(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】琥珀の製造方法ならびに樹液を高分子化させる方法
(51)【国際特許分類】
C08F 240/00 20060101AFI20240321BHJP
C09F 1/04 20060101ALI20240321BHJP
A44C 27/00 20060101ALN20240321BHJP
【FI】
C08F240/00
C09F1/04
A44C27/00
(21)【出願番号】P 2020017938
(22)【出願日】2020-02-05
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(73)【特許権者】
【識別番号】504255685
【氏名又は名称】国立大学法人京都工芸繊維大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】泉 敬介
(72)【発明者】
【氏名】大川 慶直
(72)【発明者】
【氏名】上川 将章
(72)【発明者】
【氏名】西川 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】辻田 義治
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-131858(JP,A)
【文献】特表2014-528921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 240/00
C09F 1/04
A44C 27/00
C08L 101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナンヨウスギ科植物およびフタバガキ科植物から選択される植物由来の樹液に、
少なくとも1MGy[メガグレイ]の電離性放射線を
照射することからなる、琥珀の製造方法。
【請求項2】
該ナンヨウスギ科植物が、ナンヨウスギ属およびナギモドキ属植物から選択され、該フタバガキ科植物が、フタバガキ属およびサラノキ属植物から選択される、請求項1に記載の琥珀の製造方法。
【請求項3】
該電離性放射線
が、少なくとも2MGyのガンマ線である、請求項1または2に記載の琥珀の製造方法。
【請求項4】
ナンヨウスギ科植物およびフタバガキ科植物から選択される植物由来の樹液に、
少なくとも1MGy[メガグレイ]の電離性放射線を
照射し、該樹液を高分子化させる方法。
【請求項5】
該ナンヨウスギ科植物が、ナンヨウスギ属およびナギモドキ属植物から選択され、該フタバガキ科植物が、フタバガキ属およびサラノキ属植物から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
該電離性放射線
が、少なくとも2MGyのガンマ線である、請求項4または5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナンヨウスギ科植物およびフタバガキ科植物から選択される植物由来の樹液に、電離性放射線を作用させることからなる、琥珀の製造方法に関する。さらに本発明は、ナンヨウスギ科植物およびフタバガキ科植物から選択される植物由来の樹液に、電離性放射線を作用させ、該樹液を高分子化させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
琥珀は、数千万年から数億年前に、地球上に繁茂していた樹木の樹脂が土砂等に埋もれて変質し化石化したものである。多くの化石が、一般には無機物であるのに対し、琥珀は有機物の化石である。琥珀は、一般に非晶質であり、その大きさや透明度、色相等により、アクセサリーや置物、その他装飾品として古代から世界中で利用されている。しかしながら、軽量で電気絶縁性があり、耐溶媒性に優れ、加工が容易であるという性質を有することから、近年では琥珀を人工的に製造し、これを利用しようとする試みもなされている。
【0003】
特許文献1には、コハク酸を濃硝酸と共に加熱し、エタノールで洗浄濾過し、得られた精製物と天然ロジン、不飽和ポリエステル、及び硬化剤とを混合して放置することにより硬化させて、合成琥珀を製造する方法が開示されている。一方、特許文献2には、樹脂と硬化促進剤とを混合し、これに細かく砕いた貝殻を混入して樹脂を硬化させて、人造琥珀を製造する方法が開示されている。さらに特許文献3には、粉粒体等を含む小さい琥珀を加圧して予備成形し、予備成形体を加熱加圧してさらに琥珀粉粒体と一体化させ、その後除熱する、再生琥珀の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭58-210918号
【文献】特開平7-113021号
【文献】特開平4-10913号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および2は、いずれも、人造琥珀の製造方法に関するものであるが、人造琥珀は天然の琥珀とは異なる物である。特許文献3はいわゆる端材である細かい琥珀を寄せ集めて再生琥珀(アンブロイド)を製造する方法に関するものであり、天然琥珀そのものを製造する方法ではない。古代樹木の樹液がどのような作用を受けて数千万年以上の時を経て天然琥珀を形成したのかは明らかではない。本発明者らは、樹液が大量の放射線を浴びて、樹液の構成成分が重合・架橋することで琥珀が生成したという仮説をたてた。本発明者らはこの仮説を確かめ、特定の樹液に電離性放射線を作用させることにより、天然琥珀とほぼ同一の物質を人工的に製造する方法を提唱するに到った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、ナンヨウスギ科植物およびフタバガキ科植物から選択される植物由来の樹液に、電離性放射線を作用させることからなる、琥珀の製造方法である。
本発明の他の実施形態は、ナンヨウスギ科植物およびフタバガキ科植物から選択される植物由来の樹液に、電離性放射線を作用させ、該樹液を高分子化させる方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法により、琥珀を人工的に製造することができる。また、本発明の樹液を高分子化させる方法によって、特定の樹木の樹液を硬化させ、琥珀を得ることができる。本発明の方法により製造された琥珀は、天然の琥珀と同一の成分を有しており、アクセサリーや装飾品として利用できるほか、各種工業製品としての利用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、放射線を照射する前および照射した後のシマナンヨウスギ樹液(試料C)の赤外吸収スペクトルの一部である。
【
図2】
図2は、放射線を照射する前および照射した後のバオバブの木樹液(試料D)の赤外吸収スペクトルの一部である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態を以下に説明する。本発明の一の実施形態は、ナンヨウスギ科植物およびフタバガキ科植物から選択される植物由来の樹液に、電離性放射線を作用させることからなる、琥珀の製造方法である。
【0010】
本実施形態において製造される琥珀とは、天然樹脂の化石であり、一般にコハク、アンバーとも呼ばれる。主に宝石としてアクセサリー類に利用されるほか、いわゆる虫入り琥珀のような置物としても利用されている。本明細書において琥珀という場合、半化石の琥珀(コーパル)を含む。
【0011】
本実施形態の製造方法は、ナンヨウスギ科植物およびフタバガキ科植物から選択される植物由来の樹液に、電離性放射線を作用させることを含む。ナンヨウスギ科植物とは、裸子植物門マツ綱の科に属する植物である。ナギモドキ属(アガチス属)、ナンヨウスギ属(アラウカリア属)、ウォレミア属等に分けられるナンヨウスギ科植物は、主に東南アジア、中南米、オセアニアの熱帯から温帯にかけて分布している。ナンヨウスギ科植物として、ノーフォークマツ、パラナマツ、マニラコーパルノキ、カウリコーパルノキ、ナンヨウスギ、シマナンヨウスギ、アラウカリオキシロン、ナギモドキ、ウォレマイパイン等が挙げられる。
【0012】
フタバガキ科植物とは、被子植物である双子葉植物の科に属する植物である。サラノキ属、ホペア属、バチカ属、バラノカルプス属、フタバガキ属等を含む3亜科17属に分けられるフタバガキ科植物は、主に熱帯アジアに分布する。フタバガキ科植物として、サラソウジュ、リュウノウジュ、フタバガキ等が挙げられる。
【0013】
これらの植物由来の樹液とは、上記植物の樹木から採取することができる液体のことである。上記植物の樹皮に傷をつけると樹液が分泌されてしみ出るので、これを採取する。ナンヨウスギ科植物またはフタバガキ科植物に由来する樹液として、たとえば、ダンマル(ダンマー、ダマルとも呼ばれる。)、マニラコーパル、カウリコーパルを挙げることができるが、本実施形態では、ナンヨウスギ科植物またはフタバガキ科植物の樹木から採取可能な樹液であればいずれを用いても良い。異なる植物から採取した樹液を混合して用いることもできる。特に、ナンヨウスギ属およびナギモドキ属植物、ならびにフタバガキ属およびサラノキ属植物から選択される樹木から採取される樹液を用いることが好ましい。
【0014】
実施形態において電離性放射線とは、原子や分子を電離させるのに充分なエネルギーを持つ放射線全般を指す。電離性放射線として、α線、β線、γ線、電子線、重陽子線、陽子線、重粒子線等の直接電離性放射線、およびX線、中性子線、紫外線等の間接電離性放射線を挙げることができる。実施形態において、電離性放射線を作用させる、とは、上記の樹液を、電離性放射線が発生した環境下に置くこと、すなわち、上記の樹液に電離性放射線を照射することを意味する。上記の植物由来の樹液に、電離性放射線を少なくとも2MGy[メガグレイ]照射することが望ましい。
【0015】
上記の植物由来の樹液に、2MGy以上の電離性放射線を照射することにより、琥珀を製造することができる。特定の理論に拘泥するものではないが、琥珀の製造のメカニズムは、たとえば、以下のように考察できる:琥珀へと変化する樹液は、上記のように特定の植物に由来するものである。琥珀へと変化する樹液には、ラブダンジテルペン化合物が含まれていることがわかっている。ラブダンジテルペン化合物に含まれている二重結合が重合あるいは架橋して樹液が高分子化することが、樹液の琥珀への変化の本質であると考えられる。この高分子化反応は、自然界では、数千万年以上の年月の間、温度や圧力の変化等の種々の作用により進行し、これにより樹液が琥珀に変化する。本実施形態では、樹液に電離性放射線を作用させることにより、樹液に含まれているラブダンジテルペン化合物を高分子化させる。これにより樹液が硬化して、琥珀を得ることができると考えられる。
【0016】
本発明の他の実施形態は、ナンヨウスギ科植物およびフタバガキ科植物から選択される植物由来の樹液に、電離性放射線を作用させ、該樹液を高分子化させる方法である。本実施形態において使用される樹液は、ナンヨウスギ科植物およびフタバガキ科植物から選択される植物に由来する。ナンヨウスギ科植物として、ナンヨウスギ属(アラウカリア属)、ナギモドキ属(アガチス属)から選択される植物が挙げられ、このような植物としては、ノーフォークマツ、パラナマツ、マニラコーパルノキ、カウリコーパルノキ、ナンヨウスギ、シマナンヨウスギ、アラウカリオキシロン、ナギモドキ、ウォレマイパイン等を挙げることができる。またフタバガキ科植物として、フタバガキ属、サラノキ属から選択される植物が挙げられ、このような植物としては、サラソウジュ、リュウノウジュ、フタバガキ等を挙げることができる。
【0017】
本実施形態においても、樹液に電離性放射線を作用させるとは、上記の樹液を、電離性放射線が発生した環境下に置くこと、すなわち、上記の樹液に電離性放射線を照射することを意味する。ここで用いられる電離性放射線として、α線、β線、γ線、電子線、重陽子線、陽子線、重粒子線等の直接電離性放射線、およびX線、中性子線、紫外線等の間接電離性放射線を挙げることができる。樹液に作用させる電離性放射線は、少なくとも2MGyである。
【0018】
上記の樹液に電離性放射線を作用させて、樹液を高分子化あるいは架橋化させることができる。樹液が高分子化あるいは架橋化すると、樹液は徐々に硬化し、琥珀が生成する。
【実施例】
【0019】
[樹液への電離性放射線の照射]
(1)試料の調製
以下の4種類の樹液試料を用意した:
A:シマナンヨウスギ樹液現物(採取品)
B:シマナンヨウスギ樹液(採取品、真空乾燥後、エタノール濃厚液生成)
C:シマナンヨウスギ樹液(採取品、真空乾燥後、濾過し被膜にしたもの)
D:バオバブの木樹液現物(採取品、真空乾燥)
【0020】
シマナンヨウスギ樹液は、フィールドワークにて常法により採取した。採取した樹液は、淡黄色の半固体形状であった。これを真空乾燥させて樹液の水分を除くと、樹液は固体状になった。これをテフロン(登録商標)シートにのせてローラで平らにした。平らにした樹液を常温で完全に乾燥させ、シートから剥がして6個のガラス瓶(サイズ:φ=44mm、H=50mm、蓋にアルミシート貼付)に取り、試料Aとした。
【0021】
一方、上記と同様に真空乾燥し、固体状となった樹液をエタノールに溶解した(濃度:5重量%)。これを濾紙(ADVANTEC、125mm、100穴、TOYO製)を用いて1回濾過した。濾過して得た濾液の10分の1量を、6個のガラス瓶(サイズ:φ=44mm、H=50mm)に注ぎ、それぞれ水平に設置されたガラス板上で、常温にて数日間乾燥させてシマナンヨウスギ樹液の濃度を約30重量%にまで高めて、試料Bを得た。
一方、上記の残りの濾液を4分割して、4個のガラス瓶(サイズ:φ=44mm、H=50mm、蓋にアルミシート貼付)に注ぎ、それぞれ水平に設置されたガラス板上で、常温にて完全に乾燥させ、試料Cを得た。
【0022】
バオバブの木樹液は、フィールドワークにて常法により採取した。採取した樹液を、真空乾燥したものを秤量して、4個のガラス瓶に分け(サイズ:φ=44mm、H=50mm、蓋にアルミシート貼付)入れたものを試料Dとした。
【0023】
(2)電離性放射線の照射
ガンマ線の照射は、上記の試料を二つに分けて行った。第一回目の照射は、試料Aに対して行い、第二回目の照射は、試料B、C、およびDに対して行った。(第一回目と第二回目の照射の方法は同じ。)
上記の試料をガンマ線照射用アルミニウム製試験台に設置した。試料の設置は、「線量分布表」の距離―線量率曲線で推測し、線量計は、試料の上面にアルミテープで固定した。線量率測定では、連続4時間照射した積算線量を照射時間(4時間)で割った値を、時間線量とした。線量計は、照射工程管理のルーチン線量計として使われるPMMA(ポリメチルメタクリレート)線量計(製品名:Radix W、ラジエ工業社株式会社製)を用いて線量を評価した。なお、線量の評価は、量子科学技術研究開発機構(QST高崎研)が行った。
【0024】
各試料の照射量は、試料AおよびBについては、1MGy、2MGy、3MGy、4MGy、および5MGyになるように、試料CおよびDについては1MGy、3MGy、および5MGyとなるように各試料を試験台上に配置し、試験台をガンマ線照射線源の前に設置した。時間線量から目標線量を想定して吸収線量を推測し、1800時間以上にわたり各試料にガンマ線を照射した。
各試料へのガンマ線の実際の照射量は、表1および表2に示す:
【0025】
【0026】
【0027】
(3)樹液の高分子化の見積もり
ガンマ線を照射した各樹液の高分子化の進行度は、赤外吸収スペクトル(IR)で解析し、見積もることができる。構成成分としてラブダンジテルペン化合物を有している樹液のIRスペクトルは、1650cm-1~1700cm-1付近の指紋領域に炭素-炭素二重結合の伸縮に基づく吸収ピークが見られる。電離性放射線を照射すると、二重結合が重合するため、1650cm-1~1700cm-1付近のピークが減少していくと推定される。そこで、各樹液試料のIRスペクトルを測定し、特に1653cm-1のピークを樹液の高分子化の目安とした。シマナンヨウスギ樹液試料であるA、B、CのIRスペクトルでは、1653cm-1のピークが、相対的に小さくなっていた。
【0028】
例として、試料CのIRスペクトルを
図1に示す。
図1は、試料CのIRスペクトルの波数1500cm
-1~1750cm
-1を拡大したものである。
図1より、試料Cについては、ガンマ線を多く照射するほど、IRスペクトルの1653cm
-1のピークが他のピーク(たとえば1700cm
-1のピーク)と比較して相対的に小さくなっていくことがわかる。これは、試料中に含まれているラブダンジテルペン化合物に由来する二重結合が消失して、別の結合になっていることを示すものである。すなわち、シマナンヨウスギ樹液にガンマ線を多く照射すれば、構成成分の重合および架橋が起こると考えられる。一方、
図2は、試料DのIRスペクトルの波数1500cm
-1~1750cm
-1を拡大したものである。
図2によると、ナンヨウスギ科またはフタバガキ科植物由来の樹液ではない試料D(バオバブ)については、試料Cで見られたような樹液構成成分の重合および架橋は観察できなかった。ガンマ線照射時のバックグラウンドの増加等を考慮するとガンマ線未照射のバオバブと、ガンマ線を照射した後のバオバブについて、1653cm
-1のピークにはほとんど変化が見られない。バオバブ樹液の構成成分には、電離性放射線の照射により重合あるいは架橋するラブダンジテルペン化合物に由来する二重結合がほとんど含まれていないか、あるいは、含まれていたとしても、電離性放射線の照射で構成成分が重合および架橋するほどの量は含まれていないものと考えられる。
【0029】
(4)溶融試験
上記の電離性放射線照射試験に用いた試料Aについて、溶融試験を行った。ガンマ線を照射しない試料と、ガンマ線を1MGy、2MGy、3MGy、4MGy、5MGy照射した後の試料(計6種類)を、アルミニウム箔を敷いたホットプレート上に少量ずつ載せた。ホットプレートの温度が10分間で5℃ずつ上昇するように昇温し、温度表示が各温度になったときに各試料の様子を目視で確認した。溶融試験の結果を表3に示す。なお、表中、「固体」とは、少なくとも試料が固まった固体(半固体状のものも含む。)の状態である様子を指す。「軟化」とは、試料が溶けて軟らかくなっている様子を指す。「溶融」とは、試料が溶けて流れ出している様子を指す。「崩壊」とは、試料がバラバラになっている様子を指す。「焦げ発生」とは、固まった試料のまま底部に焦げが発生している様子を指す。
【0030】
【0031】
ガンマ線を照射していないシマナンヨウスギ樹液は、ホットプレート温度が60℃になったときに軟化し、95℃で溶融して流れてしまった。一方、ガンマ線を照射したシマナンヨウスギ樹液はホットプレート温度を昇温しても軟化しにくいことがわかった。特に4MGy、あるいは5MGyのガンマ線を照射した試料はホットプレート温度が175℃になっても軟化も溶解もせず、200℃になったときに底部に焦げが発生した。この結果は、シマナンヨウスギ樹液にガンマ線を照射して、固形状の琥珀を形成することができたことを示すものである。樹液の種類や濃度、および電離性照射線の照射量を調整して、樹液から人工的に琥珀を形成する最適条件を求めることができると考えられる。
【0032】
本発明の方法により、琥珀を人工的に製造することができる。得られた琥珀は、アクセサリーなどの宝飾品、置物のほか、各種工業製品として利用できる。