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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-18
(45)【発行日】2024-03-27
(54)【発明の名称】光成端箱
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/46 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
G02B6/46
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023516026
(86)(22)【出願日】2021-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2021041785
(87)【国際公開番号】W WO2022224472
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2021073031
(32)【優先日】2021-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】高見沢 博之
(72)【発明者】
【氏名】中島 俊彰
(72)【発明者】
【氏名】篠田 智之
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-211698(JP,A)
【文献】特開2005-181600(JP,A)
【文献】国際公開第2018/193675(WO,A1)
【文献】米国特許第10795105(US,B1)
【文献】特開2006-227041(JP,A)
【文献】特開2019-086696(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に対して前後方向にスライド可能に取り付けられたモジュールケースと、
前記モジュールケースの前端に固定された前方アダプタと、
前記モジュールケースの後端側に配置されたアダプタホルダと、
前記アダプタホルダに固定された後方アダプタと、
前記前方アダプタと前記後方アダプタとを接続する光ファイバと、を備え、
前記アダプタホルダは、前記後方アダプタが前記筐体の後方に露出するように前記筐体の後端部に固定可能であり、
前記アダプタホルダは、前記筐体の後端部に係止されて前記筐体に対する前記アダプタホルダの前記前後方向への移動を規制する第一係止部と、前記モジュールケースの後端部に係止されて前記モジュールケースに対する前記アダプタホルダの前記前後方向への移動を規制する第二係止部と、を備え、
前記アダプタホルダを前記前後方向に直交する直交方向の一方側に移動させた第一位置に配置した状態では、前記第一係止部が前記筐体の後端部に係止されると共に、前記モジュールケースの後端部に対する前記第二係止部の係止が解除され、
前記アダプタホルダを前記直交方向の他方側に移動させた第二位置に配置した状態では、前記第二係止部が前記モジュールケースの後端部に係止されると共に、前記筐体の後端部に対する前記第一係止部の係止が解除される、光成端箱。
【請求項2】
前記アダプタホルダを前記第一位置に保持する保持部材を備え、
前記保持部材は、前記アダプタホルダの前記第一位置から前記第二位置への移動を規制する規制位置と、前記アダプタホルダの前記第一位置から前記第二位置への移動を許容する退避位置と、の間で、前記筐体に対して移動可能に取り付けられている請求項に記載の光成端箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光成端箱に関する。
本願は、2021年4月23日に日本に出願された特願2021-073031号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、筐体(アウタートレイ、内部支柱)と、筐体に対してスライド可能に設けられたトレイ(インナートレイ)と、トレイ内に設けられて光コード同士を接続するアダプタと、を備えた光成端箱が開示されている。このような光成端箱では、トレイを筐体から引き出した状態で、光コード等が有する光コネクタをアダプタに挿抜する作業を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2008-032843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の成端箱では、アダプタがトレイ内に設けられているため、光コードの一部をトレイ内に引き込む必要がある。このため、光コードをトレイに収納するスペースの分だけ、光成端箱(特にトレイ及び筐体)の寸法が大きくなる場合がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、小型の光成端箱を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る光成端箱は、筐体と、前記筐体に対して前後方向にスライド可能に取り付けられたモジュールケースと、前記モジュールケースの前端に固定された前方アダプタと、前記モジュールケースの後端側に配置されたアダプタホルダと、前記アダプタホルダに固定された後方アダプタと、前記前方アダプタと前記後方アダプタとを接続する光ファイバと、を備え、前記アダプタホルダは、前記後方アダプタが前記筐体の後方に露出するように前記筐体の後端部に固定可能である。
【0007】
上記の光成端箱では、前方アダプタに接続された光コードと、後方アダプタに接続された光コードとを接続することができる。そして、アダプタホルダが筐体の後端部に固定された状態で、モジュールケース(前方アダプタ)を筐体の前方に引き出すことにより、前方アダプタに対して光コードを挿抜することができる。ここで、アダプタホルダ(後方アダプタ)が筐体の後端部に固定されていることで、モジュールケースを前方に引き出しても、後方アダプタに接続された光コードが筐体の内部に入り込むことはない。これにより、筐体の内部に光コードを収容するスペースが不要となる。その結果として、小型の光成端箱を得ることができる。
【0008】
上記光成端箱において、前記アダプタホルダは、前記筐体の後端部に係止されて前記筐体に対する前記アダプタホルダの前記前後方向への移動を規制する第一係止部と、前記モジュールケースの後端部に係止されて前記モジュールケースに対する前記アダプタホルダの前記前後方向への移動を規制する第二係止部と、を備え、前記アダプタホルダを前記前後方向に直交する直交方向の一方側に移動させた第一位置に配置した状態では、前記第一係止部が前記筐体の後端部に係止されると共に、前記モジュールケースの後端部に対する前記第二係止部の係止が解除され、前記アダプタホルダを前記直交方向の他方側に移動させた第二位置に配置した状態では、前記第二係止部が前記モジュールケースの後端部に係止されると共に、前記筐体の後端部に対する前記第一係止部の係止が解除されてもよい。
【0009】
上記光成端箱は、前記アダプタホルダを前記第一位置に保持する保持部材を備え、前記保持部材は、前記アダプタホルダの前記第一位置から前記第二位置への移動を規制する規制位置と、前記アダプタホルダの前記第一位置から前記第二位置への移動を許容する退避位置と、の間で、前記筐体に対して移動可能に取り付けられてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、小型の光成端箱の得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る光成端箱を前方から見た斜視図である。
図2図1の光成端箱を後方から見た斜視図である。
図3図1の光成端箱から、中央レール、光配線ユニット及びサイドレールを抜き出した斜視図である。
図4図3のIV-IV断面矢視図である。
図5図3の光配線ユニットにおいてモジュールケースを蓋体とトレイとに分離した状態を示す斜視図である。
図6図5の光配線ユニットにおいてコネクタホルダをモジュールケースのトレイから分離した状態を示す斜視図である。
図7図1,2の光成端箱において、筐体の上板及び最上段の光配線ユニットの蓋体を取り除き、かつ、最上段の光配線ユニットを前方に移動させた状態を示す斜視図である。
図8図1,2の光成端箱において、アダプタホルダが筐体の後端部に係止された第一位置に配置され、かつ、保持部材が規制位置に配置された状態を示す図である。
図9図8に示す状態から、保持部材を規制位置から退避位置に移動させた後の状態を示す図である。
図10図9に示す状態から、アダプタホルダを第一位置からモジュールケースの後端部に係止させる第二位置に移動させた後の状態を示す図である。
図11図5,6のスライドピース周辺の平面図である。
図12図11のXII-XII断面矢視図である。
図13図11の光配線ユニットが前方に移動する際の各部の作用を説明する図である。
図14図13に続く工程を説明する図である。
図15図14に続く工程を説明する図である。
図16図15に続く工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本実施形態の光成端箱について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、光成端箱1は、筐体2と、複数の光配線ユニット3と、複数のサイドレール10と、中央レール20と、を備える。
【0013】
図3図5に示すように、各光配線ユニット3は、モジュールケース30と、アダプタホルダ40と、前方アダプタA1と、後方アダプタA2と、光ファイバF1と、を備える。本実施形態の光配線ユニット3は、操作部材50と、スライドピース60と、をさらに備える。
モジュールケース30は、サイドレール10及び中央レール20に支持された状態で、筐体2(図1参照)に対してスライド可能に構成されている。モジュールケース30は、トレイ31と蓋体32とを有する。
【0014】
(方向定義)
本実施形態では、筐体2に対して光配線ユニット3のモジュールケース30がスライドする方向(スライド方向)を前後方向Xという。前後方向Xにおいてモジュールケース30が筐体2から引き出される側(+X側)を前方といい、モジュールケース30が筐体2に収納される側(-X側)を後方という。トレイ31及び蓋体32が対向する方向を上下方向Zという。上下方向Zにおいて、蓋体32側(+Z側)を上方、トレイ31側(-Z側)を下方という。前後方向X及び上下方向Zの双方に直交する方向を左右方向Y(直交方向)という。左右方向Yにおいて、一方側(+Y側)を右方といい、その反対側(-Y側)を左方という。なお、上下方向Zは鉛直方向と一致していなくてもよい。
【0015】
図1に示すように、モジュールケース30が筐体2の内部に収納された位置を「収納位置」という。モジュールケース30は、収納位置から前方にスライドすることで筐体2の外部に引き出された「引出位置」に移動可能である。
【0016】
操作部材50は、モジュールケース30から前方に突出する。モジュールケース30が収納位置に位置している場合も、操作部材50は筐体2の前方の開口部から前方に突出する。
【0017】
図1,2に示すように、筐体2は、上板2aと、下板2bと、一対の側板2cと、背板2dと、を有する。上板2a及び下板2bは上下方向Zにおいて対向し、一対の側板2cは左右方向Yにおいて対向している。各側板2cの左右方向Yにおける外側の側面には、光成端箱1を外部構造(壁、柱、キャビネット等)に固定する固定部材2eが設けられている。背板2dは、筐体2の後端部を形成しており、筐体2の後方の開口を部分的に覆う。背板2dは、モジュールケース30を後方にスライドさせたときのストッパとなる。
【0018】
図7図8に示すように、背板2dには、後方アダプタA2を筐体2の後方に突出させる第一開口部21、及び、後述するアダプタホルダ40の第二、第三延長部41A2,41A3を筐体2の後方に突出させる第二開口部22が形成されている。後方アダプタA2が筐体2の後方に露出することで、外部の光コネクタ(不図示)を後方アダプタA2に接続することができる。
【0019】
図1に示すように、中央レール20は、筐体2の内側における左右方向Yの中央部に位置している。図3に示すように、中央レール20は、前後方向Xに沿って延びる複数の溝20Aを有する。溝20Aのうち、半数は中央レール20の右側面から左方に向けて窪み、残り半数は中央レール20の左側面から右方に向けて窪んでいる。溝20Aの数は、光配線ユニット3の数に一致している。
【0020】
本実施形態では、図1に示すように、中央レール20の右側に、6つの光配線ユニット3が、上下方向Zに並べて配置される。また、中央レール20の左側に、6つの光配線ユニット3が、上下方向Zに並べて配置される。つまり、本実施形態の光成端箱1は、合計で12個の光配線ユニット3を備える。ただし、光配線ユニット3の数は適宜変更可能である。また、中央レール20を設けず、例えば一対のサイドレール10によって光配線ユニット3を支持してもよい。つまり、光成端箱1において、光配線ユニット3は左右方向Yに並べて配置されていなくてもよい。
【0021】
中央レール20の右方に位置する光配線ユニット3と左方に位置する光配線ユニット3とでは、形状が略左右対称である。例えば、右方の光配線ユニット3においてはモジュールケース30の右端部に操作部材50が配置されており、左方の光配線ユニット3においてはモジュールケース30の左端部に操作部材50が配置されている。これに対応させて、右方に位置するサイドレール10と左方に位置するサイドレール10とでは形状が略左右対称である。
【0022】
以下の説明では、右方及び左方の光配線ユニット3及びサイドレール10を代表させて、右方の光配線ユニット3及びサイドレール10の構造、並びに、筐体2の右部分の構造について詳細を説明する。つまり、以下の説明は左方の光配線ユニット3、サイドレール10及び筐体2の左部分についての説明でもある。左右方向Yにおいて、中央レール20に近い側を「左右方向Yにおける内側」といい、その反対側(サイドレール10に近い側)を「左右方向Yにおける外側」という。右方の光配線ユニット3を基準とすると、-Y側が「左右方向Yにおける内側」であり、+Y側が「左右方向Yにおける外側」である。
【0023】
サイドレール10は、筐体2の左右方向Yにおける外側の両端部において、上下方向Zに2つ並べて配置される。図3,4に示すように、各サイドレール10は、光配線ユニット3のモジュールケース30をスライド可能に支持する3つのスライド支持部11を有する。すなわち、1つのサイドレール10は、上下方向Zに並ぶ3つの光配線ユニット3を支持するように構成されている。ただし、サイドレール10が有するスライド支持部11の数は適宜変更可能である。例えば、サイドレール10は6つのスライド支持部11を有してもよい。この場合、筐体2の左右方向Yにおける外側の両端部に、それぞれ1つのサイドレール10が配置されればよい。
【0024】
図3図4図11に示すように、サイドレール10は、複数のスライド支持部11の他に、取付部12と、レール側規制部13と、を有する。取付部12は、サイドレール10を筐体2の側板2c(図1,2参照)に取り付ける部位であり、上下方向Z及び前後方向Xに沿って延びる板状である。複数のスライド支持部11は、上下方向Zに並べて配置され、取付部12によって互いに連結されている。
【0025】
各スライド支持部11は、レール本体部11aと、突部11bと、を有する。レール本体部11aは、取付部12から左右方向Yにおける内側に突出している。突部11bは、レール本体部11aの左右方向Yにおける内側の端部から、上方及び下方に向けて突出している。レール側規制部13は、取付部12の前端部から、左右方向Yにおける内側に向けて突出している。レール側規制部13は、後方を向く面(後面)と、前方を向く傾斜面と、を有する。レール側規制部13の傾斜面は、後方に向かうに従って左右方向Yにおける内側に向かうように傾斜している。
【0026】
図5図6に示すように、モジュールケース30のトレイ31は、ボトムプレート311と、後壁部312と、一対の側壁部313,314と、第一ユニット側規制部315と、を有する。ボトムプレート311は、上下方向Zを板厚方向とし、前後方向X及び左右方向Yに沿って延びる板状である。後壁部312及び側壁部313,314は、ボトムプレート311から上方に向けて突出している。
【0027】
後壁部312は、モジュールケース30の後端部を形成しており、ボトムプレート311の後端において左右方向Yに延びている。ただし、後壁部312は、左右方向Yにおけるボトムプレート311の後端の一部分(図示例では左右方向Yにおける内側の部分)に形成されていない。トレイ31のうち後壁部312が形成されていない部分は、アダプタホルダ40及び後方アダプタA2をモジュールケース30に対して前後方向Xに出し入れするモジュールケース30の開口部33を構成する。
【0028】
一対の側壁部313,314は、左右方向Yにおけるボトムプレート311の両端部に配置されている。一対の側壁部313,314のうち左右方向Yにおけるボトムプレート311の外側の端部に配置された外側側壁部313には、操作部材50の一部を収納する収納部313aが形成されている。収納部313aは、外側側壁部313の上面から下方に向けて窪む凹部であり、前後方向Xに延びている。収納部313aは前方に向けて開口しており、操作部材50の前方部分は収納部313aから前方に突出している。操作部材50は、収納部313a内で、前後方向Xにスライド可能である。
【0029】
外側側壁部313は、スライドピース60を左右方向Yにスライド可能に支持する一対の支持部313bを有する。支持部313bは、外側側壁部313の上面から下方に向けて窪む凹部である。一対の支持部313bは、収納部313aを左右方向Yにおいて間に挟むように形成されている。一対の支持部313bは前後方向Xにおいて同じ位置に配置されている。
【0030】
第一ユニット側規制部315は、ボトムプレート311の側面(左右方向Yにおける外側の端面)から、左右方向Yにおける外側に向けて突出している。第一ユニット側規制部315は、前方を向く面(前面)と、後方を向く傾斜面と、を有している。第一ユニット側規制部315の傾斜面は、後方に向かうに従って左右方向Yにおける内側に向かうように傾斜している。
【0031】
トレイ31のうち第一ユニット側規制部315が形成された部分は、トレイ31の他の部分に対して、左右方向Yに弾性変形可能に形成されている。これにより、第一ユニット側規制部315は、トレイ31の他の部分に対して、左右方向Yにおけるトレイ31の内側に弾性的に変位可能である。
【0032】
図3図5に示す蓋体32は、トレイ31を上方から覆い、トレイ31に固定される。蓋体32は、トッププレート321と、サイドリブ322と、第二ユニット側規制部323と、を有する。トッププレート321は、上下方向Zを板厚方向とし、前後方向X及び左右方向Yに沿って延びる板状である。トッププレート321は、トレイ31のボトムプレート311の上方に間隔を空けて対向する。トッププレート321とボトムプレート311との間の空間は、前方アダプタA1、アダプタホルダ40、後方アダプタA2、光ファイバF1を収容するモジュールケース30の収容空間Sである。
【0033】
図4に示すように、サイドリブ322は、トッププレート321の左右方向Yにおける外側の端部から、下方に向けて突出している。サイドリブ322と、トレイ31の外側側壁部313と、の間に、サイドレール10の突部11bが挟まれている。これにより、サイドレール10に対するモジュールケース30の左右方向Yにおける位置が定まる。
【0034】
図3図5に示す第二ユニット側規制部323は、トッププレート321の側面(左右方向Yにおける外側の側面)から、左右方向Yにおける外側に向けて突出している。第二ユニット側規制部323は、前方を向く面(前面)と、後方を向く傾斜面と、を有している。第二ユニット側規制部323の傾斜面は、後方に向かうに従って左右方向Yにおける内側に向かうように傾斜している。
【0035】
蓋体32のうち第二ユニット側規制部323が形成された部分は、蓋体32の他の部分に対して、左右方向Yに弾性変形可能に形成されている。これにより、第二ユニット側規制部323は、蓋体32の他の部分に対して、左右方向Yにおける蓋体32の内側に弾性的に変位可能である。
【0036】
モジュールケース30を構成するトレイ31及び蓋体32の各ユニット側規制部315、323は、前後方向X及び左右方向Yにおいて同じ位置に配置され、上下方向Zにおいて互いに離れて配置されている。サイドレール10のレール側規制部13は、上下方向Zにおいて、これらのユニット側規制部315、323に跨るように形成されている。光配線ユニット3(特にモジュールケース30)を筐体2にセットする際、光配線ユニット3をサイドレール10に乗せて後方にスライドさせると、ユニット側規制部315、323及びレール側規制部13の傾斜面同士が当接する。これにより、ユニット側規制部315、323の形成部分は左右方向Yにおける内側に向けて弾性変形し、ユニット側規制部315、323が左右方向Yにおける内側に退避する。
【0037】
ユニット側規制部315、323がレール側規制部13を後方に乗り越えた後には、ユニット側規制部315、323の形成部分が復元変形し、ユニット側規制部315、323の前面とレール側規制部13の後面とが前後方向Xにおいて対向する。このため、光配線ユニット3をサイドレール10に対して前方にスライドさせると、ユニット側規制部315、323の前面がレール側規制部13の後面に当接し、光配線ユニット3がそれ以上前方に移動することが規制される。このときの光配線ユニット3の位置が先述の「引出位置」である。
【0038】
光配線ユニット3の前方アダプタA1は、モジュールケース30の前端に固定されている。前方アダプタA1は、左右方向Yに複数(図示例では6つ)並べて配置されている。各前方アダプタA1は、モジュールケース30から前方に突出している。各前方アダプタA1の前端には、光コード(不図示)に取り付けられた単心コネクタ(不図示)を複数接続することができる。前方アダプタA1の後端には、前方アダプタA1と後方アダプタA2とを接続する複数の光ファイバF1が接続される。
【0039】
図5図6に示すように、アダプタホルダ40は、モジュールケース30の後端側に配置される。アダプタホルダ40には、後方アダプタA2が固定されている。後方アダプタA2は、左右方向Yに複数(図示例では2つ)並べて配置されている。各後方アダプタA2は、アダプタホルダ40から後方に突出している。各後方アダプタA2の後端には、光コード(不図示)に取り付けられた多心コネクタ(不図示)を接続することができる。後方アダプタA2の前端には、後方アダプタA2と複数の前方アダプタA1とを接続する光ファイバF1が接続される。
【0040】
光配線ユニット3では、前方アダプタA1の前端に接続された光コードと、後方アダプタA2の後端に接続された光コードとを接続することができる。具体的に、光配線ユニット3では、前方アダプタA1の前端に接続された複数の単心コネクタが、モジュールケース30内の光ファイバF1を通じて、後方アダプタA2の後端に接続された多心コネクタと光学的に接続される。これにより、光配線ユニット3は、複数の単心コネクタを1つの多心コネクタに集約して接続する。
【0041】
図8図9に示すように、アダプタホルダ40は、後方アダプタA2が筐体2の後方に露出するように筐体2の背板2d(後端部)に固定可能である。また、図10に示すように、アダプタホルダ40は、モジュールケース30の後壁部312(後端部)にも固定可能である。本実施形態の光成端箱1は、図8図9に示すようにアダプタホルダ40が筐体2の背板2dに固定され、かつ、モジュールケース30に固定されない第一状態と、図10に示すようにアダプタホルダ40がモジュールケース30の後壁部312に固定され、かつ、筐体2に固定されない第二状態と、に切り換える切換機構100を備える。
【0042】
図7図10に示すように、切換機構100は、アダプタホルダ40に備える第一係止部41A,41B及び第二係止部42によって構成されている。
第一係止部41A,41Bは、筐体2の背板2dに係止されるアダプタホルダ40の部分である。第一係止部41A,41Bは、筐体2の背板2dに係止されることで、筐体2に対するアダプタホルダ40の前後方向Xへの移動を規制する。第一係止部41A,41Bは、筐体2の背板2dを前後方向Xから挟むように構成されている。第一係止部41A,41Bが筐体2の背板2dに係止されることで、アダプタホルダ40が筐体2の後端部に固定される。
【0043】
本実施形態において、第一係止部41A,41Bは、左右方向Yにおけるアダプタホルダ40の両端部に設けられている。各第一係止部41A,41Bは、左右方向Yにおける内側(-Y側)に開口する窪み411を有する。図8,9に示すように、第一係止部41A,41Bの窪み411に対して筐体2の背板2dが挿入されることで、筐体2に対するアダプタホルダ40の前後方向Xへの移動が規制される。
【0044】
左右方向Yにおいてアダプタホルダ40の内側(―Y側)に位置する第一係止部41Bは、筐体2の背板2dのうち、後方アダプタA2及びアダプタホルダ40の本体部分を挿通させる第一開口部21の縁を形成する部分に係止される。
【0045】
左右方向Yにおいてアダプタホルダ40の外側(+Y側)に位置する第一係止部41Aは、第一延長部41A1と、第二延長部41A2と、第三延長部41A3と、を有する。第一延長部41A1は、アダプタホルダ40の本体部分から左右方向Yにおける外側に延びる。第二延長部41A2は、第一延長部41A1の先端から後方に延びる。第三延長部41A3は、第二延長部41A2の先端から左右方向Yにおける内側に延びる。アダプタホルダ40の外側に位置する第一係止部41Aの窪み411は、前後方向Xに間隔をあけて配置された第一延長部41A1と第三延長部41A3とによって形成されている。
アダプタホルダ40の外側に位置する第一係止部41Aは、筐体2の背板2dのうち、第二、第三延長部41A2,41A3を挿通させる第二開口部22の縁を形成する部分に係止される。
【0046】
第一係止部41A,41Bが筐体2の背板2dに係止した状態では、第一係止部41A,41Bよりも前方に位置するアダプタホルダ40の部位が、筐体2の内部に収容される。また、第一係止部41A,41Bよりも後方に位置するアダプタホルダ40の部位が、筐体2(背板2d)の後方に突出する。
【0047】
図7に示すように、本実施形態の第一係止部41A,41Bは、保持用板部412をさらに有する。保持用板部412は、第一係止部41A,41Bが筐体2の背板2dに係止された状態で、上下方向Zにおけるアダプタホルダ40の位置を保持する。保持用板部412は、その板厚方向が上下方向Zに向くように第一係止部41A,41Bの窪み411の内側に形成されている。保持用板部412は、第一係止部41A,41Bの窪み411に背板2dが挿入された状態(図8図9参照)で、第一係止部41A,41Bの窪み411に挿入される背板2dの部位に形成されて左右方向Yにおける外側(+Y側)に開口する切欠23に挿入される。保持用板部412が切欠23に挿入された状態では、上下方向Zにおけるアダプタホルダ40の位置を保持することができる。
【0048】
図7図10に示す第二係止部42は、モジュールケース30の後壁部312に係止されるアダプタホルダ40の部分である。第二係止部42は、モジュールケース30の後壁部312に係止されることで、モジュールケース30に対するアダプタホルダ40の前後方向Xへの移動を規制する。第二係止部42は、モジュールケース30の後壁部312を前後方向Xから挟むように構成されている。第二係止部42がモジュールケース30の後壁部312に係止されることで、アダプタホルダ40がモジュールケース30の後端部に固定される。
【0049】
本実施形態において、第二係止部42は、左右方向Yにおいてアダプタホルダ40の外側(+Y側)に位置する。第二係止部42は、図8~10に示すように、左右方向Yにおける外側に開口する窪み421を有する。第二係止部42の窪み421は、左右方向Yにおいて前述した第一係止部41A,41Bの窪み411と逆向きに開口する。図10に示すように、第二係止部42の窪み421に対してモジュールケース30の後壁部312が挿入されることで、モジュールケース30に対するアダプタホルダ40の前後方向Xへの移動が規制される。
【0050】
より具体的に説明すれば、第二係止部42は、第四延長部424と、第五延長部425と、を有する。第四延長部424は、アダプタホルダ40の本体部分から左右方向Yにおける外側に延びる。第五延長部425は、第四延長部424よりも前方においてアダプタホルダ40の本体部分から左右方向Yにおける外側に延びる。第二係止部42の窪み421は、前後方向Xに間隔をあけて配置された第四延長部424と第五延長部425とによって形成されている。
本実施形態において、第四延長部424は、外側の第一係止部41Aを構成する第一延長部41A1を兼用している。第五延長部425は、その先端部が前後方向Xに変位するように弾性的に撓み変形可能に形成されている。これにより、第二係止部42の窪み421にモジュールケース30の後壁部312が挿入された状態では、第五延長部425の弾性力によってモジュールケース30の後壁部312を第四、第五延長部424、425との間に挟んで保持することができる。
【0051】
第二係止部42がモジュールケース30の後壁部312に係止した状態では、第二係止部42よりも前方に位置するアダプタホルダ40の部位がモジュールケース30の収容空間Sに収容され、第二係止部42よりも後方に位置するアダプタホルダ40の部位がモジュールケース30の後方に突出する。
【0052】
図8図10に示すように、切換機構100による第一状態と第二状態との切換は、モジュールケース30が収納位置に配置された状態で行うことができる。図8図9に示すように、モジュールケース30が収納位置に配置された状態において、アダプタホルダ40を左右方向Yの内側(-Y側)に移動させた第一位置P1に配置した状態では、第一係止部41A,41Bが筐体2の背板2dに係止されると共に、モジュールケース30の後壁部312に対する第二係止部42の係止が解除される。一方、図10に示すように、モジュールケース30が収納位置に配置された状態において、アダプタホルダ40を第一位置P1から左右方向Yの外側(+Y側)に移動させた第二位置P2に配置した状態では、第二係止部42がモジュールケース30の後壁部312に係止されると共に、筐体2の背板2dに対する第一係止部41A,41Bの係止が解除される。すなわち、モジュールケース30が収納位置に配置された状態でアダプタホルダ40を第一位置P1と第二位置P2との間で左右方向Yに移動させるだけで、第一状態と第二状態とに簡単に切り換えることができる。
【0053】
また、本実施形態の光成端箱1では、アダプタホルダ40が第一位置P1と第二位置P2との間の第三位置(不図示)に配置された状態で、筐体2の背板2dに対する第一係止部41A,41Bの係止が解除され、かつ、モジュールケース30の後壁部312に対する第二係止部42の係止が解除される。すなわち、アダプタホルダ40が第三位置に配置された状態において、アダプタホルダ40は、筐体2にもモジュールケース30にも固定されない。
【0054】
本実施形態の光成端箱1が上記した切換機構100を備えることで、アダプタホルダ40及び後方アダプタA2を筐体2に固定した状態では、アダプタホルダ40及び後方アダプタA2を筐体2の後端部に残したままで、モジュールケース30を筐体2の前方に引き出すことができる。このような状態では、図6に示すように、モジュールケース30とアダプタとが前後方向Xに分離する。一方、アダプタホルダ40及び後方ホルダをモジュールケース30に固定した状態では、アダプタホルダ40及び後方アダプタA2をモジュールケース30と共に筐体2の前方に引き出すことができる。すなわち、光配線ユニット3全体を筐体2の前方に引き出すことができる。
【0055】
図2図7図10に示すように、本実施形態の光成端箱1は、保持部材70をさらに備える。
保持部材70は、アダプタホルダ40を図8に示す第一位置P1に保持する。保持部材70は、筐体2に対して図8に示す規制位置P11と図9,10に示す退避位置P12との間で移動可能に取り付けられている。規制位置P11は、アダプタホルダ40の第一位置P1から第二位置P2への移動を規制する保持部材70の位置である。退避位置P12は、アダプタホルダ40の第一位置P1から第二位置P2への移動を許容する保持部材70の位置である。
【0056】
図2図7図10に示すように、本実施形態の保持部材70は、板状部材に折り曲げ加工を施して形成されている。保持部材70は、2つのネジ71によって筐体2の背板2dの外面(筐体2の後端面)に取り付けられている。保持部材70には、左右方向Yに延びる長孔72が2つ形成されており、各長孔72にネジ71が挿通されている。これにより、保持部材70は、筐体2に対して左右方向Yに移動可能に取り付けられている。また、2つのネジ71によって保持部材70を背板2dとの間に挟むことで、保持部材70を筐体2に対して移動不能に固定することができる。
【0057】
保持部材70は、アダプタホルダ40に対して左右方向Yの外側に配置されている。このため、図8に示すように、保持部材70を左右方向Yにおける内側に移動させた位置(すなわち規制位置P11)に配置することで、保持部材70を第一位置P1に配置されたアダプタホルダ40に対して左右方向Yの外側から接触させることができる。具体的に、保持部材70を規制位置P11に配置した状態では、保持部材70が第一位置P1に配置されたアダプタホルダ40のうち外側に位置する第一係止部41Aに対して左右方向Yの外側から接触する。そして、保持部材70を規制位置P11に配置した状態でネジ71によって保持部材70を背板2dに固定することで、アダプタホルダ40が第一位置P1から第二位置P2に向けて左右方向Yの外側に移動することを規制できる。
【0058】
一方、図9図10に示すように、保持部材70を左右方向Yにおける外側に移動させた位置(すなわち退避位置P12)に配置した状態では、アダプタホルダ40を第一位置P1と第二位置P2との間で移動させても、保持部材70がアダプタホルダ40に対して左右方向Yの外側から接触することはない。これにより、保持部材70を退避位置P12に配置した状態では、アダプタホルダ40の第一位置P1から第二位置P2への移動が許容される。
【0059】
本実施形態において、上記した保持部材70は、図2に示すように、上下方向Zに並ぶ複数(図示例では6つ)の光配線ユニット3のアダプタホルダ40に対応するように設けられている。ただし、保持部材70は、例えば上下に並ぶ複数のアダプタホルダ40に対して個別に設けられてもよい。
【0060】
図5に示すように、操作部材50は、トレイ31の収納部313aから前方に突出したハンドル部51を有する。ハンドル部51は、作業者がモジュールケース30を収納位置と引出位置との間でスライドさせる際に操作する部位である。
図11に示すように、操作部材50は第一収容部52及び第二収容部53を有する。操作部材50は、付勢部Bによって前後方向Xにおいて付勢されている。本実施形態における付勢部Bは、第一圧縮バネB1及び第二圧縮バネB2を含む。第一収容部52内には第一圧縮バネB1が収容され、第二収容部53内には第二圧縮バネB2が収容される。第一収容部52と第二収容部53との間には、トレイ31に形成された隔壁36が配置されている。換言すると、隔壁36により、第一収容部52と第二収容部53とが区画されている。第一収容部52、隔壁36、第二収容部53は、前方から後方に向けて、この順に配置されている。
【0061】
図12に示すように、第一収容部52の内側には、第一圧縮バネB1の両端部を保持する保持部52a、36aが設けられている。また、第二収容部53の内側には、第二圧縮バネB2の両端部を保持する保持部36b、53aが設けられている。保持部52aは第一収容部52の内面から後方に突出し、保持部36aは隔壁36から前方に突出している。保持部36bは隔壁36から後方に突出し、保持部53aは第二収容部53の内面から前方に突出している。保持部52a、36a、36b、53aは円柱状の突起である。ただし、第一圧縮バネB1及び第二圧縮バネB2を保持することができれば、保持部52a、36a、36b、53aの形状は適宜変更可能であり、例えば窪みなどであってもよい。
【0062】
第一圧縮バネB1及び第二圧縮バネB2としては、金属製のコイルバネを採用できる。なお、圧縮バネB1、B2として、金属製のコイルバネ以外の弾性体(例えば、樹脂製のコイルバネあるいはゴム等)を用いてもよい。圧縮バネB1、B2は、前後方向に圧縮された状態で、第一収容部52及び第二収容部53に収容されている。このため、操作部材50に外力が作用していない場合は、圧縮バネB1、B2の弾性力が釣り合うように、操作部材50の前後方向における位置が定まる。このように、圧縮バネB1、B2の弾性力が釣り合うときの操作部材50の位置を「中立位置」という。図11に示すように、操作部材50が中立位置に位置しているとき、操作部材50の後端と収納部313aの後端との間には、前後方向Xの隙間が設けられる。このため、操作部材50は中立位置から後方に移動可能である。
【0063】
操作部材50に外力が加わり、トレイ31に対して操作部材50が中立位置から前方に移動すると、第一圧縮バネB1が延びて第二圧縮バネB2が縮み、弾性力が不均衡となり、操作部材50には後方に向けた復元力が作用する。逆に、操作部材50がトレイ31に対して中立位置から後方に移動すると、第一圧縮バネB1が縮んで第二圧縮バネB2が延び、操作部材50には前方に向けた復元力が作用する。したがって、操作部材50に前後方向Xの外力が作用すると、操作部材50は中立位置から移動するが、外力が開放されると中立位置に向けて復元変位する。
【0064】
上記の通り、操作部材50は、トレイ31によって、中立位置を基準として前後方向Xにおける両側に移動可能に支持されている。また、付勢部B(第一圧縮バネB1及び第二圧縮バネB2)は、操作部材50を中立位置に向けて付勢するように構成されている。
【0065】
図12に示すように、操作部材50は、上板部54及び下板部55を有する。上板部54及び下板部55は上下方向Zにおいて間隔を空けて配置されている。上板部54には係合溝54a(上方係合溝)が形成され、下板部55には係合溝55a(下方係合溝)が形成されている。係合溝54a、55aは、上板部54及び下板部55を上下方向Zにおいて貫通している。
【0066】
図11に示すように、係合溝54aは、上方から見てV字形に形成されている。より詳しくは、係合溝54aは第一傾斜部54b及び第二傾斜部54cを有する。第一傾斜部54bは前方に向かうに従って左右方向Yにおける内側に向かうように傾斜し、第二傾斜部54cは後方に向かうに従って左右方向Yにおける内側に向かうように傾斜している。図示は省略するが、下板部55の係合溝55aも、上板部54の係合溝54aと同様の形状を有する。すなわち係合溝55aは、下方から見てV字形に形成され、前方に向かうに従って左右方向Yにおける内側に向かうように傾斜した第一傾斜部と、後方に向かうに従って左右方向Yにおける内側に向かうように傾斜した第二傾斜部と、を有する。
【0067】
図11図12に示すように、スライドピース60は、一対の係合部61と、ラッチ部62と、を有する。ラッチ部62は、左右方向Yに沿って延びており、上板部54と下板部55との間に位置している。ラッチ部62は操作部材50から左右方向Yにおける両側に突出している。ラッチ部62の左右方向Yにおける両端部は、トレイ31の一対の支持部313bによって支持されている。一対の係合部61は、ラッチ部62の左右方向Yにおける中央部から、上方及び下方に向けてそれぞれ突出している。上方の係合部61は係合溝54a内に位置し、下方の係合部61は係合溝55a内に位置している。スライドピース60は、操作部材50に対して左右方向Yにスライド可能に構成されている。
【0068】
図11に示すように、サイドレール10のスライド支持部11には、前方係止部11c及び後方係止部11dが形成されている。前方係止部11c及び後方係止部11dは、スライド支持部11のレール本体部11a及び突部11bを、上下方向Zにおいて貫通するように形成された切り欠きである。前方係止部11cは後方係止部11dよりも前方に位置している。光配線ユニット3のモジュールケース30が収納位置(図11等)に位置するとき、ラッチ部62は後方係止部11dの内側に位置する。このため、モジュールケース30がサイドレール10に対して前方に移動することが規制される。
【0069】
上記の通り、スライドピース60は、操作部材50に対して左右方向Yにスライド可能である。本明細書では、ラッチ部62が前方係止部11cまたは後方係止部11dの内側に位置するときのスライドピース60の位置を「規制位置」という。また、ラッチ部62が前方係止部11cまたは後方係止部11dから離脱したときのスライドピース60の位置を「解除位置」という。
【0070】
次に、上記した操作部材50及びスライドピース60並びにこれに関連する構成による作用について、図11図13図16を用いて説明する。
【0071】
図11に示すように、モジュールケース30が収納位置にあり、操作部材50が操作される前の状態では、スライドピース60の上方の係合部61は、第一傾斜部54bと第二傾斜部54cとの接続部分に位置する。このような状態では、ラッチ部62が後方係止部11d内に位置するため、スライドピース60及び操作部材50がサイドレール10に対して前後方向Xに移動することが規制される。また、操作部材50に外力が作用していないため、操作部材50はトレイ31に対して中立位置に位置している。
【0072】
作業者が光配線ユニット3(特にモジュールケース30)を筐体2から引き出す際は、操作部材50のハンドル部51を把持し、手前に引く。このように外力が加わると、操作部材50がトレイ31に対して中立位置から前方に移動する。このとき、第一圧縮バネB1が延びるとともに第二圧縮バネB2が縮み、操作部材50は後方に付勢される。また、図13に示すように、係合溝54aの第二傾斜部54cに沿って、上方の係合部61がスライドする。同様に、係合溝55aの第二傾斜部に沿って、下方の係合部61がスライドする。一対の係合部61の係合溝54a、55aに対する動作は同じであるため、以下の説明では、一対の係合部61の動作を代表させて、上方の係合部61の動作について説明する。
【0073】
係合部61が第二傾斜部54cの後端部に向けてスライドするとき、スライドピース60は左右方向Yにおける内側に移動する。したがって、ラッチ部62が後方係止部11dから離脱し、モジュールケース30がサイドレール10に対して前方に移動可能となる。ラッチ部62は支持部313bに支持されているため、作業者が引き続き操作部材50を前方に引くと、トレイ31にも前方に向けた力が作用する。したがって、モジュールケース30が前方に移動する。
【0074】
図14に示すように、モジュールケース30が所定量前方に移動すると、第一ユニット側規制部315がレール側規制部13の後端に当接する。このとき、図示は省略するが、第二ユニット側規制部323もレール側規制部13の後端に当接する。このように、ユニット側規制部315、323がレール側規制部13の後端に当接することで、モジュールケース30が引出位置を超えて前方に移動することが規制される。圧縮バネB1、B2の弾性力のバランスにより、操作部材50は後方に付勢されているため、作業者が操作部材50から手を離すと、操作部材50はトレイ31に対して後方に移動する。このとき、係合部61が第二傾斜部54cに沿って移動することで、スライドピース60は左右方向Yにおける外側にスライドする。
【0075】
図15に示すように、操作部材50が後方に移動して中立位置に到達するとともに、ラッチ部62が前方係止部11c内に進入する。これにより、モジュールケース30のサイドレール10に対する前後方向Xの移動が規制される。したがって、作業者が前方アダプタA1にコネクタを挿入する操作等を行うことで、モジュールケース30に後方に向けた外力が作用しても、モジュールケース30が後方に移動することが規制される。これにより、モジュールケース30が引出位置に安定して位置することができ、前方アダプタA1に対するコネクタの接続作業等を容易に行うことができる。
【0076】
モジュールケース30を再び筐体2内に収納する際には、作業者は、ハンドル部51を押し込む操作を行う。このように外力が加わると、操作部材50がトレイ31に対して中立位置から後方に移動する。このとき、第一圧縮バネB1が縮むとともに第二圧縮バネB2が延び、操作部材50は前方に付勢される。また、図16に示すように、係合溝54aの第一傾斜部54bに沿って係合部61がスライドする。係合部61が第一傾斜部54bの前端部に向けてスライドするとき、スライドピース60は左右方向Yにおける内側に移動する。したがって、ラッチ部62が前方係止部11cから離脱し、モジュールケース30がサイドレール10に対して後方に移動可能となる。
【0077】
さらに操作部材50が後方に押し込まれると、モジュールケース30がサイドレール10に対して後方に移動し、モジュールケース30が筐体2の背板2dに当接することで移動が停止する。その状態で作業者が操作部材50から手を離すと、圧縮バネB1、B2の弾性力のバランスにより、操作部材50はトレイ31に対して前方に移動する。このとき、係合部61が第一傾斜部54bに沿って移動することで、スライドピース60は左右方向Yにおける外側にスライドする。これにより、係合部61が再び後方係止部11d内に進入し、図11に示す状態に戻る。
【0078】
以上のように構成される本実施形態の光成端箱1において、前方アダプタA1にコネクタを挿入する操作等を行う場合には、はじめに、図8図9に示すように、アダプタホルダ40を第一位置P1に配置して筐体2の背板2dに固定しておく。このような状態では、図8に示すように、保持部材70を規制位置P11に配置して、アダプタホルダ40を第一位置P1に保持するとよい。また、ネジ71によって保持部材70を規制位置P11に固定するとよい。次いで、作業者が操作部材50を操作して、モジュールケース30を筐体2及び筐体2に固定されたアダプタホルダ40に対して、図11に示す収納位置から図15に示す引出位置まで前方に移動させる。このようにモジュールケース30を引出位置に移動させても、後方アダプタA2の後端に接続された光コード(不図示)が筐体2の内部に入り込むことはない。
【0079】
また、本実施形態の光成端箱1では、モジュールケース30及びアダプタホルダ40を含む光配線ユニット3の全体を一括して筐体2から取り外すことができる。光配線ユニット3全体を筐体2から取り外すためには、はじめに、図8図9に示すように、作業者が、ネジ71による保持部材70の筐体2への固定を解除した状態で、保持部材70を規制位置P11から退避位置P12まで移動させる。ここで、保持部材70はネジ71によって退避位置P12に固定されてもよい。次いで、図10に示すように、作業者は、アダプタホルダ40を第一位置P1から第二位置P2まで移動させて、アダプタホルダ40をモジュールケース30の後壁部312に固定する。
その後、作業者は操作部材50を操作して、モジュールケース30を筐体2に対して、図11に示す収納位置から図15に示す引出位置まで前方に移動させる。ここで、アダプタホルダ40はモジュールケース30に固定されているため、モジュールケース30及びアダプタホルダ40を含む光配線ユニット3の全体が引出位置まで前方に移動する。
【0080】
光配線ユニット3を引出位置に配置した状態では、モジュールケース30のユニット側規制部315、323がレール側規制部13の後端に当接する。ここで、作業者は、モジュールケース30のうちユニット側規制部315、323の形成部分をモジュールケース30の他の部分に対して、左右方向Yにおける内側(-Y側)に弾性的に変位させる。これにより、ユニット側規制部315、323に対するレール側規制部13の後端への当接を解除して、モジュールケース30(光配線ユニット3全体)を、引出位置よりも前方に移動させることができる。
以上により、光配線ユニット3の全体を一括して筐体2から取り外すことができる。
【0081】
一方、モジュールケース30及びアダプタホルダ40を含む光配線ユニット3を筐体2に取り付ける際には、はじめに、作業者が、左右方向Yにおけるモジュールケース30の両端部を中央レール20及びサイドレール10に差し込んだ上で、操作部材50のハンドル部51を後方に押し込む。これにより、モジュールケース30を収納位置に配置することができる。次いで、作業者は、アダプタホルダ40を図10に示す第二位置P2から図9に示す第一位置P1まで移動させて、アダプタホルダ40を筐体2の背板2dに固定する。その後、作業者は、ネジ71による保持部材70の筐体2への固定を解除した状態で、保持部材70を図9に示す退避位置P12から図8に示す規制位置P11まで移動させる。最後に、作業者が、保持部材70をネジ71によって規制位置P11に固定することで、光配線ユニット3に対する筐体2への取付が完了する。
【0082】
以上説明したように、本実施形態の光成端箱1では、光配線ユニット3が、前方アダプタA1を固定したモジュールケース30と、後方アダプタA2を固定したアダプタホルダ40と、に分離可能である。また、アダプタホルダ40は、筐体2の背板2d(後端部)に固定可能である。
このため、アダプタホルダ40が筐体2の背板2dに固定された状態で、モジュールケース30(及び前方アダプタA1)を筐体2の前方に引き出すことにより、前方アダプタA1に対して光コードを挿抜することができる。ここで、モジュールケース30を前方に引き出しても、筐体2の内部に後方アダプタA2の後端に接続された光コードが筐体2の内部に入り込むことはない。これにより、筐体2の内部には、後方アダプタA2の後端に接続される光コードを収容するスペースを設ける必要がない。その結果として、小型の光成端箱1を得ることができる。
【0083】
また、本実施形態の光成端箱1では、アダプタホルダ40が、筐体2の背板2d(後端部)に係止されて筐体2に対するアダプタホルダ40の前後方向への移動を規制する第一係止部41A,41Bを有する。また、アダプタホルダ40は、モジュールケース30の後壁部312(後端部)に係止されてモジュールケース30に対するアダプタホルダ40の前後方向Xへの移動を規制する第二係止部42を有する。アダプタホルダ40を左右方向Yの内側(一方側)に移動させた第一位置P1に配置した状態では、第一係止部41A,41Bが筐体2の背板2dに係止されると共に、モジュールケース30の後壁部312に対する第二係止部42の係止が解除される。一方、アダプタホルダ40を左右方向Yの外側(他方側)に移動させた第二位置P2に配置した状態では、第二係止部42がモジュールケース30の後壁部312に係止されると共に、筐体2の背板2dに対する第一係止部41A,41Bの係止が解除される。
【0084】
このような構成によれば、アダプタホルダ40が第一位置P1に配された状態では、アダプタホルダ40及び後方アダプタA2が筐体2の後端部に固定された状態で、モジュールケース30及び前方アダプタA1を筐体2の前方に引き出すことができる。
一方、アダプタホルダ40が第二位置P2に配された状態では、アダプタホルダ40をモジュールケース30と共に筐体2の前方に引き出すことができる。すなわち、前方アダプタA1及び後方アダプタA2を含む光配線ユニット3を一括して筐体2から簡単に取り外すことができる。したがって、光配線ユニット3全体を交換することで、光成端箱1のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0085】
また、本実施形態の光成端箱1では、アダプタホルダ40が、第一位置P1と第二位置P2との間の第三位置に配された状態で、筐体2の背板2dに対する第一係止部41A,41Bの係止が解除され、かつ、モジュールケース30の後壁部312に対する第二係止部42の係止が解除される。すなわち、アダプタホルダ40は、筐体2の背板2d及びモジュールケース30の後壁部312の両方に対して同時に係止されることがない。このため、モジュールケース30を筐体2に対して前方に引き出す際に、第一係止部41A,41Bや第二係止部42に応力が作用することを防ぐことができる。すなわち、第一係止部41A,41B及び第二係止部42を保護することができる。
【0086】
また、本実施形態の光成端箱1は、アダプタホルダ40を第一位置P1に保持する保持部材70を備える。保持部材70は、アダプタホルダ40の第一位置P1から第二位置P2への移動を規制する規制位置P11と、アダプタホルダ40の第一位置P1から第二位置P2への移動を許容する退避位置P12と、の間で、筐体2に対して移動可能に取り付けられている。
このような保持部材70によって、アダプタホルダ40が不意に筐体2の背板2dから外れることを防ぐことができる。これは、アダプタホルダ40を筐体2の背板2dに保持した状態でモジュールケース30を筐体2の前方に引き出す際に特に有効である。また、保持部材70は、筐体2に取り付けられた状態で規制位置P11と退避位置P12との間で移動できるため、保持部材70を紛失することも防止できる。
【0087】
以上、本発明の詳細について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。
【0088】
例えば、本発明の光成端箱は、例えば切換機構100を備えず、アダプタホルダ40が常に筐体2の後端部に固定されるように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1…光成端箱、2…筐体、2d…背板(後端部)、30…モジュールケース、312…後壁部(後端部)、40…アダプタホルダ、41A、41B…第一係止部、42…第二係止部、70…保持部材、A1…前方アダプタ、A2…後方アダプタ、F1…光ファイバ、P1…第一位置、P2…第二位置、P11…規制位置、P12…退避位置、X…前後方向、Y…左右方向(直交方向)
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