(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】弾性波デバイスを含むモジュール
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20240321BHJP
H01L 23/08 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
H03H9/25 A
H01L23/08 A
(21)【出願番号】P 2023061791
(22)【出願日】2023-04-05
(62)【分割の表示】P 2018238818の分割
【原出願日】2018-12-20
【審査請求日】2023-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】518453730
【氏名又は名称】三安ジャパンテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156018
【氏名又は名称】若田 充史
(74)【代理人】
【識別番号】100081569
【氏名又は名称】若田 勝一
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 浩一
(72)【発明者】
【氏名】中村 博文
(72)【発明者】
【氏名】門川 裕
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-261582(JP,A)
【文献】特開2013-251323(JP,A)
【文献】特開2008-187054(JP,A)
【文献】特開2010-245704(JP,A)
【文献】国際公開第2008/114490(WO,A1)
【文献】特開2005-086615(JP,A)
【文献】特開2006-211612(JP,A)
【文献】特開2007-059470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/145-9/76
H01L 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空構造を要する弾性波デバイスを含むモジュールにおいて、
部品実装面に複数の導電性パッドが形成された基板と、
前記基板の前記部品実装面に対面する面に電極配置部分があり、かつ前記導電性パッドに電気的に接続される導電性パッドを有する少なくとも1つの弾性波デバイスと、
前記基板の前記部品実装面の前記導電性パッドに電気的に接続される導電性パッドを有する、弾性波デバイス以外の少なくとも1つのフリップチップ実装デバイスと、
前記基板の前記部品実装面と、前記弾性波デバイスの周辺部との間に設けられ、各弾性波デバイスと前記基板との間に前記電極配置部分を囲む中空部を形成すると共に、前記中空部に外部から封止樹脂が浸入することを阻止するダムと、を備え、
前記基板との間に中空部が形成される弾性波デバイスと、弾性波デバイス以外のフリップチップ実装デバイスとが隣接して配置され、
前記フリップチップ実装デバイスと前記基板との間にアンダーフィル材が充填され、
前記ダムは、前記弾性波デバイスに隣接する前記フリップチップ実装デバイス側の縁部の平面形状が凹凸形状をなし、
前記ダムの前記凹凸形状をなす前記縁部は、少なくともその一部が、前記アンダーフィル充填の際に空気の通路を確保するための、前記隣接するフリップチップ実装デバイスのチップ端よりも外側に位置する凹部を備え、
前記ダムは、前記弾性波デバイスの基板対向面側の少なくとも一部が、前記弾性波デバイスの基板対向面の表面と接着され、
前記ダムの基板側及び中空部側以外の部分であって、前記弾性波デバイスと接着されていない部分に封止樹脂が接する
弾性波デバイスを含むモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空構造を要する弾性波デバイスを含むモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話端末や携帯情報端末等の通信機器端末において、フィルタやデュプレクサ等のRFデバイスは、小型化のためにそれらをフロントエンドモジュールやパワーアンプ等と集積化することにより、マルチチップモジュールとして構成される傾向にある。これらのマルチチップモジュールにおいては、1つの共通基板上に複数のチップ部品が実装され、モールド樹脂により封止される。
【0003】
この基板上に実装されるチップ部品が、SAWフィルタやBAWフィルタを構成するもののように、中空構造を要する弾性波デバイスにおいては、従来は個々の弾性波デバイスチップごとに中空部を形成していた(例えば特許文献1参照)。すなわち、
図5(a)に示すように、従来の弾性波デバイス50は、弾性波デバイスの専用基板51と、ベアチップ52と、中空部56とを備える。専用の基板51と弾性波デバイスのベアチップ52との間には、中空部56形成のためのダム54が設けられ、かつ専用の基板51とベアチップ52との間は、接続部53により電気的、機械的に接続される。このダム54は、弾性波デバイス50毎に設けられる封止樹脂55が、中空部56に浸入して、ベアチップ52の電極配置部分(電極52aが配置されている周辺)に入り込むことを防止する。これらの弾性波デバイス50は、他の弾性波デバイス50あるいは中空構造を要しない他の能動素子や受動素子と共に、共通基板57に接続部58を介して接続して実装する場合、不図示の封止樹脂により覆われる。
【0004】
この従来の弾性波デバイスの構造、すなわち個々の弾性波デバイス50ごとに中空部56を有するチップを構成し、他の部品と共に共通基板57に実装してモジュール化すれば、以下のようなメリットがある。第一に、製造工程の都合上、先に弾性波デバイス等の部品をチップとして製造しておきさえすれば、その後は、そのチップを共通基板57へ実装するための製造装置又は製造ラインを用いることが可能であって、多種類多機能の実装装置のない環境でも製造が容易である。第二に、弾性波デバイス50の部品単体としての特性把握や保証がしやすいため、モジュールの設計がしやすい。第三に、モジュールに不良が発生した場合に、どこに不具合が発生してるのかが解析しやすく、その不具合がどの製造者又は製造部署が管理していた工程に起因しているかの分析が比較的明確である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、上述した従来の弾性波デバイス50には、以下のような問題点がある。第一に、弾性波デバイス50のベアチップ52と共通基板57との間に、弾性波デバイス専用の基板51が介在するため、ベアチップ52から共通基板57に至る導通経路が長くなり、その分だけ寄生抵抗、容量、インダクタンス、すなわち寄生インピーダンスが増え、性能の劣化を招く。第二に、マルチチップモジュール全体として見た場合、基板は弾性波デバイス専用の基板51と共通基板57の2重となっており、封止樹脂も弾性波デバイス用の封止樹脂55と不図示のモジュール用のものとの2重になっているため、工程費及び材料費のコストアップを招く。第三に、弾性波デバイス50は専用の基板51とベアチップ52とを組み合わせた構造であるため、高さH1及び広さW1が大となり、モジュールの小型化、薄型化の障害となり、高密度実装を阻害しやすい。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑み、中空構造を要する弾性波デバイスを含んでモジュールを構成する場合に、構造の簡略化と高密度実装と低コスト化が可能となり、寄生インピーダンスの低減も可能となる弾性波デバイスを含むモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による弾性波デバイスを含むモジュールの一態様は、中空構造を要する弾性波デバイスを含むモジュールにおいて、部品実装面に複数の導電性パッドが形成された基板と、前記基板の前記部品実装面に対面する面に電極配置部分があり、かつ前記導電性パッドに電気的に接続される導電性パッドを有する少なくとも1つの弾性波デバイスと、前記基板の前記部品実装面の前記導電性パッドに電気的に接続される導電性パッドを有する、弾性波デバイス以外の少なくとも1つのフリップチップ実装デバイスと、前記基板の前記部品実装面と、前記弾性波デバイスの周辺部との間に設けられ、各弾性波デバイスと前記基板との間に前記電極配置部分を囲む中空部を形成すると共に、前記中空部に外部から封止樹脂が浸入することを阻止するダムと、を備え、前記基板との間に中空部が形成される弾性波デバイスと、弾性波デバイス以外のフリップチップ実装デバイスとが隣接して配置され、前記フリップチップ実装デバイスと前記基板との間にアンダーフィル材が充填され、前記ダムは、前記弾性波デバイスに隣接する前記フリップチップ実装デバイス側の縁部の平面形状が凹凸形状をなし、前記ダムの前記凹凸形状をなす前記縁部は、少なくともその一部が、前記アンダーフィル充填の際に空気の通路を確保するための、前記隣接するフリップチップ実装デバイスのチップ端よりも外側に位置する凹部を備え、前記ダムは、前記弾性波デバイスの基板対向面側の少なくとも一部が、前記弾性波デバイスの基板対向面の表面と接着され、前記ダムの基板側及び中空部側以外の部分であって、前記弾性波デバイスと接着されていない部分に封止樹脂が接するものである。
【0009】
この態様によれば、前記基板との間に中空部が形成される弾性波デバイスと、弾性波デバイス以外のフリップチップ実装デバイスとが隣接して配置され、前記フリップチップ実装デバイスと前記基板との間にアンダーフィル材が充填され、前記弾性波デバイスのダムに、前記アンダーフィル材が接触することにより、アンダーフィル材の中空部への浸入がダムにより阻止されるので、弾性波デバイスにフリップチップ実装デバイスが近接して配置できる。また、フリップチップ実装デバイスと基板との間は、ダムの縁部の凹凸形状をなすことにより、ダムによって閉塞されないため、アンダーフィル材を浸透現象によりフリップチップ実装デバイスと基板との間に浸入する際に、弾性波デバイス側にボイドが生じることが防止される。このため、フリップチップ実装デバイスと基板との間において、アンダーフィル材の良好な充填状態が得られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、弾性波デバイスを含む弾性波デバイスを含むモジュールにおいて、パッケージの小型化、低背化及び高密度実装と、寄生インピーダンスの低減による性能の向上と、工程費及び材料費のコスト低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明による弾性波デバイスを含むモジュールの一実施の形態を示す断面図である。
【
図2】
図1の弾性波デバイスを含むモジュールにおいて、封止樹脂を施す前の状態を示す平面図である。
【
図3】
図1の弾性波デバイスを含むモジュールにおけるダムのパターンを示す平面図である。
【
図4】
図1の弾性波デバイスを含むモジュールの部分拡大断面図である。
【
図5】(a)は従来の弾性波デバイスを含むモジュールの例であり、(b)は、
図1の弾性波デバイスを含むモジュールの断面図である。
【
図6】本発明の弾性波デバイスを含むモジュールにおけるダムのパターンの他の例を示す平面図である。
【
図7】本発明による弾性波デバイスを含むモジュールの他の実施の形態を示す断面図である。
【
図8】
図7の弾性波デバイスを含むモジュールにおいて、封止樹脂を施す前の状態を示す平面図である。
【
図9】
図7の弾性波デバイスを含むモジュールの部分拡大断面図である。
【
図10】
図7の弾性波デバイスを含むモジュールにおいて、ダムのパターンの他の例を、封止樹脂を施す前の状態で示す平面図である。
【
図11】
図10のパターンを有するダムの作用を説明する断面図である。
【
図12】
図7の弾性波デバイスを含むモジュールの変形例を示す断面図である。
【
図13】
図7の弾性波デバイスを含むモジュールの他の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1及び
図2は本発明による弾性波デバイスを含むモジュールの一実施の形態を示す。この実施の形態の弾性波デバイスを含むモジュール1は、基板2上に2個の弾性波デバイス3を実装した例を示す。この実施の形態の弾性波デバイス3は表面弾性波デバイス(SAWデバイス)について示しており、圧電材料により形成された圧電体5の片面にIDT電極6を形成したものある。圧電体5には例えばタンタル酸リチウム(LT)又はニオブ酸リチウム(LN)等が用いられ、IDT電極6には例えばAl、Cu、Ni、Au、W、Mo等が用いられる。図面上、IDT電極6は簡略化して示してあるが、実際には多数の櫛歯状の入力側、出力側電極及び反射電極が形成されたものである。
【0013】
基板2はセラミック基板あるいは積層基板により構成されるもので、この例では内部に平面状の導体8を有する積層基板により構成した例を示す。基板2の内部に、コンデンサやインダクタ等の受動素子を形成してもよい。
図4に示すように、基板2の部品実装面2aには、複数の導電性パッド9を有する。基板2の部品実装面2aの反対側の面は、不図示のマザー基板への取付面2bであり、この取付面2bには、マザー基板に電気的、機械的に接続される導電性パッド10を有する。部品実装面2aの導電性パッド9と取付面2bの導電性パッド10とは、対応するものどうしが、内部導体8や不図示のビアホール導体を介して接続される。
【0014】
弾性波デバイス3と基板2とは、複数の接続部12を介して電気的、機械的に接続される。これらの接続部12は、
図4に示すように、弾性波デバイス3における接続用電極6a上に設けられた導電性パッド13と、基板2上の導電性パッド9とを接合するバンプ14とによって構成される。バンプ14には例えばAu又は半田を用いることができる。
【0015】
基板2には、実装される弾性波デバイス3及び基板2を覆う封止樹脂16が形成される。封止樹脂16は、弾性波デバイス3及び基板2上の面を覆うことにより、弾性波デバイス3を基板2に固定すると共に、弾性波デバイス3が塵埃や水分の影響を受けることを防止してモジュールの信頼性を高める役目を果たす。この封止樹脂16にはエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられる。
【0016】
基板2上には、弾性波デバイス3を接続部12により接続して実装する前に、ダム18が形成される。ダム18は、封止樹脂16が弾性波デバイス3の電極配置部分3aに浸入することを防止するものである。電極配置部分3aには、弾性波デバイス表面における電極とその周辺の弾性波が伝搬する面が含まれる。また、本実施の形態のように、IDT電極6を備えた弾性表面波デバイスの場合、電極配置部分3aには、弾性波デバイス表面のIDT電極6周辺の弾性波が伝搬する面が含まれる。なお、電極に反射器を備えた弾性表面波デバイスの場合は、電極配置部分3aには、その反射器の周辺も含まれる。このため、
図3及び
図4に示すように、ダム18は、弾性波デバイス3の周辺部3bのみが対向するように、弾性波デバイス3の電極配置部分3aに対応する領域に、平面視においてIDT電極6及び接続部12を囲うように、ダム18の欠除部18a、18bを形成した平面形状に形成される。
図1及び
図2に示すように、弾性波デバイス3と基板2とダム18とにより、電極配置部分3aを囲む中空部19が形成される。
【0017】
ダム18としては好ましくはパターニングの容易化のために感光性樹脂が用いられる。ダム18の形成は、基板2の原材として例えばシート(不図示)の上に感光性樹脂を塗布し、
図3に示したダム18の欠除部18a、18bが形成されるように、塗布した感光性樹脂層上において、欠除部18a、18bとなる領域以外の部分をマスクで覆い、露光を行なう。そして感光性樹脂層に対して現像及び熱処理を行なうことにより、基板2の原材(シート)上に、欠除部18a、18bを有するダム18が形成される。このダム18となる感光性樹脂として、中空部19への封止樹脂浸入を防止するダム機能を向上させる観点から、パターニング後に接着性を持つものを用いることが好ましい。パターニング後に接着性を持つ感光性樹脂としては、エポキシアクリレート系樹脂又はポリイミド系樹脂を採用することができる。
【0018】
ダム18を形成した後、弾性波デバイス3を基板2の原材(シート)上に取り付けることにより、
図1、
図2に示すように、基板2と弾性波デバイス3との間に、弾性波デバイス3の電極配置部分3aがダム18により囲まれる中空部19を形成する。この中空部19の形成のため、弾性波デバイスの周辺部3bが、欠除部18a、18bの縁部に対面するように、弾性波デバイス3が不図示のフリップチップボンダーにより実装される。この実装は、弾性波デバイス3に予め設けられているバンプ14を、基板2となるウエハ上に予め設けられている導電性パッド9に接合することにより行なう。
【0019】
この導電性パッド9とバンプ14との接合と同時に、ダム18となる感光性樹脂に弾性波デバイス3の周辺部3bを接着する。すなわち、ダム18として、パターニング後に接着性をもつ感光性樹脂を用いることにより、弾性波デバイス3の基板2への取り付けと同時にダム18に弾性波デバイス3を接着することができる。
【0020】
上述したモジュール1は、
図5(b)に示すように、
図5(a)に示す従来のモジュールに比較して、小型化、薄形化が可能となる。すなわち、従来の弾性波デバイス50においては、弾性波デバイス50ごとに専用の基板51を要したため、これらの弾性波デバイス50自体の幅も広幅になる上、弾性波デバイス50のベアチップ52と52との間のスペースS1を大きくとる必要がある。一方、本実施の形態においては、弾性波デバイス3はベアチップの状態で共通の基板2に実装されるため、弾性波デバイス3自体の幅も縮小されると共に、弾性波デバイス3と3との間のスペースS2が狭くてすむ。このため、本実施の形態のモジュールの場合、幅W2が従来のモジュールの幅W1に比較して小さくなり、小型化及び高密度実装が可能となる。
【0021】
また、本実施の形態のように、隣接する弾性波デバイス3と3の間のダム18の共用部18cが、隣接する弾性波デバイス3と3どうしで共用されることにより、スペースS2をさらに狭くすることが可能となる。
【0022】
また、従来例の場合、弾性波デバイス50毎に専用の基板51が必要となるが、本実施の形態による場合、専用の基板51が不要となるので、モジュール全体の高さH2は、従来例の高さH1に比較し、薄形化することが可能となる。
【0023】
また、従来例の場合、弾性波デバイス50内における接続部53から基板57に至る導体経路において、専用の基板51に配置される導体経路と、専用の基板51から共通の基板57に至るための接続部58の導体経路が必要となるが、本実施の形態の場合、これらの導体経路が不要となる。このため、寄生抵抗、インダクタンス、容量、すなわち寄生インピーダンスが低減され、モジュールの特性の向上が可能となる。
【0024】
さらに、従来例の場合、専用の基板51と、専用の基板51を共通の基板57に接続する接続部58が必要となるが、本発明による場合にはこれらが不要となるので、工程費及び材料費のコスト低減が可能となる。
【0025】
さらにまた、本実施の形態のモジュール1の場合、モジュール設計が容易化される。なぜならば、モジュール1に含まれるチップ数が増えたり、チップの種類の組み合わせが増えた場合であっても、ベアチップでの基板2への直接実装が可能となるので、封止樹脂16によるモールド封止条件があまり変わらないため、工程の条件だしに要する開発工数が減るからである。また、モジュール設計の容易化により、製品展開のリードタイムの短縮が可能となる。
【0026】
本実施の形態において、ダム18の弾性波デバイス3に対する接着は、
図1及び
図4に示すように、弾性波デバイス3の圧電体5の表面の非金属である領域に対してのみ行ない、接続用電極6a等の金属層には接着されていないことが、ダム18と弾性波デバイス3とを強く接着させる上で好ましい。
【0027】
また、前述のように、ダム18は感光性樹脂により形成されると共に、その感光性樹脂は、パターニング後に接着性を有することが好ましい。このように、感光性樹脂をダム18に用いることにより、中空部19を形成するためのダム18の欠除部18a、18bのパターニングが容易となる。また、感光性樹脂が接着性を持つことにより、弾性波デバイス3の基板への実装と同時に弾性波デバイス3のダム18に対する接着が可能となり、弾性波デバイス3の基板2への取り付けが容易となる。
【0028】
図2及び
図3に示したように、本実施の形態においては、複数の弾性波デバイス3、3に対してそれぞれ対応して形成される中空部19の平面形状を同一の形状としている。
図6は上記例と異なり、弾性波デバイス3X及び3Yの形状に応じて、互いに異なる平面形状の中空部19X及び19Yを採用した例である。このように、中空部の平面形状は、弾性波デバイス3、3A及び3Bの平面形状に応じて、同一の形状、又は異なる形状に形成される。
【0029】
本実施の形態のように、複数の弾性波デバイス3と3どうしが隣接して実装される場合、隣接する弾性波デバイス3と3どうしのスペースS2(
図5(b)参照)は100μm以下に設定することが可能となる。すなわち、ダム18は、隣接する弾性波デバイス3と3の間は、共用部18cとして形成されることにより、この共用部18cの幅W3の部分を、弾性波デバイス3と3について個々の領域として形成した場合に比較して、容易に形成できる。このため、弾性波デバイス3と3とを、フリップチップマウンターの近接実装限界に近いスペースS2に近接させて実装することが可能となる。
【0030】
また、本実施の形態において、ダム18と接する弾性波デバイス3の周辺部3bの領域の幅t(
図2及び
図4参照)、すなわち弾性波デバイスのチップ端部3cからダムの内側の端18dまでの距離は、20μm以上とすることが好ましい。この幅tの上限は、チップ端部3cから接続用電極6a等の金属層の形成領域までの距離となる。
図4のとおり、複数の弾性波デバイス3と3どうしが隣接して各々の対向する端部3cと3cがあり、端部3cの基板対向面側3d(弾性波デバイス3の基板対向面のうち、その各々の対向する端部3cと3cの近傍の領域)に共用部18cが接している。
【0031】
また、ダム18の弾性波デバイス3との対向面には凹凸が生じることがあるが、この場合のダム18と弾性波デバイス3との間に隙間が形成されたとしても、その隙間は、封止樹脂16のフィラー粒子の半径の10分の1以下であることが好ましい。このような隙間とフィラー粒子との寸法関係に設定すれば、ダム18により、中空部19への封止樹脂16の浸入がよりよく阻止される。
【0032】
図7は本発明のモジュールの他の実施の形態を示す断面図、
図8はその平面図、
図9は
図7の部分拡大断面図である。このモジュールは、弾性波デバイス3と弾性波デバイス以外のフリップチップ実装デバイス22とが同一基板2上に形成されて構成されたものを示す。この例のフリップチップ実装デバイス22は、移動体通信機器におけるデュプレクサを構成するアクテイブデバイスとしての増幅器である場合について示す。
【0033】
フリップチップ実装デバイス22は、基板2に対し、接続部23を介して電気的、機械的に接続される。接続部23は、
図9に示すように、基板2の部品実装面2aに設けられた導電性パッド24と、フリップチップ実装デバイス22の基板対向面に設けられた接続用電極25に設けられた導電性パッド26とを、バンプ27により接合するものである。バンプ27には、Auあるいは半田が用いられる。
【0034】
ダム18は、感光性樹脂のパターニングにより形成され、パターニング後に接着性を有するものである。
図7に示すように、弾性波デバイス3の電極配置部分3aを囲むように、ダム18により、弾性波デバイス3と基板2との間に中空部19を形成する。
図8に示すように、この例では2つの弾性波デバイス3が隣接して設けられ、隣接して設けられた2つの弾性波デバイス3と3との間に、ダム18の共用部18cが形成された例を示す。
【0035】
このモジュールは、まず、基板2がウエハである状態において、中空部19の形成のため、弾性波デバイス3と3に対応して、それぞれダム18の欠除部となる領域18e、18fを、感光性樹脂のパターニングにより形成する。感光性樹脂にはパターニング後に接着性を有する材質のものが用いられる。次に、フリップチップボンダーを用いて、弾性波デバイス3を接続部12により基板2に接合することにより、基板2に固定される。この時、弾性波デバイス3もダム18に接着される。このとき、
図8に示すように、ダム18は、弾性波デバイス3とフリップチップ実装デバイス22との間に設けられた縁部18gが、弾性波デバイス3からフリップチップ実装デバイス22側にg1に示す幅だけ突出した状態となる。
【0036】
このように、弾性波デバイス3を基板2に実装した状態において、フリップチップ実装デバイス22を、接続部23によって基板2に接合することにより固定する。この時、
図8に示すように、ダム18の縁部18gとフリップチップ実装デバイス22との間に隙間g2が形成されるように、フリップチップ実装デバイス22が取り付けられる。この隙間g2は、フリップチップ実装デバイス22と基板2との間にボイドを形成しないために設けられる。すなわち、フリップチップ実装デバイス22を接続部23を介して基板2に接続した後、流動性を有するアンダーフィル材21を、その表面張力を利用してフリップチップ実装デバイス22と基板2との間の隙間に浸透させて充填する際に、隙間g2が弾性波デバイス3側における空気の逃げ道を造り、その結果、ボイドの形成が防止される。
【0037】
このように、弾性波デバイス3及びフリップチップ実装デバイス22を基板2に取り付けた後、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂でなる封止樹脂16を施し、これらの封止樹脂16でモールドする。
【0038】
このように、弾性波デバイス3とフリップチップ実装デバイス22とが隣接して配置され、フリップチップ実装デバイス22と基板2との間にアンダーフィル材21が充填された実装状態において、弾性波デバイス3のダム18の縁部18gに、アンダーフィル材21が接触する。そして、アンダーフィル材21が、中空部19内に浸入することが、ダム18により阻止されるので、弾性波デバイス3にフリップチップ実装デバイス22を近接させて配置することができる。
【0039】
図10は
図7に示した実施の形態において、弾性波デバイス3と基板2との間に設けるダム18における縁部18hの好ましい平面形状を示す。この縁部18hは、弾性波デバイス3側に凹んだ凹部30と、フリップチップ実装デバイス22側に突出した凸部31とを有する凹凸形状を有する。
【0040】
このように、ダム18の縁部18hの平面形状を凹凸形状に形成すれば、基板2とフリップチップ実装デバイス22との間に液状のアンダーフィル材21を浸透現象により充填する際に、
図11に示すように、縁部18hの凹部30とフリップチップ実装デバイス22との間に、矢印32に示すような空気の通路が確保しやすくなり、ボイドの形成が確実に防止される。すなわち、弾性波デバイス3とフリップチップ実装デバイス22との間の間隔に多少のずれが生じ、フリップチップ実装デバイス22が弾性波デバイス3に近く取り付けられた場合であっても、凹部30の存在により、アンダーフィル材21を充填する際に空気通路が確実に形成される。なお、縁部18hの波形形状としては、図示のようになめらかな曲線状に形成されるものではなく、角形に凹凸が形成されたものであってもよい。
【0041】
図12は本発明のモジュールのさらに他の実施の形態を示す断面図である。本実施の形態は、フリップチップ実装デバイス22における基板対向面と反対側の面に、放熱手段としてのヒートシンク33が設けられたヒートシンク構造が形成されたものである。ヒートシンク33には、Al,Cu,Ag等のように、熱伝導性の良い金属が用いられ、好ましくは複数のフィン付きの金属板が用いられる。このようなヒートシンク構造を備えることにより、フリップチップ実装デバイス22で発生する熱の放熱効果が得られ、昇温が抑制される。
【0042】
図13は、基板2とフリップチップ実装デバイス22との間に、アンダーフィル材21を用いる代わりに、封止樹脂16aを充填したものであり、この場合、弾性波デバイス3に用いるダム18の縁部18gのフリップチップ実装デバイス22側の先端部は、フリップチップ実装デバイス22側の封止樹脂16aに接する。
【0043】
本発明を実施する場合、フリップチップ実装デバイス22としては、1つのモジュールに複数備えたものでもよく、複数のフリップチップ実装デバイス22に対して1つの弾性波デバイスを備えて構成されるものであってもよい。また、フリップチップ実装デバイス22としては、増幅器のみでなく、例えばスイッチ回路等、他のアクテイブ回路(素子)あるいは受動回路(素子)を備えたものであってもよい。
その他、本発明を実施する場合、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更、付加を行なうことができる。
【符号の説明】
【0044】
1 モジュール
2 基板
3、3X、3Y 弾性波デバイス
3a 電極配置部分
3b 周辺部
5 圧電体
6 IDT電極
6a 接続用電極
9 導電性パッド
12 接続部
13 導電性パッド
14 バンプ
16 封止樹脂
18 ダム
18a、18b、18e、18f ダムの欠除部
18c 共用部
18g、18h 縁部
19、19X、19Y 中空部
21 アンダーフィル材
22 フリップチップ実装デバイス
23 接続部
24、26 導電性パッド
27 バンプ
30 凹部
31 凸部
33 ヒートシンク