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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】導光体
(51)【国際特許分類】
   A61J 15/00 20060101AFI20240321BHJP
【FI】
A61J15/00 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020097941
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021186563
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】524062054
【氏名又は名称】大塚クリニカルソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520127188
【氏名又は名称】株式会社PAX
(73)【特許権者】
【識別番号】000149435
【氏名又は名称】株式会社大塚製薬工場
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三池 信也
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】古山 猛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/215791(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0306626(US,A1)
【文献】特表2004-536639(JP,A)
【文献】米国特許第05690620(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 15/00
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経鼻経管栄養に用いる医療用チューブを体内に挿入する際に用いる導光体であって、
基端部に入射した光源からの光を導光し、先端部から出射する長尺の本体部を備え、
前記本体部は、
前記先端部から所定の長さを有する直線部と、
前記直線部と連続し、所定の曲率半径を有する曲線部とを有し、
前記直線部は、長さが40mm以上100mm以下であり、
前記曲線部は、曲率半径が105mm以上175mm以下であることを特徴とする導光体。
【請求項2】
光源装置と、
経鼻経管栄養に用いる医療用チューブと、
前記光源装置からの光を導光し、前記医療用チューブ内に挿入可能な導光体とを備え、
前記導光体は、
基端部から入射した前記光源装置からの光を導光し、先端部から出射する長尺の本体部を有し、
前記本体部は、
前記先端部から所定の長さを有する直線部と、
前記直線部と連続し、所定の曲率半径を有する曲線部とを有し、
前記直線部は、長さが40mm以上100mm以下であり、
前記曲線部は、曲率半径が105mm以上175mm以下であることを特徴とする医療用チューブ位置確認システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導光体に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食物の経口摂取が困難な患者に対して、経鼻経管栄養と呼ばれる手技によって飲食物を胃に直接供給することが行われている。具体的には、患者の鼻孔から医療用チューブを挿入し、食道を通じてその先端部を胃まで到達させる。その後、体外に位置する医療用チューブの基端部から、飲食物を注入する。
【0003】
ここで、医療用チューブの先端部が食道を通って胃まで到達したことを確認するための技術が知られている。
【0004】
例えば特許文献1には、対の絶縁電線とその先端部に形成されたセンサ部とを有する検知線が開示されている。検知線は医療用チューブに挿入され、センサ部が胃液に接触すると対の絶縁電線の間の抵抗値が変化する。これにより、対の絶縁電線の間の抵抗値の変化を検出することで、センサ部が胃液に接触したことを判定でき、以て医療用チューブが正しく胃に到達していることを判定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-77450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された医療用チューブは、患者の体内への挿入のしやすさについては考慮されていない。
【0007】
本発明の目的は、患者の体内に医療用チューブを容易に挿入するために用いる導光体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための発明は、経鼻経管栄養に用いる医療用チューブを体内に挿入する際に用いる導光体であって、基端部に入射した光源装置からの光を導光し、先端部から出射する長尺の本体部を備え、前記本体部は、前記先端部から所定の長さを有する直線部と、前記直線部と連続し、所定の曲率半径を有する曲線部とを有し、前記直線部は、長さが40mm以上100mm以下であり、前記曲線部は、曲率半径が105mm以上225mm以下であることを特徴とする導光体である。本発明の他の特徴については、後述する明細書及び図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、患者の体内に医療用チューブを容易に挿入するために用いる導光体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の医療用チューブ位置確認システムの全体構成を説明する概略図である。
図2】実施形態の導光体の構成を説明する図である。
図3】体内に挿入された実施形態の医療用チューブ及び導光体を説明する図である。
図4】体内に挿入された実施形態の医療用チューブ及び導光体を説明する図である。
図5】体内に挿入された実施形態の医療用チューブ及び導光体を説明する図である。
図6】人体模型に挿入された導光体を説明する図である。
図7】人体模型に挿入された導光体を説明する図である。
図8】実施例の各種条件及び評価結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
==医療用チューブ位置確認システム==
図1は、本実施形態の医療用チューブ位置確認システム1の全体構成を説明する図である。医療用チューブ位置確認システム1は、光源装置2と、医療用チューブ3と、導光体4とを備える。
【0012】
[光源装置]
光源装置2は、導光体4に光を供給する。光源装置2は、筐体2aと、発光部2bとを有する。筐体2aは、その内部に光源21を有する。光源21は、生体を透過する波長を含む光を生成する。発光部2bは、光源21で生成された光を集光するためのレンズ群(図示せず)を有し、集光された光を外部に発する。導光体4の基端部4bが発光部2bに接続されることにより、光源装置2は、光源21からの光を導光体4に供給することができる。光源21からの光は、医療用チューブ3の先端部3aの位置を確認するために用いられる(詳細は後述)。
【0013】
[医療用チューブ]
医療用チューブ3は、可撓性を有する長尺の管体である。医療用チューブ3は、先端部3aと基端部3bとを有する。医療用チューブ3は、経鼻経管栄養の手技に用いられる。具体的に、術者は、患者の鼻腔から医療用チューブ3を挿入し、食道を通じて医療用チューブ3の先端部3aを胃まで到達させる。その後、患者の体外に位置する医療用チューブ3の基端部3bから、飲食物を注入する。これによって、飲食物を患者の胃に直接供給することができる。
【0014】
[導光体]
図2を参照して、本実施形態の導光体4について説明する。導光体4は、光源装置2からの光を導光する長尺の部材である。導光体4は、先端部4aと基端部4bとを有する。導光体4は、例えば光ファイバであって、コアとクラッドを有する。コアは、光源装置2からの光を伝送する。コアの材質は、例えば、石英、ガラス、プラスチック等である。クラッドは、コアの外側を充填する。クラッドの材質は、例えば石英、ガラス、プラスチック等であって、コアに比べて屈折率が小さい材質である。導光体4に入射した光は、コアとクラッドの界面で全反射を繰り返しながらコアを伝搬する。
【0015】
導光体4は、弾性を有する。導光体4が外力を受け、その形状が自然状態から変形すると、導光体4の内部には自然状態に戻ろうとする復元力が生じる。ここで自然状態とは、外部からの力を受けていない状態である。以下、導光体4の形状について詳細に説明するが、図2を用いて説明する導光体4の形状は、自然状態での形状である。
【0016】
また、導光体4は、医療用チューブ3に挿入可能である。導光体4が医療用チューブ3に挿入されると、医療用チューブ3の形状は、導光体4の形状に追従して変形する。つまり、導光体4の単独での自然状態の形状と、導光体4が医療用チューブ3に挿入された状態での自然状態の形状は、概ね一致する。
【0017】
本実施形態の導光体4の径は、0.7mm以上2.5mm以下である。導光体4の径がこの範囲であれば、導光体4が医療用チューブ3に挿入されたときに、導光体4は自然状態の形状を維持することができる。また、体内の形状に追従して導光体4が変形しやすいため挿入しやすくなる。
【0018】
導光体4の径が0.7mmよりも小さい場合、外力に対する復元力が小さ過ぎるため、導光体4が医療用チューブ3に挿入されたときに、導光体4は、自然状態の形状を維持することができない。つまり、導光体4の形状が、医療用チューブ3の形状に追従して変形してしまう。従って、導光体4の単独での自然状態の形状と、導光体4が医療用チューブ3に挿入された状態での導光体4の自然状態の形状は、一致しなくなる。
【0019】
導光体4の径が2.5mmよりも大きい場合、外力に対する復元力が大き過ぎるため、体内の形状に追従して導光体4が変形しにくい。従って、導光体4を体内に挿入しにくくなる。
【0020】
導光体4は、本体部40を有する。本体部40は、長尺の部材である。本体部40の径は、導光体4の径に対応する。本体部40は、導光体4の基端部4bから入射した光源装置2からの光を導光し、導光体4の先端部4aから出射させる。本体部40は、直線部401と、曲線部402と、延長部403とを有する。
【0021】
直線部401は、導光体4の先端部4aから所定の長さLに相当する部分である。直線部401の軸心は直線である。
【0022】
直線部401の長さLは、40mm以上100mm以下である。直線部401の長さLがこの範囲であれば、医療用チューブ3を患者の体内へ挿入する際に、食道と気管との分岐部において、医療用チューブ3の先端部3aが、食道側へ移動しやすくなるため、気管に挿入されることを防止できる。
【0023】
直線部401の長さLが40mm未満の場合、医療用チューブ3を患者の体内へ挿入する際に、食道と気管との分岐部において、医療用チューブ3の先端部3aが、気管側へ移動しやすくなるため、気管に挿入される可能性がある。
【0024】
一方、直線部401の長さLが100mmより長い場合、医療用チューブ3を患者の体内へ挿入する際に、医療用チューブ3の先端部3aが患者の上咽頭部に突き当たり、直線部401に連続する曲線部402が持つ曲率により中咽頭部から下咽頭部への挿入を促すことができなくなり、食道への挿入が困難になる。
【0025】
曲線部402は、直線部401と連続し、所定の曲率半径Rを有する部分である。曲線部402の軸心は円弧である。図2には、曲線部402の軸心を通る円である曲率円Cの一部を破線で示している。尚、曲線部402の、先端部4a側の端部における軸心の接線は、直線L1と一致する。つまり、曲線部402と直線部401は、互いに滑らかに接続されている。
【0026】
曲線部402の曲率半径Rは、105mm以上225mm以下である。曲線部402の曲率半径Rがこの範囲であれば、医療用チューブ3を患者の体内へ挿入する際に、医療用チューブ3の先端部3aが患者の上咽頭部に突き当たることを防止できる。
【0027】
曲線部402の曲率半径Rが105mm未満の場合、医療用チューブ3を患者の体内へ挿入する際に、食道と気管との分岐部において、医療用チューブ3の先端部3aが、気管側へ移動しやすくなるため、気管に挿入される可能性がある。
【0028】
曲線部402の曲率半径Rが225mmより大きい場合、医療用チューブ3を患者の体内へ挿入する際に、医療用チューブ3の先端部3aが患者の上咽頭部に突き当たり、それ以上の挿入が困難になる可能性がある。
【0029】
更に好ましくは、曲線部402の曲率半径は、105mm以上175mm以下である。詳細は後述するが、導光体4が医療用チューブ3に挿入された状態において、導光体4の先端部4aは、医療用チューブ3の先端部3aとほぼ同じ位置に位置する。ここで、導光体4の先端部4aから出射し、患者の腹部を透過した光を術者が視認することにより、医療用チューブ3の先端部3aの位置を確認する。このとき、患者の胃に挿入された医療用チューブ3は、その先端部3aが、患者の胃内において腹部の表面から近い位置に到達するほど、導光体4の先端部4aから出射される光を術者が視認しやすくなるため好ましい。曲線部402の曲率半径Rが上記の範囲であれば、医療用チューブ3の先端部3aは、腹部の表面に近い位置に到達する。従って、術者は、導光体4の先端部4aから出射される光を視認しやすくなる。
【0030】
また、図2には、曲線部402の両端における軸心の接線である直線L1及び直線L2を破線で示している。直線L1は、曲線部402の、直線部401との接合部における軸心の接線である。また、直線L2は、曲線部402の、延長部403との接合部における軸心の接線である。ここで、直線部401の軸心を通る直線は、直線L1と一致する。
【0031】
曲線部402の両端における軸心の接線(直線L1及び直線L2)の成す角θ(図2参照)は、29度以上である。角θがこの範囲であれば、医療用チューブ3を患者の体内へ挿入する際に、医療用チューブ3の先端部3aが患者の上咽頭部に突き当たることを防止できる。角θがこの範囲よりも小さいと、医療用チューブ3を患者の体内へ挿入する際に、医療用チューブ3の先端部3aが患者の上咽頭部に突き当たり、直線部401に連続する曲線部402が持つ曲率により中咽頭部から下咽頭部への挿入を促すことができなくなり、食道への挿入が、困難になる可能性がある。
【0032】
延長部403は、曲線部402と連続し、導光体4の基端部4bまで延びる部分である。尚、曲線部402と延長部403の接合部において、曲線部402の軸心の接線(直線L2)は、延長部403の軸心の接線と一致する。つまり、曲線部402と延長部403は、互いに滑らかに接続されている。
【0033】
尚、本実施形態の本体部40は、一の部材において、直線部401、曲線部402及び延長部403を設けた態様を示した。一方、直線部401、曲線部402及び延長部403は、それぞれ別部材で構成されており、互いに連結することで一の本体部40を構成することでもよい。
【0034】
==体内における医療用チューブ及び導光体==
図3図5を参照して、体内における医療用チューブ3及び導光体4の状態を説明する。上述の通り、医療用チューブ3は、患者の体内に挿入される際、導光体4が挿入された状態である。また、導光体4の先端部4aは、本実施形態では、医療用チューブ3の先端部3aとほぼ同じ位置に位置する。尚、導光体4の先端部4aから出射する光を術者が視認することができればよく、導光体4の先端部4aが医療用チューブ3の先端部3aとほぼ同じ位置に位置する態様に限定されない。
【0035】
先ず、医療用チューブ3は、先端部3aから患者の鼻腔もしくは口腔に挿入される。図3~5は、医療用チューブ3が鼻腔から挿入された例を示している。図3は、医療用チューブ3が、先端部3aから直線部401の長さLだけ鼻腔に挿入された状態を示している。図3では、導光体4の曲線部402の曲率円Cを破線で示している。図3に示す医療用チューブ3の状態において、導光体4の曲線部402の曲率円Cは、導光体4に対して患者の口腔側に位置する。また、図3の状態において、導光体4の直線部401と曲線部402は、ほぼ自然状態である。
【0036】
図4は、医療用チューブ3が図3の状態から更に患者の体内へ挿入され、導光体4の直線部401が、患者の咽頭に到達した状態を示している。このとき、導光体4の直線部401と曲線部402は、ほぼ自然状態に保たれており、曲率円Cは、図3に比べて咽頭側へ移動している。
【0037】
図3から図4に至る過程において、導光体4の曲線部402が鼻腔に挿入される。この過程において、医療用チューブ3は、鼻腔及び咽頭の内壁からの抗力を殆ど受けず、導光体4の直線部401と曲線部402はほぼ自然状態に保たれる。曲線部402が鼻腔に更に挿入されると、曲線部402は、曲率円Cの位置を図4に示す位置から殆ど変えずに移動する。それに伴い、医療用チューブ3の先端部3aは、患者に対して下方に向かう。これにより、医療用チューブ3の先端部3aは患者の咽頭上部に突き当たらずに、咽頭を下方へ移動する。
【0038】
尚、図4の状態において、医療用チューブ3の先端部3aは、食道に到達していない。また、図4の状態において、医療用チューブ3の先端部3aは、気管側ではなく、食道側へ向いている。これは、導光体4の本体部40が直線部401を有することに起因する。
【0039】
図4の状態から、医療用チューブ3が更に患者の体内へ挿入されると、医療用チューブ3の先端部3aは食道に挿入される(図5)。そして、医療用チューブ3が更に患者の体内へ挿入されると、医療用チューブ3の先端部3aは患者の胃へ到達する。
【0040】
医療用チューブ3が体内へ挿入される過程の任意のタイミングで、光源装置2のスイッチがオンに切り替えられると、導光体4の先端部4aから光が出射される。術者は、導光体4の先端部4aから出射し、患者を透過する光を視認することにより、医療用チューブ3の先端部3aの位置を確認することができる。または、導光体4の先端部4aから出射し、患者を透過する光を撮像装置等によって検出することにより、医療用チューブ3の先端部3aの位置を確認してもよい。
【0041】
以上、本実施形態の導光体4は、経鼻経管栄養に用いる医療用チューブ3を体内に挿入する際に用いる導光体4であって、基端部4bに入射した光源装置2からの光を導光し、先端部4aから出射する長尺の本体部40を備え、本体部40は、先端部4aから所定の長さLを有する直線部401と、直線部401と連続し、所定の曲率半径Rを有する曲線部402とを有し、直線部401は、長さLが40mm以上100mm以下であり、曲線部402は、曲率半径Rが105mm以上225mm以下である。
【0042】
以上のような構成によれば、導光体4の本体部40が曲線部402を有するため、導光体4が挿入された医療用チューブ3を患者の体内に挿入する際に、医療用チューブ3の先端部3aが上咽頭部に突き当たることを防止できる。また、導光体4の本体部40が直線部401を有するため、導光体4が挿入された医療用チューブ3を患者の体内に挿入する際に、咽頭を通過した医療用チューブ3の先端部3aは、気管側に移動することなく、食道側へ向かう。従って、医療用チューブ3を食道側へ挿入しやすくなる。すなわち、本実施形態に係る導光体4は、患者の体内に医療用チューブ3を容易に挿入するために用いることができる。
【0043】
また、上記の導光体4において、曲線部402は、曲率半径Rが105mm以上175mm以下であることが好ましい。このような構成によれば、患者の胃内において、医療用チューブ3の先端部3aが患者の腹部表面に近い場所に位置する。従って、医療用チューブ3の先端部3aにおいて、導光体4の先端部4aから出射する光を体外から視認しやすくなるため、術者は先端部3aの位置を正確に確認することができる。
【0044】
また、本実施形態の医療用チューブ位置確認システム1は、光源装置2と、経鼻経管栄養に用いる医療用チューブ3と、光源装置2からの光を導光し、医療用チューブ3内に挿入可能な導光体4とを備え、導光体4は、基端部4bから入射した光源装置2からの光を導光し、先端部4aから出射する長尺の本体部40を有し、本体部40は、先端部4aから所定の長さLを有する直線部401と、直線部401と連続し、所定の曲率半径Rを有する曲線部402とを有し、直線部401は、長さLが40mm以上100mm以下であり、曲線部402は、曲率半径Rが105mm以上225mm以下である。
【0045】
以上のような構成によれば、導光体4の本体部40が曲線部402を有するため、導光体4が挿入された医療用チューブ3を患者の体内に挿入する際に、医療用チューブ3の先端部3aが上咽頭部に突き当たることを防止できる。また、導光体4の本体部40が直線部401を有するため、導光体4が挿入された医療用チューブ3を患者の体内に挿入する際に、咽頭を通過した医療用チューブ3の先端部3aは、気管側に移動することなく、食道側へ向かう。従って、医療用チューブ3を食道側へ挿入しやすくなる。すなわち、医療用チューブ位置確認システム1によれば、上記の構成の導光体4を有するため、患者の体内に医療用チューブ3を容易に挿入することができる。
【0046】
また、上記の医療用チューブ位置確認システム1において、曲線部402は、曲率半径Rが105mm以上175mm以下であることが好ましい。このような構成によれば、患者の胃内において、医療用チューブ3の先端部3aが患者の腹部表面に近い場所に位置し、なおかつ4aの先端が体表面方向を向くことになる。従って、医療用チューブ3の先端部3aにおいて、導光体4の先端部4aから出射する光を体外から視認しやすくなるため、術者は先端部3aの位置を正確に確認することができる。
【実施例
【0047】
人体模型を用いて、導光体の体内への挿入しやすさについて評価を行った。尚、実施形態で説明したように、導光体が医療用チューブに挿入されると、医療用チューブの形状は、導光体の形状に追従して変形する。そのため、導光体が医療用チューブに挿入された場合、体内での医療用チューブの位置及び形状は、導光体の形状及び位置に概ね等しい。従って、本実施例のように医療用チューブを省略しても、導光体を医療用チューブに挿入した場合と同様の結果が得られる。
【0048】
[評価方法]
導光体の体内への挿入しやすさの評価方法について、図6及び7を用いて説明する。本実施例では、人体模型に対して、導光体の先端部の位置を確認することにより、導光体の体内への挿入しやすさについて評価を行った。具体的には、導光体を人体模型の鼻腔から挿入する過程における導光体の先端部の位置P2(詳細は後述)と、挿入完了時における導光体の先端部の位置P4(詳細は後述)の2つの位置に着目した。ここで、挿入完了時とは、人体模型の鼻腔から導光体を挿入していき、導光体の先端部が胃壁に当接したときを意味する。
【0049】
位置P2は、人体模型の鼻腔から導光体を挿入して導光体の先端部を胃に到達させる過程において、咽頭部付近に位置する導光体の先端部が、食道の内壁と当接した位置である。
【0050】
本実施例では、食道と気管の分岐部の位置を、位置P1とした。そして、位置P1と位置P2との距離を測定した。位置P1と位置P2との距離が、12mm以上であれば、導光体の先端部を容易に食道へ挿入することができると判定した。
【0051】
位置P4は、人体模型に対して導光体の挿入が完了した状態において、導光体の先端部が当接した胃壁上の位置である。
【0052】
本実施例では、人体模型の胃壁上の位置のうち、人体模型の腹部表面に最も近い位置を、位置P3とした。そして、位置P3と位置P4との距離を測定した。位置P3と位置P4との距離が、30mm以内であれば、導光体の先端部から出射する光を目視しやすくなると判定した。
【0053】
[共通条件]
本実施例では、人体模型としては、京都科学社製経管栄養シミュレータ(MW8)を用いた。導光体としては、光ファイバを用い、各条件の曲線部の曲率及び直線部の長さを有するように加工した。
【0054】
[個別条件]
図8は、各実施例の条件と、それについての評価結果を示す表である。各実施例について、導光体の径、曲線部の曲率半径及び直線部の長さの条件を与えた。
【0055】
[評価結果]
実施例1~11では、位置P1と位置P2の距離が12mm以上となった。前述のように、位置P1と位置P2との距離が、12mm以上であれば、導光体の先端部を容易に食道へ挿入することができる。
【0056】
この結果は、直線部の長さが40mm以上100mm以下であり、曲線部の曲率半径が105mm以上225mm以下であれば、導光体を患者の体内に挿入する際に、咽頭を通過した導光体の先端部は、気管側に移動することなく、食道側へ向かいやすいことを示している。つまり、この結果は、直線部の長さ及び曲線部の曲率半径の各々がこれらの範囲であれば、患者の食道に導光体を容易に挿入することができることを示している。
【0057】
前述のように、導光体を医療用チューブに挿入した場合であっても、本実施例のように医療用チューブを省略した結果と同様の結果が得られる。従って、実施例1~11の結果は、直線部の長さ及び曲線部の曲率半径の各々が上記の範囲であれば、患者の食道に医療用チューブを容易に挿入することができることを示している。
【0058】
実施例4、5、6、9、10及び11では、位置P3と位置P4の距離が30mm以下となった。前述のように、位置P3と位置P4との距離が、30mm以内であれば、導光体の先端部が患者の腹部表面に近く、導光体の先端部から出射する光を目視しやすくなる。
【0059】
この結果は、曲線部の曲率半径が105mm以上175mm以下であれば、患者の胃内において、導光体の先端部が患者の腹部表面に近い場所に到達することを示している。つまり、この結果は、導光体の先端部から出射する光を目視しやすくなることを示している。
【0060】
従って、実施例4、5、6、9、10及び11の結果は、曲線部の曲率半径が上記の範囲であれば、導光体を医療用チューブに挿入した状態で患者の胃内に挿入した場合であっても、導光体を介して医療用チューブの先端部から出射する光を目視しやすくなることを示している。
【符号の説明】
【0061】
1:医療用チューブ位置確認システム
2:光源装置
2a:筐体
2b:発光部
21:光源
3:医療用チューブ
3a:先端部
3b:基端部
4:導光体
4a:先端部
4b:基端部
40:本体部
401:直線部
402:曲線部
403:延長部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8