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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】阻害の方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/137 20060101AFI20240321BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240321BHJP
   A61P 27/10 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240321BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20240321BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240321BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 31/66 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 31/46 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 31/5513 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
A61K31/137
A61P27/02
A61P27/10
A61K47/22
A61K9/08
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/02
A61K47/20
A61K47/18
A61K47/24
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/198
A61K31/66
A61K31/46
A61K31/5513
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021513845
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 AU2019050986
(87)【国際公開番号】W WO2020051648
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】2018903445
(32)【優先日】2018-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】508188868
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・キャンベラ
【氏名又は名称原語表記】University of Canberra
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】リーガン スコット アシュビー
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/177262(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/060870(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/187426(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0009705(US,A1)
【文献】Altered behavioural and neurochemical profile of L-DOPA following deuterium substitutions in the molecule,Experimental Neurology,2008年,Vol.212, No.2,538-542
【文献】Effects of direct intravitreal dopamine injections on the development of lid-suture induced myopia in rabbits,Graefe's Archive for Clinical and Experimental Ophthalmology,2006年,Vol.244, No.10,1329-1335
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
47/00-47/69
9/00-9/72
45/00
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における後眼部の視覚障害の発生又は進行を阻害するためのドパミン又はその医薬的に許容可能な塩を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物が対象の眼への局所投与のために製剤化される医薬組成物。
【請求項2】
前記医薬組成物がさらに水性担体を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記水性担体が、生理食塩水、水、水性緩衝液、水及び混和性溶媒含む水性溶液、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記医薬組成物がさらに抗酸化剤を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記抗酸化剤が、アスコルビン酸、フェノール酸、ソルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、チオ硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸、亜硝酸ナトリウム、ステアリン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビル、α-チオグリセロール、エリソルビン酸、塩酸システイン、クエン酸、トコフェロール、又はビタミンE、酢酸トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、大豆レシチン、チオグリコール酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、尿酸、メラトニン、チオ尿素、及びそれらの医薬的に許容可能な塩及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記後眼部の視覚障害が、近眼、糖尿病性網膜症と関連した視覚障害、及びパーキンソン病と関連した視覚障害からなる群より選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記後眼部の視覚障害が近眼である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物がさらにドパミン受容体作動薬を含み、前記ドパミン受容体作動薬がレボドパ、キンピロール、アポモルフィン、ロピニロール、プラミペキソール、デクスプラミペキソール、ピリベジル、ロチゴチン、ブロモクリプチン、リスリド、カベルゴリン、2-アミノ-6,7-ジヒドロキシ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、ペルゴリド、Calidopa、ジヒドレキシジン、doxathrine、プロピルノルアポモルフィン、キナゴリド、ロキシンドール、スマニロール、フェノルドパム、エルゴコルニン、1-フェニル-2,3,4,5-テトラヒドロ-(1H)-3-ベンザゼピン-7,8-ジオール、2-(N-フェネチル-N-プロピル)アミノ-5-ヒドロキシテトラリン、ジヒドロエルゴタミン、(1R,3S)-1-(アミノメチル)-3-フェニル-3,4-ジヒドロ-1H-イソクロメン-5,6-ジオール、カルモキシロール、フェノルドパム、及びそれらの医薬的に許容可能な塩及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記医薬組成物がさらにGABA受容体拮抗薬を含み、前記GABA受容体拮抗薬がビククリン、フルマゼニル、ガバジン、フェニレンテトラゾール(phenylenetetrazol)、(1,2,5,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)メチルホスフィン酸、(3-アミノプロピル)(シクロヘキシルメチル)ホスフィン酸、及びそれらの医薬的に許容可能な塩及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物がさらにムスカリン性アセチルコリン受容体拮抗薬を含み、前記ムスカリン性アセチルコリン受容体拮抗薬がアトロピン、ピレンゼピン、ヒンバシン、ヒヨスチン、シクロペントラート、イプラトロピウム、オキシトロピウム、トロピカミド、オキシブチニン、トルテロジン、ジフェンヒドラミン、ジシクロベリン、フラボキサート、チオトロピウム、トリヘキシフェニジル、ソリフェナシン、ダリフェナシン、ベンザトロピン、メベベリン、プロシクリジン、アクリジニウム、及びそれらの医薬的に許容可能な塩及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記医薬組成物がドパミン又はその医薬的に許容可能な塩の角膜上皮を通じる浸透のために製剤化される、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
対象における後眼部の視覚障害の発生又は進行を阻害するための、重水素化したドパミン、又はその医薬的に許容可能な塩を含む医薬組成物であって、前記医薬組成物は、前記対象の眼への局所投与のために製剤化される医薬組成物。
【請求項13】
記重水素化したドパミンがドパミン-1,1,2,2-d[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)エチル-1,1,2,2,d-アミン];2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)エチル-1-ジュウテロ-アミン;2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)エチル-2,2-ジジュウテロ-アミン:又はそれらの医薬的に許容可能な塩である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記重水素化したドパミン、又はその医薬的に許容可能な塩が、式Iの化合物:
【化1】
又はそれらの医薬的に許容可能な塩であって、ここで
、R、R、R、R、R、R、R 10及びR11はH及びDから互いに独立して選択される
こでR~R の少なくとも一つはDである、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記医薬組成物がさらに水性担体を含む、請求項12~1のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記水性担体が、生理食塩水、水、水性緩衝液、水及び混和性溶媒を含む水性溶液、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記組成物がさらに抗酸化剤を含む、請求項12~1のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記抗酸化が、アスコルビン酸、フェノール酸、ソルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、チオ硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸、亜硝酸ナトリウム、ステアリン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビル、α-チオグリセロール、エリソルビン酸、塩酸システイン、クエン酸、トコフェロール、又はビタミンE、酢酸トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、大豆レシチン、チオグリコール酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、尿酸、メラトニン、チオ尿素、及びそれらの医薬的に許容可能な塩、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記後眼部の視覚障害が、近眼、糖尿病性網膜症と関連した視覚障害、及びパーキンソン病と関連した視覚障害からなる群より選択される、請求項12~1のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記後眼部の視覚障害が近眼である、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記医薬組成物がドパミン受容体作動薬をさらに含み、前記ドパミン受容体作動薬がレボドパ、キンピロール、アポモルフィン、ロピニロール、プラミペキソール、デクスプラミペキソール、ピリベジル、ロチゴチン、ブロモクリプチン、リスリド、カベルゴリン、2-アミノ-6,7-ジヒドロキシ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、ペルゴリド、Calidopa、ジヒドレキシジン、doxathrine、プロピルノルアポモルフィン、キナゴリド、ロキシンドール、スマニロール、フェノルドパム、エルゴコルニン、1-フェニル-2,3,4,5-テトラヒドロ-(1H)-3-ベンザゼピン-7,8-ジオール、2-(N-フェネチル-N-プロピル)アミノ-5-ヒドロキシテトラリン、ジヒドロエルゴタミン、(1R,3S)-1-(アミノメチル)-3-フェニル-3,4-ジヒドロ-1H-イソクロメン-5,6-ジオール、カルモキシロール、フェノルドパム、及びそれらの医薬的に許容可能な塩及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項12~20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記医薬組成物がGABA受容体拮抗薬をさらに含み、前記GABA受容体拮抗薬がビククリン、フルマゼニル、ガバジン、フェニレンテトラゾール(phenylenetetrazol)、(1,2,5,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)メチルホスフィン酸、(3-アミノプロピル)(シクロヘキシルメチル)ホスフィン酸、及びそれらの医薬的に許容可能な塩及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項12~21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記医薬組成物がムスカリン性アセチルコリン受容体拮抗薬をさらに含み、前記ムスカリン性アセチルコリン受容体拮抗薬がアトロピン、ピレンゼピン、ヒンバシン、ヒヨスチン、シクロペントラート、イプラトロピウム、オキシトロピウム、トロピカミド、オキシブチニン、トルテロジン、ジフェンヒドラミン、ジシクロベリン、フラボキサート、チオトロピウム、トリヘキシフェニジル、ソリフェナシン、ダリフェナシン、ベンザトロピン、メベベリン、プロシクリジン、アクリジニウム、及びそれらの医薬的に許容可能な塩及びそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項12~22のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記医薬組成物が、重水素化したドパミン、又はその医薬的に許容可能な塩の角膜上皮を通じる浸透のために製剤化される、請求項12~23のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[阻害の方法]
本出願は、2018年9月13日に出願した「阻害の方法」と題されたオーストラリア仮出願第2018903445号に優先権を主張し、その全ての内容がこれによって参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般的に、近眼のような視覚障害の発生又は進行を阻害するための、ドパミン、重水素化したドパミン、重水素化したドパミン誘導体、又はそれらの医薬的に許容可能な塩の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書では、先の出版物(若しくはそれから由来した情報)、又は任意の既知の事柄を参照しているが、その先の出版物(若しくはそれから由来した情報)、又は既知の事柄が、本明細書に関連する試みの範囲における一般的な知識の一部を形成していることを認めたり、承認したり、何らかの形で示唆したりするのものではなく、そうすべきでもない。
【0004】
近視として一般的に知られる近眼は、発生時に眼の(眼軸長の)過度な伸長によってもたらされる視覚障害である。近眼は、視力低下の主な原因であり、世界で最も一般的な眼疾患であり、近眼は10年後までに、世界の人口の3分の1まで影響を及ぼしうるいくつかの予測を有する。有病率が最も高いのは東アジアの都市部であり、多くの地域で約80~90%の学校卒業者が近眼である。
【0005】
近眼の有病率は、明るい屋外で過ごす時間の量と強く関連しているように見える。具体的には、疫学的な研究では、屋外で過ごした時間が、子供の近眼の発生に対する強力な保護因子であることを報告されている。動物実験では、この保護効果が光誘導による眼内のドパミン濃度の上昇に関連されるように見えることを示した。
【0006】
子供たちが明るい屋外で過ごす時間を増やすことを含む、近眼の発生及び進行を減少させる試みがなされている。しかしながら、世界の多くの地域では、地理的条件及び地域の気候の制約により、近眼から保護する十分な強さの光量又は十分な長さの照射時間が妨げられうる。さらに、教育及び学業の進歩を妨げるものとして考えられているので、社会的及び文化的な障壁により、子供たちが屋外で過ごす時間を増やすことを妨げうる。
【0007】
近眼の進行を抑える現在の治療選択肢には、単焦点レンズ、多焦点レンズ、周辺レンズ、及び角膜矯正治療のような光学的なアプローチ;並びにアトロピン及びピレンゼピンのような医薬製剤を含む。光学的なアプローチに関しては、臨床試験からの結果は様々で、大半の光学的なアプローチは、近眼の進行速度に長期間な影響は限定的又は見られないことを示した。また、光学的なアプローチでは、近眼の発生を妨げることを標的とせず、その進行のみを標的にされる。従来、アトロピンのような医薬製剤による治療は、近眼の進行速度を減らすることに最も効果的だった。しかしながら、アトロピンの普及は、治療後のリバウンド効果、並びに短期間及び長期間の重大な有害事象への懸念により妨げられている。
【0008】
後眼部への薬物送達は、眼内に存在する多数の障壁により大きな課題となっている。これは局所的に送達される治療にとって、特に重要であり、ここで局所的に投与される薬剤の5%未満が眼内組織に到達することが推定される(Janoria et al.(2007)Expert Opin Drug Deliv,4(4):371-88;Mantelli et al.(2013)Curr Opin Allergy Clin Immunol,13(5):563-568)。後眼部への薬物の送達のための局所投与による問題は、高い涙液のターンオーバーによる広範な前角膜の薬物ロス、非生産的な吸収、鼻涙管を通じる排水、角膜上皮の不浸透性、一過性の前角膜の滞留時間及び前眼部の酵素による薬物の代謝を含む(Janoria et al.(2007)Expert Opin Drug Deliv,4(4):371-88)。眼内の薬物浸透への主な障壁の一つは、角膜上皮である。その角膜上皮は、血液脳関門に構造的に類似しており、先端面下の細胞をタイトジャンクションが取り囲んでいる(Mantelli et al.(2013)Curr Opin Allergy Clin Immunol,13(5):563-568)。血液脳関門に類似し、角膜上皮内のタイトジャンクションは病原体の侵入及び局所的に投与される薬物の障壁に寄与する(Mantelli et al.(2013)Curr Opin Allergy Clin Immunol,13(5):563-568)。これらの障壁を克服しうる薬物は眼障害の治療法として有利である。
【0009】
近眼のような視覚障害の発生又は進行を阻害するための新たな治療法が求められている。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、ドパミン[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)エチルアミン]又は重水素化したドパミン又はその誘導体が、眼組織に浸透し、網膜を含む後眼部の構造に影響を与えうる発見に部分的に基づいている。ドパミンが血液脳関門を通過できないことを考慮し、ドパミン又はその重水素化した誘導体が、血液脳関門と構造的な類似している角膜上皮を通過できるとは考えられていない。驚くべきことに、本発明者はドパミン及びその重水素化した誘導体が角膜上皮に浸透し、後眼部の構造に影響を与えることができることを発見した。従って、本発明者は、ドパミン、又は重水素化したドパミン又はその誘導体を、対象の眼に局所投与することができ、対象の視覚障害、特に、ドパミン濃度の低下を含む後眼部の視覚障害、例えば、近眼、糖尿病性網膜症と関連した視覚障害、又はパーキンソン病と関連した視覚障害の発生又は進行を阻害することを考えた。
【0011】
本発明の一の側面において、対象の眼にドパミン又はその医薬的に許容可能な塩を含む組成物を局所的に投与することを含む、対象における視覚障害の進行又は発生を阻害するための方法を提供する。ある態様において、その組成物は対象の両目に局所的に投与される。
【0012】
さらなる側面において、対象における視覚障害の発生又は進行を阻害するためのドパミン又はその医薬的に許容可能な塩を含む組成物の使用を提供し、ここで、その組成物は対象の眼に局所的に投与される。
【0013】
本発明のさらに別の側面において、対象における視覚障害の発生又は進行を阻害することにおける使用のためのドパミン又はその医薬的に許容可能な塩を含む組成物を提供し、ここでその組成物は対象の眼への局所的な投与のために製剤化される。
【0014】
また、本発明は、対象における視覚障害の発生又は進行を阻害するための薬剤の製造におけるドパミン又はその医薬的に許容可能な塩を含む組成物の使用を提供し、ここでその組成物は、対象の眼への局所的な投与のために製剤化される。
【0015】
本発明の別の側面において、対象の眼に、重水素化したドパミン若しくは重水素化したドパミン誘導体、又はそれらの医薬的に許容可能な塩を含む組成物を局所的に投与することを含む、対象における視覚障害の発生又は進行を阻害するための方法を提供する。ある態様において、その組成物はその対象の両目に投与される。
【0016】
さらなる側面において、対象における視覚障害の発生又は進行を阻害するための重水素化したドパミン若しくは重水素化したドパミン誘導体、又はそれらの医薬的に許容可能な塩を含む組成物の使用を提供し、ここで、その組成物は対象の眼に局所的に投与される。
【0017】
別の態様において、対象の視覚障害の発生又は進行を阻害することにおける使用のための重水素化したドパミン若しくは重水素化したドパミン誘導体、又はそれらの医薬的に許容可能な塩を含む組成物を提供し、ここで、その組成物は対象の眼に局所的な投与のために製剤化される。
【0018】
さらに別の側面において、対象における視覚障害の発生又は進行を阻害するための薬剤の製造における、重水素化したドパミン若しくは重水素化したドパミン誘導体、又はそれらの医薬的に許容可能な塩を含む組成物の使用を提供し、ここで、その組成物は対象の眼に局所的な投与のために製剤化される。
【0019】
上記の側面の任意の一の特定の態様において、その重水素化したドパミン若しくは重水素化した誘導体、又はそれらの医薬的に許容可能な塩は式Iの化合物であって、:
【化1】
又はそれらの医薬的に許容可能な塩は、ここで、
、R、R、R、R、R、R、R、R10及びR11が、H及びDから互いに独立して選択され;
はH、D及びC(O)OR12から選択され;
12はH及びDから選択され:そして
ここでRからR12の少なくとも一つはDである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】未治療、同齢のコントロールと比較して、ディフューザー装着への反応(FDM)における、ヒヨコの眼の平均眼軸長(mm)、そしてドパミン(DA)組成物の硝子体内の注射(注射)及び局所的な投与(局所)を示す。エラーバーは平均値の標準誤差を示す。
【0021】
図2】未治療、同齢のコントロールと比較して、ディフューザー装着への反応(FDM)における、ヒヨコの眼の平均眼軸長(mm)、そしてドパミン(DA)、アトロピン、ピレンゼピン、TPMPA、及びドパミンとアトロピン、ピレンゼピン、及びTPMPAとの組み合わせの硝子体内の注射(注射)を示す。エラーバーは平均値の標準誤差を示す。
【0022】
図3】未治療、同齢のコントロールと比較して、ディフューザー装着への反応(FDM)における、ヒヨコの眼の平均眼軸長(mm)、そしてドパミン(DA)、アトロピン、TPMPA、及びドパミンとアトロピン、及びTPMPAとの組み合わせの局所的な投与を示す。エラーバーは平均値の標準誤差を示す。
【0023】
図4】未治療、同齢のコントロールと比較して、ディフューザー装着への反応における、ヒヨコの眼の平均眼軸長(mm)、そしてドパミン-1,1,2,2-d(DDA)組成物の硝子体内の注射(注射)及び局所的な投与(局所)を示す。エラーバーは平均値の標準誤差を示す。
【0024】
図5】未治療、同齢のコントロールと比較して、ディフューザー装着への反応(FDM)における、ヒヨコの眼の平均眼軸長(mm)、そしてドパミン-1,1,2,2-d(DDA)、アトロピン、TPMPA、及びドパミン-1,1,2,2-dとアトロピン、及びTPMPAとの組み合わせの硝子体内の注射を示す。エラーバーは平均値の標準誤差を示す。
【0025】
図6】未治療、同齢のコントロールと比較して、ディフューザー装着への反応(FDM)における、ヒヨコの眼の平均眼軸長(mm)、そしてドパミン-1,1,2,2-d(DDA)、アトロピン、TPMPA、及びドパミン-1,1,2,2-dとアトロピン、及びTPMPAとの組み合わせの局所的な投与を示す。エラーバーは平均値の標準誤差を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
1.定義
特に断りがない限り、本明細書で用いられる技術的及び科学的用語は、本発明に属する当該技術分野の当業者により一般的に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様又は同等の任意の方法及び材料を本発明の実行又は試験において用いることができ、好ましい方法及び材料を記載する。本発明の目的のための、次の用語は以下に定義される。
【0027】
本明細書で用いられる「a」及び「an」という冠詞は、一つ又は一以上の(すなわち少なくとも一つの)冠詞の文法的な目的語を意味する。例えば、「一の要素(an element)」は、一つの要素又は一以上の要素を意味する。
【0028】
「約」に関しては、参照の量、濃度、値、数、頻度、割合、寸法、大きさ、量、重量又は長さに対して、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1%程度変動する量、濃度、値、数、頻度、割合、寸法、大きさ、量、重量、又は長さを意味する。
【0029】
本明細書に用いられるように、「及び/又は」という用語は、一以上の関連したリスト化した項目の任意及び全てのありうる組み合わせを意味し、及び代替(又は)において解釈される場合に組み合わせの欠如を意味し、包含する。
【0030】
本明細書に用いられる「担体」という用語は、液体の希釈剤を意味する。「医薬的に許容可能な担体」に関しては、生物学的でない材料、又は所望されない他のものからなる医薬的なビヒクルを意味し、すなわち、その材料は、任意の又は実質的な有害反応をもたらすことなく、選択された活性薬剤と共に対象に投与されうる。担体は賦形剤及び他の添加物、希釈剤、界面活性剤、着色剤、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤、保存剤等を含みうる。特定の態様において、その担体は水性担体である。本明細書に用いられる「水性担体」という用語は、液体の水性希釈剤を意味し、ここでその水性担体は、これらに限定されないが、水、生理食塩水、水性緩衝剤及び水溶性又は水混和性の添加剤、例えばグルコース又はグリセロールを含む。また、その水性担体は水中油型乳剤の形態でありうる。
【0031】
以下の本明細書及び本特許請求を通じて、文脈上別段の必要がなければ、「含む(comprise)」という用語、及び「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」のような変化は、記載された整数若しくはステップ又は整数又はステップの群の包含を意味するが、他の整数若しくはステップ又は整数若しくはステップの群を除外することを意味しないと理解されるだろう。それゆえ、「含んでいる」等の用語の使用は、記載されている整数が必要とされる又は必須であるが、他の整数は任意であり、存在しうる又はしえないことを示す。「からなる」に関しては、「からなる」という語句に続くものを何でも含み、かつそれらに限定されることを意味する。それゆえ、「からなる」という語句は、記載される要素が必要とされる又は必須であり、かつ他の要素がありえないことを示す。「本質的にからなる」に関しては、その語句の後に記載されている任意の要素を含んでいることを意味し、かつ記載される要素について本開示において指定されている活性又は作用に干渉しない又は寄与しない他の要素に限定される。それゆえ、「本質的にからなる」という語句は、記載されている要素が必要とされる又は必須であり、記載される要素の活性又は作用に影響を与えるかどうかによって存在しうる又は存在しえないことを示している。
【0032】
本明細書に用いられるように、「状態」という用語は、身体の全体又は身体の一部の物理学的な状態の異常を意味する。
【0033】
「重水素化したドパミン」という用語は本明細書で用いられ、水素原子の場所に少なくとも一つの重水素化した原子を含むドパミンを意味する。例えば、「重水素化したドパミン」は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11の重水素原子を含むドパミンを意味する。
【0034】
「重水素化したドパミン誘導体」に関しては、水素原子の場所に少なくとも一つの重水素化した原子を含むドパミン誘導体を意味する。例えば、「重水素化したドパミン誘導体」は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12の重水素原子を含むドパミン誘導体を意味しうる。「ドパミン誘導体」に関しては、例えば、他の化学的部位と共役する又は複合化することによって、修飾によりドパミンから由来した分子を意味する。好ましい態様において、そのドパミン誘導体はレボドパである。
【0035】
本明細書に用いられるように、「塩」及び「プロドラッグ」という用語は、レシピエントへの投与時に、任意の医薬的に許容可能な塩、エステル、水和物、溶媒和化合物、又は任意の他の化合物を含み、所望される化合物、又はその活性代謝物又はその残留物を(直接的に又は間接的に)提供することができる。適当な医薬的に許容可能な塩は、医薬的に許容可能な無機酸、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、ホウ酸、スルファミン酸、及び臭化水素酸、又は医薬的に許容可能な有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、酒石酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フマル酸、クエン酸、乳酸、ムチン酸、グルコン酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、サリチル酸、スルファニル酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、エデト酸、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ラウリン酸、パントテン酸、タンニン酸、アスコルビン酸及びバレリアン酸、の塩を含む。塩基性塩は、これらに限定されないが、医薬的に許容可能なカチオン、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム及びアルキルアンモニウムによって形成されるそれらを含む。また、塩基性の硝酸を含む群は、低級ハロゲン化アルキル、例えば、塩化、臭化、及びヨウ化した、メチル、エチル、プロピル及びブチル;ジエチル硫酸塩、例えばメチル、エチル及びジエチル硫酸塩等のような薬物によって四級化されうる。しかしながら、また、医薬的に許容可能でない塩は、これらが医薬的に許容可能な塩の調製において有用でありうるので、本発明の範囲内に入ることが分かるだろう。塩及びプロドラッグの調製は当業者に既知の方法によって実行されうる。例えば、金属塩は金属水酸化物との所望される化合物の反応によって調製されうる。酸性塩は所望される化合物によって適当な酸を反応させることによって調製されうる。
【0036】
本明細書に用いられるように、「可溶化した形態」という語句は、化合物の、例えばドパミン、重水素化したドパミン又は重水素化したドパミン誘導体が、その化合物の均一に分布した溶液が、実質的に遊離の固体化合物を含まずに得られるように、液体において溶解される形態を意味する。ある態様において、その液体は、本明細書に記載されるように水性担体である。
【0037】
本明細書に用いられる「対象」という用語は、治療又は予防が所望される脊椎動物の対象、特に哺乳動物又はトリの対象を意味する。適当な対象は、これらに限定されないが、霊長類;トリ;家畜動物、例えばヒツジ、ウシ、ウマ、シカ、ロバ及びブタ;実験動物、例えばウサギ、マウス、ラット、モルモット及びハムスター;伴侶動物、例えばネコ及びイヌ;並びに飼育下の野生動物、例えば、キツネ、シカ、及びディンゴを含む。特定の態様において、その対象はヒトである。ある態様において、その対象は例えば、約2歳から約20歳までのヒトの子供又は若年成人である。しかしながら、前述の用語は症状が存在することを意味するものではないことを理解されるだろう。
【0038】
本明細書に用いられるように、「視覚障害」の語句は、対象の視覚を変える状態を意味する。特定の態様において、そのような状態は「視力」の低下に関連され、典型的に視覚の鋭さ又は鮮明さを弱めること又は減少することに関連される。それゆえ、「視力」の低下は、眼内の網膜の焦点の鋭さ及び脳の解釈能力の感度に依存する、形態視の鋭さ又は鮮明さの任意の測定可能な形で弱めること又は減少することを典型的に意味する。ある態様において、視力はスネレン指標(例えば20/20)を意味する。その視覚障害は疾病、障害又は状態でありうる。
【0039】
本明細書に記載される各態様は、特に別に述べられない限り、各及び全態様に、変更すべきところは変更して適用されるものとする。
【0040】
2.略語
次の略語は本出願を通じて使用される:
D=重水素
【0041】
3.組成物
本発明は、ドパミン[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)エチルアミン]又は重水素化したドパミン誘導体又はそのアナログが眼組織に浸透することができ、そして網膜を含む、後眼部の構造に影響を与えうる発見に部分的に基づいている。従って、本発明は、ドパミン又は重水素化したドパミン又は重水素化したドパミンの誘導体を含む組成物が局所的に投与されることができ、対象、特に減少したドパミン濃度、例えば近眼、糖尿病性網膜症に関連した視覚障害、又はパーキンソン病に関連した視覚障害を含む後眼部における視覚障害の発生又は進行を阻害することを考え出した。
【0042】
本発明の一の側面において、その組成物はドパミン又はその医薬的に許容可能な塩を含む。好ましい態様において、そのような組成物は、眼、例えば点眼の形態のように局所投与のために製剤化される。特定の態様において、その組成物はドパミン又はその医薬的に許容可能な塩及び医薬的に許容可能な担体を含む。ある態様において、その組成物はドパミン又はその医薬的に許容可能な塩、医薬的に許容可能な担体及び抗酸化剤を含む。
【0043】
本発明の別の側面において、その組成物は重水素化したドパミン又は重水素化したドパミン誘導体、又はその医薬的に許容可能な塩を含む。そのような組成物は対象の眼へ、例えば眼への局所投与、例えば点眼の形態において、又は眼内の直接注射のような局所投与のために製剤化されうる。特定の態様において、その組成物は重水素化したドパミン又は重水素化したドパミン誘導体、又はその医薬的に許容可能な塩、及び医薬的に許容可能な担体を含む。ある態様において、その組成物は重水素化したドパミン又は重水素化したドパミン誘導体、又はその医薬的に許容可能な塩、医薬的に許容可能な担体及び抗酸化剤を含む。
【0044】
ある態様において、その組成物は重水素化したドパミン又はその医薬的に許容可能な塩を含む。その重水素化したドパミンは、水素の場所に一以上の重水素原子を含みうる。例えば、重水素化したドパミンは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11の重水素原子;特に2、3又は4の重水素原子;とりわけ4の重水素原子を含みうる。特定の態様において、その重水素化したドパミンは、ドパミン-1,1,2,2-d[2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)エチル-1,1,2,2,d-アミン];2‐(3,4-ジヒドロキシフェニル)エチル-1-ジジュウテロ‐アミン];2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)エチル-2,2‐ジジュウテロ-アミン;又はそれらの医薬的に許容可能な塩;特にドパミン-1,1,2,2-d塩酸塩である。
【0045】
ある態様において、その組成物は重水素化したドパミン誘導体又はその医薬的に許容可能な塩を含む。その重水素化したドパミン誘導体は水素原子の場所に一以上の重水素原子を含みうる。例えば、その重水素化したドパミン誘導体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12の重水素原子;特に2又は3の重水素原子;とりわけ3の重水素原子を含みうる。特定の態様において、その重水素化したドパミン誘導体は重水素化したレボドパ又はその医薬的に許容可能な塩である。その重水素化したレボドパは、これらに限定されないが、2-アミノ-2-ジュウテロ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸;2-アミノ-2,3-ジジュウテロ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸;2-アミノ-2,3,3-トリジュウテロ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸;2-アミノ-3,3-ジジュウテロ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸;2-アミノ-3,3-ジジュウテロ-3-(3,4-ジジュウテロキシフェニル)プロピオン酸;2-アミノ-3,3-ジジュウテロ-3-(3,4-ジジュウテロキシフェニル)プロピオン酸;2-アミノ-2-ジュウテロ-3-(2,3,6-トリジュウテロ-4,5-ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸;2-アミノ-2,3-ジジュウテロ-3-(2,3,6-トリジュウテロ-4,5-ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸);2-アミノ-2,3,3-トリジュウテロ-3-(2,3,6-トリジュウテロ-4,5-ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸;2-アミノ-2,3,3-トリジュウテロ-3-(2,3,6-トリジュウテロ-4,5-ジジュウテロジヒドロキシフェニル)プロピオン酸;又はそれらの医薬的に許容可能な塩;特に2-アミノ-2,3-ジジュウテロ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸;2-アミノ-2,3,3-トリジュウテロ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸;又はそれらの医薬的に許容可能な塩でありうる。ある態様において、その重水素化したドパミン誘導体又はその医薬的に許容可能な塩は、WO 2004/056724 A1、WO 2007/093450 A1、及びWO2014/122184 A1において開示されている化合物から選択され、その全体の内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0046】
特定の態様において、その重水素化したドパミン若しくは重水素化したドパミン誘導体、又はそれらの医薬的に許容可能な塩は式Iの化合物であって:
【化2】
又はそれらの医薬的に許容可能な塩であって、ここで
、R、R、R、R、R、R、R、R10及びR11がH及びDより互いに独立して選択され;
はH、D及びC(O)OR12より選択され;
12はH及びDより選択され;かつ
ここで少なくとも一つのR~R12がDである。
【0047】
ある態様において、R及びRはDである。ある態様において、R、R、及びRはDである。ある態様において、R、R、R及びRはDである。
【0048】
ある態様において、RはH又はDであり;好ましくはDである。ある態様において、R、R、R及びRはDである。ある態様において、R、R、R、R、R、R10及びR11はHである。好ましい態様において、R、R、R及びRはDであり;かつR、R、R、R、R、R10及びR11はHである。
【0049】
代替の実施形態において、RはC(O)OR12である。好ましくは、R12はHである。
【0050】
ある態様において、RはC(O)OR12であり;R及びRはDであり;かつR、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12はHである。
【0051】
ある態様において、RはC(O)OR12であり;R、R、及びRはDであり;かつR、R、R、R、R、R10、R11、及びR12はHである。
【0052】
ある態様において、RはC(O)OR12であり;RはDであり;かつR、R、R、R、R、R10、R11、及びR12はHである。
【0053】
ある態様において、RはC(O)OR12であり;R及びRはDであり;かつR、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12はHである。
【0054】
ある態様において、RはC(O)OR12であり;R、R及びRはDであり;かつR、R、R、R、R、R10、R11、及びR12はHである。
【0055】
ある態様において、RはC(O)OR12であり;R及びRはDであり;かつR、R、R、R、R、R、R10、R11、及びR12はHである。
【0056】
ある態様において、RはC(O)OR12であり;R、R、R及びRはDであり;かつR、R、R、R、R10、R11、及びR12はHである。
【0057】
ある態様において、RはC(O)OR12であり;R、R、R及びRはDであり;かつR、R、R、R、R10、R11、及びR12はHである。
【0058】
ある態様において、RはC(O)OR12であり;R、R、R、R及びRはDであり;かつR、R、R、R10、R11、及びR12はHである。
【0059】
ある態様において、RはC(O)OR12であり;R、R、R、R、R及びRはDであり;かつR、R、R10、R11、及びR12はHである。
【0060】
ある態様において、RはC(O)OR12であり;R、R、R、R、R、R、R及びRはDであり;かつR10、R11、及びR12はHである。
【0061】
本発明では、重水素濃縮物の様々な濃度を考慮したが、Dによって占有された場所では約80%、85%、90%、95%、98%又は100%以上(及びその間の全ての整数)の重水素濃縮物を有し、特に約98%以上を有する。重水素濃縮物の濃度は、質量分析器及び核磁気共鳴分光法を含む当業者に既知の慣習の分析方法を用いて決定されうる。
【0062】
特定の態様において、式Iの化合物は、2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)エチル-1,1,2,2,d-アミン(ドパミン-1,1,2,2-d);2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)エチル-1-ジュウテロ-アミン;2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)エチル-2,2-ジジュウテロ-アミン;2-アミノ-2-ジュウテロ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸;2-アミノ-2,3-ジジュウテロ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸;2-アミノ-2,3,3-トリジュウテロ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸;2-アミノ-3,3-ジジュウテロ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸;2-アミノ-3,3-ジジュウテロ-3-(3,4-ジジュウテロキシフェニル)プロピオン酸;2-アミノ-2-ジュウテロ-3-(2,3,6-トリジュウテロ-4,5-ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸;2-アミノ-2,3-ジジュウテロ-3-(2,3,6-トリジュウテロ-4,5-ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸;2-アミノ-2,3,3-トリジュウテロ-3-(2,3,6-トリジュウテロ-4,5-ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸;2-アミノ-2,3,3-トリジュウテロ-3-(2,3,6-トリジュウテロ-4,5-ジジュウテロキシフェニル)プロピオン酸;及びそれらの医薬的に許容可能な塩;特に2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)エチル-1,1,2,2,d-アミン;2-アミノ-2,3-ジジュウテロ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸;2-アミノ-2,3,3-トリジュウテロ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロピオン酸;及びそれらの医薬的に許容可能な塩;とりわけ2-(3,4-ジヒドロキシフェニル)エチル-1,1,2,2,d-アミン及びその医薬的に許容可能な塩からなる群より選択される。
【0063】
組成物中のドパミン、重水素化したドパミン、重水素化したドパミン誘導体又はそれらの医薬的に許容可能な塩の量は、治療される視覚障害、体重及び年齢のような対象の特徴、そして投与経路に依存する。ある態様において、組成物中のドパミン、重水素化したドパミン、重水素化したドパミン誘導体又はそれらの医薬的に許容可能な塩は、組成物の0.0001重量%から60重量%、0.001重量%から50重量%、0.01重量%から40重量%、0.02重量%から30重量%、0.03重量%から25重量%、0.04重量%から20重量%、0.05重量%から15重量%、0.06重量%から10重量%、0.065重量%から9重量%、0.07重量%から8重量%、0.075重量%から7重量%、0.08重量%から6重量%、0.085重量%から5重量%、0.09重量%から4重量%、0.095重量%から3重量%、0.1重量%から2重量%、0.105重量%から1重量%の、(及びその間の全ての整数の)範囲の:特に、組成物の約0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%又は1重量%の量である。
【0064】
好ましい態様において、ドパミン、重水素化したドパミン、重水素化したドパミン誘導体又はそれらの医薬的に許容可能な塩は組成物において可溶化した形態である。当業者は、化合物の溶解度を決定するための当該分野に通常用いられる手順、例えば、Goodwin(2006)Drug Discovery Today;Technologies,3(1):67-71;Jouyban(2010)Handbook of Solubility Data for Pharmaceuticals(CRC Press);又はHefter and Tomkins(2003)The Experimental Determination of Solubilites(John Wiley & Sons,Ltd)に記載される手順;を知っている。例えば、化合物の溶解度はUV分光又は高速液体クロマトグラフィーを用いて分析されうる。
【0065】
ある態様において、ドパミンは誘導体の形態、例えば医薬的に許容可能な塩及び/又はその溶媒和物、又はそのプロドラッグでありうる。ある態様において、ドパミンは水和物の形態である。ある態様において、ドパミンの医薬的に許容可能な塩は例えば、Sigma-Aldrich Co.LLC.から利用可能であるような、塩化物塩である。ある態様において、ドパミンのプロドラッグは、エステル、及び/又はアミドのプロドラッグである。ある態様において、ドパミンのプロドラッグは、Yoshikawa et al.(1995)Hypertens Res,18(Suppl 1):S211-S213)において記載されるように、ドカルパミン(N-(N-アセチル-L-メチオニル)-3,4-ビス(エトキシカルボニル)ドパミン);Haddad et al.(2018)Molecules,23(1):40(doi:10.3390/molecules23010040)において記載される化合物、例えばエステルプロドラッグ、例えば、Casagrande and Ferrari(1973)Farmaco Sci,28(2):143-148,及びBorgman et al.(1973)J Med Chem,16(6):630-633に記載されるドパミンの脂溶性の3,4-O-ジエステルプロドラッグ;Peura et al.(2013)Pharm Res,30:2523-2537,Tutone et al.(2016)Eur J Med Chem,124:435-444、若しくは米国特許番号第4,064,235号に記載されるアミドプロドラッグ;又は米国特許番号第4,311,706号に記載される化合物であり;それらの全体の内容は参照によって明細書に組み込まれる。
【0066】
ある態様において、重水素化したドパミン又は重水素化したドパミン誘導体は誘導体の形態、例えば、医薬的に許容可能な塩及び/若しくはその溶媒和物、又はそれらのプロドラッグでありうる。ある態様において、その重水素化したドパミン、重水素化したドパミン誘導体又はアナログ又はそれらの医薬的に許容可能な塩は水和物の形態である。ある態様において、重水素化したドパミン又は重水素化したドパミン誘導体の医薬的に許容可能な塩は塩化物塩、例えば、Sigma-Aldrich Co.LLCから利用可能なドパミン-1,1,2,2-d塩酸塩、又は米国2007/0027216 A1に記載されているその塩の重水素化した誘導体であって、その内容はその全体において参照によって組み込まれる。ある態様において、そのプロドラッグはエステル、及び/又はアミドプロドラッグである。ある態様において、そのプロドラッグは、重水素化した化合物のエステルプロドラッグ、例えば米国2009/0156679 A1に記載されている(2R)-2-フェニルカルボキシルプロピル(2S)-2-アミノ-3-(3,4-ジヒドロキシフェニル)プロパン酸メシル酸の重水素化した誘導体、米国2014/0088192 A1に記載されているレボドパメチルエステルの重水素化した誘導体又はレボドパメチルエステル、LeWitt et al.(2012)Clin Neuropharmacol,35:103-110に記載されているXP21279の重水素化した誘導体、及びHaddad et al.(2018)Molecules,23(1):40(doi:10.3390/molecules23010040)に記載されているエステルプロドラッグの重水素化した誘導体、及びCasagrande and Ferrari(1973)Farmaco Sci,28(2):143-148、及びBorgman et al.(1973)J Med Chem,16(6):630-633に記載されているドパミンの脂溶性の3,4-O-ジエステルプロドラッグの重水素化した誘導体;Yoshikawa et al.(1995)Hypertens Res,18(Suppl 1);S211-S213)に記載されているドカルパミン(N-(N-アセチル-L-メチオニル))-3,4-ビス(エトキシカルボニル)ドパミン;又は重水素化した化合物のアミドプロドラッグ、例えば、米国2014/0088192 A1に記載されているレボドパアミド、レボドパカルボキサミド、若しくはレボドパスルホンアミド、Haddad et al.(2018)Molecules,23(1):40(doi:10.3390/molecules23010040)に記載されているアミドプロドラッグの重水素化した誘導体、Wang et al.(2013)J Food Drug Anal,21:136-141,Zhou et al.(2013)Bioorganic Med Chem Lett,23:5279-5282及びZhou et al.(2010)Eur J Med Chem,45:4035-4042に記載されているアミノ酸プロドラッグの重水素化した誘導体、Atlas et al.(2016)CNS Neurosci Ther,22:461-467に記載されているアミドプロドラッグの重水素化した誘導体、Peura et al.(2013)Pharm Res,30:2523-2537に記載されているアミドプロドラッグの重水素化した誘導体、Tutone et al.(2016)Eur J Med Chem,124:435-444に記載されているアミドプロドラッグの重水素化した誘導体、米国特許番号第4,064,235号に記載されているアミドプロドラッグの誘導体;WO 2016/065019に記載されているリン酸プロドラッグの重水素誘導体;米国特許番号第4,311,706号に記載されている化合物の重水素化した誘導体であり;それらの全体の内容は参照によって本明細書に取り込まれる。
【0067】
ある態様において、さらにその組成物は抗酸化物である。その抗酸化物は本発明の組成物の任意の成分、特にドパミン、重水素化したドパミン、重水素化したドパミン誘導体又はそれらの医薬的に許容可能な塩の酸化を減速する、阻害する、防ぐ任意の化合物でありうる。適当な抗酸化物は、これらに限定されないが、アスコルビン酸若しくはビタミンC、フェノール酸、ソルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、二亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、亜硝酸ナトリウム、ステアリン酸アスコルビル、パルミチン酸アスコルビル、α-チオグリセロール、エリソルビン酸、塩酸システイン、クエン酸、トコフェロール若しくはビタミンE、酢酸トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、大豆レチシン、チオグリコール酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、尿酸、メラトニン、チオ尿素、及びそれらの医薬的に許容可能な塩を含む。ある態様において、抗酸化物は、アスコルビン酸又はその塩である。
【0068】
前記抗酸化物は、本発明の任意の組成物の成分、特にドパミン、重水素化したドパミン、重水素化したドパミン誘導体又はそれらの医薬的に許容可能な塩の酸化を実質的に減速する、阻害する、又は妨げる適当量において存在しうる。例えば、その抗酸化物は、その組成物の0.01重量%から10重量%、0.01重量%から5重量%、0.03重量%から4重量%、0.05重量%から3重量%、0.07重量%から2重量%、0.09重量%から1重量%又は0.1重量%から0.5重量%の範囲内の量において、特にその組成物の約0.1重量%の量においてありうる。
【0069】
ある態様において、さらにその組成物は医薬的に許容可能な担体を含む。適当な医薬的に許容可能な担体は、これらに限定されないが、水性担体、オイル、脂肪酸、ペルフルオロカーボンのようなシリコン液体担体、米国特許番号第6,458,376号に記載されるようなフッ化した液体担体、及びそれらの組み合わせを含む。
【0070】
ある態様において、本発明の組成物はオイルを含む。適当なオイルは、これらに限定されないが、アーモンドオイル;ヒマシ油;鉱油;オリーブ油;ピーナッツ油;ココナツオイル;大豆油;コーンオイル;アニス油;丁子油;カッシア油;桂皮油;落花生油;トウモロコシ油;カラウェー油;ローズマリー油;ペパーミント油;ユーカリ油;種油例えば菜種油、綿実油、亜麻仁油、サフラワー油、ごま油、又はひまわり油;シリコン油;又はそれらの組み合わせを含む。ある態様において、そのオイルは、任意に界面活性剤、及び水性担体を有する、水中油型乳剤の形態における組成物に含まれうる。そのオイルはその組成物の約0.1重量%から20重量%の範囲内の量においてありうる。
【0071】
ある態様において、その担体は水性担体である。その水性担体は好ましくは、医薬的に許容可能な水性担体である。当業者に周知の様々な医薬的に許容可能な水性担体を用いうる。例えば、その水性担体は、これらに限定されないが、生理食塩水、水、水性緩衝剤、水及び混和性溶媒を含む水性溶液、及びそれらの組み合わせから選択されうる。ある態様において、その水性担体は生理食塩水である。生理食塩水が用いられる場合に、好ましくは投与部位、例えば眼について等張である。例えば、ある態様において、その生理食塩水は0.15重量%から8重量%の塩化ナトリウム;特に0.18重量%から7重量%、0.22重量%から5重量%又は0.45重量%から3重量%の塩化ナトリウム;より好ましくは0.5重量%から2重量%又は0.65重量%から1.5重量%の塩化ナトリウム、より好ましくは約0.9重量%の塩化ナトリウムを含む。
【0072】
ある態様において、その水性担体が等張でない、例えば水の場合に、その組成物は等張剤を含みうる。任意の当業者に周知の医薬的に許容可能な等張剤を用いうる。適当な等張剤は、これらに限定されないが、ホウ酸、リン酸ナトリウム緩衝剤、塩化ナトリウム、グルコース、トレハロース、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ポリプロピレングリコール、グリセロール、マンニトール、又はそれらの塩若しくはそれらの混合物を含む。その等張剤は、投与部位、例えば眼に等張性を提供する量、例えば0.02重量%から15重量%の範囲において組成物中に存在しうる。
【0073】
ある態様において、その担体は緩衝剤であり、ここで、その緩衝剤は4から8、5から7、5.5から6.5の範囲内の、又は約5.5、6.0若しくは6.5のpHを維持する。適当な緩衝剤は、これらに限定されないが、酢酸、クエン酸、二亜硫酸ナトリウム、ヒスチジン、重曹、水酸化ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂、アルカリ金属リン酸、リン酸又はクエン酸緩衝剤、又はそれらの組み合わせを含む。その緩衝剤は所望されるpHを維持する適当な量において組成物中に存在しうる。
【0074】
ある態様において、組成物のpHは4から8、5から7、5.5から6.5の範囲内、又は約5.5、6.0又は6.5である。
【0075】
ある態様において、特に、重水素化したドパミン誘導体が重水素化したレボドパである(すなわち、式Iの化合物におけるRがC(O)OR12である)又はその医薬的に許容可能な塩である場合に、さらにその組成物は芳香族のL-アミノ酸デカルボキシラーゼの阻害剤を含む。芳香族のL-アミノ酸デカルボキシラーゼの適当な阻害剤は、これらに限定されないが、カルビドパ、ベンセラジド、メチルドーパ、又はそれらの組み合わせを含む。ある態様において、芳香族のL-アミノ酸デカルボキシラーゼの阻害剤はカルビドパである。
【0076】
本発明の組成物中の芳香族のL-アミノ酸デカルボキシラーゼの阻害剤の量は、試験される条件、その組成物の投与経路、及びその組成物中の重水素化したレボドパの量に依存するだろう。芳香族のL-アミノ酸デカルボキシラーゼの阻害剤は、重水素化したレボドパ又はその医薬的に許容可能な塩の脱炭酸を実質的に阻害する十分な量において存在すると考えられる。ある態様において、重水素化したレボドパ又はその医薬的に許容される塩と芳香族のL-アミノ酸デカルボキシラーゼの阻害剤との比は、20:1から1:1、15:1から1:1、10:1から1:1、9:1から1:1、8:1から1:1、7:1から1:1、6:1から2:1、又は5:1から3:1の範囲内である。ある態様において、重水素化したレボドパ又はその医薬的に許容可能な塩と芳香族のL-アミノ酸デカルボキシラーゼの阻害剤との比は約4:1である。
【0077】
ある態様において、組成物中の芳香族のL-アミノ酸デカルボキシラーゼの阻害剤は、組成物中の0.0005重量%から30重量%、0.0025重量%から15重量%、0.005重量%から12.5重量%、0.0075重量%から10重量%、0.01重量%から7.5重量%、0.0125重量%から5重量%、0.15重量%から2.5重量%、0.0163重量%から2.25重量%、0.0175重量%から2重量%、0.0188重量%から1.75重量%、0.02重量%から1.5重量%、0.0213重量%から1.25重量%、0.0225重量%から1重量%、0.0238重量%から0.75重量%、0.025重量%から0.5重量%、0.0263重量%から0.25重量%の範囲内の量(及びその間の全ての数):特にその組成物の約0.025重量%、0.03重量%、0.035重量%、0.04重量%、0.045重量%、0.05重量%、0.055重量%、0.06重量%、0.065重量%、0.07重量%、0.075重量%、0.08重量%、0.085重量%、0.09重量%、0.095重量%、0.1重量%、0.125重量%、0.15重量%、0.175重量%、0.2重量%、0.225重量%又は0.25重量%である。
【0078】
また、その組成物は一以上の補助的な医薬的に活性な薬剤と別々に、同時に又は連続して投与されうる。ある態様において、その補助的な医薬的に活性な薬剤は、ドパミン作動性のシステムの活性を増加しうる。例示的な補助的な医薬的に活性な薬剤は、これらに限定されないが、ドパミン受容体作動薬、γ-アミノ酪酸(GABA)受容体拮抗薬及び/又はムスカリン性アセチルコリン受容体拮抗薬を含む。ある態様において、その医薬的に活性な薬剤は、視覚障害、特に眼内の減少したドパミン濃度を含む視覚障害、例えば近眼の発生又は進行を阻害するために用いられる薬剤である。
【0079】
ある態様において、本発明の組成物はさらにドパミン受容体作動薬を含む。そのドパミン受容体作動薬は、これらに限定されないが、D様(D及びD受容体)並びにD様(D、D及びD受容体)受容体ファミリーからの任意の受容体サブタイプ、並びにドパミン受容体ヘテロダイマーを含むドパミン受容体サブタイプでアゴニスト活性を有しうる。適当なドパミン受容体作動薬は、これらに限定されないが、キンピロール、アポモルフィン、ロピニロール、プラミペキソール、デスクプラミペキソール、ピリベジル、ロチゴチン、ブロモクリプリン、リスリド、カベルゴリン、2-アミノ-6,7-ジヒドロキシ-1,2,3,4-テトラリン(ADTN)、ペルゴリド、Calidopa、ジヒドレキシジン、doxathrine、プロピルノルアポモルフィン、キナゴリド、ロキシンドール、スマニロール、フェノルドパム、エルゴコルニン、(またSKF-38393として知られる)1-フェニル-2,3,4,5-テトラヒドロ-(1H)-3-ベンザゼピン-7,8-ジオール、(またN-0434として知られる)2-(N-フェネチル-N-プロピル)アミノ-5-ヒドロキシテトラリン、ジヒドロエルゴタミン、(またA-68930として知られる)(1R,3S)-1-(アミノメチル)-3-フェニル-3,4-ジヒドロ-1H-イソクロメン-5,6-ジオール、カルモキシロール、フェノルドパム、又はそれらの塩若しくはそれらの組み合わせを含む。
【0080】
その組成物内のドパミン受容体作動薬の量は、治療される条件及び投与経路に依存する。ある態様において、組成物中のドパミン受容体作動薬は、その組成物の0.01重量%から20重量%、0.01重量%から10重量%、0.01重量%から5重量%、0.03重量%から3重量%、0.033重量%から2.7重量%、0.038重量%から2.4重量%、0.043重量%から2.1重量%、0.05重量%から1.8重量%、0.06重量%から1.5重量%、0.075重量%から1.2重量%、0.1重量%から0.9重量%、又は0.15重量%から0.6重量%の範囲内(及びそれらの間の全ての整数);特にその組成物の約0.2重量%、0.21重量%、0.22重量%、0.23重量%、0.24重量%、0.25重量%、0.26重量%、0.27重量%、0.28重量%、0.29重量%、0.3重量%、0.31重量%、0.32重量%、0.33重量%、0.34重量%、0.35重量%、0.36重量%、0.37重量%、0.38重量%、0.39重量%、又は0.4重量%の量である。
【0081】
ある態様において、本発明の組成物はさらにGABA受容体拮抗薬を含む。そのGABA受容体拮抗薬は、これらに限定されないが、GABA、GABA及び/又はGABA-rho(以前はGABA)受容体を含む任意のGABA受容体サブタイプでアンタゴニスト活性を有しうる。適当なGABA受容体拮抗薬は、これらに限定されないが、ビククリン、フルマゼニル、ガバジン、フェニレンテトラゾール(phenylenetetrazol)、(1,2,5,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)メチルホスフィン酸(TPMPA)、(またCGP-46381として知られる)(3-アミノプロピル)(シクロヘキシルメチル)ホスフィン酸、4-イミダゾール酢酸、ピクロトキシン、ピペリジン-4-イルホスフィン酸(PPA)、ピペリジン-4-イルセレニン酸(SEPI)、(またCGP-36742として知られる)3-アミノプロピル-N-ブチルホスフィン酸、(ピペリジン-4-イル)メチルホスフィン酸(P4MPA)、又はそれらの塩若しくはそれらの組み合わせを含む。ある態様において、GABA受容体拮抗薬はTPMPA、ビククリン並びにそれらの塩及び組み合わせ;特にTPMPA及びその塩より選択される。
【0082】
その組成物中のGABA受容体拮抗薬の量は治療される条件及び投与経路に依存する。ある態様において、組成物中のGABA受容体拮抗薬は、その組成物の0.01重量%から20重量%、0.01重量%から10重量%、0.01重量%から5重量%、0.03重量%から3重量%、0.033重量%から2.7重量%、0.038重量%から2.4重量%、0.043重量%から2.1重量%、0.05重量%から1.8重量%、0.06重量%から1.5重量%、0.075重量%から1.2重量%、0.1重量%から0.9重量%又は0.15重量%から0.6重量%(及びそれらの間の全ての数)の範囲;特にその組成物の約0.2重量%、0.21重量%、0.22重量%、0.23重量%、0.24重量%、0.25重量%、0.26重量%、0.27重量%、0,28重量%、0.29重量%、0.30重量%、0.31重量%、0.32重量%、0.33重量%、0.34重量%、0.35重量%、0.36重量%、0.37重量%、0.38重量%、0.39重量%、0.4重量%の量である。
【0083】
ある態様において、本発明の組成物はさらにムスカリン性アセチルコリン受容体拮抗薬を含む。そのムスカリン性アセチルコリン受容体拮抗薬は、任意のムスカリン性アセチルコリン受容体サブタイプでアンタゴニスト活性を有し、これらに限定されないが、M、M、M、M、及びM受容体を含んでいる。適当なムスカリン性アセチルコリン受容体拮抗薬は、これらに限定されないが、アトロピン、ピレンゼピン、ヒンバシン、ヒヨスチン、シクロペントラート、イプラトロピウム、オキシトロピウム、トロピカミド、オキシブチニン、トルテロジン、ジフェンヒドラミン、ジシクロベリン、フラボキサート、チオトロピウム、トリヘキシフェニジル、ソリフェナシン、ダリフェナシン、ベンザトロピン、メベベリン、プロシクリジン、アクリジニウム、ムスカリン毒素1(MT1)、ムスカリン毒素2(MT2)、ムスカリン毒素3(MT3)、ムスカリン毒素4(MT4)、ムスカリン毒素7(MT7)又はそれらの塩若しくはそれらの組み合わせを含む。ある態様において、そのムスカリン性アセチルコリン受容体拮抗薬はアトロピン、ピレンゼピン、ヒンバシン、並びにそれらの塩及びそれらの組み合わせ;特にアトロピン及びピレンゼピン並びにそれらの塩及び組み合わせより選択される。
【0084】
組成物中のムスカリン性アセチルコリン受容体拮抗薬の量は、治療される条件及び投与経路に依存する。ある態様において、組成物中のムスカリン性アセチルコリン受容体拮抗薬は、組成物の0.0001重量%から30重量%、0.0003重量%から25重量%、0.0005重量%から20重量%、0.0007重量%から15重量%、0.0009重量%から10重量%、0.001重量%から5重量%、0.003重量%から1重量%、0.005重量%から0.5重量%、0.007重量%から0.2重量%、0.009重量%から0.1重量%(及びその間の全ての数);特に約0.009重量%、0.01重量%、0.02重量%、0.03重量%、0.04重量%、0.05重量%、0.06重量%、0.07重量%、0.08重量%、0.09重量%又は0.1重量%である。
【0085】
本発明の組成物は、さらに界面活性剤を含みうる。当業者に周知の様々な医薬的に許容可能な界面活性剤を用いうる。例示的な界面活性剤は、これらに限定されないが、以下の種類の界面活性剤を含む;アルコール;アミン・オキシド;ブロック重合体;カルボキシル化したアルコール又はアルキルフェノールエトキシレート;カルボン酸/脂肪酸;エトキシ化したアリールフェノール;エトキシ化した脂肪酸エステル、オイル、脂肪族アミン又はセチルアルコールのような脂肪アルコール;脂肪酸エステル;脂肪酸メチルエステルエトキシレート;グリセロールモノステアレートのようなグリセロールエステル;グリコールエステル;ラノリンに基づく誘導体;レシチン又はその誘導体;リグニン又はその誘導体;メチルエステル;モノグリセリド又はその誘導体;ポリエチレングリコール;ポリプロピレングリコール;アルキルフェノールポリエチレングリコール;アルキルメルカプタンポリエチレングリコール;ポリプロピレングリコールエトキシレート;ポリエチレングリコールエーテル、例えばCetomacrogol 1000;高分子界面活性剤;プロポキシル化した及び/又はエトキシル化した脂肪酸、アルコール又はアルキルフェノール;タンパク質に基づいた界面活性剤;サルコシン誘導体;ポリソルベートのようなソルビタン誘導体;ソルビトールエステル;ソルビトールポリグリコールエーテルのエステル;脂肪酸アルキロールアミド;N-アルキルポリヒドロキシ脂肪酸アミド;アルキルポリグリコシド;四級アンモニウム化合物、例えば、塩化ベンザルコニウム;シクロデキストリン、例えば、α-、β-、又はγ-シクロデキストリン;スクロース又はグルコースエステル又はその誘導体;スルホサクシネート、例えばジオクチルソジウムスルホサクシネート;又はその誘導体。理論に縛られることなく、界面活性剤の存在は、水性担体及びオイルが組成物中に含まれる場合に、オイルによって水性担体を乳化することに有用であり、そして有効成分、例えばドパミン、重水素化したドパミン、重水素化したドパミン誘導体又はそれらの医薬的に許容可能な塩の浸透を、角膜上皮を通じて促進しうる。その界面活性剤はその組成物の約0.1重量%から30重量%の範囲の量において存在しうる。
【0086】
ある態様において、本発明の組成物はさらにレオロジー修飾剤を含む。そのレオロジー修飾剤は、表面張力及びその組成物の流れを変化するために用いられ、そして局所的に適用した場合に眼の表面上の組成物の滞留時間に寄与しうる。適当なレオロジー修飾剤は当業者に周知である。例えば、そのレオロジー修飾剤は、これらに限定されないが、ヒアルロン酸、キトサン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、デキストラン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルグアー、アクリレート、例えばCarbopolポリマー、ポロクサマー、アラビアゴム、キサンタンゴム、グアーガム、ローカストビーンガム、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、(イネ、トウモロコシ、ジャガイモ又は小麦からの)でんぷん、カラギーナン、コンニャク、アロエベラ・ジェル、アガロース、ペクチン、トラガカント、カードランガム、ジェランガム、スクレログルカン、並びにそれらの誘導体及びそれらの組み合わせより選択されうる。そのレオロジー修飾剤は、その組成物の所望される粘度を得るために十分な量において存在すると考えられる。そのレオロジー修飾剤は、組成物の約0.5重量%から5重量%の範囲において存在しうる。
【0087】
本発明の組成物はさらに保存剤を含む。その保存剤は、特に、例えば、本発明の組成物が多数回の投与剤形における局所投与のために製剤化される場合に、同じ容器から多数回使用にかける組成物における微生物汚染を防ぐために有用でありうる。適当な保存剤は、組成物において微生物汚染を防ぐために当業者に通常用いられる任意の医薬的に許容可能な保存剤を含む。限定されない例は、過ホウ酸ナトリウム、安定化オキシクロロ錯体(stablilized oxychloro complex)、ポリクオタニウム-1、フェニル水銀酸(phenylmercuric acid)、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、クロルヘキシジン、臭化ベンゾドデシニウム、セトリモニウムクロリド、チオマーサル、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、ポリクオタニウム塩化アンモニウム、ポリアミノプロピルビグアニド、過酸化水素、安息香酸、フェノール酸、ソルビン酸、ベンジルアルコール又はそれらの塩若しくはそれらの組み合わせを含む。その保存剤は十分な防腐活性を提供する量において存在すると考えられる。例えば、その保存剤はその組成物の約0.001重量%から1重量%の範囲における量において存在しうる。
【0088】
眼内に組成物の浸透を増加することが所望されうる。従って、ある態様において、本発明の組成物はさらに浸透促進剤を含む。適当な浸透促進剤は、これらに限定されないが、ジメチルスルホキシド(DMSO);シクロデキストリン、例えば、α-、β-、又はγ-シクロデキストリン;EDTA;デカメトニウム;グリココール酸;コール酸;サポニン;フシジン酸;タウロコール酸;ポリエチレングリコールエーテル;ポリソルベート;又はそれらの塩、誘導体若しくは組み合わせを含む。ある態様において、その浸透促進剤は、ジメチルスルホキシドである。他の浸透促進剤は、ナノ粒子、マイクロエマルション、リポソーム又はミセルを含み、ある態様において、それらはその組成物の一以上の成分をカプセル化し、ドパミン、重水素化したドパミン、重水素化したドパミン誘導体又はそれらの医薬的に許容可能な塩を含んでいる。その浸透促進剤は、角膜上皮にわたり、ドパミン、重水素化したドパミン、重水素化したドパミン誘導体又はそれらの医薬的に許容可能な塩の浸透を促進する量において存在すると考えられる。例えば、その浸透促進剤は、その組成物の約0.1重量%から30重量%の範囲における量において存在しうる。
【0089】
特定の態様において、その浸透促進剤はミセルである。適当なミセルは、これらに限定されないが、Triton X-100ミセル、例えば、Jodko-Piorecka and Litwinienko(2015)Free Radical Biology and Medicine,83:1-11に記載されるミセル;界面活性剤ナノミセル、例えばドデシル硫酸ナトリウムによって形成されるナノミセル、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、臭化セチルトリメチルアンモニウム、n-ドデシルテトラ(エチレンオキシド)、ビタミンE TGPS、オクトキシノール-40及び/又はジオクタノイルホスファチジルコリン;高分子ミセル、例えば、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(D,L-ラクチド)、ポリプロピレンオキシド、ポリ(β-ベンジル-1-アスパラギン酸)、メトキシポリ(エチレングリコール)-ヘキシル置換したポリ(ラクチド)、プルロニックF127 ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)/ポリ(オキシエチレン)、F68、F127、ポリ(ヒドロキシエチルアスパルアミド)-ポリエチレングリコール-ヘキサデシルアミン、ステアリン酸ポリオキシル40、ビニルピロリドンを有するN-イソプロピルアクリルアミド及びN,N’-メチレン ビス-アクリルアミドによって架橋したアクリル酸、プルロニック(登録商標)F127及びキトサン、ポリ(酪酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、N-フタロイルカルボキシメチルキトサン、ポリ(アクリル酸2-エチルヘキシル)-b-ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリル酸tert-ブチル)-b-ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(エチレンオキシド)-b-ポリカプロラクトン、ポリ(ε-カプロラクトン)-b-ポリ(メタクリル酸)、ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(ε-カプロラクトン-トリメチレンカーボネート)共重合体、ポリ(アスパラギン酸)-b-ポリラクチド、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(アスパラギン酸-ヒドラジド、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド-メタクリル酸)共重合体-g-ポリ(D,L-ラクチド)及び/又はステアリン酸-グラフト化したキトサンオリゴ糖によって形成されるミセル、;Khuphe et al.(2015)Chem.Commun.,51:1520-1523に記載されるミセル;WO 2005/076998 A2に記載されるミセル:又は米国2009/0092665 A1に開示されるミセルを含み、その全体の内容が参照によって本明細書に組み込まれる。特定の態様において、そのミセルは、その組成物中にドパミン、重水素化したドパミン、重水素化したドパミン誘導体、又はそれらの医薬的に許容可能な塩をカプセル化する。ある態様において、そのミセルは、ドパミン、重水素化したドパミン、重水素化したドパミン誘導体、又はそれらの医薬的に許容可能な塩、例えば、Chenglin et al.(2012)Langmuir,28:9211-9222に記載される、ポリ(スチレン-alt-マレイン酸)-[スチレン-alt-(N-3,4-ジヒドロキシフェニルエチル-マレアミン酸)]共重合体を含み、それらの全体の内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0090】
ある態様において、その浸透促進剤は、リポソームである。適当なリポソームは、これらに限定されないが、卵ホスファチジルコリンのようなジパルミトイルホスファチジルコリンから調製したリポソーム;及びZhigaltsev et al.(2001)J Liposome Res,11(1):55~71;Jain et al.(1998)Drug Dev Ind Pharm,24(7):671~675:WO 2014/076709 A1;Chonn et al.(1995)Curr Opin Biotechnol,6:698~708;Lasic(1998)Trends Biotechnol,16:307~321;Gregoriadis(1995)Trends Biotechnol,13:527~537;Szoka and Papahadjopoulos(1980)Ann Rev Biophys Bioeng,9:467~508;米国特許番号第4,235,871号;米国特許番号第4,837,028号;及び米国特許公開番号第2004/0224010 A1である。
【0091】
また、本発明の組成物は、さらにキレート剤を含む。適当なキレート剤は、これらに限定されないが、アミノカルボン酸、又はその塩、例えばEDTA、ニトリロ三酢酸、ニトリロプロピオン酸、ジエチレントリアミペンタアセテート酸、2-ヒドロキシエチル-エチレンジアミン-三酢酸、1,6-ジアミノ-ヘキサメチレン三酢酸、1,2-ジアミノ-シクロヘキサン三酢酸、O,O’-ビス(2-アミノエチル)-エチレングリコール四酢酸、1,3-ジアミノプロパン-四酢酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン-N,N-二酢酸、エチレンジアミン-N,N’-二酢酸、エチレンジアミン-N,N’-二酢酸、エチレンジアミン-N,N’-ジプロピオン酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、7,19,30-トリオキサ-1,4,10,13,16,22,27,33-オクタアザビシクロ[11,11,11]ペンタトリアコンタン(O-ビス-tren)、エチレンジアミン-N,N’-ビス(メチレンホスホン酸)、イミノ2酢酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン(DHEG)、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン-四酢酸、1,2-ジアミノプロパン-四酢酸、エチレンジアミン-テトラキス(メチレンホスホン酸)、N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸、又はそれらの組み合わせ若しくはそれらの塩;特に、医薬的に許容可能な塩又はEDTAの混合された塩、例えば、二ナトリウム、三ナトリウム、四ナトリウム、二カリウム、三カリウム、リチウム、二リチウム、アンモニウム、二アンモニウム、カルシウム又はカルシウム-二ナトリウム;とりわけEDTA二ナトリウムを含む。そのキレート剤はその組成物の約0.01重量%から1重量%の範囲内の量において存在しうる。
【0092】
本発明の組成物は、さらに、局所的な又は注射可能な眼製剤において一般的に存在する任意の他の医薬的に許容可能な賦形剤を含む。例えば、その組成物は、さらにアルコール、例えば、イソプロパノール、ベンジルアルコール、セテアリルアルコール、又はエタノール;潤滑油、例えば、グルコース、グリセロール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はそれらの誘導体;多糖、例えばキトサン、キチン、デルマタン、ヒアルロン酸、ヘパリン、コンドロイチン、シクロデキストリン、又はそれらの誘導体;又はそれらの組み合わせを含む。
【0093】
ある態様において、本発明の組成物は眼に局所投与するために製剤化される。この関連で、本発明の組成物は、点眼又はゲルの形態;特に点眼でありうる。理論に縛られることなく、眼への局所投与のための組成物を製剤化することは、特にその組成物が予防策又は制御策として用いられる場合にユーザーのコンプライアンスを増加すると考えられる。これは、その組成物が子供の対象に投与される場合に特に重要でありうる。さらに、そのような製剤は、ドパミン、重水素化したドパミン、重水素化したドパミン誘導体又はそれらの医薬的に許容可能な担体のオフターゲット効果の発生を減らしうる。
【0094】
ある態様において、本発明の組成物は、角膜上皮を通じて、ドパミン、重水素化したドパミン、重水素化したドパミン誘導体又はそれらの医薬的に許容可能な担体の浸透のために製剤化される。好ましい態様において、ドパミン、重水素化したドパミン、重水素化したドパミン誘導体又はそれらの医薬的に許容可能な担体の投与量の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、又は80%を超えて角膜上皮に浸透する。
【0095】
点眼又はゲルとして製剤化される場合に、本発明の組成物は、単回用量又は多数回用量、好ましくは多数回用量でありうる。
【0096】
別の態様において、本発明の組成物は眼内の直接的な注射のために製剤化される。特定の態様において、本発明の組成物は、硝子体内、結膜下、前房内、強膜内、角膜内、又は網膜下の注射;特に硝子体内、強膜内、角膜内の注射のために製剤化される。ある態様において、本発明の組成物は、脈絡膜注射のために製剤化される。ある態様において、本発明の組成物は、マイクロニードルを介する、例えば、強膜内、角膜内投与を介する注射のために製剤化される。
【0097】
組成物の他の賦形剤及び成分は当業者によって容易に決定されうる。製剤化及び投与のための技術は、例えば、Remington(1980)Remington’s Pharmaceutical Sciences Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,latest editionにおいて見られ;適当な賦形剤は、例えばkatdare and Chaubel(2006)Excipient Development for Pharmaceutical,Biotechnology and Drug Delivery Systems(CRC Press)において見られうる。
【0098】
当業者は本発明の組成物の成分に詳しく、従って、容易に合成すること又はその成分を、例えば、Sigma Aldrich Co.LLCから調達することができると考えられる。例えば、塩酸ドパミンの形状においてドパミンは、多くの原料、例えばSigma-Aldrich Co.LLCから商用利用可能であり、そして合成経路は、例えばCarter et al.(1982)Analytical Profiles of Drug Substances,11:257-272において利用可能である。
【0099】
ドパミン-1,1,2,2,-d塩酸塩の形態において重水素化したドパミンは、Sigma-Aldrich Co.LLCから商用利用可能であり、そして重水素化したドパミン又は重水素化したドパミン誘導体は、例えば、Binns et al.(1970)J Chem Soc(C),8:1134-1138;WO 2004/056724 A1;WO 2007/093450 A1;WO 2014/122184 A1において利用可能であり;その全てがそれらの全体において、参照によって本明細書に組み込まれる。重水素は重水素化試薬を用いる合成技術を用いて、及び/又は交換技術によって、化合物内に導入され、それらの両方は当該分野で一般的な技術である。
【0100】
本発明の組成物は、例えば医薬的に許容可能な担体又は希釈剤内に、成分を混合することによって調製されることができ、そして必要であれば、4から8、5から7、5.5から6.5の範囲内、又は約5.5、6.0又は6.5のpHに組成物のpHを調整している。その組成物のpHは、当該分野において通常用いられる任意の医薬的に許容可能なpH調整剤、例えば、塩酸、水酸化ナトリウム等を用いて調整されうる。当業者は適当な薬物を良く知っているだろう。
【0101】
また、本発明の組成物は、例えば、濾過、オートクレーブ及び/又はガンマ線照射によって使用前に滅菌されうる。
【0102】
4.視覚障害を予防する及び治療するための方法
本発明の組成物は、対象における、視覚障害、特に眼内の減少したドパミン濃度を含む視覚障害、例えば糖尿病性網膜症又はパーキンソン病、又は近眼に関係した視覚障害の進行又は発生を阻害するために有用である。従って、本発明の組成物は対象の視覚障害の進行又は発生を阻害する方法において用いられうる。また、本発明の組成物は本明細書に記載される使用のための薬剤の製造において用いられうる。
【0103】
本発明の組成物は対象の視覚障害の進行を阻害するために有用である。これに関して、本発明の組成物は視覚障害を治療するために用いられうる。ある態様において、本発明の組成物は、対象における視覚障害の進行を減速しうる。
【0104】
また、本発明の組成物は対象の視覚障害の発生を阻害するために有用である。それゆえ、本発明の組成物は対象の視覚障害を予防するために有用である。ある態様において、本発明の組成物は対象における視覚障害の発生を遅らせることができ、すなわち、視覚障害が発生する対象の年齢を上げることができ、そしてそれゆえ視覚障害のありうる重症性を遅らせうる。
【0105】
その視覚障害は、眼内の減少したドパミン濃度、特に網膜内の減少したドパミン濃度を含む、任意の視覚障害でありうる。従って、その視覚障害は、眼内、特に網膜内のドパミン濃度を増加することが、その視覚障害の進行又は発生の効果的な阻害に関連される場合に、任意の視覚障害でありうる。
【0106】
眼内の減少したドパミン濃度を含む多数の視覚障害がある。例えば、その視覚障害は、これらに限定されないが、糖尿病性網膜症又はパーキンソン病に関連した視覚障害、近眼、増加した眼球の成長、減少した空間的な及び経時的なコントラスト感度、弱視、かすみ目又は複視、眼精疲労、自発的に目を開けることの不調(失行)、瞼のけいれん(眼瞼けいれん)、しきりにまばたきすること、変化した色知覚、減少した奥行き知覚又は幻視でありうる。ある態様において、その視覚障害は、糖尿病性網膜症又はパーキンソン病に関連した視覚障害、及び近眼から選択される。特定の態様において、その視覚障害は近眼である。
【0107】
ある態様において、その視覚障害は、糖尿病性網膜症又はパーキンソン病に関連した視覚障害、近眼、増加した眼球の成長、減少した空間的な及び経時的なコントラスト感度、弱視、かすみ目又は複視、眼精疲労、自発的に目を開けることの不調(失行)、瞼のけいれん(眼瞼けいれん)、しきりにまばたきすること、変化した色知覚、減少した奥行き知覚、網膜色素変性症、加齢性黄斑変性症、又は幻視からなる群より選択される。ある態様において、その視覚障害は、糖尿病性網膜症又はパーキンソン病に関連した視覚障害、網膜色素変性症、加齢性黄斑変性症及び近眼から選択される。特定の態様において、その視覚障害は近眼である。
【0108】
ある態様において、その視覚障害はパーキンソン病に関連しない。
【0109】
特定の態様において、その視覚障害は、後眼部の障害である。適当な障害は、これらに限定されないが、糖尿病性網膜症又はパーキンソン病に関連した視覚障害、網膜色素変性症、加齢性黄斑変性症及び近眼を含む。
【0110】
パーキンソン病に関連した視覚障害は、これらに限定されないが、減少した視覚、減少したコントラスト感度、及び/又は乱れた色識別を含む。
【0111】
糖尿病性網膜症に関連した視覚障害は、これらに限定されないが、減少した視覚、減少したコントラスト感度、及び減少した周辺視野を含む。
【0112】
その方法は、対象に本発明の組成物を投与することを含む。本発明の組成物は眼の表面への局所投与を通じて又は眼への直接的な注射を介して局所的に投与されうる。
【0113】
ある態様において、その組成物は眼に、例えば点眼又はゲルの形態において、局所的に投与される。好ましい態様において、その組成物は、点眼として適用される。本発明の組成物は眼の任意の表面、好ましくは、角膜/強膜に適用され、それによって組成物中に存在する成分、特にドパミン、重水素化したドパミン、重水素化したドパミン誘導体又はそれらの医薬的に許容可能な塩が、眼内に浸透することを可能にする。ある態様において、その組成物はドパミン、重水素化したドパミン、重水素化したドパミン誘導体又はそれらの医薬的に許容可能な塩が角膜上皮を通じて浸透されるように製剤化される。
【0114】
他の態様において、その組成物は眼内に投与される。例えば、その組成物を直接的に強膜、前房、若しくは硝子体内に注射することができ、又は結膜下、球周囲、球後、上脈絡膜の空間内に注射されうる。特定の態様において、本発明の組成物は、硝子体内、結膜下、前房内、強膜内、角膜内又は網膜下の注射;特に硝子体内、強膜内又は角膜内の注射を介して投与される。ある態様において、本発明の組成物は、上脈絡膜の注射を介して投与される。ある態様において、本発明の組成物は硝子体内注射によって投与される。他の態様において、本発明の組成物はマイクロニードル、例えば、強膜内又は角膜内投与を介して注射される。これらの経路を介する投与のために、本発明の組成物は無菌注射剤の形態でありうる。
【0115】
本発明の組成物が投与される眼内又は眼上の部分は、好ましくは成分、特にドパミン、重水素化したドパミン、重水素化したドパミン誘導体又はそれらの医薬的に許容可能な塩の眼内、好ましくは網膜内への浸透を可能にする部分である。投与は好ましくは、局所投与において角膜/強膜上及び結膜で行われ、又はその組成物は結膜下、球周囲、球後、若しくは上脈絡膜の場所、又は強膜、角膜、前房、硝子体内に注射されうる。
【0116】
局所的に適用される場合に、本発明の組成物は、ハード及びソフトコンタクトレンズによって用いられうる。
【0117】
投与レジメは、当業者に周知の方法論に対応する異なる指示について定められうる。その組成物の投与量は治療される条件、対象の年齢及び投与経路に依存するだろう。
【0118】
本発明の組成物は、適当な量において局所的に又は注射によって投与され、0.001mg/kg/日から12mg/kg/日、特に0.001mg/kg/日から4mg/kg/日、中でも0.001mg/kg/日から2mg/kg/日の範囲において、ドパミン、重水素化したドパミン、重水素化したドパミン誘導体、又はそれらの医薬的に許容可能な塩の投与量を提供する。ある態様において、その組成物は適当な量において投与され、0.001mg/kg/日から30mg/kg/日、特に0.001mg/kg/日から12mg/kg/日、中でも0.001mg/kg/日から4mg/kg/日、とりわけ0.001mg/kg/日から2mg/kg/日の範囲において、ドパミン、重水素化したドパミン、重水素化したドパミン誘導体又はそれらの医薬的に許容可能な塩を提供する。
【0119】
点眼のように局所的に投与される場合に、本発明の組成物は眼ごとに1から6滴(及びその間の全ての整数)の範囲内の量において投与され、そして例えば、眼ごとに約0.04mLから0.24mL(及びその間の全ての整数)の範囲内の量と一致しうる。液滴はそれぞれの眼に1日あたり1から4回適用されうる。本発明の組成物がゲルとして製剤化される場合に、同等の投与量が提供される。当業者は本発明の組成物の局所適用のための適当なディスペンサーを知っているだろう。
【0120】
注射によって投与される場合に、本発明の組成物は0.001mLから0.5mL(及びその間の全ての整数)の範囲内、特に約0.01mLの量において投与されうる。本発明の組成物は、1週間に1回から1日に1回の頻度で投与されうる。
【0121】
本発明が容易に理解し、実用化しうるために、以下の非限定的な例示の方法によって、特定の好ましい態様を本明細書に記載する。
【実施例
【0122】
実施例1-ドパミン組成物の調製
150mMストック溶液を作製するために、(Sigma-Aldrich Co.LLCから商用利用可能な、ドパミン塩酸塩の形態において)28.4mgのドパミンを1×PBS(pH約5.5)中に0.1%アスコルビン酸を含む溶液1mLに溶解した。そのストック溶液をさらに1×PBS中に0.1%アスコルビン酸を含む溶液の適当量に希釈し、0.15mM(0.0028重量%)、1.5mM(0.028重量%)及び15mM(0.28重量%)溶液を作製した。
【0123】
組み合わせた溶液を、適当量の(Sigma-Aldrich Co.LLCから商用利用可能な、硫酸アトロピン一水和物の形態において)アトロピン、(Sigma-Aldrich Co.LLCから商用利用可能な、ピレンゼピン二塩酸塩)ピレンゼピン又はTPMPA(Sigma-Aldrich Co.LLCから商用利用可能な、TPMPA水和物の形態における(1,2,5,6-テトラヒドロピリジン-4-イル)メチルホスフィン酸)を添加することによって、上記で調製した1mLのドパミン溶液に調製した。
【0124】
実施例2-形態覚遮断近視の発生へのドパミン組成物の効果
30羽の白い雄鶏を以下に定義される6つの治療群(1群あたりn=5)にランダムに割り当て4日間治療した。
・左目に半透明のディフューザーを装着して、形態覚遮断近視(FDM)を誘導したヒヨコ;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日1回実施例1に従って調製した1.5mM(0.028%)のドパミン溶液を硝子体内に注射したヒヨコ;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日2回実施例1に従って調製した1.5mM(0.028%)のドパミン溶液を局所投与したヒヨコ;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日1回実施例1に従って調製した15mM(0.28%)のドパミン溶液を硝子体内に注射したヒヨコ;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日2回実施例1に従って調製した15mM(0.28%)のドパミン溶液を局所投与したヒヨコ;
・同齢の未処理のコントロール群。
【0125】
薬物療法のため、その組成物を硝子体内注射又は局所投与を用いて軽いイソフルラン麻酔下で投与した。
【0126】
硝子体内注射を以下のように実施した:ハミルトンシリンジに接続されている30ゲージ針を用いて、10μL(0.01mL)の試験組成物を1日に1回、眼の硝子体腔内に注射した。
【0127】
局所投与を以下のように実施した:2滴の40μL(2滴の0.04mL、又は0.08mL総量)の組成物を点眼ディスペンサーを用いて眼の角膜表面に適用した。液滴をヒヨコに1日2回適用した。
【0128】
眼の成長率における変化及び近眼の発生を決定するために、眼軸長の変化を評価した。近眼は通常の成長率に対応する軸の向きにおける眼の超過した伸長と関連した。軸長、前房深度、及び硝子体眼房深度をA-スキャン超音波検査(Biometer AL-100;Tomey Corporation,Nagoya,Japan)を用いて測定した。群間の軸長、前房深度及び硝子体眼房深度の変化の統計分析は一元配置分散分析に続いてボンフェローニ補正を有するスチューデントt検定を含んでいた。全てのデータは平均±平均の標準偏差(SEM)として提示される。
【0129】
結果
本結果を図1に示す。硝子体内注射を介するドパミン溶液の投与は、形態覚遮断近視(FDM;9.12±0.05mm)(ANOVA,F(3,23)=6.934,p=0.002;図1)に関連した軸の伸長を阻害した。調査したドパミン濃度(1.5mM及び15mM)の両方は、ディフューザーのみで処理した対応においてみられたものと比較して形態覚遮断近視に関係した軸の伸長を著しく阻害した(1.5mM:8.82±0.04mm、78%保護、p<0.05;15mM:8.82±0.11mm、78%保護、p<0.05)。さらに、両方のドパミン濃度で処理した眼の軸長は、同齢の未処理のヒヨコと統計的に差異はなかった(8.74±0.04mm、両方の濃度についてp=1,000)。全ての条件にわたり、前房深度(ANOVA,F(3,23)=0.348,p=0.791)又はレンズの厚さ(ANOVA,F(3,23)=6.112,p=0.003)における差異はなかった。
【0130】
ドパミン溶液が1日2回局所点眼として投与される場合に、ディフューザー装着に関連した超過した成長を阻害した(ANOVA,F(3,23)=14.978,p<0.000;図1)。具体的に、形態覚遮断近視に関連した超過した成長は用量依存的な様式において阻害され、15mMの濃度で見られた有意な効果を有し(8.84±0.07mm、FDMのみと比較して72%の保護,p<0.01)、その時点で、ディフューザー処理した眼は未処理のコントロールの眼から軸長において統計的に差異はなかった(p=0.191)。全ての試験された条件にわたり、前房深度(ANOVA,F(3,23)=0.348、p=0.791)及びレンズの厚さ(ANOVA,F(3,23)=2.613,p=0.077)の両方において差異はなかった。代わりに、ディフューザー装着及びドパミンの局所投与に関連した軸長の変化は、硝子体眼房深度内の変化を示した(ANOVA,F(3,23)=9.811,p<0.000)。
【0131】
実施例3-形態覚遮断近視発生のアトロピン、ピレンゼピン及びTPMPAとドパミンとの共処理の効果
70羽の白い雄鶏を以下に定義される14処理群の一つにランダムに割り当て、そして4日間処理した。
・左目に半透明のディフューザーを装着して、FDMを誘導したヒヨコ;
・同齢の未処理のコントロール群;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日1回実施例1に従って調製した0.15mM(0.0028%)のドパミン溶液を硝子体内注射したヒヨコ;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日1回0.25mM(0.018%)のアトロピン溶液を硝子体内注射したヒヨコ;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日1回実施例1に従って調製した0.15mM(0.0028%)のドパミン及び0.25mM(0.018%)のアトロピン溶液を硝子体内注射したヒヨコ;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日1回17mM(0.72%)のピレンゼピン溶液を硝子体内注射したヒヨコ;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日1回0.15mM(0.0028%)のドパミン及び17mM(0.72%)のピレンゼピン溶液を硝子体内注射したヒヨコ;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日1回18.6mM(0.29%)のTPMPA溶液を硝子体内注射したヒヨコ;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日1回実施例1に従って調製した0.15mM(0.0028%)のドパミン及び18.6mM(0.29%)のTPMPA溶液を硝子体内注射したヒヨコ;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日2回実施例1に従って調製した1.5mM(0.028%)のドパミン溶液を局所投与したヒヨコ;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日2回50mM(3.5%)のアトロピン溶液を局所投与したヒヨコ;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日2回実施例1に従って調製した1.5mM(0.028%)のドパミン及び50mM(3.5%)アトロピン溶液を局所投与したヒヨコ;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日2回18.6mM(0.29%)のTPMPA溶液を局所投与したヒヨコ;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日2回実施例1に従って調製した1.5mM(0.028%)のドパミン及び18.6mM(0.29%)のTPMPA溶液を局所投与したヒヨコ。
【0132】
アトロピン溶液を1×PBS中に0.1%アスコルビン酸を含む溶液において、アトロピン硫酸塩一水和物を溶解することにより、0.25mM(0.018重量%)又は50mM(3.5重量%)の終濃度で調製し、そしてpHを7に調整した。ピレンゼピン溶液を1×PBS中に0.1%アスコルビン酸を含む溶液においてピレンゼピン二塩酸塩を溶解することにより、17mM(0.72重量%)の終濃度で調製し、そしてpHを7に調整した。TPMPA溶液を1×PBS中に0.1%アスコルビン酸を含む溶液において、TPMPA水和物を溶解することにより、18.6mM(0.29重量%)の終濃度で調製し、そしてpHを7に調整した。
【0133】
試験組成物の投与及び眼内パラメータの測定を実施例2の記載従って実施した。
【0134】
結果
本結果を図2及び3に示す。ムスカリン性アセチルコリン受容体拮抗薬のアトロピン;M1ムスカリン性アセチルコリン受容体拮抗薬のピレンゼピン;及びGABAc受容体拮抗薬のTPMPA;単体又は硝子体内注射によるドパミン(0.15mM)との組み合わせのいずれかの投与は、形態覚遮断近視に関連した超過した軸の伸長を阻害した(ANOVA,F(8,53)=7.894,p<0.000;図2)。重要なことに、ドパミンと任意の3つの化合物とを組み合わせることは、形態覚遮断近視がこれらの化合物が単体で投与される場合と比較して阻害される程度において小さいが有意な改善を誘発した(ドパミン及びアトロピン:8.76±0.02mm,p<0.000;ドパミン及びピレンゼピン:8.76±0.03mm、p<0.000;ドパミン及びTPMPA:8.60±0.07mm、p<0.000)。試験した全ての条件にわたり、前房深度(ANOVA,F(8,53)=0.426,p=0.900)又はレンズの厚さ(ANOVA,F(8,53)=1.349,p=0.241)において有意な差異はなかった。代わりに、ディフューザー装着及び試験化合物の硝子体内注射に関連して、軸長における変化は硝子体眼房深度内の変化を示した(ANOVA,F(8,53)=7.561,p=0.000)。
【0135】
ドパミン(1.5mM)を単体の又はアトロピン若しくはTPMPAとの組み合わせのいずれかの局所投与は、形態覚遮断近視によりもたらされる過剰な軸の伸長を著しく阻害した(ANOVA,F(6,61)=7.357,p<0.000;図3)。前房深部(ANOVA,F(6,61)=0.624,p=0.710)又はレンズの厚さ(ANOVA,F(6,61)=1.534,p=0.183)のいずれも治療によって変化しなかったので、眼軸長における変化は硝子体眼房深度の変化を示した(ANOVA,F(6,61)=6.703,p<0.000)。図3にみられうるように、ドパミン及びアトロピンの組み合わせ(ドパミン:8.97±0.08mm、p=0.448;アトロピン:8.79±0.09mm、p=0.030;ドパミン及びアトロピン:8.67±0.05mm,p=0.001)、そしてドパミン及びTPMPA(TPMPA:8.85±0.05mm、p=0.062;ドパミン及びTPMPA:8.69±0.03mm,p<0.000))は形態覚遮断近視が各化合物単体と比較して阻害される程度を有意に増加した。
【0136】
実施例4-ドパミン-1,1,2,2-D組成物の調製
150mMのストック溶液を作製するために、(Sigma-Aldrich Co.LLCより商用利用可能な、ドパミン-1,1,2,2-d塩酸塩の形態において)29mgドパミン-1,1,2,2-dを1×PBS中に0.1%アスコルビン酸を含む溶液1mLに溶解した(pH約5.5)。そのストック溶液をさらに1×PBS中に0.1%アスコルビン酸を含む溶液の適当量において希釈し、0.15mM(0.0029重量%)、1.5mM(0.029重量%)及び15mM(0.29重量%)溶液を作製した。
【0137】
組み合わせた溶液を(Sigma-Aldrich Co.LLCより商用利用可能な、硫酸アトロピン一水和物の形態の)アトロピン又は(Sigma-Aldrich Co.LLCより商用利用可能な、TPMPA水和物の形態の)TPMPAの適当量を上記で調製したドパミン-1,1,2,2-dの溶液1mLに調製した。
【0138】
実施例5-形態覚遮断近視発生の組成物のドパミン-1,1,2,2-Dの効果
30羽の白い雄鶏を以下に定義される(1群あたりn=5の)6つの処理群の一つにランダムに割り当て、そして4日間処理した。
・左目に半透明のディフューザーを装着して、FDMを誘導したヒヨコ;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日1回実施例4に従って調製した15mM(0.29%)のドパミン-1,1,2,2-d溶液を硝子体内注射したヒヨコ;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日1回実施例4に従って調製した1.5mM(0.029%)のドパミン-1,1,2,2-d溶液を硝子体内注射したヒヨコ;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日2回実施例4に従って調製した15mM(0.29%)のドパミン-1,1,2,2-d溶液を局所投与したヒヨコ;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日2回実施例4に従って調製した1.5mM(0.029%)のドパミン-1,1,2,2-d溶液を局所投与したヒヨコ;
・同齢の未処理のコントロール群;
【0139】
試験組成物を投与し、眼のパラメータの測定を実施例2に記載されるものに従って実施した。
【0140】
結果
本結果を図4に示す。ドパミン-1,1,2,2-d溶液の硝子体内投与は、形態覚遮断近視に関連した軸の成長を著しく阻害した(ANOVA,F(3,22)=13.562,p<0.000;図4)。図4に見られうるように、試験したドパミン-1,1,2,2-d溶液の両方の濃度(1.5mM及び15mM)は、ディフューザーのみの処理した動物に見られる軸の伸長と比較して、同様の水準の保護を実証した(1.5mM:8.77±0.11mm、92%保護、p<0.001;15mM:8.72±0.06mm、103%保護、p<0.001)。ドパミン-1,1,2,2-dの両方の濃度で、ディフューザー処理した眼の眼軸長はそれらの同齢の未処理の一方と差異はなかった(1.5mM p=0.686,15mM p=0.707)。試験した全ての条件にわたり、前房深度(ANOVA,F(3,24)=0.646,p=0.594)及びレンズの厚さ(ANOVA,F(3,24)=1.627,p=0.213)の両方に有意差は無かった。代わりに、ディフューザー装着及びドパミンの硝子体内注射に関連した眼軸長の変化は、硝子体眼房深度における変化を示した(ANOVA,F(3,24)=9.592,p<0.000)。
【0141】
ドパミン-1,1,2,2-d溶液の局所適用は形態覚遮断近視を有意に阻害した(ANOVA,F(3,24)=5.346,p=0.006;図4)。ドパミンと同様に、形態覚遮断近視に関連した過剰な成長を、ドパミン-1,1,2,2-dの局所適用によって用量依存的な様式において阻害し、有意な効果を15mMの濃度で観察し(FDMのみと比較して、8.85±0.14mm,71%保護、p<0.01)、この時点でディフューザー処理した眼は未処理のコントロールの眼からの長さと統計的に差異はなかった(p=0.407)。全ての条件にわたり、前房深度(ANOVA,F(3,24)=0.303,p=0.823)及びレンズの厚さ(ANOVA,F(3,24)=0.436,p=0.730)の両方に差異はなかった。代わりに、ディフューザー装着及びドパミンの局所投与に関係した、眼軸長の変化は、硝子体眼房深度における変化を示した(ANOVA,F(3,24)=4.379,p=0.015)。
【0142】
実施例6-形態覚遮断近視発生のアトロピン、及びTPMPAとドパミン-1,1,2,2-Dとの共処理の効果
60羽の白い雄鶏を以下に定義される(1群当たりn=5の)12処理群の一つにランダムに割り当て、そして4日間処理した。
・左目に半透明のディフューザーを装着して、FDMを誘導したヒヨコ;
・同齢の未処理のコントロール群;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日1回実施例4に従って調製した0.15mM(0.0029%)のドパミン-1,1,2,2-d溶液を硝子体内注射したヒヨコ;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日1回0.25mM(0.018%)のアトロピン溶液を硝子体内注射したヒヨコ;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日1回実施例4に従って調製した0.15mM(0.0029%)のドパミン-1,1,2,2-d及び0.25mM(0.018%)のアトロピン溶液を硝子体内注射したヒヨコ;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日1回18.6mM(0.29%)のTPMPA溶液を硝子体内注射したヒヨコ;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日1回実施例4に従って調製した0.15mM(0.0029%)のドパミン-1,1,2,2-d及び18.6mM(0.29%)のTPMPA溶液を硝子体内注射したヒヨコ;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日2回実施例4に従って調製した1.5mM(0.029%)のドパミン-1,1,2,2-d溶液を局所投与したヒヨコ;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日2回50mM(3.5%)のアトロピン溶液を局所投与したヒヨコ;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日2回実施例4に従って調製した1.5mM(0.029%)のドパミン-1,1,2,2-d及び50mM(3.5%)アトロピン溶液を局所投与したヒヨコ;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日2回18.6mM(0.29%)のTPMPA溶液を局所投与したヒヨコ;
・左目に半透明のディフューザーを装着して、1日2回実施例4に従って調製した1.5mM(0.029%)のドパミン-1,1,2,2-d及び18.6mM(0.29%)のTPMPA溶液を局所投与したヒヨコ。
【0143】
アトロピン及びTPMPA溶液を実施例3に従って調製した。試験組成物の投与及び眼のパラメータの測定を実施例2の記載したものに従って実施した。
【0144】
結果
本結果を図5及び6において示した。硝子体内注射を介したアトロピン若しくはTPMPAのいずれかとの組み合わせたドパミン-1,1,2,2-dの投与は、又は硝子体内注射を介したこれらの化合物単体の各投与は、形態覚遮断近視に関連した過剰な軸の伸長を有意に阻害した(ANOVA,F(6,44)=16.918,p<0.000;図5)。重要なことに、ドパミン-1,1,2,2-dとTPMPAとの組み合わせは、これらの化合物が単体で投与される場合と比較して、形態覚遮断近視が阻害される程度に小さいが有意な改善を誘発した(ドパミン-1,1,2,2-d及びTPMPA;8.61±0.05mm、p=0.014)。ドパミン-1,1,2,2-dとアトロピンとの組み合わせは、形態覚遮断近視が阻害される程度に小さいが有意でない改善をもたらした(ドパミン-1,1,2,2-d及びアトロピン:8.73±0.07mm,p=0.068)。全ての条件にわたり、前房深度(ANOVA,F(6,44)=0.508,p=0.809)又はレンズの厚さ(ANOVA,F(6,44)=0.626,p=0.708)における差異はなかった。代わりに、ディフューザー装着及び試験化合物の硝子体内注射に関連した、眼軸長の変化は硝子体眼房深度における変化を示した(ANOVA,F(6,44)=12.758,p<0.000)。
【0145】
ドパミン-1,1,2,2-d(1.5mM)単体又はアトロピン若しくはTPMPAとの組み合わせの局所投与は形態覚遮断に関連した眼軸の成長を有意に阻害した(ANOVA,F(6,57)=4.616,p=0.001;図6)。前房深度(ANOVA,F(6,57)=0.615,p=0.718)又はレンズの厚さ(ANOVA,F(6,57)=0.866,p=0.526)における有意差はなく、むしろ、眼軸長における変化は硝子体眼房深度における変化より生じた(ANOVA,F(6,57)=5.485,p<0.000)。形態覚遮断近視の増加した阻害はドパミン-1,1,2,2-d及びTPMPAの組み合わせに見られ(ドパミン-1,1,2,2-d:8.88±0.10mm、p=0.105;TPMPA:8.85±0.09mm、p=0.062;ドパミン-1,1,2,2-d及びTPMPA:8.80±0.03,p=0.015)、同じ効果をドパミン-1,1,2,2-d及びアトロピンの組み合わせで観察しなかった(アトロピン:8.79±0.09mm,p=0.030;ドパミン-1,1,2,2-d及びアトロピン:8.80±0.11mm,p=0.070)。
【0146】
本明細書に引用される全ての特許、特許出願、及び出版物の開示は、その全体において参照によって本明細書に組み込まれる。
【0147】
本明細書の任意の参考文献の引用は、そのような参考文献が「先行技術」として利用可能であることを認めるものと解釈されると考えられない。
【0148】
明細書を通じて、任意の一の態様又は特定の特徴の集合に本発明を制限することなく、本目的は本発明の好ましい態様を記載している。当業者は、それゆえ、本開示の観点から、本発明の範囲から離れることなく、例示される特定の態様において様々な修飾及び変化を行うことができることを理解するだろう。そのような全ての修飾及び変化は添付の特許請求の範囲内に含まれることを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6