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▶ 阿部 荒喜の特許一覧

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  • 特許-除水機 図1
  • 特許-除水機 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】除水機
(51)【国際特許分類】
   B01D 17/06 20060101AFI20240321BHJP
   C08J 11/12 20060101ALI20240321BHJP
   B01D 17/00 20060101ALI20240321BHJP
   B03C 5/00 20060101ALI20240321BHJP
   B03C 5/02 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B01D17/06 502B
C08J11/12
B01D17/00 503B
B03C5/00 Z
B03C5/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019199356
(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公開番号】P2021062353
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】502442854
【氏名又は名称】阿部 荒喜
(72)【発明者】
【氏名】阿部 良博
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-031211(JP,A)
【文献】特開昭59-010309(JP,A)
【文献】特開平10-273676(JP,A)
【文献】特開2011-213962(JP,A)
【文献】特開平07-068102(JP,A)
【文献】特開2016-064404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 17/00-17/12
B03C 3/00ー11/00
C08J 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混在廃プラや医療廃棄物を熱分解によって生成した混合液に加水し、熱を加えて攪拌し、陽極と陰極を1組とした電極板2組以上を生成混合液に浸漬し、この電極間に10000から30000ボルトの電圧で微電流を流すことで油中の乳化した塩酸を含む水分は集合、結合して液中で底に沈ませ、このようにして油水の境界の別れた液体を入れた槽の底より塩酸、中ほどより水を抜いて当該混合液を分離する除水機。
【請求項2】
請求項1の除水機電極の材料は、非磁性体の薄板であり、この薄板は陰極用で1枚、陽極用で1枚を1組として用いこの2枚の板は一方の板の端面がもう一方の板の平面部と対面するT字の状態で用いこの電極はその長さの半分程度を液中に漬けまた槽の内部の水と油と塩酸の混合液の流れは、槽内の邪魔板に遮られて流速を抑制され、適切な槽内での滞留時間を経て分離した後に廃液される請求項1除水機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
塩化ビニール製の混在廃プラなどを選別せずに熱分解してできた油や水に塩酸が混入して回収油の再利用の妨げになっていた。
【0002】
現状では混在している塩ビは目視で選別除去した後に破砕し、小片となった廃プラを搬送する工程で圧縮空気を用いた精密識別分級によってさらに残った塩ビ小片を吹き飛ばして除去する。しかし3P類の廃プラの小片の陰に塩ビ小片が隠れていた場合などではこれを識別できず除去できない。
【0003】
以上述べた方法は乾式であり、多量の処理をする場合には人手によって大別した後に破砕し、洗浄工程の後に流水に浸し、浮いた軽い廃プラと沈んだ廃プラを分けるなどの湿式分級を行う。分級の効率や精度の向上のために水に塩分を加えるなどの方法もとられる。
【0004】
混在廃プラから塩化物を完全に除去することは難しい。湿式分級の沈殿物は再利用されず埋め立てか焼却処理されている。この混在廃プラをそのまま熱分解処理した場合には回収油に多くの塩素分が混じり、燃料としての再利用の妨げとなる。バーナーなどの燃料に塩素を多く含む燃料を使用すると設備や機器が腐食してしまう。また臭気を出し、排出基準を満たす排ガスに浄化するのは難しい。
【0005】
固体の状態で完全に選別するのは不可能である。選別も洗浄もすることなく残液の残る容器などもそのまま処理して再利用できる方法について考える。プラスチックの原料は原油を精製する段階でできたナフサをポリマーにしたものなので廃棄物を油化させてナフサに還元することは可能である。
【0006】
医療廃棄物を収容した容器を開封して選別することは不可能である。廃プラを選別も洗浄もせず熱分解によって液化させ、液中でエマルジョン化した油と水と酸を分離できれば再利用の道が開かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4961553号
【非特許文献】
【0008】
【文献】デソルター試験器による原油の油水分離性評価方法 石油学会誌 138-643(1983)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
各家庭より出される一般廃プラは各種色々の種類が混入していて、塩化物の食品容器、湯バケツ、桶などの塩ビ製品や工業廃プラ耐酸製品などの塩ビ混入品、医療廃棄物中の透析チューブなど身近な塩化物を熱分解すると油の中や水の中に塩酸が混入し再利用の妨げとなっていた。
【0010】
油中に混入する塩酸の問題以外にも油の中に粉塵が混入するのも問題である。粉塵は熱分解槽温度300℃~350℃のときに多量に発生する。粉塵は発生ガスとともに熱分解槽外へ持ち出されて冷却液化する油や水に混入する。また粉塵は装置の内壁に付着して時間とともに硬化し、除塵に時間と手間がかかっていた。
【0011】
発生した粉塵は高温の油や酸や水と混じり、強い粘性を持ち装置内部のあらゆるものに付着してプラントの機能を阻害する。この粉塵の発生を抑止する手段はない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
除塵後のろ液混入後に清水を加水し、攪拌して加熱する。この液体を横長の形状の容器の一端より流入させてもう一端の上面に溢液する油を取り出す。またこの下方より水を抜き出す。塩酸は、槽底部のノックアウト槽に集合させる。
【0013】
この横長形状の槽の液面に電極を浸す。電極は陽極と陰極を1組としてこれを多数組並べる。またこれら電極への電気配線や結線を行うための箱を槽の上に設置する。槽の断面形状は円形であり横に長い円筒形状である。電極は板形状でこの槽の左右中央部に位置する。電極の左右は流速を制限し、液体の槽での滞留時間を平均化するための邪魔板が設けられる。また邪魔板によって槽内での液体が分散されるため電極からの放電による液体分子の電気泳動の効率があがる。
【0014】
使用電源は200Vでも100Vでもよいが単相100Vであれば消費電力も少なく効率も充分であり経済的である。この電源を用いて電圧を1000V以上に昇圧し、乳化して液体中を浮遊する水の粒子に荷電する。荷電した水の粒子は電極の陽極に集まり、結合して液体中で自沈する。
【発明の効果】
【0015】
油と水の中に塩酸が混入している。これは塩素を含む水分と油が乳化して親和してしまったために分離が難しくなったためである。この油と水の混合液に荷電することによって水の粒子のみを集合、結合させて液体中に沈め、比重分離することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】除水機を横置した縦断面説明図である。
図2】除水機を横置した縦断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1〕は、本発明の除水機を側面より見た縦断面図である。槽の端面の蓋より2.原液流入管を槽内に向けて挿入する。管の槽内部分には多数の孔を設けることで流入液を槽内に分散させて流入させることができる。
【0018】
流入原液は、槽内を3.油溢液管の方向に向けて流れるが槽内を移動する間は電極群に触れて反応して水分は下へ沈み、油水の境界がはっきりしてくる。流入した液体は槽内で油水に分離して油は3.油溢液管から、水は8.水排出口から排液される。槽の中央の底部には4.ノックアウトがあり、ここに塩酸が溜まる。ノックアウト下には7.排塩バルブがあり任意の周期でこれを開けることで塩酸を槽から排出する。
【0019】
槽内上部には6.電極群がある。電極の素材は非磁性体であり、陰極用と陽極用が交互に配置される。陰陽各1枚の電極板を1グループとしてこれらが多数並び、槽上の電極受けから吊り下げられる。
【0020】
100Vを電源とし、これを10000~30000Vまで昇圧した電圧を電極群にかけ、槽内部の液体に微弱な電流を流す。液体の水分濃度、浸漬する電極の接液面積、電極間の距離によって流れる電流値は変わるが電源側に可変抵抗を設けることでで適正な電圧値と電流値に調整することができる。槽内の油溢液部付近に5.PH濃度センサーを設置してPH濃度を知ることができる。
【実施例
【0021】
除水機は、原液が酸性のため材質はSUSか塩ビがよい。また原液は温度が高くなるため材料は厚みが厚いほうがよい。原液の塩酸濃度が20%を超えて高い場合には5%程度の生石灰水で中和処理してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0022】
混在廃プラスチックを選別しないで熱分解処理し、液化した後に塩酸を除去することができる。塩酸濃度0.05%以下にすることも可能である。
【符号の説明】
【0023】
1.横長槽
2.原液流入管
3.油溢液管
4.ノックアウト
5.PH濃度センサー
6.電極群
7.排酸バルブ
8.水排出口
9.邪魔板
図1
図2