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特許7457200光硬化接着剤を用いたウィッグの装着具及びその装着方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】光硬化接着剤を用いたウィッグの装着具及びその装着方法
(51)【国際特許分類】
   A41G 3/00 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
A41G3/00 K
A41G3/00 J
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023211836
(22)【出願日】2023-12-15
【審査請求日】2023-12-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000126676
【氏名又は名称】株式会社アデランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001335
【氏名又は名称】弁理士法人 武政国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】桝崎 龍二
(72)【発明者】
【氏名】板山 剛
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-063502(JP,A)
【文献】特開2005-179836(JP,A)
【文献】特開2021-143444(JP,A)
【文献】特開2021-127525(JP,A)
【文献】実開平01-161225(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0320749(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0122465(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0180540(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0065014(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41G 3/00
A41G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウィッグ(61)を人の頭部に止着する際に、光硬化接着剤を用いて頭髪に固定する光硬化接着剤を用いたウィッグの装着具であって、
ベース部(62)に取り付けられる、剛性を有するフィルム状の装着板(12)と、
前記装着板(12)に取り付けられた、自毛(H)を差し込む管状部材(14)と、
前記装着板(12)に形成された、複数本の自毛(H)の位置決めとして機能する数個のアンカー(15)と、から成り、
前記管状部材(14)に、前記アンカー(15)を基準にして所定の本数の自毛(H)を差し込み、自毛(H)の生え際付近まで該管状部材(14)をずらした状態で該管状部材(14)を潰し、引き出した自毛(H)と装着板(12)とアンカー(15)とを光硬化接着剤(GL)を塗布し、自毛(H)と装着板(12)とアンカー(15)にLED(発光ダイオード)の照射光を当て、自然に硬化するときより早く硬化させるように構成した、ことを特徴とする光硬化接着剤を用いた装着具。
【請求項2】
ウィッグ(61)を人の頭部に止着する際に、光硬化接着剤を用いて頭髪に固定する光硬化接着剤を用いたウィッグの装着方法であって、
装着板(12)に取り付けられた管状部材(14)に、該装着板(12)に形成された数個のアンカー(15)を基準にして所定の本数の自毛(H)を差し込み、
前記管状部材(14)から自毛(H)を引き出し、自毛(H)の生え際近くにまで装着板(12)を配置し、
自毛(H)の生え際付近まで該管状部材(14)をずらし、自毛(H)を通した状態で前記管状部材(14)を潰して固定し、
前記装着板(12)とアンカー(15)と自毛(H)とを光硬化接着剤(GL)で接着し、
前記装着板(12)とアンカー(15)と自毛(H)にLED(発光ダイオード)の照射光を当て、自然に硬化するときより早く硬化させ、
前記装着板(12)をベース部(62)に固定する、ことを特徴とする光硬化接着剤を用いたウィッグの装着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィッグを自毛に止着する際に、光硬化性の接着剤を用いて固定する光硬化接着剤を用いたウィッグの装着具及びその装着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工毛を自毛に取り付ける増毛方法が提案されている。例えば、チップと称される管状部材に人工毛を取り付け、この管状部材に頭部の自毛を差し込み、この管状部材を潰して抜けないようにして固定する方法がある。
【0003】
また、ウィッグを頭部に止着する方法としては、クリップを用いてベース部を自毛に取り付ける方法がある。例えば、バネ式のクリップをベース部に複数個取り付け、このクリップのくし部分を自毛に差し込み、その後バネの作用で自毛を挟み止めて、この自毛とくし部分を押さえて固定する方法である。
【0004】
更に、ベース部を自毛に直接取り付けて止着する、長期間の装着用のウィッグもある。このウィッグでは、バネ式のクリップに代えて開けたストッパー(止着部材)を用いる方法が提案されている。このストッパーに、自毛を挟みこれを固定し、このストッパーをベース部に取り付ける方法である。
【0005】
増毛方法、ウィッグを頭部に止着する方法に関する技術が種々提案されている。例えば、特許文献1の特開2013-151772号公報「かつら」のように、かつらベースの裏面外周に沿って固定されたフィルム、シート、紐又は糸状の部材からなる取付基部とフィルム又はシート状の部材であって、装着者の自毛を通すためのスリットを有する止着部材と、を備え、前記取付基部が、間隔をおいた2つ以上の固定箇所を有し、2つの前記固定箇所の間が、前記かつらベースの裏面に対して非固定部になっており、前記止着部材を前記取付基部の非固定部に挿通し、前記スリットに装着者の自毛を通した後、前記止着部材の一端側と他端側との間に前記自毛を挟んだ状態で、前記止着部材の一端側と他端側と接着する、ことを特徴とするかつら、が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-151772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
自毛を装着具に接着剤で固定する際に、自毛がまとまった束になっていないと、接着剤の塗布範囲が広がりやすくなる。この装着具に固定されている各毛髪と生え際との間隔が同一であると毛髪の束を固定することになり、装着具ひいてはウィッグを強固に頭部に止着することになる。しかし、装着具に固定されている各毛髪と生え際との間隔が不均一になると、一番短い間隔の毛髪のみが固定に機能しているだけで、装着具を強固に固定できないという問題を有していた。
【0008】
また、特許文献1の「かつら」は、人工毛(毛材)を止着する際に、接着剤又は粘着テープを用いて自毛とストッパー(止着部材)とを固定する方法である。この方法は、かつらベースの裏面外周に沿って固定された取付基部とフィルム又はシート状の部材と、装着者の自毛を通すためのスリットを有する止着部材と、を備え、スリットに装着者の自毛を通した後、前記止着部材の一端側と他端側との間に前記自毛を挟んだ状態で、前記止着部材の一端側と他端側と接着する方法である。この接着剤が硬化するまでに時間がかかり、次の作業に進めず止着作業に長時間を要するという問題を有していた。
【0009】
本発明の発明者は、この接着剤に光硬化接着剤を用いることに着目した。通常の接着剤と比較して短時間で硬化させることができ、接着機能と共に位置決めの機能に利用できると考えた。
【0010】
本発明は、かかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、ウィッグを頭部に固定する際に光硬化接着剤にLED光を照射することで、ウィッグを早くしっかりと止着することができ、更に自毛の各毛髪を生え際から同じ長さ、即ち束として装着具に強固に固定することができる光硬化接着剤を用いたウィッグの装着具及びその装着方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の本発明のウィッグの装着具は、ウィッグ(61)を人の頭部に止着する際に、光硬化接着剤を用いて頭髪に固定する光硬化接着剤を用いたウィッグの装着具であって、
ベース部(62)に取り付けられる、剛性を有するフィルム状の装着板(12)と、
前記装着板(12)に取り付けられた、自毛(H)を差し込む管状部材(14)と、
前記装着板(12)に形成された、複数本の自毛(H)の位置決めとして機能する数個のアンカー(15)と、から成り、
前記管状部材(14)に、前記アンカー(15)を基準にして所定の本数の自毛(H)を差し込み、自毛(H)の生え際付近まで該管状部材(14)をずらした状態で該管状部材(14)を潰し、引き出した自毛(H)と装着板(12)とアンカー(15)とを光硬化接着剤(GL)を塗布し、自毛(H)、装着板(12)とアンカー(15)にLED(発光ダイオード)の照射光を当て、自然に硬化するときより早く硬化させるように構成した、ことを特徴とする。
【0012】
第1の本発明のウィッグの装着方法は、ウィッグ(61)を人の頭部に止着する際に、光硬化接着剤を用いて頭髪に固定する光硬化接着剤を用いたウィッグの装着方法であって、
装着板(12)に取り付けられた管状部材(14)に、該装着板(12)に形成された数個のアンカー(15)を基準にして所定の本数の自毛(H)を差し込み、
前記管状部材(14)から自毛(H)を引き出し、自毛(H)の生え際近くにまで装着板(12)を配置し、
自毛(H)の生え際付近まで該管状部材(14)をずらし、自毛(H)を通した状態で前記管状部材(14)を潰して固定し、
前記装着板(12)とアンカー(15)と自毛(H)とを光硬化接着剤(GL)で接着し、
前記装着板(12)、自毛(H)とアンカー(15)にLED(発光ダイオード)の照射光を当て、自然に硬化するときより早く硬化させ、
前記装着板(12)をベース部(62)に固定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のウィッグの装着具、装着方法では、装着板(12)に数個のアンカー(15)が形成されているので、このアンカー(15)を基準にすると自毛(H)の本数のある程度の目安になり、作業が円滑になる。特に、自毛の各毛髪を生え際から同じ長さ、即ち束として装着具に強固に固定することができるため、装着具(11)を頭部に強固に固定することができる。
また、このアンカー(15)に光硬化接着剤を用いるとLED(発光ダイオード)の照射光を当て早く固定することができる。更に、装着板(12)に自毛(H)を固定する際に用いる光硬化接着剤と同じ種類の高分子樹脂を用いたときは、相溶性があり硬化後の強度が低下することがない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例1のチップタイプと称される装着具を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
図2】実施例1のチップタイプの装着具の作業手順を示す説明図であり、(a)は自毛を管状部材に差し込んだ状態の正面図、(b)は自毛を管状部材に通し生え際近くにまで移動させた状態の正面図、(c)は管状部材を潰した状態の側面図である。
図3】光硬化接着剤を塗布した状態を示し、(a)は自毛とアンカーに光硬化接着剤を塗布した状態、(b)は自毛とアンカーに加えて管状部材にまで光硬化接着剤を塗布した状態である。
図4】実施例1の装着具を用いた装着方法を示すフロー図である。
図5】本発明の装着具を取り付けるウィッグを、ウィッグベース側から見た状態を示す正面図である。
図6】実施例2の2枚板タイプの装着具を示し、(a)は正面図、(b)は側断面図、(c)は2枚の板材を閉じた状態の側断面図である。
図7】実施例2の装着具の変形例を示し、(a)は粘着面を有する正面図、(b)は粘着面に剥離紙を貼り付けた状態の正面図、(c)は粘着面に剥離紙を貼り付けた状態の側断面図である。
図8】実施例2の装着具の作業手順を示す説明図であり、(a)は自毛を通す前の状態、(b)は第2貫通穴に自毛を通した状態、(c)は第1貫通穴に自毛を通した状態、(d)は第1貫通穴に通した自毛と板材に光硬化接着剤を塗布して硬化した後の状態、(e)は第2貫通穴に通した自毛と板材に光硬化接着剤を塗布して硬化した後の状態、(f)は2枚の板材で自毛を挟んだ状態である。
図9】実施例2の装着具を用いた装着方法を示すフロー図である。
図10】実施例3の糸ありタイプと称される装着具を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
図11】実施例3の装着具の作業手順を示す説明図であり、(a)は自毛を差し込む前の状態、(b)は糸部材と装着長板に自毛を差し込んだ状態、(c)は糸部材と装着長板に差し込んだ自毛とに光硬化接着剤を塗布した状態、(d)は糸部材と装着長板に差し込んだ自毛に光硬化接着剤を硬化させた状態である。
図12】実施例3の装着具を用いた装着方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の光硬化接着剤を用いたウィッグの装着具は、自毛の各毛髪を生え際から同じ長さ、即ち束として装着具に強固に固定することができると共に、ウィッグを頭部に固定する際に光硬化接着剤を用いることで、ウィッグを止着することができる。
【実施例1】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照して説明する。
<実施例1のウィッグの装着具の構成>
図1は実施例1のチップタイプと称される装着具を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
実施例1のチップタイプの装着具11は、ベース部62に取り付けられる装着板12と、この装着板12に糸13で取り付けられた管状部材14とからなる部材である。この装着具11は図5に示すように、ベース部62に複数個取り付けられる。
【0022】
装着板12は1辺が10mm程度の四角形状の小片から成る部材である。材質は光硬化接着剤を接着できる素材であればプラスチックをはじめ種々の素材が使える。また、自毛Hを差し込む管状部材14が取り付けられるため、ある程度の剛性を有するものが好ましい。装着板12は小片であるため、指先で持ちやすく作業しやすい形状であれば図示例の四角形状、長方形状に限定されない。
【0023】
管状部材14は自毛Hを複数本まとめて差し込める程度の内径(2~3mm)を有するものである。また、図示するように、管状部材14は装着板12に糸13で取り付けている。この管状部材14内に自毛Hを通す際に、管状部材14の開口の向きを変えられるようにしている。自毛Hを容易に差し込むことができる。
【0024】
本発明の装着具11には、複数本の自毛Hの位置決めとして機能する数個の位置決用のアンカー15が形成されている。このアンカー15は、管状部材14の近傍、特に自毛Hを差し込む側に2か所形成されている。これは2個のアンカー15の間に、複数本の自毛Hを通す目印とするものである。なお、アンカー15の個数は2個に限定されず、後述するように3個でもよい。
【0025】
本発明のアンカー15は、自毛Hに固定する前に、装着板12に光硬化接着剤を用いて「山なり」のマークを形成したものである。この際に、装着板12に付着させた光硬化接着剤にLED(発光ダイオード)の照射光を当て、自然に硬化するときより早く硬化させる。なお、このアンカー15は目印として機能するものであれば良いので、光硬化接着剤に限定されず、一般的な接着剤(合成樹脂材)でも良い。更には図示していないが、装着板12に突起を設けたものでも良い。
【0026】
<実施例1のウィッグの装着具を用いた装着方法>
図2は実施例1のチップタイプの装着具の作業手順を示す説明図であり、(a)は自毛を管状部材に差し込んだ状態の正面図、(b)は自毛を管状部材に通し生え際近くにまで移動させた状態の正面図、(c)は管状部材を潰した状態の側面図である。図3は光硬化接着剤を塗布した状態を示す正面図であり、(a)は自毛とアンカーに光硬化接着剤を塗布した状態、(b)は自毛とアンカーに加えて管状部材にまで光硬化接着剤を塗布した状態である。図4は実施例1の装着具を用いた装着方法を示すフロー図である。
先ず、装着板12の管状部材14に、この装着板12に形成された数個のアンカー15を目印にして所定本数の自毛Hを差し込む。なお、図示例では自毛を直線状に示しているが、実際の作業では治具(図示していない。)を用いて作業する。この治具の先端を管状部材14に通し、その先端で複数本の自毛を束ね、そのまま管状部材14から引き抜いている。
【0027】
次に、管状部材14から自毛Hを更に引き出し、自毛Hの生え際近くにまで装着板12を移動させる。これは、装着具11を頭部に強固に止着させるためである。管状部材14に自毛Hを通した状態で潰した装着具11を固定したら装着板12と自毛Hとに光硬化接着剤GLを塗布する。この時、自毛Hは装着板12の2か所のアンカー15の間に位置しているので光硬化接着剤を容易に塗布することができる。また、塗布量も均一にすることができる。
【0028】
最後に、装着板12と自毛HにLED(発光ダイオード)の照射光を当てる。この照射により、自然に硬化するときより早くしっかり硬化させることができ、止着作業を迅速に終了させることができる。一人の頭部には10個程度の装着具11を止着する作業が必要でそれを短時間で終了させる。
【0029】
光硬化接着剤GLを塗布する状態は、図3(a)に示すように、自毛Hと共にアンカー15にまで光硬化接着剤GLを塗布することができる。例えば、塗布する形状は図示するように、細長い長方形状にすることができる。
【0030】
更に、図3(b)に示すように、自毛Hとアンカー15に加えて管状部材14にまで光硬化接着剤GLを塗布することができる。管状部材14にまで塗布する理由は、ウィッグ装着時にこの管状部材14が頭皮に触れて痛い場合があり、光硬化接着剤GLを塗布して軽減するためである。例えば、塗布する形状は図示するように、長方形状にすることができる。勿論、楕円形など種々の形状に塗布することも可能である。
【0031】
このアンカー15に光硬化接着剤を用いると、LED(発光ダイオード)の照射光を当て早くしっかり形成することができる。更に、装着板12に自毛Hを固定する際に用いる光硬化接着剤と同じ種類の高分子樹脂を用いたときは、相溶性があり硬化後の強度が低下することがない。
【0032】
本発明に用いる光硬化接着剤は、紫外線硬化型、可視光硬化型のいずれでもよい。
例えば、アクリル系接着剤又はエポキシ系接着剤がある。光硬化接着剤は、各々の光照射装置により発生する波長領域に高感度に反応し、重合硬化する室温硬化型の接着剤を用いる。また、様々な接着構造に対応するため、硬化機構が紫外線と嫌気、または可視光と紫外線による複合硬化する接着剤を用いることも可能である。
【0033】
<ウィッグの一般的な構成>
図5は本発明の装着具を取り付けるウィッグを、ベース部側から見た状態を示す正面図である。
ウィッグ61は、人の頭頂部と同じ略半球形状をした、ベース部62の表面側に、人毛又は人工毛を植え付けたものである。このベース部62の裏面側に数個の本発明の装着具11が取り付けられる。この装着具11は、上述したように自毛に止着されているので、ウィッグ61が頭部に固定されることになる。
【実施例2】
【0034】
<実施例2のウィッグの装着具の構成>
図6は実施例2の2枚板タイプの装着具を示し、(a)は正面図、(b)は側断面図、(c)は2枚の板材を閉じた状態の側断面図である。
実施例2の2枚板タイプの装着具21は、ベース部62に取り付けられる剛性を有するフィルム状の第1板材22と、第2板材23とからなり、両方をヒンジ部24で連結した部材である。この装着具21は図5に示したものと同様に、ベース部62に複数個取り付けられる。なお、第1、第2と称しているが順番、等級を示すものではなく、同様な形態の部材を区別するために用いている。
【0035】
第1板材22はベース部62に取り付けられる。第2板材23には第1貫通穴25と第2貫通穴26が開けられている。第1板材22と第2板材23とはヒンジ部24で開閉自在になる。実施例2の装着具21も、第1板材22、第2板材23は1辺が10mm程度の長方形状又は正方形状の小片から成る部材である。材質は実施例1と同様に光硬化接着剤を接着できる素材であればプラスチックをはじめ種々の素材のものが使える。
【0036】
第2板材23に開けられた第1貫通穴25は自毛Hを差し込むための穴である。図1に示した実施例1の管状部材14と比較して面積が広くなっており、自毛Hを束として捉えることができ、装着後は装着具21を強固に止着することができる。
【0037】
第2貫通穴26は、第2板材23のヒンジ部24の近傍に開けられている。この第2貫通穴26も自毛Hを差し込むためのものである。1個の装着具21に、2か所の自毛Hを差し込むことができ、1か所の止着の構成に比べて強固に止着することができる。なお、第2板材23の第2貫通穴26を、ヒンジ部24の近くに形成した理由は、第1板材22と第2板材23の両方に貫通穴を開けると板材同士を重ね合わせることが困難になるからである。そこで、1枚の板材(第2板材23)に2か所の貫通穴を開けた。
【0038】
実施例2の装着具21にも、複数本の自毛Hの位置決めとして機能する数個のアンカー27が形成されている。アンカー27は、ベース部62の裏面側に装着具21を取り付ける前に形成する。このアンカー27は、第1板材22に形成されている。第2板材23には小片の2か所に貫通穴が開けられているため、アンカー27を形成する余地がないからである。実施例2の装着具21では、自毛Hを差し込む側に3か所形成されている。これは3個のアンカー27の間に、複数本の自毛Hを通す目印とするためである。アンカー27の形成方法は、実施例1と同じである。
【0039】
<実施例2のウィッグの装着具の変形例>
図7は実施例2の装着具の変形例を示し、(a)は粘着面を有する正面図、(b)は粘着面に剥離紙を貼り付けた状態の正面図、(c)は粘着面に剥離紙を貼り付けた状態の側断面図である。
実施例2の装着具21は、2か所の貫通穴25,26に自毛Hを止着していれば、装着具として機能する。2枚の板材を接着剤で強固に貼り合わせる必要はない。実施例2の装着具の変形例では、第1板材22に予め粘着剤28が塗布されており、自毛Hを通す作業中にこれに自毛Hが貼り付かないように、剥離紙29を貼り付けておく。各貫通穴に自毛Hを通し、止着したあとで、剥離紙29を剥がして自毛Hを粘着面に仮止めもできる。その後各板材に光硬化接着剤を塗布して止着が完了する。
【0040】
<実施例2のウィッグの装着具を用いた装着方法>
図8は実施例2の装着具の作業手順を示す説明図であり、(a)は自毛を通す前の状態、(b)は第2貫通穴に自毛を通した状態、(c)は第1貫通穴に自毛を通した状態、(d)は第1貫通穴に通した自毛と板材に光硬化接着剤を塗布しLED(発光ダイオード)の照射光を当て硬化した後の状態、(e)は第2貫通穴に通した自毛と板材に光硬化接着剤を塗布しLED(発光ダイオード)の照射光を当て硬化した後の状態、(f)は2枚の板材で自毛を挟んだ状態である。図9は実施例2の装着具を用いた装着方法を示すフロー図である。
実施例2の装着具21を用いた装着方法について説明する。先ず、図8(a)に示すように、二つ折りになるようにヒンジ部24で連結された2枚の第1板材22に、引き出す複数本の自毛Hの位置決めとして機能するアンカー27を数個形成する。図示例では第1板材22に3か所アンカー27を形成した。図8(b)に示すように、これらの数個のアンカー27を目印にして所定本数の自毛Hを第2貫通穴26に差し込む。実施例2においても、図示例では束になった自毛を直線状に示しているが、実際の作業では治具(図示していない。)を用いて作業する。この治具の先端を第2貫通穴26に通し、その先端で複数本の自毛を束ね、そのまま第2貫通穴26から引き抜いている。
【0041】
次に、図8(c)に示すように第1貫通穴25から自毛Hを更に引き出し、自毛Hの生え際近くにまで装着具21を配置する。これは、装着具21を頭部に強固に止め着させるためである。装着具21を固定したら、図8(d)に示すように、第1貫通穴25に通した自毛Hと第2板材23に光硬化接着剤を塗布する。この第1貫通穴25の自毛Hと光硬化接着剤にLED(発光ダイオード)の照射光を当てる。
【0042】
図8(e)に示すように、第1貫通穴25に通した自毛Hと第1板材22に光硬化接着剤を塗布する。第1貫通穴25の自毛Hと第2貫通穴26の自毛Hと光硬化接着剤にLED(発光ダイオード)の照射光を当てる。この照射により、自然に硬化するときより早く硬化させることができ、止着作業を迅速に終了させることができる。一人の頭部には10個程度の装着具21が止着するので短時間で作業が終了する。次の作業を効率よく進めることができる。特に、自毛Hは第1貫通穴25と第2貫通穴26の2か所のアンカー27の間に位置しているので光硬化接着剤GLを容易に塗布することができる。また、塗布量も均一にすることができる。
【0043】
図8(f)に示すように、自毛Hを接着剤で固定した第1板材22と、自毛Hを接着剤で固定した第2板材23とを、自毛Hが固定された側同士を粘着剤28で必ず貼り合わせる。
【実施例3】
【0044】
<実施例3のウィッグの装着具の構成>
図10は実施例3の糸ありタイプと称される装着具を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
実施例3の1枚板タイプの装着具31は、ベース部62に取り付けられる剛性を有するフィルム状の装着長板32と、これに取り付けられた、自毛Hを装着長板32とで挟む糸部材33と、からなる部材である。この装着長板32は図5に示したものと同様ように、ベース部62に複数個取り付けられる。
【0045】
装着長板32はベース部62に取り付けられる。装着長板32に粘着剤が塗布されており、装着長板32の剥離紙を剥がして粘着剤が塗られている面をベース部62に貼り付けて取り付ける。
【0046】
実施例3の装着具31も、装着長板32は1辺が10mm程度の長方形状の小片から成る部材である。材質は実施例1、2と同様に光硬化接着剤を接着できる素材であればプラスチックをはじめ種々の素材ものが使える。
【0047】
糸部材33は自毛Hを差し込むための部材である。装着長板32を撓ませて糸部材33との間に隙間を開けて自毛Hを差し込む。自毛Hを束として多数捉えることも、逆に少ない本数でも止着することができる。
【0048】
実施例3の装着具31にも、複数本の自毛Hの位置決めとして機能する数個のアンカー34が形成されている。このアンカー34は、装着長板32に形成されている。実施例3の装着具31では、自毛Hを差し込む側に3か所形成されている。これは3個のアンカー34の間に、複数本の自毛Hを通す目印とするためである。アンカー34の形成方法は、実施例1と同じである。
【0049】
<実施例3のウィッグの装着具を用いた装着方法>
図11は実施例3の装着具の作業手順を示す説明図であり、(a)は自毛を通す前の状態、(b)は糸部材と装着長板に自毛を通した状態、(c)は糸部材と装着長板に自毛とに光硬化接着剤を塗布した状態、(d)は糸部材と装着長板に通した自毛に光硬化接着剤を塗布して硬化させた状態である。図12は実施例3の装着具を用いた装着方法を示すフロー図である。
実施例3の装着具31を用いた装着方法について説明する。先ず、図11(a)に示すように、装着長板32に取り付けられた糸部材33の長手方向に平行に、引き出す複数本の自毛Hの位置決めとして機能するアンカー34を数個形成する。図示例では3か所にアンカー34を形成した。図11(b)に示すように、これらの数個のアンカー34を目印にして所定本数の自毛Hを糸部材33と装着長板32に通す。実施例3においても、図示例では束になった自毛Hを直線状に示しているが、実際の作業では治具(図示していない。)を用いて作業する。この治具の先端を糸部材33に通し、その先端で複数本の自毛Hを束ね、そのまま糸部材33から引き抜いている。糸部材33から自毛Hを更に引き出し、自毛Hの生え際近くにまで装着具31を配置する。これは、装着具31を頭部に強固に止着させるためである。
【0050】
次に、図11(c)に示すように装着具31を配置したら、自毛Hとアンカー34と糸部材33に光硬化接着剤を塗布する。
最後に、自毛Hとアンカー34と糸部材33にLED(発光ダイオード)の照射光を当てる。この照射により、自然に硬化するときより早くしっかり硬化させることができ、止着作業を迅速に終了させることができる。一人の頭部には10個程度の装着具31がベース部62に止着するので短時間で作業が終了する。次の作業を効率よく進めることができる。
【0051】
なお、本発明は、ウィッグを頭部に固定する際に光硬化接着剤にLED光を照射することで、ウィッグを早くしっかり止着することができ、更に自毛の各毛髪を生え際から同じ長さ、即ち束として装着具に強固に固定することができれば、上述した発明の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の光硬化接着剤を用いたウィッグの装着方法は、人の頭部のウィッグを止着する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
11 装着具(実施例1)
12 装着板
13 糸
14 管状部材
15 アンカー
21 装着具(実施例2)
22 第1板材
23 第2板材
24 ヒンジ部
25 第1貫通穴
26 第2貫通穴
27 アンカー
28 粘着剤
29 剥離紙
31 装着具(実施例3)
32 装着長板
33 糸部材
34 アンカー
61 ウィッグ
62 ベース部
H 自毛
GL 光硬化接着剤

【要約】
【課題】ウィッグを頭部に固定する際に光硬化接着剤にLED光を照射することで、ウィッグを早くしっかりと止着することができ、更に自毛の各毛髪を生え際から同じ長さ、即ち束として装着具に強固に固定する。
【解決手段】ベース部62に取り付けられる、剛性を有するフィルム状の装着板12と、装着板12に取り付けられた、自毛Hを差し込む管状部材14と、装着板12に形成された、複数本の自毛Hの位置決めとして機能する数個のアンカー15と、から成り、管状部材14に、アンカー15を基準にして所定の本数の自毛Hを差し込み、生え際付近まで移動させ、管状部材14を潰し、自毛Hと装着板12とを光硬化接着剤GLを塗布し、LED(発光ダイオード)の照射光を当て、自然に硬化するときより早くしっかり硬化させる。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12