(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】オフセットマルチリーフコリメータを利用した線量適合性及び均質性の改善方法
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
A61N5/10 L
(21)【出願番号】P 2022577695
(86)(22)【出願日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 US2021036747
(87)【国際公開番号】W WO2022005721
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-12-16
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505172824
【氏名又は名称】アキュレイ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100210239
【氏名又は名称】富永 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】チャオ エドワード エイチ
(72)【発明者】
【氏名】シュナー エリック
(72)【発明者】
【氏名】ケイシー ディラン
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0043482(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0043624(US,A1)
【文献】特表2020-501662(JP,A)
【文献】特開2008-206822(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0273239(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線送達システムであって、
標的に送達するための放射線ビームを生成する放射線源
であって、前記放射線源から前記標的を含む関心点までのラインが延びる、放射線源と、
前記放射線源に動作可能に結合されたマルチリーフコリメータ(MLC)と、
を備え、
前記放射線源と前記MLCは前記関心点を中心とする回転経路に沿って移動し、
前記MLCは、
前記回転経路に平行で前記ライン
に垂直な方向で前記MLCをシフトさせるようにオフセットされて、前記オフセットに基づいて前記放射線ビームの投影をシフトさせるようにする、
放射線送達システム。
【請求項2】
前記放射線ビームは、メガボルト(MV)治療ビームを含む、請求項1に記載の放射線送達システム。
【請求項3】
前記オフセットは、正又は負の1/4リーフ幅に対応する、請求項1に記載の放射線送達システム。
【請求項4】
前記オフセットは、正又は負の1/4+正又は負の半整数のリーフ幅に対応する、請求項1に記載の放射線送達システム。
【請求項5】
前記オフセットが公差を含み、前記公差は、最大で正又は負の8分の1のリーフ幅に対応する、請求項4に記載の放射線供給システム。
【請求項6】
前記関心点は、固定アイソセンタを含む、請求項1に記載の放射線送達システム。
【請求項7】
前記放射線源に結合されたガントリを更に備え、
前記ガントリは、前記放射線源を前記関心点の周りに回転させるように構成されている、請求項1に記載の放射線送達システム。
【請求項8】
前記ガントリは、Cアームガントリを含む、請求項7に記載の放射線送達システム。
【請求項9】
前記ガントリは、リング型ガントリを含む、請求項7に記載の放射線送達システム。
【請求項10】
前記放射線源に結合されたロボットアームを更に備え、前記ロボットアームは、円形又は楕円形の軌道に沿った複数の位置にて前記放射線源を位置付けるように構成されている、請求項1に記載の放射線送達システム。
【請求項11】
前記ロボットアームは、前記放射線源を前記関心点の周りの前記複数の位置に位置付ける、請求項10に記載の放射線送達システム。
【請求項12】
前記放射線ビームは、キロボルト(kV)治療ビームを含む、請求項1に記載の放射線送達システム。
【請求項13】
前記MLCは、バイナリMLCを含む、請求項1に記載の放射線送達システム。
【請求項14】
前記MLCは、前記MLCの他のリーフよりも大きい幅を有するエンドリーフを含む、請求項1に記載の放射線送達システム。
【請求項15】
放射線源に結合されたマルチリーフコリメータ(MLC)をオフセットにより
関心点を中心とする回転経路に平行で、前記放射線源から前記関心点までのラインに垂直な方向に移動させるステップと、
開口部を形成するように、前記MLCの1又は2以上のリーフを位置決めするステップと、
前記放射線源により生成された放射線ビームの投影を前記MLCの前記開口部により形作り、前記投影を前記オフセットに基づいてシフトするステップと、
を含む、方法。
【請求項16】
前記MLCをシフトすることは、正又は負の1/4リーフ幅のうちの1つに対応する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記オフセットは、正又は負の1/4+正又は負の半整数リーフ幅に対応する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記オフセットは公差を含み、前記公差が、最大で正又は負の8分の1のリーフオフセットに対応する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記放射線源に結合されたガントリによって、前記放射線源を前記関心点の周りに回転させるステップを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記関心点は、固定アイソセンタを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ガントリが、Cアームガントリを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記ガントリが、リング型ガントリを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記放射線源に結合されたロボットアームによって、前記関心点の周りで円形又は楕円形の軌道に沿った複数の位置に前記放射線源を位置決めするステップを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
マルチリーフコリメータ(MLC)であって、
放射線源のビームを形成するために独立して
第1の方向に移動するように構成された複数のリーフを含み、前記複数のリーフのエンドリーフは、前記複数のリーフの他のリーフと異なる幅を有
し、前記複数のリーフは、前記第1の方向に垂直で、関心点を中心とする回転経路に平行な第2の方向にオフセットにより移動するように構成され、前記ビームは、メガボルト(MV)治療ビームを含む、マルチリーフコリメータ(MLC)。
【請求項25】
前記エンドリーフの幅は、前記複数のリーフの第2のエンドリーフの第2の幅よりも大きい、請求項24に記載のMLC。
【請求項26】
前記幅は、前記放射線源に対する前記MLCのオフセットに基づく、請求項24に記載のMLC。
【請求項27】
前記オフセットは、4分の1プラス又はマイナス8分の1のリーフオフセットに対応する、請求項26に記載のMLC。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2020年6月30日に出願された米国特許出願第16/916,407号の米国特許法第119(e)条に基づく利益を主張し、その内容全体は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本開示は、オフセットマルチリーフコリメータ(MLC)を利用した放射線送達システムにおける線量適合性及び均質性の改善に関するものである
【背景技術】
【0003】
放射線治療では、腫瘍細胞を破壊するために、患者の体外の線源から放射線治療ビームを介して送達された放射線の線量が、体内の標的部位に送達される。目的の治療部位に送達される放射線量を最大にしながら、非治療部位に送達される放射線量を最小限にするよう配慮が必要である。放射線治療では、放射線治療ビームアパーチャは、放射線治療ビームを目的の標的部位にできるだけ密接に共形となるように形成する。放射線治療ビームアパーチャは、一般に、MLCによって定義される。
【0004】
本開示は、以下に与えられる詳細な説明及び本開示の様々な実施態様の添付図面から、より完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1A】本明細書に記載される実施形態による、ヘリカル放射線送達システムを示す図である。
【
図1B】本明細書に記載される実施形態によって使用できるロボット放射線治療システムを示す図である。
【
図1C】本明細書に記載される実施形態による、Cアームガントリベースの放射線治療システムを示す図である。
【
図2A】本開示の実施形態による、整列したMLCを含む放射線送達システムの一例を示す図である。
【
図2B】本開示の実施形態による、オフセットMLCを含む放射線送達システムの一例の例図である。
【
図3】本開示の実施形態による放射線送達システムのオフセットMLCに利用されるオフセットの量の一例を示す例図である。
【
図4A】本開示の実施形態による、整列MLCからの放射線ビームの投影の一例を示す例図である。
【
図4B】本開示の実施形態による、オフセットされたMLCからの放射線ビームの投影の一例を示す例図である。
【
図5】本開示の実施形態による、異なる幅のエンドリーフを有するMLCの一例を示す図である。
【
図6】本開示の実施形態による、オフセットMLCを利用して線量適合性及び均質性を改善するための方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書では、オフセットマルチリーフコリメータ(MLC)を利用して線量適合性及び均質性を改善するための方法及び装置の実施形態が記載される。放射線送達システムは、放射線源によって生成された放射線ビームの投影をオフセットさせるために、放射線源に対してMLCをオフセットすることができる。放射線ビームの投影をオフセットさせることにより、標的部位(以下、「標的」とも呼ばれる)に提供される線量の適合性及び均質性の改善をもたらすことができる。
【0007】
放射線送達システムにおいて、放射線源は、腫瘍などの標的に送達されるべき放射線ビームを生成することができる。MLCは、標的に適合するように放射線治療ビームを形成する1又は2以上のパターンを作成するために使用できるリーフを含む放射線源に結合される。治療セッションの間、放射線源及びMLCは、異なる角度から標的に放射線線量を送達するために、ガントリ又はロボットアームによって関心点(標的を含むことができる)の周りに回転/位置決めすることができる。
【0008】
従来の放射線送達システムでは、MLCが放射線源に結合されると、MLCのリーフの中心が放射線源から関心点へのラインと一致するようにMLCが整列される。換言すると、MLCのリーフは、放射線源から関心点までのラインの周りに対称的に分散される。このような整列により、放射線ビームの投影は、MLCのリーフの幅にほぼ対応した間隔を有することになる。例えば、MLCのリーフの幅が6.25ミリメートル(mm)である場合、放射線ビームの投影は、約6.25ミリメートルの間隔を空けて配置することができる。放射線ビームの投影のこのような間隔は、特に標的が比較的小さい場合(例えば、3センチメートル(cm)未満)、標的に対して適合する放射線の線量を提供することが困難になる可能性がある。
【0009】
本開示の態様は、放射線源に対してMLCをオフセットすることによって、上記及び他の欠陥を是正する。MLCは、放射線源から関心点までのラインに対してオフセットすることができる。オフセットの量は、MLCのリーフの幅に基づくことができる。実施形態において、オフセットは、4分の1のリーフのオフセットに対応することができる(例えば、オフセットは、MLCのリーフの幅の4分の1に等しい)。例えば、MLCのリーフの幅が6.25mmである場合、オフセットは1.56mmとすることができる。
【0010】
放射線源に対してMLCをシフトすることで、放射線ビームの投射位置も同様にシフトすることになる。また、放射線源に対してMLCをシフトすることで、放射線ビームの対向する投影をもたらすことができる。このようなMLCのシフトと対向する投影により、放射線ビームの投影の間隔が、整列したMLCを利用する放射線送達システムに対して減少する可能性がある。例えば、MLCのリーフ幅に対応する間隔を有する放射線ビームの投影を有するのではなく、オフセットMLCを使用することで、MLCのリーフ幅の半分に対応する間隔を有する放射線ビームの投影を有する結果となることができる。
【0011】
本開示の実施形態は、オフセットMLCを利用して線量の適合性及び均質性を改善する改善された放射線送達システムを提供する。放射線ビームの投影の間の低減された間隔により、放射線送達システムが、従来の放射線送達システムよりも、より適合した線量を標的に送達可能になる。更に、投影間の間隔が減少したことにより、放射線送達システムは、従来の放射線送達システムよりも小さい標的により適合した線量を提供することができる。
【0012】
図1Aは、本開示の実施形態によるヘリカル放射線送達システム800を示す。ヘリカル放射線送達システム800は、リングガントリ820に取り付けられたリニア加速器(LINAC)850を含むことができる。LINAC850は、電子ビームをX線放出標的に向けることによって放射線ビーム(すなわち、治療ビーム)を生成するのに使用することができる。治療ビームは、標的部位(すなわち、腫瘍)に放射線を送達することができる。治療システムは更に、LINAC850の遠位端に結合されたマルチリーフコリメータ(MLC)860を含む。MLCは、治療ビームの整形を可能にするためにMLCのアパーチャを調整するために移動可能である複数のリーフを収容するハウジングを含む。実施形態において、MLC860は、フィールド幅全体にわたって移動する複数のリーフを含むバイナリMLCとすることができる。実施形態において、MLC860は、2つの対向するバンクに配置された、複数のリーフペアを含むことができる。幾つかの実施形態では、MLC860は、eMLCとすることができる。実施形態において、MLC860は、他の何れかのタイプのMLCとすることができる。リングガントリ820は、患者830がリング/トロイドのボアを通って延びるトロイド形状を有し、LINAC850は、リングの周囲に取り付けられ、中心を通る軸の周りに回転して、患者の周囲の1又は2以上の角度から送達されるビームを用いて標的部位を照射する。治療中、患者830は、治療寝台840上のガントリのボアを通って同時に移動することができる。
【0013】
図1Bは、本明細書に記載される代替的な実施形態に従って使用できる放射線治療システム1200を例示する。図示されるように、
図1Bは、放射線治療システム1200の構成を示す。図示された実施形態では、放射線治療システム1200は、放射線治療源として機能する線形加速器(LINAC)1201と、LINAC1201の遠位端に結合されて治療ビームを形成するMLC1205と、を含む。一実施形態では、LINAC1201は、患者の周囲の動作ボリュームにおいて、多くの角度から多くの平面で照射されるビームで病的解剖学的構造(例えば、標的)を照射するようにLINAC1201を位置付けるために、複数の(例えば、5又はそれ以上の)自由度を有するロボットアーム1202の端部に取り付けられる。治療は、単一のアイソセンタ、複数のアイソセンタ、又は非アイソレータ手法を有するビーム経路を含むことができる。
【0014】
LINAC1201は、ロボットアーム1202を移動させることによって、治療中に複数の異なるノード(LINAC1201が停止され、放射線が照射され得る予め定められた位置)に位置決めすることができる。ノードにおいて、LINAC1201は、1又は2以上の放射線治療ビームを標的に送達することができ、ここで放射線ビーム形状は、MLC1205におけるリーフ位置により決定される。ノードは、患者の周りにほぼ球状分布で配置することができる。ノードの特定の数及び各ノードで適用される治療ビームの数は、治療される病理解剖学的構造の位置及びタイプの関数として変化することができる。
【0015】
別の実施形態では、ロボットアーム1202及びその端部にあるLINAC1201は、放射線が送達されている間、ノード間で連続的に運動することができる。放射線ビーム形状及び2D強度マップは、LINAC1201の連続した運動中にMLC1205内のリーフの急激な運動によって決定される。
【0016】
図1Cは、Cアーム放射線送達システム1400を示す。システム1400は、Cアームガントリ1410、LINAC1420、LINAC1420の遠位端に結合されてビームを成形するMLC1470、及び門脈イメージング検出器1450を含む。Cアームガントリ1410は、選択された投影に対応する角度まで回転され、治療寝台1440上の患者1430のVOIのX線画像を取得するのに使用することができる。
【0017】
図2Aは、本開示の実施形態による、整列されたMLCを含む放射線送達システム200の一例を示す例図である。放射線送達システム200は、放射線源202及びMLC206を含む。実施形態において、放射線源202は、
図1AのLINAC850に対応することができる。実施形態において、放射線源202は、
図1BのLINAC1201に対応することができる。幾つかの実施形態では、放射線源202は、
図1CのLINAC1420に対応することができる。実施形態において、放射線源202は、放射線ビームを生成するように構成された任意のタイプの放射線源に対応することができる。実施形態において、MLC206は、
図1AのMLC860に対応することができる。幾つかの実施形態では、MLC206は、
図1BのMLC1205に対応することができる。実施形態において、MLC206は、
図1CのMLC1470に対応することができる。
【0018】
関心点208は、放射線源によって生成される放射線ビームの方向に対して決定された位置に対応することができる。実施形態において、関心点208は、標的を含む関心領域(ROI)とすることができる。実施形態において、関心点208は、固定アイソセンタ210を含むことができる。固定アイソセンタ210は、放射線源202が回転経路212に沿ってその周りに回転する、放射線源202に対する空間内の点に対応することができる。実施形態において、放射線源202及びMLC206は、ガントリ(例えば、
図1Aのリングガントリ820又は
図1CのCアームガントリ1410)又はロボットアーム(例えば、
図1Bのロボットアーム1202)によって関心点208の周りに回転/位置決めすることができる。先に説明したように、幾つかの実施形態では、MLC206が放射線源202に結合されると、MLC206は、MLC206のリーフが放射線源202から関心点208までのライン204の周りに均一に分布するように整列される。
【0019】
図2Bは、本開示の実施形態による、オフセットMLCを含む放射線送達システム250の一例を示す例図である。放射線送達システム250は、放射線送達システム200の構成要素と同様の構成要素を含むことができる。しかしながら、放射線源202から関心点208へのライン204に整合して放射線源202に結合されるMLC206(
図2Bにおいて破線で表される)を含む代わりに、放射線送達システム250は、オフセットMLC252を含む。
【0020】
オフセットMLC252は、前述したように、放射線源202に結合することができる。しかしながら、オフセットMLC252が放射線源202に結合されると、オフセットMLC252は、オフセット254によってライン204に対してシフトすることができる。実施形態において、オフセットMLC252がシフトされるオフセット254の量は、オフセットMLC252のリーフの幅に基づくことができる。実施形態において、オフセット254の量は、4分の1のリーフオフセットに対応することができる(例えば、オフセットの量は、リーフ幅の1/4である)。例えば、オフセットMLC252のリーフ幅が6.25mmである場合、オフセット254の量は1.56mmとすることができる。実施形態において、オフセット254の量は、1/4リーフプラス又はマイナス1/8リーフのオフセットに対応することができる。例えば、オフセットMLC252のリーフ幅が6.25mmである場合、オフセット254の量は、1.56mm±0.78mmであってもよい。
【0021】
図3は、本開示の実施形態による放射線送達システム300のオフセットMLCに利用されるオフセット量の一例を示す例図である。
図2Bの実施形態では、1/4リーフのオフセットを有するオフセットMLCを説明したが、本開示の実施形態は、異なるオフセット量を利用することができる。更に、本開示の実施形態は、放射線源202と関心点との間の線に対して異なる方向にMLCをシフトさせる。放射線供給システム300は、
図2Aで先に説明したように、放射線源202、MLC206、関心点208、及び固定アイソセンタ210を含むことができる。
【0022】
実施形態において、MLC206は、ライン204に対して第1の方向にMLC206をシフトさせる正のオフセット302を使用してシフトすることができる。実施形態において、MLC206は、負のオフセット304を使用してシフトされてもよく、これは、第1の方向と反対であるライン204に対して第2の方向にMLC206をシフトさせる。例えば、
図3において、正のオフセット302は、MLC206を右にシフトさせることに対応することができ、負のオフセット304は、MLC206を左にシフトさせることに対応することができる。
【0023】
実施形態において、オフセットの量は、正又は負の1/4+正又は負の半整数のうちの1つに対応することができる。例えば、オフセットは、以下の式を用いて決定することができる。
【数1】
ここで、リーフオフセットは、オフセット量に対応することができ、リーフ幅は、MLC206のリーフの幅に対応することができ、Nは全体の整数に対応することができる。例えば、リーフ幅は6.25mmとすることができ、Nは0、1、2、3などとすることができる。これらのオフセット位置は、
図4Bに示す投影間隔をもたらす理想的なMLC配置を記述するが、これらのオフセットからの小さな逸脱は有効性に影響を与えない。理想的なオフセット位置の各々から±1/8のリーフ幅の公差は、
図4Aよりも
図4Bに近い投影間隔をもたらすことになる。
【0024】
異なるN値を用いたオフセット量は、ライン204に対するMLC206のリーフの位置関係も類似している可能性があるため、放射線ビームの投影において同様の間隔を有することができる。例えば、正のオフセット302又は負のオフセット304の何れかと、リーフ幅の1/4、リーフ幅の3/4、リーフ幅の5/4、リーフ幅の7/4などのオフセット量を用いてシフトされたMLC206は、放射線源202が生成する放射線ビームの投影において同様の間隔を有することができる。
【0025】
図4Aは、本開示の実施形態による、整列したMLCからの放射線ビームの投影の一例の例
図400である。
図400は、放射線ビームの投影が受信される正方形の領域に対応することができる。
図400のラインの各々は、放射線源が正方形部位の周りに回転するときに、放射線源によって生成される放射線ビームの投影に対応することができる。例えば、
図400のラインは、放射線源が-20度の位置から20度の位置まで回転するときの放射線ビームの投影に対応することができ、ここで、0度の位置は、正方形部位の真上にあり、放射線源が-160度の位置から正160度の位置まで回転するときの放射線ビームの投影は、180度の位置が正方形部位の真下にある。ラインは、放射線ビームによって腫瘍などの標的に提供される放射線の線量分布を例示するのに使用することができる。
【0026】
例
図400は、正方形部位内の位置に対応するX軸及びY軸を含む。実施形態において、図示400における(0,0)の座標は、放射線源が回転される関心点(例えば、関心点208)及び/又は固定アイソセンタ(例えば、固定アイソセンタ210)に対応することができる。関心点(例えば、(0,0))の近くには、正方形部位に入射する放射線ビームの投影間のギャップに対応する投影間隔402がある。実施形態において、整列したMLCを使用する場合の投影間隔402は、MLCのリーフの幅と同様とすることができる。例えば、整列されたMLCが6.25mmのリーフ幅を有する場合、投影間隔402は約6.25mmとすることができる。
【0027】
図4Bは、本開示の実施形態による、オフセットMLCからの放射ビームの投影の一例を示すイラスト450である。例
図450は、
図4Bで説明したものと同様の構成要素を含むことができる。しかしながら、イラスト450は、オフセットMLCからの放射線ビームの投影を示す。関心点の近くには、正方形部位に入射する放射線ビームの投影の間のギャップに対応する投影間隔452がある。オフセットMLCを利用する放射線送達システムは、整列MLCを利用する放射線送達システムの投影間隔402と比較すると、減少した投影間隔452を有することができる。実施形態において、オフセットMLCを使用するときの投影間隔452は、MLCのリーフの幅の半分と同様とすることができる。例えば、オフセットMLCが6.25mmのリーフ幅を有する場合、投影間隔402は、約3.12mmとすることができる。
【0028】
放射線ビームの投影間隔を小さくすることで、線量適合性及び均質性の改善をもたらすことができる。実施形態において、線量適合性は、線量分布が目標形状に適合する程度を特徴付ける適合性指数(CI)を用いて決定することができる。CIは、以下の式を用いて、処方された等線量体積を標的輪郭内の等線量体積で除算したものとして定義することができる。
【数2】
ここで、VRxは処方箋のアイソドーズの輪郭の体積、VRx,Tは標的構造内にある処方箋のアイソドーズの体積である。処方箋アイソドーズ体積が標的体積の形状に完全に「適合」又は「一致」している場合、CIは1の値を有する。イソドーズ体積が標的体積の外側に広がる場合、CI値は1より大きくなる。
【0029】
実施形態において、均質性は、標的構造内の線量変動の量を特徴付ける均質性指数(HI)を用いて決定することができる。HIは、以下の式を用いて決定することができる。
【数3】
ここで、DoseMaxは標的構造内の最大線量であり、DoseRxは処方線量である。
【0030】
図5は、本開示の実施形態による、異なる幅のエンドリーフを有するMLC500の一例を示す図である。MLC500は、MLC500内の様々な位置に8つのリーフペア(510~525)を含む。リーフペア510~525の位置は、放射線源によって生成される放射線ビームを成形するために使用できる開口部550を形成してもよい。例えば、リーフペア510~525は、標的部位の形状に対応する開口部550を形成することができる。従来のMLCにおいて、リーフペア510~525は、全て同様のリーフ幅を有することができる。例えば、従来のMLCでは、リーフ510~525の各々は、6.25mmのリーフ幅を有することができる。
【0031】
図5は、
図2A及び
図2Bで前述したように、関心点208、ライン204、及びオフセット254を含む。
図5において、ライン204は、
図5のX-Y平面に垂直なZ軸と実質的に平行とすることができる。オフセット254は、
図5のY軸に沿ってMLC500をシフトさせてもよい。
図5において、オフセット254は、MLC500がY軸に対して負の方向にシフトされる負のオフセット(例えば、
図3の負のオフセット304)に相当する。しかしながら、実施形態では、オフセット254は、MLCがY軸に対して正の方向にシフトされる、正のオフセット(例えば、
図3の正のオフセット302)に対応することができる。
【0032】
図5を参照すると、MLC500は、各々がMLC500の他のリーフ(例えば、リーフ510~523)とは異なる対応するリーフ幅526を有するエンドリーフ524、525を含む。例えば、エンドリーフ524、525は、MLC500の他のリーフのリーフ幅よりも大きい対応するリーフ幅526を有することができる。異なるリーフ幅526を備えたエンドリーフ524、525を有することは、リーフ510~525が関心点208及び/又はライン204に対してオフセットする(例えば、非対称に整列する)のを可能にしながら、全体としてMLC500がライン204に対して対称に整列することができる。MLC500全体が関心点208及び/又はライン204に関して対称であることを可能にすることは、放射線源が、MLC500の両端上のX線投影のバランスをとることによってMV(又はkV)イメージングビームを生成するために使用される場合、放射線送達システムの性能を向上させることができる。
【0033】
実施形態において、端部リーフ524、525のリーフ幅526は、MLC500の端部リーフ510、511のリーフ幅より大きくすることができる。実施形態において、リーフ幅526は、先に説明したように、放射線源に対するMLCのオフセットに基づくことができる。幾つかの実施形態では、リーフ幅526は、MLC500の他のリーフのリーフ幅に、オフセット量の2倍をプラス又はマイナスしたものと等しくすることができる。例えば、6.25mmの標準リーフ幅及び1.56mmの所望のオフセットを有するMLC(例えば、1/4リーフ)において、リーフ幅は、6.25mm±3.12mm(例えば、所望のオフセットの2倍)とすることができる。
【0034】
図6は、本開示の実施形態による、オフセットMLCを利用して線量適合性及び均質性を改善する方法600の流れ図を表している。実施形態において、方法600の様々な部分は、
図1A~3で説明した放射線送達システムのような放射線送達システムによって実行することができる。
【0035】
図6を参照すると、方法600は、様々な実施形態によって使用される例示的な機能を示している。特定の機能ブロック(「ブロック」)が方法600に開示されているが、このようなブロックは実施例である。すなわち、実施形態は、方法600に記載されたブロックの様々な他のブロック又は変形形態を実行するのに十分適している。方法600のブロックは、提示されたのとは異なる順序で実行されてもよく、また、方法600のブロックの全てが実行されなくてもよいことは理解される。
【0036】
方法600は、ブロック610から始まり、放射線源に結合されたマルチリーフコリメータ(MLC)がオフセットによってシフトされる。実施形態では、オフセットは、先に説明したように、MLCの1又は2以上のリーフのリーフ幅に基づくことができる。
【0037】
ブロック620において、MLCの1又は2以上のリーフは、開口部を形成するように位置決めされる。
【0038】
ブロック630において、放射線源は、放射線ビームを生成する。放射線ビームの投影は、MLCのリーフによって形成された開口部によって形作られ、オフセットに基づいてシフトされる。
【0039】
ブロック640において、放射線源は、関心点の周りに回転/位置決めされる。実施形態において、放射線源は、回転経路に沿って回転/位置決めすることができる。実施形態において、放射線源は、リング又はCアームガントリなどのガントリによって関心点の周りに回転することができる。実施形態では、放射線源は、ロボットアームによって関心点の周りに位置決めすることができる。幾つかの実施形態では、関心点は、先に説明したように、固定アイソセンタを含むことができる。
【0040】
本明細書に記載される方法及び装置は、医学的治療での使用のみに限定されない点に留意されたい。代替的な実施構成では、本明細書の方法及び装置は、産業用イメージング及び材料の非破壊検査のような、医療技術分野以外の用途で使用されてもよい。このような用途では、例えば、「治療」は、一般に、ビーム(例えば、放射線、音響など)の適用など、治療計画システムによって制御される動作の達成を指すことができ、「標的」は、非解剖学的物体又は領域を指すことができる。
【0041】
先の説明では、本開示の幾つかの実施形態の良好な理解を提供するために、特定のシステム、構成要素、方法及びその他の実施例など、多くの具体的な詳細を記載している。しかしながら、当業者には、本開示の少なくとも幾つかの実施形態が、これらの具体的な詳細なしに実施できることは、明らかであろう。他の例では、本開示を不必要に不明瞭にしないために、周知の構成要素又は方法は詳細に説明されず、又は簡単なブロック図形式で提示される。従って、記載された特定の詳細は、単に例示的なものである。特定の実施形態は、これらの例示的な詳細と異なっていてもよく、それでも依然として本開示の範囲内であることが企図される。
【0042】
本明細書を通じて「一実施形態」又は「ある実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書全体を通じて種々の箇所で挙げられる表現「1つの実施形態において」又は「実施形態において」は、必ずしも全て同じ実施形態について言及しているとは限らない。
【0043】
本明細書における方法の動作は特定の順序で示され、説明されているが、各方法の動作の順序は、特定の動作が逆の順序で実行され得るように、又は特定の動作が他の動作と少なくとも部分的に同時に実行され得るように変更することができる。別の実施形態では、異なる動作の指示又はサブオペレーションは、断続的又は交互方式とすることができる。
【0044】
要旨に記載されたものを含む、本発明の例示された実施態様の上記説明は、網羅的であること又は開示された正確な形態に本発明を限定することを意図していない。本発明の特定の実施態様及び実施例は、例示の目的で本明細書に記載されているが、関連する技術分野の当業者が認識するように、本発明の範囲内で様々な均等物が可能である。「例示」又は「例示的」という用語は、本明細書では、実施例、実例、又は例証として機能することを意味するのに使用される。本明細書において「実施例」又は「例示的」として記載される何れかの態様又は設計は、必ずしも、他の態様又は設計よりも好ましい又は有利であると解釈されるものではない。むしろ、「実施例」又は「例示的」という用語の使用は、具体的な方法で本発明の概念を提示することを意図している。本出願で使用されるように、用語「又は」は、排他的な「又は」ではなく、包括的な「又は」を意味することが意図される。すなわち、他に指定されない限り、又は文脈から明らかでない限り、「XがA又はBを含む」は、自然な包含的順列の何れかを意味することが意図される。つまり、XがAを含む、XがBを含む、又はXがAとBの両方を含む場合、「XはA又はBを含む」は前述の例の何れかを満たす。更に、本出願及び添付の特許請求の範囲で使用される冠詞「a」及び「an」は、他に指定されない限り、又は文脈から単数形を指示することが明らかでない限り、一般に「1又は2以上」を意味すると解釈されるべきである。更に、全体を通して「一実施形態」又は「1つの実施形態」又は「一実施構成」又は「1つの実施構成」という用語の使用は、そのように記載されない限り、同じ実施形態又は実施構成を意味することを意図していない。更に、本明細書で使用される「第1」、「第2」、「第3」、「第4」などの用語は、異なる要素間を区別するためのラベルとして意図され、必ずしもその数値指定に従って序列的意味を有していない場合がある。
【符号の説明】
【0045】
202 放射線源
252 オフセットMLC
204 ライン
254 オフセット
208 関心点
210 固定アイソセンタ