(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】車両用シート及び車両
(51)【国際特許分類】
B60N 2/56 20060101AFI20240321BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B60N2/56
A47C7/74 C
(21)【出願番号】P 2021159568
(22)【出願日】2021-09-29
【審査請求日】2023-05-26
(32)【優先日】2021-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小島 亮祐
(72)【発明者】
【氏名】青木 優人
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-133079(JP,A)
【文献】特開2005-132307(JP,A)
【文献】国際公開第2019/065773(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0101741(US,A1)
【文献】特開2019-1378(JP,A)
【文献】特開2019-84295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/56
A47C 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッション及びシートバックを備えたシート本体と、
前記シート本体に左右方向を軸線とする回転可能に支持され、シートベルトのタングに
係脱可能なバックルと、
着座者の周辺温度を調節するための空調装置と、を有し、
前記シートクッションの左右外面の少なくとも一方にはサイドカバーと、前記空調装置とが設けられ、
前記空調装置は前記バックルの可動域外に位置し、
前記空調装置は、前記サイドカバーよりも上方にて、シート内側に突出する突出部を含み、
前記空調装置は、空気を吸い込む吸気口と、前記吸気口から吸い込まれた空気を冷却又は加熱して送り出す送風口とを有し、
前記送風口は前記突出部の突端において開口し、且つ、前記シートクッションの上面よりも上方に位置している車両用シート。
【請求項2】
前記送風口は前記シートクッションの前端よりも後方、且つ、前記可動域よりも前方に設けられている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記送風口は前記シートクッションの前端よりも後方、且つ、前記バックルに係合された前記タングの移動領域よりも前方に設けられている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記シートクッションは、フレームと、前記フレームに支持されたパッド部材と、前記パッド部材の表面を覆う表皮材とを有し、
前記パッド部材には前記空調装置を受容するように下方に切り欠かれた切欠部が設けられ、
前記送風口は前記切欠部の上方に位置している請求項1に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記シート本体の左右側部には、前記シートバックを前記シートクッションに対して傾倒させるべく着座者が把持するグリップ部を備えたリクライニングレバーが設けられ、
前記空調装置は前記グリップ部の後端よりも前方に配置されている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記空調装置は前記グリップ部の前端よりも前方に配置されている
請求項5に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記シート本体の左右側面には、前記シートバックを前記シートクッションに対して傾倒させるための傾倒ボタンと、前記シート本体の高さを変更するための高さ変更ボタンとが前後方向に異なる位置に設けられ、
前記傾倒ボタンと前記高さ変更ボタンとのうち、前側に位置する一方の前端と、後側に位置する他方の後端との間に、前記空調装置が配置されている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項8】
前記シートバックには着座者の側方に展開するサイドエアバッグが設けられ、
前記空調装置は前記サイドエアバッグの展開域の前方に位置している請求項1に記載の車両用シート。
【請求項9】
前記シート本体はヘッドレストを有し、
前記シートバックの上端には筒状のピラーガイドが設けられ、
前記ヘッドレストは前記ピラーガイドに挿入されるピラーを有し、
前記シートバックの上端には熱源を有する温調装置が設けられ、
前記熱源は前記ピラーガイドの後方に位置し、
前記ヘッドレストには、前記ヘッドレストの後方から前方に向けて送風するブロアが設けられている
請求項1~請求項8のいずれか1つの項に記載の車両用シート。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1つの項に記載の車両用シートを備えた車両であって、
ドアには車室内に展開するドアエアバッグが設けられ、
前記空調装置は前記ドアエアバッグの展開域外に位置している車両。
【請求項11】
請求項1~請求項9のいずれか1つの項に記載の車両用シートを備えた車両であって、
前記車両用シートの側方にはセンタコンソールボックスが設けられ、
前記センタコンソールボックスは物品を収容すべく開口する収容凹部と、前記収容凹部の開口縁にヒンジ接続され、前記収容凹部を開閉する蓋体とを有し、
前記空調装置は前記蓋体の可動域外に位置している車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置を備えた車両用シート、及び、その車両用シートが設けられた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
シート表面から風を吹き出すための吹出経路を備える空調シートが公知である(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の空調シートは、着座者の背凭れ部となるシートバックと、着座部となるシートクッションと、を備えている。シートクッション下部には送風機能を備えた空調装置が設けられている。シートクッションの両側部には、立板形状に張り出すパネル材がそれぞれ設けられている。パネル材の上縁はシート幅方向の内側に曲げられた形状をなしている。
【0003】
パネル材はそれぞれ、空調装置から送り出された風を、シート幅方向の内側面に沿ってシート上方側(シート表面側)へと吹き流すと共に、上縁側のシート幅方向の内側に曲げられた形状によって着座者の大腿部に向けて横から吹き出すようにガイドする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両用シートにはシートベルトのタングに係脱可能なバックルが設けられる。バックルがシートクッションの側部に変位可能に設けられた場合には、パネル材によってその変位が阻害される虞がある。
【0006】
そこで、本発明は以上の背景を鑑み、シートクッションに設けられた空調装置と、シートベルトのタングに係脱可能なバックルとを備え、空調装置によって、バックルの移動が妨げられ難い車両用シート、及び、その車両用シートが設けられた車両を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、車両用シート(3、203、303、403)であって、シートクッション(11)及びシートバック(15)を備えたシート本体(5)と、前記シート本体に左右方向を軸線(Q)とする回転可能に支持され、シートベルトのタングに係脱可能なバックル(51B)と、着座者の周辺温度を調節するための空調装置(63、71、73、75,271、563)と、を有し、前記空調装置は前記バックルの可動域外において前記シートクッションに結合されている。
【0008】
この態様によれば、空調装置はバックルの可動域外においてシートクッションに結合されているため、空調装置によって、バックルの移動が妨げられることが防止できる。
【0009】
また、上記態様において、好ましくは、前記空調装置は前面視において前記可動域に重なる位置に配置されている。
【0010】
この態様によれば、空調装置が前面視において可動域に重ならない場合に比べて、車両用シートの左右方向の幅を小さくできる。
【0011】
また、上記態様において、好ましくは、前記空調装置は側面視において前記可動域に重なる位置に配置されている。
【0012】
この態様によれば、空調装置が側面視において可動域に重ならない場合に比べて、空調装置がシート本体から前方に突出し難くなるため、車両用シートの前後方向の幅の小型化を図ることができる。
【0013】
また、上記態様において、好ましくは、前記空調装置が前記バックルに係合された前記タングの移動領域(E)外に配置されている。
【0014】
この態様によれば、空調装置によって、タングの移動が妨げられることが防止できる。
【0015】
また、上記態様において、好ましくは、前記シートクッションは、フレーム(21)と、前記フレームに支持されたパッド部材(23)と、前記パッド部材の表面を覆う表皮材と(25)を有し、前記パッド部材には前記空調装置を受容するように切り欠かれた切欠部(83)が設けられている。
【0016】
この態様によれば、パッド部材に設けられた切欠部に空調装置を設けることで、車両用シートの小型化を図ることができる。
【0017】
また、上記態様において、好ましくは、前記シート本体の左右側部には、形状、姿勢、及び位置のいずれか1つを変化させるための操作入力部(49)が設けられ、前記空調装置は前記操作入力部の後端よりも前方に配置されている。
【0018】
この態様によれば、着座者の操作入力が空調装置によって阻害され難くなる。
【0019】
また、上記態様において、好ましくは、前記空調装置は前記操作入力部の前端よりも前方に配置されている。
【0020】
この態様によれば、着座者の操作入力が空調装置によって阻害され難くなる。
【0021】
また、上記態様において、好ましくは、前記シート本体の左右側部には、形状、姿勢、及び位置のいずれか1つを変化させるための操作入力部(349)が設けられ、前記空調装置は前記操作入力部の前端及び後端の間に配置されている。
【0022】
この態様によれば、車両用シートの前後方向の小型化を図ることができる。
【0023】
また、上記態様において、好ましくは、前記シート本体の形状、姿勢、及び位置のいずれか1つを変化させるための操作入力部を備え、前記空調装置の左右方向外端が前記操作入力部の左右方向外端よりもシート内方に位置している。
【0024】
この態様によれば、着座者の操作入力が空調装置によって阻害され難くなる。
【0025】
また、上記態様において、好ましくは、前記シートバックには着座者の側方に展開するサイドエアバッグ(37)が設けられ、前記空調装置は前記サイドエアバッグの展開域(C)外に位置している。
【0026】
この態様によれば、サイドエアバッグの展開が空調装置によって阻害されることが防止できる。
【0027】
また、上記態様において、好ましくは、前記空調装置は前記展開域の前方に位置している。
【0028】
この態様によれば、この態様によれば、サイドエアバッグの展開が空調装置によって阻害されることが防止できる。
【0029】
また、上記態様において、好ましくは、前記シートバックには着座者の側方に展開するサイドエアバッグ(37)が設けられ、前記サイドエアバッグの展開域の前端が前記展開域(C)の下端に位置し、前記空調装置の上縁が略水平をなすように配置され、前記空調装置の後端が前記展開域の前端よりも下方に位置している。
【0030】
この態様によれば、サイドエアバッグの展開が空調装置によって阻害され難くなる。
【0031】
また、上記態様において、好ましくは、前記シート本体はヘッドレストを有し、前記シートバックの上端には筒状のピラーガイド(31D)が設けられ、前記ヘッドレストは前記ピラーガイドに挿入されるピラー(15A)を有し、前記シートバックの上端には熱源(107)を有する温調装置(107A)が設けられ、前記熱源は前記ピラーガイドの後方に位置している。
【0032】
この態様によれば、熱源はピラーガイドの後方に配置される。そのため、着座者に後方に向く荷重が加わったときに、ピラーガイド及びピラーによって着座者の頚部の後方への移動が阻害され、着座者の頚部が熱源に近づくことが防止できる。
【0033】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、上記の車両用シートを備えた車両(1)であって、ドア(7)には車室(2)内に展開するドアエアバッグ(8)が設けられ、前記空調装置は前記ドアエアバッグの展開域(A)外に位置している。
【0034】
この態様によれば、ドアエアバッグの展開が空調装置によって阻害され難くなる。
【0035】
上記課題を解決するために、前記車両用シートの側方にはセンタコンソールボックス(9)が設けられ、前記センタコンソールボックスは物品を収容すべく開口する収容凹部(9A)と、前記収容凹部の開口縁(9C)にヒンジ接続され、前記収容凹部を開閉する蓋体(9B)とを有し、前記空調装置は前記蓋体の可動域(B)外に位置している。
【0036】
この態様によれば、蓋体の開閉が空調装置によって阻害され難くなる。
【発明の効果】
【0037】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、車両用シートであって、シートクッション及びシートバックを備えたシート本体と、前記シート本体に左右方向を軸線とする回転可能に支持され、シートベルトのタングに係脱可能なバックルと、着座者の周辺温度を調節するための空調装置と、を有し、前記空調装置は前記バックルの可動域外において前記シートクッションに結合されている。この態様によれば、空調装置はバックルの可動域外においてシートクッションに結合されているため、空調装置によって、バックルの移動が妨げられることが防止できる。
【0038】
また、上記態様において、好ましくは、前記空調装置は前面視において前記可動域に重なる位置に配置されている。この態様によれば、空調装置が前面視において可動域に重ならない場合に比べて、車両用シートの左右方向の幅を小さくできる。
【0039】
また、上記態様において、好ましくは、前記空調装置は側面視において前記可動域に重なる位置に配置されている。この態様によれば、空調装置が側面視において可動域に重ならない場合に比べて、空調装置がシート本体から前方に突出し難くなるため、車両用シートの前後方向の幅の小型化を図ることができる。
【0040】
また、上記態様において、好ましくは、前記空調装置が前記バックルに係合された前記タングの移動領域外に配置されている。この態様によれば、空調装置によって、タングの移動が妨げられることが防止できる。
【0041】
また、上記態様において、好ましくは、前記シートクッションは、フレームと、前記フレームに支持されたパッド部材と、前記パッド部材の表面を覆う表皮材とを有し、前記パッド部材には前記空調装置を受容するように切り欠かれた切欠部が設けられている。この態様によれば、パッド部材に設けられた切欠部に空調装置を設けることで、車両用シートの小型化を図ることができる。
【0042】
また、上記態様において、好ましくは、前記シート本体の左右側部には、形状、姿勢、及び位置のいずれか1つを変化させるための操作入力部が設けられ、前記空調装置は前記操作入力部の後端よりも前方に配置されている。この態様によれば、着座者の操作入力が空調装置によって阻害され難くなる。
【0043】
また、上記態様において、好ましくは、前記空調装置は前記操作入力部の前端よりも前方に配置されている。この態様によれば、着座者の操作入力が空調装置によって阻害され難くなる。
【0044】
また、上記態様において、好ましくは、前記シート本体の左右側部には、形状、姿勢、及び位置のいずれか1つを変化させるための操作入力部が設けられ、前記空調装置は前記操作入力部の前端及び後端の間に配置されている。この態様によれば、車両用シートの前後方向の小型化を図ることができる。
【0045】
また、上記態様において、好ましくは、前記シート本体の形状、姿勢、及び位置のいずれか1つを変化させるための操作入力部を備え、前記空調装置の左右方向外端が前記操作入力部の左右方向外端よりもシート内方に位置している。この態様によれば、着座者の操作入力が空調装置によって阻害され難くなる。
【0046】
また、上記態様において、好ましくは、前記シートバックには着座者の側方に展開するサイドエアバッグが設けられ、前記空調装置は前記サイドエアバッグの展開域外に位置している。この態様によれば、サイドエアバッグの展開が空調装置によって阻害されることが防止できる。
【0047】
また、上記態様において、好ましくは、前記空調装置は前記展開域の前方に位置している。この態様によれば、サイドエアバッグの展開が空調装置によって阻害されることが防止できる。
【0048】
また、上記態様において、好ましくは、前記シートバックには着座者の側方に展開するサイドエアバッグが設けられ、前記サイドエアバッグの展開域の前端が前記展開域の下端に位置し、前記空調装置の上縁が略水平をなすように配置され、前記空調装置の後端が前記展開域の前端よりも下方に位置している。この態様によれば、サイドエアバッグの展開が空調装置によって阻害され難くなる。
【0049】
また、上記態様において、好ましくは、前記シート本体はヘッドレストを有し、前記シートバックの上端には筒状のピラーガイドが設けられ、前記ヘッドレストは前記ピラーガイドに挿入されるピラーを有し、前記シートバックの上端には熱源を有する温調装置が設けられ、前記熱源は前記ピラーガイドの後方に位置している。この態様によれば、熱源はピラーガイドの後方に配置される。そのため、着座者に後方に向く荷重が加わったときに、ピラーガイド及びピラーによって着座者の頚部の後方への移動が阻害され、着座者の頚部が熱源に近づくことが防止できる。
【0050】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、上記の車両用シートを備えた車両であって、ドアには車室内に展開するドアエアバッグが設けられ、前記空調装置は前記ドアエアバッグの展開域外に位置している。この態様によれば、ドアエアバッグの展開が空調装置によって阻害され難くなる。
【0051】
上記課題を解決するために、前記車両用シートの側方にはセンタコンソールボックスが設けられ、前記センタコンソールボックスは物品を収容すべく開口する収容凹部と、前記収容凹部の開口縁にヒンジ接続され、前記収容凹部を開閉する蓋体とを有し、前記空調装置は前記蓋体の可動域外に位置している。この態様によれば、蓋体の開閉が空調装置によって阻害され難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】第1実施形態に係る車両用シートが搭載される車両の模式図
【
図2】第1実施形態に係る車両用シートの車外側から見たときの側面図
【
図5】第1実施形態に係る車両用シートの車内側から見たときの側面図
【
図6】シートバックのフレーム及びバック側空調装置の斜視図
【
図7】シートバックのフレーム及びバック側空調装置の背面図
【
図8】ヘッドレストのフレーム及びヘッド側空調装置を説明するための説明図
【
図9】第1実施形態に係る空調システムのブロック図
【
図12】
図8のXII-XIIに対応する部分のシートバックの断面図
【
図13】
図8のXIII-XIIIに対応する部分のシートバックの断面図
【
図17】第4実施形態に係る車両用シートにおけるサイドエアバッグの展開域とクッション側空調装置との関係を説明するための説明図
【
図18】第7実施形態に係る空調システムのブロック図
【
図19】第9実施形態に係るバック側空調装置を説明するためのシートバックの上部後端部分の断面図
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明の車両用シートと、その車両用シートが設けられる車両とに係る実施形態について、図面を参照して説明する。
【0054】
<<第1実施形態>>
図1に示すように、車両1は四輪の自動車である。車両1には客室となる車室2が設けられている。車室2には運転席及び助手席をそれぞれ構成する車両用シート3が左右に並んで配置されている。車両用シート3は着座者が着座するシート本体5を備えている。シート本体5は車室2の底部を画定するフロア6上に、着座した乗員が車両1前方に向くように載置されている。以下、車両1を基準として、前後、左右、及び上下方向をそれぞれ定めて、説明を行う。本実施形態では、車両用シート3は前列右側に位置する運転席を構成する。
【0055】
シート本体5の車外側にはドア7が設けられている。ドア7の車内側の側面にはドアトリム7Aが設けられている。ドアトリム7Aはドア7の内張り部品であって、ドアパネル7Bを車内側から覆っている。ドアトリム7Aはアームレストやドアポケットを構成する。
【0056】
本実施形態では、ドア7には、車内側(車室2内側)に向けて膨張し、着座者の車外側に展開可能なドアエアバッグ8が設けられている。ドアエアバッグ8は、ドアトリム7Aとドアパネル7Bとの間に収容されている。
図1にはドアエアバッグ8が展開するときに、ドアエアバッグ8が通過する領域(以下、展開域A)がドットによってハッチングされて示されている。
【0057】
シート本体5の車内側にはセンタコンソールボックス9が設けられている。センタコンソールボックス9は物品を収容すべく開口する収容凹部9Aと、収容凹部9Aを開閉する蓋体9Bとを備えている。蓋体9Bは収容凹部9Aの開口縁9Cにヒンジ接続されている。本実施形態では収容凹部9Aは下方に凹み、上方に向けて開口している。蓋体9Bは収容凹部9Aの開口縁であって、その車外側の部分にヒンジ接続されている。
図1には蓋体9Bが開閉されるときに通過する領域、すなわち可動域Bが斜線によってハッチングされて示されている。
【0058】
図2に示すように、シート本体5は、着座者の臀部を支持するシートクッション11と、シートクッション11の後部に設けられ、背凭れとして機能するシートバック13と、シートバック13の上部に設けられたヘッドレスト15とを備えている。
【0059】
図3に示すように、シートクッション11は略上下方向を向く面を有する略直方体状をなしている。シートクッション11の上面は乗員1人分の着座面11Aを構成している。着座面11Aは左右方向略中央において下方に凹み、後方に向かってやや下方に傾斜している。乗員が着座すると、その臀部が着座面11Aの後部に、大腿部が着座面11Aの前部にそれぞれ配置される。
【0060】
本実施形態では、
図4に示すように、シートクッション11は左右方向中央部を構成し、略水平な上面を有する基部11Bと、基部11Bの左右両縁に接続され基部11Bの上面よりも上方に隆起する土手部11C(ボルスタ部ともいう)とを備えている。
【0061】
図2に示すように、シートバック13は上下に延び、略前後方向を向く面を有する略直方体状をなしている。シートバック13の前面は着座者の背中に対向する支持面13Aを構成している。支持面13Aは左右方向略中央において後方に凹み、上方に向かってやや後方に傾斜している。支持面13Aはシートバック13に凭れかかる乗員の背中を後方から支持する。
【0062】
ヘッドレスト15は、シートバック13の上端に2つのピラー15Aを介して接続されている。ヘッドレスト15は着座者の頭部の後方に位置する。
【0063】
シートクッション11は骨格を形成する金属製のフレーム21(シートクッションフレームともいう。
図4参照)と、フレーム21に支持されたパッド部材23と、パッド部材23それぞれの表面の少なくとも一部を覆う表皮材25とを有している。シートクッション11のフレーム21は、前後に延びる左右一対のサイドフレーム21A、2つのサイドフレーム21Aの前部を接続する前フレーム(不図示)と、2つのサイドメンバの後部を接続する後フレーム(不図示)とを有している。フレーム21は更に、2つのサイドフレーム21Aの間に設けられ、前メンバ及び後メンバに掛け渡された板状のパンフレーム21Bを含む。パッド部材23はパンフレーム21Bの上面に配置されている。
【0064】
図2、
図3、及び
図4に示すように、シートクッション11のサイドフレーム21Aにはそれぞれサイドカバー27が設けられている。サイドカバー27は樹脂製の部材であり、サイドフレーム21Aに沿って前後に延びている。サイドカバー27はサイドフレーム21Aに整合する形状をなし、サイドフレーム21Aをシート外側から覆っている。車外側のサイドカバー27には
図2及び
図3に示すように、シート内方に凹む凹部27Aが設けられている。
【0065】
図2に示すように、シートクッション11の下方には前後に延在する2つのロアレール29が設けられている。ロアレール29にはそれぞれに前後に延在するアッパレール30が設けられている。アッパレール30はそれぞれロアレール29に前後にスライド可能に接続されている。アッパレール30はそれぞれシートクッション11の骨格を構成するフレーム21に接続されている。本実施形態ではアッパレール30とロアレール29との間にはリンク部材(不図示)が設けられている。リンク部材の回転によって、シートクッション11のフロア6に対する高さや傾きが変更可能となっている。
【0066】
シートバック13はシートクッション11と同様に骨格を形成する金属製のフレーム31と、フレーム31にそれぞれ支持されたパッド部材33と、パッド部材33それぞれの表面の少なくとも一部を覆う表皮材35とを含む。
図6に示すように、シートバック13のフレーム31は、上下に延びる左右一組のサイドフレーム31Aと、サイドフレーム31Aの上部間に掛け渡されたアッパフレーム31Bと、サイドフレーム31Aの下部の間に掛け渡されたロアフレーム(図示せず)とを有し、略四角枠形をなす。本実施形態では、アッパフレーム31Bの左側と右側とを接続するクロスフレーム31Cが設けられている。シートバック13の左側のサイドフレーム31Aはそれぞれ下端部において、シートクッション11の左側のサイドフレーム31Aの後端部に、傾倒軸P(
図2参照)回りに回動可能に支持されている。同様に、シートバック13の右側のサイドフレーム31Aはそれぞれ下端部において、シートクッション11の右側のサイドフレーム31Aの後端部に、傾倒軸P回りに回動可能に支持されている。これにより、シートバック13のフレーム31は、シートクッション11のフレーム21に傾倒可能に結合されている。
【0067】
シートバック13のサイドフレーム31Aであって、車外側のサイドフレーム31Aには、エアバッグモジュール36が設けられている。エアバッグモジュール36は側突時に着座者の車外側に展開するサイドエアバッグ37を備えている。展開時にサイドエアバッグ37が通過する領域が二点鎖線によって示されている。以下、展開時にサイドエアバッグ37が通過する領域をサイドエアバッグ37の展開域Cと記載する。
【0068】
図6及び
図7に示すように、シートバック13のアッパフレーム31Bには、ヘッドレスト15のピラー15A(
図2参照)を受容するための2つのピラーガイド31Dが設けられている。ピラーガイド31Dはそれぞれ、シートバック13のサイドフレーム31Aの延在方向に対して略平行に延びる筒状をなしている。
【0069】
図8に示すように、ヘッドレスト15は骨格を形成する金属製のフレーム39と、フレーム39に支持されたパッド部材41と、パッド部材41の表面を覆う表皮材43とを有している。フレーム39は、それぞれが円筒状をなす左右一対の縦フレーム39Aと、左右に延びて2つの縦フレーム39Aを接続する補助フレーム39B(ブラケットともいう)とを有している。縦フレーム39Aの下端部分はそれぞれピラー15Aを構成している。ヘッドレスト15はピラー15Aがピラーガイド31Dにそれぞれ挿入されることによって、シートバック13の上端に支持されている。補助フレーム39Bは着座者の頭部を確実に後方から支持するため、前方に向き、前面視で左右の縦フレーム39Aに重なり合う略平坦な支持面39Cを有しているとよい。
【0070】
図2に示すように、シートバック13をシートクッション11に対して傾倒させるためのリクライニングレバー45と、シートクッション11の高さを変更するためのハイトレバー47とがシートクッション11に設けられている。リクライニングレバー45と、ハイトレバー47とはそれぞれ、後端においてシートクッション11のサイドフレーム21Aに支持され、サイドフレーム21Aのシート外方において前方に延びている。リクライニングレバー45の前部と、ハイトレバー47の前部とにはそれぞれ、着座者からの操作入力を受け付けるグリップ部49が設けられている。すなわち、グリップ部49はそれぞれ、着座者からシート本体5の変形、変位に係る操作入力を受け付ける操作入力部として機能する。本実施形態では、リクライニングレバー45と、ハイトレバー47とはそれぞれ、シートクッション11の車外側に設けられている。グリップ部49はサイドカバー27の凹部27Aに受容されている。
【0071】
図5に示すように、シート本体5には、シートベルト用のバックル装置51が設けられている。バックル装置51は、シートベルト53に保持されたシートベルトタング55に係合して、着座者をシート本体5に拘束する。
【0072】
バックル装置51は、バックル支持アーム51Aと、バックル51Bとを有する。バックル支持アーム51Aは前後に延びる棒状をなしている。バックル支持アーム51Aは、後端においてシートクッション11のサイドフレーム21Aの後部に左右方向に延びる回転軸線Qを中心とする回転可能に結合されている。バックル51Bはシートベルトタング55に係脱可能に構成され、バックル支持アーム51Aの前端に固定されている。バックル支持アーム51Aは使用時に、
図2に示すように前斜め上方に向かって延びるように配置されて、バックル51Bがシートベルトタング55に結合される。
【0073】
これにより、バックル51Bはシートクッション11のサイドフレーム21Aに、左右方向に延びる回転軸線Qを中心として回転可能に支持されている。
図4及び
図5には、回転軸線Qを中心としてバックル支持アーム51Aを可動範囲内で回転させたときのバックル51Bの移動範囲、すなわち、バックル51Bの可動域Dがドットによってハッチングされて示されている。
図2に示すように、バックル51Bの可動域Dは回転軸線Qを中心とする扇形環状(扇面状)をなしている。このように、バックル51Bが可動支持されているため、着座者はバックル51Bを自らの操作し易い位置に配置することができるため、シートベルトタング55を容易にバックル51Bに結合させることができる。
【0074】
シートベルト53は、車体に固定されたシートベルトリトラクタ装置(図示せず)からセンタピラー59の内部を経由して、そのセンタピラー59の上端付近から車室2内に導入されている。シートベルト53を引き出し、シートベルトタング55をバックル51Bに係合させることによって、着座者はシート本体5に拘束された拘束状態となる。
図5には、回転軸線Qを中心としてバックル支持アーム51Aを可動範囲内で回転させたときのシートベルトタング55の移動領域Eが斜線によってハッチングされて示されている。
【0075】
車両用シート3には空調システム61が設けられている。
図9に示すように、空調システム61は、シート空調装置63を備えている。
【0076】
シート空調装置63は着座者に向けて冷風・温風を送り、着座者周辺の空気の温度調節を行う。シート空調装置63は、着座センサ65と、温度センサ67と、シートクッション11に設けられたクッション側空調装置71と、シートバック13に設けられたバック側空調装置73と、ヘッドレスト15に設けられたヘッド側空調装置75と、制御装置81とを、含む。
【0077】
着座センサ65は車両用シート3に設けられ、車両用シート3への着座者の有無を検出する。着座センサ65は着座面11Aに加わる圧力を検出する感圧センサによって構成されてもよく、また、乗員の着座によってオンとなる1つ又は複数のメンブレンスイッチによって構成されていてもよい。
【0078】
温度センサ67は、車両1の車室2内の温度を取得するためのセンサであって、抵抗値の変化に基づいて温度を取得するサーミスタによって構成されているとよい。温度センサ67は車両用シート3に設けられていてもよく、また、車室2を画定する壁面等に設けられていてもよい。
【0079】
図3に示すように、クッション側空調装置71は、シートクッション11の車外側と車内側とに設けられている。車内側及び車外側に設けられたクッション側空調装置71はそれぞれ略直方体状をなし、互いに左右対称をなす。クッション側空調装置71はそれぞれシートクッション11の前端左右両側部に設けられている。車内側及び車外側に設けられたクッション側空調装置71はそれぞれ、シートクッション11の左右対称をなす位置に配置されている。以下、必要に応じて、車内側に位置するクッション側空調装置71を車内側空調装置71Aと、車外側に位置するクッション側空調装置71を車外側空調装置71Bとそれぞれ記載する。クッション側空調装置71はそれぞれ、シート内側上部にシート内方側(シートクッション11側)に突出する突出部72を備えている。
【0080】
本実施形態では、
図4に示すように、シートクッション11のパッド部材23は前端左右両側部上端にそれぞれシート内方に切り欠かれた切欠部83を備えている。クッション側空調装置71は突出部72においてそれぞれ切欠部83に受容されて、シートクッション11のサイドフレーム21Aに固定されている。本実施形態では、パッド部材23の切欠部83を画定する壁面とクッション側空調装置71の外面とは十分離間し、シートクッション11の切欠部83に対応する部分と、クッション側空調装置71の外面との間には隙間85が設けられている。
【0081】
図3に示すように、クッション側空調装置71はそれぞれ、シート外方の側面に設けられた吸気口87と、シート内方の側面に設けられた内側送風口89と、前端下部に設けられた下側送風口91とを備えている。吸気口87はシート外方に向けて開口している。内側送風口89はシート内方の側面後部上端(詳細には突出部72の上端)に設けられ、シート内方に向けて開口している。下側送風口91は前方に向かってシート内方に向かうように開口している。クッション側空調装置71は、吸気口87から空気を吸い込み、吸い込んだ空気を冷却又は加熱して内側送風口89や下側送風口91から吹き出す。内側送風口89から吹き出された空気は着座者の大腿部に達し、着座者の大腿部の周辺温度を調節する。下側送風口91から吹き出された空気は着座者の膝裏やふくらはぎの周辺温度を調節する。このように、クッション側空調装置71は着座者の脚部に冷風や温風を吹き付けることによって、脚部周辺の温調を行う。
【0082】
詳細には、
図10及び
図11に示すように、クッション側空調装置71はそれぞれ、ブロア93、ダクト95、温調装置97及びカバー部材101を備えている。
【0083】
図10に示すように、ブロア93は吸込口から空気を吸い込み、排出口から空気を吐き出す、いわゆる送風機によって構成されている。ブロア93の吸込口は吸気口87に接続され、排出口はダクト95に接続されている。ブロア93は吸気口87から吸い込んだ空気をダクト95内に送り込む。
【0084】
ダクト95は筒状(本実施形態では、四角筒状)をなしている。ダクト95の一端はブロア93に接続されている。ダクト95の他端は二又に分岐している。ダクト95の他端の一方は、シート内方且つ上方に延び、内側送風口89に接続している。
図11に示すように、ダクト95は他端の他方は下方に延出し、その後、シート内方に向けて延び、屈曲して、更に、前方に向けてシート内方に傾斜する向きに延びている。ダクト95の他端側の端部はシートクッション11の前端よりも前側に達している。ダクト95の他端側の端部は、土手部11Cの上面よりも下方において前方に向けてシート内方に傾斜する向きに開口し、下側送風口91を構成している。
【0085】
図4に示すように、ダクト95の他端側の端部は、前面視においてそれぞれ、シートクッション11の左右端部よりもシート内方に位置している。また、
図3に示すように、ダクト95の他端側の端部、すなわち、前端部はシートクッション11の前端よりも前側に達している。これにより、ブロア93から送り出される空気を着座者の足元に効果的に案内することができる。また、
図4に示すように、ダクト95の前端部は土手部11Cよりも下方に位置しているため、着座者の大腿部が土手部11Cに載置されたときに大腿部にダクト95が当接し難い。よって、空調システム61(クッション側空調装置71)を設けることによる着座感の低下が防止できる。また、
図4に示すように、ダクト95はそれぞれサイドカバー27の左右端部よりもシート内方に位置している。これにより、シートクッション11の左右側面への衝突物に対してサイドカバー27がダクト95よりも前に衝突物に対抗するため、ダクト95を衝突物に対して保護することができる。
【0086】
温調装置97は冷風や温風を作るべく加熱・冷却する(温度調節する)ための装置であり、熱を発生又は吸収する熱源97A(温調装置本体ともいう)を含む。本実施形態では、
図10及び
図11に示すように、温調装置97はブロア93の下流側、且つ、ダクト95の分岐部分に設けられている。ブロア93によって吸い込まれた空気は、温調装置97の熱源97Aによって冷却又は加熱されて、内側送風口89及び下側送風口91に達する。熱源97Aは電流によって冷却・加熱が可能な素子、いわゆるペルチェ素子によって構成されているとよい。
【0087】
カバー部材101は略直方体状をなす部材であり、ブロア93、温調装置97、及びダクト95を覆っている。換言すれば、カバー部材101は、ブロア93、温調装置97、及びダクト95を内部に収容するケースに相当する。
図3に示すように、カバー部材101は左右方向を向く面を有するように配置されている。
【0088】
図11に示すように、カバー部材101はシート内側を構成する内側カバー101Aと、シート内側上部及びシート外側を構成する外側カバー101Bとを有している。
【0089】
内側カバー101Aはカバー部材101のシート内側側壁、及び、前後及び上壁の上半部のシート内方側部分を構成する。内側カバー101Aはシートクッション11のサイドフレーム21Aのシート外方の側面に結合されている。
【0090】
詳細には、シートクッション11のサイドフレーム21Aのシート外面には金属製のワイヤ102Aを介して金属製の板状のブラケット102Bが固定されている。そのブラケット102Bに固定されることによって、内側カバー101Aはシートクッション11のサイドフレーム21Aに結合されて支持されている。
【0091】
内側カバー101Aのシート内方側の側壁には上方から切り欠かれた切欠部101Cが設けられている。切欠部101Cはシート内方側の側壁の上端に位置している。切欠部101Cは内側送風口89の下部を構成する。
【0092】
外側カバー101Bはカバー部材101のシート外側の側壁、及び、前後及び上壁の上部のシート外側部分と、前壁の下半部を構成する。外側カバー101Bは内側カバー101Aに結合されている。詳細には、本実施形態では、内側カバー101Aが結合されたブラケット102Bには車外側に延びるワイヤ102Cが設けられている。外側カバー101Bにはそのワイヤ102Cに係合可能な係止爪が設けられ、その係止爪がワイヤ102Cに係合することによって、外側カバー101Bはブラケット102Bに結合される。これにより、外側カバー101Bはブラケット102Bを介して内側カバー101Aに結合される。
【0093】
その他、外側カバー101Bは図示しない係止爪を備え、その係止爪が内側カバー101Aに係止されることによって、外側カバー101Bは内側カバー101Aに結合されてもよい。
【0094】
外側カバー101Bの上端には切欠部101Cに嵌め合うようにシート内縁からシート内方に延びる板状の延出部101Dが設けられている。延出部101Dは切欠部101Cを上方から封じている。延出部101Dは内側送風口89の上縁を構成している。すなわち、切欠部101Cと延出部101Dとによって、内側送風口89が構成される。ダクト95の一端はブロア93の排気口に固定され、他端は二又に分岐し、その一方側の端部が内側送風口89に嵌め合わされて、結合されている。
【0095】
図4に示すように、外側カバー101Bの前壁の下半部には、貫通孔101Eが設けられている。ダクト95の他端の他方は前方に延びて、その貫通孔101Eを通過し、更にシート内方に傾斜する向きに延出している。
【0096】
図11に示すように、外側カバー101Bのシート外側の側壁(カバー部材101のシート外側の側壁を構成する部分)には左右方向に貫通する貫通孔101Fが設けられている。貫通孔101Fは吸気口87を構成している。外側カバー101Bのシート内方の側面には、貫通孔101Fに整合する位置にタッピングやビス止めによって、ブロア93が固定されている。本実施形態では、温調装置97はダクト内に収容されて固定されているが、この態様には限定されず、例えば、外側カバー101Bのシート内方の側面にタッピングやビス止めによって固定されている。また、本実施形態では、ダクト95はブロア93に固定されることによって、外側カバー101Bに固定されているが、外側カバー101Bに直接結合されていてもよく、また、内側カバー101Aに結合されていてもよい。
【0097】
図6に示すように、バック側空調装置73は、シートバック13のアッパフレーム31Bの左右両端部にそれぞれ結合された2つのブロア103と、2つのブロア103からそれぞれシート内方に延び、前方に向けて開口するダクト105と、ダクト105の開口部分に設けられた温調装置107とを備えている。ブロア103はそれぞれシートバック13の肩に対応する部分に設けられている。ブロア103はそれぞれシートバック13の外部から吸気を行い、ダクト105内に空気を送り込む。温調装置107はシートバック13の上端部分に配置されている。温調装置107は冷風や温風を作るべく加熱・冷却するための装置であり、熱を発生又は吸収する熱源107Aを含む。熱源107Aもまた、熱源97Aと同様に、電流によって冷却・加熱が可能な素子、いわゆるペルチェ素子によって構成されているとよい。ダクト105内に送られた空気は開口部分において温調装置107の熱源107Aによって冷却又は加熱されて着座者の頚部に達する。これにより、着座者の頚部の周辺温度が調節される。熱源107Aはピラーガイド31Dの後方に位置している。
【0098】
図6及び
図12に示すように、アッパフレーム31Bには固定用ブラケット31Eが溶接等によって固定されている。ブロア103及びダクト105はアッパフレーム31Bの後面上部に沿って配置されている。
図7に示すように、ダクト105、アッパフレーム31B及びブロア103の後方には樹脂製のガーニッシュ109(カバー部材ともいう)が設けられている。ダクト105、アッパフレーム31B及びブロア103はガーニッシュ109によって後方から覆われている。
【0099】
図13に示すように、ブロア103はガーニッシュ109にタッピングによって同時に固定されている。これにより、ブロア103に接続されたダクト105もまた、ガーニッシュ109に固定されている。ガーニッシュ109は固定用ブラケット31Eにビス止めされている。このように、ブロア103及びダクト105をガーニッシュ109に固定した後、ガーニッシュ109を固定用ブラケット31Eに固定することによって、バック側空調装置73はシートバック13のアッパフレーム31Bに固定される。
図13に示すように、シートバック13の左右側部上部において、ガーニッシュ109は表皮材35によって背面から直接覆われ、ガーニッシュ109と表皮材35との間にはパッド部材33は設けられていない。一方、
図13に相当する部分より下方においては、
図12に示すように、固定用ブラケット31Eは左右側方からパッド部材33と表皮材35とによって覆われている。
図13に示すように、ガーニッシュ109のブロア103に対応する位置には通気孔109Aが設けられている。通風性を向上させるため、表皮材35の通気孔109Aに対応する部分やダクト105の開口に対応する部分はメッシュ状をなすように構成されていてもよい。
【0100】
図8に示すように、ヘッド側空調装置75は、前後に延びる通気路110を画定する通路形成部材111と、通気路110内に配置されたブロア113と、通気路110内に配置された温調装置117とを備えている。通路形成部材111は、ヘッドレスト15のフレーム39に結合されている。本実施形態では、通路形成部材111は補助フレーム39Bに下側から結合され、前方に向かって下方に傾斜する通気路110を画定している。ブロア113はヘッドレスト15の背面側から吸気を行い、通気路110内に空気を送り込む。温調装置117はバック側空調装置73と同様に、ブロア113と協働して冷風や温風を作るべく、加熱・冷却するための装置であり、熱を発生又は吸収する熱源117Aを含む。熱源117Aもまた、熱源97Aと同様に、電流によって冷却・加熱が可能な素子、いわゆるペルチェ素子によって構成されているとよい。温調装置117はブロア113の前方側、すなわち、下流側に配置されている。ブロア113によって前方に送り出される空気は温調装置117の熱源117Aによって冷却又は加熱されて、着座者の頭部に達する。これにより、着座者の頭部の周辺温度が調節される。通風性を向上させるため、表皮材43の通気路110の入口及び出口に対応する部分はメッシュ状をなすように構成されていてもよい。
【0101】
図9に示すように、制御装置81は、中央演算処理装置(CPU81A)、RAM81B、ROM81C、及び、SSDやHDD等によって構成された記憶装置81Dを含むマイクロコンピュータによって構成されている。
【0102】
制御装置81は、着座センサ65によって取得された着座者の有無と、温度センサ67によって取得された車室2内の温度とに基づいて、シート空調装置63の駆動を制御する。
【0103】
例えば、制御装置81は、車両用シート3に乗員が着座し、且つ、温度センサ67によって取得された温度が上限閾値以上であるときには、着座者を冷却するべくクッション側空調装置71を駆動する。具体的には、制御装置81は車内側空調装置71A及び車外側空調装置71Bのブロア93をそれぞれ駆動し、且つ、温調装置97(熱源97A)をそれぞれブロア93によって送り出される空気を冷却するように駆動する。
【0104】
但し、制御装置81は、車外側空調装置71Bの出力が、車内側空調装置71Aの出力よりも大きくなるように制御する。ここでいう出力とはそれぞれ、ブロア93によって送り出される空気の熱源97Aによる温度変化量を意味し、熱源97Aを停止した場合に対する空気の温度の変化量、すなわち温度差を指す。具体的には、制御装置81は、車外側空調装置71Bの熱源97Aを、車内側空調装置71Aの熱源97Aに比べて、ブロア93からの空気がより冷やされるように(すなわち、温度低下量が大きくなるように)制御する。
【0105】
制御装置81は同時に、バック側空調装置73と、ヘッド側空調装置75とを駆動させてもよい。但し、制御装置81は、車外側空調装置71Bの出力を、バック側空調装置73の出力、及び、ヘッド側空調装置75の出力のいずれよりも大きくなるように制御する。すなわち、制御装置81は、車外側空調装置71Bの熱源97Aを、バック側空調装置73の熱源107A及びヘッド側空調装置75の熱源117Aの両方に比べて、対応するブロア93、103、113からの空気がより冷やされるように(すなわち、温度低下量が大きくなるように)制御する。このとき、制御装置81は、バック側空調装置73の出力を、ヘッド側空調装置75の出力よりも大きくなるように制御してもよい。
【0106】
制御装置81は、車両用シート3に乗員が着座し、且つ、温度センサ67によって取得された温度が下側閾値以下であるときには、着座者を温めるべくクッション側空調装置71を駆動する。具体的には、制御装置81は車内側空調装置71A及び車外側空調装置71Bのブロア93をそれぞれ駆動し、且つ、熱源97Aをそれぞれブロア93によって送り出される空気を加熱するように駆動する。
【0107】
但し、制御装置81は、車外側空調装置71Bの出力が、車内側空調装置71Aの出力よりも大きくなるように制御する。具体的には、制御装置81は、車外側空調装置71Bの熱源97Aを、車内側空調装置71Aの熱源97Aに比べて、ブロア93からの空気がより温められるように(すなわち、温度上昇量が大きくなるように)制御する。
【0108】
また、制御装置81は同時に、バック側空調装置73と、ヘッド側空調装置75とを駆動させてもよい。但し、制御装置81は、車外側空調装置71Bの出力を、バック側空調装置73の出力、及び、ヘッド側空調装置75の出力のいずれよりも大きくなるように制御する。すなわち、制御装置81は、車外側空調装置71Bの熱源97Aを、バック側空調装置73の熱源107A及びヘッド側空調装置75の熱源117Aの両方に比べて、対応するブロア93、103、113からの空気がより温められるように(すなわち、温度上昇量が大きくなるように)制御する。このとき、制御装置81は、バック側空調装置73の出力を、ヘッド側空調装置75の出力よりも大きくなるように制御してもよい。
【0109】
次に、クッション側空調装置71と、バックル装置51等の他の装置や部材との位置関係について、図面を参照して説明する。
【0110】
図5に示すように、車内側のクッション側空調装置71は側面視でバックル51Bの可動域D外においてシートクッション11に結合されている。本実施形態では、更に、車内側のクッション側空調装置71はバックル51Bに係合されたシートベルトタング55の移動領域E外に位置している。また、
図4に示すように、車内側のクッション側空調装置71(車内側空調装置71A)はバックル51Bの可動域Dに前面視で重なる位置に配置されている。
【0111】
図2に示すように、クッション側空調装置71(車外側空調装置71B)はリクライニングレバー45のグリップ部49の後端よりも前方、且つ、ハイトレバー47のグリップ部49の後端よりも前方に配置されている。本実施形態では、クッション側空調装置71は、リクライニングレバー45のグリップ部49の前端よりも前方、且つ、ハイトレバー47のグリップ部49の前端よりも前方に配置されている。このように、クッション側空調装置71は、車両用シート3に位置や形状を変更するべく着座者が操作入力を行うためのグリップ部49(操作入力部材)のいずれよりも前方に設けられていることが好ましい。これにより、着座者はクッション側空調装置71によって阻害されることなく、容易にグリップ部49に操作入力を行うことができる。
【0112】
図4には、グリップ部49に対応する位置が二点鎖線によって示されている。車両用シート3に位置や形状を変更するべく着座者が操作入力を行うためのグリップ部49(操作入力部材)のいずれの左右方向外端は車外側に位置していることが操作性の観点から好ましい。
図4に示すように、クッション側空調装置71(車外側空調装置71B)のシート外方向における外端がリクライニングレバー45のグリップ部49のシート外方向における外端、ハイトレバー47のグリップ部49のシート外方向における外端のいずれよりも、シート内側に位置している。これにより、グリップ部49の左右方向外端がクッション側空調装置71の左右方向外端よりもシート外方に位置することになる。よって、着座者は車内側のクッション側空調装置71によって阻害されることなく、容易にグリップ部49に操作入力を行うことができる。
【0113】
図5に示すように、クッション側空調装置71(車外側空調装置71B)はサイドエアバッグ37の展開域Cの前端よりも前方に位置している。これにより、車外側のクッション側空調装置71はサイドエアバッグ37の展開域外に位置している。これにより、車外側のクッション側空調装置71によって、サイドエアバッグ37の展開が阻害されることが防止できる。
【0114】
図1に示すように、クッション側空調装置71(車外側空調装置71B)の後縁はドアエアバッグ8の展開域Aの前方に位置している。これにより、クッション側空調装置71はドアエアバッグ8の展開域A外に位置している。よって、ドアエアバッグ8の展開が車外側のクッション側空調装置71によって阻害されることが防止できる。また、車内側のクッション側空調装置71は蓋体9Bの可動域B外に位置している。これにより、蓋体9Bの移動が車内側のクッション側空調装置71によって阻害されることが防止できる。
【0115】
次に、本実施形態に係る車両用シート3、及び、車両用シート3の効果について説明する。車両用シート3には、着座者の脚部の温度を調整するためのクッション側空調装置71が設けられている。
図5に示すように、車内側のクッション側空調装置71は、バックル51Bの可動域D外において、シートクッション11に結合されている。これにより、車内側のクッション側空調装置71によって、バックル51Bの移動が妨げられることが防止できる。
【0116】
図4に示すように、車内側空調装置71A(車内側のクッション側空調装置71)は前面視でバックル51Bの可動域Dに重なる位置に配置されている。これにより、車内側空調装置71Aが前面視において可動域Dに重ならない場合に比べて、車両用シート3の左右方向の幅を小さくできる。よって、車両用シート3を小型化することができる。
【0117】
図5に示すように、車内側空調装置71A(車内側のクッション側空調装置71)がバックル51Bに係合されたシートベルトタング55の移動領域E外に配置されている。これにより、シートベルトタング55の移動が妨げられることが防止できる。
【0118】
図4に示すように、クッション側空調装置71(車内側空調装置71A及び車外側空調装置71B)はそれぞれシートクッション11のパッド部材23に設けられた切欠部83に受容されている。これにより、パッド部材23に切欠部83が設けられていない場合に比べて、車両用シート3の左右方向の幅を低減することができ、車両用シート3を小型化することができる。本実施形態では、パッド部材23に切欠部83が設けられることによって、シートクッション11とクッション側空調装置71との間には隙間85が設けられている。そのため、クッション側空調装置71とパッド部材23とが当接せず、クッション側空調装置71からパッド部材23に熱が伝わることが防止できる。
【0119】
図6に示すように、バック側空調装置73の熱源107Aはピラーガイド31Dの後方に位置している。そのため、着座者に後方に向く荷重が加わったときに、ピラーガイド31D及びピラー15Aによって着座者の頚部の後方への移動が阻害され、着座者の頚部が熱源107Aに近づくことが防止できる。
【0120】
制御装置81は、温度センサ67によって取得された車室2内の温度に基づいて、シート空調装置63の駆動を制御する。これにより、車両用シート3の着座者がいる車室2内の温度に基づいて車両用シート3の空調を行うことができる。よって、着座者の体感温度に合うように、シート空調装置63の駆動を制御することができる。
【0121】
温度センサ67によって取得された車室2内の温度が上限閾値以上であるときには、制御装置81はクッション側空調装置71を駆動し、着座者の脚部に冷風を当てることによって、着座者の脚部を冷却する。このとき、制御装置81は、車外側空調装置71Bの熱源97Aを、車内側空調装置71Aの97Aに比べて、ブロア93からの空気がより冷やされるように制御する。これにより、着座者の脚部は車内側に比べて車外側からより冷やされる。
【0122】
温度センサ67によって取得された車室2内の温度が下限閾値以下であるときには、制御装置81はクッション側空調装置71を駆動し、着座者の脚部に温風を当てることによって、着座者の脚部を温める。このとき、制御装置81は、車外側空調装置71Bの97Aを、車内側空調装置71Aの97Aに比べて、ブロア93、103、113からの空気がより温めるように制御する。これにより、着座者の脚部は車内側に比べて車外側からより温められる。
【0123】
着座者は車外側において外気温の影響を受けやすい。車室2内の温度が上限閾値よりも高く、着座者が暑いと感じうるときには、着座者の脚部が車外側からより冷やされ、車室2内の温度が下限閾値よりも低く、着座者が寒いと感じうるときには、着座者の脚部が車外側からより温められる。よって、外気温の影響を受けやすい着座者の脚部の車外側を脚部の車内側よりも冷却又は加熱することができるため、外気温の影響を低減することができる。
【0124】
着座者は脚部において(すなわち下方において)より外気温の影響を受けやすい。制御装置81は車外側空調装置71Bの出力を、バック側空調装置73の出力及びヘッド側空調装置75の出力よりもより大きく設定する。これにより、車室2内の温度が上限閾値よりも高く、着座者が暑いと感じうるときには、着座者の脚部の車外側が、着座者の頚部や頭部よりもより冷やされる。また、車室2内の温度が下限閾値よりも低く、着座者が寒いと感じうるときには、着座者の脚部の車外側が着座者の頚部や頭部よりもより温められる。よって、外気温の影響を受けやすい着座者の脚部の車外側を頚部や頭部よりも冷却又は加熱することができるため、外気温の影響を低減することができる。
【0125】
<<第2実施形態>>
第2実施形態に係る車両用シート203及び車両1は、第1実施形態に比べて、車内側のクッション側空調装置271の大きさ及び位置が第1実施形態とは異なり、他の構成は第1実施形態と同様である。よって、他の構成については説明を省略する。
【0126】
図14に示すように、車内側空調装置271A(車内側のクッション側空調装置271)は側面視においてバックル51Bの可動域Dに重なる位置に配置されている。一方、
図15に示すように、車内側空調装置271Aは前面視で、バックル51Bの可動域Dよりもシート外方に位置している。
【0127】
次に、このように構成された車両用シート203の効果について説明する。
図15に示すように、車内側空調装置271Aは前面視で、バックル51Bの可動域Dよりもシート外方に位置している。これにより、クッション側空調装置271によって、バックル51Bの移動が阻害されることが防止でき、シートベルト53の装着が容易になる。
【0128】
また、
図14に示すように、車内側空調装置271Aは側面視においてバックル51Bの可動域Dに重なる位置に配置されている。これにより、車内側空調装置271Aが側面視において可動域Dに重ならない場合に比べて、車内側空調装置271Aがシート本体5から前方に突出し難くなるため、車両用シート203の前後方向の幅の小型化を図ることができる。また、車内側空調装置271Aによって、大腿部のより臀部側に近い部分に温風や冷風を当てることができる。このように、車内側空調装置271Aを側面視においてバックル51Bの可動域Dに重なるように構成することで、車内側空調装置271Aによって温度調節可能な領域を広げることができる。
【0129】
<<第3実施形態>>
第3実施形態に係る車両用シート303及び車両1は、第1実施形態に比べて、シート空調装置63が設けられる車両用シート303の構成が異なる。具体的には、
図16に示すように、リクライニングレバー45及びハイトレバー47の代わりに2つのボタン349がそれぞれサイドカバー27のシート外方の側面に設けられている。ボタン349はそれぞれ、リクライニング角度又はシート本体5の高さを変更するための、着座者からの操作入力を受け付ける操作入力部として機能する。また、クッション側空調装置71はそれぞれ下側送風口91を備えておらず、側面視において、2つのボタン349の前端と後端との間に位置している。制御装置381はシートクッション11の下部に設けられている。制御装置381は前後方向に2つのボタン349の間であり、且つ、2つのボタン349の下方に位置している。2つのボタン349はハーネス350によって制御装置381に接続されている。クッション側空調装置71もまたそれぞれ、ハーネス350によって制御装置381に接続されている。車内側のクッション側空調装置71は、第2実施形態と同様に、前面視で、バックル51Bの可動域Dよりもシート外方に位置している。その他の構成については、第1実施形態と同様であるため、他の構成については説明を省略する。
【0130】
次に、このように構成された車両用シート303及び車両1の効果について説明する。車外側のクッション側空調装置71(車外側空調装置71B)は、前後方向において、2つのボタン349の前端と後端との間に位置している。すなわち、車外側空調装置71Bは、サイドカバー27の前端と後端との間に位置する。これにより、車外側空調装置71Bがシート本体5の前方や後方に突出しないため、車両用シート3の小型化を図ることができる。
【0131】
更に、クッション側空調装置71(車外側空調装置71B)と、制御装置381とは、2つのボタン349の前端及び後端の間に位置している。そのため、制御装置381とクッション側空調装置71とが、2つのボタン349の前方や後方に配置されている場合に比べて、ハーネス350の長さを低減することができる。
【0132】
<<第4実施形態>>
第4実施形態に係る車両用シート403及び車両1は、第1実施形態に比べて、車外側のクッション側空調装置71(車外側空調装置71B)と、サイドエアバッグ37の展開域Cとの前後方向の位置関係が第1実施形態と異なり、他の構成は第1実施形態と同様である。よって、他の構成については説明を省略する。
【0133】
図17に示すように、サイドエアバッグ37の展開域Cは斜め上方に延びる軸線Xを中心して略扇状をなしている。本実施形態では、サイドエアバッグ37の展開域Cは、
図17に示すように、その前端が展開域Cの下端となっている。車外側空調装置71Bはその上縁が水平をなすようにシートクッション11に取り付けられている。車外側空調装置71Bの後端がサイドエアバッグ37の展開域Cの前端よりも下方に位置するように配置されている。
【0134】
次に、このように構成された車両用シート403及び車両1の効果について説明する。車外側空調装置71Bはその上縁が水平をなすようにシートクッション11に取り付けられている。そのため、車外側空調装置71Bの上縁がフロア6に平行となり、車両用シート403からの乗降が車外側空調装置71Bによって阻害され難くなる。また、車外側空調装置71Bは、後端がサイドエアバッグ37の展開域Cの前端よりも下方に位置するように配置されている。これにより、サイドエアバッグ37の展開域Cの前端が展開域Cの下端となっているため、車外側空調装置71Bがサイドエアバッグ37の展開域C外となる。よって、サイドエアバッグ37の展開が、車外側空調装置71Bによって阻害されることが防止できる。
【0135】
<<第5実施形態>>
第5実施形態に係る車両用シート3及び車両1は、第1実施形態に比べて、制御装置81によるシート空調装置63の制御が異なり、他の構成については第1実施形態と同様である。よって、他の構成については説明を省略する。
【0136】
制御装置81は、車両用シート3に乗員が着座し、且つ、温度センサ67によって取得された車室2内の温度が上側閾値以上であるときには、バック側空調装置73の出力を車外側空調装置71Bよりも大きくする。これにより、着座者の頚部に着座者の車外側の大腿部よりもより冷たい風が吹きつけられる。
【0137】
また、制御装置81は、車両用シート3に乗員が着座し、且つ、温度センサ67によって取得された車室2内の温度が下側閾値以下であるときには、車外側空調装置71Bの出力を前記バック側空調装置73よりも大きくする。これにより、着座者の車外側の大腿部に着座者の頚部よりもより温かい風が吹きつけられる。
【0138】
次にこのように構成した車両用シート3及び車両1の効果について説明する。着座者が暑いと感じるときには、着座者の上半身、特に頚部を冷却し、着座者が寒いと感じるときには、着座者の下半身、特に足元を温めることが、外気温の影響をより効果的に抑制できる場合がある。
【0139】
本実施形態では、車室2内の温度が上限閾値以上であるときには、着座者の頚部に車外側の大腿部よりも冷たい風が吹きつけられ、車室2内の温度が下限閾値以下であるときには、着座者の車外側の大腿部に頚部よりも温かい風が吹きつけられる。これにより、車室2内の温度が上限閾値以上であり、着座者が暑いと感じうるときには、頚部が冷やされ、車室2内の温度が下限閾値以下であり、着座者が寒いと感じるときに、足元が温められる。よって、外気温の影響をより効果的に抑制することができ、車両用シート3の快適性を向上させることができる。
【0140】
<<第6実施形態>>
第6実施形態に係る車両用シート3及び車両1は、温度センサ67によって取得される温度が異なり、他の構成については第1実施形態と同様である。よって、他の構成については説明を省略する。
【0141】
温度センサ67は車両用シート3の表面温度を取得する。温度センサ67は車両用シート3の着座者に触れる部分の表面温度を取得するとよい。本実施形態では、温度センサ67は車両用シート3のシートクッション11上面の略中央部分(着座者の臀部が触れる部分)の表面温度を取得する。
【0142】
制御装置81は第1実施形態と同様に、着座センサ65によって取得された着座者の有無と、温度センサ67によって取得された温度、すなわち、車両用シート3の表面温度とに基づいて、シート空調装置63の制御を行う。具体的には、制御装置81は、シート空調装置63を、温度センサ67によって取得される表面温度が上側閾値以上であるときには着座者を冷却するべく駆動し、温度センサ67によって取得される表面温度が下側閾値以下であるときには着座者を温めるべく駆動する。
【0143】
次に、このように構成した車両用シート3及び車両1の効果について説明する。制御装置81は、車両用シート3の表面温度に基づいて駆動する。そのため、制御装置81は、車室2内の温度に基づいて駆動する場合に比べて、着座者の体感温度により近い車両用シート3の表面温度に基づいて駆動するため、車両用シート3の快適性を向上させることができる。
【0144】
<<第7実施形態>>
第7実施形態に係る車両用シート3及び車両1は、第6実施形態に比べて、制御装置81によるシート空調装置563の制御が異なる点が異なる。また、空調システム561が、
図18に示すように、車両用シート3が載置される車室2内の空調を行うべく作動する車室空調装置564を更に含む点が異なる。その他の構成については第6実施形態と同様である。よって、他の構成については説明を省略する。
【0145】
車室空調装置564は、シート空調装置63の制御装置81に接続されている。制御装置81は車両用シート3に乗員が着座し、且つ、温度センサ67によって取得された表面温度が上限閾値以上、又は、下限閾値以下となったときに、クッション側空調装置71、バック側空調装置73及びヘッド側空調装置75を駆動さる。その後、制御装置81は、クッション側空調装置71、バック側空調装置73及びヘッド側空調装置75が駆動している旨の駆動通知と、温度センサ67によって取得された表面温度とを車室空調装置564に送信する。
【0146】
車室空調装置564は、制御装置81から駆動通知と表面温度とを受信すると、表面温度が所定値である駆動閾値以上となっているかを判定する。駆動閾値は下限閾値より小さな値に設定されている。表面温度が駆動閾値以上となっている場合には、車室空調装置564は車室2内の空調を行うべく駆動する。
【0147】
次に、このように構成した車両用シート3及び車両1の効果について説明する。着座者が車両用シート3に着座し、且つ、表面温度が駆動閾値以下である場合には、クッション側空調装置71、バック側空調装置73及びヘッド側空調装置75が駆動する。着座者の体温、及び、クッション側空調装置71、バック側空調装置73及びヘッド側空調装置75の駆動によって、車両用シート3の表面が温められる。
【0148】
その後、表面温度が上昇して駆動閾値以上となると、車室空調装置564が車室2内の空調を行うべく駆動する。このように着座者に近い側から順に空調装置が作動するため、車室空調装置564が作動した後、シート空調装置63が作動する場合に比べて、着座者及びその周辺をより迅速に温めることができる。
【0149】
<<第8実施形態>>
第8実施形態に係る車両用シート3及び車両1は、第7実施形態に比べて、車室空調装置564の駆動態様が異なる。その他の構成については第7実施形態と同様である。よって、他の構成については説明を省略する。
【0150】
車室空調装置564は、制御装置81から駆動通知と表面温度とを受信すると、表面温度が駆動閾値以上となっている状態が所定時間(例えば、1分)に渡って維持されているかを判定する。駆動閾値は下限閾値より小さな値に設定されている。表面温度が駆動閾値以上となっている状態が所定時間維持されている場合には、車室空調装置564は、車室2内の空調を行うべく駆動する。
【0151】
次に、このように構成した車両用シート3及び車両1の効果について説明する。シート空調装置63が作動した後、温度センサ67によって車両用シート3の表面温度が駆動閾値以上である状態が維持された後に車室空調装置564が駆動する。そのため、温度センサ67の誤検知によって瞬間的に表面温度が駆動閾値以上となっていると検出された場合でも、表面温度が駆動閾値以上である状態が維持されていない場合には、車室空調装置564が駆動しない。このように、温度センサ67の誤検知があった場合に、車室空調装置564の誤作動が防止できる。
【0152】
また、車両用シート3の表面温度が駆動閾値以上となっても、着座者が温かくなったと感じるまでには時間がかかる場合がある。本実施形態では、車両用シート3の表面温度が駆動閾値以上である状態が維持された後に車室空調装置564が駆動するため、着座者の体感温度に即した車室空調装置564の制御が実現できる。
【0153】
<<第9実施形態>>
第9実施形態に係る車両用シート3及び車両1は、第1実施形態に比べて、バック側空調装置73の構成が第1実施形態と異なり、他の構成は第1実施形態と同様である。よって、他の構成については説明を省略する。
【0154】
バック側空調装置73は、第1実施形態と同様に、シートバック13のアッパフレーム31Bの左右両端部にそれぞれ結合されたブロア103と、両ブロア103からシート内方に延び、前方に向けて開口するダクト105と、ダクト105の開口部分に設けられた温調装置107とを備えている。
【0155】
ブロア103は第1実施形態と同様に、それぞれ固定用ブラケット31Eを介してアッパフレーム31Bの端部に固定されている。ダクト105はブロア103に固定された状態で、アッパフレーム31Bの上部後面に沿って配置されている。
【0156】
アッパフレーム31B及びブロア103はともに、後方からパッド部材33によって覆われている。
図19に示すように、パッド部材33にはダクト105と前後方向に重なる位置に前後に貫通する貫通孔734Aが設けられている。ダクト105はパッド部材33の貫通孔734Aに受容されている。ダクト105には、後面上縁及び下縁からそれぞれ離反する方向に延びる一対のリップ734Bが設けられている。リップ734Bはそれぞれパッド部材33の背面に沿って、ダクト105から離反する方向に延びる板状をなしている。パッド部材33、ダクト105及びリップ734Bはそれぞれ後方から表皮材35によって覆われている。
【0157】
次に、このように構成した車両用シート3及び車両1の効果について説明する。バック側空調装置73のブロア103及びダクト105はパッド部材33によって背面側から覆われている。そのため、シートバック13の背面上端部分を、クッション性を有するように構成することができる。
【0158】
ダクト105はパッド部材33に設けられた貫通孔734Aに収容されている。そのため、パッド部材33に貫通孔734Aが設けられておらず、ダクト105をパッド部材33によって覆う場合に比べて、シートバック13の前後方向の厚みを低減することができる。
【0159】
また、パッド部材33のダクト105の上側及び下側に位置する部分がリップ734Bによって前方に押圧されている。そのため、パッド部材33のダクト105の上側及び下側が後方に膨出し難くなる。これにより、シートバック13のダクト105が設けられている部分が目立ち難くなり、車両用シート3の意匠性が向上する。
【0160】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。
【0161】
上記実施形態では、シート空調装置63は着座者に冷風・温風を送り、着座者周辺の温度調節を行っていたが、着座者の体感温度の調節を行う態様であれば、この態様には限定されない。シート空調装置63に含まれるクッション側空調装置71、バック側空調装置73及びヘッド側空調装置75のそれぞれは、加熱・冷却を行う、熱源97A、107A、117A、着座者に向けて送風を行うブロア93、103、113のいずれか一方のみを備えていてもよい。また、熱源97A、107A、117Aは対応するブロア93、103、113の上流側、下流側のいずれに設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0162】
1 :車両
2 :車室
3 :車両用シート
5 :シート本体
7 :ドア
8 :ドアエアバッグ
9 :センタコンソールボックス
9A :収容凹部
9B :蓋体
9C :開口縁
11 :シートクッション
13 :シートバック
15 :ヘッドレスト
15A :ピラー
21 :フレーム
23 :パッド部材
25 :表皮材
27A :凹部
31D :ピラーガイド
37 :サイドエアバッグ
49 :グリップ部(操作入力部)
51B :バックル
53 :シートベルト
83 :切欠部
107 :温調装置
107A :熱源
203 :車両用シート
303 :車両用シート
349 :ボタン(操作入力部)
403 :車両用シート
A :展開域
B :可動域
C :展開域
D :可動域
E :移動領域
Q :回転軸線(軸線)