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特許7457416ナット連れ回り防止ユニット、それの製造方法およびナット連れ回り防止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】ナット連れ回り防止ユニット、それの製造方法およびナット連れ回り防止方法
(51)【国際特許分類】
   F16B 37/04 20060101AFI20240321BHJP
【FI】
F16B37/04 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023007741
(22)【出願日】2023-01-23
(62)【分割の表示】P 2022046263の分割
【原出願日】2022-03-23
(65)【公開番号】P2023143705
(43)【公開日】2023-10-06
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】318008716
【氏名又は名称】株式会社スペース二十四インフォメーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107674
【弁理士】
【氏名又は名称】来栖 和則
(72)【発明者】
【氏名】吉川 明宏
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】特許第7023024(JP,B1)
【文献】特開平11-287232(JP,A)
【文献】実開平04-071197(JP,U)
【文献】実開昭51-085064(JP,U)
【文献】実開平02-150409(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 37/04
E06C 7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトを少なくとも一対の対辺を有するナットに螺合する際にそのナットの連れ回りを防止するナット連れ回り防止ユニットであって、
一対の軸部を有するU字ボルトと、熱収縮ラップバンドとを含み、
前記ナットが前記U字ボルトに、前記ナットの一対の対辺が前記U字ボルトの一対の軸部によって両側から挟まれて前記ナットの回転が前記一対の軸部によって制限されるように緩く嵌め込まれ、それらU字ボルトとナットとの組合せ体が熱収縮前の熱収縮ラップバンドによって前記ナットが少なくとも部分的に隠れるようにラッピングされ、そのラッピングされた状態で前記熱収縮ラップバンドが加熱されて熱収縮させられ、それにより、前記ナットが前記U字ボルトに緩く嵌め込まれた状態で前記熱収縮ラップバンドによって互いに分離しないように一体化されるナット連れ回り防止ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のナット連れ回り防止ユニットを製造する方法であって、
前記ナットを前記U字ボルトの一対の軸部間に、前記ナットの一対の対辺が前記一対の軸部によって両側から挟まれて前記ナットの回転が前記一対の軸部によって制限されるように緩く嵌め込み、それにより、それらU字ボルトとナットとの組合せ体を構成する工程と、
熱収縮前の熱収縮ラップバンドを用いて前記組合せ体をそれのうち少なくとも前記ナットが少なくとも部分的に隠れるようにラッピングする工程と、
そのラッピングされた状態において、前記熱収縮ラップバンドを加熱して熱収縮させ、それにより、前記ナットと前記U字ボルトとを緩く嵌め込まれた状態で前記熱収縮ラップバンドによって互いに分離しないように一体化する工程と
を含むナット連れ回り防止ユニット製造方法。
【請求項3】
ボルトを少なくとも一対の対辺を有するナットに螺合する際にそのナットの連れ回りを防止する方法であって、
前記ナットをU字ボルトの一対の軸部間に、前記ナットの一対の対辺が前記一対の軸部によって両側から挟まれて前記ナットの回転が前記一対の軸部によって制限されるように緩く嵌め込み、それにより、それらU字ボルトとナットとの組合せ体を構成する工程と、
熱収縮前の熱収縮ラップバンドを用いて前記組合せ体をそれのうち少なくとも前記ナットが少なくとも部分的に隠れるようにラッピングする工程と、
そのラッピングされた状態において、前記熱収縮ラップバンドを加熱して熱収縮させ、それにより、前記ナットと前記U字ボルトとを緩く嵌め込まれた状態で前記熱収縮ラップバンドによって互いに分離しないように一体化する工程と
を含むナット連れ回り防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトをナットに螺合する際にそのナットの連れ回りを防止する技術に関し、特に、そのナットの連れ回りを防止する技術の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ボルトをナットに螺合する際にそのナットの連れ回りを、注文生産品(例えば、特注品、個別生産品など)ではなく、既製品(規格品を含む。)であるU字ボルトを用いて防止する技術が開示されている。
【0003】
ここに、「ナット」としては、例えば、概して正六面体状を成す六角ナット、概して正四面体状を成す四角ナットがある。
【0004】
よく知られているように、既製品であるU字ボルトは、曲線的な基端部と、その基端部の両端部からそれぞれ同じ向きに互いに平行に延び出す一対の軸部とを有するように構成される。それら一対の軸部間に平行すきまが存在する。
【0005】
U字ボルトが既製品である場合には、それの平行すきまの幅寸法(例えば、前記一対の軸部の内面幅)を、予め決められた複数の離散値の中から選択しなければならない。そのため、あるナットが指定された場合に、そのナットの寸法(例えば、ナットの一対の対辺間の距離すなわち二面幅)に応じた値(例えば、略一致する値)で延びる平行すきまを有するというように寸法的な適合したU字ボルトを常に選択できるとは限らない。
【0006】
すなわち、U字ボルトが既製品である場合には、指定されたナットに寸法的に十分に適合するU字ボルトをいつも選択できるわけではないのである。
【0007】
そして、特許文献1に開示された技術によれば、まず、U字ボルトの一対の軸部間にナットが、そのナットのいずれかの平行面対(いずれかの一対の対辺)が一対の軸部の内面との間にすきまを残るように緩く嵌め込まれ、その後、それらU字ボルトとナットとがみだりに分離しないように、接着、溶接、スペーサなどによって互いに結合される。
【0008】
一方、特許文献2には、頭部付きのボルトから座金が離脱することを円筒状の熱収縮チューブを用いて防止する技術が開示されている。ボルトは、頭部とおねじ部とを同軸に有する。
【0009】
この技術によれば、まず、ボルトに座金が、ボルトの頭部下面に接触するように装着される。その状態で、ボルトが、おねじ部の先端を先頭にして、熱硬化前の熱収縮チューブ内に挿入される。その熱収縮チューブは、座金に近い近位端部と、座金から遠い遠位端部とを有する。
【0010】
ボルトは、熱収縮チューブ内にそれの近位端部から挿入され、その挿入は、熱収縮チューブの近位端部の開口端面が座金の下面に接触するまで継続される。このとき、熱収縮チューブの長さがボルトのおねじ部より短いため、その熱収縮チューブの近位端部はもとより、それの遠位端部もボルトのおねじ部上に存在する。
【0011】
その後、熱収縮チューブが、遠位端部において局所的に加熱されて収縮させられる。その結果は、熱収縮チューブが遠位端部において縮径し、その部分(縮径部)は、ボルトのおねじ部に密着して固定される小径部を構成する。
【0012】
一方、熱収縮チューブは、それの近位端部において加熱されず、縮径しないため、その部分は、ボルトのおねじ部より大径となる。その大径部(非縮径部)は、ボルトのおねじ部上において初期位置にある座金の下面に接触し、それにより、座金が初期位置から離脱することを防止するストッパとして機能する。
【0013】
要するに、この技術によれば、ボルトに座金が、ボルトの頭部と、同じボルトのおねじ部に装着された熱収縮チューブの近位端部(非縮径部である大径部)とにサンドイッチされる状態で脱落不能に固定されるのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特許第7023024号公報
【文献】実開平2-150409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明者は、ボルトをナットに螺合する際にそのナットの連れ回りを既製品であるU字ボルトを用いて防止する技術について研究を行った。その結果、特許文献1に開示された従来の技術には改善の余地があることが判明した。
【0016】
具体的には、それらU字ボルトとナットとがみだりに分離しないように両者を一体化するための手法として接着が選択される場合には、使用する接着剤の耐候性が不足すると、夏季などの高温時に接着剤が溶けて劣化したり接着テープが熱膨張するなどして、U字ボルト内においてナットが緩んで脱落するおそれがあった。
【0017】
その代わりに、前記一体化するための手法として溶接が選択される場合には、その溶接作業に専用の設備や場所が必要となり、さらに、作業者が熟練者であることも必要であり、その結果、作業コストが上昇するおそれがあった。
【0018】
その代わりに、前記一体化するための手法としてスペーサが選択される場合には、寸法的に適合する既製品としてのスペーサが存在しない可能性がある。この場合、専用の(個別生産品または注文生産品としての)スペーサを製作しなければならなくなり、作業コストおよび製造コストが上昇するおそれがあった。
【0019】
一方、特許文献2は、ボルトをナットに螺合する際にそのナットの連れ回りをU字ボルトを用いて防止する技術を教えておらず、また、そのU字ボルトを既製品として調達することを教える余地はない。
【0020】
ところで、この文献は、2部品を一体化するために熱収縮チューブを使用する点を教えている。
【0021】
しかし、この文献は、U字ボルトの一対の軸部間にナットを、そのナットの一対の対辺が前記一対の軸部によって両側から挟まれる状態で嵌め込む点も、そのように組み合わされた2部品を一緒に外側から包囲するために熱収縮チューブを使用する点も教えていない。
【0022】
以上説明した事情を背景に、本発明は、ボルトをナットに螺合する際にそのナットの連れ回りを既製品であるU字ボルトを用いて防止する技術であって、その連れ回り防止に必要な構造および作業の単純化ならびに性能向上を容易に達成することが可能なものを提供することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
その課題を解決するために、本発明の第1の側面によれば、ボルトを少なくとも一対の対辺を有するナットに螺合する際にそのナットの連れ回りを防止するナット連れ回り防止ユニットであって、
一対の軸部を有するU字ボルトと、熱収縮ラップバンドとを含み、
前記ナットが前記U字ボルトに、前記ナットの一対の対辺が前記U字ボルトの一対の軸部によって両側から挟まれて前記ナットの回転が前記一対の軸部によって制限されるように緩く嵌め込まれ、それらU字ボルトとナットとの組合せ体が熱収縮前の熱収縮ラップバンドによって前記ナットが少なくとも部分的に隠れるようにラッピングされ、そのラッピングされた状態で前記熱収縮ラップバンドが加熱されて熱収縮させられ、それにより、前記ナットが前記U字ボルトに緩く嵌め込まれた状態で前記熱収縮ラップバンドによって互いに分離しないように一体化されるナット連れ回り防止ユニットが提供される。
【0024】
さらに、上記の課題を解決するために、本発明の第2の側面によれば、上述のナット連れ回り防止ユニットを製造する方法であって、
前記ナットを前記U字ボルトの一対の軸部間に、前記ナットの一対の対辺が前記一対の軸部によって両側から挟まれて前記ナットの回転が前記一対の軸部によって制限されるように緩く嵌め込み、それにより、それらU字ボルトとナットとの組合せ体を構成する工程と、
熱収縮前の熱収縮ラップバンドを用いて前記組合せ体をそれのうち少なくとも前記ナットが少なくとも部分的に隠れるようにラッピングする工程と、
そのラッピングされた状態において、前記熱収縮ラップバンドを加熱して熱収縮させ、それにより、前記ナットと前記U字ボルトとを緩く嵌め込まれた状態で前記熱収縮ラップバンドによって互いに分離しないように一体化する工程と
を含むナット連れ回り防止ユニット製造方法が提供される。
【0025】
さらに、上記の課題を解決するために、本発明の第3の側面によれば、ボルトを少なくとも一対の対辺を有するナットに螺合する際にそのナットの連れ回りを防止する方法であって、
前記ナットをU字ボルトの一対の軸部間に、前記ナットの一対の対辺が前記一対の軸部によって両側から挟まれて前記ナットの回転が前記一対の軸部によって制限されるように緩く嵌め込み、それにより、それらU字ボルトとナットとの組合せ体を構成する工程と、
熱収縮前の熱収縮ラップバンドを用いて前記組合せ体をそれのうち少なくとも前記ナットが少なくとも部分的に隠れるようにラッピングする工程と、
そのラッピングされた状態において、前記熱収縮ラップバンドを加熱して熱収縮させ、それにより、前記ナットと前記U字ボルトとを緩く嵌め込まれた状態で前記熱収縮ラップバンドによって互いに分離しないように一体化する工程と
を含むナット連れ回り防止方法が提供される。
【0026】
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項には番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本発明が採用し得る技術的特徴の一部およびそれの組合せの理解を容易にするためであり、本発明が採用し得る技術的特徴およびそれの組合せが以下の態様に限定されると解釈すべきではない。すなわち、下記の態様には記載されていないが本明細書には記載されている技術的特徴を本発明の技術的特徴として適宜抽出して採用することは妨げられないと解釈すべきなのである。
【0027】
さらに、各項を他の項の番号を引用する形式で記載することが必ずしも、各項に記載の技術的特徴を他の項に記載の技術的特徴から分離させて独立させることを妨げることを意味するわけではなく、各項に記載の技術的特徴をその性質に応じて適宜独立させることが可能であると解釈すべきである。
【0028】
(1) ボルトを少なくとも一対の対辺を有するナットに螺合する際にそのナットの連れ回りを防止するナット連れ回り防止ユニットであって、
前記ナットと、
そのナットが着座すべき座面に対向するように配置される既製品であるU字ボルトであって、曲線的な基端部と、その基端部の両端部からそれぞれ同じ向きに互いに平行に延び出す一対の軸部とを含み、それら一対の軸部間に前記ナットが、そのナットの一対の対辺が前記一対の軸部によって両側から挟まれる状態で前記ナットが前記U字ボルトに対して少なくとも回転方向および軸傾斜方向にあそびを有する(例えば、限度内での回転および軸傾動が可能である)ように緩く嵌め込まれ、それにより、当該U字ボルトと前記ナットとの組合せ体が構成されるものと、
熱収縮ラップバンドであって、熱収縮前の状態で、前記組合せ体をそれのうち少なくとも前記ナットが少なくとも部分的に隠れるようにラッピングし、そのラッピングされた状態において、当該熱収縮ラップバンドが加熱されて熱収縮させられることにより、前記ナットと前記U字ボルトとを緩く嵌め込まれた状態で互いに分離しないように一体化するものと
を含むナット連れ回り防止ユニット。
【0029】
(2) 前記熱収縮ラップバンドは、熱収縮チューブを刃物によって必要長さに切断して製作される(1)項に記載のナット連れ回り防止ユニット。
【0030】
(3) 前記熱収縮チューブは、手動の刃物によって切断され易い易切断性を有する素材によって構成される(2)項に記載のナット連れ回り防止ユニット。
【0031】
(4) 前記U字ボルトは、前記座面に、前記基端部と前記一対の軸部とのそれぞれにおいて3点で固定される(1)ないし(3)項のいずれかに記載のナット連れ回り防止ユニット。
【0032】
(5) さらに、前記U字ボルトを前記座面に3点で固定するために、3個の取付具を含み、
各取付具は、互いに共通の部品である(4)項に記載のナット連れ回り防止ユニット。
【0033】
(6) 前記3個の取付具は、前記基端部のうちの棒状部と、前記一対の軸部のそれぞれの棒状部とより成る3個の棒状部にそれぞれ使用され、
各取付具は、対応する棒状部を把持する把持部と、前記座面に取り付けられる取付部とを含む(5)項に記載のナット連れ回り防止ユニット。
【0034】
(7) 各取付具は、一体品であり、
前記把持部は、概して中空円筒状を成し、それの内部空間において前記棒状部を把持するとともに、一母線に沿って延びる開口部を形成する一対の端部を有し、
前記取付部は、前記一対の端部から、概して互いに平行に延び出す一対の取付片であって、各々板状を成すとともに自然状態において厚さ方向に重なり合うように配置されるものを含み、
前記把持部が弾性ヒンジとして機能することにより、前記一対の取付片は、外力を受けると、前記把持部を支点として、前記自然状態から展開状態に遷移し、その展開状態において前記棒状部が前記一対の取付片を経由して前記把持部内に挿入され、その挿入後、前記把持部の弾性により、前記自然状態に復元する(6)項に記載のナット連れ回り防止ユニット。
【0035】
(8) 各取付具ごとに、前記一対の取付片は、互いに重なり合う状態で、それらに共通のスクリューを用いて前記座面にねじ止めされる(7)項に記載のナット連れ回り防止ユニット。
【0036】
(9) 前記取付具は、既製品である弾性クリップである(5)ないし(8)項のいずれかに記載のナット連れ回り防止ユニット。
【0037】
(10) 前記ボルトおよび前記ナットは、第1の部材を第2の部材に締め付けるために使用され、
前記ボルトは、それら2部材を前記第1の部材から前記第2の部材に向かって貫通し、
前記座面は、前記第2の部材の複数の側面のうち前記第1の部材とは反対側に位置するものに設定される(1)ないし(9)項のいずれかに記載のナット連れ回り防止ユニット。
【0038】
(11) ボルトを少なくとも一対の対辺を有するナットに螺合する際にそのナットの連れ回りを既製品であるU字ボルトを用いて防止するナット連れ回り防止ユニットを製造する方法であって、
前記U字ボルトは、前記ナットが着座すべき座面に対向するように配置され、
そのU字ボルトは、曲線的な基端部と、その基端部の両端部からそれぞれ同じ向きに互いに平行に延び出す一対の軸部とを含み、
当該方法は、
前記一対の軸部間に前記ナットを、そのナットの一対の対辺が前記一対の軸部によって両側から挟まれる状態で前記ナットが前記U字ボルトに対して少なくとも回転方向および軸傾斜方向にあそびを有する(例えば、限度内での回転および軸傾動が可能である)ように緩く嵌め込み、それにより、前記U字ボルトと前記ナットとの組合せ体を構成する工程と、
熱収縮前の熱収縮ラップバンドを用いて前記組合せ体をそのうち少なくとも前記ナットが少なくとも部分的に隠れるようにラッピングする工程と、
そのラッピングされた状態において、前記熱収縮ラップバンドを加熱して熱収縮させ、それにより、前記ナットと前記U字ボルトとを緩く嵌め込まれた状態で互いに分離しないように一体化する工程と
を含むナット連れ回り防止ユニット製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、本発明の例示的な一実施形態に従うナット連れ回り防止ユニットを示す斜視図である。
図2図2は、図1におけるAA断面図である。
図3図3は、図1における複数の取付具のうち代表的なものをスクリューと共に示す斜視図である。
図4図4は、図1に示すナット連れ回り防止ユニットが使用される構造物の一例である立て看板を、関連する例示的な諸元寸法(単位:mm)と共に、かつ、身長が170cm(1700mm)である作業者と対比して示す正面図である。
図5図5は、図4に示す立て看板のうちの3層式の表示板を、それの中央層を構成する中空のフレームを視認可能とするために、前層を構成する面板を部分的に捲った状態で示す斜視図である。
図6図6は、図4に示す立て看板において、片方の支柱と、図5に示すフレームの両側部のうちその支柱に対向するものとを互いに連結する連結機構を示す部分断面正面図である。
図7図7(a)は、図1に示すナット連れ回り防止ユニットにおいて、それの構成要素であるナットが、同じく構成要素であるU字ボルトの一対の軸部間に緩く嵌め込まれる様子を示す平面図であり、同図(b)は、部分断面側面図である。
図8図8は、図1に示すナット連れ回り防止ユニットの別の構成要素である熱収縮ラップバンドが、熱収縮チューブから個々に切り出される段階から、加熱されて冷却される段階遷移する様子を斜視図で示す状態遷移図である。
図9図9は、図8に示す熱収縮ラップバンドがU字ボルトに対し、熱収縮の前後で変化する様子を示す部分断面側面図である。
図10図10(a)は、図1に示すナット連れ回り防止ユニットの一変形例を示す断面図であり、同図(b)は、別の変形例を示す断面図である。
図11図11は、本発明の例示的な一実施形態に従うナット連れ回り防止ユニット製造方法であって図1に示すナット連れ回り防止ユニットを製造するものを概念的に表す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明のさらに具体的な例示的な実施の形態のうちのいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
【0041】
図1には、本発明の例示的な一実施形態に従うナット連れ回り防止ユニット(以下、単に「ユニット」と略称する。)70が斜視図で示されている。図2には、図1におけるAA断面図が示されている。図1には、そのユニット70に使用される外部部品としてのボルト72も示されている。
【0042】
概略的に説明するに、このユニット70は、既製品であるボルト72を既製品であるナット100であって少なくとも一対の対辺を有するものに螺合する(例えば、ねじ込む)際にそのナット100の連れ回りを既製品であるU字ボルト102を用いて防止することを目的として構成される。
【0043】
その目的を達するため、このユニット70は、ナット100と、U字ボルト102と、熱収縮ラップバンド120と、複数の取付具200とを含むように構成される。それら部品をいずれも、個別生産品ではなく、既製品(規格品を含む。)である。
【0044】
後に図8を参照して詳述するが、熱収縮ラップバンド120は、既製品の熱収縮チューブ(粗材、原材料)122を、ナット100とU字ボルト102との組合せ体108の実長さに、熱収縮ラップバンド120の目標の熱収縮量を見込こんだ長さで切断して製作される。
【0045】
ここに、熱収縮チューブ122の概要を説明するに、熱収縮チューブ122は、塩化ビニール、シリコーンゴム(シリコーンを主成分とする合成樹脂のうちゴム状のもの)、フッ素系ポリマーなどの材料を用いて製作される。熱収縮チューブ122は、通常、押出し成型を用いて押出成形品として製作される。
【0046】
一例においては、そのように成形された熱収縮チューブ122を特殊な方法(例えば、電子線照射法)で均一に膨張させることにより、熱収縮前の熱収縮チューブ122が完成し、それを加熱すると、熱収縮チューブ122中の特殊なポリマーが軟化して復元力が作用して元の状態に復元する。
【0047】
熱収縮チューブ122は、通常、約70℃以上の高温で加熱すると収縮するため、その加熱作業は、通常、ヒートガンと呼ばれる専用のドライヤーを用いて行われる。
【0048】
複数の取付具200は、互いに共通する既製品の弾性クリップである。図3には、それら取付具200のうち代表的なものがスクリュー202と共に斜視図で示されている。
【0049】
<ユニットの設計方針>
【0050】
このユニット70を設計するに際し、本発明者は、次の複数の目標を設定し、それら目標が同時に達成されるようにこのユニット70の構造および製法を開発した。
【0051】
1.製作コストの削減
【0052】
本発明者は、ユニット70を構成するすべての部品またはほぼすべての部品をいずれも既製品として調達すれば、ユニット70の部品コストおよび製作コストを削減することが容易になることに気が付いた。
【0053】
2.製作作業性の向上
【0054】
(1)切断作業
【0055】
個々のユニット70のため、熱収縮ラップバンド120を熱収縮チューブ122から所望長さでカッタなど切断して製作する。よって、熱収縮チューブ122が易切断性を有することが必要である。例えば、熱収縮チューブ122が高純度の生ゴムによって構成されると、作業者がカッタや鋏みなどの手動刃物で簡単に切断することは困難である。
【0056】
そこで、本発明者は、それら熱収縮材として、例えば合成樹脂成分とゴム成分との配合材を選択すれば、熱収縮チューブ122の易切断性が実現されることに気が付いた。このように、熱収縮チューブ122の切断作業が単純化すると、熟練の作業者が不要となる。
【0057】
(3)組立・加熱作業
【0058】
本発明者は、作業者が、組合せ体108をそれより大きめの熱収縮ラップバンド120でラッピングし、それをヒーターなどで加熱してユニット70を完成させれば、そのユニット70の組立・加熱作業を簡単に行い得ることに気が付いた。
【0059】
3.耐候性の向上
【0060】
本発明者は、熱収縮チューブ122の材料をうまく選定すれば、熱収縮ラップバンド120の耐候性を向上させ得ることに気が付いた。
【0061】
4.ねじ込み作業性の向上
【0062】
作業者が、ボルト72をユニット70のナット100にねじ込む際、そのユニット70もそれのナット100も作業者が目視できない場合がある。例えば、後に図5および図6を参照して説明するように、ユニット70が、閉じられた空間内に固定されている場合である。
【0063】
この場合には、作業者は、ナット100の実際の位置および向きをブラインドで、ボルト72を使って手さぐりで把握せざるを得ない。
【0064】
本発明者は、このようなブラインド作業はもとより、目視可能な作業においても、ナット100がU字ボルト102内において一定範囲内で浮動状態(緩く嵌め込まれている状態、自由変位可能状態)で支持されているとともに熱収縮ラップバンド120によってナット100が弾性支持(弾性復元可能に支持)されていることに着目すれば、ナット100の自己芯出し(センタリング)機能が実現されることに気が付いた。
【0065】
その自己芯出し機能は、ボルト72の実際の位置および向きに追従するように、ナット100が自律的に位置および向きを変化させ、ボルト72に適合した最適な位置をナット100が自律的に選択する機能である。
【0066】
具体的には、上記の弾性支持のおかげで、ナット100は、ボルト72から外力が作用しない限り、中立位置にある。ボルト72のナット100へのアクセス(接触)が不適切であったためにそのボルト72をナット100から退避させると、ナット100はそのときの位置に滞留するのではなく、中立位置に弾性復元する。それにより、作業者は、ねじ込みに失敗した前回いの経験をもとに、今回のねじ込み作業を、前回の作業内容から修正された内容で、再開することが可能となる。
【0067】
すなわち、ひとたびナット100が不適切な位置または向きに陥っても、作業者がボルト72をナット100から解放すれば、そのナット100は勝手に初期位置に復元するから、作業者は、ねじ込み作業を毎回、最初からやり直すことが可能となるのである。
【0068】
よって、不慣れな作業者でも、ねじ込み作業が容易となる。
【0069】
<ユニットが使用される構造物の例>
【0070】
このユニット70は、種々の構造物に使用可能であり、その構造物の一例は、図4に示す立て看板20である。
【0071】
図4に示すように、その立て看板20は、支持面としての敷地面に対して垂直に固定される一対の支柱22および22と、それら支柱22および22によって両側から挟まれて支持される表示板30とを含むように構成される。表示板30は、横長であっても縦長であってもよい。図4に示す一例においては、表示板30が横長である。
【0072】
図5に示すように、表示板30は3層式であり、前側の表示面32を有する前層を構成する面板50と、後側の表示面32を有する後層を構成する面板50と、それら間の中央層を構成する中空のフレーム56とのサンドイッチ構造を有する。同図においては、説明の便宜上、フレーム56を視認可能とするために、前側の面板50が部分的に捲られている。
【0073】
同図に示すように、フレーム56は、必要な剛性を確保しつつ軽量化するため、フレーム56の板厚方向に貫通する複数の中空部を有する。
【0074】
図6に示すように、立て看板20は、片方の支柱22と、フレーム56の両側部のうちその支柱22に対向するものとを連結する連結機構60を有する。
【0075】
<連結構造の仕組み>
【0076】
図6に部分断面正面図で示すように、連結機構60は、支柱22とフレーム56の側部とであって互いに対向するものを、高さ位置が異なる3個のポイントH1(最上段位置),H2(中段位置)およびH3(最下段位置)においてそれぞれ互いに連結するために、それら3個の連結位置H1,H2,H3に対応する3個のユニット70,70,70を有する。本実施形態においては、支柱22が「第1の部材」を構成し、また、フレーム56が「第2の部材」を構成している。
【0077】
それらユニット70は、互いに共通する構成を有しており、いずれのユニット70も、めねじ部74としてのナット100に外部部品としてのボルト72が作業者によってねじ込まれる。ボルト72は、既製品として調達され、頭部76とおねじ部78とを同時に有する。
【0078】
図6に示すように、ボルト72は、頭部76が支柱22の外面80から露出する状態で、支柱22を太さ方向に貫通し、おねじ部78の先端部が支柱22の内面82から突出している。その突出部84は、フレーム56の外面86からその内部空間内に進入し、それを太さ方向に貫通し、やがてフレーム56の内面88から中空部90内に突出している。
【0079】
<ユニットの構造>
【0080】
1.ナット
【0081】
図7(a)に示すように、ナット100は、ボルト72のおねじ部78が螺合するめねじ部74を有する。ナット100の頭部76は、六角形断面を有する外周面を有する。その外周面は、3対の平行面すなわち3対の対辺を有する。よって、ナット100は、二面幅すなわち対辺寸法を有する。
【0082】
図6に示すように、ナット100は、表示板30のフレーム56の内面88を座面とし、ボルト72との締付け状態において、その座面88に直にまたは介在物を介して着座させられる。
【0083】
2.U字ボルト
【0084】
図2に示すように、U字ボルト102は、座面88に対し、略平行に対向するように配置される。一例においては、U字ボルト102が、熱収縮ラップバンド120の両側部、すなわち、後に詳述する近位面部124および遠位面部126のうちの一方である近位面部124が介在する状態で座面88に対向させられる。別の例においては、図10に示すように、U字ボルト102が座面88上に接触状態で配置される。U字ボルト102は、コの字ボルトと称されるものであっても、C字ボルトと称されるものであってもよい。
【0085】
図7(a)は、ユニット70において、ナット100がU字ボルト102の一対の軸部104,104間に緩く嵌め込まれる様子を示す平面図であり、同図(b)は、部分断面側面図である。
【0086】
U字ボルト102は、図7(a)に示すように、曲線的な基端部(概してC字状を成す部分もしくは曲線部または準直線部もしくは直線部)103と、その基端部103の両端部からそれぞれ同じ向きに互いに平行に延び出す、一対の直線部または平行部としての一対の軸部104,104とを有する。それら基端部103および一対の軸部104,104は、いずれも、幾何学的に同一平面上に延びている。
【0087】
図7(a)および(b)に示すように、それら一対の軸部104,104間にナット100が、そのナット100の一対の対辺が一対の軸部104,104によって両側から挟まれる状態でナット100がU字ボルト102に対して少なくとも回転方向および軸傾動方向にあそびを有するように緩く嵌め込まれる。それにより、ナット100とU字ボルト102との組合せ体108が構成される。
【0088】
そのあそびは、任意選択的に、さらに、一対の軸部104,104を一緒に通過する平面(以下、「U字ボルト平面」という。)の方向すなわちナット100の軸線に対して直角な平面(以下、「ナット平面」という。)の方向(以下、「ナット直径方向」という。)のあそび、および/またはU字ボルト平面の法線方向すなわちナット100の軸線の方向(以下、「ナット軸線方向」という。)のあそびが含まれる。
【0089】
ここに、「自転方向のあそび」を「限度付き面内回転(面内力に起因する回転)」という。また、「軸傾動方向のあそび」を「限度付き面外回転(面外力に起因する回転)」という。また、「ナット直径方向のあそび」を「限度付き横移動(面内力に起因する並進運動)」という。また、「ナット軸線方向のあそび」を「限度付き縦移動(面内力に起因する並進運動)」という。
【0090】
面内回転の限度位置は、ナット100の一対の対角が同時に一対の軸部104,104に接触することによって決まる。また、面外回転の限度位置は、ナット100の近位面部124および遠位面部126のそれぞれエッジ部が熱収縮ラップバンド120に強く接触することによって決まる。また、横移動の限度位置は、ナット100が基端部103に接触することによって決まる。また、縦移動の限度位置は、ナット100の近位面部124または遠位面部126が熱収縮ラップバンド120に強く接触することによって決まる。
【0091】
このとき、ナット100の二面幅(対辺寸法)は、一対の軸部104,104の一対の内面間の距離(最短距離であり、以下、「内面間距離」という。)より短いが、ナット100の対角寸法は内面間距離より長い。よって、ナット100は、一対の軸部104,104間において、それら一対の軸部104,104に対し、一定角度以上は相対回転(自転)しないというように、相対回転限度が存在する。これにより、U字ボルト102が空間に固定される限り、ナット100がボルト72と共に連れ回ることが防止される。
【0092】
3.熱収縮ラップバンド
【0093】
熱収縮ラップバンド120は、熱収縮前の状態で、組合せ体108をそれのうち少なくともナット100が少なくとも部分的に(例えば、実質的に全体的に、力学的に支持されるように)隠れるようにラッピングする。そのラッピングされた状態において、熱収縮ラップバンド120は、加熱されて熱収縮させられる。それにより、ナット100とU字ボルト102とが、前記あそびが少なくとも部分的に許容されるように緩く嵌め込まれた状態で互いに分離しないように一体化される。
【0094】
熱収縮ラップバンド120は、熱収縮チューブ122から分離したものであるため、熱収縮チューブ122の特性は熱収縮ラップバンド120の特性に継承され、ここに、熱収縮チューブ122の特性はその熱収縮チューブ122の仕様によって決まる。
【0095】
熱収縮チューブ122の仕様は、前述の複数の目的を達成するために、すなわち、製作作業性、ねじ込み作業性などを向上させるために、例えば、次のように選定された。
【0096】
(1)製品情報
【0097】
製造元:協和ハーモネット株式会社
品番:NPE P30 1m
【0098】
(2)寸法情報
【0099】
収縮前内径:30mm
収縮後内径:15mm
厚さ:1mm
長さ:1m
【0100】
(3)材質情報
【0101】
材質:エチレンプロピレンゴム
収縮温度:120℃以上
径方向収縮率:50%
【0102】
4.取付具
【0103】
図1に示す3個の取付具200は、図2に示すように、基端部103のうちの棒状部(概してC字状を成す基端部103のうちの一部である直線部、準直線部または曲線部)203と、一対の軸部104,104のそれぞれの棒状部203,203とより成る3個の棒状部203,203,203にそれぞれ使用される。各取付具200は、対応する棒状部203を把持する把持部206と、座面88に取り付けられる取付部208とを含む。
【0104】
各取付具200は、一体品である。把持部206は、概して中空円筒状を成し、それの内部空間において、対応する棒状部203を把持するとともに、一母線に沿って延びる開口部を形成する一対の端部210,210を有する。
【0105】
取付部208は、一対の端部210,210から、概して互いに平行に延び出す一対の取付片212,212であって、各々板状を成すとともに自然状態において厚さ方向に重なり合うように配置されるものを含む。
【0106】
把持部206が弾性ヒンジとして機能することにより、一対の取付片212,212は、外力を受けると、把持部206を支点として、前記自然状態から展開状態に遷移し、その展開状態において棒状部203が一対の取付片212,212を経由して把持部206内に挿入され、その挿入後、把持部206の弾性により、前記自然状態に復元する。
【0107】
各取付具200ごとに、一対の取付片212,212は、互いに重なり合う状態で、それらに共通のスクリュー202を用いて座面88にねじ止めされる。
【0108】
<ユニット製造方法>
【0109】
次に、図11に示す工程図を参照することにより、ユニット70が製造される方法の一例を説明する。
【0110】
S1:組合せ体を準備する工程
【0111】
作業者は、一対の軸部104,104間にナット100を上述のようにして緩く嵌め込み、それにより、図1および図7に示すように、U字ボルト102とナット100との組合せ体108を構成する。
【0112】
S2:熱収縮ラップバンド120を準備する工程
【0113】
図8は、ユニット70のうちの熱収縮ラップバンド120が、熱収縮チューブ122から手動の刃物(例えば、鋏またはカッター)によって個々に切り出される段階(開始段階)から、加熱されて冷却される段階(最終段階)までに遷移する様子を斜視図で示す状態遷移図である。
【0114】
この工程においては、作業者が、図8の上部に示すように、原材料としての熱収縮チューブ122を手動の刃物によって必要長さに切断し、それにより、熱収縮ラップバンド120を製作する。一例においては、熱収縮チューブ122が、手動の刃物によって切断され易い易切断性を有する素材によって構成される。
【0115】
S3:熱収縮ラップバンド120の穴明け工程
【0116】
図9に示すように、熱収縮ラップバンド120は、同図における上面部、すなわち、ねじ込み前のボルト72に近い近位面部124と、同図における下面部、すなわち、ねじ込み前のボルト72から遠い遠位面部126とにそれぞれ、ボルト通し穴128,130を有する。
【0117】
ボルト通し穴128は、ボルト72がナット100に接近してねじ込まれる際にボルト72が最初に通過する。一方、ボルト通し穴130は、ボルト72がナット100にねじ込まれてそのナット100から部分的に突出する際にボルト72が通過する。
【0118】
しかし、ボルト72がナット100との螺合によって支柱12および表示板30のフレーム56に完全に締め付けられたときに、ボルト72の先端部がナット100の遠位面部126からほとんど突出しないようにボルト72の長さが選択されている場合がある。この場合には、遠位面部126においてボルト通し穴130は省略可能である。
【0119】
この穴明け工程においては、作業者が、例えば手動工具としての穿孔パンチ(図示しない)を用いることにより、近位面部124と遠位面部126とのうち穴明けが必要なものを穿孔する。
【0120】
S4:熱収縮ラップバンド120を用いたラッピング工程
【0121】
作業者は、熱収縮ラップバンド120を、図8の中央部に示すように、熱収縮前の状態で、図1および図9に示すように、組合せ体108のうち少なくともナット100が実質的に全体的に隠れるように収容される状態で、組合せ体108を弛緩状態(自然状態、非圧迫状態、非緊張状態)でラッピング(包囲)する。
【0122】
S5:熱収縮ラップバンド120を加熱する工程
【0123】
図9は、熱収縮ラップバンド120がU字ボルト102に対し、熱収縮の前後で変化する様子を示す部分断面側面図である。
【0124】
前記ラッピングされた状態において、作業者は、例えばハンドヒーターを用いることにより、図8の最下部に示すように、熱収縮ラップバンド120を加熱して熱収縮させる。
それにより、図1および図9に示すように、ナット100とU字ボルトと102が前記あそびが少なくとも部分的に許容されるように緩く嵌め込まれた状態で互いに分離しないように一体化される。このとき、熱収縮ラップバンド120は組合せ体108を緊張状態(圧迫状態)でラッピングする。
【0125】
S6:熱収縮ラップバンド120を冷却する工程
【0126】
その後、作業者は、熱収縮ラップバンド120を自然にまたは強制的に冷却し、それにより、熱収縮ラップバンド120を常温に戻す。このとき、熱収縮ラップバンド120は、温度変化に対する状態の不可逆性から、収縮状態に維持され、組合せ体108の一体性も維持される。
【0127】
<ユニット70の取付方法>
【0128】
以上のようにしてユニット70が構成された後、作業者は、そのユニット70を表示板30のフレーム56の内面88に取り付ける。
【0129】
T1:取付具を用いてユニット70をフレーム56に取り付ける工程
【0130】
フレーム56には、図2に示すように、予め、ボルト72が通過するための貫通穴220が形成されている。作業者は、その貫通穴220とユニット70内のナット100またはボルト通し穴128とが一致するように、ユニット70を表示板30のフレーム56の内面88上において位置決めする。
【0131】
その状態で、作業者は、図1に示すように、複数の取付具200を用いてU字ボルト102をフレーム56に固定する。作業者は、図3に示すように、手動工具としてのドライバーまたは自動工具としての電動工具を用いることにより、スクリュー202を、各取付具200の取付穴または挿入孔としての貫通穴204を通過して、フレーム56をタッピングしながらフレーム56内にねじ込み、それにより、各取付具200をフレーム56に固定する。
【0132】
一例においては、図1に示すように、U字ボルト102が座面88に、基端部103と一対の軸部104,104とのそれぞれにおいて3点で固定される。
【0133】
<2部材の締付け方法>
【0134】
T2:ボルト72をユニット70内のナット100にねじ込む工程
【0135】
作業者は、ボルト72とナット100とで、前記「第1の部材」としての支柱22を、前記「第2の部材」としてのフレーム56に締め付けて固定するために、作業者が、前述の自己芯出し(センタリング)機能を活用して、ボルト72を回転させつつ前進させてナット100に螺合する。このとき、ナット100がボルト72の回転につれて回転しないようにするために、U字ボルト102がナット100のための連れ回り防止部材として作用する。
【0136】
図2に示す例においては、熱収縮ラップバンド120が、ボルト72により、ナット100と一緒に共締めされ、それにより、ボルト72との締付け状態で、熱収縮ラップバンド120のうちの近位面部124がU字ボルト102と座面88との間に挟み込まれて(締め付けられて)圧迫される。
【0137】
すなわち、図2に示す例においては、熱収縮ラップバンド120のうちの近位面部124が、ナット100と表示板30のフレーム56との間に挟み込まれて圧迫されるのである。
【0138】
これに対し、図10(a)に示すように、近位面部124が、ナット100の通過を可能にする貫通穴(ボルト通し穴128より大径)132を有し、ナット100が直にフレーム58の外面88に接触するようにすれば、熱収縮ラップバンド120のうちの近位面部124の共締めが回避される。
【0139】
また、同図(b)に示すように、近位面部124が、ナット100より小径または大径であるスペーサ136の通過を可能にする貫通穴(ボルト通し穴128より大径)134を有し、ナット100がスペーサ136を介してフレーム56の外面88に接触するようにすれば、熱収縮ラップバンド120のうちの近位面部124の共締めが回避される。
【0140】
上述のように、貫通穴132またはスペーサ136の有無に応じ、ナット100とU字ボルト102との間の、ナット軸線方向における相対変位が必要となるが、熱収縮ラップバンド120は剛体ではなく、軟質体または弾性体であるため、その相対変位が許容される。
【0141】
なお付言するに、本実施形態においては、ボルト72が、頭部付きのボルトであっても、頭部なしのボルトであってもよい。頭部なしのボルトとして、例えば、長ねじ、全ねじ、部分ねじ(例えば、両端ねじ)がある。ボルト72が頭部なしのボルトである場合には、本実施形態において連れ回りが防止される対象としてのナット100とは別のナットが、同じボルトのうち、連れ回り防止対象であるナット100の螺合位置とは反対側の位置に螺合される。
【0142】
以上、本発明の例示的な実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[発明の概要]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11