IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シャンラオ ジンコ ソーラー テクノロジー デベロップメント シーオー.,エルティーディーの特許一覧

<>
  • 特許-太陽電池 図1
  • 特許-太陽電池 図2
  • 特許-太陽電池 図3
  • 特許-太陽電池 図4
  • 特許-太陽電池 図5
  • 特許-太陽電池 図6
  • 特許-太陽電池 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/068 20120101AFI20240321BHJP
【FI】
H01L31/06 300
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017013330
(22)【出願日】2017-01-27
(65)【公開番号】P2017135385
(43)【公開日】2017-08-03
【審査請求日】2019-12-04
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】10-2016-0010054
(32)【優先日】2016-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0010138
(32)【優先日】2017-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】522401774
【氏名又は名称】シャンラオ シンユエン ユエドン テクノロジー デベロップメント シーオー.,エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヤン チュホン
(72)【発明者】
【氏名】チョン イント
(72)【発明者】
【氏名】リ ウンチュ
(72)【発明者】
【氏名】ホ ミヒ
【合議体】
【審判長】波多江 進
【審判官】吉野 三寛
【審判官】安藤 達哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0222741(US,A1)
【文献】特開2009-204577(JP,A)
【文献】特開2012-84608(JP,A)
【文献】特開2015-177192(JP,A)
【文献】KIM,D.S.et al.,”High Performance Solar Cells with Silicon Carbon Nitride (SiCxNy) Antireflection Coatings Deposited from Polymeric Solid Source”,2008 33rd IEEE Photovoltaic Specialists Conference,2008年5月11日,DOI:10.1109/PVSC.2008.4922640
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04-31/078
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の裏面上に位置し異なる導電型を有する第1導電型領域及び第2導電型領域を含む導電型領域と、
前記導電型領域に電気的に接続され、前記半導体基板の前面に形成されない電極と、
前記半導体基板の前面に位置するシリコン酸化膜と、
前記半導体基板の前面で前記シリコン酸化膜の直上に位置し、前記シリコン酸化膜の屈折率より大きな第1屈折率を有するシリコン窒化膜と、
前記半導体基板の前面で前記シリコン窒化膜の直上に位置し、633nmの波長の光に対して前記第1屈折率より小さい第2屈折率と、400nm以下の波長の光に対して前記シリコン窒化膜の第1吸光係数より大きい第2吸光係数を有するシリコンオキシカーバイド(silicon oxycarbide)膜とを含み、
前記シリコンオキシカーバイド膜の厚さは、前記シリコン窒化膜の厚さより薄く、前記シリコン酸化膜の厚さは前記シリコン窒化膜の厚さより薄く、前記シリコン酸化膜の厚さは前記シリコンオキシカーバイド膜の厚さより薄く、
前記シリコン酸化膜、前記シリコン窒化膜及び前記シリコンオキシカーバイド膜は前記半導体基板の前面の全体に形成される、太陽電池。
【請求項2】
前記シリコンオキシカーバイド膜はSiO1-yの化学式を有し、前記yが0.5~0.9である、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記半導体基板の後面と前記第1及び第2導電型領域との間に位置する制御パッシベーション層をさらに含み、
バリア領域は前記制御パッシベーション層上で前記第1導電型領域と前記第2導電型領域との間に位置する、請求項1に記載の太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池に関し、より詳細には、構造を改善した太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油や石炭のような既存エネルギー資源の枯渇が予想されながら、これらに代わる代替エネルギーへの関心が高まっている。その中でも太陽電池は、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換させる次世代電池として脚光を浴びている。
【0003】
このような太陽電池は、様々な層及び電極を設計通りに形成することによって製造することができる。ところで、このような様々な層及び電極の設計に応じて太陽電池の効率が決定され得る。太陽電池の商用化のためには低い効率を克服しなければならないため、様々な層及び電極が太陽電池の効率を最大化できるように設計されることが要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、効率を向上させることができる太陽電池を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施例に係る太陽電池は、半導体基板と、前記半導体基板に又は前記半導体基板上に位置する導電型領域と、前記導電型領域に電気的に接続される電極と、前記半導体基板の一面及び他面のうちの少なくとも一方の上に位置し、第1膜及び前記第1膜上に位置する第2膜を含む絶縁膜を含む。前記第2膜が前記第1膜よりも高い炭素含量を有し、前記第2膜の屈折率が、前記第1膜の屈折率と同一またはそれより小さく、前記第2膜の吸光係数が、前記第1膜の吸光係数と同一またはそれより大きい。
【発明の効果】
【0006】
本実施例に係る太陽電池は、絶縁膜において第1膜よりも外部に位置する第2膜が、第1膜よりも高い炭素含量を有することによって、絶縁膜の化学的安定性を向上させることができる。そして、第2膜の吸光係数(特に、短波長光に対する吸光係数)が、第1膜の吸光係数と同一またはそれより大きい吸光係数を有することによって、光による太陽電池の特性変化または損傷を防止することができる。このとき、第2膜が第1膜よりも小さい屈折率を有することによって、屈折率によって反射率(反射度)を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施例に係る太陽電池を示す断面図である。
図2図1に示した太陽電池の部分後面平面図である。
図3】本発明の他の実施例に係る太陽電池の断面図である。
図4】製造例1による太陽電池において、シリコン窒化膜及びシリコンカーボナイトライド膜の400nmの波長の光での吸光係数を測定した結果を示すグラフである。
図5】製造例1による太陽電池において、シリコン窒化膜及びシリコンカーボナイトライド膜の633nmの波長の光での屈折率を測定した結果を示すグラフである。
図6】製造例2による太陽電池において、炭素含量によるシリコンオキシカーバイドの屈折率(633nmの波長の光での屈折率)及び吸光係数(400nmの波長の光での吸光係数)を測定した結果を示すグラフである。
図7】製造例1、製造例2、及び比較例による太陽電池の反射率を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下では、添付の図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。しかし、本発明がこれらの実施例に限定されるものではなく、様々な形態に変形可能であることは勿論である。
【0009】
図面では、本発明を明確且つ簡略に説明するために、説明と関係のない部分の図示を省略し、明細書全体において同一又は極めて類似の部分に対しては同一の図面参照符号を使用する。また、図面では、説明をより明確にするために、厚さ、面積などを拡大又は縮小して示しており、本発明の厚さ、面積などは図面に示したものに限定されない。
【0010】
そして、明細書全体において、ある部分が他の部分を「含む」とするとき、特に反対の記載がない限り、他の部分を排除するのではなく、他の部分をさらに含むことができる。また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あるとするとき、これは、他の部分の「直上に」ある場合のみならず、それらの間に他の部分が位置する場合も含む。層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「直上に」あるとするときは、それらの間に他の部分が位置しないことを意味する。
【0011】
図1は、本発明の一実施例に係る太陽電池を示した断面図であり、図2は、図1に示した太陽電池の部分後面平面図である。
【0012】
図1及び図2を参照すると、本実施例に係る太陽電池100は、半導体基板10と、半導体基板10に又は半導体基板10上に位置する導電型領域32,34と、導電型領域32,34に電気的に接続される電極42,44と、半導体基板10の一面及び他面のうちの少なくとも一方上に位置する絶縁膜21とを含む。このとき、導電型領域32,34は、第1導電型を有する第1導電型領域32、及び第1導電型と反対の第2導電型を有する第2導電型領域34を含む。電極42,44は、第1導電型領域32に電気的に接続される第1電極42、及び第2導電型領域34に電気的に接続される第2電極44を含む。そして、絶縁膜21は、第1膜24、及び第1膜24の上に位置する第2膜26を含み、第1膜24と半導体基板10との間に位置する第3膜22を含むことができる。そして、本実施例に係る太陽電池100は、制御パッシベーション層20、後面パッシベーション膜40などをさらに含むことができる。これについてより詳細に説明する。
【0013】
半導体基板10は、第1又は第2導電型ドーパントを相対的に低いドーピング濃度で含んで第1又は第2導電型を有するベース領域110を含むことができる。ベース領域110は、第1又は第2導電型ドーパントを含む結晶質半導体で構成することができる。一例として、ベース領域110は、第1又は第2導電型ドーパントを含む単結晶または多結晶半導体(一例として、単結晶または多結晶シリコン)で構成することができる。特に、ベース領域110は、第1又は第2導電型ドーパントを含む単結晶半導体(例えば、単結晶半導体ウエハ、より具体的には、半導体シリコンウエハ)で構成することができる。このように、結晶性が高いため欠陥の少ないベース領域110または半導体基板10をベースとすると、電気的特性に優れる。
【0014】
ベース領域110はp型またはn型であってもよい。一例として、ベース領域110がn型を有する場合、ベース領域110と光電変換によってキャリアを形成する接合(一例として、制御パッシベーション層20を介在したpn接合)を形成するp型の第1導電型領域32を広く形成して、光電変換面積を増加させることができる。また、この場合には、広い面積を有する第1導電型領域32が、移動速度が相対的に遅い正孔を効果的に収集することで、光電変換効率の向上にさらに寄与することができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。
【0015】
そして、半導体基板10は、半導体基板10の前面側に位置する前面電界領域(又は電界領域)130を含むことができる。前面電界領域130は、ベース領域110と同じ導電型を有し、且つベース領域110よりも高いドーピング濃度を有することができる。
【0016】
本実施例では、前面電界領域130が、半導体基板10にベース領域110と同じドーパントを相対的に高いドーピング濃度でドープして形成されたドーピング領域で構成された場合を例示した。これによって、前面電界領域130が、第2導電型を有する結晶質(単結晶または多結晶)半導体を含んで半導体基板10の一部を構成するようになる。
【0017】
しかし、本発明がこれに限定されるものではない。したがって、半導体基板10と異なる別個の半導体層(例えば、非晶質半導体層、微結晶半導体層、または多結晶半導体層)に第2導電型ドーパントをドープして前面電界領域130を形成してもよい。または、前面電界領域130が、半導体基板10に隣接して形成された層(例えば、前面パッシベーション膜24及び/又は反射防止膜26)の固定電荷によってドープされたものと類似の役割を果たす電界領域で構成されてもよい。例えば、ベース領域110がn型である場合には、前面パッシベーション膜24が固定負電荷を有する酸化物(例えば、アルミニウム酸化物)で構成されて、ベース領域110の表面に反転領域(inversion layer)を形成し、これを電界領域として用いることができる。この場合には、半導体基板10が、別途のドーピング領域を備えずにベース領域110のみで構成されて、半導体基板10の欠陥を最小化することができる。その他の様々な方法により様々な構造の前面電界領域130を形成することができる。
【0018】
本実施例において、半導体基板10の前面は、テクスチャリング(texturing)されてピラミッドなどの形状の凹凸を有することができる。半導体基板10に形成されたテクスチャリング構造は、半導体の特定の結晶面に沿って形成された外面を有する一定の形状(一例として、ピラミッド形状)を有することができる。このようなテクスチャリングにより半導体基板10の前面などに凹凸が形成されて表面粗さが増加すると、半導体基板10の前面を介して入射する光の反射率を低下させることができる。したがって、ベース領域110と第1導電型領域32によって形成されたpn接合まで到達する光の量を増加させることができ、光損失を最小化することができる。
【0019】
そして、半導体基板10の後面は、鏡面研磨などによって前面よりも低い表面粗さを有する、相対的に滑らかで且つ平坦な面からなることができる。本実施例のように、半導体基板10の後面側に第1及び第2導電型領域32,34が共に形成される場合には、半導体基板10の後面の特性に応じて太陽電池100の特性が大きく変わり得るためである。これによって、半導体基板10の後面にはテクスチャリングによる凹凸を形成しないことで、パッシベーション特性を向上させることができ、これによって、太陽電池100の特性を向上させることができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、場合によって、半導体基板10の後面にテクスチャリングによる凹凸を形成してもよい。その他の様々な変形も可能である。
【0020】
半導体基板10の後面上には制御パッシベーション層20を形成することができる。一例として、制御パッシベーション層20は、半導体基板10の後面に接触して形成されることによって、構造を単純化し、制御パッシベーション効果を向上させることができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。
【0021】
制御パッシベーション層20は、電子及び正孔にとって一種のバリア(barrier)として作用して、少数キャリア(minority carrier)が通過しないようにし、制御パッシベーション層20に隣接する部分で蓄積された後、一定以上のエネルギーを有する多数キャリア(majority carrier)のみが制御パッシベーション層20を通過できるようにする。このとき、一定以上のエネルギーを有する多数キャリアは、制御パッシベーション効果によって容易に制御パッシベーション層20を通過することができる。また、制御パッシベーション層20は、導電型領域32,34のドーパントが半導体基板10へ拡散することを防止する拡散バリアとしての役割を果たすことができる。このような制御パッシベーション層20は、多数キャリアがトンネリングされ得る様々な物質を含むことができ、一例として、酸化物、窒化物、半導体、伝導性高分子などを含むことができる。例えば、制御パッシベーション層20は、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸化窒化物、真性非晶質シリコン、真性多結晶シリコンなどを含むことができる。特に、制御パッシベーション層20は、シリコン酸化物を含むシリコン酸化物層で構成することができる。シリコン酸化物層は、パッシベーション特性に優れ、キャリアがトンネリングされやすい膜であるためである。
【0022】
このとき、制御パッシベーション層20は、半導体基板10の後面に全体的に形成することができる。これによって、別途のパターニングなしに容易に形成することができる。
【0023】
制御パッシベーション効果を十分に具現できるように、制御パッシベーション層20が薄い厚さを有することができる。一例として、制御パッシベーション層20の厚さが5nm以下(より具体的には、2nm以下、一例として、0.5nm~2nm)であってもよい。制御パッシベーション層20の厚さ(T)が5nmを超えると、トンネリングが円滑に行われないため、太陽電池100が作動しないことがあり、制御パッシベーション層20の厚さが0.5nm未満であると、所望の品質の制御パッシベーション層20を形成しにくいことがある。制御パッシベーション効果をさらに向上させるためには、制御パッシベーション層20の厚さが2nm以下(より具体的には0.5nm~2nm)であってもよい。このとき、制御パッシベーション効果をより一層向上させることができるように、制御パッシベーション層20の厚さが0.5nm~1.5nmであってもよい。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、制御パッシベーション層20の厚さが様々な値を有してもよい。
【0024】
一例として、制御パッシベーション層20は、後面パッシベーション膜40、及び絶縁膜21の厚さ(より具体的には、これらを構成する第1膜24、第2膜26及び第3膜22の厚さのそれぞれ)と同一またはそれより小さい厚さを有することができる。特に、制御パッシベーション層20は、後面パッシベーション膜40、及び絶縁膜21の厚さ(より具体的には、これらを構成する第1膜24、第2膜26及び第3膜22の厚さのそれぞれ)よりも小さい厚さを有することができる。制御パッシベーション層20は、制御パッシベーション効果のために最大限薄い厚さを有することが有利であるためである。
【0025】
制御パッシベーション層20上には、導電型領域32,34を含む半導体層30が位置し得る。一例として、半導体層30は、制御パッシベーション層20に接触して形成されることによって、構造を単純化し、制御パッシベーション効果を最大化することができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。
【0026】
本実施例において、半導体層30は、第1導電型ドーパントを有して第1導電型を示す第1導電型領域32と、第2導電型ドーパントを有して第2導電型を示す第2導電型領域34とを含むことができる。第1導電型領域32及び第2導電型領域34が制御パッシベーション層20上で同一平面上に位置し得る。すなわち、第1及び第2導電型領域32,34と制御パッシベーション層20との間に互いに同一に他の層が位置せず、または、第1及び第2導電型領域32,34と制御パッシベーション層20との間に他の層が位置する場合には、他の層は同じ積層構造を有することができる。そして、第1導電型領域32と第2導電型領域34との間に、これらと同一平面上にバリア領域36が位置し得る。
【0027】
一例として、本実施例において、第1導電型領域32は、制御パッシベーション層20を介在してベース領域110とpn接合(又は、pn制御パッシベーション接合)を形成して、光電変換によってキャリアを生成するエミッタ領域を構成する。第2導電型領域34は、後面電界(back surface field)を形成して、半導体基板10の表面(より正確には、半導体基板10の後面)で再結合によってキャリアの損失が発生することを防止する後面電界領域を構成する。
【0028】
このとき、第1導電型領域32は、ベース領域110と反対の第1導電型ドーパントを含む半導体(一例として、シリコン)を含むことができる。また、第2導電型領域34は、ベース領域110と同じ第2導電型ドーパントを含み、そのドーピング濃度がベース領域110よりも高くてもよい。本実施例では、第1及び第2導電型領域32,34が、半導体基板10の上(より明確には、制御パッシベーション層20の上)で半導体基板10と別個に形成され、第1又は第2導電型ドーパントがドープされた半導体層で構成される。これによって、第1及び第2導電型領域32,34は、半導体基板10上に容易に形成できるように、半導体基板10と異なる結晶構造を有する半導体層で構成することができる。例えば、第1及び第2導電型領域32,34は、蒸着などの様々な方法により容易に製造できる非晶質半導体、微結晶半導体、または多結晶半導体(一例として、非晶質シリコン、微結晶シリコン、または多結晶シリコン)などに第1又は第2導電型ドーパントをドープして形成することができる。特に、第1及び第2導電型領域32,34が多結晶半導体を有する場合、高いキャリア移動度を有することができる。第1又は第2導電型ドーパントは、半導体層30を形成する工程で半導体層30に共に含まれてもよく、または、半導体層30を形成した後、熱拡散法、イオン注入法などの様々なドーピング方法により半導体層30に含まれてもよい。
【0029】
このとき、第1又は第2導電型ドーパントとしては、半導体層30にドープされてn型又はp型を示す様々な物質を使用することができる。第1又は第2導電型ドーパントがp型である場合には、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)などの3族元素を使用することができる。第1又は第2導電型ドーパントがn型である場合には、リン(P)、ヒ素(As)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)などの5族元素を使用することができる。一例として、第1及び第2導電型ドーパントのうちの一方がボロン(B)であり、他方がリン(P)であってもよい。
【0030】
しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、第1導電型領域32が後面電界領域を構成し、第2導電型領域34がエミッタ領域を構成してもよい。
【0031】
そして、第1導電型領域32と第2導電型領域34との間にバリア領域36が位置し、第1導電型領域32と第2導電型領域34を互いに離隔させる。第1導電型領域32と第2導電型領域34とが接触する場合には、シャント(shunt)が発生して太陽電池100の性能を低下させることがある。これによって、本実施例では、第1導電型領域32と第2導電型領域34との間にバリア領域36を位置させることによって、不必要なシャントを防止することができる。
【0032】
バリア領域36として、ドープされていない(すなわち、アンドープ)絶縁物質(一例として、酸化物、窒化物)などを使用することができる。または、バリア領域36が真性(intrinsic)半導体を含むこともできる。このとき、第1導電型領域32及び第2導電型領域34とバリア領域36は、互いに側面が接触しながら連続的に形成される同一の半導体(一例として、非晶質シリコン、微結晶シリコン、多結晶シリコン)で構成され、バリア領域36は、実質的にドーパントを含まないi型(真性)半導体物質であり得る。一例として、半導体物質を含む半導体層を形成した後、半導体層の一部の領域に第1導電型ドーパントをドープして第1導電型領域32を形成し、他の領域の一部に第2導電型ドーパントをドープして第2導電型領域34を形成すると、第1導電型領域32及び第2導電型領域34が形成されていない領域がバリア領域36を構成するようになる。これによれば、第1導電型領域32、第2導電型領域34及びバリア領域36の製造方法を単純化することができる。
【0033】
しかし、本発明がこれに限定されるものではない。したがって、バリア領域36を様々な方法によって形成して、様々な厚さを有することができ、様々な形状を有することもできる。バリア領域36が空き空間であるトレンチで構成されてもよい。その他の様々な変形が可能である。図面では、バリア領域36が第1導電型領域32と第2導電型領域34との間を全体的に離隔させる場合を例示した。しかし、バリア領域36が第1導電型領域32と第2導電型領域34との境界部分の一部のみを離隔させるように形成されてもよい。または、バリア領域36が形成されず、第1導電型領域32と第2導電型領域34との境界が互いに接触してもよい。
【0034】
半導体基板10の後面において、第1及び第2導電型領域32,34及びバリア領域36の上に後面パッシベーション膜40を形成することができる。一例として、後面パッシベーション膜40は、第1及び第2導電型領域32,34及びバリア領域36に接触して形成されることによって、構造を単純化することができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。
【0035】
そして、半導体基板10の前面上(より正確には、半導体基板10の前面に形成された前面電界領域130の上)に、順次位置する第1膜24と第2膜26を含む絶縁膜21が位置し得る。このとき、第2膜26は、第1膜24よりも高い炭素含量を有し、第2膜26の屈折率が第1膜24の屈折率と同一またはそれより小さく、第2膜26の吸光係数が第1膜24の吸光係数と同一またはそれより大きい。特に、第2膜26の屈折率が第1膜24の屈折率よりも小さく、第2膜26の吸光係数が第1膜24の吸光係数よりも大きくてもよい。そして、半導体基板10(又は、前面電界領域130)と第1膜24との間に、第1膜24及び第2膜26と異なる物質または組成を有する第3膜22を形成することができる。
【0036】
このとき、第1膜24は、シリコン窒化物を含むシリコン窒化膜であり、第2膜26は、炭素を含むシリコン窒化物(すなわち、シリコンカーボナイトライド(silicon carbonitride))を含むシリコンカーボナイトライド膜、炭素を含むシリコン酸化物(すなわち、シリコンオキシカーバイド(silicon oxycarbide))を含むシリコンオキシカーバイド膜、またはこれらの混合物を含む膜であってもよい。又は、第1膜(24)が、シリコンカーバイド(silicon carbide:SiC)を含み、第2膜(26)がシリコンカーボンナイトライド(silicon carbonitride:SiCN)を含むこともできる。そして、第3膜22は、シリコン酸化物を含むシリコン酸化膜であってもよく、第3膜22は、熱酸化によって形成された熱酸化膜であり得る。
【0037】
第1膜24は、第3膜22と共に積層されて半導体基板10のパッシベーション特性を大きく向上させることができる。これは、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜が積層されるとき、シリコンを含む半導体基板10のパッシベーション特性を最も効果的に向上させることができるためである。このとき、第1膜24及び第3膜22が炭素を含まないか、または第2膜26よりも少ない炭素含量(一例として、低いwt%)を有することができる。特に、第1膜24及び第3膜22は炭素を含まなくてもよい。炭素がパッシベーション特性を多少低下させることがあるため、パッシベーション膜の役割を果たす第1膜24及び第3膜22は炭素を含まないようにすることができる。
【0038】
第2膜26は、炭素を含んで優れた化学的安定性(例えば、酸又は塩基に対する安定性)を有することができる。特に、本実施例では、優れたパッシベーション特性のために、第1膜24が相対的に低い屈折率及び吸光係数を有しており、このような第1膜24は化学的安定性が多少低くなり得る。そこで、本実施例では、絶縁膜21において半導体基板10から最も遠くに位置して最外郭面を構成する第2膜26に炭素を含ませることによって、化学的安定性を高く維持することである。これによって、第2膜26はまた、太陽電池100の製造工程の中にエッチング工程などがあるとき、キャッピング膜として機能することができる。これによって、別途のキャッピング膜の形成及び除去工程を省略できる。
【0039】
このとき、第2膜26が、上述したように、炭素以外にも窒素又は酸素を含むシリコンカーボナイトライド膜またはシリコンオキシカーバイド膜で構成されると、酸素との反応性を低減して酸化を効果的に防止することができる。一方、第2膜26が、炭素以外に窒素又は酸素を含まないシリコン炭化膜である場合には、300℃以上の温度で容易に酸化してしまい、屈折率、吸光係数などの特性が変化するため、第2膜26が所望の特性を維持することが難しくなることがある。
【0040】
また、本実施例では、第2膜26が炭素を含むことによって、第2膜26の屈折率及び吸光係数を容易に調節することができる。これによって、第2膜26が所望の屈折率及び吸光係数を有することができる。
【0041】
これによって、第2膜26の屈折率が第1膜24の屈折率と同一またはそれより小さくてもよい。一例として、633nmの波長の光に対して、第2膜26の屈折率が第1膜24の屈折率と同一またはそれより小さくてもよい。633nmの波長の光を基準としたのは、一例として提示したものに過ぎず、本発明がこれに限定されるものではない。より具体的には、第2膜26の屈折率が第1膜24の屈折率よりも小さくてもよい。すると、第1膜24よりも外部に位置した第2膜26が相対的に低い屈折率を有し、反射率を低減することができる。
【0042】
そして、第2膜26の吸光係数が第1膜24の吸光係数と同一またはそれより大きくてもよい。これによれば、光による太陽電池100の特性の変化または損傷を防止することができる。特に、短波長の光(一例として、400nm以下の波長の光又は紫外線)は、太陽電池100の特性を容易に変化させたり、太陽電池100を容易に損傷させることがある。より具体的には、短波長の光に対する第2膜26の吸光係数が第1膜24の吸光係数と同一またはそれより大きくてもよい。第2膜26の吸光係数を第1膜24と少なくとも同じレベルに維持して、第1膜24及び第2膜26で短波長の光を吸収することによって、短波長の光に対する安定性を向上させることができる。
【0043】
特に、短波長に対する第2膜26の吸光係数が第1膜24の吸光係数よりも大きくて、外部に位置した第2膜26で短波長の光をさらに多く吸収することによって、短波長の光に対する安定性を大きく向上させることができる。そして、第1膜24は、相対的に低い吸光係数を有することによって、第3膜22と共にパッシベーション効果を非常に高く維持することができる。参考に、第1膜24が高い屈折率及び高い吸光係数を有する場合、パッシベーション特性が低下することがある。
【0044】
このように、第2膜26が、第1膜24よりも小さい屈折率を有すると共に、第1膜24よりも大きい吸光係数を有する場合、屈折率の差による反射率の低減効果は最大化することができ、第1膜24が相対的に小さい吸光係数を有することによってパッシベーション効果を高く維持しながら、第2膜26の高い吸光係数によって短波長の光に対する安定性を大きく向上させることができる。
【0045】
一例として、波長が400nm以下(一例として、400nm)である光に対する第1膜24及び第2膜26のそれぞれの吸光係数が、0.25以下であってもよい。このように、第1膜24が相対的に小さい吸光係数を有する場合、電界効果による優れたパッシベーション特性をそのまま維持できる。一方、第1膜24が相対的に大きい吸光係数(すなわち、波長が400nm以下(一例として、400nm)である光で0.25を超える吸光係数)を有する場合には、パッシベーション特性が低下することがある。そして、第1膜24及び第2膜26の吸光係数が高いと、太陽電池100に使用される光を過度に吸収してしまい、光の損失が過度に大きくなり得る。ただし、上述したように、吸光係数が小さい場合に化学的安定性が多少低下することがあるが、本実施例では、炭素を含むことによって化学的安定性に優れた第2膜26を第1膜24上に位置させ、このような問題を防止することができる。一例として、波長が400nm以下(一例として、400nm)である光で第1膜24の吸光係数が0.20以下であってもよい。波長が400nm以下(一例として、400nm)である光での第1膜24の吸光係数を0.20以下にすると、パッシベーション特性をさらに向上させることができる。
【0046】
このとき、上述したように、短波長の光で第2膜26が第1膜24よりも大きい吸光係数を有すると、短波長を効果的に吸収することができる。このとき、波長が400nm以下(一例として、400nm)である光に対する第2膜26の吸光係数が、第1膜24の吸光係数よりも0.01以上大きくてもよい。上述した差が0.01未満であると、第2膜26が短波長の光を吸収する効果が大きくない。一例として、波長が400nm以下(一例として、400nm)である光に対する第2膜26の吸光係数が、第1膜24の吸光係数よりも0.01~0.10(一例として、0.01~0.06)だけ大きくてもよい。これは、炭素の添加によって、第2膜26の吸光係数を第1膜24の吸光係数よりも0.10(一例として、0.06)を超えて大きく増加させるのに困難があり得るためである。そして、第2膜26の吸光係数が高いと、太陽電池100に使用される光を過度に吸収してしまい、光の損失が過度に大きくなることがある。
【0047】
このとき、第2膜26の厚さが、第1膜24の厚さと同一またはそれより小さくてもよい。これは、第2膜26が第1膜24と同一またはそれより大きい屈折率を有するため、反射特性を考慮して、第2膜26の厚さを第1膜24の厚さと同一またはそれより小さくすることである。そして、大きな吸光係数を有する第2膜26の厚さが大きくなると、光を多く吸収してしまい、太陽電池100に入射する光の損失が発生することがある。そして、第3膜22の厚さが第1膜24及び第2膜26の厚さよりも小さくてもよい。これは、第3膜22は、熱酸化によって形成された膜であって、非常に厚い厚さに形成されにくいためである。一例として、第3膜22の厚さが5nm以下(一例として、0.1nm~3nm)であってもよい。このような厚さは、熱酸化によって形成可能な厚さに限定されたものであるが、本発明がこれに限定されるものではない。すなわち、第3膜22が、熱酸化ではなく、他の方法で形成されてもよく、または工程条件などを変化させて第3膜22が他の厚さを有してもよい。
【0048】
上述したように、シリコン窒化膜で構成された第1膜24の屈折率(一例として、633nmの波長の光に対する屈折率)が1.95~2.05であってもよい。第1膜24の屈折率が1.95未満であると、膜密度が十分でないため、パッシベーション特性が低下することがある。第2膜26の屈折率が2.05を超えると、吸光係数が増加してパッシベーション特性が低下することがある。そして、第1膜24の厚さが50nm~90nmであってもよい。第1膜24の厚さが50nm未満であると、電界効果によるパッシベーション効果が十分でないことがある。第1膜24の厚さが90nmを超えると、工程時間及びコストが増加し、第1膜24及び第2膜26との屈折率及び厚さによって具現される反射率の低減効果が十分でないことがある。
【0049】
第2膜26がシリコンカーボナイトライド膜である場合にSiC1-xの化学式を有し、xが0.3~0.9であってもよい。シリコンカーボナイトライド膜では、炭素の量が増加すると、屈折率は低下し、吸光係数は増加し得る。xが0.3未満であると、炭素の量が十分でないため、化学的安定性向上などの効果が十分でないことがあり、第1膜24と同一またはそれより低い屈折率、及び第1膜24と同一またはそれより大きい吸光係数を有することが難しいことがある。xが0.9を超えると、窒素の量が十分でないため、高い温度で容易に酸化してしまう。
【0050】
このとき、第2膜26の屈折率が1.8~1.98であり、第2膜26の厚さが5nm~30nmであってもよい。このような屈折率は、シリコンカーボナイトライド膜で構成された第2膜26で具現可能な範囲に限定されたものであり、屈折率及び厚さは、第1膜24の屈折率及び厚さを考慮して、反射率低減効果を最大化できる範囲に限定されたものである。第2膜26の厚さが5nm未満であると、第2膜26による化学的安定性向上などの効果が十分でないことがある。第2膜26の厚さが30nmを超えると、工程時間及びコストが増加し、第1膜24及び第2膜26との屈折率及び厚さによって具現される反射率低減効果が十分でないことがある。このとき、第2膜26の厚さが第1膜24の厚さよりも小さくてもよく、これは、第2膜26の屈折率が第1膜24とほぼ同様に高いレベルであることを考慮したものである。
【0051】
第2膜26がシリコンオキシカーバイド膜である場合にSiO1-yの化学式を有し、yが0.5~0.9であってもよい。シリコンオキシカーバイド膜では、炭素の量が増加すると、屈折率及び吸光係数が増加し得る。xが0.5未満であると、炭素の量が十分でないため、化学的安定性向上などの効果が十分でないことがあり、屈折率が十分でなく、第1膜24と同一またはそれより大きい吸光係数を有することが難しいことがある。xが0.9を超えると、酸素の量が十分でないため、高い温度で容易に酸化してしまう。
【0052】
このとき、第2膜26の屈折率が1.4~1.6であり、第2膜26の厚さが25nm~90nmであってもよい。このような屈折率は、シリコンオキシカーバイド膜で構成された第2膜26で具現可能な範囲に限定されたものであり、屈折率及び厚さは、第1膜24との屈折率及び厚さを考慮して、反射率低減効果を最大化できる範囲に限定されたものである。第2膜26の厚さが25nm未満であると、第2膜26による化学的安定性向上などの効果が十分でないことがある。第2膜26の厚さが90nmを超えると、工程時間及びコストが増加し、第1膜24及び第2膜26との屈折率及び厚さによって具現される反射率低減効果が十分でないことがある。このとき、第2膜26の厚さは、第1膜24の厚さと同一またはそれより小さくてもよく、これは、第2膜26の屈折率が第1膜24に比べて非常に低いレベルであることを考慮したものである。または、屈折率を考慮して、第2膜26の厚さを第1膜24の厚さよりも大きくしてもよい。
【0053】
このように、第1膜24は、第3膜22と共にパッシベーション効果を向上させるパッシベーション膜として機能すると共に、第2膜26と共に反射率を低減する反射防止膜として機能するようになる。このような第1膜24及び第2膜26は、様々な方法により形成することができる。一例として、第1膜24及び第2膜26が化学気相蒸着法(特に、プラズマ誘導化学気相蒸着法(PECVD))により形成されてもよい。これによれば、所望の組成、特性を有する第1膜24及び第2膜26を形成することができる。特に、第1膜24は、その組成、特性などによってパッシベーション特性が大きく変わり得、スパッタリングなどによると、第1膜24及び第2膜26が所望の組成、特性などを有することが難しいことがある。このとき、第1膜24及び第2膜26は、同じ蒸着装備において工程気体を変更する連続的な工程(in-situ)によって形成されてもよい。一例として、第1膜24がシリコン窒化膜を含み、第2膜26がシリコンカーボナイトライド膜を含む場合には、第1膜24を形成する工程条件で、炭素を含む気体(一例として、メタン気体)をさらに供給して第2膜26を形成できる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、第1膜24及び第2膜26が、異なる装置またはチャンバーで形成されてもよい。
【0054】
図面では、半導体基板10、第3膜22、第1膜24及び第2膜26が互いに接触して形成される場合を例示した。これによれば、構造を単純化し、製造コストを低減することができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。
【0055】
半導体層30上に形成された後面パッシベーション膜40は、半導体基板30に接触して形成されて、半導体基板10又は半導体層30の前面またはバルク内に存在する欠陥を不動化させる。これによって、少数キャリアの再結合サイトを除去し、太陽電池100の開放電圧を増加させることができる。
【0056】
このとき、後面パッシベーション膜40は、導電型領域32,34と電極42,42との電気的接続のためのコンタクトホール402,404を備える。コンタクトホール402,404は、第1導電型領域32と第1電極42との接続のための第1コンタクトホール402、及び第2導電型領域34と第2電極44との接続のための第2コンタクトホール404を備える。これによって、後面パッシベーション膜40は、第1導電型領域32及び第2導電型領域34が接続されてはならない電極(すなわち、第1導電型領域32の場合には第2電極44、第2導電型領域34の場合には第1電極42)と接続されることを防止する役割を果たす。また、後面パッシベーション膜40は、第1及び第2導電型領域32,34及び/又はバリア領域36をパッシベーションする効果を有することができる。
【0057】
後面パッシベーション膜40は、様々な物質で形成することができる。一例として、パッシベーション膜40は、シリコン窒化膜、含水素シリコン窒化膜、シリコン酸化膜、シリコン酸化窒化膜、アルミニウム酸化膜、シリコン炭化膜、MgF、ZnS、TiO及びCeOからなる群から選択されたいずれか1つの単一膜または2つ以上の膜が組み合わされた多層膜構造を有することができる。一例として、後面パッシベーション膜40は、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜及び/又はシリコン炭化膜であってもよい。
【0058】
本実施例において、絶縁膜21は、実質的に半導体基板10の前面に全体的に形成することができる。そして、後面パッシベーション膜40は、コンタクトホール402,404を除いて半導体層30の後面上に全体的に形成することができる。ここで、全体的に形成するということは、物理的に完壁に全てに形成された場合のみならず、不可避に一部の除外された部分がある場合を含む。
【0059】
一例として、本実施例において、前面パッシベーション膜24及び/又は反射防止膜26、後面パッシベーション膜40は、優れた絶縁特性、パッシベーション特性などを有することができるように、上述したドーパントなどを備えなくてもよい。
【0060】
第1電極42は、後面パッシベーション膜40の第1コンタクトホール402の少なくとも一部を充填して形成され、第1導電型領域32に電気的に接続(一例として、接触)され、第2電極44は、後面パッシベーション膜40の第2コンタクトホール404の少なくとも一部を充填して形成され、第2導電型領域34に電気的に接続(一例として、接触)される。このとき、第1電極42又は第2電極44が、特定のパターンを有する金属電極で構成され、第1又は第2導電型領域32,34に接触して形成されてもよい。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。
【0061】
以下では、図1及び図2を参照して、第1導電型領域32及び第2導電型領域34、バリア領域36、そして、第1及び第2電極42,44の平面形状の一例を詳細に説明する。
【0062】
図1及び図2を参照すると、本実施例では、第1導電型領域32及び第2導電型領域34は、それぞれストライプ状をなすように長く形成され、長手方向と交差する方向において互いに交互に位置している。第1導電型領域32と第2導電型領域34との間に、これらを離隔させるバリア領域36が位置し得る。図示していないが、互いに離隔した複数の第1導電型領域32が一側縁部で互いに接続され、互いに離隔した複数の第2導電型領域34が他側縁部で互いに接続されてもよい。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。
【0063】
このとき、第1導電型領域32の面積を第2導電型領域34の面積よりも大きくすることができる。一例として、第1導電型領域32及び第2導電型領域34の面積は、これらの幅を異ならせることによって調節できる。すなわち、第1導電型領域32の幅W1を第2導電型領域34の幅W2よりも大きくすることができる。
【0064】
そして、第1電極42が、第1導電型領域32に対応してストライプ状に形成され、第2電極44が、第2導電型領域34に対応してストライプ状に形成されてもよい。コンタクトホール(図1の参照符号402,404、以下同様)が、第1及び第2電極42,44の一部のみを第1導電型領域32及び第2導電型領域34にそれぞれ接続させるように形成されてもよい。例えば、コンタクトホール402,404が複数個のコンタクトホールで構成されてもよい。または、コンタクトホール402,404のそれぞれが、第1及び第2電極42,44に対応して第1及び第2電極42,44の全長に形成されてもよい。これによれば、第1及び第2電極42,44と第1導電型領域32及び第2導電型領域34との接触面積を最大化し、キャリア収集効率を向上させることができる。その他の様々な変形が可能である。また、図示していないが、第1電極42が一側縁部で互いに接続されて形成され、第2電極44が他側縁部で互いに接続されて形成されてもよい。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。
【0065】
本実施例に係る太陽電池100に光が入射すると、ベース領域110と第1導電型領域32との間に形成されたpn接合での光電変換によって電子及び正孔が生成され、生成された正孔及び電子は、制御パッシベーション層20をトンネリングし、それぞれ第1導電型領域32及び第2導電型領域34に移動した後、第1及び第2電極42,44に移動する。これによって電気エネルギーを生成するようになる。
【0066】
本実施例のように、半導体基板10の後面に電極42,44が形成され、半導体基板10の前には電極が形成されない後面電極構造の太陽電池100では、半導体基板10の前面でシェーディング損失(shading loss)を最小化することができる。これによって、太陽電池100の効率を向上させることができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではない。
【0067】
また、第1及び第2導電型領域32,34が、制御パッシベーション層20を介在して半導体基板10上に形成されるため、半導体基板10と異なる別個の層として構成される。これによって、半導体基板10にドーパントをドープして形成されたドーピング領域を導電型領域として使用する場合よりも、再結合による損失を最小化することができる。
【0068】
本実施例では、絶縁膜21において第1膜24よりも外部に位置する第2膜26が、第1膜24よりも炭素の含量が高いので、化学的安定性を向上させることができる。第2膜26の吸光係数(特に、短波長の光に対する吸光係数)が第1膜24の吸光係数と同一またはそれより大きい吸光係数を有することによって、光による太陽電池100の特性変化又は損傷を防止することができる。このとき、第2膜26が第1膜24よりも小さい屈折率を有し、屈折率によって反射率を低減することができる。
【0069】
上述した実施例では、第1及び第2導電型領域32,34が半導体基板10の後面に位置し、絶縁膜21が半導体基板10の前面上で全体的に位置する場合を例示した。これによって、相対的に多量の光が入射する半導体基板10の前面で反射を低減することができる。そして、絶縁膜21の第2膜26が炭素を含んでファイヤースルー(fire-through)に適していないため、電極42,44が形成されていない面に絶縁膜21を形成することで、電極42,44を容易で且つ様々な工程によって形成することができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、絶縁膜21は、様々な構造の太陽電池100において、前面及び後面のうち少なくとも1つに位置してもよい。一例として、第1及び第2導電型領域32,34上に位置し、第1及び第2電極42,44との接続のためのコンタクトホール402,404を備える後面パッシベーション膜40に、上述した絶縁膜21が適用されてもよい。この場合には、後面パッシベーション膜40が第1膜24、第2膜26及び第3膜22を備えることができる。その他にも様々な変形が可能である。他の例について、図3を参照して詳細に説明する。
【0070】
図3は、本発明の他の実施例に係る太陽電池の断面図である。以下で、上述した説明と同一又は極めて類似の部分に対しては詳細な説明を省略し、異なる部分に対してのみ詳細に説明する。上述した実施例及び変形例と、後述する実施例及び変形例とを組み合わせた実施例が本発明の範囲に属する。
【0071】
図3を参照すると、本実施例において第1導電型領域32及び第2導電型領域34は、半導体基板10に第1及び第2導電型ドーパントをドープして形成されたドーピング領域で構成される。ベース領域110は、第1又は第2導電型を有することができ、第1又は第2導電型ドーパントを第1又は第2導電型領域32,34よりも低いドーピング濃度で含むことができる。また、第1導電型領域32は半導体基板10の前面に位置し、第2導電型領域34は半導体基板10の後面に位置する。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、第1及び第2導電型領域32,34のうち少なくとも1つが、半導体基板10と異なる層で構成されるか、または異なる結晶構造を有する半導体層で構成されてもよい。このとき、半導体基板10と、第1及び第2導電型領域32,34のうち少なくとも1つとの間に制御パッシベーション層(図1の参照符号20)が形成されていてもよく、形成されていなくてもよい。
【0072】
このとき、半導体基板10の前面上または第1導電型領域32上に絶縁膜21が位置し、半導体基板10の後面上または第2導電型領域34上に絶縁膜21が位置し得る。
【0073】
このように、本実施例では、太陽電池100の第1及び第2電極42,44が一定のパターンを有することで、太陽電池100が、半導体基板110の前面及び後面に光が入射し得る両面受光型(bi-facial)構造を有する。これによって、太陽電池100で使用される光量を増加させ、太陽電池100の効率向上に寄与することができる。このとき、第2膜26によって、半導体基板10の前面及び後面での化学的安定性及び短波長の光に対する安定性を向上させ、反射率を低減することができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、第2電極44が半導体基板110の後面側で全体的に形成される構造を有することも可能である。
【0074】
図面及び説明では、半導体基板10の前面及び後面上に位置した絶縁膜21が第1膜24、第2膜26及び第3膜22を備える場合を図示及び説明したが、本発明がこれに限定されるものではない。半導体基板10の前面及び後面のうち1つの上に位置した絶縁膜21が、上述したように第1膜24、第2膜26及び第3膜22を備えることができる。
【0075】
以下、本発明の製造例を参照して本発明をさらに詳細に説明する。しかし、後述する本発明の製造例は、例示のために提示したものに過ぎず、本発明がこれに限定されるものではない。
【0076】
製造例1
【0077】
n型単結晶半導体基板の一面にシリコン酸化膜で構成される制御パッシベーション層を形成した。制御パッシベーション層上に、低圧化学気相蒸着によって、多結晶シリコンを含む半導体層を形成した。そして、半導体層の一部の領域にp型ドーパントをドープし、他の領域にn型ドーパントをドープして、それぞれ第1導電型領域及び第2導電型領域を備える半導体層を形成した。そして、半導体基板の後面に、シリコン窒化膜で構成される後面パッシベーション膜を形成し、半導体基板の前面に、プラズマ誘導化学気相蒸着によってシリコン窒化膜及びシリコンカーボナイトライド膜を形成した。このとき、シリコンカーボナイトライド膜は、シリコン窒化膜と同じ工程条件によって形成し、炭素含有気体(メタン)をさらに供給して形成した。熱酸化によって半導体基板の前面とシリコン窒化膜との間にシリコン酸化膜が形成されて、半導体基板の前面にシリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びシリコンカーボナイトライド膜を含む絶縁膜が形成された。コンタクトホールを介して、後面パッシベーション膜上で第1導電型領域及び第2導電型領域にそれぞれ電気的に接続される第1電極及び第2電極を形成した。
【0078】
製造例2
【0079】
半導体基板の前面に形成される絶縁膜が、順次積層されるシリコン酸化膜、シリコン窒化膜及びシリコンオキシカーバイド膜で構成される点を除いては、製造例1と同様の方法で太陽電池を製造した。
【0080】
比較例
【0081】
半導体基板の前面に形成される絶縁膜が、順次積層されるシリコン酸化膜及びシリコン窒化膜で構成され、シリコンカーボナイトライド膜またはシリコンオキシカーバイド膜を含まない点を除いては、製造例1又は製造例2と同様の方法で太陽電池を製造した。
【0082】
製造例1によって複数個の太陽電池を製造して、各太陽電池においてシリコン窒化膜とシリコンカーボナイトライド膜の400nmの波長の光での吸光係数及び633nmの波長の光での屈折率を測定し、その結果を、それぞれ図4及び図5に示した。図4を参照すると、シリコンカーボナイトライド膜の吸光係数がシリコン窒化膜の吸光係数と同一またはそれより大きいことがわかる。また、図5を参照すると、シリコンカーボナイトライド膜の屈折率がシリコン窒化膜の屈折率よりも小さいことがわかる。これによって、シリコンカーボナイトライド膜は、炭素によって、シリコン窒化膜と同一またはそれより大きい吸光係数を有し、シリコン窒化膜よりも小さい屈折率を有し得ることがわかる。このとき、シリコン窒化膜及びシリコンカーボナイトライド膜は、400nmの波長の光で0.025以下の吸光係数を有し、シリコン窒化膜は400nmの波長の光で0.020以下の吸光係数を有することがわかる。
【0083】
製造例2によって複数個の太陽電池を製造して、炭素含量によるシリコンオキシカーバイドの屈折率(633nmの波長の光での屈折率)及び吸光係数(400nmの波長の光での吸光係数)を測定し、その結果を図6に示した。図6を参照すると、炭素含量が増加するほど、シリコンオキシカーバイド膜の屈折率及び吸光係数が増加することがわかる。このとき、シリコンオキシカーバイド膜が、400nmの波長の光で0.025以下の吸光係数を有することがわかる。
【0084】
そして、製造例1による太陽電池のうち1つ、製造例2による太陽電池のうち1つ、及び比較例による太陽電池の反射率を測定し、それを図7に示した。短波長の光(すなわち、400nm以下の光)において、製造例1及び製造例2よる太陽電池が比較例よる太陽電池に比べて低い反射率を有することがわかる。これによって、製造例1及び製造例2から、シリコンカーボナイトライド膜またはシリコンオキシカーバイド膜の形成によって短波長の光を効果的に吸収したことがわかる。特に、シリコンオキシカーバイド膜を使用した製造例2は、短波長の光に対する反射率が、製造例1よりも著しく低いことがわかる。これによって、製造例2による太陽電池は、短波長の光に対する安定性が、製造例1による太陽電池よりも優れる。
【0085】
上述したような特徴、構造、効果などは、本発明の少なくとも一つの実施例に含まれ、必ずしも一つの実施例にのみ限定されるものではない。さらに、各実施例で例示した特徴、構造、効果などは、実施例の属する分野における通常の知識を有する者によって、他の実施例に対しても組み合わせ又は変形して実施可能である。したがって、このような組み合わせ及び変形に係わる内容は、本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7