(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】毛髪の成長を促進し、白髪の生成を遅らせるための可食性組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20240321BHJP
A23L 33/13 20160101ALI20240321BHJP
A23L 33/14 20160101ALI20240321BHJP
A23L 33/17 20160101ALI20240321BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240321BHJP
【FI】
A23L33/105
A23L33/13
A23L33/14
A23L33/17
A23L5/00 K
(21)【出願番号】P 2022502402
(86)(22)【出願日】2020-07-03
(86)【国際出願番号】 CN2020100100
(87)【国際公開番号】W WO2021008386
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】201910643777.2
(32)【優先日】2019-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522017070
【氏名又は名称】上海利統生化制品有限公司
【氏名又は名称原語表記】Shanghai Lytone Biochemicals,Ltd.
【住所又は居所原語表記】8F,No.525,Zhen Ning Road,Chang Ning District,Shanghai,China
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】劉幻幻
(72)【発明者】
【氏名】張薇▲ティン▼
(72)【発明者】
【氏名】張天鴻
(72)【発明者】
【氏名】曾▲ウェイ▼▲ティン▼
(72)【発明者】
【氏名】陳明慧
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-255036(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103251053(CN,A)
【文献】特開2014-094934(JP,A)
【文献】国際公開第2006/070453(WO,A1)
【文献】特開2003-325149(JP,A)
【文献】特開2013-087060(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109090614(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/105
A23L 33/13
A23L 33/14
A23L 33/17
A23L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量部で、
核タンパク質ペプチド
5~
8部;
全コーヒー果実エキス
3~
9部;
酵母複合粉
14~
22部;
コラーゲンタンパク質
20~
23部
を含む、可食性組成物
であって、
前記全コーヒー果実エキスが、20%~50%の総クロロゲン酸と0.5%~5%のプロアンソシアニジンとを含み、
前記核タンパク質ペプチドは、デオキシリボ核酸ナトリウムの含有量が86%以上の核タンパク質ペプチド組成物である、可食性組成物。
【請求項2】
前記組成物の合計質量を100%とし、その中の核タンパク質ペプチドの含有量が
5%~
8%である、
請求項1に記載の可食性組成物。
【請求項3】
前記組成物の合計質量を100%とし、その中の全コーヒー果実エキスの含有量が
3%~
9%である、
請求項1に記載の可食性組成物。
【請求項4】
前記組成物の合計質量を100%とし、その中の酵母複合粉の含有量が
14%~
22%である、
請求項1に記載の可食性組成物。
【請求項5】
前記組成物の合計質量を100%とし、その中のコラーゲンタンパク質の含有量が
20%~
23%である、
請求項1に記載の可食性組成物。
【請求項6】
核タンパク質ペプチドと、全コーヒー果実エキスと、酵母複合粉と、コラーゲンタンパク質とからなる、
請求項1に記載の可食性組成物。
【請求項7】
前記全コーヒー果実エキスがクロロゲン酸を30%以上含む、
請求項1に記載の可食性組成物。
【請求項8】
前記総クロロゲン酸はネオクロロゲン酸を含み、
前記ネオクロロゲン酸の前記全コーヒー果実エキスにおける比率が1%~20%である、
請求項
7に記載の可食性組成物。
【請求項9】
毛髪の成長を促進するための請求項1~
8のいずれか一項に記載の可食性組成物の使用。
【請求項10】
白髪の発生を遅延させるための請求項1~
8のいずれか一項に記載の可食性組成物の使用。
【請求項11】
肌質を改善するための請求項1~
8のいずれか一項に記載の可食性組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照による関連引用
本願は、2019年07月17日付で提出した申請番号201910643777.2、発明名称「毛髪の成長を促進し、白髪の生成を遅らせるための可食性組成物」の中国特許出願の優先権を主張し、その全部の内容を援用することにより本願に組み込んでいる。
【0002】
本発明は、毛髪の成長を促進し、白髪の生成を遅らせるための可食性組成物に関するものであり、食品技術の分野に属するものである。
【背景技術】
【0003】
脱毛及び早老性白髪病は、臨床でよく見られる毛髪疾患であり、人々の精神、心理に比較的に大きな悪影響を及んでいる。近年、社会競争のますますの激化に伴い、仕事、勉強、生活等あらゆる面において人々のプレッシャーが徐々に高まっていることで、脱毛及び早老性白髪病の発症率が年々高まり、発病年齢も若年化しつつある。都市のサンプル調査統計によれば、中国の中年(35-59歳)なら、白髪や脱毛の発症率が45.7%に達するほど高い。人体の皮膚の付属器官として、頭髪は、脳を保護し、外部からの機械的や化学的な損傷を軽減や回避させ、頭部への傷害を緩衝できるだけではなく、紫外線による頭皮や頭蓋内組織器官への損傷も阻止又は軽減できる。同時に、頭髪は、体内の水銀、ヒ素、鉛などの重金属等有害物質を代謝したり、皮脂腺と汗腺からの分泌物の出口をしたり、細胞の新陳代謝を促進したり、血液の循環を改善・促進、免疫力を高めることができる。そして、頭髪も人の外観を直接に決定し、重要な美容学の価値を有する。
【0004】
現代医学では、白髪は、毛球中のメラノサイトのメラニンを形成する機能の衰退、チロシナーゼの活性の弱まりまたは喪失、毛幹におけるメラニン色素の不足によって引き起こされると考えられている。現在はまだ有効の治療方法がなく、患者の大部は染毛剤を使って隠すようにしている。しかし、過剰な染毛剤により、頭髪の保護膜が破壊されたり、頭皮や毛嚢が損傷されたり、毛嚢角化が加速されたり、髪が細くなる以外、大量の脱毛ひいては重大な疾患が発病する恐れもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術に存在する課題に鑑み、本発明の一つの目的は、ハゲ及び若白髪群衆に対して、毛髪の成長を促進し、白髪の生成を遅らせるための可食性組成物を提供することにある。該組成物は、毛髪の成長を促進できるとともに、白髪の生成を遅らせることもできる。特に断りのない限り、含有量を示す際、以下の「%」は「重量%」を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、以下の技術手段により実現される:
一形態で、本発明は、重量部で、
核タンパク質ペプチド 2~30部;
全コーヒー果実エキス 1~25部;
酵母複合粉 5~60部;
コラーゲンタンパク質 10~55部
を含む可食性組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
従来技術では、該4種類の原料単独で毛髪の成長を促進する作用を有する報告がなく、核タンパク質ペプチドと全コーヒー果実エキスとがチロシナーゼに対して活性化作用を有する報告も発現されていない。発明者は、長期の実験過程において、核タンパク質ペプチド及び全コーヒー果実エキスはチロシナーゼに対する活性化率がそれぞれ31%と37%であるが、両者を合理的に配合した場合、活性化率が44%まで向上できることを創造的に知見した。同時に、酵母複合粉とコラーゲンタンパク質とは、毛嚢の生長に栄養分を提供することによって、頭髪の生長を促進する。該4種類の成分を本発明の上記の配合比で得られる組成物は、毛髪の成長を促進するとともに、白髪の生成を遅らせることができる。
【0008】
本発明においては、核タンパク質ペプチドは、動植物や微生物の細胞核から抽出した、核酸(例えば、DNA、RNA、及び/またはそれらの塩の形)と、タンパク質(例えば、ヒストンやプロタミン等塩基性タンパク質)と、及びそれらのペプチドとを含む混合物である。全コーヒー果実エキスは、コーヒー果実全体から抽出された混合物である。本発明に用いられた核タンパク質ペプチドと、全コーヒー果実エキスと、酵母複合粉とコラーゲンタンパク質等の原料は、いずれも市販品より入手してもよく(例えば、核タンパク質ペプチドはMaruha Nichiro社より入手可能)、従来技術によって調製してもよい。例えば、核タンパク質ペプチドは、鮭の白子を酵素分解、濃縮・乾燥することによって得られ、全コーヒー果実エキスは、コーヒー果実をエタノール水溶液で抽出、濃縮・乾燥を経て得られる。なお、各原料は、かかる業界基準の品質要求に合致すべきである。
【0009】
ある具体的な実施例では、本発明の可食性組成物において、前記核タンパク質ペプチドにおけるデオキシリボ核酸ナトリウム(DNA-Na)の含有量が、86%以上であることが好ましい。
【0010】
ある具体的な実施例では、本発明の可食性組成物において、前記全コーヒー果実エキスにおけるクロロゲン酸の含有量が30%以上であり、例えば、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、ひいては90%以上である。全コーヒー果実エキスにおけるクロロゲン酸の含有量により、本発明の可食性組成物における全コーヒー果実エキスの使用量を適宜調整できる。別の具体的な実施例では、全コーヒー果実エキスは、20%~50%の総クロロゲン酸と0.5%~5%のプロアンソシアニジンとを含み、前記総クロロゲン酸はネオクロロゲン酸を含み、前記全コーヒー果実エキスに占める前記ネオクロロゲン酸の割合が1%~20%である。
【0011】
ある具体的な実施例では、本発明の可食性組成物において、前記酵母複合粉におけるパントテン酸の含有量が1.1%以上である。酵母複合粉におけるパントテン酸の含有量により、本発明の可食性組成物における酵母複合粉の使用量を適宜調整できる。
【0012】
上記の可食性組成物において、好ましくは、該組成物の総質量を100%とし、核タンパク質ペプチドの含有量が2%~30%である。
【0013】
上記の可食性組成物において、好ましくは、該組成物の総質量を100%とし、全コーヒー果実エキスの含有量が1%~25%である。
【0014】
上記の可食性組成物において、好ましくは、該組成物の総質量を100%とし、酵母複合粉の含有量が5%~60%である。
【0015】
上記の可食性組成物において、好ましくは、該組成物の総質量を100%とし、コラーゲンタンパク質の含有量が10%~55%である。
【0016】
上記の可食性組成物において、好ましくは、該組成物が、核タンパク質ペプチドと、全コーヒー果実エキスと、酵母複合粉とコラーゲンタンパク質とからなる。
【0017】
もう一形態で、本発明は、毛髪の成長を促進するための上記の可食性組成物の使用も提供する。具体的に、毛髪の成長を促進する効果を有する食物の作製における前記可食性組成物の使用を提供する。
【0018】
もう一形態で、本発明は、白髪の発生を遅延させるための上記の可食性組成物の使用も提供する。具体的に、白髪の発生を遅延させる効果を有する食物の作製における前記可食性組成物の使用を提供する。
【0019】
もう一形態で、本発明は、肌質を改善する効果への上記の可食性組成物の使用も提供する。具体的に、肌質を改善する効果を有する食物の作製における前記可食性組成物の使用を提供する。
【0020】
本発明の具体的な実施形態によれば、上記の使用において、前記食物は、本発明の可食性組成物を有効量で含む以外、ある付加物を任意に含んでも良い。前記付加物は、食品分野でよく使われる付加物であってもよく、例えばソルビトールと、ステアリン酸マグネシウムとマルトデキストリンとの中の一種又は多種類の組み合わせであってもよいが、これらに限定されない。
【0021】
本発明の具体的な実施形態によれば、上記の使用において、前記食物は、錠剤、カプセル剤、粉剤又は顆粒剤としてもよく、これらに限定されない。前記錠剤、カプセル剤、粉剤又は顆粒剤の作製について、従来技術に従って行うことができる。
【0022】
本発明の提供する可食性組成物は、毛髪の成長を促進でき、食用1週間後ばかり、細毛が明らかに変化し、食用8週間後に細毛が2~3倍増加し、食用2週間後に白髪率が明らかに低下し、食用8週間後に白髪率が10%~40%低下する。食用3週間後、被験者の皮膚のハリが向上し、食用5週間後に皮膚年齢も有意に低減する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施例における異なる原料によるチロシンキナーゼの活性化作用の比較図である。
【
図2】
図2は、実施例において、本発明の組成物を食用した前後の毛髪の数量変化の比較図である。
【
図3】
図3は、実施例において、本発明の組成物を食用した後の白髪率及び細毛率の変化の比較図である。
【
図4】
図4は、実施例において、本発明の組成物を食用した前後の毛嚢の変化の比較図である。
【
図5】
図5は、実施例において、本発明の組成物を食用した前後の白髪の状況の比較図である。
【
図6】
図6は、実施例において、本発明の組成物を食用した前後の皮膚のハリの変化の比較図である。
【
図7】
図7は、実施例において、本発明の組成物を食用した後の皮膚年齢の変化の比較図である。
【
図8】
図8は、実施例において、本発明の別の組成物を食用した前後の白髪の状況、細毛率及び黒髪の状況の比較図である。
【
図9】
図9は、実施例において、本発明の別の組成物を食用した前後の皮膚のハリ変化の比較図である。
【実施例】
【0024】
本発明の技術特徴、目的及び有益な效果を更に明確に理解させるために、本発明の技術案を以下に詳しく説明するが、本発明の実施可能な範囲が限定されたと理解されてはいけない。
【0025】
実施例1:
本実施例は、重量部で、
核タンパク質ペプチド(DNA-Na含有量>86%) 5部;
全コーヒー果実エキス(クロロゲン酸含有量>30%) 3部;
酵母複合粉(パントテン酸>1.1%) 14部;
コラーゲンタンパク質 20部;
ソルビトール 57.8部;
ステアリン酸マグネシウム 0.2部
を含む、毛髪の成長を促進し、白髪の発生を遅延させる組成物
を提供する。
【0026】
該組成物の作製方法は、重量比率で核タンパク質ペプチド(Maruha Nichiro社より入手)と、全コーヒー果実エキス(コーヒー果実をエタノール水溶液で抽出、濃縮・乾燥して調製された)と、酵母複合粉と、コラーゲンタンパク質と、ソルビトールとステアリン酸マグネシウムとを秤量し、均一に混合させ、打錠して、毛髪の成長を促進し、白髪の発生を遅延させる組成物を作製した。
【0027】
本実施例において、原料である全コーヒー果実エキスによるチロシナーゼの活性化率について、比較実験を行った。比較例はそれぞれ、カシュウエキス、黒ゴマエキス、酵母複合粉、核タンパク質ペプチドを使用した。実験結果は
図1に示した。
図1から分かるように、全コーヒー果実エキスによるチロシナーゼの活性化率が37.39%に達し、全コーヒー果実エキス配合核タンパク質ペプチドによるチロシナーゼの活性化率が44.91%に達し、その他の比較例より高かった。
【0028】
実施例2:
本実施例は、重量部で、
核タンパク質ペプチド(DNA-Na含有量>86%) 8部;
全コーヒー果実エキス(クロロゲン酸含有量>30%) 9部;
酵母複合粉(パントテン酸>1.1%) 22部;
コラーゲンタンパク質 23部;
マルトデキストリン 38部
を含む、毛髪の成長を促進し、白髪の発生を遅延させる組成物
を提供する。
【0029】
該組成物の作製方法は、重量比率で核タンパク質ペプチド(Maruha Nichiro社より入手)と、全コーヒー果実エキス(コーヒー果実をエタノール水溶液で抽出、濃縮・乾燥後に入手)と、酵母複合粉と、コラーゲンタンパク質とマルトデキストリンとを秤量し、均一に混合させ、毛髪の成長を促進し、白髪の発生を遅延させる組成物カプセルを作製した。
【0030】
使用例1:
実施例1の組成物を脱毛症、早老性白髪症の治療に使う。実験結果は
図2と
図3に示した。
図3のAから分かるように、食用2週間後に白髪率が明らかに低下し、食用8週間後に白髪率が10%~40%低下した。
図3のBから分かるように、食用1週間後ばかり、細毛に明らかに変化し、食用8週間後に細毛が2~3倍増加し、食用時期が長くなると、白髪率が明らかに低減した。具体的に
図4と
図5に示す。ここから分かるように、本発明の組成物が毛髪の成長を促進できるとともに、白髪の発生を遅延させることもできる。また、
図6に示すとおり、食用3週間後、被験者は皮膚のハリが向上し、
図7に示すとおり、食用5週間後に、皮膚年齢も低減した。
【0031】
使用例2:
被験者が毎日、実施例2で作製された組成物カプセル1.6gを食用し、毎週、毛嚢器で被験者の頭部の所定位置の毛嚢の状況を検測し、撮像後、その頭髪を計数するとともに、皮膚検測器で被験者の顔部の所定位置の皮膚の状態を検測した。実験結果は
図8と
図9に示した。
図8から分かるように、食用8週間後に、白髪率が有意に低下し(
図8のA、P<0.01)、黒髪率が有意に向上した(
図8のB、P<0.01);食用1週間後に、細毛率が有意に向上した(
図8のC、P<0.05)。ここから分かるように、本発明の組成物が髪の成長を促進できるとともに、白髪の発生を遅延させることもできる。また、
図9に示す通り、食用3週間後、被験者の皮膚のハリが向上した。