(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-03-19
(45)【発行日】2024-03-28
(54)【発明の名称】レイアップマンドレル上に電子部品を配置することによる複合部品への電子部品の設置
(51)【国際特許分類】
B29C 70/68 20060101AFI20240321BHJP
B64C 1/00 20060101ALI20240321BHJP
B32B 37/14 20060101ALI20240321BHJP
B32B 5/28 20060101ALI20240321BHJP
B29K 105/20 20060101ALN20240321BHJP
B29L 31/34 20060101ALN20240321BHJP
【FI】
B29C70/68
B64C1/00 B
B32B37/14 Z
B32B5/28 Z
B29K105:20
B29L31:34
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019197623
(22)【出願日】2019-10-30
【審査請求日】2022-10-07
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ケー・フェイ
(72)【発明者】
【氏名】キース・ディー・フムフェルド
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-517366(JP,A)
【文献】国際公開第2014/160498(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102073411(CN,A)
【文献】特開2012-193374(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03566939(EP,A1)
【文献】特開2005-329694(JP,A)
【文献】特開2002-088175(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/00-70/88
B64C 1/00
B32B 37/14
B32B 5/28
B29K 105/20
B29L 31/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積電子部品を有する複合材料(14)を形成する方法(900)であって、前記方法は、
少なくとも1つの電子部品(10、28)をレイアップシステムのレイアップ表面(15)上に配置するステップと、
複合材料(14)を前記レイアップ表面(15)上に配置するステップであって、前記複合材料(14)が樹脂(8)および繊維(6)を含む、ステップと、
前記レイアップ表面(15)と前記繊維(6)との間に前記樹脂(8)の流れを生じさせるステップと、
硬化樹脂(8)を形成するために前記樹脂(8)を硬化させるステップであって、前記電子部品(10、28)および前記繊維(6)が前記硬化樹脂(8)内に配置される、ステップと
、
前記レイアップ表面から前記複合材料を分離するステップであって、前記電子部品は前記複合材料の表面の一部を形成する、ステップと、
を含む、方法(900)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの電子部品(10、28)を配置するステップは、前記レイアップ表面(15)上に電子伝導性インクを配するステップを含む、請求項1に記載の方法(900)。
【請求項3】
前記電子伝導性インクの少なくとも一部の上に非導電層(23)を配するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法(900)。
【請求項4】
前記非導電層(23)の上に伝導性インクの第2の層を配するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法(900)。
【請求項5】
前記レイアップ表面(15)上に保護層(24)を配置するステップをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法(900)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの電子部品(10、28)を前記レイアップ表面(15)上に配置するステップは、前記保護層(24)の上部表面(15)に複数の電子部品(10、28)を配置するステップを含む、請求項5に記載の方法(900)。
【請求項7】
前記樹脂(8)の上部表面(15)は前記電子部品(10、28)の表面(15)を含み、前記上部表面(15)の平面度が所定の平面度公差内にあると判定する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法(900)。
【請求項8】
電気的な機能を有する複合材料(14)装置であって、
レイアップシステムの表面(15)に基づいた形状を有する樹脂(8)と、
前記樹脂(8)内に含まれる繊維(6)と、
少なくとも1つの電子部品(10、28)と
を含み、
前記電子部品(10、28)は、前記レイアップシステムの前記表面(15)上の前記電子部品(10、28)の周りの前記樹脂(8)の流れに基づいて前記樹脂(8)内に配置され
ており、
前記複合材料(14)の上部表面(15)は前記電子部品(10、28)の表面(15)を含み、前記上部表面(15)の平面度は所定の平面度公差内である、
装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの電子部品(10、28)は電子伝導性インクを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記電子伝導性インクの少なくとも一部の上に非導電層(23)をさらに含む、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記非導電層(23)の上に伝導性インクの第2の層をさらに含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記電子部品(10、28)は配線のセット(16A~16C、22A~22B)であり、前記配線(16A~16C、22A~22B)は、前記複合材料(14)の樹脂(8)によって機械的に支持されている、請求項8から
11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記電子部品(10、28)は前記複合材料(14)の樹脂(8)内に配置された歪みセンサであり、前記歪みセンサは前記複合材料(14)の屈曲を測定するように構成されている、請求項8から
12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記電子部品(10、28)は前記複合材料(14)の樹脂(8)内に配置された発光ダイオードであり、前記発光ダイオードは前記樹脂(8)内に配置された配線(16A~16C、22A~22B)から電力を受け取る、請求項8から
13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
複合材料(14)片を形成する方法(900)であって、
ワイヤリングハーネス(16、22、116、216)を形成するためにレイアップ表面(15)上に電子伝導性インクを配するステップと、
複合材料(14)を前記レイアップ表面(15)上に配置するステップであって、前記複合材料(14)が樹脂(8)および繊維(6)を含む、ステップと、
前記レイアップ表面(15)と前記繊維(6)との間に樹脂(8)の流れを生じさせるステップと、
硬化樹脂(8)を形成するために前記樹脂(8)を硬化させるステップであって、前記ワイヤリングハーネス(16、22、116、216)が前記硬化樹脂(8)内に配置される、ステップと
、
前記レイアップ表面から前記複合材料を分離するステップであって、前記ワイヤリングハーネスは前記複合材料の表面の一部を形成する、ステップと、
を含む、方法(900)。
【請求項16】
前記ワイヤリングハーネス(16、22、116、216)を配するステップは、
前記電子伝導性インクの少なくとも一部の上に非導電層(23)を配するステップと、
前記非導電層(23)の上に伝導性インクの第2の層を配するステップと
をさらに含み、
前記ワイヤリングハーネス(16、22、116、216)は三次元構造を形成する、
請求項
15に記載の方法(900)。
【請求項17】
前記ワイヤリングハーネス(16、22、116、216)を配するステップが、
複数の複合材料(14)片を形成するステップと、
第1の複合材料(14)片の前記ワイヤリングハーネス(16、22、116、216)を第2の複合材料(14)片の前記ワイヤリングハーネス(16、22、116、216)に電子的に結合するステップと
をさらに含む、請求項
15または
16に記載の方法(900)。
【請求項18】
前記ワイヤリングハーネス(16、22、116、216)を配するステップは、前記レイアップ表面(15)上の保護層(24)の上に配するステップをさらに含む、請求項
15から
17のいずれか一項に記載の方法(900)。
【請求項19】
前記レイアップ表面(15)上に電子部品(10、28)を配置するステップであって、前記ワイヤリングハーネス(16、22、116、216)を配する前記ステップは、前記ワイヤリングハーネス(16、22、116、216)を前記電子部品(10、28)に電子的に結合するステップをさらに含む、ステップをさらに含む、請求項
15から
18のいずれか一項に記載の方法(900)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、積層複合材、特に集積電子部品を有するものを形成するためのシステムおよびプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
積層複合材および構造は、その高い強度重量比、耐食性、およびその他の有利な特性のために、航空機、宇宙船、回転翼航空機、船舶、自動車、トラック、およびその他のビークルおよび構造の製造を含む、様々な用途で使用されている。航空機の製造および組み立てでは、このような積層複合材および構造は、胴体、翼、尾部、外板、およびその他の部品を形成するためにますます多く使用されている。
【0003】
航空宇宙メーカーは、一部の部品の重量を減らして性能を向上させるために、ますます多くの積層複合材を使用している。航空宇宙産業で使用される積層複合材は、通常、繊維強化複合材料で構成されている。このタイプの繊維強化複合材料は、一般に2つの必須構成要素、すなわち、最初に繊維、次に繊維を囲む樹脂(ポリマーマトリックスなど)を含む。樹脂は繊維を包み込み、熱硬化性ポリマーマトリックスの場合、三次元架橋が起こるように熱処理により硬化および固化される。この硬化と固化には、繊維が互いにしっかりと結合し、閉じ込められた空気と揮発物が積層体から除去されるという効果がある。熱可塑性ポリマーマトリックスについても同様の熱処理が行われる可能性があり、最終的な積層複合材の圧密をもたらす。様々な適切な繊維材料を高性能用途に使用でき、最も一般的には炭素繊維であるが、ガラス繊維またはアラミド繊維も使用できる。
【0004】
複合部品を製造するには、複合材料の層または硬化前ラミナを一度に1層ずつ手で形成または配置するレイアップツール(ベースツール、形成ツール、またはマンドレルでも知られている)を使用する必要がある。これらの用途では、形成してから硬化させる必要がある、複雑な外形の完成部品またはチャネルを利用できる。通常、樹脂含浸炭素繊維積層材などの含浸済み複合繊維プライ(「プリプレグ」)は、手または機械でツールまたはマンドレル上に置かれる。所望の数の層がツール上に配置されると、積層複合材は、袋詰めされ、オートクレーブなどの硬化装置で硬化される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示された例は、電子部品が埋め込まれた複合材料を形成する方法を提供する。この方法は、レイアップシステムのレイアップ表面上に少なくとも1つの電子部品を配置することを含む。この方法はまた、樹脂および繊維を含む複合材料をレイアップ表面上に配置することを含む。加えて、この方法は、レイアップ表面と繊維との間に樹脂の流れを生じさせることを含む。さらに、この方法は、硬化樹脂を形成するために樹脂を硬化することを含み、硬化樹脂は、集積電子部品を備えた複合材片を形成するために、電子部品および繊維の両方を支持する。
【0006】
一部の例では、少なくとも1つの電子部品を配置することは、レイアップ表面上に電子伝導性インクを配することを含む。一部の例では、この方法は、電子伝導性インクの少なくとも一部の上に非導電層を配すること、および非導電層の上に伝導性インクの第2の層を配することを含む。この方法の例には、レイアップ表面上に保護層を配置することも含まれる。この方法は、保護層の上部表面上に複数の電子部品を配置することも含むことができる。樹脂の上部表面は電子部品の表面を含み、この方法は、上部表面の平面度が所定の平面度公差内にあると判定することも含むことができる。
【0007】
別の開示された例は、電気的機能を有する複合材料装置を含む。複合材料は、レイアップシステムの表面に基づいた形状を有する樹脂を含む。加えて、複合材料は、樹脂内に含まれる繊維を含む。さらに、複合材料は、少なくとも1つの電子部品を含む。複合材料の電子部品は、レイアップシステムの表面上の電子部品の周りの樹脂の流れに基づいて、樹脂内に配置される。
【0008】
一部の例では、少なくとも1つの電子部品は電子伝導性インクである。装置はまた、電子伝導性インクの少なくとも一部の上に非導電層を含むことができ、非導電層の上に伝導性インクの第2の層を含むことができる。複合材料の上部表面は電子部品の表面を含み、上部表面の平面度は所定の平面度公差内にあってもよい。電子部品は配線のセットであってもよく、配線は、複合材料の樹脂によって機械的に支持されている。電子部品は、複合材料の樹脂内に配置された歪みセンサであってもよく、歪みセンサは、複合材料の屈曲を測定するように構成されている。電子部品は、複合材料の樹脂内に配置された発光ダイオードであってもよく、発光ダイオードは、樹脂内に配置された配線から電力を受け取る。
【0009】
複合材片を形成する方法も開示されている。この方法は、配線のセットを形成するためにレイアップ表面上に電子伝導性インクを配することを含む。この方法はまた、樹脂および繊維を含む複合材をレイアップ表面上に配置することを含む。この方法は、レイアップ表面と繊維との間に樹脂の流れを生じさせることをさらに含む。さらに、この方法は、硬化樹脂を形成するために樹脂を硬化させることを含み、配線のセットは、硬化樹脂によって所定の位置に保持される。
【0010】
一部の例では、ワイヤリングハーネスを配することは、電子伝導性インクの少なくとも一部の上に非導電層を配することをさらに含む。この方法は、非導電層の上に伝導性インクの第2の層を配することも含むことができ、ワイヤリングハーネスは三次元構造を形成する。一部のさらなる例では、ワイヤリングハーネスを配置することは、複数の複合材片を形成すること、および第1の複合材片のワイヤリングハーネスを第2の複合材片のワイヤリングハーネスに電子的に結合することをさらに含む。この方法はまた、レイアップ表面上の保護層の上にワイヤリングハーネスを配することを含んでもよい。この方法はまた、レイアップ表面上に電子部品を配置すること、およびワイヤリングハーネスを電子部品に電子的に結合することを含むことができる。
【0011】
議論された形状、機能、および利点は、様々な例において独立して達成され得るか、またはさらなる詳細が以下の説明および図面を参照して理解され得るさらに他の例において組み合わされ得る。
【0012】
本開示は、以下に提示されるより詳細な説明、および例示としてのみ提示される添付図面からより完全に理解されるようになり、したがって、これらは本開示を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】形成前のレイアップ表面、電子部品、および複合材料の側面図の概略図である。
【
図1B】樹脂が流れた後のレイアップ表面、電子部品、および複合材料の側面図の概略図である。
【
図1C】形成された複合材料がレイアップ表面から分離された後のレイアップ表面、電子部品、および複合材料の側面図の概略図である。
【
図2A】複合材料内に形成されたワイヤリングハーネスの上部表面図の概略図である。
【
図2B】複合材料内に形成されたワイヤリングハーネスの側面図の概略図である。
【
図3A】形成前のレイアップ表面、2本の配線、非導電層、および複合材料の側面図の概略図である。
【
図3B】樹脂が流れた後のレイアップ表面、2本の配線、非導電層、および複合材料の側面図の概略図である。
【
図3C】形成された複合材料がレイアップ表面から分離された後のレイアップ表面、2本の配線、非導電層、および複合材料の側面図の概略図である。
【
図4A】複合材料内に形成された三次元ワイヤリングハーネスの上部表面図の概略図である。
【
図4B】複合材料内に形成された三次元ワイヤリングハーネスの側面図の概略図である。
【
図5A】形成前のレイアップ表面、電子部品、保護層、および複合材料の側面図の概略図である。
【
図5B】樹脂が流れた後のレイアップ表面、電子部品、保護層、および複合材料の側面図の概略図である。
【
図5C】形成された複合材料がレイアップ表面から分離された後のレイアップ表面、電子部品、保護層、および複合材料の側面図の概略図である。
【
図6A】複合材料内に形成された配線に結合された電子部品の上部表面図の概略図である。
【
図6B】複合材料内に形成された配線に結合された電子部品の側面図の概略図である。
【
図7】2つのワイヤリングハーネスが互いに結合されているワイヤリングハーネスを有する2つの複合材片の概略図である。
【
図8】本明細書に開示される1つ以上の例に従って製造された1つ以上の積層複合材を統合することができる航空機の斜視図の例示である。
【
図9】複合部品を形成する方法の一例のフロー図の例示である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
対応する部品には、すべての図で同じ参照記号が付いている。
【0015】
上述のように、複合材料は、航空機、宇宙船、回転翼航空機、船舶、自動車、トラック、およびその他のビークルおよび構造の製造における使用が増加している。複合材料を使用することには多くの利点があるが、例えば、航空機を建造する際、電気システムの設置も必要になる。本開示は、電子部品を様々な異なる複合構造の構築に統合する利点を提供する。電子部品を複合材片に統合することにより、いくつかの利点が得られる。すべてを網羅するわけではないが利点には、とりわけ、航空機の製造ステップの削減、複合材片による電子部品の保護、電子部品のコストおよび重量の削減、部品の配置の正確性の向上、電子部品がより機械的に堅牢となることが含まれる。
【0016】
電子部品を複合構造に統合することにより、航空機の組み立て中に電気システムを完成させるのに必要な労働量を大幅に削減できる。一例では、複合材片は、ワイヤリングハーネスなどの配線のセットに統合された統合電子部品を有してもよい。航空機を組み立てる際、別個のワイヤリングハーネスを展開させる必要性が減る場合がある。したがって、最終的な航空機の組み立て手順が少なくなる。
【0017】
別の例では、複合材料にセンサまたは電子部品が埋め込まれている場合がある。例えば、航空機の翼を形成する複合材は、飛行中に航空機の翼にかかる応力を測定するように構成された埋め込み型の応力センサを含む場合がある。別の例として、液体タンクの一部を形成する複合材には、タンク内の液体レベルを測定するセンサが統合されている場合がある。さらに別の例では、航空機の内部で使用される複合材には、航空機内に光を提供する発光ダイオード(LED)が統合されている場合がある。
【0018】
部品が従来どおりに航空機に配置されている場合、ぶつかったり、打ったり、意図せずに他の方法で接触したりする可能性がある。本開示では、複合材片が形成される際、電子部品は複合材片の表面を形成する樹脂に統合される。さらに、本開示の電子部品は複合材片内に統合されているため、電子部品は複合材片自体によって保護されてもよい。したがって、樹脂は、意図しないまたは望ましくない接触から電子部品を保護することができる。
【0019】
さらに、本開示は、様々な電子部品のコストおよび重量を削減することができる。一般的に、航空機を組み立てる際、電子部品は機械的特性に一部基づいて選択される。例えば、従来の航空機の組み立てでは、十分な電気的特性を備えた配線は機械的に堅牢であるには細すぎる可能性があるため、破損を回避するために、配線のゲージ(つまり直径)を機械的特性に基づいて選択できる。部品は機械的特性に基づいて選択されるため、電気的な配慮のみが必要な場合、部品は必要とされるよりも大きく重くなる可能性がある。本開示において、複合材片の樹脂は、電子部品に機械的安定性および剛性を提供する。樹脂によって提供される安定性と剛性により、複合材片に埋め込まれた部品は、所望の機械的特性を有することができる。したがって、機械的特性が複合材料の樹脂によって提供されるため、使用される電子部品は、従来の航空機よりも小さいものにすることができる。
【0020】
所望の部品の形状を補完する形状を有する適切な形成またはレイアップツールを使用してもよい。既存の形成ツールを使用するか、状況によっては、形成ツールを作成して、所望の部品の細工表面、例えば航空機の翼ストリンガまたはその他の一次または二次構造、すなわちZ形ビーム、I形ビーム、帽子補剛材、Cチャネル、J補剛材、ブレード補剛材、床ビーム、リブ、フレーム、または翼桁などを形成する。形成ツールの製作および/または構築は当業者に既知であるので、そのような詳細をここで繰り返す必要はない。
【0021】
複合材料から部品を形成するには、複合材料をレイアップ(つまり形成)ツールのレイアップ表面に配置する。複合材料は、乾燥布またはプリプレグプライを含むがこれらに限定されない複合部品を形成するための任意の適切な材料であり得ることが理解されよう。一部の例では、レイアップ表面はレイアップシステムの真空ベースの上に置かれるか、連接される。真空ベース、ツール、および複合材料は、真空バッグまたは膜で覆うことができる。
【0022】
複合材料は、樹脂などのエポキシ材料がすでに存在する繊維のプリプレグまたは含浸済み複合材料である。多くの場合、繊維は織りの形をとり、樹脂は、製造中に繊維同士、および繊維を他の部品に結合するのに使用される。樹脂は部分的にしか硬化しないため、取り扱いが簡単である。これはBステージ材料として知られており、完全な硬化を防ぐために冷蔵が必要である。Bステージのプリプレグは、熱により樹脂の完全な重合が促進されるため、常に冷却された領域に保管される。複合構造またはプリプレグの複数の層で構築された未硬化の薄層には、通常、複合構造を硬化させるためにオーブンまたはオートクレーブが必要である。
【0023】
複合材料の加熱および/または加温は、形成ツール上に複合材料を形成する前に起こり得る。複合材料を加熱/加温すると、周囲温度または室温での複合材料とは対照的に、形成ツールにより適合させやすくなる。加熱は、赤外線ランプ、従来の電球、または他の既知の加熱技術を使用して達成できる。複合材料の加熱は、形成プロセス中も継続できる。複合材料の組成に応じて、複合材料の温度を約華氏200度以下に上げることができる。複合材料の温度は、熱電対を取り付けるなど、従来の方法で測定できる。
【0024】
形成ツール上で複合材料を形成する際、複合材料の樹脂を流すために複合材料を加熱することができ、空気が真空バッグの下から排出され、真空バッグの膜を引き下げてツールに適合させることができる。他の一部の例では、樹脂を繊維ベースの材料に適用し、樹脂が繊維ベースの材料の上および中を流れて、真空バッグが適用される前に複合材料を形成することができる。これにより、複合材料の第1の部分がレイアップ表面に押し付けられる。複合材料が形成ツールに完全に適合されると、複合材料の加熱を停止し、複合材料を冷却する。
【0025】
このように形成された複合材料は、形成ツールから除去して、硬化ツール上に配置することができる。もちろん、状況によっては、複合材料を硬化ツール上に直接レイアップすることが有利な場合がある。硬化ツールへの移動が必要な場合、レイアップ手順で使用される剥離フィルムは、形成された複合材料とともに残る。剥離フィルムは、通常、オートクレーブでの真空バギング硬化中に必要である。形成された複合材料の除去は、手動で、または代わりに、機械的支援またはロボットマニピュレータの使用などのハンズフリー方法を利用する他の既知の製造方法による自動化された方法で達成することができる。硬化ツール上に配置されると、形成された複合材料は、真空バギングされ、真空引きされ、硬化装置、例えばオートクレーブに入れられる。場合によっては、形成された複合材料は形成ツール上に残り、硬化装置に直接送られる。
【0026】
例として、
図1Aから
図7は、複合材料内に統合された電子部品の様々な例を示す。図面は異なる例として示される場合があるが、様々な異なる例を組み合わせて、本開示に基づく様々な異なる構造を形成することができる。例えば、
図2Aおよび
図2Bは、複合材料内のワイヤリングハーネスを形成することができる配線のセットを示し、
図6Aおよび
図6Bは、複合材料内の配線に結合された電子部品を示す。本開示は、これら2つの例の形態の組み合わせ(すなわち、配線の1つに結合された少なくとも1つの電子部品を備えたワイヤリングハーネス)も含む。本開示に基づいて、当業者は開示された形態の様々な組み合わせを理解するであろう。さらに、
図1Aから
図7は、複合材料を形成する前述の方法で使用することができ、形成におけるステップ例を示す。
【0027】
図1Aは、形成前のレイアップ表面12、電子部品10、および複合材料14の側面図の概略図である。前述のように、複合材料14は繊維6および樹脂8の両方を含んでもよい。複合材料14の繊維6および樹脂8は、
図1Aに示されており、簡潔にするために図全体にわたって繰り返されない。樹脂8は流れることができるように柔軟であってもよい。樹脂8が流れることにより、複合材料14をレイアップ表面12の形状に適合させることができる。繊維6は、樹脂8内に位置している。樹脂8が硬化する(つまり固まる)と、繊維6が所定の箇所に固定される。複合材料14の樹脂8および繊維6の組み合わせは、複合材料14にその強度を与える。
【0028】
レイアップ表面12は、形成された複合部品の所望の形状の補完に対応する形状を有することができる。複合材料14をレイアップ表面12上に配置する前に、電子部品10をレイアップ表面12上に配置することができる。複合材料14内に形成するための所望の位置に電子部品10を配置するために、電子部品10をレイアップ表面12上に配することができる。一部の例において、電子部品10は、レイアップ表面12上の電子部品10の正確な箇所を可能にするために、プリンタによってレイアップ表面12上に配することができる。プリンタは、レイアップ表面12上に伝導性インクを印刷できる。プリンタは、配線またはその他の電気回路を印刷するように構成できる。伝導性インクは、電子部品10である配線を形成することができる。他の一部の例では、電子部品10をレイアップ表面12上に配置することができる。様々な異なる例では、異なる電子部品を電子部品10に使用してもよい。例えば、電子部品10は発光ダイオード(LED)とすることができる。他の例では、電子部品10は、歪みセンサ、液体センサ、または他のタイプのセンサとすることができる。
【0029】
図1Bは、樹脂8が流れた後のレイアップ表面12、電子部品10、および複合材料14の側面図の概略図である。樹脂8が流れると、それはレイアップ表面12の形状を形成する。電子部品10の配置のために、電子部品10は、レイアップ表面12上を流れるときに樹脂8に統合することができる。したがって、形成された複合材料14部分の上部表面は、硬化時に電子部品10が複合材料の表面と実質的に同一平面になるように、上部表面に統合された電子部品10を有することができる。複合材料14は、電子部品10の構造的支持を提供し、それにより電気部品を複合材料14内に統合することができ、統合されない場合、電気部品は追加の支持なしでは機械的に堅牢ではないことがある。電子部品10は複合材料14の樹脂8内に統合されているため、複合材料14は電子部品10に必要な支持を提供できるので、電子部品10は他の機械的支持を必要としない場合がある。
【0030】
前述のように、従来の航空機の設計では、多くの電子部品が堅牢な電気的および機械的性能の両方のために設計されている。例えば、航空機の装備および/または運用に耐える機械的な堅牢性を確保するように、配線または他の電子部品を設計することができる。配線は、機械的な剛性を考慮して設計される場合がある。この機械的な剛性により、配線は電気的に必要なものよりも重く太くなり、航空機の組み立てにコストと重量が追加される。複合材料14に配線を配置することにより、複合材料の樹脂8が配線に機械的支持を提供するため、配線をより軽くすることができる。同様に、センサなどの他の電子部品は従来、機械的な堅牢性を考慮して設計されている場合がある。従来配置されていたセンサは、ぶつかったり、こすれたり、その他の影響を受ける可能性がある。複合材料14の樹脂8内にセンサ(または他の電子部品)を配置することにより、センサは衝撃から保護され、追加の保護を必要としない場合がある。
【0031】
図1Cは、形成された複合材料がレイアップ表面から分離された後のレイアップ表面12、電子部品10、および複合材料14の側面図の概略図である。複合材料14が形成された後、それはレイアップ表面12から除去することができる。複合材料14を除去すると、電子部品10が複合材料14の表面内に形成される。したがって、統合された電子部品10を有する複合材料14片が形成される。
【0032】
電子部品10がレイアップ表面12上に直接配置されているため、複合材料が形成されると、電子部品10は複合材料14の表面15の一部を形成する。複合材料14が作成される際、複合材料14の表面15は、所定の平面度基準を有し得る。
【0033】
平面度は、ASTM A1030/A1030M-16「鋼板製品の平面度特性測定の標準プラクティス」に基づいて測定することができる。他の標準を使用して、平面度の尺度を定義することもできる。表面の平面度は、プローブ、レーザ、光学システム、または他の手段などの機械的手段で測定することができる。平面度基準は、複合材料の表面15がピース全体でどれだけ平面であるかの尺度となる。平面度基準は、幾何学的寸法に基づいている場合がある。例えば、フラットエンジニアリング仕様の±0.030インチ以内の平面度基準を平面度基準として使用できる。別の平面度基準も使用できる。電子部品10が複合材料14の表面15を形成する際、電気部品を含む表面15が所定の平面度基準内にあることが望ましい場合がある。電子部品10が所定の平面度基準内にあるため、電子部品10は、複合材料14の樹脂8による摩耗および衝撃から保護され得る。平面度基準は、本明細書に提示されている例のいずれにも同様に適用および応用可能である。
【0034】
図2Aは、複合材料14に形成された3本の配線16A~16Cを含むワイヤリングハーネス16を形成する配線のセットの上部表面図の概略図である。
図2Aは3本の配線のワイヤリングハーネスを示しているが、他の可能な構成ではより多くのまたはより少ない配線を使用できる。一部の例では、複合材料14に形成される前に、3本の配線16A~16Cなどの複数の配線をレイアップ表面12上に形成することができる。3本の配線16A~16Cなどの複数の配線は、ワイヤリングハーネス16を形成することができる。ワイヤリングハーネス16は、航空機の製造中に別個のワイヤリングハーネスを展開させる必要がないように、複合材料14に統合することができる。さらに、前述のように、複合材料14の樹脂8は、ワイヤリングハーネス16を形成する3本の配線16A~16Cなどの複数の配線に機械的支持を提供することができる。したがって、ワイヤリングハーネス16は、従来のワイヤリングハーネスよりも軽量であり得る。さらに、ワイヤリングハーネス16は、2本の配線を有するだけでよい場合がある。冗長性のために追加の配線が含まれている場合がある。ワイヤリングハーネス16の第1の配線の代わりに追加の配線を使用してもよい。
【0035】
図2Bは、複合材料14に形成された3本の配線16A~16Cのセットを含むワイヤリングハーネス16の側面図の概略図である。ワイヤリングハーネス16を形成するために、3本の配線16A~16Cをレイアップ表面12上に配することができる。前述のように、レイアップ表面12上への配置は、電子伝導性インクを印刷できるプリンタによって実行することができる。複合材料の樹脂8がレイアップ表面12上を流れると、3本の配線16A~16Cが樹脂8に統合されて複合材料14の上部表面を形成することができる。
【0036】
図3Aは、形成前のレイアップ表面12、第1の配線11および第2の配線20を含む2本の配線、非導電層18、および複合材料14の側面図の概略図である。複合材料14が形成される前に、レイアップ表面12上に複数の層を作成することができる。レイアップ表面12上に第1の配線11を形成することができる。第1の配線11は、他の手段によってレイアップ表面上に配置、印刷、または形成することができる。非導電層18は、他の手段によって第1の配線11に配置、印刷、または形成することができる。非導電層18は、絶縁材料で作ることができる。絶縁材料は、第1の配線11と第2の配線20との間の信号の結合を防止するのに十分な厚さであり得る。第2の配線20は、非導電層の上に形成することができる。したがって、
図3Aに示される例では、2本の配線、第1の配線11および第2の配線20は、それらの間に非導電層を伴って形成することができる。配線は複合材料14の範囲で展開してもよい。
【0037】
図3Bは、樹脂が流れた後のレイアップ表面12、第1の配線11および第2の配線20を含む2本の配線、非導電層18、および複合材料14の側面図の概略図である。樹脂8が流れると、それはレイアップ表面12の形状を形成することができる。第1の配線11、第2の配線20、および非導電層18は、樹脂8がレイアップ表面12上を流れるときに樹脂8に統合することができる。したがって、形成された複合材料14部分の上部表面は、上部表面に統合された第1の配線11を有することができる。複合材料14は、第1の配線11、第2の配線20、および非導電層18の構造的支持を提供することができる。第1の配線11、第2の配線20、および非導電層18が複合材料14の樹脂8内に統合されているため、複合材料14は第1の配線11、第2の配線20、および非導電層18に必要な支持を提供することができるので、第1の配線11、第2の配線20、および非導電層18には、他の機械的支持は不要であり得る。
【0038】
図3Cは、形成された複合材料がレイアップ表面から分離された後のレイアップ表面12、第1の配線11および第2の配線20を含む2本の配線、非導電層18、および複合材料14の側面図の概略図である。複合材料14が形成された後、それはレイアップ表面12から除去することができる。複合材料14が除去されると、第1の配線11、第2の配線20、および非導電層18が複合材料14内に形成され、第1の配線11は複合材料14の表面を形成できる。したがって、複合材料14内に統合された第1の配線11、第2の配線20、および非導電層18を有する複合材料14片が形成される。
【0039】
図4Aは、複合材料14に形成された2本の配線22A~22Bを含む三次元ワイヤリングハーネス22の上部表面図の概略図である。一部の例では、本明細書で開示される様々な形態を組み合わせることができる。例えば、
図4Aに示されるように、三次元構造を含むワイヤリングハーネス22を作成することができる。三次元構造を作るために、ワイヤリングハーネス22は、非導電層23を間に挟んで互いに交差する第1の配線22Aおよび第2の配線22Bを有することができる。
図4Bは、複合材料14に形成された第1の配線22Aおよび第2の配線22Bを含む三次元ワイヤリングハーネス22の側面図の概略図であり、第1の配線22Aおよび第2の配線22Bは、2つを分離する非導電層23を有する。ワイヤリングハーネス22を作成するために、レイアップ表面12上に第1の配線22Aを印刷または配置することができる。非導電層23は、第1の配線22Aの一部の上に印刷または配置することができる。第2の配線22Bは、第1の配線22Aが非導電層23によって覆われる位置で第1の配線22Aと交差するように印刷または配置することができる。
【0040】
図5Aは、形成前のレイアップ表面12、電子部品10、保護層24、および複合材料14の側面図の概略図である。本明細書に開示される例は、本明細書に提示される他の例と組み合わせることができ、例えば、電子部品10が配置される前に、保護層24をレイアップ表面12上に配置することができる。保護層24は、レイアップ表面12から複合材料14を除去するのを助ける比較的薄い層とすることができる。保護層24は、保護層がレイアップ表面12を覆っている場合でも、形成された複合材料14がレイアップ表面12の正しい形状をとるほど十分に薄くすることができる。
【0041】
本開示のレイアップシステムで使用される保護層24は、未硬化の複合材料と接触させて使用するのに許容される組成物で形成することができ、1つ以上の非粘着性または低粘着性表面を提供する。例えば、保護層はフッ素化エチレン-プロピレン(FEP)で構成され、かつ化学分解によって、レイアップ方法で使用される複合材料の樹脂含有量および/または繊維に対する樹脂の比率に悪影響を及ぼさないように選択されることが好ましい。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)およびTOOLTEC(登録商標)(接着剤で強化されたPTFEコーティングされたグラスファイバー)を含むが、これらに限定されない他のタイプの保護層を使用できる。一部の例では、保護層24は、約0.002から約0.005インチの範囲の厚さを有することができる。
【0042】
図5Bは、樹脂8が流れた後のレイアップ表面12、電子部品10、保護層24、および複合材料14の側面図の概略図である。樹脂8が流れると、それはレイアップ表面12に保護層24の形状を形成することができる。
【0043】
図5Cは、形成された複合材料がレイアップ表面から分離された後のレイアップ表面12、電子部品10、保護層24、および複合材料14の側面図の概略図である。電子部品10が統合された形成された複合材料は、保護層24から除去することができる。保護層24も、レイアップ表面12から除去されてもよい。
【0044】
図6Aは、複合材料14内に形成された配線26に結合された電子部品28の上部表面図の概略図である。一部のさらなる例では、電子部品28は、レイアップ表面12上に配置または印刷されてもよい。電子部品28は、レイアップ表面上に印刷または配置された配線26に結合することもできる。複合材料14を形成した後、電子部品28および配線26を複合材料の樹脂8内に形成することができる。配線26は、電子部品28への電気接続を可能にすることができる。さらに、配線26は、
図6Aに示されているものとは異なるレイアウトを有していてもよい。
【0045】
図6Bは、複合材料14内に形成された配線26に結合された電子部品28の側面図の概略図である。電子部品28は、複合材料14の表面の中心に向かって形成されてもよい。さらに、
図6Bに示されるように、配線26は、複合材料14の端部での電気的接続を可能にする方法で配置され得る。
【0046】
図7は、それぞれがワイヤリングハーネス、すなわち第1のワイヤリングハーネス116、および第2のワイヤリングハーネス216を有する2つの複合材片、すなわち第1の複合材片114および第2の複合材片214の概略図であり、2つのワイヤリングハーネスは、互いに結合されている。複合材片114および214は、それぞれワイヤリングハーネス116および216をそれぞれ有するように示されている。
図7に示されている例は、開示されている他の例でも使用することができる。第1の複合材片114および第2の複合材片214の両方は、前述の複合材料14と同じ種類の複合材料であり得る。
【0047】
図7に示すように、第1の複合材片114は、複合材片214のワイヤリングハーネス216に電気的に結合されたワイヤリングハーネス116を含むことができる。複合材片にワイヤリングハーネスを形成することにより、航空機を組み立てる際に、隣接する複合材片のワイヤリングハーネスが互いに結合され得る。ワイヤリングハーネスを結合することにより、電気信号を複数の複合部品間で通信できる。
【0048】
航空機の建造中、ワイヤリングハーネスが多くの異なる複合パネル間で信号を通信することが望ましい場合がある。例えば、航空機には航空機の胴体を通して信号を通信する配線がある。複合材片にワイヤリングハーネスを統合することにより、複合部品を一緒に配置したときにワイヤリングハーネスの配置が正しい位置になる。例えば、統合されたワイヤリングハーネスは、配線が複合部品内に統合されるため、航空機の構造を通る電力経路を簡素化できる。配線を部品に統合することにより、航空機の建造中に他の設置済み形状の周りに従来の配線を配線する必要がなくなり、電気システムの構築が簡素化される。したがって、複合部品を結合した後、ワイヤリングハーネスを航空機に設置する必要はない。さらに、前述のように、現在開示されているワイヤリングハーネスは、より細くより軽い配線の使用を可能にすることができる。したがって、組み立てるステップがより少なく、重量も軽い航空機を組み立てることができる。さらに、配線が複合材片114および224の樹脂8内に統合されているため、従来の露出した配線よりも配線をより保護することができる。
【0049】
図8は、本明細書に開示される1つ以上の実施形態に従って製造された1つ以上の複合材料14を統合することができる航空機の斜視図の例示である。
図8に示すように、航空機300は、胴体312、機首314、コックピット316、胴体312に動作可能に連結された翼318、1つ以上の推進ユニット320、尾部322、応力センサ328、および1つ以上の尾部水平安定装置324を含む。
図8に示される航空機300は、一般に民間旅客機を代表するものであるが、本明細書に開示されるような1つ以上の積層複合材は、他のタイプの航空機または航空ビークルでも使用され得る。より具体的には、開示例の教示は、他の旅客機、貨物航空機、軍用航空機、回転翼機、および他の種類の航空機または航空ビークル、ならびに航空宇宙ビークル、衛星、宇宙打ち上げビークル、ロケット、およびその他の航空宇宙ビークルに適用され得る。
【0050】
現在開示されている複合材料は、航空機の多くの異なる部分を形成し得る。例えば、翼、胴体、および中間パネルは、複合材料から形成されてもよい。さらに、統合された電子部品は、複合材片の箇所に応じて、様々な機能を提供できる。例えば、航空機の翼は、統合された配線と歪みセンサとで形成できる。内部パネルは、統合された配線とLED照明とで形成できる。さらに、統合されたワイヤリングハーネスを含む胴体部品が形成されてもよい。電子部品を複合材料に統合する他の多くの可能な例も同様に可能である。
【0051】
図9は、複合部品を形成する方法の一例のフロー図の例示である。ブロック902で、方法900は、レイアップシステムのレイアップ表面上に少なくとも1つの電子部品を配置することを含む。電子部品は、レイアップ表面の所望の箇所に配置される。一部の例では、電子伝導性インクを印刷するように構成されたプリンタによって、レイアップ表面上に電子部品を印刷することができる。プリンタは、レイアップ表面上の望ましい箇所に電子部品を正確に配置することができる。例えば、プリンタは、コンピューター支援設計(CAD)レイアウトに基づいて、電子部品の箇所を印刷できる。電子部品を印刷することにより、部品を高精度で配置できる。しかし、一部の追加の例では、代替として、または印刷と組み合わせて、人、機械、ロボット、または他の手段で電子部品を配置することができる。
【0052】
一部の例では、印刷された伝導性インクは、電子部品である配線を形成することができる。配線を印刷すると、レイアップ表面上に配線を正確に配置できる。様々な異なる例では、異なる電子部品を電子部品に使用してもよい。例えば、電子部品は発光ダイオード(LED)であってもよい。他の例では、電子部品は歪みセンサ、液体センサ、または他のタイプのセンサであってもよい。
【0053】
さらに、一部の例では、プリンタは絶縁層として機能させるために電気部品の上に非導電層を印刷するように構成されているため、間に電気を伝導せずに電気部品の上にさらに電気部品を配置または印刷できる。別の電気層を非導電層の上に印刷してもよい。したがって、一部の例では、ブロック902で、電気部品は、導電層および非導電層を備えた多層構造の形をとることができる。さらに一部のさらなる例では、ブロック902で、複数の電子部品を配置することができる。複数の電子部品でワイヤリングハーネスを形成できる。複数の電子部品は、電子部品に電力を供給するために配線に結合されたセンサまたはLEDであってもよい。
【0054】
さらに、電子部品の位置決めは、レイアップ表面自体に直接ではなく、レイアップ表面の保護層上であってもよい。保護層により、複合材料をレイアップ表面からより簡単に除去できる。
【0055】
ブロック904で、方法900は、樹脂および繊維を含む複合材料をレイアップ表面上に配置することを含む。前述のように、複合材料をレイアップ表面上に配置して、レイアップ表面の形状をとることができる。複合材料は、レイアップ表面上にすでに配置されている電子部品の上に配置できる。様々な例において、複合材料は、人、機械、ロボット、または他の手段による配置を含む、様々な異なる方法で配置されてもよい。
【0056】
ブロック906で、方法900は、レイアップ表面と繊維との間に樹脂の流れを生じさせることを含む。一部の例では、形成ツール上に複合材料を形成した後、複合材料の樹脂をレイアップ表面上に流すために複合材料を加熱してもよい。一部の他の例では、樹脂は繊維ベースの材料に適用されてもよく、ここで樹脂は、繊維ベースの材料の上および中を流れて複合材料を形成する。複合材料が形成ツールに完全に適合されると、複合材料の加熱を停止し、複合材料を冷却する。
【0057】
ブロック908で、方法900は、硬化樹脂を形成するために樹脂を硬化させることを含み、電子部品および繊維は硬化樹脂内に位置し、電子部品の上部表面を硬化樹脂の上部表面と面一にする。樹脂を硬化させると、樹脂が固くなる。樹脂が固くなると、レイアップツールの形状をした複合材料片が形成される。さらに、電子部品は樹脂内に形成される。樹脂は、電子部品を所定の位置に保持し、電子部品を支持し、電子部品を保護する。さらに、電子部品は、形成複合材料の上部表面の一部(すなわち、樹脂の上部表面)を形成することができる。複合材料には、上部表面の平面度に対して所定の公差がある。電子部品を含む上部表面は、所定の平面度公差内に収まる。電子部品を含めることにより、硬化前に電子部品を樹脂内に配置して形成する際に、表面の平面度が所定の公差を超えないため、形成された複合材片は、電子部品が統合されていない類似材片と同じ形状を有する場合がある。したがって、電子部品は、形成された複合材料の表面を大きく変えない。
【0058】
さらに、本開示は、以下の項による例を含む。
第1項.集積電子部品を有する複合材料を形成する方法であって、方法は、少なくとも1つの電子部品をレイアップシステムのレイアップ表面上に配置するステップと、複合材料をレイアップ表面上に配置するステップであって、複合材料が樹脂および繊維を含む、ステップと、レイアップ表面と繊維との間に樹脂の流れを生じさせるステップと、硬化樹脂を形成するために樹脂を硬化させるステップであって、電子部品および繊維が硬化樹脂内に配置される、ステップとを含む。
第2項.少なくとも1つの電子部品を配置するステップは、レイアップ表面上に電子伝導性インクを配するステップを含む、請求項1に記載の方法。
第3項.電子伝導性インクの少なくとも一部の上に非導電層を配するステップをさらに含む、請求項2に記載の方法。
第4項.非導電層の上に伝導性インクの第2の層を配するステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
第5項.レイアップ表面上に保護層を配置するステップをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
第6項.少なくとも1つの電子部品をレイアップ表面上に配置するステップは、保護層の上部表面に複数の電子部品を配置するステップを含む、請求項5に記載の方法。
第7項.樹脂の上部表面は電子部品の表面を含み、上部表面の平面度が所定の平面度公差内にあると判定する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
第8項.レイアップシステムの表面に基づいた形状を有する樹脂と、樹脂内に含まれる繊維と、少なくとも1つの電子部品とを含む、電気的な機能を有する複合材料装置であって、電子部品は、レイアップシステムの表面上の電子部品の周りの樹脂の流れに基づいて樹脂内に配置される。
第9項.少なくとも1つの電子部品は電子伝導性インクを含む、請求項8に記載の装置。
第10項.電子伝導性インクの少なくとも一部の上に非導電層をさらに含む、請求項9に記載の装置。
第11項.非導電層の上に伝導性インクの第2の層をさらに含む、請求項10に記載の装置。
第12項.複合材料の上部表面は電子部品の表面を含み、上部表面の平面度は所定の平面度公差内である、請求項8から11のいずれか一項に記載の装置。
第13項.電子部品は配線のセットであり、配線は、複合材料の樹脂によって機械的に支持されている、請求項8から12のいずれか一項に記載の装置。
第14項.電子部品は複合材料の樹脂内に配置された歪みセンサであり、歪みセンサは複合材料の屈曲を測定するように構成されている、請求項8から13のいずれか一項に記載の装置。
第15項.電子部品は複合材料の樹脂内に配置された発光ダイオードであり、発光ダイオードは樹脂内に配置された配線から電力を受け取る、請求項8から14のいずれか一項に記載の装置。
第16項.複合材料片を形成する方法であって、方法は、ワイヤリングハーネスを形成するためにレイアップ表面上に電子伝導性インクを配するステップと、複合材料をレイアップ表面上に配置するステップであって、複合材料が樹脂および繊維を含む、ステップと、レイアップ表面と繊維との間に樹脂の流れを生じさせるステップと、硬化樹脂を形成するために樹脂を硬化させるステップであって、ワイヤリングハーネスは硬化樹脂内に配置されるステップとを含む、方法。
第17項.ワイヤリングハーネスを配するステップは、電子伝導性インクの少なくとも一部の上に非導電層を配するステップと、非導電層の上に伝導性インクの第2の層を配するステップとをさらに含み、ワイヤリングハーネスは三次元構造を形成する、請求項16に記載の方法。
第18項.ワイヤリングハーネスを配置するステップは、複数の複合材料片を形成するステップと、第1の複合材料片のワイヤリングハーネスを第2の複合材料片のワイヤリングハーネスに電子的に結合するステップとをさらに含む、請求項16または17に記載の方法。
第19項.ワイヤリングハーネスを配するステップは、レイアップ表面上の保護層の上に配するステップをさらに含む、請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
第20項.レイアップ表面上に電子部品を配置するステップであって、ワイヤリングハーネスを配するステップは、ワイヤリングハーネスを電子部品に電子的に結合するステップをさらに含む、ステップをさらに含む、請求項16から19のいずれか一項に記載の方法。
【0059】
特定の例の前述の説明は開示の一般的な性質を明らかにするので、他の者は現在の知識を適用することにより、一般的な概念から逸脱することなく、そのような特定の実施形態を様々な用途に容易に修正および/または適合させることができ、したがって、そのような適合および修正は、開示例の等価物の意味および範囲内で理解されることが意図されている。本明細書の語法または用語は説明のためのものであり、限定のためではないことを理解されたい。
【符号の説明】
【0060】
6 繊維
8 樹脂
10 電子部品
11 配線
12 レイアップ表面
14 複合材料
15 表面
16 ワイヤリングハーネス
16A 配線
16B 配線
16C 配線
18 非導電層
20 配線
22 三次元ワイヤリングハーネス
22A 配線
22B 配線
23 非導電層
24 保護層
26 配線
28 電子部品
114 複合材片
116 ワイヤリングハーネス
214 複合材片
216 ワイヤリングハーネス
300 航空機
312 胴体
314 機首
316 コックピット
318 翼
320 推進ユニット
322 尾部
324 尾部水平安定装置
328 応力センサ