間シーケンスデータを使用して、範囲(または場所)、速度、形状、および組成などの標的物体の特性を抽出する。特性を表すデータは、通信層を通ってデータ制御センターへ伝達することができ、したがって他の受信ステーションからのデータと統合することができる。そのような統合の結果、標的物体およびその特性をより良好に識別することができる処理データが得られる。そのような統合はまた、標的物体をクラッタおよび干渉からより良好に区別することを可能にすることができる。所望される場合、受信ステーションへ戻るローカルデータおよび融合データを使用して、標的物体の追跡を助けることができる。
【0043】
例示的なレーダ方法300は、受信ステーションの慣性航法サブシステムの動作によって、受信ステーションの位置を判定することを含む。慣性航法サブシステム(INS)は、GPS信号が拒否された場合、受信ステーションの位置を維持する。しかし、GPS衛星との通信が利用可能である場合、GPS信号を使用して、受信ステーションの位置を取得することができる。INSは、GPSポジショニング信号が拒否されているときに受信ステーションの位置が動いた場合にのみ必要とされうる。受信ステーションの位置は、通信インターフェースを介して通信層を通ってデータ制御センターへ中継することができる。例示的なレーダ方法300はまた、受信ステーションのローカルクロックサブシステムの動作によって、受信ステーションに対する局所的基準時間および局所的基準位相を設定することを含む。ローカルクロックサブシステムはまた、ナビゲーションクロックをINSと共有することができる。ナビゲーションクロックは、グローバルクロックステーションからの同期信号を使用して同期させることができる。同期信号は、通信インターフェースを介して通信層を通って伝送することができる。いくつかの事例では、同期信号は、伝送ステーションによって放出されるタイミング信号に基づく。伝送ステーションの位置を表すデータもまた、通信システムまたはデータ制御センターを通って通信することができる。いくつかの変形例では、レーダ受信器は、データ融合センターまたは局所的に獲得したレーダデータを介して受信ステーションへ通信されるデータを使用して標的物体を追跡するように、誘導または使用することができる。このデータを使用して、モータ式のギンブルドマウントなどの機械3軸ポインティングデバイスを駆動することができる。
【0044】
レーダシステムは、フォトニック結晶受信器を組み込む1つまたは複数の受信ステーションを含むことができる。フォトニック結晶受信器は、蒸気状態の原子を使用して動作することができ、これはリュードベリ原子に基づく感知に対応することができる。多くの変形例では、フォトニック結晶受信器は、MHz-THz周波数の無線周波(RF)波を取得し、それらの波を光信号に変換するように構成されており、この光信号は電気信号に変換することができる(たとえば、光検出器を使用)。光信号の生成は、変換媒体として働いてRF波と相互作用する蒸気状態の原子によって支援される。いくつかの実装例では、フォトニック結晶受信器は、蒸気またはリュードベリ原子の位置でRF波の電界を強化する。たとえば、フォトニック結晶受信器は、フォトニック結晶を使用して、RF波を導波路内に集中させて減速させることができる。そのような強化により、フォトニック結晶受信器の感度を従来のレーダ受信器以上の大きさまで増大させることができる。多くの実装例では、フォトニック結晶受信器は、RF波(またはRF電磁放射)の電界を強化するように動作可能なモノリシックのフォトニック結晶フレームを含む。いくつかの実装例では、フォトニック結晶受信器は受信器システムに組み込まれる。受信器システムは、レーザと、レーザからの光をフォトニック結晶受信器に光学的に結合する光ファイバ回路とを含むことができる。受信器システムはまた、信号処理が可能な検出およびデジタル制御システムを含むことができる。
【0045】
本明細書に記載するいくつかの態様では、フォトニック結晶受信器は、リュードベリ原子に基づく感知を利用して、無線およびmm波周波数の標的電磁放射に対する高い感度を提供する。標的電磁放射を感知するために、蒸気状態の原子が構造に含まれる。フォトニック結晶受信器は、フォトニック結晶フレームを作製し、次いで4つまたは2つの光学窓をフレームに接合することによって構築することができる。フレームにはテーパ状のシリコンアンテナが一体化されており、このアンテナはまた、偏光フィルタを含むことができる。フォトニック結晶フレームは、シリコンなどの誘電性材料から形成することができる。しかし、BaLn2Ti412(BLT)など、低損失(または低吸収)の他の高誘電性材料も可能であり、ここでLnは、元素周期表のランタニド群からの1つまたは複数の元素を指す。光学窓はまた、ガラスまたはシリコンなどの誘電性材料から形成することができる。フレームおよび光学窓の誘電性材料は、フォトニック結晶フレーム上の粘着層(たとえば、シリコンまたは二酸化ケイ素)の支援によって接合することができる。次いで標的電磁放射を光学的に読み出すことができる。フォトニック結晶受信器は大規模に正確に製造することができ、センサは原子であるため、フォトニック結晶受信器は自己較正することができる。
【0046】
フォトニック結晶フレームは、フォトニック結晶を画定する孔の周期的な配置に配置された線欠陥を含むことができる。たとえば、線欠陥は、孔の周期的な配置における1行の「充填」孔、たとえば孔の不在に対応することができる。線欠陥内の中心に細長いスロットを配置して、スロット導波路を画定することができる。IA属原子の蒸気(たとえば、セシウム原子の蒸気、ルビジウム原子の蒸気など)などの蒸気が、細長いスロットを占めることができる。細長いスロット内の蒸気は、フォトニック結晶フレームに入射するRF電磁放射(たとえば、RF波)を感知するように動作可能である。RF電磁放射は、細長いスロット内で強化または増強することができ、フォトニック結晶構造の存在のためによりゆっくりと進む群速度を有することができる。アンテナ構造(たとえば、テーパ状突起)および偏光フィルタは、RF電磁放射を線欠陥および細長いスロットに効率的に結合するように設計することができる。
【0047】
製造中、制御された真空(または分圧)条件下で、フォトニック結晶受信器に蒸気を導入することができる。低温接触接合を使用して、細長いスロット内の蒸気を真空封止することができる。スロットを原子で充填する他の方法を使用することもできる。たとえば、導管によって細長いスロットに接続された空洞内に、パラフィンに入ったアルカリサンプルまたはレーザ活性化ゲッタ(SAES)を配置することができる。蒸気のこれらの供給源は、供給源にエネルギーを誘導すること(たとえば、レーザによる加熱)によって、後に活性化することができる。蒸気が細長いスロット内に純粋なまま残るように、光学窓のうちの1つ、または光学窓のうちの1つの充填孔を接触接合することができる。両方の窓の陽極接合も同様に可能な封止方法である。しかし、接合、たとえば陽極接合の他の方法では、接合を形成するために、フォトニック結晶フレームおよび光学窓に高温、高圧、または両方を印加する必要がある。そのような印加は、著しいガス抜けを招く可能性があり、フォトニック結晶受信器の性能を損なうことがある。いくつかの場合、リュードベリ原子に基づく電界感知のために、原子の純粋な蒸気(たとえば、セシウム原子の純粋な蒸気)が使用される。いくつかの変形例では、小さい心棒を使用して、フォトニック結晶受信器を充填することができる。これらの変形例では、心棒を通って細長いスロットに蒸気を装填する前に、両方の光学窓をフォトニック結晶フレームに陽極接合またはフリット接合することができる。
【0048】
フォトニック結晶フレームは、インピーダンス整合によってフォトニック結晶受信器の異なる区分間の結合損失を最小にするために、1つまたは複数のテーパを含むことができる。たとえば、動作中、フォトニック結晶フレームは、誘電体の端部から延びるテーパ状突起によって、RF電磁放射を捕捉することができる。テーパ状突起は、アンテナ構造を画定し、いくつかの事例では、特有の偏光をフィルタリングする偏光器を含む。フォトニック結晶フレームにおける孔の周期的な配置もまた、標的RF電磁波を制御された形で減速させるために、先細りさせる(またはずらす)ことができる。第2のカプラを使用して、捕捉したまたは受信した波をフォトニック結晶フレーム内の領域(または細長いスロット)に結合することができる。たとえば、第2のカプラは、1つまたは複数のチャネルによって画定されたテーパ状突起の内部にあるテーパとすることができる。いくつかの変形例では、フォトニック結晶フレームは、線欠陥(または細長いスロット)におけるRF電磁放射の電界強度を増幅するために、フォトニック結晶空洞を含む。フォトニック結晶空洞は、線欠陥の一端または両端近傍の孔の間隔を先細りさせて(またはずらす)、それらの領域にフォトニック結晶受信器の軸に沿ってRF電磁放射を前後に反射させることによって実装することができる。いくつかの変形例では、フォトニック結晶フレームは、孔の周期的な配置のサイズまたは間隔を選択することなどによって、標的周波数または周波数範囲の電磁波を捕捉するように構成することができる。
【0049】
フォトニック結晶受信器は、動作中、2つ以上の読出しレーザ(たとえば、結合レーザおよびプローブレーザ)に光学的に結合することができる。そのような光学的結合は、自由空間を介して、光ファイバなどの導波路によって、またはそれらのいくつかの組合せによってもたらすことができる。動作中、標的電磁場が蒸気に与える影響が光学場で符号化され、これを検出器へ搬送することができる。検出器によって生成された信号は、次にアナログまたはデジタル電子機器を使用して処理することができる。フォトニック結晶受信器の感度を強化するために、レーザからの光ビームによる様々な変調技法を使用することもできる。そのような変調技法の例には、周波数、振幅、または位相変調方法が含まれる。
【0050】
いくつかの変形例では、フォトニック結晶受信器のフォトニック結晶フレームは、横磁場(TM)放射および横電場(TE)放射のうちの一方または両方に対するバンドギャップを有するフォトニック結晶構造を含む。フォトニック結晶構造は、空隙または空洞の周期的な配置(たとえば、孔の周期的な配置)を含むことができ、TMおよびTE放射は、特有の標的周波数または周波数範囲に対応することができる。フォトニック結晶フレームはまた、TMおよびTE放射の偏光を感知するように構成することができる。いくつかの変形例では、受信器のフォトニック結晶構造は、標的電磁放射の群速度を低減させ、それによって細長いスロット内に配置された蒸気との相互作用時間、ならびに電界の強度を増大させる働きをする。
【0051】
電磁放射を感知するための蒸気またはリュードベリ原子を含む蒸気セルを構築する特定の従来の製造方法は、ガラス吹きに依拠しており、これは小さい構造を作るには不正確になりかつ使用するのが困難になる可能性がある。精度を改善するために、精密な機械加工プロセス(たとえば、レーザおよびリソグラフィ)および低温接合プロセスを使用して、フォトニック結晶受信器を製造することができる。たとえば、フォトニック結晶フレームは、レーザを使用してシリコンから機械加工し、次いで少なくとも1つの光学窓に接触接合することができる。フォトニック結晶フレームと光学窓との間の封止接合は約150℃以下で形成することができるため、フォトニック結晶受信器(たとえば、一方または両方の光学窓)にスピン緩和防止コーティングを施して、積分時間を増大させることができる。したがって、フォトニック結晶受信器は、蒸気セルの磁気測定など、他の応用例にも使用することができる。精密な機械加工プロセスにより、フォトニック結晶受信器を自己較正することが可能になる。自己較正は、マルチスタティックレーダシステムにおけるクラッタの解消のようなタスクを実現するのに有用である。さらに、異なる受信器のそれぞれの信号レベルを絶対的な感覚で互いに比較することができる。
【0052】
多くの実装例では、フォトニック結晶受信器は、モノリシックに構成されている。たとえば、図面に示す例示的なフォトニック結晶受信器は、外側蒸気セル内に密閉されることも、吹きガラス部分を有することもなく、これらはいずれも入射電磁放射を歪ませて、効率を低下させる可能性がある。フォトニック結晶受信器はまた、固有の導波路を形成する単一の蒸気セルへの光減速構造、スロット構造、およびフォトニック空洞構造のシームレスな統合を含むことができる。この構成は、自動化された製造に適しており、大きい生産量まで容易に規模を拡大することができる。
【0053】
多くの変形例では、フォトニック結晶受信器の構成要素は全誘電性材料から作られており、したがって複数の事例を同じ近傍に配置することができる。この近接した配置により、近接して隔置されたフォトニック結晶受信器群としての動作が可能になる。誘電性材料により、フォトニック結晶受信器群は、隣接する受信器からの干渉が最小でありかつ交差結合が特に低減された状態で動作することが可能になる。干渉および交差結合は、複数のアンテナを同じ区域内に配置するレーダおよび通信において顕著な問題になりうる。
【0054】
図4Aを次に参照すると、例示的な心棒のない蒸気セル400および例示的なフォトニック結晶受信器420の概略図が提示されている。例示的な心棒のない蒸気セル400は、2つの光学窓404、406間に配置(および接合)された誘電体402を含む。例示的な心棒のない蒸気セル400の誘電体402は、蒸気(たとえば、Cs原子の蒸気)を含む円筒形の空洞408を含む。例示的なフォトニック結晶受信器420はまた、2つの光学窓424、426間に配置(および接合)された誘電体422を含む。しかし、例示的な心棒のない蒸気セル400とは異なり、例示的なフォトニック結晶受信器420の誘電体422は、フォトニック結晶フレーム428(または構造)を画定する。フォトニック結晶フレーム428は、フォトニック結晶を画定する孔430の周期的な配置を含む。フォトニック結晶フレーム428はまた、孔430の周期的な配置に欠陥432を含む。欠陥432は、孔430の周期的な配置における1行の「充填」孔、たとえば孔の不在に対応することができる。
【0055】
欠陥432の中心に細長いスロット434を配置することができる。孔430の周期的な配置、欠陥432、および細長いスロット434は、フォトニック結晶フレーム428内に導波路を画定するようにともに動作することができる。この線形の空洞を、IA属原子の蒸気(たとえば、セシウム原子の蒸気、ルビジウム原子の蒸気など)などの蒸気が占めることができる。多くの変形例では、フォトニック結晶フレーム428は、例示的なフォトニック結晶受信器420に入射する電磁放射(たとえば、RF放射)に結合するために、テーパ状突起などのアンテナ構造436を含む。フォトニック結晶フレーム428の特徴により、特に例示的な心棒のない蒸気セル400に対して、電磁放射(たとえば、電界)への例示的なフォトニック結晶受信器420の感度が改善される。そのような改善は、少なくとも3桁分(すなわち、103)高くことができる。またフォトニック結晶フレーム428の特徴により、例示的なフォトニック結晶受信器420が電磁放射の偏光に対して高い感度を有することを可能にすることができる。
【0056】
例示的なフォトニック結晶受信器420は、電磁放射に対するその感度をさらに改善するために、ディッシュとともに使用することができる。たとえば、図5は、ディッシュ502およびフォトニック結晶受信器504を含む例示的なアンテナ500の概略図を提示する。例示的なアンテナ500は、ヘテロダイン検出のために構成することができる。ディッシュ502は、焦点を画定する放物線状の断面を有しており、フォトニック結晶受信器504は、ディッシュ502によって集束された電磁放射を受信するように、焦点(またはその付近)に配置される。例示的なアンテナ500はまた、ガウシアンまたは基準/ヘテロダインビーム308をフォトニック結晶受信器504内へ集束させるために、ディッシュ502の頂点に光学系506を含む。基準ビームは、標的電磁場キャリア周波数またはその付近の周波数を有するアンテナまたはメーザー(たとえば、リュードベリ原子メーザー)によって生成された電磁波とすることができる。基準ビームを使用してヘテロダイン検出を行うことができ、これには全体的な受信器をある程度金属性にすることを伴うことができる。アンテナは、標的電磁場のヘテロダイン検出を実施するために低放出電力で使用することができることから、小型にすることができ、有利となりうる。
【0057】
例示的なフォトニック結晶受信器420は、心棒のない蒸気セル400などのそのままの蒸気セルと比較すると、高周波電磁場(MHz~THz)に対する受信器の感度を1000倍より大きく増大させるように、入射場を集中および減速させるように構成することができる。フォトニック結晶空洞はまた、電磁場強度をさらに増大させるために使用することができる。空洞は、反射性構造を作るようにフォトニック結晶導波路の端部でテーパを変化させることによって実装することができる。例示的なフォトニック結晶受信器420は、所望される場合に偏光器として働くことができるテーパ状カプラを含むことができ、スロット導波路への結合の損失を低減させるためにテーパを含むこともでき、損失が低減されるように制御された形で入射電磁波を減速させるためにテーパアレイ状の孔をさらに含むことができる。例示的なフォトニック結晶受信器420は、ディッシュ(たとえば、図5のディッシュ502)を使用して、入ってくる電磁放射をカプラ上へ集束させることができる。これらの異なる特徴は、独立してまたは任意の組合せで使用することができる。多くの構成では、例示的なフォトニック結晶受信器420は、小型で自己較正式の全誘電性受信器であり、従来の受信器より性能が優れており、感度が最善の受信器に匹敵する。本明細書では、「全誘電性」という用語は、従来の受信器より電磁透過性の高い材料構造を指す。例示的なフォトニック結晶受信器420のいくつかの事例は、誘電性構造のため、最小の干渉および交差結合でまとめることができる。例示的なフォトニック結晶受信器420はまた、従来のアンテナより強化された偏光感度を呈することができる。例示的なフォトニック結晶受信器420は、商品化のために確実に自動化および大量生産することができるように設計される。
【0058】
図4Bを次に参照すると、無線周波(RF)電磁放射を感知するための例示的な受信器450(または例示的なフォトニック結晶受信器450)の概略斜視図が提示されている。例示的な受信器450は、図4Aに関連して説明したフォトニック結晶受信器420に類似したものとすることができ、RF電磁放射は、1MHz~1THzの範囲内の周波数(または複数の周波数)を有することができる。例示的な受信器450は誘電体452を含み、誘電体452は、例示的な受信器450によって測定される電界(または電磁放射)に対して実質的に透過性を有する材料から形成することができる。材料は、高い抵抗率、たとえばρ>103Ω・cmを有する絶縁材料とすることができ、単結晶材料、多結晶材料、または非晶質(またはガラス)材料にも対応することができる。たとえば、誘電体452は、シリコンから形成することができる。別の例では、誘電体452は、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、またはアルミノケイ酸ガラスなどの酸化ケイ素(たとえば、SiO2、SiOxなど)を含むガラスから形成することができる。いくつかの事例では、誘電体452の材料は、酸化マグネシウム(たとえば、MgO)、酸化アルミニウム(たとえば、Al23)、二酸化ケイ素(たとえば、SiO2)、二酸化チタン(たとえば、TiO2)、二酸化ジルコニウム(たとえば、ZrO2)、酸化イットリウム(たとえば、Y23)、酸化ランタン(たとえば、La23)などの酸化物材料である。酸化物材料は、非化学量論的(たとえば、SiOx)とすることができ、1つまたは複数の二元酸化物(たとえば、Y:ZrO2、LaAlO3など)の組合せとすることもできる。特定の変形例では、この組合せは、BaLn2Ti412に対応することができ、ここでLnは、元素周期表のランタニド群からの1つまたは複数の元素を指す。他の事例では、誘電体452の材料は、ケイ素(Si)、ダイヤモンド(C)、窒化ガリウム(GaN)、フッ化カルシウム(CaF)などの非酸化物材料である。
【0059】
誘電体452は、誘電体452内にフォトニック結晶構造456を画定するように周期的に並べられたアレイ状空洞454を含む。アレイ状空洞454は、部分的または完全に誘電体452を通って延びることができる。たとえば、アレイ状空洞454は、アレイ状の非貫通孔とすることができ、または図4Bに示すように、アレイ状の貫通孔とすることができる。アレイ状空洞454はまた、部分的または完全に誘電体452を通って延びる部分に分割することができる。たとえば、アレイ状空洞454は、部分的に誘電体を通って延びる第1の部分(たとえば、非貫通孔)と、完全に誘電体を通って延びる第2の部分(たとえば、貫通孔)とを含むことができる。図4Bはアレイ状空洞454を円形貫通孔のアレイとして示すが、アレイ状空洞454に対して他の形状(たとえば、六角形、長円形など)も可能である。アレイ状空洞454は、10μm~15ミリメートルの範囲内の最大寸法(たとえば、直径)を有することができる。最大寸法は、各空洞に対して同じにすることができる。いくつかの変形例では、アレイ状空洞454の各々は、0.5ミリメートル~10ミリメートルの範囲内の最大寸法を有する。いくつかの変形例では、アレイ状空洞454は、0.9ミリメートル~15ミリメートルの範囲内の周期的な間隔を有する。いくつかの変形例では、誘電体452は、0.5ミリメートル~10ミリメートルの範囲内の厚さを有する板である。
【0060】
誘電体452はまた、フォトニック結晶構造456内に欠陥を画定するアレイ状空洞454内の領域458を含む。多くの変形例では、領域458は、空洞の不在によって画定されたアレイ状空洞454内の中実領域である。空洞の不在は、フォトニック結晶構造456の欠陥に対応することができる。たとえば、欠陥は、1行または1列の「充填」空洞とすることができる。しかし、他のパターンの「充填」空洞も可能である。いくつかの変形例では、図4Bに示すように、領域458は、誘電体452の中心に配置することができる。誘電体452は、誘電体452の表面464内のスロット開口462から少なくとも部分的に誘電体452を通って延びる領域458を通る細長いスロット460をさらに含む。いくつかの変形例では、図4Bに示すように、細長いスロット460は、領域の中心に配置され、誘電体452の長手方向軸に沿って位置合わせされる。例示的な受信器450の動作中、フォトニック結晶構造456、領域458、および細長いスロット460は、RF電磁放射に対する導波路としてともに機能することができることが理解されよう。
【0061】
いくつかの実装例では、フォトニック結晶構造456は、例示的な受信器450に対するフォトニックバンドギャップを画定する。たとえば、フォトニック結晶構造450は、RF電磁放射の横磁場(TM)モードに関連するフォトニックバンドギャップを画定することができる。別の例では、フォトニック結晶構造456は、RF電磁放射の横電場(TE)モードに関連するフォトニックバンドギャップを画定することができる。RF電磁放射に対するTMおよびTEモードの組合せも可能である。
【0062】
いくつかの実装例では、フォトニック結晶構造456は、100MHz~1THzの範囲内の周波数を有する標的RF電磁放射の群速度を減少させるように構成される。そのような構成は、アレイ状空洞454のうちの1つもしくは複数の空洞のサイズを選択すること、アレイ状空洞454のうちの1つもしくは複数の空洞の間隔を選択すること、アレイ状空洞454の順序を選択すること、および/または誘電体452の厚さを選択することを伴うことができる。他の特性(たとえば、誘電体452の材料を選択すること)も可能である。いくつかの場合、フォトニック結晶構造456の構成は、数値モデル化によって判定することができる。標的RF電磁放射の群速度を減少させるための例示的な構成は、図9図11A図11B、および図14A図14Cに関連して後述する。
【0063】
いくつかの実装例では、フォトニック結晶構造456は、標的RF電磁放射を細長いスロット460に集中させるように構成される。標的RF電磁放射は、100MHz~1THzの範囲内の周波数を有する。そのような構成は、アレイ状空洞454のうちの1つもしくは複数の空洞のサイズを選択すること、アレイ状空洞454のうちの1つもしくは複数の空洞の間隔を選択すること、アレイ状空洞454の順序を選択すること、および/または誘電体452の厚さを選択することを伴うことができる。他の特性(たとえば、誘電体452の材料を選択すること)も可能である。いくつかの場合、フォトニック結晶構造456の構成は、数値モデル化によって判定することができる。標的RF電磁放射を細長いスロットに集中させるための例示的な構成は、図10A図10Bおよび図14A図14Cに関連して後述する。
【0064】
いくつかの実装例では、フォトニック結晶構造456は、標的RF電磁放射の向きを変える(たとえば、反射する)ように構成されたフォトニック結晶ミラーを含むことができる。たとえば、アレイ状空洞454は、アレイ454内の概念上の周期的な位置から空間的にずらされた1つまたは複数のずれた空洞を含むことができる。1つまたは複数のずれた空洞は、フォトニック結晶ミラーを画定することができる。いくつかの変形例では、1つまたは複数のずれた空洞は、細長いスロットの端部の最も近くに位置し、細長いスロットの端部から離れる方にそれぞれの空間的なずれを有する。いくつかの変形例では、1つまたは複数のずれた空洞は、細長いスロットの側面の最も近くに位置し、細長いスロットの側面から離れる方にそれぞれの空間的なずれを有する。
【0065】
例示的な受信器450はまた、細長いスロット460内に蒸気または蒸気源を含むことができる。蒸気は、アルカリ金属原子のガス、希ガス、二原子ハロゲン分子のガス、または有機分子のガスなどの成分を含むことができる。たとえば、蒸気は、アルカリ金属原子のガス(たとえば、K、Rb、Csなど)、希ガス(たとえば、He、Ne、Ar、Krなど)、または両方を含むことができる。別の例では、蒸気は、二原子ハロゲン分子のガス(たとえば、F2、Cl2、Br2など)、希ガス、または両方を含むことができる。さらに別の例では、蒸気は、有機分子のガス(たとえば、アセチレン)、希ガス、または両方を含むことができる。他の成分を含む蒸気に対する他の組合せも可能である。蒸気源は、熱、紫外放射への露出、レーザ光による照射などのエネルギー刺激に応答して蒸気を生成することができる。たとえば、蒸気は、アルカリ金属原子のガスに対応することができ、蒸気源は、細長いスロット460に入れられたときに固相または液相になるように十分に冷却されたアルカリ金属塊に対応することができる。
【0066】
例示的な受信器450は、細長いスロット460を覆っており、スロット開口462の周りに封止を形成するように誘電体452の表面464に接合された窓面を有する光学窓466をさらに含むことができる。光学窓466は、接触接合、陽極接合、ガラスフリット接合などを使用して、誘電体452に接合することができる。そのような接合は、開示が全体として参照により本明細書に組み込まれている、「Vapor Cells Having One or More Optical Windows Bonded to a Dielectric Body」という名称の米国特許第10,859,981号に記載されている技法を使用して形成することができる。光学窓466は、蒸気を精査するために使用される電磁放射(たとえば、レーザ光)に対して透過性を有する材料から形成することができる。たとえば、光学窓466は、電磁放射の赤外波長(たとえば、700~5000nm)、電磁放射の可視波長(たとえば、400~700nm)、または電磁放射の紫外波長(たとえば、10~400nm)に対して透過性を有することができる。さらに、光学窓466の材料は、高い抵抗率、たとえばρ>103Ω・cmを有する絶縁材料とすることができ、単結晶材料、多結晶材料、または非晶質(またはガラス)材料にも対応することができる。たとえば、光学窓466の材料は、石英、石英ガラス、またはホウケイ酸ガラス内に見られるような酸化ケイ素(たとえば、SiO2、SiOxなど)を含むことができる。別の例では、光学窓466の材料は、サファイアまたはアルミノケイ酸ガラス内に見られるような酸化アルミニウム(たとえば、Al23、Alxyなど)を含むことができる。いくつかの事例では、光学窓466の材料は、酸化マグネシウム(たとえば、MgO)、酸化アルミニウム(たとえば、Al23)、二酸化ケイ素(たとえば、SiO2)、二酸化チタン(たとえば、TiO2)、二酸化ジルコニウム(たとえば、ZrO2)、酸化イットリウム(たとえば、Y23)、酸化ランタン(たとえば、La23)などの酸化物材料である。酸化物材料は、非化学量論的(たとえば、SiOx)とすることができ、1つまたは複数の二元酸化物(たとえば、Y:ZrO2、LaAlO3、BaLn2Ti412など)の組合せとすることもできる。他の事例では、光学窓466の材料は、ダイヤモンド(C)、フッ化カルシウム(CaF)などの非酸化物材料である。
【0067】
いくつかの実装例では、光学窓466は、細長いスロット460および細長いスロット460にすぐ隣接する誘電体452の表面464(たとえば、領域458またはその一部分)のみを覆う。しかし、いくつかの実装例では、光学窓466は、フォトニック結晶構造456に付随する誘電体452の表面464も覆う。これらの実装例では、図4Bに示すように、誘電体452の表面464は、アレイ状空洞454の各々に対して空洞開口を画定する。光学窓466は、空洞開口の各々を覆う。さらに、光学窓466の窓面は、空洞開口の各々の周りに封止を形成する。
【0068】
細長いスロット460が部分的にのみ誘電体452を通って延びる実装例では、単一の光学窓を誘電体452に接合して、細長いスロット460内の蒸気または蒸気源を封止することができる。しかし、いくつかの実装例では、細長いスロット460は、誘電体452を通って延びることができる。これらの実装例では、2つの光学窓を誘電体452に接合して、細長いスロット460内の蒸気または蒸気源を封止することができる。たとえば、誘電体452の表面464を第4の表面とすることができ、誘電体452は、第1の表面とは反対側に第2の表面を含むことができる。このとき細長いスロット460は、誘電体452を通って第1の表面から第2の表面まで延びることができる。この場合、スロット開口462は、第1のスロット開口とすることができ、誘電体452の第2の表面は、細長いスロット460の第2のスロット開口を画定することができる。例示的な受信器450は、図4Bに示すように、第2のスロット開口を覆う第2の光学窓468を含むことができる。第2の光学窓は、第2のスロット開口の周りに封止を形成するように誘電体452の第2の表面に接合された第2の窓面を有する。
【0069】
いくつかの実装例では、第2の光学窓は、細長いスロット460および細長いスロット460にすぐ隣接する誘電体452の第2の表面(たとえば、領域458またはその一部分)のみを覆う。しかし、いくつかの実装例では、第2の光学窓はまた、フォトニック結晶構造456に付随する誘電体452の第2の表面も覆う。たとえば、誘電体452の第1および第2の表面は、アレイ状空洞454の各々に対してそれぞれ第1および第2の空洞開口を画定することができる。この場合、アレイ状空洞454は、誘電体452を通って第1の表面から第2の表面まで延びる。このとき第2の光学窓は、図4Bに示すように、それぞれ第2の空洞開口の各々を覆うことができる。さらに、第2の窓面は、第2の空洞開口の各々の周りに封止を形成することができる。
【0070】
いくつかの実装例では、誘電体452は、誘電体452の端部472から延びて細長いスロット460と位置合わせされたアンテナ構造470を含む。たとえば、アンテナ構造470は、誘電体452の端部472から延びてテーパ内で終端する突起とすることができる。アンテナ構造470は、100MHz~1THzの範囲内の周波数を有する標的RF電磁放射に結合するように構成することができる。そのような構成は、標的RF電磁放射に対する数値シミュレーションによって決定することができるアンテナ構造470の長さを選択することを伴うことができる。寸法の比、たとえば厚さ、幅、長さと幅の比、長さと厚さの比などを含む他の寸法を伴うこともできる。標的RF電磁放射に結合するためのアンテナ構造470の構成はまた、アンテナ構造470の形状またはアンテナ構造470の湾曲度を選択することを伴うことができる。形状、湾曲度、または両方もまた、数値シミュレーションによって決定することができる。
【0071】
いくつかの変形例では、アンテナ構造470は偏光器を含み、偏光器は、アンテナ構造470に一体化することができる。たとえば、アンテナ構造470は、細長いスロット460と位置合わせされた狭い部分を含むことができる。アンテナ構造470はまた、狭い部分から外方へ延びて狭い部分に沿って周期的な間隔を有するアレイ状の共平面セグメントを含むことができる。アレイ状の共平面セグメントは、標的RF電磁放射の偏光をフィルタリング(または選択)するように構成される。
【0072】
いくつかの変形例では、アンテナ構造470は、アンテナ構造470の内部にテーパ476を画定する1つまたは複数のチャネル474を含む。テーパ476は、アンテナ構造470によって受信した電磁放射、たとえば標的RF電磁放射を、細長いスロット460に結合するように構成される。その際、テーパ476は、細長いスロット460と位置合わせされた頂点478を有することができる。たとえば、アンテナ構造470は、誘電体452の端部472から延びる突起とすることができる。この場合、アンテナ構造470は、突起の内部にテーパを画定するV字状チャネルを含むことができる。このテーパの先端(または頂点)は、先端と位置合わせされた細長いスロット460の端部からずらすことができる。代替の事例として、図4Bに示すように、アンテナ構造470は、ベース部分474aおよび2つの分岐部分474bを含むY字形チャネルを突起内に含むことができる。ベース部分474aは、細長いスロット460と位置合わせされており、細長いスロット460の端部からずれた端部内で終端する。2つの分岐部分474bは、ベース部分474aから分離して、突起の内部にテーパ(たとえば、テーパ476)を画定する。テーパ476に対して他の構成も可能である。
【0073】
動作の際、例示的な受信器450は、誘電体452のアンテナ構造470でRF電磁放射を受信する。いくつかの事例では、例示的な受信器450は、アンテナ構造の内部にあるテーパ476を使用して、受信したRF電磁放射を細長いスロット460に結合する。例示的な受信器452はまた、受信したRF電磁放射をフォトニック結晶構造456と相互作用させる。そのような相互作用において、フォトニック結晶構造456は、受信したRF電磁放射の群速度を、細長いスロット460に平行な方向に沿って減少させることができる。フォトニック結晶構造456はまた、受信したRF電磁放射を細長いスロット460に集中させることができる。加えて、例示的な受信器は、細長いスロット460内の蒸気に入力光信号を通して、1つまたは複数の出力光信号を生成する。入力光信号は、1つまたは複数のレーザ(たとえば、プローブレーザ、結合レーザなど)によって生成することができる。いくつかの変形例では、例示的な受信器450は、RF電磁放射に対する例示的な受信器450の感度を改善するために、図5に関連して説明したディッシュ502などのディッシュとともに使用することができる。
【0074】
いくつかの実装例では、入力光信号を通すことは、細長いスロット460によって画定された光路に沿って入力光信号を伝播させることを含む。いくつかの実装例では、入力光信号を通すことは、細長いスロットの端部に配置されたミラーから入力光信号を反射することを含む。たとえば、例示的な受信器450は、細長いスロット460の端部に配置されたミラー480を含むことができる。ミラー480は、光路に対して傾斜する(たとえば、45°傾斜する)ことができ、または図4Bに示すように、光路に直交することができる。そのような向きにより、ミラー480が光を細長いスロット460内へ誘導すること、蒸気を通って光を細長いスロット460に沿って誘導すること、および/または細長いスロット460から光を誘導することを可能にすることができる。ミラー480の例示的な位置および向きは、図8A図8Eに関連してさらに説明する。
【0075】
いくつかの実装例では、フォトニック結晶の空洞および構造は、蒸気セルの接合および機械加工方法を使用することによってアルカリ系の蒸気セルと一体化するのに理想的である。MHz~THzの放射のための集中要素として作用するフォトニック結晶構造は、レーザ(たとえば、Protolaser Rツール)、機械加工、または深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)を使用して構造内に機械加工された空洞を有することができる。次に、空洞(たとえば、細長いスロット)は、たとえば空洞をアルカリ蒸気環境に封止すること、パラフィンで被覆されたアルカリ原子を空洞に入れること、および/またはレーザ活性化ゲッタ源を空洞に入れることによって、蒸気で充填することができる。高純度のアルカリ原子源(たとえば、アルカリ原子の固体塊)を、直接空洞に入れることもできる。フォトニック構造は、入射した高周波電界を蒸気内で集中させて束にするように設計することができる。蒸気内のRF放射場を減速させて増幅することで、光読出し応答を増大させ、それによって入射電磁波に対するデバイスの感度を高める。入射電磁場に対する原子の感度は、入射RF電磁場との相互作用時間、および原子の位置におけるRF電磁場の強度によって決定される。減速(標的電磁波の群速度の低下)およびフォトニック結晶受信器のスロット内の電界の集中はどちらも、電界の強度および原子との相互作用時間を効果的に増大させることによって、標的電磁放射に対する原子の感度を強化する働きをする。フォトニック結晶構造は、接触接合することができる高誘電率材料(たとえば、シリコン)に基づいている。粘着層が付加される場合、BaLn2Ti412(BLT)など、他の高誘電率の低損失材料を使用することもできる。
【0076】
フォトニック結晶受信器は、そのままの蒸気セルと比較すると相当な倍率(たとえば、約1000倍または別の倍率)だけ強化された電界感度を有するリュードベリ原子に基づくレーダ受信器として機能することができる。フォトニック結晶受信器は、従来の受信器に少なくとも同等の感度を有することができ、熱ノイズフロアに到達することが可能である。フォトニック結晶受信器を製作するための方法は、シリコンおよびガラスをレーザで機械加工し、それによってμm精度および10μm未満の特徴サイズで、これらの材料における微細構造の形成を可能にすることを含む。無線周波場の波長は10μmよりはるかに大きいため、そのような精度および特徴規模は、無線周波場と相互作用するフォトニック結晶フレームによく適している。標的放射の波長に関連する高精度の機械加工プロセスは、デバイスにおける損失を低減させることもできる。
【0077】
これまで、電気測量にリュードベリ原子を使用することで、約1μV/cmという高周波(GHz~THz)電界の最も正確な絶対測定がすでに実現されている。標準的な相互作用量の場合、5~25GHzの範囲における計算された原子ショットノイズ限界は、約1pVcm-1Hz-12であり、これは関与原子の数およびコヒーレンス時間によって決定される。現在の感度限界は、従来の読出し場におけるショットノイズによって決定される。誘電性のリュードベリ原子に基づく感知デバイスを実証するために使用される従来の蒸気セルは、現在実用的でない追加の量子資源(たとえば、絡み合いまたはスクイーズド光)を使用しなければ感度を改善することができない。広い範囲の変形通信およびレーダ応用例に対する感度を改善するための方法は、信号を強化するように蒸気セルを設計することである。最終的に、原子と入射電磁場との相互作用が、吸収速度(または相互作用速度)にコヒーレンス時間を掛けた値、すなわち原子と電磁場との間の結合定数および原子が減衰する速度によって決定されるため、そのままの蒸気セルにおける信号レベルは制限されている。しかし、集中および減速によって原子の領域内で電磁場を増幅させることは、これらの影響により入射電磁場の振幅に対する原子応答が増大するため、より高感度の受信器を作るための実行可能な方法である。たとえば、特有の周波数に対してこれらの構造を設計し、自己較正式のデバイスを構築し、出力信号を調整するための高精度の製造が有利である。
【0078】
多くの変形例では、フォトニック結晶受信器は、誘電性材料から形成され、それによって最小の干渉および交差結合で、フォトニック結晶受信器をともにクラスタ化することを可能にする。フォトニック結晶受信器は、異なる周波数および偏光を感知することができる。多くの変形例では、フォトニック結晶受信器は、増大された偏光感度を有しており、0.05度未満の偏光回転を区別することが可能である。偏光回転の区別とは、受信器によって変化を解決するために偏光がどれだけ回転しなければならないかを指す。
【0079】
多くの変形例では、フォトニック結晶受信器の感度は、1MHzの帯域幅で-120dBmより大きい。感度は、感度をさらに増大させることができ、従来の受信器とともに一般に使用される、ディッシュからの強化を含まない。たとえば、フォトニック結晶受信器は、約15GHzの中心周波数の1MHzの帯域幅で、-110dBmに対応することができる。この中心周波数に対する1m2のディッシュは、フォトニック結晶受信器の感度を約3桁分増大させることができる。
【0080】
多くの変形例では、フォトニック結晶受信器は、軽量で、携帯でき、かつ低コストである。フォトニック結晶受信器は、ダイオードレーザ技術および蒸気セル技術に基づくことができる。サイズ、重量、および電力(SWaP)を低減させることは、多くの応用例(たとえば、電気通信システム、現代のレーダシステムなど)にとって重要な原動力である。多くの変形例では、フォトニック結晶受信器は、従来の蒸気セルに関連するガラス吹き構造より容易に製造することができるように構築される。したがって、フォトニック結晶受信器は、機械力、振動などに対してより頑強である。
【0081】
いくつかの実装例では、フォトニック結晶受信器は、帯域幅、パルス繰返し率、低いSWaP、および誘電性でありかつ偏光を感知するという利点がレーダ応用例によく適しているため、レーダのための受信器として働くことができる。レーダシステムは、約1ms~10nsのパルス幅で、約100Hz~100kHzのパルス繰返し率を使用することが多い。これらのパルス幅は、1kHz~100MHzの範囲の信号帯域幅に換算される。多くの変形例でリュードベリ原子に基づく感知を利用するフォトニック結晶受信器は、これらの性能レベルを満たすことができる。
【0082】
図6を次に参照すると、電磁放射を受信するための突起および孔の周期的な配置を含む例示的なフォトニック結晶フレームの概略図が提示されている。突起は、標的RF電磁放射を受信するように構成することができ、1つまたは複数のテーパ面を含むことができる。いくつかの変形例では、突起は、電磁放射の偏光をフィルタリングするように構成することができる。たとえば、図7は、例示的な突起の狭窄区分に沿って配置された周期的なアレイ状のセグメントを含むフォトニック結晶フレームの例示的な突起(またはその一部分)の概略図を提示する。例示的な突起は、厚さ3mmとすることができる。しかし、他の厚さも可能である。各セグメントは、狭窄区分に直交して外方へ延びる。セグメントは、間隙によって互いから等しく隔置されており、間隙の寸法は、セグメントの寸法と同じとすることができる。いくつかの変形例では、セグメントおよび間隙は、2mmの幅を有する。しかし、他の寸法も可能である。周期的なアレイ状のセグメントは、入力電磁放射(たとえば、RF場)の偏光をフィルタリングして、フィルタリングされた出力電磁放射(たとえば、フィルタリングされたRF場)を生成するように動作可能である。
【0083】
次に図6を再び参照すると、例示的なフォトニック結晶フレームはまた、標的電磁波(いわゆる構造的に遅い光)を減速させる孔の周期的な配置に配置された線欠陥を含む。線欠陥は、孔の周期的な配置における1行の「充填」孔、たとえば孔の不在に対応することができる。線欠陥の中心には、フォトニック結晶導波路を画定する線形空洞が位置することができる。線形空洞の各端部におけるミラー(たとえば、ブラッグミラー)は、プローブおよび結合レーザビームなどのために、線形空洞に沿って光路を画定するのに役立つことができる。プローブおよび結合レーザビームは、リュードベリ原子に基づく感知における電磁誘起透過度の読出しで使用することができる。IA属原子(たとえば、Cs、Rbなど)の蒸気などの蒸気が、線形空洞を占めることができる。線形空洞内の蒸気は、線形空洞内で強化または増強することができる例示的なフォトニック結晶フレームに入射する標的電磁放射と相互作用するように動作可能である。光路に沿って進む光信号(たとえば、レーザビーム)はまた、線形空洞内の蒸気と相互作用し、それによって標的電磁場との原子の相互作用を、標的電磁場の特性(たとえば、振幅、位相、偏光など)を判定するのに好適な光信号に変換することができる。
【0084】
光信号は、光ファイバアセンブリ、およびいくつかの変形例では線形空洞内に配置された1つまたは複数のミラーを通って、線形空洞に出入りすることができる。たとえば、図8A図8Eは、フォトニック結晶受信器の代替構成の概略断面図を提示し、各構成は光ファイバアセンブリの異なる配置を有する。これらの断面図は、側面斜視図として示されている(すなわち、孔は図8A図8Eの短い寸法に平行である)。フォトニック結晶受信器は、空洞内に蒸気(たとえば、Cs原子の蒸気)を有するフォトニック結晶フレームを含む。空洞は、光路に関連する軸(たとえば、線形軸)に沿って、第1の端部から第2の端部まで延びることができる。構成に応じて、フォトニック結晶受信器は、光路と光学的に通信するフォトニック結晶フレームに結合された1つまたは2つの光ファイバアセンブリを含むことができる。いくつかの構成では、図8B図8Eに示すように、空洞の第1および第2の端部のうちの一方または両方が、ミラー(たとえば、ブラッグミラー)を含む。ミラーは、光路に沿って光を案内するように動作可能である。ミラーは、入力光ファイバアセンブリからの光を空洞内へ反射すること、空洞からの光を出力光ファイバアセンブリ内へ反射すること、または両方を行うことができる。光は、空洞に出入りする光信号に対応することができる。ミラーは、ミラーをチャネル内に配置するように、フレーム内へ接着、精密嵌め、または機械加工して被覆することができる。
【0085】
例示的なフォトニック結晶フレームは、シリコンから形成することができる。しかし、他のタイプの誘電性材料を使用することもできる。例示的なフォトニック結晶フレームはまた、2つの光学窓間に挟んでこれらの光学窓に接合することができる。光学窓は、ガラス(たとえば、石英ガラス、ホウケイ酸ガラスなど)などの光学的に透明な誘電性材料から形成することができる。光学窓に接合されたとき、例示的なフォトニック結晶フレーム(線形空洞内に蒸気を含む)をフォトニック結晶受信器として構成することができる。光がチャネル内へ導入されるフォトニック結晶フレームに、より小さい窓を接合することも可能である。たとえば、光がチャネルに入る位置に孔を有するシリコンキャップを、フォトニック結晶フレームに接合することができる。光学窓は、光の導入のための孔が位置するシリコンキャップに接合することができる。
【0086】
いくつかの事例では、フォトニック結晶受信器は、小型の全誘電性構造を提供し、機能性、たとえば電磁透過性、自己較正、およびSWaPに関して現在の受信器より性能が優れている。さらに、いくつかのフォトニック結晶受信器は、その誘電性のため、互いに干渉することなくともにグループ化することができる。完全に誘電性の受信器は、レーダおよび通信などの多くの応用例で有益である。様々な実装例では、リュードベリ原子に基づく感知技術に基づくフォトニック結晶受信器の利点として、[1]受信器が独自のフィルタとして作用することができること、[2]標準的な性能を実現するために増幅器を必要としないこと、[3]最小の干渉および交差結合で複数の受信器をともにグループ化することができること、[4]受信器が偏光を感知することができること、および[5]受信器が自己較正式であること、のうちの1つまたは複数を含むことができる。他の利点も可能である。異なる周波数でもリターン信号の直交偏光を感知するようにフォトニック結晶受信器をグループ化することも可能である。ダイオードレーザおよび低電力電子機器の小さい小型サイズの使用、ならびに電力増幅器の除去は、携帯型の小型レーダシステム、特にマルチスタティックレーダシステム、ならびに通信システム(たとえば、電気通信)にとって利点である。
【0087】
いくつかの実装例では、フォトニック結晶受信器は、気象レーダの応用例向けに構成される。フォトニック結晶受信器は、誘電性材料から構築されたとき、従来の金属アンテナより偏光に対して高い感度を有することができる。偏光感度を増大させることで、物体の形状をより良好に区別することができる。導波路は、特に偏光器セグメントが導波路または最初の結合段階と一体化された状態で、偏光に対して高い感度を有することができる。異なる偏光間の差分リターン、微分位相、および相関関係に対する精度の向上により、定量的な降水量推定のためのモデルが本当に予測的になることを可能にすることができる。フォトニック結晶受信器は、複数の周波数を使用することができ、これにより雨、雪、および氷の特徴付けのモデルがさらに抑制される。特にトルネードおよび深刻な雷雨のような壊滅的な状況における早期警戒のための気象の予測は、数十億ドル規模の産業である。米国では、フォトニック結晶受信器によって可能になるようなより良好な多周波レーダシステムが、場合により、National Weather Surveillance Radar、Terminal Doppler Radar、Airport Surveillance Radar、およびAir Route Surveillance Radarから構成される4つの異なるネットワークに取って代わり、莫大なコストの節減をもたらす可能性がある。通信では、放射の原因を識別して妨害信号の識別を可能にすることができる軽量受信器、および小さい空間的位置に位置しなければならない多周波通信システム(たとえば、ドローン)などの類似の応用例が存在する。
【0088】
いくつかの実装例では、フォトニック結晶フレームは、フォトニック結晶受信器が、電磁放射を減速させることによって約10倍、空洞内の蓄積から約20倍、電磁放射場を導波路に集中させることによって約30倍、電界感度を改善することを可能にする。蒸気または原子が位置する空洞をこの電界感度で約30倍長くすることができるため、より多数の原子を使用することによって、追加の利得を得ることもできる。いくつかの場合、これらの特徴をすべて、同じフォトニック結晶フレーム内で実現することができる。これらの上述した利得が電界感度に関して引用されるため、典型的にはレーダ受信器を特徴付けるために使用される電力に関する感度の改善は、これらの数の2乗に比例して増大し、106大きくすることができる。
【0089】
たとえば、図9は、図6の例示的なフォトニック結晶受信器に対する群屈折率(ng)のグラフを、RF電磁放射の周波数(f)の関数として示す。例示的なフォトニック結晶受信器のフォトニック結晶フレーム内の孔の周期的な配置は、RF電磁放射の波を減速させる。標的RF電磁波の速度は、ngに反比例する。図9で、ngの増大は、約15.75GHzを著しく下回っており、これはフォトニック結晶受信器が受信するのによく適したRF電磁放射の周波数(たとえば、約15.75GHz未満)を示す。フォトニック結晶導波路は、細長いスロットに場を閉じ込めることによって、標的RF電磁放射(またはその電界成分)に対する感度を強化することができる。標的RF電磁波を減速させることによっても、感度を強化することができ、ここでng=c/vgである。ここで、cは真空中の光の速度であり、vgはフォトニック結晶内の標的RF電磁波の群速度である。図7に示すように、数百を超える値を有するngが実行可能である。デバイスの帯域幅とngの値との間には、トレードオフが存在する。ngが大きければ大きいほど、帯域幅は低減される。図9に示す例示的な計算は、100~130のngの場合、デバイスの帯域幅は約5MHzであることを示し、これは十分に現在のレーダシステムおよびいくつかの通信システムで使用される範囲内である。
【0090】
図10Aは、例示的なスロット付きのフォトニック結晶導波路の単位セルを提示する。図10Bは、図10Aの単位セル内の電界のシミュレーションを提示しており、等高線グラフによって示される。左の等高線グラフは単位セルのzx平面に対応し、右の等高線グラフは単位セルのxy平面に対応する。示されている例では、例示的なスロット付きのフォトニック結晶導波路を特徴付けるのに、単一の単位セルで十分である。等高線グラフは、単位セルによって表される例示的なスロット付きのフォトニック結晶導波路の線形空洞(または細長いスロット)内の電界の蓄積または集中を示す。この例では、電界の増幅は約30倍である。
【0091】
フォトニック結晶受信器は、標的電磁放射とフォトニック結晶導波路との間の結合損失を最小にするための特徴を含むことができる。たとえば、ngを調整するために、孔の周期的な配置における孔を概念上の周期的な位置からずらすことができる。特に空洞またはスロット導波路に隣接するそのようなずれは、インピーダンス整合を提供するように、孔のテーパを画定することができる。図11Aは、孔の周期的な配置によって画定されたフォトニック結晶構造を含む例示的なフォトニック結晶フレームを提示する。孔の周期的な配置は、例示的なフォトニック結晶フレームによって受信された電磁放射を減速させるように構成される。図11Bは、図11Aの孔の周期的な配置におけるテーパの程度に関してシミュレートされた伝送損失を示す、50MHzの周波数間隔のグラフを提示する。図11Aで、例示的なフォトニック結晶フレームは、電磁放射(またはRF波)の減速による損失を示すために、連続して示されている。フォトニック結晶の群速度は、構造への結合を最大にして伝送損失を最小にするために、例示的なフォトニック結晶フレームに沿って変化させられる。
【0092】
フォトニック結晶の群速度を変化させることは、スロット導波路への孔の距離を制御された形で修正することによって行うことができる。図11Bは、RF波が徐々に減速するフォトニック結晶フレームは、30%未満の伝送損失を呈するのに対して、未修正構造の損失はそれよりはるかに大きく、約73%であることを示す。さらに、RF波が徐々に減速するフォトニック結晶フレームの有用な帯域幅における損失は均一である。フォトニック結晶導波路の例示的な設計周波数は、約15.697GHzである。フォトニック結晶構造への電磁放射の結合は、構造全体にとって約30%である。その結果、図11Aの例示的なフォトニック結晶フレームに基づくフォトニック結晶受信器は、1MHzの帯域幅で-110dBmの感度レベルに到達することができ、これは現在の金属受信器に匹敵する。そのような感度レベルでは、ディッシュを使用しない。感度は、いくつかの従来の受信器で行われているように、ディッシュ(たとえば、図5のディッシュ502)を使用することによってさらに増大させることができ、それによって例示的なフォトニック結晶システムの感度を改善することができる。たとえば、フォトニック結晶システムは、協調して機能するフォトニック結晶受信器およびディッシュを含むことができる。1m2のディッシュは、例示的なフォトニック結晶フレームの感度を約15GHzでほぼ3桁分改善することができる。熱ノイズフロアは、1MHzの帯域幅で約-140dBmであることに留意されたい。コヒーレント方式により、熱ノイズフロア内の信号の検出を可能にすることができるが、感度が熱ノイズフロアをはるかに超えることは概して重要でない。
【0093】
偏光感度は概して、リターン信号の強度および少なくとも2つの制限要因に依存する。制限要因は、受信器の感度限界および水平偏光と垂直偏光とのフォトニック結晶構造の除去比を含む。いくつかの例示的な設計の感度限界および10μW(-20dBm)の標的リターン信号電力に基づいて、分解可能な最小の偏光角度は、約0.006度の回転において約10-4ラドで検出されるほぼ最小の検出可能電界/期待電界である。図4A~4Bおよび図6に示すフォトニック結晶受信器に対する水平偏光と垂直偏光との間の除去比は、約0.06度で約10-3ラドとすることができる。しかし、図4A~4Bおよび図6には示されていないが、フォトニック結晶受信器の他の構成には、フォトニック結晶フレームからの突起(またはテーパ)に追加することができる偏光器(たとえば、図7によって示す周期的なアレイ状のセグメント)が含まれる。これらの偏光器は、偏光選択性を3~4桁分さらに増大させることができる。0.05度を下回る角度分解能を実現することができる。これらの性能メトリックスは、ディッシュのない状態で計算され、信号をさらに増幅して偏光の区別を増大させることができる。さらに、偏光を区別するために蒸気を使用することもできる。
【0094】
いくつかの場合、フォトニック結晶受信器を安定したレーザシステムと対にして、フィールド配備可能ユニットを実現することができる。いくつかの実装例では、フォトニック結晶受信器は、蒸気(たとえば、Cs原子の蒸気)の固定遷移に同調された1組のレーザに光学的に結合される。たとえば、フォトニック結晶受信器は、852nmの光子ビームを放出することが可能な分布ブラッグ反射器(DBR)レーザ、および波長約510nmの光子ビームを放出することが可能な単一パス2重ファイバレーザに光学的に結合することができる。510nmの波長は、セシウム原子の蒸気と相互作用するのによく適している。510nmで動作するDBRまたは分布フィードバック(DFB)レーザを使用することも可能である。510nmのDBRまたはレーザは、受信器システムのサイズを減少させることができ、安定性を増大させることができ、受信器システムを動作させるために必要とされる電力を低減させることができる。いくつかの変形例では、ファブリ-ペローレーザを、510nmのフィルタ空洞レーザシステムとして構築することができる。本発明者らが構築したファブリ-ペローフィルタ空洞レーザは、最大100mWの電力を提供することができる。フィルタ空洞レーザは、DBRまたはDFBレーザの利点の多くを有する(たとえば、受信器システムを実行するために必要とされる電力の低減)。しかし、DBRまたはDFBレーザとは異なり、フィルタ空洞レーザは典型的に、生産中に気密封止されず、自由空間光学系を含む。いくつかの変形例では、フォトニック結晶受信器の光回路全体を光ファイバアセンブリとすることができる。
【0095】
いくつかの異なる方法で、フォトニック結晶受信器の空洞に光を結合することができる。いくつかの事例では、図4A図4Bに示すように、テーパのない側から、光学窓を通って空洞に光を結合することができる。ファイバおよびレンズアセンブリをシリコンフレームに融合することもできる(たとえば、図8A図8Eに示す)。溝アセンブリ上の小さいミラーを使用して、構造の側から光を結合することもできる。RF導波路内に小さい45度のミラーを配置して、側面結合アセンブリと位置合わせすることができる(たとえば、図8C図8Eに示す)。またこれらの構成はすべて、空洞またはRF導波路にプローブ光を光学的に結合するために使用することができ、それによりセシウムガスの透過性を測定する。フィルタを使用して、望ましくない光を除去することができる。いくつかの応用例では、結合外プローブ光が結合内経路に沿って戻るように、スロットを戻って光を逆反射することが有利となりうる(たとえば、図8Bおよび図8Eに示す)。
【0096】
フォトニック結晶受信器を作る難題のうちの1つは、フォトニック結晶構造を機械加工するために必要とされる精度である。レーザ機械加工を使用すると、フォトニック結晶受信器の構成要素を2μmの精度で構築することができる。特徴サイズは、10μmまで小さくすることができる。これらの寸法は、受信器を構築するために必要とされる構成要素を機械加工するのに十分に小さく、1部が15GHzで波長の104である。フォトニック結晶受信器は波長に対応し、受信器は他の電磁周波数に対応することができる。フォトニック結晶受信器は、シリコンなどの誘電性材料からフレームを機械加工し、スロットがセシウム蒸気で充填された後、フレームに光学窓を接合することによって構築することができる。セシウム蒸気は、背景蒸気から、パラフィンで被覆された微量のセシウムを蒸気セル内に堆積させることによって、またはレーザ活性化ゲッタ材料(SAES)を使用することによって、充填することができる。高純度のセシウム原子源(たとえば、セシウム原子の固体塊)を、直接スロットに入れることもできる。いくつかの製造方法では、陽極接合を使用して、第1の光学窓がフレームに接合される。フレームはシリコンから作られる。次いで、第2の光学窓がフレームに接触接合される。しかし、いくつかの変形例では、原子が存在する空洞に蒸気(たとえば、セシウム原子の蒸気)を導入するために充填孔が開いたままである限り、第2の窓は同様にフレームに陽極接合される。充填孔は、接触接合または陽極接合を使用して封止することができる。接触接合は、他の接合方法(たとえば、陽極接合)が汚染種のガス抜けをもたらす高い温度および電圧を必要とすることから、最後の封止のために使用される。リュードベリ原子の電気測量は、リュードベリ状態のスペクトル拡幅がN2で約200MHzトル-1であるため、約10-3トル未満など、背景ガス密度が小さいときに高い性能を呈する。BLTなど、高誘電率を有する他のフレーム材料を使用することもできる。シリコンまたは他のフレーム材料とともに、粘着層を使用することができる。この動作周波数における低損失材料も望ましい。フォトニック結晶フレームに必要とされる孔は、フレームのみを通って切断するのではなく、最終ステップでガラスおよびフレームを通ってまっすぐに切断することができる。
【0097】
図4A図4Bに関連して説明したように、ディッシュは、フォトニック結晶受信器の感度を増大させることができる。図12Aは、パラボラディッシュを使用した例示的なテーパ状導波路への15.697GHzの電磁波のシミュレートされた結合の等高線グラフを提示する。ディッシュは、平面波と比較すると、結合を数桁分強化することができる。集束されたガウシアンビームは、例示的なテーパ状導波路により良好に結合し、ディッシュは、入射平面波のより大きい部分を捕捉する。例示的なフォトニック結晶受信器は、図4A図4Bに関連して説明した例示的なフォトニック結晶受信器と同様に構成することができる。図40Bは、例示的なテーパ状導波路への図12Aの15.697GHzの電磁波のシミュレートされた結合の等高線グラフを提示するが、パラボラディッシュは不在であり、平面波として受信される。15.697GHzの電磁波(または信号)は、線形空洞(または導波路)の長さに沿って誘導される。ガウシアン焦点は、フォトニック結晶受信器に最適化されない。焦点サイズの最適化は、ディッシュによって捕捉された標的電磁場のフォトニック結晶受信器への結合をさらに増大させることができる。
【0098】
図13A図13Bは、例示的な導波路に対する20GHzの入ってくるRF電磁波のシミュレートされた結合効率(たとえば、テーパ状対非テーパ状)を提示する。例示的な導波路は、細長いスロットおよび孔の周期的な配置を有するフォトニック結晶フレームを含む。図13A図13Bの等高線グラフは、導波路を含む領域における入ってくるRF電磁波の電界強度を示す。図13Aの等高線グラフは、導波路内にテーパのない状態でシミュレートされ、図13Bの等高線グラフは、導波路内にテーパのある状態でシミュレートされている。等高線グラフ内の黒色の線は、特に細長いスロットに沿って、導波路の輪郭を示す。図13Bで、集中部分は、導波路の端部を越えて三角形の領域に延びている。
【0099】
結合効率と周波数の関係を表すグラフ(すなわち、図13A図13Bの下半分)は、周波数範囲の大部分にわたってテーパが結合効率を2倍にすることを示し、これは13GHz~20GHzに示されている。入ってくるRF電磁波は、ガウシアンビームとしてモデル化され、例示的なフォトニック結晶受信器は、図4A図4Bの例示的なフォトニック結晶受信器と同様に構成することができる。ガウシアンビームの想定は、図5に示す状況と一貫している。図5で、ディッシュはリターン信号を捕捉しており、リターン信号は公称で、標的(または目標)が遠く離れているため、フォトニック結晶受信器の位置にある平面波である。放物線状の形状により、ディッシュが平面波をフォトニック結晶受信器に集束させることが可能になる。レーダシステムなどの受信側の応用例では、典型的に、散乱RF電磁場源が受信器から非常に離れており、したがって入ってくるRF場は平面波である。
【0100】
図14Aを次に参照すると、フォトニック結晶フレーム内に3つのテーパを有する例示的なフォトニック結晶受信器の概略斜視図が提示されている。第1のテーパおよび第2のテーパは、フォトニック結晶フレームからの突起に付随している。第1のテーパは、自由空間からフォトニック結晶フレームの本体内への電磁波に対する遷移を画定することができる。第2のテーパは、フォトニック結晶フレーム内の導波路への電磁波の結合を改善することができる。図11A図11Bおよび図13A図13Bに関連して説明したように、孔の周期的な配置の間隔に第3のテーパが付随する。第3のテーパは、低速波構造への標的電磁波の結合を増大させるのに役立ち、それによって損失を低減させる。孔の周期的な配置の間隔は、孔間距離(または格子定数)aおよび孔径dによって表すことができる。様々な電磁周波数のシリコンフレームに対する例示的な孔間距離および孔径が、以下の表1に提示されている。各周波数に対して、シリコンから形成されたフォトニック結晶フレームの高さは、孔径dに整合する。しかし、孔径とは異なる高さも可能である。
【0101】
【表1】
【0102】
図14Bは、図14Aの例示的なフォトニック結晶受信器の空洞部分の詳細図を提示する。空洞部分は、線形空洞内に反射ミラー(たとえば、ブラッグミラー)を含む。図14Cは、図14Aの例示的なフォトニック結晶受信器のフォトニック結晶フレーム内の孔の周期的な配置の一部分の詳細図を提示する。孔の周期的な配置の間隔が図14Cに示されており、図14Cは、孔間距離(または格子定数)a、孔径d、およびフォトニック結晶フレームの高さhを示す。
【0103】
図15Aは、図14Aの第2のテーパの詳細上面斜視図を提示する。第2のテーパは、チャネル導波路をスロット導波路に結合するように動作可能とすることができる。結合損失は、図15Bおよび図15Cによって示すように、15GHz~16GHzの周波数範囲に対して0.35dB未満である。結合は、92%より良好なものとすることができる。フォトニック結晶の寸法、すなわち孔の直径d、孔の周期性または格子定数a、および特定のフォトニック結晶受信器に対するシリコンフレームの厚さhは、標的RF電磁場の周波数の関数である。フォトニック結晶受信器が線欠陥領域における標的RF電磁場を減速させるために、フォトニック結晶は、所望の設計周波数付近のバンドギャップを有するべきである。デバイスは、孔の間隔、デバイスの厚さ、および孔径を選ぶことによって、フォトニック結晶に設計されたフォトニック共鳴付近で生じる分散を使用する。他の形状の孔およびパラメータも可能である。表1は、いくつかの周波数におけるこれらのパラメータに関して、シリコンフレームに対する代表的な設計値を提供する。
【0104】
フォトニック結晶導波路への効率的な結合のために、群指数ngのテーパが提供される。図15に示すように、互いにより近くまたは遠くなるように、スロット領域に隣接する複数行の孔のシフト(またはテーパ)により、ngを変化させることができる。そのような構成によって、すべてのテーパを含むスロット導波路への結合効率は、15.697GHzで約72%になる。孔のずれによる孔のシフト(またはテーパ)を使用することで、波がフォトニック結晶導波路により効率的に結合するように、制御された形で電磁波を減速させることができる。
【0105】
原子を準備して読み出すためのレーザ光は、自由空間を通って、またはフォトニック結晶フレームへの光のファイバ結合を通って、フォトニック結晶受信器の内外へ結合することができる。いくつかの変形例では、フォトニック結晶フレームは、スロットの一端に、蒸気と相互作用するようにスロットに沿ってレーザビームを誘導するためのブラッグミラーなどのミラーを含むことができる。ミラーは、チャネルの他端にも同様に配置することができる。この追加のミラーを使用して、レーザビームをチャネルに沿って後方反射することができ、フィルタおよびビームスプリッタ(たとえば、ファイバビームスプリッタまたはサーキュレータ)によって、レーザビームを分離することができる。
追加のミラーを使用して、レーザのうちの1つまたは複数からの光を反射し、デバイスと1つまたは複数のレーザとの間に配置されたアライメントピースまたは溝アセンブリなどによって、それをデバイスの外へ結合することもできる。ミラーは、異なる色の光を分離するためのフィルタとして設計することができる。スロットの両端にファイバカプラが存在することも可能である。この場合、光は、スロット内のミラーを使用することなく、一端で導波路に結合され、他端で受信される。プローブレーザ光(リュードベリ原子に基づく感知構成を参照)がチャネルを離れた後、プローブレーザ光を光検出器へ搬送し、その光信号を処理して、時間に応じて入ってくるRF電磁場の強度、偏光、および位相を読み出す。他のパラメータも可能である。
【0106】
図17を次に参照すると、図14Aの例示的なフォトニック結晶受信器に対するシミュレートされた総結合効率のグラフが提示されている。グラフの縦座標は、総結合効率を百分率で示し、グラフの横座標は、例示的なフォトニック結晶受信器によって受信された入ってくるRF電磁放射の周波数を示す。総結合効率は、フォトニック結晶受信器の動作に対する3つのテーパ、すなわち図14Aに示す第1、第2、および第3のテーパの寄与を表す。総結合効率は、特に15.68GHzを超えて増大し、約15.697GHzでピークになる。
【0107】
記載するいくつかの態様では、レーダシステムについて、以下の例によって説明することができる。
例1.
RF電磁放射のプローブ信号を領域内へ放出するように構成された伝送ステーションと、
領域からのRF電磁放射のリターン信号を処理するように構成された受信ステーションとを備え、リターン信号が、領域内の1つまたは複数の物体から散乱したプローブ信号に基づいており、受信ステーションが、
誘電性材料から形成されたフォトニック結晶受信器であり、
標的RF電磁放射に結合するように構成され、RF電磁放射のリターン信号が標的RF電磁放射を含む、アンテナ構造、
細長いスロットが配置され、標的RF電磁放射を細長いスロットに集中させるように構成されたフォトニック結晶構造、および
細長いスロット内に配置された蒸気を含むフォトニック結晶受信器と、
フォトニック結晶受信器からの光信号に基づいて分光データを生成するように構成され、分光データが標的RF電磁放射の1つまたは複数の特性を表す、光学システムと、
分光データに基づいて時系列の特性データを生成するように構成され、時系列の特性データが標的RF電磁放射の1つまたは複数の特性を経時的に表す、データ処理サブシステムと
を備えるレーダシステム。
例2.時系列の特性データが、標的RF電磁放射の振幅を経時的に表す振幅データを含む、例1に記載のレーダシステム。
例3.時系列の特性データが、標的RF電磁放射の位相を経時的に表す位相データを含む、例1または例2に記載のレーダシステム。
例4.時系列の特性データが、標的RF電磁放射の周波数を経時的に表す周波数データを含む、例1または例2~3のいずれか1つに記載のレーダシステム。
例5.
アンテナ構造が、標的RF電磁放射の偏光をフィルタリングするように構成された偏光器を備え、
時系列の特性データが、標的RF電磁放射の偏光を経時的に表す偏光データを含む、
例1または例2~4のいずれか1つに記載のレーダシステム。
例6.データ処理サブシステムが、時系列の特性データに基づいて、領域内の標的物体の特性を判定するようにさらに構成されている、例1または例2~5のいずれか1つに記載のレーダシステム。
例7.特性が、領域内の標的物体の場所を含む、例6に記載のレーダシステム。
例8.特性が、標的物体の速度を含む、例6または例7に記載のレーダシステム。
例9.特性が、標的物体の形状を含む、例6または例7~8のいずれか1つに記載のレーダシステム。
例10.特性が、標的物体の組成を含む、例6または例7~9のいずれか1つに記載のレーダシステム。
例11.
フォトニック結晶受信器が第1のフォトニック結晶受信器であり、受信ステーションが第2のフォトニック結晶受信器を備え、
第1のフォトニック結晶受信器の第1のアンテナ構造が、標的RF電磁放射の第1の周波数に結合するように構成され、
第2のフォトニック結晶受信器の第2のアンテナ構造が、標的RF電磁放射の第2の異なる周波数に結合するように構成されている、
例1または例2~10のいずれか1つに記載のレーダシステム。
例12.
フォトニック結晶受信器が第1のフォトニック結晶受信器であり、受信ステーションが第2のフォトニック結晶受信器を備え、
第1のフォトニック結晶受信器の第1のアンテナ構造が、標的RF電磁放射の第1の偏光をフィルタリングするように構成された第1の偏光器を備え、
第2のフォトニック結晶受信器の第2のアンテナ構造が、標的RF電磁放射の第2の異なる偏光をフィルタリングするように構成された第2の偏光器を備える、
例1または例2~11のいずれか1つに記載のレーダシステム。
例13.受信ステーションが、受信ステーションの位置を判定するように構成された慣性航法サブシステムを備える、例1または例2~12のいずれか1つに記載のレーダシステム。
例14.受信ステーションが、受信ステーションに対する局所的基準時間および局所的基準位相のうちの一方または両方を設定するように構成されたローカルクロックサブシステムを備える、例1または例2~13のいずれか1つに記載のレーダシステム。
例15.
それぞれのローカルクロックサブシステムを備える複数の受信ステーションと、
伝送ステーションおよび各受信ステーションのローカルクロックサブシステムと同期信号を交換するように構成されたグローバルクロックステーションとを備え、同期信号が、レーダシステムに対する大域的基準時間および大域的基準位相を表す、
例14に記載のレーダシステム。
例16.
複数の受信ステーションと、
伝送ステーションおよび複数の受信ステーションと通信するように構成されたデータ制御センターとを備え、データ制御センターが、
それぞれの受信ステーションからの複数の時系列の特性データに基づいて、領域内の標的物体の特性を表す処理データを生成すること、および
伝送ステーション、複数の受信ステーションのうちの1つもしくは複数、または両方へ処理データを通信することを含む動作を実行するように構成されている、
例1または例2~15のいずれか1つに記載のレーダシステム。
例17.光学システムが、蒸気の1つまたは複数の電子遷移と相互作用する入力光信号を細長いスロットに提供するように構成されたレーザサブシステムを備える、例1または例2~16のいずれか1つに記載のレーダシステム。
例18.光学システムが、細長いスロットからの出力光信号に基づいて分光データを生成するように構成された光検出サブシステムを備える、例1または例2~17のいずれか1つに記載のレーダシステム。
例19.伝送ステーションが、制御信号に応答して、RF電磁放射のプローブ信号を領域内へ放出するように構成された協調型の伝送ステーションである、例1または例2~18のいずれか1つに記載のレーダシステム。
例20.伝送ステーションが、RF電磁放射のプローブ信号を領域内へ受動的に放出するように構成された非協調型の伝送ステーションである、例1または例2~19のいずれか1つに記載のレーダシステム。
【0108】
記載するいくつかの態様では、領域内の標的物体を検出するレーダ方法について、以下の例によって説明することができる。
例21.領域内の標的物体を検出するレーダ方法であって、
伝送ステーションの動作によって、RF電磁放射のプローブ信号を領域内へ伝送することと、
受信ステーションの動作によって、領域からのRF電磁放射のリターン信号を処理することとを含み、リターン信号が、領域内の1つまたは複数の物体から散乱したプローブ信号に基づいており、リターン信号を処理することが、
受信ステーションのフォトニック結晶受信器で、領域からRF電磁放射のリターン信号を受信することであり、フォトニック結晶受信器が、
標的RF電磁放射に結合するように構成され、RF電磁放射のリターン信号が標的RF電磁放射を含む、アンテナ構造、
細長いスロットが配置され、標的RF電磁放射を細長いスロットに集中させるように構成されたフォトニック結晶構造、および
細長いスロット内に配置された蒸気を含む、受信することと、
受信ステーションの光学システムの動作によって、フォトニック結晶受信器からの光信号に基づいて分光データを生成することであり、分光データが標的RF電磁放射の1つまたは複数の特性を表す、生成することと、
受信ステーションのデータ処理サブシステムの動作によって、分光データに基づいて時系列の特性データを生成することであり、時系列の特性データが標的RF電磁放射の1つまたは複数の特性を経時的に表す、生成することとを含む、レーダ方法。
例22.時系列の特性データが、標的RF電磁放射の振幅を経時的に表す振幅データを含む、例21に記載のレーダ方法。
例23.時系列の特性データが、標的RF電磁放射の位相を経時的に表す位相データを含む、例21または例22に記載のレーダ方法。
例24.時系列の特性データが、標的RF電磁放射の周波数を経時的に表す周波数データを含む、例21または例22~23のいずれか1つに記載のレーダ方法。
例25.
アンテナ構造が、標的RF電磁放射の偏光をフィルタリングするように構成された偏光器を備え、
リターン信号を受信することが、アンテナ構造の偏光器を使用して、RF電磁放射のリターン信号の偏光をフィルタリングすることを含む、
例21または例22~24のいずれか1つに記載のレーダ方法。
例26.時系列の特性データが、標的RF電磁放射の偏光を経時的に表す偏光データを含む、例25に記載のレーダ方法。
例27.リターン信号を処理することが、
データ処理サブシステムの動作によって、時系列の特性データに基づいて領域内の標的物体の特性を判定することを含む、例21または例22~26のいずれか1つに記載のレーダ方法。
例28.特性が、領域内の標的物体の場所を含む、例27に記載のレーダ方法。
例29.特性が、標的物体の速度を含む、例27または例28に記載のレーダ方法。
例30.特性が、標的物体の形状を含む、例27または例28~29のいずれか1つに記載のレーダ方法。
例31.特性が、標的物体の組成を含む、例27または例28~30のいずれか1つに記載のレーダ方法。
例32.リターン信号を処理することが、
蒸気の1つまたは複数の電子遷移と相互作用する入力光信号を細長いスロットに通すことと、
光学サブシステムで、入力光信号に基づく細長いスロットからの出力光信号を受信することとを含み、分光データが、出力光信号に基づいて生成される、例21または例22~31のいずれか1つに記載のレーダ方法。
例33.
フォトニック結晶受信器が第1のフォトニック結晶受信器であり、受信ステーションが第2のフォトニック結晶受信器を備え、
第1のフォトニック結晶受信器の第1のアンテナ構造が、標的RF電磁放射の第1の偏光をフィルタリングするように構成された第1の偏光器を備え、
第2のフォトニック結晶受信器の第2のアンテナ構造が、標的RF電磁放射の第2の異なる偏光をフィルタリングするように構成された第2の偏光器を備え、
リターン信号を受信することが、それぞれ第1および第2のアンテナ構造の第1および第2の偏光器を使用して、RF電磁放射のリターン信号の偏光をフィルタリングすることを含む、
例21または例22~32のいずれか1つに記載のレーダ方法。
例34.リターン信号を処理することが、受信ステーションの慣性航法サブシステムの動作によって、受信ステーションの位置を判定することを含む、例21または例22~33のいずれか1つに記載のレーダ方法。
例35.リターン信号を処理することが、受信ステーションのローカルクロックサブシステムの動作によって、受信ステーションに対する局所的基準時間および局所的基準位相を設定することを含む、例21または例22~34のいずれか1つに記載のレーダ方法。
例36.
複数の受信ステーションが各々、領域内の1つまたは複数の物体から散乱したプローブ信号に基づくそれぞれのリターン信号を処理し、
レーダ方法が、
グローバルクロックステーションの動作によって、伝送ステーションおよび各受信ステーションのローカルクロックサブシステムと同期信号を交換することを含み、同期信号が、大域的基準時間および大域的基準位相を表す、
例35に記載のレーダ方法。
例37.
複数の受信ステーションが各々、領域内の1つまたは複数の物体から散乱したプローブ信号に基づくそれぞれのリターン信号を処理し、
レーダ方法が、
データ制御ステーションで、それぞれの受信ステーションからの複数の時系列の特性データを受信することと、
データ制御センターの動作によって、複数の時系列の特性データに基づいて処理データを生成することであり、処理データが、領域内の標的物体の特性を表す、生成することと、
伝送ステーション、複数の受信ステーションのうちの1つもしくは複数、または両方へ処理データを通信することとを含む、
例21または例22~36のいずれか1つに記載のレーダ方法。
例38.
伝送ステーションが協調型の伝送ステーションであり、
プローブ信号を伝送することが、
伝送ステーションで制御信号を受信することと、
受信した制御信号に応答して、RF電磁放射のプローブ信号を領域内へ伝送することとを含む、
例21または例22~37のいずれか1つに記載のレーダ方法
例39.
伝送ステーションが非協調型の伝送ステーションであり、
プローブ信号を伝送することが、RF電磁放射を領域内へ受動的に放出することを含む、
例21または例22~38のいずれか1つに記載のレーダ方法
【0109】
本明細書は多くの詳細を包含するが、これらは特許請求の範囲に対する限定ではなく、特定の例に特有の特徴についての説明であると理解されたい。別個の実装例の文脈で本明細書に記載または図示する特定の特徴を組み合わせることもできる。逆に、単一の実装例の文脈で記載または図示された様々な特徴を、複数の実施形態で別個にまたは任意の好適な部分的な組合せで実装することもできる。
【0110】
同様に、図面には動作を特定の順序で示したが、これは、そのような動作が図示の特定の順序もしくは連続する順序で実行されることを必要とすると理解されるべきではなく、または望ましい結果を実現するために、示されているすべての動作を実行するべきであると理解されるべきではない。特定の状況では、マルチタスキング式の並行処理が有利となりうる。さらに、上述した実装例における様々なシステム構成要素の分離は、すべての実装例でそのような分離を必要とすると理解されるべきではなく、記載のプログラム構成要素およびシステムは概して、単一の製品内にともに一体化することができ、または複数の製品に包装することができることを理解されたい。
【0111】
複数の実施形態について説明した。それにもかかわらず、様々な修正を加えることができることが理解されよう。それに応じて、他の実施形態も以下の特許請求の範囲の範囲内である。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図15C
図16
図17