(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】車両用空調装置の組立方法
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20240321BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B60H1/00 102P
B60H1/32 613M
(21)【出願番号】P 2019192918
(22)【出願日】2019-10-23
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000152826
【氏名又は名称】株式会社日本クライメイトシステムズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 肇
(72)【発明者】
【氏名】田中 武史
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-083391(JP,A)
【文献】特開2015-066987(JP,A)
【文献】特開2011-195091(JP,A)
【文献】特開2011-016521(JP,A)
【文献】特開2014-088146(JP,A)
【文献】特開平10-129235(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0208444(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調用空気が通過する通路を有するとともに第1ケーシング構成部材と第2ケーシング構成部材とに分割されたケーシングと、当該ケーシングに収容される熱交換器とを備え、前記ケーシングに形成された空気導入口から導入された空調用空気を前記熱交換器により温度調節して車室に供給するように構成された車両用空調装置の組立方法において、
前記第1ケーシング構成部材に、
空気導入ダクトの上側部分を形成するダクト上半部を車幅方向に突出するように設けるとともに、前記ダクト上半部から前記ケーシングの外方へ突出し、突出方向先端部が平面に沿うように形成された第1突出部と、当該第1突出部から
車幅方向に離れた部分から前記ケーシングの外方へ突出し、突出方向先端部が前記平面に沿うように形成された第2突出部とを設け
、
前記第2ケーシング構成部材に、前記空気導入ダクトの下側部分を形成するダクト下半部を車幅方向に突出するように設けた後、
作業台の平面からなる上面に前記第1突出部の先端部と前記第2突出部の先端部とを接触させた状態で前記第1ケーシング構成部材を前記作業台に載置し、
その後、前記作業台に載置されている前記第1ケーシング構成部材に前記熱交換器を収容し、
次いで、前記第2ケーシング構成部材を前記第1ケーシング構成部材に組み付けて一体化することにより、前記熱交換器を前記第1ケーシング構成部材と前記第2ケーシング構成部材とで挟んで固定
し、前記ダクト上半部と前記ダクト下半部とを合わせて前記空気導入ダクトを形成することを特徴とする車両用空調装置の組立方法。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置の組立方法において、
前記第1突出部は、前記第1ケーシング構成部材の外部に形成されたリブであることを特徴とする車両用空調装置の組立方法。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用空調装置の組立方法において、
前記第1突出部は、前記ケーシングを車体に固定するための取付脚部であることを特徴とする車両用空調装置の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車等に搭載される車両用空調装置の組立方法に関し、特に分割可能なケーシングを備えたものの組立方法の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、特許文献1~3に開示されているように、自動車に搭載される車両用空調装置は、空調用空気が導入されるケーシングを備えており、このケーシングの内部には、冷却用熱交換器や加熱用熱交換器、エアミックスダンパ、吹出方向切替ダンパ等が収容されている。ケーシングには、デフロスタ吹出口、ベント吹出口及びヒート吹出口が形成されており、ケーシングに導入された空調用空気を冷却用熱交換器や加熱用熱交換器によって温度調整した後、デフロスタ吹出口、ベント吹出口及びヒート吹出口のうち、所望の吹出口から車室内に供給するようになっている。
【0003】
特許文献1~3の車両用空調装置のケーシングは、当該ケーシングの車両前側を構成する前側部分と車両後側を構成する後側部分とに分割されており、さらに、前側部分が上下方向に分割可能に構成され、後側部分が左右方向に分割可能に構成されている。これら合計4つのケーシング構成部材が組み合わされて一体化されることによってケーシングが成り立っている。ケーシングの前側部分には、冷却用熱交換器が収容されており、この冷却用熱交換器が下側ケーシング構成部材と上側ケーシング構成部材とによって上下方向に挟まれるようにしてケーシング内で固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-089427号公報
【文献】特開2019-084840号公報
【文献】特開2019-051819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両用空調装置を組み立てる際には、例えば冷却用熱交換器を下側ケーシング構成部材に収容した後、この下側ケーシング構成部材に上側ケーシング構成部材を合わせることにより、上側ケーシング構成部材と下側ケーシング構成部材とを一体化するとともに、冷却用熱交換器を固定する方法が考えられる。この方法を採用する場合、下側ケーシング構成部材に冷却用熱交換器を収容するとき、下側ケーシング構成部材がぐらつかないように、かつ、所定の向きとなるように専用の治具に固定しておく必要がある。すなわち、一般的に車両搭載時におけるケーシングの周囲には、車体側の部品が多く存在しているので、下側ケーシング構成部材は、車両搭載時における周囲の部品との干渉を回避する形状とされ、さらに、ケーシングの内部の通気抵抗や風配も考慮しなければならないのに加えて、車体への固定や保持のための形状も必要になり、下側ケーシング構成部材の形状は複雑化する。このように形状が複雑化した下側ケーシング構成部材を作業台に置くと、ぐらつきやすく、冷却用熱交換器を挿入する際の方向が定まり難くなるので、作業台の上に専用の治具を設置し、この専用の治具に下側ケーシング構成部材をセットしてから冷却用熱交換器を挿入し、上側ケーシング構成部材を合わせる必要がある。
【0006】
従って、専用の治具の作製が必要になってコスト高になるだけでなく、下側ケーシング構成部材を専用の治具にセットする工程も必要になり、組み立て作業が煩雑化するという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数のケーシング構成部材に分割する場合に、それらの少なくとも1つを、専用の治具を用意することなく、作業台等の上に安定して置くことができるようにして組立作業性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、ケーシング構成部材の外部に複数の突出部を設け、複数の突出部の先端部が同一平面に位置するように配置した。
【0009】
第1の発明は、空調用空気が通過する通路を有するとともに第1ケーシング構成部材と第2ケーシング構成部材とに分割されたケーシングと、当該ケーシングに収容される熱交換器とを備え、前記ケーシングに形成された空気導入口から導入された空調用空気を前記熱交換器により温度調節して車室に供給するように構成された車両用空調装置の組立方法において、前記第1ケーシング構成部材に、前記ケーシングの外方へ突出し、突出方向先端部が平面に沿うように形成された第1突出部と、当該第1突出部から離れた部分から前記ケーシングの外方へ突出し、突出方向先端部が前記平面に沿うように形成された第2突出部とを設けた後、作業台の上面に前記第1突出部の先端部と前記第2突出部の先端部とを接触させた状態で前記第1ケーシング構成部材を前記作業台に載置し、その後、前記作業台に載置されている前記第1ケーシング構成部材に前記熱交換器を収容し、次いで、前記第2ケーシング構成部材を前記第1ケーシング構成部材に組み付けて一体化することにより、前記熱交換器を前記第1ケーシング構成部材と前記第2ケーシング構成部材とで挟んで固定する。
【0010】
この構成によれば、車両用空調装置を組み立てる際、第1ケーシング構成部材を例えば上面が平面な作業台に載置すると、第1突出部及び第2突出部の先端部がそれぞれ作業台の上面に当接する。このとき、第1突出部と第2突出部とが互いに離れているとともに、第1突出部及び第2突出部の先端部が共に上面に沿うように配置されるので、第1ケーシング構成部材が安定する。これにより、第1ケーシング構成部材をセットするための専用の治具を不要にしながら、各種部品の第1ケーシング構成部材への収容作業及び第2ケーシング構成部材の第1ケーシング構成部材への組付作業が行えるようになる。
【0011】
第2の発明は、前記第1突出部は、前記第1ケーシング構成部材の外部に形成されたリブであることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、第1ケーシング構成部材の剛性が低下する部分に形成したリブにより、組み立て作業時の第1ケーシング構成部材を安定させることが可能になる。
【0013】
第3の発明は、前記第1突出部は、前記ケーシングを車体に固定するための取付脚部であることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、ケーシングを車体に固定するための取付脚部により、組み立て作業時の第1ケーシング構成部材を安定させることが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、第1ケーシング構成部材に、先端部が平面に沿うように形成された第1突出部及び第2突出部を互いに離して形成したので、専用の治具を用意することなく、第1ケーシング構成部材を作業台等の上に安定して置くことができ、組立作業性を向上させることができる。
【0016】
また、熱交換器の組付を容易に行うことができる。
【0017】
第2の発明によれば、第1ケーシング構成部材の外部に形成したリブによって当該第1ケーシング構成部材の剛性を高めることができ、このリブにより、組み立て作業時の第1ケーシング構成部材を安定させることができるので、リブと、第1ケーシング構成部材を作業台等に置くための部分とを共通化することができる。
【0018】
第3の発明によれば、取付脚部によってケーシングを車体に固定することができ、この取付脚部により、組み立て作業時の第1ケーシング構成部材を安定させることができるので、取付脚部と、第1ケーシング構成部材を作業台等に置くための部分とを共通化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態1に係る車両用空調装置の正面図である。
【
図7】上側ケーシング構成部材を天地反対にして後方かつ下方から見た斜視図である。
【
図8】上側ケーシング構成部材を天地反対にして後方かつ上方から見た斜視図である。
【
図9】上側ケーシング構成部材を作業台に載置した状態を後側から見た図である。
【
図10】上側ケーシング構成部材に冷却用熱交換器を収容した状態を後側から見た図である。
【
図11】上側ケーシング構成部材と下側ケーシング構成部材とを一体化した状態を後側から見た図である。
【
図12】本発明の実施形態2に係る右側ケーシング部材を上方から見た斜視図である。
【
図13】本発明の実施形態2に係る右側ケーシング部材の右側面図である。
【
図14】本発明の実施形態2に係る右側ケーシング部材を作業台に載置した状態を後側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0021】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る車両用空調装置1を車両後側から見た図であり、
図2は、車両用空調装置1を車両前側から見た図であり、
図3は、車両用空調装置1を車両左側から見た図であり、
図4は、車両用空調装置1を車両右側から見た図である。
【0022】
車両用空調装置1は、例えば自動車等の車両に搭載されて車室の空調を行うものであり、
図5に示すように、空調ケーシング2と、冷却用熱交換器3と、加熱用熱交換器4と、上側エアミックスダンパ6と、下側エアミックスダンパ7と、デフロスタダンパ8と、前席用ベントダンパ9と、ヒートダンパ10とを備えている。
【0023】
また、図示しないが、車両用空調装置1は送風ユニットを備えている。送風ユニットは、送風ケーシングと、送風機とを有しており、車室の助手席側に配設されている。送風機は、シロッコファン及び該シロッコファンを回転駆動するためのモータで構成されている。送風ケーシングは、車室内の空気と車室外の空気のいずれかを選択して空調用空気として導入することができるように構成されており、送風ケーシングに導入された空調用空気は送風機によって空調ケーシング2に送られるようになっている。空調用空気の送風量は、モータに印加される電圧によって変更可能になっている。送風ケーシングには、車室内の空気と車室外の空気との両方を同時に導入することが可能に構成されていてもよい。
【0024】
空調ケーシング2と送風ケーシングとは車幅方向(車両左右方向)に並ぶように配置されて車室の前端部に設けられているインストルメントパネル(図示せず)の内部に収容されている。空調ケーシング2と送風ケーシングとは一体に構成されていてもよいし、別体に構成されていてもよい。空調ケーシング2と送風ケーシングとが車幅方向に並ぶことなく、車幅方向中央部に配置されるように構成されていてもよい。また、空調ケーシング2と送風ケーシングとは接続されている。また、この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車両左側を単に「左」といい、車両右側を単に「右」というものとする。また、車両用空調装置1は、左ハンドル車用と右ハンドル車用とで別々とされており、例えば左右対称に構成することもできる。以下の説明において、左を右と置き換え、右を左と置き換えて構成することもでき、左右方向の一方側、他方側と定義することもできる。この実施形態における左右方向は、便宜上、各図に示すように定義する。
【0025】
尚、図示しないが、車両の車室よりも前にはエンジンが搭載されるエンジンルームが設けられている。エンジンルームには、冷凍サイクルを構成する圧縮機や凝縮器等が配設されている。また、エンジンの代わりに車両走行用のモータが搭載されていてもよい。
【0026】
図3に示すように、空調ケーシング2の左側壁部の前側には、左側へ突出する空気導入ダクト2aが形成されている。空気導入ダクト2aの左端部には、空気導入口2bが形成されている。空気導入口2bに送風ユニットが接続されており、送風ユニットから送られてきた空調用空気は空調ケーシング2の内部の前側に左から流入するようになっている。
【0027】
図1及び
図5に示すように、空調ケーシング2の上壁部の前側には、車両のフロントガラスの内面に向けて空調風を供給するためのデフロスタ吹出口2cが形成されている。このデフロスタ吹出口2cは左右方向に長い形状とされている。デフロスタ吹出口2cには図示しないデフロスタダクトが接続されている。デフロスタダクトの下流端部は、インストルメントパネルの前端部に形成されたデフロスタ口(図示せず)に接続されている。
【0028】
空調ケーシング2の上壁部におけるデフロスタ吹出口2cよりも後側には、前席に着座している乗員(前席乗員)の上半身に向けて空調風を供給するための前席用ベント吹出口2dが形成されている。前席用ベント吹出口2dには、それぞれ、図示しないベントダクトが接続されている。ベントダクトの下流端部は、インストルメントパネルに形成されたベント口(図示せず)に接続されている。
【0029】
図3~
図5に示すように、空調ケーシング2の後壁部の下側には、乗員の足下近傍に向けて空調風を供給するためのヒート吹出口2eが形成されている。ヒート吹出口2eには図示しないヒートダクトが接続されている。ヒートダクトは、前席乗員の足下近傍まで延びるフロントヒートダクトと、後席乗員の足下近傍まで延びるリヤヒートダクトとからなり、前席乗員及び後席乗員の足下近傍に空調風を供給することができるようになっている。尚、ヒートダクトはフロントヒートダクトのみで構成されていてもよい。また、ヒート吹出口2eは複数設けることができる。
【0030】
図5に示すように、空調ケーシング2の内部には、空気導入通路R1と、上側温風生成通路R2aと、下側温風生成通路R2bと、デフロスタ通路R3と、前席用ベント通路R4と、ヒート通路R5と、上側通路R6aと、下側通路R6bとが形成されている。空気導入通路R1は、空調ケーシング2の内部において前側部分に形成されている。空気導入通路R1の上流端部は、
図3に示す空気導入口2bに接続されている。空気導入通路R1は後側へ延びている。空気導入通路R1の下流端部に冷却用熱交換器3が配設されている。
【0031】
冷却用熱交換器3は、空気導入通路R1を流通する空調用空気を冷却するためのものである。冷却用熱交換器3は、空調ケーシング2の内部において前側に位置しており、その空気通過面が上下方向に延びる姿勢とされている。冷却用熱交換器3の上部及び下部が空調ケーシング2によって保持されている。
【0032】
この実施形態では冷却用熱交換器3が、上側ヘッダタンク3a、下側ヘッダタンク3b、チューブ及びフィン(図示せず)を有するエバポレータ(冷媒蒸発器)で構成されている。エバポレータは、従来から周知の冷凍サイクル装置の構成要素である。冷却用熱交換器3の内部を流通する低温の冷媒と冷却用熱交換器3の外部を通過する空調用空気とが熱交換することによって空調用空気が冷却される。このときに冷却用熱交換器3の表面に発生した凝縮水は、
図2~
図4に示すドレン管部2fから空調ケーシング2の外部に排出されるようになっている。空気導入通路R1は、冷風を生成する冷風生成通路でもある。ドレン管部2fの下流端部は、車室外に連通している。
【0033】
図5に示すように、加熱用熱交換器4は、冷却用熱交換器3の空気流れ方向下流側(後側)において空調ケーシング2の上下方向中間部に配置されている。従って、冷却用熱交換器3は、加熱用熱交換器4よりも前方に配置されることになる。加熱用熱交換器4は冷却用熱交換器3から後側に離れて配置されており、加熱用熱交換器4と冷却用熱交換器3との間には空間が設けられている。加熱用熱交換器4は、その空気通過面が上下方向に延びる姿勢とされている。
【0034】
空調ケーシング2の内部には、隔壁部21が前後方向に延びるように設けられている。隔壁部21よりも上側に上側温風生成通路R2aが形成され、隔壁部21よりも下側に下側温風生成通路R2bが形成されている。上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bは、空調ケーシング2の内部において前後方向の中間部、かつ、上下方向の中間部に形成されることになる。
【0035】
上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bには、加熱用熱交換器4が配設されている。加熱用熱交換器4の略上半部が上側温風生成通路R2aに配置され、加熱用熱交換器4の略下半部が下側温風生成通路R2bに配置される。加熱用熱交換器4は、ヘッダタンク、チューブ及びフィン(図示せず)を有するヒータコアで構成されている。加熱用熱交換器4には、車両に搭載されているエンジン(図示せず)を循環するエンジン冷却水が供給パイプ4a(
図1~
図4に示す)を介して供給されるようになっている。加熱用熱交換器4に供給されたエンジン冷却水と、加熱用熱交換器4の外部を通過する空調用空気とが熱交換することによって空調用空気が加熱される。加熱用熱交換器4に供給されたエンジン冷却水は、排出パイプ4b(
図1~
図4に示す)によってエンジンに戻されるようになっている。供給パイプ4a及び排出パイプ4bの前側は、空調ケーシング2の前部に設けられたブラケット2gによって保持されている。また、加熱用熱交換器4の上部及び下部は、空調ケーシング2に保持されている。
【0036】
加熱用熱交換器4の前後方向の寸法(外部空気の通過方向の寸法)は、冷却用熱交換器3の前後方向の寸法よりも短く設定されている。尚、加熱用熱交換器4は冷凍サイクルの凝縮器で構成されていてもよい。また、加熱用熱交換器4の上下方向の寸法は冷却用熱交換器3の上下方向の寸法よりも短く設定されており、空調ケーシング2の内部には、加熱用熱交換器4の上方に空間が形成されるとともに、加熱用熱交換器4の下方にも空間が形成される。これら空間は通路となるものであり、具体的には、空調ケーシング2の加熱用熱交換器4の上方には、冷却用熱交換器3を通過した冷風が流通する上側通路R6aが形成されており、また、空調ケーシング2の加熱用熱交換器4の下方には、冷却用熱交換器3を通過した冷風が流通する下側通路R6bが形成されている。
【0037】
上側通路R6aの上流端部は、冷却用熱交換器3における空気流れ方向下流側の面の上側と対向するように配置され、空気導入通路R1の下流端部の上側部分に連通している。上側通路R6aは、加熱用熱交換器4の上部よりも上方へ向けて延びている。また、上側通路R6aの中途部は、上側温風生成通路R2aに連通可能となっている。
【0038】
上側エアミックスダンパ6は、上側温風生成通路R2aの上流端部の開度を変更することによって上側温風生成通路R2aを流通する空気量を調整するためのものである。上側エアミックスダンパ6の左右両端部が空調ケーシング2の左右両側壁部に対して回動可能に支持されている。上側エアミックスダンパ6は、上側温風生成通路R2aの上流端部を全閉にした状態から回動して上側温風生成通路R2aの上流端部を全開にした状態に切り替えられるとともに、全閉状態と全開状態との間の任意の位置に停止させることができるようになっている。
図5に示すように、上側エアミックスダンパ6が上側温風生成通路R2aの上流端部を全開にすると、上側通路R6aの下流側が上側エアミックスダンパ6によって遮断されて上側通路R6aの冷風が上側温風生成通路R2aに流入することになる。これがフルホット状態である。また、上側エアミックスダンパ6が上側温風生成通路R2aの上流端部を全閉にすると、上側通路R6aの下流側が上側エアミックスダンパ6によって全開にされて上側通路R6aの冷風が上側温風生成通路R2aに流入しなくなる。これはフルコールド状態である。
【0039】
また、下側通路R6bの上流端部は、冷却用熱交換器3における空気流れ方向下流側の面の下側と対向するように配置され、空気導入通路R1の下流端部の下側部分に連通している。従って、空気導入通路R1から流出した冷風は、上側通路R6a及び下側通路R6bの両方に流入することになる。下側通路R6bは、冷却用熱交換器3の後側から加熱用熱交換器4の下方を通って加熱用熱交換器4よりも後側へ向けて延びており、空調ケーシング2の下部後側に達している。下側通路R6bは、空調ケーシング2の下部後側から上方へ湾曲しながら延び、空調ケーシング2の後壁部に沿って該空調ケーシング2の上部に達するまで延びている。下側通路R6bの中途部は、下側温風生成通路R2bに連通可能となっている。
【0040】
下側エアミックスダンパ7は、下側温風生成通路R2bの上流端部の開度を変更することによって下側温風生成通路R2bを流通する空気量を調整するためのものである。下側エアミックスダンパ7の左右両端部が空調ケーシング2の左右両側壁部に対して回動可能に支持されている下側エアミックスダンパ7は、下側温風生成通路R2bの上流端部を全閉にした状態から回動して下側温風生成通路R2bの上流端部を全開にした状態に切り替えられるとともに、全閉状態と全開状態との間の任意の位置に停止させることができるようになっている。
図5に示すように、下側エアミックスダンパ7が下側温風生成通路R2bの上流端部を全開にすると、下側通路R6bが下側エアミックスダンパ7によって遮断されて下側通路R6bの冷風が下側温風生成通路R2bに流入することになる。これがフルホット状態である。また、下側エアミックスダンパ7が下側温風生成通路R2bの上流端部を全閉にすると、下側通路R6bが下側エアミックスダンパ7によって全開にされて下側通路R6bの冷風が下側温風生成通路R2bに流入しなくなる。これがフルコールド状態である。
【0041】
上側エアミックスダンパ6と下側エアミックスダンパ7とは、周知のリンク機構を使用することで連動させることができ、例えばエアミックスアクチュエータ等によって駆動される。エアミックスアクチュエータは、図示しないが空調制御装置に接続されている。空調制御装置は、乗員による設定温度や車室外温度、車室内温度等に基づいて上側エアミックスダンパ6及び下側エアミックスダンパ7の開度を演算し、上側エアミックスダンパ6及び下側エアミックスダンパ7がその開度となるように、エアミックスアクチュエータを制御する。これにより、空気の温度調節が行われる。
【0042】
エアミックスアクチュエータによって上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bの開度が大きくされると、上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bへ流入する冷風量が増えるので、温風の生成量が増えることになり、調和空気の温度が上昇する。一方、エアミックスアクチュエータによって上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bの開度が小さくされると、上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bへ流入する冷風量が減るので、温風の生成量が減ることになり、調和空気の温度が低下していく。上側エアミックスダンパ6及び下側エアミックスダンパ7を回動させることによって調和空気の温度を狙いの温度とすることができるように構成されている。
【0043】
上述のようにして生成された調和空気によって空調ケーシング2の内部に空調風が形成される。空調風は、フルホット時には加熱用熱交換器4で生成された温風のみとなり、また、フルコールド時には冷却用熱交換器3で生成された冷風のみとなり、また、フルホットとフルコールドの間の時には温風と冷風が混合したものになる。
【0044】
デフロスタ通路R3は、空調ケーシング2の内部において上側に形成されており、内部には空調風が流通するようになっている。デフロスタ通路R3の下流端部は、デフロスタ吹出口2cに接続されている。デフロスタ通路R3は、デフロスタ吹出口2cを介して車室に連通している。
【0045】
デフロスタダンパ8は、デフロスタ通路R3を開閉するためのものであり、左右両端部が空調ケーシング2の左右両側壁部に対して回動可能に支持されている。デフロスタダンパ8が回動することにより、デフロスタ通路R3が全閉状態から全開状態、及びその反対にも切り替えられるとともに、その中間の開度にも切り替えられるようになっている。
【0046】
空調ケーシング2の上側には、乗員の上半身に空調風を供給するための前席用ベント通路R4が上側通路R6aの下流側及び下側通路R6bの下流側に連通するように形成されている。すなわち、前席用ベント通路R4は、空調ケーシング2の内部の上側においてデフロスタ通路R3よりも後側に形成されており、内部には空調風が流通するようになっている。また、前席用ベント通路R4は、加熱用熱交換器4の上方に形成されている。
【0047】
ベントダンパ9は、ベント通路R4を開閉するためのものであり、左右両端部が空調ケーシング2の左右両側壁部に対して回動可能に支持されている。ベントダンパ9が回動することにより、ベント通路R4が全閉状態から全開状態、及びその反対にも切り替えられるとともに、その中間の開度にも切り替えられるようになっている。
【0048】
ヒート通路R5は、空調ケーシング2の内部において前席用ベント通路R4よりも下側に形成されており、内部には空調風が流通するようになっている。ヒート通路R5の下流端部は、ヒート吹出口2eに接続されている。ヒート通路R5は、ヒート吹出口2eを介して車室に連通している。
【0049】
ヒートダンパ10は、ヒート通路R5を開閉するためのものであり、左右両端部が空調ケーシング2の左右両側壁部に対して回動可能に支持されている。ヒートダンパ10が回動することにより、ヒート通路R5が全閉状態、全開状態及び中間の開度に切り替えられる。
【0050】
また、デフロスタダンパ8、前席用ベントダンパ9及びヒートダンパ10は、周知のリンク機構を使用することで連動させることができ、例えば吹出方向切替用アクチュエータ等によって駆動される。吹出方向切替用アクチュエータは、図示しないが空調制御装置に接続されている。空調制御装置は、乗員による設定温度や車室外温度、車室内温度等に基づいてデフロスタダンパ8、前席用ベントダンパ9及びヒートダンパ10の開度を演算し、デフロスタダンパ8、前席用ベントダンパ9及びヒートダンパ10がその開度となるように、吹出方向切替用アクチュエータを制御する。これにより、例えば、ベントモード、デフロスタモード、ヒートモード、バイレベルモード、デフヒートモード等に切り替えることができる。
【0051】
空調ケーシング2は、例えば複数の樹脂製部材を組み合わせて構成されており、冷却用熱交換器3と、加熱用熱交換器4と、上側エアミックスダンパ6と、下側エアミックスダンパ7と、デフロスタダンパ8と、前席用ベントダンパ9と、ヒートダンパ10とを収容する部材である。空調ケーシング2の分割構造は、特に限定されるものではないが、例えば、前後方向や上下方向とすることができる。この実施形態では、
図1~
図4に示すように、空調ケーシング2が、当該空調ケーシング2の車両前側を構成する前側ケーシング部材(前側部分)2Aと、当該空調ケーシング2の車両後側を構成する後側ケーシング部材(後側部分)2Bとに分割されている。
【0052】
前側ケーシング部材2Aには、冷却用熱交換器3が収容されており、この前側ケーシング部材2Aは、本発明の熱交換器を収容する部分である。一方、後側ケーシング部材2Bには、加熱用熱交換器4と、上側エアミックスダンパ6と、下側エアミックスダンパ7と、デフロスタダンパ8と、前席用ベントダンパ9と、ヒートダンパ10とが収容されている。
【0053】
後側ケーシング部材2Bは、左右方向の中間部において分割されており、当該後側ケーシング部材2Bの左側を構成する左側ケーシング部材2Cと、当該後側ケーシング部材2Bの右側を構成する右側ケーシング部材2Dとで構成されている。一方、前側ケーシング部材2Aは、上下方向の中間部において分割されており、当該前側ケーシング部材2Aの上側を構成する上側ケーシング構成部材(第1ケーシング構成部材)2Eと、当該前側ケーシング部材2Aの下側を構成する下側ケーシング構成部材(第2ケーシング構成部材)2Fとで構成されている。従って、4つの部材を組み合わせることによって空調ケーシング2が構成されている。これら4つの部材は、係合爪や嵌合構造、ネジ等によって一体化される。
【0054】
後側ケーシング部材2Bの前端部は全体が開放されており、また、前側ケーシング部材2Aの後端部も全体が開放されている。後側ケーシング部材2Bの前端部と、前側ケーシング部材2Aの後端部とを合わせることにより、後側ケーシング部材2Bの内部と、前側ケーシング部材2Aの内部とが連通するようになっている。
【0055】
図5に示すように、後側ケーシング部材2Bの前端部の周縁部には、前側へ突出する凸部2hが全周に亘って形成されている。一方、前側ケーシング部材2Aの後端部の周縁部には、後側ケーシング部材2Bの凸部2hが嵌合する嵌合部としての嵌合凹部2iが全周に亘って形成されている。後側ケーシング部材2Bの凸部2hが前側ケーシング部材2Aの嵌合凹部2iに入り込んで嵌合することにより、空調ケーシング2の内部の空気漏れや凝縮水の漏水が抑制されるようになっている。尚、図示しないが、後側ケーシング部材2Bに嵌合凹部を形成し、前側ケーシング部材2Aに凸部を形成するようにしてもよい。
【0056】
図6は、前側ケーシング部材2Aの分解図であり、天地を反対にして示している。従って、この
図6では、上側ケーシング構成部材2Eが下に、下側ケーシング構成部材2Fが上に位置している。下側ケーシング構成部材2Fは、その後端部の全体が開放するとともに、上端部も開放されており、後端部の開放部分と上端部の開放部分とが互いに連続することによって大きな開口を形成している。下側ケーシング構成部材2Fの底壁部23は下方へ膨出するように形成されている。この底壁部23に冷却用熱交換器3の下側ヘッダタンク3bが嵌まるようになっている。また、底壁部23には、上記ドレン管部2fが下方へ突出するように一体成形されている。ドレン管部2fの上流端は、下側ケーシング構成部材2Fの内部で開口している。
【0057】
下側ケーシング構成部材2Fの左側には、空気導入ダクト2aの下側部分を形成するダクト下半部20が左側へ突出するように設けられている。ダクト下半部20の上端部が開放されている。ダクト下半部20には、空調ケーシング2の下部を車体に固定するための下側取付脚部22が設けられている。下側取付脚部22は、例えば車体を構成するパネル材や補強材等に対してネジやボルト等の締結部材によって締結される。
【0058】
上側ケーシング構成部材2Eは、その後端部の全体が開放するとともに、下端部も開放されており、後端部の開放部分と下端部の開放部分とが互いに連続することによって大きな開口を形成している。上側ケーシング構成部材2Eの下端部と下側ケーシング構成部材2Fの上端部とを合わせることにより、上側ケーシング構成部材2Eの内部と、下側ケーシング構成部材2Fの内部とが連通する。上側ケーシング構成部材2Eの下端部と下側ケーシング構成部材2Fの上端部は、前後方向の嵌合構造と同様に嵌合するようになっている。
【0059】
上側ケーシング構成部材2Eの上壁部25は、下側ケーシング構成部材2Fの底壁部23の真上に位置しており、上方へ膨出するように形成されている。この上壁部25に冷却用熱交換器3の上側ヘッダタンク3aが嵌まるようになっている。
図7に示すように、上壁部25の内面には、前後方向に延びる複数の支持板部25aが左右方向に間隔をあけて設けられている。尚、
図7~
図11において「上」とは空調装置の上と示し、「下」とは空調装置の下を示している。
【0060】
上側ケーシング構成部材2Eの左側には、空気導入ダクト2aの上側部分を形成するダクト上半部26が左側へ突出するように設けられている。ダクト上半部26の下端部が開放されており、このダクト上半部26の下端部とダクト下半部20の上端部とが合わさることにより、
図1に示す空気導入ダクト2aが構成される。また、上側ケーシング構成部材2Eの右側には、空調ケーシング2の上下方向中間部を車体に固定するための中間取付脚部28が設けられている。中間取付脚部28は、例えば車体を構成するパネル材や補強材等に対してネジやボルト等の締結部材によって締結される。
【0061】
図8にも示すように、上側ケーシング構成部材2Eは、ダクト上側突出部(第1突出部)30と、左側突出部(第1突出部)31と、右側突出部(第2突出部)32とを有している。従って、この実施形態では第1突出部が2つ形成されることになるが、第1突出部は1つであってもよいし、3つ以上あってもよい。また、第2突出部は2つ以上あってもよく、この場合、複数の第2突出部が前後方向または左右方向に互いに離れているのが好ましい。
【0062】
ダクト上側突出部30は、空調ケーシング2の外方、即ちダクト上半部26の上方へ向けて突出するとともに、左右方向に延びる板状をなしており、上側ケーシング構成部材2Eの左右方向中央部よりも左側に位置している。ダクト上側突出部30は、上側ケーシング構成部材2Eの外部に形成されたリブである。
【0063】
また、ダクト上側突出部30は、空調ケーシング2の上部を車体に固定するための上側取付脚部でもある。ダクト上側突出部30には、当該ダクト上側突出部30の厚み方向、即ち前後方向に貫通する貫通孔30aが形成されている。貫通孔30aには、ネジやボルト等の締結部材が挿通される。ダクト上側突出部30は、締結部材によって例えば車体を構成するパネル材や補強材等に対して締結される。また、ダクト上側突出部30の前面には、前側へ突出する複数の板部30bが形成されている。板部30bは、貫通孔30aの周りに並ぶように配置されている。
【0064】
ダクト上側突出部30の突出方向先端部である上端部30cは、
図6に示す仮想平面300に沿うように形成されている。仮想平面300は、例えば組み立て作業を行う際の作業台の上面等である。ダクト上側突出部30の上端部30cが仮想平面300に沿うように形成されることで、車両用空調装置1を車体に搭載したときに上端部30cは略水平に左右方向に延びることになる。
【0065】
左側突出部31は、ダクト上側突出部30から右側に離れて配置されており、上壁部25の右縁部近傍から空調ケーシング2の外方、即ち上壁部25の上方へ向けて突出するとともに、前後方向に延びる板状をなしており、上側ケーシング構成部材2Eの左右方向中央部よりも左側に位置している。右側突出部31は、上側ケーシング構成部材2Eの外部に形成されたリブである。左側突出部31の突出方向先端部である上端部31cは、
図6に示す仮想平面300に沿うように形成されている。
【0066】
左側突出部31の後端部は、前側ケーシング部材2Aにおける嵌合凹部2iの形成部分よりも後方へ突出している。この左側突出部31の後端部には、案内部35が連続して設けられている。案内部35は、後側ケーシング部材2Bの凸部2hを、前側ケーシング部材2Aの嵌合凹部2iに案内する部分であり、前側ケーシング部材2Aの下部から後側へ突出するように設けられている。案内部35は、嵌合凹部2iの下方に位置するとともに左右方向に延びており、この案内部35の上面により、後側ケーシング部材2Bの凸部2hを前側へ向けて案内可能になっている。案内部35の右端部と左側突出部31の後端部とが一体化されてリブのような形状となっている。
【0067】
右側突出部32は、ダクト上側突出部30及び左側突出部31から右側に離れて配置されており、上壁部25の左縁部近傍から空調ケーシング2の外方、即ち上壁部25の上方へ向けて突出する板状をなしている。右側突出部32は、上側ケーシング構成部材2Eの左右方向中央部よりも右側に位置している。右側突出部32も上側ケーシング構成部材2Eの外部に形成されたリブである。右側突出部32の突出方向先端部である上端部32cは、
図6に示す仮想平面300に沿うように形成されている。
【0068】
右側突出部32は、前後方向に延びる部分32aと、左右方向に延びる部分32bとを有している。前後方向に延びる部分32aは、上壁部25から後側及び前側へそれぞれ突出している。これにより、右側突出部32の前後方向の寸法は、上壁部25の前後方向の寸法よりも長くなっている。
【0069】
従って、この実施形態では、ダクト上側突出部30の上端部30cと、左側突出部31の上端部31cと、右側突出部32の上端部32cとは、同一平面300上に位置することになる。
【0070】
(前側ケーシング部材2Aの組み立て要領)
次に、
図9~
図11に基づいて前側ケーシング部材2Aの組み立て要領について説明する。まず、
図9に示すように、上側ケーシング構成部材2Eを天地反転させた状態で作業台400の上面に載置する。作業台400の上面は、
図6に示す仮想平面300と同様な平面で構成されている。従って、作業台400の上面に上側ケーシング構成部材2Eを天地反転させた状態で載置すると、ダクト上側突出部30の上端部30cと、左側突出部31の上端部31cと、右側突出部32の上端部32cとが作業台400の上面に接触する。このとき、ダクト上側突出部30と、左側突出部31と、右側突出部32とが互いに離れているとともに、ダクト上側突出部30、左側突出部31及び右側突出部32の上端部30c、31c、32cが共に作業台400の上面に沿うように配置されるので、上側ケーシング構成部材2Eが作業台400の上で安定する。よって、上側ケーシング構成部材2Eをセットするための専用の治具が不要になるとともに、専用の治具にセットする工数も不要になる。
【0071】
その後、
図10に示すように、天地反転させた冷却用熱交換器3を上側ケーシング構成部材2Eの上方から当該上側ケーシング構成部材2Eの内部に収容する。冷却用熱交換器3を上側ケーシング構成部材2Eの内部に収容すると、冷却用熱交換器3の上側ヘッダタンク3aが上側ケーシング構成部材2Eの上壁部25に嵌まる。
【0072】
次いで、
図11に示すように、天地反転させた下側ケーシング構成部材2Fを上側ケーシング構成部材2Eの上方から下方へ移動させる。これにより、冷却用熱交換器3の下側部分が下側ケーシング構成部材2Fに収容される。下側ケーシング構成部材2Fを上側ケーシング構成部材2Eに組み付けると、冷却用熱交換器3の下側ヘッダタンク3bが下側ケーシング構成部材2Fの底壁部23に嵌まり、冷却用熱交換器3が上側ケーシング構成部材2Eと下側ケーシング構成部材2Fとで上下方向に挟まれて固定される。上側ケーシング構成部材2Eと下側ケーシング構成部材2Fとは、係合爪やネジ等で一体化する。
【0073】
(車両用空調装置1の動作)
次に、上記のように構成された車両用空調装置1の動作について説明する。まず、ベントモードについて説明すると、このベントモードは、デフロスタ通路R3とヒート通路R5とを閉じて、前席用ベント通路R4を開くモードである。また、上側エアミックスダンパ6及び下側エアミックスダンパ7が上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bを全閉状態にすることで、冷却用熱交換器3を通過した冷風が上側通路R6a及び下側通路R6bを流通する。このように、上側通路R6a及び下側通路R6bを設けていることで、通路断面積を増やすことができ、通気抵抗が低減される。前席用ベント通路R4が開いているので、冷風は前席用ベント通路R4に流入して車室に供給される。
【0074】
仮に、上側エアミックスダンパ6及び下側エアミックスダンパ7が上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bを半開状態にしていれば、上側温風生成通路R2aと下側温風生成通路R2bとで温風が生成され、この温風と冷風とが混合して調和空気となり、車室の各部に供給される。
【0075】
次に、ヒートモードについて説明する。このヒートモードは、前席用ベント通路R4を閉じて、デフロスタ通路R3とヒート通路R5とを開くモードである。上側エアミックスダンパ6及び下側エアミックスダンパ7が上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bを全開状態にすると、冷却用熱交換器3を通過した冷風が上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bを流通する間に加熱用熱交換器4によって加熱される。上側温風生成通路R2aを流通した温風は、主に上方へ向かって流れてデフロスタ通路R3に流入してデフロスタ吹出口2cから車室に供給される。下側温風生成通路R2bを流通した温風は、主にヒート通路R5へ向かって流れてヒート吹出口2eからから車室に供給される。
【0076】
次に、デフロスタモードについて説明すると、このデフロスタモードは、デフロスタ通路R3を開き、前席用ベント通路R4及びヒート通路R5を閉じるモードである。上側エアミックスダンパ6及び下側エアミックスダンパ7が上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bを全開状態にすると、冷却用熱交換器3を通過した冷風が上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bを流通する間に加熱用熱交換器4によって加熱される。上側温風生成通路R2a及び下側温風生成通路R2bを流通した温風は、主に上方へ向かって流れてデフロスタ通路R3に流入してデフロスタ吹出口2cから車室に供給される。
【0077】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態に係る車両用空調装置1によれば、上側ケーシング構成部材2Eにダクト上側突出部30、左側突出部31及び右側突出部32を形成し、これらの上端部30c、31c、32cが平面300に沿うように形成したので、専用の治具を用意することなく、上側ケーシング構成部材2Eを作業台400の上に安定して置くことができ、組立作業性を向上させることができる。
【0078】
また、ダクト上側突出部30、左側突出部31及び右側突出部32が左右方向に離れているので、上側ケーシング構成部材2Eを作業台400の上に載置したとき、上側ケーシング構成部材2Eが左右方向に倒れることはない。
【0079】
また、左側突出部31が前後方向に延びているとともに、ダクト上側突出部30と左側突出部31とが前後方向に離れて配置されているので、上側ケーシング構成部材2Eを作業台400の上に載置したとき、上側ケーシング構成部材2Eが前後方向に倒れることはない。
【0080】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。例えば、下側ケーシング構成部材2Fに第1突出部及び第2突出部を形成し、これら突出部の先端部が平面に沿うように形成されていてもよい。
【0081】
(実施形態2)
図12~
図14は、本発明の実施形態2に係るものである。この実施形態2では、作業台400に接触する突出部を右側ケーシング部材2Dに形成している点で実施形態1のものと異なっている。以下、実施形態1と同じ部分には実施形態1と同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。
【0082】
図12に示すように、右側ケーシング部材2Dの側壁部には、第1突出部201、第2突出部202及び第3突出部203が右側へ突出するように形成されている。第1突出部201、第2突出部202及び第3突出部203の突出方向先端面は、同一平面上に位置するように形成されている。第1突出部201、第2突出部202及び第3突出部203は、円筒状に形成されている。第1突出部201、第2突出部202及び第3突出部203は同じ形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。例えば、第1突出部201、第2突出部202及び第3突出部203のうち、少なくとも1つが角筒状をなしていてもよいし、リブ形状であってもよい。
【0083】
第1突出部201は、右側ケーシング部材2Dの上部近傍かつ前側に位置している。第2突出部202は、右側ケーシング部材2Dの下部近傍に位置している。第3突出部203は、右側ケーシング部材2Dの上部近傍かつ後側に位置している。
図14に示すように、右側ケーシング部材2Dを作業台400の上面に載置すると、第1突出部201、第2突出部202及び第3突出部203の突出方向先端面が作業台400の上面に接触する。これにより、右側ケーシング部材2Dが作業台400の上で安定するので、右側ケーシング部材2Dをセットするための専用の治具が不要になるとともに、専用の治具にセットする工数も不要になる。
【0084】
右側ケーシング部材2Dには、エアミックスダンパ6、7や、デフロスタダンパ8、前席用ベントダンパ9、ヒートダンパ10等を収容する。その後、左側ケーシング部材2Cを右側ケーシング部材2Dに組み付ける。
【0085】
この実施形態2によれば、専用の治具を用意することなく、右側ケーシング部材2Dを作業台400の上に安定して置くことができるので、組立作業性を向上させることができる。
【0086】
なお、左側ケーシング部材2Cに同様な突出部を形成してもよい。この場合、左側ケーシング部材2Cにエアミックスダンパ6、7や、デフロスタダンパ8、前席用ベントダンパ9、ヒートダンパ10等を収容した後、右側ケーシング部材2Dを左側ケーシング部材2Cに組み付ける。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上説明したように、本発明に係る車両用空調装置は、例えば、自動車等に搭載して利用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 車両用空調装置
2 空調ケーシング
2A 前側ケーシング部材
2B 後側ケーシング部材
2E 上側ケーシング構成部材(第1ケーシング構成部材)
2F 下側ケーシング構成部材(第2ケーシング構成部材)
2b 空気導入口
2f ドレン管部
2i 嵌合凹部(嵌合部)
3 冷却用熱交換器
30 ダクト上側突出部(第1突出部)
30c 上端部(先端部)
31 左側突出部(第1突出部)
31c 上端部(先端部)
32 右側突出部(第2突出部)
32c 上端部(先端部)
35 案内部