(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】集合住宅
(51)【国際特許分類】
E04H 1/04 20060101AFI20240321BHJP
E04B 1/00 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
E04H1/04 A
E04B1/00 502Z
(21)【出願番号】P 2022054853
(22)【出願日】2022-03-30
【審査請求日】2022-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】522064236
【氏名又は名称】株式会社牛込昇建築設計事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110003122
【氏名又は名称】弁理士法人タナベ・パートナーズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牛込 昇
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-062046(JP,U)
【文献】特開2015-172301(JP,A)
【文献】特開昭60-085135(JP,A)
【文献】特開2016-000917(JP,A)
【文献】特開2018-112029(JP,A)
【文献】特開2000-179165(JP,A)
【文献】株式会社アメニシティ,板橋区大山にあるオレンジの不動産屋アメニシティの日常 離れのあるマンション,日本,2019年07月02日,インターネット<URL:https://amenicity.co.jp/contents/blog280>
【文献】株式会社タカギプランニングオフィス,離れのある家-quattro porte クアトロポルテ-,日本,2013年12月20日,インターネット<URL:https://www.t-p-o.com/blog/1738>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/00-1/14
E04B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の住戸が隣接して横並びに配置された階層を有する集合住宅であって、
前記複数の住戸の各々に設けられたベランダ又はバルコニーと、
前記複数の住戸のうちの少なくとも一の住戸の前記ベランダ又はバルコニーよりも外方に設置され、当該少なくとも一の住戸において前記ベランダ又はバルコニーを介して出入り可能な離れ部屋と、
を有
し、
前記離れ部屋は、当該少なくとも一の住戸の前記ベランダ又はバルコニーの左右端のうちのいずれか一端側に設置され、
当該少なくとも一の住戸と隣り合う住戸との間を区切る住戸間界壁であって、隣り合う前記ベランダ又はバルコニーの間を区切るとともに、更に外方に突出して延設された住戸間界壁によって支持される構造であることを特徴とする集合住宅。
【請求項2】
前記離れ部屋は、前記住戸間界壁を挟んで当該住戸間界壁の両側に配置されること特徴とする請求項1に記載の集合住宅。
【請求項3】
前記離れ部屋は、上階との間に隙間を有する屋根部を有することを特徴とする請求項1に記載の集合住宅。
【請求項4】
前記屋根部は、前記ベランダ又はバルコニー側に向かって下方に傾斜した片流れ形状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の集合住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一つの建物内に複数の住戸が区画され、各区画がそれぞれ独立した住戸として使用される集合住宅が知られている。また、各住戸から外に張り出したスペースであるバルコニーが設けられた集合住宅も良く知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、長辺の長さと短辺の長さとの比が2:1以上に設定された平面視略矩形状の複数の住戸を、平面視において隣接する住戸の長辺同士を共有するようにして、横に並べて配置してなる集合住宅の二階部分において、前記複数の住戸の短辺側の壁には開口部が形成されるとともに、この短辺側の壁から前方に突出するバルコニーが設けられており、前記隣接する住戸によって共有される長辺は、これら隣接する住戸を仕切るとともに、前記バルコニー側に突出して、このバルコニーを仕切る界壁とされており、前記バルコニーを仕切る界壁のうちの一つの界壁は、この界壁の突出方向先端に設けられるとともに、この界壁の厚みよりも幅広に形成された柱状部を備えていることを特徴とする集合住宅の二階部分に係る技術が開示されている。
【0004】
特許文献1に係る技術によれば、隣接する住戸間におけるプライバシーの保護やセキュリティーの確保できるとともに、一戸建て住宅に近い印象の外観を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、昨今、日本を含む世界中において新型コロナウイルス感染症の感染拡大が問題となっている。このような状況下、日本においては感染拡大を防止するためにテレワークを実施する企業が増えてきている。
【0007】
テレワークとは、情報通信技術を活用し時間や場所の制約を受けない柔軟な働き方のことであり、例えば自宅利用型テレワーク、いわゆる在宅勤務が代表的形態として挙げられる。しかしながら、在宅勤務は日常生活を送る家の中で仕事を行うものであり、情報漏洩のリスクが高まるという問題や、仕事とプライベートの切り替えが難しい等の問題があった。
【0008】
また、家族の誰かが上記のような感染症に罹った場合には、感染拡大防止の観点から、自宅内であっても感染者を隔離することが望ましい。しかしながら、日常生活を送る家の中においてこのような隔離を効果的に行うことは困難であった。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、居住空間と他用途の部屋空間とが効果的に区画された集合住宅を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明に係る集合住宅は、複数の住戸が隣接して横並びに配置された階層を有する集合住宅であって、前記複数の住戸の各々に設けられたベランダ又はバルコニーと、前記複数の住戸のうちの少なくとも一の住戸の前記ベランダ又はバルコニーよりも外方に設置され、当該少なくとも一の住戸において前記ベランダ又はバルコニーを介して出入り可能な離れ部屋と、を有し、前記離れ部屋は、当該少なくとも一の住戸の前記ベランダ又はバルコニーの左右端のうちのいずれか一端側に設置され、当該少なくとも一の住戸と隣り合う住戸との間を区切る住戸間界壁であって、隣り合う前記ベランダ又はバルコニーの間を区切るとともに、更に外方に突出して延設された住戸間界壁によって支持される構造であることを特徴とする。
【0013】
また上記の目的を達成するために、前記離れ部屋は、前記住戸間界壁を挟んで当該住戸間界壁の両側に配置されること特徴とする。
【0014】
また上記の目的を達成するために、前記離れ部屋は、上階との間に隙間を有する屋根部を有することを特徴とする。
【0015】
また上記の目的を達成するために、前記屋根部は、前記ベランダ又はバルコニー側に向かって下方に傾斜した片流れ形状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、居住空間と他用途の部屋空間とが効果的に区画された集合住宅を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る集合住宅の一例を示す概略斜視図である。
【
図5】本実施形態に係る集合住宅の変形例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本実施形態においては四階建ての集合住宅において、所定の階層(例えば二階層)の住戸のベランダに離れ部屋が設けられた場合を例に説明を行う。
【0019】
[集合住宅の一例]
図1は、本実施形態に係る集合住宅の一例を示す概略斜視図である。
図2は、
図1に示す集合住宅のAA断面図である。
図3は、
図1に示す集合住宅の正面図である。
図4は、
図1に示す集合住宅の側断面図である。
【0020】
なお、
図1では、説明の便宜上、一階と二階のみを図示するとともに、三階以上のフロア等については図示を省略している。また、
図1及び
図2では、本願発明との関連性が低い構成要素については適宜図示を省略している。
【0021】
図1や
図2に示すように、集合住宅1は、隣接する複数の住戸11、12、13、14、ベランダ21、22、23、24、住戸間界壁31、32、33、複数の離れ部屋41、42、43を有する。
【0022】
住戸11、12、13、14は、それぞれに居間、寝室、キッチン、洗面台、浴槽、トイレ等(いずれも不図示)が設置されて区画された居住空間であり、住戸間界壁31、32、33を介して横並びに配置される。
図2に示すように、各住戸11、12、13、14の一端側には、共用廊下51に沿って玄関11a、12a、13a、14aがそれぞれ設置される。
【0023】
ベランダ21、22、23、24は、それぞれ住戸11、12、13、14に外接して張り出して設けられた歩行可能な屋外空間である。このようなベランダ21、22、23、24は、住戸11、12、13、14において玄関11a、12a、13a、14aの反対側(他端側)に設けられる。
【0024】
これにより、各住戸11、12、13、14の入居者は、各住戸11、12、13、14の開口部11b、12b、13b、14bからそれぞれベランダ21、22、23、24に出入り可能である。なお、これらベランダ21、22、23、24では、上階である三階のベランダの下面がそれらの屋根の役割を果たす。これらベランダ21、22、23、24は、屋根を有さない屋外空間である所謂バルコニーであっても良い。
【0025】
住戸間界壁31、32、33は、それぞれ住戸11、12の間、住戸12、13の間、住戸13、14の間を区切る防耐火性能や遮音性能を備えた界壁であり、当該集合住宅1を建築する際に設けられる。本実施形態においては、後述する離れ部屋41、42、43が設けられている住戸間界壁32、33と、離れ部屋が設けられていない住戸間界壁31とでは構成が異なるため、以下補足する。
【0026】
住戸間界壁31は、住戸11、12の間を区切る界壁であり、各住戸11、12とベランダ21、22との境界部分が界壁の端部となる。なお、ベランダ21、22の間には非常時等に人が蹴破ることが可能な隔板61が設置される。
【0027】
これに対し、住戸間界壁32は、住戸12、13の間を区切る界壁であるが、ベランダ22、23の側に突出してベランダ22、23の間を区切るとともに、更に外方に突出して延設される界壁である。具体的には、
図2に示すようにベランダ22、23の端縁から更に離れ部屋41、42の一辺分程度の長さだけ突出して延設される。
【0028】
住戸間界壁33も同様に、住戸13、14の間に加え、ベランダ23、24の側に突出してベランダ23、24の間を区切るとともに、更に外方に突出してベランダ23、24の端縁から離れ部屋43の一辺分程度の長さだけ突出して延設される。
【0029】
なお、
図1に示すように、本実施形態に係る住戸間界壁32、33は一階から二階にかけて上下に形成される構造であるが、一階の空間を広く確保するために一階部分には形成しなくても良い。
【0030】
離れ部屋41、42、43は、それぞれベランダ22、23、24よりも外方に張り出した位置に設置され、扉部41a、42a、43a(
図2参照)を介してベランダ22、23、24から出入り可能な部屋空間である。これら離れ部屋41、42、43は、例えば仕事部屋として用いたり感染症に罹患した家族の隔離部屋として用いたり、各住戸12、13、14の居住空間とは別用途に利用可能な部屋空間である。各離れ部屋41、42、43は、対応する住戸12、13、14の入居者専用の部屋空間である。
【0031】
これら離れ部屋41、42、43は、前述の住戸間界壁52、53によって一辺側が支持される構造である。離れ部屋41、42、43の各々は、床面はベランダ22、23、24の上面と同程度の高さで入居者が容易に出入り可能に形成されており、且つ天井面には上階(ここでは三階)のベランダの下面との間に隙間を有するよう屋根部41b、42b、43bが設けられる。また、これら離れ部屋41、42、43の正面には窓部41c、42c、43cが、一方の側面には窓部41d、42d、43dが設けられる。
【0032】
屋根部43bは、
図4の側断面図に示すように、ベランダ24側に向かって下方に傾斜した片流れ形状に構成されている。屋根部41b、42bは、図示していないが屋根部43bと同様に片流れ形状に構成される。
【0033】
このように上階との間に隙間を有し且つそれ自身が勾配を有する屋根部41b、42b、43bを設けることによって、上階のベランダの下面との間に採光・通風用の隙間を確保することができる。また、例えば雨天時に屋根部41b、42b、43bに降り注ぐ雨水はベランダ22、23、24側に流れ落ちるため、ベランダ22、23、24の排水溝(不図示)により排水可能となる。
【0034】
このような離れ部屋41、42、43の各々は、
図1~
図3に示すように、ベランダ22、23、24の左右端のうちのいずれか一端側に寄せられて配設される。これにより、ベランダ22、23、24並びに住戸12、13、14への一定量の日当たりを確保することができる。なお、離れ部屋41、42のように住戸間界壁52を挟んで両側に配置しても良いし、離れ部屋43のように住戸間界壁53を挟んで一方側にのみ配置しても良い。
【0035】
以上に示すように、本実施形態によれば、集合住宅1において複数の住戸11、12、13、14のうちの少なくとも一(ここでは三個)の住戸12、13、14において、ベランダ22、23、24の外方に突き出す態様で離れ部屋41、42、43が設けられている。
【0036】
これにより、入居者が離れ部屋41、42、43を仕事部屋として使用する場合には、一旦ベランダ22、23、24に出ることでリフレッシュでき、仕事とプライベートとの切り替えを容易に行うことが可能である。また、離れ部屋41、42、43は、各住戸12、13、14とベランダ22、23、24を介した位置に設けられているため、相互の騒音等が伝わりにくいという利点も奏される。
【0037】
[集合住宅の変形例]
図5は、本実施形態に係る集合住宅の変形例を示す概略斜視図である。本変形例では四階建ての集合住宅において、二階及び三階の複数階層の住戸のベランダに離れ部屋が設けられた場合を例に説明を行う。
【0038】
図5では、説明の便宜上、一階~三階のみを図示するとともに、四階のフロアや本願発明との関連性が低い構成要素については適宜図示を省略している。また、以下の説明において前述と同様の構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0039】
図5に示す集合住宅1Aは、
図1で示した集合住宅1の各構成要素に加え、隣接する三階の複数の住戸15、16、17、18、ベランダ25、26、27、28、住戸間界壁31A、32、33、複数の離れ部屋44、45、46、47を有する。
【0040】
住戸15、16、17、18は、前述の住戸11、12、13、14と同様に、それぞれに居間、寝室、キッチン、洗面台、浴槽、トイレ等(いずれも不図示)が設置されて区画された居住空間であり、住戸間界壁31A、32、33を介して横並びに配置される。
【0041】
ベランダ25、26、27、28は、それぞれ住戸15、16、17、18に外接して張り出して設けられた歩行可能な屋外空間である。これにより、各住戸15、16、17、18の入居者は、各住戸15、16、17、18の開口部からそれぞれベランダ25、26、27、28に出入り可能である。なお、これらベランダ25、26、27、28では、上階である四階のベランダの下面がそれらの屋根の役割を果たす。これらベランダ25、26、27、28は、屋根を有さない屋外空間である所謂バルコニーであっても良く、たとえばルーフバルコニーであってもよい。また、建物1階に設けられるテラスであってもよい。
【0042】
住戸間界壁31A、32、33は、それぞれ住戸15、16の間、住戸16、17の間、住戸17、18の間を区切るよう当該集合住宅1を建築する際に設けられる、防耐火性能や遮音性能を有する界壁である。
【0043】
なお、住戸間界壁31Aは、前述の住戸間界壁31(
図1参照)と異なり、住戸15、16の間に加え、ベランダ25、26の側に突出してベランダ25、26の間を区切るとともに、更に外方に突出してベランダ25、26の端縁から離れ部屋44、45の一辺分程度の長さだけ突出して延設される。
【0044】
離れ部屋44、45、46、47は、それぞれベランダ25、26、27、28から外方に張り出した位置において設置され、不図示の扉部を介してベランダ25、26、27、28から出入り可能な部屋空間である。これら離れ部屋44、45、46、47の支持構造や屋根構造は、前述の離れ部屋41、42、43と同様であるとしてここでは説明を省略する。
【0045】
その結果、
図5の離れ部屋41、45や、離れ部屋42、46に示すように、階毎に左右互い違いな千鳥状に配置したり、同図の離れ部屋43、47に示すように、上下階に連続して配置したりすることができる。いずれの場合であっても、各住戸への日当たりや通風量を確保した上で、居住空間と他用途の部屋空間とを区画することができる。
【0046】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものであり、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0047】
例えば、上記説明においては、住戸間界壁が離れ部屋を支持する構造であったが、この場合に限定されるものではなく、離れ部屋を支持する柱及び梁を別途設けた構造であっても良い。
【符号の説明】
【0048】
1 集合住宅
11、12、13、14 住戸
21、22、23、24 ベランダ
31、32、33 住戸間界壁
41、42、43 離れ部屋
41b、42b、43b 屋根部