(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】ラミネート用接着剤
(51)【国際特許分類】
C09J 175/06 20060101AFI20240321BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240321BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
C09J175/06
C09J11/06
B32B27/00 D
(21)【出願番号】P 2019120341
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】391047558
【氏名又は名称】ヘンケルジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】松田 健二
(72)【発明者】
【氏名】池田 仁志
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-079686(JP,A)
【文献】特開2012-131979(JP,A)
【文献】特開2018-162420(JP,A)
【文献】特開2018-115298(JP,A)
【文献】特許第6519687(JP,B2)
【文献】特開2021-004343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー、
未反応イソシアネートモノマー、(B)ポリオール成分および(C)クエン酸エステルを配合して得られるラミネート用接着剤であって、
(A)ウレタンプレポリマーは、ポリオールと(a2)イソシアネートモノマーとの反応生成物であって、ポリオールと(a2)イソシアネートモノマーとの合計100質量部当たり、(a1)400~1300の数平均分子量を有するポリエステルポリオールと(a2)イソシアネートモノマーとの合計が95.2質量部以上であり、
(A)ウレタンプレポリマーの数平均分子量は、1500~4000であり、
(B)ポリオール成分は、1000~2000の数平均分子量を有するポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールから選択される少なくとも1種を含み、
(B)ポリオール成分の配合量は、ポリオールと(a2)イソシアネートモノマーとの合計100質量部当たり、75~170質量部であり、
(C)クエン酸エステルの配合量は、ポリオールと(a2)イソシアネートモノマーとの合計100質量部当たり、0.5~7.6質量部である、
ラミネート用接着剤。
【請求項2】
(C)クエン酸エステルがアセチルクエン酸エステルを含む、請求項1に記載のラミネート用接着剤。
【請求項3】
(B)ポリオール成分は、1000~2000の数平均分子量を有するポリエステルポリオールを含む、請求項1又は2に記載のラミネート用接着剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載されたラミネート用接着剤を用いて得られたラミネートフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート用接着剤に関し、より詳細には、安定性及び接着性に優れ、フィルムを貼り合わせる際、フィルムの外観を損なわないラミネート用接着剤及びそれを用いたラミネートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医療品及び化粧品等の包装用材料、及びFPC基板及びTAB基板等の基板を製造する際に、プラスチックフィルム(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル及びポリイミド等のフィルム)、金属蒸着フィルム、及び金属箔(例えば、アルミニウム及び銅等の箔)を貼り合わせた複合フィルムが使用されている。これらのプラスチックフィルム、金属蒸着フィルム、及び金属箔等を接着するための接着剤として、有機ポリオールと有機イソシアネートを組み合せたウレタン接着剤が知られている。
【0003】
近年、環境面、簡便な設備、及びコストメリット等を考慮し、ウレタン接着剤として無溶剤型接着剤の要求が高まっている。無溶剤型接着剤は、溶剤型接着剤と比較すると、溶剤を使用しないことによる利益があるが、濡れ性が悪く、複数のフィルムを貼り合わせる際、フィルム面に気泡が生じやすく、フィルム外観を低下させることがある。特に、アルミニウムが蒸着されたポリエチレンテレフタレートフィルムは、外観不良が発生することが多い。
【0004】
特許文献1~3は、ウレタン接着剤でラミネートされた積層フィルムを開示する。特許文献1は、ポリイソシアネート及びポリオール、さらに、25℃で液状のエステルを混合して得られるウレタン接着剤で積層体を製造する方法を開示する([特許請求の範囲]、[表4]~[表6]参照)。
【0005】
特許文献2は、無溶剤型のウレタン接着剤でポリエチレンテレフタレートと金属蒸着フィルムを貼り合わせる方法を開示する([特許請求の範囲]、[0006]、[表1]参照)。
【0006】
特許文献3は、結晶性ポリオールとポリイソシアネートから合成された無溶剤系接着剤でラミネートフィルムを製造する方法を開示する([特許請求の範囲]、[0001]、[表1]参照)。
【0007】
特許文献1~3は、積層フィルムの外観が向上することを記載するが、需要者の高い要求を十分に満たしているとは言えなかった。さらに、積層フィルムで包装袋を製造する際の作業効率を考慮すると、接着剤には、養生後のフィルムへの初期接着強度に優れることが望まれている。更に、フィルムへの初期接着性に優れること及びフィルムの外観の向上を考えると、本発明者らは、接着剤は、より均一性が保たれ、濁りがより発生し難いことも重要と考えた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-162420号公報
【文献】特開2006-57089号公報
【文献】特開2002-249745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる課題を解決するためにされたもので、プラスチックフィルムを積層してラミネートフィルムを製造する際、養生後のフィルムへの初期接着強度に優れ、ラミネートフィルムの外観を損なわず、均一性が保たれ、濁りの発生を防止できるラミネート用接着剤およびそのラミネート用接着剤を用いて製造される外観に優れるラミネートフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、ポリエステルポリオールから調製されたウレタンプレポリマーと、このウレタンプレポリマーがポリオール成分で鎖長延長されたウレタン樹脂と、特定の可塑剤を有するウレタン樹脂組成物は、プラスチックフィルムを積層してラミネートフィルムを製造する際、養生後のフィルムへの初期接着強度に優れ、ラミネートフィルムの外観を損なわず、均一性及び濁り抑制に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本明細書は、下記の態様を含む。
1.(A)イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー、(B)ポリオール成分および(C)クエン酸エステルを配合して得られるラミネート用接着剤であって、
(A)ウレタンプレポリマーは、(a1)ポリエステルポリオールと(a2)イソシアネートモノマーとの反応生成物である、ラミネート用接着剤。
2.(a1)ポリエステルポリオールの数平均分子量が400~1300である、1に記載のラミネート用接着剤。
3.(A)ウレタンプレポリマーの数平均分子量が1500~4000である、1または2に記載のラミネート用接着剤。
4.(C)クエン酸エステルがアセチルクエン酸エステルを含む、1~3のいずれか1つに記載のラミネート用接着剤。
5.(C)クエン酸エステルがアセチルクエン酸トリブチルを含む、1~4のいずれか1つに記載のラミネート用接着剤。
6.(A)~(C)成分を、(A)成分を含む第1液と、(B)及び(C)成分を含む第2液に配合して得られる1~5のいずれか1つに記載の2液型ラミネート用接着剤。
7.1~6のいずれか1つに記載されたラミネート用接着剤を用いて得られたラミネートフィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、(A)イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー、(B)ポリオール成分および(C)クエン酸エステルを配合して得られるラミネート用接着剤であり、(A)ウレタンプレポリマーが(a1)ポリエステルポリオールと(a2)イソシアネートモノマーとが反応して得られるウレタン樹脂であることによって、
プラスチックフィルムを積層してラミネートフィルムを製造する際、養生後のフィルムへの初期接着強度に優れ、ラミネートフィルムの外観を損なわず、低温で長期間貯蔵しても、成分の均一性が保たれ、濁ったりすることがない。
本発明の実施形態のラミネートフィルムは、上記ラミネート用接着剤を用いて得られるので、貼り合わせが迅速になされ、外観にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一の実施形態のラミネートフィルムの断面を模式的に示す。
【
図2】本発明の他の実施形態のラミネートフィルムの断面を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、(A)イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(以下、「(A)成分」ともいう)、(B)ポリオール成分(以下、「(B)成分」ともいう)、(C)クエン酸エスエル(以下、「(C)成分」ともいう)が配合(又は混合)されて得られ、(A)~(C)成分を含む。
【0015】
本発明の実施形態の接着剤は、目的とする接着剤を得ることができる限り、(A)~(C)成分の配合順序及び配合方法等によって、特に制限されるものではない。本発明の実施形態の接着剤は、例えば、(A)ウレタンプレポリマー、(B)ポリオール成分および(C)クエン酸エステルの3成分を同時に配合して得られるものであっても、(A)成分又は(C)成分のいずれかを予め(B)成分と配合させ、その後、残り一成分を配合して得られるものであっても良いが、(B)成分と(C)成分とを予め混合し、その混合物を(A)成分と配合して得られるものがより好ましい。
【0016】
(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を配合(又は混合)することによる接着剤の製造は、既知の方法により行うことができる。溶媒中で(A)成分~(C)成分を配合して接着剤を得ることができるが、互いに溶媒を用いずに(A)成分~(C)成分を配合することもできる。
【0017】
本発明の実施形態の接着剤は、(A)成分を含む第1液と、(B)及び(C)成分を含む第2液を配合して得られる2液型接着剤であってよいし、(A)及び(C)成分を含む第1液と、(B)成分を含む第2液を配合して得られる2液型接着剤であってよい。本発明の実施形態の接着剤は、(A)成分を含む第1液と、(B)及び(C)成分を含む第2液を含む2液型接着剤であることがより好ましい。第1液及び第2液は、各々、後述する各種添加剤などを適宜含むことができる。
【0018】
本発明の実施形態において、(A)ウレタンプレポリマーは、(a1)ポリエステルポリオールと(a2)イソシアネートモノマーとが反応して生成されるウレタン樹脂である。
本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、(A)ウレタンプレポリマーが(a1)ポリエステルポリオールに基づく化学構造(例えば、主鎖にエステル結合を含む)を含むことで、複数のフィルムを貼り合わせた時に、フィルム表面に気泡をでき難くするので、フィルム外観を平滑に保つことができる。
【0019】
(A)ウレタンプレポリマーの数平均分子量は1500~4000であることが好ましい。(A)ウレタンプレポリマーの数平均分子量が上記範囲である場合、本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、接着性に優れる。
【0020】
尚、本明細書において、数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定し、ポリスチレン標準を用いて換算して得られる値である。具体的には、下記のGPC装置及び測定方法を用いて値を測定し、換算することができる。GPC装置は、東ソー社製のHCL-8220GPCを用い、検出器として、RIを用いる。GPCカラムとして、東ソー社製のTSKgel SuperMultipore HZM 2本を用いる。試料をテトラヒドロフランに溶解して、流速を0.35ml/min、カラム温度を40℃にて流して、測定値を得る。標準物質としての単分散分子量のポリスチレンを使用した検量線を用いて、測定値を換算して、目的とするMnを得る。後述する(a1)「ポリエステルポリオールのMnや(a2)イソシアネートモノマーのMnについても同様である。
【0021】
本明細書で、(a1)「ポリエステルポリオール」とは、「主鎖型」ポリエステルであって、「主鎖」にエステル結合と水酸基を有する化合物をいう。この水酸基は、主鎖の末端に通常位置し、イソシアネート基と反応する官能基として作用する。
【0022】
ポリエステルポリオールは、一般に、低分子ポリオールと、ジカルボン酸及びその無水物との縮合重合反応によって得られる。
【0023】
そのようなジカルボン酸として、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2-メチルコハク酸、2-メチルアジピン酸、3-メチルアジピン酸、3-メチルペンタン二酸、2-メチルオクタン二酸、3,8-ジメチルデカン二酸、3,7-ジメチルデカン二酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリト酸、トリメシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等が例示される。これらは、単独又は組み合わせて使用される。
【0024】
カルボン酸無水物として、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。これらは、単独で又は組み合わせて使用できる。
【0025】
低分子ポリオールとして、官能基数が1~3個のものが好ましく、特に、二官能性ポリオール、いわゆるジオールが好ましい。低分子ポリオールは、単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0026】
ジオールとして、例えば、エチレングリコール、1-メチルエチレングリコール、1-エチルエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、シクロヘキサンジメタノール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジブチル-1,5-ペンタンジオール等の低分子量ジオールが含まれる。特には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールから選択される少なくとも一種を用いても良い。
【0027】
本発明の実施形態において、(a1)「ポリエステルポリオール」の数平均分子量は、400~1300であることが好ましい。(a1)ポリエステルポリオールは、数平均分子量が上記範囲であることで鎖長が短くなり、(a2)イソシアネートモノマーと架橋しやすくなる。未反応の(a2)イソシアネートモノマーが少なくなるので、本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、(A)ウレタンプレポリマーを多く含有するようになり、接着性に優れる。
【0028】
本発明の実施形態における(a2)イソシアネートモノマーは、本発明が目的とするラミネート用接着剤を得ることができる限り特に限定されないが、芳香族イソシアネートを含むことが好ましい。(a2)イソシアネートモノマーが芳香族イソシアネートを含む場合、本発明の実施形態のラミネート用接着剤の接着性が向上する。
【0029】
本発明の実施形態の「(a2)イソシアネートモノマー」は、芳香族イソシアネートのみから構成されることを意味しない。本発明の実施形態のラミネート用接着剤の接着性及びフィルムの外観に悪影響を与えない範囲で、(a2)イソシアネートモノマーは、脂肪族イソシアネートや脂環式イソシアネートを含んでもよい。
【0030】
本明細書では、「脂肪族イソシアネート」とは、鎖状の炭化水素鎖を有し、その炭化水素鎖にイソシアネート基が直接結合している化合物であって、環状の炭化水素鎖を有さない化合物をいう。「脂肪族イソシアネート」は、芳香環を有してもよいが、直接その芳香環と、イソシアネート基は、結合していない。
尚、本明細書では、芳香環は環状の炭化水素鎖に含まれない。
【0031】
「脂環式イソシアネート」とは、環状の炭化水素鎖を有し、鎖状の炭化水素鎖を有してよい化合物である。イソシアネート基は、環状の炭化水素鎖と直接結合しても、有し得る鎖状の炭化水素鎖と直接結合してもよい。「脂環式イソシアネート」は、芳香環を有してもよいが、その芳香環と、イソシアネート基は、直接結合していない。
【0032】
「芳香族イソシアネート」とは、芳香環を有し、かつ、イソシアネート基がその芳香環と直接結合している化合物をいう。従って、たとえ芳香環をその分子内に有していたとしても、イソシアネート基が芳香環に直接結合していない化合物は、脂肪族イソシアネートか、脂環式イソシアネートに分類される。
【0033】
従って、例えば、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(OCN-C6H4-CH2-C6H4-NCO)は、イソシアネート基が芳香環に直接結合しているので、芳香族イソシアネートに該当する。
【0034】
一方、例えば、キシリレンジイソシアネート(OCN-CH2-C6H4-CH2-NCO)は、芳香環を有するが、イソシアネート基が芳香環に直接結合せず、メチレン基と結合しているので、脂肪族イソシアネートに該当する。
尚、芳香環は、二つ以上のベンゼン環が縮環していてもよい。
【0035】
芳香族イソシアネートとして、例えば、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等を例示できる。
【0036】
脂肪族イソシアネートとして、例えば、1,4-ジイソシアナトブタン、1,5-ジイソシアナトペンタン、1,6-ジイソシアナトヘキサン(以下、HDI)、1,6-ジイソシアナト-2,2,4-トリメチルヘキサン、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸メチル(リジンジイソシアネート)、及び1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(キシリレンジイソシアネート)等を例示できる。
【0037】
脂環式イソシアネートとして、例えば、5-イソシアナト-1-イソシアナトメチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート:IPDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水添キシリレンジイソシアネート)、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン(水添ジフェニルメタンジイソシアネート)、及び1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン等を例示できる。
【0038】
(a1)ポリエステルオールと(a2)イソシアネートモノマーの反応方法は、本発明の実施形態の(A)ウレタンプレポリマーを得ることができる限り制限されることはなく、一般的なウレタン化反応方法を使用することができる。例えば、溶媒を使用しない塊状重合及び溶剤を使用する溶液重合を使用することができ、適宜加熱攪拌し、必要に応じて触媒を使用することができる。さらに、(a1)ポリエステルオールと(a2)イソシアネートモノマーの反応の際に、種々の添加剤、例えば可塑剤を用いることができる。
【0039】
本発明の実施形態において「(B)ポリオール成分」とは、目的とする本発明の実施形態のラミネート用接着剤を得ることができ、接着剤の製造に悪影響を与えるものでなければ特に限定されない。
例えば、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール、またはこれらポリオールの変性物を例示できる。
尚、(B)ポリオール成分は、(A)ウレタンプレポリマーを製造する際に用いた(a1)ポリエステルポリオールを含んでいても差し支えない。
【0040】
本発明の実施形態のラミネート用接着剤は(C)クエン酸エステルを含む。(C)クエン酸エステルは可塑剤として作用する。ラミネート用接着剤は、(C)クエン酸エステルを含むことで、接着性が向上し、均一性に優れ、濁りの発生を抑制することができる。
【0041】
本発明の実施形態のラミネートフィルムは、上記ラミネート用接着剤を用いて得られるので、貼り合わせを迅速に行うことができ、外観に優れる。
【0042】
(C)クエン酸エステルとして、例えば、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、クエン酸2-エチルヘキシル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸2-エチルヘキシルが挙げられる。
【0043】
本発明の実施形態では、(C)クエン酸エステルは、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸2-エチルヘキシル等のアセチルクエン酸エステルを含むことが好ましく、特に、アセチルクエン酸トリブチルを含むことが最も好ましい。(C)クエン酸エステルが上述のエステルを含む場合、本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、接着強度がより向上し、外観もより向上し、均一性もより向上し、濁りの発生をより抑制することができ、総合的なバランスにより優れる。
【0044】
本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、成分(A)~(C)の他に、その他の成分を配合(又は混合)して得てもよい。「その他の成分」として、例えば、未反応イソシアネートモノマー、溶媒、粘着付与樹脂、顔料、可塑剤(上述の(C)クエン酸エステルを除く)、触媒及び接着促進剤等を例示できる。
【0045】
未反応イソシアネートモノマーとは、(a1)ポリエステルポリオールと(a2)イソシアネートモノマーとを反応させて(A)ウレタンプレポリマーを調製する際、(a1)ポリエステルポリオールと反応しきれなかった(a2)イソシアネートモノマーをいう。
(A)ウレタンプレポリマーを(B)ポリオール成分と反応させる際に、未反応イソシアネートモノマーも(B)ポリオール成分と反応する。
【0046】
「粘着付与樹脂」として、例えば、スチレン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、ロジンエステル、アクリル樹脂及びポリエステル樹脂(ポリエステルポリオールを除く)等を例示できる。粘着付与樹脂は、一般に、1500g/モル未満、特に1000g/モル未満の低い分子量を有する。粘着付与樹脂の添加量は、接着剤の総質量100質量部(固形分)に対し、0~50質量部であることが好ましく、30質量部以下であることがより好ましい。
【0047】
「顔料」として、例えば、TiO2、SiO2、Fe2O3または類似の酸化物またはオキシヒドレートに基づくナノ顔料が挙げられる。これらの顔料は、通常、500nm以下の粒度を有することが好ましく、100nm未満の粒度を有することがより好ましい。
【0048】
「可塑剤」として、例えば、ホワイトオイル、ナフテン鉱油、パラフィン炭化水素油、ポリプロピレンオリゴマー、ポリブテンオリゴマー、ポリイソプレンオリゴマー、水素化ポリイソプレンおよび/またはポリブタジエンオリゴマー、フタレート、アジペート、ベンゾエートエステル、植物油または動物油およびこれらの誘導体等を例示できる。
植物油、動物油及びこれらの誘導体は、一般的に食品に使用され、安全性がより高いと考えられるので、本発明の実施形態のラミネート用接着剤を食品包装フィルムの製造に利用することを考慮すると、より好ましい。
【0049】
「触媒」として、金属触媒、例えば、錫触媒(トリメチルチンラウレート、トリメチルチンヒドロキサイド、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンマレエート等)、鉛系触媒(オレイン酸鉛、ナフテン酸鉛、オクテン酸鉛等)、そのほかの金属触媒(ナフテン酸コバルト等のナフテン酸金属塩等)、及びアミン系触媒、例えばトリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルへキシレンジアミン、ジアザビシクロアルケン類、ジアルキルアミノアルキルアミン類等を例示できる。
【0050】
「接着促進剤」としては、シラン化合物が挙げられる。既知の有機官能性シラン、例えば(メタ)アクリルオキシ官能性、エポキシ官能性、アミン官能性及び非反応性置換シランを、接着促進剤として用いることができる。その例は、ビニルトリアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシメチルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシメチルトリエトキシシラン、2-グリシジルオキシエチルトリメトキシシラン等である。
【0051】
本発明の実施態様として、接着剤の総質量100質量部(固形分)に対し、接着促進剤0.1~5質量部を含むことが好ましい。
【0052】
本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、上述したように、(A)成分、(B)成分および(C)成分を混合することによって製造することができる。本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、(A)成分を含む第1液と、(B)及び(C)成分を含む第2液を配合し、その2液を含む2液型ラミネート用接着剤であってよいし、(A)及び(C)成分を含む第1液と、(B)成分を含む第2液を配合し、その2液を含む2液型ラミネート用接着剤であってよい。場合により、その他の成分を混合してよい。第1液及び第2液は、各々、その他の成分を適宜含むことができる。
本発明の実施形態のラミネート用接着剤が、2液型接着剤の場合、(C)成分を使用することから、保存安定性により優れる。本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、(A)成分を含む第1液と、(B)及び(C)成分を含む第2液に配合し、その2液を含む2液型ラミネート用接着剤がより好ましい。
混合方法は、本発明が目的とするラミネート用接着剤を得ることができる限り、特に限定されるものではない。成分を混合する順序等についても、特に限定されるものではない。本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、特別な混合方法及び特別な混合順序等を要することなく製造することができる。得られたラミネート用接着剤は、フィルムへの初期接着強度および経時による接着強度の低下が小さい。
【0053】
本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、15~100℃でフィルムに塗布されるので、この温度領域において低粘度であるべきである。食品包装フィルム用接着剤の粘度は、塗布性を考慮すると、(Brookfield粘度計)で、40℃で300~5000mPas、50℃で200~4000mPasであることが好ましい。
【0054】
本発明の実施形態のラミネートフィルムは、上述のラミネート用接着剤を用いて製造された積層体である。積層体を形成するために使用されるフィルムは、本発明の実施形態の積層体を得られる限り特に制限されることはないが、例えば、プラスチック基材に金属層が形成されたフィルム、金属層が形成されていないフィルムを例示できる。
【0055】
ラミネートフィルムを作製する際には、本発明の実施形態のラミネート用接着剤をフィルムへ塗布する。塗布方法として、例えば、グラビアコート、ワイヤーバーコート、エアナイフコート、ダイコート、リップコート、コンマコートなどの様々な方法により行うことができる。
【0056】
本発明の実施形態のラミネート用接着剤が塗布された複数のフィルムを貼り合わせ、ラミネートフィルムを製造することができる。フィルムへラミネート用接着剤を塗布する場合、塗布量は、0.5~100g/m2であることが好ましく、1~15g/m2であることがより好ましい。
【0057】
本発明の実施形態のラミネートフィルムは、上述の接着剤で複数のフィルムが貼合わされたものである。本発明の実施形態の一例を
図1及び2に例示するが、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
【0058】
図1は、本発明の一の実施形態のラミネートフィルムの断面を模式的に示す。ラミネートフィルム10は、2枚のフィルムとその間のラミネートフィルム用接着剤13から形成されており、2枚のフィルム11及び12は、ラミネートフィルム用接着剤13によって貼り合わされている。フィルム11及び12は、同一の材料であっても、異なる材料であってもよい。
図1では、2枚のフィルム11及び12は、貼り合わされているが、3枚以上のフィルムが貼り合わされていてもよい。
【0059】
本発明の他の実施形態のラミネートフィルムの断面を模式的に
図2に示す。
図2では、フィルム11とラミネートフィルム用接着剤13との間に、箔膜11aが形成されている。例えば、フィルム11が、プラスチックフィルムである場合、フィルム11の表面に、金属薄膜11aが形成されている形態を示す。金属薄膜11aは、プラスチックフィルム11の表面に、例えば蒸着によって形成することができ、この金属薄膜11aが形成されたフィルム11とフィルム12を、ラミネートフィルム用接着剤13を介して貼り付けて、
図2に係るラミネートフィルムを得ることができる。
【0060】
プラスチックフィルムに蒸着する金属として、例えば、アルミニウム、鋼及び銅等を例示できる。プラスチックフィルムに蒸着加工を施すことで、フィルムにバリア性を付与することができる。蒸着材料としては、酸化珪素や酸化アルミニウムが用いられる。基材のプラスチックフィルム11は、透明でも、白や黒等に着色されていてもよい。
【0061】
フィルム12として、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、フッ素樹脂、アクリル樹脂から成るプラスチックフィルムが用いられるが、耐熱性、耐候性及び剛性、絶縁性等を付与するためにポリエチレンテレフタレートフィルムやポリブチレンテレフタレートフィルムを用いることが特に好ましい。フィルム11及び12は、透明でも、着色されても良い。
【0062】
フィルム11の蒸着薄膜11aとフィルム12とは、本発明の実施形態のラミネートフィルム用接着剤13を用いて貼り付けられるが、フィルム11及び12は、ドライラミネート法によって積層されることが多い。従ってラミネートフィルム用接着剤13には、ラミネート時におけるフィルムへの初期密着性に優れ、フィルムへの養生後の接着性に優れていることが要求される。
【0063】
本発明の実施形態のラミネートフィルムは、様々な包装袋や屋外材料を製造するために用いられる。
包装袋とは、食品、洗剤、シャンプー及びリンス等を内包するために、ラミネートフィルムを加工して得られた袋状の物品をいう。屋外材料としては、防壁材、屋根材、太陽電池モジュール、窓材、屋外フローリング材、照明保護材、自動車部材、及び看板等の屋外で使用される物品が挙げられる。
これらの包装袋や屋外材料は、複数のフィルムが貼り合わされたラミネートフィルムを含む形態をとる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様にすぎず、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
尚、実施例の記載において、特に記載がない限り、溶媒を考慮しない部分を、質量部及び質量%の基準としている。
【0065】
<(A)ウレタンプレポリマーの合成>
(A)ウレタンプレポリマーを合成するための成分を、以下に示す。
(a1)ポリエステルポリオール
(a1-1)PES-1(アジピン酸とエチレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、グリセリンから合成されたポリエステルポリオール、Mn1200、水酸基価180mgKOH/g)
(a1-2)PES-2(アジピン酸とジエチレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、グリセリンから合成されたポリエステルポリオール、Mn1000、水酸基価210mgKOH/g)
(a1-3)PES-3(アジピン酸、イソフタル酸とジエチレングリコールから合成されたポリエステルポリオール、Mn1100、水酸基価110mgKOH/g)
(a1-4)PES-4(アジピン酸、イソフタル酸とジエチレングリコールから合成されたポリエステルポリオール、Mn2000、水酸基価58mgKOH/g)
(a1’)ポリエステル以外のポリオール
(a1’-5)サンニックスPP400(ポリプロピレングリコール、Mn400、水酸基価281mgKOH/g、三洋化成工業(株))
(a1’-6)PTMG650(ポリテトラメチレンエーテルグリコール、Mn650、水酸基価173mgKOH/g 三菱ケミカル(株))
(a1’-7)BP-5P(ポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテル、Mn530、水酸基価211mgKOH/g 三洋化成工業(株))
(a2)イソシアネートモノマー
(a2-1)デスモジュール2460M(55%2,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、45%4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、コベストロジャパン(株))
(a2-2)ミリオネートMT(4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、東ソー(株))
【0066】
(A1)ウレタンプレポリマーの製造方法の詳細を以下に示す。
表1に示されるように、反応容器にポリエステルポリオール(a1-1)38.3質量部を仕込み、反応容器を80℃オイル浴で加熱しながら減圧下、1時間攪拌して水分を取り除いた。次に、イソシアネートモノマー(a2)61.7質量部を仕込み、減圧下80℃で1時間攪拌し、イソシアネート成分100質量部を調製した。イソシアネート成分は、(A1)ウレタンプレポリマー70質量部及び未反応イソシアネートモノマー30質量部を含む。
(A1)ウレタンプレポリマーの数平均分子量は、GPC分析で測定した。測定値は、ポリスチレン標準でゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した数平均分子量である。具体的には、下記のGPC装置及び測定方法を用いて値を測定することができる。
GPC装置は、東ソー社製のHCL-8220GPCを用い、検出器として、RIを用いた。GPCカラムとしては、東ソー社製のTSKgel SuperMultipore HZ-Mを2本用いた。試料をテトラヒドロフランに溶解して、流速を0.35ml/min、カラム温度を40℃にて流し、標準物質としての単分散分子量のポリスチレンを使用した検量線を用いて分子量の換算を行った。
【0067】
((A2)~(A’9))ウレタンプレポリマーの製造方法
(A1)ウレタンプレポリマーの製造と同様の手順で、各ウレタンプレポリマーを製造した。ポリオール((a1-1)~(a1’-7))及びイソシアネートモノマー((a2-1)~(a2-2))を、表1に示される割合で配合して、(A2)~(A’9)ウレタンプレポリマーを得た。
【0068】
【0069】
<ラミネート用接着剤の製造>
接着剤組成物を製造するための成分を、以下に示す。
(A)ウレタンプレポリマー
(A2)~(A’9)ウレタンプレポリマー(表1参照)
(B)ポリオール成分
(B1)PES-1(アジピン酸とエチレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、グリセリンから合成されたポリエステルポリオール、Mn1200、水酸基価180mgKOH/g (a1-1)と同一品)
(B2)PES-2(アジピン酸とジエチレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、グリセリンから合成されたポリエステルポリオール、Mn1000、水酸基価210mgKOH/g (a1-2)と同一品)
(B3)PES-4(アジピン酸、イソフタル酸とジエチレングリコールから合成されたポリエステルポリオール、Mn:2000、水酸基価58mgKOH/g (a1-4)と同一品)
(B4)PPG1000(ポリプロピレングリコール、Mn:1000、水酸基価173mgKOH/g AGC(株))
【0070】
(C)クエン酸エステル
(C-1)ATBC(アセチルクエン酸トリブチル、田岡化学工業(株))
(C-2)ATEC(アセチルクエン酸トリエチル、ユングブンツラワー・ジャパン(株))
(C-3)TEC(クエン酸トリエチル、ユングブンツラワー・ジャパン(株))
(C-4)TBC(クエン酸トリブチル、ユングブンツラワー・ジャパン(株))
(C’-5)TOTM(トリメリット酸トリメチル、(株)ジェイ・プラス)
(C’-6)DOA(アジピン酸ジオクチル、田岡化学工業(株))
(C’-7)DOZ(アゼライン酸ジオクチル、田岡化学工業(株))
【0071】
表2及び3に示されるように、成分(A)~(C)を混合し、実施例1~9及び比較例1~7のラミネート用接着剤を製造した。具体的には、先ず、成分(B)と成分(C)を表2及び3に示す部数で混合し、その混合物に成分(A)を添加した。成分(A)の添加量は表2及び3に示す部数である。次いで、表2及び3に示される組成(質量部)で、成分(A)~(C)を60℃で攪拌し、ラミネート用接着剤を調製した。
【0072】
【0073】
【0074】
<ラミネートフィルムの製造>
実施例のラミネート用接着剤を白ベタ印刷部位と無地部位のあるPETフィルムに固形分質量が2g/m2となるように印刷面側へ塗布し、蒸着CPPフィルムを蒸着面側から積層させハンドローラーにて気泡ができるだけ抜けるように圧着させた。その後、40℃雰囲気下にて24時間養生させ、ラミネートフィルムを得た。
【0075】
<評価>
1.外観評価
養生後のラミネートフィルムの外観を目視にて評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:ドット(気泡)が少ない
△:ドット(気泡)が比較的多い
×:ドット(気泡)が目立つ、もしくは接着剤にならない
【0076】
2.養生後の接着強度測定
養生後、ラミネートフィルムをTD方向に15mm幅に切り出し、引張強度試験機(オリエンテック社製のテンシロンRTM-250(商品名))を用いて剥離試験を行い、接着強度を測定した。
剥離試験は、ラミネートフィルムを室温環境下(23℃)で24時間以上静置した後、引張速度300mm/min、T型剥離の条件で行われた。評価基準は以下のとおりである。なお、剥離箇所は白ベタ印刷部位、無地部位ともに測定し、その測定値の低い方の値で評価した。
○:2.0N/15mm以上
△:1.0N/15mm以上、2.0N/15mm未満
×:1.0N/15mm未満、もしくは接着剤にならない
【0077】
3.溶液安定性評価
(B)ポリオール成分と(C)クエン酸エステルとの相溶性を評価した。表2中の配合比率で(B)成分と(C)成分を常温で攪拌し、225mlの瓶に150g入れた。その後、マイナス5℃の恒温槽にて24時間静置させ、常温時の状態と比較して相溶性に変化がないかを目視にて確認した。評価基準は以下の通りである。
○:状態に変化はない
×:状態変化(分離や白濁)が見られた
-:(B)と(C)を配合していないので評価できない
【0078】
表2に示すように、実施例1~9のラミネート用接着剤は、非常に高いレベルでの外観性をフィルムに与え、かつ印刷部位のあるフィルムに対する接着性にも優れている。(A)ウレタンプレポリマーと反応させるために、(B)ポリオール成分と(C)クエン酸エステル(可塑剤)を予め混合しているが、成分(B)と(C)の相溶性も良好であった。成分(B)と(C)の相溶性は、例えば、成分(A)~(C)の3成分を混合した際の均一性及び濁りの発生に関して重要であり、初期接着性及び外観に影響を与えると考えられる。更に、2液型接着剤では、その保存安定性の向上に寄与し得る。例えば、成分(A)を含む第1液と、成分(B)と(C)を含む第2液を含む2液型ラミネート用接着剤の保存安定性の向上に関して重要である。
このように、実施例のラミネート用接着剤は、上述の性能に優れ、非常に高いレベルで外観が要求される食品包装袋のラミネート用接着剤等として十分有用である。
【0079】
これに対し、表3に示すように、比較例2~4のラミネート用接着剤は、クエン酸エステルを含まないため安定性が悪く、比較例1のラミネート用接着剤は、ラミネートフィルムの外観性が悪い。
比較例5~7のラミネート用接着剤は、原料である(A)ウレタンプレポリマーがポリエステルポリオールから調製されていないので、ラミネートフィルムの外観が著しく劣っている。
【0080】
このように、本発明の実施形態のラミネート用接着剤が、フィルムの外観を低下させず、養生後の初期接着強度に優れ、均一性及び濁り抑制に優れることが実証された。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、複数のフィルムを貼り合わせる際、フィルムの外観を低下させず、養生後の初期接着強度に優れ、均一性及び濁り防止に優れており、様々な用途に利用することができる。
特に、食品、洗剤、シャンプー及びリンス等を包装するラミネートフィルム用接着剤として適する。
【符号の説明】
【0082】
10 ラミネートフィルム
11 フィルム
11a 蒸着薄膜
12 フィルム
13 接着剤層