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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】光コネクタの製造工具
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/36 20060101AFI20240319BHJP
   G02B 6/40 20060101ALN20240319BHJP
【FI】
G02B6/36
G02B6/40
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023514324
(86)(22)【出願日】2021-10-18
(86)【国際出願番号】 JP2021038445
(87)【国際公開番号】W WO2022219834
(87)【国際公開日】2022-10-20
【審査請求日】2023-03-06
(31)【優先権主張番号】P 2021069662
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 真幸
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特表平06-501562(JP,A)
【文献】中国実用新案第205703816(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2001/0006001(US,A1)
【文献】特開2006-227575(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0210668(US,A1)
【文献】特開2009-115864(JP,A)
【文献】特表2009-512897(JP,A)
【文献】特開2001-166180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24
G02B 6/255
G02B 6/36 - 6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部が形成され、載置面を有する基部を備えた工具本体と、
操作部および当接部を有するハンドルと、
前記ハンドルを前記工具本体に対して回動可能に連結する連結軸と、を備え、
前記ハンドルは、待機位置と、前記当接部の位置が前記待機位置における前記当接部の位置よりも前記凹部の内側に位置する押し込み位置と、の間で回動可能であり、
前記ハンドルが前記待機位置と前記押し込み位置との間で移動する際、前記操作部が移動する方向は前記基部に接近するZ方向であり、前記当接部が移動する方向は前記Z方向と直交する、光コネクタの製造工具。
【請求項2】
前記ハンドルが前記待機位置と前記押し込み位置との間に位置するときに、前記ハンドルが前記待機位置に向けて移動することを規制するラチェット機構と、
前記ハンドルを前記待機位置に向けて付勢するハンドル付勢部材と、をさらに備え、
前記ラチェット機構には、
前記ハンドルに固定された第1係合部と、
前記工具本体に設けられたラチェット軸に対して回動可能な第2係合部と、
前記第2係合部を付勢するラチェット付勢部材と、が含まれる、請求項1に記載の光コネクタの製造工具。
【請求項3】
前記工具本体は、
前記凹部が形成されたコネクタセット部と、
前記ハンドルが前記待機位置から前記押し込み位置に移動する際に、前記操作部が接近する前記基部と、
前記コネクタセット部と前記基部との間に位置して前記連結軸を支持する一対の支持部と、を有する、請求項1または2に記載の光コネクタの製造工具。
【請求項4】
前記凹部の内面には、前記当接部に向けて突出した突部が形成されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の光コネクタの製造工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタの製造工具に関する。
本願は、2021年4月16日に日本に出願された特願2021-069662号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光ファイバが挿通されるフェルールと、フェルールを付勢するバネと、バネを支持するスプリングプッシュと、フェルールおよびスプリングプッシュを収容するハウジングと、を備えた光コネクタが開示されている。スプリングプッシュは、ハウジングに対して内側から係止する2本の係止爪を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2020-170135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような光コネクタを製造する際には、係止爪をハウジングの内側に傾倒させながら、バネの力に抗してスプリングプッシュをハウジング内に押し込む工程が行われる。ここで、光コネクタの製造時には、スプリングプッシュがハウジングに対して適切な位置まで押し込まれない場合がある。特に、バネによるフェルールの付勢力が大きいと、この付勢力の大きさに起因して、ハウジングに対するスプリングプッシュの押し込みが不足する場合がある。スプリングプッシュがハウジングに対して適切に押し込まれない場合、作業のやり直し等が生じ、光コネクタの製造効率が低下する。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされ、光コネクタの製造効率を向上させることが可能な光コネクタの製造工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る光コネクタの製造工具は、凹部が形成された工具本体と、操作部および当接部を有するハンドルと、前記ハンドルを前記工具本体に対して回動可能に連結する連結軸と、を備え、前記ハンドルは、待機位置と、前記当接部の位置が前記待機位置における前記当接部の位置よりも前記凹部の内側に位置する押し込み位置と、の間で回動可能であり、前記ハンドルが前記待機位置と前記押し込み位置との間で移動する際、前記操作部が移動する方向と前記当接部が移動する方向とが異なる。
【0007】
上記態様によれば、光コネクタのハウジング等を凹部の内側にセットし、操作部を操作することで、当接部を凹部の内側に突出させることができる。そして、当接部によってハウジングを押し込むことで、スプリングプッシュをハウジングに係止させることができる。このように、製造工具を用いることで、スプリングプッシュを容易にハウジング内に押し込むことが可能となり、製造効率を向上させることができる。さらに、操作部が移動する方向と当接部が移動する方向とが異なっているため、梃子の原理を用いて、操作力を増幅させて押し込み力を得る構造においても、製造工具を小型にすることができる。
【0008】
ここで、上記態様に係る光コネクタの製造工具は、前記ハンドルが前記待機位置と前記押し込み位置との間に位置するときに、前記ハンドルが前記待機位置に向けて移動することを規制するラチェット機構と、前記ハンドルを前記待機位置に向けて付勢するハンドル付勢部材と、をさらに備え、前記ラチェット機構には、前記ハンドルに固定された第1係合部と、前記工具本体に設けられたラチェット軸に対して回動可能な第2係合部と、前記第2係合部を付勢するラチェット付勢部材と、が含まれてもよい。
【0009】
また、前記工具本体は、前記凹部が形成されたコネクタセット部と、前記ハンドルが前記待機位置から前記押し込み位置に移動する際に、前記操作部が接近する基部と、前記コネクタセット部と前記基部との間に位置して前記連結軸を支持する一対の支持部と、を有してもよい。
【0010】
また、前記凹部の内面には、前記当接部に向けて突出した突部が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の上記態様によれば、光コネクタの製造効率を向上させることが可能な光コネクタの製造工具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る光コネクタの製造工具の斜視図である。
図2図1の製造工具の右側面図である。
図3図1の製造工具の上面図である。
図4図1の製造工具の背面図である。
図5図1の製造工具の左側面図である。
図6図1の製造工具の正面図である。
図7図1の製造工具の下面図である。
図8図1の製造工具の左側面図であって、工具本体の表示を省略した図である。
図9図1の製造工具によって製造される光コネクタの一例を示す斜視図である。
図10図9の光コネクタのX-X断面矢視図である。
図11図9の光コネクタの分解斜視図である。
図12図1の製造工具によって光コネクタを製造する様子を示す図である。
図13図12に対応する上面図である。
図14図12に対応する断面図である。
図15図13から、ハンドルを操作して押し込み位置に移動させた後の状態を示す上面図である。
図16図15に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態の光コネクタの製造工具について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、光コネクタの製造工具(以下、単に製造工具100という)は、工具本体110と、ハンドル120と、連結軸(連結軸部材)160と、を備える。連結軸160は、ハンドル120を工具本体110に対して回動可能に連結している。ハンドル120は、使用者によって操作される操作部121を有している。操作部121に力が加えられると、ハンドル120は工具本体110に対して連結軸160回りに回動する。
【0014】
(方向定義)
本実施形態では、XYZ直交座標系を設定して各部の位置関係を説明する。連結軸160の中心軸線Oが延びる方向を、左右方向Yという。左右方向Yに直交する一方向を上下方向Zという。上下方向Zは、ハンドル120が連結軸160回りに回動する際に、操作部121が移動する方向でもある。左右方向Yおよび上下方向Zの双方に直交する方向を軸方向Xという。軸方向Xにおける一方側を+X側、他方側を-X側という。上下方向Zにおける一方側を+Z側あるいは上方といい、他方側を-Z側あるいは下方という。左右方向Yから見ることを側面視という。側面視において、中心軸線Oに交差する方向を径方向という。
【0015】
ハンドル120は、図1等に示す待機位置と、待機位置よりも操作部121が下方に位置する押し込み位置(不図示)と、の間で回動する。以下の説明では、特段の言及が無い限り、ハンドル120が待機位置にある場合の各部の位置関係を説明する。ハンドル120に外力が加わっていない状態では、ハンドル120が待機位置に位置する。
【0016】
図1図7に示すように、工具本体110は、コネクタセット部111と、一対の支持部112と、基部113と、を有する。コネクタセット部111には、凹部114および溝部115が形成されている。凹部114および溝部115は、コネクタセット部111の上面から下方に向けて窪んでいる。溝部115は、コネクタセット部111の-X側の端部に位置し、-X側に向けて開口している。凹部114は、溝部115よりも+X側に位置している。溝部115の左右方向Yにおける寸法は、凹部114の左右方向Yにおける寸法よりも小さい。
【0017】
図3に示すように、凹部114の内面には、+X側に向けて突出した一対の突部114aが形成されている。一対の突部114aは、左右方向Yにおいて溝部115を間に挟むように配置されている。また、一対の突部114aは、ハンドル120における一対の当接部123(後述)と軸方向Xにおいて対向している。
【0018】
図2および図3に示すように、一対の支持部112は、コネクタセット部111よりも+X側に位置している。一対の支持部112は左右方向Yにおいて間隔を空けて配置されており、連結軸160の両端部を支持している。より詳しくは、各支持部112には軸受け孔112aが形成されており、これらの軸受け孔112aに連結軸160の両端部が挿入されている。支持部112はコネクタセット部111および基部113から上方に向けて突出している。軸受け孔112aおよび連結軸160は、凹部114よりも上方に位置する。
【0019】
基部113は、支持部112から+X側に突出している。図2に示すように、支持部112の下面および基部113の下面は、同一平面内に位置している。支持部112の下面および基部113の下面は、製造工具100が使用される際に、作業台等に載置される載置面100aとして用いられる。コネクタセット部111の下面は、載置面100aの下面よりも上方に位置している。したがって、製造工具100が作業台等に載置されると、コネクタセット部111と作業台等との間には上下方向Zの隙間が形成される。
【0020】
図5に示すように、工具本体110の左側面には、プレート140が取り付けられている。プレート140は、工具本体110の左側面に形成された開口(不図示)を覆っており、工具本体110に固定されている。プレート140は、バネかけ部141と、ラチェット軸142と、を保持している。バネかけ部141およびラチェット軸142は、プレート140から工具本体110の内部に向けて突出しており、左右方向Yに沿って延びている。
【0021】
図8に示すように、ハンドル120は、操作部121と、アーム部122と、一対の当接部123(図3も参照)と、リブ124と、を有する。また、ハンドル120には、連結軸160が挿通される挿通孔120aが形成されている。挿通孔120aはハンドル120を左右方向Yにおいて貫通している。連結軸160が挿通孔120aに挿通され、かつ連結軸160の両端部が一対の支持部112によって支持されていることで、ハンドル120が連結軸160回りに回動可能となっている。
【0022】
図2に示すように、リブ124は、操作部121から下方に突出している。図4に示すように、リブ124は、左右方向Yにおける操作部121の中央部に位置している。
図8に示すように、操作部121およびアーム部122は、左右方向Yから見て、略L字形状をなしている。操作部121とアーム部122とが接続されている部分(L字形状の角部)に、挿通孔120aが形成されている。アーム部122の下端部から、-X側に向けて、一対の当接部123が突出している。操作部121の径方向の長さは、アーム部122の径方向の長さよりも長い。このため、梃子の原理により、操作部121が下方に押される力を増幅して、当接部123が-X側に押し出される力に変換することができる。
【0023】
図8に示すように、製造工具100はラチェット機構130を備えている。ラチェット機構130には、第1ラチェット部材131と、第2ラチェット部材132と、ラチェット付勢部材133と、が含まれる。第1ラチェット部材131はハンドル120に固定されている。第2ラチェット部材132はラチェット軸142が挿通される孔を有しており、ラチェット軸142回りに回動可能となっている。第1ラチェット部材131は、固定部131aと、第1係合部131bと、を有する。固定部131aはネジによってアーム部122に固定されている。ただし、固定部131aをアーム部122に固定する方法は適宜変更してもよい。また、第1ラチェット部材131はハンドル120と一体に形成されていてもよい。
【0024】
第1係合部131bは、下方に突出するとともに軸方向Xに沿って並べられた複数の突起(ギア)を有している。第2ラチェット部材132は、ラチェット付勢部材133が係止される係止部132aと、第1係合部131bのギアと係合する第2係合部132bと、を有する。ラチェット付勢部材133の両端部は、係止部132aおよびバネかけ部141にそれぞれ係止されている。ラチェット付勢部材133は引張コイルバネであり、係止部132aを介して第2ラチェット部材132に所定の付勢力を与える。この付勢力は、第2ラチェット部材132をラチェット軸142回りに回動させようとするモーメントとして作用する。
【0025】
図8に示すように、製造工具100はハンドル付勢部材150を備えている。ハンドル付勢部材150の両端部は、工具本体110に設けられたバネかけ部116およびハンドル120に設けられたバネかけ部122aに、それぞれ係止されている。ハンドル付勢部材150は引張コイルバネであり、バネかけ部122aを介してハンドル120に所定の付勢力を与える。この付勢力は、ハンドル120の操作部121を連結軸160回りに上方に向けて(待機位置に向けて)回動させようとするモーメントとして作用する。
【0026】
次に、製造工具100によって組み立てられる対象となる光コネクタの一例について説明する。なお、以下に説明する光コネクタはあくまで一例であり、本実施形態の製造工具100は、他の構造を有する光コネクタを組み立てることが可能である。
【0027】
図9図11に示すように、光コネクタ1Aは、光ケーブル10と、フェルール20と、ハウジング30と、カップリング40と、キャップCと、2本のガイドピン50と、ピンクランプ60と、スプリング70と、スプリングプッシュ80と、圧着リング90と、を備える。本実施形態の光コネクタ1Aは、いわゆるMPO(Multi-fiber Push On)タ
イプである。
【0028】
光ケーブル10は、複数本の光ファイバ11と、これら複数本の光ファイバ11を被覆する外皮12と、を有する。複数本の光ファイバ11の長手方向の端部は、フェルール20内に挿通させるために、外皮12の端部から外側に引き出されている。
【0029】
フェルール20には、2つのガイド孔21、複数のファイバ孔22及び2つの規制突起23が形成されている。ガイド孔21及びファイバ孔22はフェルール20の接続端面24に開口している。各ガイド孔21にはガイドピン50が挿通され、各ファイバ孔22には光ケーブル10の光ファイバ11の端部が挿通される。フェルール20が有するファイバ孔22の数は適宜変更可能であり、例えば1つだけでもよい。すなわち、光コネクタ1Aが備える光ファイバ11の数は、1本でもよいし、複数本でもよい。
【0030】
光ファイバ11、ガイド孔21、ファイバ孔22の長手方向は、軸方向Xと一致している。2つのガイド孔21あるいは2つのガイドピン50は、左右方向Yに並べられている。軸方向Xにおける+X側は接続端面24側あるいは光コネクタ1Aの先端側であり、その反対側(-X側)は光コネクタ1Aの基端側である。以下の光コネクタ1Aに関する説明では、+X側を前方といい、-X側を後方という場合がある。
【0031】
フェルール20のガイド孔21及びファイバ孔22は、それぞれフェルール20を軸方向Xに貫通している。また、フェルール20の規制突起23は、左右方向Yにおけるフェルール20の両端から外側に突出している。ハウジング30は、軸方向Xに延びる筒状に形成されている。ハウジング30は前方及び後方に向けて開口している。ハウジング30には、-X側からフェルール20が挿入される。
【0032】
図10に示すように、ハウジング30には、2つの係止孔32が形成されている。2つの係止孔32は、ハウジング30の両側面(左右方向Yを向く面)に形成されている。カップリング40は、軸方向Xに延びる筒状に形成されており、ハウジング30を外側から囲っている。詳細な説明は省略するが、カップリング40は、光コネクタ1Aを接続対象物(アダプタなど)から引き抜く際に、使用者によって把持されて後方に引かれる部材である。
【0033】
図10に示すように、軸方向Xにおいてハウジング30とカップリング40との間には、2つの第2スプリング35が設けられている。2つの第2スプリング35は、左右方向Yにおけるハウジング30の両側に配置されている。第2スプリング35は、カップリング40を前方に向けて付勢し、ハウジング30を後方に向けて付勢する。第2スプリング35は、ハウジング30に対して後方に移動したカップリング40を、前方に復元変位させる役割を有する。
【0034】
ピンクランプ60は、フェルール20の後方に配置され、フェルール20から後方に突出するガイドピン50の後端部を保持する。ピンクランプ60は、クランプ本体61と、スプリング保持部62と、を有する。クランプ本体61は、2本のガイドピン50の後端部をそれぞれ保持する2つのピン保持部63を含む。スプリング保持部62は、クランプ本体61から後方に突出している。スプリング保持部62は、ピンクランプ60の後方に配されるスプリング70の前端部を保持する。ピンクランプ60には、軸方向Xに貫通する挿通孔64が形成されている。挿通孔64には、フェルール20から後方に延出する光ファイバ11の延出部13が挿通される。
【0035】
キャップCは、フェルール20の接続端面24に開口するファイバ孔22を前方から覆うことで、当該接続端面24に露出する光ファイバ11の端面に汚れなどが付着したり、傷が付いたりすることを抑制する。キャップCは、2つの嵌合孔CHを有する。2つの嵌合孔CHには、フェルール20の接続端面24から前方に突出するガイドピン50の前端部が嵌め入れられる。
【0036】
スプリング70は、フェルール20やピンクランプ60の後方に配され、軸方向Xに弾性変形可能となっている。具体的に、スプリング70は、軸方向Xに弾性的に伸縮する筒状のコイルスプリングである。スプリング70の内側には、ピンクランプ60の後方において光ファイバ11の延出部13が挿通される。スプリング70は、フェルール20やピンクランプ60と共にハウジング30の内部に収容される。
【0037】
スプリングプッシュ80は、軸方向Xにおいてピンクランプ60との間にスプリング70を挟む。スプリングプッシュ80は、第1部材81と、第2部材82と、有し、光ファイバ11を挿通可能である。なお、第1部材81と第2部材82とが一体に形成されていてもよい。
第1部材81は、スプリング70の後方に配され、スプリング70の後端部に接するように設けられる。図示しないが、第1部材81は、スプリング70の後端部に配置された状態で、フェルール20やピンクランプ60及びスプリング70と共にハウジング30の内部に収容可能である。図11に示すように、第1部材81は、本体部811と、スプリング保持部812と、位置決め突起813と、を有する。
【0038】
本体部811は、スプリング70に対応する筒状に形成されている。本体部811の内側には、スプリング70の後方において光ファイバ11の延出部13が挿通される。軸方向Xから見た本体部811の大きさは、筒状のスプリング70の外径の大きさに対応している。これにより、第1部材81がスプリング70の後方に配されることで、本体部811はスプリング70の後端を覆うことができる。
【0039】
第2部材82は、第1部材81を後方(基端側)から支持する。また、第2部材82は、ハウジング30に係止される。第2部材82は、筒部821と、2つの係止片822と、を有する。2つの係止片822は、それぞれ筒部821から前方に延びている。具体的に、2つの係止片822は、筒部821のうち張出部825の左右方向Yの両端部から前方に延びている。各係止片822の前端には係止突起827が形成されている。各係止突起827は、係止片822から左右方向Yにおける第2部材82の外側に突出している。
【0040】
図10に示すように、各係止突起827は、ハウジング30の係止孔32に係止される。具体的には、軸方向Xにおいて第2部材82の筒部821がフェルール20との間にピンクランプ60、スプリング70及び第1部材81を挟み、かつ、第2部材82の係止片822が後方からハウジング30の内部に挿入された状態で、第2部材82の係止突起827がハウジング30の係止孔32に係止される。この状態では、スプリング70が弾性的に圧縮変形(弾性変形)し、このスプリング70の弾性力によってフェルール20が前方に付勢される。スプリング70が生じさせる弾性力(付勢力)は、例えば2kgf程度である。付勢力が大きいほど、光コネクタ1Aを製造する際に、スプリング70を圧縮させながらハウジング30内にスプリングプッシュ80を押し込む作業の難易度が上がる。
【0041】
圧着リング90は、筒状に形成されている。圧着リング90には、軸方向Xにおける圧着リング90の全長にわたって延びるスリット91が形成されている。
【0042】
次に、本実施形態の光コネクタ1Aを製造する製造方法の一例について説明する。
光コネクタ1Aを製造する際には、はじめに第一工程を実施する。第一工程では、光ファイバ11の端部から順に、フェルール20、2本のガイドピン50を保持したピンクランプ60、スプリング70及び第1部材81を配置する。
【0043】
第一工程では、光ケーブル10の外皮12から引き出された光ファイバ11の端部を、第1部材81、スプリング70及びピンクランプ60に挿通させた上で、フェルール20のファイバ孔22に挿入する。次いで、フェルール20の後方にピンクランプ60を接触させ、ピンクランプ60に保持された2本のガイドピン50をそれぞれフェルール20の後方からガイド孔21に挿入し、各ガイドピン50の前端部をフェルール20の接続端面24から突出させる。また、スプリング70の両端部をピンクランプ60及び第1部材81のスプリング保持部812に保持させる。さらに、各ガイドピン50の前端部をキャップCの嵌合孔CHに嵌め入れることで、キャップCがフェルール20の接続端面24に開口するファイバ孔22を覆う。これにより、第一工程が完了する。
【0044】
第一工程後に、第二工程を行う。第二工程では、フェルール20の後方に延びる光ファイバ11の延出部13を、第1部材81の後方において第2部材82の筒部821に挿通させる。本実施形態では、光ファイバ11の延出部13を筒部821のスリット823に通すことで、当該延出部13が筒部821の内側に挿通される。
その後、第2部材82を前方に移動させて第2部材82により第1部材81を後方から支持する。また、第1部材81の位置決め突起813を第2部材82のスリット823に挿入することで、第1部材81と第2部材82とを相対的に位置決めする。
【0045】
また、第二工程では、光ファイバ11の延出部13を第2部材82の後方において圧着リング90に挿通させる。具体的には、第2部材82と同様に、光ファイバ11の延出部13を圧着リング90のスリット91に通すことで、当該延出部13が圧着リング90の内側に挿通される。
【0046】
第二工程の後に、第三工程を実施する。第三工程では、ハウジング30の後方(-X側)から内部にフェルール20、ピンクランプ60、スプリング70及び第1部材81を収容すると共に、第2部材82をハウジング30に係止させる。これにより、スプリング70が弾性変形し、フェルール20がスプリング70の弾性力によって前方に付勢された状態となる。ここで本実施形態では、第三工程において製造工具100を用いる。より具体的には、図12図14に示すように、製造工具100の凹部114にハウジング30等をセットする。このとき、スプリングプッシュ80の筒部821および光ファイバ11は、溝部115の内側に載置される。凹部114の内側で、フェルール20の先端およびキャップCは一対の当接部123同士の間に載置される。一対の当接部123同士の間に載置されるフェルール20の先端およびキャップCは当接部123に接触していなくてもよい。第三工程は、製造工具100の載置面100aを、作業台等に載置した状態で行うことができる。さらに、製造工具100を作業台等に固定した状態で第三工程を行ってもよい。
【0047】
図13に示すように、第三工程を行う前の状態においては、スプリングプッシュ80の張出部825がハウジング30から-X側に突出している。この状態では、図14に示すように、係止突起827が係止孔32に係止されていない。
次に、操作部121を押下することで、ハンドル120を連結軸160回りに回動させる。これによりハンドル120が、待機位置から、当接部123が凹部114の内側に突出した押し込み位置へと移動する。より具体的には、図15に示すように当接部123が-X側に移動し、ハウジング30を押し込む。このとき、スプリングプッシュ80の張出部825は一対の突部114aによって支持されるため、製造工具100に対するスプリングプッシュ80の位置は変化しない。当接部123によって押し込まれたハウジング30が、スプリングプッシュ80に対して-X側に移動すると、図16に示すように、スプリングプッシュ80の係止突起827がハウジング30の係止孔32に係止される。
【0048】
次に、ハウジング30等を製造工具100から取り外し、固定工程を行う。固定工程では、第2部材82の筒部821を光ケーブル10の外皮12に挿入し、これら筒部821及び外皮12を、圧着リング90によって、外側から圧着して固定する。以上により、光コネクタ1Aの製造が完了する。
なお、上記した光コネクタ1Aの製造方法において、固定工程は、例えば第二工程と第三工程との間に実施されてもよい。この場合、第三工程において、圧着リング90および外皮12が溝部115の内側にセットされてもよい。
【0049】
次に、第三工程を行う際の、ラチェット機構130の作用について説明する。
ハンドル120が待機位置から押し込み位置まで移動する際に、図8に示す第1係合部131bのギアが、第2係合部132bを-X側に向けて乗り越える。ハンドル120が押し込み位置に到達する前に、例えば使用者が操作部121から手を離した場合には、ハンドル付勢部材150が生じさせる付勢力がハンドル120を待機位置に移動させるように作用する。しかしながら、第2係合部132bが第1係合部131bに係合することで、待機位置に向けたハンドル120の回動が規制(ロック)される。
【0050】
ハンドル120が押し込み位置に到達すると、第1係合部131bのギアが第2係合部132bを-X側に乗り越えるため、上記のロックが解除される。したがって、使用者が操作部121から手を離すと、ハンドル付勢部材150の付勢力によってハンドル120が待機位置に向けて復元変位する。この構成によれば、第三工程が完了する前に使用者がハンドル120の操作を停止した場合、ラチェット機構130が作動してハンドル120が待機位置に復元変位しなくなる。したがって使用者は、第三工程が完了していないこと、すなわちスプリングプッシュ80とハウジング30との係止が完了していないことを容易に認識できる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の光コネクタの製造工具100は、凹部114が形成された工具本体110と、操作部121および当接部123を有するハンドル120と、ハンドル120を工具本体110に対して回動可能に連結する連結軸160と、を備え、ハンドル120は、待機位置と、待機位置よりも当接部123が凹部114の内側に突出した押し込み位置と、の間で回動可能であり、ハンドル120が待機位置から押し込み位置に移動する際に、操作部121が移動する方向(すなわち上下方向Z)と当接部123が移動する方向(すなわち軸方向X)とが異なっている。
【0052】
この構成によれば、光コネクタ1Aのハウジング30等を凹部114内にセットし、操作部121を操作することで、当接部123を凹部114の内側に突出させることができる。そして、当接部123によってハウジング30を押し込むことで、スプリングプッシュ80をハウジング30に係止させることができる。このように、製造工具100を用いることで、スプリングプッシュ80を容易にハウジング30内に押し込むことが可能となり、製造効率を向上させることができる。さらに、操作部121が移動する方向と当接部123が移動する方向とが異なっているため、梃子の原理を用いて、操作力を増幅させて押し込み力を得る構造においても、製造工具100を小型にすることができる。
【0053】
また、製造工具100は、ハンドル120が待機位置と押し込み位置との間に位置するときに、ハンドル120が待機位置に向けて移動することを規制するラチェット機構130と、ハンドル120を待機位置に向けて付勢するハンドル付勢部材150と、をさらに備え、ラチェット機構130には、ハンドル120に固定された第1係合部131bと、工具本体110に設けられたラチェット軸142に対して回動可能な第2係合部132bと、第2係合部132bを付勢するラチェット付勢部材133と、が含まれる。
【0054】
この構成によれば、ハンドル120が押し込み位置に到達する前に使用者が操作を停止した場合、ラチェット機構130が作動し、待機位置に向けたハンドル120の移動が規制される。したがって使用者は、ハンドル120が押し込み位置に到達していないこと、つまりスプリングプッシュ80に対するハウジング30の押し込みが完了していないことを容易に認識できる。したがって、光コネクタ1Aの製造効率をより向上させることができる。
【0055】
また、工具本体110は、凹部114が形成されたコネクタセット部111と、ハンドル120が待機位置から押し込み位置に移動する際に、操作部121が接近する基部113と、コネクタセット部111と基部113との間に位置して連結軸160を支持する一対の支持部112と、を有する。この構成によれば、ハンドル120を押下する際に、操作部121の下方に基部113が位置することとなり、使用者が力を加えやすい。また、操作部121がコネクタセット部111から離れて配置されるため、ハンドル120を操作する際に、凹部114にセットされた光コネクタ1Aを視認しやすくなる。したがって、操作性をより向上させることができる。
【0056】
また、凹部114の内面には、当接部123に向けて突出した突部114aが形成されている。この構成によれば、当接部123によってハウジング30を押し込む際に、突部114aをスプリングプッシュ80に突き当てることができる。図16に示すように、突部114aはハウジング30とは接しない位置に配置されている。これにより、例えばハウジング30の-X側の端部が凹部114の内面に当接してしまい、ハウジング30およびスプリングプッシュ80の相対移動が阻害されることを抑制できる。つまり、突部114aを設けることで、ハウジング30とスプリングプッシュ80とをより確実に相対移動させることができる。
【0057】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0058】
例えば、前記実施形態の製造工具100はラチェット機構130を有していたが、ラチェット機構130が無くても光コネクタ1Aを組み立てることは可能である。したがって、ラチェット機構130は無くてもよい。
また、凹部114の内側に突部114aが設けられていなくても、例えば凹部114の内面にスプリングプッシュ80の張出部825を当接させて、スプリングプッシュ80に対してハウジング30を押し込むことが可能である。したがって、突部114aは無くてもよい。
【0059】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1A…光コネクタ 100…製造工具 110…工具本体 111…コネクタセット部 112…支持部 113…基部 114…凹部 114a…突部 120…ハンドル 121…操作部 123…当接部 130…ラチェット機構 131b…第1係合部 132b…第2係合部 133…ラチェット付勢部材 142…ラチェット軸 150…ハンドル付勢部材 160…連結軸
図1
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