(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】異常特定装置、異常特定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 43/0823 20220101AFI20240321BHJP
F24F 11/38 20180101ALI20240321BHJP
H04L 41/0631 20220101ALI20240321BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
H04L43/0823
F24F11/38
H04L41/0631
H04Q9/00 301C
(21)【出願番号】P 2022060523
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】富永 盾
【審査官】大石 博見
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-120324(JP,A)
【文献】特開2018-061082(JP,A)
【文献】特開2017-152930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 43/0823
F24F 11/38
H04L 41/0631
H04Q 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の設備機器が行う通信を観測する制御部を有する異常特定装置であって、
前記制御部は、
前記設備機器ごとに通信頻度を表す通信頻度情報を取得し、
前記通信頻度情報に基づいて前記設備機器ごとの異常度を計算し、
前記異常度が高い前記設備機器
の組み合わせを表す
情報に基づいて前記設備機器における通信異常の原因箇所を推定する、
異常特定装置。
【請求項2】
前記通信頻度情報は、前記通信が成功した回数、前記通信が失敗した回数、又は前記通信を再送した回数を少なくとも含む、
請求項1に記載の異常特定装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記設備機器ごとに前記通信頻度の変化度合に応じて前記通信異常を判定し、
前記通信異常が発生した前記設備機器の
組み合わせを表す
情報に基づいて前記原因箇所を推定する、
請求項1に記載の異常特定装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記通信頻度の変化度合及び前記通信頻度の変化の継続時間に基づいて前記通信異常を判定する、
請求項3に記載の異常特定装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記通信異常の発生頻度に基づいて前記通信異常を判定する、
請求項3に記載の異常特定装置。
【請求項6】
前記設備機器の配線情報を記憶する記憶部をさらに有し、
前記制御部は、
前記配線情報に基づいて前記原因箇所を推定する、
請求項1に記載の異常特定装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記設備機器ごとに電源の供給情報を取得し、
前記供給情報に基づいて前記原因箇所を推定する、
請求項1に記載の異常特定装置。
【請求項8】
前記供給情報は、電源喪失に関する情報を含む、
請求項7に記載の異常特定装置。
【請求項9】
前記制御部は、
前記設備機器の現場施工に関する図面情報を取得し、
前記図面情報に基づいて前記原因箇所を推定する、
請求項1に記載の異常特定装置。
【請求項10】
前記原因箇所の名称、前記原因箇所の識別情報、前記原因箇所を強調表示した図面情報、又は前記通信頻度情報を表示する表示部をさらに有する、
請求項1に記載の異常特定装置。
【請求項11】
前記設備機器は、他の前記設備機器と所定の周期で通信を行う、
請求項1に記載の異常特定装置。
【請求項12】
前記設備機器は、当該異常特定装置と直接通信できない前記設備機器を含む、
請求項1に記載の異常特定装置。
【請求項13】
室外機及び室内機からなる空調機と、前記空調機を監視する監視装置とを含む空調システムにおける前記原因箇所を推定する、
請求項1に記載の異常特定装置。
【請求項14】
前記制御部は、
前記室外機、前記室内機及び前記監視装置の間を接続する配線における前記原因箇所を推定する、
請求項13に記載の異常特定装置。
【請求項15】
前記室内機は、当該異常特定装置と直接通信できない、
請求項14に記載の異常特定装置。
【請求項16】
前記室外機及び前記室内機の系統情報を記憶する記憶部をさらに有し、
前記系統情報に基づいて前記原因箇所を推定する、
請求項13に記載の異常特定装置。
【請求項17】
前記通信頻度情報は、前記室外機と前記室内機との間の前記通信頻度を表す、
請求項13に記載の異常特定装置。
【請求項18】
前記通信頻度情報は、前記室外機と前記監視装置との間の前記通信頻度を表す、
請求項13に記載の異常特定装置。
【請求項19】
異常特定装置が有する、複数の設備機器が行う通信を観測する制御部が、
前記設備機器ごとに通信頻度を表す通信頻度情報を取得する手順と、
前記通信頻度情報に基づいて前記設備機器ごとの異常度を計算する手順と、
前記異常度が高い前記設備機器
の組み合わせを表す
情報に基づいて前記設備機器における通信異常の原因箇所を推定する手順と、
を実行する異常特定方法。
【請求項20】
異常特定装置が有する、複数の設備機器が行う通信を観測する制御部に、
前記設備機器ごとに通信頻度を表す通信頻度情報を取得する手順と、
前記通信頻度情報に基づいて前記設備機器ごとの異常度を計算する手順と、
前記異常度が高い前記設備機器
の組み合わせを表す
情報に基づいて前記設備機器における通信異常の原因箇所を推定する手順と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、異常特定装置、異常特定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の設備機器を通信線で接続した通信システムにおいて、通信異常を監視する技術がある。例えば、特許文献1には、設備機器が通信線で接続された空調システムにおいて、設備機器の通信頻度の変化に基づいて、通信の異常が発生した設備機器を特定する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された発明は、通信頻度が低下した設備機器を一律に通信異常の原因箇所と特定するため、原因箇所の特定精度が低いという問題がある。
【0005】
本開示は、通信システムにおける通信異常の原因箇所の特定精度を向上する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様に係る異常特定装置は、複数の設備機器が行う通信を観測する制御部を有する異常特定装置であって、前記制御部は、前記設備機器ごとに通信頻度を表す通信頻度情報を取得し、前記通信頻度のパターンに応じて前記設備機器における通信異常の原因箇所を推定する。
【0007】
本開示の第1の態様によれば、通信システムにおける通信異常の原因箇所の特定精度を向上することができる。
【0008】
本開示の第2の態様は、第1の態様に係る異常特定装置であって、前記通信頻度情報は、前記通信が成功した回数、前記通信が失敗した回数、又は前記通信を再送した回数を少なくとも含む。
【0009】
本開示の第3の態様は、第1の態様に係る異常特定装置であって、前記制御部は、前記設備機器ごとに前記通信頻度の変化度合に応じて前記通信異常を判定し、前記通信異常が発生した前記設備機器のパターンに応じて前記原因箇所を推定する。
【0010】
本開示の第4の態様は、第3の態様に係る異常特定装置であって、前記制御部は、前記通信頻度の変化度合及び前記通信頻度の変化の継続時間に基づいて前記通信異常を判定する。
【0011】
本開示の第5の態様は、第3の態様に係る異常特定装置であって、前記制御部は、前記通信異常の発生頻度に基づいて前記通信異常を判定する。
【0012】
本開示の第6の態様は、第1の態様に係る異常特定装置であって、前記設備機器の配線情報を記憶する記憶部をさらに有し、前記制御部は、前記配線情報に基づいて前記原因箇所を推定する。
【0013】
本開示の第7の態様は、第1の態様に係る異常特定装置であって、前記制御部は、前記設備機器ごとに電源の供給情報を取得し、前記供給情報に基づいて前記原因箇所を推定する。
【0014】
本開示の第8の態様は、第7の態様に係る異常特定装置であって、前記供給情報は、電源喪失に関する情報を含む。
【0015】
本開示の第9の態様は、第1の態様に係る異常特定装置であって、前記制御部は、前記設備機器の現場施工に関する図面情報を取得し、前記図面情報に基づいて前記原因箇所を推定する。
【0016】
本開示の第10の態様は、第1の態様に係る異常特定装置であって、前記原因箇所の名称、前記原因箇所の識別情報、前記原因箇所を強調表示した図面情報、又は前記通信頻度情報を表示する表示部をさらに有する。
【0017】
本開示の第11の態様は、第1の態様に係る異常特定装置であって、前記設備機器は、他の前記設備機器と所定の周期で通信を行う。
【0018】
本開示の第12の態様は、第1の態様に係る異常特定装置であって、前記設備機器は、当該異常特定装置と直接通信できない前記設備機器を含む。
【0019】
本開示の第13の態様は、第1の態様に係る異常特定装置であって、室外機及び室内機からなる空調機と、前記空調機を監視する監視装置とを含む空調システムにおける前記原因箇所を推定する。
【0020】
本開示の第14の態様は、第13の態様に係る異常特定装置であって、前記制御部は、前記室外機、前記室内機及び前記監視装置の間を接続する配線における前記原因箇所を推定する。
【0021】
本開示の第15の態様は、第14の態様に係る異常特定装置であって、前記室内機は、当該異常特定装置と直接通信できない。
【0022】
本開示の第16の態様は、第13の態様に係る異常特定装置であって、前記室外機及び前記室内機の系統情報を記憶する記憶部をさらに有し、前記系統情報に基づいて前記原因箇所を推定する。
【0023】
本開示の第17の態様は、第13の態様に係る異常特定装置であって、前記通信頻度情報は、前記室外機と前記室内機との間の前記通信頻度を表す。
【0024】
本開示の第18の態様は、第13の態様に係る異常特定装置であって、前記通信頻度情報は、前記室外機と前記監視装置との間の前記通信頻度を表す。
【0025】
本開示の第19の態様に係る異常特定方法は、異常特定装置が有する、複数の設備機器が行う通信を観測する制御部が、前記設備機器ごとに通信頻度を表す通信頻度情報を取得する手順と、前記通信頻度のパターンに応じて前記設備機器における通信異常の原因箇所を推定する手順と、を実行する。
【0026】
本開示の第20の態様に係るプログラムは、異常特定装置が有する、複数の設備機器が行う通信を観測する制御部に、前記設備機器ごとに通信頻度を表す通信頻度情報を取得する手順と、前記通信頻度のパターンに応じて前記設備機器における通信異常の原因箇所を推定する手順と、を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】空調システムの全体構成の第1の例を示すブロック図である。
【
図2】空調システムの全体構成の第2の例を示すブロック図である。
【
図3】空調システムの全体構成の第3の例を示すブロック図である。
【
図4】設備機器間の関係を説明するための概念図である。
【
図5】異常特定装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】異常特定方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】通信異常判定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】原因箇所特定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】通信異常パターンの一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、各実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0029】
[第1実施形態]
<システム構成>
図1は、本実施形態における空調システムのシステム構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、空調システム1は、異常特定装置100、監視装置10、1台以上の室外機20及び1台以上の室内機30を含む。以下、監視装置10、室外機20及び室内機30を区別せず、「設備機器」と呼ぶことがある。
【0030】
なお、空調システムは、通信システムの一例である。通信システムにおいて通信を行う設備機器は、例えば、照明設備、エレベータ等の昇降機、OA機器等の設備機器であってもよい。
【0031】
異常特定装置100は、空調システム1に含まれる各設備機器の通信を観測し、通信異常の原因箇所を特定するPC(Personal Computer)、ワークステーション又はサーバ等の情報処理装置である。異常特定装置100は、後述する異常特定方法を実行することで、空調システム1における通信異常の原因箇所を特定する。
【0032】
監視装置10は、室外機20及び室内機30を管理する設備機器である。監視装置10は、室外機20及び室内機30が定期的に送信する現在の状態を表す信号を受信する。監視装置10は、ユーザの操作に応じて、室外機20及び室内機30に運転の指令を表す信号を送信する。
【0033】
室外機20及び室内機30は、1以上の部屋を含む所定の室内空間の空気調和を行うように、建物等の施設に設置される設備機器である。室外機20は、例えば、空気調和装置(以下、「空調機」とも呼ぶ)の室外機である。室内機30は、例えば、空気調和装置の室内機である。室外機20と室内機30とは、図示していない冷媒配管で接続される。
【0034】
異常特定装置100は、監視装置10と通信線40で接続される。監視装置10は、各室外機20と通信線41で接続される。室外機20は、1台以上の室内機30と通信線42で接続される。異常特定装置100は、監視装置10のみと通信可能であり、室外機20及び室内機30とは通信できないように構成される。
【0035】
図1に示した空調システムのシステム構成は一例であって、他の構成であってもよい。例えば、異常特定装置100は、監視装置10が備えるべき機能を兼ね備えた1台の情報処理装置として構成してもよい。
【0036】
≪設備機器間の配線形態≫
設備機器間の通信配線は、様々な形態を取ることができる。
図1は、設備機器間の第1の配線例を示すブロック図である。
図1に示されているように、第1の配線例では、各設備機器間がバス配線で接続されている。
【0037】
第1の配線例では、複数の室外機20-A~Cは、監視装置10と通信線41で直列に接続される。室内機30-A-1~3は、室外機20-Aと通信線42-Aで直列に接続される。同様に、室内機30-B-1~3は、室外機20-Bと通信線42-Bで直列に接続され、室内機30-C-1~3は、室外機20-Cと通信線42-Cで直列に接続される。
【0038】
なお、空調システム1において、室外機20の数は限定されない。また、各室外機20に対して接続される室内機30の数は限定されない。空調システム1が設置される施設の状況に応じて、任意の台数の室外機20を設置することができる。また、各室外機20には、室外機20の処理能力を超えない範囲で、任意の台数の室内機30を接続することができる。
【0039】
図2は、設備機器間の第2の配線例を示すブロック図である。
図2に示されているように、第2の配線例では、各設備機器間がスター配線で接続されている。
【0040】
第2の配線例では、複数の室外機20-A~Cは、監視装置10と通信線41で並列に接続される。室内機30-A-1~3は、室外機20-Aと通信線42-Aで並列に接続される。同様に、室内機30-B-1~3は、室外機20-Bと通信線42-Bで並列に接続される。
【0041】
図3は、設備機器間の第3の配線例を示すブロック図である。
図3に示されているように、第3の配線例では、監視装置10と室外機20とがスター配線で接続され、室外機20と室内機30とがバス配線で接続されている。
【0042】
第3の配線例では、複数の室外機20-A~Cは、監視装置10と通信線41で並列に接続される。室内機30-A-1~3は、室外機20-Aと通信線42-Aで直列に接続される。同様に、室内機30-B-1~3は、室外機20-Bと通信線42-Bで直列に接続される。
【0043】
以降では、各設備機器間がバス配線で接続された空調システム1について説明する。ただし、本実施形態は、他の配線形態で接続された空調システム1に対しても同様にして適用可能である。
【0044】
≪設備機器間の関係≫
ここで、本明細書において設備機器間の関係を表す用語について説明する。
図4は、設備機器間の関係を説明するための概念図である。
【0045】
図1から
図3を用いて説明したように、空調システム1では、設備機器間の通信経路がツリー状に形成されている。ここで、異常特定装置100から監視装置10及び室外機20を経由して室内機30に至る流れを「上流」から「下流」と呼ぶ。例えば、監視装置10と室外機20との間では、監視装置10が上流となり、室外機20が下流となる。
【0046】
設備機器間に上流及び下流の関係がある場合、「親子関係」とも呼ぶ。例えば、監視装置10と室外機20との間では、監視装置10が親ノードであり、室外機20が子ノードである。親子関係のある一群の設備機器を「系」と呼ぶ。
【0047】
図4は、系の一例を示す図である。
図4に示すように、1つの系において、親ノードは1台であり、子ノードは複数台となり得る。設備機器間の配線は子ノードの台数と同数である。電源系統は、各子ノードが異なる電源系統に属するように接続されるものとする。したがって、電源系統は、子ノードの台数と同数である。このとき、子ノード、配線及び電源系統には、上流から下流に向かって昇順に枝番が割り当てられる。各系における末端の枝番は「e」とする。
【0048】
<ハードウェア構成>
図5は、本実施形態における異常特定装置100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図5に示すように、異常特定装置100は、プロセッサ101、メモリ102、補助記憶装置103、操作装置104、表示装置105、通信装置106、ドライブ装置107を有する。なお、異常特定装置100の各ハードウェアは、バス108を介して相互に接続されている。
【0049】
プロセッサ101は、CPU(Central Processing Unit)等の各種演算デバイスを有する。プロセッサ101は、補助記憶装置103にインストールされている各種プログラムをメモリ102上に読み出して実行する。
【0050】
メモリ102は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の主記憶デバイスを有する。プロセッサ101とメモリ102とは、いわゆるコンピュータ(以下、「制御部」ともいう)を形成し、プロセッサ101が、メモリ102上に読み出した各種プログラムを実行することで、当該コンピュータは各種機能を実現する。
【0051】
補助記憶装置103は、各種プログラムや、各種プログラムがプロセッサ101によって実行される際に用いられる各種データを格納する。
【0052】
操作装置104は、異常特定装置100のユーザが各種操作を行うための操作デバイスである。表示装置105は、異常特定装置100により実行される各種処理の処理結果を表示する表示デバイスである。
【0053】
通信装置106は、不図示のネットワークを介して外部装置と通信を行うための通信デバイスである。
【0054】
ドライブ装置107は、記憶媒体109をセットするためのデバイスである。ここでいう記憶媒体109には、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記憶する媒体が含まれる。また、記憶媒体109には、ROM、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記憶する半導体メモリ等が含まれていてもよい。
【0055】
なお、補助記憶装置103にインストールされる各種プログラムは、例えば、配布された記憶媒体109がドライブ装置107にセットされ、記憶媒体109に記憶された各種プログラムがドライブ装置107により読み出されることでインストールされる。あるいは、補助記憶装置103にインストールされる各種プログラムは、通信装置106を介してネットワークからダウンロードされることで、インストールされてもよい。
【0056】
<処理の流れ>
図6は、本実施形態における異常特定方法の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0057】
ステップS1において、異常特定装置100の制御部は、監視装置10から各設備機器間の通信頻度情報を取得する。通信頻度情報は、単位時間あたりに発生した通信に関する情報である。通信頻度情報は、通信に成功した回数、通信に失敗した回数、及び通信を再送した回数を含む。
【0058】
監視装置10は、室外機20及び室内機30と定期的に通信を行う。空調システム1がバス配線で構成される場合、室内機30は室外機20を介して監視装置10と通信を行う。通信を行う時間間隔は、任意に定めることができるが、例えば、1時間あたり60回である。
【0059】
通信頻度情報は、監視装置10と室外機20との間の通信頻度、及び監視装置10と室内機30との間の通信頻度を含む。通信頻度情報は、室外機20と室内機30との間の通信頻度を含んでもよい。
【0060】
図7は、通信頻度情報の一例を示す図である。
図7に示した通信頻度情報は、バス配線された室外機20及び4台の室内機30それぞれの通信頻度情報の時間経過を表したグラフである。なお、
図7に示したグラフは、2年分の通信頻度情報を示したものである。
【0061】
図7に示されているように、各設備機器は定期的に通信を行うが、一時的に通信頻度が低下する場合がある。このような継続時間の短い一時的な通信頻度の低下は平常時でも起こり得るため、無視しても構わない。一方、
図7において点線の円で囲った箇所のように一定時間継続して通信頻度が低下する場合がある。このような継続時間の長い通信頻度の低下は何らかの異常が発生している、又は異常が発生する予兆であると判断できる。
【0062】
図6に戻って説明する。ステップS2において、異常特定装置100の制御部は、各設備機器について、通信異常が発生しているか否かを判定する。制御部は、後述の通信異常判定処理を実行することで、通信異常が発生しているか否かを判定する。
【0063】
≪通信異常判定処理≫
図8は、本実施形態における通信異常判定処理(
図6に示したステップS3)の流れの一例を示すフローチャートである。
図8に示す通信異常判定処理は、1台の設備機器について通信異常を判定する処理の流れを示すフローチャートである。したがって、通信異常判定処理は、設備機器の台数分繰り返し実行される。
【0064】
ステップS3-1において、異常特定装置100の制御部は、設備機器の通信頻度情報に基づいて、当該設備機器の異常度を計算する。
【0065】
異常度は、通信頻度の変化度合と通信頻度変化の継続時間に基づいて計算される。通信頻度の変化度合とは、通信頻度の理論値に対する通信頻度の実測値の比である。本実施形態では、各設備機器において1時間あたり60回の通信が発生するため、通信頻度情報に表された1時間分の通信頻度の実測値を60で除算した値が変化度合を表す値となる。
【0066】
図9は、通信頻度変化の一例を示す図である。
図9に示されるように、異常度は、通信頻度の変化度合の時間経過を折れ線グラフで表したときの、通信頻度が理論値から変動した部分の面積である。
【0067】
制御部は、通信頻度の低下が発生している時間帯(
図9における発生時刻から回復時刻の間)において、最も通信頻度が低下したときの低下幅が所定の範囲内にあったとき、異常度を計算する。具体的には、制御部には、低下幅の下限を表す閾値1、及び低下幅の上限を表す閾値2が設定されている。制御部は、通信頻度の低下が発生した時間帯に、低下幅が閾値1以上閾値2以下であった時刻があるか否かを判定する。制御部は、低下幅が閾値1以上閾値2以下であった時刻がある場合、異常度を計算する。
【0068】
設備機器間の通信頻度は平常時でも変動があるため、一定の幅で通信頻度が低下しない限り通信異常と判断すべきではない。また、通信頻度の低下幅が大きすぎる場合、電源等の障害等、他の原因により通信異常が引き起こされている可能性が高い。そのため、低下幅の上限と下限を定める閾値を設定し、通信頻度の低下幅が所定の範囲内にあるときに異常度を計算する。
【0069】
図8に戻って説明する。ステップS3-2において、異常特定装置100の制御部は、ステップS3-1で計算した異常度が所定の閾値以上であるか否かを判定する。異常度が閾値以上である場合(YES)、制御部は、ステップS3-6に処理を進める。一方、異常度が閾値未満である場合(NO)、制御部は、ステップS3-3に処理を進める。
【0070】
ステップS3-3において、異常特定装置100の制御部は、設備機器の通信頻度情報に基づいて、当該設備機器の通信頻度変化の発生頻度を計算する。
【0071】
通信頻度変化の発生頻度は、所定の時間間隔において、通信頻度の低下が発生した回数である。通信頻度の低下は、通信頻度の実測値が通信頻度の理論値より低下してから通信頻度の理論値に回復するまでを1回として計算する。
【0072】
通信頻度の低下が1回だけであれば、偶発的な事象である可能性が高い。偶発的な事象の原因としては、例えば、運転中の設備機器のリソース不足や通信経路のノイズ等が考えられる。一方、通信頻度の低下が周期的に発生しているのであれば、通信異常が発生している可能性が高い。そのため、所定の時間間隔における通信頻度低下の発生頻度が高いときに通信異常と判断する。
【0073】
ステップS3-4において、異常特定装置100の制御部は、ステップS3-3で計算した通信頻度変化の発生頻度が所定の閾値以上であるか否かを判定する。通信頻度変化の発生頻度が閾値以上である場合(YES)、制御部は、ステップS3-6に処理を進める。一方、通信頻度変化の発生頻度が閾値未満である場合(NO)、制御部は、ステップS3-5に処理を進める。
【0074】
ステップS3-5において、異常特定装置100の制御部は、当該設備機器で通信異常が発生していないと判定する。
【0075】
ステップS3-6において、異常特定装置100の制御部は、当該設備機器で通信異常が発生していると判定する。
【0076】
なお、
図8に示した通信異常判定処理では、ステップS3-2における異常度に基づく判定と、ステップS3-4における発生頻度に基づく判定とを実行する例を示したが、いずれか一方の判定のみを実行してもよい。例えば、異常度に基づく判定のみを実行する場合、ステップS3-3及びS3-4は省略される。また、例えば、発生頻度に基づく判定のみを実行する場合、ステップS3-1及びS3-2は省略される。
【0077】
ここでは、通信頻度が理論値から低下した場合について説明したが、通信頻度が理論値よりも上昇した場合についても同様に判定することができる。例えば、設備機器間の通信が不安定になることで再送が多発した場合等には、通信頻度が理論値よりも上昇することがあり得る。
【0078】
図6に戻って説明する。ステップS3において、異常特定装置100の制御部は、通信異常が発生している設備機器がある場合(YES)、ステップS4に処理を進める。一方、通信異常が発生している設備機器がない場合(NO)、制御部は、異常特定方法の処理を終了する。
【0079】
ステップS4において、異常特定装置100の制御部は、各設備機器の通信異常パターンに基づいて、通信異常の原因箇所を特定する。通信異常パターンとは、各設備機器の通信頻度情報の組み合わせを表すパターンである。各設備機器の通信異常は、通信頻度情報に基づいて判定されるため、通信異常パターンは、空調システム1に含まれる設備機器のうち、通信異常が発生している設備機器の組み合わせを表す情報とも言える。制御部は、後述の原因箇所特定処理を実行することで、通信異常の原因箇所を特定する。
【0080】
≪原因箇所特定処理≫
図10は、本実施形態における原因箇所特定処理(
図6に示したステップS4)の流れの一例を示すフローチャートである。
【0081】
原因箇所特定処理の実行に先立って、異常特定装置100の制御部は、空調システム1に含まれる各設備機器に関する機器情報を補助記憶装置103(以下、「記憶部」とも呼ぶ)に記憶しておく。機器情報は、各設備機器を識別する識別情報、各設備機器を表す名称、各設備機器に割り当てられた通信アドレス等を関連付けるデータベースに格納される。
【0082】
異常特定装置100の制御部は、原因箇所の特定に用いる施工情報を記憶部に記憶しておくことができる。施工情報は、空調システム1の現場施工に関する図面情報である。施工情報は、例えば、BIM(Building Information Modeling)システムから取得して、異常特定装置100の記憶部に予め記憶しておけばよい。
【0083】
施工情報には、空調システム1に含まれる各設備機器間の配線を表す配線情報、各設備機器の系を表す系統情報、及び空調システム1が設置される施設の図面情報が含まれる。図面情報には、空調システム1に含まれる各設備機器の設置箇所、及び施設に敷設された電源系統が表されている。
【0084】
異常特定装置100の制御部は、施工情報を利用することで、通信異常の原因箇所をより高精度に特定することができる。ただし、施工情報を利用することは必須ではなく、利用する施工情報はユーザが任意に選択することができる。
【0085】
ステップS4-1において、異常特定装置100の制御部は、設備機器間の配線情報が判明しているか否かを判定する。配線情報が判明しているか否かは、空調システム1の配線情報が異常特定装置100の記憶部に記憶されているか否かにより判定する。配線情報が判明していない場合(YES)、制御部は、ステップS4-2に処理を進める。一方、配線情報が判明している場合(NO)、制御部は、ステップS4-2を省略し、ステップS4-3に処理を進める。
【0086】
ステップS4-2において、異常特定装置100の制御部は、各設備機器の異常度に基づいて、空調システム1に仮想配線を適用する。仮想配線とは、各設備機器間の接続を推測して配線形態を仮定した仮想的な配線情報である。制御部は、まず、各子ノードに対して異常度の昇順に従って枝番を割り当てる。次に、制御部は、各子ノードがバス配線で接続されているものと仮定し、各子ノードの配線を設定する。
【0087】
図11は、仮想配線の一例を示す図である。
図11に示されているように、配線が不明な3台の子ノードa~cがあるものとする。子ノードaは異常度が100であり、子ノードbは異常度が0であり、子ノードcは異常度が80である。したがって、子ノードbは子ノード1に、子ノードcは子ノード2に、子ノードaは子ノードeに割り当てられる。そして、子ノード1~eが枝番の順にバス配線で接続されることで、仮想的な配線情報が生成される。
【0088】
図10に戻って説明する。ステップS4-3において、異常特定装置100の制御部は、電源喪失ルールを判定する。電源喪失ルールは、子ノードn(n=1,2,…,e)で通信異常が発生している場合、電源系統nを原因箇所と特定するルールである。電源喪失ルールを判定する際には、施工情報として予め記憶された図面情報を用いることができる。
【0089】
各設備機器は、電源のオン/オフを表す電源供給情報を定期的に送信している場合がある。異常特定装置100の制御部は、各設備機器から取得した電源供給情報を電源喪失ルールの判定に用いることができる。電源オフを表す電源供給情報を受信した設備機器において通信異常が発生している場合、その設備機器が属する電源系統が原因箇所であるものと確定することができる。
【0090】
ステップS4-4において、異常特定装置100の制御部は、機器内不良ルールを判定する。機器内不良ルールは、子ノードnで通信異常が発生している場合、子ノードnを原因箇所と特定するルールである。
【0091】
ステップS4-5において、異常特定装置100の制御部は、配線不良ルールを判定する。配線不良ルールは、子ノードn~eで通信異常が発生しており、子ノードnの1つ上流にある子ノードn-1で通信異常が発生していない場合、配線nを原因箇所と特定するルールである。
【0092】
配線不良ルールでは、子ノードeで通信異常が発生していない場合、系内での配線不良はないものと判断する。また、配線不良ルールでは、親ノード及びすべての子ノードで通信異常が発生している場合、系内での配線不良はないものと判断する。この場合、親ノードより上流に原因箇所がある可能性が高いためである。
【0093】
なお、親ノード及びすべての子ノードで通信異常が発生している場合、親ノードが原因箇所である可能性もある。ただし、親ノードより上流で原因箇所と判定された配線があれば、その配線が原因である可能性が高い。
【0094】
ステップS4-6において、異常特定装置100の制御部は、ステップS4-3からステップS4-5で得られた判定結果に基づいて、通信異常の原因箇所を特定する。制御部は、各判定結果で原因箇所が重複した場合、配線不良ルールを優先する。複数の設備機器で同時に機器内不良が発生する確率は低いからである。
【0095】
ここで、通信異常パターンと原因箇所との関係について、
図12を参照しながら具体的に説明する。
図12は、通信異常パターンを例示する概念図である。
図12では、×印で示した機器で通信異常が発生していることを表している。
【0096】
図12(A)は、1台の子ノードで通信異常が発生している場合の通信異常パターンの一例を示す概念図である。
図12(A)に示した例では、子ノード2のみで通信異常が発生している。この場合、機器内不良ルールに基づいて、子ノード2が原因箇所と特定される。
【0097】
図12(B)は、複数の子ノードで通信異常が発生している場合の通信異常パターンの一例を示す概念図である。
図12(B)に示した例では、子ノード2及び子ノードeで通信異常が発生している。この場合、配線不良ルールに基づいて、配線2が原因箇所と特定される。
【0098】
図12(C)は、親ノード及びすべての子ノードで通信異常が発生している場合の通信異常パターンの一例を示す概念図である。
図12(C)に示した例では、親ノード及び子ノード1~eで通信異常が発生している。この場合、親ノードより上流の系で原因箇所が特定される。
【0099】
なお、
図10に示した原因箇所特定処理では、ステップS4-3における電源喪失ルール、ステップS4-4における機器内不良ルール、及びステップS4-5における配線不良ルールを順番に判定したが、各ルールの判定順はどのような順番でもよいし、複数のルールを並列で判定してもよい。また、すべてのルールを判定しなくてもよく、いずれか1つ又は2つのルールを判定してもよい。
【0100】
図6に戻って説明する。ステップS5において、異常特定装置100の制御部は、通信異常に関する情報を出力する。通信異常に関する情報は、通信異常の原因箇所を含む。通信異常に関する情報は、配線(配線が不明な場合には、仮想配線)に関する情報、各設備機器の通信頻度情報、及び各設備機器の異常度等を含んでもよい。
【0101】
異常特定装置100の制御部は、通信異常に関する情報を表示装置105(以下、「表示部」とも呼ぶ)に表示してもよい。制御部は、例えば、原因箇所の名称、原因箇所の識別情報、原因箇所を強調表示した図面情報、各通信設備機器の通信頻度情報及び異常度等の少なくとも1つを表示する画面を表示部に表示する。当該画面に表示する名称、識別情報及び図面情報等は、予め記憶部に記憶されている機器情報を用いる。
【0102】
制御部は、通信異常に関する情報をユーザが利用するユーザ端末に送信してもよい。ユーザ端末では、通信異常に関する情報を表示する画面を表示装置に表示する。当該画面に表示する情報は、異常特定装置100の表示部に表示する場合と同様である。
【0103】
<まとめ>
以上、本開示の各実施形態によれば、通信システムにおける通信異常の特定精度を向上することができる。例えば、特許文献1に開示された従来技術では、通信頻度が低下した設備機器を一律に通信異常の原因箇所と特定するため、原因箇所の特定精度が低いという問題がある。
【0104】
一方、本開示の各実施形態における異常特定装置は、設備機器ごとに通信頻度を表す通信頻度情報を取得し、通信頻度のパターンに応じて設備機器における通信異常の原因箇所を推定する。したがって、本開示の各実施形態によれば、通信システムにおける通信異常の特定精度を向上することができる。
【0105】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0106】
1 空調システム
10 監視装置
20 室外機
30 室内機
100 異常特定装置