(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】製袋充填機の包装異常検出装置
(51)【国際特許分類】
B65B 51/10 20060101AFI20240321BHJP
B65B 57/10 20060101ALI20240321BHJP
B65B 1/06 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B65B51/10 200
B65B57/10
B65B1/06
(21)【出願番号】P 2019166565
(22)【出願日】2019-09-12
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000151461
【氏名又は名称】株式会社東京自働機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】竹内 一生
【審査官】種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-217962(JP,A)
【文献】特開2019-024305(JP,A)
【文献】特開2007-302341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 51/10
B65B 57/10
B65B 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
包装異常に影響する2種以上のパラメータの良品の値を予め記憶する記憶手段と、
前記2種以上のパラメータの新たな値を検出するパラメータ取得手段と、
前記2種以上のパラメータの良品の値と前記2種以上のパラメータの新たな値とに基づいて特徴量を演算する特徴量演算手段と、
前記特徴量が2種以上のパラメータの良品の値に基づいて規定された閾値を外れる場合に異常と判断する異常判断手段と、
を備え、
前記包装異常は横シール装置による包材の横シール時の異物噛み込みであり、
前記異常判断手段は異物の噛み込みを判断する噛み込み判断手段であり、
前記2種以上のパラメータのうち、1種のパラメータは、前記包材の横シール時に前記包材を挟むヒータブロック間を流れる熱の時間当たりの移動量と方向を示す熱流データである、
ことを特徴とする製袋充填機の包装異常検出装置。
【請求項2】
前記特徴量演算手段における特徴量は、前記2種以上のパラメータの良品の値と新たに取得したパラメータの値に基づいて算出されるマハラノビス距離であり、
前記異常判断手段は、前記マハラノビス距離が前記2種以上のパラメータの良品の値に基づいて規定した前記閾値から外れる場合に異常と判定する請求項1に記載された製袋充填機の包装異常検出装置。
【請求項3】
前記2種以上のパラメータの良品の値と前記2種以上のパラメータの新たな値から算出された特徴量が前記閾値を逸脱しないと判断された場合に、前記記憶手段の2種以上のパラメータの良品を更新または追加するようにした請求項1または2に記載された製袋充填機の包装異常検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製袋充填機に設けた横シール装置等において包材のシール異常を検出する包装異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内容物を充填した袋を連続して形成する製袋充填機は、筒状に巻いて縦シールしたフィルムを横シーラで横シールすることで袋の底部をシールし、内容物を充填した後で頂部を横シールして切断している。
【0003】
例えば特許文献1に記載された製袋充填機は、噛み込み判定手段によって横シーラの閉じ位置と噛み込み判定しきい値により横シール装置による内容物の噛み込みの有無を判定する。そして、横シーラの閉じ位置に関する変動要因に対応して噛み込み判定しきい値補正手段によって噛み込み判定しきい値を補正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に記載された製袋充填機では、噛み込みの有無の判断は横シール装置の閉じ位置の検出という、1種のパラメータで行っていた。この場合、包材のシール代に内容物の噛み込みの有無を判断する際に噛み込みの検出精度が十分でないことがあった。また、縦シール部の影響による横シール部の厚みの差等の要因によって噛み込みの有無の検出精度に限界があった。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、異物の噛み込みの有無をより高精度に検出できるようにした製袋充填機の包装異常検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による製袋充填機の包装異常検出装置は、包装異常に影響する2種以上のパラメータの良品の値を予め記憶する記憶手段と、2種以上のパラメータの新たな値を検出するパラメータ取得手段と、2種以上のパラメータの良品の値と2種以上のパラメータの新たな値とに基づいて特徴量を演算する特徴量演算手段と、特徴量が2種以上のパラメータの良品の値に基づいて規定された閾値を外れる場合に異常と判断する包袋異常判断手段と、を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、記憶手段に記憶した2種以上のパラメータの良品の値に基づいて閾値を規定でき、パラメータ取得手段で検出した2種以上の新たなパラメータと閾値との関係により包袋異常判断手段で異常の有無を判定できる。
【0008】
また、包装異常は横シール装置による包材の横シール時の異物噛み込みであり、包袋異常判断手段は異物の噛み込みを判断する噛み込み判断手段であることが好ましい。
包材の横シール時に異物の噛み込みがあった場合、包袋異常判断手段によって包装異常を判定できる。
【0009】
また、特徴量演算手段における特徴量は、2種以上のパラメータの良品の値と新たに取得したパラメータの値に基づいて算出されるマハラノビス距離であり、包袋異常判断手段は、マハラノビス距離が2種以上のパラメータの良品の値に基づいて規定した閾値から外れる場合に異常と判定することができる。
【0010】
また、2種以上のパラメータ等から算出された特徴量が閾値を逸脱しないと判断された場合に、記憶手段の2種以上のパラメータの値を更新または追加するようにしてもよい。
記憶手段に記憶された2種以上のパラメータの良品の値を、閾値を逸脱しない2種以上の新たなパラメータに置き換えまたは追加することで、正常の範囲が変化した場合でも噛み込みを高精度に検出できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明による製袋充填機の包装異常検出装置によれば、2種以上のパラメータの良品の値と2種以上のパラメータの良品の値とに基づいて特徴量演算手段で特徴量を演算し、特徴量が2種以上のパラメータの良品の値に基づいて規定された閾値を外れる場合に異常と判断することで、従来1種のパラメータでは検出できなかった包装異常を高精度に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態による縦型製袋充填機の要部説明図である。
【
図4】閉じ位置データ及び熱流データと確率密度を3次元で表示したグラフである。
【
図5】閉じ位置データ及び熱流データに基づくマハラノビス距離を等高線状に表示した図である。
【
図6】
図5に示すマハラノビス距離を真円に補正した図である。
【
図7】横シール装置の閉じ位置の時系列データを示すグラフである。
【
図9】横シール装置の閉じ位置の時系列及び熱流データと閾値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態による製袋充填機1の包装異常検出装置2について添付図面により説明する。
図1に示す実施形態による製袋充填機1は、包材としてのフィルムfを繰り出すフィルム供給装置3と繰り出されたフィルムfから袋Fを製造する縦型製袋充填機4とを備えている。フィルム供給装置3は、シート状のフィルムfを繰り出すフィルムロール6と、繰り出されたフィルムfを縦型製袋充填機4に搬送する複数のローラを配設させたローラ機構7とを備えている。
【0014】
縦型製袋充填機4は、内容物を投入するホッパ9の下部に製袋チューブ10が上下方向に設置されている。フィルムロール6のローラ機構7から搬送されるフィルムfはフォーマ11でガイドされて製袋チューブ10に供給されて筒状に成形される。製袋チューブ10の下端部は袋Fの水平断面形状に応じた筒状に形成されている。製造された袋Fは縦シール部F1と底部シール部F2と頂部シール部F3を有している。製袋チューブ10で筒状に成形されたフィルムfは合掌された周方向両端部が縦シーラ12で上下方向にシールされる。
【0015】
筒状のフィルムfは製袋チューブ10に沿って繰り出しベルト13で間欠的に下方に搬送される。製袋チューブ10の下方に搬送される筒状のフィルムfは、横シール装置15によって先行する袋Fの上端開口である頂部シール部F3を封止すると共に次の袋Fの底部シール部F2を封止する。底部シール部F2を封止された袋Fはホッパ9から落下する内容物が充填され、その上端開口の頂部シール部F3と次の袋Fの底部シール部F2が横シール装置15で同時に封止されてその間が図示しないカッタでカットされる。このようにして、袋Fが順次製造される。
【0016】
次に、縦型製袋充填機4の横シール装置15について
図2により説明する。
図2において、横シール装置15は製袋チューブ10の下方で、製袋チューブ10から繰り出される筒状のフィルムfに直交する水平面内に配設されている。横シール装置15には、筒状のフィルムfを挟んで両側に一対のヒータブロック16a、16bが開閉可能に配設されている。ヒータブロック16a、16bは図示しないカッタを挟んで上側部分に袋Fの底部シール部F2をシールする部分、下側部分に袋Fの頂部シール部F3をシールする部分を有している。横シール装置15には
図3に示す包装異常検出装置2が設けられている。
【0017】
各ヒータブロック16a、16bには一対の軸部17、17がヒータブロック16a、16bに直交する方向に配設されている。軸部17、17の両端には横シーラブラケット18と連結ブラケット19とが連結されている。横シーラブラケット20は軸部17を貫通させてスライド可能に支持されている。軸部17、17と横シーラブラケット18及び連結ブラケット19は四角形枠状に形成され、図示しない継手に支持されて軸部17の長手方向に往復移動可能とされている。
【0018】
横シーラブラケット18には一方のヒータブロック16aが連結されている。横シーラブラケット20には他方のヒータブロック16bが連結されている。横シーラブラケット20と連結ブラケット19との間にはクランク軸状の第一連係部材22と第二連係部材23とが配設されている。第一連係部材22は第一モータM1と、その出力軸に長手方向中央で連結されたクランクレバー24aと、クランクレバー24aの両端にそれぞれ回動可能に支持されたクランクアーム25aとを有している。
一方のクランクアーム25aの一端は横シーラブラケット20に支承され、他方のクランクアーム25aの端部は連結ブラケット19に支承されている。第二連係部材23も第一連係部材22と同様な構成を有しており、第二モータM2と、クランクレバー24bと、その両側のクランクアーム25bとをそれぞれ有している。
【0019】
図2において、第一モータM1を時計回りに、第二モータM2を反時計回りに回転させると第一連係部材22と第二連係部材23が収縮して横シーラブラケット20及びヒータブロック16bが他方のヒータブロック16aから離間する方向に移動する。これに連動して連結ブラケット19がヒータブロック16b側に近づくため、ヒータブロック16aはヒータブロック16bから離間する方向に移動する。
これとは逆に、第一モータM1を反時計回り、第二モータM2を時計回りに回転させると第一連係部材22及び第二連係部材23が伸張して横シーラブラケット20及びヒータブロック16bが他方のヒータブロック16aに近づく方向に移動する。これに連動して連結ブラケット19がヒータブロック16bから離間する方向に移動するため、ヒータブロック16aはヒータブロック16bに接近する方向に移動する。そして、ヒータブロック16a、16bで筒状のフィルムfを挟んで押圧して加熱シールする。
【0020】
第一モータM1には第一モータM1の位置検出手段として例えばエンコーダ28aが設置され、第一モータM1の回転角度(回転量)を検出する。第二モータM2には第二モータM2の位置検出手段としてエンコーダ28bが設置され、エンコーダ28bで第二モータM2の回転角度(回転量)を検出する。第一モータM1の回転角度及び第二モータM2の回転角度に基づいて、後述するフィルムf(袋Fの底部シール部F2及び頂部シール部F3)の閉じ位置データに変換可能である。
また、ヒータブロック16a、16bには温度センサ31a、31bが設置され、温度センサ31a、31bによってヒータブロック16a、16bの温度を測定して後述する熱流データに変換可能である。
【0021】
次に横シール装置15の包装異常検出装置2について
図3により説明する。包装異常検出装置2は横シール装置15でフィルムf(袋F)の底部シール部F2及び頂部シール部F3を加熱シールする際に内容物等の異物の噛み込みによるシール不良(異常)を検出するものである。
包装異常検出装置2は、第1パラメータ取得手段30と第2パラメータ取得手段32とを備えている。第1パラメータ取得手段30は、エンコーダ28a、28bで検出された第一モータM1及び第二モータM2の回転角度データをそれぞれ演算してフィルムf(袋F)の閉じ位置データに変換する。
閉じ位置データはフィルムf(袋F)の頂部シール部F3及び/または底部シール部F2の加熱シール部分での異物の噛み込みの有無によって値が増減される。また、第一モータM1及び第二モータM2の回転角度データは第1パラメータ取得手段30によってフィードバック制御して指示トルク値に基づいて第一モータM1と第二モータM2を出力制御する。
【0022】
また、第2パラメータ取得手段32は、温度センサ31a、31bで測定されたヒータブロック16a、16bの温度を熱流のデータに変換する。熱流は熱の時間当たりの移動量と方向を示すものである。熱量は、フィルムfを挟むヒータブロック16a、16b間を流れるエネルギー(J=ジュール)であり、フィルムfの加熱シールに関係するデータである。フィルムfの新たに取得した閉じ位置データと熱流データはそれぞれ特徴量演算手段37へ送信される。
図4は取得した閉じ位置データ及び熱流データの分布を確率密度関数で表したものである。
【0023】
包装異常検出装置2では、記憶手段34において、書き換え可能な第一記憶手段35と第二記憶手段36を有している。第一記憶手段35は、予め測定されたフィルム閉じ位置データの正常値(パラメータの良品の値)データ群を第1パラメータとして記憶している。また、第二記憶手段36は、予め測定されたフィルムfの熱流データの正常値データ群(パラメータの良品の値)を第2パラメータとして記憶している。
正常値データ群(パラメータの良品の値)とは、袋F(フィルムf)の底部シール部F2と頂部シール部F3の加熱シール部分において異物の噛み込みが認められない、または許容範囲内である複数の閉じ位置データ群と熱流データ群を示すものである。
そして、第一記憶手段35と第二記憶手段36に記憶されたデータ群の個々のパラメータは互いに対応している。
【0024】
包装異常検出装置2では、第1パラメータ取得手段30、第2パラメータ取得手段32、第一記憶手段35、第二記憶手段36にそれぞれ電気的に接続された特徴量演算手段37が設けられている。特徴量演算手段37では、第一記憶手段35からフィルムfの閉じ位置データの正常値データ群が入力され、第二記憶手段36から熱流データの正常値データ群が入力される。
これらの正常値データ群によって、特徴量演算手段37では、
図5に示すように、閉じ位置データ及び熱流データの2種のパラメータを縦軸及び横軸としてマハラノビス距離、即ち複数の等高線状の多重楕円からなる等マハラノビス距離線を表示することができる。等マハラノビス距離線は相関係数によって長径と短径の比が規定された楕円である。
【0025】
ここで、2種のパラメータ( 閉じ位置データ、熱流データ)を2変量とし、それぞれが正規化されたデータの場合、そのマハラノビス距離Dは公知の次式で表すことができる。正規化は第一記憶手段35、第二記憶手段36に記憶された正常値データ群によりそれぞれ行う。
【0026】
【数1】
なお、Xは閉じ位置データ
Yは熱流データ、
kはパラメータの種類の数であり、この場合は2である。
rはX,Yの相関係数で、次式で表すことができる。
【0027】
【0028】
また、第1パラメータ取得手段30と第2パラメータ取得手段32から入力される新たに取得した閉じ位置データ及び熱流データ(パラメータの新たな値)の相関データを、
図5に示す等マハラノビス距離線を示す閾値Sに重ねて、マハラノビス距離即ち特徴量としてプロットすることができる。
特徴量演算手段37には、等マハラノビス距離線と新たに取得した閉じ位置データ及び熱流データの相関データのマハラノビス距離との関係から異物の噛み込みの有無を判断する噛み込み判断手段39が接続されている。噛み込み判断手段39にはマハラノビス距離の閾値Sを決定する閾値設定手段40が接続されている。
【0029】
閾値設定手段40では、第1パラメータ取得手段30と第2パラメータ取得手段32から入力される新たに取得した閉じ位置データと熱流データとの関係でその分散の度合いから、例えば標準偏差が3σの距離にある最も外側の等マハラノビス距離線を選択して閾値Sを設定する。そして、噛み込み判断手段39によって、プロットした全ての新たな閉じ位置データ及び熱流データの相関データについて閾値Sの範囲内であれば正常値と判断し、範囲外であれば異常値と判断する。
図5によれば、q1、q2の閉じ位置データ及び熱流データが閾値Sの範囲を外れた異常値と認定される。
なお、閉じ位置データ及び熱流データの相関のない真円のものが
図6に示されている。この場合、中心(平均値)からの距離がマハラノビス距離である。
【0030】
なお、第1パラメータ取得手段30と第2パラメータ取得手段32から入力される新たな閉じ位置データと熱流データが全て正常値(良品の値)と認定された場合、これらの閉じ位置データと熱流データの正常値データ群を第一記憶手段35及び第二記憶手段36に書き換えて記憶する。これによって、第一記憶手段35及び第二記憶手段36の正常値データ群を随時書き換えて更新できるため、正常値の範囲が時間等の経過と共に変化する場合でも噛み込みを高精度に検出できる。
特徴量演算手段37のマハラノビス距離によって製造される袋Fの底部シール部F2や頂部シール部F3の横シール部分が噛み込みによって異常と判断された場合、縦型製袋充填機4の作動を停止させて外筒する袋Fを取り除く。或いは、縦型製袋充填機4を停止させることなく袋Fを順次製造して、異常と判断された袋Fを製造ラインから外すことができる。
【0031】
次に、比較例として、エンコーダ28a、28bで測定した新たな閉じ位置データを1種のパラメータとして取得した場合における縦型製袋充填機4の包装異常検出方法について説明する。
図7において、走行するフィルムfを横シール装置15で加熱シールしてフィルムfから袋Fを順次製造する場合、閉じ位置データを順次取得してプロットしたグラフである。図において、縦軸が閉じ位置データ、横軸が測定回数である。
図8は、このグラフを正規分布図に表示したものである。この場合、標準偏差をσとして±3σの範囲内に99.7%の閉じ位置データが含まれ、これらを正常値として判断することができる。
【0032】
図9は、この閉じ位置データを熱流データとの相関関係で横軸と縦軸にプロットしたものである。
図9において、閉じ位置データだけでなく熱流データの標準偏差もσとして±3σの範囲内に99.7%の熱流データが含まれる。比較例で判断した閉じ位置データと熱流データをそれぞれ±3σの範囲を閾値として仕切ると、上限の+3σを外れる閉じ位置データp1と下限-3σを外れる閉じ位置データp2が噛み込みの異常値であり、不良品と認定される。
しかしながら、閉じ位置データ及び熱流データの±3σの範囲内であっても、正常値の多数の閉じ位置データ群、熱流データ群から離れたデータq1とq2は異常値の可能性が高い。しかし、1種のパラメータによる包装異常検出方法では、これらのデータq1、q2は閉じ位置データ及び熱流データのいずれであっても正常値の範囲内と判定されてしまう。
この点を考慮して、上述した本発明の実施形態のように、2種のパラメータを用いてマハラノビス距離によって正常値と異常値を判別することで、より高精度な判断を行うことができる。
【0033】
上述したように本実施形態による製袋充填機1の包装異常検出装置2によれば、2種のパラメータに基づいてマハラノビス距離により横シール装置15の異物の噛み込みの有無によるシール異常の有無を判断できる。そのため、製造される袋Fについて横シール部分の包装異常の有無を高精度に検出できる。
しかも、第一記憶手段35及び第二記憶手段36の正常値データ群が随時更新可能であるので、正常値の範囲が経時的に変化する場合でもこれに応じて噛み込みによる包装異常の検出精度を高精度に維持できる。
【0034】
以上、本発明の実施形態による製袋充填機1の包装異常検出装置2について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜の変更や置換等が可能であり、これらはいずれも本発明に含まれる。以下に、本発明の変形例等について説明するが、上述した実施形態と同一または同様な部分、部材には同一の符号を用いて説明を省略する。
【0035】
上述した実施形態による包装異常検出装置2では、パラメータとして閉じ位置データ及び熱流データからなる2種のデータ(2次元のデータ)を用いて横シール装置15の噛み込みの有無による包装異常を判断している。しかし、本発明では、選択するパラメータは上記の2種類のパラメータに限定されるものではなく、種々のパラメータを採用できる。例えば、横シーラの速度、加速度、熱流積分値、熱流微分値、駆動用モータの電流値、力、力積、力微分値等、各種のパラメータを適宜採用することができる。
【0036】
また、採用するパラメータは2種に限定されるものではなく、製袋充填機1で用いる3種以上のパラメータを採用して、各パラメータの正常値データ群からマハラノビス距離またはパラメータの関係性の式を予め求めて、新たに取得するパラメータとの関係を噛み込みの有無による包装異常として判断してもよい。そのため、特徴量演算手段37はマハラノビス距離に限定されるものではなく、主成分分析やニューラルネットワークを利用して算出することもできる。
【0037】
なお、第1パラメータ取得手段30と第2パラメータ取得手段32はパラメータ取得手段に含まれる。
また、上述した実施形態では、縦型製袋充填機4の横シール装置15について説明したが、本発明は製袋充填機1として横型製袋充填機に横シール装置や縦シール装置等のシール装置を取り付ける場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 製袋充填機
2 包装異常判断装置
4 縦型製袋充填機
15 横シール装置
16a、16b ヒータブロック
28a、28b エンコーダ
30 第1パラメータ取得手段
31a、31b 温度センサ
32 第2パラメータ取得手段
34 記憶手段
35 第一記憶手段
36 第二記憶手段
37 特徴量演算手段
39 噛み込み判断手段
40 閾値設定手段
M1 第一モータ
M2 第二モータ
f フィルム
F 袋