(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】遠心ファン
(51)【国際特許分類】
F04D 29/28 20060101AFI20240321BHJP
F04D 29/30 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
F04D29/28 K
F04D29/28 F
F04D29/30 D
(21)【出願番号】P 2023009484
(22)【出願日】2023-01-25
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】寺川 あづみ
(72)【発明者】
【氏名】柏原 貴士
(72)【発明者】
【氏名】多田 林太郎
(72)【発明者】
【氏名】富山 暢仁
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-127176(JP,A)
【文献】特開2017-122394(JP,A)
【文献】特開2021-14794(JP,A)
【文献】特開2021-14795(JP,A)
【文献】特開2022-51212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/28
F04D 29/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向が回転軸(A1)の方向に沿うように配置されるプレート(41)と、
前記プレートと前記回転軸の方向に間隔を置いて配置され、前記回転軸の方向から見てリング状の形状を有するリング(42)と、
前記プレートと前記リングとの間に配置され、一端が前記プレートに接合され、他端が前記リングに接合される、第1ブレード(43a)を含む複数のブレード(43)と、
を備え、
前記第1ブレードの前記プレート側の接合面である第1接合面(51)は、
前記第1接合面において、前記第1ブレードの回転方向(A2)の先端(91)と後端(92)とを結ぶ第1直線(L1)の中心(93)を通り、かつ前記第1直線に直交する第2直線(L2)、よりも前記先端側の部分である第2接合面(52)と、
前記第1接合面において、前記第2直線よりも前記後端側の部分である第3接合面(53)と、
を有し、
前記第2接合面の前記第2直線に沿った幅寸法のうち最も大きい第1幅寸法(D1)は、前記第3接合面の前記第2直線に沿った幅寸法のうち最も大きい第2幅寸法(D2)の1.3倍以上である、
遠心ファン(30)。
【請求項2】
前記第1幅寸法は、前記第2幅寸法の3倍以下である、
請求項1に記載の遠心ファン(30)。
【請求項3】
前記第1幅寸法は、前記第2幅寸法の1.6倍以上である、
請求項2に記載の遠心ファン(30)。
【請求項4】
前記第2接合面において、前記第1直線よりも前記回転軸側の部分である第4接合面(54)の面積は、前記回転軸側とは反対側の部分である第5接合面(55)の面積より大きい、
請求項1から3のいずれか1つに記載の遠心ファン(30)。
【請求項5】
前記第2接合面における前記第1直線よりも前記回転軸側の部分である第4接合面(54)の面積は、前記第3接合面における前記第1直線よりも前記回転軸側の部分である第6接合面(56)の面積より大きい、
請求項1から3のいずれか1つに記載の遠心ファン(30)。
【請求項6】
前記プレートから前記リングに延びる前記第1ブレードを前記第1直線に沿って見たときに、前記第1ブレードの形状は第1凹部(73)を含む、
請求項1から3のいずれか1つに記載の遠心ファン(30)。
【請求項7】
前記第1凹部は、前記リングよりも前記プレートに近い位置に形成される、
請求項6に記載の遠心ファン(30)。
【請求項8】
複数の前記ブレードは、前記第1ブレードに隣接する第2ブレード(43b)を含み、
前記第1接合面は、前記回転軸側に第2凹部(74)が形成された形状であり、
前記第2凹部と、前記第2凹部の両端を結ぶ第3直線(L3)と、によって囲まれた領域の外に、前記第2ブレードの前記プレート側の接合面である第7接合面(57)が位置する、
請請求項1から3のいずれか1つに記載の遠心ファン(30)。
【請求項9】
前記第1接合面は、前記第1ブレードの前記プレート側に形成されている中空部(71)の周りに位置する、
請求項1から3のいずれか1つに記載の遠心ファン(30)。
【請求項10】
前記第1ブレードは、樹脂によって成形される、
請求項1から3のいずれか1つに記載の遠心ファン(30)。
【請求項11】
前記プレートおよび前記リングは、アルミまたはアルミ合金によって成形される、
請求項1から3のいずれか1つに記載の遠心ファン(30)。
【請求項12】
前記プレートと前記第1ブレードとは、溶接以外の方法によって接合される、
請求項1から3のいずれか1つに記載の遠心ファン(30)。
【請求項13】
複数の前記ブレードの枚数は、7~11枚である、
請求項1から3のいずれか1つに記載の遠心ファン(30)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
遠心ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2019-100209号公報)に示されているように、厚み方向が回転軸の方向に沿うように配置されるプレートと、プレートと回転軸の方向に間隔を置いて配置され、回転軸の方向から見てリング状の形状を有するリングと、プレートとリングとの間に配置され、一端がプレートに接合され、他端がリングに接合される、複数のブレードと、を備える、遠心ファンが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
遠心ファンは、ブレードが高速回転するため、ブレードに作用する遠心力が大きい。そのため、ブレードとプレートとの接合強度をさらに高めることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点の遠心ファンは、プレートと、リングと、複数のブレードと、を備える。プレートは、厚み方向が回転軸の方向に沿うように配置される。リングは、プレートと回転軸の方向に間隔を置いて配置される。リングは、回転軸の方向から見てリング状の形状を有する。複数のブレードは、プレートとリングとの間に配置される。複数のブレードは、一端がプレートに接合され、他端がリングに接合される。複数のブレードは、第1ブレードを含む。第1接合面は、第1ブレードのプレート側の接合面である。第1接合面は、第2接合面と、第3接合面と、を有する。第2接合面は、第1接合面において、第2直線よりも先端側の部分である。第2直線は、第1直線の中心を通り、かつ第1直線に直交する。第1直線は、第1ブレードの回転方向の先端と後端とを結ぶ。第3接合面は、第1接合面において、第2直線よりも後端側の部分である。第1幅寸法は、第2接合面の第2直線に沿った幅寸法のうち最も大きい。第2幅寸法は、第3接合面の第2直線に沿った幅寸法のうち最も大きい。第1幅寸法は、第2幅寸法の1.3倍以上である。
【0005】
第1ブレードの回転方向の先端側の部分である第2接合面を回転軸側に広げることにより、遠心力によって第1接合面に生じる最大垂直応力の値が小さくなる傾向がある。第1観点の遠心ファンでは、第1幅寸法は、第2幅寸法の1.3倍以上である。第1幅寸法は、第2接合面の第2直線に沿った幅寸法のうち最も大きい。第2幅寸法は、第3接合面の第2直線に沿った幅寸法のうち最も大きい。その結果、遠心ファンは、第1ブレードとプレートとの接合強度を高めることができる。
【0006】
第2観点の遠心ファンは、第1観点の遠心ファンであって、第1幅寸法は、第2幅寸法の3倍以下である。
【0007】
第3観点の遠心ファンは、第1観点または第2観点の遠心ファンであって、第1幅寸法は、第2幅寸法の1.6倍以上である。
【0008】
第4観点の遠心ファンは、第1観点から第3観点のいずれかの遠心ファンであって、第2接合面において、第1直線よりも回転軸側の部分である第4接合面の面積は、回転軸側とは反対側の部分である第5接合面の面積より大きい。
【0009】
第1ブレード43aは、遠心力により、第2接合面の回転軸側の部分である第4接合面から剥がれていく傾向がある。第4観点の遠心ファンは、第2接合面において、第4接合面の面積を、第5接合面の面積より大きくすることにより、第1ブレードとプレートとの接合強度を高めることができる。
【0010】
第5観点の遠心ファンは、第1観点から第4観点のいずれかの遠心ファンであって、第2接合面における第1直線よりも回転軸側の部分である第4接合面の面積は、第3接合面における第1直線よりも回転軸側の部分である第6接合面の面積より大きい。
【0011】
第1ブレード43aは、遠心力により、第2接合面の回転軸側の部分である第4接合面から剥がれていく傾向がある。第5観点の遠心ファンは、第4接合面の面積を、第6接合面の面積より大きくすることにより、第1ブレードとプレートとの接合強度を高めることができる。
【0012】
第6観点の遠心ファンは、第1観点から第5観点のいずれかの遠心ファンであって、プレートからリングに延びる第1ブレードを第1直線に沿って見たときに、第1ブレードの形状は第1凹部を含む。
【0013】
第7観点の遠心ファンは、第6観点の遠心ファンであって、第1凹部は、リングよりもプレートに近い位置に形成される。
【0014】
第7観点の遠心ファンは、このような構成により、遠心ファンの性能に影響を与えずに、第1幅寸法を確保することができる。
【0015】
第8観点の遠心ファンは、第1観点から第7観点のいずれかの遠心ファンであって、複数のブレードは、第1ブレードに隣接する第2ブレードを含む。第1接合面は、回転軸側に第2凹部が形成された形状である。第2凹部と、第2凹部の両端を結ぶ第3直線と、によって囲まれた領域の外に、第7接合面が位置する。第7接合面は、第2ブレードのプレート側の接合面である。
【0016】
遠心力により第1ブレードと第2ブレードとが変形すると、これに応じて、プレートも変形しようとする。このとき、第1ブレードと第2ブレードとが密接していると、プレートが変形できず、第1接合面および第7接合面に大きな負荷がかかる。第8観点の遠心ファンは、第2凹部と、第2凹部の両端を結ぶ第3直線と、によって囲まれた領域の外に、第7接合面が位置する。そのため、遠心ファンは、遠心力による第1ブレードと第2ブレードとの変形に応じて、プレートが変形できるようになるため、第1接合面および第7接合面に大きな負荷がかからない。その結果、遠心ファンは、第1ブレードおよび第2ブレードと、プレートとの接合強度を高めることができる。
【0017】
第9観点の遠心ファンは、第1観点から第8観点のいずれかの遠心ファンであって、第1接合面は、第1ブレードのプレート側に形成されている中空部の周りに位置する。
【0018】
第9観点の遠心ファンは、中空部を形成して第1ブレードを軽くすることにより、第1ブレードに作用する遠心力を弱めることができる。
【0019】
第10観点の遠心ファンは、第1観点から第9観点のいずれかの遠心ファンであって、第1ブレードは、樹脂によって成形される。
【0020】
第10観点の遠心ファンは、第1ブレードを射出成形等によって成形することにより、第1ブレードの形状の自由度を高めることができる。
【0021】
第11観点の遠心ファンは、第1観点から第10観点のいずれかの遠心ファンであって、プレートおよびリングは、アルミまたはアルミ合金によって成形される。
【0022】
第12観点の遠心ファンは、第1観点から第11観点のいずれかの遠心ファンであって、プレートと第1ブレードとは、溶接以外の方法によって接合される。
【0023】
第12観点の遠心ファンは、溶接トーチを入れるための空間が不要となるため、複数のブレードの枚数を増やし、Nz音を解消することができる。
【0024】
第13観点の遠心ファンは、第1観点から第12観点のいずれかの遠心ファンであって、複数のブレードの枚数は、7~11枚である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図4】プレート側から回転軸の方向に沿って、羽根車を見た図である。
【
図5】第1ブレードのプレート側の接合面である第1接合面を示す図である。
【
図6】第1ブレードのプレート側の接合面である第1接合面を示す図である。
【
図7】第1ブレードのプレート側の接合面である第1接合面を示す図である。
【
図8】第1ブレードのリング側の接合面である第8接合面を示す図である。
【
図9】プレートからリングに延びる第1ブレードを第1直線に沿って見た図である。
【
図10】従来のブレードのプレート側の接合面である第1接合面を示す図である。
【
図11】従来のブレードのプレート側の接合面である第1接合面を示す図である。
【
図12】第4接合面および第5接合面を示す図である。
【
図13】第4接合面および第6接合面を示す図である。
【
図14】第1ブレードの第1接合面と、第2ブレードの第7接合面との拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(1)空気調和装置
空気調和装置1は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを利用して、対象空間の空気調和を行う。本実施形態では、空気調和装置1は、セントラル式の空気調和装置である。空気調和装置1は、主として、室内ユニット10と、熱源ユニット20と、を有する。
【0027】
(2)室内ユニット
図1は、室内ユニット10の概略構成図である。本実施形態では、室内ユニット10は、エアハンドリングユニットである。
図1に示すように、室内ユニット10は、主として、ケーシング11と、遠心ファン30と、熱交換器12と、電気ヒータ13と、加湿器14と、を有する。室内ユニット10と、熱源ユニット20とは、熱媒体(例えば、冷媒、水等)が流れる配管94を介して、接続されている。
【0028】
ケーシング11は、主として、遠心ファン30と、熱交換器12と、電気ヒータ13と、加湿器14と、を収容する。ケーシング11には、第1開口11a、第2開口11b、および第3開口11cが形成されている。第1開口11aは、屋外からケーシング11内に、屋外空気OAを吸い込むための開口である。第2開口11bは、対象空間からケーシング11内に、対象空間の室内空気RAを吸い込むための開口である。第3開口11cは、ケーシング11内から対象空間に向けて、空気調和された供給空気SAを吹き出すための開口である。
【0029】
遠心ファン30は、第1開口11aおよび第2開口11bから、ケーシング11内に、屋外空気OAおよび室内空気RAを吸い込み、第3開口11cから対象空間に向けて、供給空気SAを吹き出す。遠心ファン30は、ケーシング11内に、第1開口11aおよび第2開口11bから、第3開口11cに流れる空気流AFを生成する。空気流AFは、ケーシング11内を、熱交換器12、電気ヒータ13、および加湿器14を、この順に通過する。
【0030】
熱交換器12、電気ヒータ13、および加湿器14は、空気流AFの流路に配置される。熱交換器12は、空気流AFと、熱源ユニット20から供給される配管94内の熱媒体と、の間で熱交換を行わせる。電気ヒータ13は、熱交換器12を通過した空気流AFを加熱する。加湿器14は、ケーシング11の外部に設置されたタンク(図示せず)の水を、ノズルから散布することにより、空気流AFを加湿する。
【0031】
(3)遠心ファン
図2は、遠心ファン30の概略断面図である。本実施形態では、遠心ファン30は、ターボファンである。
図2に示すように、遠心ファン30は、主として、ファンモータ31と、羽根車40と、を有する。羽根車40は、ボス部材44を介して、ファンモータ31と接続される。羽根車40は、ファンモータ31を動力として、回転軸A1の周りを回転する。
図2では、羽根車40の回転方向を、「A2」として示している。
【0032】
図3は、羽根車40の斜視図である。
図3に示すように、羽根車40は、主として、プレート41と、リング42と、複数のブレード43と、を有する。
図3では、リング42が半透明に描かれている。
【0033】
(3-1)プレート
図2,3に示すように、プレート41は、厚み方向が回転軸A1の方向に沿うように配置される。プレート41は、アルミまたはアルミ合金によって成形される。
図2に示すように、プレート41は、リング42に対向する第1プレート面41aと、リング42とは反対側の第2プレート面41bと、を有する。
図4は、プレート41側から回転軸A1の方向に沿って、羽根車40を見た図である。
図4に示すように、プレート41は、回転軸A1の方向から見てリング状の形状を有する。プレート41の中央部には、ボス部材44を固定するための開口41cが形成されている。開口41cの周囲には、ボルトによってボス部材44を固定するための孔41dが形成されている。
図4に示すように、本実施形態では、6個の孔41dが形成されている。プレート41は、固定されたボス部材44を介して、ファンモータ31と接続される。
【0034】
(3-2)リング
図2,3に示すように、リング42は、プレート41と回転軸A1の方向に間隔を置いて配置される。リング42は、アルミまたはアルミ合金によって成形される。
図3に示すように、リング42は、回転軸A1の方向から見てリング状の形状を有する。
図2に示すように、リング42は、プレート41に対向する第1リング面42aと、プレート41とは反対側の第2リング面42bと、を有する。
【0035】
(3-3)ブレード
図2,3に示すように、複数のブレード43は、プレート41とリング42との間に配置される。複数のブレード43の枚数は、7~11枚である。
図3,4に示すように、本実施形態では、ブレード43の枚数は、9枚である。
図2に示すように、複数のブレード43は、一端がプレート41の第1プレート面41aに接合され、他端がリング42の第1リング面42aに接合される。
図3,4に示すように、複数のブレード43は、羽根車40の回転方向A2(複数のブレード43の回転方向A2)に沿って、不等ピッチで配置される。
【0036】
以下、複数のブレード43の内の任意の1つのブレードを、第1ブレード43aと記載する。第1ブレード43aは、樹脂によって成形される。
【0037】
図5~7は、第1ブレード43aのプレート41側の接合面(第1ブレード43aと第1プレート面41aとの接合面)である第1接合面51を示す図である。
図5に示すように、第1ブレード43aのプレート41側には、中空部71が形成されている。第1接合面51は、中空部71の周りに位置する。第1接合面51は、回転軸A1側に第2凹部74が形成された形状である。
図5では、ハッチングによって、第1接合面51が示されている。第1ブレード43aは、第1接合面51に、第1ブレード43aの位置を決めるためのピン81と、ビスを通すことによって第1ブレード43aを第1プレート面41aに密着させるための孔82と、を有する。
図5に示すように、本実施形態では、第1ブレード43aは、第1接合面51に、2つのピン81と、3つの孔82と、を有する。プレート41と第1ブレード43aとは、溶接以外の方法によって接合される。本実施形態では、ピン81によって第1ブレード43aの位置を決め、ビスを通すことによって第1ブレード43aを第1プレート面41aに密着させ、接着剤によってプレート41と第1ブレード43aとを接合する。
【0038】
第1接合面51は、第2接合面52と、第3接合面53と、を有する。ここで、第2接合面52および第3接合面53を説明するために、第1直線L1および第2直線L2を定義する。
図6,7では、第1直線L1および第2直線L2等が見易くなるように、中空部71の構造を省略して、第1接合面51を描いている。
図6に示すように、第1直線L1は、第1ブレード43aの回転方向A2の先端91と後端92とを結ぶ直線である。第2直線L2は、第1直線L1の中心93を通り、かつ第1直線L1に直交する直線である。第2接合面52は、第1接合面51において、第2直線L2よりも先端91側の部分である。第3接合面53は、第1接合面51において、第2直線L2よりも後端92側の部分である。
図6では、ハッチングによって、第2接合面52および第3接合面53が示されている。
図6では、ハッチングの線の傾きを区別することにより、第2接合面52と、第3接合面53と、を区別している。
【0039】
さらに、第1接合面51は、第1幅寸法D1と、第2幅寸法D2と、を有する。
図7に示すように、第1幅寸法D1は、第2接合面52の第2直線L2に沿った幅寸法のうち最も大きい寸法である。第2幅寸法D2は、第3接合面53の第2直線L2に沿った幅寸法のうち最も大きい寸法である。第1幅寸法D1は、第2幅寸法D2の1.3倍以上、かつ3倍以下である。第1幅寸法D1は、第2幅寸法D2の1.6倍以上であることが好ましい。
【0040】
図8は、第1ブレード43aのリング42側の接続面(第1ブレード43aと第1リング面42aとの接合面)である第8接合面58を示す図である。
図8に示すように、第1ブレード43aのリング42側には、中空部72が形成されている。第8接合面58は、中空部72の周りに位置する。
図8では、ハッチングによって、第8接合面58が示されている。第1ブレード43aは、第8接合面58に、第1ブレード43aの位置を決めるためのピン83と、ビスを通すことによって第1ブレード43aを第1リング面42aに密着させるための孔84と、を有する。
図8に示すように、本実施形態では、第1ブレード43aは、第8接合面58に、1つのピン83と、1つの孔84と、を有する。プレート41と第1ブレード43aとは、溶接以外の方法によって接合される。本実施形態では、ピン83によって第1ブレード43aの位置を決め、ビスを通すことによって第1ブレード43aを第1リング面42aに密着させ、接着剤によってリング42と第1ブレード43aとを接合する。
【0041】
図9は、プレート41からリング42に延びる第1ブレード43aを第1直線L1に沿って見た図である。
図9に示すように、プレート41からリング42に延びる第1ブレード43aを第1直線L1に沿って見たときに、第1ブレード43aの形状は第1凹部73を含む。第1凹部73は、リング42よりもプレート41に近い位置に形成される。
【0042】
(4)検証
ここでは、本実施形態における第1ブレード43aと、従来のターボファンに用いられるブレード43’と、を用いて、遠心力によりブレードが破壊されるときの回転数(破壊回転数)を検証した。本検証には、シミュレーションソフトである「ANSYS」を用いた。
【0043】
本検証における、第1ブレード43aおよびブレード43’の仕様を、以下の表1に示す。
【0044】
【0045】
表1に示すように、本検証では、第1ブレード43aを有する羽根車40の直径と、ブレード43’を有する従来の羽根車の直径とは、500mmに統一した。また、第1ブレード43aの枚数、およびブレード43’の枚数は、9枚に統一した。また、羽根車40における第1ブレード43aの配置と、従来の羽根車におけるブレード43’の配置とは、ほぼ同じとした。
【0046】
第1ブレード43aの質量は1200g、ブレード43’の質量は1324gである。
【0047】
図10,11は、従来のブレード43’のプレート側の接合面である第1接合面51’を示す図である。
図10に示すように、ブレード43’のプレート側には、第1ブレード43aとは異なり、中空部は形成されていない。
図10では、ブレード43’の回転方向を、「A2’」として示している。
図10では、ハッチングによって、第1接合面51’が示されている。第1ブレード43aと同様に、ブレード43’は樹脂によって成形され、プレートとブレード43’とは接着剤によって接合されている。
図11では、第1接合面51’における、第1直線L1’、第2直線L2’、第1幅寸法D1’、および第2幅寸法D2’が示されている。後の説明のため、
図11では、ハッチングによって、第2接合面52’が示されている。第1ブレード43aの第1接合面51の面積は9250.63mm
2、ブレード43’の第1接合面51’の面積は9341.27mm
2である。第1ブレード43aの第1幅寸法D1は82.29mm、ブレード43’の第1幅寸法D1’は57mmである。第1ブレード43aの第2幅寸法D2は49.99mm、ブレード43’の第2幅寸法D2’は53.06mmである。第1ブレード43aにおいて、第1幅寸法D1は第2幅寸法D2の1.65倍、ブレード43’において、第1幅寸法D1’は第2幅寸法D2’の1.07倍である。
【0048】
検証結果を、以下の表2に示す。
【0049】
【0050】
表2に示すように、第1ブレード43aの破壊回転数は3500rpm、ブレード43’の破壊回転数は2300rpmであった。
【0051】
回転数が2300rpmであるときの、第1ブレード43aの表面(プレート41およびリング42との接合面を除く)に生じる最大応力は25MPa、ブレード43’の表面(プレートおよびリングとの接合面を除く)に生じる最大応力は28MPaであった。回転数が3100rpmであるときの、第1ブレード43aの表面(プレート41およびリング42との接合面を除く)に生じる最大応力は44MPaであった。
【0052】
回転数が2300rpmであるときの、第1ブレード43aの第1接合面51に生じる最大垂直応力は8.25MPa、ブレード43’の第1接合面51’に生じる最大垂直応力は17.8MPaであった。回転数が3100rpmであるときの、第1ブレード43aの第1接合面51に生じる最大垂直応力は15MPaであった。
図7では、第1ブレード43aの第1接合面51において、最大垂直応力が生じた箇所を「P」として示している。
図11では、ブレード43’の第1接合面51’において、最大垂直応力が生じた箇所を「P’」として示している。
【0053】
図7,11に示すように、第1接合面51,51’において、最大垂直応力が生じる箇所P,P’は、いずれも第2接合面52,52’の回転軸A1,A1’側に位置する。
【0054】
一方、「第1接合面に生じる最大垂直応力(表2)」の値は、第1ブレード43aの方がブレード43’よりも小さい(回転数が3100rpmのときの第1接合面51に生じる最大垂直応力の値でさえ、回転数が2300rpmのときの第1接合面51’に生じる最大垂直応力の値より小さい)。第1接合面51における最大垂直応力が生じる箇所Pは、第1接合面51’における最大垂直応力が生じる箇所P’よりも、回転軸に近いため、最大垂直応力が生じる箇所が回転軸に近いほど、最大垂直応力の値は小さくなると推察される。
【0055】
そのため、ブレードは、遠心力により、第2接合面の回転軸側から剥がれていくことになるが、第2接合面を回転軸側に広げることによって、最大垂直応力が生じる箇所が回転軸に近くなり、最大垂直応力の値も小さくなるため、ブレードは剥がれにくくなる、と推察される。
【0056】
その結果、第1ブレード43aの方がブレード43’よりも「破壊回転数(表2)」の値が大きい、ことの要因の1つは、第1ブレード43aの方がブレード43’よりも「第1幅寸法/第2幅寸法(表1)」の値が大きい、ことであると推察される。
【0057】
(5)特徴
(5-1)
従来、厚み方向が回転軸の方向に沿うように配置されるプレートと、プレートと回転軸の方向に間隔を置いて配置され、回転軸の方向から見てリング状の形状を有するリングと、プレートとリングとの間に配置され、一端がプレートに接合され、他端がリングに接合される、複数のブレードと、を備える、遠心ファンが知られている。
【0058】
遠心ファンは、ブレードが高速回転するため、ブレードに作用する遠心力が大きい。そのため、ブレードとプレートとの接合強度をさらに高めることが望ましい。
【0059】
本実施形態の遠心ファン30は、プレート41と、リング42と、複数のブレード43と、を備える。プレート41は、厚み方向が回転軸A1の方向に沿うように配置される。リング42は、プレート41と回転軸A1の方向に間隔を置いて配置される。リング42は、回転軸A1の方向から見てリング状の形状を有する。複数のブレード43は、プレート41とリング42との間に配置される。複数のブレード43は、一端がプレート41に接合され、他端がリング42に接合される。複数のブレード43は、第1ブレード43aを含む。第1接合面51は、第1ブレード43aのプレート41側の接合面である。第1接合面51は、第2接合面52と、第3接合面53と、を有する。第2接合面52は、第1接合面51において、第2直線L2よりも先端91側の部分である。第2直線L2は、第1直線L1の中心93を通り、かつ第1直線L1に直交する。第1直線L1は、第1ブレード43aの回転方向A2の先端91と後端92とを結ぶ。第3接合面53は、第1接合面51において、第2直線L2よりも後端92側の部分である。第1幅寸法D1は、第2接合面52の第2直線L2に沿った幅寸法のうち最も大きい。第2幅寸法D2は、第3接合面53の第2直線L2に沿った幅寸法のうち最も大きい。第1幅寸法D1は、第2幅寸法D2の1.3倍以上である。
【0060】
第1ブレード43aの回転方向A2の先端91側の部分である第2接合面52を回転軸A1側に広げることにより、遠心力によって第1接合面51に生じる最大垂直応力の値が小さくなる傾向がある。本実施形態の遠心ファン30では、第1幅寸法D1は、第2幅寸法D2の1.3倍以上である。第1幅寸法D1は、第2接合面52の第2直線L2に沿った幅寸法のうち最も大きい。第2幅寸法D2は、第3接合面53の第2直線L2に沿った幅寸法のうち最も大きい。その結果、遠心ファン30は、第1ブレード43aとプレート41との接合強度を高めることができる。
【0061】
(5-2)
本実施形態の遠心ファン30では、第1幅寸法D1は、第2幅寸法D2の3倍以下である。
【0062】
(5-3)
本実施形態の遠心ファン30では、第1幅寸法D1は、第2幅寸法D2の1.6倍以上である。
【0063】
(5-4)
本実施形態の遠心ファン30は、プレート41からリング42に延びる第1ブレード43aを第1直線L1に沿って見たときに、第1ブレード43aの形状は第1凹部73を含む。
【0064】
(5-5)
本実施形態の遠心ファン30は、第1凹部73は、リング42よりもプレート41に近い位置に形成される。その結果、遠心ファン30は、遠心ファン30の性能に影響を与えずに、第1幅寸法D1を確保することができる。
【0065】
(5-6)
本実施形態の遠心ファン30では、第1接合面51は、第1ブレード43aのプレート41側に形成されている中空部71の周りに位置する。その結果、遠心ファン30は、中空部71を形成して第1ブレード43aを軽くすることにより、第1ブレード43aに作用する遠心力を弱めることができる。
【0066】
(5-7)
本実施形態の遠心ファン30では、第1ブレード43aは、樹脂によって成形される。その結果、遠心ファン30は、第1ブレード43aを射出成形等によって成形することにより、第1ブレード43aの形状の自由度を高めることができる。
【0067】
(5-8)
本実施形態の遠心ファン30では、プレート41およびリング42は、アルミまたはアルミ合金によって成形される。
【0068】
(5-9)
本実施形態の遠心ファン30では、プレート41と第1ブレード43aとは、溶接以外の方法によって接合される。その結果、遠心ファン30は、溶接トーチを入れるための空間が不要となるため、複数のブレード43の枚数を増やし、Nz音を解消することができる。
【0069】
(5-10)
本実施形態の遠心ファン30では、複数のブレード43の枚数は、7~11枚である。
【0070】
(6)変形例
(6-1)変形例1A
第2接合面52において、第1直線L1よりも回転軸A1側の部分である第4接合面54の面積は、回転軸A1側とは反対側の部分である第5接合面55の面積より大きくてもよい。
【0071】
図12は、第4接合面54および第5接合面55を示す図である。
図12では、ハッチングによって、第4接合面54および第5接合面55が示されている。
図12では、ハッチングの線の傾きを区別することにより、第4接合面54と、第5接合面55と、を区別している。
【0072】
第1ブレード43aは、遠心力により、第2接合面52の回転軸A1側の部分である第4接合面54から剥がれていく傾向がある。そのため、遠心ファン30は、第2接合面52において、第4接合面54の面積を、第5接合面55の面積より大きくすることにより、第1ブレード43aとプレート41との接合強度を高めることができる。
【0073】
(6-2)変形例1B
第2接合面52における第1直線L1よりも回転軸A1側の部分である第4接合面54の面積は、第3接合面53における第1直線L1よりも回転軸A1側の部分である第6接合面56の面積より大きくしてもよい。
【0074】
図13は、第4接合面54および第6接合面56を示す図である。
図13では、ハッチングによって、第4接合面54および第6接合面56が示されている。
図13では、ハッチングの線の傾きを区別することにより、第4接合面54と、第6接合面56と、を区別している。
【0075】
第1ブレード43aは、遠心力により、第2接合面52の回転軸A1側の部分である第4接合面から剥がれていく傾向がある。そのため、遠心ファン30は、第4接合面54の面積を、第6接合面56の面積より大きくすることにより、第1ブレード43aとプレート41との接合強度を高めることができる。
【0076】
(6-3)変形例1C
以下、複数のブレード43の内、第1ブレード43aに隣接する任意の1つのブレードを、第2ブレード43bと記載する。また、第2ブレード43bのプレート41側の接合面(第2ブレード43bと第1プレート面41aとの接合面)を、第7接合面57と記載する。
図14は、第1ブレード43aの第1接合面51と、第2ブレード43bの第7接合面57との拡大図である。
【0077】
このとき、
図14に示すように、第1接合面51の第2凹部74と、第2凹部74の両端を結ぶ第3直線L3と、によって囲まれた領域の外に、第7接合面57が位置してもよい。
【0078】
遠心力により第1ブレード43aと第2ブレード43bとが変形すると、これに応じて、プレート41も変形しようとする。このとき、第1ブレード43aと第2ブレード43bとが密接していると、プレート41が変形できず、第1接合面51および第7接合面57に大きな負荷がかかる。本実施形態の遠心ファン30は、第2凹部74と、第2凹部74の両端を結ぶ第3直線L3と、によって囲まれた領域の外に、第7接合面57が位置する。そのため、遠心ファン30は、遠心力による第1ブレード43aと第2ブレード43bとの変形に応じて、プレート41が変形できるようになるため、第1接合面51および第7接合面57に大きな負荷がかからない。その結果、遠心ファン30は、第1ブレード43aおよび第2ブレード43bと、プレート41との接合強度を高めることができる。
【0079】
(6-4)変形例1D
本実施形態では、プレート41およびリング42は、アルミまたはアルミ合金によって成形されていた。しかしながら、プレート41およびリング42は、ブレード43と同様に、樹脂によって成形されてもよい。
【0080】
(6-5)変形例1E
本実施形態では、遠心ファン30は、エアハンドリングユニットに用いられるターボファンであった。しかし、遠心ファン30は、例えば、ファンコイルユニットに用いられるターボファン、家庭用室外機において換気ファンや加湿ファンとして用いられるターボファン等、ターボファンとして任意の機器に用いられてもよい。
【0081】
(6-6)
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0082】
30 遠心ファン
41 プレート
42 リング
43 ブレード
43a 第1ブレード
43b 第2ブレード
51~57 第1接合面~第7接合面
71 中空部
73 第1凹部
74 第2凹部
91 先端
92 後端
93 第1直線の中心
A1 回転軸
A2 回転方向
D1 第1幅寸法
D2 第2幅寸法
L1~L3 第1直線~第3直線
【先行技術文献】
【特許文献】
【0083】
【要約】
【課題】遠心ファンは、ブレードが高速回転するため、ブレードとプレートとの接合強度をさらに高めることが望ましい。
【解決手段】遠心ファンは、プレートと、リングと、第1ブレード43aを含む複数のブレード43と、を備える。第1接合面51は、第1ブレード43aのプレート側の接合面である。第1接合面51は、第2接合面52と、第3接合面53と、を有する。第2接合面52は、第1接合面51において、第2直線L2よりも先端91側の部分である。第3接合面53は、第1接合面51において、第2直線L2よりも後端92側の部分である。第1幅寸法D1は、第2接合面52の第2直線L2に沿った幅寸法のうち最も大きい。第2幅寸法D2は、第3接合面53の第2直線L2に沿った幅寸法のうち最も大きい。第1幅寸法D1は、第2幅寸法D2の1.3倍以上である。
【選択図】
図7