(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】圧電アクチュエータ、光走査装置
(51)【国際特許分類】
G02B 26/10 20060101AFI20240321BHJP
G02B 26/08 20060101ALI20240321BHJP
H02N 2/12 20060101ALI20240321BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20240321BHJP
H10N 30/87 20230101ALI20240321BHJP
【FI】
G02B26/10 104Z
G02B26/08 E
H02N2/12
H10N30/20
H10N30/87
(21)【出願番号】P 2020096726
(22)【出願日】2020-06-03
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】須藤 康之
(72)【発明者】
【氏名】阿賀 寿典
【審査官】中村 百合子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/110694(WO,A1)
【文献】特開平11-168246(JP,A)
【文献】特開2014-082464(JP,A)
【文献】特開2018-128505(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0155879(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106814451(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/00-26/12
G02B 6/35
H10N 30/20
H10N 30/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された圧電素子と、
前記基板上に形成された配線と、を有し、
前記圧電素子は、
第1電極と、前記第1電極上に形成された第1圧電膜と、前記第1圧電膜上に形成された第2電極と、前記第2電極上に形成された第2圧電膜と、前記第2圧電膜上に形成された第3電極と、を有し、
前記圧電素子の角部において、前記第3電極に設けられた切り欠き部内に前記第2電極が露出し、
前記第1電極及び前記第3電極は、前記圧電素子の短手方向に沿って直線状に並ぶ複数の第1コンタクト部を介して第1配線と接続され、
前記切り欠き部内に露出する前記第2電極は、前記圧電素子の長手方向に沿って直線状に並ぶ複数の第2コンタクト部を介して第2配線と接続されている圧電アクチュエータ。
【請求項2】
隣接する前記
第1コンタクト部の間隔は、隣接する前記
第1コンタクト部の直径よりも小さ
く、
隣接する前記第2コンタクト部の間隔は、隣接する前記第2コンタクト部の直径よりも小さい請求項1に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項3】
前記複数の
第1コンタクト部は、3つ以上の
第1コンタクト部を含
み、
前記複数の第2コンタクト部は、3つ以上の第2コンタクト部を含む請求項1又は2に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項4】
前記
第1コンタクト部
及び前記第2コンタクト部の
各々の直径は、40μmよりも小さく3μm以上である請求項1乃至
3の何れか一項に記載の圧電アクチュエータ。
【請求項5】
請求項1乃至
4の何れか一項に記載の圧電アクチュエータにより駆動されるミラー部を有する光走査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電アクチュエータ、光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ミラー部を回転させて光を走査する光走査装置において、ミラー部を駆動する駆動源として、圧電膜を有する圧電アクチュエータが用いられる場合がある。このような圧電アクチュエータには、圧電膜に電圧を印加するための電極が設けられており、電極と配線がコンタクト部で接続されている。電極と配線とを接続するコンタクト部は、例えば、円形や四角形であり、電極と配線の一つの接続箇所に通常は1つのコンタクト部が設けられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、圧電アクチュエータをスマートフォン等の小型の機器に内蔵する検討がなされており、圧電アクチュエータの小型化が求められている。
【0005】
しかしながら、電極と配線とを接続するコンタクト部は一定の面積を必要とすることから、圧電アクチュエータにおける電極や配線等のレイアウトの自由度を妨げており、これが圧電アクチュエータの小型化を妨げる要因の一つとなっていた。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、圧電アクチュエータにおいて、電極や配線等のレイアウトの自由度の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本圧電アクチュエータは、基板(310)と、前記基板(310)上に形成された圧電素子と、前記基板(310)上に形成された配線(140)と、を有し、前記圧電素子は、第1電極(330)と、前記第1電極(330)上に形成された第1圧電膜(340)と、前記第1圧電膜(340)上に形成された第2電極(350)と、前記第2電極(350)上に形成された第2圧電膜(360)と、前記第2圧電膜(360)上に形成された第3電極(370)と、を有し、前記圧電素子の角部において、前記第3電極(370)に設けられた切り欠き部内に前記第2電極(350)が露出し、前記第1電極(330)及び前記第3電極(370)は、前記圧電素子の短手方向に沿って直線状に並ぶ複数の第1コンタクト部(140a)を介して第1配線(140)と接続され、前記切り欠き部内に露出する前記第2電極(350)は、前記圧電素子の長手方向に沿って直線状に並ぶ複数の第2コンタクト部(140a)を介して第2配線(140)と接続されている。
【0008】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、圧電アクチュエータにおいて、電極や配線等のレイアウトの自由度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る光走査装置を例示する平面図である。
【
図2】光走査装置のコンタクト部近傍の部分平面図である。
【
図5】複数のコンタクト部の効果について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0012】
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係る光走査装置を例示する平面図であり、光走査装置をミラー反射面10側から視た図である。
図1において、2本のトーションバー50の長手方向を垂直方向、2本のトーションバー50の長手方向と直交する方向を水平方向としている。
【0013】
図1を参照すると、光走査装置1は、ミラー部40と、トーションバー50と、連結部60と、水平駆動部70と、可動枠80と、垂直駆動部110と、固定枠120と、端子130と、配線140とを有するMEMS(Micro Electro Mechanical System)である。
【0014】
ミラー部40は、ミラー反射面10と、応力緩和領域20とを有する。水平駆動部70は、水平駆動梁71と、駆動源72とを有する。垂直駆動部110は、垂直駆動梁90と、駆動源91と、連結部100とを有する。
【0015】
ミラー部40は、垂直方向に延在する2本のトーションバー50により、垂直方向の両外側から挟持されている。ミラー部40は、中心にミラー反射面10を有し、ミラー反射面10とトーションバー50との間に応力緩和領域20を有する。各応力緩和領域20には、2つのスリット30が形成されている。又、トーションバー50は、基端部50aが連結部60を介して水平駆動梁71の内側の角に連結されている。水平駆動梁71は、表面に駆動源72を備え、外側の辺が可動枠80に連結されている。
【0016】
駆動源72には、例えば、電圧の印加に応じて伸縮する圧電素子が用いられる。圧電素子には、例えば、ピエゾ素子が用いられる。
【0017】
又、トーションバー50の基端部50aには、圧電センサ51が設けられている。圧電センサ51は、ミラー部40が水平方向に揺動している状態におけるミラー反射面10の水平方向の振角を検出するための振角センサである。圧電センサ51には、圧電素子が用いられ、例えばピエゾ素子が用いられる。
【0018】
可動枠80は、水平駆動梁71を介して連結部60、トーションバー50、及びミラー部40を支持するとともに、これらの周囲を囲んでいる。可動枠80は、垂直駆動梁90に連結されている。
【0019】
垂直駆動梁90は、可動枠80の水平方向の両側に、可動枠80を挟むように配置されている。垂直駆動梁90は、トーションバー50と平行に複数設けられている。可動枠80の各片側には、2つの垂直駆動梁90が水平方向に隣接するように配置されている。隣接する2つの垂直駆動梁90は、連結部100により連結されている。
【0020】
内側の垂直駆動梁90は、一端が可動枠80に連結され、他端が外側の垂直駆動梁90に連結されている。又、外側の垂直駆動梁90は、一端が固定枠120に連結され、他端が内側の垂直駆動梁90に連結されている。又、垂直駆動梁90には、駆動源91が設けられている。駆動源91には、駆動源72と同様に圧電素子が用いられ、例えばピエゾ素子が用いられる。
【0021】
又、外側の垂直駆動梁90の一端には、圧電センサ92が設けられている。圧電センサ92は、ミラー部40が垂直方向に揺動している状態におけるミラー反射面10の垂直方向の振角を検出するための振角センサである。圧電センサ92には、圧電センサ51と同様に圧電素子が用いられ、例えばピエゾ素子が用いられる。
【0022】
固定枠120は、外側の垂直駆動梁90を介して垂直駆動部110を支持する。すなわち、固定枠120は、駆動部(垂直駆動部110及び水平駆動部70)を介してミラー部40を支持している。垂直駆動部110及び可動枠80を取り囲んでおり、外形が矩形状である。本実施形態では、固定枠120の外形は、ほぼ正方形である。
【0023】
固定枠120の表面には複数の端子130が設けられている。各端子130には配線140が接続されている。配線140は、駆動源72、91、及び圧電センサ51、92に接続されている。又あるいは、配線140には、駆動源72、91の各電極等に配線140をコンタクトさせるためのコンタクト部140aが形成されている。固定枠120の表面に、端子130及び配線140以外に、検査用パターンが形成されてもよい。
【0024】
以下、各部のより詳細な説明を行う。
【0025】
ミラー部40は、ほぼ円形のミラー反射面10を中心に備える。ミラー反射面10は、銀、銅、アルミニウム等の反射率の高い金属膜により形成されている。
【0026】
応力緩和領域20は、トーションバー50の捻れ応力を緩和させ、ミラー反射面10に加わる応力を低減させるために、ミラー反射面10との間に設けられたスペーサ部である。応力緩和領域20は、トーションバー50の捻れ運動で発生する応力を分散させ、ミラー反射面10に加わる応力を緩和できる。
【0027】
スリット30は、応力緩和領域20に印加された応力を分散させるための穴であり、応力緩和領域20内に設けられている。
【0028】
トーションバー50は、ミラー部40を両側から支持するとともに、ミラー部40を水平方向に揺動させるための手段である。ここで、水平方向とは、ミラー反射面10により反射される光が高速に走査して移動する方向であり、投影面の横方向を意味する。つまり、ミラー反射面10が横方向に揺動する方向であり、トーションバー50が軸となる方向である。トーションバー50は、左右に交互に捻れることにより、ミラー部40を水平方向に揺動させる。
【0029】
連結部60は、水平駆動梁71で発生した水平方向の駆動力をトーションバー50に伝達するための伝達手段である。
【0030】
水平駆動梁71は、ミラー部40を水平方向に揺動させ、ミラー反射面10により反射された光を投影面の水平方向に走査させるための駆動手段である。2つの駆動源72に異なる位相の電圧を交互に印加することにより、2つの水平駆動梁71を交互に反対方向に反らせることができる。これにより、トーションバー50に捻れ力を与え、トーションバー50に平行な水平回転軸の周りにミラー部40を揺動させることができる。
【0031】
又、水平駆動梁71による駆動は、例えば、共振駆動が用いられる。本実施形態の光走査装置1をプロジェクタ等に適用した場合には、例えば30kHzの共振駆動によりミラー部40が駆動される。
【0032】
又、隣接する垂直駆動梁90に異なる位相の電圧を印加することにより、可動枠80を垂直方向に揺動させることができる。なお、ミラー部40は、可動枠80に支持されているので、可動枠80の揺動に伴い、垂直方向に揺動する。
【0033】
なお、垂直駆動部110は、例えば、非共振駆動により可動枠80を揺動させる。垂直駆動は、水平駆動と比較して高速駆動は要求されず、駆動周波数は、例えば、60Hz程度である。
【0034】
以上の構成の光走査装置1は、例えば、シリコンウェハやSOI(Silicon On Insulator)ウェハを用いて製造される。
【0035】
図2は、光走査装置のコンタクト部近傍の部分平面図である。
図3は、
図2のA-A線に沿う部分断面図である。
図4は、
図2のB-B線に沿う部分断面図である。
【0036】
図2及び
図3を参照すると、駆動源91は、基板310上に順次形成された、絶縁膜320、下部電極330、圧電膜340、中間電極350、圧電膜360、上部電極370、層間絶縁膜380、及び増反射膜390を有する圧電アクチュエータである。
【0037】
光走査装置1において、例えば、中間電極350がグランドに接続され、下部電極330及び上部電極370に駆動源91を駆動する駆動信号が供給される。下部電極330及び上部電極370に駆動信号が供給されると、駆動源91は駆動信号の電圧にしたがって変位する。なお、駆動信号が中間電極350に供給され、下部電極330及び上部電極370がグランドに接続されるようにしても同様に駆動することができる。
【0038】
基板310は、例えば、シリコン基板である。シリコン基板の上面に、シリコン酸化膜(熱酸化膜)等の絶縁膜320が形成されている。基板310として、支持層、埋め込み(BOX:Buried Oxide)層、及び活性層を有するSOI基板を用いてもよい。
【0039】
下部電極330は、例えば、Pt等の白金族の金属からなる単一の導電膜とすることができる。下部電極330は、絶縁膜320側から第1層、第2層、及び第3層が順次積層された3層構造の導電膜としてもよい。
【0040】
後者の場合、第1層及び第3層の各々は、ペロブスカイト構造及び(110)配向を含んだ導電性酸化膜であることが好ましい。ペロブスカイト構造及び(110)配向を含んだ導電性酸化膜としては、例えば、LNO(LaNiO3:ニッケル酸ランタン)薄膜、SRO(Sr2RuO4:酸化ストロンチウム)薄膜、BRO(BaRuO3:ルテニウム酸バリウム)薄膜等が挙げられる。第1層及び第3層の各々の膜厚は、例えば、30nmである。第2層は、例えば、Pt薄膜である。第2層は、Pt以外の白金族の薄膜でもよく、例えば、Ir薄膜、Os薄膜等を用いてもよい。第2層の膜厚は、例えば、150nmである。
【0041】
中間電極350は、下部電極330と同様に、例えば、Pt等の白金族の金属からなる単一の導電膜とすることができる。中間電極350は、下部電極330と同様に、圧電膜340側から第1層、第2層、及び第3層が順次積層された3層構造の導電膜としてもよい。
【0042】
後者の場合、第1層及び第3層の各々は、ペロブスカイト構造及び(110)配向を含んだ導電性酸化膜であることが好ましい。第1層及び第3層の具体的な材料は、下部電極330において例示したものと同様である。第1層及び第3層の各々の膜厚は、例えば、80nmである。第2層は、例えば、Pt薄膜である。第2層は、Pt以外の白金族の薄膜でもよく、例えば、Ir薄膜、Os薄膜等を用いてもよい。第2層の膜厚は、例えば、150nmである。
【0043】
上部電極370は、例えば、Pt等の白金族の金属からなる単一の導電膜とすることができる。上部電極370は、圧電膜360側から第1層及び第2層が順次積層された2層構造の導電膜としてもよい。
【0044】
後者の場合、第1層は、ペロブスカイト構造及び(110)配向を含んだ導電性酸化膜であることが好ましい。第1層の具体的な材料は、下部電極330において例示したものと同様である。第1層の膜厚は、例えば、80nmである。第2層は、例えば、Pt薄膜である。第2層は、Pt以外の白金族の薄膜でもよく、例えば、Ir薄膜、Os薄膜等を用いてもよい。第2層の膜厚は、例えば、100nmである。
【0045】
中間電極350の第1層及び上部電極370の第1層は、それぞれの下層にある圧電膜340及び360の劣化を抑制している。
【0046】
下部電極330の第1層及び第3層の膜厚、中間電極350の第1層及び第3層の膜厚、及び上部電極370の第1層の膜厚は、各々30nm以上とすることが好ましい。これらの膜厚を30nm以上とすることで、LNO薄膜等の導電性酸化膜を均一に成膜できる。
【0047】
下部電極330の第3層の平均粒径、及び中間電極350の第3層の平均粒径は、35nm以下であることが好ましく、25nm以下であることがより好ましい。
【0048】
下部電極330の第3層の平均粒径が上記範囲であると、上層である圧電膜340の平均粒径を小さくできる。又、中間電極350の第3層の平均粒径が上記範囲であると、上層である圧電膜360の平均粒径を小さくできる。光走査装置1において、圧電膜340及び360の各々の平均粒径を小さくするほど、駆動源91に駆動されるミラー部を同じ振れ角にするための駆動電圧(以降、単に、駆動源91の駆動電圧と称する)を低減できる。
【0049】
ここで、平均粒径とは、対象となる膜の面内水平方向の結晶粒径の平均値である。平均粒径は、電子線回折装置で分析することで算出できる。又、面内水平方向とは、対象となる膜が形成される下層の上面に水平な方向である。
【0050】
圧電膜340及び360を構成する圧電材料は、ペロブスカイト構造であることが好ましい。圧電膜340及び360は、例えば、ペロブスカイト構造であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)である。圧電膜340は下部電極330上に、圧電膜360は中間電極350上に、例えば、ゾルゲル法を用いて形成できる。
【0051】
圧電膜340及び360を構成する圧電材料は、ペロブスカイト構造であれば、PZT以外でもよく、例えば、PNZT(チタン酸ジルコン酸ニオブ酸鉛)、PLZT(チタン酸ジルコン酸ランタン鉛)、PLT(チタン酸ランタン鉛)、PMN(マグネシウム酸ニオブ酸鉛)、PMNN(マンガン酸ニオブ酸鉛)、BaTiO3(チタン酸バリウム)等が挙げられる。圧電膜340及び360に、これらの圧電材料を用いることで、単位電圧当たりの駆動力を向上できる。
【0052】
圧電膜340の平均粒径、及び圧電膜360の平均粒径は、各々1μm以下とすることが好ましく、600nm以下とすることがより好ましく、450nm以下とすることが更に好ましい。前述のように、圧電膜340及び360の各々の平均粒径を小さくするほど、駆動源91の駆動電圧を低減できる。
【0053】
下部電極330及び中間電極350は、例えば、それぞれの上層に形成される圧電膜340及び360を結晶化させるため、基板310の温度を500度以上にして、第3層333及び353の面内垂直方向の結晶方位を(110)優先配向させるようにスパッタリングにより成膜できる。この条件で下部電極330と中間電極350とを形成することにより、PZT薄膜を結晶化させて良好な圧電特性を取得可能となる。これにより、駆動源91の駆動電圧を低減できる。
【0054】
層間絶縁膜380は、アルミナ(Al2O3)等からなる。増反射膜390は、屈折率の異なる誘電体膜が積層された積層誘電体膜である。積層誘電体膜は可視光域中の低波長域(波長550nmよりも低波長側の領域)の反射率を上げる増反射膜として機能する。増反射膜390は、例えば、アルミナ等からなる低屈折率膜上に、酸化チタン等からなる高屈折率膜が積層された積層誘電体膜である。低屈折率膜と高屈折率膜とは屈折率差が大きいことが好ましい。
【0055】
なお、駆動源91の構造は、
図3の例には限定されない。例えば、駆動源91において、圧電膜は最低1層で良く、この場合、圧電膜の上下に下部電極及び上部電極が形成された3層構造となり、中間電極は不要となる。又、3層以上の圧電膜を設けてもよく、この場合、下部電極上に圧電膜及び中間電極が必要な数だけ交互に積層され、最後に最上層の中間電極上に圧電膜及び上部電極が順次積層される。
【0056】
圧電膜をn層とすることにより、駆動源91の駆動電圧を、1層の場合の1/nにできる。以上、駆動源91について説明したが、駆動源72についても駆動源91と同様の構造とすることができる。
【0057】
図2及び
図4を参照すると、下部電極330、中間電極350、及び上部電極370は、複数のコンタクト部140aで配線140と電気的に接続されている。各配線140は、対応する端子130に接続されている。
【0058】
例えば、配線140と下部電極330とを接続するコンタクト部140aの近傍では、下部電極330上に層間絶縁膜380、配線140、及び増反射膜390が積層されている。そして、下部電極330上の層間絶縁膜380の所定領域に、下部電極330を露出するコンタクトホール380xが3個形成され、層間絶縁膜380上の配線140が各々のコンタクトホール380x内に入り込んで下部電極330と接続されている。配線140は、例えば、金(Au)により形成されている。なお、コンタクト部140aは、コンタクトホール380x、及びコンタクトホール380xを埋めている配線140を指す。
【0059】
このように、本実施形態では、同一箇所を接続するコンタクト部140aが複数個設けられている。これにより、コンタクトホール380xの1つ当たりの直径を小さくできるため、電極や配線等のレイアウトの自由度を向上でき、配線のパターン形状の変更等が可能となる。
【0060】
例えば、
図5の矢印左側に示すように、同一箇所を接続するコンタクト部140aを1個とした場合、コンタクトホール380xの直径が40μmであったとする。これを
図5の矢印右側(
図2と同じ図)に示すように、同一箇所を接続するコンタクト部140aを複数個(例えば、3個)とした場合、コンタクトホール380xの1つ当たりの直径を40μmよりも小さくできる。加工性を考慮すると、コンタクトホール380xの1つ当たりの直径は3μm以上であることが好ましい。レイアウトの自由度を向上する観点からは、コンタクトホール380xの1つ当たりの直径を20μm以下とすることが好ましく、15μm以下とすることが好ましく、10μm以下とすることが更に好ましい。
【0061】
E部におけるコンタクトホール380xのシュリンクと、それに合わせた配線140のレイアウト変更により、F部に空きスペースができるため、空きスペースの有効活用が可能となる。例えば、素子サイズを小型化できる。
【0062】
又、G部では、平面視において、圧電膜340及び上部電極370は切り欠き部340xを備え、中間電極350の一部が切り欠き部340x内に露出している。そして、切り欠き部340x内に露出する中間電極350は、複数のコンタクト部140aで配線140と接続されている。
【0063】
このような構造であれば、コンタクトホール380xのシュリンクと、それに合わせた配線140のレイアウト変更により、中間電極350上に空きスペースができる。そのため、空きスペースに圧電膜360及び上部電極370を延伸させて、圧電膜360及び上部電極370の面積を増大でき、その結果、駆動源91の駆動力を向上可能となる。
【0064】
このように、基板から遠い側に積層された上側の電極に設けられた切り欠き部内に、基板に近い側に積層された下側の電極が露出し、切り欠き部内に露出する下側の電極が、複数のコンタクト部で配線と接続されている構造では、コンタクトホールのシュリンクと、それに合わせた配線のレイアウト変更により、圧電膜及び上側の電極の面積を増大でき、駆動源の駆動力を向上可能となる。
【0065】
なお、切り欠き340xが圧電膜340及び上部電極370の端部(角部)以外に設けられた場合にも、コンタクトホール380xのシュリンクと、それに合わせた配線140のレイアウト変更により、上記と同様の効果を奏する。又、上部電極と下部電極を有し、中間電極を有しない構造の場合にも、上記の構造であれば、コンタクトホールのシュリンクと、それに合わせた配線のレイアウト変更により、上記と同様の効果を奏する。
【0066】
又、E部やG部におけるコンタクトホール380xのシュリンクにより、配線140の幅を狭くできるため、配線140そのものが持つ応力が軽減され、駆動源91の駆動力を向上可能となる。
【0067】
なお、同一箇所を接続するコンタクト部140aは2個以上であれば任意の個数としてよいが、例えば直線状に並ぶ3つ以上のコンタクト部を含むことが好ましい。同一箇所を接続するコンタクト部140aを3個以上とすることで、コンタクトホール380xの1つ当たりの直径を小さくできるとともに、接続対象物同士の接続信頼性を向上できる。
【0068】
コンタクトホール380xの平面形状は四角形とすることも可能であるが、レジストの加工性やエッチングの容易性を考慮すると円形であることが好ましい。又、同一径の円形のコンタクトホール380xを複数個配列する代わりに、一つの楕円形のコンタクトホールとすることも考えられるが、レジストの加工性やエッチングの容易性を考慮すると同一径の円形のコンタクトホール380xを複数個配列する方が好ましい。
【0069】
又、隣接するコンタクト部140aの間隔Sは、隣接するコンタクト部140aの各々の直径φよりも小さいことが好ましい。これにより、複数のコンタクト部140aの配置密度を高めることができ、一層の省スペース化が可能となる。特に、光走査装置1をスマートフォン等の小型の危機に内蔵する場合に有効である。
【0070】
但し、電極と配線とを接続する全てのコンタクト部を複数個とする必要はなく、例えば、レイアウト上余裕がある個所では、従来と同様に、比較的大径の1つのコンタクト部で電極と配線とを接続してもよい。
【0071】
上記実施形態の光走査装置1は、例えば、アイウェアやプロジェクタ、スマートフォン等の二次元走査型の光走査装置に適用できる。
【0072】
又、上記各実施形態では、光走査装置として、トーションバーを用いた光走査装置を例に挙げて説明しているが、本発明は、トーションバーを用いない光走査装置に対しても適用可能である。又、上記各実施形態では、二次元走査型の光走査装置を例に挙げて説明しているが、二次元走査型に限られず、1方向にミラー部を揺動させる一次元走査型の光走査装置であってもよい。
【0073】
以上、好ましい実施形態について説明したが、上述した実施形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0074】
例えば、上記実施形態に係る圧電アクチュエータは、光走査装置以外に用いてもよく、例えば、インクジェットヘッドに用いることができる。
【符号の説明】
【0075】
1:光走査装置、10:ミラー反射面、20:応力緩和領域、30:スリット、40:ミラー部、50:トーションバー、51:圧電センサ、60、100:連結部、70:水平駆動部、71:水平駆動梁、72:駆動源、80;可動枠、90:垂直駆動梁、91:駆動源、92:圧電センサ、110:垂直駆動部、120:固定枠、130:端子、140:配線、140a:コンタクト部、310:基板、320:絶縁膜、330:下部電極、340:圧電膜、350:中間電極、360:圧電膜、370:上部電極、380:層間絶縁膜、380x:コンタクトホール、390:増反射膜