(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】戸体の製造方法
(51)【国際特許分類】
E06B 3/74 20060101AFI20240319BHJP
E06B 3/82 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
E06B3/74
E06B3/82
(21)【出願番号】P 2023185394
(22)【出願日】2023-10-30
【審査請求日】2023-11-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518044734
【氏名又は名称】神谷コーポレーション湘南株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073324
【氏名又は名称】杉山 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100134898
【氏名又は名称】岩田 克子
(72)【発明者】
【氏名】神谷 忠重
(72)【発明者】
【氏名】安藤 浩行
(72)【発明者】
【氏名】大野 浩一
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-83605(JP,A)
【文献】特開2006-299749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/70-3/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の縦桟と、該左右の縦桟を上部と下部の夫々において結合する、内外に空気が流通する空気出入溝が設けられた上桟及び下桟とからなる桟部材と、前記桟部材内において左右の縦桟の夫々の内側に、これに沿って配設した金属製角パイプと、該左右の金属製角パイプ間に配設した横桟と、前記桟部材内に収容した、内部における空気の流通を図る空気流通溝が設けられたハニカム構造の芯材と、前記桟部材等の表裏各々に取着される表面材とからなる戸体において
、前記横桟を、その厚みを、前記桟部材より薄く
して表裏両側の表面材の中心部に位置せしめると共に、表面材に接着しないようになし
た戸体の製造方法であって、以下a.~h.の工程からなることを特徴とする戸体の製造方法。
a.左右の縦桟と、該左右の縦桟を上部と下部の夫々において結合する、内外に空気が流通する空気出入溝が設けられた上桟及び下桟とからなる桟部材を組み立て、該桟部材内において左右の縦桟の内側に金属製角パイプを配設すると共に、前記桟部材内に内部における空気の流通を図る空気流通溝が設けられたハニカム構造の芯材を収容する工程。
b.組み立てた桟部材等を、一方側の面を下側にして水平な支持台上に置き、横桟を配設する金属製角パイプ間に、横桟の一方側の面と支持台との隙間に相当する厚みの台板を置いた状態において金属製角パイプ間に横桟を置く工程。
c.横桟の長さ方向の両端部の夫々の上側の面を、タッカーを用いて金属製角パイプに結合する工程。
d.横桟のハニカム構造の芯材と接する一方側の面を、タッカーを用いてハニカム構造の芯材に結合する工程。
e.桟部材等を上下反転させ、他方側の面を下側にして水平な支持台上に置き、横桟を配設する金属製角パイプ間に、横桟の他方側の面と支持台との隙間に相当する厚みの前記台板を置いた状態において横桟の長さ方向の両端部の夫々の上側の面を、タッカーを用いて金属製角パイプに結合する工程。
f.横桟のハニカム構造の芯材と接する他方側の面を、タッカーを用いてハニカム構造の芯材に結合する工程。
g.前記台板を取り外し、横桟を除いた桟部材等の表裏両面に、ローラーで接着剤を塗布する工程。
h.桟部材等の表裏両面に、表面材を接着する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、戸体において、
図10乃至
図14に示す構成の戸体がある。該戸体100は、左右の縦桟102、103と、該左右の縦桟102、103を上部と下部の夫々において結合する上桟104及び下桟105とからなる桟部材101と、前記桟部材101内において左右の縦桟102、103の夫々の内側に、これに沿って配設した金属製角パイプ106、107と、該左右の金属製角パイプ106、107間に配設した横桟108と、前記桟部材101内に収容したハニカム構造の芯材109と、前記桟部材101等の表裏各々に取着される表面材110とからなるものである。
【0003】
尚、前記桟部材101並びに横桟108と表面材110は、木材からなるものであり、また、前記上桟104と下桟105の夫々には、内外に空気が流通する空気出入溝111が設けられると共に、前記横桟108には内部における空気の流通を図る空気流通溝112が設けられている。また、前記桟部材101と金属製角パイプ106、107並びに横桟108の表裏両面に取着される表面材110は、ローラーによって塗布する接着剤113を用いて接着されるものである。
【0004】
ところで、斯かる構成において、桟部材101と横桟108は同一の厚みとされている。即ち、
図12に示す如く、縦桟102、103、上桟104、下桟105とからなる桟部材101の厚みL1と横桟108の厚みL2は同一である。尚、金属製角パイプ106、107の厚みL3は桟部材101の厚みL1と横桟2の厚みL2より薄い。そしてまた、これら桟部材101と金属製角パイプ106、107並びに横桟108は、その表裏両面に、ローラーによって塗布する接着剤113を用いて表面材110が取着されている。
【0005】
しかしながら、上記の如き構成の場合、横桟108は木材であることから、これが経年変化によって収縮し、その厚みが減少すると、これの外側に接着されている表面材110は内側に引っ張られて窪み、
図14に示す如く段差が生じてしまうことになる。そして、このようになった場合には外観が著しく損なわれ、見苦しくなる。
【0006】
また、横桟108の厚みは、桟部材101と同一の厚みであり、これらの外側に接着された表面材110との間には隙間が存在しないものである。このため、該横桟108における表面材110と接する側の面に、内部における空気の流通を図る空気流通溝112を形成する必要がある。そしてまた、その分の手間と時間を要することになるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであって、横桟を、その厚みを桟部材より薄くして表裏両側の表面材の中心部に位置せしめると共に、表面材に接着しないようになし、もって横桟が経年変化によって収縮してその厚みが減少したとしても、その部分において表面材が窪むことなく、外観上において見苦しくなることを防ぐことができると共に、従来の如き空気流通溝を形成する手間と時間を省くことができるようになした戸体を効率よく製造することができる戸体の製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
而して、本発明の要旨とするところは、左右の縦桟と、該左右の縦桟を上部と下部の夫々において結合する、内外に空気が流通する空気出入溝が設けられた上桟及び下桟とからなる桟部材と、前記桟部材内において左右の縦桟の夫々の内側に、これに沿って配設した金属製角パイプと、該左右の金属製角パイプ間に配設した横桟と、前記桟部材内に収容した、内部における空気の流通を図る空気流通溝が設けられたハニカム構造の芯材と、前記桟部材等の表裏各々に取着される表面材とからなる戸体において、前記横桟を、その厚みを、前記桟部材より薄くして表裏両側の表面材の中心部に位置せしめると共に、表面材に接着しないようになした戸体の製造方法であって、以下a.~h.の工程からなることを特徴とする戸体の製造方法にある。
a.左右の縦桟と、該左右の縦桟を上部と下部の夫々において結合する、内外に空気が流通する空気出入溝が設けられた上桟及び下桟とからなる桟部材を組み立て、該桟部材内において左右の縦桟の内側に金属製角パイプを配設すると共に、前記桟部材内に内部における空気の流通を図る空気流通溝が設けられたハニカム構造の芯材を収容する工程。
b.組み立てた桟部材等を、一方側の面を下側にして水平な支持台上に置き、横桟を配設する金属製角パイプ間に、横桟の一方側の面と支持台との隙間に相当する厚みの台板を置いた状態において金属製角パイプ間に横桟を置く工程。
c.横桟の長さ方向の両端部の夫々の上側の面を、タッカーを用いて金属製角パイプに結合する工程。
d.横桟のハニカム構造の芯材と接する一方側の面を、タッカーを用いてハニカム構造の芯材に結合する工程。
e.桟部材等を上下反転させ、他方側の面を下側にして水平な支持台上に置き、横桟を配設する金属製角パイプ間に、横桟の他方側の面と支持台との隙間に相当する厚みの前記台板を置いた状態において横桟の長さ方向の両端部の夫々の上側の面を、タッカーを用いて金属製角パイプに結合する工程。
f.横桟のハニカム構造の芯材と接する他方側の面を、タッカーを用いてハニカム構造の芯材に結合する工程。
g.前記台板を取り外し、横桟を除いた桟部材等の表裏両面に、ローラーで接着剤を塗布する工程。
h.桟部材等の表裏両面に、表面材を接着する工程。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記の如く横桟を、その厚みを桟部材より薄くして表裏両側の表面材の中心部に位置せしめると共に、表面材に接着しないようになし、もって横桟が経年変化によって収縮し、その厚みが減少したとしても、その部分において表面材が窪むことなく、外観上において見苦しくなることを防ぐことができると共に、横桟と両側の表面材との間には、該横桟の厚みが少なくなった分の隙間ができ、よってこの隙間が空気流通溝の作用をすることになるから、従来の如き空気流通溝をわざわざ形成する必要がなく、これに要する手間と時間を省くことができる戸体を効率よく製造することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明
で製造する戸体の概略的正面図である。
【
図4】本発明
で製造する戸体の表面材を一部切欠して示すと共に、横桟とハニカム構造の芯材の結合部分における芯材を一部省略して示した正面図である。
【
図5】本発明
で製造する戸体の製造方法の説明図であり、横桟と金属製角パイプをタッカーを用いて結合する工程を示すものである。
【
図6】本発明
で製造する戸体の製造方法の説明図であり、横桟のハニカム構造の芯材と接する一方側の面とハニカム構造の芯材をタッカーを用いて結合する工程を示すものである。
【
図7】本発明
で製造する戸体の製造方法の説明図であり、上下反転させた後横桟と金属製角パイプをタッカーを用いて結合する工程を示すものである。
【
図8】本発明
で製造する戸体の製造方法の説明図であり、横桟のハニカム構造の芯材と接する他方側の面とハニカム構造の芯材をタッカーを用いて結合する工程を示すものである。
【
図9】本発明
で製造する戸体の製造方法の説明図であり、桟部材等の表裏両面にローラーで接着剤を塗布する工程を示すものである。
【
図13】従来の戸体の表面材を一部切欠して示した正面図である。
【
図14】従来の戸体における横桟が収縮した状態の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0012】
先ず、本発明で製造する戸体について説明する。
本発明で製造する戸体1は、左右の縦桟3、4と、該左右の縦桟3、4を上部と下部の夫々において結合する上桟5及び下桟6とからなる桟部材2と、前記桟部材2内において左右の縦桟3、4の夫々の内側に、これに沿って配設した金属製角パイプ7、8と、該左右の金属製角パイプ7、8間に配設した横桟9と、前記桟部材2内に収容したハニカム構造の芯材10と、前記桟部材2等の表裏各々に取着される表面材11、11とからなるものであり、以上の構成は前記従来の戸体と同様である。尚、符号を省略したが、上桟5と下桟6の夫々には、内外に空気が流通する空気出入溝が設けられ、またハニカム構造の芯材10には、空気流通溝(不図示。)が設けられている。
【0013】
また、本発明
で製造する戸体の従来の戸体に
対する相違点は、横桟9を、その厚みを、桟部材2より薄く
して表裏両側の表面材11、11の中心部に位置せしめると共に、表面材11、11に接着しないようになした点にある。即ち、
図3において示す如く、桟部材2の厚みL1に対して横桟9の厚みL2を薄くして
表裏両側の表面材11、11の中心部に位置せしめている。尚、金属製角パイプ7、8の厚みL3は桟部材2の厚みL1より薄く、横桟9の厚みL2より厚くしている。
【0014】
このようになしたことにより、
図2及び
図3に示す如く、横桟9が経年変化によって収縮し、その厚みが減少したとしても、その部分において表面材11、11が窪むことなく、外観上において見苦しくなることを防ぐことができるものである。また、横桟9と両側の表面材11、11との間には、該横桟9の厚みが少なくなった分の隙間Sができ、よってこの隙間Sが空気流通溝の作用をすることになるから、従来の如き空気流通溝をわざわざ形成する必要がなく、これに要する手間と時間を省くことができるものである。
【0015】
而して、本発明は、上記戸体1の製造方法をその要旨とするものである。
【0016】
該戸体1の製造方法は、以下のa.~h.の工程からなるものである。
a.左右の縦桟3、4と、該左右の縦桟3、4を上部と下部の夫々において結合する上桟5及び下桟6とからなる桟部材2を組み立て、該桟部材2内において左右の縦桟3、4の内側に金属製角パイプ7、8を配設すると共に、前記桟部材2内にハニカム構造の芯材10を収容する工程。
b.組み立てた桟部材2等を、一方側の面を下側にして水平な支持台(不図示。)上に置き、横桟9を配設する金属製角パイプ7、8間に、横桟9の一方側の面と支持台(不図示。)との隙間に相当する厚みの台板Dを置いた状態において金属製角パイプ7、8間に横桟9を置く工程。
c.横桟9の長さ方向の両端部の夫々の上側の面を、タッカーを用いて金属製角パイプ7、8に結合する工程(
図5)。尚、
図5において12はタッカーのステープルを示す。
d.横桟9のハニカム構造の芯材10と接する一方側の面を、タッカーを用いてハニカム構造の芯材10に結合する工程(
図6)。尚、
図6において12はタッカーのステープルを示す。
e.桟部材2等を上下反転させ、他方側の面を下側にして水平な支持台(不図示。)上に置き、横桟9を配設する金属製角パイプ7、8間に、横桟9の他方側の面と支持台との隙間に相当する厚みの前記台板Dを置いた状態において横桟9の長さ方向の両端部の夫々の上側の面を、タッカーを用いて金属製角パイプ7、8に結合する工程(
図7)。尚、
図7において12はタッカーのステープルを示す。
f.横桟9のハニカム構造の芯材10と接する他方側の面を、タッカーを用いてハニカム構造の芯材10に結合する工程(
図8)。尚、
図8において12はタッカーのステープルを示す。
g.前記台板Dを取り外し、横桟9を除いた桟部材2等の表裏両面に、ローラー13で接着剤を塗布する工程(
図9)。
h.桟部材2等の表裏両面に、表面材11を接着する工程。
【0017】
斯かる製造方法によれば、上記戸体1を効率よく製造することができるものである。
【符号の説明】
【0018】
1 戸体
2 桟部材
3、4 左右の縦桟
5 上桟
6 下桟
7、8 金属製角パイプ
9 横桟
10 芯材
11、11 表面材
12 タッカーのステープル
13 ローラー
14 接着剤
D 台板
【要約】
【課題】 横桟が経年変化によって収縮してその厚みが減少したとしても、その部分において表面材が窪むことなく、外観上において見苦しくなることを防ぐことができるようにした戸体及び該戸体の製造方法を提供する。
【解決手段】 戸体1は、左右の縦桟3、4と、該左右の縦桟3、4を上部と下部の夫々において結合する上桟5及び下桟6とからなる桟部材2と、前記桟部材2内において左右の縦桟3、4の夫々の内側に、これに沿って配設した金属製角パイプ7、8と、該左右の金属製角パイプ7、8間に配設した横桟9と、前記桟部材2内に収容したハニカム構造の芯材10と、前記桟部材2等の表裏各々に取着される表面材11、11とからなるものである。前記戸体1において、前記横桟9を、その厚みを、前記桟部材2より薄くなすと共に、表面材11、11に接着しないようにする。
【選択図】
図3