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特許7457291血圧測定装置、血圧測定方法及び血圧測定プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】血圧測定装置、血圧測定方法及び血圧測定プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/021 20060101AFI20240321BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20240321BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240321BHJP
【FI】
A61B5/021
A61B5/02 310A
G06T7/00 660A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020020432
(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公開番号】P2021122697
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】524066085
【氏名又は名称】FCNT合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻井 洋一朗
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 英治
(72)【発明者】
【氏名】公平 徹
【審査官】▲高▼ 芳徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-209486(JP,A)
【文献】特表2020-500052(JP,A)
【文献】国際公開第2014/155750(WO,A1)
【文献】特開平10-216094(JP,A)
【文献】特表2018-521363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02 - 5/03
G06T 7/00
G06V 10/00 - 40/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の血圧を測定する血圧測定装置であって、
前記被測定者を撮影する撮影部と、
前記撮影部が撮影した前記被測定者の撮像と予め記憶した前記被測定者の体形情報と、前記撮影中における前記被測定者の、撮影された顔の領域内の複数の特徴点間の距離を用いて前記被測定者の心臓と前記血圧測定装置の高低差を算出する算出部と、
前記高低差を用いて、前記被測定者の血圧測定処理を実行する測定部と、を備える、
血圧測定装置。
【請求項2】
前記測定部は、前記高低差を解消するように前記被測定者を案内する、
請求項1に記載の血圧測定装置。
【請求項3】
前記測定部は、前記高低差を基に、測定した前記被測定者の血圧測定値を再計算する、
請求項1または2に記載の血圧測定装置。
【請求項4】
前記撮影部は、前記被測定者の顔を撮影し、
前記体形情報は、前記被測定者の顔に含まれる特徴点と心臓との距離を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の血圧測定装置。
【請求項5】
血圧を測定する測定部と一体化したコンピュータが、
血圧の被測定者を撮影する処理と、
前記撮影する処理で撮影した前記被測定者の撮像と予め記憶した前記被測定者の体形情報と、前記撮影中における前記被測定者の、撮影された顔の領域内の複数の特徴点間の距離と、を用いて前記被測定者の心臓の位置を算出し、前記被測定者の心臓と前記測定部の高低差を算出する処理と、
前記高低差を用いて、前記被測定者の血圧測定処理を実行する処理と、を実行する、
血圧測定方法。
【請求項6】
血圧を測定する測定部と一体化したコンピュータに、
血圧の被測定者を撮影する処理と、
前記撮影する処理で撮影した前記被測定者の撮像と予め記憶した前記被測定者の体形情報と、前記撮影中における前記被測定者の、撮影された顔の領域内の複数の特徴点間の距離と、を用いて前記被測定者の心臓の位置を算出し、前記被測定者の心臓と前記測定部の高低差を算出する処理と、
前記高低差を用いて、前記被測定者の血圧測定処理を実行する処理と、を実行させる、
血圧測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血圧測定装置、血圧測定方法及び血圧測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
血圧を測定する様々な技術が提案されている。また、携帯端末装置の姿勢を検知し、検知した姿勢に応じて様々な処理を実行する携帯端末が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、血圧等の個人健康データを収集する個人用手持ち式モニタが開示されている。また、特許文献2には、被写体とカメラとの位置関係に応じて、カメラの光軸が被写体を向くようにカメラが回転するカメラ付き携帯端末が開示されている。特許文献3には、傾き検出センサ出力を基に携帯端末の傾きを算出し、表示手段の点灯を制御する携帯端末が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-072552号公報
【文献】特開2010-268268号公報
【文献】特開2011-142497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
血圧測定の測定精度を高めるには、血圧測定装置の高さと心臓の高さを一致させ、測定値のばらつきを抑えることが好ましい。従来では、例えば、手首に巻き付けたカフの傾き角度を用いて高さが適正範囲であるか否かを判定する技術が提案されているが、このような技術では肘の位置や身体の傾き、カフの取り付け位置等が判定精度に影響を与えていた。また、被測定者の手で血圧測定装置を意図的に心臓にあてる技術も考えられるが、腕を曲げることで血流に影響が生じるため、血圧の測定精度が低下する。
【0006】
開示の技術の1つの側面は、血圧の測定が容易で、かつ、血圧の測定精度を高めることができる血圧測定装置、血圧測定方法及び血圧測定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術の1つの側面は、次のような血圧測定装置によって例示される。本血圧測定装置は、被測定者の血圧を測定する血圧測定装置であって、前記被測定者を撮影する撮影部と、前記撮影部が撮影した前記被測定者の撮像と予め記憶した前記被測定者の体形情報とに基づいて、前記被測定者の心臓と前記血圧測定装置の高低差を算出する算出部と、前記高低差を用いて、前記被測定者の血圧測定処理を実行する測定部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術は、血圧の測定が容易で、かつ、血圧の測定精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係るスマートフォンの外観の一例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係るスマートフォンのハードウェア構成の一例を示す図である。
図3図3は、実施形態に係るスマートフォンの処理ブロックの一例を示す図である。
図4図4は、実施形態において管理データベースが記憶する部位間距離管理テーブルの一例を示す図である。
図5図5は、実施形態に係るスマートフォンを用いて被測定者が血圧を測定する場合における、被測定者とスマートフォンの位置関係を例示する図である。
図6図6は、実施形態に係るスマートフォンによる血圧測定処理の処理フローの一例を示す図である。
図7図7は、実施形態における案内画面の一例を示す第1の図である。
図8図8は、実施形態における案内画面の一例を示す第1の図である。
図9図9は、実施形態における高低差算出処理の処理フローの一例を示す図である。
図10図10は、実施形態における理想顔平面の一例を示す図である。
図11図11は、被測定者とスマートフォンとの距離に応じた撮像中の被測定者を例示する図である。
図12図12は、理想顔平面に対するスマートフォンの角度に応じた理想顔平面のつぶれ具合を例示する図である。
図13図13は、理想顔平面に対するスマートフォンの角度に応じた撮像中の理想顔平面の位置を例示する図である。
図14図14は、第1変形例に係るスマートフォンの処理ブロックの一例を示す図である。
図15図15は、第1変形例における高低差算出処理の処理フローの一例を示す図である。
図16図16は、被測定者とスマートフォンとの距離に応じた撮像中の被測定者を例示する図である。
図17図17は、第1変形例に係るスマートフォンを用いて被測定者が血圧を測定する場合における、被測定者とスマートフォンの位置関係を例示する図である。
図18図18は、撮像中における目の高さを例示する図である。
図19図19は、撮像中の目の高さを基にスマートフォンの傾きを算出する概念図である。
図20図20は、第1変形例において、スマートフォンが傾いている状態を例示する。
図21図21は、第1変形例において、被測定者の上半身が傾いている状態を例示する。
図22図22は、第2変形例に係るスマートフォンの処理ブロックの一例を示す図である。
図23図23は、第2変形例に係るスマートフォンによる血圧測定処理の処理フローの一例を示す図である。
図24図24は、第3変形例に係るスマートフォンの処理ブロックの一例を示す図である。
図25図25は、第3変形例において管理データベースが記憶する関係情報テーブルの一例を示す図である。
図26図26は、第3変形例に係るスマートフォンによる血圧測定処理の処理フローの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態>
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。以下に示す実施形態の構成は例示であり、開示の技術は実施形態の構成に限定されない。本実施形態に係る血圧測定装置は、例えば、以下の構成を備える。本実施形態に係る血圧測定装置は、
被測定者の血圧を測定する血圧測定装置であって、
前記被測定者を撮影する撮影部と、
前記撮影部が撮影した前記被測定者の撮像と予め記憶した前記被測定者の体形情報とに基づいて、前記被測定者の心臓と前記血圧測定装置の高低差を算出する算出部と、
前記高低差を用いて、前記被測定者の血圧測定処理を実行する測定部と、を備える。
【0011】
本血圧測定装置は、例えば、血圧を測定する血圧センサを備える可搬型情報処理装置である。可搬型情報処理装置は、例えば、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、ウェアラブルコンピュータ等である。可搬型情報処理装置はノートブック型パーソナルコンピュータであってもよいが、被測定者が容易に持ち運べる装置であることが好ましい。
【0012】
撮影部は、血圧測定装置が備えるカメラを用いて被測定者の撮影を行う。カメラは、例えば、被測定者が血圧測定のために本血圧測定装置を把持すると、撮影方向が被測定者に向くように設けられる。撮影部は、被測定者が血圧測定の開始を指示すると、カメラを用いて被測定者の撮影を行う。
【0013】
体形情報は、被測定者の体形を実測した情報である。体形情報は、例えば、被測定者の左右の目の距離、目と鼻の距離、目と心臓の距離等である。また、体形情報は、被測定者の骨格情報を含んでもよい。骨格情報は、例えば、被測定者の肩幅、腰幅を示す情報を含む。算出部は、被測定者の撮像と体形情報とを基に、被測定者の心臓と血圧測定装置の高低差を算出する。
【0014】
本血圧測定装置では、算出部が算出した高低差を用いて測定部が被測定者の血圧測定処理を実行する。血圧を高精度に測定するには、心臓と血圧測定装置との高低差を解消することで、測定値のばらつきを抑えることが好ましい。本血圧測定装置では、算出部が算出した高低差を用いて血圧測定処理を実行することで、血圧測定を容易に実施できるとともに、血圧の測定精度を高めることができる。
【0015】
ここで、血圧測定処理は、例えば、被測定者の心臓と血圧測定装置の高低差を解消するように被測定者を案内する処理を含んでもよい。また、血圧測定処理は、例えば、算出部が算出した高低差を用いて、測定した被測定者の血圧値を当該高低差を考慮した血圧値に再計算する処理を含んでもよい。また、被測定者の心臓と血圧測定装置の高低差をある程度解消するように被測定者を案内した上で、残存する高低差を考慮した血圧値を算出してもよい。
【0016】
また、開示の技術は、次の特徴を備えてもよい。前記撮影部は、前記被測定者の顔を撮影し、前記体形情報は、前記被測定者の顔に含まれる特徴点と心臓との距離を含む。このような特徴を備えることで、撮像中の特徴点を用いて、被測定者の心臓と血圧測定装置の高低差を算出することができる。
【0017】
上記実施形態は、血圧測定方法及び血圧測定プログラムとして把握することも可能である。
【0018】
以下では、上記血圧測定装置をスマートフォンに適用した実施形態について説明する。図1は、実施形態に係るスマートフォンの外観の一例を示す図である。図1は、スマートフォン100の一方から見た外観(前面側の外観とする)と、他方から見た外観(背面側の外観とする)を例示する。図1では、矢印によって、スマートフォン100の前面側と背面側が入れ替えて配置され、例示される。スマートフォン100は、板状の筐体110を有する。図1には描かれていないが、筐体110の前面と背面との間の距離(厚み)は、前面または背面の外形寸法と比較して短い。図1で紙面に向かって上側が筐体110の上側であり、紙面に向かって下側が筐体110の下側であると仮定する。以下、本明細書
において、筐体110の上下方向をY方向、Y方向と直交する筐体110の幅方向をX方向とも称する。スマートフォン100は、「血圧測定装置」の一例である。
【0019】
図1のように、筐体110の前面にはディスプレイ113が設けられる。ディスプレイ113の上側中央の位置にはスピーカー111が設けられる。スピーカー111の上側中央の位置にはインカメラ112が設けられる。ディスプレイ113の下側中央の位置にはマイクロフォン114が設けられる。
【0020】
筐体110の背面には、光電脈波センサ115が設けられる。光電脈波センサ115が設けられる位置は、例えば、筐体110を片手で把持し、把持した片手の指を光電脈波センサ115に向けて伸ばすときに、当該指の指先が光電脈波センサ115の斜め下方から光電脈波センサ115に達する位置である。なお、本実施形態では図1に例示されるように光電脈波センサ115は筐体110の背面に設けられるが、光電脈波センサ115は筐体110の前面に設けられてもよい。
【0021】
図2は、実施形態に係るスマートフォンのハードウェア構成の一例を示す図である。スマートフォン100は、Central Processing Unit(CPU)101、主記憶部102、補助記憶部103、通信部104、加速度センサ105、スピーカー111、インカメラ112、ディスプレイ113、マイクロフォン114及び光電脈波センサ115を含む。CPU101、主記憶部102、補助記憶部103、通信部104、加速度センサ105、スピーカー111、インカメラ112、ディスプレイ113、マイクロフォン114及び光電脈波センサ115は、接続バスによって相互に接続される。
【0022】
CPU101は、マイクロプロセッサユニット(MPU)、プロセッサとも呼ばれる。CPU101は、単一のプロセッサに限定される訳ではなく、マルチプロセッサ構成であってもよい。また、単一のソケットで接続される単一のCPU101がマルチコア構成を有していても良い。CPU101が実行する処理のうち少なくとも一部は、CPU101以外のプロセッサ、例えば、Digital Signal Processor(DSP)、Graphics Processing Unit(GPU)、数値演算プロセッサ、ベクトルプロセッサ、画像処理プロセッサ等の専用プロセッサで行われても良い。また、CPU101が実行する処理のうち少なくとも一部は、集積回路(IC)、その他のデジタル回路によって実行されてもよい。また、CPU101の少なくとも一部にアナログ回路が含まれても良い。集積回路は、Large Scale Integrated circuit(LSI)、Application Specific Integrated Circuit(ASIC)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)を含む。PLDは、例えば、Field-Programmable Gate Array(FPGA)を含む。CPU101は、プロセッサと集積回路との組み合わせであっても良い。組み合わせは、例えば、マイクロコントローラユニット(MCU)、System-on-a-chip(SoC)、システムLSI、チップセットなどと呼ばれる。スマートフォン100では、CPU101が補助記憶部103に記憶されたプログラムを主記憶部102の作業領域に展開し、プログラムの実行を通じて周辺装置の制御を行う。これにより、スマートフォン100は、所定の目的に合致した処理を実行することができる。主記憶部102および補助記憶部103は、スマートフォン100が読み取り可能な記録媒体である。
【0023】
主記憶部102は、CPU101から直接アクセスされる記憶部として例示される。主記憶部102は、Random Access Memory(RAM)およびRead
Only Memory(ROM)を含む。
【0024】
補助記憶部103は、各種のプログラムおよび各種のデータを読み書き自在に記録媒体に格納する。補助記憶部103は外部記憶装置とも呼ばれる。補助記憶部103には、オペレーティングシステム(Operating System、OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納される。OSは、通信部104を介して接続される外部装置等とのデータの受け渡しを行う通信インターフェースプログラムを含む。外部装置等には、例えば、コンピュータネットワーク等で接続された、他の情報処理装置および外部記憶装置が含まれる。なお、補助記憶部103は、例えば、ネットワーク上のコンピュータ群であるクラウドシステムの一部であってもよい。
【0025】
補助記憶部103は、例えば、Erasable Programmable ROM(EPROM)、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive、SSD)、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive、HDD)等である。また、補助記憶部103は、例えば、Compact Disc(CD)ドライブ装置、Digital Versatile Disc(DVD)ドライブ装置、Blu-ray(登録商標) Disc(BD)ドライブ装置等である。また、補助記憶部103は、Network Attached Storage(NAS)あるいはStorage Area Network(SAN)によって提供されてもよい。
【0026】
通信部104は、例えば、コンピュータネットワークとのインターフェースである。通信部104は、コンピュータネットワークを介して外部の装置と通信を行う。
【0027】
加速度センサ105は、スマートフォン100に生じた加速度を検出する。加速度センサ105は、例えば、慣性センサである。加速度センサ105は、重力方向(鉛直方向)を検出することも可能である。
【0028】
スピーカー111は、音声出力装置である。スピーカー111は、スマートフォン100を用いた通話において、通話相手の音声等を出力する。マイクロフォン114は、スマートフォン100を用いた通話において、ユーザの音声の入力を受け付ける。
【0029】
インカメラ112は、例えば、Charge Coupled Device(CCD)イメージセンサやComplementary Metal Oxide Semiconductor(CMOS)イメージセンサを備えるデジタルカメラである。インカメラ112は、可視光を用いて静止画や動画の撮影を行う。
【0030】
ディスプレイ113は、CPU101で処理されるデータや主記憶部102に記憶されるデータを表示する。ディスプレイ113は、例えば、Liquid Crystal Display(LCD)、Plasma Display Panel(PDP)、Electroluminescence(EL)パネル、有機ELパネルである。ディスプレイ113には、指等による接触操作を検出するタッチパネルが重畳して設けられてもよい。
【0031】
光電脈波センサ115は、光電脈波センサ115に押し当てられた被測定者の指先の皮膚に光を照射し、その反射光の強度を取得する。光電脈波センサ115の光源は、例えば、Light Emitting Diode(LED)である。
【0032】
<スマートフォン100の処理ブロック>
図3は、実施形態に係るスマートフォンの処理ブロックの一例を示す図である。スマートフォン100は、撮影部11、高低差算出部12、案内部13、測定部14および、管理データベース(図中では、DBと記載)15を備える。スマートフォン100は、主記憶部102に実行可能に展開されたコンピュータプログラムをCPU101が実行するこ
とで、上記スマートフォン100の、撮影部11、高低差算出部12、案内部13、測定部14および、管理データベース15等の各部としての処理を実行する。
【0033】
管理データベース15は、被測定者の体形情報を管理するデータベースである。図4は、実施形態において管理データベースが記憶する部位間距離管理テーブルの一例を示す図である。図4に例示される部位間距離管理テーブル151は、「身体部位」、「方向」及び「距離」の各項目を有する。「身体部位」には、被測定者の身体の部位を示す情報が格納される。「方向」には、距離を測定する方向を示す情報が格納される。ここで、「上下方向」の測定は、被測定者が真っすぐに起立した状態で行われる。「距離」には距離を示す情報が格納される。距離の単位は、例えば、ミリメートル(mm)である。図4の例では、例えば、頭頂部と心臓の上下方向の距離が500mmであり、右目と左目の左右方向の距離が60mmであることが理解できる。
【0034】
撮影部11は、例えば、被測定者からの血圧測定指示を受けると、インカメラ112を用いて被測定者の顔の撮影を行う。血圧測定指示は、例えば、タッチパネル等のユーザーインターフェースを介して行われる。
【0035】
高低差算出部12は、撮影部11が撮影した被測定者の撮像と、部位間距離管理テーブル151に記憶された情報とを基に、被測定者の心臓とスマートフォン100との鉛直方向(重力が働く重力方向)の高低差を算出する。高低差算出部12は、例えば、撮像に含まれる被測定者の顔の理想顔平面を設定し、設定した理想顔平面を用いて、被測定者の心臓とスマートフォン100との鉛直方向の高低差を算出する。高低差算出部12による高低差の算出処理の詳細は、後述する。
【0036】
案内部13は、高低差算出部12が算出した高低差に基づいて、被測定者の心臓とスマートフォン100の鉛直方向の高さが一致するように被測定者を案内する。案内部13は、例えば、高低差算出部12が算出した高低差が心臓よりもスマートフォン100の方が低いことを示す場合には、把持したスマートフォン100の位置を高くするように被測定者を案内する。また、例えば、案内部13は、高低差算出部12が算出した高低差が心臓よりもスマートフォン100の方が高いことを示す場合には、把持したスマートフォン100の位置を低くするように被測定者を案内する。
【0037】
測定部14は、高低差算出部12が算出した高低差が被測定者の心臓とスマートフォン100の鉛直方向の高さが一致することを示すと、光電脈波センサ115を用いて被測定者の血圧の測定を実行する。
【0038】
(使用態様)
図5は、実施形態に係るスマートフォンを用いて被測定者が血圧を測定する場合における、被測定者とスマートフォンの位置関係を例示する図である。図5は、被測定者とスマートフォン100を側方から見た図となっている。実施形態における血圧の測定では、被測定者が片手でスマートフォン100を把持し、把持した手の指(例えば、人差し指)を光電脈波センサ115に接触させる。図5では、図面の煩雑を避けるため、被測定者の腕の図示は省略している。図5の(a)は、被測定者の上半身が真っすぐに起きている(上半身が鉛直方向に沿っている)状態を例示する。図5の(b)は、被測定者の上半身が背中側に傾いている状態を例示する。図5の(c)は、被測定者の上半身が胸側に傾いている状態を例示する。
【0039】
図5において、角度αは理想顔平面121の上端部とスマートフォン100の光電脈波センサ115を結ぶ線分122と理想顔平面121とのなす角の角度である。角度θは、理想顔平面121と平行で光電脈波センサ115を通る直線121aに対する、スマート
フォン100の筐体110の前面(または背面)の角度である。高低差hは、理想顔平面121の上端部とスマートフォン100の光電脈波センサ115の高低差(理想顔平面121に沿った高低差)である。角度θ1は、スマートフォン100aの鉛直下向きに対する角度である。角度βは、水平方向に対する、被測定者の心臓(図中では、ハートマークで例示)と光電脈波センサ115を結ぶ線分123の角度である。角度βは、被測定者の上半身の傾きを示すということもできる。図5の(a)の場合、上半身が真っすぐに起きているため、直線121aは鉛直方向に延びる。そのため、角度θは、鉛直方向とスマートフォン100の筐体110の前面(または背面)の間の角度θ1と一致している。しかしながら、図5の(b)、(c)、(d)では、上半身が傾いているため、直線121aは鉛直方向から角度βだけずれる。そのため、角度θは、鉛直方向とスマートフォン100の筐体110の前面(または背面)の間の角度θ1とは一致しない。
【0040】
(血圧測定処理の処理フロー)
図6は、実施形態に係るスマートフォンによる血圧測定処理の処理フローの一例を示す図である。以下、図6を参照して、スマートフォン100による血圧測定処理の処理フローの一例について説明する。
【0041】
T1では、血圧測定指示を受けた撮影部11は、インカメラ112を用いて光電脈波センサ115に指先を接触させている被測定者の顔を撮影する。T2では、高低差算出部12は、T1で撮影した画像を用いて、被測定者の心臓とスマートフォン100との鉛直方向の高低差を算出する。T2の処理の詳細は、図9を参照して後述する。T3では、案内部13は、T2で算出した高低差を基に、被測定者の心臓とスマートフォン100の高さが一致するように、被測定者の案内を行う。案内部13は、例えば、図7及び図8に例示される案内画面をディスプレイ113に表示することで、被測定者を案内することができる。T4では、測定部14は、光電脈波センサ115を用いて被測定者の血圧を測定する。
【0042】
(高低差算出処理)
図6のT2で高低差算出部12が実行する被測定者の心臓とスマートフォン100の鉛直方向の高低差を算出する処理について詳細に説明する。図9は、実施形態における高低差算出処理の処理フローの一例を示す図である。以下、図9を参照して、高低差算出処理の処理フローの一例について説明する。
【0043】
T21では、高低差算出部12は、撮像に含まれる被測定者の顔の特徴点(左右の目、鼻等)を抽出する。T22では、高低差算出部12は、T21で抽出した各特徴点間の距離(左右の目の距離、目と鼻の下部の距離、鼻の幅等)から、理想顔平面121を設定する。理想顔平面121は、例えば、撮像中の被測定者の顔を矩形で囲った平面である。
【0044】
図10は、実施形態における理想顔平面の一例を示す図である。高低差算出部12は、T21で抽出した特徴点を基に、顔を矩形で囲った理想顔平面121を設定する。理想顔平面121の上端は、撮像中における被測定者の頭頂部に対応する。理想顔平面121の下端は、撮像中における被測定者の下あごの下端に対応する。そのため、理想顔平面121の高さT1は、撮像中における被測定者の頭頂部から下あごの先端までの距離に対応する。
【0045】
図9に戻り、T23では、高低差算出部12は、T22で設定した理想顔平面121の大きさを算出する。ここで、理想顔平面121の大きさは、高さT1と幅W1それぞれのピクセル数であってもよい。
【0046】
図11は、被測定者とスマートフォンとの距離に応じた撮像中の被測定者を例示する図
である。被測定者とスマートフォンとの距離は、例えば、図5に例示する理想顔平面121の上端部からスマートフォン100までの距離である。図11では、被測定者の顔が撮像の略中央に位置するように、被測定者の顔とスマートフォン100の距離を様々に変えて撮影を行った場合を例示する。図11の(a)は、被測定者とスマートフォン100との間の距離が30cmである場合を例示する。図11の(b)は、被測定者とスマートフォン100との間の距離が40cmである場合を例示する。図11の(c)は、被測定者とスマートフォン100との間の距離が50cmである場合を例示する。図11の(d)は、被測定者とスマートフォン100との間の距離が60cmである場合を例示する。すなわち、図11では、(a)→(b)→(c)→(d)の順で、被測定者とスマートフォン100との間の距離が大きくなる。図11を参照すると、被測定者とスマートフォン100との間の距離が大きくなる程、撮像中における被測定者の大きさ(理想顔平面121の大きさ)が小さくなることが理解できる。高低差算出部12は、例えば、撮像中の理想顔平面121の大きさに基づいて、被測定者とスマートフォン100との間の距離を算出する。ここで算出する被測定者とスマートフォン100との間の距離は、例えば、理想顔平面121の上端部とスマートフォン100の光電脈波センサ115とを結ぶ線分122の長さであってもよい。
【0047】
図9に戻り、T24では、高低差算出部12は、理想顔平面121のつぶれ具合を算出する。理想顔平面121のつぶれ具合は、例えば、T23で算出した理想顔平面121の高さW1に対する理想顔平面121のT1の比で示すことができる。
【0048】
図12は、理想顔平面に対するスマートフォンの角度に応じた理想顔平面のつぶれ具合を例示する図である。図12では、図5に例示する角度αを変化させた場合における理想顔平面121のつぶれ具合を例示する。図12の(a)は、角度αが65度の場合を例示する。図12の(b)は、角度αが50度の場合を例示する。図12の(c)は、角度αが35度の場合を例示する。図12の(d)は、角度αが20度の場合を例示する。すなわち、図12では、(a)→(b)→(c)→(d)の順で、角度αが小さくなる。図12を参照すると、角度αが小さくなる程、理想顔平面121の幅W1に対する高さT1の比が小さくなることが理解できる。高低差算出部12は、例えば、理想顔平面121の高さT1と幅W1の比に基づいて、角度αを算出する。
【0049】
図9に戻り、T25では、高低差算出部12は、撮像中の理想顔平面121の位置を取得する。図13は、理想顔平面に対するスマートフォンの角度に応じた撮像中の理想顔平面の位置を例示する図である。図13では、図5に例示する角度θを変化させた場合における理想顔平面121の位置を例示する。図13の(a)及び(b)は、被測定者とスマートフォン100との間の距離が40cmの場合を例示する。図13の(c)及び(d)は、被測定者とスマートフォン100との間の距離が50cmの場合を例示する。図13の(a)及び(c)は、角度θが30度の場合を例示する。図13の(b)及び(d)は、角度θが40度の場合を例示する。図13を参照すると理解できるように、被測定者とスマートフォン100との間の距離が同じでも、角度θが大きくなることで理想顔平面121の撮像中の位置が高くなることが理解できる。また、角度θが同じでも、被測定者とスマートフォン100との間の距離が離れるほど理想顔平面121の撮像中の位置が低くなることが理解できる。高低差算出部12は、例えば、撮像中の理想顔平面121の高さと被測定者とスマートフォン100との間の距離とに基づいて、角度θを算出する。角度θの算出では、例えば、撮像中の理想顔平面121の高さと被測定者とスマートフォン100との間の距離との対応関係を予め補助記憶部103に記憶させておき、高低差算出部12は、当該対応関係を用いて角度θを決定してもよい。
【0050】
図9に戻り、T26では、高低差算出部12は、被測定者の心臓とスマートフォン100の相対位置を算出する。高低差算出部12は、例えば、T24で算出した角度α及びT
23で算出した被測定者とスマートフォン100との間の距離とを基に、被測定者の心臓とスマートフォン100の相対位置を算出する。高低差算出部12は、例えば、理想顔平面121の上端部からスマートフォン100までの理想顔平面121に沿った高低差(図5のh)を数式「(線分122の長さ)×cos(α)」によって算出できる。上記の通り、理想顔平面121の上端は撮像中における被測定者の頭頂部に対応する。そこで、高低差算出部12は、算出した高低差hから、部位間距離管理テーブル151に記憶させた頭頂部と心臓の上下方向の距離(図4では、500mm)を減算することで、心臓とスマートフォン100との理想顔平面に沿った高低差(相対位置)を算出することができる。
【0051】
T27では、高低差算出部12は、スマートフォン100の加速度センサ105を用いて、重力加速度方向を検出する。高低差算出部12は、例えば、加速度センサ105を用いて、図5の角度θ1を算出する。
【0052】
T28では、高低差算出部12は、T26で算出した相対位置とT27で算出した重力加速度方向とを基に、被測定者の心臓とスマートフォン100の鉛直方向の高低差を算出する。
【0053】
<実施形態の作用効果>
実施形態では、インカメラ112で撮影した被測定者の撮像を基に、被測定者の心臓とスマートフォン100の鉛直方向の高低差を算出する。そのため、実施形態では、カフを用いる必要がないため、装置の小型化に有利である。また、被測定者が腕を曲げてスマートフォン100を心臓にあてることもないため、血流への影響が低減され、血圧の測定精度の低下が抑制される。さらに、実施形態では、被測定者の撮像を基に被測定者の姿勢の傾きについても検出するため、被測定者がソファ等にくつろいだ状態であっても、スマートフォン100の位置が血圧測定に好ましい位置になるように被測定者を誘導することができる。
【0054】
<第1変形例>
実施形態では、理想顔平面121を設定して被測定者の心臓とスマートフォン100の鉛直方向の高低差を算出する。第1変形例では、撮像から被測定者の顔の特徴点を抽出し、抽出した特徴点を用いて、被測定者の心臓とスマートフォン100の鉛直方向の高低差を算出する構成について説明する。実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。以下、図面を参照して、第1変形例に係るスマートフォンについて説明する。
【0055】
図14は、第1変形例に係るスマートフォンの処理ブロックの一例を示す図である。第1変形例に係るスマートフォン100aは、高低差算出部12に代えて高低差算出部12aを備える点で、実施形態に係るスマートフォン100とは異なる。
【0056】
高低差算出部12aは、撮像に含まれる被測定者の顔の特徴点(目、鼻等)を抽出し、抽出した特徴点を用いて、被測定者の心臓とスマートフォン100aとの鉛直方向の高低差を算出する。
【0057】
(高低差算出処理)
図15は、第1変形例における高低差算出処理の処理フローの一例を示す図である。以下、図15を参照して、高低差算出処理の処理フローの一例について説明する。
【0058】
J1では、高低差算出部12aは、T21で抽出した特徴点間の距離を算出する。ここでは、高低差算出部12aは、撮像中における左右の目の距離及び目と鼻の距離を算出する。図16は、被測定者とスマートフォンとの距離に応じた撮像中の被測定者を例示する
図である。図16では、被測定者の顔が撮像の略中央に位置するように、被測定者の顔とスマートフォン100aの距離を様々に変えて撮影を行った場合を例示する。図16の(a)は、被測定者とスマートフォン100aとの間の距離が30cmである場合を例示する。図16の(b)は、被測定者とスマートフォン100aとの間の距離が40cmである場合を例示する。図16の(c)は、被測定者とスマートフォン100aとの間の距離が50cmである場合を例示する。図16の(d)は、被測定者とスマートフォン100aとの間の距離が60cmである場合を例示する。すなわち、図16では、(a)→(b)→(c)→(d)の順で、被測定者とスマートフォン100aとの間の距離が大きくなる。図16を参照すると、被測定者とスマートフォン100aとの間の距離が大きくなる程、撮像中における特徴点間の距離(例えば、左右の目の距離)が小さくなることが理解できる。高低差算出部12aは、例えば、撮像中の特徴点間の距離に基づいて、被測定者とスマートフォン100aとの間の距離を算出する。
【0059】
図17は、第1変形例に係るスマートフォンを用いて被測定者が血圧を測定する場合における、被測定者とスマートフォンの位置関係を例示する図である。図17は、被測定者とスマートフォン100aを側方から見た図となっている。高低差算出部12aは、撮影部11が撮影した被測定者の撮像を基に、目とカメラを結ぶ線分s1の長さ、鼻とカメラを結ぶ線分t1の長さを算出する。線分s1の長さ及び線分t1の長さは、被測定者とスマートフォン100aとの間の距離ということもできる。
【0060】
図15に戻り、J2では、被測定者の心臓とスマートフォン100aの相対位置を算出する。まず、高低差算出部12aは、線分s1と線分t1と、管理データベース15の部位間距離管理テーブル151に記憶した目と鼻の距離(図17のN1に対応)を用いて、顔の特徴点を含む顔平面1211と線分s1とがなす角の角度α1を算出する。角度α1の算出では、例えば、余弦定理を用いれば良い。高低差算出部12aは、算出した角度α1の余弦「cos(α1)」と線分s1の長さとを乗算することで、目から端末までの高さ(図17のh1)を算出することができる。すなわち、高低差算出部12aは、数式「s1×cos(α1)」によってh1を算出することができる。
【0061】
高低差算出部12aは、部位間距離管理テーブル151に記憶した目と心臓の距離と、目から端末までの高さh1とを比較して、被測定者の心臓とスマートフォン100aの相対位置を算出する。例えば、部位間距離管理テーブル151に記憶した目と心臓の距離よりも算出したh1の方が小さい場合、スマートフォン100aは心臓より相対的に高い。また、例えば、部位間距離管理テーブル151に記憶した目と心臓の距離よりも算出したh1の方が大きい場合、スマートフォン100aは心臓より相対的に低い。また、例えば、部位間距離管理テーブル151に記憶した目と心臓の距離と算出したh1とが等しい場合、スマートフォン100aと心臓は相対的に同じ高さである。被測定者の上半身が傾いていない場合、スマートフォン100aと心臓は相対的に同じ高さであれば、スマートフォン100aは血圧測定を高精度に行うことができる。
【0062】
J3では、スマートフォン100aは、撮像中の目の高さを基に、スマートフォン100aの傾きを算出する。図18は、撮像中における目の高さを例示する図である。図18では、撮影部11が撮影した撮像全体の高さをY、撮像の下端部から目までの高さをY1で示す。被測定者を撮影するスマートフォン100aが傾くと、撮像中における目の高さY1が変動する。
【0063】
図19は、撮像中の目の高さを基にスマートフォンの傾きを算出する概念図である。図19は、被測定者とスマートフォン100aとを側方から見た状態を示す。図19において、YおよびY1は、図18と同様である。角度E1は、スマートフォン100aのインカメラ112の撮影範囲を示す角度である。角度E2は、撮像の中央に目が位置する場合
のスマートフォン100aの角度からの角度差である。角度E2は、数式「tan(E2)=(Y/2-Y1)÷{Y/2×tan(90-E1)}」によって算出することができる。
【0064】
図20は、第1変形例において、スマートフォンが傾いている状態を例示する。図20を参照すると理解できるように、スマートフォン100aの傾きを示す角度θは、90-α1+E2で算出することができる。
【0065】
J4では、高低差算出部12aは、被測定者の上半身の傾きを算出する。図21は、第1変形例において、被測定者の上半身が傾いている状態を例示する。高低差算出部12aは、T27の処理で算出した重力加速度方向を用いて、スマートフォン100aの鉛直下向きに対する角度θ1を算出する。高低差算出部12aは、J3で算出したスマートフォン100aの傾きを示す角度θとJ4で算出した角度θ1が等しいか否かを判定する。角度θと角度θ1とが等しい場合には、被測定者の上半身は傾いていない。角度θと角度θ1とが等しくない場合には、被測定者の上半身は傾いている。なお、図21では被測定者の上半身は胸側に傾いているが、背中側に傾いている場合も、角度θ1の算出は同様である。
【0066】
J5では、高低差算出部12aは、被測定者の心臓とスマートフォン100aとの鉛直方向の高低差を算出する。図21では、被測定者の心臓とスマートフォン100aとの鉛直方向の高低差は符号K1で示される。図21を参照すると理解できるように、高低差K1は、K1=s1×sin(α1)×sin(θ1-θ)によって算出することができる。
【0067】
<第2変形例>
以上説明した実施形態及び第1変形例では、被測定者の心臓とスマートフォンの高さが一致するように被測定者を案内した。しかしながら、被測定者が寝たきりの状態等で、被測定者の心臓とスマートフォンの高さを一致させることが難しい場合も考えられる。第2変形例では、算出した被測定者の心臓とスマートフォンの高さの高低差を基に、当該高低差を考慮した血圧の測定値を算出する処理について説明する。実施形態及び第1変形例と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0068】
図22は、第2変形例に係るスマートフォンの処理ブロックの一例を示す図である。第2変形例に係るスマートフォン100bは、案内部13に代えて再計算部13aを備えるとともに、管理データベース15に代えて補正値記憶部15aを備える点で、実施形態に係るスマートフォン100とは異なる。
【0069】
補正値記憶部15aは、再計算部13aによる測定値の再計算に用いる補正値を記憶する。補正値は、被測定者の心臓とスマートフォン100bの高低差による測定値の変動を反映する再計算に用いられる。補正値は、例えば、以下の式を基に算出することができる。以下の式1において、pは圧力(Pa)、ρは液体の密度(kg/m)、gは重力加速度(m/s)、h2は物体と水面の距離(m)、である。
p=ρ×g×h2 ・・・(式1)
【0070】
血液の密度(男女の平均値)「1.0540×10(kg/m)」、重力加速度「9.80665(m/s)」として、血圧の測定部位を1cm下げたときの血液の圧力を式1を用いて算出すると、103.362(Pa)を得ることができる。
【0071】
ここで、動脈の血圧は水銀圧で示すので、水銀の密度「13.5951×10(kg/m)」として式1を用いて1水銀柱ミリメートルの圧力を算出すると、1水銀柱ミリ
メートルは、133.322(Pa)となる。すなわち、血圧の測定部位を1cm下げたときの血液の圧力を水銀柱ミリメートルに換算すると、0.77528(mmHg)を得ることができる。すなわち、血圧の測定部位を1cm上下させると、血圧の測定値が0.77528(mmHg)変動することが理解できる。補正値記憶部15aは、1mm単位の補正値として、0.077(mmHg)を記憶する。
【0072】
再計算部13aは、測定部14が測定した血圧の測定値を補正値記憶部15aが記憶する補正値を用いて再計算する。再計算部13aは、例えば、スマートフォン100bよりも心臓の方が10cm低い場合、補正値と「-10cm(すなわち、-100mm)」を乗算することで、補正量として-7.7(mmHg)を得る。再計算部13aは、測定部14が測定した血圧の測定値に算出した補正量「-7.7(mmHg)」を加算することで、測定値の再計算を行う。また、再計算部13aは、例えば、スマートフォン100bよりも心臓の方が10cm低い場合、補正値と「+10cm(すなわち、+100mm)」を乗算することで、補正量として+7.7(mmHg)を得る。再計算部13aは、測定部14が測定した血圧の測定値に算出した補正量「+7.7(mmHg)」を加算することで、測定値の再計算を行う。
【0073】
図23は、第2変形例に係るスマートフォンによる血圧測定処理の処理フローの一例を示す図である。以下、図23を参照して、スマートフォン100bによる血圧測定処理の処理フローの一例について説明する。
【0074】
T14では、再計算部13aは、T4で測定部14が測定した血圧を被測定者の心臓とスマートフォン100bとの鉛直方向の高低差に応じて再計算を行う。再計算部13aは、補正値記憶部15aに記憶した補正値とT2で算出した高低差とを基に、測定値の再計算に用いる補正量を算出する。再計算部13aは、算出した補正量を用いて、測定部14が測定した血圧の測定値を被測定者の心臓とスマートフォン100bの高低差を考慮した値に再計算する。
【0075】
第2変形例によれば、再計算部13aが心臓とスマートフォン100bの高低差を考慮した値に血圧の測定値を再計算するので、被測定者の心臓とスマートフォン100bの高さを一致させることが難しい場合でも、高精度の血圧測定を可能とすることができる。
【0076】
<第3変形例>
以上説明した実施形態や変形例では、理想顔平面121や顔の特徴点を用いてスマートフォンと心臓の鉛直方向の高低差を算出したが、スマートフォンと心臓の鉛直方向の高低差算出はこれらに限定されない。第3変形例では、被測定者の上体を含む撮像を基に骨格検出を行い、検出した骨格と予め記憶した骨格位置と心臓位置との関係情報を基に、スマートフォンと心臓の鉛直方向の高低差を算出する。
【0077】
図24は、第3変形例に係るスマートフォンの処理ブロックの一例を示す図である。第3変形例に係るスマートフォン100cは、撮影部11及び高低差算出部12の夫々に代えて、撮影部11a及び高低差算出部12bを備える点で、実施形態に係るスマートフォン100とは異なる。
【0078】
スマートフォン100cの管理データベース15では、被測定者の骨格と心臓の位置の関係情報を記憶する関係情報テーブルをさらに含む。図25は、第3変形例において管理データベースが記憶する関係情報テーブルの一例を示す図である。関係情報テーブル152は、予め測定された被測定者の骨格と心臓の位置の関係情報を記憶する。図25に例示される関係情報テーブル152は、「骨格」、「長さ」、「長手方向」、「心臓との距離」及び「距離方向」の各項目を有する。「骨格」には、被測定者の骨格を示す情報が格納
される。「長手方向」には、骨格の長さを測定する方向を示す情報が格納される。心臓との距離」には心臓との間の距離を示す情報が格納される。「距離方向」には、距離を測定する方向を示す情報が格納される。長さ及び距離の単位は、例えば、ミリメートル(mm)である。図25の例では、例えば、鎖骨の左右方向の長さが130mmであり、鎖骨と心臓の上下方向の距離が200mmであることが理解できる。
【0079】
撮影部11aは、例えば、被測定者からの血圧測定指示を受けると、被測定者の上体の撮影を行う。高低差算出部12bは、骨格算出部124及び心臓位置算出部125を含む。骨格算出部124は、撮影部11aが撮影した被測定者の少なくとも上体を含む撮像を基に、骨格の向きと長さを算出する。高低差算出部12bは、例えば、関係情報テーブル152が心臓位置と鎖骨の長さや向きとを対応付けて記憶している場合、撮像中における鎖骨の向きや長さを検出してもよい。骨格算出部124は、例えば、ディープラーニングによって構築された学習モデルを用いて、撮像中における被測定者の骨格を算出してもよい。学習モデルは、例えば、様々な年齢、性別、人種の人物を一人ずつ撮影した撮像を多数用意し、用意した多数の撮像を教師データとして構築されたものでもよい。心臓位置算出部125は、骨格算出部124が検出した撮像中における骨格と、関係情報テーブル152が記憶した関係情報とを基に、心臓位置を算出する。高低差算出部12bは、心臓位置算出部125が算出した心臓位置とスマートフォン100cの重力高さ方向の位置の差を算出する。
【0080】
図26は、第3変形例に係るスマートフォンによる血圧測定処理の処理フローの一例を示す図である。以下、図26を参照して、スマートフォン100cによる血圧測定処理の処理フローの一例について説明する。
【0081】
T31では、血圧測定指示を受けた撮影部11aは、インカメラ112を用いて光電脈波センサ115に指先を接触させている被測定者の上体を撮影する。
【0082】
T32では、骨格算出部124は、T31において撮影部11aが撮影した撮像を基に、撮像中における被測定者の骨格の向きと長さを算出する。骨格算出部124は、例えば、撮像中における被測定者の鎖骨の長さや肩幅、腰幅を算出する。
【0083】
T33では、心臓位置算出部125は、T32において骨格算出部124が算出した撮像中における骨格と、関係情報テーブル152が記憶した関係情報とを基に、心臓位置を算出する。
【0084】
T34では、高低差算出部12bは、T33において心臓位置算出部125が算出した心臓位置と、スマートフォン100cの鉛直方向における高低差を算出する。高低差算出部12bは、例えば、図17における目とスマートフォン100aとの距離s1に代えて、鎖骨とスマートフォン100cとの距離を採用した上で、図15に例示する処理を実行することで、スマートフォン100cと心臓の鉛直方向における高低差を算出することができる。
【0085】
第3変形例によれば、被測定者の上体を含む撮像を基に骨格検出を行い、検出した骨格と予め記憶した骨格位置と心臓位置との関係情報を基に、スマートフォン100cと心臓の鉛直方向の高低差を算出することができる。
【0086】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせることができる。
【0087】
<<コンピュータが読み取り可能な記録媒体>>
コンピュータその他の機械、装置(以下、コンピュータ等)に上記いずれかの機能を実
現させる情報処理プログラムをコンピュータ等が読み取り可能な記録媒体に記録することができる。そして、コンピュータ等に、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、その機能を提供させることができる。
【0088】
ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータ等から取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、Compact Disc Read Only Memory(CD-ROM)、Compact Disc-Recordable(CD-R)、Compact Disc-ReWriterable(CD-RW)、Digital Versatile Disc(DVD)、ブルーレイディスク(BD)、Digital Audio Tape(DAT)、8mmテープ、フラッシュメモリなどのメモリカード等がある。また、コンピュータ等に固定された記録媒体としてハードディスクやROM等がある。
【符号の説明】
【0089】
100、100a、100b、100c・・・スマートフォン
101・・・CPU
102・・・主記憶部
103・・・補助記憶部
104・・・通信部
105・・・加速度センサ
111・・・スピーカー
112・・・インカメラ
113・・・ディスプレイ
114・・・マイクロフォン
115・・・光電脈波センサ
11・・・撮影部
12、12a、12b・・・高低差算出部
124・・・骨格算出部
125・・・心臓位置算出部
13・・・案内部
13a、13b・・・再計算部
14・・・測定部
15・・・管理データベース
15a・・・補正値記憶部
151・・・部位間距離管理テーブル
152・・・関係情報テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26