IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 山東交通学院の特許一覧

特許7457427低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法
<>
  • 特許-低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法 図1
  • 特許-低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法 図2
  • 特許-低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法 図3
  • 特許-低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法 図4
  • 特許-低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 4/06 20160101AFI20240321BHJP
   C23C 4/131 20160101ALI20240321BHJP
   C23C 4/18 20060101ALI20240321BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20240321BHJP
   C22C 38/50 20060101ALI20240321BHJP
   C22C 30/00 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
C23C4/06
C23C4/131
C23C4/18
C22C38/00 302X
C22C38/50
C22C30/00
C22C38/00 304
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023503178
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 CN2020102579
(87)【国際公開番号】W WO2022011663
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】521227296
【氏名又は名称】山東交通学院
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】孟 君晟
(72)【発明者】
【氏名】于 利民
(72)【発明者】
【氏名】史 暁萍
(72)【発明者】
【氏名】王 永東
(72)【発明者】
【氏名】金 国
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲ゆう▼
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110819931(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106435430(CN,A)
【文献】中国実用新案第204805815(CN,U)
【文献】特開2015-083715(JP,A)
【文献】特開昭55-138063(JP,A)
【文献】特公昭49-045980(JP,B1)
【文献】特開昭62-088830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 4/06
C23C 4/131
C23C 4/18
C22C 38/00
C22C 38/50
C22C 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法であって、
Siが8.5~10.5wt.%、Wが6.5~8.5wt.%、Tiが4.5~7.5wt.%、Alが2.5~4.5wt.%、Crが12~20wt.%、Niが5.5~10.5wt.%、Laが1~2wt.%、残部がFeである所定の配合比率で、Si、W、Ti、Al、Cr、Ni、La及びFeの元素粉末を秤量することと、
秤量した粉末をボールミルでボールミル混合し、均一に混合した後、乾燥させ、充填粉末を得ることと、
前記充填粉末を冷間圧延鋼帯で製造されたU字型の鋼帯溝内に配置することと、
充填粉末が配置されたU字型の鋼帯溝の開口端を閉じ、閉じたU字型の鋼帯溝を伸線機で伸線し、所定の直径のコアードワイヤーを得ることと、
コーティング対象の低炭素鋼表面の錆の汚れを除去し、除染されたコーティング対象の低炭素鋼を得ることと、
超音速アーク溶射装置を用いて、前記コアードワイヤーを前記除染されたコーティング対象の低炭素鋼表面に溶射してコーティングを形成することと、
非溶極式タングステンアルゴンアークマシンを用いて、前記コーティングを再溶融し、緻密な耐摩耗コーティングを得ることとを含むことを特徴とする低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法。
【請求項2】
前記ボールミル混合の時間は4~6hであり、前記乾燥の温度は120~150℃であり、前記乾燥の時間は1~2hであることを特徴とする請求項1に記載の低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法。
【請求項3】
前記ボールミルは遊星ボールミルであることを特徴とする請求項1に記載の低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法。
【請求項4】
前記充填粉末と前記U字型の鋼帯溝の重量比が(0.4~0.6):1であることを特徴とする請求項1に記載の低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法。
【請求項5】
前記伸線機の伸線速度は160~220mm/sであり、前記コアードワイヤーの所定の直径は2mmであることを特徴とする請求項1に記載の低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法。
【請求項6】
前記コーティング対象の低炭素鋼表面の錆の汚れを除去し、除染されたコーティング対象の低炭素鋼を得ることは、具体的には、
14~25メッシュのブラウン溶融アルミナで0.7MPaの気圧下でサンドブラストして、コーティング対象の低炭素鋼表面の錆の汚れを除去し、除染されたコーティング対象の低炭素鋼を得ることを含むことを特徴とする請求項1に記載の低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法。
【請求項7】
前記超音速アーク溶射装置の溶射におけるパラメータは、超音速アーク溶射装置の溶射電圧25~30V、超音速アーク溶射装置の溶射電流150~180A、超音速アーク溶射装置の溶射気圧0.7~1.2MPa、超音速アーク溶射装置の溶射距離180~220mm、超音速アーク溶射装置のワイヤー送給速度78~85cm/min、溶射ガンの移動速度12~18mm/s、溶射厚さ1.5mm~2.5mmであることを特徴とする請求項1に記載の低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法。
【請求項8】
前記非溶極式タングステンアルゴンアークマシンの再溶融におけるパラメータは、再溶融電流100~150A、再溶融電圧18~24V、再溶融速度100~150mm/min、アルゴンガス流量8~12L/minであることを特徴とする請求項1に記載の低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法。
【請求項9】
前記ボールミル混合の時間は5hであり、前記乾燥の温度は130℃であり、前記乾燥の時間は1.5hであることを特徴とする請求項2に記載の低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法。
【請求項10】
前記充填粉末と前記U字型の鋼帯溝の重量比は0.5:1であることを特徴とする請求項4に記載の低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属表面コーティングの技術分野に関し、特に低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
摩耗と腐食は金属材料の故障の主な形態であり、特に、使用条件下での様々なエンジンの歯車、シリンダライナ、クランク軸等の機械部品の破壊は、いずれも部品の表面に発生し、その表面の耐摩耗性、耐腐食性、耐高温酸化性は、機械の耐用年数を決定する重要な要因である。したがって、先進的な表面強化技術を用いて、一般的な材料の表面に必要な耐摩耗コーティングを製造することは、金属材料の表面の摩耗を防止する効果的な方法であり、この方法は部品の耐用年数を大幅に延ばすとともに、材料及びエネルギーを節約できる。
【0003】
溶射技術は、現在一般的な表面修復・保護技術の1つであり、それは生産効率が高く、操作しやすく、経済効率が高く、材料利用率が高い等の利点を有する。溶射技術には多くの種類があり、そのうち超音速アーク溶射は溶射の典型的な技術の1つである。超音速溶射コーティングはより高い耐摩耗性を得ることができるが、溶射コーティングには空隙、割れ、コーティングの厚さが小さく、基材との結合が悪い等の欠陥があり、溶射コーティングの緻密性が低くなり、過酷な環境(例えば高応力、高温及びサイクル疲労)下で割れ又は剥離が発生する可能性があり、その適用範囲が制限される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来技術における超音速溶射で製造された耐摩耗コーティングの緻密性が低いという問題を解決するために、低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は以下の解決手段を提供する。
【0006】
低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法であって、
Siが8.5~10.5wt.%、Wが6.5~8.5wt.%、Tiが4.5~7.5wt.%、Alが2.5~4.5wt.%、Crが12~20wt.%、Niが5.5~10.5wt.%、Laが1~2wt.%及び残部がFeである所定の配合比率で、Si、W、Ti、Al、Cr、Ni、La及びFeの元素粉末を秤量することと、
秤量した粉末をボールミルでボールミル混合し、均一に混合した後、乾燥させ、充填粉末を得ることと、
前記充填粉末を冷間圧延鋼帯で製造されたU字型の鋼帯溝内に配置することと、
充填粉末が配置されたU字型の鋼帯溝の開口端を閉じ、閉じたU字型の鋼帯溝を伸線機で伸線し、所定の直径のコアードワイヤーを得ることと、
コーティング対象の低炭素鋼表面の錆の汚れを除去し、除染されたコーティング対象の低炭素鋼を得ることと、
超音速アーク溶射装置を用いて、前記コアードワイヤーを前記除染されたコーティング対象の低炭素鋼表面に溶射してコーティングを形成することと、
非溶極式タングステンアルゴンアークマシンを用いて、前記コーティングを再溶融し、緻密な耐摩耗コーティングを得ることとを含む。
【0007】
任意選択的に、前記ボールミル混合の時間は4~6hであり、前記乾燥の温度は120~150℃であり、前記乾燥の時間は1~2hである。
【0008】
任意選択的に、前記ボールミルは遊星ボールミルである。
【0009】
任意選択的に、前記充填粉末と前記U字型の鋼帯溝の重量比は(0.4~0.6):1である。
【0010】
任意選択的に、前記伸線機の伸線速度は160~220mm/sであり、前記コアードワイヤーの所定の直径は2mmである。
【0011】
任意選択的に、前記コーティング対象の低炭素鋼表面の錆の汚れを除去し、除染されたコーティング対象の低炭素鋼を得ることは、具体的には、
14~25メッシュのブラウン溶融アルミナで0.7MPaの気圧下でサンドブラストして、コーティング対象の低炭素鋼表面の錆の汚れを除去し、除染されたコーティング対象の低炭素鋼を得ることを含む。
【0012】
任意選択的に、前記超音速アーク溶射装置の溶射におけるパラメータは、超音速アーク溶射装置の溶射電圧25~30V、超音速アーク溶射装置の溶射電流150~180A、超音速アーク溶射装置の溶射気圧0.7~1.2MPa、超音速アーク溶射装置の溶射距離180~220mm、超音速アーク溶射装置のワイヤー送給速度78~85cm/min、溶射ガンの移動速度12~18mm/s、溶射厚さ1.5mm~2.5mmである。
【0013】
任意選択的に、前記非溶極式タングステンアルゴンアークマシンの再溶融におけるパラメータは、再溶融電流100~150A、再溶融電圧18~24V、再溶融速度100~150mm/min、アルゴンガス流量8~12L/minである。
【0014】
任意選択的に、前記ボールミル混合の時間は5hであり、前記乾燥の温度は130℃であり、前記乾燥の時間は1.5hであることを特徴とする。
【0015】
任意選択的に、前記充填粉末と前記U字型の鋼帯溝の重量比は0.5:1であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明が提供する具体的な実施例によれば、本発明は以下の技術的効果を開示する。
本発明は、低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法を提供し、元素粉末を所定の配合比率で秤量し、秤量した粉末をボールミル混合し、乾燥させ、次にU字型の鋼帯溝に入れ、伸線機を用いてコアードワイヤーに伸線し、超音速アーク溶射装置を用いて、製造されたコアードワイヤーを処理された低炭素鋼表面に溶射して溶射コーティングを形成し、最後に溶射コーティングをアルゴンアーク再溶融により再溶融して、緻密な耐摩耗コーティングを得る。本発明は、製造方法が簡単であり、製造された緻密な耐摩耗コーティングは一定の厚さ及び緻密な構造を有し、自動化生産を実現でき、かつコストが低く、超音速溶射による耐摩耗コーティングの製造に新しいアプローチを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例1が提供する低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法のフローチャートである。
図2】本発明の実施例2が提供する製造された緻密な耐摩耗コーティングの金属顕微鏡写真である。
図3】本発明の実施例3が提供する製造された緻密な耐摩耗コーティングの金属顕微鏡写真である。
図4】本発明の実施例3が提供する製造された緻密な耐摩耗コーティングの微小硬度図である。
図5】本発明の実施例3が提供する製造された緻密な耐摩耗コーティングの相対耐摩耗性図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施例又は従来技術の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、実施例で使用する必要のある図面を簡単に説明し、明らかに、以下の説明における図面は本発明の一部の実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労働を要することなく、これらの図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【0019】
以下、本発明の実施例における図面を参照して、本発明の実施例における技術的解決手段を明確かつ完全に説明し、明らかに、説明した実施例は本発明の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働を要さずに取得した全ての他の実施例は、いずれも本発明の技術的範囲に属する。
【0020】
本発明は、従来技術における超音速溶射で製造された耐摩耗コーティングの緻密性が低いという問題を解決するために、低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法を提供することを目的とする。
【0021】
本発明の上記目的、特徴及び利点をより明らかで分かりやすくするために、以下、図面及び具体的な実施形態を参照して、本発明をさらに詳しく説明する。
【0022】
実施例1
【0023】
図1は、本発明の実施例1が提供する低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法のフローチャートである。図1に示すように、本発明の低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法は、S101~S107を含む。
【0024】
S101:Siが8.5~10.5wt.%、Wが6.5~8.5wt.%、Tiが4.5~7.5wt.%、Alが2.5~4.5wt.%、Crが12~20wt.%、Niが5.5~10.5wt.%、Laが1~2wt.%、残部がFeである所定の配合比率で、Si、W、Ti、Al、Cr、Ni、La及びFeの元素粉末を秤量する。
【0025】
S102:秤量した粉末をボールミルでボールミル混合し、均一に混合した後、乾燥させ、充填粉末を得る。具体的には、秤量した粉末を遊星ボールミルに入れ、室温で4~6hボールミル混合し、均一に混合した後、温度120~150℃で1~2h乾燥させ、充填粉末を得る。
【0026】
S103:前記充填粉末を冷間圧延鋼帯で製造されたU字型の鋼帯溝内に配置する。具体的には、冷間圧延鋼帯をコアードワイヤーの被覆層として選択し、充填粉末をU字型の鋼帯溝に加え、前記充填粉末と前記U字型の鋼帯溝の重量比は(0.4~0.6):1である。
【0027】
S104:充填粉末が配置されたU字型の鋼帯溝の開口端を閉じ、閉じたU字型の鋼帯溝を伸線機で伸線し、所定の直径のコアードワイヤーを得る。具体的には、充填粉末が被覆されたU字型の鋼帯溝を閉じ、伸線機で伸線ダイスを通じてそれを160~220mm/sの速度で管状の溶接ワイヤーに伸線し、所定の直径2.0mmのコアードワイヤーを得る。
【0028】
S105:コーティング対象の低炭素鋼表面の錆の汚れを除去し、除染されたコーティング対象の低炭素鋼を得る。具体的には、14~25メッシュのブラウン溶融アルミナで0.7MPaの気圧下でサンドブラストして、コーティング対象の低炭素鋼表面の錆の汚れを除去し、除染されたコーティング対象の低炭素鋼を得る。
【0029】
S106:超音速アーク溶射装置を用いて、前記コアードワイヤーを前記除染されたコーティング対象の低炭素鋼表面に溶射してコーティングを形成する。
【0030】
具体的には、超音速アーク溶射装置を用いて、製造されたコアードワイヤーを処理された低炭素鋼表面に溶射してコーティングを形成する。ここで、溶射プロセスのパラメータは、超音速アーク溶射装置の溶射電圧25~30V、超音速アーク溶射装置の溶射電流150~180A、超音速アーク溶射装置の溶射気圧0.7~1.2MPa、超音速アーク溶射装置の溶射距離180~220mm、超音速アーク溶射装置のワイヤー送給速度78~85cm/min、溶射ガンの移動速度12~18mm/s、溶射厚さ1.5mm~2.5mmである。
【0031】
S107:非溶極式タングステンアルゴンアークマシンを用いて、前記コーティングを再溶融し、耐摩耗コーティングを得る。具体的には、非溶極式タングステンアルゴンアークマシンを用いて、溶射されたコーティングを再溶融し、耐摩耗コーティングを得る。ここで、アルゴンアーク再溶融のプロセスパラメータは、再溶融電流100~150A、再溶融電圧18~24V、再溶融速度100~150mm/min、アルゴンガス流量8~12L/minである。
【0032】
好ましくは、前記ボールミル混合の時間は5hであり、前記乾燥の温度は130℃であり、前記乾燥の時間は1.5hである。
【0033】
好ましくは、前記充填粉末と前記U字型の鋼帯溝の重量比は0.5:1である。
【0034】
好ましくは、前記伸線機の伸線速度は200mm/sである。
【0035】
好ましくは、前記超音速アーク溶射装置の溶射におけるパラメータは、超音速アーク溶射装置の溶射電圧28V、超音速アーク溶射装置の溶射電流160A、超音速アーク溶射装置の溶射気圧1.0MPa、超音速アーク溶射装置の溶射距離190mm、超音速アーク溶射装置のワイヤー送給速度80cm/min、溶射ガンの移動速度15mm/sである。
【0036】
好ましくは、前記非溶極式タングステンアルゴンアークマシンの再溶融におけるパラメータは、再溶融電流120A、再溶融電圧20V、再溶融速度120mm/min、アルゴンガス流量10L/minである。
【0037】
実施例2
【0038】
本発明の上記目的を達成するために、本発明は実施例2を提供し、本実施例における低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法では、低炭素鋼はQ235鋼である。製造方法は、コアードワイヤーの製造及び耐摩耗コーティングの製造を含み、前記コアードワイヤーを炭素鋼表面に溶射した後、アルゴンアーク再溶融を行う。前記コアードワイヤーは充填粉末及びU字型の鋼帯溝で製造され、前記充填粉末の成分の重量パーセントは、9.5wt.%のSi、7wt.%のW、5.5wt.%のTi、3wt.%のAl、15wt.%のCr、7.5wt.%のNi、1wt.%のLa、残部のFeであり、コアードワイヤーの直径は2.0mmであり、充填率は42%である。
【0039】
本発明の低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法は、ステップ201~ステップ206を含む。
【0040】
ステップ201:粉末を上記配合比率で秤量し、秤量した粉末を遊星ボールミルに入れて、室温で5hボールミル混合し、ボールミルした混合粉末を130℃で1.5h保温し、充填粉末を得る。
【0041】
ステップ202:冷間圧延鋼帯をコアードワイヤーの被覆層として選択し、充填粉末をU字型の鋼帯溝に加え、前記充填粉末とU字型の鋼帯溝の重量比は0.5:1である。
【0042】
ステップ203:充填粉末が被覆されたU字型の溝を閉じた後、伸線機で伸線ダイスを通じてそれを160~220mm/sの速度で管状の溶接ワイヤーに伸線し、直径2.0mmのコアードワイヤーを得る。
【0043】
ステップ204:Q235鋼の表面を14~25メッシュのブラウン溶融アルミナで気圧0.7MPa下でサンドブラストし、表面の錆の汚れを除去する。
【0044】
ステップ205:製造されたコアードワイヤーを超音速アーク溶射装置を用いて、処理されたQ235鋼の表面に溶射してコーティングを形成する。ここで、溶射プロセスのパラメータは、溶射電流160A、溶射電圧28V、溶射気圧1.0MPa、溶射距離190mm、ワイヤー送給速度80cm/min、溶射ガンの移動速度15mm/s、溶射厚さ2mmである。
【0045】
ステップ206:溶射したコーティングを非溶極式タングステンアルゴンアークマシンで再溶融し、緻密な耐摩耗コーティングを得る。ここで、アルゴンアーク再溶融のプロセスパラメータは、再溶融電流120A、再溶融電圧20V、再溶融速度120mm/min、アルゴンガス流量10L/minである。
【0046】
Axio Lab.Al分析グレードの正立材料顕微鏡を用いて、本実施例における緻密な耐摩耗コーティングの断面形状を分析し、結果を図2に示す。本発明の実施例で製造した緻密な耐摩耗コーティングは、基材との金属結合が良好であり、気孔等の欠陥が発生せず、組織がデンドライト状に均一に分布している。
【0047】
実施例3
【0048】
本発明の上記目的を達成するために、本発明は実施例3を提供し、本実施例における低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法では、低炭素鋼はQ235鋼である。製造方法は、コアードワイヤーの製造及び耐摩耗コーティングの製造を含み、前記コアードワイヤーを炭素鋼表面に溶射した後、アルゴンアーク再溶融を行う。前記コアードワイヤーは充填粉末及びU字型の鋼帯溝で製造され、前記コアードワイヤーの成分の重量パーセントは、9.5wt.%のSi、7.5wt.%のW、6.5wt.%のTi、3wt.%のAl、18wt.%のCr、8wt.%のNi、1.5wt.%のLa、残部のFeであり、コアードワイヤーの直径は2.0mmであり、充填率は42%である。
【0049】
本発明の低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法は、ステップ301~ステップ306を含む。
【0050】
ステップ301:粉末を上記配合比率で秤量し、秤量した粉末を遊星ボールミルに入れて、室温で5hボールミル混合し、ボールミルした混合粉末を130℃で1.5h保温し、充填粉末を得る。
【0051】
ステップ302:冷間圧延鋼帯をコアードワイヤーの被覆層として選択し、充填粉末をU字型の鋼帯溝に加え、前記充填粉末と前記U字型の鋼帯溝の重量比は0.5:1である。
【0052】
ステップ303:充填粉末が被覆されたU字型の溝を閉じた後、伸線機で伸線ダイスを通じてそれを160~220mm/sの速度で管状の溶接ワイヤーに伸線し、直径2.0mmのコアードワイヤーを得る。
【0053】
ステップ304:Q235鋼の表面を14~25メッシュのブラウン溶融アルミナで気圧0.7MPa下でサンドブラストし、表面の錆の汚れを除去する。
【0054】
ステップ305:製造されたコアードワイヤーを超音速アーク溶射装置を用いて、処理されたQ235鋼の表面に溶射してコーティングを形成する。ここで、溶射プロセスのパラメータは、溶射電流160A、溶射電圧28V、溶射気圧1.0MPa、溶射距離190mm、ワイヤー送給速度80cm/min、溶射ガンの移動速度15mm/s、溶射厚さ2mmである。
【0055】
ステップ306:溶射したコーティングを非溶極式タングステンアルゴンアークマシンで再溶融し、緻密な耐摩耗コーティングを得る。ここで、アルゴンアーク再溶融のプロセスパラメータは、再溶融電流120A、再溶融電圧20V、再溶融速度120mm/min、アルゴンガス流量10L/minである。
【0056】
Axio Lab.Al分析グレードの正立材料顕微鏡を用いて、本実施例における緻密な耐摩耗コーティングの断面形状を分析し、結果を図3に示す。本発明の実施例で製造した緻密な耐摩耗コーティングは、基材との金属結合が良好であり、気孔等の欠陥が発生せず、組織がデンドライト状に均一に分布している。
【0057】
HVST-1000型ビッカース硬度計を用いて、本実施例における緻密な耐摩耗コーティングの硬度を測定し、測定結果は、超音速溶射コーティングの硬度が515HVであり、アルゴンアーク再溶融処理後のコーティングの硬度が848HV~892HVであり、図4に示すように、アルゴンアーク再溶融処理後のコーティングの硬度が1.6~1.7倍向上することが分かった。
【0058】
MMS-2A型摩擦摩耗試験機を用いて、本実施例における緻密な耐摩耗コーティングの摩擦摩耗に対して摩耗試験を行い、試験結果は、図5に示すように、アルゴンアーク再溶融後の相対耐摩耗性が基材Q235鋼より7倍向上し、超音速アーク溶射コーティングの耐摩耗性より3倍向上した。
【0059】
以上の分析結果から、超音波アーク溶射技術とアルゴンアーク再溶融を組み合わせて製造された緻密な耐摩耗コーティングは、結合強度が高く、組織が緻密で、汚染がなく及び生産効率が高いという利点を有することを示している。また、粉末コストが低いため、製造された緻密な耐摩耗コーティングのコストが低い。
【0060】
超音速溶射で製造された耐摩耗コーティングの非緻密性、薄厚及び高空隙率等の問題を解決するために、本発明は低炭素鋼表面の緻密な耐摩耗コーティングの製造方法を提供し、超音速アーク溶射とアルゴンアーク再溶融を組み合わせた方法を用い、この方法により、高緻密性及び高硬度のコーティングが得られ、コーティングの耐摩耗環境での適用が促進される。
【0061】
本明細書の各実施例は漸進的に説明され、各実施例は他の実施例との相違点を重点的に説明し、各実施例の間の同じ又は類似する部分は互いに参照すればよい。
【0062】
本明細書では、具体的な例を用いて本発明の原理及び実施形態を説明したが、以上の実施例の説明は本発明の方法及びその核心思想を理解するのを助けるためのものに過ぎない。また、当業者であれば、本発明の思想に基づいて、具体的な実施形態及び応用範囲のいずれも変化できる。要約すると、本明細書の内容は本発明を限定するものとして理解されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5